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特許7291800LEDフィラメント及びLEDフィラメント電球
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】LEDフィラメント及びLEDフィラメント電球
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20230608BHJP
   F21K 9/232 20160101ALI20230608BHJP
   F21V 9/38 20180101ALI20230608BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20230608BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20230608BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20230608BHJP
   C09K 11/56 20060101ALI20230608BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20230608BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20230608BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20230608BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230608BHJP
【FI】
H01L33/50
F21K9/232 100
F21V9/38
C09K11/61
C09K11/66
C09K11/64
C09K11/56
C09K11/88
C09K11/59
C09K11/08 J
F21Y115:10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021556904
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 US2020023110
(87)【国際公開番号】W WO2020190921
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】62/831,699
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/540,019
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/820,249
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506358764
【氏名又は名称】インテマティックス・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】ガーン ワーン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ガン ツァオ
(72)【発明者】
【氏名】リ イ-チュン
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/005597(WO,A1)
【文献】特開2016-076699(JP,A)
【文献】特開2011-129661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0372638(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDフィラメントであって、
少なくとも部分的に光透過性の基材と、
前記基材の前面にあるLEDチップのアレイと、
前記LEDチップのアレイに配置された、第1の狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料を含む第1の層と、
記第1の層に配置された、第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料を含む第2の層と、
前記基材の裏面を覆う第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料を含む第3の層と、
を含み、
前記基材の前記裏面上に、狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料を含まないか、又は前記基材の前記裏面上の赤色フォトルミネッセンス材料含有量の総量において最大で5重量%の第2の狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料を前記基材の前記裏面上に含む、LEDフィラメント。
【請求項2】
前記基材が、2%~70%、30%~50%、10%~30%、及び20%~100%のうちの少なくとも1つの透過率を有する、請求項1に記載のLEDフィラメント。
【請求項3】
前記第1の層が、前記LEDチップの少なくとも1つにおいて少なくとも主発光面に均一厚さの層を含む、又は、前記LEDチップの少なくとも1つにおいて各発光面に均一厚さの層を含む、請求項1に記載のLEDフィラメント。
【請求項4】
前記第1の層、前記第2の層、及び前記第3の層の少なくとも1つが、光散乱材料の粒子を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のLEDフィラメント。
【請求項5】
前記第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料が、第1の広帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含み、前記第1の狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料及び前記第1の広帯域赤色フォトルミネッセンス材料の総量に対する前記第1の広帯域赤色フォトルミネッセンス材料の含有量比が、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、及び、20重量%から60重量%未満までの少なくとも1つである、請求項1~のいずれか一項に記載のLEDフィラメント。
【請求項6】
前記第1及び第2の狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料のうちの少なくとも1つが、KSiF:Mn4+、KGeF:Mn4+、及びKTiF:Mn4+のうちの少なくとも1つである、請求項1~のいずれか一項に記載のLEDフィラメント。
【請求項7】
前記第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料、及び前記第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料のうちの少なくとも1つが、希土類活性化赤色フォトルミネッセンス材料を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のLEDフィラメント。
【請求項8】
前記希土類活性化赤色フォトルミネッセンス材料が、一般組成式AAlSiN:Eu2+(式中、Aが、Ca、Sr又はBaのうちの少なくとも1つである)を有する、窒化物系蛍光体材料と、一般組成式(Ca1-xSr)(Se1-y):Eu2+(式中、0≦x≦1かつ0<y≦1である)を有する、硫化物系蛍光体材料と、一般組成式(Ba1-xSrSiO:Eu2+(式中、0≦x≦1である)を有する、ケイ酸塩系蛍光体材料と、のうちの少なくとも1つである、請求項に記載のLEDフィラメント。
【請求項9】
前記少なくとも部分的に光透過性の基材が、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、サファイア、石英ガラス、ダイヤモンド、酸化ケイ素、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のLEDフィラメント。
【請求項10】
前記第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料が第1の広帯域の赤色フォトルミネッセンス材料を含み、前記第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料が第2の広帯域の赤色フォトルミネッセンス材料を含み、前記第1の広帯域の赤色フォトルミネッセンス材料のピーク発光波長は、前記第2の広帯域の赤色フォトルミネッセンス材料のピーク発光波長とは異なる、請求項1~のいずれか一項に記載のLEDフィラメント。
【請求項11】
前記第1の広帯域の赤色フォトルミネッセンス材料の前記ピーク発光波長は、
前記第2の広帯域の赤色フォトルミネッセンス材料、及び/又は、
前記第1の狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料
のピーク発光波長よりも短い、請求項10に記載のLEDフィラメント。
【請求項12】
前記第1の広帯域の赤色フォトルミネッセンス材料の前記ピーク発光波長が約615nmである、及び/又は、
前記第2の広帯域の赤色フォトルミネッセンス材料の前記ピーク発光波長が約630nmから約650nmまでである、
請求項11に記載のLEDフィラメント。
【請求項13】
前記LEDフィラメントが少なくとも150lm/Wの発光効率を有する、
請求項1~12のいずれか一項に記載のLEDフィラメント。
【請求項14】
前記第1の層、前記第2の層、及び前記第3の層の少なくとも1つと接触する光散乱材料の粒子の別個の層を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のLEDフィラメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年3月18に出願された「PHOTOLUMINESCENCE LAYER LIGHT EMITTING DEVICE」と題する米国仮出願第62/820,249号、2019年4月9日に出願された「LED-FILAMENTS AND LED-FILAMENT LAMPS」と題する米国仮出願第62/831,699号、及び2019年8月13日に出願された「LED-FILAMENTS AND LED-FILAMENT LAMPS」と題する米国実用特許出願第16/540,019号の優先権の利益を主張し、それらの各々の全体が参照として本明細書に組み込まれている。
【0002】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、LEDフィラメント及びLEDフィラメント電球を対象としている。より具体的には、本発明は、排他的ではないが、少なくとも80の平均演色評価数CRI Raを有する光を生成するLEDフィラメント及びLEDフィラメント電球に関する。
【背景技術】
【0003】
白色発光LED(「白色LED」)は、LEDによって発せられた青色光の一部分を吸収し、異なる色(波長)の光を再放射する1つ以上のフォトルミネッセンス材料(典型的には無機蛍光体物質)を含む。蛍光体物質によって吸収されないLEDによって生成された青色光の部分は、蛍光体によって放出された光と組み合わされることにより、色が白であるように目に見える光がもたらされる。それらの長い動作寿命(>50,000時間)及び高い発光効率(100lm/W以上)により、白色LEDは、従来の蛍光灯、コンパクト蛍光灯、及び白熱電球を代用するために急速に使用されている。
【0004】
近年、従来の白熱電球のフィラメントに視覚的外観が類似するLEDフィラメントを備えるLEDフィラメント電球が開発されている。通常、2インチ(52mm)長のLEDフィラメントは、光透過性ガラス基材の1つの表面上に装着された低出力LEDチップのアレイ(複数)を有するCOG(Chip-On-Glass)デバイスを備える。光透過性基材の前面及び背面は、シリコーンなどの蛍光体を含浸させた封止剤でコーティングされている。通常、蛍光体は、暖白色光を生成するための緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体との混合物を含み、フィラメントによって生成された光の平均演色評価数(CRI Ra)を増加させる。フィラメントが前方向及び後方向に同じ色の光を生成することを確実にするために、同じ蛍光体を含浸させた封止剤が基材の両面に塗布されている。
【0005】
例えば、KSiF:Mn4+(KSF)、KTiF:Mn4+(KTF)、及びKGeF:Mn4+(KGF)などのマンガン活性化フッ化物蛍光体のような狭帯域赤色蛍光体は、非常に狭い赤色スペクトル(主要輝線スペクトルに対して10nm未満の全幅半値)を有し、これが、高輝度(CASN-CaAlSiN:Euなどのユーロピウム活性化赤色窒化物蛍光体材料のような広帯域赤色蛍光体よりも約25%明るい)及び一般的な照明用途における高CRI Raを得るのに非常に望ましいものにしている。マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料が非常に望ましいが、LEDフィラメントにおける使用で課題になる欠点がある。例えば、マンガン活性化フッ化物蛍光体の吸収能力は、現在LEDフィラメントで使用されているユーロピウム活性化赤色窒化物蛍光体材料の吸収能力よりも実質的に低い(通常は約10分の1)。したがって、同じ目標色点を達成するために、マンガン活性化フッ化物蛍光体の使用量は、通常は、対応するユーロピウム活性化赤色窒化物蛍光体の使用量よりも5~20倍大きくなり得る。蛍光体の使用量の増加は、マンガン活性化フッ化物蛍光体が、ユーロピウム活性化赤色窒化物蛍光体よりも著しく高価(少なくとも5倍以上高価)であるため、製造コストを大幅に増加させる。更に、パッケージ化されたLEDと比較すると、フィラメントの各側に等量の蛍光体が必要とされるため、このことが、マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス物質の使用量を2倍にする。より多い使用量及びより高いコストの結果として、狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色蛍光体の使用は、LEDフィラメントにとって極めて高価である。
【0006】
本発明の実施形態は、LEDフィラメント及びLEDフィラメント電球に関する改善に関し、特に、限定するものではないが、マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料の青色吸収効率を改善する革新的な蛍光体包装構造体を通して、輝度及びCRI RAを損なうことなく、LEDフィラメントの製造コストを低減することに関する。
【発明の概要】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態は、LEDフィラメントに関し、これらは、大部分(例えば、合計の少なくとも70%)の光をその上にLEDチップが装着されている基材の前面から離れる前方方向に生成し、少ない割合の光を基材の裏面から離れる後方方向に生成するように構成されている。より具体的には、基材及びLEDチップは、基材の前面側(から放射する)上の青色LEDチップによって生成された全青色励起光の割合が、反対側の裏面側(から放射する)よりも大幅に大きい(例えば、合計の少なくとも70%)ように構成されている。このような構成が、高い輝度の狭帯域赤色蛍光体を基材の前面上でのみ使用し、マンガン活性化フッ化物蛍光体を除く安価な赤色蛍光体(広帯域赤色フォトルミネッセンス材料とも称される「非マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料」)を基材の裏面で使用することを可能にし、同時に、依然として狭帯域マンガン活性化フッ化物を両方の面に使用するという優れた輝度効果の実質的にほとんどを提供するが、半分の量だけの(50重量%)の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の量を使用することを可能にしている。このことは、前方方向と後方方向に均一な色の放出を確実にするために基材の前面と裏面に同じフォトルミネッセンス材料を使用する既知のLEDフィラメントと対比されるべきである。本発明によれば、LEDフィラメントは、例えば、(i)部分的に光透過性な基材、(ii)底面(ベース)から基材に向かって後方/下向きの方向よりも、上面から前方/上向きの方向により多くの光を生成するLEDチップ、(iii)1つ以上のLEDチップのベース上に反射体又は部分的反射体を提供することと、又はこれらの組み合わせを用いることで上のように構成され得る。本発明は、少なくとも部分的に光透過性の基材を使用するLEDフィラメントにおいて特に有用性を見出している。
【0008】
いくつかの実施形態では、LEDフィラメントは、LEDチップのアレイを基材の前面に有する部分透光性基材と、基材の前面及びLEDチップのアレイ上に配置され、かつそれを覆う、狭帯域の赤色フォトルミネッセンス材料及び第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料と、基材の反対側の裏面を覆う第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料と、を含み、裏面には、狭帯域フォトルミネッセンス材料が少量(5重量%未満)しか存在しないか、又はまったく存在しない。狭帯域及び広帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、典型的には、異なる結晶構造を有し、すなわち、前面を覆う赤色フォトルミネッセンス材料は、裏面を覆う赤色フォトルミネッセンス材料の結晶構造とは異なる結晶構造を有する。一実施形態では、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料(例えば、KSF)を含み、広帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、希土類活性化赤色フォトルミネッセンス材料、例えば、CASNを含む。本明細書において、「広帯域赤色フォトルミネッセンス材料」及び「非マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料」は、結晶構造がマンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料の結晶構造でない赤色フォトルミネッセンス材料を意味し、例えば、赤色発光窒化物系蛍光体、グループIIA/IIBのセレン化物硫化物、又はケイ酸塩系フォトルミネッセンス(蛍光体)材料を含む、例えば、希土類活性化赤色フォトルミネッセンス材料が挙げられる。
【0009】
一実施形態によれば、LEDフィラメントは、部分的に光透過性の基材と、基材の前面に装着されたLEDチップのアレイと、第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料と、LEDチップのアレイ及び基材の前面を覆う第1の狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料と、基材の裏面を覆う第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料と、を含む。本発明者らは、基材の前面のみに狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンスを提供し、より安価な第2の広帯域フォトルミネッセンス材料を基材の裏面上に提供することによって、実質的に同じ輝度増加効果を提供するが、マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料の量を半分のみ(重量で50%)使用することを発見した。実施形態において、LEDフィラメントは、基材の裏面上に、狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料を含まない(すなわち0重量%)か、又は基材の裏面上の赤色フォトルミネッセンス材料含有量の総量において最大で5重量%の第2の狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料を基材の裏面上に含むことができる。
【0010】
実施形態において、基材は、2%~70%、30%~50%、及び10%~30%のうちの少なくとも1つの透過率を有する。実施形態において、LEDチップによって生成された青色光の総量の少なくとも70%、少なくとも80%、及び少なくとも90%のうちの少なくとも1つが基材の前面側にある。本発明の実施形態では、基材は、部分的にのみ光透過性であり、及び/又はLEDチップは、それらのベースを覆う反射体を有するため、青色LEDチップによって生成された全青色励起光のより大きな割合が、基材の裏面側よりも基材の前面側(から放出する)にある。このことは、基材が、青色励起光の一定割合のみを通過させ、残りの部分を反射させることを可能にし、結果として、基材の前面側の青色励起光の割合が大きくなることから、基材がLEDチップが前方方向(すなわち、基材の前面から離れて)及び後方方向に(すなわち、基材の前面に向けて)に等しい量の青色励起光を生成するときにも当てはまることが理解されよう。基材の対向する面上の全青色励起光の割合の差によって、基材の裏面上において、より安価な広帯域赤色フォトルミネッセンス材料(例えば、CASN)を使用することを可能にしており、それによって、輝度を増大させつつコストを大幅に低減することを可能にしている。
【0011】
LEDフィラメントは、単層構造を含むことができ、単層構造は、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と、第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料との混合物を含む層を含んでいる。狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用量を更に低減するために、層は、例えば、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、及びこれらの組み合わせなどの光散乱材料の粒子を更に含むことができる。単一層構造は、異なるフォトルミネッセンス材料が同じ層に含まれることから、より堅牢であり得、また製造の容易さを向上させることができる。このことは、製造コスト及び製造時間を低減することができ、また、単層構造の形成に関与する工程が少ないため、製造中のエラーを根絶するのに役立ち得る。
【0012】
代替的に、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の青色吸収効率を更に改善するために、LEDフィラメントは、二層構造を含むことができ、そこでは狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料が、広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料とは別個の層に位置し、この別個の層は、例えば、実質的にコンフォーマルコーティング層の形態でLEDチップの上部に配置されている。このような実施形態では、LEDフィラメントは、LEDチップのアレイに配置された第1の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材を含む第1の層と、第1の層に配置された第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料を含む第2の層と、を含むことができる。実施形態において、第1の層は、少なくともLEDチップのうちの少なくとも1つの主発光面上に均一な厚さの層(フィルム)を含むことができ、つまり、LEDフィラメントは、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含有するCSP(チップスケールパッケージ)LEDを含む。第1の層は、コンフォーマルコーティング層の形態のLEDチップの全ての発光面上に均一な厚さ層を含むことができる。狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用量を更に低減するために、第1の層は、例えば、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、及びこれらの組み合わせなどの光散乱材料の粒子を更に含むことができる。本発明者らは、単層構造を含むLEDフィラメントと比較して、二層構造は、マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料の使用において、重量の低減で最大80%の大幅な更なる低減を提供することができることを発見した。マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料を前面と裏面の両方に有する既知のLEDフィラメントと比較して、二層構造は、マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料の使用量で90%の重量低減を提供することができる。LEDチップのアレイ上に配置されたそれぞれの層内に狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を提供することによって、LEDチップに直近に近接した狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の濃度を増加させ、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の青色吸収効率を改善し、それによって狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用量を低減する。
【0013】
第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料が、第1の広帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含む実施形態では、第1の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と第1の広帯域赤色フォトルミネッセンス材料の総量に対する第1の広帯域赤色フォトルミネッセンス材料の含有量比は、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、及び約20重量%~60重量%未満の範囲内のうちの少なくとも1つである。
【0014】
マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料などの狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、630nm~633nmの範囲のピーク発光波長を有することができ、KSiF:Mn4+(KSF)、KGeF:Mn4+(KGF)、及びKTiF:Mn4+(KTF)のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0015】
第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料、及び第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料のうちの少なくとも1つが、希土類活性化赤色フォトルミネッセンス材料を含むことができる。希土類活性化赤色フォトルミネッセンス材料は、620nm~650nmの範囲のピーク発光波長を有することができ、一般組成式AAlSiN:Eu2+(式中、Aが、Ca、Sr又はBaのうちの少なくとも1つである)を有する、窒化物系蛍光体材料と、一般組成式(Ca1-xSr)(Se1-y):Eu2+(式中、0≦x≦1かつ0<y≦1である)を有する、硫化物系蛍光体材料と、一般組成式(Ba1-xSrSiO:Eu2+(式中、0≦x≦1である)を有する、ケイ酸塩系蛍光体材料と、のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0016】
実施形態において、第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料は、第1の広帯域緑色フォトルミネッセンス材料を含み、第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料は、第2の広帯域緑色フォトルミネッセンス材料を含む。第1の広帯域緑色フォトルミネッセンス材料は、530nm~550nmの範囲のピーク発光波長を有することができ、一方で、第2の広帯域緑色フォトルミネッセンス材料は、520nm~540nmの範囲のピーク発光波長を有することができる。第1及び/又は第2の広帯域緑色フォトルミネッセンス材料は、一般組成式(Lu1-x(Al1-yGa12:Ce(式中、0≦x≦1かつ0≦y≦1である)を有する、セリウム活性ガーネット蛍光体を含むことができる。
【0017】
部分的光透過性基材は、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、サファイア、石英ガラス、ダイヤモンド、酸化ケイ素、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料を含み得る。
【0018】
LEDフィラメントは、2700K~6500Kの相関色温度を有する白色光を生成するように動作可能であることができる。LEDフィラメントは、少なくとも80の、任意選択で少なくとも90の平均演色評価数CRI Raを有する白色光を生成するように動作可能であり得る。
【0019】
更なる実施形態によれば、LEDフィラメントは、部分的光透過性基材と、基材の前面に装着されたLEDチップのアレイと、LEDチップのアレイ及び基材の前面を覆う、広帯域緑色フォトルミネッセンス材料、広帯域赤色フォトルミネッセンス材料、及び狭帯域マンガン活性フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料と、を含み、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と広帯域赤色フォトルミネッセンス材料の総量に対する広帯域赤色フォトルミネッセンス材料の含有量比は、少なくとも20重量%である。実施形態では、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と広帯域赤色フォトルミネッセンス材料の総量に対する広帯域赤色フォトルミネッセンス材料の含有量比は、少なくとも30重量%、及び少なくとも40重量%のうちの少なくとも1つである。
【0020】
実施形態では、LEDフィラメントは、LEDチップのアレイ上に配置された狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を有する第1の層と、第1の層上に配置された広帯域緑色フォトルミネッセンス材料を有する第2の層と、を含むことができ、広帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、第1の層及び第2の層のうちの少なくとも1つにある。
【0021】
更なる実施形態では、LEDフィラメントは、基材の前面及び裏面上に二層構造である、いわゆる「両面二層」構造を含むことができる。
【0022】
一実施形態によれば、LEDフィラメントは、部分的な光透過性基材と、基材の前面にあるLEDチップのアレイと、LEDチップのアレイ上に配置された第1の狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料を含む第1のフォトルミネッセンス層と、第1のフォトルミネッセンス層上に配置された第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料を含む第2のフォトルミネッセンス層と、を備える。
【0023】
実施形態では、LEDフィラメントは、基材の裏面を覆う第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料を含み得る。他の実施形態では、LEDフィラメントは、基材の裏面上に配置された第2の狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料を含む第3のフォトルミネッセンス層と、第3のフォトルミネッセンス層上に配置された第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料を含む第4のフォトルミネッセンス層と、含み得る。実施形態において、第1の層は、少なくともLEDチップのうちの少なくとも1つの主発光面上に均一な厚さの層(フィルム)を含むことができ、つまり、LEDフィラメントは、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含有するCSP(チップスケールパッケージ)LEDを含み得る。第1の層は、コンフォーマルコーティング層の形態のLEDチップの全ての発光面上に均一な厚さ層を含むことができる。狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用量を低減するために、第1のフォトルミネッセンス層及び第3のフォトルミネッセンス層のうちの少なくとも1つは、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される光散乱材料の粒子を更に含む。本発明者らは、このような両面二層構造は、狭帯域及び広帯域赤色フォトルミネッセンス材料を基材の前面及び裏面に含む既知のLEDフィラメントと比較して、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用量を、大幅に低減(100%の透過率を有する基材において重量で80%程度)することができることを発見した。このような実施形態では、基材は、20%~100%の範囲の透過率を有し得る。
【0024】
更なる実施形態によれば、LEDフィラメントは、部分的な光透過性基材と、基材の前面にあるLEDチップのアレイと、LEDチップのアレイ及び基材の前面を覆う第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料及び狭帯域マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料と、基材の裏面を覆う第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料と、を含み、LEDチップによって生成された全青色光の少なくとも70%が基材の前面側にある。
【0025】
本発明の一態様によれば、LEDフィラメント電球は、光透過性エンベロープと、本明細書に記載される少なくとも1つのLEDフィラメントと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明のこれらの、及び他の態様及び特徴は、添付の図面と併せて本発明の特定の実施形態の以下の説明を考察することで、当業者には明らかとなるであろう。
【0027】
図1A】本発明の実施形態による4つのLEDフィラメントAシリーズ(A19)電球の部分断面A-A側の側面図及び平面図をそれぞれ例解する。
図1B】本発明の実施形態による4つのLEDフィラメントAシリーズ(A19)電球の部分断面A-A側の側面図及び平面図をそれぞれ例解する。
図2A図1A及び図1Bの電球で使用するための本発明の実施形態による、単層LEDフィラメントの断面B-B側の概略図、部分切欠き平面、及び断面C-C端面の概略図をそれぞれ例解する。
図2B図1A及び図1Bの電球で使用するための本発明の実施形態による、単層LEDフィラメントの断面B-B側の概略図、部分切欠き平面、及び断面C-C端面の概略図をそれぞれ例解する。
図2C図1A及び図1Bの電球で使用するための本発明の実施形態による、単層LEDフィラメントの断面B-B側の概略図、部分切欠き平面、及び断面C-C端面の概略図をそれぞれ例解する。
図3A】それぞれ、前方向及び後方向の放出特性を示すLEDチップの概略図と、基材の前面側及び裏面側に存在する青色励起光の分布を示すLEDチップ及び基材の概略分解図である。
図3B】それぞれ、前方向及び後方向の放出特性を示すLEDチップの概略図と、基材の前面側及び裏面側に存在する青色励起光の分布を示すLEDチップ及び基材の概略分解図である。
図4A】本発明の実施形態による二層LEDフィラメントの概略断面端面図である。
図4B】本発明の実施形態による二層LEDフィラメントの概略断面端面図である。
図5A】本発明の実施形態による両面二層LEDフィラメントの概略断面端面図である。
図5B】本発明の実施形態による両面二層LEDフィラメントの概略断面端面図である。
図6】本発明の実施形態による、LEDフィラメントの概略断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
当業者が本発明を実施することを可能にするように、本発明の実施形態が、本発明の例解的な実施例として提供される図面を参照して、ここで詳細に説明される。特に、以下の図面及び実施例は、本発明の範囲を単一の実施形態に限定することを意図するものではなく、説明又は例解される要素の一部又は全ての交換によって他の実施形態が可能である。更に、本発明のある要素が、既知の構成要素を使用して部分的に又は完全に実装され得る場合、本発明の理解に必要であるこのような既知の構成要素のそれらの部分のみが説明され、このような既知の構成要素の他の部分の詳細な説明は、本発明を曖昧にしないように省略される。本明細書において、単数形の構成要素を示す実施形態は限定的であると見なされるべきではなく、むしろ、本発明は、複数の同じ構成要素を含む他の実施形態を包含することを意図しており、その逆もまた同様である。更に、出願人は、そのように明示的に記載されていない限り、本明細書又は特許請求の範囲のいずれの用語についても意図しない。更に、本発明は、例解によって本明細書において言及される既知の構成要素に対する、現在及び将来の既知の等価物を包含する。図1A及び図1Bは、本発明の実施形態に従って形成された、LEDフィラメントAシリーズ電球(バルブ)100のA-Aを通る部分断面側面図、及び部分切断面図をそれぞれ例解する。LEDフィラメント電球(バルブ)100は、伝統的なA19白熱電球のためのエネルギー効率的な代替となることが意図されており、2700KのCCT(相関色温度)及び少なくとも80の一般的な演色評価数CRI Raを有する550lmの光を生成するように構成されることができる。LEDフィラメント電球は、定格が名目上4Wに設定されている。知られているように、Aシリーズ電球は最も一般的な電球タイプであり、A19電球は、その最も広い点で幅が2 3/8インチ(19/8インチ)で、長さが約4 3/8インチである。
【0029】
LEDフィラメント電球100は、コネクタベース102と、光透過性エンベロープ104と、LEDフィラメント支持体106と、4つのLEDフィラメント108a、108b、108c、108dと、を備える。
【0030】
いくつかの実施形態では、LEDフィラメント電球100は、北米で使用される110V(r.m.s.)交流(60Hz)電源で動作するように構成され得る。例えば、かつ例解されるように、LEDフィラメント電球100は、E26(φ26mm)コネクタベース(エジソンねじ式電球ベース)102を備えることができ、標準電気照明用スクリューソケットを使用して、主電源に電球を直接接続することを可能にしている。意図される用途に応じて、例えば、英国、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、及び他の様々な英連邦地域で一般的に使用されるようなダブルコンタクトバヨネットコネクタ(すなわち、B22d若しくはBC)、又はE27(φ27mm)ねじベース(エジソンねじ電球ベース)などの他のコネクタベースが使用され得ることが理解されるであろう。コネクタベース102は、LEDフィラメント電球を動作させるための整流器又は他の駆動回路(図示せず)を収容することができる。
【0031】
光透過性エンベロープ104は、コネクタ102に取り付けられている。光透過性エンベロープ104及びLEDフィラメント支持体106は、ガラスを含むことができる。エンベロープ104は、気密封止された容積110を画定し、その中にLEDフィラメント108a~108dが位置している。エンベローブ104は、例えば酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化ケイ素(SiO)、又は酸化アルミニウム(Al)の粒子などの光拡散性(散乱)材料の層を追加的に組み込むか、又は含むことができる。
【0032】
線形(ストリップ状又は細長い)形状であるLEDフィラメント108a~108dは、それらの伸長方向が、電球100の軸112に対して概ね平行であるように配向されている。本実施形態では、LEDフィラメント108a~108dは、ガラスフィラメント支持体106の周りで均等に円周方向に間隔を空けている(図1B)が、他の実施形態では、LEDフィラメントは、ガラス支持体の周りで均等に間隔を空けられなくてもよいことが理解されるであろう。コネクタベース102に対して遠位にある各LEDフィラメント108a~108dの第1の端部上の第1の電気接点114a~114dは、LEDフィラメント支持体106の軸をコネクタベース102まで通過する第1の導電性ワイヤ116に電気的、かつ機械的に接続されている。コネクタベース102の近位にある各LEDフィラメント108a~108dの第2の端部上の第2の電気接点118a~118dは、LEDフィラメント支持体106のベース部分122を通過してコネクタベース102に達する第2の導電性ワイヤ120に電気的及び機械的に接続されている。例解されるように、LEDフィラメント108a~108dは、電気的に並列に接続することができる。
【0033】
ここで、本発明の実施形態によるLEDフィラメントを、それぞれ、単層LEDフィラメント208の線B-Bを通る断面側面図、部分切欠き平面、及び断面C-Cの端面図を示す図2A図2B、及び図2Cを参照して説明する。本明細書全体を通して、図面番号が先行する同様の参照番号が、同様の部品を示すために使用されている。LEDフィラメント208は、前(第1)面228に直接装着された青色発光(465nm)未パッケージ化LEDチップ(ダイ)226のアレイ(複数)を有する部分的光透過性基材224を備える。通常、各LEDフィラメントは、約0.7~1Wの総公称電力を有する。
【0034】
基材224は、導電性ワイヤ116、120(図1A)のうちの対応する1つに電気的に接続するために、基材224の第1及び第2の端部において、前面228の上にそれぞれの電気接点214、218を更に備えることができ、LEDフィラメントを動作させるための電力を提供する。電気接点214、218は、銅、銀、若しくは他の金属、又は、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明な電気導体を含み得る。実施形態では、例解される基材224は、平面状であり、LEDチップ226が直線状アレイ(ストリング)として構成され、基材の長さ(伸長方向)に沿って等しく離間された細長い形状(ストリップ)を有して示されている。図2A及び図2Bに示されるように、LEDチップ226は、ストリングの隣接するLEDチップの間のボンドワイヤ230、及び基材の遠位端にあるLEDチップとそれらの対応する電気接点214、218との間のワイヤボンド232によって、直列で電気的に接続されることができる。
【0035】
LEDフィラメント208がエネルギー効率性バルブの一部として使用される場合、デバイスの外観及び発光特性が白熱電球の従来のフィラメントとより近く類似しているため、細長い構成が、通常は好ましい。LEDチップ226は、パッケージ化されておらず、基材224上に直接装着されたLEDチップの底面に面するそれらの上部面及び下部(ベース)面の両方からの光を発することに留意されたい。
【0036】
本発明によれば、光透過性基材224は、部分的に光透過性であり、好ましくは2%~70%(反射率98%~30%)の可視光に対する透過率を有する任意の材料を含むことができる。基材は、ガラス、セラミック材料、又はポリプロピレン、シリコーン、又はアクリルなどのプラスチック材料を含み得る。典型的には、実施形態では、光透過性基材は、約40%の透過率を有するアルミナからなる多孔質セラミック基材を含む。LEDチップ226によって生成される熱の放散を補助するために、基材224は、光透過性であることができるだけでなく、LEDチップによって発生する熱の放散を補助するために熱伝導性であることもできる。好適な光透過性の熱伝導性材料の例としては、酸化マグネシウム、サファイア、酸化アルミニウム、石英ガラス、及びダイヤモンドが挙げられる。基材を薄くすることにより、熱伝導性基材の透過率を高めることができる。機械的強度を高めるために、基材は、ガラス又はプラスチック材料などの光透過性支持体上に装着された熱伝導層を有する積層構造を含むことができる。熱放散を更に補助するために、ガラスエンベローブ104(図1A)内の容積110(図1A)は、好ましくはヘリウム、水素、又はこれらの混合物などの熱伝導性ガスで充填されている。
【0037】
本発明の実施形態によれば、LEDフィラメント208は、基材224のLEDチップ226及び前面228に塗布され、それを覆う第1のフォトルミネッセンス波長変換材料236と、基材224の第2の裏(対向)面234に塗布され、それを覆う第2の異なるフォトルミネッセンス波長変換材料238と、を更に含む。第1のフォトルミネッセンス波長変換材料236は、LEDチップ226に直接塗布され、封止層の形態で基材の前面を覆う。
【0038】
本発明によれば、第1のフォトルミネッセンス波長変換材料236は、520nm~560nm(好ましくは540nm~545nm)の範囲のピーク発光波長を有する第1の広帯域緑色フォトルミネッセンス材料と、620nm~650nmの範囲のピーク発光波長を有する第1の広帯域赤色フォトルミネッセンス材料と、通常はマンガン活性化フッ化物蛍光体である狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と、の混合物を含む。まとめて、第1の広帯域緑色及び赤色のフォトルミネッセンス材料は、第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料と称される。本実施形態では、狭帯域赤色及び広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料の両方が、単一層内で混合物として提供されるため、LEDフィラメントは、「単層」構造化フィラメントと称される。
【0039】
第2のフォトルミネッセンス波長変換材料238は、520nm~560nm(好ましくは520nm~540nm)の範囲のピーク発光波長を有する第2の広帯域緑色フォトルミネッセンス材料と、620nm~650nmの範囲のピーク発光波長を有する第2の広帯域赤色(非マンガン活性化フッ化物)フォトルミネッセンス材料と、のみの混合物を含む。まとめて、第2の広帯域の緑色及び赤色のフォトルミネッセンス材料は、第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料と称される。
【0040】
対照的に、既知のLEDフィラメントでは、同じフォトルミネッセンス材料組成物(狭帯域及び広帯域赤色フォトルミネッセンス材料)が、フィラメントの前面及び裏面の上に提供されている。好適な広帯域緑色フォトルミネッセンス材料、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料及び広帯域赤色フォトルミネッセンス材料を以下に説明する。
【0041】
図2A及び図2Bに例解される実施形態では、第1のフォトルミネッセンス変換材料236及び第2のフォトルミネッセンス変換材料238は、広帯域の緑色及び赤色のフォトルミネッセンス材料の混合物を含む単一層として構成される。
【0042】
動作中、LEDチップ210によって生成された青色励起光は、緑色発光及び赤色発光のフォトルミネッセンス材料を励起して緑色及び赤色の光を生成する。白色に見えるLEDフィラメント208の発光生成物は、組み合わされたフォトルミネッセンス光及び未変換の青色LED光を含む。フォトルミネッセンス光生成プロセスは等方性であることから、蛍光体光は全方向で等しく生成され、基材224に向かう方向に放射された光は、基材を通過してLEDフィラメント208の後部から放出され得る。部分的に光透過性の基材224を使用することにより、LEDフィラメントが、光が基材の前面228及び裏面234の両方から離れる方向で放出される発光特性を達成することを可能にすることが理解されるであろう。更に、光散乱材料の粒子が蛍光体材料と組み合わせられることができ、所与の発光製品の色を生成するために必要とされる蛍光体の量を低減することができる。
【0043】
図3Aは、前方/上方340及び後方/下方342の方向でのその発光特性を示すLEDチップ326の概略図であり、図3Bは、基材324の対向する側328及び334上での青色励起光の分布を示すLEDチップ326及び部分透光性基材324の概略分解図である。
【0044】
図3Aを参照し、青色LEDチップ326が、その上面344及びそのベース346から等量の青色光を放射すると仮定すると、LEDチップによって生成された全青色光の50%は、基材の前面から離れる前方方向340に放射され、LEDチップによって生成された全青色光の50%が基材の前面に向かって後方方向342に放射される。図3Bを参照し、部分透光性基材324が40%の透過率及び60%の反射率を有すると仮定すると、青色光342の40%のみが(すなわち、青色LEDチップ346によって生成された全青色光の20%)が基材324を通過し、基材324の裏面側334から放射する346。青色光342の残りの60%(すなわち、青色LEDチップによって生成された全青色光の30%)は、基材324によって前方方向に反射され基材の前面側328から放射する。正味効果は、青色LEDチップ348によって生成された全青色光の約80%が、基材の前面側(から放射し)にあり、青色LEDチップ348によって生成された全青色光の20%のみが、基材の裏面側(から放射し)にあることが理解されるであろう。明らかに、フォトルミネッセンス材料が存在する場合、これらの図は、フォトルミネッセンス材料による青色光の散乱により変化し得る。上述したように、基材の前面側に存在する青色LEDチップによって生成される青色励起光の合計の割合を反対側の裏面側よりもかなり大きく(典型的には少なくとも70%)なるように構成することにより、より高い輝度のマンガン活性化フッ化物蛍光体を基材の前面側のみに使用し、より安価な非マンガン活性化フッ化物蛍光体を基材の裏面上に使用することを可能にし、同時に、依然として輝度効果の増加の実質的なほとんどをもたらすが、マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料の量の半分のみ(50重量%)を使用することを可能にしている。表1は、基材の前面側及び裏面側にある全青色励起光の割合及びLEDフィラメントの相対的全体輝度に対する、基材透過率/反射率の影響を示している。データは、各青色LEDチップが前方方向及び後方方向に等しい量の青色励起光を生成すると仮定している。全体的な相対輝度は、基材の前面及び裏面上にCASNを有する既知のLEDフィラメントに対して相対的である。比較のために、基材の両面にKSFを有するLEDフィラメントの相対輝度は120%であるが、本発明のLEDフィラメントよりも2倍のKSFの量を使用することが理解されるであろう。
【0045】
【表1】
【0046】
図4A及び図4Bは、本発明の実施形態による二層LEDフィラメント408の概略断面端面図である。これらの実施形態では、LEDチップを覆う第1のフォトルミネッセンス波長変換材料436は、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料、及び第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料をそれぞれ含む第1のフォトルミネッセンス層450及び第2のフォトルミネッセンス層452を含む「二層」構造を備える。図4A及び図4Bに例解されるように、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を収容する第1のフォトルミネッセンス層450は、LEDチップ426上に配置されて、それを覆い、第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料(すなわち、第1の広帯域緑色、及び第1の広帯域赤色フォトルミネッセンス材料)を収容する第2のフォトルミネッセンス層452は、第1のフォトルミネッセンス層450上に配置され、それを覆う(すなわち、第1のフォトルミネッセンス層450は、第2のフォトルミネッセンス層よりもLEDチップに近接している)。
【0047】
図4Aの二層LEDフィラメントは、第1のフォトルミネッセンス層450をLEDチップ426上に最初に堆積し、次いで、第2のフォトルミネッセンス層452を第1のフォトルミネッセンス層450の上に堆積することによって製造され得る。例解されるように、第1のフォトルミネッセンス層450は、概して半円形のプロファイルの断面を有することができる。
【0048】
図4Bの二層LEDフィラメントでは、第1のフォトルミネッセンス層450は、個別のLEDチップの発光面に適用されている均一な厚さのコーティング層を含む。発光面上に発光体の均一な厚さ(フィルム)を有するLEDチップは、多くの場合、CSP(チップスケールパッケージ)LEDと称される。図4Bに例解されるように、LEDチップ426は、上面発光面及び4つの側面発光面に適用された均一な厚さの層を有し、コンフォーマルコーティングの形態にある。実施形態(図示せず)において、LEDチップ426は、主(上面)発光面のみに適用される均一な厚さの第1のフォトルミネッセンス層450を有する。二層LEDフィラメントは、最初に第1のフォトルミネッセンス層450を少なくとも個別のLEDチップ426の主発光面に適用することによって、例えば、狭帯域の赤色フォトルミネッセンス材料を含む均一な厚さ(典型的には20μm~300μm)のフォトルミネッセンスフィルムを使用して製造することができる。次に、LEDチップ426が基材424の上に装着され、第2のフォトルミネッセンス層452が、基材及びLEDチップを覆うように堆積される。図4Aの二層LEDフィラメントと比較して、全ての狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料をLEDチップに可能な限り近くに集中させ、層内の物理的位置に関わらず、全ての狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料が実質的に同じ励起光フォトン密度への曝露を受けることを確実にするので、均一な厚さのコーティング層が好ましくなり得る。このような配設は、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用量の低減を最大化することができる。
【0049】
本発明者らは、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料をそれぞれの個別の層450(二層構造)として提供することにより、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用量を狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料及び広帯域緑色フォトルミネッセンス材料が単層内に混合物を構成するLEDフィラメント(図2C)と比較して、更に大幅に(更に最大80重量%の低減)低減することを発見した。更に、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料が基材の両面に設けられている既知のLEDフィラメントと比較して、二層構造化LEDフィラメントは、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用量を最大で90重量%低減する。
【0050】
この使用量の低減の理由は、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料との混合物を含む単一のフォトルミネッセンス層をフォトルミネッセンス材料236が含むLEDフィラメント(図2C)において、フォトルミネッセンス材料が青色励起光に等しく露光されているからであると考えられる。狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料、特に、マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料は、広帯域緑色フォトルミネッセンス材料よりもはるかに低い青色光吸収能力を有するため、十分な青色光を必要とされる赤色発光に変換するために大量の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料が必要である。対照的に、図4A及び図4BのLEDフィラメント408では、その別個のそれぞれの層450内の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、青色励起光に個別に曝され、そのため、より多くの青色励起光が狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料によって吸収されることができ、残りの青色励起光は、広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料を収容する第2のフォトルミネッセンス層452に透過することができる。有利なことに、この構造では、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料と競合することなく、青色励起光をより効果的に赤色の発光に変換することができる。したがって、目標色点を達成するために必要とされる狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の量(使用量)は、フォトルミネッセンス材料の混合物を含む単層を含むLEDフィラメントと比較して低減することができる。
【0051】
図5A図5Bは、本発明の実施形態による両面二層LEDフィラメントの概略断面端面図である。これらの実施形態では、基材の前面及び裏面を覆う第1のフォトルミネッセンス波長変換材料536及び第2のフォトルミネッセンス波長変換材料538の両方は、「二層」構造を含む。基材の前面上で、LEDチップを覆う第1のフォトルミネッセンス材料536は、第1の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料、及び第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料をそれぞれ含有する第1のフォトルミネッセンス層550及び第2のフォトルミネッセンス層552を含む。例解されるように、第1の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を収容する第1のフォトルミネッセンス層550は、LEDチップ526上に配置されて、それを覆い、第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料を収容する第2のフォトルミネッセンス層552は、第1のフォトルミネッセンス層550上に配置され、それを覆う(すなわち、第1のフォトルミネッセンス層550は、第2のフォトルミネッセンス層よりもLEDチップに近接している)。基材の裏面上で、基材524の裏面を覆う第2のフォトルミネッセンス材料538は、第2の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料、及び第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料をそれぞれ含有する第3のフォトルミネッセンス層554及び第4のフォトルミネッセンス層556を含む。例解されるように、第2の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を収容する第3のフォトルミネッセンス層554は、LEDチップ526に対応する基材の一部の上に配置されて、それを覆い、第2の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料を収容する第4のフォトルミネッセンス層556は、第3のフォトルミネッセンス層554上に配置され、それを覆う(すなわち、第3のフォトルミネッセンス層554は、第4のフォトルミネッセンス層よりも基材の裏面に近接している)。
【0052】
図5Aの二層両面LEDフィラメントは、第1のフォトルミネッセンス層550をLEDチップ526上に最初に堆積し、次いで、第2のフォトルミネッセンス層552を第1のフォトルミネッセンス層550の上に堆積することによって製造され得る。例解されるように、第1のフォトルミネッセンス層550は、概して半円形のプロファイルの断面を有することができる。第3のフォトルミネッセンス層554は、例えばストリップとしてLEDチップ526に対応する基材の裏面上に堆積され、次いで、第4のフォトルミネッセンス層556は、第3のフォトルミネッセンス層554上に堆積され、それを覆う。例解されるように、第3のフォトルミネッセンス層554は、概して半円形のプロファイルの断面を有することができる。
【0053】
CSP LEDを含むLEDフィラメントである図5Bの二層両面LEDフィラメントでは、第1のフォトルミネッセンス層550は、個別のLEDチップの少なくとも主発光面に適用された均一な厚さの層を含む。図5Bに例解されるように、LEDチップ526は、上面発光面及び4つの側面発光面に適用された均一な厚さの層を有し、コンフォーマルコーティングの形態にある。実施形態(図示せず)において、LEDチップ526は、主(上面)発光面のみに適用される均一な厚さの第1のフォトルミネッセンス層550を有する。二層LEDフィラメントは、最初に第1のフォトルミネッセンス層550を少なくとも個別のLEDチップ526の主発光面に適用することによって、例えば、狭帯域の赤色フォトルミネッセンス材料を含む均一な厚さ(典型的に20μm~300μm)のフォトルミネッセンスフィルムを使用して製造することができる。次に、LEDチップ526が基材524の上に装着され、第2のフォトルミネッセンス層552が、基材及びLEDチップを覆うように堆積される。第3のフォトルミネッセンス層554は、例えば、ストリップとしてLEDチップ526に対応する基材の裏面上に堆積され、次いで、第4のフォトルミネッセンス層556は、第3のフォトルミネッセンス層554上に堆積され、それを覆う。
【0054】
本発明者らは、両面二層構造を有するLEDフィラメントが、狭帯域フォトルミネッセンス材料及び広帯域赤色フォトルミネッセンス材料を前面及び裏面に含む既知のLEDフィラメントと比較して、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用量を実質的に低減(100%の透過率を有する基材で80重量%程度の低減)することができることを発見した。
【0055】
図6は、本発明の実施形態による、LEDフィラメントの概略断面端面図である。この実施形態では、LEDチップ624のうちの1つ以上は、そのベース上に反射体660を有している。反射体660は、LEDチップのベースからの青色発光を低減し、そのような光を前方方向/上向き方向に反射させる。反射体は、100%の光反射性、又は部分的な光反射性であり得る。本発明は、本明細書に開示される他の実施形態がまた、LEDチップのベース上に反射体を含み得ることが理解されるであろう。
【0056】
本発明の様々な実施形態では、フォトルミネッセンス材料の使用を低減するために、特に狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用を更に低減するために、LEDフィラメントは、光散乱材料の粒子、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、又はこれらの混合物の粒子などを更に含むことができる。光散乱材料の粒子は、フォトルミネッセンス材料のいずれかとの混合物として、及び/又はフォトルミネッセンス材料層と接触する別個の層に提供することができる。好ましくは、光散乱材料の粒子は狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と共に組み込まれ、狭帯域赤色フォトルミネッセンス使用量を更に低減する。例えば、単層構造化LEDフィラメントに対して、光散乱材料の粒子は、第1の広帯域の緑色から赤色のフォトルミネッセンス材料と狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の混合物の一部として、第1のフォトルミネッセンス波長変換材料236内に組み込むことができる(図2C)。二層構造化LEDフィラメントの場合、光散乱材料の粒子は、第1のフォトルミネッセンス層450内に狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料との混合物として組み込むことができる(図4)。両面二層LEDフィラメントの場合、光散乱材料の粒子は、第1のフォトルミネッセンス層550及び/又は第3のフォトルミネッセンス層554内の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料との混合物として組み込むことができる(図5)。
【0057】
代替的に及び/又は加えて、光散乱材料の粒子は、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含有する層と接触する別個の層内に提供され得、狭帯域赤色フォトルミネッセンスの使用量を更に低減する。
【0058】
光散乱材料の粒子をフォトルミネッセンス材料と共に含有することにより、LED生成の励起光のフォトルミネッセンス材料の粒子との衝突数を増加させ、フォトルミネッセンス材料の使用量を減少させるフォトルミネッセンス発光を向上させる。平均で10,000回のうち、わずか1回の光子のフォトルミネッセンス材料との相互作用で、フォトルミネッセンス光の吸収及び生成がもたらされると考えられている。フォトルミネッセンス材料粒子との光子の相互作用の大部分(約99.99%)は、光子の散乱をもたらす。光散乱材料を含めることにより、衝突数が増加することから、フォトルミネッセンス光生成の可能性が増加し、このことが、選択された発光強度を生成するためのフォトルミネッセンス材料の使用量を減少させる。
【0059】
広帯域緑色フォトルミネッセンス材料
【0060】
本明細書では、広帯域緑色フォトルミネッセンス材料とは、約520nm~約560nmの範囲のピーク発光波長(λpe)を有する光を生成する材料を指し、これは可視スペクトルの黄色/緑色から緑色領域にある。好ましくは、緑色フォトルミネッセンス材料は、広い発光特性を有し、好ましくは、約50nm~約120nmのFWHM(半値全幅)を有する。緑色のフォトルミネッセンス材料は、任意のフォトルミネッセンス材料を、例えば、ガーネットベースの無機蛍光体材料、ケイ酸塩蛍光体材料、及び酸窒化物蛍光体材料などを含み得る。好適な緑色蛍光体の例を、表2に示す。
【0061】
いくつかの実施形態では、緑色フォトルミネッセンス材料は、一般組成式Y(Al1-yGa12:Ce(YAG)(式中、0<y<1である)の、例えば、ピーク発光波長が520nm~543nmの範囲にあり、かつ、FWHMが約120nmのIntematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なYAGシリーズ蛍光体などのセリウム活性イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体を含む。本明細書において、YAG#の表記は、蛍光体タイプ「YAG」系蛍光体に、ナノメートル(#)でのピーク発光波長がその後に続くものを表している。例えば、YAG535は、535nmのピーク発光波長を有するYAG蛍光体を示す。緑色フォトルミネッセンス材料は、一般組成式(Y,Ba)(Al,Ga)12:Ce(YAG)の、例えば、Intematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なGNYAGシリーズ蛍光体などのセリウム活性イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体を含み得る。いくつかの実施形態では、緑色フォトルミネッセンス材料は、一般組成式LuAl12:Ce(GAL)のアルミン酸塩(LuAG)蛍光体を含むことができる。そのような蛍光体の例としては、例えば、ピーク発光波長が516nm~560nm、かつFWHMが約120nmのIntematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なGalシリーズの蛍光体が挙げられる。本明細書において、表記GAL#は、蛍光体タイプ(GAL)「LuAG」系蛍光体にナノメートル(#)のピーク発光波長がその後に続くものを表している。例えば、GAL520は、520nmのピーク発光波長を有するGAL蛍光体を示す。好適な緑色蛍光体の例を、表2に示す。
【0062】
緑色ケイ酸塩蛍光体の例としては、一般組成式(Ba,Sr)SiO:Euの、例えば、ピーク発光波長が507nm~570nmの範囲にあり、かつFWHMが約70nm~約80nmのIntematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なG、EG、Y及びEYシリーズなどのユーロピウム活性化オルト-ケイ酸塩蛍光体が挙げられる。好適な緑色蛍光体の例を、表2に示す。
【0063】
いくつかの実施形態では、緑色蛍光体は、その全体が本明細書に組み込まれている「Green-Emitting(Oxy)Nitride-Based Phosphors And Light Emitting Devices Using The Same」と題する米国特許第8,679,367号に教示されている緑色発光窒化物蛍光体を含むことができる。そのような緑色発光酸窒化物(ON)蛍光体は、一般組成式Eu2+:M2+SiAlOxN(7-2x/3)(式中、0.1≦x≦1.0であり、M2+は、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnからなる群から選択される1つ以上の二価金属である)を有することができる。本明細書において、ON#の表記は、蛍光体タイプ「酸窒化物」に、ナノメートル(#)でのピーク発光波長(λpe)がその後に続くものを表している。例えば、ON495は、495nmのピーク発光波長を有する緑色酸窒化物蛍光体を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
赤色フォトルミネッセンス材料
【0066】
狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料
【0067】
本明細書において、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、励起光による刺激に応答して、610nm~655nmの範囲のピーク発光波長を有する光を生成するフォトルミネッセンス材料を指し、すなわち、可視スペクトルの赤色領域内の光であり、約5nm~約50nm(約50nm未満)の半値全幅(FWHM)を有する狭い発光特性を有する。上述のように、狭帯域赤色フォトルミネッセンスは、LEDチップが装着される基材の前面の上に配置され、それを覆うマンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料を含むことができる。狭帯域赤色マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料の一例は、マンガン活性化カリウムヘキサフルオロシリケート蛍光体(KSF)、KSiF:Mn4+(KSF)である。このようなKSF蛍光体の例は、約632nmのピーク発光波長を有するIntematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なNR6931 KSF蛍光体である。他のマンガン活性化蛍光体としては、KGeF:Mn4+(KGF)及びKTiF:Mn4+(KTF)が挙げられる。
【0068】
広帯域赤色フォトルミネッセンス材料
【0069】
本明細書において、広帯域赤色フォトルミネッセンス材料(非マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料とも称される)は、励起光による刺激に応答して、600nm~640nmの範囲のピーク発光波長を有する光を生成するフォトルミネッセンス材料を指し、すなわち、可視スペクトルの橙色から赤色への領域内の光であり、約50nmを上回る半値全幅(FWHM)を有する広い発光特性を有する。上述のように、広帯域赤色フォトルミネッセンスは、希土類活性化赤色フォトルミネッセンス材料を含むことができる。広帯域赤色フォトルミネッセンス材料(非マンガン活性化フッ化物赤色フォトルミネッセンス材料)は、結晶構造が、例えば、希土類活性化赤色フォトルミネッセンス材料などのように、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料(マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料)の結晶構造ではない赤色フォトルミネッセンス材料を示し、青色光によって励起可能であり、ピーク発光波長λが約600nm~約640nmの範囲にある光を発するように動作可能な、任意のこのような赤色フォトルミネッセンス材料を含むことができる。希土類活性化赤色フォトルミネッセンス材料としては、例えば、ユーロピウム活性化シリコン窒化物系蛍光体、α-SiAlON,グループIIA/IIBセレン化物硫化物系蛍光体又はケイ酸塩系蛍光体を挙げることができる。好適な赤色蛍光体の例を表3に示す。
【0070】
いくつかの実施形態では、ユーロピウム活性化シリコン窒化物系蛍光体は、一般式CaAlSiN:Eu2+のカルシウムアルミニウムケイ素窒化物蛍光体(CASN)を含む。CASN蛍光体は、ストロンチウム(Sr)、一般式(Sr,Ca)AlSiN:Eu2+などの他の元素でドープすることができる。本明細書において、CASN#の表記は、蛍光体タイプ「CASN」に、ナノメートル(#)でのピーク発光波長(λpe)がその後に続くものを表している。例えば、CASN625は、625nmのピーク発光波長を有する赤色CASN蛍光体を示す。
【0071】
一実施形態では、希土類活性化赤色蛍光体は、その全体が本明細書に組み込まれている「Red-Emitting Nitride-Based Calcium-Stabilized Phosphors」と題する米国特許第8,597,545号に教示されているような赤色発光蛍光体を含むことができる。このような赤色発光蛍光体は、化学式MSrSiAlEu(式中、MはCaであり、0.1≦a≦0.4であり、1.5<b<2.5であり、4.0≦c≦5.0であり、0.1≦d≦0.15であり、7.5<e<8.5及び0<f<0.1であり、a+b+f>2+d/vであり、vは、Mの価数である)で表される窒化物系組成物を含む。
【0072】
代替的に、希土類活性化赤色蛍光体は、その全体が本明細書に組み込まれている「Red-Emitting Nitride-Based Phosphors」と題する米国特許第8,663,502号に教示されているような赤色発光窒化物蛍光体を含むことができる。そのような赤色発光蛍光体は、化学式M(x/v)M’Si5-xAl:RE(式中、Mは、原子価vを有する少なくとも1つの一価、二価又は三価の金属であり、M’は、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnのうちの少なくとも1つであり、REは、Eu、Ce、Tb、Pr、及びMnのうちの少なくとも1つであり、xは0.1≦x<0.4を満たし、赤色発光蛍光体は、M’Si:REの一般的な結晶構造を有し、Alは、一般的な結晶構造内のSiを代用し、Mは、実質的に格子間で一般的な結晶構造内に位置している)によって表される窒化物系組成物を含む。そのような蛍光体の一例は、約610nmのピーク発光波長を有するIntematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なXR610赤色窒化物蛍光体である。
【0073】
希土類活性化赤色蛍光体はまた、グループIIA/IIBのセレン化硫化物系蛍光体も含むことができる。グループIIA/IIBのセレン化物硫化物系蛍光体材料の第1の例は、組成式MSe1-x:Eu(式中、Mは、Mg、Ca、Sr、Ba及びZnのうちの少なくとも1つであり、0<×<1.0である)を有する。この蛍光体材料の具体例は、CSS蛍光体(CaSe1-x:Eu)である。CSS蛍光体の詳細は、2016年9月30日に出願された同時係属中の米国特許出願公開第2017/0145309号に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。米国特許出願公開第2017/0145309号に記載されているCSS赤色蛍光体が、本発明で使用されることができる。CSS蛍光体の発光ピーク波長は、組成物中のS/Se比を変更することによって600nm~650nmの間で調整されることができ、FWHMが、約48nm~約60nmの範囲の狭帯域赤色発光スペクトルを示す(より長いピーク発光波長は、通常、より大きいFWHM値を有する)。本明細書において、CSS#の表記は、蛍光体タイプ「CSS」に、ナノメートルでのピーク発光波長(#)がその後に続くものを表している。例えば、CSS615は、615nmのピーク発光波長を有するCSS蛍光体を示す。
【0074】
いつかの実施形態では、希土類活性化赤色蛍光体は、その全体が本明細書に組み込まれている「Silicate-Based Orange Phosphors」と題する米国特許第7,655,156号に教示されているような橙色発光ケイ酸塩系蛍光体を含むことができる。このような橙色発光ケイ酸塩系蛍光体は、一般組成式(Sr1-xEuSiO(式中、0<x≦0.5、2.6≦y≦3.3、0.001≦z≦0.5であり、Mは、Ba、Mg、Ca、及びZnからなる群から選択される1つ以上の二価金属である)を有することができる。本明細書において、O#の表記は、蛍光体タイプ「橙色ケイ酸塩」に、ナノメートル(#)でのピーク発光波長(λpe)がその後に続くものを表している。例えば、O600は、600nmのピーク発光波長を有する橙色ケイ酸塩系蛍光体を示す。
【0075】
【表3】
【0076】
命名法
【0077】
本明細書では、以下の命名法を使用してLEDフィラメントを示しており、Com#は、基材の前面及び裏面に同じフォトルミネッセンス材料を有する比較用LEDフィラメントを示しており、Dev.#は、本発明の実施形態によるLEDフィラメント(デバイス)を示しており、狭帯域赤色(マンガン活性化フッ化物)フォトルミネッセンス材料を基材の前面に有し、広帯域赤色フォトルミネッセンス材料を基材の裏面に有している。
【0078】
実験データ-単層構造LEDフィラメント
【0079】
比較用LEDフィラメント(Com.1及びCom.2)及び本発明による単層LEDフィラメント(Dev.1)は、前面に装着された、主波長λ=456nmである24個の直列に接続された1025(10ミル×25ミル)の青色LEDチップを有し、透過率≒40%を有する52mm×1.5mmの多孔質シリカ基材を各々備えている。各LEDフィラメントは公称電力0.7Wのデバイスであり、2700Kの目標相関色温度(CCT)及び90の目標一般色レンダリングインデックスCRI Raを有する白色光を生成することが意図されている。
【0080】
試験デバイスで使用されるフォトルミネッセンス材料(蛍光体)は、Intematix Corporation製のKSF蛍光体(KSiF:Mn4+)、CASN蛍光体(Ca1-xSrAlSiN:Eu λpe≒640nm)、緑色YAG蛍光体(Intematix NYAG4156-(Y,Ba)3-x(Al1-yGa12:Cex Peak発光波長λpe=550nm)及び緑色LuAG蛍光体(Intematix GAL535-Lu3-x(Al1-yGa12:Ce λpe≒535nm)である。
【0081】
赤色及び緑色の蛍光体をフェニルシリコーン中で混合し、混合物を基材の前面及び裏面の上に分注した。
【0082】
表4は、比較用LEDフィラメントCom.1及びCom.2並びに本発明によるLEDフィラメントDev.1の蛍光体組成物を表にしている。
【0083】
表4から分かるように、蛍光体組成物の観点から、比較用LEDフィラメントCom.1は、基材の前面と裏面の上に同じ蛍光体組成物を含み、7重量%のCASN640と93重量%のGAL535の混合物を含む。比較用のLEDフィラメントCom.2は、基材の前面と裏面の上に同じ蛍光体組成物を含み、60重量%のKSFと40重量%のYAG550の混合物を含む。本発明によるLEDフィラメントDev.1は、56重量%のKSF、4重量%のCASN615、及び40重量%のYAG550の混合物を基材の前面に含み、7重量%のCASNと93重量%のGAL535の混合物を基材の裏面に含む。
【0084】
【表4】
【0085】
表5は、LEDフィラメントCom.1、Com.2及びDev.1の測定した光学性能を表にしている。表5から分かるように、Dev.1によって生成されたフラックスは、22.2lmで、基材の前面と裏面の両方にCASNを使用するLEDフィラメントCom.1よりも大きくなっている(19%明るい輝度)。一方で、LEDフィラメントCom.2は、LEDフィラメントCom.1よりも33.5lmより大きい(26%明るい輝度)フラックスを生成しており、このLEDフィラメントは、Dev.1の2倍量のKSF(狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料)を使用している。LEDフィラメントDev.1は、CASNの代わりにKSF(狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料)を使用した場合に可能な輝度ゲインの94%(119/126)を達成するが、KSFの量を半分(50重量%)だけしか使用していないことが理解される。このことは、少なくとも部分的には、Dev.1で使用されている部分的に光透過性の基材の存在によって達成されている。したがって、本発明は、LEDフィラメント及びLEDフィラメント電球に関する改善を開示し、具体的には、限定するものではないが、輝度及びCRI Raを損なうことなく、LEDフィラメントの製造コストを低減することを開示する。
【0086】
【表5】
【0087】
実験データ-二層構造LEDフィラメント
【0088】
上述のように、二層構造LEDフィラメント(図4A及び図4B)は、単層構造LEDフィラメント(図2C)と比較して、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用量を著しく低減することができる。Dev.2は、本発明による単一層のLEDフィラメントであり、Dev.2及びDev.3は、本発明による二層LEDフィラメント(図4A)である。
【0089】
Dev.2及びDev.3は、前面に装着された、主波長λ=456nmである24個の直列に接続された714(7ミル×14ミル)の青色LEDチップを有し、透過率≒40%を有する38mm×1.5mmの多孔質シリカ基材を各々備えている。各LEDフィラメントは、公称150lm(1W)のデバイスであり、2700Kの目標相関色温度(CCT)及び90の目標一般色レンダリングインデックスCRI Raを有する白色光を生成することが意図されている。これらのLEDフィラメントのうちの3つを使用して、450lmのLEDフィラメント電球を提供することができることが理解されるであろう。
【0090】
試験デバイスで使用されるフォトルミネッセンス材料(蛍光体)は、Intematix Corporation製のKSF蛍光体(KSiF:Mn4+)、CASN蛍光体(Ca-xSrAlSiN:Euλpe≒615nm、631nm及び640nm)、及び緑色YAG蛍光体(Intematix GYAG4156及びGYAG543-(Y,Ba)3-x(Al1-yGa12:Cex Peak発光波長λpe=543nm及び550nm)である。
【0091】
単層LEDフィラメントDev.2用に赤色及び緑色の蛍光体をフェニルシリコーン中で混合し、混合物を基材の前面及び裏面の上に分注した。
【0092】
2層のLEDフィラメントDev.3については、KSFをフェニルシリコーンと混合し、混合物をストリップ(第1の層)として、LEDチップを覆う基材の前面の上に分注した。緑色蛍光体及びCASNをフェニルシリコーン中で混合し、混合物を基材の前面の第1の層上の第2の層として分注した。裏面には、緑色蛍光体及びCASNをフェニルシリコーン中で混合し、混合物を基材の裏面の上に分注した。
【0093】
表6は、単層LEDフィラメントDev.2と二層LEDフィラメントDev.3の蛍光体組成を表にしている。表6から分かるように、蛍光体組成に関して、単層LEDフィラメントDev.2は、基材の前面に、74重量%のKSF、2.2重量%のCASN615、及び23.8重量%のYAG543の混合物を含み、基材の裏面に、5重量%のCASN(1.4重量%CASN631+3.6重量%CASN650)及び95重量%YAG550の混合物を含む。表6から分かるように、蛍光体組成に関して、二層LEDフィラメントDev.3は、基材の前面上に、KSF(前面の総蛍光体含有量の17.0重量%)のみを含む第1の層と、7.8重量%のCASN615と75.2重量%のYAG543の混合物を含む第2の層と、を含み、基材の裏面上に、5重量%のCASN(1.4重量%のCASN631+3.6重量%のCASN650)と95重量%のYAG550の混合物を含む。Dev.3は、基材の裏面に5重量%のCASN(1.4重量%のCASN631+3.6重量%のCASN650)と95重量%のYAG550の混合物を含む。
【0094】
【表6】
【0095】
表7A及び7Bは、単層LEDフィラメントDev.2及び二層LEDフィラメントDev.3の蛍光体量(使用量)を表にしている。表7A及び7Bの蛍光体重量値(重量)は、単層のLEDフィラメントDev.1のKSFの重量に対して正規化された正規化蛍光体重量である。
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
表8は、LEDフィラメントDev.2(単層)及びDev.3(二層)の測定された光学性能を表にしている。データは、駆動電流I=15mA及び駆動電圧V=68.7Vに対するものであり、フィラメントが熱安定性(高温)に到達した時点の3分後である。表8から分かるように、LEDフィラメントによって生成された光の色点は、単層LEDフィラメントDev.2の90.5と比較して、93.1である二層LEDフィラメントDev.3の平均CRI Raと非常に類似している。更に、二層LEDフィラメントDev.3によって生成されるフラックスは、単層のLEDフィラメントDev.2によって生成されたフラックスより4.7lm大きく(3.0%明るい(Brは輝度を表す))なっている。最も有意には、表8から分かるように、2つのLEDフィラメントは、単層LEDフィラメントDev.2と比較して、非常に類似した光放射を生成し、二層LEDフィラメントDev.3は、表7A及び7Bから分かるように、重量で80%少ないKSF(1.0000と比較して0.2044)を使用している。二層LEDフィラメントDev.3は、単層LEDフィラメントDev.2と比較して、より多くのCASN(前面の重量増加で212%(0.0302に対して0.0942)、裏面の重量増加で84%(0.0524に対して0.0963))及びYAG(前面の重量増加で182%(0.3219に対して0.9070)、裏面の重量増加で84%(1.9313に対して1.0492))を使用しているが、二層構造は、KSFと比較してCASN(KSFのコストの約1/5)とYAG(KSFのコストの約1/100~1/150)のコストの大きな違いにより、単層構造と比較して依然として大幅なコスト削減をもたらす。CASN及びYAG使用量の増加の理由は、第2の蛍光体層に到達する青色励起光が少ないため、赤色及び緑色を生成して目標色を得るために、より多くのCASN及びYAG蛍光体が必要とされることであると考えられる。
【0099】
上述のように、KSF使用量の低減は、LEDチップと接触する(隣接する)別個の層内にKSFを位置させる結果である。KSF使用量のこの低減の理由は、KSF(マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料)、CASN及びYAGの混合物を含む単一のフォトルミネッセンス層を備える単層LEDフィラメントDev.2において、様々なフォトルミネッセンス材料が青色励起光に等しい露出を有することであると考えられる。KSFは、YAG及びCASN材料よりもはるかに低い青色光吸収能力を有するため、必要な赤色発光に十分な青色光を変換するために、より多量のKSFが必要となる。対照的に、二層LEDフィラメントDev.3では、別個の対応する第1の層のKSF(マンガン活性化フッ化物フォトルミネッセンス材料)は、YAG及びCASNとの競合なしに青色励起光に個別に曝露され、したがって、より多くの青色励起光がKSFによって吸収され得る。KSFは、青色励起光を赤色発光により効果的に変換することができるので、目標色点を達成するために必要とされるKSF(狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料)の量(使用量)は、フォトルミネッセンス材料の混合物を含む単層を含むLEDフィラメントと比較して低減され得る。
【0100】
表7Aに更に記載されるように、KSF(狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料)の総量に対するCASN(広帯域赤色フォトルミネッセンス材料)と、二層LEDフィラメントDev.3内のCASNとの含有量比は、約30重量%を上回る。
【0101】
【表9】
【0102】
Dev.4は、本発明による更なる二層LEDフィラメントであり、2700Kの目標相関色温度(CCT)、かつ90の目標平均演色評価数CRI Raの白色光を生成することを意図とした公称250lm(1.5W)のデバイスである。1000 1mのLEDフィラメント電球を提供するために、これらのLEDフィラメントのうちの4つが、例えば、図1A及び図1Bの実施形態を使用して、使用され得ることが理解されるであろう。LEDフィラメントDev.4は、透過率が約40%の52mm×3.0mmの多孔質シリカ基材で構成され、前面に装着された、主波長λ=454nmである25個の直列に接続された714(8ミル×27ミル)の青色LEDチップを有している。LEDフィラメント
【0103】
表9は、二層LEDフィラメントDev.4の蛍光体組成を表にしている。表9から分かるように、蛍光体組成に関して、二層LEDフィラメントDev.4は、基材の前面上に、KSFのみ(前面の全蛍光体含有量の23.1重量%)を含む第1の層、及び7.5重量%のCASN615と69.4重量%のYAG543の混合物を含む第2の層を含む。基材の裏面上に、9.1重量%のCASN615と90.9重量%のYAG535の混合物を含む。
【0104】
【表10】
表10A及び10Bは、二層LEDフィラメントDev.4の蛍光体量(mg)を表にしている。表10A及び10Bの蛍光体の重量値(重量)は、同じフォトルミネッセンス材料を使用する単層LEDフィラメントのKSFの重量に正規化された正規化蛍光体重量である。表10Aから分かるように、二層構造のLEDフィラメントは、単層構造のLEDフィラメントと比較してKSFの使用量を約80重量%(1.0000に対して0.1956)、かつ前面と裏面にKSFを含む既知のLEDフィラメントと比較して約90重量%低減する。表10Aから更に注目されるように、二層LEDフィラメントDev.4におけるKSF(狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料)とCASNの合計に対するCASN(広帯域赤色フォトルミネッセンス材料)の含有量比は約25重量%である。
【0105】
【表11】
【0106】
【表12】
【0107】
表11は、二層LEDフィラメントDev.4の測定された光学性能を表にしている。データは、フィラメントをオンに切り替えた直後(瞬間的又はコールド測定と称される)、及びフィラメントが約3分間の動作の期間後に熱安定性に達した後の(ホット測定と称される)測定値を含む。試験データは、二層構造化LEDフィラメントが、90を超えるCRI Raを有し、かつ、80のみのCRI Raを有する既知のLEDフィラメントよりも大きい(5%~10%)光学性能を有するLEDフィラメントの製造を可能にすることを示した。
【0108】
【表13】
【0109】
本発明の実施形態は、LEDフィラメント及びLEDフィラメント電球に関する改善を開示し、具体的には、限定するものではないが、輝度及びCRI Raを損なうことなく、LEDフィラメントの製造コストを低減することに関する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6