(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】直流エネルギー消費装置の制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/36 20060101AFI20230608BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20230608BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230608BHJP
H02J 5/00 20160101ALI20230608BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
H02J3/36
H02J1/00 301B
H02J1/00 309W
H02J1/00 309H
H02J3/38 160
H02J5/00
H02J13/00 311R
H02J13/00 311T
(21)【出願番号】P 2022524189
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2020113882
(87)【国際公開番号】W WO2021088502
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】201911084690.2
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517377547
【氏名又は名称】エヌアール エンジニアリング カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NR ENGINEERING CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 69 Suyuan Avenue, Jiangning, Nanjing, Jiangsu 211102, China
(73)【特許権者】
【識別番号】517377536
【氏名又は名称】エヌアール エレクトリック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NR ELECTRIC CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 69 Suyuan Avenue, Jiangning, Nanjing, Jiangsu 211102, China
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】リー,ガン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ハイイン
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ユ
(72)【発明者】
【氏名】ドン,ユンロン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャンロン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,カイカイ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジャンチュン
(72)【発明者】
【氏名】フー,シャンライ
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107834588(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106159988(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107994613(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108539796(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108258723(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110350574(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106099968(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109861269(CN,A)
【文献】特開2014-064450(JP,A)
【文献】特開2015-061448(JP,A)
【文献】特開2014-147062(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135031(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/36
H02J 1/00
H02J 3/38
H02J 5/00
H02J 13/00
H02M 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル直流制御・保護システムおよびエネルギー消費装置の制御システムを含
む直流エネルギー消費装置の制御システムであって、
前記フレキシブル直流制御・保護システムは、フレキシブル直流送電システムにおける交流・直流信号および機器の稼働状態を収集し、交流システムに故障が発生し、且つ投入/退出条件が満たされたときに、エネルギー消費装置の制御システムに直流エネルギー消費の投入/退出指令および余剰電力を伝送するために用いられ、
前記直流送電システムは、発電所、ブースターステーション、送電側の交直変換所、直流ケーブル、直流エネルギー消費装置、受電側の交直変換所、受電側の交流送電網を有し、前記交流システムは交直変換所にあり、
前記エネルギー消費装置の制御システムは、エネルギー消費装置に接続され、エネルギー消費装置の状態を収集し、必要に応じてエネルギー消費装置本体に制御命令を伝送し、
前記エネルギー消費装置の制御システムと前記フレキシブル直流制御・保護システム間の通信が正常な場合、エネルギー消費装置の制御システムは、フレキシブル直流制御・保護システムから伝送された直流エネルギー消費の投
入指令および余剰電力値を受け取り、エネルギー消費装置の状態に合わせて、対応する
消費電
力を投入し、
前記エネルギー消費装置の制御システムと前記フレキシブル直流制御・保護システム間の通信故障が発生した場合、エネルギー消費装置の制御システムは、それ自体が収集した直流電圧および電流信号に応じて、エネルギー消費装置を投入するか否かを判断し、投入が必要な場合は、対応する
消費電
力を投入することを特徴とする、直流エネルギー消費装置の制御システム。
【請求項2】
前記フレキシブル直流制御・保護システムとエネルギー消費装置の制御システムは、光ファイバを介して通信することを特徴とする、請求項1に記載の直流エネルギー消費装置の制御システム。
【請求項3】
前記エネルギー消費装置の制御システムは、光ファイバまたはケーブルを介してエネルギー消費装置に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の直流エネルギー消費装置の制御システム。
【請求項4】
フレキシブル直流制御・保護システムは、フレキシブル直流送電システムにおける交流・直流信号および機器の稼働状態を収集し、交流システムに故障が発生し、且つ投入/退出条件が満たされたときに、エネルギー消費装置の制御システムに直流エネルギー消費の投入/退出指令および余剰電力を伝送するステップ1と、
前記直流送電システムは、発電所、ブースターステーション、送電側の交直変換所、直流ケーブル、直流エネルギー消費装置、受電側の交直変換所、受電側の交流送電網を有し、前記交流システムは交直変換所にあり、
前記エネルギー消費装置の制御システムと前記フレキシブル直流制御・保護システム間の通信が正常な場合、エネルギー消費装置の制御システムは、フレキシブル直流制御・保護システムから伝送された直流エネルギー消費の投
入指令および余剰電力値を受け取り、エネルギー消費装置の状態に合わせて、対応する
消費電
力を投入し、
前記エネルギー消費装置の制御システムと前記フレキシブル直流制御・保護システム間の通信故障が発生した場合、エネルギー消費装置の制御システムは、それ自体が収集した直流電圧および電流信号に応じて、エネルギー消費装置を投入するか否かを判断し、投入が必要な場合は、対応する
消費電
力を投入するステップ2とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の直流エネルギー消費装置の制御システムに基づく制御方法。
【請求項5】
前記ステップ1において、投入/退出条件は、余剰電力が第1のエネルギー消費投入の設定値よりも大きく、且つ、直流電圧がエネルギー消費投入の設定値以上であるとともに時間T
m_set1継続することであることを特徴とする、請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記ステップ1において、余剰電力の計算式は、P
rest=P
send-P
dc-P
lossであり、ここでP
restは余剰電力であり、P
sendは現在の直流
送電システムの送電側の伝送電力であり、P
dcは故障時の受電側の交直変換所の実際の伝送電力であり、P
lossは直流ケーブルと交直変換所の損失であることを特徴とする、請求項4に記載の制御方法。
【請求項7】
前記ステップ2において、直流エネルギー消費装置の制御システムは、余剰電力P
restおよび投入指令を受け取った場合、エネルギー消費投入の基準数をP
rest/P
cmとして計算し、ここでP
cmは分割可能な最小の消費電力であり、そして、リアルタイム母線電圧とエネルギー消費投入中の制御電圧との差から比例関係または
比例積分(PI
)によって基準数を微調整することによって、正確なエネルギー消費の投入数を取得して、対応する電力のエネルギー消費装置を投入することを特徴とする、請求項4に記載の制御方法。
【請求項8】
フレキシブル直流制御・保護システムは、
前記エネルギー消費装置の制御システムと前記フレキシブル直流制御・保護システム間の通信故障が解消されたことを検出した場合、エネルギー消費装置の制御システムに退出の指令を伝送し、エネルギー消費装置の制御システムは退出の指令を受け取った場合、エネルギー消費装置をエネルギー消費から退出させるように制御することを特徴とする、請求項4に記載の制御方法。
【請求項9】
前記ステップ2において、フレキシブル直流制御・保護システムとエネルギー消費装置の制御システムとの間で通信故障が発生した場合、直流電圧が第2のエネルギー消費投入の設定値Udc
chop_set2以上で且つ一定の時間T
m_set2が経過したときに、エネルギー消費装置の投入を開始し、Udc
chop_set3→Udc
chop_set2が0→N個のエネルギー消費数に対応する対応関係に応じてエネルギー消費を投入し、Nは定格のエネルギー消費数に相当し、Udc
chop_set3はエネルギー消費退出の設定値であることを特徴とする、請求項4に記載の制御方法。
【請求項10】
前記ステップ2において、フレキシブル直流制御・保護システムとエネルギー消費装置の制御システムとの間で通信故障が発生した場合、直流電圧がエネルギー消費退出の設定値未満で且つ一定の時間T
m_set3が経過したときに、エネルギー消費装置を退出させることを特徴とする、請求項4に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システムにおけるフレキシブル直流送電の技術分野に属し、特に、洋上のフレキシブル直流送電システムにおける直流エネルギー消費装置の制御システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧直流送電による新エネルギー送電プロジェクトにおいて、直流エネルギー消費装置は極めて重要な機器である。直流エネルギー消費装置は、主に直流による新エネルギーの伝送の用途に用いられる。送電側が風力発電所などによって生成された新エネルギーである場合、受電側の交流システムに故障が発生した場合、受電側が最初に電力を伝送し、直流側にエネルギーが蓄積されるため、直流電圧が上昇して、機器の安全な稼働を阻害する。エネルギー消費装置を受電側の交直変換所に設置する目的は、受電側の交流システムに故障が発生した場合に、エネルギー消費装置を投入して、システムの安定的な稼働を確保することである。
【0003】
文献(CN108258723 A)に開示されている技術的解決手段では、交流側にエネルギー消費装置を投入することによって、直流送電線に故障が発生したときに交流側に制動抵抗器を投入して余剰電力を消費するという目的を達成する。該技術的解決手段は、陸上の風力発電所で実現可能である。該技術的解決手段を洋上プラットフォームに適用する場合、交流エネルギー消費装置を送電側の洋上に設置すると、経済的コストが増加するため、洋上のフレキシブル直流送電システムには適用しない。
【0004】
文献(CN107994613 B)に開示されている技術的解決手段では、エネルギー消費装置が直流側の電圧の大きさを検出することによって投入するか退出するかを判断し、直流側の電圧が1.15puを超える場合は投入し、0.9pu未満の場合は退出する。実際のプロジェクトにおいて、バルブ側の不具合により、直流側の電圧が1.15puより高くなることもある。この場合、エネルギー消費装置を投入すれば、エネルギー消費装置が比較的大きな電流で稼働するようになるため、エネルギー消費装置はよりグレードの高いデバイスを使用することになり、機器投資が増加する。そのため、直流電圧を判断するだけでは、故障のタイプを正確に判定できず、装置の誤稼働を招くおそれがある。
【0005】
文献(CN107994613 B)に開示されている技術的解決手段では、交流/直流電圧を検出することにより故障のタイプを判定するが、この故障のタイプの判定はMMCの制御モードの切り替えに使用されるものであって、エネルギー消費モジュールの制御には使用できない。
【0006】
上記の文献からわかるように、直流エネルギー消費装置の誤った投入と退出を回避すると同時にフレキシブル直流制御・保護システムとの関係を対処することについては、どの文献にも開示されていない。
【0007】
エネルギー消費装置自体は、直流母線電圧とエネルギー消費分岐部の電流を検出することができる。直流電圧のみによって直流エネルギー消費の投入条件を判断する従来の解決手段は、エネルギー消費の誤投入につながる可能性がより高いため、エネルギー消費装置に対する要求が高くなる。また、直流母線電圧とエネルギー消費分岐部の電流の2つの情報は、直流システムで発生した故障のタイプを正確に判定するのに役立たない。また、この情報から消費されるべき余剰電力を正確に把握することもできない。故障のタイプを正確に判定し、余剰電力を計算することを、エネルギー消費分岐部に実行させる機能を実現するには、フレキシブル直流送電システムにおける他の部分の情報を取得する必要があるが、フレキシブル直流制御・保護システム自体は故障のタイプを正確に判定し、余剰電力を計算することができ、制御・保護システムとエネルギー消費装置本体の制御システムは、それら自体が光ファイバリンクチャンネルを備えている。コストの観点と、既存の光ファイバチャネルを利用するなど、プロジェクト上の実現可能性と使いやすさの観点から、フレキシブル直流制御・保護システムが有する故障タイプの判定能力と余剰電力の計算能力をエネルギー消費装置本体による制御と組み合わせて利用することは、経済的で実現可能でより好適な解決手段である。また、エネルギー消費装置と制御・保護システムとの間で通信故障が発生した場合に、エネルギー消費装置が稼働を継続できることを確保するために、本発明は、通信故障後のエネルギー消費装置のローカル制御方法を提案し、フレキシブル直流送電システムの送電信頼性を確保する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、異なる故障タイプおよび制御システムの通信状態に適応することによって、必要な電力のエネルギー消費装置を正確に投入し、故障時の直流電圧を安定的に制御して、送電システムの安定性および信頼性を向上させることができる、直流エネルギー消費装置の制御システムおよび制御方法を提供することである。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の解決手段は以下のとおりである。
【0010】
直流エネルギー消費装置の制御システムであって、フレキシブル直流制御・保護システムおよびエネルギー消費装置の制御システムを含み、
前記フレキシブル直流制御・保護システムは、フレキシブル直流送電システムにおける交流・直流信号および機器の稼働状態を収集し、交流システムに故障が発生し、且つ投入/退出条件が満たされたときに、エネルギー消費装置の制御システムに直流エネルギー消費の投入/退出指令および余剰電力を伝送するために用いられ、
前記エネルギー消費装置の制御システムは、エネルギー消費装置に接続され、エネルギー消費装置の状態を収集し、必要に応じてエネルギー消費装置本体に制御命令を伝送し、
通信が正常な場合、エネルギー消費装置の制御システムは、フレキシブル直流制御・保護システムから伝送された直流エネルギー消費の投入/退出指令および余剰電力値を受け取り、エネルギー消費装置の状態に合わせて、対応する電力のエネルギー消費装置を投入し、
通信故障が発生した場合、エネルギー消費装置の制御システムは、それ自体が収集した直流電圧および電流信号に応じて、エネルギー消費装置を投入するか否かを判断し、投入が必要な場合は、対応する電力のエネルギー消費装置を投入する。
【0011】
前記フレキシブル直流制御・保護システムとエネルギー消費装置の制御システムは、光ファイバを介して通信する。
【0012】
前記エネルギー消費装置の制御システムは、光ファイバまたはケーブルを介してエネルギー消費装置に接続される。
【0013】
前述の直流エネルギー消費装置の制御システムに基づく制御方法であって、該方法は、
フレキシブル直流制御・保護システムがフレキシブル直流送電システムにおける交流・直流信号および機器の稼働状態を収集し、交流システムに故障が発生し、且つ投入/退出条件が満たされたときに、エネルギー消費装置の制御システムに直流エネルギー消費の投入/退出指令および余剰電力を伝送するステップ1と、
通信が正常な場合、エネルギー消費装置の制御システムは、フレキシブル直流制御・保護システムから伝送された直流エネルギー消費の投入/退出指令および余剰電力値に基づいて、エネルギー消費装置の状態に合わせて、対応する電力のエネルギー消費装置を投入し、
通信故障が発生した場合、エネルギー消費装置の制御システムは、それ自体が収集した直流電圧および電流信号に応じて、エネルギー消費装置を投入するか否かを判断し、投入が必要な場合は、対応する電力のエネルギー消費装置を投入するステップ2とを含む。
【0014】
前記ステップ1において、投入/退出条件は、余剰電力が第1のエネルギー消費投入の設定値よりも大きく、且つ、直流電圧がエネルギー消費投入の設定値以上であるとともに時間Tm_set1継続することである。
【0015】
前記ステップ1において、余剰電力の計算式は、Prest=Psend-Pdc-Plossであり、ここでPrestは余剰電力であり、Psendは現在の直流システムの送電側の伝送電力であり、Pdcは故障時の受電側の交直変換所の実際の伝送電力であり、Plossは直流ケーブルと交直変換所の損失である。
【0016】
前記ステップ2において、直流エネルギー消費装置の制御システムは、余剰電力Prestおよび投入指令を受け取った場合、エネルギー消費投入の基準数をPrest/Pcmとして計算し、ここでPcmは分割可能な最小の消費電力であり、そして、リアルタイム母線電圧とエネルギー消費投入中の制御電圧との差から比例関係またはPIによって基準数を微調整することによって、正確なエネルギー消費の投入数を取得して、対応する電力のエネルギー消費装置を投入する。
【0017】
フレキシブル直流制御・保護システムは、故障が解消されたことを検出した場合、エネルギー消費装置の制御システムに退出の指令を伝送し、エネルギー消費装置の制御システムは、退出の指令を受け取った場合、エネルギー消費装置をエネルギー消費から退出させるように制御する。
【0018】
前記ステップ2において、フレキシブル直流制御・保護システムとエネルギー消費装置の制御システムとの間で通信故障が発生した場合、直流電圧が第2のエネルギー消費投入の設定値Udcchop_set2以上で且つ一定の時間Tm_set2が経過したときに、エネルギー消費装置の投入を開始しUdcchop_set3→Udcchop_set2が0→N個のエネルギー消費数に対応する対応関係に応じてエネルギー消費を投入し、Nは定格のエネルギー消費数に相当し、Udcchop_set3はエネルギー消費退出の設定値である。
【0019】
前記ステップ2において、フレキシブル直流制御・保護システムとエネルギー消費装置の制御システムとの間で通信故障が発生した場合、直流電圧がエネルギー消費退出の設定値未満で且つ一定の時間Tm_set3が経過したときに、エネルギー消費装置を退出させる。
【0020】
上記の解決手段によれば、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)フレキシブル直流制御・保護システムとエネルギー消費装置本体の制御システムの間の通信が正常な場合、フレキシブル直流制御・保護システムが全面的に監視できるという特徴をエネルギー消費装置本体による制御と組み合わせることによって、エネルギー消費装置の投入を正確に切り替えると同時に、エネルギー消費装置の誤った投入と退出を回避し、故障が発生した直後の波動を回避し、安定した状態をより早く実現することができる。
(2)通信故障が発生した後にエネルギー消費装置が自己適応の通信状態になる、ローカル制御対策を提案した。これにより、通信故障が発生した場合に、直流エネルギー消費装置が強制的に稼働停止されることを回避し、直流送電システムの稼働停止リスクを低減する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】風力発電の直流給電システムおよび本発明に記載されている故障範囲の模式図である。
【
図2】風力発電の直流給電システムに用いられるエネルギー消費装置の主回路図である。
【
図3】本発明のエネルギー消費装置の制御システムの模式図である。
【
図4】本発明のエネルギー消費装置の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の技術的解決手段および有益な効果について詳細に説明する。
【0023】
本発明は、光ファイバを介して通信するフレキシブル直流制御・保護システムおよびエネルギー消費装置の制御システムを含む、直流エネルギー消費装置の制御システムを提供する。前記フレキシブル直流制御・保護システムは、交直変換所の直流電圧、交流電圧、直流電流、ブリッジアーム電圧およびブリッジアーム電流を検出し、システムの状態、故障のタイプおよび状態を判断し、余剰電力の大きさを計算してエネルギー消費の投入を決定しつつ、エネルギー消費システムに投入/退出の命令を伝送する。
【0024】
前記フレキシブル直流制御・保護システムは、フレキシブル直流送電全体の制御システムであり、フレキシブル直流送電システムにおける交流・直流信号および機器の稼働状態を収集し、システム全体のリアルタイム状態を監視するために使用される。フレキシブル直流制御・保護システムは、交流システムにおいて故障が発生したことを検出し、且つ、余剰電力がエネルギー消費投入の設定値よりも大きい(すなわち、Prest≧Pchop_set1)と同時に、直流電圧がエネルギー消費投入の設定値1以上(すなわち、Udc≧Udcchop_set1)で且つ一定の時間Tm_set1継続したことを満たしたことを検出した場合、フレキシブル直流制御・保護システムは、エネルギー消費装置の制御システムに投入指令と余剰電力値を伝送する。このとき、直流エネルギー消費装置の制御システムは、余剰電力Prestおよび投入指令を受け取ると、エネルギー消費投入の基準数をPrest/Pcmとして計算し、ここでPcmは分割可能な最小の消費電力であり、そして、リアルタイム母線電圧とエネルギー消費投入中の制御電圧との差に基づき、比例関係またはPIによって基準数を微調整することによって、正確なエネルギー消費の投入数を取得して、対応するエネルギー消費を投入する。フレキシブル直流制御・保護システムは、故障が解消されたことを検出した場合、エネルギー消費装置に退出の指令を伝送する。エネルギー消費装置は、退出の指令を受け取ると、エネルギー消費から退出する。
【0025】
前記エネルギー消費装置の制御システムは、光ファイバまたはケーブルを介してエネルギー消費装置に接続される。エネルギー消費装置の制御システムは、エネルギー消費装置の状態を収集し、必要に応じてエネルギー消費装置本体に制御命令を伝送して、エネルギー消費装置を監視・制御する。エネルギー消費装置の制御システムは、直流電圧およびエネルギー消費分岐部の電流を測定する。フレキシブル直流制御・保護システムとエネルギー消費装置の制御システムとの間で通信故障が発生したときに、直流電圧がエネルギー消費投入の設定値2よりも大きくなり(すなわち、Udc≧Udcchop_set2)、且つ一定の時間Tm_set2が経過した場合、エネルギー消費装置の投入を開始し、Udcchop_set3→Udcchop_set2が0→N個のエネルギー消費数に対応する対応関係に応じてエネルギー消費を投入し、ここで、Nは定格のエネルギー消費数に相当する。
【0026】
フレキシブル直流制御システムとエネルギー消費装置の制御システムとの間で通信故障が発生したときに、直流電圧がエネルギー消費退出の設定値より小さくなり(すなわち、Udc<Udcchop_set3)、且つ一定の時間Tm_set3が経過した場合、エネルギー消費装置を退出させる。
【0027】
交直変換所の交流システムにおいて故障が発生したことが検出されると、フレキシブル直流制御・保護システムは、余剰電力と直流電圧を計算する。余剰電力が設定値より大きく、且つ直流電圧が上昇した場合、エネルギー消費装置に投入指令を伝送する。それと同時に、制御・保護システムは、余剰電力またはサブモジュールの数を計算してエネルギー消費装置本体の制御システムに伝送する。
【0028】
前記余剰電力の計算式は以下のとおりである。
Prest=Psend-Pdc-Ploss
【0029】
ここで、Prestは余剰電力であり、Psendは現在の直流システムの送電側の伝送電力であり、Pdcは故障時の受電側の交直変換所の実際の伝送電力であり、Plossは直流ケーブルと交直変換所の損失である。また、Plossを0とし、エネルギー消費投入の設定値を設定するときに直流ケーブルと交直変換所の損失を考慮に入れてもよい。
【0030】
通常の場合、Pdc≒Psend、すなわち、Prest≒0の状況が現れることが多い。送電側の交流側で故障が発生した場合、Pdcの伝送容量が制限され、Prest≧Pchop_setの状況が現れ、また、直流電圧が上昇する(Udc≧Udcchop_set)ため、エネルギー消費装置を投入して、余剰電力を消費する必要がある。Pchop_set>Plossであり、Udcchop_setは受電側の交直変換所の直流電圧の設定値よりも大きい値とする。
【0031】
受電側の近位端の交流システムにおいて異なるタイプの金属的故障が発生した場合の直流伝送電力の上限とエネルギー消費の切り替えの対策を以下の表に示す。
【0032】
故障が除去または解消された後、制御・保護システムは、交流システムの電圧に応じて故障が解消されたと判断し、エネルギー消費装置に退出の指令を伝送することで、エネルギー消費装置が退出できなかったり、誤って退出したりすることを回避する。
【0033】
前記直流エネルギー消費装置は、電源デバイス/モジュールおよびエネルギー消費抵抗器の両方が分散して配置された分散型エネルギー消費装置、または電源デバイス/モジュールが分散して配置され、エネルギー消費抵抗器が集中的に配置されたハイブリッド型エネルギー消費装置である。エネルギー消費装置に投入されたモジュールが多いほど、その消費電力が大きくなる。
【0034】
エネルギー消費装置の制御システムは、常にフレキシブル直流制御・保護システムとの通信を維持し、通信状態を検出する。通信が正常な場合は、以下の制御手段を採用する。
【0035】
エネルギー消費装置本体の制御システムは、フレキシブル直流制御・保護システムから投入指令と余剰電力値を受け取る。エネルギー消費を投入した後、エネルギー消費装置が起動し、余剰電力の補助直流電圧に基づいてサブモジュールの投入数を決定することにより、直流電圧を定格電圧または一定の電圧値に制御してシステムの安定稼働を確保する。
【0036】
エネルギー消費装置本体の制御システムは、フレキシブル直流制御・保護システムからのエネルギー消費退出の指令を受け取った場合、エネルギー消費装置は、投入されたサブモジュールの数が0になり、エネルギー消費装置全体を退出させるまで、所定のレートでサブモジュールの数を減少させる。
エネルギー消費装置本体の制御システムは、常にフレキシブル直流制御・保護システムとの通信を維持し、通信状態を検出する。通信故障が発生した場合、以下の手段を採用する。
【0037】
エネルギー消費装置は自動的に自律制御モードに入り、直流母線電圧を検出する。母線電圧が第1のしきい値よりも高い場合には、制御・保護装置を稼働させ、第1のしきい値と第2のしきい値との間で電圧を制御し、ここで第2のしきい値は、直流母線電圧の定格値よりも大きく且つ第1のしきい値よりも小さい。この制御を実現するために、エネルギー消費装置本体の制御・保護装置は、純粋な比例制御またはPI制御を採用してもよい。
【0038】
故障が解消されると、受電側の交直変換所は直流電圧の制御能力が回復し、直流電圧を定格電圧に制御する。これにより、直流電圧が第2のしきい値を下回り、エネルギー消費装置の自動的退出が可能となる。
【0039】
通信プロセスの有無に関わらず、この制御対策は、自動的に適応して制御を行うことができる。通信がある場合、フレキシブル直流制御・保護システムのグローバルサンプリングの利点を十分に活かして、エネルギー消費の切り替えを正確に制御し、直流電圧を安定的に制御する。通信がない場合、エネルギー消費の自己適応制御対策を利用して直流電圧を制御する。
【0040】
図1に示すように、風力発電の直流送電システムは、洋上風力発電所と、ブースターステーションと、洋上フレキシブル交直変換所1と、直流ケーブルと、直流エネルギー消費装置2と、陸上フレキシブル交直変換所3と、陸上交流送電網4とから構成され、直流エネルギー消費装置2は陸上フレキシブル交直変換所3側に設置される。
【0041】
本実施形態では、
図2に示す分散型エネルギー消費装置を一例として説明する。エネルギー消費装置は、電源デバイス/モジュールが分散して配置され、エネルギー消費抵抗器が集中的に配置されたハイブリッド型エネルギー消費装置であってもよい。
図2に示す直流エネルギー消費装置は、複数のサブモジュール5が直列に接続されて形成され、各サブモジュールの基本構成要素は、エネルギー消費抵抗器6、エネルギー蓄積コンデンサ8および制御可能なデバイス7から構成され、制御可能なデバイス7を導通させるように制御することにより、エネルギー消費抵抗器6を投入して電力を吸収する。
【0042】
図3は、提案されたエネルギー消費装置の制御システムの全体構成を示す模式図である。本発明によって提案された直流エネルギー消費装置の制御システムは、フレキシブル直流制御・保護システムおよびエネルギー消費装置の制御システムで構成される。通信が正常な場合、エネルギー消費装置の制御システムは、フレキシブル直流制御・保護システムから伝送された直流エネルギー消費の投入/退出指令および余剰電力を受け取り、エネルギー消費の投入/退出指令および余剰電力に応じて、余剰電力に相当する量のエネルギー消費サブモジュールを投入して、直流電圧を制御する。
【0043】
図3では、フレキシブル直流制御・保護システムとエネルギー消費装置の制御システムとの通信が正常な場合、フレキシブル直流制御・保護システムがエネルギー消費を投入するか否かを決定し、余剰電力を計算することにより、エネルギー消費装置の誤り投入を避け、また、投入数を正確に計算し、直流電圧の変動を低減する。その制御方法をフロー図である
図4に示す。フレキシブル直流制御・保護システムは、最初に交流電圧を監視することにより交流システムにおいて故障が発生したか否かを検出する。交流システムにおいて故障が発生した場合、フレキシブル直流制御・保護システムは余剰電力と直流電圧を計算する。余剰電力が設定値よりも大きく、且つ、直流電圧がエネルギー消費投入の設定値よりも大きい場合、エネルギー消費装置に投入指令を伝送する。それと同時に、制御・保護システムは、余剰電力またはサブモジュールの数を計算してエネルギー消費装置の制御システムに伝送する。
【0044】
直流母線電圧制御の基準値をUdc_refとし、通常稼働時の直流定格電圧をUdc_nom、システムが許容するかまたは制御したい直流母線電圧稼働の下限値をUdcmin、上限値をUdcmax、現在の直流送電の電力をPdc、現在の直流電圧をUdc、エネルギー消費装置が現時点で測定した電流をIcp、エネルギー消費装置のサブモジュールの定格数をNとした場合、サブモジュールの平均電圧がUdc/Nとなる。1つのサブモジュールがエネルギー消費に投入された場合、その消費電力は、計算式Pcm=(Udc/N)2・1/Rによって計算される。
【0045】
前記余剰電力の計算式は以下のとおりである。
Prest=Psend-Pdc-Ploss
【0046】
この式において、Prestは余剰電力であり、Psendは現在の直流システムの送電側の伝送電力であり、Pdcは故障時の受電側の交直変換所の実際の伝送電力であり、Plossは直流ケーブルと交直変換所の損失である。Ploss=0とし、エネルギー消費投入の設定値を設定するときに損失を考慮に入れてもよい。
【0047】
フレキシブル直流制御・保護システムは、交流システムにおいて故障が発生したことを検出し、且つ、余剰電力がエネルギー消費投入の設定値よりも大きくなる(すなわち、Prest≧Pchop_set)と同時に直流電圧が上昇する(Udc≧Udcchop_set1)ことを検出した場合、フレキシブル直流制御・保護システムは、エネルギー消費装置にエネルギー消費の投入指令と余剰電力を伝送する。直流エネルギー消費装置は、Prestおよび投入指令を受け取った場合、サブモジュールの投入数をPrest/Pcmとして計算し、基本指令を取得する。これをもとに、直流電圧と定格電圧の差に基づき、比例関係またはPI制御によって微調整された指令によって、正確な電力指令を取得する。
【0048】
フレキシブル直流制御・保護システムは、故障が解消されたことを検出した場合、エネルギー消費装置に退出の指令を伝送する。エネルギー消費装置は、退出の指令を受け取った場合、所定のレートで投入されたサブモジュールの数を0に減少させ、退出する。
【0049】
上記の式において、Pchop_setはフレキシブル直流の定格電力の0~0.8倍とし、Udcchop_set1は直流定格電圧の1.02~1.5倍とし、Udcmaxは直流定格電圧の1.05~1.5倍とし、Udcminは定格直流電圧の0.7~0.95倍とした。
【0050】
フレキシブル直流制御システムとエネルギー消費装置の制御システムとの間で通信故障が発生した場合、
図4に示すフローに従って、以下のように制御を行う。
通信が遮断された場合、エネルギー消費装置は制御・保護装置から故障情報についての判定を受け取ることはできない。故障により直流電圧が上昇した場合、エネルギー消費装置は直流母線電圧U
dcを監視する。直流電圧がUdc
chop_set2よりも高く、且つ一定の時間T
m_set2が経過した場合、Udc
chop_set3→Udc
chop_set2が0→N個のサブモジュールに対応する対応関係に応じて、エネルギー消費装置の投入を開始し、N個のサブモジュールがすべて投入されたときのエネルギー消費装置の消費電力は、直流システムの定格伝送電力に相当する。上記の方法により、故障時に直流電圧をUdc
chop_set3とUdc
chop_set2の間で制御することができる。故障が解消された後、受電側の直流電圧制御局の電力伝送能力が回復し、直流電圧が低下する。電圧がUdc
chop_set3までに低下し、且つ一定の時間T
m_set3が経過した場合、エネルギー消費装置が退出する。
【0051】
Udcchop_set2は直流定格電圧の1.02~1.5倍とし、Udcchop_set3は直流定格電圧の1.01~1.3倍とし、且つUdcchop_set3<Udcchop_set2を満たす。Tm_set1は0.5ms~500msとし、Tm_set2は、0.5ms~500msとし、Tm_set3は、0.5ms~500msとした。
【0052】
上記の実施形態は、本発明の技術的思想を説明するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明が提案する技術的思想に基づいて技術的解決手段をもとに行われた如何なる変更は、いずれも本発明の保護範囲に包含される。