(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法、射出成形型および樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
B29C 33/44 20060101AFI20230608BHJP
F16J 15/328 20160101ALI20230608BHJP
F16J 15/3272 20160101ALI20230608BHJP
【FI】
B29C33/44
F16J15/328
F16J15/3272
(21)【出願番号】P 2022208612
(22)【出願日】2022-12-26
【審査請求日】2023-02-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】石森 潤一
(72)【発明者】
【氏名】丹野 佑一朗
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-089718(JP,A)
【文献】特開2022-146093(JP,A)
【文献】特開2022-000590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って相互に反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面との間の内周面および外周面とを有し、第1端部と第2端部とを含む円弧状の樹脂成形品を製造する方法であって、
前記内周面を形成する内周成形面を有する内側金型と、前記外周面を形成する外周成形面を有する外側金型とを含
む射出成形型であって、当該射出成形型のうち前記外周面との対向面には前記内側金型と前記外側金型との境界である分割線がない射出成形型の内部空間に樹脂材料を供給することで、前記樹脂成形品と当該樹脂成形品の前記内周面に接続された1以上の突起部とを含む中間成形品を形成する成形工程と、
前記内側金型を除去する型開工程と、
前記1以上の突起部を移動することで前記中間成形品を前記外側金型から離型する離型工程と
を含む樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記1以上の突起部は、第1突起部と第2突起部とを含み、
前記離型工程においては、前記第1突起部と前記第2突起部とを相互に接近させることで前記樹脂成形品を前記外側金型から離型する
請求項1の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記内部空間は、
前記樹脂成形品を形成する円弧状の成形空間と、
前記成形空間に前記樹脂材料を供給するための供給流路と、
前記第1突起部を形成する第1空間と、
前記第2突起部を形成する第2空間とを含み、
前記供給流路は、周方向における前記成形空間の特定地点に連通し、
前記第1空間は、前記成形空間のうち前記特定地点と前記第1端部に対応する端部との間に連通し、
前記第2空間は、前記成形空間のうち前記特定地点と前記第2端部に対応する端部との間に連通する
請求項2の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記外側金型の内周面には、周方向に沿って成形溝が形成され、
前記成形溝は、前記外周成形面を底面として、前記第1面のうち第1外領域を形成する第1側面と、前記第2面のうち第2外領域を形成する第2側面とを有し、
前記内側金型は、前記第1面のうち前記第1外領域の内側の第1内領域を形成する第1成形面と、前記第2面のうち前記第2外領域の内側の第2内領域を形成する第2成形面とを含む
請求項1の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記第1側面と前記外周成形面との間の第1角部、および、前記第2側面と前記外周成形面との間の第2角部、の少なくとも一方はR形状である
請求項4の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記内側金型は、
前記第1成形面と前記内周成形面のうち第1内周面とを含む第1金型と、
前記第2成形面と前記内周成形面のうち第2内周面とを含む第2金型とを含み、
前記第1内周面と前記第2内周面との境界は、軸方向において前記第1面と前記第2面との間に位置する
請求項4または請求項5の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記第1金型のうち前記第2金型に対向する第1対向面に、前記1以上の突起部における一部を形成する第1成形孔が形成され、
前記第2金型のうち前記第1金型に対向する第2対向面に、前記1以上の突起部における他の一部を形成する第2成形孔が形成される
請求項
6の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
軸方向に沿って相互に反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面との間の内周面および外周面とを有し、第1端部と第2端部とを含む円弧状の樹脂成形品の製造に利用される射出成形型であって、
前記内周面を形成する内周成形面を有する内側金型と、
前記外周面を形成する外周成形面を有する外側金型とを具備し、
当該射出成形型のうち前記外周面との対向面には、当該対向面の周縁を含む全域にわたり、前記内側金型と前記外側金型との境界である分割線がなく、
前記外側金型の内周面には、周方向に沿って成形溝が形成され、
前記成形溝は、前記外周成形面を底面として、前記第1面のうち第1外領域を形成する第1側面と、前記第2面のうち第2外領域を形成する第2側面とを有し、
前記内側金型は、前記第1面のうち前記第1外領域の内側の第1内領域を形成する第1成形面と、前記第2面のうち前記第2外領域の内側の第2内領域を形成する第2成形面とを含む
射出成形型。
【請求項9】
軸方向に沿って相互に反対側に位置する第1面および第2面と、
前記第1面と前記第2面との間の内周面および外周面と、
第1端部および第2端部と
を含む円弧状の樹脂成形品であって、
前記第1面のうち
、当該第1面の外周縁を含む第1外領域と
、前記第1外領域の内側
に位置し前記第1面の内周縁を含む第1内領域との間に、周方向に沿う線状の第1突起が形成され、
前記第2面のうち
、当該第2面の外周縁を含む第2外領域と
、前記第2外領域の内側
に位置し前記第2面の内周縁を含む第2内領域との間に、周方向に沿う線状の第2突起が形成され
、
前記外周面には、当該外周面の周縁を含む全域にわたり、射出成形型の分割線に対応する線状バリがない
樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシールリングまたはバックアップリング等の樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
相互に対向する部材の間隙の封止にはシールリング等の樹脂成形品が利用される。例えば特許文献1には、周方向の1箇所に合口部が形成されたシールリングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂成形品を無理に変形させることなく金型から離型できること(以下「離型性」という)が重要である。しかし、離型性を確保するために複数の金型の分割面(パーティングライン)の位置が制約され、結果的に、樹脂成形品のうちシールに寄与する領域に、金型の分割面に対応する線状のバリ(以下「線状バリ」という)が形成される場合がある。密封性能の確保のためには、例えば研磨等の作業により線状バリを除去することが必要であり、製造コストが増大するという課題がある。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、樹脂成形品の離型を容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のひとつの態様に係る樹脂成形品の製造方法は、軸方向に沿って相互に反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面との間の内周面および外周面とを有し、第1端部と第2端部とを含む円弧状の樹脂成形品を製造する方法であって、前記内周面を形成する内周成形面を有する内側金型と、前記外周面を形成する外周成形面を有する外側金型とを含む射出成形型の内部空間に樹脂材料を供給することで、前記樹脂成形品と当該樹脂成形品の前記内周面に接続された1以上の突起部とを含む中間成形品を形成する成形工程と、前記内側金型を除去する型開工程と、前記1以上の突起部を移動することで前記中間成形品を前記外側金型から離型する離型工程とを含む。
【0006】
本開示のひとつの態様に係る射出成形型は、相互に反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面との間の内周面および外周面とを有し、第1端部と第2端部とを含む円弧状の樹脂成形品の製造に利用される射出成形型であって、前記内周面を形成する内周成形面を有する内側金型と、前記外周面を形成する外周成形面を有する外側金型とを具備し、前記外側金型の内周面には、周方向に沿って成形溝が形成され、前記成形溝は、前記外周成形面を底面として、前記第1面のうち第1外領域を形成する第1側面と、前記第2面のうち第2外領域を形成する第2側面とを有し、前記内側金型は、前記第1面のうち前記第1外領域の内側の第1内領域を形成する第1成形面と、前記第2面のうち前記第2外領域の内側の第2内領域を形成する第2成形面とを含む。
【0007】
本開示のひとつの態様に係る樹脂成形品は、軸方向に沿って相互に反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面との間の内周面および外周面と、第1端部および第2端部とを含む円弧状の樹脂成形品であって、前記第1面のうち第1外領域と前記第1外領域の内側の第1内領域との間に、周方向に沿う線状の第1突起が形成され、前記第2面のうち第2外領域と前記第2外領域の内側の第2内領域との間に、周方向に沿う線状の第2突起が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る密封構造の断面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線の断面図である。
【
図13】シールリングを製造する工程のフローチャートである。
【
図15】対比例における射出成形型の模式図である。
【
図17】第2実施形態における射出成形型の内部空間の平面図である。
【
図18】第2実施形態における型開工程および離型工程の説明図である。
【
図19】第3実施形態における射出成形型の内部空間の平面図である。
【
図20】第3実施形態における型開工程および離型工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A:第1実施形態
A-1:密封構造100
図1は、第1実施形態に係る密封構造100の構成を例示する断面図である。密封構造100は、例えば自動変速機(AT:Automatic Transmission)または無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)等の変速機に採用される機構である。
図1に例示される通り、密封構造100は、筐体11と軸部材12とシールリング20とを具備する。
【0010】
筐体11は、軸孔112が形成されたハウジングである。軸孔112は、断面形状が円形状である開口である。軸部材12は、軸孔112に挿入される円柱状の構造体である。筐体11における軸孔112の内周面113と軸部材12の外周面122との間には環状の隙間15が形成される。シールリング20は、隙間15を密封する環状の樹脂成形品である。隙間15は、シールリング20を挟んで空間151と空間152とに仕切られる。空間151は、空間152と比較して高圧に維持される。例えば、空間151にはオイル等の流体が充填され、空間152は大気に解放される。
【0011】
以下の説明においては、シールリング20の中心軸Cを想定する。中心軸Cに沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向とは反対の方向をX2方向と表記する。空間152は空間151のX2方向に位置する。また、以下の説明では、X1方向およびX2方向を「軸方向X」と総称する。中心軸Cは、筐体11の軸孔112の中心軸、または軸部材12の中心軸とも換言される。軸部材12は、中心軸Cを中心として回転可能である。
【0012】
中心軸Cを中心とした任意の直径の仮想円における円周に沿う方向を「周方向」と表記し、当該仮想円の半径の方向を「径方向」と表記する。径方向において中心軸Cに向かう方向を「内側」と表記し、中心軸Cとは反対に向かう方向を「外側」と表記する。
【0013】
図1に例示される通り、軸部材12の外周面122には取付溝13が形成される。取付溝13は、軸部材12の全周にわたり周方向に沿う凹部である。取付溝13は、側面131と側面132と底面133とを含む。側面131と側面132とは軸方向Xに相互に間隔をあけて対向する。側面131は側面132に対してX1方向に位置する。底面133は、側面131と側面132とを連結する円弧面である。第1実施形態のシールリング20は取付溝13に収容される。
【0014】
A-2:シールリング20
図2は、シールリング20の平面図であり、
図3は、
図2におけるIII-III線の断面図である。
図2に例示される通り、第1実施形態のシールリング20は、合口部21と胴体部22とを含む中実なシールリング部である。
【0015】
具体的には、シールリング20は、第1端部E1と第2端部E2とを含む円弧状の構造体である。第1端部E1と第2端部E2とは、周方向において相互に重複する。第1端部E1および第2端部E2は、周方向の1箇所に位置する合口部21を構成する。すなわち、第1実施形態のシールリング20は、円環状の部材が1箇所において切断された円弧状の部材であり、切断された箇所が合口部21である。第1端部E1および第2端部E2は、周方向に沿って相対的に移動可能に構成される。例えば、第1端部E1および第2端部E2が相互に離間した状態でシールリング20が軸部材12に装着される。
【0016】
シールリング20のうち合口部21以外の円弧状の部分が胴体部22である。シールリング20において周方向に直交する断面の寸法および形状は、各端部(第1端部E1,第2端部E2)以外の胴体部22の全体にわたり実質的に同一である。
【0017】
シールリング20は、各種の樹脂材料で形成される。例えば、シールリング20は、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)、PPS(Poly Phenylene Sulfide)またはPA(PolyAmide)等の熱可塑性樹脂で形成される。詳細は後述するが、射出成形型200を利用した樹脂材料の射出成形によりシールリング20が形成される。
【0018】
図3に例示される通り、第1実施形態のシールリング20の断面形状は、実質的に矩形状である。具体的には、シールリング20は、第1面F1と第2面F2と内周面Gaと外周面Gbとを含む。第1面F1と第2面F2とは軸方向Xに沿って相互に反対側に位置する。すなわち、第1面F1は、法線がX1方向に沿う円弧状の平面であり、第2面F2は、法線がX2方向に沿う円弧状の平面である。内周面Gaおよび外周面Gbは、第1面F1と第2面F2との間に位置する。
【0019】
前述の通り、空間151は空間152と比較して高圧である。したがって、
図1に例示される通り、取付溝13の内部においてシールリング20はX2方向に押圧される。第1面F1は、取付溝13の側面131に間隔をあけて対向し、第2面F2は取付溝13の側面132に密着する。また、内周面Gaは、取付溝13の底面133に間隔をあけて対向し、外周面Gbは全体にわたり筐体11の内周面113に密着する。
【0020】
図3に例示される通り、第1面F1は、第1内領域F1aと第1外領域F1bとを含む。第1内領域F1aは、第1面F1の内周縁を含む所定幅の円弧状の領域である。第1外領域F1bは、第1面F1の外周縁を含む所定幅の円弧状の領域である。したがって、第1内領域F1aは、第1外領域F1bの内側に位置する。
図3には、第1外領域F1bと第1内領域F1aとの間の境界B1が図示されている。境界B1は、シールリング20の成形に使用される射出成形型200の分割線(PL:Parting Line)に対応する。
【0021】
第2面F2は、第2内領域F2aと第2外領域F2bとを含む。第2内領域F2aは、第2面F2の内周縁を含む所定幅の円弧状の領域である。第2外領域F2bは、第2面F2の外周縁を含む所定幅の円弧状の領域である。したがって、第2内領域F2aは、第2外領域F2bの内側に位置する。
図3には、第2外領域F2bと第2内領域F2aとの間の境界B2が図示されている。境界B2は、射出成形型200の分割線に対応する。
図1に例示される通り、第2面F2のうち第2内領域F2aの一部が取付溝13の側面132に密着する。第2面F2の第2外領域F2bおよび境界B2は、側面132に接触しない。
【0022】
図3に例示される通り、シールリング20の内周面Gaは、第1部分Ga1と第2部分Ga2とを含む。第1部分Ga1は、第1面F1に隣合う領域であり、第2部分Ga2は、第2面F2に隣合う領域である。したがって、第1部分Ga1は第2部分Ga2に対してX1方向に位置する。
図3には、第1部分Ga1と第2部分Ga2との間の境界B12が図示されている。境界B12は、射出成形型200の分割線に対応する。
【0023】
図3に例示される通り、第1面F1と外周面Gbとの間の角部A1はR形状である。すなわち、角部A1は、第1面F1と外周面Gbとを連続的に連結する円弧面である。例えば角部A1の半径は0.1mm程度(R0.1)である。角部A1は、第1面F1と外周面Gbとの交差に対応する部分である。同様に、第2面F2と外周面Gbとの間の角部A2はR形状である。すなわち、角部A2は、第2面F2と外周面Gbとを連続的に連結する円弧面である。例えば角部A2の半径は0.1mm程度(R0.1)である。角部A2は、第2面F2と外周面Gbとの交差に対応する部分である。
【0024】
A-3:中間成形品300
射出成形型200の説明に先立ち、シールリング20の製造の過程において射出成形型200により成形される中間的な成形品(以下「中間成形品300」という)について説明する。
図4は、中間成形品300の平面図であり、
図5は、
図4におけるV-V線の断面図である。射出成形型200は、中間成形品300を成形するための金型である。
【0025】
図4および
図5に例示される通り、中間成形品300は、最終的な製造目標であるシールリング20に加えて補助成形部30と第1タブ41と第2タブ42とを含む。補助成形部30と第1タブ41と第2タブ42とは、シールリング20の内周面Gaに接続された突起部である。
【0026】
補助成形部30は、シールリング20のうち周方向における第1端部E1と第2端部E2との中点に連結される。補助成形部30は、柱状部分31と分岐部分32とを含む。柱状部分31は、中心軸Cを中心とする円柱状の部分である。分岐部分32は、柱状部分31の外周面から径方向に直線状に突出する部分である。分岐部分32の先端部(ゲート)がシールリング20の内周面Gaに連続する。
【0027】
第1タブ41および第2タブ42は、周方向におけるシールリング20の相異なる位置に設置される。第1タブ41は、第1端部E1と補助成形部30との間に設置される。具体的には、第1タブ41は、シールリング20における第1端部E1の近傍に接続される。また、第2タブ42は、第2端部E2と補助成形部30との間に設置される。具体的には、第2タブ42は、第2端部E2と補助成形部30との間に設置される。
【0028】
第1タブ41および第2タブ42の各々は、把持部44と連結部45とを含む。把持部44は、軸方向Xに沿う円柱状の部分である。連結部45は、シールリング20と把持部44とを連結する部分である。
【0029】
図5に例示される通り、軸方向Xにおける把持部44の寸法H1(高さ)は、軸方向Xにおけるシールリング20の寸法T(厚さ)を上回る(H1>T)。把持部44におけるX1方向の端部441は、シールリング20の第1面F1よりもX1方向に位置する。また、把持部44におけるX2方向の端部442は、シールリング20の第2面F2よりもX2方向に位置する。また、軸方向Xにおける連結部45の寸法H2は、軸方向Xにおけるシールリング20の寸法Tを下回る(H2<T)。
【0030】
A-4:射出成形型200
図6は、射出成形型200の断面図である。なお、以下の説明においては、シールリング20の中心軸Cを射出成形型200の説明にも流用する。
【0031】
図6に例示される通り、第1実施形態の射出成形型200は、内側金型50と外側金型60とを含む。内側金型50は、円柱状または円板状の可動型である。外側金型60は、内側金型50を包囲する円環状の固定型である。内側金型50の外周面51と外側金型60の内周面61とは相互に密着する。内側金型50と外側金型60との間には、シールリング20を形成するための円弧状の成形空間Sが形成される。
図7は、
図6における領域VIIの拡大図である。
【0032】
A-4-1:内側金型50
内側金型50は、相互に別体で構成された第1金型70と第2金型80とを含む。第1金型70および第2金型80の各々は、円柱状または円板状の構造体である。第1金型70と第2金型80とは、相互に対向した状態で固定される。具体的には、第1金型70のうち第2金型80に対向する表面(以下「第1対向面71」という)と、第2金型80のうち第1金型70に対向する表面(以下「第2対向面81」という)とが相互に密着するように第1金型70と第2金型80とが配置される。
【0033】
図8は、第1金型70における第1対向面71の平面図である。
図8においては第1対向面71に便宜的に網掛が付加されている。
図8に例示される通り、第1金型70の第1対向面71には、成形流路72と流路73と成形孔74aと成形孔74bとが形成される。
【0034】
成形流路72は、シールリング20を成形するための空間である。具体的には、成形流路72は、第1対向面71の外周縁に沿って端部e11から端部e12まで円弧状に形成される。端部e11はシールリング20の第1端部E1に対応する端部であり、端部e12はシールリング20の第2端部E2に対応する端部である。
【0035】
図7および
図8に例示される通り、成形流路72は、相互に交差する第1成形面721と第1内周面722とで画定される溝空間である。第1成形面721は、中心軸Cに直交する平面内の円弧状の領域であり、成形流路72の底面に相当する。第1内周面722は、中心軸Cを中心とする円弧面であり、成形流路72の側面に相当する。以上の説明の通り、第1金型70は、第1成形面721と第1内周面722とを含む。
【0036】
図8の流路73は、補助成形部30の柱状部分31のうちX1方向に位置する部分を形成するための空間である。具体的には、流路73は、断面形状が円形状である貫通孔であり、第1対向面71の中央に位置する。
【0037】
成形孔74aは、第1タブ41の把持部44のうち端部441を含む部分を成形するための有底孔であり、端部e11の近傍に形成される。成形孔74bは、第2タブ42の把持部44のうち端部441を含む部分を成形するための有底孔であり、端部e12の近傍に形成される。成形孔74aおよび成形孔74bは、「第1成形孔」の一例である。
【0038】
図9は、第2金型80における第2対向面81の平面図である。
図9においては第2対向面81に便宜的に網掛が付加されている。
図9に例示される通り、第2金型80の第2対向面81には、成形流路82と流路831と流路832と成形孔84aと成形孔84bと連通路85aと連通路85bとが形成される。
【0039】
成形流路82は、シールリング20を成形するための空間である。具体的には、成形流路82は、第2対向面81の外周縁に沿って端部e21から端部e22まで円弧状に形成される。端部e21はシールリング20の第1端部E1に対応する端部であり、端部e22はシールリング20の第2端部E2に対応する端部である。
【0040】
図7および
図9に例示される通り、成形流路82は、相互に交差する第2成形面821と第2内周面822とで画定される溝空間である。第2成形面821は、中心軸Cに直交する平面内の円弧状の領域であり、成形流路82の底面に相当する。第2内周面822は、中心軸Cを中心とする円弧面であり、成形流路82の側面に相当する。以上の説明の通り、第2金型80は、第2成形面821と第2内周面822とを含む。
【0041】
流路831は、補助成形部30の柱状部分31のうちX2方向に位置する部分を形成するための空間である。具体的には、流路831は、断面形状が円形状である貫通孔であり、第2対向面81の中央に位置する。流路832は、補助成形部30の分岐部分32を形成するための空間である。流路832は、流路831から径方向に延在することで流路831と成形流路82とを連通する。流路832のうち成形流路82の近傍の部分は、当該流路831の他の部分と比較して狭窄されたゲートである。
【0042】
成形孔84aは、第1タブ41の把持部44のうち端部442を含む部分を成形するための有底孔である。連通路85aは、成形孔84aと成形流路82とを連通する流路である。成形孔84aおよび連通路85aは、端部e21の近傍に形成される。他方、成形孔84bは、第2タブ42の把持部44のうち端部442を含む部分を成形するための有底孔である。連通路85bは、成形孔84bと成形流路82とを連通する流路である。成形孔84bおよび連通路85bは、端部e22の近傍に形成される。成形孔84aおよび成形孔84bは、「第2成形孔」の一例である。
【0043】
図7に例示される通り、第1対向面71と第2対向面81とが接触した状態において、第1金型70の第1内周面722と第2金型80の第2内周面822とは、段差なく連続することで内周成形面55を構成する。内周成形面55は、成形空間Sのうちシールリング20の内周面Gaを形成するための内壁面である。以上の例示の通り、第1実施形態の内側金型50は、シールリング20の内周面Gaを形成する内周成形面55を有する。
【0044】
具体的には、第1内周面722は、シールリング20の内周面Gaのうち第1部分Ga1を形成するための成形面である。第2内周面822は、シールリング20の内周面Gaのうち第2部分Ga2を形成するための成形面である。すなわち、内周面Gaのうち第1内周面722により形成される領域が第1部分Ga1であり、内周面Gaのうち第2内周面822により形成される領域が第2部分Ga2である。
【0045】
図7に例示される通り、第1内周面722と第2内周面822との境界は、軸方向Xにおいてシールリング20の第1面F1と第2面F2との間に位置する。すなわち、
図3に例示される通り、第1内周面722と第2内周面822との境界B12に起因して内周面Gaの第1部分Ga1と第2部分Ga2との間に形成される線状バリL12は、第1面F1と第2面F2との間に位置する。すなわち、第1実施形態によれば、第1金型70と第2金型80との境界に対応する線状バリL12が、シールリング20の内周面Gaのうち第1面F1側の縁辺または第2面F2側の縁辺に沿って形成されることを回避できる。
【0046】
第1金型70の流路73と第2金型80の流路831および流路832とは、相互に連通することで
図6の供給流路52を構成する。供給流路52は、成形空間Sに樹脂材料を供給するための流路である。供給流路52に残留した樹脂材料により前述の補助成形部30が形成される。
【0047】
また、第1金型70の成形孔74aと第2金型80の成形孔84aとは、相互に連通することで第1空間531を構成する。第1空間531は、第1タブ41の把持部44を形成するための空間である。第1空間531は、連通路85aを介して成形空間Sに連通する。連通路85aは、第1タブ41の連結部45を形成するための空間である。なお、連通路85aは第1金型70に形成されてもよい。
【0048】
第1金型70の成形孔74bと第2金型80の成形孔84bとは、相互に連通することで第2空間532を構成する。第2空間532は、第2タブ42の把持部44を形成するための空間である。第2空間532は、連通路85bを介して成形空間Sに連通する。連通路85bは、第2タブ42の連結部45を形成するための空間である。なお、連通路85bは第1金型70に形成されてもよい。
【0049】
以上の説明の通り、第1実施形態においては、第1タブ41の把持部44を形成するための空間(成形孔74aおよび成形孔84a)が第1金型70および第2金型80の双方に形成される。同様に、第2タブ42の把持部44を形成するための空間(成形孔74bおよび成形孔84b)が第1金型70および第2金型80の双方に形成される。したがって、軸方向Xにおける把持部44の寸法H1が充分に確保された把持し易い第1タブ41および第2タブ42を形成できる。
【0050】
図10は、供給流路52と第1空間531と第2空間532と成形空間Sとの位置関係を例示する平面図である。
図10に例示される通り、成形空間Sの端部e1と端部e2とは周方向に相互に離間する。端部e1は、成形空間Sのうちシールリング20の第1端部E1に対応する一端(端部e11および端部e21)であり、端部e2は、成形空間Sのうちシールリング20の第2端部E2に対応する他端(端部e12および端部e22)である。
【0051】
図10に例示される通り、供給流路52は、成形空間Sのうちシールリング20の周方向の1箇所に対応する地点Qに連通する。具体的には、地点Qは、成形空間Sのうち周方向における端部e1と端部e2との中点の位置である。なお、地点Qは「特定地点」の一例である。
【0052】
第1空間531は、成形空間Sのうち供給流路52が連通する地点Qと端部e1との間に連通する。具体的には、第1空間531は、成形空間Sの端部e1の近傍に連通する。他方、第2空間532は、成形空間Sのうち供給流路52が連通する地点Qと端部e2との間に連通する。具体的には、第2空間532は、成形空間Sの端部e2の近傍に連通する。
【0053】
以上の説明の通り、射出成形型200の内部空間は、成形空間Sと供給流路52と第1空間531と第2空間532とを含む。第1実施形態においては、成形空間Sにおいて供給流路52が連通する地点Qを挟んで周方向の両側に第1空間531と第2空間532とが設置される。したがって、
図10に破線の矢印で図示される通り、供給流路52から供給される樹脂材料を成形空間Sの両端(端部e1および端部e2)と第1空間531および第2空間532とに効果的に充填できる。
【0054】
A-4-2:外側金型60
図11は、外側金型60の断面図である。
図12は、
図11における領域XIIの拡大図である。
図11および
図12に例示される通り、外側金型60の内周面61には、周方向に沿う成形溝62が形成される。成形溝62は、断面形状が矩形状である有底溝である。具体的には、成形溝62は、
図12に例示される通り、第1側面631と第2側面632と外周成形面64とにより画定される。
【0055】
外周成形面64は、成形溝62の底面を構成する。外周成形面64は、成形空間Sのうちシールリング20の外周面Gbを形成するための円弧状の内壁面である。すなわち、
図7に例示される通り、内側金型50と外側金型60とが相互に固定された状態(以下「型固定状態」という)において、内側金型50の内周成形面55と外側金型60の外周成形面64とは、成形空間Sに相当する間隔をあけて相互に対向する。
【0056】
図12に例示される通り、第1側面631および第2側面632は、外周成形面64に交差する壁面である。第1側面631と第2側面632とは、中心軸Cに直交する平面内の円弧状の表面であり、相互に所定の間隔をあけて対向する。第1側面631は第2側面632に対してX1方向に位置する。
【0057】
図7に例示される通り、型固定状態において、外側金型60の第1側面631と内側金型50(第1金型70)の第1成形面721とは同一面内に位置する。すなわち、第1側面631と第1成形面721とは段差なく連続する。第1側面631と第1成形面721とは、シールリング20の第1面F1を形成するための平面である。具体的には、第1成形面721は、第1面F1のうち第1内領域F1aを形成するための内壁面であり、第1側面631は、第1面F1のうち第1外領域F1bを形成するための内壁面である。すなわち、第1面F1のうち第1成形面721により形成される領域が第1内領域F1aであり、第1面F1のうち第1側面631により形成される領域が第1外領域F1bである。
【0058】
また、型固定状態において、外側金型60の第2側面632と内側金型50(第2金型80)の第2成形面821とは同一面内に位置する。すなわち、第2側面632と第2成形面821とは段差なく連続する。第2側面632と第2成形面821とは、シールリング20の第2面F2を形成するための平面である。具体的には、第2成形面821は、第2面F2のうち第2内領域F2aを形成するための内壁面であり、第2側面632は、第2面F2のうち第2外領域F2bを形成するための内壁面である。すなわち、第2面F2のうち第2成形面821により形成される領域が第2内領域F2aであり、第2面F2のうち第2側面632により形成される領域が第2外領域F2bである。
【0059】
以上の説明から理解される通り、成形空間Sは、内周成形面55と第1成形面721と第2成形面821と外周成形面64と第1側面631と第2側面632とにより包囲された円弧状の空間である。
【0060】
第1実施形態においては、内側金型50の第1成形面721と外側金型60の第1側面631との境界B1がシールリング20の第1面F1に対向し、内側金型50の第2成形面821と外側金型60の第2側面632との境界B2がシールリング20の第2面F2に対向する。すなわち、外側金型60と内側金型50との境界(B1,B2)はシールリング20の外周面Gbに対向しない。以上の構成によれば、内側金型50と外側金型60との境界に対応する線状バリがシールリング20の外周面Gbに形成されることを回避できる。したがって、シールリング20の外周面Gbの研磨により線状バリを除去する工程を必要とせずに、シールリング20の外周面Gbの密封性能を高水準に維持できる。
【0061】
第1側面631と第1成形面721との境界B1はシールリング20の第1面F1に対向する。したがって、
図3に例示される通り、第1面F1のうち第1内領域F1aと第1外領域F1bとの間には、周方向に沿う線状バリL1が形成される。同様に、第2側面632と第2成形面821との境界はシールリング20の第2面F2に対向する。したがって、第2面F2のうち第2内領域F2aと第2外領域F2bとの間には、周方向に沿う線状バリL2が形成される。
【0062】
以上の説明から理解される通り、シールリング20の第1面F1に線状バリL1が存在し、第2面F2に線状バリL2が存在するということは、内側金型50と外側金型60との境界(B1,B2)が第1面F1と第2面F2とに対向することを意味する。以上の構成によれば、前述の通り、内側金型50と外側金型60との境界はシールリング20の外周面Gbに対向しない。したがって、外周面Gbの研磨等の作業により線状バリを除去する工程を必要とせずに、シールリング20の外周面Gbの密封性能を高水準に維持できる。なお、線状バリL1は「第1突起」の一例であり、線状バリL2は「第2突起」の一例である。
【0063】
図12に例示される通り、外側金型60において第1側面631と外周成形面64との間の角部a1はR形状である。すなわち、角部a1は、第1側面631と外周成形面64とを連続的に連結する円弧面である。例えば角部a1の半径は0.1mm程度(R0.1)である。したがって、
図3を参照して前述した通り、シールリング20における第1面F1と外周面Gbとの間の角部A1はR形状となる。なお、角部a1は「第1角部」の一例である。
【0064】
同様に、外側金型60において第2側面632と外周成形面64との間の角部a2はR形状である。すなわち、角部a2は、第2側面632と外周成形面64とを連続的に連結する円弧面である。例えば角部a2の半径は0.1mm程度(R0.1)である。したがって、
図3を参照して前述した通り、シールリング20における第2面F2と外周面Gbとの間の角部A2はR形状となる。なお、角部a2は「第2角部」の一例である。
【0065】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、外側金型60の角部a1および角部a2がR形状である。したがって、シールリング20における角部A1および角部A2を、研磨等の作業を必要とせずにR形状とすることが可能である。
【0066】
A-5:シールリング20の製造方法
図13は、シールリング20を製造する工程のフローチャートである。まず、準備工程P1において射出成形型200が用意される。射出成形型200は、前述の通り、内側金型50(第1金型70および第2金型80)と外側金型60とを含む。射出成形型200は、型固定状態に構成される。
【0067】
準備工程P1の実行後の成形工程P2において、射出成形型200を利用した射出成形により
図4の中間成形品300が形成される。具体的には、射出成形型200の内部空間に液状の樹脂材料が供給され、当該樹脂材料の硬化により中間成形品300が形成される。前述の通り、中間成形品300は、最終的な製造目標であるシールリング20に加えて補助成形部30と第1タブ41と第2タブ42とを含む。成形工程P2が実行された段階において、シールリング20の第1端部E1と第2端部E2とは周方向に相互に離間した状態にある。
【0068】
図10に矢印で図示される通り、供給流路52に供給された樹脂材料は、地点Qから成形空間Sに流入し、成形空間Sの端部e1に向かう第1成分N1と端部e2に向かう第2成分N2とに分岐する。第1成分N1の一部は端部e1に到達し、他の成分は連通路85aから第1空間531に流入する。成形空間S内の気泡は、樹脂材料の流動により第1空間531内に進行する。したがって、端部e1に気泡は到達しない。同様に、第2成分N2の一部は端部e2に到達し、他の成分は連通路85bから第2空間532に流入する。成形空間S内の気泡は、樹脂材料の流動により第2空間532内に進行する。したがって、端部e2に気泡は到達しない。
【0069】
以上の説明から理解される通り、成形空間S内の気泡を収容する空間として第1空間531および第2空間532が機能することで、成形空間Sの全体に樹脂材料を到達させることが可能である。すなわち、第1空間531および第2空間532は、成形空間S内における樹脂材料の充填性を確保するための空間である。樹脂材料の充填性が確保される結果、気泡に起因した欠損等の不具合がないシールリング20を形成できる。
【0070】
図13における成形工程P2の実行後の型開工程P3において、内側金型50が除去される。具体的には、第1金型70および第2金型80の各々が順次に外側金型60から除去される。型開工程P3が実行されると、
図14に例示される通り、中間成形品300のうちシールリング20の外周面Gbと第1外領域F1bと第2外領域F2bとが外側金型60に固定された状態となる。以上の状態において、シールリング20の内周面Gaからは補助成形部30と第1タブ41と第2タブ42とが突出する。
【0071】
型開工程P3の実行後の離型工程P4において、中間成形品300が外側金型60から離型される。離型工程P4においては、第1タブ41および第2タブ42を移動することで中間成形品300が外側金型60から離型される。例えば、第1タブ41および第2タブ42の各々の把持部44が治具等の把持機構により把持され、当該把持機構が変位することで第1タブ41および第2タブ42が移動する。具体的には、把持機構は、軸方向Xに直交する面内において第1タブ41および第2タブ42を移動する。例えば、把持機構は、
図14に破線の矢印で例示される通り、第1タブ41と第2タブ42とを周方向に沿って相互に接近させる。すなわち、シールリング20の直径が縮小するように第1タブ41と第2タブ42とが操作される。第1タブ41と第2タブ42とが相互に接近することで、第1端部E1および第2端部E2の各々から地点Qに向けてシールリング20が外側金型60から徐々に剥離し、最終的には外側金型60から完全に離型される。
【0072】
以上の通り、第1実施形態においては、シールリング20とともに成形された第1タブ41および第2タブ42を移動することで中間成形品300が外側金型60から離型される。したがって、中間成形品300を容易に離型できる。具体的には、第1タブ41と第2タブ42とを相互に接近させる簡便な工程により、中間成形品300を外側金型60から離型できる。第1実施形態においては特に、第1端部E1の近傍に第1タブ41が形成され、かつ、第2端部E2の近傍に第2タブ42が形成される。したがって、第1端部E1から充分に離間した位置に第1タブ41が形成された形態、または第2端部E2から充分に離間した位置に第2タブ42が形成された形態と比較して、中間成形品300を外側金型60から容易に離型できるという効果は格別に顕著である。
【0073】
図13における離型工程P4の実行後の除去工程P5において、補助成形部30と第1タブ41と第2タブ42とが中間成形品300から除去される。例えばカッター等の切削機構により補助成形部30と第1タブ41と第2タブ42とが内周面Gaから切除される。内周面Gaのうち切除された箇所が研磨されてもよい。
【0074】
除去工程P5の直後において、シールリング20の第1端部E1と第2端部E2とは周方向に相互に離間した状態にある。除去工程P5の実行後の変形工程P6において、シールリング20に対して癖付け加工が実行される。具体的には、第1端部E1と第2端部E2とが周方向において相互に重複するように癖付け加工によりシールリング20が変形される。以上の工程によりシールリング20が完成する。
【0075】
ところで、射出成形型200からの離型の容易化のみを考慮すれば、例えば外側金型60と内側金型50とを
図15のような形状とした形態(以下「対比例」という)も想定される。対比例においては、外側金型60の上面と第1金型70の下面とが境界B1により接触することで成形空間Sが形成される。対比例においては、成形空間Sに充填された樹脂材料の硬化後に第1金型70が除去される。第1金型70が除去された状態では、シールリング20を上方に移動させることで外側金型60から容易に離型できる。
【0076】
ただし、対比例においては、
図16に例示される通り、シールリング20の外周面Gbのうち第1面F1側の縁辺に沿って、外側金型60と第1金型70との境界B1に対応する線状バリL1が不可避的に発生する。線状バリL1は、外周面Gbから外側に突出する。
【0077】
図1を参照して前述した通り、外周面Gbは筐体11の内周面113に密着する。外周面Gbに凹凸が形成された状態では筐体11の内周面113に対する密着性が低下する。すなわち、シールリング20の密封性能を高水準に維持するためには外周面Gbについて高度の平坦性が要求される。したがって、対比例においては、外周面Gbの線状バリL1を除去するために研磨等の平坦化工程が必須である。
【0078】
対比例とは対照的に、第1実施形態においては、内側金型50と外側金型60との境界(B1,B2)がシールリング20の第1面F1および第2面F2に対向するから、外周面Gbに線状バリL1は形成されない。したがって、第1実施形態においては、対比例において必須である平坦化工程が不要である。以上のように平坦化工程が省略されるから、第1実施形態によれば、対比例と比較してシールリング20の製造コストを低減できる。
【0079】
他方、第1実施形態においては、型開工程P3の実行後に、外側金型60の第1側面631と第2側面632との間にシールリング20が保持された状態にある。したがって、軸方向Xへの移動だけではシールリング20を外側金型60から離型されない場合がある。以上の事情を考慮して、第1実施形態においては、第1タブ41および第2タブ42を移動させることで中間成形品300を外側金型60から離型するという工程(離型工程P4)を採用する。以上の方法によれば、外側金型60の第1側面631と第2側面632との間にシールリング20が保持された状態にも関わらず、外側金型60から中間成形品300を容易に離型できる。以上の説明から理解される通り、第1実施形態によれば、外周面Gbの密着性を確保するための製造コストの低減と、中間成形品300の離型の容易性とを両立できる。なお、外周面Gbに対する平坦化工程が実行される形態も、本開示の範囲から除外されない。
【0080】
また、中間成形品300の離型に利用される第1タブ41および第2タブ42は、成形空間S内における樹脂材料の充填性を確保するための第1空間531および第2空間532により形成される。すなわち、第1タブ41および第2タブ42は、樹脂材料の充填性の確保と中間成形品300の離型性の確保とに兼用される。したがって、樹脂材料の充填性の確保と中間成形品300の離型性の確保とが別個の要素により実現される形態と比較して、シールリング20の製造工程を簡素化できるという利点もある。
【0081】
B:第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0082】
図17は、第2実施形態における射出成形型200の内部空間の説明図である。
図17に例示される通り、第2実施形態の射出成形型200は、成形空間Sのほかに供給流路52と第1空間531とを含む。第1実施形態と同様に、供給流路52は、補助成形部30を形成するための空間であり、第1空間531は、第1タブ41を形成するための空間である。第2実施形態の射出成形型200は第1実施形態の第2空間532を含まない。
【0083】
第2実施形態の供給流路52は、端部e2の近傍において成形空間Sに連通する。他方、第1空間531は、端部e1の近傍において成形空間Sに連通する。したがって、供給流路52から成形空間Sに供給される樹脂材料のうち、第1成分N1は端部e2に到達し、第2成分N2は成形空間S内を円弧状に流動して端部e1に到達する。また、第2成分N2の一部は第1空間531に流入する。
【0084】
図18は、型開工程P3の直後における中間成形品300の状態を例示する平面図である。型開工程P3が実行されると、第1実施形態と同様に、中間成形品300のうちシールリング20の外周面Gbと第1外領域F1bと第2外領域F2bとが外側金型60に固定された状態となる。第2実施形態においては、シールリング20の内周面Gaから補助成形部30と第1タブ41とが突出する。補助成形部30は第2端部E2の近傍に接続され、第1タブ41は第1端部E1の近傍に接続される。
【0085】
第2実施形態の離型工程P4においては、第1タブ41および補助成形部30を移動することで中間成形品300が外側金型60から離型される。例えば、把持機構は、
図18に破線の矢印で例示される通り、第1タブ41と補助成形部30とを周方向に沿って相互に接近させる。第1タブ41と補助成形部30とが相互に接近することで、第1端部E1および第2端部E2の各々からシールリング20が外側金型60から徐々に剥離し、最終的には外側金型60から完全に離型される。
【0086】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第2実施形態においては、第1実施形態の第2タブ42が省略されるから、除去工程P5において第2タブ42を除去する作業が不要である。したがって、第1実施形態と比較して除去工程P5を簡素化できる。
【0087】
C:第3実施形態
図19は、第3実施形態における射出成形型200の内部空間の説明図である。
図19に例示される通り、第3実施形態の射出成形型200は、成形空間Sのほかに第1供給流路521と第2供給流路522と第1空間531とを含む。第1供給流路521および第2供給流路522は、成形工程P2において樹脂材料を成形空間Sに供給するための流路である。第1供給流路521は成形空間Sの端部e1の近傍に連通し、第2供給流路522は成形空間Sの端部e2の近傍に連通する。他方、第1空間531は、第1タブ41を形成するための空間であり、成形空間Sのうち周方向における端部e1と端部e2との中点に連通する。
【0088】
成形工程P2において、第1供給流路521から成形空間Sに供給される樹脂材料の一部は端部e1に到達し、他の一部は第1空間531に向けて円弧状に流動する。同様に、第2供給流路522から成形空間Sに供給される樹脂材料の一部は端部e2に到達し、他の一部は第1空間531に向けて円弧状に流動する。第1供給流路521および第2供給流路522から供給される樹脂材料は合流して第1空間531に流入する。
【0089】
図20は、型開工程P3の直後における中間成形品300の状態を例示する平面図である。型開工程P3が実行されると、第1実施形態と同様に、中間成形品300のうちシールリング20の外周面Gbと第1外領域F1bと第2外領域F2bとが外側金型60に固定された状態となる。第3実施形態においては、シールリング20の内周面Gaから第1補助成形部301と第2補助成形部302と第1タブ41とが突出する。
【0090】
第1補助成形部301は、第1供給流路521により成形された部分であり、シールリング20における第1端部E1の近傍に接続される。第2補助成形部302は、第2供給流路522により成形された部分であり、シールリング20における第2端部E2の近傍に接続される。
【0091】
第3実施形態の離型工程P4においては、第1補助成形部301および第2補助成形部302を移動することで中間成形品300が外側金型60から離型される。例えば、把持機構は、
図20に破線の矢印で例示される通り、第1補助成形部301と第2補助成形部302とを周方向に沿って相互に接近させる。第1補助成形部301と第2補助成形部302とが相互に接近することで、第1端部E1および第2端部E2の各々からシールリング20が外側金型60から徐々に剥離し、最終的には外側金型60から完全に離型される。
【0092】
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第3実施形態においては、第1供給流路521および第2供給流路522の2系統により成形空間Sに対して効率的に樹脂材料を供給できる。
【0093】
第1実施形態から第3実施形態の例示により理解される通り、離型工程P4においては、シールリング20の内周面Gaに接続された突起部を移動することで中間成形品300が外側金型60から離型される。第1実施形態における第1タブ41および第2タブ42、第2実施形態(
図18)における第1タブ41および補助成形部30、第3実施形態(
図20)における第1補助成形部301および第2補助成形部302は、「突起部」の例示である。
【0094】
具体的には、第1実施形態における第1タブ41および第2タブ42の一方が「第1突起部」の一例であり、他方が「第2突起部」の一例である。第2実施形態における第1タブ41および補助成形部30の一方が「第1突起部」の一例であり、他方が「第2突起部」の一例である。第3実施形態における第1補助成形部301の一方が「第1突起部」の一例であり、他方が「第2突起部」の一例である。
【0095】
D:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0096】
(1)前述の各形態においては、離型工程P4において2個の突起部の移動により中間成形品300を外側金型60から離型したが、離型工程P4において移動する突起部の個数は以上の例示に限定されない。離型工程P4において1個の突起部の移動により中間成形品300を離型してもよい。
【0097】
例えば、第1実施形態において、第1タブ41および第2タブ42の一方のみを移動してもよい。第2実施形態において、第1タブ41および補助成形部30の一方のみを移動してもよい。第3実施形態において、第1補助成形部301および第2補助成形部302の一方のみを移動してもよい。また、3個以上の突起部の移動により中間成形品300を外側金型60から離型してもよい。
【0098】
(2)前述の各形態においてはシールリング20を例示したが、本開示が適用される樹脂成形品はシールリング20に限定されない。例えば、環状のシールが隙間に食込むことを防止するために当該シールに並設されるバックアップリングにも、前述の各形態と同様に本開示が適用される。バックアップリングは、円環状の部材が1箇所において切断された円弧状の部材である。したがって、バックアップリングは、前述の各形態のシールリング20と同様に、第1端部と第2端部とを含む円弧状の樹脂成形品である。
【0099】
(3)前述の各形態においては、シールリング20における角部A1および角部A2の双方をR形状としたが、角部A1および角部A2の一方のみがR形状とされた形態も想定される。したがって、外側金型60における角部a1および角部a2の一方のみがR形状とされてもよい。また、角部A1または角部A2のR形状が省略されてもよい。角部a1または角部a2のR形状が省略されてもよい。
【0100】
(4)前述の各形態においては、シールリング20の断面形状が実質的に矩形状である形態を例示したが、シールリング20の断面形状は以上の例示に限定されない。例えば、
図21に例示された態様1、または
図22に例示された態様2も想定される。
【0101】
[態様1]
図21に例示される通り、態様1のシールリング20には、段差部23および段差部24が形成される。段差部23は、第1面F1の内周縁に沿って円弧状に形成された凹部である。段差部24は、第2面F2の内周縁に沿って円弧状に形成された凹部である。すなわち、態様1におけるシールリング20の断面形状はT字型である。
【0102】
第1面F1のうち段差部23以外の領域に線状バリL1が形成され、第2面F2のうち段差部24以外の領域に線状バリL2が形成される。態様1においては、第2面F2が取付溝13の側面132に接触する面積(摺動面積)が、前述の各形態と比較して削減される。したがって、第2面F2と側面132との間の摺動抵抗が低減され、結果的に低摩擦化および低トルク化が実現される。
【0103】
[態様2]
図22に例示される通り、態様2のシールリング20には、段差部25および段差部26が形成される。段差部25は、シールリング20においてX1方向を向く表面のうち外周縁に沿って円弧状に形成された凹部である。段差部25の底面が第1面F1である。段差部26は、シールリング20においてX2方向を向く表面のうち外周縁に沿って円弧状に形成された凹部である。段差部26の底面が第2面F2である。第1面F1に線状バリL1が形成され、第2面F2に線状バリL2が形成される。
【0104】
態様2における外周面Gbは、段差部25および段差部26の内壁面から外側に突出した円弧状の突起部の外周面である。態様2においては、外周面Gbが軸孔112の内周面113に接触する面積(摺動面積)が、前述の各形態と比較して削減される。したがって、外周面Gbと内周面113との間の摺動抵抗が低減され、結果的に低摩擦化および低トルク化が実現される。
【0105】
(5)前述の各形態においては、密封構造100を変速機に利用した形態を例示したが、密封構造100の用途は以上の例示に限定されない。例えば、エンジン用シール、デファレンシャル用シール、モータ用シール、またはハブベアリング用シール等の任意の用途に、前述の各形態の密封構造100が利用される。
【0106】
(6)本願における「第n」(nは自然数)という記載は、各要素を表記上において区別するための形式的かつ便宜的な標識(ラベル)としてのみ使用され、如何なる実質的な意味も持たない。したがって、「第n」という表記を根拠として、各要素の位置または製造の順番等が限定的に解釈される余地はない。
【0107】
E:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0108】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る樹脂成形品の製造方法は、軸方向に沿って相互に反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面との間の内周面および外周面とを有し、第1端部と第2端部とを含む円弧状の樹脂成形品を製造する方法であって、前記内周面を形成する内周成形面を有する内側金型と、前記外周面を形成する外周成形面を有する外側金型とを含む射出成形型の内部空間に樹脂材料を供給することで、前記樹脂成形品と当該樹脂成形品の前記内周面に接続された1以上の突起部とを含む中間成形品を形成する成形工程と、前記内側金型を除去する型開工程と、前記1以上の突起部を移動することで前記中間成形品を前記外側金型から離型する離型工程とを含む。以上の態様においては、樹脂成形品とともに成形された1以上の突起部を移動することで樹脂成形品が外側金型から離型される。したがって、樹脂成形品を容易に離型できる。なお、離型工程の実行後に、中間成形品から1以上の突起部を除去する除去工程が実行されてもよい。
【0109】
態様1の具体例(態様2)において、前記1以上の突起部は、第1突起部と第2突起部とを含み、前記離型工程においては、前記第1突起部と前記第2突起部とを相互に接近させることで前記樹脂成形品を前記外側金型から離型する。以上の態様によれば、第1突起部と第2突起部とを接近させる簡便な工程により、樹脂成形品を外側金型から離型できる。
【0110】
態様2の具体例(態様3)において、前記内部空間は、前記樹脂成形品を形成する円弧状の成形空間と、前記成形空間に前記樹脂材料を供給するための供給流路と、前記第1突起部を形成する第1空間と、前記第2突起部を形成する第2空間とを含み、前記供給流路は、周方向における前記成形空間の特定地点に連通し、前記第1空間は、前記成形空間のうち前記特定地点と前記第1端部に対応する端部との間に連通し、前記第2空間は、前記成形空間のうち前記特定地点と前記第2端部に対応する端部との間に連通する。以上の態様によれば、成形空間において供給流路(ゲート)が連通する特定位置を挟んで周方向の両側に第1空間と第2空間とが設置される。したがって、供給流路から供給される樹脂材料を成形空間の両端と第1空間および第2空間とまで効果的に充填できる。また、第1端部の近傍に第1突起部が形成され、かつ、第2端部の近傍に第2突起部が形成された形態を採用できる。以上の形態によれば、第1突起部と第2突起部とを相互に接近させることで樹脂成形品を外側金型から容易に離型できる。
【0111】
態様1から態様3の何れかの具体例(態様4)において、前記外側金型の内周面には、周方向に沿って成形溝が形成され、前記成形溝は、前記外周成形面を底面として、前記第1面のうち第1外領域を形成する第1側面と、前記第2面のうち第2外領域を形成する第2側面とを有し、前記内側金型は、前記第1面のうち前記第1外領域の内側の第1内領域を形成する第1成形面と、前記第2面のうち前記第2外領域の内側の第2内領域を形成する第2成形面とを含む。以上の態様においては、外側金型の第1側面と内側金型の第1成形面との境界が樹脂成形品の第1面に対向し、外側金型の第2側面と内側金型の第2成形面との境界が樹脂成形品の第2面に対向する。すなわち、外側金型と内側金型との境界は樹脂成形品の外周面に対向しない。以上の構成によれば、外側金型と内側金型との境界に対応する線状のバリが樹脂成形品の外周面に形成されることを回避できる。したがって、樹脂成形品の外周面の研磨によりバリを除去する作業を必要とせずに、樹脂成形品の外周面の密封性能を高水準に維持できる。
【0112】
態様4の具体例(態様5)において、前記第1側面と前記外周成形面との間の第1角部、および、前記第2側面と前記外周成形面との間の第2角部、の少なくとも一方はR形状である。以上の態様においては、第1側面と外周成形面との間の角部、および、第2側面と外周成形面との間の角部の少なくとも一方がR形状である。したがって、樹脂成形品の第1面および第2面の少なくとも一方と外周面との角部を、研磨等の作業を必要とせずにR形状とすることが可能である。
【0113】
態様4または態様5の具体例(態様6)において、前記内側金型は、前記第1成形面と前記内周成形面のうち第1内周面とを含む第1金型と、前記第2成形面と前記内周成形面のうち第2内周面とを含む第2金型とを含み、前記第1内周面と前記第2内周面との境界は、軸方向において前記第1面と前記第2面との間に位置する。以上の態様においては、第1金型の第1内周面と第2金型の第2内周面との境界が第1面と第2面との間に位置する。したがって、第1金型と第2金型との境界に対応する線状のバリが、樹脂成形品の内周面のうち第1面側の縁辺または第2面側の縁辺に沿って形成されることを回避できる。
【0114】
態様5の具体例(態様7)において、前記第1金型のうち前記第2金型に対向する第1対向面に、前記1以上の突起部における一部を形成する第1成形孔が形成され、前記第2金型のうち前記第1金型に対向する第2対向面に、前記1以上の突起部における他の一部を形成する第2成形孔が形成される。以上の態様においては、突起部を形成するための空間(第1成形孔、第2成形孔)が第1金型および第2金型の双方に形成されるから、軸方向の寸法が充分に確保された把持し易い突起部を形成できる。
【0115】
本開示のひとつの態様(態様8)に係る射出成形型は、軸方向に沿って相互に反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面との間の内周面および外周面とを有し、第1端部と第2端部とを含む円弧状の樹脂成形品の製造に利用される射出成形型であって、前記内周面を形成する内周成形面を有する内側金型と、前記外周面を形成する外周成形面を有する外側金型とを具備し、前記外側金型の内周面には、周方向に沿って成形溝が形成され、前記成形溝は、前記外周成形面を底面として、前記第1面のうち第1外領域を形成する第1側面と、前記第2面のうち第2外領域を形成する第2側面とを有し、前記内側金型は、前記第1面のうち前記第1外領域の内側の第1内領域を形成する第1成形面と、前記第2面のうち前記第2外領域の内側の第2内領域を形成する第2成形面とを含む。
【0116】
本開示のひとつの態様(態様9)に係る樹脂成形品は、軸方向に沿って相互に反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面との間の内周面および外周面と、第1端部および第2端部とを含む円弧状の樹脂成形品であって、前記第1面のうち第1外領域と前記第1外領域の内側の第1内領域との間に、周方向に沿う線状の第1突起が形成され、前記第2面のうち第2外領域と前記第2外領域の内側の第2内領域との間に、周方向に沿う線状の第2突起が形成される。
【符号の説明】
【0117】
100…密封構造、11…筐体、12…軸部材、13…取付溝、15…隙間、20…シールリング、21…合口部、22…胴体部、30…補助成形部、31…柱状部分、32…分岐部分、41…第1タブ、42…第2タブ、44…把持部、45…連結部、50…内側金型、51…外周面、52…供給流路、55…内周成形面、60…外側金型、61…内周面、62…成形溝、64…外周成形面、70…第1金型、71…第1対向面、72…成形流路、73…流路、74a…成形孔、74b…成形孔、80…第2金型、81…第2対向面、82…成形流路、84a…成形孔、84b…成形孔、85a…連通路、85b…連通路、200…射出成形型、300…中間成形品、301…第1補助成形部、302…第2補助成形部、521…第1供給流路、522…第2供給流路、531…第1空間、532…第2空間、631…第1側面、632…第2側面、721…第1成形面、722…第1内周面、821…第2成形面、822…第2内周面。
【要約】
【課題】樹脂成形品の離型を容易化する。
【解決手段】軸方向に沿って相互に反対側に位置する第1面および第2面と、第1面と第2面との間の内周面および外周面とを有し、第1端部と第2端部とを含む円弧状の樹脂成形品が製造される。成形工程P2においては、内周面を形成する内周成形面を有する内側金型と、外周面を形成する外周成形面を有する外側金型とを含む射出成形型の内部空間に樹脂材料を供給することで、樹脂成形品と当該樹脂成形品の周面に接続された1以上の突起部とを含む中間成形品が形成される。型開工程P3においては、内側金型が除去される。離型工程P4においては、1以上の突起部を移動することで中間成形品が外側金型から離型される。
【選択図】
図13