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特許7291728機械部品の寸法を検査するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】機械部品の寸法を検査するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/02 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
G01B5/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020565276
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2019063182
(87)【国際公開番号】W WO2019224232
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】102018000005610
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】500200708
【氏名又は名称】マーポス、ソチエタ、ペル、アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MARPOSS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ、パレスキ
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第000020017509(DE,U1)
【文献】特表2016-504586(JP,A)
【文献】特開2011-242201(JP,A)
【文献】特開2006-226964(JP,A)
【文献】米国特許第05714686(US,A)
【文献】独国特許出願公開第04015576(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面(5)と孔(1)とを備える機械部品であって、前記孔は、第2面(6)と、前記第1面(5)と前記第2面(6)との間の接続面(7)と、円形の縁部(S)と、を画定する、機械部品の寸法を、検査装置によって測定または検査するための方法であって、
前記検査装置は、
・少なくとも第1方向(Y)に沿って前記機械部品(W)に対して移動可能な支持フレーム(20)と、
・少なくとも前記第1方向(Y)に沿って前記支持フレーム(20)に移動可能に接続された第1フィーラ(15)と、
・少なくとも前記第1方向(Y)に垂直な第2方向(X)に沿って前記支持フレーム(20)に移動可能に接続された第2フィーラ(25)と、
・固定スペース(D)により前記第1方向(Y)に沿って互いに離間した前記第1フィーラ(15)および前記第2フィーラ(25)と、
・前記第1フィーラ(15)に連結され、前記第1方向(Y)に沿った前記支持フレーム(20)に対する前記第1フィーラ(15)の変位に応答する信号を提供するように適合された第1トランスデューサ(16)と、
・前記第2フィーラ(25)に連結され、前記第2方向(X)に沿った前記支持フレーム(20)に対する第2フィーラ(25)の変位に応答する信号を提供するように適合された第2トランスデューサ(26)と、
を備え、
前記方法は、
(i)前記支持フレーム(20)を開始位置に配置するステップと、
(ii)前記第1方向(Y)に沿って前記支持フレーム(20)と前記機械部品(W)とを相互移動させるステップであって、前記相互移動中に、
a.前記第2フィーラ(25)は、前記接続面(7)の少なくとも部分的なスキャンを行い、前記第2トランスデューサ(26)は、関連するスキャン信号(T2)を提供し、
b.前記第1フィーラ(15)は、前記第1面(5)と協働し、前記第1トランスデューサ(16)は、関連する参照信号(T1)を提供し、前記スキャン信号(T2)と前記参照信号(T1)は、相互に同期する、
ステップと、
(iii)同期した前記参照信号(T1)および前記スキャン信号(T2)と、前記固定スペース(D)とに基づいて、前記第1方向(Y)に沿った前記第1面(5)から前記縁部(S)までの距離(H)の計算を行うステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記距離(H)の前記計算は、前記第1方向(Y)に沿った前記縁部(S)の位置を示す第1の値(YB)、および前記第1方向(Y)に沿った前記第1面(5)の位置を示す第2の値(YA)の計算を含み、
前記距離は、前記第1の値(YB)と前記第2の値(YA)との差として得られる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スキャン信号(T2)に従って、前記第2フィーラ(25)が前記縁部(S)と接触する移行時点(t2)を検出するステップを備え、
前記距離(H)の前記計算は、前記移行時点(t2)を考慮する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の値(YB)は、前記移行時点(t2)に基づいて計算される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1フィーラ(15)が前記第1面(5)と接触し、かつ前記参照信号(T1)が所定の値(T1F)を取る停止時点(t4)を検出するステップを備え、
前記距離計算は、前記停止時点(t4)を考慮する、
請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の値(YA)は、前記停止時点(t4)と前記固定スペース(D)とに基づいて計算される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1方向(Y)に沿った前記支持フレーム(20)と前記機械部品(W)との前記相互移動は、既知の一定速度(v)で行われる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記開始位置において、前記第1フィーラ(15)は、前記第1面(5)に面するとともに前記第1面(5)から離間しており、
前記第1方向(Y)に沿った前記支持フレーム(20)と前記機械部品(W)との前記相互移動中に、前記第1フィーラは、前記第1面(5)に向かって移動し、前記第1トランスデューサ(16)は、前記第1フィーラ(15)と前記第1面(5)との接触時に、前記参照信号(T1)を提供する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1面(5)は、前記機械部品(W)の内面であり、
前記孔(1)は、貫通孔であり、
前記方法は、前記支持フレーム(20)を移動させることにより、前記第1フィーラ(15)および前記第2フィーラ(25)が前記孔(1)を通過して前記第1面(5)および前記接続面(7)に近接して配置される予備ステップを備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1面(5)と孔(1)とを備える機械部品(W)の寸法を測定または検査するための装置であって、
・少なくとも第1方向(Y)に沿って前記機械部品(W)に対して移動可能な支持フレーム(20)と、
・少なくとも前記第1方向(Y)に沿って前記支持フレーム(20)に移動可能に接続された第1フィーラ(15)と、
・少なくとも前記第1方向(Y)に垂直な第2方向(X)に沿って前記支持フレーム(20)に移動可能に接続された第2フィーラ(25)と、
・固定スペース(D)により前記第1方向(Y)に沿って互いに離間した前記第1フィーラ(15)および前記第2フィーラ(25)と、
・前記第1フィーラ(15)に連結され、前記第1方向(Y)に沿った前記支持フレーム(20)に対する前記第1フィーラ(15)の変位に応答する信号(T1)を提供するように適合された第1トランスデューサ(16)と、
・前記第2フィーラ(25)に連結され、前記第2方向(X)に沿った前記支持フレーム(20)に対する前記第2フィーラ(25)の変位に応答する信号(T2)を提供するように適合された第2トランスデューサ(26)と、
・前記第1トランスデューサ(16)および前記第2トランスデューサ(26)により提供された前記信号(T1、T2)を同期的に受信するように構成されるとともに、同期的に取得した前記信号(T1、T2)および前記固定スペース(D)を処理して前記第1方向(Y)に沿った前記第1面(5)から前記孔(1)の縁部(S)までの距離(H)についての情報を得るように構成された処理ユニット(40)と、
を備える装置。
【請求項11】
前記第1トランスデューサ(16)および前記第2トランスデューサ(26)により提供された前記信号(T1、T2)を同期的に取得し、前記信号(T1、T2)を前記処理ユニット(40)に同期的に送信するために前記支持フレーム(20)に接続された取得送信ユニット(30)を備える、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記取得送信ユニット(30)は、無線送信機を備える、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実施するための、請求項10から12のいずれか一項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品の寸法を検査するための方法および装置、特に、表面から縁部までの距離を検査するための方法および装置に関する。本発明は、例えば円筒の孔の口部でのテーパ面である面取り部を備えた機械部品において、これらの面取り部の長さを検査または測定するために使用される。
【背景技術】
【0002】
面取り部を手動で測定するための多くの解決策が知られている。機械的測定デバイスによって面取り部の表面と接触し、先験的に知られている面取り部の角度の値に基づいて面取り部の長さを検査することができる。
【0003】
面取り部の長さを検査するための装置は、例えば、ドイツ特許出願番号DE4015576A1に記載されている。この装置は、被検査部品のための支持部と、2つのストッパと、を備えている。ストッパは、既知の横方向位置に並んで配置され、長手方向に沿って部品の端面と面取り部の表面とに係合する。ストッパのうちの一方は、可動であり、センサに接続されている。面取り部の角度の値が既知であるため、面取り部の長さは、適切な三角関数計算によってセンサ信号から得られる。
【0004】
特許出願DE4015576A1による装置は、手動で使用され、小さくない寸法を有し、内側面取り部、すなわち円筒の孔の口部でのテーパ面の長さを検査するように容易に適合させることができない。
【0005】
更に、この装置や他の既知のデバイスや機器により実施できない課題は、機械部品の内面であって、機械部品の完全性を損なうことなく外部からアクセスすることができない表面に開口している孔に存在する内側面取り部の長さを検査することである。
【0006】
図1の略図は、外面3と、内面すなわち第1面5と、孔1、具体的には、例えば実質的に円筒面6である第2面を画定する貫通孔と、前記第1面と前記第2面との間のテーパ接続面すなわち面取り部7と、を有する機械部品Wを示す。実質的に円形の縁部Sが、孔1の内部において、円筒面6から接続面7を区切っている。機械部品の形状のため、内面5にアクセスすることはできない。面取り部7の長さH、すなわち、孔1の軸に沿った内面5から縁部Sまでの距離Hを検査するためには、外側、すなわち外面3の側から孔1を介して入ることが唯一の可能性である。
【0007】
図1に示すような長さまたは面取り部の典型的なサイズは、10分の数ミリメートルから数ミリメートルの範囲に亘る。孔の典型的な直径は、数ミリメートルから数センチメートルの範囲に亘る値を有している。
【0008】
このタイプの測定の難しさは、内側の面取り部にアクセスするための余地が限られていること、および、検査を工作機械または他の自動機械で短時間かつ完全に自動的に実施する必要があることである。
【0009】
内側面取り部へのアクセスを妨げる1つまたは複数の部分を切断しないことで機械部品に影響を及ぼさずに測定を実施できる既知の解決策はない。これは、接触検査システム(内部寸法を検査するためのプラグゲージや、三次元測定機)を使用する場合、および非接触検査用の光学スキャンプローブが装備された機械を使用する場合のいずれでもそうである。
【0010】
更に、同一の機械部品が加工されている工作機械において測定を非常に短時間(数秒)で実施することは知られていない。
【0011】
三次元座標機械を使用することによる間接的な測定は可能であり、知られている。しかし、この場合、孔の内面、面取り部、および部品の内面の位置を含む部品の輪郭全体を再構築するように、相当な個数のポイントに対応する見積もり値を取得するための複数のフィーラを含む特殊なシステムが使用される。これらの測定は、複雑な処理と相当な時間を要求する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、機械部品の寸法検査のための装置および方法を提供することである。本発明の装置および方法は、機械部品の表面同士の距離、特にテーパ部や面取り部の長さの検査を可能とするとともに、既知の装置の限界を克服することを可能としつつ、結果の信頼性、頑丈性、コンパクト性を保証し、工場環境においても柔軟に使用できるものである。本発明の更なる目的は、機械部品の内面に対応する、すなわち開口している孔の口部に存在する面取り部の寸法および形状偏差検査を実施することができる装置を得ることである。
【0013】
これらの、および他の目的は、添付の請求項による方法および装置により達成される。
【0014】
本発明による装置は、少なくとも第1方向に沿って検査される機械部品に対して移動可能な支持フレームと、固定スペースにより第1方向に沿って互いに離間するように支持フレームに接続された第1フィーラおよび第2フィーラと、を備える。フィーラは、支持フレームに対して、互いに垂直な方向において変位することができ、第1トランスデューサおよび第2トランスデューサは、処理ユニットにフィーラの変位に関する信号を同期的に提供する。当該装置の使用のための本発明による方法は、支持フレームを開始位置に配置するステップと、第1方向に沿って支持フレームと検査される機械部品とを相互移動させるステップと、第1方向における機械部品の内面から縁部までの距離の計算を行うステップと、を含む。上記の相互移動中に、第1方向に垂直な方向に沿って移動可能な一方のフィーラが、接続面の少なくとも部分的なスキャンを実施し、対応するトランスデューサが、関連するスキャン信号を提供する。一方、第1方向に沿って移動することができる他方のフィーラが、機械部品の内面と協働し、対応するトランスデューサが、関連する参照信号を提供する。スキャン信号と参照信号は、相互に同期している。内面から縁部までの距離の計算は、同期した参照信号およびスキャン信号と固定スペースとに基づいて行われ、例えば、スキャンを実施しているフィーラが縁部と接触する移行時点が考慮される。
【0015】
本発明の目的および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0016】
本発明は、非限定的な例として添付された図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、検査される機械部品Wの部分概略断面図である。
図2図2は、本発明による検査装置の側面図である。
図3図3は、図2の検査装置の部分拡大斜視図である。
図4A図4Aは、本発明による装置により実施される検査サイクルのステップを非常に概略的に示す図である。
図4B図4Bは、本発明による装置により実施される検査サイクルの別のステップを非常に概略的に示す図である。
図4C図4Cは、本発明による装置により実施される検査サイクルの別のステップを非常に概略的に示す図である。
図4D図4Dは、本発明による装置により実施される検査サイクルの別のステップを非常に概略的に示す図である。
図5図5は、本発明による検査装置に存在するトランスデューサにより提供される信号の傾向を示すグラフである。
図6図6は、本発明による検査装置のフィーラが被検査部品のスキャン中にとる位置のうちのいくつかを概略的にグラフで示す図である。
図7図7は、本発明の代替的な実施形態による装置のいくつかの構成要素を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2および図3は、2つのゲージヘッドを備えた本発明による検査装置またはデバイスを示す。第1ゲージヘッド11は、第1アーム13を備えている。第1アーム13は、支点手段(これ自体は既知であり、図示されていない)によって、図2のX‐Y平面に垂直な方向に沿って位置合わせされた第1軸A1を中心として、固定部17に対して旋回することができるように形成されている。第1フィーラ15は、第1アーム13の自由端部に接続されるとともに、第1方向Yに実質的に沿った制限された動作を行うことができる。第2ゲージヘッド21は、第2アーム23を備えている。第2アーム23は、支点手段(これ自体は既知であり、図示されていない)によって、第1軸A1に平行な第2軸A2を中心として、固定部27に対して旋回することができる。第2フィーラ25は、第2アーム23の自由端部に接続されるとともに、第2方向Xに実質的に沿った制限された動作を行うことができる。ヘッド11および21、特にそれぞれの固定部17および27は、支持フレーム20に固定されている。ヘッド11および21は、それぞれ図2に概略的に示される既知のタイプの第1および第2トランスデューサであって、それぞれが参照符号16および26で示される第1および第2トランスデューサを備えている。第1および第2トランスデューサ16、26は、取得送信ユニットに、それぞれの固定部17および27に対する、すなわち支持フレーム20に対するフィーラ15および25の変位に応答する電気信号を提供する。取得送信ユニット、より具体的には無線送信機、および支持フレーム20を堅固に保持する関連するケースは、図2に概略的に表され、参照符号30で示されている。無線送信機30は、2つのヘッド11および21の信号を同期した態様で受信し得るとともに、関連する測定値を同期を維持しつつ遠隔処理ユニットに送信し得る取得手段を備えている。遠隔処理ユニットは、図2に概略的に表され、参照符号40で示されている。工作機械の主軸への設置に適したコーン33が無線送信機30を支承している。
【0019】
ヘッド11および21の配置、ならびに支持フレーム20への接続は、第1フィーラ15と第2フィーラ25とが、固定スペースDにより第1方向Yに沿って互いに離間するように、かつトランスデューサ16および26が、それぞれのフィーラ15および25の互いに実質的に垂直な方向への変位を示すようになされている。固定スペースDは、例えば第2フィーラ25の中心と第1フィーラ15の第1方向Yに沿った接触点との間の距離によって画定される。固定スペースDは、例えば光学測定機器を用いて、較正フェーズで測定される。
【0020】
図2および図3に示す好適な実施形態によれば、検査装置は、コーン33によって、工作機械の主軸に接続され、既知の一定速度で既知の動作を行うその機械の軸とともに移動する。
【0021】
面取り部7の長さH、すなわち、第1面すなわち内面5から縁部Sまでの第1方向Yに沿った距離の測定を実施するために、機械部品Wを図示しない既知の方法で適宜配置する。予備ステップにおいて、主軸の第1方向Yにおける制御された移動と、この移動から派生する検査デバイスを支承する支持フレーム20の移動が指令されることにより、アーム13および23と、それゆえフィーラ15および25とが、外面3の側から入って孔1を通過し、内面5および接続面7に近接して配置される。次に、主軸と、結果として支持フレーム20とを、初期化移動により、第1方向Yに垂直な平面において、第2方向Xに沿って開始位置まで変位させる。開始位置とは、スキャンが開始され得る位置である。図4Aは、第1フィーラ15が内面5に対面し、第2フィーラ25が面取り部7に対面している開始位置を概略的に示す。
【0022】
代替的に、本発明の好適な実施形態によれば、支持フレーム20の開始位置は、第2方向Xに沿った上述の初期化移動において、第2フィーラ25と面取り部7の表面との接触によって規定される。
【0023】
開始位置から開始して、第1方向Yに沿ったスキャン動作が工作機械の制御部により制御され、これにより、第1方向Yに沿った支持フレーム20と機械部品Wとの相互移動が生じる。図5のグラフにおいて、上方の曲線T2は、第2トランスデューサ26により提供されるスキャン信号の傾向を示す。このような信号は、第2方向Xに沿った第2フィーラ25の変位に応答するものである。図5の同一グラフにおいて、下方の曲線T1は、第1トランスデューサ16により提供される参照信号の傾向を示す。この参照信号は、第1方向Yに沿った第1フィーラ15の変位に応答するものである。スキャン動作中に、信号T1およびT2は、無線送信機30の既知のタイプの図示しない取得手段により同期した態様で取得され、そして遠隔処理ユニット40に同期した態様で送信される。図5は、上述のように相互に垂直な方向YおよびXにおけるフィーラ15および25の変位にそれぞれ関連する両信号T1およびT2の傾向を示し、これらの信号T1およびT2が時間尺度において同期していることを強調している。
【0024】
開始位置が図4Aの位置に対応し、第2フィーラ25が面取り部7の表面と接触していない場合、第1方向Yに沿ったスキャンの第1ステップは、時点t0Aで開始する。時点t1で、第2フィーラ25は、面取り部7の表面と接触し(図4B)、その輪郭に追従する。その間、第1フィーラ15は、機械部品の内面5に向かって移動する。時点t1は、トランスデューサ26の信号が変化し始める瞬間を評価することで常に特定され得る。
【0025】
これに対し、図4Bに対応する構成のように、開始位置において第2フィーラ25が既に面取り部7の表面と接触している場合、第1方向Yに沿ったスキャンは、例えばt1に対応する時点t0Bで開始する。時点t0B=t1に先行する曲線T1およびT2の部分は、図5において破線で示されている。これは、これらの部分は、開始位置が図4Bに示されたようなものである場合、存在しないためである。本例においても、第2フィーラ25が、面取り部7の表面の輪郭に追従する間、第1フィーラ15は、機械部品の内面5に向かって移動する。
【0026】
面取り部7の表面をスキャンする過程において、第2フィーラ25は、第2方向Xにおいて移動し、これに応じて第2ヘッド21は、無線送信機30の取得手段を介して信号を提供する。この信号は、初期値T20から始まり、第2フィーラ25が例えば円筒の孔1の表面6から面取り部7を区切る縁部Sと接触する移行時点t2での値T2Sまで増加する(図4C)。第1方向Yにおけるスキャン動作は、第1フィーラ15が、時点t3で機械部品Wの内面5と接触し、固定部17に対して第1方向Yにおいて移動するまで継続する(図4D)。第1トランスデューサ16は、無線送信機30の取得手段を介して、初期値T10から始まる第1フィーラ15の移動に応答する参照信号T1を提供する(図5)。支持フレーム20の移動は、第1フィーラ15の所定の移動(例えば250ミクロン)後である、参照信号T1の所定値T1Fに対応する停止時点t4での終了位置において停止する。支持フレーム20の実際の停止は、時点t4の後の瞬間に起こり得ることに留意されたい。
【0027】
換言すれば、検査デバイスを支承する支持フレーム20の第1方向Yにおける単一の移動は、開始位置から開始して終了位置まで、工作機械の制御部により制御される。スキャン中、第1フィーラ15が内面5と接触してフィーラ15と部品Wとの増加する干渉値を提供するまで、第2フィーラ25は、面取り部7の輪郭に追従して縁部Sに到達するとともにこれをオーバーランする。
【0028】
面取り部7の長さH、すなわち、第1方向Yに沿った第1面すなわち内面5から縁部Sまでの距離Hは、曲線の分析、すなわち、図5の同期した参照信号T1およびスキャン信号T2の分析から、
‐工作機械により決定される既知の一定のスキャン速度と、
‐固定スペースDの量に関する較正の単一の追加情報、すなわち、フィーラ15と25との間の第1方向Yに沿った距離を示す値と、
を考慮して、処理ユニット40により決定される。
【0029】
例えば、面取り部7の長さHは、図5および図6を参照して以下に説明する2つの方法のうちの一方のステップに従って決定され得る。
【0030】
いずれの場合においても、支持フレーム20の開始位置は、図4Bの位置に対応すると考えられる。すなわち、時点t1=t0Bであるこのような位置において、第2フィーラ25は、接続面7と接触している。
【0031】
第1の方法
概要:第2トランスデューサ26の信号T2が値T2Sを取る移行時点t2、すなわち、第2フィーラ25が縁部Sと接触する移行時点t2が検出される。面取り部7の長さHの値は、移行時点t2と、所定の終了位置に対応する停止時点t4と、較正データとして取得される固定スペースDとに基づいて得られる。具体的には、較正フェーズにおいて、固定スペースDは、適切な機器、例えば光学ゲージにより、第1トランスデューサ16の参照信号T1が値T1Fを取ったときの、第2フィーラ25の中心と第1フィーラ15の第1方向Yに沿った接触点との間の距離として取得される。
【0032】
詳細:
・原点O(X0、Y0)として第2フィーラ25の中心を有する参照システムX‐Yであって、XおよびY軸が上述の第2方向Xおよび第1方向Yにそれぞれ整列している参照システムX‐Yが特定される。支持フレーム20を支承する工作機械の主軸が、第1方向Yにおいて既知の一定速度vで移動する。速度vが一定かつ既知であることにより、Yの値は、検出時点や時間間隔に基づいて得られる。原点t0Bの時点は、第2フィーラ25が移動し始めてY方向に沿ったスキャンを行う時点である。
・縁部Sに対応する、面取り部7のスキャンの終了時の第2フィーラ25の中心のX座標の値Xfinが計算される。スキャン信号T2の値T2Sに対応する値Xfinは、スキャン信号T2のゼロ導関数により計算される。
・座標Xfinに到達する移行時点t2が検出される。
・Xfinに対応するY座標の第1の値YBが計算される。このような値YBは、第1方向Yに沿った縁部Sの位置を示し、以下のように計算される。
YB=v(t2-t0B)
・第1フィーラ15が所定の量だけ、例えば250ミクロンだけ移動し、第1トランスデューサ16の参照信号T1が値T1Fを取る停止時点t4が検出される。
・停止時点t4での工作機械の参照システムにおけるY座標の値YFSは、以下のように計算される。
YFS=v(t4-t0B)
・第1方向Yに沿った第1内面5の位置を示すY座標の第2の値YAが、値YFSから較正データとして取得した固定スペースDを差し引くことにより計算される。
・面取り部7の長さHの値は、以下のように計算される。
H=YB-YA
【0033】
第2の方法
概要:この方法は、面取り部7が内面5に対応する水平壁となす角度、および第2フィーラ25の半径の値を利用する。面取り部7の長さHの値は、第1フィーラ15と内面5とが接触した後の第2トランスデューサ26および第1トランスデューサ16の信号を使用することにより、かつ例えば第1の方法に関連して説明したような較正において得られる固定スペースDを使用することにより得られる。
【0034】
第2フィーラ25の半径は事前に測定できる。一方、接続面7と内面5との間の角度の値は、既知のデータ(例えば部品Wの図に示されている)であり得るか、または、Y軸に沿った変位(一定速度vでの工作機械の主軸の並進移動により得られる)とX軸に沿った変位(第2トランスデューサ26の信号により与えられる)との比率の逆正接として計算することができる。
【0035】
詳細:
・第1の方法を参照して上述したように、参照システムX‐Yが特定され、値Xfin、YFSおよびYAが計算される。
・面取り部7と内面5に対応する水平壁との間に形成される角度の値alphaが、Y軸(既知の一定速度vならびに検出された時点および時間間隔に基づいて、第1の方法を参照して得られる工作機械の軸)に沿った変位とX軸に沿った変位(第2トランスデューサ26の信号)との比率の逆正接として計算される。変位は、例えば、XおよびYの値を例えば10回連続して同期取得することにより検出される。
・以下が計算される。
‐全変位DeltaX=X軸に沿った第2フィーラ25の(Xfin-X0)、
‐値Yinters=第1方向Yに沿ったフィーラ25の中心の変位の第1部分を示す(tan(alpha)*DeltaX)、
‐角度gamma=(π/2-alpha)/2、
‐距離G=第1方向Yに沿ったフィーラ25の中心の変位の第2部分を示し、第2フィーラ25の接触点が縁部Sに到達する領域に対応する(tan(gamma)*R)、ここで、Rは、既知の構成パラメータである第2フィーラ25の半径(例えば1mm)、
‐縁部SのY軸に沿った位置に対応する値YB=Yinters+G。
・本例においても、面取り部7の長さHの値は、以下により与えられる。
H=YB-YA
【0036】
工作機械の制御部により、例えば作動手段により規定されるスキャン速度vは、広い範囲から選択することができ、必ずしも事前に決定する必要はない。スキャン速度は、トランスデューサ16および26の信号の取得周波数に対して高すぎなければよい。典型的な値は、10~100mm/分である。より速いスキャン速度、例えば約100mm/分が、例えば20ms以上ごとのトランスデューサ16および26の信号の一対の同期値の取得周波数とともに利用され得る。比較的高速でスキャンを行うことができるため、非常に迅速に検査を実施することが可能となる。
【0037】
本発明の目的に必須ではないが、検査装置が、無線接続、特に上述の無線送信システム(30)によって処理ユニット40に接続されており、工作機械の主軸に自動的に装着され使用できることが特に有利である。ストアからの自動的な装着により、検査装置の中心合わせのエラー、より具体的には角度配置のエラーを最小限にすることも可能となる。
【0038】
検査デバイスが工作機械の主軸や他の可動部品に接続されず、ケーブルを介して処理ユニットに接続されてオフライン検査に使用されるような、本発明の別の実施形態も可能である。
【0039】
本発明の別の実施形態において、第1ゲージヘッド11は、接触検出プローブ、または「タッチトリガ」プローブ、すなわち、内面5との接触を検出できるが、トランスデューサ16を含まず、第1フィーラ15の第1方向Yに沿った位置または変位を示す信号を提供することができないプローブである。この場合、面取り部7の長さHの値を取得するために、工作機械により提供される信号も使用される。このような信号は、第1フィーラ15と内面5との接触が生じる時点t3での、検査デバイス(例えば、支持フレーム20)のY軸に沿った位置を示す。この接触は、タッチトリガプローブにより検出される。
【0040】
本発明による検査デバイスにより、孔の内部面取り部の長さ、すなわち、デバイスが接近する方向の反対側に位置する面取り部の長さを、非侵襲的な態様で、すなわち、被検査部品の構造を何ら変更する必要なく、確定することができる。
【0041】
検査装置の特にコンパクトな構造により、非常に柔軟に使用することができるとともに、小さい寸法の孔における内側面取り部にアクセスすることができる。
【0042】
本発明による検査装置の使用は、内部面取り部の検査に限定されない。実際、図7に概略的に示す上述の装置と類似したデバイスを、外側面取り部の長さを検査するように使用することができる。本例において、ヘッド11および21を支承する支持フレーム20は、矢印Fで示される方向に移動してスキャンする。
【0043】
例えば、スキャン動作中に第1方向Yに沿った変位の値を検出することに関して、本発明の代替的な実施形態が可能である。
【0044】
より具体的には、第1方向Yにおける位置の値を、好適な実施形態において上述したように一定の速度および時間の検出時点に基づいて得る代わりに、工作機械の制御部から直接検出することができ、第2トランスデューサ26のスキャン信号T2とともに処理することができる。
【0045】
代替的な実施形態によれば、第1ゲージヘッド11は、広い測定範囲を特徴としている。例えば、第1ゲージヘッド11は、開始位置から終了位置までの支持フレーム20の移動全体をカバーする。この場合、2つのヘッド11および21の配置は、開始位置において第1フィーラ15が内面5と接触しているようになされる、または、いずれの場合においても、この接触が、縁部Sに対応する第2フィーラ25が通過する前に生じるようになされる。この代替的な実施形態において、方向Yに沿った検査デバイスの変位はゲージヘッド11により検出され、工作機械の制御部から情報を得る必要はない、または、好適な実施形態を参照して上述したように、この情報を検出された時間時点および既知の一定速度に基づいて得る必要はない。
図1
図2
図3
図4A-4D】
図5
図6
図7