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特許7291710分岐型ポリアミノ酸抗微生物剤及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】分岐型ポリアミノ酸抗微生物剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20230608BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230608BHJP
   A01N 37/46 20060101ALI20230608BHJP
   C08G 69/08 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P31/04
A61P31/10
A01N37/46
C08G69/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020541485
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2019072812
(87)【国際公開番号】W WO2019149121
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】201810096212.2
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810096221.1
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810097056.1
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503248042
【氏名又は名称】中國科學院長春應用化學研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】季 生象
(72)【発明者】
【氏名】劉 驍
(72)【発明者】
【氏名】韓 苗苗
(72)【発明者】
【氏名】劉 亞棟
(72)【発明者】
【氏名】郭 建偉
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0029267(US,A1)
【文献】特開平09-143010(JP,A)
【文献】特開2001-233724(JP,A)
【文献】特開2016-204309(JP,A)
【文献】International Journal of Molecular Sciences,2017年,18(3),542
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/04
A61P 31/04
A01N 37/46
C08G 69/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラム陽性菌の抑制に用いられる分岐型ポリアミノ酸抗微生物剤であって、
超分岐型ポリアミノ酸を含み、
前記超分岐型ポリアミノ酸の数平均分子量が7500g/molであり、
前記超分岐型ポリアミノ酸のPDIが1.87であり、
前記超分岐型ポリアミノ酸は、超分岐型ポリ((2S,3R,4S)-α-(カルボキシシクロプロピル)グリシンであ
前記グラム陽性菌が、黄色ブドウ球菌である、
抗微生物剤。
【請求項2】
グラム陰性菌又はカンジダ・アルビカンスを抑制するための抗微生物剤であって、
超分岐型ポリアミノ酸を含み、
前記超分岐型ポリアミノ酸の数平均分子量が8400g/molであり、
前記超分岐型ポリアミノ酸のPDIが1.94であり、
前記超分岐型ポリアミノ酸は、超分岐型ポリ5-アミノ-2-ヒドラジノペンタン酸で
前記グラム陰性菌が、サルモネラパラチフィB又はアシネトバクター・バウマニである、
抗微生物剤。
【請求項3】
グラム陰性菌を抑制するための抗微生物剤であって、
超分岐型ポリアミノ酸を含み、
前記超分岐型ポリアミノ酸の数平均分子量が7300g/molであり、
前記超分岐型ポリアミノ酸のPDIが1.48であり、
前記超分岐型ポリアミノ酸は、超分岐型ポリ4-アミノ-3-ヒドロキシ酪酸で
前記グラム陰性菌が、アシネトバクター・バウマニである、
抗微生物剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物剤の技術分野に関し、特に分岐型ポリアミノ酸抗微生物剤及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質の発明は、数億人の命を救い、人類を細菌感染の苦しみから解放し、医学上の革命と言える。しかし、小分子抗生物質が濫用されるにつれて、さらに、細菌の短い寿命及び遺伝子の水平伝播特性を加え、各種の薬物耐性菌が現れている。病原性細菌の伝播は、さらに人々の正常な生活を脅かしている。最新の研究より、それを抑えなければ、2050年になると、毎年約1000万人の命が超細菌に奪われることになってしまうことが示されている。薬物耐性菌は、世界各国に一般に注目されている焦点問題となっており、全世界の人類の健康、経済の発展及び社会の安定性に関係している。
【0003】
小分子抗生物質と比べて、ポリマー抗微生物剤は、負に帯電した細菌細胞膜と非特異的結合して、細菌細胞膜の内部に挿入することで、細菌細胞膜の破裂を引き起こして、細菌を殺すことができるので、ポリマー抗微生物剤は、薬物耐性が発生しにくい。従って、安全性が高く、抗菌効果が良く、長期間使用可能であって生分解性の抗微生物ポリマー材料の開発及び使用は、長期にわたる意義を有する大きな課題となっている。
【0004】
アミノ酸は、再生可能資源であり、主にバイオマス(澱粉、セルロース等)原料を加水分解した後に発酵させることで合成され、全世界の年間生産量が百万トンのレベルに達している。従来、アミノ酸は、主に食品及び飼料の添加剤として用いられ、付加価値が低い。如何に新しい高付加価値の製品を開発するかという問題を解決するのは、アミノ酸業界の急務となっている。分岐型ポリアミノ酸の抗菌分野への使用は、未だに報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これを鑑みて、本発明が解決しようとする技術課題は、分岐型ポリアミノ酸抗微生物剤及びその使用を提供し、アミノ酸を原料として調製した分岐型ポリアミノ酸ポリマーは、優れた抗菌性能を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術課題を解決するために、本発明は、分岐型ポリアミノ酸を含む分岐型ポリアミノ酸抗微生物剤を提供し、
前記分岐型ポリアミノ酸は、1種類のアミノ酸単位を単独重合して得られるか、あるいは2種類以上のアミノ酸単位を共重合して得られ、
前記アミノ酸単位は、式Iで示される構造式又はその塩を有する。
式I
【0007】
【化1】
【0008】
[式中、a、b、c、d、e及びfは、独立にして0~6の整数であり、かつ、1≦a+b+c+d+e+f≦20(例えば、a+b+c+d+e+f=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20)であり、好ましくはa+b+c+d+e+f≦10である。
、T、T、T、T及びTは、独立にして水素原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基、C1~C18(例えば、炭素数1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17及び18)のアルキル基及びその誘導体、C6~C30(好ましくは炭素数6~18)のアリール基及びその誘導体、C3~C8(例えば、炭素数3、4、5、6、7、8)のシクロアルキル基及びその誘導体、C2~C8(例えば、炭素数2、3、4、5、6、7、8)のアルケニル基及びその誘導体、C2~C8(例えば、炭素数2、3、4、5、6、7、8)のアルキニル基及びその誘導体、C1~C8(例えば、炭素数1、2、3、4、5、6、7、8)のアルコキシ基及びその誘導体、C1~C8(例えば、炭素数1、2、3、4、5、6、7、8)のアルキルチオ基及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、アミン及びその誘導体、含窒素複素環及びその誘導体、含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択される。任意選択として、T、T、T、T、T及びTは、同時にHではない。
【0009】
上記式Iは、アミノ酸単位の構造式であり、前記分岐型ポリアミノ酸は、2種類以上のアミノ酸単位を共重合して得られるか、あるいは1種類のアミノ酸単位を単独重合して得られてもよい。
【0010】
本発明の1つの好適な実施態様において、前記分岐型ポリアミノ酸は1種類のアミノ酸単位を単独重合して得られ、前記アミノ酸単位のT、T、T、T、T、Tのうちの少なくとも1つが、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、C2~C8のアルケニル基及びその誘導体、C2~C8のアルキニル基及びその誘導体、C1~C8のアルコキシ基及びその誘導体、C1~C8のアルキルチオ基及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、アミン及びその誘導体、含窒素複素環及びその誘導体、含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択される。
【0011】
本発明のもう1つの好適な実施態様において、前記分岐型ポリアミノ酸は、2種類以上のアミノ酸単位を共重合して得られ、少なくとも1つの前記アミノ酸単位において、T、T、T、T、T、Tのうちの少なくとも1つが、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、C2~C8のアルケニル基及びその誘導体、C2~C8のアルキニル基及びその誘導体、C1~C8のアルコキシ基及びその誘導体、C1~C8のアルキルチオ基及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、アミン及びその誘導体、含窒素複素環及びその誘導体、含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択される。
【0012】
前記分岐型ポリアミノ酸の数平均分子量が約500g/mol~500,000g/molである。
【0013】
好ましくは、本発明のポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。実施例に示すように、1つの具体的な測定方法は次の通りである。ポリマーの分子量(M)及びその分布(PDI=M/M)は、Waters 2414示差屈折率検出器付きのWaters 2414ゲル浸透クロマトグラフィーシステムを用いて検出され、0.2M酢酸/0.1M酢酸ナトリウムを移動相とし、流速が0.6mL/min、温度が35℃、標準品がポリエチレングリコールであった。本発明の分岐型単独重合又は共重合アミノ酸の数平均分子量が約500g/mol~500,000g/molであり、及び/又はPDIが約1.0~4.0(例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9及び4.0)の範囲内にある。
【0014】
前記塩は、当業者がよく知っているアミノ酸塩であってもよく、好ましくは塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩又は硝酸塩である。
【0015】
式I中、a、b、c、d、e及びfは、独立にして0~6の整数であり、かつ、1≦a+b+c+d+e+f≦20である。
好ましくは、前記a+b+c+d+e+f≦10である。
【0016】
好ましくは、[]内のT、T、T、T、T、Tは、官能基のランダム組合せを表す。
【0017】
本発明の1つの好適な実施態様において、前記T、T、T、T、T及びTは、独立にして下記いずれかの構造から選択される(本発明において、
【化2】
は、示される基/構造と式Iのその他の部分との結合点を表す)。
【0018】
【化3】
【0019】
[式中、gは0~10の整数である(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)。ただし、xx、yy、zzは、独立にして水素原子、C1~C18(好ましくはC1~C12、より好ましくはC1~C8、例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7又はC8)のアルキル基、C6~C30(好ましくはC6~C18、より好ましくはC6~C12)のアリール基、C3~C18(好ましくはC3~C12、より好ましくはC3~C8)のシクロアルキル基、カルボニル基誘導体から選択される。hhは、独立にして水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン、C1~C18(好ましくはC1~C12、より好ましくはC1~C8、例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7又はC8)のアルキル基、C6~C30(好ましくはC6~C18、より好ましくはC6~C12)のアリール基、C3~C18(好ましくはC3~C12、より好ましくはC3~C8)のシクロアルキル基、アミン及びその誘導体、アルコキシ基誘導体、アルキルメルカプト基誘導体から選択される。ii、jj、kkは、独立にして水素原子、C1~C18(好ましくはC1~C12、より好ましくはC1~C8、例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7又はC8)のアルキル基、C6~C30(好ましくはC6~C18、より好ましくはC6~C12)のアリール基、C3~C18(好ましくはC3~C12、より好ましくはC3~C8)のシクロアルキル基、アルコキシ基及びその誘導体から選択される。oo、pp、qqは、独立にして水素原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1~C18(好ましくはC1~C12、より好ましくはC1~C8、例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7又はC8)のアルキル基、C6~C30(好ましくはC6~C18、より好ましくはC6~C12)のアリール基、C3~C18(好ましくはC3~C12、より好ましくはC3~C8)のシクロアルキル基、ハロゲン、アミン及びその誘導体、アルコキシ基誘導体、カルボニル基誘導体から選択される。rr、ttは、独立にして水素原子、C1~C18(好ましくはC1~C12、より好ましくはC1~C8、例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7又はC8)のアルキル基、C6~C30(好ましくはC6~C18、より好ましくはC6~C12)のアリール基、C3~C18(好ましくはC3~C12、より好ましくはC3~C8)のシクロアルキル基、アルキルチオ基誘導体、アルコキシ基誘導体、カルボニル基誘導体から選択される。uuは、独立にして下記の化学式で示される構造のうちの1種又は2種以上である。
【0020】
2n+1-h(nは0~10の整数であり、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)、C2n-1-h(nは2~10の整数であり、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10)、C2n-3-h(nは2~10の整数であり、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10)、C2n-7-h(nは6~18の整数であり、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18)
〔ただし、hは0~3の整数であり(例えば0、1、2又は3)、Tは、独立にしてハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素)のうちのいずれか1種又は2種以上から選択される。〕]
【0021】
本発明の1つの好適な実施態様において、T、T、T、T、T及びTは、独立にして水素原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基、C1~C18のアルキル基及びその誘導体、C6~C30のアリール基及びその誘導体、C3~C8のシクロアルキル基及びその誘導体、C2~C8のアルケニル基及びその誘導体、C2~C8のアルキニル基及びその誘導体、C1~C8のアルコキシ基及びその誘導体、C1~C8のカルボン酸及びその誘導体、C1~C8のアミン及びその誘導体、C2~C8の含窒素複素環及びその誘導体、C2~C8の含酸素複素環及びその誘導体又はC2~C8の含硫黄複素環及びその誘導体から選択され、かつT、T、T、T、T、Tのうちの少なくとも1つが、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基、C2~C8のアルケニル基及びその誘導体、C2~C8のアルキニル基及びその誘導体、C1~C8のアルコキシ基及びその誘導体、C1~C8のカルボン酸及びその誘導体、C1~C8のアミン及びその誘導体、C2~C8の含窒素複素環及びその誘導体、C2~C8の含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択される。
【0022】
上記誘導体は、好ましくはC1~C5のアルキル置換基、C1~C5のアルコキシ置換基、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、C5~C8のアリール基、C5~C8のヘテロアリール基、C3~C5のシクロアルキル基、カルボキシ基、アミノ基、アミド置換基を有するものであるか、あるいはいずれか1つ又は複数のC原子がO又はSにより置換されたものである。
【0023】
好ましくは、前記T、T、T、T、T及びTは、独立にしてH、C1~C5のアルキル基、又はC1~C5の置換アルキル基から選択される。前記置換アルキル基は、好ましくはヒドロキシ置換基、メルカプト置換基、アリール置換基、ヘテロアリール置換基、カルボキシ置換基、複素環基置換基、アミド置換基、アミノ置換基を含むものであるか、あるいはC原子がO又はSにより置換されたものである。
【0024】
上記アリール置換基、ヘテロアリール置換基、複素環基置換基の炭素原子の数は、好ましくは5~12個、より好ましくは5~8個である。
【0025】
上記カルボキシ置換基、アミド置換基、アミノ置換基の炭素原子の数は、好ましくは1~8個、より好ましくは1~5個である。
【0026】
本発明では、好ましくは、前記T、T、T、T、T及びTの末端基は、独立にしてカルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、メルカプト基、グアニジル基、あるいはN、S又はO含有複素環基から選択される。前記N含有複素環基は、好ましくはイミダゾリル基又はベンゾピロール基である。
【0027】
より好ましくは、前記T、T、T、T、T及びTは、独立にして下記のいずれかの構造から選択される。
【0028】
【化4】
【0029】
上記ポリアミノ酸において、T、T、T、T、T及びTが同時にHである場合、得られたポリアミノ酸は直鎖構造であり、少なくとも1種のアミノ酸単位において、T、T、T、T、T及びTが同時にHではない場合、得られたポリアミノ酸は分岐鎖構造であり、少なくとも1つのアミノ酸単位の官能価が≧3である場合、分岐型ポリアミノ酸が得られる。
【0030】
前記アミノ酸単位は、好ましくはリジン、オルニチン、アルギニン、グルタミン酸、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トリプトファン、シトルリン、アスパラギン酸、トレオニン、チロシン、システイン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン及びメチオニンのうちのいずれか1種又は2種以上を含む。
【0031】
本発明の1つの好適な実施態様において、前記分岐型ポリアミノ酸は1種類のアミノ酸単位を単独重合して得られ、前記アミノ酸単位の官能価が≧3である。
【0032】
前記アミノ酸単位は、好ましくはグルタミン酸、リジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン、アスパラギン酸、トリプトファン、セリン、シトルリン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン又はトレオニンである。好ましくは、前記アミノ酸単位は塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、前記アミノ酸単位はリジン、アルギニン、オルニチン又はヒスチジンである。
【0033】
本発明のもう1つの好適な実施態様において、前記分岐型ポリアミノ酸は、2種類以上のアミノ酸単位を共重合して得られ、共重合単位には、少なくとも1種類又は2種類以上の官能価≧3のアミノ酸を含み、アミノ酸単位に占める前記官能価≧3のアミノ酸単位の割合をδすると、0<δ≦100%である。
【0034】
共重合過程において、前記官能価≧3のアミノ酸単位は、分岐構造をポリアミノ酸に付与する。
【0035】
前記共重合アミノ酸単位は、好ましくはグルタミン酸、リジン、オルニチン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トリプトファン、アスパラギン酸、シトルリン、トレオニン、チロシン又はシステインであり、好ましくは、前記アミノ酸単位において、少なくとも1種類の塩基性アミノ酸単位を含む。より好ましくは、前記アミノ酸単位において、少なくともリジン、オルニチン、アルギニン及びヒスチジンのうちの1種又は2種以上を含む。
【0036】
本発明の幾つかの具体的な実施例において、前記分岐型ポリアミノ酸は、アルギニンとアラニンとを共重合して得られるか、あるいはオルニチンとロイシンとを共重合して得られるか、あるいはリジンとアラニンとを共重合して得られるか、あるいはヒスチジンとフェニルアラニンとを共重合して得られるか、あるいはリジンとアルギニンとを共重合して得られる。より好ましくは、共重合モノマーは、アルギニンとアラニンとの組合せ、オルニチンとロイシンとの組合せ、リジンとアラニンとの組合せ、ヒスチジンとフェニルアラニンとの組合せ、オルニチンと6-アミノヘキサン酸との組合せ、リジンとアルギニンとの組合せ、フェニルアラニンとアラニンとリジンとの組合せ、アルギニンとセリンとの組合せ、アルギニンとグルタミン酸との組合せ、及びヒスチジンとセリンとの組合せから選択される。
【0037】
共重合して得られた分岐型ポリアミノ酸において各モノマーのモル比について、アミノ酸単位に占める官能価≧3のアミノ酸単位の割合(δ)が0超100%以下、すなわち、0<δ≦100%であることが要求される。好ましくは、2種類のアミノ酸単位を共重合して得られた共重合アミノ酸について、2種類のアミノ酸単位のモル比が0.1:10~10:0.1の範囲内にある。3種類のアミノ酸単位を共重合して得られた共重合アミノ酸について、アミノ酸単位のモル比が0.1~10:0.1~10:0.1~10の範囲内にある。
【0038】
本発明は、前記分岐型ポリアミノ酸の調製方法に対して特に限定せず、当業者がよく知っている方法に従い調製することができ、好ましくは下記の方法に従い調製する。
【0039】
アミノ酸を混合し、不活性ガス雰囲気において、25~250℃で1min~96h反応させ、分岐型ポリアミノ酸を得る。
前記不活性ガスは、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスである。
前記反応温度は、好ましくは150~200℃であり、反応時間は好ましくは30min~24h、より好ましくは2h~12hである。
【0040】
ポリアミノ酸の分岐構造により、当該物質は、多くの活性官能基を有することとなり、さらに修飾されることが可能であり、良好な生体適合性を有し、かつ、該抗微生物剤は、長期間使用しても薬物耐性が発生しない。
【0041】
本発明は、好ましくは、前記ポリアミノ酸に対して下記のいずれか1種又は2種以上の変性を行う。
I.アミノ基又はアミド基におけるアミノ基が下記の基に変性される。
【0042】
【化5】
【0043】
II.ヒドロキシ基が-OR又は-OC(=O)Rに変性される。
III.メルカプト基が-SRに変性される。
IV.カルボキシ基が-C(=O)NHR又は-C(=O)ORに変性される。
V.グアニジル基が、式V-1で示される基に変性される。
VI.含窒素複素環基におけるNHがNRに変性される。
式V-1
【0044】
【化6】
【0045】
[式中、X、Y、Z、Qは、独立にして水素原子、C1~C18のアルキル基及びその誘導体、C6~C30のアリール基及びその誘導体、C3~C18のシクロアルキル基及びその誘導体、C2~C18のアルケニル基及びその誘導体、C2~C18のアルキニル基及びその誘導体、C1~C18のアルコキシ基及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、アミン及びその誘導体、含窒素複素環及びその誘導体、含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択される。
【0046】
、R、R、R、R、Rは、独立にしてH、C1~C18のアルキル基及びその誘導体、C6~C30のアリール基及びその誘導体、C3~C18のシクロアルキル基及びその誘導体、C2~C18のアルケニル基及びその誘導体、C2~C18のアルキニル基及びその誘導体、C1~C18のアルコキシ基及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、アミン及びその誘導体、含窒素複素環及びその誘導体、含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択され、かつR、R、R、RはHではない。]
【0047】
上記誘導体は、好ましくはC1~C5のアルキル置換基、C1~C5のアルコキシ置換基、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、C5~C8のアリール基、C5~C8のヘテロアリール基、C3~C5のシクロアルキル基、カルボキシ基、アミノ基、アミド置換基、あるいはいずれか1つ又は複数のC原子がO又はSにより置換されたものから選択される。
【0048】
より好ましくは、前記X、Y、Z、Qは、独立にして水素原子、C1~C3のアルキル基、C6~C8のアリール基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C3のアルコキシ基、C2~C5の含窒素複素環、C2~C5の含酸素複素環、又はC2~C5の含硫黄複素環から選択される。
【0049】
、R、R、R、R、Rは、独立にしてC1~C3のアルキル基、C6~C8のアリール基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C3のアルコキシ基、C2~C5の含窒素複素環、C2~C5の含酸素複素環、又はC2~C5の含硫黄複素環から選択される。
【0050】
本発明の幾つかの具体的な実施例において、X、Y、Z、Q、R、R、R、R、R、Rは、独立にして水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、アセチル基、ホルミル基等から選択される。
【0051】
本発明は、上記含窒素複素環基におけるN原子の数に対して特に限定せず、本分野でよく知られている含窒素複素環であってもよく、N原子の数は、1~3個であってもよいが、これに限定されない。変性されるN原子は、全てのN原子であってもよいし、1個又は2個のN原子の変性であってもよい。
【0052】
本発明の幾つかの具体的な実施例において、前記含窒素複素環基はイミダゾリル基であって、式VI-1で示される基に変性される。
式VI-1
【0053】
【化7】
【0054】
上記X、Yの範囲は上記と同じであり、ここではその説明を省略する。
好ましくは、本発明のポリアミノ酸は、グアニジル基で変性され、4級アンモニウム塩で変性され、アセチル基で変性され、エーテル基で変性され、メチルエステルで変性され、又はヒドロキシ基で変性されたポリアミノ酸(単独重合又は共重合アミノ酸)であってもよく、より好ましくは、グアニジル基で変性された超分岐型ポリオルニチン、4級アンモニウム塩で変性された超分岐型ポリオルニチン、アセチル基で変性された超分岐型ポリリジン、グアニジル基で変性されたε-ポリリジン、グアニジル基で変性されたα-ポリリジン、エーテル基で変性されたポリ(アルギニン-セリン)、メチルエステルで変性されたポリ(アルギニン-グルタミン酸)、ヒドロキシ基で変性されたポリ(オルニチン-システイン)、エーテル基で変性されたポリ(ヒスチジン-セリン)、グアニジル基で変性されたポリ(オルニチン-ロイシン)、グアニジル基で変性されたポリ(リジン-アラニン)及び4級アンモニウム塩で変性されたポリ(リジン-アラニン)からなる群より選ばれる。
【0055】
上記変性は、ポリアミノ酸の抗菌性能を向上させ、溶血率及び細胞毒性を低下させることができる。
【0056】
本発明は、上記の変性方法に対して特に限定せず、当業者がよく知っている公知の方法を用いればよい。
【0057】
本発明において、好ましくは、前記抗微生物剤は補助剤をさらに含んでもよく、前記補助剤の含有量が、好ましくは0~99wt%である。
【0058】
本発明は、前記補助剤の種類に対して特に限定せず、当業者がよく知っている、抗微生物剤に適した補助剤であってもよい。
【0059】
前記の抗微生物剤補助剤は、好ましくは[i]金属、金属イオン、金属塩及びその酸化物等の無機抗微生物剤と、[ii]有機金属類、有機ハロゲン化物、グアニジン類、有機ニトロ化合物類、有機リン及び有機砒素類、フラン及びその誘導体類、ピロール類、イミダゾール類、アニリド類、チアゾール及びその誘導体類、4級アンモニウム塩類等の有機抗微生物剤と、[iii]天然抗菌ペプチド類及び高分子糖類等の天然抗微生物剤のうちの1種又は2種以上と、[iv]グリセリン、PEG、高分子糖類、ポリペプチド類、プラスチック、セラミック、ガラス、アパタイト、樹脂、繊維、ゴム等の無毒性添加剤又は担体と、を含む。
【0060】
より好ましくは、前記抗微生物剤補助剤は、金属Ti、Ag、Cu2+、Fe3+、Zn2+、4級アンモニウム塩、ハロアミン、ポリビグアニド類、ハロゲン化フェノール、キトサン、プロタミン及び天然抗菌ペプチド等のうちの1種又は2種以上である。
【0061】
本発明の幾つかの具体的な実施例において、前記補助剤は、ポリヘキサメチレンビグアニジンである。
【0062】
本発明は、前記抗微生物剤の剤型に対して特に限定せず、固体、溶液、懸濁液、エマルジョン、ヒドロゲル、オイルゲル、エアロゾル、固体の表面に塗布又はグラフトした状態、他の材料とブレンドした状態のうちの1種又は2種以上の状態で使用することができる。
【0063】
本発明は前記抗微生物剤の調製方法に対して特に限定せず、分岐型ポリアミノ酸と補助剤とを混合すればよい。
【0064】
前記混合過程は、溶媒を使用してもよいし、溶媒を使用しなくてもよい。前記溶媒は水又は有機溶媒であってもよい。
【0065】
前記有機溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、酢酸エチル、n-ヘプタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、アセトニトリル、石油エーテル、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ジオキサン、ジメチルスルホシキド、キシレン、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、アセトン及びイオン液体のうちの1種又は2種以上である。
【0066】
本発明が提供する上記抗微生物剤の調製プロセスは簡単であり、装置に対する要求が低く、操作しやすく、しかも、材料が入手しやすく、コストが低く、産業化応用の見込みがあり、かつ、広域スペクトルの抗菌性を有する。
【0067】
本発明は、さらに上記抗微生物剤の抗菌分野への使用を提供し、抗菌範囲に対して特に限定せず、当業者がよく知っている抗菌範囲であってもよい。
【0068】
前記抗菌範囲は、好ましくは、細菌、ウイルス、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、クラミジア、スピロヘータのうちの1種又は2種以上の抑制への使用を含む。
上記抗微生物剤は、当業者がよく知っている様々な使用分野に適用可能であり、特に限定しない。
【0069】
前記使用分野は、好ましくは、食品、化粧品、医療用品、健康食品などの分野である。
【0070】
例えば、食品防腐剤、食品鮮度保持剤、化粧品添加剤、口内洗浄剤、消毒液、多機能ケア液、点眼液における防腐剤、プール消毒剤に適用可能であり、歯磨剤、顔洗浄剤、手の洗剤、消毒石鹸、野菜果物貯蔵用の消毒防腐剤等にも適用可能である。
【0071】
従来技術と比べて、本発明は、分岐型ポリアミノ酸を含む分岐型ポリアミノ酸抗微生物剤を提供し、前記分岐型ポリアミノ酸は1種類のアミノ酸単位を単独重合して得られるか、あるいは2種類以上のアミノ酸単位を共重合して得られ、前記アミノ酸単位は式Iで示される一般構造式を有する。本発明が用いる原料はアミノ酸であり、毒性がなく、副作用がなく、環境にやさしい新規な抗微生物剤であり、使用者に受けられやすい。特に、ポリアミノ酸の分岐構造により、当該物質は、多くの活性官能基を有することとなり、さらに修飾されることが可能であり、良好な生体適合性を有し、かつ当該抗微生物剤は長期間使用しても薬物耐性が発生しない。
本発明には、次の態様が含まれる。
[1]
分岐型ポリアミノ酸を含み、
前記分岐型ポリアミノ酸は、1種類のアミノ酸単位を単独重合して得られるか、あるいは、2種類以上のアミノ酸単位を共重合して得られ、
前記アミノ酸単位は、式Iで示される一般構造式又はその塩を有する、分岐型ポリアミノ酸抗微生物剤。
式I
【化1】
[式中、a、b、c、d、e及びfは、独立にして0~6の整数であり、かつ、1≦a+b+c+d+e+f≦20であり、好ましくはa+b+c+d+e+f≦10である。
、T 、T 、T 、T 及びT は、独立にして水素原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基、C1~C18のアルキル基及びその誘導体、C6~C30のアリール基及びその誘導体、C3~C8のシクロアルキル基及びその誘導体、C2~C8のアルケニル基及びその誘導体、C2~C8のアルキニル基及びその誘導体、C1~C8のアルコキシ基及びその誘導体、C1~C8のアルキルチオ基及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、アミン及びその誘導体、含窒素複素環及びその誘導体、含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択される。]
[2]
前記分岐型ポリアミノ酸は、アミノ酸単位を単独重合して得られ、前記アミノ酸単位のT 、T 、T 、T 、T 、T のうちの少なくとも1つが、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、C2~C8のアルケニル基及びその誘導体、C2~C8のアルキニル基及びその誘導体、C1~C8のアルコキシ基及びその誘導体、C1~C8のアルキルチオ基及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、アミン及びその誘導体、含窒素複素環及びその誘導体、含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択される、項1に記載の抗微生物剤。
[3]
前記分岐型ポリアミノ酸は、2種類以上のアミノ酸単位を共重合して得られ、少なくとも1つの前記アミノ酸単位においてT 、T 、T 、T 、T 、T のうちの少なくとも1つが、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、C2~C8のアルケニル基及びその誘導体、C2~C8のアルキニル基及びその誘導体、C1~C8のアルコキシ基及びその誘導体、C1~C8のアルキルチオ基及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、アミン及びその誘導体、含窒素複素環及びその誘導体、含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択される、項1に記載の抗微生物剤。
[4]
前記T 、T 、T 、T 、T 及びT は、独立にして下記のいずれかの構造から選択される、項1~3のいずれか1項に記載の抗微生物剤。
【化2】
[式中、gは0~10の整数である。ただし、xx、yy、zzは、独立にして水素原子、C1~C18のアルキル基、C6~C30のアリール基、C3~C18のシクロアルキル基、カルボニル基誘導体から選択される。hhは、独立にして水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン、C1~C18のアルキル基、C6~C30のアリール基、C3~C18のシクロアルキル基、アミン及びその誘導体、アルコキシ基誘導体、アルキルメルカプト基誘導体から選択される。ii、jj、kkは、独立にして水素原子、C1~C18のアルキル基、C6~C30のアリール基、C3~C18のシクロアルキル基、アルコキシ基及びその誘導体から選択される。oo、pp、qqは、独立にして水素原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1~C18のアルキル基、C6~C30のアリール基、C3~C18のシクロアルキル基、ハロゲン、アミン及びその誘導体、アルコキシ基誘導体、カルボニル基誘導体から選択される。rr、ttは、独立にして水素原子、C1~C18のアルキル基、C6~C30のアリール基、C3~C18のシクロアルキル基、アルキルチオ基誘導体、アルコキシ基誘導体、カルボニル基誘導体から選択される。uuは、独立にして下記化学式で表される構造のうちの1種又は2種以上から選択される。
2n+1-h (nは0~10の整数である)、C 2n-1-h (nは2~10の整数である)、C 2n-3-h (nは2~10の整数である)、C 2n-7-h (nは6~18の整数である)
〔ただし、hは、0~3の整数であり、Tは、独立にしてハロゲンのうちのいずれか1種又は2種以上から選択される。〕]
[5]
前記T 、T 、T 、T 、T 及びT は、独立にして下記のいずれかの構造から選択される、項1~4のいずれか1項に記載の抗微生物剤。
【化3】
[6]
前記分岐型ポリアミノ酸は、1種類のアミノ酸単位を単独重合して得られ、前記アミノ酸の官能価が≧3である、項1、2、4及び5のいずれか1項に記載の抗微生物剤。
[7]
前記アミノ酸単位は、グルタミン酸、リジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン、アスパラギン酸、トリプトファン、セリン、シトルリン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン又はトレオニンであり、好ましくは、前記アミノ酸単位は、リジン、アルギニン、オルニチン又はヒスチジンである、項6に記載の抗微生物剤。
[8]
前記分岐型ポリアミノ酸の共重合単位には、少なくとも1種類又は2種類以上の官能価≧3のアミノ酸を含み、アミノ酸単位全体に占める官能価≧3のアミノ酸単位の割合をδとし、0<δ≦100%である、項1、3、4及び5のいずれか1項に記載の抗微生物剤。
[9]
前記官能価≧3のアミノ酸単位は、グルタミン酸、リジン、オルニチン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トリプトファン、アスパラギン酸、シトルリン、トレオニン、チロシン又はシステインのうちの1種又は2種以上であり、好ましくは前記アミノ酸単位は、少なくともリジン、オルニチン、アルギニン及びヒスチジンのうちの1種又は2種以上を含む、項8に記載の抗微生物剤。
[10]
前記ポリアミノ酸に対して、下記のいずれか1種又は2種以上の変性を行った、項1に記載の抗微生物剤。
I.アミノ基又はアミド基におけるアミノ基が下記の基に変性される。
【化4】
II.ヒドロキシ基が-OR 又は-OC(=O)R に変性される。
III.メルカプト基が-SR に変性される。
IV.カルボキシ基が-C(=O)NHR 又は-C(=O)OR に変性される。
V.グアニジル基が、式V-1で示される基に変性される。
VI.含窒素複素環基におけるNHがNR に変性される。
式V-1
【化5】
[式中、X、Y、Z、Qは、独立にして水素原子、C1~C18のアルキル基及びその誘導体、C6~C30のアリール基及びその誘導体、C3~C18のシクロアルキル基及びその誘導体、C2~C18のアルケニル基及びその誘導体、C2~C18のアルキニル基及びその誘導体、C1~C18のアルコキシ基及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、アミン及びその誘導体、含窒素複素環及びその誘導体、含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択される。
、R 、R 、R 、R 、R は、独立にしてH、C1~C18のアルキル基及びその誘導体、C6~C30のアリール基及びその誘導体、C3~C18のシクロアルキル基及びその誘導体、C2~C18のアルケニル基及びその誘導体、C2~C18のアルキニル基及びその誘導体、C1~C18のアルコキシ基及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、アミノ基又はその誘導体、含窒素複素環及びその誘導体、含酸素複素環及びその誘導体、又は含硫黄複素環及びその誘導体から選択され、かつR 、R 、R 、R はHではない。]
[11]
前記X、Y、Z、Qは、独立にして水素原子、C1~C3のアルキル基、C6~C8のアリール基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C3のアルコキシ基、C2~C5の含窒素複素環、C2~C5の含酸素複素環又はC2~C5の含硫黄複素環から選択され、
、R 、R は、独立にしてC1~C3のアルキル基、C6~C8のアリール基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C3のアルコキシ基、C2~C5の含窒素複素環、C2~C5の含酸素複素環又はC2~C5の含硫黄複素環から選択される、項10に記載の抗微生物剤。
[12]
前記分岐型ポリアミノ酸の数平均分子量範囲が500g/mol~500,000g/molである、項1~11のいずれか1項に記載の抗微生物剤。
[13]
補助剤をさらに含んでもよい、項1に記載の抗微生物剤。
[14]
前記抗微生物剤は、固体、溶液、懸濁液、エマルジョン、ヒドロゲル、オイルゲル、又はエアロゾル、固体の表面に塗布又はグラフトする状態、他の材料とブレンドする状態のうちの1種又は2種以上の状態で使用される、項1に記載の抗微生物剤。
[15]
項1~14のいずれか1項に記載の抗微生物剤の、細菌、ウイルス、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、クラミジア、スピロヘータのうちの1種又は2種以上への使用。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、本発明の実施例2で調製した分岐化ポリリジンの核磁気共鳴水素スペクトルである。
図2図2は、本発明の実施例10で調製した分岐化ポリアルギニンの核磁気共鳴水素スペクトルである。
図3図3は、本発明の実施例25で調製した分岐型ポリアミノ酸の核磁気共鳴水素スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明をさらに説明するために、以下、実施例を参照しながら、本発明が提供する分岐型ポリアミノ酸抗微生物剤及びその使用を詳しく説明する。別途説明がない限り、下記実施例において用いる反応原料はいずれも市販品であり、いずれもShanghai Aladdin Bio-Chem Technology Co., LTD、Sigma-Aldrich Co.LLC、J&K Scientific Ltd.、Shanghai Macklin Biochemical Technology Co.,Ltd、又はSinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.から購入される。
【0074】
下記の実施例においてポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定され、具体的な測定方法は次の通りである。ポリマーの分子量(M)及びその分布(PDI=M/M)を、Waters 2414示差屈折率検出器付きのWaters 2414ゲル浸透クロマトグラフィーシステムにより検出し、0.2M酢酸/0.1M酢酸ナトリウムを移動相として流速が0.6mL/minであり、温度35℃であり、標準品がポリエチレングリコールである。
【0075】
実施例1
100gのアルギニンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら4h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリアルギニン 82.7gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=2200g/mol、PDI=1.91であった。
【0076】
実施例2
91.32gのリジン塩酸塩及び28.05gのKOHを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、250℃で撹拌、加熱しながら1分間反応させた後、加熱を停止し、ポリマーをメタノールで溶解して濾過により塩を除去し、濃縮後にエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリリジン 84gを得た。生成物は淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=1100g/mol、PDI=1.81であった。
合成した分岐型ポリアミノ酸の核磁気共鳴水素スペクトルを図1に示す。
【0077】
実施例3
50gのセリン及び50mLのn-ヘキサノールを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガス雰囲気下で、190℃で撹拌、加熱しながら10h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをエタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリセリン 28.5gを得た。生成物は淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=7800g/mol、PDI=1.71であった。
【0078】
実施例4
91.32gのリジン塩酸塩、28.05gのKOH及び10mgの三酸化二アンチモンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら96h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解して濾過により塩を除去し、濃縮後にエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリリジン 55.5gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=500000g/mol、PDI=2.36であった。
【0079】
実施例5
80gのリジン、20gのリジン塩酸塩及び6.14gのKOHを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、100℃で撹拌、加熱しながら10h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをエタノールで溶解して濾過により塩を除去し、濃縮後にエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリリジン 68.5gを得た。生成物は、褐色固体粉末であり、GPC評価では、M=800g/mol、PDI=1.66であった。
【0080】
実施例6
50gのシステイン及び100mLのDMFを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガス雰囲気下で、180℃で撹拌、加熱しながら10h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリシステイン33.5gを得た。生成物は、黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=1900g/mol、PDI=2.07であった。
【0081】
実施例7
50gのグルタミン酸及び100mLのエチレングリコールを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガス雰囲気下で、200℃で撹拌、加熱しながら1分間反応させ、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリグルタミン酸 31.5gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=2100g/mol、PDI=1.86であった。
【0082】
実施例8
50gのアルギニン及び100mLのエチレングリコールを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガス雰囲気下で、150℃で撹拌、加熱しながら96h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解して酢酸エチル中で沈澱させ、超分岐型ポリアルギニン 34.5gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=1800g/mol、PDI=2.18であった。
【0083】
実施例9
100gのリジン及び0.1gのリン酸を500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、100℃で撹拌、加熱しながら96h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリリジン 78.5gを得た。生成物は、黄褐色固体粉末であり、GPC評価では、M=6800g/mol、PDI=1.97であった。
【0084】
実施例10
100gのアルギニン及び200gのエチレングリコールを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、Nで30minバブリングし、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、170℃で撹拌、加熱しながら8h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、エチレングリコールを分離し、ポリマーをエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリアルギニン 71.2gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=3100g/mol、PDI=1.78。
合成した分岐型ポリアミノ酸の核磁気共鳴水素スペクトルを図2に示す。
【0085】
実施例11
100gのヒスチジン及び200gのエチレングリコールを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、Nで30minバブリングし、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら24h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、エチレングリコールを分離し、ポリマーをエチルエーテルで5回洗浄し、超分岐型ポリヒスチジン 71.2gを得た。生成物は黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=1500g/mol、PDI=1.71であった。
【0086】
実施例12
100gのオルニチン及び50gの水を500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、150℃で撹拌、加熱しながら5時間反応させた後、加熱を停止し、ポリマーを粉砕し、超分岐型ポリリジン 87gを得た。生成物は褐色固体粉末であり、GPC評価では、M=3400g/mol、PDI=1.77であった。
【0087】
実施例13
2gの実施例10で得られた超分岐型ポリアルギニン及び0.2gの硝酸銀を5mLの水に溶解し、撹拌して均一に分散させ、その後、凍結乾燥し、2.18gの超分岐型ポリアルギニンと銀イオンとの混合物を得た。
【0088】
実施例14
100gのリジン及び50gの水を500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら5時間反応させた後、加熱を停止し、ポリマーを粉砕し、超分岐型ポリリジン 87gを得た。生成物は褐色固体粉末であり、GPC評価では、M=2400g/mol、PDI=1.77であった。
【0089】
実施例15
2gの実施例14で得られた超分岐型ポリリジン及び0.2gのキトサンを5mLの水に溶解し、撹拌して均一に分散させ、その後、凍結乾燥し、2.18gの超分岐型ポリリジンとキトサンとの混合物を得た。
【0090】
実施例16
100gのシトルリン及び50gの水を500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、190℃で撹拌、加熱しながら5時間反応させた後、加熱を停止し、ポリマーを水で溶解して二回蒸留水で透析し、超分岐型ポリシトルリン 57gを得た。生成物は淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=5700g/mol、PDI=1.27であった。
【0091】
実施例17
100gの(2S,3R,4S)-α-(カルボキシシクロプロピル)グリシン及び50gの水を500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら5時間反応させた後、加熱を停止し、ポリマーを粉砕し、超分岐型ポリアミノ酸 86.4gを得た。生成物は褐色固体粉末であり、GPC評価では、M=7500g/mol、PDI=1.87であった。
【0092】
実施例18
100gの5-アミノ-2-ヒドラジノペンタン酸(CAS: 60733-16-6)及び50gの水を500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら5時間反応させた後、加熱を停止し、ポリマーを粉砕し、超分岐型ポリアミノ酸 83.4gを得た。生成物は褐色固体粉末であり、GPC評価では、M=8400g/mol、PDI=1.94であった。
【0093】
実施例19
100gの 4-アミノ-3-ヒドロキシ酪酸及び50gの水を500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら5時間反応させた後、加熱を停止し、ポリマーをゲルカラムで分類し、超分岐型ポリアミノ酸 78.4gを得た。生成物は褐色固体粉末であり、GPC評価では、M=7300g/mol、PDI=1.48であった。
【0094】
実施例20
実施例1~19で調製された超分岐型ポリアミノ酸をそれぞれ36mg取り、3mLの無菌PBSで溶解し、12mg/mLの原液を得、下記の方法に従い超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の抗菌能力を測定し、一部の実験結果を表1に示す。
以下の実施例で用いた各種の菌株はいずれも中国食品薬品検定研究院から購入される。
96ウェルプレート法を用いて超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤に対して抗菌活性の検出を行い、発酵法で合成されたε-ポリリジンを対照として、得られた超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の抗菌能力を評価し、最小発育阻止濃度(MIC)は、対照群と比べて90%の細菌の増殖を抑制する最低ポリマー濃度と定義づけられている。
接種用ループを用いて寒天斜面培地から少量の菌種をピックアップして普通のMH培地に接種し、37℃で一晩培養して菌種を蘇生させて指数関数的増殖となるようにし、菌液の濃度を10CFU/mLとなるまで菌液を希釈し、1ウェル当たりに175μLの菌液及び25μLの異なる濃度のポリマー溶液を添加し、96ウェルプレートを37℃で20h培養し、マイクロプレートリーダーを用いてOD600値を検出した。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例21
実施例1~19で調製された超分岐型ポリアミノ酸をそれぞれ36mgとり、3mLの無菌PBSで溶解し、12mg/mLの原液を得、下記の方法に従い超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の体外溶血活性を測定し、一部の実験結果を表2に示す。
96ウェルプレート法を用いて超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤に対して体外溶血活性検出を行い、発酵法で合成されたε-ポリリジンを対照として、得られた超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の体外溶血活性を評価した。
2%(v/v)赤血球懸濁液の調製
健康な人間の新鮮な血を2mLとり、10mLの内毒素のないPBS緩衝液で希釈し、ガラスビーズを載せた三角フラスコ中に入れて10分間振とうし、あるいはガラス棒で血液を撹拌し、脱線維血となるように線維状タンパク質を除去し、20℃の条件で1000~1500r/minで10~15分間遠心し、上澄み液を除去し、沈殿した赤血球をさらにPBS緩衝液で上記の方法に従い上澄み液が赤色を示さないようになるまで4回洗浄した。得られた赤血球を生理食塩水で2%の懸濁液に配合し、その後の試験に用いる。
ポリマーをPBS緩衝液で希釈して異なる濃度の溶液に配合し、96ウェルプレートに添加し、単独のPBS緩衝液を陰性対照とし、水中で0.2%のTriton-X-100を溶解して体外溶血活性検出の陽性対照とし、洗浄した赤血球(2%v/v,50μL)を96ウェルプレートに添加し、十分に混合して培養した。マイクロプレートリーダーを用いて540nmにおける吸収を検出した。
【0097】
【表2】
【0098】
実施例22
本実施例は、超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の動物体内への急性毒性を検出して、さらに発酵法で合成されたε-ポリリジンを対照として、得られた超分岐型ポリアミノ酸系抗微生物剤の動物体内への急性毒性を評価するためのものである。
ハツカネズミ(Balb/Cハツカネズミ,吉林大学から購入)100匹、雌と雄をそれぞれ半分にし、体重21±3gであり、実施例1~19で調製された超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤をそれぞれ1mg/mLの投与量で、1日1回、15日連続してマウスに筋肉内注射し、マウスの毒性反応を観察した。実験結果から、21日連続して筋肉内注射した後、個別のマウスは生命力が低下した以外、残りのマウスはいずれも明らかな異常反応が見られず、かつ、全てのマウスも生存しており、得られた超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤は体内毒性が低いことを明らかにした。
【0099】
実施例23
80gのアルギニン及び20gのアラニンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、160℃で撹拌、加熱しながら5h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをエタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリアミノ酸 78.7gを得た。生成物は淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=3100g/mol、PDI=1.76であった。
【0100】
実施例24
50gのオルニチン、50gのロイシン及び10mgのトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウムを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら2h反応させた後、加熱を停止し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリアミノ酸 81.5gを得た。生成物は暗黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=500g/mol、PDI=1.82であった。
【0101】
実施例25
91.32gのリジン塩酸塩、28.05gのKOH及び20gのアラニンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら10h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、分岐型ポリアミノ酸 75.2gを得た。生成物は淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=14100g/mol、PDI=2.72であった。
合成した分岐型ポリアミノ酸の核磁気共鳴水素スペクトルを図3に示す。
【0102】
実施例26
90gのヒスチジン、10gのフェニルアラニン及び10mgの三塩化鉄を500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら2h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーを水で溶解してテトラヒドロフラン中で沈澱させ、超分岐型ポリアミノ酸 79.5gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=1100g/mol、PDI=1.62であった。
【0103】
実施例27
まず、80gのオルニチンを500mLの丸底フラスコ中に入れて、水分離器を接続し、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、190℃で撹拌、加熱しながら4h反応させて、その後、反応系に20gの6-アミノヘキサン酸を添加し、引き続いて4h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、コアーシェル構造の超分岐型ポリアミノ酸 82.3gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=11100g/mol、PDI=1.94であった。
【0104】
実施例28
91.32gのリジン塩酸塩、20gのNaOH及び20gのアラニンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら36h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリアミノ酸 74.8gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=81100g/mol、PDI=3.98であった。
【0105】
実施例29
91.32gのリジン塩酸塩、20gのNaOH及び20gのアラニンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、100℃で撹拌、加熱しながら96h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリアミノ酸 72.8gを得た。生成物は、暗黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=481100g/mol、PDI=2.21であった。
【0106】
実施例30
まず、91.32gのリジン塩酸塩及び20gのNaOHを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続し、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、250℃で撹拌、加熱しながら0.5h反応させ、その後、反応系に20gのアラニンを添加し、引き続いて0.5h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、コアーシェル構造の超分岐型ポリアミノ酸 73.1gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=1200g/mol、PDI=1.51であった。
【0107】
実施例31
50gのリジン及び50gのアルギニンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら4h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解して酢酸エチル中で沈澱させ、分岐型ポリアミノ酸 80.1gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=3200g/mol、PDI=1.73であった。
【0108】
実施例32
80gの (2S、3R、4S)-α-(カルボキシシクロプロピル)グリシン及び20gのアラニンを500mLの丸底フラスコに入れて、80gの二回蒸留水を添加して溶解させ、水分離器を接続し、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら5時間反応させた後、加熱を停止し、ポリマーを粉砕し、超分岐型ポリアミノ酸 86.4gを得た。生成物は、褐色固体粉末であり、GPC評価では、M=5000g/mol、PDI=1.88であった。
【0109】
実施例33
80gの5-アミノ-2-ヒドラジノペンタン酸(CAS:60733-16-6)及び20gのアラニンを500mLの丸底フラスコに入れて、80gの二回蒸留水を添加して溶解させ、水分離器を接続し、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、160℃で撹拌、加熱しながら10時間反応させた後、加熱を停止し、ポリマーを粉砕し、超分岐型ポリアミノ酸 84.5gを得た。生成物は、褐色固体粉末であり、GPC評価では、M=8700g/mol、PDI=1.92であった。
【0110】
実施例34
まず、20gのフェニルアラニン及び10gのアラニンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続し、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、100℃で撹拌、加熱しながら30h反応させ、その後、反応系に70gのリジン塩酸塩及び20gのKOHを添加し、引き続いて70h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、コアーシェル構造の超分岐型ポリアミノ酸 68.5gを得た。生成物は、淡黄色固体粉末であり、GPC評価では、M=6200g/mol、PDI=1.88であった。
【0111】
実施例35
80gの4-アミノ-3-ヒドロキシ酪酸及び20gのグリシンを500mLの丸底フラスコに入れて、80gの二回蒸留水を添加して溶解させ、水分離器を接続し、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、170℃で撹拌、加熱しながら12時間反応させた後、加熱を停止し、ポリマーを水に溶解し、テトラヒドロフラン中で沈澱させ、超分岐型ポリアミノ酸 84.5gを得た。生成物は、褐色固体粉末であり、GPC評価では、M=13700g/mol、PDI=1.72であった。
【0112】
実施例36
2gの実施例28で調製された超分岐型ポリアミノ酸及び2gのポリヘキサメチレンビグアニジンを5mLの水に溶解し、撹拌して均一に分散させ、その後、凍結乾燥し、4gの超分岐型ポリアミノ酸とポリヘキサメチレンビグアニジンとの混合物を得た。
【0113】
実施例37
2gの実施例24で調製された超分岐型ポリアミノ酸及び2gのポリヘキサメチレンビグアニジンを5mLの水に溶解し、撹拌して均一に分散させ、その後、凍結乾燥し、4gの超分岐型ポリアミノ酸とポリヘキサメチレンビグアニジンとの混合物を得た。
【0114】
実施例38
実施例23~37で調製された超分岐型ポリアミノ酸をそれぞれ36mg取り、3mLの無菌PBSで溶解し、12mg/mLの原液を得、下記の方法に従い超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の抗菌活性を測定し、実験結果を表3-1及び表3-2に示す。
以下の実施例で用いた各種の菌株はいずれも中国食品薬品検定研究院から購入されたものである。
96ウェルプレート法を用いて超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤に対して抗菌活性検出を行い、さらに発酵法で合成されたε-ポリリジンを対照として、得られた超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の抗菌能力を評価し、最小発育阻止濃度(MIC)は、対照群と比べて90%の細菌増殖を抑制する最低ポリマー濃度と定義づけられている。
接種用ループを用いて寒天斜面培地から少量の菌種をピックアップして普通のM-H培地に接種し、37℃で一晩培養して菌種を蘇生させて指数関数的増殖となるようにし、菌液の濃度を10CFU/mLとなるまで菌液を希釈して、1つのウェル当たりに175μLの菌液及び25μLの異なる濃度のポリマー溶液を添加し、96ウェルプレートを37℃で20h培養し、マイクロプレートリーダーを用いてOD600値を検出した。
【0115】
【表3-1】
【0116】
【表3-2】
【0117】
実施例39
実施例23~37調製された超分岐型ポリアミノ酸をそれぞれ36mg取り、3mLの無菌PBSで溶解し、12mg/mLの原液を得、下記の方法に従い超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の耐体外溶血活性を測定し、実験結果を表4-1及び表4-2に示す。
96ウェルプレート法を用いて超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤に対して体外溶血活性検出を行い、発酵法で合成されたε-ポリリジンを対照として、得られた超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の体外溶血活性を評価した。
2%(v/v)の赤血球懸濁液の調製
健康な人間の新鮮な血を2mL取り、10mLの内毒素のないPBS緩衝液で希釈し、ガラスビーズを載せた三角フラスコ中に入れて10分間振とうし、又はガラス棒で血液を撹拌し、脱線維血となるように線維状タンパク質を除去し、20℃の条件下で1000~1500r/minで10~15分間遠心し、上澄み液を除去し、沈殿した赤血球を、さらにPBS緩衝液で上記の方法に従い上澄み液が赤色を示さないようになるまで4回洗浄した。得られた赤血球を生理食塩水で2%の懸濁液に配合し、その後の試験に用いる。
ポリマーをPBS緩衝液で希釈して異なる濃度の溶液に配合し、96ウェルプレート中に添加し、単独のPBS緩衝液を陰性対照とし、水に0.2%のTriton-X-100を溶解して体外溶血活性検出の陽性対照とし、洗浄した赤血球(2%v/v,50μL)を96ウェルプレートに添加し、十分に混合させて培養した。マイクロプレートリーダーを用いて540nmにおける吸収を検出した。
【0118】
【表4-1】
【0119】
【表4-2】
【0120】
実施例40
本実施例は、超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の動物体内急性毒性を検出して、発酵法で合成されたε-ポリリジンを対照として、得られた超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤の動物体内への急性毒性を評価するためのものである。
ハツカネズミ(Balb/Cハツカネズミ,吉林大学から購入)100匹、雌と雄をそれぞれ半分にし、体重21±3gであり、実施例23~37で調製された超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤をそれぞれ1mg/mLの投与量で、1日1回、15日連続してマウスに筋肉内注射し、マウスの毒性反応を観察した。実験結果から、15日連続して筋肉内注射した後、個別のマウスは生命力が低下した以外、残りのマウスはいずれも明らかな異常反応が見られず、かつ、全てのマウスも生存しており、得られた超分岐型ポリアミノ酸系抗菌剤は体内毒性が低いことを明らかにした。
【0121】
実施例41
100gのオルニチンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら4h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリオルニチン 82.7gを得た。
【0122】
実施例42
2gの実施例41で得られた超分岐型ポリオルニチンを加熱して20mLのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、5gのヨウ化メチルを添加し、80℃で撹拌しながら24h反応させ、その後、加熱を停止し、室温まで冷却し、酢酸エチル中で沈澱させ、4級アンモニウム塩で変性された超分岐型ポリオルニチン 2.4gを得た。
【0123】
実施例43
91.32gのリジン塩酸塩、20gのNaOHを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら6h反応させた後、加熱を停止し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、超分岐型ポリリジン 72.8gを得た。
【0124】
実施例44
2gの実施例43で得られた超分岐型ポリリジンを5mLのメタノール中に溶解し、0℃の条件下で塩化アセチルをゆっくり滴下し、室温に昇温して引き続いて12h反応させ、その後、酢酸エチル中で沈澱させ、アセチル基で変性された超分岐型ポリリジン 2.3gを得た。
【0125】
実施例45
2gの実施例41で得られた超分岐型ポリオルニチンを5mLのメタノール中に溶解し、4.8gのS-メチルイソチオ尿素ヘミ硫酸塩及び5mLのトリエチルアミンを添加し、60℃で12h反応させた後、加熱を停止し、室温まで冷却し、酢酸エチル中で沈澱させ、グアニジル基で変性された超分岐型ポリオルニチン 2.1gを得た。
【0126】
実施例46
2gのε-ポリリジンを5mLの水中に溶解し、5.1gの1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩及び5mLのトリエチルアミンを添加し、60℃で12h反応させ、その後、加熱を停止し、室温まで冷却し、酢酸エチル中で沈澱させ、グアニジル基で変性されたε-ポリリジン 2.2gを得た。
【0127】
実施例47
5.6gのN-ベンジルオキシカルボニルリジンを秤量して250mLの三つ口フラスコに入れて、100mLのテトラヒドロフランを添加し、撹拌して分散させた。2.5gのトリホスゲンを慎重に秤量して30mLのテトラヒドロフラン中に溶解し、窒素ガスの保護下で反応系にゆっくり滴下し、溶液が完全に澄むようになるまで撹拌しながら3h還流した。反応終了後、多量のn-ヘキサン沈殿を添加して粗生成物を得、テトラヒドロフラン-n-ヘキサン系で2回再結晶させ、真空乾燥させて4.96gの生成物を得、収率が88.6%であった。DMFを溶媒として、n-ブチルアミンを開始剤としてリジンNCAの開環を進行させ、α-ポリリジンを得た。
【0128】
実施例48
実施例47で得られたα-ポリリジン 2gを5mLの水中に溶解し、5.1gの1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩及び5mLのトリエチルアミンを添加し、60℃で12h反応させた後、加熱を停止し、室温まで冷却し、酢酸エチル中で沈澱させ、グアニジル基で変性されたα-ポリリジン 2.3gを得た。
【0129】
実施例49
80gのアルギニン及び20gのセリンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら4h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、分岐型ポリアミノ酸 81.2gを得た。
【0130】
実施例50
2gの実施例49で得られたポリアミノ酸を20mLのメタノール中に溶解し、0.5gのp-トルエンスルホン酸を添加し、10h加熱還流し、ポリマーをエチルエーテル中で沈澱させ、エーテル基で変性されたポリアミノ酸 2.2gを得た。
【0131】
実施例51
80gのアルギニン及び20gのグルタミン酸を500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら4h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、分岐型ポリアミノ酸 80.2gを得た。
【0132】
実施例52
2gの実施例51で得られたポリアミノ酸を20mLの無水メタノール中に溶解し、0.9gの1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド・塩酸塩(EDCI)及び0.1gの4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を添加し、室温で10h撹拌し、ポリマーをエチルエーテル中で沈澱させ、メチルエステルで変性されたポリアミノ酸 2.1gを得た。
【0133】
実施例53
80gのオルニチン及び20gのシステインを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら4h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、分岐型ポリアミノ酸 80.2gを得た。
【0134】
実施例54
2gの実施例53で得られたポリアミノ酸を20mLの無水DMF中に溶解し、アルゴンガスを導入して30min酸素ガス除去を行い、0.9gのプロパルギルアルコール及び0.1gのDMAPを添加し、室温で10min撹拌した。反応混合物を紫外線(365nm)照射の条件で室温で120min反応させ、その後、ポリマーをエチルエーテル中で沈澱させ、ヒドロキシ基で変性されたポリアミノ酸 2.1gを得た。
【0135】
実施例55
80gのヒスチジン及び20gのセリンを500mLの丸底フラスコに入れて、水分離器を接続して、窒素ガスで3回置換し(1回当たり10分間超え)、最後に窒素ガス雰囲気を維持し、180℃で撹拌、加熱しながら4h反応させた後、加熱を停止し、その後、反応系を室温まで冷却し、ポリマーをメタノールで溶解してエチルエーテル中で沈澱させ、分岐型ポリアミノ酸 80.2gを得た。
【0136】
実施例56
2gの実施例55で得られたポリアミノ酸を20mLのメタノール中に溶解し、0.5gのp-トルエンスルホン酸を添加し、10h加熱還流し、ポリマーをエチルエーテル中で沈澱させ、エーテル基で変性されたポリアミノ酸 2.2gを得た。
【0137】
実施例57
実施例41~56で調製されたポリアミノ酸をそれぞれ36mg取り、3mLの無菌PBSで溶解し、12mg/mLの原液を得、下記の方法に従いポリアミノ酸系抗菌剤の抗菌活性を測定し、一部の実験結果を表5-1及び表5-2に示す。
下記の実施例が用いた各種の菌株はいずれも中国食品薬品検定研究院から購入される。
96ウェルプレート法を用いてポリアミノ酸系抗菌剤に対して抗菌活性検出を行い、発酵法で合成されたε-ポリリジン(M=4000g/mol)を対照として、得られたポリアミノ酸系抗菌剤の抗菌能力を評価し、最小発育阻止濃度(MIC)は、対照群と比べて、90%の細菌増殖を抑制する最低ポリマー濃度と定義づけられている。
接種用ループを用いて寒天斜面培地から少量の菌種をピックアップして普通のM-H培地に接種し、37℃で一晩培養して菌種を蘇生させて指数関数的増殖となるようにし、菌液を希釈して菌液の濃度を10CFU/mLとし、1ウェル当たりに175μLの菌液及び25μLの異なる濃度のポリマー溶液を添加し、96ウェルプレートを37℃で20h培養し、マイクロプレートリーダーを用いてOD600値を検出した。
【0138】
【表5-1】
【0139】
【表5-2】
【0140】
実施例58
実施例41~56で調製されたポリアミノ酸をそれぞれ36mg取り、3mLの無菌PBSで溶解し、12mg/mLの原液を得、下記の方法に従いポリアミノ酸系抗菌剤の耐体外溶血活性を測定し、一部の実験結果を表6-1及び表6-2に示す。
96ウェルプレート法を用いてポリアミノ酸系抗菌剤に対して体外溶血活性を検出し、発酵法で合成されたε-ポリリジンを対照として、得られたポリアミノ酸系抗菌剤の体外溶血活性を評価した。
2%(v/v)の赤血球懸濁液の調製
健康な人間の新鮮な血を2mL取り、10mLの内毒素のないPBS緩衝液で希釈し、ガラスビーズを載せた三角フラスコに入れて10分間振とうし、あるいはガラス棒で血液を撹拌し、脱線維血となるように線維状タンパク質を除去し、20℃の条件下で1000~1500r/minで10~15分間遠心し、上澄み液を除去し、沈殿した赤血球をさらにPBS緩衝液で上記の方法に従い上澄み液が赤色を示さないようになるまで4回洗浄した。得られた赤血球を生理食塩水で2%の懸濁液に配合し、その後の試験に用いる。
ポリマーをPBS緩衝液で希釈して異なる濃度の溶液に配合し、96ウェルプレートにおいて、単独のPBS緩衝液を陰性対照とし、水中に0.2%のTriton-X-100を体外溶血活性検出の陽性対照として溶解し、洗浄した赤血球(2%v/v,50μL)を96ウェルプレート中に入れて、十分に混合させて培養した。マイクロプレートリーダーを用いて540nmにおける吸収を検出した。
【0141】
【表6-1】
【0142】
【表6-2】
【0143】
実施例59
本実施例は、ポリアミノ酸系抗菌剤の動物体内への急性毒性を検出し、発酵法で合成されたε-ポリリジンを対照として、得られたポリアミノ酸系抗菌剤の動物体内急性毒性を評価するためのものである。
ハツカネズミ(Balb/Cハツカネズミ,吉林大学から購入)100匹、雌と雄をそれぞれ半分にし、体重21±3gであり、実施例41~56で調製されたポリアミノ酸系抗菌剤を取って1mg/mLの投与量で、1日1回、15日連続してマウスに対して筋肉内注射を行い、マウスの毒性反応を観察した。実験結果から、15日連続して筋肉内注射した後、個別のマウスは生命力が低下した以外、残りのマウスはいずれも明らかな異常反応が見られず、かつ、全てのマウスも生存しており、得られたポリアミノ酸系抗菌剤は体内毒性が低いことを明らかにした。
【0144】
実施例60
窒素ガス入り口、撹拌器及び温度計を備えた三口フラスコ中に50mLのスチレン、50mLのクロロメチルスチレン及びアゾビスイソブチロニトリル(スチレンとクロロメチルスチレンがいずれも中性アルミナカラムを通過して重合禁止剤を除去した)を添加し、撹拌してNを導入して30minバブリングし、窒素ガス雰囲気を維持しながら、70℃で24h反応させ、反応終了後、系をエタノール中に沈降してクロロメチル化ポリスチレンを得た。
反応フラスコ中に5gのクロロメチル化ポリスチレン、0.5gの実施例14で調製された超分岐型ポリリジン、及び30mLの蒸留水を添加し、Nで30minバブリングした後にフラスコを封じ、窒素ガス雰囲気下で120℃で10h反応させた。濾過して大量の蒸留水で固形試料を洗浄し、超分岐型ポリリジンで修飾されたポリスチレン(HBPL-PS)を得、HBPL-PSを高温で2cm×1.5cmの試料膜にプラスして抗菌測定に用いる。
本発明者は、大腸菌及び黄色ブドウ球菌を用いて材料の耐細菌粘着性能について検討した。まず、大腸菌(ATCC8739)と黄色ブドウ球菌(ATCC25923)をそれぞれLB及びTSB培地中で37℃で24h培養した。その後、細菌含有の培地を2700rmpで10min遠心し、上層液を除去し、改めて濃度が1×10個細菌/mLとなるまで懸濁させた。試料膜を48ウェルプレート中に移行し、それぞれ1mLの細菌懸濁液を添加して1h粘着した後に培養液を吸い出し、その後、大腸菌を0.5%(wt/vol)のグルコースシロップ培地で、黄色ブドウ球菌をTSB培地で引き続いて37℃で4h静的培養した。細菌が粘着された試料膜を1mLの新鮮な無菌PBS溶液中に入れて超音波で1min洗浄して細菌を表面から脱粘着する。細菌含有のPBS溶液を一定の倍数で希釈し、固体培地上に塗布した。37℃で一晩培養した後、固体培地の表面に形成された細菌コロニーに対してカウント統計を行った。対照群ポリスチレン(PS)と比べて、大腸菌及び黄色ブドウ球菌のHBPL-PS表面における細菌粘着量がそれぞれ~95.5%及び~98.8%低下した。
図1
図2
図3