(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】移動情報算出装置、および、移動情報算出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 19/52 20100101AFI20230608BHJP
G01S 19/35 20100101ALI20230608BHJP
G01S 19/47 20100101ALI20230608BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
G01S19/52
G01S19/35
G01S19/47
G01C21/28
(21)【出願番号】P 2021501723
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001819
(87)【国際公開番号】W WO2020174935
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2019031574
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園部 達也
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓
(72)【発明者】
【氏名】戸田 裕行
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-122816(JP,A)
【文献】特開平09-178508(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0004748(US,A1)
【文献】特表2016-540187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219767(US,A1)
【文献】特表2006-522920(JP,A)
【文献】特開2011-13189(JP,A)
【文献】特開2006-189320(JP,A)
【文献】BEN AFIA, Amani et al.,A Low-cost GNSS/IMU/Visual monoSLAM/WSS Integration Based on Kalman Filtering for Navigation in Urban Environments,Proceedings of the 28th International Technical Meeting of the Satellite Division of The Institute of Navigation,米国,Institute of Navigation,2015年09月18日,Pages: 618-628,特に第620頁右欄第1行-第624頁左欄第7行, Figure 2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれにGNSS信号を受信する複数のアンテナと、
複数のGNSS受信部に共通のクロック信号を生成するクロック生成部と、
前記複数のアンテナのそれぞれに接続し、前記クロック生成部からの前記クロック信号を共有し、前記共有のクロック信号と前記GNSS信号とを用いて、それぞれにGNSS観測値を算出する複数のGNSS受信部と、
前記複数のGNSS受信部のそれぞれからの前記GNSS観測値を用いて、移動体の速度
を推定する演算部と、
を備え
、
前記複数のアンテナがそれぞれに受信する複数のGNSS信号の組み合わせは、異なり、
前記演算部は、前記移動体の速度、および、前記クロック信号のクロックドリフトを推定する拡張カルマンフィルタを有し、前記推定したクロックドリフトを前記移動体の速度の推定にフィードバックする、
移動情報算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動情報算出装置であって、
前記演算部は、前記GNSS観測値における搬送波位相を用いて、前記移動体の速度を推定する、
移動情報算出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移動情報算出装置であって、
加速度または角速度を計測する慣性センサを備え、
前記演算部は、
前記慣性センサから出力されるセンサ出力値をさらに用いて、前記移動
体の速度を
推定する、
移動情報算出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の移動情報算出装置であって、
動画像を取得するカメラを備え、
前記演算部は、
前記動画像から前記移動体の位置または移動量を含む視覚情報を算出し、該視覚情報を前記移動
体の速度によって補正する、
移動情報算出装置。
【請求項5】
クロック信号生成部が、複数のGNSS受信部に共通のクロック信号を生成し、
複数のGNSS受信部が、複数のアンテナで受信したGNSS信号と前記共通のクロック信号とを用いて前記複数のGNSS受信部においてそれぞれにGNSS観測値を算出し、
演算部が、前記複数のGNSS受信部のそれぞれからの前記GNSS観測値を用いて、移動体の速度
を推定し、
前記複数のアンテナがそれぞれに受信する複数のGNSS信号の組み合わせは、異なり、
前記演算部が、拡張カルマンフィルタを用いて、前記移動体の速度、および、前記クロック信号のクロックドリフトを推定し、前記推定したクロックドリフトを前記移動体の速度の推定にフィードバックする、
移動情報算出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の移動情報算出方法であって、
前記演算部が、前記GNSS観測値における搬送波位相を用いて、前記移動体の速度を推定する、
移動情報算出方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の移動情報算出方法であって、
慣性センサが、加速度または角速度を含むセンサ出力値を取得し、
前記演算部が、前記センサ出力値をさらに用いて、前記移動
体の速度を
推定する、
移動情報算出方法。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の移動情報算出方法であって、
カメラが、動画像を取得し、
前記演算部が、前記動画像から前記移動体の位置または移動量を含む視覚情報を算出し、該視覚情報を前記移動
体の速度によって補正する、
移動情報算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナでGNSS信号を受信して、速度等の移動情報を算出する移動情報算出装置および移動情報算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、位置・姿勢推定装置を記載している。特許文献1の位置・姿勢推定装置は、移動体上に搭載された複数のアンテナを備える。特許文献1の位置・姿勢推定装置は、複数のアンテナで受信したGNSS信号を用いて、測位を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、複数のアンテナのそれぞれで受信できているGNSS信号の数に応じて、推定精度は、変化する。すなわち、受信できているGNSS信号の数が少ないアンテナがあると、この影響を受け、推定精度は、低下してしまう。
【0005】
したがって、本発明の目的は、複数のアンテナのそれぞれで受信できているGNSS信号の数に影響されず、移動情報を高精度に算出できる移動情報算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の移動情報算出装置は、複数のアンテナ、クロック生成部、複数のGNSS受信部、および、演算部を備える。複数のアンテナは、それぞれにGNSS信号を受信する。クロック生成部は、クロック信号を生成する。複数のGNSS受信部は、複数のアンテナのそれぞれに接続する。複数のGNSS受信部は、GNSS信号とクロック信号とを用いてGNSS観測値を算出する。演算部は、複数のGNSS受信部のそれぞれからのGNSS観測値を用いて、移動体の速度を含む移動情報を算出する。
【0007】
この構成では、複数のGNSS受信部が利用するクロック信号は、同じである。すなわち、クロック信号は、複数のGNSS受信部に共通のクロック信号である。このため、複数のGNSS受信部(複数のアンテナ)が受信するGNSS信号の送信元の測位衛星の組合せや数が異なっていても、演算部は、複数のGNSS受信部が受信した全てのGNSS信号を用いて、移動情報を算出できる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、複数のアンテナのそれぞれで受信できているGNSS信号の数に影響されず、移動情報を高精度に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る移動情報算出装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る演算部の機能ブロック図である。
【
図3】本願の移動情報の推定精度の概念を説明するための図である。
【
図4】移動情報算出方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態に係る移動情報算出装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】第2の実施形態に係る演算部の機能ブロック図である。
【
図7】第3の実施形態に係る移動情報算出装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る移動情報算出装置、および、移動情報算出方法について、図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る移動情報算出装置の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、移動情報算出装置10は、アンテナ21、アンテナ22、クロック生成部30、GNSS受信部41、GNSS受信部42、IMU50、および、演算部60を備える。本願発明の「複数のアンテナ」は、アンテナ21およびアンテナ22によって構成される。本願発明の「複数のGNSS受信部」は、GNSS受信部41およびGNSS受信部42によって構成される。
【0012】
GNSSとは、Global Navigation Satellite Sysytemの略語であり、GPS(Global Positioning System)等を含む。
【0013】
アンテナ21およびアンテナ22は、速度等の移動情報の算出対象である移動体90(
図3参照)に、設置されている。移動体90は、例えば、船舶である。アンテナ21およびアンテナ22は、オープンスカイの環境に配置されている。アンテナ21の設置位置とアンテナ22の設置位置とは、異なる。アンテナ21は、GNSS受信部41に接続し、アンテナ22は、GNSS受信部42に接続する。
【0014】
アンテナ21は、測位衛星からのGNSS信号を受信して、GNSS受信部41に出力する。アンテナ22は、測位衛星からのGNSS信号を受信して、GNSS受信部42に出力する。アンテナ21が受信するGNSS信号の送信元の測位衛星と、アンテナ22が受信するGNSS信号の送信元の測位衛星とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0015】
クロック生成部30、GNSS受信部41、および、GNSS受信部42は、所定の電子回路によって実現される。
【0016】
クロック生成部30は、クロック信号を生成して、GNSS受信部41およびGNSS受信部42に出力する。クロック信号は、GNSS受信部41の処理、および、GNSS受信部42の処理の基準となる信号である。
【0017】
GNSS受信部41は、コード位相に対するDLL回路と、搬送波位相に対するPLL回路とを備える。GNSS受信部41は、DLL回路とPLL回路とによって、アンテナ21で受信したGNSS信号を、捕捉、追尾する。GNSS受信部41は、追尾結果からGNSS観測値を算出する。この際、GNSS受信部41は、クロック信号を用いて、DLL回路とPLL回路とのタイミング制御、および、GNSS観測値の算出を、クロック信号を基準にして実行する。GNSS観測値は、測位信号毎のコード位相および搬送波位相を含む。GNSS受信部41は、GNSS観測値を、演算部60に出力する。
【0018】
GNSS受信部42は、コード位相に対するDLL回路と、搬送波位相に対するPLL回路とを備える。GNSS受信部42は、DLL回路とPLL回路とによって、アンテナ22で受信したGNSS信号を、捕捉、追尾する。GNSS受信部42は、追尾結果からGNSS観測値を算出する。この際、GNSS受信部42は、クロック信号を用いて、DLL回路とPLL回路とのタイミング制御、および、GNSS観測値の算出を、クロック信号を基準にして実行する。GNSS観測値は、測位信号毎のコード位相および搬送波位相を含む。GNSS受信部42は、GNSS観測値を、演算部60に出力する。
【0019】
このように、移動情報算出装置10では、GNSS受信部41によって算出されるGNSS観測値と、GNSS受信部42によって算出されるGNSS観測値とは、同じクロック信号(共通(共有)のクロック信号)に基づいている。
【0020】
IMU50は、例えば、三軸の加速度センサおよび角速度センサ等を備える慣性センサである。IMU50は、前記移動体に設置されている。IMU50は、加速度または角速度を計測し、計測値(センサ出力値)を、演算部60に出力する。この際、IMU50は、所定の時間間隔で計測を行い、計測値を出力する。
【0021】
図2は、第1の実施形態に係る演算部の機能ブロック図である。演算部60は、GNSSデータ演算部611、IMUデータ演算部612、および、統合演算部62を備える。演算部60は、例えば、GNSSデータ演算部611、IMUデータ演算部612、および、統合演算部62の各処理のプログラムと、当該プログラムを実行するCPU等の演算装置によって実現される。
【0022】
GNSSデータ演算部611には、GNSS受信部41からのGNSS観測値、および、GNSS受信部42からのGNSS観測値が入力される。GNSSデータ演算部611は、各GNSS演算値のコード位相を用いて、擬似距離、各アンテナと各測位衛星とを結ぶ視線方向ベクトルを算出する。この擬似距離の算出の際にも、上述のクロック信号に基づいた時刻が用いられる。
【0023】
GNSSデータ演算部611は、これらの算出データとともに、各GNSS演算値の搬送波位相の積算値を用いて、GNSS速度を推定する。この際、GNSSデータ演算部611は、統合演算部62によって推定されたクロックドリフト誤差を用いて、GNSS速度の推定を行う。GNSSデータ演算部611は、推定したGNSS速度を、統合演算部62に出力する。
【0024】
IMUデータ演算部612には、IMU50からの計測値が入力される。IMUデータ演算部612は、計測値から、IMU加速度およびIMU角速度を算出する。この際、IMUデータ演算部612は、統合演算部62によって推定された加速度バイアスおよび角速度バイアスを用いて、IMU加速度およびIMU角速度を算出する。
【0025】
IMUデータ演算部612は、IMU加速度の積算値およびIMU角速度を用いて、IMU速度を算出する。IMUデータ演算部612は、算出したIMU速度を、統合演算部62に出力する。
【0026】
統合演算部62は、例えば、拡張カルマンフィルタEKFによって実現される。統合演算部62は、GNSS速度およびIMU速度を含んで、拡張カルマンフィルタの観測ベクトルを設定する。また、統合演算部62は、移動情報算出装置10として出力する統合速度、クロック信号のクロックドリフト誤差、IMU50の加速度バイアス誤差を含んで、拡張カルマンフィルタの状態ベクトルを設定する。
【0027】
統合演算部62は、これらの観測ベクトルと状態ベクトルとを有する拡張カルマンフィルタを実行することによって、統合速度および各種の誤差を推定する。統合演算部62は、状態ベクトルに含まれるクロックドリフト誤差を含むGNSS観測値に関する推定誤差を、GNSSデータ演算部611にフィードバックする。GNSSデータ演算部611は、フィードバックされた推定誤差を用いて、GNSS速度等の推定を行う。統合演算部62は、状態ベクトルに含まれる加速度バイアス誤差、角速度バイアス誤差等のIMU観測値(計測値)に関する推定誤差を、IMUデータ演算部612にフィードバックする。IMUデータ演算部612は、フィードバックされた推定誤差を用いて、IMU速度等の算出を行う。
【0028】
このような構成において、クロック信号が複数のGNSS受信部(本実施形態ではGNSS受信部41およびGNSS受信部42)に共通である。これにより、演算部は、GNSS受信部毎にクロックドリフト誤差を推定せず、複数のGNSS受信部によって得られた全ての観測値を用いて、クロックドリフト誤差を推定できる。したがって、クロックドリフト誤差の推定に用いる異なるGNSS信号の個数は、多くなる。
【0029】
このため、クロックドリフト誤差は、高精度に推定される。これにより、クロックドリフト誤差を用いて推定される速度は、高精度になる。
【0030】
図3は、本願の移動情報の推定精度の概念を説明するための図である。
図3の場合、アンテナ21は、測位衛星SAT1のGNSS信号と測位衛星SAT2のGNSS信号とを受信でき、測位衛星SAT3のGNSS信号と測位衛星SAT4のGNSS信号とを受信できていない。アンテナ22は、測位衛星SAT3のGNSS信号と測位衛星SAT4のGNSS信号とを受信でき、測位衛星SAT1のGNSS信号と測位衛星SAT2のGNSS信号とを受信できていない。これは、例えば、移動体90の位置によって、GNSS信号の受信状態が変化する場合に生じる。より具体的には、このような状態は、移動体90が船舶であり、移動体90が着岸する際に、ガントリークレーン等によってアンテナによるGNSS信号の受信が遮蔽される場合等によって、生じる可能性がある。
【0031】
ここで、アンテナ21に接続するGNSS受信部41のクロック信号と、アンテナ22に接続するGNSS受信部41のクロック信号とは、異なるとする。この場合、演算部60は、GNSS受信部41のクロック信号のクロックドリフト誤差を、測位衛星SAT1のGNSS信号と測位衛星SAT2のGNSS信号とのGNSS観測値によって推定する。また、演算部60は、GNSS受信部42のクロック信号のクロックドリフト誤差を、測位衛星SAT3のGNSS信号と測位衛星SAT4のGNSS信号とのGNSS観測値によって推定する。
【0032】
このように、GNSS受信部毎にクロック信号を個別にすると、各クロック信号のクロックドリフト誤差は、それぞれ2個のGNSS信号のGNSS観測値によって推定される。したがって、クロックドリフト誤差の推定精度は、2個のGNSS信号分になってしまう。
【0033】
一方、本願発明では、GNSS受信部41とGNSS受信部42とでクロック信号が共通である。この場合、クロックドリフト誤差は、GNSS受信部41で受信した2個のGNSS信号とGNSS受信部42で受信した2個のGNSS信号とを合わせた4個のGNSS信号のGNSS観測値によって推定される。したがって、本願発明では、クロックドリフト誤差の推定精度は、4個のGNSS信号分になる。
【0034】
これにより、本願発明の構成および処理を用いることによって、クロックドリフト誤差の推定精度は、向上する。そして、クロックドリフト誤差の推定の向上によって、同じ状態ベクトルに含まれる統合速度の推定精度は、向上する。また、統合速度の推定精度が向上することによって、位置や姿勢角の推定精度も向上する。
【0035】
これにより、複数のアンテナのGNSS信号の受信状態に影響されることなく、速度を含む移動状態は、高精度に推定、算出される。
【0036】
また、この構成および処理では、状態ベクトルに含まれるクロックドリフト誤差は、1個である。したがって、GNSS受信部毎にクロックドリフト誤差を推定する場合よりも、拡張カルマンフィルタの状態ベクトルを構成する未知数は減少する。したがって、演算部60の処理負荷は軽減する。これにより、例えば、移動状態の推定精度とともに推定速度は、向上する。
【0037】
(移動状態算出方法の説明)
上述の構成は、移動状態を算出するための各種処理を、複数の機能部に分けて実現した。しかしながら、上述の各処理は、プログラム化した上で、CPU等の演算処理装置によって実行してもよい。この場合、プログラムは、記憶部に記憶され、演算処理装置は、記憶部に記憶されたプログラムを読み出して、実行する。なお、各処理の具体的な説明は、上述の通りであり、省略する。
【0038】
図4は、移動情報算出方法の一例を示すフローチャートである。演算処理装置は、共通クロック信号を生成する(S11)。演算処理装置は、共通クロック信号を用いて、受信したGNSS信号からGNSS観測値を算出する(S12)。また、演算処理装置は、IMUの計測値であるIMU観測値を取得する。
【0039】
演算処理装置は、算出または取得した各種の観測値を用いて、統合速度を推定する(S13)。この際、演算処理装置は、統合速度とともに、クロックドリフト誤差を推定し、統合速度の推定演算の前処理時の補正に用いる。
【0040】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る移動情報算出装置について、図を参照して説明する。
図5は、第2の実施形態に係る移動情報算出装置の構成を示すブロック図である。
【0041】
図5に示すように、第2の実施形態に係る移動情報算出装置10Aは、第1の実施形態に係る移動情報算出装置10に対して、アンテナおよびGNSS受信部の個数が変更され、カメラ70が追加された点、これらの変更および追加による演算部60Aの処理が変更された点で異なる。移動情報算出装置10Aの他の構成および処理は、移動情報算出装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0042】
図5に示すように、移動情報算出装置10Aは、アンテナ21、アンテナ22、アンテナ23、アンテナ24、クロック生成部30、GNSS受信部41、GNSS受信部42、GNSS受信部43、GNSS受信部44、IMU50、演算部60A、および、カメラ70を備える。
【0043】
アンテナ21の設置位置、アンテナ22の設置位置、アンテナ23の設置位置、および、アンテナ24の設置位置は、異なる。この際、アンテナ21、アンテナ22、アンテナ23、および、アンテナ24は、全てのアンテナが同時に一直線上に並ばないように、設置されている。アンテナ21は、GNSS受信部41に接続し、アンテナ22は、GNSS受信部42に接続する。アンテナ23は、GNSS受信部43に接続し、アンテナ24は、GNSS受信部44に接続する。
【0044】
クロック生成部30は、クロック信号を生成して、GNSS受信部41、GNSS受信部42、GNSS受信部43、および、GNSS受信部44に出力する。
【0045】
GNSS受信部41は、アンテナ21で受信したGNSS信号を用いて、GNSS観測値を算出し、演算部60Aに出力する。GNSS受信部42は、アンテナ22で受信したGNSS信号を用いて、GNSS観測値を算出し、演算部60Aに出力する。GNSS受信部43は、アンテナ23で受信したGNSS信号を用いて、GNSS観測値を算出し、演算部60Aに出力する。GNSS受信部44は、アンテナ24で受信したGNSS信号を用いて、GNSS観測値を算出し、演算部60Aに出力する。
【0046】
IMU50は、計測値を演算部60Aに出力する。
【0047】
カメラ70は、移動体90の挙動と周辺の状況を、動画像によって取得する。カメラ70は、動画像を、演算部60Aに出力する。
【0048】
図6は、第2の実施形態に係る演算部の機能ブロック図である。演算部60Aは、GNSSデータ演算部611、IMUデータ演算部612、視覚データ演算部613、および、統合演算部62を備える。
【0049】
GNSSデータ演算部611は、GNSS受信部41からのGNSS観測値、GNSS受信部42からのGNSS観測値、GNSS受信部43からのGNSS観測値、および、GNSS受信部44からのGNSS観測値を用いて、GNSS速度およびGNSS姿勢角を推定し、統合演算部62に出力する。
【0050】
IMUデータ演算部612は、IMU50からの計測値を用いて、IMU速度およびIMU姿勢角を算出し、統合演算部62に出力する。
【0051】
視覚データ演算部613は、動画像から複数の特徴点を抽出するとともに基準点を設定する。視覚データ演算部613は、基準点の位置に対する複数の特徴点の位置、移動量、および、スケールを含む空間情報を生成し、統合演算部62に出力する。スケールとは、動画像から得られる特徴点と基準点との距離と、GNSS速度から得られる特徴点と基準点との距離との比によって表される。
【0052】
統合演算部62は、GNSSデータ演算部611からのGNSS速度およびGNSS姿勢角、IMUデータ演算部612からのIMU速度およびIMU姿勢角、および、視覚データ演算部613からの空間情報を含んで、拡張カルマンフィルタの観測ベクトルを設定する。統合演算部62は、移動情報算出装置10として出力する統合速度、クロック信号のクロックドリフト誤差、IMU50の加速度バイアス誤差、角速度バイアス誤差、空間情報のスケール誤差を含んで、拡張カルマンフィルタの状態ベクトルを設定する。
【0053】
統合演算部62は、これらの観測ベクトルと状態ベクトルとを有する拡張カルマンフィルタを実行することによって、統合速度および各種の誤差を推定する。また、統合演算部62は、スケール誤差を用いて空間情報を補正する。
【0054】
この構成では、移動情報算出装置10Aは、移動体90の速度を高精度に算出できるとともに、視覚情報に対する高精度な距離、位置を与えることができる。そして、この際、クロックドリフト誤差は、4個のアンテナで受信したGNSS信号の全てに基づいて推定されるので、クロックドリフト誤差は高精度に推定される。これにより、移動体90の速度は、高精度に算出され、視覚情報に与えられる距離および位置も高精度になる。
【0055】
また、GNSS受信部が4個であっても、推定するクロックドリフト誤差は、1個である。したがって、推定演算は高速になり、高精度になる。
【0056】
特に、このように、視覚情報とGNSS信号による観測値とIMUの観測値とを統合して、速度等を推定算出する場合、統合演算部62での処理負荷は、非常に高くなる。したがって、推定するクロックドリフト誤差が減ることによって、統合演算部62での処理負荷は軽減し、速度を高精度に推定算出しながら、視覚情報の生成等の各種の処理の更なる高速化が可能になる。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る移動情報算出装置について、図を参照して説明する。
図7は、第3の実施形態に係る移動情報算出装置の構成を示すブロック図である。
【0058】
図7に示すように、第3の実施形態に係る移動情報算出装置10Bは、第1の実施形態に係る移動情報算出装置10に対して、アンテナおよびGNSS受信部の個数が変更され、IMU50が省略された点、これらの変更および追加による演算部60Bの処理が変更された点で異なる。移動情報算出装置10Bの他の構成および処理は、移動情報算出装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0059】
図7に示すように、移動情報算出装置10Bは、アンテナ21、アンテナ22、アンテナ23、クロック生成部30、GNSS受信部41、GNSS受信部42、GNSS受信部43、および、演算部60Bを備える。
【0060】
アンテナ21の設置位置、アンテナ22の設置位置、および、アンテナ23の設置位置は、異なる。この際、アンテナ21、アンテナ22、および、アンテナ23は、全てのアンテナが同時に一直線上に並ばないように、設置されている。アンテナ21は、GNSS受信部41に接続し、アンテナ22は、GNSS受信部42に接続する。アンテナ23は、GNSS受信部43に接続する。
【0061】
クロック生成部30は、クロック信号を生成して、GNSS受信部41、GNSS受信部42、および、GNSS受信部43に出力する。
【0062】
GNSS受信部41は、アンテナ21で受信したGNSS信号を用いて、GNSS観測値を算出し、演算部60Bに出力する。GNSS受信部42は、アンテナ22で受信したGNSS信号を用いて、GNSS観測値を算出し、演算部60Bに出力する。GNSS受信部43は、アンテナ23で受信したGNSS信号を用いて、GNSS観測値を算出し、演算部60Bに出力する。
【0063】
演算部60Bには、GNSSデータ演算部611に、GNSS受信部41からのGNSS観測値、GNSS受信部42からのGNSS観測値、および、GNSS受信部43からのGNSS観測値が、入力される。
【0064】
演算部60Bは、例えば、拡張カルマンフィルタEKFによって実現される。演算部60Bは、GNSS速度を含んで、拡張カルマンフィルタの観測ベクトルを設定する。また、演算部60Bは、移動情報算出装置10Bとして出力する統合速度、クロック信号のクロックドリフト誤差を含んで、拡張カルマンフィルタの状態ベクトルを設定する。
【0065】
そして、このように、IMU50を用いない場合でも、移動情報算出装置10Bは、移動情報算出装置10と同様に、高精度に統合速度を推定算出できる。
【0066】
なお、上述の各実施形態の構成は、適宜組合せることが可能であり、組合せに応じた作用効果を得られる。
【符号の説明】
【0067】
10、10A、10B:移動情報算出装置
21、22、23、24:アンテナ
30:クロック生成部
41、42、43、44:GNSS受信部
50:IMU
60、60A、60B:演算部
62:統合演算部
70:カメラ
90:移動体
611:GNSSデータ演算部
612:IMUデータ演算部
613:視覚データ演算部
SAT1、SAT2、SAT3、SAT4:測位衛星
【用語】
【0068】
必ずしも全ての目的または効果・利点が、本明細書中に記載される任意の特定の実施形態に則って達成され得るわけではない。従って、例えば当業者であれば、特定の実施形態は、本明細書中で教示または示唆されるような他の目的または効果・利点を必ずしも達成することなく、本明細書中で教示されるような1つまたは複数の効果・利点を達成または最適化するように動作するように構成され得ることを想到するであろう。
【0069】
本明細書中に記載される全ての処理は、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサを含むコンピューティングシステムによって実行されるソフトウェアコードモジュールにより具現化され、完全に自動化され得る。コードモジュールは、任意のタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体または他のコンピュータ記憶装置に記憶することができる。一部または全ての方法は、専用のコンピュータハードウェアで具現化され得る。
【0070】
本明細書中に記載されるもの以外でも、多くの他の変形例があることは、本開示から明らかである。例えば、実施形態に応じて、本明細書中に記載されるアルゴリズムのいずれかの特定の動作、イベント、または機能は、異なるシーケンスで実行することができ、追加、併合、または完全に除外することができる (例えば、記述された全ての行為または事象がアルゴリズムの実行に必要というわけではない)。さらに、特定の実施形態では、動作またはイベントは、例えば、マルチスレッド処理、割り込み処理、または複数のプロセッサまたはプロセッサコアを介して、または他の並列アーキテクチャ上で、逐次ではなく、並列に実行することができる。さらに、異なるタスクまたはプロセスは、一緒に機能し得る異なるマシンおよび/またはコンピューティングシステムによっても実行され得る。
【0071】
本明細書中に開示された実施形態に関連して説明された様々な例示的論理ブロックおよびモジュールは、プロセッサなどのマシンによって実施または実行することができる。プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替的に、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシン、またはそれらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサは、コンピュータ実行可能命令を処理するように構成された電気回路を含むことができる。別の実施形態では、プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはコンピュータ実行可能命令を処理することなく論理演算を実行する他のプログラマブルデバイスを含む。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、デジタル信号プロセッサ(デジタル信号処理装置)とマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装することができる。本明細書中では、主にデジタル技術に関して説明するが、プロセッサは、主にアナログ素子を含むこともできる。例えば、本明細書中に記載される信号処理アルゴリズムの一部または全部は、アナログ回路またはアナログとデジタルの混合回路により実装することができる。コンピューティング環境は、マイクロプロセッサ、メインフレームコンピュータ、デジタル信号プロセッサ、ポータブルコンピューティングデバイス、デバイスコントローラ、または装置内の計算エンジンに基づくコンピュータシステムを含むが、これらに限定されない任意のタイプのコンピュータシステムを含むことができる。
【0072】
特に明記しない限り、「できる」「できた」「だろう」または「可能性がある」などの条件付き言語は、特定の実施形態が特定の特徴、要素および/またはステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝達するために一般に使用される文脈内での意味で理解される。従って、このような条件付き言語は、一般に、特徴、要素および/またはステップが1つ以上の実施形態に必要とされる任意の方法であること、または1つ以上の実施形態が、これらの特徴、要素および/またはステップが任意の特定の実施形態に含まれるか、または実行されるかどうかを決定するための論理を必然的に含むことを意味するという訳ではない。
【0073】
語句「X、Y、Zの少なくとも1つ」のような選言的言語は、特に別段の記載がない限り、項目、用語等が X, Y, Z、のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせであり得ることを示すために一般的に使用されている文脈で理解される(例: X、Y、Z)。従って、このような選言的言語は、一般的には、特定の実施形態がそれぞれ存在するXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、またはZの少なくとも1つ、の各々を必要とすることを意味するものではない。
【0074】
本明細書中に記載されかつ/または添付の図面に示されたフロー図における任意のプロセス記述、要素またはブロックは、プロセスにおける特定の論理機能または要素を実装するための1つ以上の実行可能命令を含む、潜在的にモジュール、セグメント、またはコードの一部を表すものとして理解されるべきである。代替の実施形態は、本明細書中に記載された実施形態の範囲内に含まれ、ここでは、要素または機能は、当業者に理解されるように、関連する機能性に応じて、実質的に同時にまたは逆の順序で、図示または説明されたものから削除、順不同で実行され得る。
【0075】
特に明示されていない限り、「一つ」のような数詞は、一般的に、1つ以上の記述された項目を含むと解釈されるべきである。従って、「~するように設定された一つのデバイス」などの語句は、1つ以上の列挙されたデバイスを含むことを意図している。このような1つまたは複数の列挙されたデバイスは、記載された引用を実行するように集合的に構成することもできる。例えば、「以下のA、BおよびCを実行するように構成されたプロセッサ」は、Aを実行するように構成された第1のプロセッサと、BおよびCを実行するように構成された第2のプロセッサとを含むことができる。加えて、導入された実施例の具体的な数の列挙が明示的に列挙されたとしても、当業者は、このような列挙が典型的には少なくとも列挙された数(例えば、他の修飾語を用いない「2つの列挙と」の単なる列挙は、通常、少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)を意味すると解釈されるべきである。
【0076】
一般に、本明細書中で使用される用語は、一般に、「非限定」用語(例えば、「~を含む」という用語は「それだけでなく、少なくとも~を含む」と解釈すべきであり、「~を持つ」という用語は「少なくとも~を持っている」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「以下を含むが、これらに限定されない。」などと解釈すべきである。) を意図していると、当業者には判断される。
【0077】
説明の目的のために、本明細書中で使用される「水平」という用語は、その方向に関係なく、説明されるシステムが使用される領域の床の平面または表面に平行な平面、または説明される方法が実施される平面として定義される。「床」という用語は、「地面」または「水面」という用語と置き換えることができる。「垂直/鉛直」という用語は、定義された水平線に垂直/鉛直な方向を指します。「上側」「下側」「下」「上」「側面」「より高く」「より低く」「上の方に」「~を越えて」「下の」などの用語は水平面に対して定義されている。
【0078】
本明細書中で使用される用語の「付着する」、「接続する」、「対になる」及び他の関連用語は、別段の注記がない限り、取り外し可能、移動可能、固定、調節可能、及び/または、取り外し可能な接続または連結を含むと解釈されるべきである。接続/連結は、直接接続及び/または説明した2つの構成要素間の中間構造を有する接続を含む。
【0079】
特に明示されていない限り、本明細書中で使用される、「およそ」、「約」、および「実質的に」のような用語が先行する数は、列挙された数を含み、また、さらに所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する、記載された量に近い量を表す。例えば、「およそ」、「約」及び「実質的に」とは、特に明示されていない限り、記載された数値の10%未満の値をいう。本明細書中で使用されているように、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語が先行して開示されている実施形態の特徴は、さらに所望の機能を実行するか、またはその特徴について所望の結果を達成するいくつかの可変性を有する特徴を表す。
【0080】
上述した実施形態には、多くの変形例および修正例を加えることができ、それらの要素は、他の許容可能な例の中にあるものとして理解されるべきである。そのような全ての修正および変形は、本開示の範囲内に含まれることを意図し、以下の請求の範囲によって保護される。