(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】洗濯物送達装置および洗濯物を送達するための方法
(51)【国際特許分類】
D06F 95/00 20060101AFI20230608BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
D06F95/00
B25J13/00 A
(21)【出願番号】P 2021560609
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2020079869
(87)【国際公開番号】W WO2021078931
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2021-11-30
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】521444549
【氏名又は名称】インワテック アペエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレセン、マッズ
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-510777(JP,A)
【文献】特公平06-047416(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0099947(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0215188(US,A1)
【文献】米国特許第04037725(US,A)
【文献】国際公開第2019/137585(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/112103(WO,A1)
【文献】英国特許第01246867(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F95/00
B25J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の可動面を画定する第1のコンベヤ(2)と、
前記第1の可動面と、反対側の第2の面(3)との間に画定されるニップ領域(4)であって、前記第1の可動面は、好ましくは、前記反対側の第2の面(3)と近接してまたは接触しており、前記ニップ領域(4)は、洗濯物の片(7)を保持するように構成されており、前記洗濯物の片(7)の先頭部分(F)が前記ニップ領域(4)から吊り下げられている、ニップ領域(4)と、
前記ニップ領域(4)の下方に配置された、送達チャンバ(5)と、
を有するハウジング(1)を備える、洗濯物送達装置であって、
前記送達チャンバ(5)が、人間の手を受け入れ、第1のセンサ(6)を含むように構成されており、前記第1のセンサ(6)が、前記送達チャンバ(5)内の前記人間の手の存在を検知するために、または人間の手が前記送達チャンバ(5)内に移動されることを検知するために、および、次いで、保持されている前記洗濯物の片(7)を解放するための解放信号を送るように、構成されている、洗濯物送達装置。
【請求項2】
前記第1のコンベヤ(2)が、前記第1のセンサ(6)から前記解放信号を受信すると、前記洗濯物の片(7)の後端(E)を前記ニップ領域(4)を通して搬送するように構成されており、
前記装置が、
前記ニップ領域(4)に到達する前記第1のコンベヤ(2)によって支持されている前記洗濯物の片(7)の後縁(E)を検知するように構成された、第2のセンサ(11)と、
前記後端(E)が前記第2のセンサ(11)により検知されたときに、前記第1のコンベヤ(2)を停止させる制御部とをさらに備える、請求項1に記載の洗濯物送達装置。
【請求項3】
前記第2の面(3)が、ベルトコンベヤによって画定されている、請求項1または2に記載の洗濯物送達装置。
【請求項4】
前記第2の面(3)が、バネ負荷ローラである、請求項3に記載の洗濯物送達装置。
【請求項5】
洗濯物の片(7)を取り上げるための第1のマニピュレータアーム(8)と、前記洗濯物の片(7)を前記第1のマニピュレータアーム(8)から前記第1のコンベヤ(2)に移送するための第2のマニピュレータアーム(9)と、を備える、請求項1から4のいずれかに記載の洗濯物送達装置。
【請求項6】
送達チャンバ(5)と、第1のセンサ(6)および第2のセンサ(11)からの信号を受信する制御部とを備える洗濯物送達装置(1)における洗濯物の片の送達方法であって、
洗濯物の片(7)を取り上げるステップと、
前記洗濯物の片(7)を、第1の可動面を画定する第1のコンベヤ(2)上へ移送するステップと、
前記第1のコンベヤ(2)により前記洗濯物の片(7)を前記第1の可動面と、反対側の第2の面(3)との間に画定されるニップ領域(4)に向けて搬送するステップであって、前記ニップ領域(4)は、前記洗濯物の片(7)の先頭部分(F)が前記ニップ領域(4)から吊り下げられるように前記洗濯物の片(7)を保持するように構成されている、搬送するステップと、
前記洗濯物の片(7)の前記先頭部分(F)を前記ニップ領域(4)に導き、前記洗濯物の片(7)に作用するニップ動作をもたらすステップと、
前記先頭部分(7)を進めて前記ニップ領域(4)を通過させるステップと、
前記第1のコンベヤ(2)によって支持されている前記洗濯物の片(7)の後縁(E)が前記ニップ領域(4)に到達するとき、前記第2のセンサ(11)により検知するステップと、
前記第1のコンベヤ(2)を停止させることによって、前記洗濯物の片(7)を前記ニップ領域(4)によって保持するステップであって、前記先頭部分(F)が、前記送達チャンバ(5)内の前記ニップ領域(4)から吊り下げられている、ステップと、
前記送達チャンバ(5)内の人間の手が前記第1のセンサ(6)により検知されたら、または人間の手が前記送達チャンバ(5)内に移動されることが検知されたら、前記ニップ領域(4)から前記洗濯物の片(7)を解放するステップと、を含み、
前記洗濯物の片(7)を解放する前記ステップが、
前記第1のコンベヤ(2)を活性化するために解放信号を送るステップと、
前記第1のコンベヤ(2)により、前記洗濯物の片(7)が前記送達チャンバ(5)内に落下するまで、前記洗濯物の片(7)を完全に前記ニップ領域(4)を通して搬送するステップと、を含む、送達方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯物送達装置、当該洗濯物送達装置を使用した吊り下げられた洗濯物の片の自動解放のための方法、および吊り下げられた洗濯物の片の自動解放のための洗濯物送達装置の使用に関する。
【0002】
産業用の洗濯場では、自動化された洗濯物送達装置の使用は、洗濯物の取り扱い効率の向上に寄与してきた。
【0003】
完全に自動化された洗濯物送達装置は、洗濯物の山から洗濯物の片が取り上げられて洗濯物の片の連続的な取り扱いのために他のモジュールに送達される、ユニットを備える。
【0004】
しかしながら、スペースが限られているいくつかの産業用の洗濯場では、完全に自動化された洗濯物送達装置は、2つ以上のモジュール、例えば、洗濯物の山から洗濯物の片を取り上げて洗濯物の片を洗濯物送達装置の送達チャンバに送達するためのモジュール、および洗濯物の片の連続的な取り扱いのための洗濯物受取りモジュールの存在に起因して、選択肢ではない。
【0005】
今日、この問題は、単に洗濯物送達装置を産業用の洗濯場に設置することによって解決され、その場合、人間の作業者が、洗濯物送達装置の送達チャンバから洗濯物の片を受け取る作業を維持する。これは、国際公開第2019/137585号パンフレットに開示されている。
【0006】
しかしながら、上述の刊行物では、作業者は、洗濯物送達装置から離れて送達チャンバに提示された洗濯物の片を、引かなければならないであろう。長時間にわたって多数の洗濯物の片を繰り返し引く過程は、作業者に人間工学的問題をもたらす可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、とりわけ、人間の作業者の作業負荷を低減し、洗濯物送達装置の効率を高めることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2019/137585号パンフレット
【発明の概要】
【0009】
この目的を考慮して、自動洗濯物解放機能を有する洗濯物送達装置を提供する
【0010】
一実施形態では、洗濯物の片、例えばタオルを洗濯物の山から取り上げ、送達チャンバにおいて洗濯物の片を作業者に提示するための洗濯物送達装置は、第1のマニピュレータアームと、第2のマニピュレータアームと、コンベヤと、第2の面と、コンベヤと第2の面との間に画定されたニップ領域と、送達チャンバと、上部センサと、下部センサと、を備える。
【0011】
一実施形態では、洗濯物送達装置を使用して洗濯物の片を洗濯物の山から取り上げるための方法が開示され、洗濯物の片をコンベヤ上に移送することと、コンベヤと第2の面との間に画定されたニップ領域に向けて洗濯物の片を搬送することと、洗濯物の片の端部(後縁)を検知することと、洗濯物送達装置の送達チャンバの上方のニップ領域から洗濯物の片を吊り下げることと、送達チャンバ内の人間の手の存在を検知するか、または送達チャンバ内に移動されている人間の手を検知することと、送達チャンバ内の人間の手を検知したら、吊り下げられている洗濯物の片をニップ領域から解放することと、を含む。
【0012】
このようにして、人間の作業者は、洗濯物の片を引く必要なく洗濯物の片を受け取ることとなり、洗濯物の片を解放する過程が自動化されるという点で、洗濯物送達装置の効率が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の洗濯物送達装置の実施形態の概略図である。
【
図1B】本発明の洗濯物送達装置の代替的な実施形態の概略図である。
【
図2】作業者であって、本発明の洗濯物送達装置の送達チャンバ内にその者の手を導入している、作業者の概略図である。
【
図3】装置が洗濯物の片を解放しており、作業者が解放された洗濯物の片を把持している、洗濯物送達装置の概略図である。
【
図4】動作中の第1のマニピュレータアームを示す洗濯物送達装置の概略図である。
【
図5】動作中の第2のマニピュレータアームを示す洗濯物送達装置の概略図である。
【
図6】保持位置に搬送された第1の洗濯物の片を示す洗濯物送達装置の概略図である。
【
図7】取り上げられている第3の洗濯物の片を示す洗濯物送達装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、図面を参照して以下で本発明をより詳細に説明する。
【0015】
図1aおよび
図1bは、第1のマニピュレータアーム8と、第2のマニピュレータアーム9と、第1の可動面を画定するエンドレスベルトを含むベルトコンベヤ2と、第1の面の端の反対側の、第2の面3と、第1の面と第2の面との間に画定されたニップ領域4と、送達チャンバ5と、上部センサ11と、下部センサ6と、を備える、洗濯物の片7、例えばタオルを洗濯物の山10から取り上げ、送達チャンバ5において洗濯物の片7を作業者に提示するための洗濯物送達装置の実施形態を示す。
【0016】
第2のマニピュレータアーム9は、洗濯物の片7をコンベヤ2の上方の位置で解放することによって、洗濯物の片7を第1のマニピュレータアーム8からコンベヤ2に移送するためのものであり、コンベヤ2は、洗濯物の片7をニップ領域4に向けて搬送するためのものである。
【0017】
第2の面3は、第2のベルトコンベヤ、ローラ、または任意の同様の設備によって画定されてもよく、コンベヤ2の移動によって受動的に、または例えばモータによって能動的に移動していてもよい。
【0018】
上部センサ11は、コンベヤ2によって前進させられた洗濯物の片7の端部E(後縁)がニップ領域4に到達するときを判定するように配置されており、コンベヤ2の移動を制御する制御部(図示せず)に停止信号を送り、それによってコンベヤ2の移動を停止させて、ニップ領域4がクランプすることによって洗濯物の片7の後縁Eを保持し、洗濯物の片7の先頭部分Fが自由に吊り下げられてぶら下がるように構成されている。
【0019】
上部センサ11は、例として、3次元ビジョンセンサであってもよく、刊行物「A Study on Handling System for Cloth Using 3-D Vision Sensor,3403-3408,Hiroaki Kobayashi et al.,2008」、「Vision System and Flexible Robot Hand for Cloth Handling Robot System,Seiji Hata et al.,International Conference on Control,Automation and Systems 2008 Oct.14-17,2008 in COEX,Seoul,Korea」、「Using Depth and Appearance Features for Informed Robot Grasping of Highly Wrinkled Clothes,Arnau Ramisa et al.」に記載されているようにビジュアルイメージ認識を使用して洗濯物の片7の後縁Eを検知してもよい。
【0020】
ニップ領域4の下方には、ニップ領域4によって保持されかつニップ領域4から吊り下げられた洗濯物の片7を受け取るための、送達チャンバ5がある。
【0021】
人間の手が送達チャンバ5内に位置しているかどうかを検知するため、または人間の手が送達チャンバ5内に移動されているかどうかを検知するための下部センサ6。人間の手の存在または人間の手の送達チャンバ5内への移動を検知すると、下部センサ6は、洗濯物の片7の後縁がニップ領域4を完全に通って搬送されるまで、移動を開始するように、コンベヤ2を制御するかまたはコンベヤ2および第2の面3を制御する制御部(図示せず)に信号を送り、それによって洗濯物の片7をニップ領域4から解放して、洗濯物の片7が送達チャンバ5内に落下し、かつそれが自由に落下するときに作業者の手によって把持されることを可能にする。
【0022】
ニップ領域4は、コンベヤ2および第2の面3を方法で配置することによって形成されてもよく、当該方法において、コンベヤ2の移動面の一部は、第2の面3の回転面の一部に近接または接触しており、したがって、このニップ領域4を通過するときに洗濯物の片7に作用するニップ動作をもたらし、そのようにして、そこで、ニップ領域4を通過する洗濯物の片7は、コンベヤ2が非活性化されるときに保持される。洗濯物の片7の最後の端部(後縁E)がニップ領域4内にあり、かつ搬送移動が停止しているとき、洗濯物の片7は、それから、第1のコンベヤ2と第2の面3との間にクランプされて、洗濯物送達装置1の送達チャンバ5の上方で、保持されてニップ領域4から吊り下げられる。
【0023】
一実施形態では、上部センサ11は、ニップ領域4から所定の距離に配置されてもよい。したがって、上部センサ11は、上部センサ11を通り越す洗濯物の片7の後縁Eが検知されたときに、制御部に信号を送り、その結果として、洗濯物の片7は、保持され、ベルトコンベヤ2が停止させられたときに後縁Eが第2のコンベヤ2上でニップ領域4から所望の距離にある。これは、例えば洗濯物の片が特に長いかまたは重い場合に、利点になり得る。
【0024】
図1bは、洗濯物送達装置1の代替的な実施形態の概略図であり、ニップ領域4は、コンベヤ2と第2の面3を画定している回転可能なローラとの間に画定されている。概略的に示されるように、ローラは、ニップ領域4が異なる厚さの洗濯物を補償することを可能にする、バネによって支持されてもよい。
図1aに示すように、第2の面3がベルトコンベヤによって画定される場合、ベルトは、曲がるかまたは屈し、それによって、ニップ領域4が異なる厚さの洗濯物を補償することを、可能にする。
【0025】
図2は、作業者であって、洗濯物送達装置1の送達チャンバ5内にその者の手を導入している、作業者の概略図であり、この送達チャンバ5は、フォトセルまたは人間の手の存在を検知するのに適した任意の他の検知装置であり得る、下部センサ6によって監視される。作業者の手が送達チャンバ5内の下部センサ6を通り越すと、下部センサ6は、コンベヤ2またはコンベヤ2と第2の面3の両方を制御する制御ユニット(図示せず)、例えば制御部に信号を送り、その結果、コンベヤ2またはコンベヤ2および第2の面3は、移動を開始し、それによって洗濯物の片7を解放する。
【0026】
図3は、洗濯物の片7を解放した洗濯物送達装置1の概略図であり、洗濯物の片7は、作業者によって捕えられており、作業者は、その後、さらなる処理のために洗濯物の片7を前方に移送する。
【0027】
解放制御部は、限られた時間、コンベヤ2またはコンベヤ2と第2の面3の両方を活性化し、それによって、次の洗濯物の片7を、その洗濯物の片7の後縁がニップ領域4内に進むまで、ニップ領域4を通して搬送する。
【0028】
送達チャンバ5は、作業者によって捕えられなかった洗濯物の片を集めるための箱を含んでもよい。
【0029】
図4~
図7は、洗濯物送達装置のハウジング1の内側で、洗濯物の片7を、洗濯物の山から、コンベヤ2上へ、および最後にコンベヤ2と第2の面3の間のニップ領域4内へ移送する初期ステップの概略図を示す。
【0030】
図4は、洗濯物の山10から洗濯物の片7を取り上げている第1のマニピュレータアーム8と、第1のマニピュレータアーム8によって保持されている第1の洗濯物の片7を掴む準備ができている第2のマニピュレータアーム9と、を示す洗濯物送達装置1の概略図である。
【0031】
図5は、
図4からの第1の洗濯物の片7を掴んでおり、かつ洗濯物の片7を第1のコンベヤ2の上方の位置で解放する準備ができている第2のマニピュレータアーム9を示し、かつ第2の洗濯物の片7aを洗濯物の山10から既に取り上げている第1のマニピュレータアーム8を示す、洗濯物送達装置1の概略図である。
【0032】
図6は、ニップ領域4を通って部分的に搬送されており、かつそこから第1の片の洗濯物7の後縁Eで吊り下げられている、第1の洗濯物の片7を示す洗濯物送達装置1の概略図である。図は、第2の洗濯物の片7aを掴んだ第2のマニピュレータアーム9と、洗濯物の山10に向かって進んだ第1のマニピュレータアーム8と、をさらに示している。
【0033】
図7は、洗濯物送達装置1の概略図であり、洗濯物送達装置ハウジング1の送達チャンバ5の上方でニップ領域4で吊り下げられて、人間の手の存在または人間の手の送達チャンバ5内への移動を示す下部センサ6からの解放信号を待っている、洗濯物の片7と、
図5に示すように、第2の洗濯物の片7aを持って待機しているか、または第2の洗濯物の片7aを第1のコンベヤ2に沿って上方に移動させている、第2のマニピュレータアーム9と、洗濯物の山10から第3の洗濯物の片7bを取り上げて待機している、第1のマニピュレータアーム8と、を示している。