(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230608BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/06 301G
H01L29/06 301M
H01L29/06 301V
H01L29/78 652J
H01L29/78 652K
H01L29/78 652P
H01L29/78 652S
H01L29/78 653A
(21)【出願番号】P 2020203507
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木下 昂洋
(72)【発明者】
【氏名】森川 貴博
(72)【発明者】
【氏名】村田 龍紀
(72)【発明者】
【氏名】安井 感
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-92364(JP,A)
【文献】特開2018-133442(JP,A)
【文献】特開2015-126086(JP,A)
【文献】特開2020-113633(JP,A)
【文献】特開2013-258369(JP,A)
【文献】特開2006-128507(JP,A)
【文献】特開2016-115692(JP,A)
【文献】特開平10-70271(JP,A)
【文献】特開2018-67651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0012121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゲートトレンチと、前記ゲートトレンチ内に設けられたトレンチゲート電極と、前記ゲートトレンチ以外の部分に設けられたPボディ層とを有するアクティブ領域と、前記アクティブ領域の外周に配置されたターミネーション領域と、を備える半導体装置において、
前記アクティブ領域の前記ゲートトレンチの底部に電界保護層を有し、
前記アクティブ領域と前記ターミネーション領域との間に電界緩和層を有し、前記電界緩和層の底面は前記電界保護層の底面よりも浅く、かつ、前記電界緩和層は前記Pボディ層に電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記アクティブ領域を一周囲うように終端トレンチを有し、前記終端トレンチの底面側に前記電界緩和層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記終端トレンチは、断面を見たときに、テーパー形状を有することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記終端トレンチの底面は前記Pボディ層の底面より浅く、前記電界緩和層の上面は前記Pボディ層の底面よりも浅いことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
少なくとも前記アクティブ領域の端部に配置された前記ゲートトレンチの間隔が、前記アクティブ領域の端部以外に配置された前記ゲートトレンチの間隔よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
少なくとも前記アクティブ領域の端部に配置された前記ゲートトレンチの幅が、前記アクティブ領域の端部以外に配置された前記ゲートトレンチの幅よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記アクティブ領域の端部に配置された前記ゲートトレンチ以外の前記ゲートトレンチの配列方向間の距離をL
1、前記アクティブ領域の端部に配置された前記ゲートトレンチと前記終端トレンチとの間の前記ゲートトレンチの配列方向の距離をL
2、前記ゲートトレンチと前記終端トレンチとの間の前記ゲートトレンチの長手方向の距離をL
3としたときに、L
1≧L
2およびL
1≧L
3であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
断面で見たとき、前記電界緩和層の底面は、前記電界保護層の底面と前記Pボディ層の底面との中間の位置から、前記電界保護層の底面と前記Pボディ層の底面との差分の±20%以内の深さの位置にあることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
断面で見たとき、前記電界緩和層の前記ターミネーション領域側の角部と、前記電界保護層の前記ターミネーション領域側の角部とを結んだ線が、水平方向の直線に対して45°以下の角度をなすことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記電界保護層は少なくとも1か所で前記Pボディ層と電気的に接続していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記アクティブ領域の端部に配置された前記ゲートトレンチがダミートレンチであり、前記ダミートレンチの底部にも前記電界保護層を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記電界保護層が前記アクティブ領域の端部に配置された前記ゲートトレンチの前記ターミネーション領域側の側面または両側の側面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記電界緩和層は、前記ゲートトレンチの長手方向の端部と接していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記電界緩和層は、前記アクティブ領域の端部に配置された前記ゲートトレンチの側面に設けられた前記電界保護層と接触していることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記電界緩和層が複数設けられ、複数の前記電界緩和層は、前記アクティブ領域側から前記ターミネーション領域側に向かって底面が浅くなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の制御・変換に用いられるパワー半導体装置として知られるSiCトレンチMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)は、大電流・大電圧に対してゲート絶縁膜を保護するために、一般に、ゲートトレンチの底部に電界保護層を設けるなどの耐圧対策が採用されている。
【0003】
例えば、ゲートトレンチの底部の電界保護層に対応するものとして、特許文献1には、セルエリアA1の第1トレンチ21の下方位置にp型の第1フローティング領域36を設けたものが、また、特許文献2には、ゲートトレンチの底部の電界保護層として、セルエリアのゲートトレンチ21の底部にPフローティング領域51を設けたものが、それぞれ開示されている。
【0004】
より具体的には、特許文献1には、セルエリアA1と終端エリアA2とが区画されている半導体基板12を備えた半導体装置10において、セルエリアA1は、第1トレンチ21と、第1トレンチ21内に収容されたゲート電極31と、第1トレンチ21の下方位置に設けられたp型の第1フローティング領域36とを有し、終端エリアA2は、第2トレンチ22と、第2トレンチ22の下方位置に設けられた第2フローティング領域42とを有し、最内周第2トレンチ22iの深さD2は、第1距離Z1(上下方向におけるゲート電極31の底面31aと第1フローティング領域36の上端36aとの距離)と第2距離Z2(上下方向における最内周第2フローティング領域42iの上端42aとボディ層25との距離)とが同一となるように、第1トレンチ21の深さD1よりも浅く設定されている半導体装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、セルエリアにゲートトレンチ21およびPフローティング領域51が、終端エリアに終端トレンチ62およびPフローティング領域53がそれぞれ形成され、3本の終端トレンチ62(終端トレンチ621、終端トレンチ622、終端トレンチ623)のうち、終端トレンチ621内についてはゲートトレンチ21と同様の構造を有し、その他の終端トレンチ内については酸化シリコン等の絶縁物で充填されている構造を有し、Pフローティング領域51はゲートトレンチ21の底面から、Pフローティング領域53は終端トレンチ62の底面から、それぞれ不純物を注入することにより形成された領域である半導体装置が開示されている。
【0006】
なお、ゲートトレンチの底部に電界保護層を設けるものではないが、特許文献3には、トレンチゲートが設けられた素子領域と、素子領域の外側に位置する終端領域と、素子領域と終端領域との間に位置する境界領域と、を有する半導体基板を備え、終端領域および境界領域の各々に、半導体基板とは異なる導電型の第1拡散層と、半導体基板内で第1拡散層の厚さよりも大きな深さを有するトレンチ部と、トレンチ部の底部側で第1拡散層に接触し、第1拡散層と同じ導電型の第2拡散層と、が設けられている、半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-107940号公報
【文献】特開2006-128507号公報
【文献】特開2019-117867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、アクティブ領域の端部に配置されるゲートトレンチの電界保護層は、他の部分よりも大きな電界がかかりやすく(等電位線の曲率が他の部分よりも大きく)、アバランシェ耐圧を低下させる原因となる。したがって、アクティブ領域の端部に配置されるゲートトレンチの電界保護層に係る電界を緩和するための構造を開発することが望まれている。
【0009】
ここで、特許文献1、2には、終端エリア(ターミネーション領域に相当)にフローティング領域(特許文献1の第2フローティング領域42、特許文献2のPフローティング領域53)を設けているものが開示されているが、後述するようにフローティング領域の深さや厚さを十分に大きくしないと、アクティブ領域の端部に配置されるゲートトレンチの電界保護層に係る電界の緩和の効果が不十分になる可能性があるという問題がある。また、特許文献3は、アクティブ領域の電界保護層の存在を前提にしたものではないので、アクティブ領域の電界保護層の電界の緩和については開示されていない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、作製がしやすく、アクティブ領域端部のゲートトレンチに設けられた電界保護層にかかる電界を緩和し、アバランシェ耐圧を向上した半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、複数のゲートトレンチと、ゲートトレンチ内に設けられたトレンチゲート電極と、ゲートトレンチ以外の部分に設けられたPボディ層とを有するアクティブ領域と、アクティブ領域の外周に配置されたターミネーション領域と、を有する半導体装置において、アクティブ領域のゲートトレンチの底部に電界保護層を有し、アクティブ領域とターミネーション領域との間に電界緩和層を有し、電界緩和層の底面は電界保護層の底面よりも浅く、かつ、電界緩和層はPボディ層に電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置である。
【0012】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作製がしやすく、アクティブ領域端部のゲートトレンチに設けられた電界保護層にかかる電界を緩和し、アバランシェ耐圧を向上した半導体装置を提供することができる。
【0014】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本発明の半導体装置の第1の例を示す平面図
【
図2】電界緩和層を有しない半導体装置を示す断面図
【
図7】本発明の半導体装置の第4の例の断面図と等電位線を示す図
【
図8】電界緩和層をPボディと接続しない構成の断面図と等電位線を示す図
【
図9】電界緩和層をPボディと接続しない構成の断面図と等電位線を示す図
【
図10A】本発明の半導体装置の第6の例を示す断面図
【
図11】本発明の半導体装置の第7の例を示す断面図
【
図12】本発明の半導体装置の第8の例を示す断面図
【
図13】本発明の半導体装置の第9の例を示す断面図
【
図14】本発明の半導体装置の第10の例を示す断面図
【
図15A】本発明の半導体装置の第11の例を示す断面図
【
図16A】本発明の半導体装置の第12の例を示す断面図
【
図17】本発明の半導体装置の第13の例を示す断面図
【
図18】本発明の半導体装置の第14の例を示す断面図
【
図20】ターミネーション構造の第1の例を示す断面図
【
図21】ターミネーション構造の第2の例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の半導体装置について詳述する。本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
図1Aは本発明の半導体装置の第1の例を示す平面図であり、
図1Bは
図1AのA-A線断面図である。
図1Aおよび
図1Bに示すように、半導体装置10は、基板16の表面に設けられた複数のゲートトレンチ4と、ゲートトレンチ4内に設けられたトレンチゲート電極40とを有するアクティブ領域1と、アクティブ領域1の外周に配置されたターミネーション領域2とを備える。アクティブ領域1とターミネーション領域2との間には、中間領域20を有する。ここで、複数のゲートトレンチ4のうち、アクティブ領域1のターミネーション領域2側の端部に位置するゲートトレンチ4を端トレンチ41と称することとする。また、複数のゲートトレンチ4のうち、上記端トレンチ41以外のゲートトレンチ4に符号42を付している。端トレンチ41および端トレンチ41以外のゲートトレンチ42を合わせてゲートトレンチ4と総称する。
【0018】
トレンチゲート電極40は、基板16の一辺に沿って伸びたゲートトレンチ4にゲート電極材料が堆積された構成を有しており、ゲートトレンチ4の長手方向に垂直な方向(ゲートトレンチ4の配列方向)に複数設けられている。アクティブ領域1は、このゲートトレンチ4の他に、ゲートトレンチ4以外の部分に設けられたPボディ層8を有し、Pボディ層8の表面にP+層7および酸化膜層6(絶縁膜層、SiO2層)がこの順で積層されている。酸化膜層6はゲートトレンチ4とトレンチゲート電極40との間も覆うように設けられており、この部分はゲート絶縁膜15として機能する。ゲートトレンチ4の底部には、電界保護層5が設けられており、端トレンチ41の底部にも電界保護層5が設けられている。なお、ゲートトレンチ4は、スイッチング動作しない(ゲートとして機能しない)ダミートレンチを含んでいてもよい。ここで、ダミートレンチは、ゲートトレンチ4内にゲート電極材料が設けられていないダミートレンチであってもよいし、ゲートトレンチ4内にゲート電極材料は設けられているがゲートと電気的に接続されていないダミーゲート電極が設けられたダミートレンチであっても良い。端トレンチ41は、ダミートレンチであってもよい。
【0019】
ターミネーション領域2は、空乏層が扇状に広がり、電界が強くなる。この電界を緩和させるために、ターミネーション構造が設けられる。
図20はターミネーション構造の第1の例を示す断面図であり、
図21はターミネーション構造の第2の例を示す断面図である。
図20はField Limiting Ring構造13と称され、
図21はJunction Termination Extension構造14と称される構造である。
【0020】
図22は
図1Aのアクティブ領域の構造を示す断面図である。
図1Bでは端トレンチ41、中間領域20およびターミネーション領域2の構造を中心に図示したが、
図22においてはアクティブ領域1の構造を図示する。
図22に示すように、基板16の上面にソース電極21を有し、基板の下面にドレイン電極22を有する。また、ゲートトレンチ4の周囲にはN-ドリフト層23が堆積されている。P
+層7の隣にはゲートトレンチ4に接するように配置されたN
+層12を有する。N-ドリフト層23とドレイン電極22の間にはN
+層17を有する。
【0021】
再び
図1Aおよび
図1B戻る。アクティブ領域1とターミネーション領域2との間の中間領域20には電界緩和層3が設けられ、電界緩和層3の底面は電界保護層5の底面よりも浅く、かつ、電界緩和層3はPボディ層8に電気的に接続されている。このような構成にすることの意義については、追って詳述する。
【0022】
図2は電界緩和層を有しない半導体装置を示す断面図であり、上述した
図1Bの構成との比較を示す図である。
図2に示すように、電界緩和層3を有しない場合、電界保護層5のターミネーション領域2側の角部に大きな電界Eがかかる。これに対して、
図1Bに示した本発明では電界緩和層3が設けられていることによって電界保護層5にかかる電界Eを緩和することができる。すなわち、アクティブ領域1からターミネーション領域2にかかる等電位線の変位を段階的に分けて、端トレンチ41の電界保護層5近傍の等電位線の曲率を小さくすることで電界を緩和し、アバランシェ耐圧を向上させることができる。
【0023】
電界緩和層3、電界保護層5およびPボディ層8は、イオン注入で作製することができる。電界保護層5をゲートトレンチ4の側壁部分にイオン注入で形成する場合は、必要に応じて斜め注入する。
【0024】
電界緩和層3の底面は、Pボディ層8よりも浅いと電界緩和の効果が無い。また、電界保護層5よりも深いと電界緩和層3近傍の等電位線の曲率が大きくなり、電界が集中する恐れがある。したがって、電界緩和層3の底面は、Pボディ層8の底面と電界保護層5の底面との間の深さとする。
【0025】
上述した
図1Bでは、電界保護層5と電界緩和層3とが離れていたが、接触していても本発明の効果を得ることができる。
図3は本発明の半導体装置の第2の例を示す断面図であり、
図4は本発明の半導体装置の第3の例を示す断面図である。
図3に示すように、電界緩和層3の片側側面が端トレンチ41と接していてもよい。また、電界緩和層3の片側側面がトレンチゲート電極40とゲート絶縁膜15を介して接していてもよく、電界緩和層3の底面が電界保護層5と接触していてもよい。また、
図4に示すように、電界保護層5の片側側面と電界緩和層3の片側側面とが接触していてもよい。また、図示しないが、電界緩和層3は、ゲートトレンチ4の長手方向の端部と接していてもよい。
【0026】
図5は本発明の半導体装置の第4の例を示す断面図である。
図5に示すように、電界緩和層3はアクティブ領域1とターミネーション領域2との間に設けられた終端トレンチ9の底面に設けられていてもよい。このような構成とすることで、終端トレンチ9の深さ分、電界緩和層3の膜厚を小さくすることができる。電界緩和層3は、終端トレンチ9を形成後にイオン注入で作製することができる。電界緩和層3を終端トレンチ9の側壁部分にイオン注入で形成する場合は、必要に応じて斜め注入する。例えば、終端トレンチ9が浅い場合は斜め注入を省略してもよい。
【0027】
図6は本発明の半導体装置の第5の例を示す断面図である。
図6に示すように、終端トレンチ9を設けた構成において、電界保護層5の片側側面と電界緩和層3の片側側面とが接触する構成としても良い。
【0028】
ここで、電界緩和層3がPボディ層8に電気的に接続されている構成の意義について説明する。
図7は本発明の半導体装置の第4の例の断面図と等電位線を示す図であり、
図8および
図9は電界緩和層をPボディ層と接続しない構成の断面図と等電位線を示す図である。
図7と
図8を比較した場合、端トレンチ41周辺の等電位線の変位は
図8よりも
図7の方が緩やかであり、等電位線の曲率が小さく電界緩和の効果が大きい。電界緩和層3をPボディ層8と接続しない構成(フローティング構造)で電界緩和の効果を高めるためには、
図9に示すように、電界緩和層3を深く、厚くしなければならないが、このような深い電界緩和層3を作製することは、実際には困難である。
【0029】
上述したように、電界緩和層3をPボディ層8に接続することで、電界緩和層3の電位が固定され、フローティング構造に比べて等電位線の変位を少なくすることができる。よって、フローティング構造に比べて電界緩和層3の底面を浅くすることができ、容易に電界緩和層3を形成することができる。電界緩和層3は、Pボディ層8と電気的に接続されていればよく、接続箇所の数、形態に特に限定は無い。
【0030】
図10Aは本発明の半導体装置の第6の例を示す断面図であり、
図10Bは
図10AのB-B線断面図であり、
図10Cは
図10AのC-C線断面図である。これまでの図では電界保護層5がゲートトレンチ4の長手方向の全体でPボディ層8と接続される例を示していたが、
図10Bおよび
図10Cに示すように、電界保護層5がゲートトレンチ4の長手方向の少なくとも一部分でPボディ層8と接続されていれば、電界保護層5はPボディ層8と電気的に接続される。図示しないが、電界緩和層3とPボディ層8との電気的接続についても同様である。なお、電界緩和層3とPボディ層8との電気的接続については必須であるが、電界保護層5とPボディ層8との間については電気的に接続されず電界保護層5がフローティングであってもよい。その場合でも、本発明の効果を得ることができる。
【0031】
ここで、上述した特許文献との比較を記載する。特許文献3においては、素子領域R1(アクティブ領域1に相当)のトレンチゲート20の下には電界保護層に相当するものが形成されておらず、また、境界領域R3の第2拡散層80は素子領域R1のトレンチゲート20よりも全て深くなっており、本発明のように電界緩和層3を電界保護層5よりも浅くするという構造とは異なる。また、特許文献1および特許文献2は、終端エリア(ターミネーション領域に相当)にフローティング領域(特許文献1の第2フローティング領域42、特許文献2のPフローティング領域53)を設けているものが開示されているが、フローティング構造が前提となっており、フローティングではなく固定電位に接続した場合は、特許文献1および特許文献2に記載された効果が得られなくなる。具体的には、特許文献1の場合は、第1距離Z1、第2距離Z2が定義できなくなる。また、特許文献2の場合は、段落0015に記載の通り、終端エリアの第2トレンチ部群を構成する終端トレンチ62により、「終端領域に向かう空乏層の広がりを遮断する」という効果を得ることが目的である。ここで、通常、ソースと電気的に接続されたPボディ領域41から空乏層が伸びるため、終端トレンチ62により、終端領域に向かう空乏層の広がりを遮断することができるのであるが、仮に、終端トレンチ62の下のPフローティング領域53をフローティングではなくPボディ領域41に接続した場合は、Pフローティング領域53であった箇所から空乏層が広がってしまうため、終端トレンチ62により、終端領域に向かう空乏層の広がりを遮断することができなくなってしまう。よって、特許文献2のPフローティング領域53はフローティングである必要がある。したがって、特許文献1および特許文献2からは、本発明のように電界緩和層3をPボディ層8に接続するという技術的思想は得られない。
【0032】
図11は本発明の半導体装置の第7の例を示す断面図である。
図11に示すように、終端トレンチ9は、断面を見たときに、テーパー形状を有していても良い。このような形状を有することで電界緩和層3を終端トレンチ9の側壁にイオン注入により形成しやすくなり、電界緩和層3をPボディ層8と接続しやすく、また電界緩和層3にかかる電界が緩和しやすくなる。また、終端トレンチ9がテーパー形状なので、イオン注入の際に斜め注入をしないようにしてもよい。
【0033】
図12は本発明の半導体装置の第8の例を示す断面図である。
図12は終端トレンチ9の底面がPボディ層8の底面より浅く、電界緩和層3の上面がPボディ層8の底面よりも浅い構造を有している。すなわち、
図12の符号11を付した部分で、Pボディ層8と電界緩和層3とがオーバーラップする。このような構造とすることで、終端トレンチ9の側壁に電界緩和層3を形成しなくてもPボディ層8と電界緩和層3とを電気的に接続することができる。したがって、終端トレンチ9の側壁に電界緩和層3を形成するためのイオン注入をする必要が無いため、電界緩和層3の形成が容易となる。また、終端トレンチ9の深さを小さくできるため、終端トレンチ9の形成が容易となる。
【0034】
図13は本発明の半導体装置の第9の例を示す断面図である。
図13に示す構造では、アクティブ領域1とターミネーション領域2との間に電界緩和層3が複数設けられている。複数の電界緩和層3の底面は、アクティブ領域1からターミネーション領域2に向かって浅くするようにしている。このような構造を有することによって、アクティブ領域1からターミネーション領域2の間の等電位線の変位をより小さくすることができる。
【0035】
図14は本発明の半導体装置の第10の例を示す断面図である。
図14に示す構造では、端トレンチ41のトレンチ幅を、他のゲートトレンチ4のトレンチ幅よりも大きくしている。電界保護層5はPボディ層8から突出したP層とみることができ、突出している電界保護層5は、等電位線の曲率が大きくなり、電界が高くなる。トレンチ幅を広げると、突出している電界保護層5の面積が広くなり、等電位線の曲率を小さくすることができ、耐圧を向上することができる。そこで、電界保護層5の中でも特に強い電界がかかる端トレンチ41のトレンチ幅を他のゲートトレンチ4よりも広げることで、電界保護層5にかかる電界を緩和することができる。
【0036】
なお、このような構造を有する場合、電界緩和層3を設けていなくても、端トレンチ41に設けられた電界保護層5にかかる電界を緩和し、アバランシェ耐圧を向上することができるので、電界緩和層3を省略してもよい。また、端トレンチ41のみのトレンチ幅を他のゲートトレンチ4よりも広げるものに限定されず、例えば端トレンチ41と端トレンチ41周辺の1または複数本のゲートトレンチ42など、少なくとも端トレンチ41を含む複数本のゲートトレンチ4のトレンチ幅を他のゲートトレンチ4よりも大きくするようにしてもよい。すなわち、少なくともアクティブ領域1の端部に配置されたゲートトレンチ4の幅が、アクティブ領域1の端部以外に配置されたゲートトレンチ4の幅よりも広い構成であればよい。
【0037】
図15Aは本発明の半導体装置の第11の例を示す断面図であり、
図15Bは
図15AのD-D線断面図である。
図15Aおよび
図15Bに示す構造では、特に強い電界がかかる端トレンチ41において、ゲートトレンチ4の間隔を狭くしている。このような構成を有することによって、電界保護層5にかかる電界を緩和することができる。
【0038】
なお、このような構造を有する場合も、電界緩和層3を設けていなくても、端トレンチ41に設けられた電界保護層5にかかる電界を緩和し、アバランシェ耐圧を向上することができるので、電界緩和層3を省略してもよい。また、端トレンチ41のみゲートトレンチ4の間隔を狭くするものに限定されず、例えば端トレンチ41と端トレンチ41周辺の1または複数本のゲートトレンチ42など、少なくとも端トレンチ41を含む複数本のゲートトレンチ4の間隔を他のゲートトレンチ4よりも狭くするようにしてもよい。すなわち、少なくともアクティブ領域1の端部に配置されたゲートトレンチ4の間隔が、アクティブ領域1の端部以外に配置されたゲートトレンチ4の間隔よりも狭い構成であればよい。
【0039】
図16Aは本発明の半導体装置の第12の例を示す断面図であり、
図16Bは
図16AのE-E線断面図である。
図16Aおよび
図16Bに示す構成では、アクティブ領域1の端部に配置されたゲートトレンチ4である端トレンチ41以外のゲートトレンチ4のゲートトレンチ4の配列方向間の距離をL
1とし、アクティブ領域1の端部に配置された端トレンチ41と終端トレンチ9との間のゲートトレンチ4の配列方向の距離をL
2とし、アクティブ領域1の端部に配置された端トレンチ41と終端トレンチ9との間のゲートトレンチ4の長手方向の距離をL
3としたときに、L
1≧L
2およびL
1≧L
3を満たす構造を有している。このような構造を有することによって、端トレンチ41の電界保護層5にかかる電界を緩和することができる。L
1>L
2、L
1>L
3であるときに特に電界緩和効果を得ることができる。
【0040】
図17は本発明の半導体装置の第13の例を示す断面図である。
図17に示す構造のように、断面で見たとき、電界緩和層3の底面は、電界保護層5の底面とPボディ層8の底面との中間の位置から、電界保護層5の底面とPボディ層8の底面との差分の±20%以内の深さの位置にあることが望ましい。
【0041】
図18は本発明の半導体装置の第14の例を示す断面図である。
図18に示す構造のように、断面で見たとき、電界緩和層3のターミネーション領域2側の角部dと、電界保護層5のターミネーション領域2側の角部cとを結んだ線が、水平方向の直線に対して45°以下の角度をなす構造を有していることが望ましい。
【0042】
図19は
図18と比較する構造を示す断面図である。
図19に示す構造では、電界緩和層3のターミネーション領域2側の角部dと、電界保護層5のターミネーション領域2側の角部cとを結んだ線が、水平方向の直線に対して45°より大きくなっている。
【0043】
以上、説明したように、本発明によれば、アクティブ領域端部のゲートトレンチに設けられた電界保護層にかかる電界を緩和し、アバランシェ耐圧を向上した半導体装置を提供でできることが示された。
【0044】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…アクティブ領域、2…ターミネーション領域、3…電界緩和層、4…ゲートトレンチ、41…端トレンチ、42…端トレンチ以外のゲートトレンチ、5…電界保護層、6…酸化膜層、7…P+層、8…Pボディ層、10…半導体装置、9…終端トレンチ、11…Pボディ層と電界緩和層のオーバーラップ部分、12,17…N+層、13…Field Limiting Ring構造、14…Junction Termination Extension構造、15…ゲート絶縁膜、16…基板、20…中間領域、21…ソース電極、22…ドレイン電極、23…N-ドリフト層、40…トレンチゲート電極。