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特許7291761診断分析装置において精度管理を行う方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】診断分析装置において精度管理を行う方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
G01N35/00 F
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021179089
(22)【出願日】2021-11-01
(62)【分割の表示】P 2017034174の分割
【原出願日】2017-02-24
(65)【公開番号】P2022009858
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】15/087,604
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】スコット・リーシャー
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-229291(JP,A)
【文献】特開2009-181369(JP,A)
【文献】特表2014-521939(JP,A)
【文献】特開2007-034604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0154044(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0022343(US,A1)
【文献】特表平09-502811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G06Q 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断分析装置の精度管理を行うために、複数の診断分析装置と通信可能なサーバが自動で行う方法であって、
複数の診断分析装置のそれぞれから精度管理測定値を受信し、
一の診断分析装置から受信した前記精度管理測定値が、複数の診断分析装置から構成されるグループの前記精度管理測定値に基づいて生成した統計基準の範囲内であるかを判定し、
範囲内である場合、前記一の診断分析装置を前記グループに追加し、追加した前記一の診断分析装置の前記精度管理測定値に基づいて前記統計基準を更新し、
精度管理の対象となる診断分析装置から受信した前記精度管理測定値を、更新した前記統計基準と比較し、
前記精度管理の対象となる診断分析装置に対応づけられたユーザインターフェースを備える装置に、前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した精度管理測定値が前記統計基準と比較して正常であるか異常であるかを表示するための情報を伝達する、方法。
【請求項2】
前記統計基準は、前記複数の精度管理測定値に対応づけられた上限および下限を有する範囲を定義しており、
前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した前記精度管理測定値が前記範囲外である場合、前記情報に加えて、トラブルシューティング指示を、前記ユーザインターフェースを備える装置に伝達する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した前記精度管理測定値に対応づけられた異常のタイプを判断し、
前記異常のタイプに対応する前記トラブルシューティング指示を伝達する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した前記精度管理測定値が、所定数の連続する測定について前記範囲外である場合、前記精度管理の対象となる診断分析装置がサービスを受ける必要がある旨を、前記ユーザインターフェースを備える装置に伝達する、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記精度管理の対象となる診断分析装置から複数の精度管理測定値を受信し、
前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した前記複数の精度管理測定値に基づき変動係数および平均を求め、
前記変動係数および平均が、予め決定された量より多く前記統計基準から逸脱する場合、前記精度管理の対象となる診断分析装置から取得した前記精度管理測定値が異常である旨を、前記ユーザインターフェースを備える装置に伝達する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した前記精度管理測定値に対応づけられた異常のタイプを判断し、
前記異常のタイプに基づいてサービス指示を選択し、
前記サービス指示を技術サービスセンターシステムへ伝達する、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記精度管理測定値は、あるロットの精度管理用検体を測定することにより前記複数の診断分析装置のそれぞれから取得され、
前記統計基準は、前記複数の診断分析装置から受信した前記複数の精度管理測定値の少なくとも平均値を定義し、
前記ロットの前記精度管理用検体に対応づけられた目標値に前記平均値を関連付ける報告を生成し、
前記報告を求める要求に応じて前記報告を前記精度管理の対象となる診断分析装置へ伝達する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記精度管理の対象となる診断分析装置からの前記精度管理測定値が前記統計基準に適合する場合、前記統計基準が決定される元となる前記複数の精度管理測定値に、前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した前記精度管理測定値を追加し、
前記精度管理の対象となる診断分析装置からの前記精度管理測定値が前記統計基準に適合しない場合、前記統計基準が決定される元となる前記複数の精度管理測定値から、前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した前記精度管理測定値を除外する、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の診断分析装置は地理的に分散された施設に設置されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記統計基準は定期的に更新され、
前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した前記精度管理測定値は、最新の期間において更新された前記統計基準と比較される、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記診断分析装置は血液検体分析装置である、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
精度管理を行うシステムであって、
精度管理用検体に対応づけられた精度管理測定値を生成するようにそれぞれ構成された複数の診断分析装置と、
前記複数の診断分析装置と通信する中央サーバとを備え、
前記中央サーバは、
前記複数の診断分析装置のそれぞれから前記精度管理測定値を受信し、
一の診断分析装置から受信した前記精度管理測定値が、複数の診断分析装置から構成されるグループの前記精度管理測定値に基づいて生成した統計基準の範囲内であるかを判定し、
範囲内である場合、前記一の診断分析装置を前記グループに追加し、追加した前記一の診断分析装置の前記精度管理測定値に基づいて前記統計基準を更新し、
度管理の対象となる一つの診断分析装置から受信した前記精度管理測定値を、更新した前記統計基準と比較し、
前記精度管理の対象となる診断分析装置に対応づけられたユーザインターフェースを備える装置に、前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した精度管理測定値が前記統計基準に基づいて正常であるか異常であるかを表示するための情報を伝達するように構成されている、システム。
【請求項13】
精度管理を行うサーバであって、
複数の診断分析装置と通信するプロセッサと、
前記プロセッサと通信する非一時的コンピュータ読取可能媒体とを備え、
前記非一時的コンピュータ読取可能媒体は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記複数の診断分析装置のそれぞれから精度管理測定値を受信させ、
一の診断分析装置から受信した前記精度管理測定値が、複数の診断分析装置から構成されるグループの前記精度管理測定値に基づいて生成した統計基準の範囲内であるかを判定させ、
範囲内である場合、前記一の診断分析装置を前記グループに追加し、追加した前記一の診断分析装置の前記精度管理測定値に基づいて前記統計基準を更新させ、
度管理の対象となる一つの診断分析装置から受信した前記精度管理測定値を、更新した前記統計基準と比較させ、
前記精度管理の対象となる診断分析装置に対応づけられたユーザインターフェースを備える装置に、前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した精度管理測定値が前記統計基準に基づいて正常であるか異常であるかを表示するための情報を伝達させる、
命令コードを含む、サーバ。
【請求項14】
診断分析装置であって、
精度管理用検体の成分量を測定するように構成された測定用ハードウエアと、
ユーザインターフェースと、
中央サーバと通信を行うための通信インタフェースと、
前記測定用ハードウエア、前記ユーザインターフェース、および前記通信インタフェースと通信するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
複数の診断分析装置から受信した複数の精度管理測定値に基づいて生成された統計基準を前記中央サーバから受信し、
前記測定用ハードウエアを制御して前記精度管理用検体の少なくとも1つの成分の量を測定し、
前記測定値を前記統計基準と比較し、
前記測定値が前記統計基準に基づいて正常であるか異常であるかの情報を、前記ユーザインターフェースに表示するように構成されている、診断分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療で利用される診断分析装置に関する。特に、本出願は、診断分析装置において精度管理を行うための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液分析装置等の診断分析装置は、血液検体の成分の様々な測定を行うために利用される。そのような分析装置は病院や検査室に置かれることが多い。例えば、ある病院にはいくつかの検査室があり、各検査室には様々な数の分析装置が設置されていることがある。
【0003】
典型的な検査室環境においては、1人以上の実験室オペレータが、診断検査を行い、試薬を交換し、分析装置のキャリブレーション等の、分析装置に付随する他のメンテナンス関連業務を行うことが求められる。
【0004】
オペレータのスキルレベルは様々であり、その実験室オペレータは、所与の分析装置における精度管理測定に慣れていないことがあり得る。例えば、オペレータは、精度管理測定をどのように行うかや、精度管理測定の結果をどのように評価するかについての知識を持っていないかもしれない。オペレータは古すぎる精度管理用検体を使用してしまうかもしれない。したがって、オペレータは分析装置の状態を正確に評価できず、分析装置に生じ得た問題を適切に処理できないことがあり得る。
【0005】
実験室スタッフが直面する操作上の問題に関する他の既知の問題は、以下に説明する様々な実施形態の記述を読むことにより明らかになるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5532941号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一局面において、断分析装置の精度管理を行うために、複数の診断分析装置と通信可能なサーバが自動で行う方法は、複数の診断分析装置のそれぞれから精度管理測定値を受信一の診断分析装置から受信した前記精度管理測定値が、複数の診断分析装置から構成されるグループの前記精度管理測定値に基づいて生成した統計基準の範囲内であるかを判定し、範囲内である場合、前記一の診断分析装置を前記グループに追加し、追加した前記一の診断分析装置の前記精度管理測定値に基づいて前記統計基準を更新する。精度管理の対象となる診断分析装置から受信した前記精度管理測定値は、更新された統計基準と比較される。前記精度管理の対象となる対象診断分析装置に対応づけられたユーザインターフェースを備える装置に、前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した精度管理測定値が前記統計基準と比較して正常であるか異常であるかを表示するための情報が伝達される。
【0008】
第2の局面において、精度管理を行うシステムは、精度管理用検体に対応づけられた精度管理測定値を生成するようにそれぞれ構成された複数の診断分析装置と、前記複数の診断分析装置と通信する中央サーバとを備える。前記中央サーバは、前記複数の診断分析装置のそれぞれから前記精度管理測定値を受信し、一の診断分析装置から受信した前記精度管理測定値が、複数の診断分析装置から構成されるグループの前記精度管理測定値に基づいて生成した統計基準の範囲内であるかを判定し、範囲内である場合、前記一の診断分析装置を前記グループに追加し、追加した前記一の診断分析装置の前記精度管理測定値に基づいて前記統計基準を更新し、精度管理の対象となる一つの診断分析装置から受信した前記精度管理測定値を、更新した前記統計基準と比較し、前記精度管理の対象となる診断分析装置に対応づけられたユーザインターフェースを備える装置に、前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した精度管理測定値が前記統計基準に基づいて正常であるか異常であるかを表示するための情報を伝達する。
【0009】
第3の局面において、精度管理を行うサーバは、複数の診断分析装置と通信するプロセッサと、前記プロセッサと通信する非一時的コンピュータ読取可能媒体とを備える。前記非一時的コンピュータ読取可能媒体は、前記プロセッサよって実行されると、前記プロセッサに、前記複数の診断分析装置のそれぞれから精度管理測定を受信させ、一の診断分析装置から受信した前記精度管理測定値が、複数の診断分析装置から構成されるグループの前記精度管理測定値に基づいて生成した統計基準の範囲内であるかを判定させ、範囲内である場合、前記一の診断分析装置を前記グループに追加し、追加した前記一の診断分析装置の前記精度管理測定値に基づいて前記統計基準を更新させ、精度管理の対象となる一つの診断分析装置から受信した前記精度管理測定値を、更新した前記統計基準と比較させ、前記精度管理の対象となる診断分析装置に対応づけられたユーザインターフェースを備える装置に、前記精度管理の対象となる診断分析装置から受信した精度管理測定値が前記統計基準に基づいて正常であるか異常であるかを表示するための情報を伝達させる、命令コードを含む。
【0010】
第4の局面において、診断分析装置は、精度管理用検体の成分量を測定するように構成された測定用ハードウエアと、ユーザインターフェースと、中央サーバと通信を行うための通信インタフェースと、前記測定用ハードウエア、前記ユーザインターフェース、および前記通信インタフェースと通信するプロセッサと、を備える。前記プロセッサは、複数の診断分析装置から受信した複数の精度管理測定値に基づいて生成された統計基準を前記中央サーバから受信し、前記測定用ハードウエアを制御して前記精度管理用検体の少なくとも1つの成分の量を測定し、前記測定値を前記統計基準と比較し、前記測定値が前記統計基準に基づいて正常であるか異常であるかの情報を、前記ユーザインターフェースに表示するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】診断検査が行われ得る検査室のグループと、検査室から受信した情報を処理する中央サービスプロバイダとを含む例示の環境を示す。
図2】第1の検査室105a内の対象診断分析装置によって行われ得る例示の始動動作を示す。
図3】QC用検体に対応づけられた測定値を処理する際に中央サーバによって行われ得る例示の動作を示す。
図4図3において適用され得る例示のルールを示す。
図5A図4のルールの適用を示す。
図5B図4のルールの適用を示す。
図6A】グループQC測定値に基づいて統計基準を生成することから生じる利点の1つを示す。
図6B】グループQC測定値に基づいて統計基準を生成することから生じる利点の1つを示す。
図7A図4で検出されたルール違反の処理のための例示の動作を示す。
図7B】中央サーバによって行われ得る例示の指示処理手順を示す。
図7C図7Bの処理手順を行う際に中央サーバによって伝達され得る指示の例示のシーケンスを示す。
図7D】中央サーバによって行われる図7Aおよび7Bの動作に協働して行われる対象診断分析装置の例示の動作を示す。
図8】中央サーバからの指示を受信したことに応じて検査室の中央コンピュータにおいて表示および/または更新され得る、例示のユーザインターフェース画面を示す。
図9】中央サーバからの指示を受信したことに応じて検査室の中央コンピュータにおいて表示および/または更新され得る、例示のユーザインターフェース画面を示す。
図10】中央サーバからの指示を受信したことに応じて検査室の中央コンピュータにおいて表示および/または更新され得る、例示のユーザインターフェース画面を示す。
図11A】中央サーバからの指示を受信したことに応じて検査室の中央コンピュータにおいて表示および/または更新され得る、例示のユーザインターフェース画面を示す。
図11B】中央サーバからの指示を受信したことに応じて検査室の中央コンピュータにおいて表示および/または更新され得る、例示のユーザインターフェース画面を示す。
図12A】中央サーバからの指示を受信したことに応じて検査室の中央コンピュータにおいて表示および/または更新され得る、例示のユーザインターフェース画面を示す。
図12B】中央サーバからの指示を受信したことに応じて検査室の中央コンピュータにおいて表示および/または更新され得る、例示のユーザインターフェース画面を示す。
図13】中央サーバからの指示を受信したことに応じて検査室の中央コンピュータにおいて表示および/または更新され得る、例示のユーザインターフェース画面を示す。
図14】患者検体を処理する際に対象診断分析装置によって行われ得る例示の動作を示す。
図15】患者検体の受信に続いて中央サーバによって行われ得る例示の動作を示す。
図16】中央サーバによって生成されて検査室の中央コンピュータへ伝達され得る例示のチャートを示す。
図17】例示の連続キャリブレーション検証証明書(CCVC)を示す。
図18】中央コンピュータからの要求に応じて中央サーバによって生成され得る例示のトレーサビリティー報告を示す。
図19】例示の詳細日別検証報告(DDVR)を示す。
図20】本明細書で参照するコンピューティングデバイスの任意のものを表し得る一般コンピュータシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に開示する実施形態は、精度管理測定値が正常か否かを評価するために使用される目標値、上限、および下限の根拠を、例えば1000台以上の分析装置といった診断分析装置の大きなピアグループに対応づけられたグループデータ(例えばグループ平均(group mean)、バイアス、変動係数)に置くことによって、上述した問題を克服する。米国では、臨床実験改善修正法(CUA)により、診断分析装置のキャリブレーション検証を少なくとも6か月ごとに1回実施することが義務付けられている。ピアグループ診断分析装置の殆どはよくキャリブレーションされているので、そのような診断分析装置から得られたグループデータは信頼できるものである。すなわち、グループデータは、精度管理用検体の成分について、平均(mean)、上限、および下限の一貫した正確な値を提供する。これにより、総許容誤差のより厳しい限界値を設けることができ、その結果、患者検体に対応づけられた更に正確な測定が可能になる。
【0013】
図1は、例示の環境100を図示しており、環境100は、診断検査が行われ得る検査室105a-cのグループと、検査室105a-cから受信した情報を処理する中央サービスプロバイダ150とを含む。各検査室105a-cは、患者の血液検体に対して様々な診断を行うために利用され得る1以上の診断分析装置110a-gを含んでよい。診断分析装置110a-gは、自動細胞計数装置に相当するものであってよい。診断分析装置110a-gのそれぞれは、精度管理材料および患者検体の測定を行うための測定用ハードウエアを含む。測定用ハードウエアは、例えば、検体と試薬とを混合して測定用検体を調製するための1以上のチャンバと、WBC測定用検体が流れるフローセルを有する白血球検出器と、RBC検出器とを含む。各検査室105にいるオペレータは、例えば、血液検査の準備、分析装置110内の試薬の交換、分析装置110a-gがキャリブレーションされているか否かの検証等の、様々な診断関連業務を行う。
【0014】
キャリブレーション検証に関し、各検査室105a-cは、異なるロットの精度管理(QC)用検体を与えられてよい。異なるロットのQC用検体は、正確な量の異なる成分が大きなバッチ内で混合される制御された環境内で調製される。そして、このバッチが異なる検体バイアルに注入され、同様の量の異なる成分物質を有する検体バイアルのグループが作られる。検体バイアルのグループは、ロットA、ロットB等の、複数のロットに分けられる。各ロット内の成分は、高精度の機器で測定され、当該ロットの成分に対応づけられたアッセイ目標値を提供する。QC用検体の異なるロットは様々な検査室へ送られてよく、それによって、異なる検査室が殆ど同一のQC用検体に基づいて診断分析装置の動作を検証できるようになる。例えば、検査室105a-cのそれぞれが、ロットAからの複数のQC用検体を受け入れてもよい。
【0015】
各ロットは、異なるレベルまたは量の成分を有するQC用検体を含む。異なるレベルは、所与の分析装置の正確度および精密度を検証するのに利用される。例えば、第1のQC用検体は、ある成分については濃度またはレベルが低く、第2のQC用検体は、その同じ成分についての濃度またはレベルが高いものであるかもしれない。これらの異なるレベルがあることにより、ある範囲の成分レベルにおいて分析装置が正確に測定可能であることを検証することが容易になる。
【0016】
いくつかの実施例において、実験室オペレータには、Apple iPad(登録商標)等のタブレットコンピュータ107(以下、タブレット)、Android(登録商標)オペレーティングシステムを実行するタブレット、または異なるオペレーティングシステムで動作する別のタブレットが与えられ得る。これらのタブレットにより、検査室110内で動作する任意の数の診断分析装置のステータスへの一元型アクセスが可能になる。
【0017】
更にまたは代替的に、各検査室110a-cは、検査室110a-c内の診断分析装置110a-gおよび中央サーバ155と通信する中央コンピュータ108を備えてもよい。中央コンピュータ108は、分析装置110a-gによって生成された測定データを収集して、中央サーバ155へ当該情報を転送してもよい。中央コンピュータ108はまた、ユーザインターフェースを備えてもよい、このユーザインターフェースを介して、オペレータは、患者検体に対応づけられた測定データを検討し、そのデータを例えば病院または医師に公開することを承認する、またはそのデータを拒否することができる。ユーザインターフェースにより、診断分析装置110a-gの正確度に関する様々な報告の閲覧が容易になり得る。
【0018】
中央サービスプロバイダ150は、検査室105a-c内の診断分析装置110a-gにより生成された情報をネットワーク102を介して受信および処理する、中央サーバ155を含む。一般に、中央サーバ155は、診断分析装置110a-gによって生成されたQC用検体および患者検体に対応づけられた測定データを格納する。中央サーバ155は、測定データを様々な統計基準と比較して、診断分析装置110a-gの動作状態を評価する。
【0019】
図2は、第1の検査室105a内の対象診断分析装置110aによって行われ得る例示の始動動作を示す。尚、以下に説明する手順は、環境100内で動作する任意の診断分析装置110a-gに適用できる。更に、いくつかの実施例では、これらの手順は、非一時的形態のコンピュータ読取可能媒体に格納された命令コードをシステムが実行することによって実現されてもよい。このシステムの例としては、対象診断分析装置110a、中央サーバ155、または上記システムに様々な手順を行わせる本明細書で記載する他の任意のシステムが含まれる。
【0020】
ブロック200において、精度管理(QC)測定が対象診断分析装置110aにおいて行われ得る。例えば対象診断分析装置110aには、電源が投入され得る。例えばロットAから所与のレベルのQC用検体を選択するようにオペレータに指示するメッセージが、対象診断分析装置110aに表示され得る。この指示は更に、QC用検体の成分を均一に分散させるために、規定時間の間QC用検体を振るようにオペレータに指示してもよい。いくつかの実施例において、対象診断分析装置110aの表示は、規定された時間をかけてQC用検体を混合したことがオペレータに分かるように、カウントダウンタイマー等を表示してもよい。その後、オペレータはQC用検体を対象診断分析装置110aに挿入してよい。
【0021】
ブロック205において、対象診断分析装置110aは、QC用検体の成分の量を測定してよい。
【0022】
ブロック210において、対象診断分析装置110aは、測定値を中央サーバ155へ伝達してよい。更に、対象診断分析装置110aは、対象診断分析装置110aのタイプおよび型式を識別する情報を伝達してよい。伝達される他の情報には、QC用検体の入手元のロットが含まれ得る。
【0023】
ブロック215において、対象診断分析装置110aは、先に伝達したQC測定値に対応づけられた応答を、中央サーバ155から受信してよい。
【0024】
ブロック220において、QC測定値が正常であったことを当該応答が示す場合、ブロック225において、対象診断分析装置110aは、患者検体の処理に進むことを許可され得る。
【0025】
ブロック220において、QC測定値に対応づけられた問題があったことを当該応答が示す場合、ブロック230において、対象診断分析装置110aは、トラブルシューティング段階に進み得る。
【0026】
図3は、QC用検体に対応づけられた測定値を処理する際に中央サーバ155によって行われ得る例示の動作を示す。ブロック300において、QC測定値が、対象診断分析装置110aから中央サーバ155へ伝達され得る。中央サーバ155は、図1に示すQCピアグループデータベース165等のデータベースに、QC測定値を格納し得る。
【0027】
QCピアグループデータベース165は、中央サーバと通信する任意の診断分析装置110a-gから受信したQC測定値に対応づけられたレコードを格納するように構成され得る。以下の表1は、QCピアグループデータベース165の例示のレコードを示す。
【表1】
【0028】
表1を参照して、各レコードは、QC測定値を送信した診断分析装置110a-fの型式およびシリアル番号と、QC測定値に対応づけられたQC用検体のロットと、レベルと、QC用検体の成分に対応づけられたQC測定値とを特定してよい。他の情報がレコードに含まれてもよい。
【0029】
ブロック305において、中央サーバ155は、受信したQC測定値にルールのセットを適用して、QC測定値に関する何らかの問題があるか否かを判断し得る。
【0030】
図4は、ブロック305に適用され得る例示のルールを示す。一般に、これらのルールは、受信したQC測定値を、QC測定値に生じ得る問題を検出する統計基準のセットと比較する。統計基準は、対象診断分析装置110aと同じタイプであってよい他の診断分析装置110b-fから受信した、検討中のQC測定値と同一レベルかつ同一ロットからのQC用検体に対応づけられたQC測定値に基づいて生成される。例えば、対象診断分析装置110aから受信したQC測定値が、ロット6011から取られたレベル1QC用検体である場合、統計基準は、対象診断分析装置110aと同じタイプの診断分析装置によって分析されたロット6011から取られたレベル1QC用検体に基づくものであってよい。表2は、他の診断分析装置110b-fから受信したQC測定値に基づいて生成され得る、例示の統計基準を示す。
【表2】
【0031】
表2を参照して、各ロットの各レベルの各成分に対する統計基準は、ピアグループ(診断分析装置110a-f)から受信したQC測定値の、所定成分の平均量(すなわち、グループ平均)および変動係数(すなわちグループCV)と共に、所定成分の上限および下限の値または量(すなわち、グループ範囲)を含んでよい。
【0032】
図4のフロー図を参照して、ブロック400において、中央サーバ155が、ピアグループに対応づけられた総許容誤差の上限(TEUL)および下限(TELL)内にQC用検体の成分がないと判断すると、ブロック405において、フラグを立ててルール1違反を示し得る。TEULおよびTELLを以下に定義する。
【0033】
TEUL=グループ平均+(TE×グループ平均)
【0034】
TELL=グループ平均-(TE×グループ平均)
【0035】
ここで、TE=EBQCL+(n×グループCV)である。EBQCLは、各分析物濃度について、性能目標、許容ばらつき、および測定された検査方法変動を使用して総誤差許容(TE)限界値を決定するための値であり、nは表駆動により与えられる。更に具体的には、EBQCLは以下のように定義される。
【0036】
EBQCL=(性能目標-バイアス)/CVである。ここで、性能目標とは、目標を達成するためのシックス・シグマ方法の確率である。性能目標は、検査方法が安定しており変化がなければ99.4%の確率で制御操業が限界値内に収まるように、設定される。これは4シグマ品質に相当する。全てのパラメータおよびレベルについて、約3%の誤制御不合格があるが、これはほぼ完璧なレベルである。許容バイアスおよびCVは、例えば500日を超える期間にわたり600台を超える分析装置から収集された精度管理測定データに基づいて決定される。
【0037】
ブロック410において、対象診断分析装置110aから受信した同一のロットおよびレベルの全てのQC用検体測定値について、各成分の量に対応づけられた変動係数が所定成分のグループCVを囲む範囲内にない、と中央サーバ155が判断した場合、ブロック405において、フラグを立ててルール2違反を示し得る。例えば、測定された全てのQC用検体の異なる値に対応づけられた変動係数が例えばグループCVの1~2倍より大きい場合、ルール2違反が決定され得る。
【0038】
ブロック420において、対象診断分析装置110aから受信した同一のロットおよびレベルの全てのQC用検体測定値について、各成分の量の平均が所定成分のグループ平均を囲む範囲内にない、と中央サーバ155が判断した場合、ブロック425において、フラグを立ててルール3違反を示し得る。例えば、測定された全てのQC用検体の異なる値に対応づけられた平均値が例えば2~3標準偏差より大きい場合、ルール3違反が決定され得る。
【0039】
ブロック430において、対象診断分析装置110aから受信した同一のロットおよびレベルの最後のN個のQC用検体測定値について、各成分の量に対応づけられた変動係数が所定成分のグループCVを囲む範囲内にない、と中央サーバ155が判断した場合、ブロック435において、フラグを立ててルール4違反を示し得る。例えば、最後のN個のQC用検体の異なる値に対応づけられた変動係数が例えばグループCVの3~4倍より大きい場合、ルール4違反が決定され得る。
【0040】
ブロック440において、対象診断分析装置110aから受信した同一のロットおよびレベルの最後のN個のQC用検体測定値について、各成分の量の平均が所定成分のグループ平均を囲む範囲内にない、と中央サーバ155が判断した場合、ブロック445において、フラグを立ててルール5違反を示してもよい。例えば、最後のN個のQC用検体の異なる値に対応づけられた平均値が、例えば3~4標準偏差より大きい場合、ルール5違反が決定され得る。
【0041】
上記ルールの適用は、図5Aおよび5Bを参照すれば理解しやすい。図5Aは、ルール1、2、および3を適用した様子を示す。ルール1は、対象診断分析装置110aから受信したQC測定値の各成分の量が、グループ上下限値の上限および下限内に入るか否かをチェックする。すなわち、ルール1は、様々な成分の量に対応づけられたQC測定値が上述したTEaULおよびTEaLL内に入るか否かを、チェックする。
【0042】
ルール2および3は、それぞれ、対象診断分析装置110aから受信した全てのQC測定値の各成分の量に対応づけられたCVおよび平均量が、所定成分のグループCVおよびグループ平均内に入るか否かを、チェックする。ルール2および3により、対象診断分析装置110aによって生成されたQC測定値のCVおよび平均における長期推移を判断することが容易になる。長期推移は、例えば、QC用検体の継時的劣化により、または対象診断分析装置110aの性能が幾分徐々に劣化することにより生じ得る。
【0043】
図5Bを参照して、ルール4および5は、それぞれ、対象診断分析装置110aから受信した最後のN個のQC測定値の各成分の、量に対応づけられたCVおよび平均量が所定成分のグループCVおよびグループ平均を囲む範囲内に入るか否かをチェックする。Nは、例えば4に設定され得る。この場合、対象診断分析装置110aのCVおよび平均は、対象診断分析装置110aから受信した最後の4つのQC測定値に対応づけられる。
【0044】
図5Bに示すように、ルール4および5により、正常QC測定値505から、グループCVの範囲を超えるCVを有する測定値510および/またはグループ平均の範囲を超える平均を有する測定値515への、突然の推移が検出し易くなる。そのような推移は、例えば、対象診断分析装置110a内のある種の構成部品の故障、またはおそらくは経験の浅いオペレータによる対象診断分析装置110a、110bの不適切なセットアップにより生じ得る。
【0045】
以下に説明するように、フラグを立てたルールが分かると、対象診断分析装置110aにおける問題を解決する際に適切な行動方針を定める選択が容易になる。
【0046】
図3に戻り、ブロック310において、QC測定値が図4の全てのルールに合格すると、ブロック315において、QC測定値に対応づけられたレコードが、QCピアグループデータベース165に追加される。
【0047】
統計基準は、新規に挿入されたQC測定値を反映するために更新され得る。いくつかの実施例において、統計基準は、各新規のQC測定がQCピアグループデータベース165に追加される度に、更新され得る。他の実施例において、統計基準は、設定された期間で更新され得る。例えば、統計基準は、毎日または毎週、更新されてよい。統計基準は、異なる間隔で更新されてよい。対象診断分析装置から受信されたQC測定値は、直近の更新版の統計基準と比較され得る。
【0048】
この点について、所与のQC測定値の比較に使用された統計基準は、当該QC測定値を中央サーバ155が受信する前に、所定の期間収集されたグループピアデータに基づいて中央サーバ155によって生成され得る。例えば、同一のグループ平均およびグループCVが、ある一日を通して測定されたQC測定値を検証するために使用され得る。代替実施例において、統計基準は、様々なルールに合格した新規受信されたQC測定値で直ちに更新され得る。
【0049】
図6Aおよび6Bは、グループQC測定値に基づいて統計基準を生成することから生じる利点の1つを示す。図6Aは、経時的に低くドリフトしている所与の診断分析装置からのQC測定値を示す。このドリフトは所与のQC用検体の経時変化の結果かもしれず、これは予測されることである。換言すれば、このドリフトは、必ずしもこの診断分析装置についての何らかの問題を示しているわけではなく、QC用検体の調整後経時数が分かれば単に正常なことであるかもしれない。通常の状況では、総許容誤差は、QC用検体の有効寿命にわたって正常QC測定の値における広いばらつきを吸収するように、設定される必要があるであろう。
【0050】
しかし、総許容誤差の範囲を高く設定しすぎると、QC測定値の実際の問題を検出できなくなる可能性がある。例えば、新規のQC用検体に対応づけられたQC測定値に対する期待値は、上限に近いものであるかもしれない。しかし、そのQC用検体の問題であれ診断分析装置の問題であれ、実際のQC測定値は当該範囲の下限近くであるかもしれない。そのような問題は、総許容誤差が高すぎる場合には検出されないであろう。
【0051】
この問題を克服する1つの方法は、総許容誤差を調整してQC用検体の経時変化の影響を追跡することである。図6Bは、図6AのQC測定値と同一のセットと、QC用検体の正常な経時変化の影響を考慮するために経時的に下方に延びる上限および下限とを示す。この場合、上限および下限は、QC測定値の目標である目標値からのパーセンテージ差に相当する。例えば、総許容誤差は、目標値の±10%に設定され得る。一方、目標値はグループ平均値に基づいている。このグループ平均値は、グループの全てのメンバーが同一のロットを使用しているため、経時的に変化する。すなわち、グループ平均は変化するものである。なぜなら、他の診断分析装置110b-fで処理されたQC用検体は、対象診断分析装置110aで処理されたQC用検体と同じ経時変化特徴を呈することが、期待されるからである。したがって、総許容誤差を高く設定しすぎるという図6Aの問題は、総許容誤差を狭くし、グループ平均に合うように目標範囲を経時的に調整することによって、克服される。
【0052】
図3に戻って、ブロック310において、1以上のルールがQC測定値の問題を検出した場合、ブロック320において、当該問題を解決するための工程が行われ得る。この場合、QC測定値は、統計基準が決定される元となる複数の精度管理測定値から、除外され得る。
【0053】
図7Aおよび7Bは図4で検出されたルール違反を処理するための例示の動作を示す。この処理手順は、図7Cに示す例示の指示処理フローおよび図8~13に示す例示のユーザインターフェース画面を参照することでより良く理解される。これらの画面は、図7Aおよび7Bの手順に応じて、検査室105aの中央コンピュータ108および/または対象診断分析装置において表示および/または更新され得る。図7Dは、中央サーバ155によって行われる図7Aおよび7Bの動作に協働する、対象診断分析装置110aによって行われる例示の動作を示す。
【0054】
上記から分かるように、ルール1の違反は、所与のQC測定値が総許容誤差を超えていることを示す。ルール1の違反は、複数のQC測定値を受信した後に決定されるルール2~5違反と反対に、突然生じる。例えば、ルール1違反は、オペレータがQC用検体を間違ったロットから持ってきたために、生じ得る。オペレータは測定用にQC用検体を調製していなかったかもしれない(例えばQC用検体を振っていなかった等)。対象診断分析装置110aの測定部に詰まりが生じたのかもしれない。
【0055】
図7Aを参照して、ブロック700において、ルール1違反が生じ、かつルール1違反が生じた連続回数が限界値を下回る場合(ブロック705を参照)、ブロック707において、中央サーバ155は、検査室105aの中央コンピュータ108へ、ルール1違反指摘を送信してもよい。
【0056】
図8は、中央コンピュータ108および/またはタブレット107に表示されてよい初期画面800を示す。初期画面800は、2つの診断分析装置ステータスウインドウ805a、805bを示す。各ステータスウインドウ805a、805bは、検査室105aの異なる診断分析装置110a、110bに対応づけられてもよく、診断分析装置110a、110bに対応づけられた動作ステータスおよび他の情報を報告してもよい。例えば、ステータスウインドウ805a、805bの両方は、型式XN-10診断分析装置110a、110bに対応づけられる。ステータスウインドウ805a、805bの両方は、それぞれの診断分析装置110a、110bがQC用検体または患者検体を受け入れる用意ができていることを示す。
【0057】
様々なグラフィック要素を利用して、所与の診断分析装置110a、110bの動作ステータスを示してもよい。例えば、緑の塗り色を利用して、対応づけられた診断分析装置110a、110bが、検体を受け入れる用意ができていることを示してもよい。黄色の塗り色を利用して、ある種の警告を示してもよい。赤の塗り色を利用して、対応づけられた診断分析装置110a、110bがオフラインであり、診断分析装置110a、110bがサービスを受ける必要があることを示してもよい。
【0058】
図9に示すように、中央サーバ155からルール1違反指摘を受信すると、対象診断分析装置110aに対応づけられたステータスウインドウ805aを更新して、問題が検出されたことを反映してもよい。例えば、ステータスは、「検体受け入れ可能」から「要QC」または「トレンド問題」へ変更されてもよい。いくつかの実施例では、ステータスウインドウ805aの塗り色を黄色へ変えて、問題が検出されたことを示してもよい。ステータスウインドウ805aは、対象診断分析装置110aの問題を解決するための一連の表示イベントを開始させるボタン810aを含んでもよい。
【0059】
図10は、ユーザがボタン810aを選択したことに応じて生成され得る、例示のウインドウ1000を示す。ウインドウ1000は、対象診断分析装置110aで行われた以前の複数のQC測定に関する情報ならびに各測定のステータスを含む。この例示のウインドウによれば、2016年3月9日、3:24:01PMに行われたQC測定がRBC測定において不合格となっている。この例示のウインドウ1000は、一連のトラブルシューティング指示の表示を開始するためにオペレータによって選択され得る、トラブルシューティングボタン1005を含む。
【0060】
図7Aに戻って、ブロック709において、トラブルシューティング要求が中央サーバ155へ伝達されると、ブロック710において、当該問題を解決するための指示をオペレータに実行させる指示処理が、中央サーバ155によって行われ得る。ブロック709においてトラブルシューティングボタン1005がオペレータによって選択されず、ブロック711において所定の時間が経過していない場合、ブロック707において、中央サーバ155は、ブロック707から繰り返してルール1違反指摘を再度送信する。ブロック709において、所定の時間が経過すると、ブロック777に関して以下に説明する動作が行われ得る。
【0061】
図7Bは、中央サーバ155が指示を処理する際に従ってもよい例示の処理フローを示す。ブロック715において、問題を解決するための指示が中央サーバ155によって選択され得る。指示の選択は、ルール1違反、使用しているロット、違反が生じた回数に関する特定の内容に依存して行われてもよく、および/または他の要因に基づいて行われてもよい。例えば、1回目のルール1違反を解決するために選択される指示は、N回目のルール1違反を解決するために選択される指示とは異なり得る。
【0062】
ブロック720において、選択された指示のうちの第1の指示が対象診断分析装置110aへ伝達され得る。更にまたは代替的に、その指示は、対象診断分析装置110aから測定データを収集する検査室105a内の中央コンピュータ108および/またはタブレット107に伝達され得る。
【0063】
ブロック725において、中央サーバ155は、ブロック720で指示された動作が実行されたことの確認を、対象分析装置110aから受信してよい。中央サーバ155はまた、指示に規定されたタスクを行ったオペレータを識別するオペレータ情報を、当該タスクの実行に関連して当該オペレータによって提供され得るコメントと共に受信してよい。
【0064】
ブロック730において、中央サーバ155は、オペレータ情報をメンテナンスログデータベース162に格納し得る。
【0065】
ブロック735において、中央サーバ155は、送信すべき更なる指示があるか否かを判断し得る。そのような指示がある場合、動作はブロック720から繰り返してよい。
【0066】
最後の指示が実行されたことの確認を受信すると、ブロック740において、中央サーバ155は、図13に示すように、オペレータにQC測定を再度行わせる指示を送信してよい。その後更なる問題が検出されなければ、問題が起きた対象診断分析装置110aに関するステータスウインドウ805aを更新して、対象診断分析装置110aが再度患者検体を受け入れる用意ができていることを反映してよい。
【0067】
他方、後続のQC測定が更なるルール違反となった場合、図7Aの動作を繰り返してよい。
【0068】
図7Cは、図7Bのフローを介して処理され得る例示の指示を示す。例えば、ルール1違反が検出された後、ブロック750において最後の2つのコントロールレベルが限界値内であり、ブロック770においてQC用検体が例えば調整後5日未満である場合、図7Bのブロック715で選択され図7Bのブロック720で伝達された指示は、オペレータにQC用検体を再測定させる、ブロック772で示す指示に相当し得る。ブロック770において、QC用検体が調整後5日を超えていた場合、図7Bのブロック715で選択され図7Bのブロック720で伝達された指示は、オペレータに新規のQC用検体を測定させる、ブロック774で示す指示に相当し得る。
【0069】
ブロック750において、最後の2つのコントロールレベルが限界値内であり、ブロック752において、MCV(平均赤血球容積)およびRDW(赤血球容積分布幅)等のRBCパラメータと、散乱光強度および蛍光強度等のフローサイトメータによって測定可能なFCMパラメータとの両方に対応づけられた測定値が同時に不合格となった場合、図7Bのブロック715で選択され図7Bのブロック720で伝達された指示は、ブロック754aで示す洗浄動作を行う指示に相当し得る。洗浄動作は、塩素系洗剤を使用して対象診断分析装置110a内の全てのフロー流路を洗浄する動作を含み得る。フロー流路は、1以上のフローセルおよびRBC検出器を含む。ブロック754bに示すように、指示された動作の完了確認の受信を待機する工程は、図7Bのブロック725で中央サーバ155によって行われる。最後に、ブロック762に示すように、不合格のQC用検体を再分析するための指示の送信は、図7Bのブロック720で中央サーバ155によって行われる。
【0070】
ブロック752および754によりRBCパラメータの測定のみが不合格となった場合、ブロック756においてRDWまたはMCVのいずれかが不合格となれば、ブロック758に示すように、オペレータに測定ユニットの圧力をチェックさせる指示を、図7Bのブロック720において中央サーバ155によって、対象診断分析装置110aへ送信してよい。ブロック760において、調整が行われた旨の確認を中央サーバ155が対象診断分析装置110aから受信すると、不合格のQC用検体を再分析するためのブロック762における指示を、図7Bのブロック720において中央サーバ155によって、対象診断分析装置110aへ送信してよい。
【0071】
ブロック752および754によりFCMパラメータの測定のみが不合格となった場合、オペレータにフローセルをすすがせる指示を、ブロック764aにおいて対象診断分析装置110aへ送信してよい。指示された動作の完了の確認を受信すべくブロック764bにおいて待機する。そして、ブロック766aにおいて、オペレータにフローセルの気泡を除去させる指示を、対象診断分析装置110aへ送信してよい。指示された動作の完了の確認を受信すべくブロック766bにおいて待機する。次いで、754aからの動作が行われ得る。
【0072】
上記から分かるように、各指示の対象診断分析装置110aへの伝達は、図7Bのブロック720において中央サーバ155によって行われてよい。指示された動作の実行の確認を受信するまでの待機は、ブロック725において中央サーバ155によって行われ得る。更なる指示の実行を指示フローが要求する場合、ブロック735において、中央サーバ155は送信すべき次の指示を選択し、動作はブロック720から繰り返される。
【0073】
図11Aは、図7Cのブロック768aに示した指示に関連して伝達され得る、中央コンピュータ108、タブレット107、または対象診断分析装置110aのうちの1つ以上に表示され得る、第1の例示のトラブルシューティング指示ウインドウ1100を示す。指示ウインドウ1100は、中央サーバ155によって選択され中央コンピュータ108および/またはタブレット107へ伝達される、第1の指示を表示する。例示の指示ウインドウ1100内の指示は、オペレータに対して、「RBC検出器の詰まりを除去」する動作を実行して対象診断分析装置110aのRBC検出器の詰まりを除去し、その動作が完了すれば完了ボタン1105を押すように、依頼する。オペレータは、オペレータの要求に応じて画面に表示されるメンテナンスマニュアルを参照して、この動作を実行する。マニュアルを参照することにより、オペレータは、RBC検出器の詰まりを除去する動作を開始するための開始ボタンを含むヘルプウインドウを、中央コンピュータ108、タブレット107、または対象診断分析装置110aに表示させる。オペレータが開始ボタンを選択したことに応じて、対象診断分析装置110aは、RBC検出器の詰まりを除去する動作を自動的に開始してもよい。代替実施例において、図7Cのブロック768aで示す指示に応じてウインドウ1100の代わりに、開始ボタンを含むヘルプウインドウを、中央コンピュータ108、タブレット107、または対象診断分析装置110aに表示してもよい。
【0074】
完了ボタン1105を押すと、オペレータにはポップアップウインドウ1110(図11B)が提示される。このポップアップウインドウ1110は、オペレータの資格証明と指示に示された手順の実行に関連するコメントとを入力して、その情報を送信するように、オペレータを促すものである。この時点まで、図7Cのブロック768bで示すように、中央サーバ155は確認を受信すべく待機している。上記応答の送信は、図7Bのブロック730において中央サーバ155によって処理される。
【0075】
図12Aは、図7Cのブロック754aに示した指示に関連して伝達され得る、中央コンピュータ108、タブレット107、または対象診断分析装置110aのいずれかに表示され得る、第2の例示のトラブルシューティング指示ウインドウ1100を示す。この点について、中央サーバ155は、以前の指示が実行された旨の確認を受けて、中央コンピュータ108および/またはタブレット107へ第2の指示を伝達してもよい。そして、中央コンピュータ108および/またはタブレット107は、図12Aに示すような例示の指示ウインドウ1100を更新して、ユーザに対して、RBC検出器等の診断分析装置110a内のフロー流路や白血球測定に使用したフローセルを洗浄し、その動作が完了したら完了ボタン1105を押すように、促してもよい。代替実施例において、ウインドウ1100の代わりに、開始ボタンを含むヘルプウインドウを、中央コンピュータ108、タブレット107、または対象診断分析装置110aに表示してもよい。オペレータが開始ボタンを選択したことに応じて、対象診断分析装置110aは、診断分析装置110a内のフロー流路を洗浄する動作を自動的に開始してもよい。
【0076】
完了ボタン1105を押すと、オペレータには、ポップアップウインドウ1110(図12B)が再度提示され得る。このポップアップウインドウ1110は、オペレータの資格証明と指示に示された手順の実行に関連するコメントとを入力して、その情報を送信するように、オペレータを促すものである。この時点まで、中央サーバ155は、図7Cのブロック754bに示すように、確認を受信すべく待機している。上記応答の送信は、図7Bのブロック730において中央サーバ155によって処理される。
【0077】
図7Aに戻って、ブロック705においてルール1違反の数が例えば5といった閾値を超えた場合、または、ブロック700においてはルール1違反がないがブロック712において他の違反がある場合には、ブロック770において、対象診断分析装置110aに対して、例えばトレンド問題あり、サービスを受ける必要あり、または他の問題あり等の、フラグを立ててもよい。
【0078】
ブロック775では、いくつかの実施例において、対象診断分析装置110aの1以上のパラメータの調整を決定して、対象診断分析装置110aの問題を修正してもよい。例えば、対象診断分析装置110aによって行われた様々な測定に対応づけられた感度およびバイアス調整を決定し、以前に測定したQC用検体について、上述のルールのいずれにも違反しない測定値を、対象診断分析装置に生成させてもよい。
【0079】
ブロック777において、中央サーバ155は、中央コンピュータ108、タブレット107、および/または対象診断分析装置110aへ、問題を報告し得る。例えば、中央サーバ155は、トレンド問題についての指摘を中央コンピュータ108、タブレット107、および/または対象診断分析装置110aへ伝達して、最後のN個または任意の数のQC測定値に対応づけられたCVおよび/または平均値が、グループCVおよびグループ平均からそれぞれ推移していることを示してもよい。これにより、対象診断分析装置110aにおける差し迫った問題をオペレータに警告し得る。
【0080】
いくつかの実施例において、中央サーバ155は、ルール違反、ロットの経時数、対象診断分析装置のメンテナンス履歴等に基づいて、対象診断分析装置がサービスを受ける必要があると判断してもよい。この場合、中央サーバ155は、対象診断分析装置110aのサービスを行うサービス代理店へ指示を伝達してよい。これらの指示には、上述したパラメータ調整が含まれ得る。
【0081】
こうした状況下で、中央サーバ155はまた、中央コンピュータ108、タブレット107、および/または対象分析装置へ指示を伝達して自動的に対象診断分析装置110を無効化し、それによって、問題が解決するまで対象分析装置110aが更なる処理を行えないようにしてもよい。
【0082】
ブロック712において、他のルール違反がない場合、図7Aの手順は終了してよい。
【0083】
図2で先に示したように、ブロック220において問題が報告されない場合には、ブロック225において、対象診断分析装置110は患者検体処理を行うために利用できる。
【0084】
上述したように、図7Dは、中央サーバ155によって行われる図7Aおよび7Bの動作に協働する、対象診断分析装置110aによって行われる例示の動作を示す。ブロック780において、対象診断分析装置110aは、違反が生じているという指摘を受信し、それにしたがって表示を更新し得る。例えば、対象診断分析装置715は、まず図8に示す画面を表示し、次いで図9の画面に切り替えて、診断分析装置110aのうちの1つに問題があることを示してもよい。そのルール違反がルール2~5のうちの1つ以上に関する場合、画面を更新して、対象診断分析装置110aにトレンド問題があることを示してもよい。ルール1違反が1つの場合には、画面を更新して、当該問題を解決するための動作をオペレータに選択させてもよい。
【0085】
ブロック782において、オペレータが、自身が当該問題のトラブルシューティングを開始したいという旨を示した場合、トラブルシューティング要求が中央サーバ155へ伝達され得る。
【0086】
ブロック784において、問題をトラブルシューティングするための第1の指示が、受信され表示され得る。この指示は、ブロック715において中央サーバ155によって選択された指示に相当し得る。例えば、図11Aに示す例示の指示が受信され表示され得る。
【0087】
ブロック786において、対象診断分析装置110aは、オペレータが指示の完了を示すまで待機する。
【0088】
ブロック788において、対象診断分析装置110aは、図11Bに示すような、オペレータの名前と指示に対応づけられたコメントとを含むオペレータ情報を、オペレータが提供するように、要求してもよい。そして、対象診断分析装置110aは、オペレータ情報を中央サーバ155へ伝達してよい。
【0089】
ブロック790において、更なる指示がある場合、動作はブロック784から繰り返され得る。例えば、図12A~13に示す指示が伝達され得る。
【0090】
全ての指示が処理され、ブロック792において、問題が解決したと中央サーバ155からの指摘に基づいて対象分析装置110aが判断した場合、患者検体処理が対象診断分析装置110aにおいて進められ得る。
【0091】
ブロック792において、様々な指示に従った後に問題が解決していない場合、ブロック794において、対象診断分析装置110aは、サービスが必要であるという指摘を表示してもよく、患者処理が進まないようにしてもよい。
【0092】
図14は、患者検体を処理する際に対象診断分析装置110によって行われ得る例示の動作を示す。ブロック1400において、患者検体測定が対象診断分析装置110aにおいて行われ得る。例えば、QC測定関連の問題が中央サーバ155によって報告されなかった場合、患者検体を対象診断分析装置110に挿入するようオペレータに指示するメッセージが、対象診断分析装置110に表示され得る。対象診断分析装置110は、患者検体の様々な成分の量を測定し得る。
【0093】
ブロック1405において、診断分析装置110aは、測定値を中央サーバ155へ伝達してよい。
【0094】
ブロック1410において、診断分析装置110aは、先に伝達した患者検体測定値に対応づけられた応答を中央サーバ155から受信してよい。
【0095】
ブロック1415において、測定値に関する問題が検出されなかったことを応答が示す場合、動作はブロック1400から繰り返してよい。
【0096】
ブロック1415において、測定値および/または診断分析装置110aに問題がありそうであると応答が示す場合、ブロック1420において、対象診断分析装置110aは、図2に示すようなQC測定を行うように指示され得る。
【0097】
図15は、患者検体の測定データの受信に続いて中央サーバ155によって行われ得る例示の動作を示す。
【0098】
ブロック1500において、中央サーバ155は、対象診断分析装置110aによって測定された最後のN個の患者検体内の成分の量の平均値を求めてよい。例えば、最後の10個の患者検体内の各成分の平均値が求められ得る。
【0099】
ブロック1505において、中央サーバ155は、上記求めた平均値を、患者検体データベース160に格納された他の患者検体測定値における成分の量に対応づけられた平均または所謂アベレージノーマル(average normal)と、比較してよい。以下の表3は、患者検体データベース160に格納され得る例示のレコードを示す。
【表3】
【0100】
表3を参照して、各レコードは、特定の患者の検体に相当してもよく、当該検体内で測定された様々な成分の量を含み得る。更に、各レコードは、所与の患者検体を、患者検体の成分物質に対応づけられた平均値を求める際に利用してよいか否かを示す、使用可能パラメータを含み得る。例えば、RBCのアベレージノーマル値は、検体1および2に対応づけられた、値2.25および2.28のアベレージに相当してよい。検体3からの値10.0は、使用可能パラメータがNOに設定されているので、平均値の計算には利用できない。
【0101】
ブロック1505において、対象診断分析装置110aから受信した患者検体に対応づけられた平均値が、患者検体データベース160に格納された患者検体に対応づけられたアベレージノーマルの±10%といった所定の範囲内にある場合、ブロック1515において、中央サーバ155は、患者検体測定データを患者検体データベース160に格納し、使用可能パラメータをYesに設定して、アベレージノーマルを求める際に当該レコードを利用してよいことを示してよい。
【0102】
ブロック1520において、中央サーバ155は、[X-N]番目の検体(Xは直近に測定された検体)に対応づけられた情報を公開してよいという旨の指示を、中央コンピュータ108、タブレット107、および/または対象診断分析装置110aへ送信してよい。例えばNが10に等しいとき、現在の検体(X)が100番目の検体に相当する場合、90番目の検体は、病院または医師に公開されてもよい。他の検体(すなわち検体91~100)は、追加の検体が処理されて平均がアベレージノーマル内にあるという判断がなされるまで、保持される(すなわち公開されない)。例えば91番目の検体は、101番目の検体が測定されて平均が依然としてアベレージノーマル内にあるという判断がなされると、公開される。
【0103】
ブロック1505に戻って、対象診断分析装置110aから受信した患者検体に対応づけられた平均値がアベレージノーマルの所定の範囲外にある場合には、ブロック1525において、中央サーバ155は、QC測定を行う指示と共に、測定に問題が生じたという旨の指摘を、中央コンピュータ108、タブレット107、および/または対象診断分析装置110aへ送信してよい。
【0104】
ブロック1530において、中央サーバ155は、患者検体測定データを患者検体データベース160に格納し、使用可能パラメータを「No」に設定し、当該レコードがアベレージノーマルの判断に利用できないことを示してもよい。
【0105】
ブロック1532においてQC測定が行われ、ブロック1533においてルール違反が検出されなかった場合、ブロック1535において、中央サーバ155は、中央コンピュータ108、タブレット107、および/または対象診断分析装置110aに、患者検体を再測定するよう指示を伝達してよい。
【0106】
他方、QC測定が行われ、ルール違反が検出された場合、ルール違反を処理するための手順が行われてもよい。
【0107】
患者検体が異なる診断分析装置へ自動的に送られる自動環境においては、対象診断分析装置110が停止している間および/またはブロック1505で検出された問題を解決するために対象診断分析装置110がQC測定の処理に使用されている間、中央サーバ155は、測定のために患者検体を異なる診断分析装置へ自動的に送らせる指示を伝達してもよい。例えば、この指示により中央コンピュータ108を制御して、対象診断分析装置の問題が解決するまで、検体を異なる診断分析装置へ送ってもよい。
【0108】
尚、いくつかの実施例においては、患者検体測定データは、患者検体が測定される度に、中央サーバ155と通信する診断分析装置110a-gのそれぞれから受信されてもよい。測定された各患者検体について中央サーバ155は、複数の患者検体の成分の少なくとも1つの量に対応づけられた少なくとも1つの平均値を求めてもよい。平均値が統計基準に適合しない場合、中央サーバ155は、当該平均値が統計基準に適合しなかった患者検体に対応づけられた診断分析装置110a-gに、測定の問題があるという旨の指摘を伝達してもよい。
【0109】
図16は、中央サーバ155により生成され、検査室105aの中央コンピュータ108および/またはタブレット107へ伝達され得る、例示のチャート1600を示す。チャート1600は、所与の対象診断分析装置110aにおける数日間にわたるQC測定の結果の概要を示す。チャートの各セルは、QC測定がある一日のある時刻で行われたか否かを示す。セルの値は、測定が行われた場合、その測定のタイプを示す。空白のセルは、QC測定が行われなかったことを示す。「P」という値は、レベル1およびレベル2のQC用検体といった、2つのレベルのQC用検体が測定されたことを示す。「S」という値は、対象診断分析装置110aがサービスを受けていたことを示す。「F」という値は、対象診断分析装置110aがQC測定に不合格であったことを示す。「B」という値は、バックグラウンドカウントが合格したことを示す。いくつかの実施例においては、セルは、当該日時における対象診断分析装置110aの動作ステータスを示すように色分けされてもよい。例えば、緑の塗り色を利用して、対象分析装置110aが動作したことを示してもよい。黄色の塗り色を利用して、対象分析装置110aが、トレンドレビュー中であることを示してもよい。トレンドとは、対象分析装置110aによって生成されたQC測定値に対応づけられた平均およびCV値がグループCVおよびグループ平均から逸脱し始めていたことを意味する。赤の塗り色を利用して、対象分析装置110aが何らかの問題のために使用できなかったことを示してもよい。
【0110】
チャート1600内の各セルまたはセルのサブセットは、オペレータからの選択を受信するように構成され得る。一実施例において、値「P」すなわち合格が入ったセルをオペレータが選択すると、中央コンピュータ108および/またはタブレット107は、連続キャリブレーション検証証明書(CCVC)を生成するという、中央サーバ155に対する要求を生成してもよい。CCVCは、所与の対象診断分析装置110aの正確度についての報告を維持するという規制要件を満たすために、検査室105aのオペレータによって利用され得る。いくつかの実施例において、報告を要求したオペレータに対応づけられた情報が、中央サーバ155へ伝達され、続いてデータベースに格納され、それによって、ユーザに対応づけられたレビュー履歴を得てもよい。例えば、オペレータの名前、報告のタイプ、および当該要求が出された時刻に関するレコードがデータベースに格納され得る。
【0111】
図17は、例示の連続キャリブレーション検証証明書(CCVC)1700を示す。CCVC1700は、選択されたセルに対応づけられた日時で行われたQC測定に対応づけられた統計情報と、グループサイズ1705を含む。このグループサイズ1705から、グループ平均およびグループCVが各レベルについて求められる。QC用検体内の各成分1710について、CCVCは、所定のQC用検体レベル1715aに対応づけられた、対象診断分析装置110aから得られた平均値1715b、グループ平均である目標値1715c、下限1715d、および上限1715eを特定する。CV1725aおよびCV範囲1725bもまた特定される。各成分についてグラフ1720が作成されており、平均値1715bと目標値1715cとの差を示している。このグラフ1720において、この差は、所定成分の許容範囲(TEa×グループ平均)に基づいて正規化される。具体的には、グラフ1720におけるパーセンテージが、式[(あなたの平均-グループ平均)/(TEa×グループ平均)×100]によって計算される。
【0112】
図18は、中央コンピュータ108またはタブレット107からの要求に応じて中央サーバ155によって生成され得る例示のトレーサビリティー報告1800を示す。トレーサビリティー報告1800は、対象診断分析装置110aから受信したQC測定値が容認できる範囲内にあるか否かを判断する際に中央サーバ155によって利用される様々な目標範囲を定義する。
【0113】
トレーサビリティー報告1800は、グループサイズ1805を特定している。このグループサイズ1805から、グループ平均およびグループCVが各レベルについて求められる。各成分1810について、トレーサビリティー報告1800は、所定成分1810に対応づけられた、参考目標1815a、グループ平均1815b、および許容範囲1815cを特定する。グループ平均1815bは、上記概説した手順を介して求められる。
【0114】
参考目標1815aは、所与のロットの所定成分に対応づけられたアッセイ目標値に相当する。この点について、QC用検体は、第三者により調製され、中央サービスプロバイダ150に対応づけられた処理センターへ処理のために配送され得る。処理センターは、高度にキャリブレーションされた機器を使用して成分の量を測定し、測定値を中央サービスプロバイダ150へ転送し得る。そして目標アッセイは、処理センターによって測定された値に対応するように設定される。
【0115】
トレーサビリティー報告1800はまた、参考目標をグループ平均に関連付けるグラフ1820を提供して、グループ平均の正確度を視覚的に表現する。提供される他の情報は、グループ対参考デルタ1825aと不確かさパーセンテージ1825bとを含む。
【0116】
図19は、中央コンピュータ108またはタブレット107からの要求に応じて中央サーバ155によって生成され得る、例示の詳細日別検証報告(DDVR)1900を示す。DDVR1900は、所与の対象診断分析装置110aにおいて一日の間で用いられたQC用検体の各成分1905に対応づけられたQC測定の結果を示す。例えば、レベル1、2、および3の検体に対応づけられたQC測定値1915は、当該検体が測定された日の時刻に従って、左から右に表示され得る。QC測定値1915のレベルに関する指標を縦に並べることにより、測定値の相対値が示される。例えば、QC測定値1915におけるレベル1RBC測定値に対する値は約ゼロであり、これはこのRBCのレベル1の値がレベル1検体のRBC測定値に対応づけられたグループ平均に略等しいことを示す。
【0117】
図20は、本明細書で参照するコンピューティングデバイスの一部または任意のものを表す又は形成し得る、一般のコンピュータシステム2000を示す。コンピュータシステム2000は、本明細書で開示する方法またはコンピュータベースの機能の1つ以上をコンピュータシステム2000に行わせるように実行され得る、指示2045のセットを含む。コンピュータシステム2000は、独立型装置として動作してもよいし、例えばネットワークを使用して、他のコンピュータシステムまたは周辺装置に接続されてもよい。
【0118】
ネットワーク化された構成では、コンピュータシステム2000は、サーバの容量内で動作してもよいし、サーバ―クライアントオペレータネットワーク環境内でクライアント―オペレータコンピュータとして動作してもよいし、ピアツーピア(もしくは分散型)ネットワーク環境内のピアコンピュータシステムとして動作してもよい。コンピュータシステム2000はまた、様々な装置として実現されてよく、様々な装置に組込まれ得る。そのような装置には、当該マシンで行われる動作を特定する指示2045(順次または他の方式)のセットを実行可能な、パーソナルコンピュータまたはモバイルデバイス等が含まれる。更に、上述のシステムのそれぞれは、1以上のコンピュータ機能を実行するための1つまたは複数のセットの指示を個別にまたは共同で実行する、サブシステムの集合体を含み得る。
【0119】
コンピュータシステム2000は、本出願で説明した任意のデータベース等、情報をやり取りするバスにおいて1以上のメモリ装置2010を含んでよい。更に、本明細書で説明したアクションや動作をコンピュータシステムに実行させるコードが、メモリ2010内に格納され得る。メモリ2010は、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ、プログラマブルメモリ、ハードディスクドライブ、もしくは任意の他のタイプのメモリ、または記憶装置であってよい。
【0120】
コンピュータシステム2000は、液晶ディスプレイ(LCD)、ブラウン管(CRT)、または情報伝達に適した他のディスプレイ等のディスプレイ2030を含んでもよい。ディスプレイ2030は、オペレータがプロセッサ2005の機能を見るためのインターフェースとして、または具体的にはメモリ2010またはドライブユニット2015内に格納されたソフトウエアに対するインターフェースとして、機能し得る。
【0121】
更に、コンピュータシステム2000は、システム2000の構成部品の任意のものとオペレータが相互作用できるように構成されたキーボードまたはマウス等の入力装置2025を含んでもよい。
【0122】
コンピュータシステム2000はまた、ディスクまたは光学ドライブユニット2015を含んでよい。ディスクドライブユニット2015は、例えばソフトウエア等の1以上のセットの指示が埋め込まれたコンピュータ読取可能媒体2040を含んでよい。更に、指示2045は、本明細書で説明した動作の1以上を実行してよい。指示2045は、コンピュータシステム2000による実行の間、完全にまたは少なくとも部分的にメモリ2010内におよび/またはプロセッサ2005内に存在してよい。メモリ2010およびプロセッサ2005もまた、上述したようなコンピュータ読取可能媒体を含んでよい。
【0123】
コンピュータシステム2000は、ネットワーク2050を介して通信を可能にする通信インタフェース2035を含んでよい。ネットワーク2050は、有線ネットワーク、無線ネットワーク、またはその組合せを含んでよい。通信インタフェース2035によるネットワークは、802.11、802.12、802.20、WiMax、携帯電話規格、または他の通信規格等の、任意の数の通信規格を介して通信を可能にしてよい。
【0124】
したがって、本方法およびシステムは、ハードウエア、ソフトウエア、またはハードウエアおよびソフトウエアの組合せにおいて実現され得る。本方法およびシステムは、少なくとも1つのコンピュータシステムでの集中型方式、または異なる要素が数個の相互連結したコンピュータシステムに分散された分散型方式で、実現され得る。本明細書において記述した本方法を実施するように構成された、あらゆる種類のコンピュータシステムまたは他の装置が適している。ハードウエアおよびソフトウエアの典型的組合せは、読み込み実行されると本明細書で説明した方法を実行するようにコンピュータシステムを制御するコンピュータプログラムを有する、汎用コンピュータシステムであってよい。
【0125】
本方法およびシステムはまた、本明細書で説明した動作の実施を可能にする全ての特徴を含みかつコンピュータシステムに読み込まれるとこれらの動作を実行することが可能な、コンピュータプログラムプロダクトに埋め込まれ得る。本文脈におけるコンピュータプログラムは、直接に、あるいは、a)他の言語、コード、または表記法への変換;b)異なる材料形態での再生;のいずれか一方または両方を行った後に、情報処理能力を有するシステムに特定の機能を実行させるように意図された一連の指示の、任意の言語、コードまたは表記法よって記述されたいかなる表現をも意味する。
【0126】
本方法およびシステムを特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更がなされ得ることおよび等価物によって代用され得ることは、当業者には自明であろう。例えば、上記実施形態によれば、中央サーバ155は、統計基準を生成し、測定値に問題があるか否かを判断し、その問題のトラブルシューティングのために対象診断分析装置110aへ指示を伝達する。代替実施例においては、対象診断分析装置110aは、中央サーバ155から統計基準を受信してもよい。そして、対象診断分析装置110aは、精度管理用検体の少なくとも1つの成分の量を測定するように測定用ハードウエアを制御してよく、また、測定値を統計基準と比較してルール違反が生じたか否かを判断してもよい。対象診断分析装置110aは、ユーザインターフェースを介して上記判断に対応づけられた比較結果を表示してもよい。上記動作を行う際、対象診断分析装置110aは、説明した他の実施形態において中央サーバ155によって行われる図3、4、7A~7D、および15の1以上の動作を行ってもよい。
【0127】
尚、本教示の範囲から逸脱することなく特定の状況または材料を本教示に適応させるように、多くの変更がなされ得る。したがって、本方法およびシステムは、開示した特定の実施形態に限定されず、添付の請求の範囲に含まれる全ての実施形態を含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20