(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】異常なIL-4および/またはIL-13の発現または活性に関連する疾患を治療するためのIL-4および/またはIL-13を含む免疫原性産物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/385 20060101AFI20230608BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230608BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230608BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230608BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230608BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230608BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230608BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20230608BHJP
【FI】
A61K39/385
A61K39/00 H
A61K39/39
A61P29/00
A61P11/06
A61P37/08
A61P43/00 121
C07K14/54 ZNA
(21)【出願番号】P 2020566627
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2019064025
(87)【国際公開番号】W WO2019229153
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-26
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/050154
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513140880
【氏名又は名称】ネオヴァクス
(73)【特許権者】
【識別番号】514203362
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】593055203
【氏名又は名称】インスティチュート・パスツール
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】グロウアード-フォーゲル,ジェラルディン
(72)【発明者】
【氏名】コンデ ガルシア,エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】バートランド,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】カイヨ,ノエミ
(72)【発明者】
【氏名】レーベル,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ブルーンス,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】セラ,ヴィンセント
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-501249(JP,A)
【文献】特表2015-519359(JP,A)
【文献】特表2015-517457(JP,A)
【文献】特開2014-510126(JP,A)
【文献】特開2017-105821(JP,A)
【文献】BUANEC, H.L. et al.,Vaccine,2007年,Vol. 25,pp. 7206-7216
【文献】ZHANG, H.E. et al.,Mol Med Rep,Vol. 4,2011年,pp. 857-863
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体タンパク質にコンジュゲートされた少なくとも1種のサイトカインを含む、免疫原性産物であって、前記少なくとも1種のサイトカインはIL-4、IL-13およびそれらの混合物を含む群から選択され、前記担体タンパク質はCRM
197である、免疫原性産物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のサイトカインはIL-4である、請求項1に記載の免疫原性産物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のサイトカインはIL-13である、請求項1または請求項2に記載の免疫原性産物。
【請求項4】
IL-4およびIL-13の両方に結合されたCRM
197を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の免疫原性産物。
【請求項5】
少なくとも1種の請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性産物を含む、組成物。
【請求項6】
少なくとも2種の請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性産物の混合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
IL-4およびCRM
197を含む免疫原性産物とIL-13およびCRM
197を含む免疫原性産物との混合物を含む、請求項5または請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
約10:1~約1:10の範囲の重量比の、IL-4およびCRM
197を含む免疫原性産物とIL-13およびCRM
197を含む免疫原性産物との混合物を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤および/または少なくとも1種のアジュバントをさらに含む、請求項5~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
エマルションである、請求項5~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性産物を作製するための方法であって、
a)前記少なくとも1種のサイトカインを、NHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカ
ーと接触させる工程と、
b)前記担体タンパク質を、NHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカ
ーと接触させて担体-
ヘテロ二官能性クロスリンカー複合体を生成する工程と、
c)工程(a)で得られた
ヘテロ二官能性クロスリンカー-サイトカイン複合体を工程(b)で得られ
た担体-
ヘテロ二官能性クロスリンカー複合体と接触させる工程と
、
を含む、方法。
【請求項12】
工程(a)のNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカーがN-[γ-マレイミドブチリルオキシ]-スクシンイミドエステル(sGMBS)であり、工程(b)のNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカーがN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性産物または請求項5~10のいずれか1項に記載の組成物を含む、炎症性疾患を治療するための
医薬組成
物。
【請求項14】
前記炎症性疾患は、異常なIL-4および/またはIL-13の発現または活性に関連している、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記炎症性疾患は、喘
息、アレルギー症
状、アトピー性疾
患、水疱性類天疱瘡、呼吸器疾
患、鼻ポリープおよび気道炎症を伴う他の症
状、炎症性および/または自己免疫疾患または症状、胃腸障害または胃腸
病、全身性エリテマトーデス、肝障害または肝臓
病、強皮症、線維性疾患または障
害、強皮症、固形腫瘍または白血
病、神経膠芽腫、リンパ
腫ならびに肥満細胞症を含む群から選択される、請求項
13または14に記載の
医薬組成物。
【請求項16】
前記炎症性疾患は、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息、食物アレルギー、毒アレルギー、動物アレルギー、薬物アレルギー、高IgE症候群、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、湿疹、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、好酸球増加症、線維症、過剰粘液産生、全身性強皮症(SSc)、炎症性腸疾患(IBD)、好酸球性食道炎(EE)、好酸球媒介性胃腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、肝硬変、肝細胞癌、肝臓の線維症、B細胞慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫からなる群より選択される、請求項13~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記炎症性疾患は、慢性特発性蕁麻疹、慢性蕁麻疹、嚢胞性線維症、肺線維症、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる線維症、C型肝炎ウイルスによって引き起こされる線維症からなる群より選択される、請求項13~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記炎症性疾患は、喘
息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、食物アレルギー、鼻ポリープおよび好酸球性食道炎から選択さ
れる、請求項
13~17のいずれか1項に記載の
医薬組成物。
【請求項19】
前記炎症性疾患は、アレルギー、喘息、またはアトピー性皮膚炎である、請求項13~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記免疫原性産物または組成物はアレルゲンに対する脱感作を誘導する、請求項
13~19のいずれか1項に記載の
医薬組成物。
【請求項21】
特異抗原に対してアレルギー性の対象の脱感作を誘導するための
医薬組成物であって、請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性産物または請求項5~10のいずれか1項に記載の組成物
を含み、前記免疫原性産物または組成物および前記特異抗原
が前記アレルギー性の対象に投与される、
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫原性産物と、異常なIL-4および/またはIL-13の発現または活性に関連する疾患(特に喘息、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性疾患)を治療するためのその使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性疾患は複数の遺伝および環境因子間の相互作用により生じる複雑な疾患である。ここ数十年で観察されているアレルギーの増加は、主に同じ期間に生じる環境の変化によって説明されている。全てのアレルギーのうち、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎および食物アレルギーは主要な公衆衛生問題であり、今ではそれぞれが世界中で少なくとも三億人の人々を冒している。さらに、2050年までには世界人口の半分がアレルギー性疾患に冒されるであろうと推定されている。年間死亡率に関しては、世界的に喘息、食物アレルギーまたはアナフィラキシーによって引き起こされるほぼ300,000人の回避可能なアレルギー関連死が存在する。従って、アレルギー性疾患の増加は世界の至るところで重大な健康問題となり、大きな社会経済的負担をもたらしているが、そのための効率的な長期治療法はまだ存在しない。
【0003】
アレルギー性疾患の発病は免疫系のアレルゲンへの曝露により生じる。そのような曝露は、インターロイキン4(IL-4)およびインターロイキン13(IL-13)などの2型ヘルパーT細胞(Th2)サイトカインの産生、高レベルの免疫グロブリンE(IgE)抗体ならびに炎症組織内での免疫細胞の浸潤および増殖を特徴とする2型免疫応答を生じさせる寛容の破綻の原因であるとみなされている。肥満細胞、好塩基球および好酸球は特に、ヒスタミンなどの予め形成された炎症性メディエーターを含む細胞質顆粒の放出に関与している。アレルゲンに曝露されると、そのようなアレルゲンはIgEによって認識され、かつ肥満細胞、好塩基球および好酸球の表面にある受容体に結合し、これによりこれらの細胞の脱顆粒およびひいては臨床的症状の出現が促進される。なおこのような理由から、アレルギーの臨床診断は大部分がアレルゲン特異的IgEの測定に基づいている。
【0004】
興味深いことに、IL-4およびIL-13サイトカインはアレルギー性疾患の発病において重要な役割を担う。両サイトカインは長い間アレルギー性疾患の発病に関連づけられており、それらの生物学的機能に基づき治療的に重要なサイトカインである。これらの2種類のサイトカインは同様の構造を呈し、かつ1つの受容体サブユニット(IL-4Rα)を共有している。但しそれらの多くの類似性にも関わらず、IL-4およびIL-13はアレルギーにおいていくつかの非重複機能を担っているとも考えられている。
【0005】
IL-4レベルの増加が喘息患者の血清および気管支肺胞洗浄中で観察されているため、IL-4はアレルギーの発生に関与している多面的サイトカインである(Gour N.&Wills-Karp M.,2015)。IL-4はアレルギー発生の初期に特異的に作用するとみなされている。IL-4の重要な役割は、IgE産生の誘導、IgE受容体発現の上方制御およびナイーブ0型ヘルパーT細胞(Th0)のTh2リンパ球への分化などのアレルギーを引き起こすその複数の効果にある。
【0006】
2型免疫細胞は、IgEクラスに対する抗体応答において体液性免疫およびB細胞のスイッチを制御することによりアレルギープロセスにおいて中心的な役割を担う。従ってTh2細胞はIg産生(例えば、IgE、IgG)のメディエーターであり、かつ各種サイトカインならびにIL-4およびIL-13を産生する。
【0007】
対照的にIL-13はアレルギー反応のエフェクターおよび後期により多く関与している(Gour N.&Wills-Karp M.,2015)。IL-13は、限定されるものではないが、気道過敏性、粘液産生、気道平滑筋の変化および上皮下線維症などのアレルギー性疾患の主要な症状発現を誘導するのに十分であることが分かっている。
【0008】
IL-4およびIL-13が作用することが知られている喘息に関与する細胞の範囲およびこれらのインターロイキンに関連する病原体の機能を考慮すると、一方または両方のサイトカインの中和はアレルギー性炎症性疾患の治療にとって信頼できる手法である。従って、IL-4およびIL-13はアレルギーの治療のための有望な治療標的であるため、長期治療効果に達するためには、これらの分子をブロックするための現在の戦略を改良することが明らかに必要である。
【0009】
最近ではアレルギーを治療するための新規な治療法が開発されている。受動免疫に基づくこれらの治療はアレルギーに関与する病原因子を特異的に標的する。例えばIL-4およびIL-13またはそれらの受容体に対する組換え抗体の使用が当該技術分野において記載されてきた。しかし組換え抗体の使用は、高コスト、頻回注射を行う必要性、および抗薬物抗体(ADA)または他の有害反応の出現の潜在的リスクによって制限されている。
【0010】
本出願人は本明細書において、IL-4およびIL-13から選択されるサイトカインとCRM197との組み合わせをベースとする新規な免疫原性産物を提供する。この新規な免疫原性産物は、特に喘息、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性疾患など、炎症性疾患を治療するために特に興味深い。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、担体タンパク質にコンジュゲートされた少なくとも1種のサイトカインを含む、免疫原性産物(immunogenic product)であって、少なくとも1種のサイトカインがIL-4、IL-13およびそれらの混合物を含む群から選択され、かつ担体タンパク質がCRM197である、免疫原性産物に関する。
【0012】
一実施形態では、少なくとも1種のサイトカインはIL-4である。
【0013】
一実施形態では、少なくとも1種のサイトカインはIL-13である。
【0014】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はIL-4およびIL-13の両方に結合されたCRM197を含む。
【0015】
本発明はさらに、本明細書の上に記載されている少なくとも1種の免疫原性産物を含む、組成物に関する。
【0016】
一実施形態では、本組成物は本明細書の上に記載されている少なくとも2種の免疫原性産物の混合物を含む。
【0017】
一実施形態では、本組成物は、IL-4およびCRM197を含む免疫原性産物とIL-13およびCRM197を含む免疫原性産物との混合物を含む。
【0018】
一実施形態では、本組成物は、約10:1~約1:10の範囲の重量比の、IL-4およびCRM197を含む免疫原性産物とIL-13およびCRM197を含む免疫原性産物との混合物を含む。
【0019】
一実施形態では、本組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤および/または少なくとも1種のアジュバントをさらに含む。
【0020】
一実施形態では、本組成物はエマルションである。
【0021】
本発明はさらに、
a)少なくとも1種のサイトカインを、NHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー(好ましくはN-[γ-マレイミドブチリルオキシ]-スクシンイミドエステル(sGMBS))と接触させる工程と、
b)担体タンパク質を、NHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー(好ましくはN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA))と接触させて担体-SATA複合体を生成する工程と、
c)工程(a)で得られたsGMBS-サイトカイン複合体を工程(b)で得られた担体-SATA複合体と接触させる工程と
を含む、本明細書に記載されている免疫原性産物を作製するための方法に関する。
【0022】
本発明はさらに、炎症性疾患を治療するための、本明細書に記載されている免疫原性産物または本明細書に記載されている組成物に関する。
【0023】
一実施形態では、炎症性疾患は、異常なIL-4および/またはIL-13の発現または活性に関連する疾患である。
【0024】
一実施形態では、炎症性疾患は、喘息(アレルギー性もしくは非アレルギー性のいずれか)、アレルギー症状(例えば、食物アレルギー、毒アレルギー、動物アレルギー、薬物アレルギー、高IgE症候群、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎およびアレルギー性胃腸炎など)、アトピー性疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹および慢性蕁麻疹を含む)、湿疹など)、水疱性類天疱瘡、呼吸器疾患(アレルギー性および非アレルギー性喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など)、鼻ポリープおよび気道炎症を伴う他の症状(例えば、好酸球増加症、嚢胞性線維症および肺線維症を含む線維症および過剰粘液産生、全身性強皮症(SSc)など)、炎症性および/または自己免疫疾患または症状、胃腸障害または胃腸病(例えば、炎症性腸疾患(IBD)および好酸球性食道炎(EE)、および好酸球媒介性胃腸疾患、潰瘍性大腸炎およびクローン病など)、全身性エリテマトーデス、肝障害または肝臓病(例えば、肝硬変および肝細胞癌など)、強皮症、線維性疾患または障害(例えば、肝臓の線維症(例えば、B型および/またはC型肝炎ウイルスによって引き起こされる線維症など)など)、強皮症、固形腫瘍または白血病などの癌(例えばB細胞慢性リンパ性白血病など)、神経膠芽腫、リンパ腫(例えばホジキンリンパ腫など)ならびに肥満細胞症を含む群から選択される。
【0025】
一実施形態では、炎症性疾患は、喘息(例えばアレルギー性喘息)、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、食物アレルギー、鼻ポリープおよび好酸球性食道炎を含む群から選択される。
【0026】
一実施形態では、炎症性疾患は、喘息(例えばアレルギー性喘息)、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症および食物アレルギーを含む群から選択される。
【0027】
一実施形態では、炎症性疾患はアレルギー、喘息またはアトピー性皮膚炎である。
【0028】
一実施形態では、本明細書に記載されている免疫原性産物または組成物は、アレルゲンに対してアレルギー性の対象の脱感作を誘導する。
【0029】
本発明はさらに、特異抗原に対してアレルギー性の対象の脱感作を誘導するための本明細書に記載されている免疫原性産物または組成物であって、当該アレルギー性の対象に前記免疫原性産物または組成物および前記特異抗原が投与される、免疫原性産物または組成物に関する。
【0030】
本発明はさらに、特異抗原に対してアレルギー性の対象の脱感作を誘導するための方法であって、当該対象に本明細書に記載されている免疫原性産物または組成物および前記特異抗原を投与することを含む方法に関する。
【0031】
本発明はさらに、特異アレルゲンに対してアレルギー性の対象の脱感作の有効性を高めるための、および/またはその持続期間を減少させるための、方法であって、前記対象に本明細書に記載されている免疫原性産物または組成物を投与し、前記対象を脱感作によってさらに治療する、方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
本発明では以下の用語は以下の意味を有する。
【0033】
本明細書で使用される「約」という用語は、量および一時的な持続期間などの測定可能な値を指す場合、そのようなばらつきがここに開示されている方法を行うのに適当である場合には、指定された値から±20%または場合によっては±10%、または場合によっては±5%、または場合によっては±1%、または場合によっては±0.1%のばらつきを包含することが意図されている。
【0034】
本明細書で使用される「アジュバント」は、本発明の免疫原性産物の免疫原性を高める物質である。アジュバントは免疫応答を増強するために与えられることが多く、当業者には周知である。
【0035】
本明細書で使用される「担体タンパク質分子」という用語は、ヘテロ複合体を形成するためにIL-4、IL-13およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種のサイトカインに部分的に共有結合されている場合に、前記少なくとも1種のサイトカインの多数の抗原をBリンパ球に提示させるのを可能にする少なくとも15、30または50アミノ酸長のタンパク質またはペプチドを指す。
【0036】
本明細書で使用される「免疫応答」という用語は、例えばリンパ球、抗原提示細胞、食細胞および上記細胞または肝臓によって産生される巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用を指す。
【0037】
本明細書で使用される「免疫原性産物(immunogenic product)」という用語は、前記免疫原性産物が投与される対象(好ましくは哺乳類)において、体液性免疫応答(すなわち、例えば内因性サイトカインの生物活性などの特性を中和する抗体の産生)を含む免疫応答を誘導する、担体タンパク質に結合された少なくとも1種のサイトカインを指す。
【0038】
本明細書で使用される、IL-4、IL-13またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のサイトカインの「生物活性を阻害する」または「生物活性を中和する」抗体は、例えば実施例に記載されているような機能アッセイを使用することにより、そのサイトカインの活性を当該抗体の非存在下での当該サイトカインの活性レベルと比較した場合に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上で阻害する抗体を指すことが意図されている。
【0039】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、哺乳類、好ましくはヒトに投与した場合に副作用、アレルギー反応または他の有害反応を生じない賦形剤を指す。それは、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体または賦形剤は、あらゆる種類の非毒性固体、半固体もしくは液体充填剤、希釈液、封入材料または製剤補助剤を指す。ヒトへの投与のために製剤は、例えばFDAまたはEMAなどの規制当局によって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度基準を満たすものでなければならない。
【0040】
本明細書で使用される「組換えタンパク質」という用語は、例えば原核生物細胞(バクテリオファージまたはプラスミド発現系を用いる)または真核細胞(例えば酵母、昆虫または哺乳類発現系など)において発現されるタンパク質(例えばサイトカインまたは担体タンパク質CRM197)などの、組換えDNA技術を用いて産生されるタンパク質(例えばサイトカインまたは担体タンパク質CRM197)を指す。この用語は、タンパク質(例えばサイトカインまたは担体タンパク質CRM197)をコードするDNA分子の合成によって産生され、かつそのDNA分子がタンパク質(例えばサイトカインまたは担体タンパク質CRM197)を発現するタンパク質(例えばサイトカインまたは担体タンパク質CRM197)、あるいはそのタンパク質(例えばサイトカインまたは担体タンパク質CRM197)を指定するアミノ酸配列を意味するようにも解釈されるべきであり、ここではそのDNAまたはアミノ酸配列は、当該技術分野で利用可能であり、かつよく知られている組換えDNAまたはアミノ酸配列技術を用いて得られたものである。
【0041】
本明細書で使用される「対象」という用語は、免疫応答を惹起することができる生きている生物(例えば、哺乳類、特にヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ウマおよびヒツジなど)を含むことが意図されている。好ましくは、当該対象はヒトである。一実施形態では、対象は、医療的ケアを受けるのを待っているか受けている途中である、過去に医療処置の対象であったか現在対象であるか今後対象になる、あるいは例えば炎症性疾患などの標的となる疾患または病気の発生について監視されている「患者」、すなわち温血動物、好ましくはヒトであってもよい。一実施形態では、当該対象は成人(例えば18歳以上の対象)である。別の実施形態では、当該対象は小児(例えば18歳未満の対象)である。一実施形態では、当該対象は男性である。別の実施形態では、当該対象は女性である。一実施形態では、当該対象は炎症性疾患に罹患しており、好ましくは炎症性疾患であると診断されている。一実施形態では、当該対象は炎症性疾患を発生するリスクがある。リスク因子の例としては、限定されるものではないが、炎症性疾患の遺伝的素因または家族歴が挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、特定の生物学的結果を達成するのに有効な本明細書に記載されている免疫原性産物の量を指す。従って「治療有効量」という用語は、標的に対して有意なマイナスもしくは有害な副作用を引き起こすことなく、(1)標的となる疾患または病気の発症を遅らせるか予防する、(2)標的となる疾患または病気の1つ以上の症状の進行、増悪または悪化を減速または停止する、(3)標的となる疾患または病気の症状の寛解をもたらす、(4)標的となる疾患または病気の重症度または発生率を低下させる、あるいは(5)標的となる疾患または病気を治癒させることを目的とした免疫原性産物のレベルまたは量を意味する。予防処置のために標的となる疾患または病気の発症前に治療有効量を投与してもよい。代わりまたは追加として、治療処置のために標的となる疾患または病気の開始後に治療有効量を投与してもよい。
【0043】
本明細書で使用される、「治療」または「治療する」という用語は、治療処置および予防処置の両方を指し、その目的は、標的となる疾患または病気を予防するか減速させる(和らげる)ことである。治療を必要とするものとしては、既に病気に罹患しているものならびに病気に罹患しやすいものまたは病気が予防されるべきものが挙げられる。対象は、治療量の本明細書に記載されている免疫原性産物が投与された後に、当該対象が病原性細胞の数の減少、総病原性細胞の割合の減少、特定の病気に関連する1つ以上の症状のある程度の緩和、罹患率および死亡率の低下および/または生活の質の問題の改善のうちの1つ以上の観察可能および/または測定可能な向上を示す場合に、疾患または病気に対する「治療」が成功となる。治療の成功および病気の改善を評価するための上記パラメータは、医師が精通している通常の手順によって容易に測定可能である。
【0044】
詳細な説明
本発明は、担体タンパク質にコンジュゲートされた少なくとも1種のサイトカインを含む免疫原性産物であって、少なくとも1種のサイトカインがIL-4、IL-13およびそれらの混合物を含む群から選択され、担体タンパク質がCRM197である、免疫原性産物に関する。
【0045】
本発明者らは本明細書において、本発明の免疫原性産物がCRM197の代わりにKLHを含む同じ免疫原性産物と比較した場合に、特に免疫原性の点で、利点を提供することを実証した。
【0046】
CRM197は、一塩基置換(52位におけるグリシンからグルタミン酸への変異)により毒性活性を有しない配列番号1の配列を有するジフテリア毒素の非毒性変異体である。
配列番号1
GADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQKGIQKPKSGTQGNYDDDWKEFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRRSVGSSLSCINLDWDVIRDKTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAKQYLEEFHQTALEHPELSELKTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHKTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSKLSLFFEIKS
【0047】
一実施形態では、CRM197は、2018年にHickey(Hickeyら 2018)に記載されているように、自家系(ジフテリア菌)または異種系(大腸菌およびシュードモナス・フルオレッセンス)において当該技術分野で知られている従来の方法によって得てもよい。例えば組換えCRM197は、CRM197の遺伝子を含む発現ベクターを含む細胞を培養し、封入体を回収し、かつCRM197を精製することにより得てもよい。CRM197はATCCで購入した細菌の菌株(ATCC39255)からのジフテリア菌の培養物から抽出することもできる。一実施形態では、CRM197は市販されており、例えばReagent Proteins社(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から購入してもよい。
【0048】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はCRM197のバリアントを含み、前記バリアントは配列番号1と少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。一実施形態では、CRM197の前記バリアントは52位にグリシンからグルタミン酸への変異を含み、従って非毒性である。
【0049】
「同一性」または「同一の」という用語は、2つ以上の核酸配列または2つ以上のポリペプチドの配列間の関係において使用する場合、それぞれ2つ以上の核酸またはアミノ酸残基からなる配列間の一致数によって決定される核酸配列またはポリペプチド間の配列関連性(sequence relatedness)の程度を指す。「同一性」とは、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって扱われるギャップアラインメント(存在すれば)を有する2つ以上の配列のより短い配列間の完全な一致率の尺度である。関連する核酸配列またはポリペプチドの同一性は、公知の方法によって容易に計算することができる。そのような方法としては、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology(コンピューターを使用した分子生物学),Lesk,A.M.編,Oxford University Press,ニューヨーク,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects(バイオコンピューティング:情報科学およびゲノムプロジェクト),Smith,D.W.編,Academic Press,ニューヨーク,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1(配列データのコンピューター解析、パート1),Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編,Humana Press,ニュージャージー,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology(分子生物学における配列分析),von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer(配列解析プライマー),Gribskov,M.およびDevereux,J.編,M.Stockton Press,ニューヨーク,1991;およびCarilloら,SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)に記載されているものが挙げられる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大の一致を与えるように設計されている。同一性の決定方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに記述されている。好ましいコンピュータプログラムによる2つの配列間の同一性を決定するための方法としては、ClustalO(Sievers F.ら 2011)、the GCG program package、GAP(Devereuxら,Nucl.Acid.Res.12:387(1984);ジェネティクスコンピュータグループ(Genetics Computer Group)、ウィスコンシン大学、ウィスコンシン州マディソン)、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschulら,J.MoI.Biol.215,403-410(1990))などのGCGプログラムパッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、国立生物工学情報センター(NCBI)および他の提供源(BLAST Manual,Altschulら,NCB/NLM/NIH,メリーランド州ベセズダ,20894;Altschulら、上記)から公的に入手可能である。また周知のSmith Watermanアルゴリズムを使用して同一性を決定してもよい。
【0050】
一実施形態では、CRM197は完全長CRM197である。
【0051】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、例えば配列番号1からの少なくとも約50、100、150、200、250、300、350、400、450または500個のアミノ酸(好ましくは隣接するアミノ酸)を含む断片などのCRM197の断片を含む。
【0052】
一実施形態では、少なくとも1種のサイトカインはIL-4である。
【0053】
一実施形態では、IL-4は組換え型である。組換えIL-4は、IL-4をコードする核酸配列を用いて当該技術分野で知られている従来の方法によって得てもよい。例えば組換えIL-4は、IL-4の遺伝子を含む発現ベクターを含む細胞を培養し、封入体を回収し、かつIL-4サイトカインを精製することにより得てもよい。組換えIL-4は市販されており、例えばPeproTech社(米国ニュージャージー州ロッキーヒル(Rocky Hill))から購入してもよい。
【0054】
本発明の一実施形態では、IL-4は哺乳類由来である。
【0055】
一実施形態では、IL-4は哺乳類IL-4のバリアントであり、前記バリアントはその由来元である哺乳類IL-4と少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。
【0056】
一実施形態では、IL-4は完全長IL-4である。
【0057】
別の実施形態では、少なくとも1種のサイトカインは、例えばその由来元であるIL-4の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120または125個のアミノ酸(好ましくは隣接するアミノ酸)を含むIL-4の断片などのIL-4の断片である。
【0058】
一実施形態では、前記断片はIL-4の少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0059】
本発明の一実施形態では、IL-4はヒトIL-4、好ましくは組換えヒトIL-4である。ヒトIL-4は配列番号2の配列(UniProt ID:P05112-1)を有する。
配列番号2
HKCDITLQEIIKTLNSLTEQKTLCTELTVTDIFAASKNTTEKETFCRAATVLRQFYSHHEKDTRCLGATAQQFHRHKQLIRFLKRLDRNLWGLAGLNSCPVKEANQSTLENFLERLKTIMREKYSKCSS
【0060】
一実施形態では、IL-4は配列番号2のバリアントであり、前記バリアントは配列番号2と少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。
【0061】
一実施形態では、IL-4は完全長ヒトIL-4である。
【0062】
別の実施形態では、少なくとも1種のサイトカインは、例えば配列番号2の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120または125個のアミノ酸(好ましくは隣接するアミノ酸)を含むヒトIL-4の断片などのヒトIL-4の断片である。
【0063】
一実施形態では、前記断片はヒトIL-4の少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0064】
一実施形態では、前記断片は、AQQFHRHKQLIRFLKRLDRNLW(配列番号3)の配列を含むかそれからなる。
【0065】
本発明の一実施形態では、IL-4はマウスIL-4、好ましくは組換えマウスIL-4である。マウスIL-4は配列番号4の配列(UniProt ID:P07750-1)を有する。
配列番号4
HIHGCDKNHLREIIGILNEVTGEGTPCTEMDVPNVLTATKNTTESELVCRASKVLRIFYLKHGKTPCLKKNSSVLMELQRLFRAFRCLDSSISCTMNESKSTSLKDFLESLKSIMQMDYS
【0066】
一実施形態では、IL-4は配列番号4のバリアントであり、前記バリアントは配列番号4と少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。
【0067】
一実施形態では、IL-4は完全長マウスIL-4である。
【0068】
別の実施形態では、少なくとも1種のサイトカインは、例えば配列番号4の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110または115個のアミノ酸(好ましくは隣接するアミノ酸)を含むマウスIL-4の断片などのマウスIL-4の断片である。
【0069】
一実施形態では、前記断片は、マウスIL-4の少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0070】
本発明の一実施形態では、IL-4はイヌIL-4、好ましくは組換えイヌIL-4である。イヌIL-4は配列番号5の配列(UniProt ID:O77762-1)を有する。
配列番号5
HNFNITIKEIIKMLNILTARNDSCMELTVKDVFTAPKNTSDKEIFCRAATVLRQIYTHNCSNRYLRGLYRNLSSMANKTCSMNEIKKSTLKDFLERLKVIMQKKYYRH
【0071】
一実施形態では、IL-4は配列番号5のバリアントであり、前記バリアントは、配列番号5との少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。
【0072】
一実施形態では、IL-4は完全長イヌIL-4である。
【0073】
別の実施形態では、少なくとも1種のサイトカインは、例えば配列番号5の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100または105個のアミノ酸(好ましくは隣接するアミノ酸)を含むイヌIL-4の断片などのイヌIL-4の断片である。
【0074】
一実施形態では、前記断片はイヌIL-4の少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0075】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、約16:1~約1:2、好ましくは約8:1~約2:1の範囲、より好ましくは約4:1のIL-4:CRM197モル比でCRM197に結合されたIL-4を含む。
【0076】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-4を含み、抗IL-4抗体によって認識される。
【0077】
免疫原性産物がCRM197に結合されたIL-4を含み、かつ抗IL-4抗体によって認識されるという事実は、当該技術分野で知られている従来の方法によって確認してもよい。そのような方法の例は、例えばビオチンで標識した検出抗体を用いる抗サイトカイン/担体タンパク質サンドイッチELISA、ストレプトアビジンHRP増幅システムおよびo-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)基質溶液である。
【0078】
一実施形態では、本明細書に記載されているAIL-4試験は、本発明の免疫原性産物がCRM197に結合されたIL-4を含み、かつ抗IL-4抗体によって認識されることを確認するために使用してもよい。AIL-4試験は抗IL-4/CRM197ELISA試験である。
【0079】
AIL-4試験は、
-例えばAbcam社(AB53828)またはBio-Rad社(3710-0956、3710-0150または3710-0100)からの抗ジフテリア毒素抗体などのCRM197に対する捕獲抗体でプレートをコーティングし、
-そのプレートをブロッキング緩衝液(例えば、PBS中に例えばカゼイン2%(w/v)など)を用いて約37℃で約90分間ブロッキングし、
-そのプレートを250ng/mLで開始する本免疫原性産物の2倍連続希釈物または例えばIL-4およびCRM197などの陰性対照と共に約37℃で約90分間インキュベートし、
-そのプレートを例えばAbcam社(AB84278)、R&D SYSTEMS社(BAF204)またはPeproTech社(500-P24BT)からの抗IL-4ビオチン化抗体あるいはSouthern Biotech社(10204-08)、R&D SYSTEMS社(BAF404)またはPeproTech社(500-P54BT)からのマウス抗IL-4ビオチン化抗体などのIL-4に対するビオチン化検出抗体と共に約37℃で約90分間インキュベートし、
-そのプレートをストレプトアビジン-HRPと共に約37℃で約30分間インキュベートし、かつその複合体をOPD基質溶液で約30分間発色させ、
-その酵素反応を停止させた後に得られた色の強度を490nmでの分光光度法により決定する、
というように行う。
【0080】
一実施形態では、1ウェル当たり約25ngで本発明の免疫原性産物を含むウェルの光学濃度が陰性対照を含むウェルの光学濃度の少なくとも約3倍、好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍である場合、当業者は本発明の免疫原性産物が(i)抗IL-4抗体によって認識され、かつ(ii)CRM197に結合されたIL-4を含むという結論に達し得る。
【0081】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-4を含み、かつ強く不活性化されており、これは以下で引用されているBIL-4試験条件下で本免疫原性産物が約10%未満のIL-4初期活性、好ましくは約5%未満であって好ましくは約1%未満のIL-4初期活性を示すことを意味する。BIL-4試験は、本発明の免疫原性産物に含まれているIL-4によって機能的に活性化させることができる(すなわち、本発明の免疫原性産物に含まれているIL-4に結合し、かつこの結合後に活性化させることができる)IL-4Rαを発現する細胞株を用いる比色定量T細胞増殖アッセイまたはレポーター遺伝子バイオアッセイである。
【0082】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はマウスIL-4を含み、かつBIL-4試験は、
-2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mMのHEPES、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(完全RMPIすなわちRPMIc)および10%(v/v)FBSを添加したRPMIを用いて最終10ng/mLのIL-2の存在下でCTLL-2細胞を増殖させ、
-本免疫原性産物のために1000ng/mLで開始して最終4ng/mLまで、そしてmuIL-4のために10ng/mLで開始して最終0.04ng/mLまで、本発明の免疫原性産物(IL-4/CRM197)およびmuIL-4対照を96ウェルプレートにおいてRPMIc+10%(v/v)FBSで2倍連続希釈し、
-陽性対照として10ng/mLのmuIL-4を含む6つのウェルを追加し、かつ最大細胞増殖対照として使用し、
-これらの試料を1ウェル当たり20,000個のCTLL-2細胞に添加し、かつプレートを5%CO2加湿インキュベータ中約37℃で約48時間インキュベートし、
-培養の終了時に当該技術分野でよく知られている方法を用いて細胞生存率を評価する(そのような方法の一例は、製造業者の説明書に従い、40μL/ウェルのMTS/PMS溶液(Promega社、米国ウィスコンシン州マディソン)(ここではMTSは、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム分子内塩を表し、PMSはフェナジンメトサルフェートを表す)をウェルに添加し、かつそのプレートを5%CO2中37℃でさらに4時間インキュベートし、次いでこのプレートを分光光度計を用いて490nmで読み取ることである)
という方法で、CTLL-2細胞(Sigma-Aldrich社によって提供されているECACC細胞株から、参照番号93042610-1VL)を用いて行う比色定量T細胞増殖アッセイである。
【0083】
別の実施形態では、本発明の免疫原性産物はヒトIL-4を含み、BIL-4試験はInvivoGen社(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から購入したHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞株を用いて行うレポーター遺伝子アッセイである。これらの細胞ではIL-4またはIL-13による刺激によりJAK/STAT6経路を活性化させるとその後にSEAPが産生される。次いで、その上澄み中のSEAPレベルを評価することにより本発明の免疫原性産物に含まれているIL-4の生物活性を評価することができる。
【0084】
本実施形態によれば、BIL-4試験は、
-10%(v/v)FBS、10mMのHEPES、50U/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシンを添加したDMEM GlutaMAX(商標)からなるアッセイ培地においてHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を培養する工程と、
-免疫原性産物(IL-4/CRM197)およびIL-4対照をそれぞれ最終8000および1ng/mLでアッセイ培地で2倍連続希釈する工程と、
-次いでこれらの希釈試料を1ウェル当たり40,000個の細胞(HEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞)を含む予め播種されたプレートに移し、プレートを5%CO2加湿インキュベータ中約37℃で約24時間インキュベートする工程と、
-培養の終了時に、当該技術分野でよく知られている方法を用いて活性化経路を評価する工程(そのような方法の一例は、90μL/ウェルのQUANTI-Blue(商標)溶液(InvivoGen社から購入)を10μL/ウェルの細胞上澄みに添加し、次いでこのプレートを5%CO2加湿インキュベータ中約37℃で約1時間インキュベートし、次いでこのプレートを分光光度計を用いて625nmで読み取ることである)と
を含む。
【0085】
50%有効量(ED50)値は、最大細胞シグナルの50%を生じさせる免疫原性産物またはサイトカインの量に対応している。この値は、50%変曲点を取り囲んでいる希釈点を通る曲線からの式y=ax+bを用いて最大細胞シグナルの50%を横座標軸に補間することにより決定する。
【0086】
BIL-4試験では、被験免疫原性産物のED50をIL-4対照標準曲線の平均ED50で割ることにより不活性化係数を計算する。不活性化係数>100という結果は同じ量のタンパク質の場合、本免疫原性産物中のIL-4活性が自然なIL-4活性の1%未満に対応していることを意味する。一実施形態では、約2、2.5、3.33、5または10、好ましくは約20、より好ましくは約100を超える不活性化係数は本免疫原性産物が強く不活性化されていることを示す。一実施形態では、自然なIL-4活性よりも約50%、40%、30%、20%または10%低い、好ましくは約5%低い、より好ましくは約1%低い残留活性は、本免疫原性産物が強く不活性化されていることを示す。
【0087】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-4を含み、かつ免疫原性であり、これは本免疫原性産物がCIL-4試験条件下でインビボにおいて抗IL-4抗体を誘導することができることを意味する。一実施形態では、本発明の免疫原性産物は例えばCIL-4試験条件下などでインビボにおいてポリクローナル抗IL-4抗体を誘導することができる。
【0088】
CIL-4試験は以下の方法に従って行い、すなわち本免疫原性産物の特定量の総タンパク質(例えばブラッドフォードタンパク質アッセイにより決定)をマウス(4週齢以上)に120日で3~4回注射する。一実施形態では、CIL-4試験は例えば異種系であり、非マウスIL-4を含む免疫原性産物をマウスに注射し、この試験は約0.3~30μgの範囲の総タンパク質用量を投与することを含む。別の実施形態では、CIL-4試験は同種系であり、すなわちマウスIL-4を含む免疫原性産物をマウスに注射し、この試験は約5~約30μgの範囲の総タンパク質用量を投与することを含む。血清試料は免疫前(免疫前血清試料)および39日目~120日目の間(試験血清試料)に得る。ELISA抗IL-4は以下に説明されているように行う。
【0089】
簡単に言えば、本免疫原性産物を調製するために使用される1μg/mLのIL-4で96ウェルプレートをコーティングし、かつ約2℃~約8℃の範囲の温度で一晩インキュベートする。次いでこのプレートをブロッキング緩衝液を用いて約37℃で約90分間ブロッキングする。100μLの免疫前試料および血清試料(免疫前および試験)を例えば500dil-1で開始して256,000dil-1までなどの2倍連続希釈でそのウェルに添加する。標識した抗マウス免疫グロブリン二次抗体(例えばHRP結合抗体など)を最後にウェルに添加し、かつ例えばOPD基質溶液などの当該技術分野で知られている任意の比色手段を用いてELISAを発色させる。
【0090】
一実施形態では、試験血清試料を含むウェルの光学濃度(490nm)が免疫前血清試料を含むウェルの光学濃度よりも少なくとも約1.5倍、好ましくは少なくとも約2倍高い場合、本免疫原性産物を免疫原性であるとみなし、これは本免疫原性産物がインビボにおいて抗IL-4抗体を誘導したことを意味する。
【0091】
この試験では力価は、当該アッセイにおいて「ODmax-対応する免疫前試料のOD」の50%に達した場合の血清の希釈として定めた。この計算様式は周知の抗体陽転力価を見る場合よりも非常に厳しいが、よりロバストな分析およびより低い偽陽性を提供する。力価は血清希釈係数(dil-1)として表す。
【0092】
別の実施形態では、CIL-4試験において力価の値≧250dil-1、好ましくは≧500dil-1は、本発明の免疫原性産物がIL-4に対する結合抗体の産生を可能にすることを示す。
【0093】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-4を含み、かつ以下で引用されているDIL-4試験条件下でIL-4活性を中和することができる。本発明によれば、本免疫原性産物で免疫したマウスから得られた血清の中和能を評価するためにDIL-4試験を行う。そのような評価は、HEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を用いてマウス産物のための比色定量T細胞増殖アッセイまたはヒト産物のためのレポーター遺伝子バイオアッセイにより行ってもよい。これらの細胞ではIL-4またはIL-13による刺激によりJAK/STAT6経路を活性化させるとその後にSEAPが産生される。次いで、その上澄み中のSEAPレベルを評価することにより本免疫原性産物を用いた免疫によって誘導された抗IL-4中和抗体を評価することができる。
【0094】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はマウスIL-4を含み、かつDIL-4試験は、
-RPMIcおよび10%(v/v)FBSと共に最終10ng/mLのIL-2の存在下でCTLL-2細胞を増殖させ、
-血清試料を最終1/200で、陽性対照ポリクローナル抗IL-4抗体を最終1μg/mLで添加し、かつ培養プレートにおいて1ウェル当たり25μLのRPMIc+10%(v/v)FBSで2倍連続希釈し、
-次いでmuIL-4を最終2ng/mLで血清試料に添加し、かつ次いで対照を室温で1時間インキュベートし、
-次いで、1ウェル当たり20,000個のCTLL-2細胞を予めインキュベートした試料に添加し、次いでプレートを5%CO2加湿インキュベータ中約37℃で約48時間インキュベートし、
-培養の終了時に、当該技術分野で良く知られている方法を用いて細胞生存率を評価する(そのような方法の一例は、40μL/ウェルのMTS/PMS溶液をそのウェルに添加し、かつそのプレートを5%CO2中37℃でさらに4時間インキュベートし、次いでこのプレートを分光光度計を用いて490nmで読み取ることである)
という方法で、CTLL-2細胞を用いて行う比色定量T細胞増殖アッセイである。
【0095】
別の実施形態では、本発明の免疫原性産物はヒトIL-4を含み、かつDIL-4試験はHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を用いて行うレポーター遺伝子バイオアッセイであり、
-10%(v/v)FBS、10mMのHEPES、50U/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシンを添加したDMEM GlutaMAX(商標)からなるアッセイ培地にHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を播種する工程と、
-血清試料、対照抗体(ポリクローナルヤギ抗IL-4抗体)をそれぞれ最終1/200および1μg/mLでアッセイ培地で希釈し、血清試料または対照抗体を室温での1時間のインキュベーションのために最終0.25ng/mLのIL-4の存在下で96丸底ウェルプレートにおいて2倍連続希釈する工程と、
-次いでこれらの混合物を1ウェル当たり40,000個のHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を含む予め播種されたプレートに添加し、プレートを5%CO2加湿インキュベータ中約37℃で約24時間インキュベートする工程と、
-培養の終了時に、当該技術分野でよく知られている方法を用いて活性化経路を評価する工程(そのような方法の一例は、90μL/ウェルのQUANTI-Blue(商標)溶液を10μL/ウェルの細胞上澄みに添加し、次いでプレートを5%CO2加湿インキュベータ中37℃で1時間インキュベートし、次いでプレートを分光光度計を用いて625nmで読み取ることである)と
を含む。
【0096】
NC50の結果は、muIL-4またはIL-4活性の50%を中和する血清希釈係数(dil-1)として表す。NC50はIL-4活性の50%を生じさせる血清希釈を横座標軸に補間することにより決定する。
【0097】
DIL-4試験では、NC50値≧100dil-1、好ましくは≧200dil-1は、本発明の免疫原性産物がIL-4に対する中和抗体の産生を可能にすることを示す。一実施形態では、本発明の免疫原性産物の投与によって誘導されるIL-4に対する中和抗体はポリクローナルである。
【0098】
一実施形態では、少なくとも1種のサイトカインはIL-13である。
【0099】
一実施形態では、IL-13は組換え型である。組換えIL-13はIL-13をコードする核酸配列を用いて当該技術分野で知られている従来の方法によって得てもよい。例えば、組換えIL-13は、IL-13の遺伝子を含む発現ベクターを含む細胞を培養し、封入体を回収し、かつIL-13サイトカインを精製することにより得てもよい。組換えIL-13は市販されており、例えばPeproTech社(米国ニュージャージー州ロッキーヒル)から購入してもよい。
【0100】
本発明の一実施形態では、IL-13は哺乳類由来である。
【0101】
一実施形態では、IL-13は哺乳類IL-13のバリアントであり、前記バリアントはその由来元である哺乳類IL-13と少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。
【0102】
一実施形態では、IL-13は完全長IL-13である。
【0103】
別の実施形態では、少なくとも1種のサイトカインは、例えばその由来元であるIL-13の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115または120個のアミノ酸(好ましくは隣接するアミノ酸)を含むIL-13の断片などのIL-13の断片である。
【0104】
一実施形態では、前記断片はIL-13の少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0105】
本発明の一実施形態では、IL-13はヒトIL-13、好ましくは組換えヒトIL-13である。ヒトIL-13は配列番号6の配列(UniProt ID:P35225-1)を有する。
配列番号6
LTCLGGFASPGPVPPSTALRELIEELVNITQNQKAPLCNGSMVWSINLTAGMYCAALESLINVSGCSAIEKTQRMLSGFCPHKVSAGQFSSLHVRDTKIEVAQFVKDLLLHLKKLFREGRFN
【0106】
一実施形態では、IL-13は配列番号6のバリアントであり、前記バリアントは配列番号6と少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。
【0107】
一実施形態では、IL-13は完全長ヒトIL-13である。
【0108】
別の実施形態では、少なくとも1種のサイトカインは、例えば配列番号6の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115または120個のアミノ酸(好ましくは隣接するアミノ酸)を含むヒトIL-13の断片などのヒトIL-13の断片である。
【0109】
一実施形態では、前記断片はヒトIL-13の少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0110】
本発明の一実施形態では、IL-13はマウスIL-13、好ましくは組換えマウスIL-13である。マウスIL-13は配列番号7の配列(UniProt ID:P20109-1)を有する。
配列番号7
PVPRSVSLPLTLKELIEELSNITQDQTPLCNGSMVWSVDLAAGGFCVALDSLTNISNCNAIYRTQRILHGLCNRKAPTTVSSLPDTKIEVAHFITKLLSYTKQLFRHGPF
【0111】
一実施形態では、IL-13は配列番号7のバリアントであり、前記バリアントは配列番号7と少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。
【0112】
一実施形態では、IL-13は完全長マウスIL-13である。
【0113】
別の実施形態では、少なくとも1種のサイトカインは、例えば配列番号7の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100または105個のアミノ酸(好ましくは隣接するアミノ酸)を含むマウスIL-13の断片などのマウスIL-13の断片である。
【0114】
一実施形態では、前記断片はマウスのIL-13の少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0115】
本発明の一実施形態では、IL-13はイヌIL-13、好ましくは組換えイヌIL-13である。イヌIL-13は配列番号8の配列(UniProt ID:Q9N0W9-1)を有する。
配列番号8
SPSPVTPSPTLKELIEELVNITQNQASLCNGSMVWSVNLTAGMYCAALESLINVSDCSAIQRTQRMLKALCSQKPAAGQISSERSRDTKIEVIQLVKNLLTYVRGVYRHGNFR
【0116】
一実施形態では、IL-13は配列番号8のバリアントであり、前記バリアントは配列番号8と少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。
【0117】
一実施形態では、IL-13は完全長イヌIL-13である。
【0118】
別の実施形態では、少なくとも1種のサイトカインは、例えば配列番号8の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105または110個のアミノ酸(好ましくは隣接するアミノ酸)を含むイヌIL-13の断片などのイヌIL-13の断片である。
【0119】
一実施形態では、前記断片はイヌIL-13の少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0120】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は約16:1~約1:2、好ましくは約8:1~約2:1の範囲、より好ましくは約4:1のIL-13:CRM197モル比でCRM197に結合されたIL-13を含む。
【0121】
本発明の一実施形態では、本免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-13を含み、かつ抗IL-13抗体によって認識される。
【0122】
本免疫原性産物がCRM197に結合されたIL-13を含み、かつ抗IL-13抗体によって認識されるという事実は、当該技術分野で知られている従来の方法によって確認してもよい。そのような方法の例は、例えばビオチンで標識した検出抗体を用いる抗サイトカイン/担体タンパク質サンドイッチELISA、ストレプトアビジンHRP増幅システムおよび/またはOPD基質溶液である。
【0123】
一実施形態では、本明細書に記載されているAIL-13試験は本発明の免疫原性産物がCRM197に結合されたIL-13を含み、かつ抗IL-13抗体によって認識されることを確認するために使用してもよい。AIL-13試験は抗IL-13/CRM197ELISA試験である。
【0124】
AIL-13試験は、
-例えばAbcam社(AB53828)またはBio-Rad社(3710-0956、3710-0150または3710-0100)からの抗ジフテリア毒素抗体などのCRM197に対する捕獲抗体でプレートをコーティングし、
-そのプレートをブロッキング緩衝液(例えばPBS中に例えばカゼイン2%(w/v)など)を用いて約37℃で約90分間ブロッキングし、
-そのプレートを250ng/mLで開始する本免疫原性産物の2倍連続希釈物または例えばIL-13およびCRM197などの陰性対照と共に約37℃で約90分間インキュベートし、
-そのプレートを、例えばSouthernBiotech社(10126-08)、PeproTech社(500-P13BT)またはR&D SYSTEMS社(BAF213)からの抗IL-13ビオチン化抗体あるいはBio-Rad社(AAM34B)、PeproTech社(500-P178BT)またはR&D SYSTEMS社(BAF413)からのマウス抗IL-13ビオチン化抗体などのIL-13に対するビオチン化検出抗体と共に約37℃で約90分間インキュベートし、
-そのプレートをストレプトアビジン-HRPと共に約37℃で約30分間インキュベートし、かつその複合体をOPD基質溶液で約30分間発色させ、
-その酵素反応を停止させた後に得られた色の強度を490nmでの分光光度法により決定する
というように行う。
【0125】
一実施形態では、1ウェル当たり25ngで本発明の免疫原性産物を含むウェルの光学濃度が陰性対照を含むウェルの光学濃度の少なくとも約3倍、好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍である場合、当業者は本発明の免疫原性産物が(i)抗IL-13抗体によって認識され、かつ(ii)CRM197に結合されたIL-13を含むという結論に達し得る。
【0126】
別の実施形態では、本発明の免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-13を含み、かつ強く不活性化されており、これは本免疫原性産物が以下で引用されているBIL-13試験条件下で約15%未満の残留活性、好ましくは約10%未満の残留活性、より好ましくは約5%未満の残留活性を示すことを意味する。BIL-13試験はHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を用いるレポーター遺伝子バイオアッセイである。これらの細胞ではIL-4またはIL-13による刺激によりJAK/STAT6経路を活性化させるとその後にSEAPが産生される。次いで、その上澄み中のSEAPレベルを評価することにより本発明の免疫原性産物に含まれているIL-13の生物活性を評価することができる。
【0127】
一実施形態では、BIL-13試験はInvivoGen社から購入したHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞株を使用する。マウスもしくはヒトIL-13の存在下で、HEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞株のSTAT6経路を活性化させ、かつSEAPを産生させ、これは当該技術分野でよく知られている方法を用いて定量化することができる。
【0128】
BIL-13試験は、
-10%(v/v)FBS、10mMのHEPES、50U/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシンを添加したDMEM GlutaMAX(商標)からなるアッセイ培地にHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を播種する工程と、
-ヒト免疫原性産物(IL-13/CRM197)およびIL-13対照をそれぞれ最終8000および10ng/mLでアッセイ培地で2倍連続希釈する工程と、
-マウス免疫原性産物(muIL-13/CRM197)およびmuIL-13対照をそれぞれ最終250および10ng/mLでアッセイ培地で2倍連続希釈する工程と、
-次いでこの試料を1ウェル当たり40,000個のHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を含む予め播種されたプレートに移し、プレートを5%CO2加湿インキュベータ中約37℃で約24時間インキュベートする工程と、
-培養の終了時に、当該技術分野でよく知られている方法を用いて活性化経路を評価する工程(そのような方法の一例は、90μL/ウェルのQUANTI-Blue(商標)溶液(InvivoGen社から購入)を10μL/ウェルの細胞上澄みに添加し、次いでプレートを5%CO2加湿インキュベータ中約37℃で約1時間インキュベートし、次いでプレートを分光光度計を用いて625nmで読み取ることである)と
を含む。
【0129】
考察される試料のために記録した最大シグナルの50%を生じさせる本免疫原性産物(またはIL-13)の量に対応する50%有効量(ED50)値は、全体の希釈点からの4パラメータロジスティック(4PL)非線形回帰を用いてODmax/2値を対応する試料濃度に補間することにより決定する。
【0130】
BIL-13試験では、本発明の被験免疫原性産物のED50をIL-13対照標準曲線の対応するED50で割ることにより不活性化係数を計算する。不活性化係数>20という結果は同じ量のタンパク質の場合、本免疫原性産物におけるIL-13活性が自然なIL-13活性の5%未満に対応していることを意味する。一実施形態では、約2、2.5、3.33、5または10、好ましくは約20よりも高い不活性化係数は、本免疫原性産物が強く不活性化されていることを示す。一実施形態では、自然なIL-13活性よりも約50%、40%、30%、20%または10%低い、好ましくは約5%低い残留活性は、本免疫原性産物が強く不活性化されていることを示す。
【0131】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、CRM197に結合されたIL-13を含み、かつ免疫原性であり、これは本免疫原性産物がCIL-13試験条件下でインビボにおいて抗IL-13抗体を誘導することができることを意味する。一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、例えばCIL-13試験条件下などでインビボにおいてポリクローナル抗IL-13抗体を誘導することができる。
【0132】
CIL-13試験は以下の方法に従って行い、すなわち本免疫原性産物の特定量の総タンパク質(例えばブラッドフォードタンパク質アッセイにより決定)をマウス(4週齢以上)に120日で少なくとも3回注射する。一実施形態では、CIL-13試験は例えば異種系であり、非マウスIL-13を含む免疫原性産物をマウスに注射し、この試験は、約0.3~10μgの範囲の総タンパク質用量を投与することを含む。別の実施形態では、CIL-13試験は例えば同種系であり、マウスIL-13を含む免疫原性産物をマウスに注射し、この試験は約5~約30μgの範囲の総タンパク質用量を投与することを含む。血清試料は免疫前(免疫前血清試料)および39日目~120日目の間(試験血清試料)に得る。抗IL-13ELISAは以下に説明されているように行う。
【0133】
簡単に言えば、本免疫原性産物を調製するために使用される1μg/mLのIL-13で96ウェルプレートをコーティングし、かつ約2℃~約8℃の範囲の温度で一晩インキュベートする。次いでこのプレートをブロッキング緩衝液を用いて約37℃で約90分間ブロッキングする。100μLの免疫前試料および血清試料(免疫前および試験)を例えば500dil-1で開始して256,000dil-1までなどの2倍連続希釈でそのウェルに添加する。標識した抗マウス免疫グロブリン二次抗体(HRP結合抗体など)を最後にウェルに添加し、かつ例えばOPD基質溶液などの当該技術分野で知られている任意の比色手段を用いてELISAを発色させる。
【0134】
一実施形態では、試験血清試料を含むウェルの光学濃度が免疫前血清試料を含むウェルの光学濃度よりも少なくとも約1.5倍、好ましくは少なくとも約2倍高い場合、本免疫原性産物を免疫原性であるとみなし、これは本免疫原性産物がインビボにおいて抗IL-13抗体を誘導したことを意味する。
【0135】
この試験では力価は、当該アッセイにおいて「ODmax-対応する免疫前試料のOD」の50%に達した場合の血清の希釈として定めた。この計算様式は周知の抗体陽転力価を見る場合よりも非常に厳しいが、よりロバストな分析およびより低い偽陽性を提供する。力価は血清希釈係数(dil-1)として表す。
【0136】
別の実施形態ではCIL-13試験において、力価の値≧250dil-1、好ましくは≧500dil-1は、本発明の免疫原性産物がIL-13に対する結合抗体の産生を可能にすることを示す。
【0137】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-13を含み、かつ以下で引用されているDIL-13試験条件下でIL-13活性を中和することができる。本発明によれば、DIL-13試験はレポーター細胞株HEK-Blue(商標)IL-4/IL-13を用いて本免疫原性産物で免疫したマウスから得られた血清の中和能を評価するために行う。これらの細胞では、IL-4またはIL-13による刺激によりJAK/STAT6経路を活性化させるとその後にSEAPが産生される。次いで、その上澄み中のSEAPレベルを評価することにより本免疫原性産物を用いた免疫によって誘導された抗IL-13中和抗体を評価することができる。
【0138】
DIL-13試験は、HEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を用いて以下の方法で行い、すなわち生理活性のIL-13の存在下でHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞株のSTAT6経路を活性化させ、SEAPを産生させ、これは当該技術分野でよく知られている方法を用いて定量化することができる。このアッセイは以下の方法、すなわち
-10%(v/v)FBS、10mMのHEPES、50U/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシンを添加したDMEM GlutaMAX(商標)からなるアッセイ培地においてHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を培養し、
-ヒト免疫原性産物の投与後に得られた血清試料および対照抗体(例えばAF-213-NAなどのポリクローナルヤギ抗IL-13抗体)をそれぞれ最終1/100および4μg/mLでアッセイ培地で希釈し、かつ2ng/mLのIL-13に添加し、
-マウス免疫原性産物の投与後に得られた血清試料および対照抗体(AF-413-NAなどのポリクローナルヤギ抗muIL-13抗体)をそれぞれ最終1/100および1μg/mLでアッセイ培地で希釈し、かつ2ng/mLのmuIL-13に添加し、
-次いでこれらの混合物を1ウェル当たり40,000個のHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞に添加する前に室温で1時間インキュベートし、プレートを5%CO2加湿インキュベータ中約37℃で約24間インキュベートし、
-培養の終了時に、当該技術分野でよく知られている方法を用いて活性化経路を評価する(そのような方法の一例は、90μL/ウェルのQUANTI-Blue(商標)溶液を10μL/ウェルの細胞上澄みに添加し、次いでプレートを5%CO2加湿インキュベータ中37℃で1時間インキュベートし、次いでプレートを分光光度計を用いて625nmで読み取ることである)
という方法に従って行う。
【0139】
NC50の結果は、muIL-13またはIL-13活性の50%を中和する血清希釈係数(dil-1)として表す。NC50はIL-13活性の50%を生じさせる血清希釈を横座標軸に補間することにより決定する。
【0140】
DIL-13試験では、NC50値≧50、好ましくはNC50値≧100dil-1は、本発明の免疫原性産物がIL-13に対する中和抗体の産生を可能にすることを示す。一実施形態では、本発明の免疫原性産物の投与によって誘導されるIL-13に対する中和抗体はポリクローナルである。
【0141】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はIL-4およびIL-13を含む。
【0142】
一実施形態では、IL-4、IL-13または両方が組換え型である。
【0143】
一実施形態では、IL-4およびIL-13はどちらも同じ哺乳類由来である。一実施形態では、IL-4、IL-13または両方がヒトである。
【0144】
一実施形態では、IL-4はヒトIL-4のバリアントであり、前記バリアントはヒトIL-4と少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。一実施形態では、IL-13はヒトIL-13のバリアントであり、前記バリアントはヒトIL-13と少なくとも約70%、75、80、85、90、95%またはそれ以上の同一性を示す。
【0145】
一実施形態では、IL-4、IL-13または両方が完全長である。
【0146】
一実施形態では、IL-4は完全長IL-4の断片である。一実施形態では、IL-13は完全長IL-13の断片である。
【0147】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、どちらもCRM197に結合されたIL-4およびIL-13を含む。
【0148】
一実施形態では、サイトカイン(すなわち、IL-4およびIL-13):CRM197モル比は、約16:1~約1:2、好ましくは約8:1~約2:1、より好ましくは約4:1の範囲である。
【0149】
一実施形態では、IL-4:CRM197モル比は、約8:1~約1:2、好ましくは約4:1~約1:1の範囲、より好ましくは約2:1である。
【0150】
一実施形態では、IL-13:CRM197モル比は、約8:1~約1:2、好ましくは約4:1~約1:1の範囲、より好ましくは約2:1である。
【0151】
一実施形態では、IL-4:IL-13モル比は、約5:1~約1:5、好ましくは約2:1~約1:2の範囲、より好ましくは約1:1である。
【0152】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-4およびIL-13を含み、かつは抗IL-4および抗IL-13抗体によって認識される。
【0153】
本免疫原性産物は、CRM197に結合されたIL-4およびIL-13を含み、かつ抗IL-4および抗IL-13抗体によって認識されるという事実は当該技術分野で知られている従来の方法によって確認してもよい。そのような方法の例は、例えばビオチンで標識した検出抗体を用いる抗サイトカイン/担体タンパク質サンドイッチELISA、ストレプトアビジンHRP増幅システムおよび/またはOPD基質溶液である。
【0154】
一実施形態では、抗IL-4および抗IL-13抗体による本免疫原性産物の認識は、本明細書に記載されているA試験(AIL-4試験およびAIL-13試験)を用いて確認してもよい。
【0155】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-4およびIL-13を含み、かつ強く不活性化されており、これは、本免疫原性産物は以下で引用されているB試験(BIL-4試験およびBIL-13試験)条件下で約10%未満のIL-4初期活性、好ましくは約5%未満および好ましくは約1%未満のIL-4初期活性ならびに約15%未満のIL-13初期活性、好ましくは約10%未満および好ましくは約5%未満のIL-13初期活性を示すことを意味する。
【0156】
一実施形態では、本免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-4およびIL-13を含み、かつ免疫原性であり、これは本免疫原性産物が(i)CIL-4試験条件下でインビボにおいて抗IL-4抗体を誘導することができ、かつ(i)CIL-13試験条件下でインビボにおいて抗IL-13抗体を誘導することができることを意味する。一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、例えばCIL-4試験条件下などでインビボにおいてポリクローナル抗IL-4抗体を誘導することができ、かつ例えばCIL-13試験条件下などでインビボにおいて抗IL-13抗体を誘導することができる。
【0157】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物はCRM197に結合されたIL-4およびIL-13を含み、(i)本明細書において引用されているDIL-4試験条件下でIL-4活性を中和することができ、かつ(ii)以下で引用されているDIL-13試験条件下でIL-13活性を中和することができる。一実施形態では、本発明の免疫原性産物の投与によって誘導されるIL-4およびIL-13に対する中和抗体はポリクローナルである。
【0158】
本発明はさらに、担体タンパク質、好ましくはCRM197に結合されたIL-4、IL-13およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種のサイトカインを含む免疫原性産物を産生するための方法に関し、本方法は、
a)少なくとも1種のサイトカインをNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー(好ましくはN-[γ-マレイミドブチリルオキシ]-スクシンイミドエステル(sGMBS))と接触させる工程と、
b)担体タンパク質をNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー(好ましくはN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA))と接触させて担体-SATA複合体を生成する工程と、
c)工程(a)で得られたsGMBS-サイトカイン複合体を工程(b)で得られた担体-SATA複合体と接触させる工程と
を含む。
【0159】
一実施形態では工程a)において、当該反応緩衝液は液体、好ましくは水溶液である。
【0160】
一実施形態では工程a)において、当該反応緩衝液は約6~約8の範囲、好ましくは約6.5~約7.5の範囲、より好ましくは約pH7.2のpHである。
【0161】
一実施形態では工程a)において、当該サイトカインは、約0.1~約10mg/mL、好ましくは約0.5~約5mg/mlの範囲、より好ましくは約1mg/mLの濃度で溶液中に存在する。
【0162】
一実施形態では工程a)において、NHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー(好ましくはsGMBS)を反応緩衝液中で1mM~100mM、好ましくは5mM~50mMの範囲、より好ましくは10mMの濃度で調製する。
【0163】
一実施形態では工程a)において、IL-4およびNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはsGMBSを約1:120~約1:1、好ましくは約1:50~約1:10の範囲のIL-4:NHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはsGMBSモル比で混合する。
【0164】
一実施形態では工程a)において、IL-13およびNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはsGMBSを約1:120~約1:1、好ましくは約1:50~約1:10の範囲のIL-13:NHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはsGMBSモル比で混合する。
【0165】
一実施形態では工程a)において、少なくとも1種のサイトカインをNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはsGMBSと共に約30分間~約120分間、好ましくは約45~約90分間の範囲の期間にわたって、より好ましくは少なくとも60分間インキュベートする。
【0166】
一実施形態では工程a)において、少なくとも1種のサイトカインをNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー(好ましくはsGMBS)と接触させる工程を約15℃~約35℃、好ましくは約18℃~約27℃の範囲の温度で行う。
【0167】
一実施形態では工程a)の後に、反応混合物中に存在する約10kDa未満、約5kDa未満または約3kDa未満の分子量を有する低分子化合物を除去する。これらの低分子化合物は主に、NHSエステル(およびNHSエステル加水分解関連副産物)を含む過剰なヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはsGMBSおよび反応していない過剰な分子を包含する。そのような除去する工程は当該技術分野でよく知られている方法によって行ってもよい。
【0168】
一実施形態では工程a)の終了時に、ブラッドフォードアッセイまたは当該技術分野でよく知られている任意の方法によってタンパク質含有量を決定する。
【0169】
一実施形態では工程b)において、当該反応緩衝液は液体、好ましくは水溶液である。
【0170】
一実施形態では工程b)において、当該反応緩衝液は約6~約8の範囲、好ましくは約6.5~約7.5の範囲、より好ましくは約pH7.2のpHである。
【0171】
一実施形態では工程b)において、CRM197は約0.2~約20mg/mL、好ましくは約1~約10mg/mlの範囲、より好ましくは約2mg/mLの濃度で溶液中に存在する。
【0172】
一実施形態では工程b)において、NHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはSATAは、20mM~約500mM、好ましくは約50mM~約200mMの濃度範囲、より好ましくは約100mMの濃度で溶液、好ましくはDMSO中に存在する。
【0173】
一実施形態では工程b)において、CRM197およびNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはSATAを、約1:320~約1:10の範囲の担体:NHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはSATAモル比で混合する。
【0174】
一実施形態では工程b)において、CRM197をNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはSATAと共に約10分間~約60分間、好ましくは約15分間~約45分間の範囲の期間にわたって、より好ましくは30分間インキュベートする。
【0175】
一実施形態では、接触させる工程b)は、約15℃~約35℃、好ましくは約18℃~約27℃の範囲の温度で行う。
【0176】
一実施形態では工程b)の後に、反応混合物中に存在する約10kDa未満、約5kDa未満または約3kDa未満の分子量を有する低分子化合物を除去する。これらの低分子化合物は主に、NHSエステル(およびNHSエステル加水分解関連副産物)を含む過剰なヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはSATA、DMSO、反応していない過剰な分子を包含する。そのような除去する工程は当該技術分野でよく知られている方法によって行ってもよい。
【0177】
一実施形態では工程b)の後に、CRM197とNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはSATAとの複合体を脱保護して保護基(NHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカー、好ましくはSATA)を官能基に変換する。一実施形態では、前記脱保護する工程は、反応混合物中に存在する約10kDa未満、約5kDa未満または約3kDa未満の分子量を有する低分子化合物を除去する工程の後に行う。
【0178】
分子を脱保護するための方法の例は当該技術分野でよく知られており、限定されるものではないが、ヒドロキシルアミンの使用、メトキシルアミンの使用または塩基(例えば、NaOH、KOH、K2CO3、MeONa、NH3のメタノール溶液など)の使用が挙げられる。
【0179】
一実施形態では、脱保護する工程は、好ましくは約10mM~約500mM、好ましくは約20mM~約100mMの範囲、より好ましくは約50mMの最終濃度でのヒドロキシルアミン溶液の反応混合物への添加を含む。
【0180】
一実施形態では、ヒドロキシルアミン溶液を反応混合物と共に約60分間~約180分間、好ましくは約90分間~約150分間の範囲の期間にわたって、より好ましくは120分間インキュベートする。
【0181】
一実施形態では、ヒドロキシルアミン溶液を50mMで120分間添加する。
【0182】
一実施形態では、ヒドロキシルアミン溶液の反応混合物とのインキュベーションは約15℃~約35℃、好ましくは約18℃~約27℃の範囲の温度で行う。
【0183】
一実施形態では脱保護工程の後に、反応混合物中に存在する約10kDa、5kDaまたは3kDa未満の分子量を有する低分子化合物を除去する。これらの低分子化合物は主に、過剰なヒドロキシルアミンおよび前の工程からの潜在的な残留SATAを包含する。そのような除去する工程は当該技術分野でよく知られている方法によって行ってもよい。
【0184】
一実施形態では工程b)の終了時に、ブラッドフォードアッセイまたは当該技術分野でよく知られている任意の方法によってタンパク質含有量を決定する。
【0185】
次いで本発明の方法の工程c)において、工程a)の最終産物を工程b)の最終産物と接触させ、それにより本発明の免疫原性産物を産生する。
【0186】
一実施形態では工程c)において、IL-4を含む工程a)の最終産物およびCRM197を含む工程b)の最終産物を、約16:1~約1:2、好ましくは約8:1~約2:1の範囲、より好ましくは約4:1のIL-4:CRM197モル比で接触させる。
【0187】
一実施形態では工程c)において、IL-13を含む工程a)の最終産物およびCRM197を含む工程b)の最終産物を、約16:1~約1:2、好ましくは約8:1~約2:1の範囲、より好ましくは約4:1のIL-13:CRM197比で接触させる。
【0188】
工程c)の別の実施形態では、IL-4を含む工程a)の最終産物、IL-13を含む工程a)の最終産物および工程b)の最終産物を接触させる。一実施形態では、前記接触させる工程は、約16:1~約1:2、好ましくは約8:1~約2:1の範囲、より好ましくは約4:1のサイトカイン(すなわちIL-4およびIL-13):CRM197モル比で行う。一実施形態では、前記接触させる工程は、約8:1~約1:2、好ましくは約4:1~約1:1の範囲、より好ましくは約2:1のIL-4:CRM197モル比で行う。一実施形態では、前記接触させる工程は約8:1~約1:2、好ましくは約4:1~約1:1の範囲、より好ましくは約2:1のIL-13:CRM197モル比で行う。一実施形態では、前記接触させる工程は約5:1~約1:5、好ましくは約2:1~約1:2の範囲、より好ましくは約1:1のIL-4:IL-13モル比で行う。
【0189】
一実施形態では工程c)において、当該反応緩衝液は液体、好ましくは水溶液である。
【0190】
一実施形態では工程c)において、当該反応緩衝液は約6~約8の範囲、好ましくは約6.5~約7.5の範囲のpH、より好ましくは約7.2のpHである。
【0191】
工程c)の一実施形態では、接触させる工程は約2時間~約26時間、好ましくは約10~18時間、より好ましくは約12~約18時間の範囲の期間にわたって行う。
【0192】
一実施形態では、インキュベーション工程c)は約2℃~10℃、好ましくは約3℃~約7℃の範囲、より好ましくは約4℃の温度で行う。
【0193】
一実施形態では工程c)の後に、反応混合物中に存在する約100kDa未満、約50kDa未満、約25kDa未満、約10kDa未満、約5kDa未満または約3kDa未満の分子量を有する低分子化合物を除去する。これらの低分子化合物は主に反応していない過剰な分子を包含する。そのような除去する工程は当該技術分野でよく知られている方法によって行ってもよい。
【0194】
一実施形態では、工程c)で得られた免疫原性産物を濃縮する。免疫原性産物の濃縮は例えば、無菌濾過と任意に組み合わせることができる遠心限外濾過法などの当該技術分野で知られている任意の技術によって当業者により行ってもよい。
【0195】
一実施形態では、工程c)で得られ、かつ任意に濃縮された免疫原性産物を凍結乾燥する。
【0196】
本発明はさらに、本発明の方法によって得ることができる免疫原性産物に関する。
【0197】
本発明はさらに、本明細書の上に記載されている少なくとも1種の免疫原性産物を含むか(本質的に)それからなる組成物に関する。一実施形態では、前記組成物を免疫原性組成物と呼んでもよい。
【0198】
本発明はさらに、本明細書の上に記載されている少なくとも1種の免疫原性産物および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含むか(本質的に)それらからなる医薬組成物に関する。
【0199】
本発明の医薬組成物に使用することができる薬学的に許容される賦形剤としては、限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、例えばヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、例えばリン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0200】
本発明はさらに、本明細書の上に記載されている少なくとも1種の免疫原性産物を含むか(本質的に)それらからなる薬に関する。
【0201】
組成物、医薬組成物または薬に関連して本明細書で使用される「本質的に~からなる」という用語は、本発明の少なくとも1種の免疫原性産物が前記組成物、医薬組成物または薬中でたった1種の治療薬すなわち生物学的活性を有する薬剤であることを意味する。
【0202】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または薬は、CRM197に結合されたIL-4を含む免疫原性産物を含むか本質的にそれからなる。
【0203】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または薬は、CRM197に結合されたIL-13を含む免疫原性産物を含むか本質的にそれからなる。
【0204】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または薬は、IL-4およびIL-13の両方に結合されたCRM197を含む免疫原性産物を含むか本質的にそれからなる。
【0205】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または薬は、約10:1~約1:10の範囲の重量比、好ましくは約4:1~1:4の範囲の重量比でCRM197に結合されたIL-4を含む免疫原性産物とCRM197に結合されたIL-13を含む免疫原性産物との混合物を含むか本質的にそれからなる。
【0206】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または薬はワクチン組成物である。本発明の一実施形態では、本発明のワクチン組成物は少なくとも1種のアジュバントを含む。
【0207】
本発明はさらに、本発明の組成物、医薬組成物、薬またはワクチンの製剤に関し、ここでは本組成物、医薬組成物、薬またはワクチンはアジュバント化されている。
【0208】
従って一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬またはワクチンは1種以上のアジュバントを含む。
【0209】
本発明で使用することができる好適なアジュバントとしては、限定されるものではないが以下のものが挙げられる。
(1)例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン)、
(2)例えばスクアレン系エマルション(例えばスクアレン系水中油型エマルション)またはスクアラン系エマルションなどの水中油型エマルション製剤(例えば、ムラミルペプチド(以下に定義されている)または細菌細胞壁成分などの他の特定の免疫賦活剤の有無を問わない)、例えば
(a)モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics社、マサチューセッツ州ニュートン)などのマイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子に製剤化された5%スクアレン、0.5%Tween80および0.5%span85(任意に様々な量のMTP-PE(以下を参照、但し必須ではない)を含有)を含有するMF59(PCT出願の国際公開第90/14837号に記載されているスクアレン系水中油型アジュバント)、
(b)サブミクロンエマルションまで微小流体化されているかより大きい粒径のエマルションを生成するためにボルテックスされた10%スクアレン、0.4%Tween80、5%プルロニック(登録商標)ブロックポリマーL121およびthr-MDP(以下を参照)を含有するSAF、および
(c)2%スクアレンと、0.2%Tween80と、米国特許出願公開第4,912,094号(Corixa)に記載されている3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(MPL(商標))、トレハロースジミコール酸(TDM)および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))からなる群からの1種以上の細菌細胞壁成分とを含有するRibi(商標)アジュバント系(RAS)(Corixa社、モンタナ州ハミルトン)、
(d)クエン酸緩衝液に分散されている、限定されるものではないが以下の組成:スクアラン(3.9%、w/v)、ソルビタントリオレエート(0.47%、w/v)およびポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート(0.47%、w/v)を含むスクアラン系アジュバントなど、
(3)例えばISA-51などの油中水型エマルション製剤またはスクアレン系油中水型アジュバント(例えばISA-720)(油中水型エマルションに使用するのに適した油アジュバントは鉱油および/または代謝可能な油を含んでいてもよい。鉱油はBayol(登録商標)、Marcol.(登録商標)およびDrakeol(登録商標)6VR(SEPPIC社、フランス)を含むDrakeol(登録商標)から選択されてもよい。代謝可能な油は、SPオイル(以下に記載されている)、Emulsigen(MPV Laboratories、ラルストン、NZ)、Montanide264,266,26(SEPPIC社社、フランスのパリ)、ならびに植物油、魚油スクアランおよびスクアレンなどの動物油、およびトコフェロールおよびその誘導体から選択されてもよい)、
(4)Quil AまたはSTIMULON(商標)QS-21(Antigenics社、マサチューセッツ州フレーミングハム)(米国特許出願公開第5,057,540号)などのサポニンアジュバントまたはISCOM(免疫賦活複合体)などのそこから生成された粒子、
(5)Corixa社から入手可能であり、かつ米国特許出願公開第6,113,918号に記載されている細菌性リポ多糖、アミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)などの合成の脂質A類似体、またはその誘導体もしくは類似体(そのようなAGPの1つは水性形態または安定なエマルションとして製剤化されている529としても知られている(かつてはRC529として知られていた)2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2-デオキシ-4-O-ホスホノ-3-Oi[(R)-3テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]-2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-b-Dグルコピラノシドである)、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドなどの合成のポリヌクレオチド(米国特許第6,207,646号)、
(6)インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18など)などのサイトカイン、インターフェロン(例えばγインターフェロン)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、同時刺激分子B7-1およびB7-2など、
(7)公開されている国際特許出願の国際公開第00/18434号(国際公開第02/098368号および国際公開第02/098369号も参照)に係る、アミノ酸29位のグルタミン酸が別のアミノ酸、好ましくはヒスチジンで置換されている例えば野生型または変異型のいずれかのコレラ毒素(CT)などの細菌性ADPリボシル化毒素の解毒された変異体、百日咳毒素(PT)または大腸菌易熱性毒素(LT)、特にLT-K63、LT-R72、CT-S109、PT-K9/G129(例えば、国際公開第93/13302号および国際公開第92/19265号を参照)、および
(8)本組成物の有効性を高めるために免疫賦活剤として作用する他の物質(ムラミルペプチドとしては、限定されるものではないが、N-アセチルムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチルノルムラミル(normuramyl)-L-アラニン-2-(1’-2’ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)などが挙げられる)。
【0210】
使用されるアジュバントは部分的にレシピエント生物によって決まってもよい。さらに、投与するアジュバントの量は動物の種類および大きさによって決まる。
【0211】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物は、1種以上の界面活性剤および任意に本明細書の上に記載されている少なくとも1種のアジュバントをさらに含むエマルションである(を含む)。一実施形態では、エマルションは油中水型エマルションまたは水中油型エマルションである。
【0212】
本発明で使用することができる界面活性剤の例は当該技術分野でよく知られており、限定されるものではないが、Arlacelとして市販されているMontanide(登録商標)80(SEPPIC社社、フランス)などのモノオレイン酸マンニド、Tween20、Tween80、span85、TritonX-100が挙げられる。
【0213】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬、ワクチン組成物は治療有効量の本発明の少なくとも1種の免疫原性産物を含む。
【0214】
一実施形態では貯蔵目的のために、本発明の免疫原性産物または組成物、医薬組成物、薬、ワクチン組成物またはエマルションを凍結乾燥する。
【0215】
従って一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬、ワクチン組成物またはエマルションはフリーズドライ(凍結乾燥)した形態で提供してもよい。本実施形態によれば、本発明の免疫原性産物を1種以上の凍結乾燥補助物質と組み合わせる。様々な凍結乾燥補助物質は当業者によって周知であり、限定されるものではないが、ラクトースおよびマンニトールのような糖が挙げられる。
【0216】
一実施形態では、例えば分解しやすいタンパク質が分解しないように保護するか、本免疫原性産物の貯蔵寿命を高めるか、凍結乾燥効率を高めるために、本発明の組成物、医薬組成物、薬、ワクチン組成物またはエマルションを安定化剤と混合してもよい。有用な安定化剤としては、限定されるものではないが、SPGA、炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、澱粉、スクロース、デキストランまたはグルコース)、タンパク質(例えば、アルブミンまたはカゼインまたはそれらの分解産物など)、例えばリジンまたはグリシンなどのアミノ酸と例えばアルカリ金属リン酸塩などの緩衝液との混合物が挙げられる。
【0217】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、ワクチン組成物またはエマルションは、注射、局所(例えば経皮送達など)、直腸内、鼻内または膣内投与してもよい。
【0218】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬、ワクチン組成物またはエマルションは注射に適した形態である。従って一実施形態では、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物は当該対象に筋肉内、腹膜内または皮下注射することができる。
【0219】
注射可能な使用に適した形態の例としては、限定されるものではないが、無菌注射溶液または分散液の即時調製のための無菌溶液または分散液および無菌粉末が挙げられる。微生物による汚染に対する予防は、本組成物中に例えば各種抗菌剤および抗真菌剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸およびチメロサールなど)などの防腐剤を添加することにより実現することができる。一実施形態では、注射時の痛みを軽減するために等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい場合がある。一実施形態では、注射可能な組成物の長期吸収は、本組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによりを実現することができる。
【0220】
一実施形態では、本発明の凍結乾燥したワクチン組成物を注射用水に可溶化させ、かつ穏やかに混合し、次いで本明細書の上に記載されている免疫アジュバントを添加し、混合物を穏やかに混合し、かつ好適な注射器の中に充填する。従って本発明は、本発明のワクチン組成物が充填されたか予め充填された注射器などの医療装置にも関する。
【0221】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物は局所投与に適した形態である。局所投与に適した形態の例としては、限定されるものではないが、ポリマーパッチまたは制御放出パッチなどが挙げられる。
【0222】
別の実施形態では、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬、ワクチン組成物またはエマルションは腸内投与に適した形態である。直腸内投与に適した形態の例としては限定されるものではないが、坐薬、マイクロ浣腸、浣腸、ゲル、直腸フォーム(rectal foam)、クリームおよび軟膏などが挙げられる。
【0223】
本発明は、本発明の組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物が充填されたか予め充填された注射器である医療装置にも関する。
【0224】
一実施形態では、前記注射器は、一方のチャンバーが本発明の免疫原性産物を含む溶液を含み、かつ他方のチャンバーがアジュバントを含むデュアルチャンバー注射器である。
【0225】
本発明は、本発明の免疫原性産物あるいは本発明の組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物が予め充填されたバイアルを含む医療装置にも関する。
【0226】
本発明はさらに、対象における炎症性疾患を治療するための本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物に関する。
【0227】
従って本発明はさらに、対象に本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬、ワクチン組成物またはエマルションを投与することを含む、対象における炎症性疾患を治療するための方法に関する。
【0228】
本発明はさらに、対象に本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物を投与することを含む、対象においてIL-4、IL-13または両方に対する免疫応答を誘導するための方法に関する。
【0229】
本発明はさらに、対象に本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物を投与することを含む、対象においてIL-4、IL-13または両方の生物活性を阻害するかその生物活性を中和する抗体の産生を誘導するための方法に関する。一実施形態では、当該抗体はポリクローナル抗体である。
【0230】
一実施形態では、当該対象は、炎症性疾患、特に異常なIL-4および/またはIL-13発現または活性に関連する疾患に罹患しており、好ましくはそうであると診断されている。
【0231】
一実施形態では、当該対象はヒトである。好ましくは本実施形態によれば、本発明の免疫原性産物に含まれている少なくとも1種のサイトカインはヒトである。
【0232】
一実施形態では、当該対象は非ヒト哺乳類(例えばペットなど)である。好ましくは本実施形態によれば、本発明の免疫原性産物に含まれている少なくとも1種のサイトカインは前記非ヒト哺乳類由来である。
【0233】
一実施形態では、炎症性疾患は異常なIL-4および/またはIL-13発現または活性に関連する疾患である。
【0234】
炎症性疾患の例としては、限定されるものではないが、喘息(アレルギー性もしくは非アレルギー性のいずれか)、アレルギー症状(例えば、食物アレルギー、毒アレルギー、ネコアレルギー、薬物アレルギー、高IgE症候群、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎およびアレルギー性胃腸炎など)、アトピー性疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹および慢性蕁麻疹を含む)、湿疹など)、水疱性類天疱瘡、呼吸器疾患(アレルギー性および非アレルギー性喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など)、鼻ポリープおよび気道炎症を伴う他の症状(例えば、好酸球増加症、嚢胞性線維症および肺線維症を含む線維症および過剰粘液産生、全身性強皮症(SSc)など)、炎症性および/または自己免疫疾患または症状、胃腸障害または胃腸病(例えば、炎症性腸疾患(IBD)および好酸球性食道炎(EE)、および好酸球媒介性胃腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病および全身性エリテマトーデスなど)、全身性エリテマトーデス、肝障害または肝臓病(例えば、肝硬変および肝細胞癌など)、強皮症、線維性疾患または障害(例えば、肝臓の線維症(例えば、B型および/またはC型肝炎ウイルスによって引き起こされる線維症など)など)、強皮症、固形腫瘍または白血病などの癌(例えばB細胞慢性リンパ性白血病など)、神経膠芽腫、リンパ腫(例えばホジキンリンパ腫など)ならびに肥満細胞症が挙げられる。
【0235】
一実施形態では、炎症性疾患は、喘息(例えばアレルギー性喘息)、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、食物アレルギー、鼻ポリープおよび好酸球性食道炎を含む群から選択される。
【0236】
一実施形態では、炎症性疾患は、喘息(例えばアレルギー性喘息)、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症および食物アレルギーを含む群から選択される。
【0237】
一実施形態では、炎症性疾患はアレルギー、喘息またはアトピー性皮膚炎である。
【0238】
一実施形態では、炎症性疾患はアレルギー性喘息である。
【0239】
一実施形態では、炎症性疾患は固形腫瘍である。一実施形態では、本発明の方法は固形腫瘍からの転移を予防するためのものである。
【0240】
本発明はさらに、特異抗原に対してアレルギー性の対象の脱感作を誘導するための方法に関し、前記方法は当該対象に本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物および前記アレルゲンを投与することを含む。
【0241】
アレルゲン免疫療法、脱感作または減感作またはアレルギーワクチン接種としても知られている本明細書で使用される「脱感作」という用語は、アレルギー性喘息などの環境アレルギーのための医学的治療を指す。そのような治療は、アレルゲンの存在下で免疫系の応答を減少させることを試みて人々にますます多くの量のアレルゲンに曝露させることを含む。
【0242】
アレルゲンの例としては、限定されるものではないが、吸入アレルゲン、摂取アレルゲンおよび接触アレルゲンが挙げられる。
【0243】
吸入アレルゲンの例としては、限定されるものではないが、コナダニ亜目(例えば、アシブトコナダニ(Acarus siro)(貯蔵庫ダニ、Aca s 13)、ネッタイタマニクダニ(Blomia tropicalis)(ダニ、Blo t)、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)(アメリカイエダニ、Der f)、デルマトファゴイデス・ミクロセラス(Dermatophagoides microceras)(イエダニ、Der m)、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)(ヨーロッパイエダニ、Der p)、シワチリダニ(Euroglyphus maynei)(イエダニ、Eur m)、イエニクダニ(Glycyphagus domesticus)(貯蔵庫ダニ、Gly d 2)、サヤアシニクダニ(Lepidoglyphus destructor)(貯蔵庫ダニ、Lep d)、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)(貯蔵庫ダニ、Tyr p))、ゴキブリ目(例えば、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)(ドイツゴキブリ、Bla g)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)(アメリカゴキブリ、Per a))、甲虫目(例えば、ナミテントウ(Harmonia axyridis)(アジアテントウムシ、Har a))、ハエ目(例えば、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(黄熱病カ(Yellow fever mosquito)、Aed a)、ウスイロユスリカ(Chironomus kiiensis)(ユリスカ、Chi k)、キロノムス・トゥンミ・トゥンミ(Chironomus thummi thummi)(ユリスカ、Chi t)、フォルキポミュイア・タイワナ(Forcipomyia taiwana)(ヌカカ、For t)、グロシナ・モルシタンス(Glossina morsitans)(サヴァンナツェツェバエ、Glo m)、カメムシ目:トリアトマ・プロトラクタ(Triatoma protracta)(カリフォルニアサシガメ(California kissing bug)、Tria p))、ハチ目(例えば、トウヨウミツバチ(Apis cerana)(トウヨウミツバチ(Eastern hive bee)、Api c)、オオミツバチ(Apis dorsata)(オオミツバチ(Giant honeybee)、Api d)、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)(ミツバチ、Api m)、ボンブス・ペンシルバニカス(Bombus pennsylvanicus)(マルハナバチ、Bom p)、ボンブス・テレストリス(Bombus terrestris)(マルハナバチ、Bom t)、ドリコベスプラ・アレナリア(Dolichovespula arenaria)(黄色スズメバチ、Dol a)、ドリコベスプラ・マクラタ(Dolichovespula maculata)(ホワイトフェイススズメバチ(White face hornet)、Dol m)、ミルメシア・ピロスラ(Myrmecia pilosula)(オーストラリアトビキバハリアリ(Australian jumper ant)、Myr p)、ポリステス・アヌラリス(Polistes annularis)(スズメバチ、Pol a)、ポリステス・ドミヌルス(Polistes dominulus)(地中海アシナガバチ、Pol d)、ポリステス・エクスクラマンス(Polistes exclamans)(スズメバチ、Pol e)、ポリステス・フスカトゥス(Polistes fuscatus)(スズメバチ、Pol f)、ポリステス・ガリクス(Polistes gallicus)(スズメバチ、Pol g)、ポリステス・メトリカス(Polistes metricus)(スズメバチ、Pol m)、ポリビア・ポーリスタ(Polybia paulista)(スズメバチ、Pol p)、ポリビア・スクテラリス(Polybia scutellaris)(スズメバチ、Pol s)、アカカミアリ(Solenopsis geminata)(熱帯ヒアリ(Tropical fire ant)、Sol g)、ヒアリ(Solenopsis invicta)(赤色外来ヒアリ(Red imported fire ant)、Sol i)、ソレノプシス・リクテリ(Solenopsis richteri)(黒ヒアリ(Black fire ant)、Sol r)、ソレノプシス・サエヴィシマ(Solenopsis saevissima)(ブラジルヒアリ(Brazilian fire ant)、Sol s)、モンスズメバチ(Vespa crabro)(ヨーロッパスズメバチ、Vesp c)、オオスズメバチ(Vespa mandarinia)(巨大なアジアスズメバチ(Giant asian hornet)、Vesp m)、ベスプラ・フィアヴォピロサ(Vespula fiavopilosa)(イエロージャケット、Vesp f)、ベスプラ・ゲルマニカ(Vespula germanica)(イエロージャケット、Vesp g)、ベスプラ・マクリフロンス(Vespula maculifrons)(イエロージャケット、Vesp m)、ベスプラ・ペンシルヴァニカ(Vespula pensylvanica)(イエロージャケット、Vesp p)、ベスプラ・スクアモサ(Vespula squamosa)(イエロージャケット、Vesp s)、ベスプラ・ビジュア(Vespula vidua)(ジガバチ、Vesp vi)、キオビクロスズメバチ(Vespula vulgaris)(イエロージャケット、Vesp v))、マダニ科(例えば、鳩扁ダニ(Argas reflexus)(ハトダニ(Pigeon tick)、Arg r))、チョウ目(例えば、カイコ(Bombyx niori)(カイコガ(Silk moth)、Bomb n)、ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)(インディアンミールモス(Indianmeal moth)、Plo i)、マツノギョウレツケムシガ(Thaumetopoea pityocampa)(パインプロセッショナリーモス(Pine processionary moth)、Tha p))、シミ目(例えば、セイヨウシミ(Lepisma saccharina)(シルバーフィッシュ(Silverfish)、Lep s))、ノミ目(例えば、ネコノミ(Ctenocephalides felis felis)(ネコノミ(Cat flea)、Cte f))、食肉目(例えば、イヌ(Canis familiaris)(イヌ(dog)、Can f)、ネコ(Felis domesticus)(ネコ(Cat)、Fel d))、ウサギ目(例えば、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)(ウサギ、Ory c)、ウマ目:ウマ(Equus caballus)(家畜ウマ、Equ c))、カレイ目(例えば、メグリム(Lepidorhombus whiffiagonis)(メグリム(Megrim)、ホイフ(Whiff)、ガロ(Gallo)、Lep w))、齧歯目(例えば、モルモット(Cavia porcellus)(モルモット(guinea pig)、Cav p)、ハツカネズミ(Mus musculus)(マウス、Mus m)、ドブネズミ(Rattus norvegius)(ラット、Rat n))、マツ目:ヒノキ(Coniferales)(日本イトスギ(Japanese cypress)、Cha o)、アリゾナイトスギ(イトスギ、Cup a)、スギ(Cryptomeria japonica)(スギ(Sugi)、Cry j)、ホソイトスギ(Cupressus sempervirens)(一般的なイトスギ、Cup s)、ジュニペルス・アシェイ(Juniperus ashei)(マウンテンシダー、Jun a)、ジュニペルス・オキシセドルス(Juniperus oxycedrus)(ケードネズ、Jun o)、ジュニペルス・サビノイデス(Juniperus sabinoides)(マウンテンシダー、Jun s)、エンピツビャクシン(Juniperus virginiana)(イースタンレッドシダー(Eastern red cedar)、Jun v))、リンドウ目(例えば、カタランタス・ロゼウス(Catharanthus roseus)(ニチニチソウ(Rosy periwinkle)、Cat r))、イネ目(例えば、ハルガヤ(Anthoxanthum odoratum)(スイートバーナルグラス(Sweet vernal grass)、Ant o 1)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)(バミューダグラス(Bermuda grass)、Cyn d 1、Cyn d 7、Cyn d 12、Cyn d 15、Cyn d 22w、Cyn d 23、Cyn d 24)、カモガヤ(Dactylis glomerata)(オーチャードグラス(Orchard grass)、Dae g 1、Dae g 2、Dae g 3、Dae g 4、Dae g 5)、ヒロハノウシノケグサ(Festuca pratensis)(メド-フェスク(Meadow fescue)、Fes p 4))、シラゲガヤ(Holcus lanatus)(ベルベットグラス(Velvet grass)、Hol l 1、Hol l 5)、オオムギ(Hordeum vulgare)(バーレイ(Barley)、Hor v 1、Hor v 5、Hor v 12、Hor v 15、Hor v 16、Hor v 17、Hor v 21)、ホソムギ(Lolium perenne)(ライグラス(Rye grass)、Lol p 1、Lol p 2、Lol p 3、Lol p 4、Lol p 5、Lol p 11)、イネ(Oryza sativa)(イネ(Rice)、Ory s 1、Ory s 12)、アメリカスズメノヒエ(Paspalum notarum)(バヒアグラス(Bahia grass)、Pas n 1)、オニクサヨシ(Phalaris aquatica)(カナリーグラス(Canary grass)、Pha a 1、Pha a 5)、オオアワガエリ(Phleum pratense)(ティモシー(Timothy)、Phl p 1、Phl p 2、Phl p 4、Phl p 5、Phl p 6、Phl p 7、Phl p 11、Phl p 12、Phl p 13)、ナガハグサ(Poa pratensis)(ケンタッキーブルーグラス(Kentucky blue grass)、Poa p 1、Poa p 5)、ライムギ(Secale cereale)(ライムギ(Rye)、Sec c 1、Sec c 20)、セイバンモロコシ(Sorghum halepense)(ジョンソングラス(Johnson grass)、Sor h 1)、パンコムギ(Triticum aestivum)(コムギ、Tri a 12、Tri a 14、Tri a 185、Tri a 19、Tri a 25、Tri a 26、Tri a 27、Tri a 28、Tri a 29、Tri a 30)、トウモロコシ(Zea mays)(メイズ(Maize)、Zea m 1、Zea m 12、Zea m 14、Zea m 25)、ブナ目:ヨーロッパハンノキ(Alnus glutinosa)(ハンノキ(Alder)、Aln g 1、Aln g 4)、カバノキ(Betula verrucosa)(カバノキ(Birch)、Bet v 1、Bet v 2、Bet v 3、Bet v 4 、Bet v 5、Bet v 6、Bet v 7)、シデ(Carpinus betuhxs)(シ
デ(Hornbeam)、Car b 1))、シソ目(例えば、セイヨウトネリコ(Fraxinus excelsior)(トリネコ、Fra e l)、セイヨウイボタ(Ligustrum vulgare)(イボタ、Lig v)、ライラック(Syringa vulgaris)(ライラック(Lilac)、Syr v))、キントラノオ目(例えば、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)(パラゴムノキ(para rubber tree)(ラテックス)、Hev b 1、Hev b 2、Hev b 3、Hev b 4、Hev b 5、Hev b 6、Hev b 7、Hev b 8、Hev b 9、Hev b 10、Hev b 11、Hev b 12、Hev b 13))、ヤマモガシ目(例えば、モミジバスズカケノキ(Platanus acerifolia)(ロンドンプレインツリー(London plane tree)、Pla a 1、Pla a 2、Pla a 3)、スズカケノキ(Platanus orientalis)(オリエンタルプレーン(Oriental plane)、Pla or 1、Pla or 2、Pla or 3))からのアレルゲンが挙げられる。
【0244】
一実施形態では、吸入アレルゲンは、アシブトコナダニ(貯蔵庫ダニ、Aca s 13)、コナヒョウヒダニ(アメリカイエダニ、Der f)、デルマトファゴイデス・ミクロセラス(イエダニ、Der m)、ヤケヒョウヒダニ(ヨーロッパイエダニ、Der p)、シワチリダニ(イエダニ、Eur m)、イエニクダニ(貯蔵庫ダニ、Gly d 2)、ポリステス・アヌラリス(スズメバチ、Pol a)、ポリステス・ドミヌルス(地中海アシナガバチ、Pol d)、ポリステス・エクスクラマンス(スズメバチ、Pol e)、ポリステス・フスカトゥス(スズメバチ、Pol f)、ポリステス・ガリクス(スズメバチ、Pol g)、ポリステス・メトリカス(スズメバチ、Pol m)、ポリビア・ポーリスタ(スズメバチ、Pol p)、ポリビア・スクテラリス(スズメバチ、Pol s)、ネコ(Felis domesticus)(ネコ(Cat)、Fel d)、イネ目およびカバノキ(Betula verrucosa)(カバノキ(Birch)、Bet v 1、Bet v 2、Bet v 3、Bet v 4 、Bet v 5、Bet v 6、Bet v 7)を含むかそれらからなる群から選択される。
【0245】
摂取アレルゲンの例としては、限定されるものではないが、真菌子嚢菌門、例えばクロイボタケ目(例えば、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)(アルテルナリア腐朽菌、Alt a)、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)(Cla c)、クラドスポリウム・ヘルバルム(Cladosporium herbarum)(Cla h)、クルブラリア・ルナータ(Curvularia lunata)(Cur l)、ユーロチウム目:アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)(Asp fl)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)(Asp f)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(Asp n)、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)(Asp o)、ペニシリウム・ブレビコンパクツム(Penicillium brevicompactum)(Pen b)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)(Pen ch)、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)(Pen c)、ペニシリウム・オキサリカム(Penicillium oxalicum)(Pen o))、ボタンタケ目(例えばフザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)(Fus c))、ホネタケ目(例えば紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)(Tri r)、トリコフィトン・トンズランス(Trichophyton tonsurans)(Tri t)、サッカロミケス目:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(酵母、Cand a)、カンジダ・ボイジニ(Candida boidinii)(酵母、Cand b))、ツベルクラリア目(Tuberculariales)(例えばエピコッカム・パープラセンス(Epicoccum purpurascens)(Epi p))などからのアレルゲン、真菌担子菌門、例えば帽菌類(例えば、ササクレヒトヨタケ(Coprinus comatus)(ササクレヒトヨタケ(Shaggy mane)、Cop c)、ミナミシビレタケ(Psilocybe cubensis)(マジックマッシュルーム、Psi c)、サビキン綱(Urediniomycetes)(例えば、ロドトルラ・ムシラギノサ(Rhodotorula mucilaginosa)(酵母、Rho m))、クロボキン綱(例えば、マラセチア・フルフル(Malassezia furfur)(癜風感染物質(Pityriasis versicolor infect.Agent)、Mala f)、マラセチア・シンポジアリス(Malassezia sympodialis)(Mala s))などからのアレルゲン、抗生物質(例えばペニシリン、セファロスポリン、アミノシド(Aminosides)、キノロン、マクロライド、テトラサイクリン、スルファミド)、薬物(例えばアセチルサリチル酸、ワクチン、モルヒネおよび誘導体など)、例えばビタミンK1などのビタミン、ならびに食物アレルゲン(例えば牛乳、卵、ピーナッツ、木の実(クルミ、カシューなど)、魚、甲殻類、ダイズ、コムギおよびニンジン、リンゴ、ナシ、アボカド、アンズ、モモからのアレルゲンなど)が挙げられる。
【0246】
一実施形態では、摂取アレルゲンは食物アレルゲンである。
【0247】
一実施形態では、食物アレルゲンは、牛乳、卵、ピーナッツ、木の実(クルミ、カシューなど)、魚、甲殻類、ダイズ、コムギおよびニンジン、リンゴ、ナシ、アボカド、アンズ、モモからのアレルゲンを含むかそれらからなる群から選択される。
【0248】
接触アレルゲンの例としては、限定されるものではないが、重金属(例えばニッケル、クロム、金など)、ラテックス、例えばハロタンなどのハプテン、ヒドララジンが挙げられる。
【0249】
一実施形態では、アレルゲンは、アシブトコナダニ(貯蔵庫ダニ、Aca s 13)、コナヒョウヒダニ(アメリカイエダニ、Der f)、デルマトファゴイデス・ミクロセラス(イエダニ、Der m)、ヤケヒョウヒダニ(ヨーロッパイエダニ、Der p)、シワチリダニ(イエダニ、Eur m)、イエニクダニ(貯蔵庫ダニ、Gly d 2)、ポリステス・アヌラリス(スズメバチ、Pol a)、ポリステス・ドミヌルス(地中海アシナガバチ、Pol d)、ポリステス・エクスクラマンス(スズメバチ、Pol e)、ポリステス・フスカトゥス(スズメバチ、Pol f)、ポリステス・ガリクス(スズメバチ、Pol g)、ポリステス・メトリカス(スズメバチ、Pol m)、ポリビア・ポーリスタ(スズメバチ、Pol p)、ポリビア・スクテラリス(スズメバチ、Pol s)、ネコ(Felis domesticus)(ネコ(Cat)、Fel d)、イネ目およびカバノキ(Betula verrucosa)(カバノキ(Birch)、Bet v 1、Bet v 2、Bet v 3、Bet v 4、Bet v 5、Bet v 6、Bet v 7)ならびに食物アレルゲンを含むかそれらからなる群から選択される。
【0250】
本発明はさらに、特異アレルゲンに対してアレルギー性の対象の脱感作の有効性を高め、かつ/またはその持続期間を減少させるための方法にも関し、ここでは前記対象を脱感作により治療し、かつさらに前記対象に本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物を投与する。
【0251】
一実施形態では本発明の方法において、当該対象に最初に本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物を投与し、かつ次にアレルゲンを投与する。
【0252】
一実施形態では本発明の方法において、当該対象に最初にアレルゲンを投与し、かつ次に本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物を投与する。
【0253】
別の実施形態では本発明の方法において、当該対象に本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、薬またはワクチン組成物とアレルゲンとの併用投与を行う。
【0254】
本発明はさらに、本明細書の上に記載されている組成物、医薬組成物、薬またはワクチンに関し、ここでは前記組成物、医薬組成物、薬またはワクチンは少なくとも1種のアレルゲンをさらに含む。
【0255】
一実施形態では、治療有効量の本発明の少なくとも1種の免疫原性産物を当該対象に投与するか投与する予定である。一実施形態では、治療有効量は、当該技術分野でよく知られているブラッドフォードタンパク質アッセイを用いて決定される総タンパク質の量に対応している。
【0256】
一実施形態では、当該対象に投与される本免疫原性産物の量は有意な有害作用を生じることなく免疫防御応答を誘導する。
【0257】
一実施形態では、当該対象に投与される本免疫原性産物の量は有意な有害作用を生じることなくアレルゲン脱感作を誘導する。
【0258】
本発明の免疫原性産物のための成分の最適な量は、対象における適切な免疫応答の観察を含む標準的な研究によって確認することができる。初回のワクチン接種後に、対象は1回または適切に間隔をあけた数回の追加免疫を受けることができる。
【0259】
一実施形態では、当該治療は単回投与またはある期間にわたる複数回投与からなる。
【0260】
本発明の一実施形態では、治療される対象に治療有効量の本明細書の上に記載されている免疫原性産物を1ヶ月に少なくとも2回投与する。
【0261】
本発明の別の実施形態では、治療される対象に治療有効量の本発明の免疫原性産物を1ヶ月に2回投与する。本実施形態では、当該対象に0日目に1回目を投与し、かつ7日目~28日目の間に2回目を投与してもよい。一実施形態では、当該対象に0日目に1回目を投与し、かつ28日目に2回目を投与する。
【0262】
本発明の別の実施形態では、治療される対象に治療有効量の本発明の免疫原性産物を1ヶ月に3回投与する。本実施形態では、治療される対象に0日目に1回目を投与し、かつ7日目~14日目の間に2回目を投与し、かつ21日目~28日目の間に3回目を投与してもよい。一実施形態では、当該対象に0日目に1回目を投与し、かつ7日目に2回目を投与し、かつ28日目に3回目を投与する。
【0263】
本発明の別の実施形態では、治療される対象に治療有効量の本発明の免疫原性産物を3ヶ月ごとに1回さらに投与してもよい。
【0264】
本発明の一実施形態では、治療される対象に本明細書の上に記載されているように1ヶ月に3回投与し、次いで治療有効量の本発明の免疫原性産物を3ヶ月ごとに1回さらに投与する。
【0265】
本発明の別の実施形態では、IL-4に対する抗体の量が治療される対象から得られた血清試料において検出不可能な場合に、当該対象に治療有効量の本明細書の上に記載されている免疫原性産物をさらに投与してもよい。
【0266】
本発明の別の実施形態では、IL-13に対する抗体の量が治療される対象から得られた血清試料において検出不可能な場合に、当該対象に治療有効量の本明細書の上に記載されている免疫原性産物をさらに投与してもよい。
【0267】
本発明の別の実施形態では、IL-4およびIL-13に対する抗体の量が治療される対象から得られた血清試料において検出不可能な場合に、当該対象に治療有効量の本明細書の上に記載されている免疫原性産物をさらに投与してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【
図1】
図1は、本発明の免疫原性産物の製造のための、チオール-マレイミドの添加によりsGMBSで修飾されたIL-4またはIL-13とSATAで標識した担体タンパク質との化学的コンジュゲートのスキームである。
【
図2】
図2は、muIL-4およびmuIL-13免疫原性産物の抗原性を示すグラフの組み合わせである。捕捉は抗CRM
197抗体(A、C)または抗KLH抗体(B、D)を用いて行い、検出はビオチン化ポリクローナル抗muIL-4抗体(A、B)またはビオチン化ポリクローナル抗muIL-13抗体(C、D)を用いて行った。表されているOD値は繰り返しのOD平均である。
【
図3】
図3は、Balb/cマウスにおける免疫の研究スキームである。0、7、28および49日目における、全てがスクアレンアジュバントで乳化されており、かつ5匹のみのマウスからなる対照群を除いて1群当たり10匹のマウスに筋肉内注射される免疫原性産物(担体タンパク質としてCRM
197またはKLHを用いる)、未結合のmuIL-4またはmuIL-13+CRM
197、およびCRM
197単独およびPBSの4回の免疫。投与前ならびに39日目および120日目に血液サンプリングを行った。
【
図4-1】
図4は、マウス血清における(A)抗muIL-4、(B)抗muIL-13、(C)抗CRM
197および(D)抗KLHの抗体力価を示すグラフの組み合わせである。1群当たり10匹のマウスを免疫原性産物群に使用し、5匹のマウスを対照群に使用した。バーは中央値を表す。
【
図5】
図5は、マウス血清におけるmuIL-4中和能を示すグラフである。1群当たり10匹のマウスを免疫原性産物群に使用し、5匹のマウスを対照群に使用した。バーは中央値を表す。
【
図6】
図6は、マウス血清におけるmuIL-13中和能を示すグラフである。1群当たり10匹のマウスを免疫原性産物群に使用し、5匹のマウスを対照群に使用した。バーは中央値を表す。
【
図7】
図7は、Balb/cマウスにおける免疫および喘息感作の研究スキームである。
【
図8】
図8は、マウス血清における(A)抗muIL-4および(B)抗muIL-13の抗体力価を示すグラフの組み合わせである。1群当たり12匹のマウス。バーは中央値を表す。
【
図9】
図9は、マウス血清における(A)muIL-4および(B)muIL-13中和能を示すグラフの組み合わせである。1群当たり12匹のマウス。バーは中央値を表す。
【
図10】
図10は、吸入されたメタコリンに対する気道過敏症を示すグラフである。気道収縮指標(Enhanced pause)(Penh)値を非侵襲的全身体積変動記録法によって測定した。HDM感作/アレルギー誘発したマウスのために1群当たり7~8匹のマウスを使用し、かつPBS対照のためにn=16を使用してデータを得た。
*または
**または
***:対応のないマンホイットニーU試験を用いてCRM
197-HDM群に対してP<0.5または0.1または0.001。
【
図11】
図11は、(A)ワクチン接種前および(B)HDMまたはPBSによる最後のアレルギー誘発から24時間後に採取した血清中の循環IgEレベルを示すグラフの組み合わせである。HDM感作/アレルギー誘発したマウスのために1群当たり7~8匹のマウスを使用し、PBS対照のためにn=16を使用してデータを得た。
***:対応のないマンホイットニーU試験を用いてCRM
197-HDM群に対してP<0.001。
【
図12】
図12は、HDMによる最後のアレルギー誘発から24時間後に採取したBAL中の(A)CD45
+細胞および(B)好酸球のレベルを示すグラフの組み合わせである。HDM感作/アレルギー誘発したマウスのために1群当たり7~8匹のマウスを使用し、PBS対照のためにn=16を使用してデータを得た。
*または
**または
***:対応のないマンホイットニーU試験を用いてCRM
197-HDM群に対してP<0.5または0.1または0.001。
【
図13】
図13は、(A)IL-4免疫原性産物、(B)IL-13免疫原性産物ならびに(AおよびB)Combo免疫原性産物の抗原性を示すグラフの組み合わせである。捕捉は抗CRM
197抗体を用いて行い、検出は(A)ビオチン化ポリクローナル抗huIL-4抗体または(B)ビオチン化ポリクローナル抗huIL-13抗体を用いて行った。表されているOD値は繰り返しのOD平均である。
【
図14】
図14は、Balb/cマウスにおける免疫の研究スキームである。
【
図15】
図15は、マウス血清における抗(A)IL-4および(B)抗IL-13の抗体力価を示すグラフの組み合わせである。1群当たり10匹のマウス。バーは中央値を表す。
【
図16】
図16は、マウス血清における(A)抗IL-4および(B)抗IL-13中和能を示すグラフの組み合わせである。1群当たり10匹のマウス。バーは中央値を表す。
【実施例】
【0269】
本発明を以下の実施例によりさらに例示する。
【0270】
本発明は、担体タンパク質としてCRM197を用いる免疫原性産物に関する。本発明の免疫原性産物の特性は以下の実施例によって例示されている。さらに本発明の産物をKLHと共に調製した免疫原性産物と比較して本発明を以前の技術と区別し、かつ以前の技術に対するその優位性を示した。
【0271】
CRM197は、その毒素ドメインにおいて52位にグリシンからグルタミン酸に一塩基置換されていることにより毒性活性を有しないジフテリア毒素の非毒性形態である(Uchidaら 1973 J Biol Chem)。代わりとして、節足動物および軟体動物に存在する銅含有タンパク質であるキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Swaminathanら 2014)も試験してCRM197と比較した。
【0272】
本発明の免疫原性産物は、以下の開発された製造プロセスを用いて産生した。
【0273】
IL-4およびIL-13免疫原性産物の調製のためにチオール-マレイミド結合を用いる。SATAを用いてスルフヒドリル部分を担体タンパク質CRM
197上に導入し、その後にヒドロキシルアミンの脱保護を行うと共に、サイトカインmuIL-4またはmuIL-13をマレイミド含有薬剤であるsGMBSによって誘導体化した。SATAおよびsGMBSはどちらも第一級アミン(リジン残基のε-アミノ基およびタンパク質N末端など)と反応するNHSエステルを含むヘテロ二官能性クロスリンカーである。チオール-マレイミド結合による本免疫原性産物合成の概略は
図1に提供されている。
【0274】
実施例1:2種類の担体タンパク質を用いた本発明のマウスIL-4およびIL-13免疫原性産物の調製
a)担体タンパク質の機能化
CRM197またはKLHを70mMのリン酸ナトリウム緩衝液、150mMのNaCl、5mMのEDTA(pH7.2)を含む修飾緩衝液に希釈した。SATAをDMSOで希釈して100mM濃度にした。次いでSATAをCRM197またはKLHに添加し、かつ回転装置上室温で30分間インキュベートした後、製造業者の説明書に従ってZeba(商標)脱塩スピンカラムを用いて過剰なSATAを除去した。
【0275】
その後にヒドロキシルアミンを500mMで同じ緩衝液で希釈した。次いで、CRM197-SATAまたはKLH-SATAを50mMの最終濃度のヒドロキシルアミン溶液と共に回転装置上室温で2時間インキュベートした。最後に混合物を脱塩し、かつZeba(商標)脱塩スピンカラムを用いて過剰な試薬を除去した。
【0276】
b)muIL-4およびmuIL-13の機能化
muIL-4またはmuIL-13を修飾緩衝液(70mMのリン酸ナトリウム緩衝液、150mMのNaCl、5mMのEDTA、pH7.2)に溶解した。sGMBSを10mMで修飾緩衝液で希釈した。次いでsGMBSをmuIL-4またはmuIL-13に添加し、かつ回転装置上室温で1時間インキュベートした後、Zeba(商標)脱塩スピンカラムを用いて過剰なsGMBSを除去した。
【0277】
c)コンジュゲート
CRM197、KLH、muIL-4およびmuIL-13の機能化後に、各調製物のタンパク質含有量をブラッドフォードアッセイにより決定した。
【0278】
機能化CRM197または機能化KLHをそれぞれ1:2(担体:muIL-4または担体:muIL-13)および1:20のモル比で機能化muIL-4または機能化muIL-13に添加した。KLHとCRM197(約400kDaのこの製造に使用されるKLHサブユニットに対して約58kDaのCRM197)との分子量差に基づき、かつ狼瘡患者における第2相b臨床試験(NCT02665364)において現在評価されているワクチンであるIFN免疫原性産物を調製する際の過去の経験に基づいて、KLHのために全ての製造において同様の量のサイトカインおよび担体を混合するのを可能にする1:20の比を選択した。
【0279】
個々の免疫原性産物調製物を回転装置上4℃で一晩インキュベートした。次いで得られた免疫原性産物をアミコン(Amicon)(3kDaカットオフ膜)を用いて濃縮し、0.22μmで濾過し、かつ4℃で維持した。
【0280】
d)対照(コンジュゲートされていないサイトカインとCRM197)
対照として、タンパク質の機能化を行っていない2種類の混合物(未結合のサイトカインおよびCRM197と呼ぶ)を調製した。
-muIL-4およびCRM197を1:2のモル比(CRM197:サイトカイン)で混合した。この混合物をどんな結合試薬も使用せずに700μg/mLで調製した。
-muIL-13およびCRM197を1:2のモル比(CRM197:サイトカイン)で混合した。この混合物をどんな結合試薬も使用せずに700μg/mLで調製した。
【0281】
両方の混合物を0.22μmで濾過し、4℃で貯蔵した。
【0282】
e)免疫原性産物の定量化
製造業者の説明書に従い、Coomassie Plus(ブラッドフォード)タンパク質アッセイによって、muIL-4免疫原性産物およびmuIL-13免疫原性産物の濃度を決定した。
【0283】
実施例2:マウス産物の抗原性
サンドイッチELISAを行ってサイトカインの担体タンパク質への結合を評価し、かつ製造プロセス中にエピトープが保存されているか否かも評価した。
【0284】
簡単に言えば、捕獲抗体(抗担体タンパク質抗体)を96ウェルプレートにコーティングした。2%(w/v)カゼインのPBS溶液によるブロッキング工程後に、免疫原性産物試料を添加し、2倍連続希釈した。37℃で90分間インキュベートした後、結合した免疫原性産物をビオチン化抗muIL-4抗体(ポリクローナルヤギIgG抗muIL-4)またはビオチン化抗muIL-13抗体(ポリクローナルヤギIgG抗muIL-13)を用いて検出し、次いでストレプトアビジン-HRPおよびOPD基質で発色させた。酵素反応を硫酸で停止し、かつ光学濃度(OD)を490nmで読み取った。結果は
図2に示されている。
【0285】
この試験により、本発明の免疫原性産物は、CRM197またはKLHに結合されたmuIL-4またはmuIL-13を含むことを確認した。さらにこれらの結果から、本免疫原性産物が抗原性である(すなわち抗muIL-4または抗muIL-13抗体によって認識される)ことが確認される。
【0286】
実施例3:免疫原性産物の免疫原性
免疫原性産物をスクアレン系アジュバントを含むエマルションとしてマウスに投与した。免疫原性産物を所望の濃度までPBSで希釈し、かつ希釈物を等体積のアジュバントと混合した。
【0287】
マウスの免疫プロトコル
全てがスクアレン系アジュバントで乳化されている(1:1)免疫原性産物(CRM
197またはKLHを含む)あるいはPBS、CRM
197との未結合サイトカインまたはCRM
197単独などの対照の4回の筋肉内(i.m.)注射を各Balb/cマウスに接種した。表1および
図3に詳述されているように0、7、28および49日目に注射を行った。7週齢で1回目の免疫を行った。
【表1】
【0288】
投与前ならびに39、60および120日目に血液採取を行った。室温で凝血させ、かつ遠心分離して血餅を除去した後に、血清試料を調製した。120日目に致死的な麻酔によりマウスを屠殺した。
【0289】
ELISAによる抗サイトカインおよび抗担体タンパク質抗体力価の決定
免疫したマウスの血清試料をELISAにより抗サイトカイン抗体および抗担体タンパク質抗体の存在について評価した。
【0290】
簡単に言えば、muIL-4、muIL-13、CRM197またはKLHを96ウェルプレートにコーティングした。カゼインによるブロッキング後に、血清試料を添加し、かつ2倍連続希釈した。37℃でインキュベートした後、結合した抗体をHRP結合抗マウスIgGで検出し、OPD基質を用いてプレートを発色させた。反応を硫酸で停止させ、次いで490nmでの吸光度を記録した。
【0291】
抗muIL-4抗体、抗muIL-13抗体、抗KLH抗体および抗CRM197抗体力価のために使用される陽性対照はそれぞれ、ラットモノクローナル抗muIL-4 IgG1抗体、マウスモノクローナル抗muIL-13抗体、KLHで免疫したマウスから採取した血清のプールおよび抗ジフテリア毒素AマウスモノクローナルIgG1であった。
【0292】
500dil-1でのみ分析した免疫前血清以外は、試料を500dil-1で開始して最大256,000dil-1の希釈において分析した。
【0293】
抗muIL-4、抗muIL-13、抗CRM197および抗KLHの力価は、最大半量のODを生じる血清希釈として表した。
【0294】
結果は
図4に示されている。免疫原性産物で治療した全ての群ならびにアジュバント化DPBSまたは担体タンパク質または未結合の調製物を注射したマウスにおいて投与前に抗muIL-4、抗muIL-13、抗KLHおよび抗CRM
197は検出されなかった。さらにアジュバント化DPBSを投与したマウスにおいて抗サイトカインまたは抗担体抗体はどの時点においても検出されなかった。
【0295】
39、60および120日目にCRM197対照で治療した全ての群ならびに未結合のmuIL-4+CRM197または未結合のmuIL-13+CRM197で治療した群において抗CRM197力価が検出された。39、60および120日目にCRM197で調製した本免疫原性産物で治療した全ての群において抗muIL-4、抗muIL-13および抗CRM197力価が検出された。39、60および120日目にKLHと共に調製した免疫原性産物で治療した全ての群の全てのマウスではないが抗muIL-4、抗muIL-13および抗KLH力価が検出された。なお、抗IL-4抗体のレベルはKLHと共に調製した免疫原性産物よりもCRM197で調製した免疫原性産物で免疫したマウスにおいてより高かった。
【0296】
muIL-4中和バイオアッセイ
muIL-4免疫原性産物の投与によって誘導された抗体を、「Somanら,2009」から改変されたCTLL-2細胞を用いる増殖アッセイにおいてそれらの抗muIL-4中和能についてさらに評価した。簡単に言えば、2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mMのHEPES、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンおよび10%(v/v)FBSを添加したRPMIを用いて最終10ng/mLのIL-2の存在下でCTLL-2細胞を増殖させた。中和バイオアッセイのためにIL-2をmuIL-4で置き換えた。従って、免疫原性産物の注射後に誘導された潜在的中和muIL-4抗体はCTLL-2増殖を防止する。
【0297】
血清試料を最終1/200で添加し、かつ陽性対照ポリクローナル抗muIL-4抗体を最終1μg/mLで添加し、培養プレートにおいて1ウェル当たり25μLのRPMI+10%(v/v)FBSで2倍連続希釈した。次いでmuIL-4を最終2ng/mLで血清試料に添加し、かつ室温で1時間インキュベートした。次いで20,000個のCTLL-2細胞を予めインキュベートした試料(血清または陽性対照+muIL-4)に添加した。プレートを加湿インキュベータ中37℃および5%CO2で48時間インキュベートした。細胞生存率をMTS/PMSアッセイにより定量化した。1ウェル当たり40マイクロリットルのMTS/PMSを添加し、かつCO2加湿インキュベータ中37℃および5%で4時間インキュベートした後ODを490nmで読み取った。
【0298】
NC50の結果は、血清の存在下においてmuIL-4活性の50%を中和する血清希釈係数(dil-1)として表した。NC50はIL-4活性の50%を生じさせる血清希釈を横座標軸に補間することにより決定する。なおマウスは、NC50≧200dil-1であればこの実験における応答動物としてみなす。
【0299】
投与前に抗muIL-4中和抗体を示したマウスはいなかった(
図5および表2)。対照群では中和能を有する抗muIL-4抗体はどの時点においても検出されなかった。CRM
197で調製した免疫原性産物で免疫したマウスの場合、muIL-4に対する中和能を有する抗体が10匹中9匹のマウスにおいて検出可能であった。対照的に、KLHで調製した免疫原性産物で免疫したマウスでは、抗IL-4中和抗体のレベルはCRM
197が担体である場合に観察されたものよりもどの時点においても低く、かつ中和抗体を示した血清は少なかった(最良の時点で6種類の血清のみが中和能を示した(120日目に))。これらの結果はCRM
197で調製したmuIL-4免疫原性産物での治療はKLHで調製した結合ワクチンよりも免疫原性であることを実証した。
【表2】
【0300】
muIL-13中和バイオアッセイ
muIL-13免疫原性産物の投与によって誘導された抗体をそれらの中和能について投与前ならびに39、60および120日目にmuIL-13中和バイオアッセイにより評価した。
【0301】
抗muIL-13抗体の中和能をSTAT6経路の活性化を監視することによってHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13レポーター遺伝子バイオアッセイ(InvivoGen社#hkb-il413)を用いて評価した。この活性化に応答して、この細胞株は分泌型胎盤アルカリホスファターゼ(SEAP)を産生し、これはQUANTI-Blue(商標)を用いて(λ=625nmにおいて)定量化することができる。従って、免疫原性産物の注射後に誘導される潜在的中和muIL-13抗体はSTAT6経路の活性化を防止し、評価することができる。
【0302】
簡単に言えば、HEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞を10%(v/v)FBS、10mMのHEPES、50U/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシンを添加したDMEM GlutaMAX(商標)からなるアッセイ培地に播種した。次いでmuIL-13(2ng/mLの最終濃度)と最終1/100で開始して2倍連続希釈した血清試料または最終1μg/mLから2倍連続希釈した対照抗体(ポリクローナルヤギ抗muIL-13抗体)との混合物を40,000個のHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞に添加した。プレートを5%CO2加湿インキュベータ中37℃で24時間インキュベートした。次いで新しい平底プレートにおいて、1ウェル当たり10μLの細胞上澄みを1ウェル当たり90μLのQUANTI-Blue(商標)に添加し、5%CO2加湿インキュベータ中37℃で1時間後に吸光度を625nmで読み取った。
【0303】
NC50の結果は、血清の存在下においてmuIL-13活性の50%を中和する血清希釈係数(dil-1)として表した。NC50はmuIL-13活性の50%を生じさせる血清希釈を横座標軸に補間することにより決定する。なおマウスは、NC50≧100dil-1であればこの実験における応答動物としてみなす。
【0304】
muIL-13中和抗体は全ての群ならびに対照群において投与前にはどの時点においても検出されなかった(
図6および表3)。CRM
197で調製した免疫原性産物で治療したマウスはmuIL-13に対する検出可能な中和能を有する抗体を産生した(
図6および表3)。KLHと共に調製した免疫原性産物で免疫したマウスでは、マウス血清はmuIL-13に対する中和抗体を示さなかった。なお、未結合のmuIL-13およびCRM
197群においてELISAにより評価した場合に1匹のマウスが抗muIL-13抗体を示したとしても(
図4B)、これらの抗体は中和抗体ではなかった。これらの結果は、CRM
197で調製した免疫原性産物による治療はKLHで調製したものよりも免疫原性であることを実証した。
【表3】
【0305】
予想したとおり、中和抗muIL-4および抗muIL-13抗体はCRM197およびDPBS対照群においてはどの時点においても検出されなかった。当該サイトカインおよびCRM197を化学的機能化を行わずに(未結合状態で)混合した対照群では、免疫により抗muIL-4および抗muIL-13中和抗体が惹起されず、これはサイトカインに対するB細胞の自己寛容を破綻させるためにはサイトカインと担体タンパク質との結合が必須であることを強調している。さらに、KLHで調製した免疫原性産物で免疫したマウスの場合、抗IL-13中和抗体は観察されなかったがCRM197で調製した免疫原性産物で免疫したマウスの場合、muIL-13に対する中和能を有する抗体は10匹中5匹マウスにおいて検出可能であった。これらの結果は、CRM197で調製したmuIL-13免疫原性産物による治療がKLHで調製した結合ワクチンよりも免疫原性であることを実証した。
【0306】
実施例4:免疫原性産物の残留活性
muIL-4免疫原性産物の残留活性
muIL-4免疫原性産物の残留活性を以下に記載されているように(「Somanら,2009」から改変された方法で)評価した。
【0307】
簡単に言えば、CTLL-2細胞をIL-2と共に増殖させる。培地は最終10ng/mLのIL-2および10%(v/v)FBSを添加したRPMIc培地から構成されていた。
【0308】
残留活性バイオアッセイのためにIL-2をmuIL-4で置き換えた。本発明の免疫原性産物(CRM197またはKLHを含む)およびmuIL-4対照を、免疫原性産物のために1000ng/mLで開始して4ng/mLまで、muIL-4のために10ng/mLから開始して最終0.04ng/mLまで、96ウェルプレートにおいてRPMI+10%(v/v)FBSで2倍連続希釈した。陽性対照として10ng/mLのmuIL-4を含む6つのウェルを追加し、かつ最大細胞増殖対照として使用した。これらの試料を1ウェル当たり20,000個のCTLL-2細胞に添加し、かつプレートを加湿インキュベータ中37℃および5%CO2で48時間インキュベートした。細胞増殖をMTS/PMSアッセイにより定量化した。1ウェル当たり40マイクロリットルのMTS/PMSを添加し、かつ5%CO2加湿インキュベータ中37℃およびで4時間インキュベートした後プレートを490nmで読み取った。
【0309】
50%有効量(ED50)値は、最大細胞シグナルの50%を生じさせる免疫原性産物またはサイトカインの量に対応している。この値は、50%変曲点を取り囲んでいる希釈点を通る曲線からの式y=ax+bを用いて最大細胞シグナルの50%を横座標軸に補間することにより決定する。
【0310】
被験免疫原性産物のED
50をmuIL-4対照標準曲線の平均ED
50で割ることにより不活性化係数(inactivation factor)を計算した。
【表4】
【0311】
表4に示されているように、muIL-4残留活性はCRM197で調製した免疫原性産物においてKLHで調製したものと比較してより減少していた(CRM197で調製したmuIL-4免疫原性産物において非常により高い不活性化係数)。
【0312】
muIL-13免疫原性産物の残留活性
以下に記載されているように、HEK-Blue(商標)IL-4/IL-13レポーター細胞株を用いてmuIL-13免疫原性産物の残留活性を監視した。
【0313】
簡単に言えば、丸底プレートにおいてmuIL-13免疫原性産物およびmuIL-13対照をそれぞれ250ng/mLで開始して最終10ng/mLまでアッセイ培地(DMEM、10%(v/v)FBS、10mMのHEPES緩衝液、50U/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン)で2倍連続希釈した。これらの混合物を1ウェル当たり40,000個のHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞に添加した。プレートを5%CO2加湿インキュベータ中37℃で24時間インキュベートした。次いで新しい平底プレートにおいて、1ウェル当たり10μLの培養物上澄みを1ウェル当たり90μLのQUANTI-Blue(商標)に添加し、かつ5%CO2加湿インキュベータ中37℃で1時間後にODを625nmで読み取った。
【0314】
考察される試料のために記録した最大シグナルの50%を生じさせる本免疫原性産物(またはIL-13)の量に対応する50%有効量(ED50)値は、全体の希釈点からの4パラメータロジスティック(4PL)非線形回帰を用いてODmax/2値を対応する試料濃度に補間することにより決定する。
【0315】
muIL-13免疫原性産物のED
50をmuIL-13対照標準曲線の対応するED
50で割ることにより不活性化係数を計算した。
【表5】
【0316】
表5に示されているように、muIL-13残留活性はCRM197で調製した免疫原性産物においてKLHで調製したものと比較してより減少していた(CRM197で調製したmuIL-13免疫原性産物において非常により高い不活性化係数)。
【0317】
抗IL-4および抗IL-13に対する免疫応答の強度は、担体としてKLHで調製したものと比較して本免疫原性産物をCRM197で調製した場合により高かった。さらにサイトカイン残留活性はCRM197で調製した免疫原性産物においてKLHで調製したものと比較してより減少していた。これらの結果から、本発明者らは担体タンパク質としてCRM197で調製した本発明の産物を用いて概念実証を行うことを決定した。さらにアレルギーではIL-4およびIL-13の両方が関与するため、本発明者らはIL-4およびIL-13両方とCRM197との結合体を含む免疫原性産物を投与するマウスの群を含めることを決定した。ここからは、全ての本免疫原性産物を担体タンパク質としてCRM197を用いて製造し、かつそれらの混合物をCombo免疫原性産物と呼ぶことにする。
【0318】
実施例5:アレルギーマウスモデルにおける本発明の免疫原性産物の有効性
全てのアレルギーのうちアレルギー性喘息および食物アレルギーは、今ではそれぞれが世界中で3億人超の人々を冒している主要な公衆衛生問題である。アレルギーは寛容の破綻により生じ、IL-4およびIL-13などのTH2サイトカインの産生、高レベルのIgE抗体ならびに炎症組織を伴わない免疫細胞(特に肥満細胞、好塩基球、好酸球およびT細胞)の浸潤および増殖を特徴とする2型免疫応答を生じさせると考えられている。
【0319】
イエダニ(HDM)はアレルギー性患者の50%超を冒している主要アレルゲン源である(Meyerら 1994)。マウスにおいてHDMによる頻回の鼻腔内アレルギー誘発により、気道過敏症(AHR)、気流閉塞、気道壁リモデリング、粘液産生および、高レベルの好酸球を特徴とする肺における炎症反応などのヒトの慢性喘息の重要な特徴を再現した。
【0320】
muIL-4/IL-13免疫原性産物の調製
a)CRM197の機能化
CRM197を70mMのリン酸ナトリウム緩衝液、150mMのNaCl、5mMのEDTA(pH7.2)を含む修飾緩衝液で希釈した。SATAをDMSOで希釈して100mMの濃度にした。次いでSATAをCRM197に添加し、回転装置上室温で30分間インキュベートした後、製造業者の説明書に従い、Zeba(商標)脱塩スピンカラムを用いて過剰なSATAを除去した。
【0321】
その後にヒドロキシルアミンを500mMで同じ緩衝液で希釈した。次いで、CRM197-SATAを50mMの最終濃度でヒドロキシルアミン溶液と共に回転装置上室温で2時間インキュベートした。最後に混合物を脱塩し、かつZeba(商標)脱塩スピンカラムを用いて過剰な試薬を除去した。
【0322】
b)muIL-4およびmuIL-13の機能化
muIL-4を修飾緩衝液(70mMのリン酸ナトリウム緩衝液、150mMのNaCl、5mMのEDTA、pH7.2)に溶解した。sGMBSを10mMで修飾緩衝液で希釈した。次いでsGMBSをmuIL-4に添加し、回転装置上室温で1時間インキュベートした後、Zeba(商標)脱塩スピンカラムを用いて過剰なsGMBSを除去した。
【0323】
muIL-13を修飾緩衝液(70mMのリン酸ナトリウム緩衝液、150mMのNaCl、5mMのEDTA、pH7.2)に溶解した。sGMBSを10mMで修飾緩衝液で希釈した。次いでsGMBSをmuIL-13に添加し、回転装置上室温で1時間インキュベートした後、Zeba(商標)脱塩スピンカラムを用いて過剰なsGMBSを除去した。
【0324】
c)コンジュゲート
CRM197、muIL-4およびmuIL-13の機能化後に、各調製物のタンパク質含有量をブラッドフォードアッセイにより決定した。
【0325】
機能化CRM197を機能化muIL-4または機能化muIL-13に1:2のモル比(担体:muIL-4)および1:4(または担体:muIL-13)で添加した。個々の免疫原性産物調製物を回転装置上4℃で一晩インキュベートした。次いで得られた免疫原性産物をアミコン(登録商標)(3kDaカットオフ膜)を用いて濃縮し、0.22μmで濾過し、かつ4℃で維持した。
【0326】
d)免疫原性産物の定量化
製造業者の説明書に従い、Coomassie Plus(ブラッドフォード)タンパク質アッセイによってmuIL-4免疫原性産物およびmuIL-13免疫原性産物の濃度を決定した。
【0327】
muCombo免疫原性産物の調製
独立して合成したmuIL-4免疫原性産物およびmuIL-13免疫原性産物を濃縮および0.22μm無菌濾過工程の後に1:1の重量比で一緒に混合し、得られたmuCombo免疫原性産物を4℃で貯蔵した。
【0328】
マウスの免疫、アレルギー性喘息プロトコルおよび血液試料採取
表6および
図7に詳述されているように0、7、28および55日目に、各Balb/cマウスに全てがスクアレン系アジュバントで乳化されている免疫原性産物単独またはmuCombo免疫原性産物または対照としてのCRM
197単独の4回の筋肉内(i.m.)注射を接種した。7週齢のマウスに対して1回目の免疫を行った。
【表6】
【0329】
1回目の免疫原性産物による免疫後39日目に、コナヒョウヒダニ(Greer社から購入)由来の100μgのHDMの39、43および46日目における3回の鼻腔内注射によりマウスにおいて慢性気道炎症を誘導させた。50日目に開始して、1週間に2回の25μgのHDMの鼻腔内注射によりマウスをアレルギー誘発させた(計9回のアレルギー誘発)。
【0330】
投与の7日前、39、64日目および最後のHDMによるアレルギー誘発から24時間後(マウスの屠殺)に血液採取を行った。先に記載したように血清試料を調製し、分析まで-20℃で貯蔵した。
【0331】
この研究では、
-ELISAおよびバイオアッセイによる注射した産物の免疫原性、
-全身体積変動記録法によって測定される気道過敏症(AHR)、
-生物学的マーカー:ELISAによる血清中の循環IgEレベル、FACS分析および気道組織学的分析による肺および気管支肺胞洗浄(BAL)における気道炎症ならびに炎症性細胞浸潤
を評価した。
【0332】
a)ELISAおよびバイオアッセイによる注射した産物の免疫原性
4種類の治療群において採取したマウス血清からELISAにより(上記のように)、抗muIL-4および抗muIL-13の抗体力価を測定した。
【0333】
全ての時点で全ての群およびCRM
197投与群において投与前にサイトカイン抗体力価は検出されなかった。muIL-4免疫原性産物およびmuCombo免疫原性産物による免疫後の全ての時点で全てのマウスにおいて抗muIL-4抗体力価が検出された(
図8A)。muIL-4免疫原性産物を投与したマウスにおいてmuCombo免疫原性産物と比較してより高いレベルが観察された。muIL-13免疫原性産物群では、D39にマウスにおいて抗muIL-13抗体力価が検出され始め、D65では100%のマウスが応答していた(
図8B)。muCombo免疫原性産物群でも、D39直後に抗muIL-13抗体が検出され、D65では12匹中9匹のマウスが応答してた。全体として、muCombo群のマウスには個々の免疫原性産物用量の半分しか投与していないため、予想したとおり、muCombo免疫原性産物を用いた場合よりもmuIL-4およびmuIL-13免疫原性産物による免疫後に血清中により高い抗体力価が観察された(
図14)。
【0334】
上記のように2つの異なるバイオアッセイを用いて各免疫原性産物の中和活性をインビトロで評価した。なおマウスは、IL-4の場合はNC50≧200dil-1、IL-13の場合は≧100dil-1であればこの実験における応答動物としてみなす。
【0335】
muIL-4免疫原性産物およびmuCombo免疫原性産物で免疫したマウスにおいてそれぞれ少なくとも1つの時点で12匹中n=11または12匹中n=9でmuIL-4に対する高い中和能が観察された(
図9Aおよび表7)。
【表7】
【0336】
興味深いことに、muIL-4またはmuCombo免疫原性産物による免疫から1年後に、抗IL-4抗体はマウスにおいてまだ検出された(データは示さず)。
【0337】
muIL-13免疫原性産物およびmuCombo免疫原性産物で免疫したマウスにおいてそれぞれ少なくとも1つ時点で12匹中n=10または12匹中n=7でmuIL-13に対する中和能も誘導された(
図9Bおよび表8)。
【表8】
【0338】
興味深いことに、muIL-13またはmuCombo免疫原性産物による免疫から1年後に、マウスにおいて抗IL-13抗体はまだ検出された(データは示さず)。
【0339】
なお、事前に化学的連結(chemical coupling)を行っていないmuIL-4および/またはmuIL-13およびCRM197の同時注射は抗IL-4および抗IL-13抗体を惹起せず、これはサイトカインに対するB細胞の自己寛容を破綻させるためにはサイトカインと担体タンパク質との結合が必須であることを強調している。
【0340】
異なるクラス(特にIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgA、IgEおよびIgMを含む)、主としてIgG1の抗IL-4および抗IL-13抗体が免疫後に産生された(データは示さず)。
【0341】
b)全身体積変動記録法により測定した気道過敏症(AHR)
最後のアレルギー誘発から24時間後に、全身体積変動記録法によりAHRを評価した。意識のあるマウスにおいて気管支収縮剤であるメタコリンに対する応答を測定した。
【0342】
異なる用量すなわち0mg/mL、3.5mg/mL、7mg/mLおよび14mg/mLのメタコリンをエアロゾルにより投与した。気道収縮指標(Penh)を使用して肺機能の変化を評価した(Hamelmannら,1997)。この測定は、胸部流動曲線と鼻部流動曲線との間での位相変化を概念化したものであり、位相変化の増加は呼吸器系の抵抗の増加と相関していた。Penhは、式Penh=(Te/RT-1)×PEF/PIF(式中、Teは呼気時間であり、RTは弛緩時間であり、PEFはピーク呼気流量であり、PIFはピーク吸気流量である)により計算する。Penh値を各メタコリンによるアレルギー誘発後に5分間記録し、この期間中の最大値をグラフィックで報告する。
【0343】
CRM
197対照群のHDMで感作したマウスにおいて高い気管支収縮が観察された(
図10)。気管支収縮はmuIL-13免疫原性産物およびmuIL-4免疫原性産物により部分的に阻害されたが、本発明の産物の高い保護効果を示すmuCombo免疫原性産物で免疫したマウスではほぼ抑制されていた。実際には、muCombo群で観察された残留気管支収縮のレベルはHDM非感作マウスにおいて観察されたものと同様であった(
図10の〇)。
【0344】
これらの結果は侵襲的気道応答測定を用いて確認した。実際には、HDM処置した対照マウスはPBS処置した対照群と比較した場合にメタコリンによるアレルギー誘発時に肺抵抗およびエラスタンスにおける有意に増加した変化を示したが、これらの2つの特徴はmuIL-4、muIL-13またはmuCombo免疫原性産物で治療したマウスでは部分的に減少していた(データは示さず)。
【0345】
全体的に見てこれらの結果は、IL-4およびIL-13に対する二重ワクチン接種時にAHRをブロックすることができることを示している。
【0346】
c)生物学的マーカー
ELISAによる血清中の循環IgEレベル
免疫原性産物ワクチン接種の前および最後のHDMによるアレルギー誘発から24時間後に、製造業者の説明書に従いELISAにより総循環IgEレベルを測定した(マウスIgEのELISA定量化セット(Mouse IgE ELISA Quantitation Set)、Bethyl Labs E90-115)(
図11)。
【0347】
ワクチン接種前に循環IgEは検出されなかった。HDMによる最後のアレルギー誘発から24時間後に、HDM感作により総循環IgEを誘導させた(
図11B)。全ての本免疫原性産物投与群においてそのレベルは減少し、これはCRM
197で免疫したマウスと比較して本発明の産物の保護効果を実証した。なおELISAによりHDM特異的IgEのみを測定した場合に同様の結果が得られた(データは示さず)。
【0348】
HDM処置したマウスは上昇したレベルのHDM特異的IgG抗体も示す。但し、これらのレベルはmuIL-4および/またはmuIL-13免疫原性産物による治療によって影響を受けなかった(データは示さず)。
【0349】
肺および気管支肺胞洗浄(BAL)における気道炎症
HDMまたはPBSにより感作したマウスの肺および気管支肺胞洗浄(BAL)における細胞変化の詳細な経時的分析を行った。
【0350】
BALからの炎症性細胞を製造業者の説明書に従い、以下の抗体(表9):CD45-FITC、Ly6G-PE、CD11b-VG、SiglecF-PECy7、B220-APCおよびCD3-APCを用いてFACSにより分析した。
【表9】
【0351】
対照マウスの肺において、HDMへの慢性鼻腔内アレルギー誘発によりPBS処置した動物と比較した場合に主に好酸球(CD45+、Ly6G-、CD11b+、SiglecF+)からなる造血系由来のCD45+細胞浸潤の数における有意な増加が生じた(データは示さず)。興味深いことに、免疫原性産物ワクチン接種は特に統計的に有意な減少を示したmuCombo免疫原性産物群において、CD45+浸潤細胞のうちの好酸球浸潤を防止した。
【0352】
気管支肺胞洗浄において、HDM感作により主に好酸球(CD45+、Ly6G-、CD11b+、SiglecF+)からなる造血系由来のCD45
+細胞浸潤を特徴とする炎症反応が生じた(
図12)。興味深いことに、免疫原性産物ワクチン接種は特に統計的に有意な減少を示したmuCombo免疫原性産物群においてCD45
+浸潤細胞のうちの好酸球浸潤を防止した。
【0353】
興味深いことに、本発明の免疫原性産物によるワクチン接種は血中の好酸球レベルには全く効果はなく(データは示さず)、これは、ワクチン接種したマウスにおいて観察された気道好酸球増加症の減少が好酸球または好酸球前駆細胞の数に対する全身的効果ではなく肺への好酸球動員の減少の結果であることを示している。
【0354】
気道組織学的分析
気道に対する感作およびワクチン接種の効果を組織学的分析により調べた。簡単に言えば、左の肺を死後に切除し、4%PFAにより室温で24時間固定し、かつ70%エタノール中に保存した。長手方向に薄切りにし、かつ
-白血球浸潤の評価のためにヘマトキシリンおよびEosin(H&E)で、
-肥満細胞の数の定量化のためにトルイジンブルーで、あるいは
-杯細胞過形成および粘液産生の評価のために過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色で
染色した。
【0355】
全体的に、これらの肺組織学的分析により、HDM処置した動物におけるmuIL-4、muIL-13またはmuCombo免疫原性産物によるワクチン接種により、白血球および上皮内肥満細胞の数がワクチン接種していないHDM処置した動物と比較した場合に有意に減少したことが確認される(データは示さず)。
【0356】
PAS組織学的分析により、HDM処置した動物におけるmuIL-4、muIL-13またはmuCombo免疫原性産物によるワクチン接種により、杯細胞過形成/粘液分泌がワクチン接種していないHDM処置した動物と比較した場合に有意に減少したことも確認される(データは示さず)。これらの結果は、本免疫原性産物(特にmuIL-13およびmuCombo免疫原性産物)がHDM感作により誘導された粘液過分泌を制御することができるということを支持している。
【0357】
結論として、本発明者らはCRM197で調製した本発明の産物が免疫原性であり、かつ単独または組み合わせ(muCombo免疫原性産物)で注射するかに関わらず抗サイトカイン中和抗体を誘導したことを実証した。抗サイトカイン中和抗体の存在は、メタコリン吸入後にPenh値によって測定したHDM誘導AHRの減少に関連づけられた。さらに、これらの抗サイトカイン中和抗体は循環IgEレベルならびに肺における肥満細胞数および気道における好酸球浸潤を制限することができた。
【0358】
従って、これらの結果は本発明の免疫原性産物がIL-4およびIL-13に対するB細胞の寛容を破綻させることができることを実証しており、これらの免疫原性産物が喘息および/またはアレルギーの治療、特にアレルギー性喘息の治療における有望な新しい治療戦略の代表となり得ることを提案している。
【0359】
興味深いことに、個々の免疫原性産物は活性であったが、喘息および/またはアレルギー症状(および特にアレルギー性喘息症状)に対する優れた有益な効果を有し、かつ本免疫原性産物を組み合わせた場合に(muCombo免疫原性産物)、生物学的マーカーが観察された。
【0360】
実施例6:本発明のヒト免疫原性産物の調製
上記のように同じ製造プロセスに従い、マウスのサイトカインの代わりにヒトのサイトカインIL-4およびIL-13を用いて、ヒトIL-4免疫原性産物、IL-13免疫原性産物およびCombo免疫原性産物の調製を行った。
【0361】
IL-4およびIL-13免疫原性産物の調製
a)CRM197の機能化
マウス産物のために記載されているようにCRM197の機能化を行った。
【0362】
b)IL-4およびIL-13の機能化
緩衝液(70mMのリン酸ナトリウム緩衝液、150mMのNaCl、5mMのEDTA、pH7.2)に溶解したIL-4またはIL-13を、先に緩衝液に10mMの濃度で溶解したsGMBSと反応させた。穏やかに撹拌しながら室温で1時間反応させた後に、Zeba脱塩カラムによって過剰なsGMBSを除去した。
【0363】
c)コンジュゲート
CRM197、IL-4およびIL-13の機能化後に、各調製物のタンパク質含有量をブラッドフォードアッセイにより決定した。機能化CRM197を機能化IL-4または機能化IL-13に1:4モル比(担体:IL-4または担体:IL-13)で添加した。個々の免疫原性産物調製物を回転装置上4℃で一晩インキュベートした。この結合体を脱塩カラムに通して前の工程からの残りのヒドロキシルアミンなどの潜在的不純物を除去した。得られた免疫原性産物を濃縮し、0.22μmのフィルタで濾過し、4℃で貯蔵した。
【0364】
Combo免疫原性産物の調製
Combo免疫原性産物の調製は2つの異なる方法を用いて、すなわち修飾された担体タンパク質と共に両方の修飾されたサイトカインを同時にインキュベートすること(同時合成)、または2種類の独立して合成したIL-4およびIL-13免疫原性産物を混合すること(混合調製)により行うことができる。
【0365】
同時合成によるCombo免疫原性産物の調製
a)CRM197の機能化
マウス産物のために記載されているようにCRM197の機能化を行った。
【0366】
b)IL-4およびIL-13の機能化
個々の免疫原性産物調製のために記載されているようにIL-4またはIL-13の機能化を行った。
【0367】
c)コンジュゲート
CRM197、IL-4およびIL-13の機能化後に、各調製物のタンパク質含有量をブラッドフォードアッセイにより決定した。リン酸塩緩衝液(150mMのNaCl、5mMのEDTA、pH7.2)に入れた3種類の修飾されたタンパク質を全て2:2:1(IL-4:IL-13:CRM197)モル比で混合した。この反応は4℃で一晩行った。この結合体を脱塩カラムに通して前の工程からの残りのヒドロキシルアミンなどの潜在的不純物を除去した。得られた免疫原性産物を濃縮し、0.22μmのフィルタで濾過し、4℃で貯蔵した。
【0368】
混合調製によるCombo免疫原性産物の調製
独立して合成したIL-4およびIL-13免疫原性産物を濃縮および0.22μmの無菌濾過工程の後に1:1の重量比で一緒に混合した。Combo免疫原性産物を使用するまで4℃で貯蔵した。
【0369】
実施例7:ヒト産物の抗原性
サンドイッチELISAを行ってサイトカインの担体タンパク質への結合を評価し、かつ製造プロセス中にエピトープが保存されているか否かも評価した。使用したプロトコルは、ビオチン化抗ヒトIL-4およびIL-13抗体を用いる上に記載したものと同じであった。
【0370】
結果は
図13に示されている。この試験により、本発明の免疫原性産物がCRM
197に結合されたIL-4またはIL-13を含むことを確認した。さらにこれらの結果から、本免疫原性産物が抗原性であり(すなわち、抗IL-4または抗IL-13抗体によって認識され)、かつCombo免疫原性産物でもそうであることが確認される。
【0371】
実施例8:ヒト産物の免疫原性
マウスの免疫プロトコル
図14に詳述されているように0、7、28および49日目に、スクアレン系アジュバントで乳化した免疫原性産物の4回の筋肉内(i.m.)注射を各Balb/cマウス(1群当たり10匹のマウス)に接種し、全てを4μgの用量で行った。1回目の免疫を7週齢で行った。投与前ならびに38、59、90および120日目に血液採取を行った。室温で凝血および遠心分離して血餅を除去した後に、血清試料を調製した。
【0372】
ELISAによる抗IL-4および抗IL-13抗体力価の決定
各群において採取したマウス血清からELISAにより抗サイトカイン抗体力価を測定した。
【0373】
免疫原性産物またはCombo免疫原性産物による免疫後の血清中の各抗体力価の決定をヒトIL-4およびIL-13を96ウェルプレートにコーティングすることにより上記のように評価した。
【0374】
全ての群において投与前にサイトカイン抗体力価は検出されなかった。IL-4免疫原性産物およびmuCombo免疫原性産物による免疫後の全ての時点で、全てのマウスにおいて抗IL-4抗体力価が検出された(
図15A)。IL-4免疫原性産物およびCombo免疫原性産物を投与したマウスにおいて同様のレベルが観察され、これは本発明者らが免疫応答のプラトーに到達した可能性があることを示していた。IL-13免疫原性産物群における免疫後の全ての時点で、全てのマウスにおいて抗IL-13抗体力価が検出された(
図15B)。Combo免疫原性産物群においてD38直後およびD59に10匹中8匹のマウスにおいて抗IL-13抗体も検出された。組み合わせ群のマウスには個々の免疫原性産物用量の半分しか投与していないため、IL-13免疫原性産物による免疫後に血清中でCombo免疫原性産物よりも高い抗IL-13抗体力価が観察された。
【0375】
免疫後の中和能の決定
上記のようにHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13レポーター細胞株を用いて抗IL-4および抗IL-13中和能を評価した。なおこの実験ではマウスは、IL-4の場合はNC50≧200dil-1、IL-13の場合は≧100dil-1であれば応答動物としてみなす。
【0376】
IL-4免疫原性産物およびCombo免疫原性産物で免疫した群においてIL-4に対する高い中和能が観察され、免疫後の全ての時点で100%のマウスが応答していた(
図16Aおよび表10)。
【表10】
【0377】
IL-13免疫原性産物およびCombo免疫原性産物で免疫したマウスにおいてIL-13に対する中和能を有する抗体も誘導され、D59では100%のマウスが応答していた(
図16Bおよび表11)。
【表11】
【0378】
まとめると、本発明の産物は強い中和能により高い抗サイトカイン抗体力価を誘導することができた。
【0379】
ヒト免疫原性産物の残留活性
IL-4およびIL-13の残留活性について上記のようにHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13レポーター細胞株を用いて、ヒトIL-4免疫原性産物、IL-13免疫原性産物およびCombo免疫原性産物の残留活性を監視した。
【表12】
【表13】
【0380】
表12および表13に示されているように、ヒト免疫原性産物におけるIL-4またはIL-13に対する不活性化係数は全て1000超(であって最大8765)であり、これは、本免疫原性産物中のサイトカインの残留活性が自然なサイトカインと比較して少なくとも3桁の大きさで減少したことを示している。
【0381】
これらの大きく減少した残留活性は、本発明の産物の安全性プロファイルを支持する重要な要素である。
【0382】
実施例9:食物アレルギーモデルマウスモデルにおける本発明の免疫原性産物の治療効果
食物アレルギーはここ数十年の間の有病率の増加および治癒的治療の欠如により、欧米化された国々では主要な健康問題である。牛乳、ピーナッツ、ダイズおよびコムギなどのいくつかの主要な主食は食物アレルギー反応を引き起こす可能性がある。食物アレルギーは無害な食物アレルゲンの経口寛容の不足を反映しており、Th2免疫応答調節不全の発生、Th2サイトカイン(主としてIL-4およびIL-13)の分泌、アレルゲン特異的IgEの分泌、および胃腸(GI)管へのエフェクター細胞の動員が生じる。
【0383】
IL-4raF709変異マウスを用いて食物アレルギーにおける本発明の免疫原性産物の治療効果を調べた。IL-4raF709マウスはIL-4受容体(IL-4R)α鎖に、タンパク質チロシンホスファターゼ1(SHP-1)を含むSrc相同性ドメイン2の受容体サブユニットへの結合を破壊し、かつIL-4およびIL-13によるシグナル伝達兼転写活性化因子6(STAT6)の活性化の増強を生じる機能獲得変異を有する。これらのマウスはTh2細胞応答およびIgE産生の増強を示す。従って、この変異は受容体シグナル伝達を促進し、かつアトピーに関連している多くのヒトIL-4Rα多型の典型である。
【0384】
muIL-4/IL-13およびmuCombo免疫原性産物の調製
本明細書の上に記載されているようにmuIL-4、muIL-13およびmuCombo免疫原性産物を合成する。
【0385】
マウスの免疫、食物アレルギーモデル、アナフィラキシー応答、組織学的分析および血液試料採取
0、7、28日目に、全てがスクアレン系アジュバントで乳化されているmuIL-4、muIL-13またはmuCombo免疫原性産物または対照としてのCRM197で各IL-4raF709変異マウスを免疫し、次いで追加免疫した。
【0386】
平行して、マウスを強制経口投与によりPBSまたは250μlの0.1M重炭酸ナトリウム(pH8.0)に懸濁させた5mgのピーナッツタンパク質に対応する23mgのピーナッツ(PE)バターのいずれかで感作した。水で希釈した450mgのピーナッツバター(100mgのタンパク質)の腸内ボーラスでマウスをアレルギー誘発した(Burtonら,2014)。
【0387】
アレルギー誘発直後に、核心温度を1時間測定すると共に下痢の発症が確認された。
【0388】
臨床的スコア(0:臨床的症状なし、1:後ろ脚による繰り返しの口/耳の引っ掻きおよび外耳道の掘り、2:活動の低下、自己隔離、眼および/または口の周りの腫脹、3:胃を下にした伏臥位で1分超の静止期間、4:ひげ刺激に対する応答なし、突きに対する応答減少または応答なし、5:振戦、痙攣または死亡)も決定した。
【0389】
組織学的分析(例えば肥満細胞定量化)のために腸組織の切片を回収した。
【0390】
炎症(例えば肥満細胞脱顆粒産物)のレベル、抗体レベル(例えば、抗サイトカイン力価、中和能、アレルゲン特異的IgGおよびIgEならびに総IgE)を調査するために血液も採取した。
【0391】
実施例10:アトピー性皮膚炎マウスモデルにおける本発明の免疫原性産物の治療効果
アトピー性皮膚炎(AD)は慢性もしくは慢性再発性のそう痒性炎症性皮膚疾患である。ADの発生率はここ30年の間に先進国において劇的に増加した。ADの免疫異常は一般に、各種アレルゲン(例えば、食物、空気アレルゲン、微生物および自己アレルゲン)による感作、高い血清中IgEレベル、およびアポトーシスに陥ったケラチノサイトを有する皮膚病変、ならびにIL-4、IL-5およびIL-13などのTh2サイトカインを分泌する免疫細胞による浸潤を特徴とする。
【0392】
動物モデルを用いてADにおける本発明の免疫原性産物の治療効果を調査し、ここではイエダニ(HDM)抽出物およびブドウ球菌エンテロトキシンBの皮膚への頻回塗布により湿疹性皮膚病変を誘導する。
【0393】
muIL-4/IL-13およびmuCombo免疫原性産物の調製
本明細書の上に記載されているようにmuIL-4、muIL-13およびmuCombo免疫原性産物を合成する。
【0394】
マウスの免疫、アトピー性皮膚炎誘導、臨床的重症度測定、組織学的分析および血液試料採取
全てがスクアレン系アジュバントで乳化されているmuIL-4、muIL-13またはmuCombo免疫原性産物または対照としてのCRM197でマウスを免疫した。
【0395】
平行して、先にAndoら(J Invest Dermatol.2013年12月;133(12):2695-2705)に記載されたようにアトピー性皮膚炎を誘導させた。簡単に言えば、500ngのブドウ球菌エンテロトキシン(SEB)および10μgのコナヒョウヒダニ抽出物(Der fはイエダニ(HDM)である)の溶液を剪毛領域に置いたガーゼパッドに塗布した。背中の皮膚のこの部分を、帯具を用いてTegaderm(商標)透明ドレッシングで塞いだ。3日後にこのドレッシングを新しいものに取り換えた。さらに4日が経過した後、このドレッシングを除去し、翌週の間はこのマウスを処置せずに維持した。1週間のDer f/SEB処置を2回以上繰り返し、このようにしてマウスを3サイクルのそのような処置に供した。
【0396】
最後のサイクルでこのドレッシングを除去してから2日後に、マウスの識別を知らない調査者によって臨床的重症度をスコア化した。臨床的スコアは4種類の可能な症状(発赤、出血、発疹および鱗屑(scaling))の重症度(0:症状なし、1:軽度、2:中度、3:重度)に基づいていた。最大で可能なスコアは12である。
【0397】
スコア化直後にマウスを安楽死させ、表皮の厚さおよび好酸球増加症の組織学的分析のために処置した領域に対応する背中の皮膚標本を得た。炎症のレベルおよび抗体レベル(例えば、抗サイトカイン力価、中和能、アレルゲン特異的IgGおよびIgEならびに総IgE)を調査するために血液も採取した。
【0398】
実施例11:慢性閉塞性肺疾患(COPD)マウスモデルにおける本発明の免疫原性産物の治療効果
COPDは吸入された刺激物質への過度の炎症反応に一般に関連する進行性気流制限を特徴とし、これは慢性閉塞性気管支炎および肺気腫と呼ばれる肺実質の破壊を引き起こす。
【0399】
COPDの開始および進行の根底にある可能な機序を解明するためにCOPDのいくつかの動物モデルを確立した。ここではプロテアーゼ誘導モデルを使用して、COPDにおける本発明の免疫原性産物の治療効果を評価した。
【0400】
muIL-4/IL-13およびmuCombo免疫原性産物の調製
本明細書の上に記載されているようにmuIL-4、muIL-13およびmuCombo免疫原性産物を合成する。
【0401】
マウスの免疫、アトピー性皮膚炎誘導、白血球定量化および組織学的分析
全てがスクアレン系アジュバントで乳化されているmuIL-4、muIL-13またはmuCombo免疫原性産物または対照としてのCRM197でマウスを免疫した。
【0402】
平行して、ブタ膵エラスターゼなどのエラスチン分解酵素の鼻腔内滴下を使用して例えば肺気腫形成などのCOPD様症状を引き起こした。簡単に言えば、BALB/cマウスを30μLのPBSに入れた0.6Uのブタ膵エラスターゼで鼻腔内処置した(Shibataら Proc Natl Acad Sci 米国 2018年12月18日;115(51):13057-13062)。
【0403】
第1の実験では、白血球の評価のために5日目にマウスを安楽死させ、白血球(例えば、単球、マクロファージ、好中球、T細胞、B細胞および好酸球)の数を気管支肺胞洗浄(BAL)流体および肺細胞の単細胞懸濁液におけるフローサイトメトリーにより定量化した。先にヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した肺組織の組織学的検査によって肺における白血球浸潤のさらなる評価を行った。炎症のレベルおよび抗体レベル(例えば、抗サイトカイン力価、中和能)を調査するために血液も採取した。
【0404】
第2の実験では、肺気腔拡張の指標として平均肺胞径(MLI)を用いたH&E染色した肺組織切片における組織学的検査による肺気腫の評価のために、エラスターゼ処置後21日目にマウスを屠殺した。炎症のレベルおよび抗体レベル(例えば、抗サイトカイン力価、中和能、アレルゲン特異的IgGおよびIgEならびに総IgE)を調査するために血液も採取した。
【0405】
実施例12:肺線維症マウスモデルにおける本発明の免疫原性産物の治療効果
肺線維症は、異なる程度の肺炎症、肺線維芽細胞の過剰な増殖および肺コラーゲン含有量の増加を特徴とする広範囲の疾患を表す。
【0406】
動物モデルを用いて肺線維症における本発明の免疫原性産物の治療効果を調査し、ここでは肺へのブレオマイシン(BLM)投与により炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの分泌、白血球の動員、コラーゲン産生の増加、リモデリングおよび線維症肺炎症を生じさせる。
【0407】
muIL-4/IL-13およびmuCombo免疫原性産物の調製
本明細書の上に記載されているようにmuIL-4、muIL-13およびmuCombo免疫原性産物を合成する。
【0408】
マウスの免疫、肺線維症誘導、白血球定量化および組織学的分析
全てがスクアレン系アジュバントで乳化されているmuIL-4、muIL-13またはmuCombo免疫原性産物または対照としてのCRM197でマウスを免疫した。
【0409】
平行して、Reberら(J Immunol 2014年2月15日;192(4):1847-54)によって以前に記載されたようにC57BL/6マウスにおいて肺線維症を誘導させた。簡単に言えば、BLM塩酸塩(25μlのPBS中に0.1mg;12.5μl/鼻孔)の鼻腔内(i.n.)投与によって肺線維症を誘導させた。
【0410】
実験終了時まで1週間に5回体重を監視し、肺線維症の評価のためにBLM治療後7日目または14日目にマウスを安楽死させた。
【0411】
白血球(例えば、単球、マクロファージ、好中球、T細胞、B細胞および好酸球)の数を気管支肺胞洗浄(BAL)流体および肺細胞の単細胞懸濁液におけるフローサイトメトリーにより定量化した。
【0412】
ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した肺組織の組織学的検査(白血球浸潤の評価のため)、マッソントリクローム(線維症の評価のため)またはトルイジンブルー(肥満細胞数の評価のため)を行った。
【0413】
炎症のレベルおよび抗体レベル(例えば、抗サイトカイン力価、中和能)を調査するために血液も採取した。
【配列表】