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特許7291773アルカリ性洗浄組成物、洗浄方法及び半導体製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】アルカリ性洗浄組成物、洗浄方法及び半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230608BHJP
   G03F 7/42 20060101ALI20230608BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20230608BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20230608BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20230608BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
G03F7/42
H01L21/308 G
C11D7/50
C11D7/26
C11D7/32
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021206025
(22)【出願日】2021-12-20
(65)【公開番号】P2022101503
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】109146082
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】508054404
【氏名又は名称】達興材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】弁理士法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】湯 慧怡
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ズ▼棋
(72)【発明者】
【氏名】陳 雨農
(72)【発明者】
【氏名】陳 頤承
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-103730(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150620(WO,A1)
【文献】特開2008-129571(JP,A)
【文献】特開2009-224782(JP,A)
【文献】特開2018-109154(JP,A)
【文献】特開平09-269601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
G03F 7/42
H01L 21/308
C11D 7/50
C11D 7/26
C11D 7/32
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性化合物、5~40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル、10~30重量%の水及び極性溶媒を含むアルカリ性洗浄組成物であって、
前記極性溶媒は、アセタール類、グリコールエーテル類、ピロリドン類、又はこれらの組み合わせの溶媒を含み、かつ、前記アルカリ性洗浄組成物は、ベンゼンスルホン酸を含ま
前記極性溶媒は、下記式(3)、式(4)又は式(5)に示す構造の溶媒、又はこれらの組み合わせの溶媒を含み、
【化3】
式(3)中、R1、R2は、それぞれ独立に水素又は炭素数1~6のアルキル基であり、かつ、前記アルキル基は、無置換又は少なくとも一つの-CH2-が-O-で置換され、R3、R4は、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキレン基であり、R5、R6は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、
【化4】

式(4)中、R1は、炭素数1~4のアルキル基であり、前記アルキル基は、無置換又は水酸基で置換され、R2、R3は、それぞれ独立に水素又は炭素数1~2のアルキル基であり、nは、1~4の整数であり、
【化5】
式(5)中、R1は、炭素数1~3のアルキル基である、
アルカリ性洗浄組成物。
【請求項2】
前記アルカリ性化合物は、水酸化第4級アンモニウム、アルカノールアミン類化合物、又はこれらの混合物を含む、
請求項1に記載のアルカリ性洗浄組成物。
【請求項3】
前記水酸化第4級アンモニウムは、下記式(1)に示す構造を有し、
【化1】
式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、前記アルキル基は、無置換又は水酸基で置換され、Xは、OHであり、
前記アルカノールアミン類化合物は、下記式(2)に示す構造を有し、
【化2】
式(2)中、R1、R2は、それぞれ独立に水素又は炭素数1~6のアルキル基であり、かつ、前記アルキル基は、無置換又は水酸基で置換され、R3は、炭素数1~8のアルキレン基であり、かつ、前記アルキレン基は、無置換又は少なくとも一つの-CH2-が-O-又は-NH-で置換され、かつ、-O-は、-O-又は-NH-と直接結合されず、-NH-は、-NH-と直接結合されず、R4、R5は、それぞれ独立に水素又は炭素数1~3のアルキル基であり、かつ、前記アルキル基は、無置換又は水酸基で置換される、
請求項2に記載のアルカリ性洗浄組成物。
【請求項4】
前記水酸化第4級アンモニウムは、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド及びトリ(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドの群から選ばれる少なくとも一つであり、
前記アルカノールアミン類化合物は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n-プロパノールアミン、n-ジプロパノールアミン、n-トリプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール及び2-(2-アミノエトキシ)エタノールの群から選ばれる少なくとも一つである、
請求項2に記載のアルカリ性洗浄組成物。
【請求項5】
前記アルカリ性化合物の含有量は、0.1~20重量%である、
請求項1に記載のアルカリ性洗浄組成物。
【請求項6】
前記極性溶媒は、4,8-ジメチル-2,5,7,10-テトラオキサウンデカン、2,5,7,10-テトラオキサウンデカン、6-(2-メトキシエトキシ)-2,5,7,10-テトラオキサウンデカン、1-エトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン及びN-イソプロピル-2-ピロリドンの群から選ばれる少なくとも一つである、
請求項1に記載のアルカリ性洗浄組成物。
【請求項7】
前記極性溶媒の含有量は、5~84.9重量%である、
請求項1に記載のアルカリ性洗浄組成物。
【請求項8】
アルカリ性化合物、5~40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル、10~30重量%の水及び極性溶媒を含むアルカリ性洗浄組成物であって、
前記極性溶媒は、アセタール類、グリコールエーテル類、ピロリドン類、又はこれらの組み合わせの溶媒を含み、かつ、前記アルカリ性洗浄組成物は、ベンゼンスルホン酸を含まず、
前記アルカリ性化合物は、水酸化第4級アンモニウムとアルカノールアミン類化合物との混合物である、
アルカリ性洗浄組成物。
【請求項9】
水酸化第4級アンモニウム、5~40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル、10~30重量%の水及び極性溶媒を含むアルカリ性洗浄組成物であって、
前記極性溶媒は、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、2,5,7,10-テトラオキサウンデカン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも一つであり、かつ、前記アルカリ性洗浄組成物は、ベンゼンスルホン酸を含まない、
アルカリ性洗浄組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載のアルカリ性洗浄組成物を用いて装置素子に付着した残渣又は膜を洗浄及び除去することを含む洗浄方法であって、
前記残渣又は膜は、レジスト又は、シリコン原子を含有する無機物を含む、
洗浄方法。
【請求項11】
基板を提供するステップと、
前記基板上にシロキサン樹脂層を塗布するステップと、
多層基板が形成されるように前記シロキサン樹脂層上にフォトレジスト層を塗布するステップと、
前記多層基板に対してリソグラフィー及びエッチングプロセスを行うステップと、
請求項1~のいずれか1項に記載のアルカリ性洗浄組成物を用いて前記基板上に付着した前記シロキサン樹脂層及び前記フォトレジスト層の残渣を洗浄及び除去するステップと、を含む、
半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体プロセスに係る洗浄組成物、特にアルカリ性洗浄組成物、それを用いる洗浄方法及び半導体製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、通常、シリコンウエハからなる半導体基板から、金属配線層、誘電体層、絶縁層及び反射防止層などの機能層などを介して積層設置されて形成される。上記の積層設置は、リソグラフィープロセスによって形成されるレジストパターンをシャドウマスクとしてエッチング処理し、上記各層を加工してなる。上記のリソグラフィープロセスにおけるレジストパターンは、レジスト膜、又はこれらのレジスト膜の下層に設けられる反射防止膜、犠牲膜などの膜層によって形成されるレジストパターンである。
【0003】
エッチングステップにおいて生成された金属配線層又は誘電体層からの残渣は、その後のプロセスステップに影響を与えないようにし、半導体デバイスの歩留まりの問題を低減させるために洗浄液を用いて除去する。一般に、洗浄液を用いて除去される塗膜の対象としては、例えば、g線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUVなどの各露光波長に対応するレジスト膜、これらのレジスト下層に設けられる反射防止膜、シリコン原子を含有するシリコンシャドウマスクなどの無機膜からなる犠牲膜、又はレジスト上層に設けられる保護膜などが挙げられる。特に液浸リソグラフィー法では、基板上にレジスト下層膜、レジスト膜及び保護膜などを順次積層しているため、洗浄に用いられ、かつ、様々な膜層シャドウマスクを効果的に除去できる洗浄液を開発し、かつ、その後のプロセスの歩留まりに影響を与えないことは、一貫して業界の持続的な努力の方向性となっている。
【発明の概要】
【0004】
そこで、本発明の目的は、基板又は半導体基板上に残留するレジスト、シリコン含有無機膜又はその他の膜層を効果的に洗浄及び除去するためのアルカリ性洗浄組成物であって、環境保護の目的を達成するために汚染物質の排出を低減できるだけではなく、その後のプロセスの歩留まりに影響を与えるのを効果的に回避できるアルカリ性洗浄組成物を提供することにある。
【0005】
本発明の一実施形態において、前記アルカリ性洗浄組成物は、アルカリ性化合物、5~40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル、10~30重量%の水及び極性溶媒を含む。ここで、前記極性溶媒は、アセタール類、グリコールエーテル類、ピロリドン類、又はこれらの組み合わせの溶媒を含み、かつ、前記アルカリ性洗浄組成物は、ベンゼンスルホン酸を含まない。
【0006】
本発明の他の目的は、洗浄方法を提供することにある。前記洗浄方法は、上記アルカリ性洗浄組成物を用いて装置素子に付着した残渣又は膜を洗浄及び除去するステップを含み、かつ、前記残渣又は膜は、レジスト又は、シリコン原子を含有する無機物を含む。
【0007】
本発明の他の目的は、半導体製造方法をさらに提供することにある。前記半導体製造方法は、
基板を提供するステップと、
前記基板上にシロキサン樹脂層を塗布するステップと、
多層基板が形成されるように前記シロキサン樹脂層上にフォトレジスト層を塗布するステップと、
前記多層基板に対してリソグラフィー及びエッチングプロセスを行うステップと、
上記アルカリ性洗浄組成物を用いて前記基板上に付着した前記シロキサン樹脂層及び前記フォトレジスト層の残渣を洗浄及び除去するステップと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の少なくとも一つの実施形態を詳述する前に、本発明は、以下の説明において適用される複数の例によって例示される複数の詳細、例えば、実施例の数や採用される特定の混合割合などに限定される必要がないことに留意すべきである。本発明は、他の実施例のために、又は種々の方法で実施又は実現することができる。
(アルカリ性洗浄組成物)
【0009】
本発明によれば、基板又は半導体基板上に残留するレジスト、シリコン含有無機膜又はその他の膜層などを洗浄及び除去するために用いられるアルカリ性洗浄組成物が提供される。アルカリ性洗浄組成物は、アルカリ性化合物、第1溶媒としての5~40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル、10~30重量%の水及び極性溶媒を含む。前記極性溶媒は、アセタール類、グリコールエーテル類、ピロリドン類、又はこれらの組み合わせの溶媒を第2溶媒として含み、かつ、前記アルカリ性洗浄組成物は、ベンゼンスルホン酸を含まない。このアルカリ性洗浄組成物は、基板上に残留するレジスト、膜層などの残留物を効果的に除去できるだけではなく、含有量が少ない揮発性有機化合物(VOCs)を有するため、環境保護の目的を達成することができる。以下では、各成分について詳細に説明する。
(アルカリ性化合物)
【0010】
本発明に開示される一実施形態において、前記アルカリ性化合物は、水酸化第4級アンモニウム、アルカノールアミン類化合物、又はこれらの混合物を用いることができる。
【0011】
本発明に開示される一実施形態において、前記水酸化第4級アンモニウムは、下記式(1)に示す構造を有する。
【化1】
ただし、R1~R4は、それぞれ独立に炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基であり、かつ、前記アルキル基は、無置換又は水酸基で置換され、かつ、Xは、OHである。
【0012】
具体的には、本発明に開示される一実施形態において、前記水酸化第4級アンモニウムは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド及びトリ(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドの群のうちの少なくとも一つを含んでもよい。本発明に開示される一実施形態において、水酸化テトラメチルアンモニウムであることが好ましい。
【0013】
本発明に開示される一実施形態において、前記アルカノールアミン類化合物は、下記式(2)に示す構造を有する。
【化2】
ただし、R1、R2は、それぞれ独立に水素又は炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基であり、かつ、前記アルキル基は、無置換又は水酸基で置換され、R3は、炭素数1~8のアルキレン基であり、かつ、前記アルキレン基は、無置換又は少なくとも一つの-CH2-が-O-又は-NH-で置換され、かつ、-O-は、-O-又は-NH-と直接結合されず、-NH-は、-NH-と直接結合されず、R4、R5は、それぞれ独立に水素又は炭素数1~3のアルキル基であり、かつ、前記アルキル基は、無置換又は水酸基で置換される。
【0014】
具体的には、本発明に開示される一実施形態において、前記アルカノールアミン類化合物は、エタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n-プロパノールアミン(N-PA)、n-ジプロパノールアミン、n-トリプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール及び2-(2-アミノエトキシ)エタノールの群のうちの少なくとも一つを含んでもよい。本発明に開示される一実施形態において、n-プロパノールアミン、エタノールアミン及び2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールであることが好ましい。
【0015】
本発明に開示される一実施形態において、前記アルカリ性化合物は、上記水酸化第4級アンモニウムと上記アルカノールアミン類化合物との混合物であってもよい。
【0016】
具体的には、前記アルカリ性化合物は、前記アルカリ性洗浄組成物全量の0.1~20重量%を占め、0.5~10重量%であることが好ましい。これらの範囲において、アルカリ性化合物は、レジスト、シリコン含有無機膜、又はその他の膜層などの残留物を効果的に除去することができる。
【0017】
(第1溶媒)
本発明に開示される一実施形態において、前記第1溶媒は、5~40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を含む。また、プロピレングリコールモノメチルエーテルの重量百分率は、15~30重量%であることが好ましい。なお、上記重量百分率は、前記アルカリ性洗浄組成物全量に対してプロピレングリコールモノメチルエーテルが占める割合範囲である。
【0018】
具体的には、本発明のアルカリ性洗浄組成物は、第1溶媒として含有量が上記範囲のプロピレングリコールモノメチルエーテルを含むことにより、レジスト、シリコン含有無機膜、又はその他の膜層などの残留物の優れた洗浄能力を有することができる。
【0019】
(水)
本発明に開示される一実施形態において、本発明のアルカリ性洗浄組成物は、10~30重量%の水を含む。また、水の重量百分率は、15~25重量%であることが好ましい。なお、上記重量百分率は、前記アルカリ性洗浄組成物の全量に対して水が占める割合範囲である。
【0020】
具体的には、本発明のアルカリ性洗浄組成物としての上記水は、純水、脱イオン水、イオン交換水などを用いることができ、ここでは、特に限定せず、水の重量百分率が上記割合範囲内にあればよい。
【0021】
(第2溶媒としての極性溶媒)
本発明に開示される一実施形態において、本発明のアルカリ性洗浄組成物は、その第2溶媒として極性溶媒をさらに含んでもよい。前記極性溶媒は、アセタール類、グリコールエーテル類、ピロリドン類、又はこれらの組み合わせの溶媒を含む。
【0022】
本発明に開示される一実施形態において、前記アセタール類は、下記式(3)に示す構造を有する。
【化3】
ただし、R1、R2は、それぞれ独立に水素又は炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基であり、かつ、前記アルキル基は、無置換又は少なくとも一つの-CH2-が-O-で置換され、R3、R4は、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキレン基であり、R5、R6は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基である。
【0023】
本発明に開示される一実施形態において、前記グリコールエーテル類は、下記式(4)に示す構造を有する。
【化4】
ただし、R1は、水素又は炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基であり、前記アルキル基は、無置換又は水酸基で置換され、R2、R3は、それぞれ独立に水素又は炭素数1~2のアルキル基であり、nは、1~4の整数である。
【0024】
本発明に開示される一実施形態において、前記ピロリドン類は、下記式(5)に示す構造を有する。
【化5】
ただし、R1は、炭素数1~3のアルキル基である。
【0025】
具体的には、本発明に開示される一実施形態において、前記極性溶媒は、4,8-ジメチル-2,5,7,10-テトラオキサウンデカン(4,8-dimethyl-2,5,7,10-tetraoxaundecane)、2,5,7,10-テトラオキサウンデカン(2,5,7,10-tetraoxaundecane;TOU)、6-(2-メトキシエトキシ)-2,5,7,10-テトラオキサウンデカン(6-(2-methoxyethoxy)-2,5,7,10-Tetraoxaundecane)、プロピレングリコール(PG)、1-エトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPGME)、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン及びN-イソプロピル-2-ピロリドン(NIP)の群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。前記極性溶媒は、一つ又は二つ以上を含んでもよい。
【0026】
前記極性溶媒は、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、2,5,7,10-テトラオキサウンデカン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールの群から選ばれる少なくとも一つであることがより好ましい。
【0027】
具体的には、前記極性溶媒は、アルカリ性洗浄組成物全量の5~84.9重量%を占め、20~70重量%であることが好ましい。前記アルカリ性洗浄組成物は、上記極性溶媒がこれらの割合範囲内にあることにより、レジスト、シリコン含有無機膜、又はその他の膜層などの残留物を効果的に除去することができる。
【0028】
(その他の添加剤)
本発明のアルカリ性洗浄組成物は、その他の添加剤、例えば、界面活性剤、金属腐食抑制剤などを含んでもよい。
【0029】
具体的には、前記金属腐食抑制剤は、ベンゼンスルホン酸類を含まない以外は特に限定されない。ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、5-アミノテトラゾール、2,6-ピリジンジカルボン酸 、フェニル尿素、p-メトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、2-ヒドロキシピリジン、2-アミノフェノール、8-ヒドロキシキノリン、リン酸、ホウ酸、フタル酸(phthalic acid)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、アジピン酸(adipic acid)、リンゴ酸(malic acid)、シュウ酸(oxalic acid)、サリチル酸(salicylic acid)などが挙げられる。
【0030】
界面活性剤としては、アニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤などがあり、ここでは特に限定せず、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルなど、アセチレンアルコール系界面活性剤が挙げられ、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エチレンオキシテトラメチルデシンジオールなどである。
【0031】
(洗浄方法)
本発明の洗浄方法は、本発明のアルカリ性洗浄組成物を用いて任意の装置素子に付着した残渣又は膜を洗浄及び除去することを含み、前記洗浄は、種々の洗浄方法、例えば、浸漬洗浄、噴霧洗浄、又はその他の洗浄方法などを含む。上記残渣又は膜は、レジスト又は、シリコン原子を含有する無機物などを含む。上記装置素子は、特に限定されず、製造過程においてレジスト膜、反射防止膜、シリコン原子を含有するシリコンシャドウマスクなどの無機膜からなる犠牲膜、又は保護膜などの膜層を用いる必要があり、その後また、これらの膜層を除去する必要があるものであれば、本発明に記載の装置素子の範囲であり、具体的には、例えば半導体装置や半導体素子などである。
【0032】
(半導体製造方法)
本発明によれば、半導体製造方法がさらに提供される。前記半導体製造方法は、
基板を提供するステップと、
前記基板上にシロキサン樹脂層を塗布するステップと、
多層基板が形成されるように前記シロキサン樹脂層上にフォトレジスト層を塗布するステップと、
前記多層基板に対してリソグラフィー及びエッチングプロセスを行うステップと、
本発明に記載のアルカリ性洗浄組成物を用いて前記基板上に付着した前記シロキサン樹脂層及び前記フォトレジスト層の残渣を洗浄及び除去するステップと、を含む。
【0033】
具体的には、前記基板は、例えば、シリコン基板などの半導体基板である。次いで、上記シロキサン樹脂層を反射防止コーティングとして、フォトレジスト層を塗布して前記シロキサン樹脂層をリソグラフィープロセスでパターニングし、エッチングプロセスを介して基板上にパターンを転写することで、基板のパターニングを完了させる。次に、本発明に記載のアルカリ性洗浄組成物を用いて、前記基板上に残留する前記シロキサン樹脂層及び前記フォトレジスト層に付着した残留物を洗浄及び除去する。
【0034】
(実施例)
本発明の具体的な実施例1~15及び比較例1~14は、表1に示され、その除去力及び揮発性有機化合物の評価結果は、表2に示される。
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
DPGME:ジプロピレングリコールメチルエーテル
PG:プロピレングリコール
EDG:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
NIP:N-イソプロピル-2-ピロリドン
TOU:2,5,7,10-テトラオキサウンデカン
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
MEA:エタノールアミン
N-PA:n-プロパノールアミン
界面活性剤:ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、平均オキシエチレン数は9である。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
除去力評価方法:本発明は、ポリシロキサン反射防止層を例にとり、○は、ポリシロキサン反射防止層を90秒以内に除去できることを示し、×は、ポリシロキサン反射防止層を90秒以内に除去できないことを示す。
【0038】
上記ポリシロキサン反射防止層は、シリコンウエハ上にポリシロキサン樹脂をスピンコートし、3分間の熱処理を経た後に厚さ120nmの硬化膜層を形成し、さらに、この硬化膜層を実施例及び比較例に示す組成の洗浄組成物を洗浄剤として個別に浸漬し、かつ、洗浄剤温度60℃、90秒間浸漬し、浸漬が完了した後にさらに22℃の純水で30秒間洗い流し、エアナイフで吹き付けて乾燥させた後、シリコンウエハ表面硬化膜層の除去状態を確認した。前述したシリコンウエハ表面硬化膜層の除去状態の確認は、肉眼による直接目視で判断することができる。
【0039】
揮発性有機化合物(VOCs)の評価方法:ハンドヘルド光イオン式VOC検出器を用いて測定した。検出条件は、1気圧で、100mLの洗浄剤を500mL瓶に保管し、瓶の口を締め付けた後に23℃で20分間恒温化した。蓋を開けて検出するときは、サンプリングチューブの口を500mL瓶の口箇所に置き、VOC検出器の最大検出値を30秒以内に読み取る。揮発性有機化合物の含有量が50ppm未満であることを○で示し、揮発性有機化合物の含有量が50ppmを超えることを×で示す。
【0040】
上記実施例及び比較例から明らかなように、本発明のアルカリ性洗浄組成物は、第1溶媒として割合範囲5~40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル及び10~30重量%の水を用い、第2溶媒としてその他のアセタール類、グリコールエーテル類、ピロリドン類又はその組み合わせの極性溶媒を併用するため、かつアルカリ性化合物の存在下において、含有量が少ない揮発性有機化合物及び優れた残膜除去力を有し、さらに、その後のプロセスの歩留まりに影響を与えることを防止することができる。
【0041】
これに対し、比較例では、第1溶媒として割合範囲5~40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル及び10~30重量%の水を用いなかったため、残膜除去力がよくなく、又は揮発性有機化合物の含有量が多すぎて、さらには両者の評価方法がいずれもよくなかった。
【0042】
本発明は、いくつかの好適実施例で開示されているが、本発明を限定するものではなく、当業者が本明細書の実施内容を明確に理解できるようにするためのものである。当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変更、置換及び修正を行うことができるので、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものに従うものとする。