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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20230608BHJP
   H01R 13/629 20060101ALI20230608BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20230608BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALN20230608BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230608BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01R13/629
H01R13/639 Z
H01M8/0273
H01M8/10 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022153615
(22)【出願日】2022-09-27
【審査請求日】2023-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231822
【氏名又は名称】日本端子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邊 豊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 基宏
(72)【発明者】
【氏名】坂野 雅章
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-077616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0185740(US,A1)
【文献】特開2010-192384(JP,A)
【文献】特開2007-200632(JP,A)
【文献】特開2023-007186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/02
H01M 8/04
H01R 13/629
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に着脱可能なコネクタであって、
前記燃料電池は、所定の積層方向に間隔をおいて配置され、それぞれが収容凹部を有する複数のプレートを備え、
前記プレートの前記収容凹部それぞれには係止部が設けられ、
前記コネクタは、
複数の前記プレートの前記収容凹部に挿入可能なハウジングと、
前記ハウジングに保持され、前記ハウジングが前記収容凹部に挿入されたときに前記プレートに電気的に接続する端子部材と、
前記ハウジングに挿入可能なレバーと、
前記レバーの挿入による押圧力によって、前記積層方向に延びる軸線を中心として回転し、前記係止部に係合するロック部材とを有するコネクタ。
【請求項2】
前記ロック部材は、前記係止部に係止可能な被係止部を備え、
前記レバーの前記ハウジングへの挿入によって、前記ロック部材は、前記被係止部が前記ハウジングの内部に退避した退避位置から、前記被係止部が前記ハウジングの外部に突出した突出位置に変位する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記係止部は前記プレートに設けられた切欠を含み、
前記被係止部は隣接する複数の前記プレートに設けられた前記切欠にそれぞれ挿入されて、前記プレートに掛け止めされる引掛部と、前記プレートの間に挿入される少なくとも一つの挿入壁と、を備える請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記引掛部が掛け止めされる複数の前記プレートのうち、隣接する前記プレートの間それぞれに前記挿入壁が挿入されている請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ロック部材には前記軸線の方向に沿って延びる一対の軸部が設けられ、
前記ハウジングは前記ロック部材の前記軸部を回転自在に受容する軸受部を備え、且つ、前記ロック部材を収容するロック部材収容部を有し、
前記ロック部材収容部に前記レバーが挿入されることによって、前記ロック部材が回転する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記レバーの前記ハウジングへの挿入方向は、前記収容凹部への挿入方向と同一である請求項1に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記レバー及び前記ロック部材には、前記レバーの挿入方向の移動を前記ロック部材の回転に変換する第1カム機構が設けられている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記レバーと前記ハウジングとには、前記ロック部材が前記突出位置になったときに、前記レバーの挿入方向逆向きの移動を規制することにより、前記ロック部材の回転を規制する規制機構が設けられている請求項2に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記レバーには、前記規制機構による規制に抗して、前記ハウジングから前記挿入方向逆向きに引き抜くための引抜部を有し、
前記レバーと前記ロック部材との間には、前記レバーの前記挿入方向逆向きの移動に応じて、前記ロック部材を前記突出位置から前記退避位置に回転させる第2カム機構が設けられている請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記ロック部材は、前記ハウジングの挿入方向に直交し、且つ、前記積層方向に直交する方向における両端部にそれぞれ設けられている請求項1~請求項8のいずれか1つの項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングに収容された複数の端子を有するコネクタであって、特に、燃料電池に接続可能な電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減や、エネルギー効率の改善を目的として、車両の電動化がすすめられている。電動化された車両、すなわち、電動車両には駆動力を発生させるモータと、モータに電力を供給するための電池とが搭載される。
【0003】
電動車両に搭載される電池として、燃料電池が注目されている(例えば、特許文献1)。燃料電池は、所定の方向(以下、第1方向)に積層された複数のセルを有している。各セルは、空気極及び燃料極と、空気極及び燃料極の間に配置された高分子電解質膜と、空気極及び燃料極の外側に配置された分離板とを備えている。
【0004】
特許文献1の燃料電池には、各セルの電圧をチェックするためのセルモニタリングコネクタが設けられている。燃料電池の分離板は収容溝を有し、その収容溝によって、燃料電池にはセルモニタリングコネクタが収容される収容空間が規定されている。
【0005】
セルモニタリングコネクタは、ハウジングと、連結端子とを備えている。ハウジングは第1方向に交差する第2方向に沿って収容空間に挿入される。ハウジングが収容空間に挿入されると、連結端子が分離板に接続し、各セルの電圧のチェックが可能となる。
【0006】
セルモニタリングコネクタの燃料電池からの抜けを防止するため、分離板には、係止部が設けられている。係止部は収容溝の周辺に配置され、フック状をなしている。セルモニタリングコネクタには、ハウジング内に設けられたレバーと、レバーを操作するためのレバー操作部とが設けられている。
【0007】
レバー操作部の第1方向及び第2方向に交差する第3方向の移動に連動して、レバーはハウジングの外面から第3方向に突出した第1位置と、突出した第2位置とに変位する。レバー操作部の移動によって、レバーを出没させることで、分離板の係止部にレバーを引っ掛けることができる。係止部にレバーが引っ掛かると、セルモニタリングコネクタの燃料電池からの抜けが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2021-77616公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
燃料電池においては、製造時や使用時において積層ずれが発生することがある。そのため、分離板の積層ずれが発生しても、係止可能となるように、係代が大きいロック機構を備えた電気コネクタの開発が望まれている。
【0010】
特許文献1のセルモニタリングコネクタでは、レバー操作部の第3方向の移動によって、ハウジングが撓み変形し、レバーが第1位置と第2位置とに変位する。そのため、レバー(ロック部材)の突出量のハウジングからの突出量を確保し難く、レバーが係止部に係止され難いという問題がある。
【0011】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、燃料電池に設けられた係止部に係合可能なコネクタであって、係止部に係止され易いコネクタを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面では、燃料電池(3)に着脱可能なコネクタ(1)であって、前記燃料電池は、所定の積層方向に間隔をおいて配置され、それぞれが収容凹部(11)を有する複数のプレート(9)を備え、前記プレートの前記収容凹部それぞれには係止部(21)が設けられ、前記コネクタは、複数の前記プレートの前記収容凹部に挿入可能なハウジング(25)と、前記ハウジングに保持され、前記ハウジングが前記収容凹部に挿入されたときに前記プレートに電気的に接続する端子部材(27)と、前記ハウジングに挿入可能なレバー(31)と、前記レバーの挿入による押圧力によって、前記積層方向に延びる軸線を中心として回転し、前記係止部に係合するロック部材(29)とを有する。
【0013】
これによると、レバーの挿入による押圧力によって、ロック部材が回転し、ロック部材が係止部に係合する。そのため、ロック部材が撓み変形することによって、係止部に係合する場合に比べて、コネクタが係止部に係止され易くなる。
【0014】
本発明の第2の側面では、前記ロック部材は、前記係止部に係止可能な被係止部(77)を備え、前記レバーの前記ハウジングへの挿入によって、前記ロック部材は、前記被係止部が前記ハウジングの内部に退避した退避位置から、前記被係止部が前記ハウジングの外部に露出した突出位置に変位する。
【0015】
これによると、突出位置において被係止部がハウジングから露出するため、被係止部が係止部に係合し易くなる。
【0016】
本発明の第3の側面では、前記係止部は前記プレートに設けられた切欠(23)を含み、前記被係止部は隣接する複数の前記プレートに設けられた前記切欠にそれぞれ挿入されて、前記プレートに掛け止めされる引掛部(85)と、前記プレートの間に挿入される少なくとも一つの挿入壁(87)と、を備える。
【0017】
これによると、被係止部を複数のプレートに係止することができるため、被係止部を単一のプレートに係止する場合に比べて、コネクタを燃料電池により強く係止させることができる。また、被係止部が係止部に係止されたときに、プレートの間に挿入壁が挿入されるため、プレートの変形が防止できる。
【0018】
本発明の第4の側面では、前記引掛部が掛け止めされる複数の前記プレートのうち、隣接する前記プレートの間それぞれに前記挿入壁が挿入されている。
【0019】
これによると、隣接するプレート間それぞれに挿入壁が挿入されるため、隣接するプレートの電気的な接触が防止できる。
【0020】
本発明の第5の側面では、前記ロック部材には前記軸線の方向に沿って延びる一対の軸部(79)が設けられ、前記ハウジングは前記ロック部材の前記軸部を回転自在に受容する軸受部(81)を備え、且つ、前記ロック部材を収容するロック部材収容部(61)を有し、前記ロック部材収容部に前記レバーが挿入されることによって、前記ロック部材が回転する。
【0021】
これによると、ロック部材をハウジングに回転可能に支持させることができ、レバーをロック部材収容室に挿入することで、ロック部材を回転させることができる。
【0022】
本発明の第6の側面では、前記レバーの前記ハウジングへの挿入方向は、前記収容凹部への挿入方向と同一である。
【0023】
これによると、レバーをハウジングの挿入方向に移動させることによって、ロック部材を係止部に係止させることができる。そのため、レバーを挿入方向に直交する方向に移動させる場合に比べて、レバーの操作に要する挿入方向に直交する方向のスペースを低減することができる。
【0024】
本発明の第7の側面では、前記レバー及び前記ロック部材には、前記レバーの挿入方向の移動を前記ロック部材の回転に変換する第1カム機構(101)が設けられている。
【0025】
これによると、レバーのハウジングへの挿入によって、ロック部材を回転させることができる。
【0026】
本発明の第8の側面では、前記レバーと前記ハウジングとには、前記ロック部材が前記突出位置になったときに、前記レバーの挿入方向逆向きの移動を規制することにより、前記ロック部材の回転を規制する規制機構(103)が設けられている。
【0027】
これによると、ロック部材が突出位置になったときに、規制機構により、ロック部材の回転が規制される。これにより、ロック部材が突出した状態に維持されるため、コネクタの燃料電池からの抜けが防止できる。
【0028】
本発明の第9の側面では、前記レバーには、前記規制機構による規制に抗して、前記ハウジングから前記挿入方向逆向きに引き抜くための引抜部(107)を有し、前記レバーと前記ロック部材との間には、前記レバーの前記挿入方向逆向きの移動に応じて、前記ロック部材を前記突出位置から前記退避位置に回転させる第2カム機構(109)が設けられている。
【0029】
これによると、ツールを用いてレバーを引き抜くことによって、ロック部材が退避位置となるため、ロック部材と係止部との係合が解除されて、コネクタを燃料電池から分離することができる。
【0030】
本発明の第10の側面では、前記ロック部材は、前記ハウジングの挿入方向に直交し、且つ、前記積層方向に直交する方向における両端部にそれぞれ設けられている。
【0031】
この態様によれば、ロック部材がハウジングの一方側の端部に設けられている場合に比べて、コネクタをより強固に燃料電池に結合させることができる。
【発明の効果】
【0032】
このように本発明によれば、燃料電池に設けられた係止部に係合可能なコネクタであって、係止部に係止され易いコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ロック部材によって燃料電池に係止される前のコネクタの様子を示す斜視図
図2】燃料電池及び燃料電池に接続されたコネクタの鉛直方向における断面斜視図、及び、二点鎖線によって囲まれた部分の拡大図
図3】リテーナ及び端子部材を除くコネクタの分解斜視図、及び、二点鎖線によって囲まれた部分の拡大図
図4】端子部材の斜視図
図5】ロック部材を(A)ハウジング本体から離れた側及び(B)ハウジング本体の側から見たときの斜視図
図6図5(A)のVI-VI断面図
図7】レバーの斜視図
図8】ロック部材が(A)退避位置にあるときと、(B)突出位置にあるときを示すコネクタの側面図
図9】レバーの挿入により、ロック部材が(A)退避位置から(E)突出位置に変位するまでのレバー及びロック部材の位置の変化を説明するための左右方向断面図
図10】ロック部材が(A)退避位置にあるときと、(B)突出位置にあるときのレバーの位置を説明するための前後方向断面図
図11】(A)ツールによる引き抜き時のレバーとツールとの位置関係を示す左右方向側面図、及び、(B)XIB-XIB断面図
図12】ツールによる引き抜きにより、ロック部材が(A)突出位置から(E)退避位置に変位するまでのレバー及びロック部材の位置の変化を説明するための左右方向断面図
図13】コネクタの(A)第1変形例を示す斜視図、及び(B)第2変形例を示す斜視図
図14】コネクタの(A)第3変形例を示す斜視図、及び、(C)コネクタが燃料電池に接続されているときを示す左右方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態に係るコネクタについて図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1に示すように、本発明に係るコネクタ1は燃料電池3に取り付けられる。コネクタ1が取り付けられる燃料電池3は、図2に示すように、所定方向(以下、積層方向)に積層された複数のセル5を有している。本実施形態では、燃料電池3は積層方向が水平方向となるように車両に搭載されている。コネクタ1は燃料電池3のセル5それぞれの電圧をモニタするための電気コネクタとして使用される。
【0036】
以下、説明の便宜上、セル5の積層方向を前後方向とし、水平且つ積層方向に垂直な方向を左右方向、鉛直方向を上下方向として、燃料電池3にコネクタ1が接続されて係止された状態を基準として、説明を行う。但し、これらの方向は説明の便宜上のものであって、本発明は燃料電池3の姿勢や配置はそれらの方向には限定されない。また、本発明は燃料電池3の用途や種類にも限定されない。
【0037】
燃料電池3は固体高分子形燃料電池であって、図2の拡大図に示すように、電極膜接合体7(MEA:Membrane-Electrode Assembly)と、プレート9(セパレータ、分離板ともいう)とを備えている。
【0038】
電極膜接合体7は、電極となる空気極7A及び燃料極7Bと、空気極7A及び燃料極7Bの間に配置された高分子電解質膜7Cとを備えている。高分子電解質膜7Cは、絶縁性を有するフィルムであり、燃料極7Bで生成された水素イオンを空気極7Aへ移動させるイオン交換膜によって構成されている。空気極7A及び燃料極7Bにはそれぞれ反応触媒が塗布され、空気極7Aは正極(カソード)として、燃料極7Bは負極(アノード)として機能する。
【0039】
プレート9は電極膜接合体7の外側、すなわち、高分子電解質膜7Cを介して対峙する空気極7A及び燃料極7Bの外側に設けられている。これにより、プレート9は積層方向に間隔をおいて並んで配置されている。プレート9はステンレス(SUS)やチタン等の金属製の薄板によって構成されている。プレート9には水素や酸素(空気)を通過させる流路が設けられている。空気極7A及び燃料極7Bはそれぞれ外側に位置するプレート9に電気的に接触している。これにより、プレート9はそれぞれ電気的に接触する空気極7A又は燃料極7Bと同じ電位になっている。
【0040】
プレート9には前後方向(積層方向)に重なり合う位置にそれぞれ、内方に凹む収容凹部11が形成されている。詳細には、プレート9は方形板状をなし、収容凹部11はプレート9の上縁に設けられ、収容凹部11は下方に凹むように形成されている。電極膜接合体7にもまた収容凹部11と積層方向に重なる接合体凹部13が形成されている。複数のプレート9の収容凹部11と、電極膜接合体7の接合体凹部13とによって、前後方向に延びる収容溝15が構成されている。収容溝15によってコネクタ1が挿脱される収容空間17が規定されている。
【0041】
本実施形態では、燃料電池3の後端から順に数えて奇数番目に位置するプレート9は同形をなし、偶数番目に位置するプレート9もまた同形をなしている。奇数番目に位置するプレート9の収容凹部11の形状と、偶数番目に位置するプレート9の収容凹部11の形状とは、左右対称をなすため、以下、奇偶のうち、一方側のプレート9の収容凹部11について詳細に説明する。
【0042】
収容凹部11はプレート9の上縁において下方に四角形状に凹んでいる。収容凹部11の下縁には上方に延出する端子部19が設けられている。また、プレート9の収容凹部11には係止部21が設けられている。本実施形態では、係止部21は収容凹部11の左右一方側の縁部を画定している。係止部21は収容凹部11の上下方向略中央上寄りの位置から左右方向外側に凹む切欠23を含む。
【0043】
次に、コネクタ1の構造について、図面を参照して説明する。
【0044】
図3に示すように、コネクタ1は、ハウジング25と、端子部材27(図2参照)と、ロック部材29と、レバー31とを備えている。
【0045】
ハウジング25は樹脂製の部材であり、少なくとも一部において、収容空間17に上方から挿脱可能に構成されている。ハウジング25は、その中央部分を構成し、略直方体状をなすハウジング本体37と、ハウジング本体37の左右両側に設けられたハウジング側部39とを備えている。
【0046】
ハウジング本体37には上下方向に延びる端子孔41が複数設けられている。本実施形態では、ハウジング本体37には左右対をなして並ぶ2つの端子孔41が前後に並んで配置されている。
【0047】
端子部材27はそれぞれ金属製の部材によって構成されている。端子部材27はそれぞれ、端子孔41に挿入されて、ハウジング本体37に保持されている。本実施形態では、ハウジング本体37に後方から樹脂製のリテーナ47(図2参照)が挿入されることによって、端子部材27のハウジング本体37からの離脱が防止されている。
【0048】
端子部材27にはそれぞれ配線49が接続されている。コネクタ1が収容空間17に挿入されると、端子部材27はプレート9の端子部19に接触する。端子部材27の配線49間の電位差を測定することにより、セル5が発生する電圧それぞれを取得することができる。
【0049】
本実施形態では、端子部材27は、図4に示すように、金属部材を折り曲げることによって形成されている。端子部材27は、配線49(図2参照)が圧着される圧着部53と、端子部19に接触する接点部55とを備えている。圧着部53には配線49の芯線が圧着されることによって、配線49と端子部材27とが導通する。接点部55は互いに対向する面を有する一対の金属板によって構成されている。コネクタ1が収容空間17に挿入されたときには、接点部55を構成する金属板の間に端子部19が挿入され、金属板が端子部19に接触することにより、端子部材27はプレート9に電気的に接続する。
【0050】
図3に示すように、ハウジング側部39にはそれぞれ、その上端から下方に凹むロック部材収容部61が形成されている。ロック部材収容部61は四角柱状をなす凹部であり、下方に延びている。ロック部材収容部61の左右方向におけるハウジング本体37に近接する側の境界は、内壁63によって画定されている。ロック部材収容部61の左右方向におけるハウジング本体37に離反する側の境界は外壁65によって画定されている。ロック部材収容部61の前側の境界は前壁67によって画定され、ロック部材収容部61の後側の境界は後壁69によって画定され、ロック部材収容部61の下側の境界は下壁71によって画定されている。
【0051】
本実施形態では、ハウジング側部39はそれぞれ、ハウジング本体37の左右側部に設けられている。ハウジング側部39はそれぞれ、ハウジング本体37よりも上方(挿入方向逆方向)に突出している。ハウジング側部39の上面左右両縁にはそれぞれ上方(挿入方向逆方向)に突出する保護壁39Aが設けられている。
【0052】
下壁71の左右外面(ハウジング本体37から離れた側の側面)には、図3の拡大図に示すように、左右方向外側に突出し、上下方向に延在する板状の分離壁43が設けられている。分離壁43が設けられることによって、下壁71の左右外面には、分離壁43の間に、上下方向に延在する分離溝45が形成されている。ハウジング25が収容空間17に挿入されると、ハウジング本体37が収容空間17に収容されるとともに、分離溝45にプレート9が収容される。これにより、分離壁43が隣接するプレート9の間に挿入される。
【0053】
ロック部材29は樹脂製の部材である。本実施形態では、図1に示すように、ロック部材29はハウジング25の左右両端、すなわち、コネクタ1の挿入方向である下方に直交し、且つ、セル5の積層方向(前後方向)に直交する方向における両端部にそれぞれ設けられている。
【0054】
ロック部材29は、図5に示すように、前後一対のアーム部75と、前後方向に延び、アーム部75の下端を接続するアーム接続部77とを備えている。
【0055】
アーム部75はそれぞれ前後方向を向く面を有し、上下方向に延びる板状をなしている。アーム部75の上下方向中央にはそれぞれ円柱状の軸部79が設けられている。軸部79はそれぞれ円柱状をなし、互いに離反する方向に突出している。ハウジング側部39の前壁67及び後壁69にはそれぞれ軸部79を受容する軸受部81が設けられている。本実施形態では、軸受部81は前壁67及び後壁69においてそれぞれ前後方向に整合する位置において貫通する貫通孔として形成されている。
【0056】
図1に示すように、ロック部材29はアーム部75の軸部79がそれぞれ軸受部81に軸受された状態で、ロック部材収容部61に収容されている。これにより、ロック部材29は前後方向(積層方向)に延びる軸線Xを中心とする回転可能(回転自在)にハウジング25に支持されている。
【0057】
図3に示すように、外壁65の下縁にはそれぞれ左右方向に貫通する貫通孔83が設けられている。ロック部材29は軸線Xを中心とした回転によって、アーム部75がロック部材収容部61に収容され、アーム接続部77がハウジング25の内部に退避した退避位置と、アーム接続部77の一部が外壁65の貫通孔83を通過してロック部材収容部61の外部に到達し、ハウジング25の外部に突出した突出位置とに変位可能となっている。
【0058】
アーム接続部77は、アーム部75下端を接続する接続部本体85と、接続部本体85のハウジング本体37の反対側に設けられた複数の挿入壁87(図5(A)参照)と、接続部本体85のハウジング本体37側の面に設けられた複数の突条89(図5(B)参照)とを備えている。その他、図5(A)及び(B)に示すように、アーム部75上端にはそれぞれ互いに近接する方向に突出する突起91が設けられている。
【0059】
接続部本体85は、上下方向に延び、左右方向を向く面を有する縦壁85Aと、縦壁85A下端からハウジング本体37から離れる方向に延びる横壁85Bとを備え、L字状の横断面を有している。
【0060】
挿入壁87はそれぞれ前後方向を向く面を有する板状をなしている。挿入壁87は縦壁85Aのハウジング本体37から離れた側の面と、横壁85Bの上面とにそれぞれ接続されている。図5(A)に示すように、挿入壁87は互いに間隔をおいて配置されている。挿入壁87が設けられることによって、アーム接続部77には、挿入壁87の間に、ハウジング本体37側に凹むアーム収容溝87Aが形成されている。
【0061】
図5(B)に示すように、突条89は接続部本体85のハウジング本体37側の面から突出し、上下方向に延在する筋状をなしている。突条89は縦壁85Aのハウジング本体37側の面に、間隔をおいて配置されている。
【0062】
レバー31は樹脂製の部材であり、図1及び図8(A)に示すように、左右のロック部材収容部61にそれぞれ上方から挿入可能に構成されている。このように、ロック部材29が収容されたロック部材収容部61にレバー31が挿入可能に構成されているため、レバー31の挿入による押圧力や引抜力を変換し、ロック部材29を回転させることが可能となる。
【0063】
本実施形態では、レバー31は、左右方向に向く面を有するレバー本体93と、レバー本体93のハウジング本体37から離反する側の面に結合され、上下方向に延在する一対のレール部95と、レール部95の間から二又に分岐して突出し、ハウジング本体37から離反する側に突出するY字部97とを備えている。Y字部97は突端において前後方向に対峙するように配置された板部97Aを備えている。本実施形態では、Y字部97は前後に位置する2つのレール部95の間に位置している。
【0064】
図8(A)及び図9(A)に示すように、ロック部材29とレバー31とには、退避位置にあるロック部材29をその位置に保持する保持機構99が設けられている。保持機構99によって、レバー31の一部のみをロック部材収容部61に挿入することにより、ロック部材29を退避位置に維持することができる。
【0065】
本実施形態では、保持機構99は、レバー31に設けられたレール部95の突端面に設けられたレバー保持面95Aと、ロック部材29のアーム部75上端の突起91に設けられたロック保持面91Aとを含む。
【0066】
図7に示すように、レバー保持面95Aは左右方向であって、ハウジング本体37から離反する方向を向く平坦な面によって構成されている。図5(A)及び(B)に示すように、ロック保持面91Aは左右方向であって、ハウジング本体37に向く平坦な面によって構成されている。図9(A)に示すように、ロック部材29が退避位置にあるときには、レバー31の上端はロック部材収容部61から突出した位置にあり、レバー保持面95A及びロック保持面91Aが当接して、ロック部材29の回転が規制される。これにより、ロック部材29が退避位置に保持される。
【0067】
ロック部材29とレバー31とには、レバー31の挿入による押圧力によって、退避位置にあるロック部材29を回転させて突出位置に変位させる第1カム機構101が設けられている。これにより、図8(B)及び図9(B)~(E)に示すように、ハウジング本体37が収容凹部11に挿入されているときに、レバー31を挿入すると、レバー31の移動がロック部材29の軸線Xを中心とする回転に変換され、退避位置にあるロック部材29が突出位置となる。このとき、アーム接続部77が切欠23に突入して係止部21に係合する。これにより、アーム接続部77の上方への移動が規制され、コネクタ1の燃料電池3からの離脱が防止される。
【0068】
本実施形態では、第1カム機構101は、アーム接続部77の突条89に設けられた第1アーム傾斜面89Aと、レール部95の下端部に設けられた第1レール傾斜面95Bとによって構成されている。図5に示すように、第1アーム傾斜面89Aは下方に向かってハウジング本体37に近づく方向に傾斜している。第1レール傾斜面95Bは下方に向かうにつれて、ハウジング本体37に近づく方向に傾斜している。本実施形態では、2つのレール部95の下端部は前後方向に接続されて一体となり、第1アーム傾斜面89Aはその一体となった部分に形成されている。
【0069】
図9(A)~(E)に示すように、ロック部材29が退避位置にあるときに、ユーザがレバー31を上方からロック部材収容部61に挿入すると、第1レール傾斜面95Bが第1アーム傾斜面89Aに当接する。ユーザがレバー31を下方に向けて押圧すると、その押圧力によって、第1アーム傾斜面89Aが第1レール傾斜面95Bによってハウジング本体37から離れる方向に押し上げられる。これにより、ロック部材29が軸線Xを中心として回転し、突出位置に移動する。
【0070】
図9(E)に示すように、ロック部材29が突出位置にあるときには、ロック部材29が複数のプレート9に設けられた係止部21に係止される。本実施形態では、ロック部材29の接続部本体85が係止部21の切欠23に挿入されることによって、ロック部材29が係止部21に係止される。このとき、隣接するプレート9の間にはそれぞれ挿入壁87が挿入されている。
【0071】
レバー31とハウジング25とには、レバー31の挿入方向逆向きの移動を規制する規制機構103が設けられている(図10(A)及び(B)参照)。規制機構103によって、ロック部材29の回転が規制されて、ロック部材29が突出位置に維持される。
【0072】
本実施形態では、図10(A)及び(B)に示すように、規制機構103はロック部材収容部61を画定する外壁65に設けられた突出部65Aと、Y字部97の突端それぞれに設けられた係止爪97Bとを含む。
【0073】
突出部65Aは外壁65の貫通孔83の上方において、ロック部材収容部61に向けて突出している。突起91部は四角形状の横断面形状を有し、四角柱状をなしている。係止爪97Bは板部97Aの下部それぞれに設けられ、互いに近接する方向に突出している。
【0074】
ユーザがレバー31を下方に向けて押圧すると、図10(A)に示すように、突出部65AはY字部97の突端を構成する2つの板部97Aの間に挿入される。このとき、係止爪97Bはそれぞれ突出部65Aの前後側面に摺接し、Y字部97は板部97Aが離れるように弾性変形している。
【0075】
レバー31の下方への移動によって、ロック部材29が突出位置となると、図10(B)に示すように、係止爪97Bは突出部65Aの下側に移動し、Y字部97は元の形状に戻る。これにより、突出部65Aによって係止爪97Bの上方への移動が規制されるため、レバー31の上方(すなわち、挿入方向逆向き)の移動が規制され、ロック部材29が突出位置に維持される。よって、コネクタ1と燃料電池3との係合が維持され、コネクタ1の燃料電池3からの抜けが防止できる。
【0076】
図10(A)に示すように、コネクタ1にはレバー31がハウジング25から離脱することを防止する離脱防止機構104が設けられているとよい。本実施形態では離脱防止機構104は、Y字部97に設けられた離脱防止爪97Cと、ロック部材収容部61の開口縁(上縁)に設けられた離脱防止突起61Aとを含む。離脱防止爪97Cは板部97Aの互いに離反する側の面それぞれに設けられ、離脱防止爪97Cは互いに離反する方向に突出している。離脱防止突起61Aは退避位置にあるレバー31の離脱防止爪97C上方に位置し、それぞれロック部材収容部61の内側に突出している。これにより、離脱防止突起61Aによって離脱防止爪97Cの上方の移動が規制され、レバー31がハウジング25からの離脱が防止される。
【0077】
その他、レバー31をロック部材収容部61への挿入を容易にするため、離脱防止爪97Cに上方に向けて板部97Aから離れる方向に傾斜する斜面や、離脱防止突起61Aにロック部材収容部61の内側に向けて下方に傾斜する斜面が設けられているとよい。
【0078】
図1に示すように、ロック部材29はハウジング25の左右両端にそれぞれ設けられている。そのため、ロック部材29がハウジング25の一方側の端部、すなわち、左端及び右端の一方にのみ設けられている場合に比べて、コネクタ1をより強固に燃料電池3に結合させることができる。
【0079】
レバー31は、規制機構103による規制に抗して、ハウジング25から挿入方向逆向きに引き抜くためのツール105に係脱する引抜部107を有している。
【0080】
本実施形態では、引抜部107はY字部97の突端部分に設けられている。詳細には、引抜部107は板部97Aの後縁を接続し、上下方向を向く面を有する板状をなしている。
【0081】
図12(A)~(E)に示すように、ユーザがツール105を引抜部107に係合させて、ツール105を上方に引っ張ると、規制機構103による規制が解除されて、レバー31が上方に移動する。
【0082】
レバー31とロック部材29との間には、レバー31の挿入方向逆向き(上方)の移動に応じて、ロック部材29を突出位置から退避位置に回転させる第2カム機構109が設けられている。これにより、レバー31の挿入方向逆向き(上方)の移動がロック部材29の回転に変換され、ロック部材29は突出位置から退避位置に回転する。
【0083】
本実施形態では、第2カム機構109はレバー31のレール部95上端に設けられた第2レール傾斜面95C(図7も参照)と、ロック部材29のアーム部75上端の突起91に設けられた第2アーム傾斜面91B(図5(A)及び(B)も参照)とを含む。レバー31が挿入され、ロック部材29が突出位置にあるときに、第2レール傾斜面95Cは上方に向かってハウジング本体37に近接する方向に傾斜する態様をなしている。第2アーム傾斜面91Bもまた、上方に向かってハウジング本体37に近接する方向に傾斜している。
【0084】
引抜部107にツール105を引っ掛けて、ユーザがレバー31を上方に引き上げると、Y字部97の突端が開くように変形して、係止爪97Bがそれぞれ突出部65Aの前後側面に沿って移動可能となり、規制機構103による規制が解除される。
【0085】
また、第2レール傾斜面95Cが第2アーム傾斜面91Bに当接し、レバー31の上方の移動に応じて、アーム部75の上端がハウジング本体37から離れる方向に押し出される。これにより、ロック部材29が軸線Xを中心して回転し、突出位置から退避位置へ変位する。これにより、ロック部材29と係止部21との係合が解除され、コネクタ1が燃料電池3から分離可能となる。
【0086】
次に、このように構成したコネクタ1の効果について説明する。
【0087】
燃料電池3においては、製造時や使用時においてプレート9の積層ずれが生じることがあり、また、積層ずれが累積するという問題がある。
【0088】
そのため、プレート9に係止部21を設け、係止部21に係脱するロック部を設けて、燃料電池3からのコネクタ1の脱落を防止する場合には、ロック部の通常よりも可動範囲を大きく設定し、十分な係代を確保する必要がある。
【0089】
ハウジング25に係止部21に係脱するロック部を構成する方法として、例えば、ハウジング25に樹脂材によって撓み変形可能に構成され、ロック部を備えたアームを設けることが考えられる。その場合、アームの撓み変形によって、ロック部が係止部21に係脱することになり、樹脂材の機械強度を超えてアーム部75を変形させることができない。そのため、ロック部の可動範囲を確保することができず、係止部21とロック部との係代が不十分となる虞がある。
【0090】
一方、本発明では、レバー31のロック部材収容部61への挿入によってロック部材29が回転する。これにより、ロック部材29が退避位置から突出位置に変位して、ロック部材29が係止部21に係止される。このように、ロック部材29の変位がロック部材29の回転によって行われるため、撓み変形などを用いる場合に比べて、ロック部材29の可動範囲が大きくなり、ロック部材29のハウジング25からの突出量が確保し易くなる。そのため、コネクタ1が係止部21に係止され易くなる。このように、本発明によるコネクタ1は、積層寸法に通常よりも大きな公差であっても、燃料電池3により確実に係合させることができ、また、コネクタ1の燃料電池3からの抜けがより確実に防止できる。
【0091】
これにより、コネクタ1の燃料電池3からの抜けが防止されることによって、セル5の電圧を良好にモニタすることができる。これにより、例えば、電動車両に搭載された燃料電池3の状態を良好にモニタすることが可能となるため、本発明に係るコネクタ1は、延いては、CO2排出量の削減や、エネルギー効率の改善に寄与するものである。
【0092】
ロック部材29が突出位置にあるとき、アーム接続部77がハウジング25から露出し、プレート9の切欠23に突入する。このように、突出位置にあるときに、アーム接続部77がハウジング25から露出するため、アーム接続部77を係止部21(切欠23)に容易に係止させることができる。
【0093】
また、撓み変形するアームにより、係止部21に係脱するロック部を構成した場合、コネクタ1の挿入時に、ロック部がプレート9の端部に摺接することになる。そのため、プレート9の変形が生じる虞がある。一方、本発明では、コネクタ1(ハウジング本体37)を収容溝15に挿入するときには、ロック部材29は退避位置に保持される。そのため、コネクタ1の挿入時には、ロック部材29はプレート9に当接することがないため、プレート9の変形がより確実に防止できる。
【0094】
コネクタ1は収容溝15に上方から下方に向けて挿入される。また、レバー31を上方から下方に向けてロック部材収容部61に挿入されることにより、ロック部材29が係止部21に係止される。このように、コネクタ1の挿抜方向とレバー31の操作方向とはともに下方であり、同一になっている。
【0095】
一方、コネクタ1の挿抜方向とレバー31の操作方向とが異なる場合には、レバー31の操作によって、コネクタ1からプレート9に面直方向の荷重が加わる虞がある。そのため、燃料電池3には、レバー31の操作によって加わりうる面直方向の荷重に耐えうる強度が求められる。本発明では、コネクタ1の挿抜方向とレバー31の操作方向とが同じであるため、レバー31の操作によって加わりうる面直方向の荷重を抑えることができる。よって、コネクタ1の挿抜方向とレバー31の操作方向とが異なる場合に比べて、燃料電池3に求められるプレート9に面直方向の強度を抑えることができる。
【0096】
本発明では、レバー31の操作は,ハウジング25の上方(挿入方向逆側)から行うことができる。すなわち、ハウジング25の収容空間17(収容凹部11)への挿入方向と、レバー31の挿入方向とは同一である。そのため、レバー31をコネクタ1の挿入方向に対して左右側方から操作するように構成した場合に比べて、レバー31の操作のために要する挿入方向に直交する方向のスペースを低減することができる。これにより、コネクタ1の周辺のロック部材29を操作するためのスペースを少なくすることができる。
【0097】
また、レバー31の操作は,ハウジング25の上方から行うように構成することで、配線49の引き回しに必要なスペースを活用することができる。これにより、コネクタ1を燃料電池3のように密集してコネクタ1を配置することが求められる用途に適したものにすることができる。
【0098】
退避位置にあるロック部材29をその位置に保持する保持機構99によって、ハウジング25の収容溝15への挿入時にロック部材29を退避位置に保持することができるため、挿入時に、ロック部材29がプレート9に当接することを防止することができる。これにより、コネクタ1の組付時にプレート9に荷重がかかり難くなるため、燃料電池3のプレート9の変形を防止することができ、プレート9の保護を図ることができる。
【0099】
図12(A)に示すように、本実施形態では、ロック部材29が突出位置になった後も、レバー31を下方に挿入することができる。レバー31がロック部材収容部61に完全に挿入されているときには、ロック部材29の回転によって、第1アーム傾斜面89Aと、第1レール傾斜面95Bとが係合(当接)しないように構成されている。そのため、レバー31がロック部材収容部61に完全に挿入されているときに、コネクタ1に収容溝15から離反する方向(上方)の荷重が加わった場合であっても、第1アーム傾斜面89Aと、第1レール傾斜面95Bとが係合せず、レバー31が上方に浮き上がることがない。また、突条89の突端面と、レール部95の突端面とが当接し、ロック部材29の回転を規制するため、ロック部材29と係止部21との係合が解除されず、コネクタ1が燃料電池3からの抜けが防止される。
【0100】
また、レバー31をツール105により上方に引き抜くと、ロック部材29は退避位置に移動し、コネクタ1が燃料電池3から分離可能となる。そのため、コネクタ1を燃料電池3から取り外すときにおいても、ロック部材29がプレート9に接触することが防止でき、プレート9の保護を図ることができる。
【0101】
ハウジング25が収容空間17に挿入されると、分離溝45にプレート9が収容され、分離壁43が隣接するプレート9の間に挿入される。これにより、隣接するプレート9同士の接触が防止でき、更に、プレート9の撓みや変形を防止することができる。また、ロック部材29が突出位置にあるとき、プレート9はアーム収容溝87Aに収容され、ロック部材29の挿入壁87はプレート9の間に挿入される。これにより、隣接するプレート9同士の接触を防止することができる。
【0102】
ロック部材29は回転により退避位置から突出位置に変位する。そのため、撓み変形するアームにより、係止部21に係脱するロック部を構成した場合に比べて、プレート9の間により深くに挿入壁87を挿入することができる。よって、隣接するプレート9同士の接触をより効果的に防止することができる。
【0103】
接続部本体85が複数の切欠23に突入することによって、接続部本体85が複数の係止部21に引っ掛かり、ロック部材29が複数の係止部21に係止される。すなわち、接続部本体85が複数のプレート9に設けられた切欠23にそれぞれ挿入されて、係止部21それぞれに引っ掛かる引掛部として機能する。また、アーム接続部77は係止部21に係止される被係止部として機能する。
【0104】
このように、接続部本体85が複数の切欠23に突入するため、接続部本体85が単一の切欠23に突入することによってロック部材29が係止される場合に比べて、コネクタ1をより強く燃料電池3に係止させることができる。また、接続部本体85が切欠23に突入することによって係止されるため、プレート9の積層方向にずれた場合であっても、ロック部材29を係止部21に係止させることができ、コネクタ1を燃料電池3に係止させることができる。
【0105】
本実施形態では、図1に示すように、ハウジング側部39の上面左右両縁にそれぞれ、上方に突出する保護壁39Aが設けられている。これにより、レバー31が左右側方から保護壁39Aによって囲まれることになり、物体等の衝突によるユーザの意図しないレバー31の挿入が防止できる。
【0106】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上記の実施形態に示したコネクタ1の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも当業者であれば本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【0107】
上記実施形態において、コネクタ1には、保持機構99、第1カム機構101、規制機構103、離脱防止機構104、及び、第2カム機構109の5つの機構が設けられていたが、コネクタ1には第1カム機構101と規制機構103のみが設けられていてもよい。上記実施形態において、第1カム機構101、規制機構103、離脱防止機構104、第2カム機構109はそれぞれ例示に過ぎず、同様の効果を奏する他の構成によって実現されていてもよい。
【0108】
上記実施形態において、接続部本体85がハウジング25から突出するときに、ロック部材29が突出位置にあると記載したが、突出位置にあるときに、接続部本体85が切欠23に係合能であればよい。例えば、ロック部材29が突出位置にあるときに、接続部本体85の少なくとも一部が底面45A(図9(E)参照)の外側に位置し、少なくとも一部において切欠23に突入して、ロック部材29がプレート9に係止される態様であればいかなる態様であってもよい。
【0109】
上記実施形態において、引抜部107はY字部97の突端部分に設けられていたが、本発明は引抜部107の位置には限定されない。また、上記実施形態ではツール105を用いてレバー31を引き抜く構成を例示して説明したが、本発明においてツール105は必須ではなく、本発明はレバー31を引き抜くためのツール105の有無によっては限定されない。
【0110】
図13(A)及び図13(B)にはそれぞれ、引抜部107の変形例が示されている。図13(A)及び(B)に示すように、引抜部107は例えば、レバー本体93の上縁、すなわち、挿入方向における後縁に設けられていてもよい。
【0111】
引抜部107は、レバー本体93の挿入方向における後縁にて、挿入方向に直交する方向に突出する壁体によって構成されていてもよい。例えば、引抜部107は、図13(A)(コネクタ1の第1変形例)に示すように、レバー本体93の上縁において配線49(端子部材27)の側に向けて突出する突壁107Aによって構成されていてもよい。また、引抜部107は、図13(B)(コネクタ1の第2変形例)に示すように、例えば、レバー本体93の上縁において配線49(端子部材27)の側に向けて突出する突壁107Bによって構成されていてもよい。このように構成されることで、ユーザは直接、レバー本体93の挿入方向における後端部分を容易に摘まむことができるため、ツール105を用いることなくレバー31をハウジング25に挿脱することができる。
【0112】
また、上記実施形態においては、コネクタ1の左右両端にそれぞれロック部材29が設けられている例を示したが、本発明は、ロック部材29の位置はコネクタ1の左右端でなくてもよく、また、ロック部材29の数は2には限定されない。例えば、図14(A)(コネクタ1の第3変形例)に示すように、レバー31がコネクタ1の左右片側のみに設けられ、図14(B)に示すように、ロック部材29もまた、コネクタ1の左右片側のみに設けられる態様であってよい。コネクタ1には、少なくとも一つのロック部材29が設けられていればよく、ロック部材29を出没させるためのレバー31もまた少なくとも1つ設けられていればよい。
【0113】
また、上記実施形態において、コネクタ1には2つの保護壁39Aが設けられていたが、保護壁39Aは必須ではなく、また、コネクタ1に1つの保護壁39Aが設けられる態様であってもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 :コネクタ
3 :燃料電池
5 :セル
7 :電極膜接合体
7A :空気極
7B :燃料極
7C :高分子電解質膜
9 :プレート
11 :収容凹部
13 :接合体凹部
15 :収容溝
17 :収容空間
19 :端子部
21 :係止部
23 :切欠
25 :ハウジング
27 :端子部材
29 :ロック部材
31 :レバー
37 :ハウジング本体
39 :ハウジング側部
39A :保護壁
41 :端子孔
43 :分離壁
45 :分離溝
45A :底面
47 :リテーナ
49 :配線
53 :圧着部
55 :接点部
61 :ロック部材収容部
61A :離脱防止突起
63 :内壁
65 :外壁
65A :突出部
67 :前壁
69 :後壁
71 :下壁
75 :アーム部
77 :アーム接続部(被係止部)
79 :軸部
81 :軸受部
83 :貫通孔
85 :接続部本体(引掛部)
85A :縦壁
85B :横壁
87 :挿入壁
87A :アーム収容溝
89 :突条
89A :第1アーム傾斜面
91 :突起
91A :ロック保持面
91B :第2アーム傾斜面
93 :レバー本体
95 :レール部
95A :レバー保持面
95B :第1レール傾斜面
95C :第2レール傾斜面
97 :Y字部
97A :板部
97B :係止爪
97C :離脱防止爪
99 :保持機構
101 :第1カム機構
103 :規制機構
104 :離脱防止機構
105 :ツール
107 :引抜部
107A :突壁
107B :突壁
109 :第2カム機構
X :軸線
【要約】
【課題】燃料電池に設けられた係止部に係合可能なコネクタであって、係止部に係止され易いコネクタを提供する。
【解決手段】燃料電池3に着脱可能なコネクタ1であって、燃料電池は、所定の積層方向に間隔をおいて配置され、それぞれが収容凹部11を有する複数のプレート9を備え、プレートの収容凹部それぞれには係止部21が設けられ、コネクタは、複数のプレートの収容凹部に挿入可能なハウジング25と、ハウジングに保持され、ハウジングが収容凹部に挿入されたときにプレートに電気的に接続する端子部材27と、ハウジングに挿入可能なレバー31と、レバーの挿入による押圧力によって、積層方向に延びる軸線を中心として回転し、係止部に係合するロック部材29とを有する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14