(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】レジストパターンの形成に用いられる樹脂組成物、及び半導体製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 93/04 20060101AFI20230608BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230608BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20230608BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230608BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C08L93/04
C08K3/013
C08L71/02
C08K5/13
C08K5/18
(21)【出願番号】P 2020563286
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050511
(87)【国際公開番号】W WO2020138034
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2018245160
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】兼松 正典
(72)【発明者】
【氏名】玉井 仁
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-170165(JP,A)
【文献】特開平09-104730(JP,A)
【文献】特表2009-539252(JP,A)
【文献】特開2011-039259(JP,A)
【文献】特開2012-194521(JP,A)
【文献】特開2012-194523(JP,A)
【文献】特開平06-157875(JP,A)
【文献】特開平11-209625(JP,A)
【文献】特開2007-201482(JP,A)
【文献】特開2010-043228(JP,A)
【文献】特開2018-050005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーと、酸無水物化合物とを含み、
前記バインダーとして、ロジンエステル樹脂を含有するバインダー樹脂を含み、
前記酸無水物化合物が、炭素原子数6以上の脂肪族炭化水素基と、カルボン酸無水物基とを有する、レジストパターンの形成に用いられる樹脂組成物。
【請求項2】
フィラー、界面活性剤、及び酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記フィラー、前記界面活性剤、及び前記酸化防止剤を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を含み、前記アニオン性界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体を含む、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体が、スルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸塩基、カルボン酸塩基、及びリン酸塩基からなる群より選択される1以上の基を有する、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物に含まれる溶剤以外の成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下の前記界面活性剤を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、及び硫黄系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を前記酸化防止剤として含む、請求項2~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物に含まれる溶剤以外の成分の質量の合計100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の前記酸化防止剤を含む、請求項2~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
印刷法によるレジストパターンの形成に用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記レジストパターンが酸化剤に接触して使用される、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記レジストパターンを備える半導体基板を、前記酸化剤と接触させる酸化剤接触工程と、
前記酸化剤と接触した後のレジストパターンを、塩基性剥離液により前記半導体基板から剥離する剥離工程と、を含む半導体製品の製造方法において、前記レジストパターンの形成に用いられる、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記半導体製品がバックコンタクト型太陽電池であって、
前記半導体基板が、少なくとも一方の表面において、第1半導体層としてのp型半導体層又はn型半導体層を最表面に備え、且つ、前記第1半導体層に接して真性半導体層を備え、
前記レジストパターンが、前記第1半導体層上に、直接形成され、
前記レジストパターンを備える前記半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、前記レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の前記第1半導体層と、前記真性半導体層とを除去し、
前記第1半導体層と、前記真性半導体層との除去の後に、前記レジストパターンが剥離され、
前記レジストパターンの剥離後に、前記第1半導体層と、前記真性半導体層とが除去された空間において、前記真性半導体層を形成し、次いで、前記第1半導体層とは逆の極性である第2半導体層を形成する、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記半導体製品がバックコンタクト型太陽電池であって、
前記半導体基板が、少なくとも一方の表面側において、第1半導体層としてのp型半導体層又はn型半導体層を備え、且つ、前記第1半導体層に接して真性半導体層を備え、
前記レジストパターンが、前記第1半導体層上に、リフトオフ層を介して形成され、
前記レジストパターンを備える前記半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、前記レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の前記リフトオフ層を除去し、
前記リフトオフ層の除去の後に、前記レジストパターンの剥離と、前記レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の前記第1半導体層のエッチングによる除去と、が行われ、
前記第1半導体層が除去された空間の底面及び側面と、前記リフトオフ層上とを被覆するように、前記第1半導体層とは逆の極性である第2半導体層を形成し、
前記リフトオフ層の除去にともない、前記リフトオフ層に接触して位置していた前記第2半導体層を除去する、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
バインダーとして、ロジンエステル樹脂を含有するバインダー樹脂を含む樹脂組成物を用いて、半導体基板の表面に、印刷法、又はフォトリソグラフィー法によ
りレジストパターンを形成する、レジストパターン形成工程と、
前記レジストパターンを備える前記半導体基板を、酸化剤と接触させる酸化剤接触工程と、
前記酸化剤と接触した後の前記レジストパターンを、塩基性剥離液により剥離する剥離工程と、を含む半導体製品の製造方法。
【請求項15】
前記半導体製品としてバックコンタクト型太陽電池を製造する、前記半導体製品の製造方法であって、
前記半導体基板が、少なくとも一方の表面において、第1半導体層としてのp型半導体層又はn型半導体層を最表面に備え、且つ、前記第1半導体層に接して真性半導体層を備え、
前記レジストパターンが、前記第1半導体層上に、直接形成され、
前記レジストパターンを備える前記半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、前記レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の前記第1半導体層と、前記真性半導体層とを除去し、
前記第1半導体層と、前記真性半導体層との除去の後に、前記レジストパターンが剥離され、
前記レジストパターンの剥離後に、前記第1半導体層と、前記真性半導体層とが除去された空間において、前記真性半導体層を形成し、次いで、前記第1半導体層とは逆の極性である第2半導体層を形成する、請求項14に記載の半導体製品の製造方法。
【請求項16】
前記半導体製品としてバックコンタクト型太陽電池を製造する、前記半導体製品の製造方法であって、
前記半導体基板が、少なくとも一方の表面側において、第1半導体層としてのp型半導体層又はn型半導体層を備え、且つ、第1半導体層に接して真性半導体層を備え、
前記レジストパターンが、前記第1半導体層上に、リフトオフ層を介して形成され、
前記レジストパターンを備える前記半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、前記レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の前記リフトオフ層を除去し、
前記リフトオフ層の除去の後に、前記レジストパターンの剥離と、前記レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の前記第1半導体層のエッチングによる除去と、が行われ、
前記第1半導体層が除去された空間の底面及び側面と、前記リフトオフ層上とを被覆するように、前記第1半導体層とは逆の極性である第2半導体層を形成し、
前記リフトオフ層の除去にともない、前記リフトオフ層に接触して位置していた前記第2半導体層を除去する、請求項14に記載の半導体製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターンの形成に用いられる樹脂組成物、及び半導体製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製品やディスプレイパネル等の製造において、種々の目的でレジストパターンが利用されている。
レジストパターンの利用の典型例としては、エッチングによりパターニングを行う際のエッチングマスク(エッチングレジスト)としての利用が挙げられる。エッチングレジストは、耐エッチング性を有するパターニングされた被膜である。エッチングレジストは、主に、半導体回路作成、印刷回路基板製造、及び太陽電池製造等の用途において多用されている。かかるエッチングレジストは、パターンのサイズに応じて、フォトリソグラフィー法、印刷法等の方法によって、シリコン基板等のエッチング対象物における被エッチング面上に形成される。
【0003】
例えば、エッチングレジスト形成用の組成物としては、成分Aとしての、モノマー単位(a1)、及びモノマー単位(a2)を有する重合体と、成分Bとしての光酸発生剤と、成分Cとしての溶剤と、を含むポジ型の感光性樹脂組成物が知られている(特許文献1を参照)。モノマー単位(a1)は、カルボキシ基又はフェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有する。モノマー単位(a2)は、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する。特許文献1に記載のポジ型の感光性樹脂組成物を用いる場合、フォトリソグラフィー法によって、所定の形状にパターニングされたエッチングレジストを形成できる。
【0004】
半導体製品やディスプレイパネル等の製造工程において、エッチングレジスト等の上記のレジストパターンは、マスク材等の役割を果たした後に除去されることが多い。レジストパターンの除去には、例えば、有機溶剤や塩基性剥離液が使用される。安価であり、レジストパターンの除去後の廃液の処理が容易であること等から、塩基性剥離液が使用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1等に記載されるような、従来知られている組成物を用いて形成されたレジストパターンについて、塩基性剥離液による、短時間での良好な剥離が困難である場合がしばしばある。
例えば、オゾン等の酸化剤を含むエッチャントを用いてエッチングを行う場合や、酸化剤によりシリコン基板の表面を酸化して、シリコン基板の表面に酸化ケイ素被膜を形成する場合等に、レジストパターンが酸化剤と接触する。
このような場合、酸化剤と接触した後のレジストパターンを塩基性剥離液により剥離する際に、そもそも剥離が困難であったり、剥離に長時間を要したり、剥離できても剥離残が生じたりしやすい。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、酸化剤との接触後でも、塩基性剥離液によって容易且つ良好に剥離可能なレジストパターンを形成できる、レジストパターンの形成に用いられる樹脂組成物と、当該樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する工程を含む、半導体製品の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、バインダーとしてバインダー樹脂を含む、レジストパターンの形成に用いられる樹脂組成物において、バインダー樹脂としてロジンエステル樹脂を含有させることによって、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)バインダーとして、ロジンエステル樹脂を含有するバインダー樹脂を含む、レジストパターンの形成に用いられる樹脂組成物。
【0010】
(2)フィラー、界面活性剤、及び酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を含む、(1)に記載の樹脂組成物。
【0011】
(3)フィラー、界面活性剤、及び酸化防止剤を含む、(2)に記載の樹脂組成物。
【0012】
(4)界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を含み、アニオン性界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体を含む、(2)又は(3)に記載の樹脂組成物。
【0013】
(5)ポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体が、スルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸塩基、カルボン酸塩基、及びリン酸塩基からなる群より選択される1以上の基を有する、(4)に記載の樹脂組成物。
【0014】
(6)樹脂組成物に含まれる溶剤以外の成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下の界面活性剤を含む、(2)~(5)のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0015】
(7)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、及び硫黄系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を酸化防止剤として含む、(2)~(6)のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0016】
(8)樹脂組成物に含まれる溶剤以外の成分の質量の合計100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の酸化防止剤を含む、(2)~(7)のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0017】
(9)炭素原子数6以上の脂肪族炭化水素基と、カルボン酸無水物基とを有する酸無水物化合物を含む、(1)~(8)のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0018】
(10)印刷法によるレジストパターンの形成に用いられる、(1)~(9)のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0019】
(11)レジストパターンが酸化剤に接触して使用される、(1)~(10)のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0020】
(12)レジストパターンを備える半導体基板を、酸化剤と接触させる酸化剤接触工程と、
酸化剤と接触した後のレジストパターンを、塩基性剥離液により半導体基板から剥離する剥離工程と、を含む半導体製品の製造方法において、レジストパターンの形成に用いられる、(11)に記載の樹脂組成物。
【0021】
(13)半導体製品がバックコンタクト型太陽電池であって、
半導体基板が、少なくとも一方の表面において、第1半導体層としてのp型半導体層又はn型半導体層を最表面に備え、且つ、第1半導体層に接して真性半導体層を備え、
レジストパターンが、第1半導体層上に、直接形成され、
レジストパターンを備える半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の第1半導体層と、真性半導体層とを除去し、
第1半導体層と、真性半導体層との除去の後に、レジストパターンが剥離され、
レジストパターンの剥離後に、第1半導体層と、真性半導体層とが除去された空間において、真性半導体層を形成し、次いで、第1半導体層とは逆の極性である第2半導体層を形成する、(12)に記載の樹脂組成物。
【0022】
(14)半導体製品がバックコンタクト型太陽電池であって、
半導体基板が、少なくとも一方の表面側において、第1半導体層としてのp型半導体層又はn型半導体層を備え、且つ、第1半導体層に接して真性半導体層を備え、
レジストパターンが、第1半導体層上に、リフトオフ層を介して形成され、
レジストパターンを備える半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、レジストパターンの開口部の位置に該当する位置のリフトオフ層を除去し、
リフトオフ層の除去の後に、レジストパターンの剥離と、レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の第1半導体層のエッチングによる除去と、が行われ、
第1半導体層が除去された空間の底面及び側面と、リフトオフ層上とを被覆するように、第1半導体層とは逆の極性である第2半導体層を形成し、
リフトオフ層の除去にともない、リフトオフ層に接触して位置していた第2半導体層を除去する、(12)に記載の樹脂組成物。
【0023】
(15)(1)~(9)のいずれか1つに記載の樹脂組成物を用いて、半導体基板の表面に、印刷法、又はフォトリソグラフィー法によりレジストパターンを形成する、レジストパターン形成工程と、
レジストパターンを備える半導体基板を、酸化剤と接触させる酸化剤接触工程と、
酸化剤と接触した後のレジストパターンを、塩基性剥離液により剥離する剥離工程と、を含む半導体製品の製造方法。
【0024】
(16)半導体製品としてバックコンタクト型太陽電池を製造する、半導体製品の製造方法であって、
半導体基板が、少なくとも一方の表面において、第1半導体層としてのp型半導体層又はn型半導体層を最表面に備え、且つ、第1半導体層に接して真性半導体層を備え、
レジストパターンが、第1半導体層上に、直接形成され、
レジストパターンを備える半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の第1半導体層と、真性半導体層とを除去し、
第1半導体層と、真性半導体層との除去の後に、レジストパターンが剥離され、
レジストパターンの剥離後に、第1半導体層と、真性半導体層とが除去された空間において、真性半導体層を形成し、次いで、第1半導体層とは逆の極性である第2半導体層を形成する、(15)に記載の半導体製品の製造方法。
【0025】
(17)半導体製品としてバックコンタクト型太陽電池を製造する、半導体製品の製造方法であって、
半導体基板が、少なくとも一方の表面側において、第1半導体層としてのp型半導体層又はn型半導体層を備え、且つ、第1半導体層に接して真性半導体層を備え、
レジストパターンが、第1半導体層上に、リフトオフ層を介して形成され、
レジストパターンを備える半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、レジストパターンの開口部の位置に該当する位置のリフトオフ層を除去し、
リフトオフ層の除去の後に、レジストパターンの剥離と、レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の第1半導体層のエッチングによる除去と、が行われ、
第1半導体層が除去された空間の底面及び側面と、リフトオフ層上とを被覆するように、第1半導体層とは逆の極性である第2半導体層を形成し、
リフトオフ層の除去にともない、リフトオフ層に接触して位置していた第2半導体層を除去する、(15)に記載の半導体製品の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、酸化剤との接触後でも、塩基性剥離液によって容易且つ良好に剥離可能なレジストパターンを形成できる、レジストパターンの形成に用いられる樹脂組成物と、当該樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する工程を含む、半導体製品の製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】リフトオフ層を用いることなくバックコンタクト型太陽電池を製造する方法についての一例に関して、加工対象の半導体基板の断面を模式的に示す図である。
【
図2】リフトオフ層を用いてバックコンタクト型太陽電池を製造する方法についての一例に関して、加工対象の半導体基板の断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
≪樹脂組成物≫
以下、樹脂組成物について説明する。樹脂組成物は、レジストパターンの形成に用いられる。樹脂組成物は、バインダーとして、ロジンエステル樹脂を含有するバインダー樹脂を含む。
エッチング耐性等のレジストパターンの耐久性と、塩基性剥離液による酸化剤と接触した後のレジストパターンの剥離性とを高いレベルで両立しやすい点で、樹脂組成物は、フィラー、界面活性剤、及び酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を含むのが好ましく、フィラー、界面活性剤、及び酸化防止剤を含むのがより好ましい。
以下、樹脂組成物が含む、必須又は任意の成分や、用途等について説明する。
【0029】
<バインダー>
バインダーは、樹脂組成物に、レジストパターンを形成するための製膜性を付与する成分である。バインダーとしては、バインダー樹脂と、モノマー化合物とが挙げられる。以下、バインダー樹脂と、モノマー化合物とについて説明する。
【0030】
[バインダー樹脂]
樹脂組成物は、バインダー樹脂として、ロジンエステル樹脂を含有する。バインダー樹脂は、ロジンエステル樹脂とともに、ロジンエステル樹脂以外のその他のバインダー樹脂を含み得る。
【0031】
(ロジンエステル樹脂)
上記の通り、樹脂組成物は、バインダー樹脂として、ロジンエステル樹脂を含有する。このため、酸化剤と接触した後であっても塩基性剥離液によって容易に剥離可能なレジストパターンを、樹脂組成物を用いて形成しやすい。
【0032】
酸化剤に接触した後に、レジストパターンの塩基性剥離液による剥離が困難になる原因のうちの1つは、レジストパターン表面における、塩基性剥離液に対して難溶な酸化被膜の形成であると推測される。
この点、インク用途、粘着剤用途、紙用サイズ剤用途等の種々の用途に、従来用いられているロジンエステル樹脂が、優れた耐酸化安定性を有することを本発明者らは見出した。
【0033】
上記の通り、耐酸化安定性に優れるロジンエステル樹脂を含む樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成すると、レジストパターンが酸化剤と接触した後の、レジストパターン表面における酸化被膜の形成を抑制しやすい。
結果として、樹脂組成物がロジンエステル樹脂を含むことによって、酸化剤に接触した後であっても、塩基性剥離液による剥離が容易なレジストパターンを形成しやすい。
【0034】
ロジンエステル樹脂は、従来より、当業者にロジンエステル樹脂と認識されている樹脂であれば特に制限されない。従来知られる、種々のロジン酸のエステル化物や、種々のロジン酸誘導体のエステル化物を、ロジンエステル樹脂として用いることができる。
【0035】
ロジンエステル樹脂は、典型的には、ロジン類と、アルコール類との反応により生成する。しかし、ロジンエステル樹脂の製造方法は、ロジン類と、アルコール類との反応には限定されない。
【0036】
ロジンエステル樹脂を与えるロジン類の好適な例としては、ピマール酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、イソピマール酸、マレオピマール酸、フマロピマール酸、アクリロピマール酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、及びネオアビエチン酸等の樹脂酸;これらの樹脂酸を主成分とするガムロジン;水素添加ロジン;ウッドロジン等の未変性ロジン;不均化ロジン;トール油ロジン;重合ロジン、;水素化重合ロジン;ロジン変性フェノール樹脂等の変性ロジンが挙げられる。
【0037】
ロジン酸、又は水素添加ロジンを、有機酸又は有機酸無水物で変性した有機酸変性ロジンも、ロジン類として好ましい。好ましい有機酸としては、例えば、フマル酸、及びマレイン酸等の二塩基酸や、無水マレイン酸、及び無水フタル酸等の二塩基酸無水物が挙げられる。
マレオピマール酸変性ロジン、無水フタル酸変性ロジン、及び無水フタル酸変性水添ロジンも、好ましい有機酸変性ロジンとして挙げられる。
【0038】
ロジン類と、アルコール類とを反応させる場合、ロジン類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ロジンエステル樹脂を与えるアルコール類としては、公知のアルコールを特に制限なく使用できる。アルコール類の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール及びポリエチレングリコール-モノメチルエーテル等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-ベンゼンジメタノール、ドデカンジオール及びシクロヘキサンジメタノール等のジオール;グリセリン、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパン等のトリオール;ペンタエリスリトール、及びジグリセリン等のテトラオール;キシリトール等のペンタオール;ジペンタエリスリトール及びソルビトール等のヘキサオール;トリペンタエリスリトール等のオクタオール等が挙げられる。
これらのアルコール類の中では、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、及びラウリルアルコール等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びネオペンチルグリコール等のジオール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びシクロヘキサンジメタノール等のトリオール;ペンタエリスリトール、及びジグリセリン等のテトラオール等が好ましい。
【0040】
ロジン類と、アルコール類とを反応させる場合、アルコール類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ロジンエステル樹脂は、上記のロジン類と、上記のアルコール類とを任意に組み合わせてエステル化させることにより得られる。ロジン類と、アルコール類とを反応させる方法は特に限定されない。好適な方法としては、例えば、ロジン類とアルコール類とを周知のエステル化触媒の存在下に反応させる方法が挙げられる。目的のロジンエステル樹脂が得られる限り、ロジンエステル樹脂は、ロジン類とアルコール類との反応以外の他の方法により製造されてもよい。
【0042】
樹脂組成物中のロジンエステル樹脂の含有量は、樹脂組成物における後述する溶剤以外の成分の質量の合計100質量部に対して、10質量部以上98質量部以下が好ましく、15質量部以上90質量部以下がより好ましく、20質量部以上80質量部以下がさらに好ましい。かかる範囲内の量のロジンエステル樹脂を用いると、耐エッチャント性のような酸化剤に対する耐久性と、酸化剤と接触した後のレジストパターンの塩基性剥離液による剥離性能とのバランスが良好であるレジストパターンを形成しやすい。
【0043】
(その他のバインダー樹脂)
樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、ロジンエステル樹脂以外のその他のバインダー樹脂を含んでいてもよい。
その他のバインダー樹脂は、カルボキシ基、フェノール性水酸基、又はスルホン酸基等の酸性基を有し、塩基性剥離液に対して可溶である樹脂でもよく、酸性基を持たず塩基性の剥離液に対して不溶である樹脂でもよい。形成されるレジストパターンの塩性剥離液による剥離性が良好である点から、その他のバインダー樹脂は、塩基性剥離液に対して可溶である樹脂が好ましい。
塩基性剥離液に対して可溶である樹脂としては、例えば、アクリル酸、又はメタクリル酸に由来する構成単位を有する(メタ)アクリル樹脂、ヒドロキシスチレン類に由来する構成単位を有するポリヒドロキシスチレン樹脂、並びにフェノール類やナフトール類に由来するノボラック樹脂等が挙げられる。
なお、本出願の明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル、及びメタクリルを意味し、「(メタ)クリレート」は、アクリレート、及びメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル、及びメタクリロイルを意味する。
単量体の選択による樹脂の諸特性の調整が容易であることから、その他のバインダー樹脂としてはアクリル酸、又はメタクリル酸に由来する構成単位を有する(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
【0044】
その他のバインダー樹脂としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、又はスルホン酸基等の酸性基を有し、塩基性剥離液に対して可溶である樹脂において、酸性基が、酸の作用により脱離し得る保護基により保護されている樹脂も好適に用いることができる。
かかる樹脂は、通常、光酸発生剤とともに使用される。光酸発生剤としては、従来より用いられている種々の感光性樹脂組成物に配合されている公知の光酸発生剤を、特に制限なく用いることができる。
かかる樹脂と、光酸発生剤と組み合わせて含む樹脂組成物では、露光により樹脂組成物中に酸が発生し、発生した酸による保護基の脱離によって、バインダー樹脂が塩基性剥離液に対して可溶化する。
このような樹脂組成物は、露光された箇所が塩基性剥離液により除去される、ポジ型感光性樹脂組成物として好適に使用される。
【0045】
樹脂組成物におけるその他のバインダー樹脂の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。その他のバインダー樹脂の含有量は、樹脂組成物に含まれるロジンエステル樹脂100質量部に対し300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、150質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下が特に好ましく、0質量部であるのが最も好ましい。
【0046】
[モノマー化合物]
樹脂組成物はバインダーとして、バインダー樹脂とともに、モノマー化合物を含んでいてもよい。
モノマー化合物は、単独の重合反又は付加反応や、架橋剤との反応によって高分子量化し得る化合物である。モノマー化合物は、必要に応じて、光重合開始剤等の重合開始剤や、モノマー化合物の種類に応じた硬化剤とともに使用されてもよい。
【0047】
モノマー化合物の好適な代表例としては、光重合開始剤の存在下での露光により硬化する、(メタ)アクリレートモノマーのようなラジカル重合性基を有するモノマーや、エポキシ基化合物や、オキセタン化合物等が挙げられる。
なお、モノマー化合物は、従来より、レジストパターンの形成に用いられる樹脂組成物に配合されている化合物であればなんら限定されない。
以下、モノマー化合物として特に好適な、ラジカル重合性基を有するモノマーと、ラジカル重合性基を有するモノマー以外のその他のモノマーとについて説明する。
【0048】
(ラジカル重合性基を有するモノマー)
モノマー化合物の好適な代表例としては、光重合開始剤の存在下での露光により硬化する、(メタ)アクリレートモノマーのようなラジカル重合性基を有するモノマーが挙げられる。
ラジカル重合性基を有するモノマーにおけるラジカル重合性基としては、(メタ)アクリル基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N-ビニルピロリドン基、共役ジエン基、ビニルケトン基、及び塩化ビニル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性基の中では、反応性が良好でありモノマーの入手が容易であること等から(メタ)アクリル基が好ましい。
【0049】
樹脂組成物が、ラジカル重合性基を有するモノマーを含む場合、樹脂組成物は露光による硬化が可能である。このため、かかる樹脂組成物は、ネガ型感光性樹脂組成物として用いることができる。
このような樹脂組成物を用いる場合、印刷法によりレジストパターンの前駆パターンを形成した後に、前駆パターンを露光により硬化させてレジストパターンを形成してもよい。また、樹脂組成物を、ネガ型感光性樹脂組成物として用いて、フォトリソグラフィー法によりレジストパターンを形成してもよい。この場合、レジストパターンの形状に応じたネガ型のフォトマスクが使用される。
【0050】
ラジカル重合性基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、ビニルエステル系モノマー、N-ビニルピロリドン、共役ジエン系モノマー、ビニルケトン系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン系モノマー、及び多官能モノマー等が挙げられる。
【0051】
(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、
1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、及びエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールのジ(メタ)アクリレート;
EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAビス2-(メタ)アクリロイルオキシエチルエーテル、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO-EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAビス2-(メタ)アクリロイルオキシエチルエーテル、4,4-ジメルカプトジフェニルサルファイドジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ジメチル)-5-エチル-5-アクリロイルオキシメチル-1,3-ジオキサン、2-[5-エチル-5-[(アクリロイルオキシ)メチル]-1,3-ジオキサン-2-イル]-2,2-ジメチルエチル、及び1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の2官能の(メタ)アクリレート化合物;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びグリセリントリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートポリヘキサノリドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0052】
スチレン系モノマーとしては、スチレン、及びα-メチルスチレン等が挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及び酪酸ビニル等が挙げられる。
共役ジエン系モノマーとしては、ブタジエン、及びイソプレン等が挙げられる。
ビニルケトン系モノマーとしては、メチルビニルケトン等が挙げられる。
ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン系モノマーとしては、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン、及び臭化ビニリデン等が挙げられる。
【0053】
ラジカル重合性基を有するモノマーは、通常、光重合開始剤とともに使用される。光重合開始剤の種類は特に制限されず、露光時の露光量や、露光に用いられる光源の波長等を勘案して適宜選択される。
【0054】
(その他のモノマー化合物)
樹脂組成物がモノマー化合物を含む場合、モノマー化合物としては、上記のラジカル重合性基を有するモノマー以外のその他のモノマー化合物を用いることもできる。
その他のモノマー化合物としては、従来、レジストパターン形成用の組成物に配合されている種々のモノマー化合物を用いることができる。
例えば、1官能~4官能のエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂等の種々のビスフェノール型エポキシ樹脂や、種々のノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物;種々のオキセタン化合物;テトラエトキシシラン、及びテトラメトキシシラン等の加水分解によりシラノール基を生成する加水分解性基を有するアルコキシシラン類;前述のアルコキシシラン類の部分加水分解縮合物(シロキサン化合物);加水分解によりシラノール基を生成する加水分解性基を有するシルセスキオキサン化合物等が挙げられる。
【0055】
その他のモノマー化合物は、必要に応じて、熱酸発生剤、熱塩基発生剤、及び光酸発生剤、光塩基発生剤や、周知の硬化剤とともに使用される。
これらの酸発生剤、塩基発生剤、硬化剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。これらの酸発生剤、塩基発生剤、硬化剤は、その他のモノマー化合物に対して、通常使用される範囲内の量で使用される。
【0056】
以上説明したモノマー化合物の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。モノマー化合物の使用量は、典型的には、バインダー樹脂100質量部に対して100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
樹脂組成物中のロジンエステル樹脂の量を多目に設定しやすいことから、樹脂組成物がモノマー化合物を含まないのも好ましい。
【0057】
<フィラー>
樹脂組成物は、フィラーを含むのが好ましい。フィラーとしては、従来よりレジストパターン形成用の組成物に配合されている種々のフィラーを用いることができる。
フィラーの具体例としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、シリカ(酸化ケイ素)、タルク、クレー(含水ケイ酸マグネシウム)、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び雲母粉等の無機充填剤が挙げられる。
フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオシン・グリーン、ジスアゾイエロー、ビクトリアブルー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、及びナフタレンブラック等の顔料もフィラーとして好適に使用できる。
【0058】
フィラーとしては、隠ぺい性、及び耐オゾン・フッ酸性が良好なレジストパターンを形成しやすい点で、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び雲母粉が好ましい。これらの中では、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、シリカ、タルク、及びクレーがより好ましい。
【0059】
樹脂組成物におけるフィラーの添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
フィラーの添加量は、樹脂組成物に含まれる、後述する溶剤以外の成分の質量の合計100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下が好ましい。隠ぺい性、及び耐オゾン・フッ酸性に優れるレジストパターンを形成しやすい点で、フィラーの添加量は、樹脂組成物に含まれる、後述する溶剤以外の成分の質量の合計100質量部に対して、5質量部以上60質量部以下が好ましく、10質量部以上50質量部以下がより好ましい。
【0060】
<界面活性剤>
樹脂組成物は、界面活性剤を含むのが好ましい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤のいずれも用いることができる。
酸化剤に接触した後のレジストパターンの塩基性剥離液による剥離性が特に良好であることから、樹脂組成物は、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を含むのが好ましい。
例えば、アニオン性界面活性剤を含む樹脂組成物を用いて形成されたレジストパターンは、塩基性剥離液の流れにレジストパターンを接触させてレジストパターンの剥離を行う場合に、他の界面活性剤を用いる場合よりも、特に良好にレジストパターンを剥離させやすい。
なお、レジストパターンの剥離を行う場合に、塩基性剥離液の流れをレジストパターンに接触させることは必須ではない。塩基性剥離液の流れをレジストパターンに接触させる場合、剥離時間を短縮させやすく、また剥離残が生じにくい。
【0061】
界面活性剤の総質量におけるアニオン性界面活性剤の質量の比率は特に限定されないが、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0062】
樹脂組成物がアニオン性界面活性剤を含む場合、酸化剤に接触した後のレジストパターンの塩基性剥離液による剥離が特に容易である点から、樹脂組成物が、当該アニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体を含むのが好ましい。
【0063】
アニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体の添加効果を特に得やすいことから、ポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体は、スルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸塩基、カルボン酸塩基、及びリン酸塩基からなる群より選択される1以上の基を有するのが好ましい。
スルホン酸塩基、カルボン酸塩基、及びリン酸塩基を構成する対カチオンは、ナトリウムイオン、及びカリウムイオン等の金属カチオンや、アンモニウムイオンのような非金属無機カチオン等の無機カチオンであってもよく、有機第4級アンモニウムカチオン等の有機カチオンであってもよい。
上記の対カチオンとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体の入手が容易であること等から、金属カチオンが好ましく、ナトリウムイオン、及びカリウムイオン等のアルカリ金属カチオンがより好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体が有する上記の基の数は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体が、アニオン性界面活性剤として良好に作用する限り特に限定されない。ポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体が有する上記の基の数は、典型的には、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0064】
界面活性剤として使用するポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体の好適な例としては、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、及びポリオキシエチレンベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類;
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;
モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、及びトリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;
炭素原子数12以上18以下のアルキル基を有するアルキルエーテルである、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸塩型アニオン系界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸塩型アニオン系界面活性剤;
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等の炭素原子数12以上15以下のアルキル基を有するアルキルエーテルである、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムや、ポリオキシエチレンラウリル―エーテルリン酸カリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸カリウム、及びポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸カリウム等の炭素原子数12以上15以下のアルキル基を有するアルキルエーテルである、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩が挙げられる。
【0065】
以上説明した界面活性剤の中でも、ポリオキシアルキレン骨格を有するアニオン系界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル誘導体であるアニオン系界面活性剤がより好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸カリウムが特に好ましい。
【0066】
樹脂組成物における界面活性剤の添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂組成物における界面活性剤の添加量は、後述する溶剤以外の成分の質量の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上8質量部以下がより好ましく、1質量部以上5重量以下が特に好ましい。かかる範囲内の量の界面活性剤を用いることにより、耐エッチャント性のような酸化剤に対する耐久性と、酸化剤と接触した後のレジストパターンの塩基性剥離液による剥離性能とのバランスが良好であるレジストパターンを形成しやすい。
【0067】
<酸化防止剤>
樹脂組成物は、耐エッチャント性のような酸化剤に対する耐久性と、酸化剤と接触した後のレジストパターンの塩基性剥離液による剥離性能とのバランスに優れるレジストパターンを形成しやすい点で、酸化防止剤を含むのが好ましい。酸化防止剤の種類は、従来からレジストパターン形成用の組成物に配合されている酸化防止剤であれば特に限定されない。
【0068】
酸化剤と接触した後のレジストパターンの塩基性剥離液による剥離性能が特に優れる点から、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上であるのが好ましい。これらの酸化防止剤としては、本発明の目的を阻害しない範囲で、周知の酸化防止剤を特に制限なく用いることができる。
なお、本明細書において、芳香族アミン系酸化防止剤と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤との双方に該当する酸化防止剤については、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として記載する。イオウ系酸化防止剤と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤との双方に該当する酸化防止剤については、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として記載する。
【0069】
好適なヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジチオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリチオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス{2-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ}エチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸]エチレンビス(オキシエチレン)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸-C7~C9アルキルエステル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸-C7~C9アルキルエステル、3,3’,3’,5,5’,5’-ヘキサ-tert-ブチル-a、a’,a’-(メチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4-{[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ}-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4,4’-チオビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(SEENOX BCS、シプロ化成)、及び1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン(SX336B、シプロ化成)等が挙げられる。
【0070】
オゾン等の酸化剤に対する耐酸化性と、酸化剤との接触後の塩基性剥離液による剥離性とに特にすぐれるレジストパターンを形成しやすい点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸]エチレンビス(オキシエチレン)、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸-n-オクタデシル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸-C7~C9アルキルエステル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸-C7~C9アルキルエステル、3,3’,3’,5,5’,5’-ヘキサ-tert-ブチル-a、a’,a’-(メチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、及びヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]がより好ましく、ペンタエリスリトールテトラ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸]エチレンビス(オキシエチレン)が特に好ましい。
【0071】
好適なアミン系酸化防止剤の具体例としては、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェノチアジン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(ノクラック810-NA(大内新興化学工業))、及びN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(ノクラック6C(大内新興化学工業))等が挙げられる。
【0072】
オゾン等の酸化剤に対する耐酸化性と、酸化剤との接触後の塩基性剥離液による剥離性とにすぐれるレジストパターンを形成しやすい点で、アミン系酸化防止剤としては、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(ノクラック810-NA(大内新興化学工業))、及びN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(ノクラック6C(大内新興化学工業))がより好ましく、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(ノクラック810-NA(大内新興化学工業))、及びN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(ノクラック6C(大内新興化学工業))がさらに好ましく、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(ノクラック6C(大内新興化学工業))が特に好ましい。
【0073】
好適なイオウ系酸化防止剤の具体例としては、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、4,6-ビス(オクチルメチル)-o-クレゾール、ペンタエリスリトールテトラキス-(3-ラウリルチオプロピオネート)(商品名:SEENOX 412S(シプロ化成))、及びジステアリル 3,3’-チオジプロピオネート(商品名:SEENOX DS(シプロ化成))が挙げられる。
【0074】
上記の好ましい酸化防止剤のうち、オゾン等の酸化剤に対する耐酸化性が良好なレジストパターンを特に形成しやすい点で、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、4,6-ビス(オクチルメチル)-o-クレゾール、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、及び3,3’-チオジプロピオン酸ジオクタデシルがより好ましく、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、4,6-ビス(オクチルメチル)-o-クレゾール、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールがさらに好ましく、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール、及び2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノールが特に好ましい。
【0075】
上記酸化防止剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
樹脂組成物における酸化防止剤の添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂組成物における酸化防止剤の添加量は、後述する溶剤以外の成分の質量の合計100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.5質量部以上4質量部以下がより好ましく、0.8質量部以上3質量部以下が特に好ましい。かかる範囲内の量の酸化防止剤を用いることにより、耐エッチャント性のような酸化剤に対する耐久性と、酸化剤と接触した後のレジストパターンの塩基性剥離液による剥離性能とのバランスが良好であるレジストパターンを形成しやすい。
【0077】
<酸無水物化合物>
樹脂組成物は、塩基性剥離液によるレジストパターンの剥離性の微調整等の目的で、炭素原子数6以上の脂肪族炭化水素基と、カルボン酸無水物基とを有する酸無水物化合物を含んでいてもよい。
【0078】
酸無水物化合物において、酸無水物基の数は特に限定されない。酸無水物化合物における酸無水物基の数は、2以上の複数であってもよいが、通常1である。
酸無水物化合物中の脂肪族炭化水素基の数は特に限定されない。酸無水物化合物中の脂肪族炭化水素基の数は、典型的には、1以上4以下が好ましく、1又は2が好ましい。
【0079】
酸無水物化合物中の脂肪族炭化水素基の価数は特に限定されず、1価であっても、2価以上の多価であってもよい。
脂肪族炭化水素基の構造は特に限定されず、鎖状、環状、又は鎖状と環状との組み合わせであってよい。脂肪族炭化水素基が鎖状である場合、脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であっても、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。不飽和脂肪族炭化水素基における不飽和結合の数は特に限定されないが、典型的には1である。
脂肪族炭化水素基の炭素原子数の上限は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。脂肪族炭化水素基の炭素原子数の上限は、例えば30以下であってよく、20以下であってよく、15以下であってよい。
脂肪族炭化水素基の炭素原子数の下限は6以上であり、8以上でもよく、10以上でもよい。
【0080】
酸無水物化合物は、酸無水物基、及び脂肪族炭化水素基以外に、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、N、O、S、P、及びSi等のヘテロ原子を含む非芳香族基を有してもよい。
非芳香族基の例としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、カルバモイル基(-CO-NH2)、シアノ基、ニトロ基、-O-、-S-、-NH-、-CO-、-CO-O-、-CO-NH-、-O-CO-O-、-NH-CO-NH-、-O-CO-NH-、-S-S-、-SO-、-SO2-、-SO2-O-、-SO2-NH-、及び-N=N-等が挙げられる。非芳香族基は、これらの基に限定されない。
【0081】
例えば、酸無水物基(-CO-O-CO-)が脂肪族炭化水素基に結合して5員環や6員環等の環を形成している場合、脂肪族炭化水素基と酸無水物基とからなる全体構造又は部分構造の炭素原子数から、前述の環中の非カルボニル炭素の数2を除いた数を、脂肪族炭化水素基の炭素原子数とする。
具体例としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸において、ヘキサヒドロ無水フタル酸の全体構造の炭素原子数8から2を除いた数である6が、脂肪族炭化水素基の炭素原子数である。また、ブチルこはく酸無水物において、ブチルこはく酸無水物の全体構造の炭素原子数8から2を除いた数である6が、脂肪族炭化水素基の炭素原子数である。
【0082】
酸無水物化合物において、酸無水物基は環を構成していなくてもよい。環を構成しない酸無水物基を有する酸無水物化合物としては、例えば、ペンタン酸無水物やオクタン酸無水物が挙げられる。
【0083】
酸無水物化合物において、酸無水物基は芳香族基に結合していてもよい。酸無水物基と結合する芳香族基は、芳香族炭化水素基であっても芳香族複素環基であってもよい。この場合、酸無水物化合物は、芳香族基に直接結合するか、芳香族基に、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、及び-CO-NH-等の連結基を介して結合する炭素原子数6以上の脂肪族炭化水素基を有する。なお、脂肪族炭化水素基は、芳香族炭化水素基と縮合する脂肪族炭化水素環であってもよい。
芳香族基に結合する酸無水物基を有する酸無水物化合物の具体例としては、n-ヘキシルフタル酸無水物、及びn-ヘキシルオキシフタル酸無水物等が挙げられる。
【0084】
以上説明した酸無水物化合物の具体例としては、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、2-オクテニルコハク酸無水物、1,1-シクロヘキサン二酢酸無水物、イコサヒドロ-3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸無水物、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、及び2-ドデセニルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0085】
樹脂組成物への均一な混合が容易である点や、酸化剤との接触後の塩基性剥離液による剥離性にすぐれるレジストパターンを形成しやすい点で、上記の酸無水物化合物の中では、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、及び2-オクテニルコハク酸無水物が好ましく、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、及び2-オクテニルコハク酸無水物がより好ましい。
【0086】
樹脂組成物における酸無水物化合物の添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂組成物における酸無水物化合物の添加量は、後述する溶剤以外の成分の質量の合計100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下が好ましい。
樹脂組成物の粘性を適度な範囲に維持しやすい点と、塩基性剥離液による剥離性に優れるレジストパターンを形成しやすい点とから、樹脂組成物における酸無水物化合物の添加量は、後述する溶剤以外の成分の質量の合計100質量部に対して0.2質量部以上10質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上5質量部以下がさらに好ましい。
【0087】
<チキソ性付与剤>
後述するように、印刷法は、基板上にレジストパターンを形成するための好ましい一方法である。印刷により基板上にレジストパターンを形成するためには、樹脂組成物にチキソ性が必要である場合がある。チキソ性は、剪断応力を受けた場合に粘度が低下する性質(擬塑性)である。樹脂組成物にチキソ性を付与するためには、樹脂組成物にチキソ性付与剤を添加するのが好ましい。
【0088】
チキソ性付与剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、有機系チキソ性付与剤、及び無機系チキソ性付与剤のいずれも好適に用いることができる。
有機系チキソ性付与剤の代表例としては、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、及びポリアマイドワックス系が挙げられる。
無機系チキソ性付与剤の代表例としては、ステアリン酸のAl塩、Ca塩、又はZn塩によって修飾された粘土成分である粘土系チキソ性付与剤、レシチン塩又はアルキルスルホン酸塩等の塩類、クレー、ベントナイト、並びにフュームドシリカ等が挙げられる。
【0089】
樹脂組成物への少量での添加で所望する添加効果を得やすいことや、樹脂組成物との混合性、及び樹脂組成物中での分散安定性が良好である点で、チキソ性付与剤としては、ポリエチレンワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系、フュームドシリカ、及びベントナイトが好ましい。
【0090】
樹脂組成物中でのチキソ性付与剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂組成物中でのチキソ性付与剤の使用量としては、樹脂組成物との混合性、及び樹脂組成物中での分散安定性が良好である点から、樹脂組成物100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3質量部以下がより好ましい。
【0091】
<溶剤>
樹脂組成物は、レジストパターンを形成する際の塗布性、又は印刷性の調整の目的や、形成されるレジストパターンの乾燥性の調整の目的で、溶剤を含んでいてもよい。
溶剤の種類は、従来からレジストパターン形成用の樹脂組成物に配合されている溶剤であれば特に限定されない。
【0092】
溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n-ブチルアルコール、メトキシブタノール(3-メトキシ-1-ブタノール)、tert-ブタノール、シクロヘキサノール、及びメチルシクロヘキサノール等のアルコール類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びグリセリン等の多価アルコール類;
メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類;
メチルトリグライム、及びエチルモノグライム等のグリコールジエーテル類;
酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソブチル、及び乳酸エチル等のエステル類;
プロピレンカーボネート等の炭酸エステル類;
ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、及びテトラヒドロフラン等の、グリコールエーテル類、グリコールアセテート類、及びグリコールジエーテル類以外のエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、及びジアセトンアルコール等のケトン類;
n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;
トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類;
クロルベンゼン、及びオルトジクロロベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエチレン、及びトリクロロエチレン等の塩化脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて混合溶剤として用いられてもよい。
【0093】
理由については後述するが、樹脂組成物は印刷法によるレジストパターンの形成に好適に用いることができる。
印刷法によりレジストパターンを形成する場合、連続して安定且つ効率よくレジストパターンを形成しやすい点や、乾燥性が良好なレジストパターンを形成しやすい点等から、溶剤としては、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類が好ましい。
毒性が低い点から、溶剤としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
【0094】
以上説明した各成分を、所望する比率で均一に混合することにより、樹脂組成物が得られる。
【0095】
<用途>
前述した通り、上記の樹脂組成物は、印刷法によるレジストパターンの形成に好ましく使用される。一般的に、フォトリソグラフィー法により形成されるレジストパターンの寸法よりも、印刷法により形成されるレジストパターンの寸法は大きい。レジストパターンの寸法が大きいほど、剥離液によるレジストパターンの剥離が困難である傾向がある。しかし、上記の樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する場合、酸化剤との接触後でも、レジストパターンを塩基性剥離液により良好に剥離可能であって、印刷法により形成されたパターンサイズが大きなレジストパターンも塩基性剥離液により良好に剥離される。
【0096】
前述の通り、上記の樹脂組成物を用いることにより、酸化剤との接触後でも、塩基性剥離液により容易に剥離可能なレジストパターンを形成できる。
このため、上記の樹脂組成物は、酸化剤に接触して使用されるレジストパターンを形成するために好適に使用される。しかし、樹脂組成物の用途は、酸化剤に接触して使用されるレジストパターンの形成には限定されない。
【0097】
レジストパターンは、通常、基板上に形成される。レジストパターンを形成する際に使用される基材の材質としては、ステンレス鋼、銅、及びその他金属からなる基板;銅箔等の金属箔が積層された金属箔積層基板のような複合基板;シリコン基板(シリコンウェハ)等が挙げられる。上記の複合基板は、印刷回路基板等に用いられる。シリコンウェハは、太陽電池や種々の半導体素子等の半導体背品の製造に用いられる。
【0098】
レジストパターンの基板表面への付着力を高める目的で、基板表面の接触角を調整するために、上記の基板の表面に対して、表面洗浄、及び/又は表面処理が行なわれることがある。
表面洗浄としては、有機溶媒、アルカリ洗浄液、又はオゾン等による汚染物質の洗浄や、クロム酸、硫酸、及び塩酸等の酸性物質を用いるエッチングによる洗浄、研磨やショットブラストのような物理的手法による洗浄、電気化学的方式による酸化被膜処理による洗浄、並びにイオン及びプラズマ等を用いる洗浄等の種々の洗浄方法が採用され得る。
基板表面を洗浄する方法は、これらの方法に限定されない。洗浄方法としては、汚染物質を除去可能な方法であれば周知の洗浄方法を適宜採用することができる。
【0099】
表面処理としては、付着向上剤を用いる基板表面の処理が挙げられる。
付着向上剤の好適な例としては、シランカップリング剤、アルミネート系カップリング剤、及びチタネート系カップリング剤等のカップリング剤や、キレート化合物等が挙げられる。これらの中では、入手の容易性や、付着向上効果の高さ等から、シランカップリング剤、及びキレート化合物が挙げられる。
【0100】
シランカップリング剤の好適な具体例としては、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン、γ-グリシドオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0101】
キレート化合物の好適な具体例としては、N-ヒドロキシエチル-エチレンジアミノ三酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチリデン-1,1-二リン酸、アミノトリメチレンリン酸、エチレンジアミノ-テトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミノペンタメチレンリン酸、ジエチレントリアミノペンタメチレンリン酸、及びヘキサメチレンジアミノテトラエチレンリン酸等が挙げられる。
【0102】
上記の付着向上剤を用いる表面処理は、基板表面に付着向上剤を適用して行われてもよく、付着向上剤を樹脂組成物に含有されることにより、レジストパターンの形成と同時に行なわれてもよい。
基板の表面の再汚染を抑制しやすいことや、レジストパターンの付着性向上の効果を得やすいこと等から、付着向上剤が基板表面に直接適用されるのが好ましい。
付着向上剤を基板表面に直接適用する場合、樹脂組成物の安定性や、その他の特性を損ない得る化合物であっても使用することができる。
付着向上剤を基板表面に適用する前には、基板表面が前述のように洗浄されるのが好ましい。
【0103】
必要に応じて、上記のように、表面洗浄、及び/又は表面処理が施された基板上に、上記の樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィー法や、印刷法等の周知の方法によってレジストパターンが形成される。
レジストパターンの形成方法は、パターンサイズ等によって適宜選択される。レジストパターンを形成するための装置が比較的安価であり、レジストパターン形成の操作も容易である点からは、印刷法が好ましい。
【0104】
印刷法によりレジストパターンを形成する場合には、所望するパターン形状に従って、樹脂組成物を基板上に塗布した後、塗布されたパターンを乾燥、熱硬化、又は光硬化させることによりレジストパターンが形成される。
乾燥、又は熱硬化は、室温での自然乾燥や、オーブン又は熱板上での加熱により行うことができる。加熱温度としては、レジストパターンにおいて、熱分解や所望しない熱変性が生じない限り特に限定されない。加熱温度は、典型的には、50℃以上500℃未満が好ましく、80℃以上400℃以下がより好ましく、100℃以上300℃以下がさらに好ましい。
加熱時間は、乾燥や、熱硬化が所望する程度に進行し、レジストパターンにおいて、熱分解や所望しない熱変性が生じない限り特に限定されない。加熱時間は、例えば、10秒以上24時間以内が好ましく、30秒以上12時間以内がより好ましく1分以上1時間以内が特に好ましい。
【0105】
レジストパターンの使用目的の典型的な一例としては、エッチングマスクが挙げられる。レジストパターンをエッチングマスクとして用いる場合、レジストパターンを化学的に分解させず、且つ基板表面のエッチングが可能なエッチャントを用いてエッチングが行なわれる。
エッチング方法の好ましい一例については、特に好ましい用途である、バックコンタクト型太陽電池の製造方への樹脂組成物の適用において、詳細に後述する。
【0106】
樹脂組成物のより好ましい用途は、
レジストパターンを備える半導体基板を、酸化剤と接触させる酸化剤接触工程と、
酸化剤と接触した後のレジストパターンを、塩基性剥離液により半導体基板から剥離する剥離工程と、を含む半導体製品の製造方法における、レジストパターンの形成である。
半導体製品の製造では、エッチング目的や、酸化ケイ素被膜等の酸化被膜の形成の目的で、酸化剤が使用されることがしばしばあるためである。
【0107】
半導体製品としては、半導体基板を加工して製造される製品であれば特に限定されず、種々の太陽電池の他、TFT、MOSFET等のトランジスター素子が挙げられる。MOSFETは、CMOS素子等の固体撮像素子にも応用される。
【0108】
酸化剤としては、一般的に酸化剤として知られている薬剤であれば特に限定されない。酸化剤は、気体として使用されても、液体として使用されてもよい。
酸化剤としては、例えば、硝酸、硫酸、オゾン、及び過酸化水素等が挙げられる。酸素含有ガスに由来するプラズマ(例えば酸素プラズマ)も、酸化剤として挙げられる。
半導体製品の製造において汎用される酸化剤を含有する薬剤としては、オゾンと、フッ化水素酸(フッ酸)とを含むエッチング液が挙げられる。かかるエッチング液は、特にシリコン基板に対する特に好適なエッチャントとして、シリコン基板のエッチングに使用されている。オゾンと、フッ化水素酸(フッ酸)とを含むエッチング液は、通常水溶液であるが、エッチング性能を阻害しない範囲で有機溶剤を含んでいてもよい。
【0109】
樹脂組成物の特に好ましい用途としては、半導体製品としてバックコンタクト型太陽電池を製造する方法における、レジストパターンの形成が挙げられる。
【0110】
バックコンタクト型太陽電池を製造する方法の好ましい一例としては、リフトオフ層上にレジストパターンを形成しない、下記の方法が挙げられる。
具体的には、
半導体製品としてバックコンタクト型太陽電池を製造する方法であって、
半導体基板が、少なくとも一方の表面において、第1半導体層としてのp型半導体層又はn型半導体層を最表面に備え、且つ、第1半導体層に接して真性半導体層を備え、
レジストパターンが、第1半導体層上に、直接形成され、
レジストパターンを備える半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の第1半導体層と、真性半導体層とを除去し、
第1半導体層と、真性半導体層との除去の後に、レジストパターンが剥離され、
レジストパターンの剥離後に、第1半導体層と、真性半導体層とが除去された空間において、真性半導体層を形成し、次いで、第1半導体層とは逆の極性である第2半導体層を形成する方法である。
【0111】
バックコンタクト型太陽電池を製造する方法の好ましい他の一例としては、リフトオフ層上にレジストパターンを形成する、下記の方法が挙げられる。
具体的には、
半導体製品としてバックコンタクト型太陽電池を製造する、半導体製品の製造方法であって、
半導体基板が、少なくとも一方の表面側において、第1半導体層としてのp型半導体層又はn型半導体層を備え、且つ、第1半導体層に接して真性半導体層を備え、
レジストパターンが、第1半導体層上に、リフトオフ層を介して形成され、
レジストパターンを備える半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、レジストパターンの開口部の位置に該当する位置のリフトオフ層を除去し、
リフトオフ層の除去の後に、レジストパターンの剥離と、レジストパターンの開口部の位置に該当する位置の第1半導体層のエッチングによる除去と、が行われ、
第1半導体層が除去された空間の底面及び側面と、リフトオフ層上とを被覆するように、第1半導体層とは逆の極性である第2半導体層を形成し、
リフトオフ層の除去にともない、リフトオフ層に接触して位置していた第2半導体層を除去する方法である。
【0112】
バックコンタクト型の太陽電池は、シリコン基板(結晶シリコン基板)の受光面の反対に位置する裏面側に、p型及びn型の半導体層が形成されるとともに、これらの上に電極が形成されている裏面電極型の太陽電池である。
従来、最も多く製造・販売されている太陽電池は、結晶シリコン系太陽電池である。結晶シリコン系太陽電池では、電流の取出し効率の点から、通常金属電極が設けられる。しかし、結晶シリコン系太陽電池の受光面に金属電極を設ける場合、不透明な金属電極により受光面の受光が一部遮られるため、受光面の面積に相応する発電効率を得ることが困難である。
【0113】
バックコンタクト型の太陽電池では、受光面に金属電極を設ける必要がないため、結晶シリコン系太陽電池における発電効率に関する上記の課題を解消できる。
【0114】
バックコンタクト型の太陽電池では、上記の通り、裏面側に、p型及びn型の半導体層が、それぞれ所定の位置に形成されるようにパターニングされる。かかる半導体層のパターニングの際に、エッチングマスクであるレジストパターンと、酸化剤を含むエッチング液、特にオゾンとフッ酸とを含むエッチング液とが使用される。
このため、バックコンタクト型の太陽電池の裏面における半導体層のパターニングに用いられるレジストパターンは、酸化剤との接触後でも、塩基性剥離液によって容易且つ良好に剥離可能であることが強く望まれる。
上記の理由から、バックコンタクト型の太陽電池の製造では、エッチングマスクとしてのレジストパターン形成用の材料として、上記の樹脂組成物が特に好ましく用いられる。
【0115】
以下、バックコンタクト型太陽電池の製造方法の好ましい例として、
図1(
図1(a)~
図1(e))を参照しつつ、上記の樹脂組成物を用い、且つリフトオフ層を形成しない、バックコンタクト型太陽電池の製造方法について説明する。
なお、バックコンタクト型太陽電池の製造方法としては、例えば、特開2018-50005号公報に記載の方法を参照することができる。
【0116】
半導体基板は、少なくとも一方の表面において、第1半導体層12としてのp型半導体層又はn型半導体層を最表面に備える。半導体基板は、第1半導体層12に接して真性半導体層を備える。
図1(a)に、上記の要件を満たす好適な半導体基板について、面方向に対して垂直な断面の概略を示す。
図1(a)に示される半導体基板は、厚さ方向の中心部に、結晶シリコン基板10を備える。半導体基板は、結晶シリコン基板10の両面に、結晶シリコン基板10に接して真性半導体層11を備える。
図1(a)に示される半導体基板は、一方の真性半導体層11に接して、第1半導体層12を備える、もう一方の真性半導体層11に接して、絶縁層14を備える。
なお、
図1(a)に示される半導体基板において、絶縁層14側の面が、バックコンタクト型太陽電池を製造した際に、受光面である表側の面となる。他方、第1半導体等12側の面が、バックコンタクト型太陽電池を製造した際に、電極が形成される裏側の面となる。
【0117】
図1(a)に示される半導体基板における第1半導体層12上に、
図1(b)に示されるようにレジストパターン16が形成される。レジストパターン16の形成方法としては、は特に限定されない。レジストパターン16の形成方法としては、印刷法及びフォトリソグラフィー法が好ましく、印刷法がより好ましい。印刷法としては特に限定されず、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、及びインクジェット印刷等の種々の印刷方法を適用できる。これらの印刷方法の中では、印刷設備が安価でありながらも、所望する形状のレジストパターン16を正確且つ効率よく形成しやすいことから、スクリーン印刷が好ましい。
【0118】
樹脂組成物が感光性樹脂組成物である場合、レジストパターン16の形成はフォトリソグラフィー法により行われてもよい。フォトリソグラフィー法では、第1半導体層12上に樹脂組成物が塗布された後、塗布膜に対して、所望するパターン形状に応じたネガ型又はポジ型のフォトマスクを介して紫外線等の活性光線を露光した後、現像液により不要な部分を溶解除去させることによってレジストパターン16が形成される。
【0119】
レジストパターン16のサイズについて、厚さは、0.5μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上70μm以下がより好ましい。パターン線幅は、10μm以上3mm以下が好ましく、50μm以上1mm以下がより好ましい。パターン間の間隔(非レジスト部の幅)は、20μm以上5mm以下が好ましく、50μm以上2mm以下がより好ましい。
【0120】
次いで、レジストパターン16を備える半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、エッチングを行う。これにより、
図1(c)に示されるように、レジストパターン16の開口部の位置に該当する位置の、第1半導体層12、及び真性半導体11が除去される。
【0121】
酸化剤を含むエッチング液については前述した通りであり、オゾンと、フッ化水素酸(フッ酸)とを含むエッチング液が特に好ましく用いられる。
かかるエッチング液におけるオゾンの濃度は、0.1ppm以上100ppm以下が好ましく、1ppm以上70ppm以下がより好ましい。フッ酸の濃度は、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下がより好ましい。
【0122】
エッチング方法としては、第1半導体層12、及び真性半導体11を除去できる方法であれば特に限定されない。
エッチング方法としては、レジストパターン16を備える半導体基板をエッチング液に浸漬する方法、エッチング対象面にエッチング液を盛る液盛り法、及びエッチング対象面にエッチング液をスプレーするスプレー法等が挙げられる。
エッチング時間は、特に限定されず、第1半導体層12、及び真性半導体11が除去されるまでエッチングが行われる。
【0123】
上記の通りエッチングを行い、第1半導体層12、及び真性半導体層11を除去した後、
図1(d)に示されるようにレジストパターン16の剥離を行う。
レジストパターン16の剥離は、塩基性剥離液により行われる。
【0124】
塩基性剥離液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、及びメタケイ酸ナトリウム等の塩基性アルカリ金属塩;アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、及び1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノナン等の塩基性アミン類の水溶液を使用することができる。
塩基性剥離液における上記の塩基性成分の濃度は、レジストパターンの剥離を良好に行うことが出来れば特に限定されない。塩基性成分の濃度は、塩基性成分の塩基性の強さを勘案して決定することができる。塩基性剥離液における塩基性成分の濃度は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%以下がより好ましい。
塩基性剥離液としては、本発明の目的を阻害しない範囲で、水溶性有機溶剤や、例えば界面活性剤、ホウ砂等の緩衝成分のような種々の添加剤が加えられてもよい。
【0125】
塩基性剥離液によるレジストパターン16の剥離は、エッチング液を塩基性剥離液に変更することの他は、前述のエッチング方法と同様の方法により実施することができる。
【0126】
レジストパターン16が剥離された後、
図1(e)に示されるように、第1半導体層12と真性半導体層11とが除去された空間において、真性半導体層11と、第1半導体層12とは逆の極性である第2半導体層13とをこの順で形成する。
かかる操作は、例えば、レジストパターンの形成及び剥離や、CVD法を組み合わせた周知の方法により実施される。
このようにして、第1半導体層12と、第2半導体層13とが所望する状態にパターニングされた半導体基板が得られる。
図1(e)に示される状態の半導体基板に対して、周知の方法に従い、電極形成、配線形成等を施すことにより、バックコンタクト型太陽電池を製造することができる。
【0127】
以下、バックコンタクト型太陽電池の製造方法の好ましいもう1つの例として、
図2(
図2(a)~
図2(f))を参照しつつ、上記の樹脂組成物を用い、且つリフトオフ層を形成する、バックコンタクト型太陽電池の製造方法について説明する。
なお、バックコンタクト型太陽電池の製造方法としては、例えば、特開2018-50005号公報に記載の方法を参照することができる。
【0128】
半導体基板は、少なくとも一方の表面側において、第1半導体層12としてのp型半導体層又はn型半導体層を備える。半導体基板は、第1半導体層12に接して真性半導体層を備える。
図2(a)に、上記の要件を満たす好適な半導体基板について、面方向に対して垂直な断面の概略を示す。
図2(a)に示される半導体基板は、第1半導体層12上に、リフトオフ層15を備えることを除き、
図1(a)に示される半導体基板と同様である。
なお、
図2(a)に示される半導体基板において、絶縁層14側の面が、バックコンタクト型太陽電池を製造した際に、受光面である表側の面となる。他方、リフトオフ層15側の面が、バックコンタクト型太陽電池を製造した際に、電極が形成される裏側の面となる。
【0129】
前述のリフトオフ層15は、レジストパターン16の剥離に使用される塩基性剥離液により剥離されない耐性を備え、第1半導体層12及び第2半導体層13に対して過度なエッチングを生じさせることなく、剥離液により除去可能な層である。
かかるリフトオフ層15の材質としては、例えば、酸化シリコン等が挙げられる。第1半導体層12及び第2半導体層13を残存させつつ、リフトオフ層15を剥離するための剥離液としては、フッ酸等が挙げられる。
【0130】
図2(a)に示される半導体基板におけるリフトオフ層15上に、
図2(b)に示されるようにレジストパターン16が形成される。レジストパターンの形成方法は、
図1に示されるバックコンタクト型太陽電池の製造方法について説明した方法と同様である。
【0131】
次いで、レジストパターン16を備える半導体基板を、酸化剤を含むエッチング液と接触させることで、エッチングを行う。これにより、
図2(c)に示されるように、レジストパターン16の開口部の位置に該当する位置の、リフトオフ層15が除去される。
エッチング方法は、
図1に示されるバックコンタクト型太陽電池の製造方法について説明した方法と同様である。
エッチング時間を調整することにより、リフトオフ層15のみを除去することが可能である。
【0132】
酸化剤を含むエッチング液については前述した通りであり、オゾンと、フッ化水素酸(フッ酸)とを含むエッチング液が特に好ましく用いられる。
リフトオフ層15の除去に用いられるエッチング液におけるオゾンの濃度は、0.1ppm以上100ppm以下が好ましく、1ppm以上70ppm以下がより好ましい。フッ酸の濃度は、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下がより好ましい。
【0133】
上記の通りエッチングを行い、リフトオフ層15を除去した後、レジストパターン16の剥離と、レジストパターン16の開口部の位置に該当する位置(リフトオフ層15の開口部にも該当する位置)の第1半導体層12の除去とが行なわれる。
レジストパターン16の剥離と、第1半導体層12の所定の位置での部分的な除去とが行なわれる順序は特に限定されない。
【0134】
まず、レジストパターン16の剥離についで、第1半導体層12の所定の位置での部分的な除去を行う方法について説明する。
この方法では、まず、
図2(d1)に示されるようにレジストパターン16の剥離を行う。
レジストパターン16の剥離は、塩基性剥離液により行われる。
塩基性剥離液によるレジストパターン16の剥離方法は、
図1に示されるバックコンタクト型太陽電池の製造方法について説明した方法と同様である。
【0135】
レジストパターン16が剥離された後、
図2(d1)中に示される、レジストパターン16の開口部の位置に該当する位置(リフトオフ層15の開口部にも該当する位置)の第1半導体層12がエッチングにより除去される。第1半導体層12のエッチングによる除去後の状態を、
図2(e)に示す。
第1半導体層12を除去する際のエッチング方法としては特に限定されないが、リフトオフ層15にダメージを与え難いことからプラズマエッチングが好ましい。
【0136】
次に、第1半導体層12の所定の位置での部分的な除去についで、レジストパターン16の除去を行う方法について説明する。
この方法では、まず、
図2(d2)に示されるように、レジストパターン16の開口部の位置に該当する位置(リフトオフ層15の開口部にも該当する位置)の第1半導体層12がエッチングにより除去される。この場合、第1半導体層12をエッチングするためのエッチャントとしては、オゾンと、フッ化水素酸(フッ酸)とを含むエッチング液が用いられる。ここでリフトオフ層15の除去と、第1半導体層12の除去とは、オゾンと、フッ化水素酸(フッ酸)とを含むエッチング液を用いて連続的に行われてもよい。
【0137】
次いで、
図2(d2)中に示されるレジストパターン16が剥離される。
レジストパターン16の剥離は、塩基性剥離液により行われる。
塩基性剥離液によるレジストパターン16の剥離方法は、
図1に示されるバックコンタクト型太陽電池の製造方法について説明した方法と同様である。レジストパターン16の剥離後の状態を、
図2(e)に示す。
【0138】
そして、第1半導体層12の除去に次いで、
図2(f)に示されるように、第1半導体層12が除去された空間の底面及び側面と、リフトオフ層15上とを被覆するように、第1半導体層12とは逆の極性である第2半導体層13が形成される。第2半導体層13の形成方法は特に限定されないが、例えば、CVD法等により行われる。
【0139】
第2半導体層13の形成後、リフトオフ層15の除去にともない、リフトオフ層15に接触して位置していた第2半導体層13が除去される。
リフトオフ層15を除去することにより、リフトオフ層15に接触して位置していた第2半導体層13のみが選択的に除去され、
図2(g)に示されるように、概ね、第1半導体層12がエッチングにより除去された空間にのみ第2半導体層13が充填される。
このようにして、第1半導体層12と、第2半導体層13とが所望する状態にパターニングされた半導体基板が得られる。
図2(g)に示される状態の半導体基板に対して、周知の方法に従い、電極形成、配線形成等を施すことにより、バックコンタクト型太陽電池を製造することができる。
【0140】
図2に示されるリフトオフ層15を用いる方法は、
図1に示されるリフトオフ層15を用いない工程と比較して、
図1(e)の工程で必要である半導体層のパターニングのための煩雑な操作が不要である点で有利である。
【実施例】
【0141】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、これらの実施例になんら限定されない。
【0142】
後述する実施例、及び比較例の樹脂組成物について、以下の方法に従って、樹脂組成物、又は樹脂組成物を用いて形成されるレジストパターンの性能評価を行った。
【0143】
<性能評価>
(粘度)
JISZ8803に記載の方法従い、B型粘度計を用いて樹脂組成物の粘度を測定した。樹脂組成物がある程度高粘度であることから、粘度は、HBタイプの粘度計(英弘精機製)を用いて測定された。コーンプレート型ローターを用いて回転数5rpmで25±1℃範囲で測定された粘度が、本明細書において規定される粘度である。
【0144】
(印刷性)
L(ライン幅)/S(スペース幅)=400μm/600μm、乳剤厚=20μmのスクリーン印刷版を用いて、スキージ圧=0.20MPa、速度=100mm/分の条件で、リフトオフ層としてアモルファスシリコン層が製膜されたシリコンウェハのリフトオフ層上に、スクリーン印刷機により所定のパターンのレジストパターンを印刷した。印刷時の、かすれ、パターンの広がり、及びパターンの厚みから、以下の評価基準に基づいて印刷性を評価した。
○:かすれなし。パターン広がり幅50μm以下、厚みは設定値に対して±3μm以下で、スクリーン印刷でき、印刷性に問題なし。
△:かすれなし。パターン広がり50μm超過幅70μm以下、厚みは設定値に対して±5μm以下で、スクリーン印刷にやや問題がある。
×:かすれあり。パターン広がり幅70μm超過。厚みは設定値に対して±5μm以超過のいずれかで、スクリーン印刷が不良である。
【0145】
(耐オゾン・フッ酸性)
テクスチャー付きシリコンウェハにp層(正孔)を製膜したセル上に、スクリーン印刷、及び120℃30分の乾燥よってレジストパターンを形成した。レジストパターンの寸法は、ライン幅450μm、ライン間スペース幅100μm、厚み40μmであった。
レジストパターンを備えるセルを、オゾン40質量ppm、フッ酸7質量%の濃度で含有するエッチング液中に10分間浸漬した。
浸漬後、走査型電子顕微鏡(SEM)によりp層の状態を確認し、レジストパターンの耐オゾン・フッ酸性を以下の評価基準に基づき評価した。
良好:p層のライン幅が400μm以上450μm以下
可:p層のライン幅が350μm以上400μm未満
不良:p層のライン幅が350μm未満
【0146】
(レジストパターンの剥離性)
上記のオゾン・フッ酸処理が施されたセルを、0.4質量%の水酸化カリウム、1.0質量%のホウ砂を溶解した水溶液中で、揺動(遥動幅=3cm、速度=60rpm)させながら、10分間浸漬して、浸漬後のレジストパターンの剥離状態を光学顕微鏡で観察した。
A:10分間の浸漬で完全に剥離。
B:10分間の浸漬で概ね剥離し、剥離残は追加の浸漬や、超音波照射により除去可能。
C:10分間の浸漬では全く又はわずかしか剥離されない。
【0147】
以下の処方に従い、実施例1~7、及び比較例1のレジストパターン形成用の樹脂組成物を調製し、得られた樹脂組成物を用いて上記の方法に従って諸特性についての評価を行った。
【0148】
[実施例1]
ブレンド専用の容器(φ89×φ98×94mm、内容量470cc、ポリプロピレン製)に、バインダー成分としてマレイン酸変性ロジンエステル樹脂(商品名:マルキードNo.6、荒川化学工業(株)製)55gと、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(商品名:エマール270J、花王(株)製)1gと、酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX1010、BASF・ジャパン(株)製)2gと、フィラーとして球状シリカ粉末(商品名:SFP-30M、電気化学工業(株)製)15gと、溶剤として1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノール(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)27gとを添加して、薬匙を用いて手動で撹拌後、専用の撹拌・脱泡装置(品番:泡取り錬太郎ARV-310、(株)シンキー社製)を用いて混合物にせん断を掛けて撹拌した。
混合、撹拌・脱泡を行い、レジストパターン形成用の樹脂組成物を得た。得られたエッチングレジスト組成物に関して、上述した測定方法により、粘度、印刷性、耐オゾン・フッ酸性、及びレジスト剥離性の特性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0149】
[実施例2]
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムに替えてポリオキシエチレンアルキレンエーテル(商品名:エマルゲンLS-110、花王(株)製)1gを用いることと、ペンタエリスリトールテトラ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]に替えて4,4’-ビス(α、α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:ナウガード445、インフォマティカ・ジャパン(株))2gを用いることと、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノールの使用量を15gに変更することと、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート12gを添加したことと以外は、実施例1と同様の方法でレジストパターン形成用の樹脂組成物を作製し、特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0150】
[実施例3]
マレイン酸変性ロジンエステル樹脂の使用量を30gに変更することと、粒状シリカの使用量を5gに変更することと、タルク(化合物名:含水ケイ酸マグネシウム、和光純薬工業(株)製)35g、及びカーボンブラック(商品名:MA-100、三菱ケミカル(株)製)2gを加えることと、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノール15gをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート10gに変更することと以外は、実施例1と同様の方法でレジストパターン形成用の樹脂組成物を作製し、特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0151】
[実施例4]
マレイン酸変性ロジンエステル樹脂の添加量を15gに変更することと、酸性アクリル樹脂15g(ZAH-110、カルボン酸官能基量=96mgKOH/g、(綜研化学(株)製)を用いることと、ペンタエリスリトールテトラ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を4,4’-ビス(α、α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン1gに変更することと、酸無水物化合物として2-オクテニルコハク酸無水物(和光純薬工業(株)製)1gを用いることと以外は、実施例3と同様の方法でレジストパターン形成用の樹脂組成物を作製し、特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0152】
[実施例5]
酸性アクリル樹脂の添加量を10gに変更することと、ロジンエステル樹脂の添加量を20gに変更することと、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムをポリオキシエチレンアルキルエーテル2gへ変更することと、2-オクテニルコハク酸無水物を添加しないことと以外は、実施例4と同様の方法でレジストパターン形成用の樹脂組成物を作製し、特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0153】
[実施例6]
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムをポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム(商品名:ニューカルゲンTG-100、竹本油脂(株)製)に替えることと、ペンタエリスリトールテトラ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール(商品名:IRGANOX1520L、BASF・ジャパン(株)製)に替えることと以外は、実施例1と同様の方法でレジストパターン形成用の樹脂組成物を作製し、特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0154】
[実施例7]
ロジンエステル樹脂の使用量を45gに変更することと、界面活性剤及び酸化防止剤を用いないことと、タルク(含水ケイ酸マグネシウム、和光純薬工業(株))25g、シリカ粉末(電気化学工業社製「SFP-30M」)2g、及びカーボンブラック(MA-100.三菱ケミカル(株)製)2gを用いることと、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノールの使用量を20gに変更することと、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート5gを添加することと以外は、実施例1と同様の方法でレジストパターン形成用の樹脂組成物を作製し、特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0155】
[比較例1]
ロジンエステル樹脂55gを、酸性アクリル樹脂(ZAH-110、カルボン酸官能基量=96mgKOH/g、(綜研化学(株)製))30gに変更することと、フィラーとして、シリカ粉末(電気化学工業社製「SFP-30M」)20g、及びタルク(含水ケイ酸マグネシウム、和光純薬工業(株))30gを用いることと、2-オクテニルコハク酸無水物(和光純薬工業(株)製)を用いないことと、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノールの使用量と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの使用量をそれぞれ10gに変更することと以外は、実施例1と同様の方法でレジストパターン形成用の樹脂組成物を作製し、特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0156】
【0157】
実施例、及び比較例の樹脂組成物、又は当該樹脂組成物を用いて形成されたレジストパターンは、いずれも、粘度、印刷性、耐オゾン・フッ酸性について問題なかった。
他方、比較例1からは、樹脂組成物がロジンエステル樹脂を含まない場合、レジストパターンが酸化剤に接触した後の、レジストパターンの塩基性剥離液による剥離性が著しく損なわれることが分かる。
実施例7によれば、樹脂組成物が、界面活性剤と、酸化防止剤と、フィラーとを組み合わせて含有しない場合、レジストパターンが酸化剤に接触した後の、レジストパターンの塩基性剥離液による剥離性が良好ではあるものの、やや劣ることが分かる。
【符号の説明】
【0158】
10 結晶シリコン基板
11 真性半導体層
12 第1半導体層
13 第2半導体層
14 絶縁層
15 リフトオフ層
16 レジストパターン