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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/115 20200101AFI20230609BHJP
【FI】
H05B47/115
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019097745
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020194626
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸本 龍海
(72)【発明者】
【氏名】森脇 淑也
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-272311(JP,A)
【文献】特開2001-345187(JP,A)
【文献】特表2016-520972(JP,A)
【文献】特開平9-033662(JP,A)
【文献】特開平3-216991(JP,A)
【文献】特開平7-234287(JP,A)
【文献】特開2007-317135(JP,A)
【文献】特開平3-216990(JP,A)
【文献】特開2013-140256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
45/00-45/58
47/00-47/29
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を備える電子機器であって、
検知領域の熱の変化に応じた波形信号を出力する焦電素子と、
前記負荷の駆動態様を切り替える基準となる第1の閾値を設定する閾値設定部と、
前記波形信号が前記第1の閾値を超える場合に前記負荷を駆動する駆動部と
を備え、
前記閾値設定部は、前記波形信号が前記第1の閾値を1分間に9回以上26回以下の範囲で超える場合に、前記第1の閾値の値を現状よりも大きな値に変更する
電子機器。
【請求項2】
前記焦電素子は、前記電子機器と異なる空調機にて発生する前記検知領域の熱の変化を検出し、前記波形信号を出力する
請求項1に記載の電子機器
【請求項3】
前記電子機器は、照明器具であり、
前記負荷は、光源である
請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1の閾値は、前記検知領域内の人が定位置で動いているか否かを判断するための基準値である
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記閾値設定部は、前記第1の閾値の値を変更した後、前記波形信号が変更前の前記第1の閾値を超えるか否かを判断する
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記閾値設定部は、前記第1の閾値の値を変更した後、前記波形信号が変更前の前記第1の閾値を超えない場合に、前記第1の閾値を変更後の値から変更前の値に戻す
請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記焦電素子は、前記波形信号として、アナログ信号を出力する
請求項1~6のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記第1の閾値は、前記焦電素子の最大出力電圧の1/5以下である
請求項1~7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
さらに、前記検知領域内の人が移動しているか否かを判断するための基準値である第2の閾値を記憶する記憶部を備え、
前記閾値設定部は、変更後の前記第1の閾値を前記第2の閾値以下に設定する
請求項1~8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記第2の閾値は、前記焦電素子の最大出力電圧の3/5以上である
請求項9に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱を検知することによって負荷を駆動する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焦電素子を用いて熱を検知する人体検知器が知られている。特許文献1に記載された人体検知器は、検知領域に人が存在しない場合に、人体検知器から出力される信号が所定の閾値を超えるか否かを判断することで、単なる温度変化等に起因する信号が人体検知信号であると誤検知することを防いでいる。また、この人体検知器では、検知領域に人が存在する場合に、人体検知器から出力される信号が上記所定の閾値と異なる閾値を超えるか否かを判断することで、検知領域に人が存在するにもかかわらず存在していないと誤検知することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-3366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された人体検知器では、検知領域に人が存在しない場合に、検知領域にて不定期に発生する放射熱等によって人が存在していると誤検知することがある。その場合、検知領域に人が存在しないにもかかわらず、照明器具などの電子機器の負荷が駆動された状態となることがある。
【0005】
そこで本発明は、人が存在しない場合に電子機器の負荷が駆動された状態となることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電子機器は、負荷を備える電子機器であって、検知領域の熱の変化に応じた波形信号を出力する焦電素子と、前記負荷の駆動態様を切り替える基準となる第1の閾値を設定する閾値設定部と、前記波形信号が前記第1の閾値を超える場合に前記負荷を駆動する駆動部とを備え、前記閾値設定部は、前記波形信号が前記第1の閾値を1分間に9回以上26回以下の範囲で超える場合に、前記第1の閾値の値を現状よりも大きな値に変更する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人が存在しない場合に電子機器が駆動された状態となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子機器の一例である照明器具が設置される空間領域を示す概略図である。
図2図1に示す空間領域にて空調機が稼働しているときに電子機器の焦電素子から出力される波形信号を示す図である。
図3】実施の形態に係る電子機器の一例である照明器具の外観図である。
図4】実施の形態に係る電子機器のブロック構成図である。
図5】焦電素子から出力される波形信号を示す図であって、図5の(a)は人が定位置で動いている場合、(b)は人が不在の場合、(c)は人が移動している場合の各波形信号を示す図である。
図6】第1の閾値の値が変更される場合を示す図である。
図7】焦電素子から出力される波形信号が第1の閾値を断続的に超える様子を模式的に示す図である。
図8】実施の形態に係る電子機器の動作を示すフローチャートである。
図9】実施の形態に係る電子機器の動作の他の例を示すフローチャートである。
図10】第1の閾値の値が変更前の値に戻される場合を示す図である。
図11】実施の形態の変形例に係る電子機器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態)
[1.本発明に至る経緯]
本発明に至る経緯について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、電子機器1の一例である照明器具が設置される空間領域を示す概略図である。
【0011】
図1に示すように、照明器具が設置される空間領域は、建物の天井、壁および床に囲まれて構成されている。建物の天井には照明器具が設置され、壁には空調機(エアーコンディショナ)2が設置され、床には机が配置されている。図1の(a)には、人が机上で作業を行っている状態が示されており、図1の(b)には、人が机から離れ、焦電素子10の検知領域に人が存在していない状態が示されている。
【0012】
照明器具は、検知領域の熱の変化に応じた波形信号を出力する焦電素子10と、負荷である光源とを備えている。この照明器具は、人が発する赤外線を焦電素子10で検知することで、光源を点灯させる。
【0013】
焦電素子10の検知性能の向上により、焦電素子10は人の僅かな動きを検知することが可能になっているが、その反面、空間領域における熱のゆらぎなども検知するようになっている。そのため、焦電素子10の検知領域に人が存在しないにもかかわらず人が存在していると誤検知することがある。
【0014】
図2は、空間領域にて空調機2が稼働しているときに電子機器(照明器具)1の焦電素子10から出力される波形信号を示す図である。例えば、空調機2の稼働によって机および床が加熱され、机および床から放出される不定期な放射熱を焦電素子10が検出すると、焦電素子10から出力される波形信号にノイズ波形が表れる。この場合、図1の(b)に示すように検知領域に人が存在しないにもかかわらず、照明器具は、人が存在していると判断して点灯した状態となる。
【0015】
従来の電子機器では、検知領域にて不定期に発生する放射熱等によって、人が存在しないにもかかわらず存在すると判断して電子機器の負荷が駆動された状態になることがある。それに対し本発明の電子機器は、以下に示す構成を有しており、人が存在しない場合に電子機器の負荷が駆動された状態となることを抑制することができる。
【0016】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の一形態に係る実現形態を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。本発明の実現形態は、現行の独立請求項に限定されるものではなく、他の独立請求項によっても表現され得る。
【0017】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0018】
[2.電子機器の構成]
実施の形態に係る電子機器1の構成について、図3図7を参照しながら説明する。
【0019】
図3は、電子機器1の一例である照明器具の外観図である。図4は、電子機器1のブロック構成図である。
【0020】
電子機器1は、熱を検知することによって負荷20を駆動する機器である。電子機器1は、例えば、建物の天井または壁に設置される。本実施の形態では、電子機器1が照明器具であり、負荷20が光源である場合を例に挙げて説明する。
【0021】
図3および図4に示すように、電子機器1は、焦電素子10と、負荷20と、制御部30とを備えている。焦電素子10は、電子機器1の筐体40の下側、すなわち床側に設けられ、負荷20および制御部30のそれぞれは、筐体40の内部に設けられている。焦電素子10、負荷20のそれぞれは、制御部30に接続されている。
【0022】
負荷20は、例えば、LED(Light Emitting Diode)素子などの光源であり、制御部30によって調光制御される。
【0023】
焦電素子10は、熱の変化を検出し、熱の変化に応じた波形信号を出力する素子である。具体的には焦電素子10は、検知領域における赤外線を受光し、赤外線の受光量の変化に応じた電圧信号を制御部30に出力する。焦電素子10から出力される波形信号は、アナログ信号である。
【0024】
制御部30は、閾値設定部31と、駆動部32と、記憶部33とを備えている。制御部30が有する各機能は、マイクロプロセッサ、メモリおよびメモリに格納されたプログラムなどによって実現される。
【0025】
制御部30は、焦電素子10の波形信号の信号レベル(振幅)の大きさを見分けるための第1の閾値TH1および第2の閾値TH2を有している。第1の閾値TH1は、人が定位置で動いているか否か、すなわち人が微動しているか否かを判断するための信号レベルの基準値であり、第2の閾値TH2は、検知領域で人が移動しているか否かを判断するための信号レベルの基準値である。
【0026】
図5は、焦電素子10から出力される波形信号を示す図であって、図5の(a)は人が定位置で動いている場合、(b)は人が不在の場合、(c)は人が移動している場合の各波形信号を示す図である。
【0027】
例えば、図5の(a)に示すように、波形信号の信号レベルが第1の閾値TH1を超えると検知領域に人が存在していると判断され、図5の(b)に示すように、波形信号の信号レベルが第1の閾値TH1を超えないと人が不在であると判断される。また、図5の(c)に示すように、波形信号の信号レベルが第2の閾値TH2を超えると人が移動していると判断される。第2の閾値TH2は、第1の閾値TH1よりも大きな値に設定される。例えば、第1の閾値TH1は、焦電素子10の最大出力電圧の1/5以下に設定され、第2の閾値TH2は、焦電素子10の最大出力電圧の3/5以上に設定される。
【0028】
駆動部32は、波形信号の信号レベルが第1の閾値TH1を超える場合、すなわち検知領域に人が存在している場合に負荷20を駆動する。また、駆動部32は、波形信号の信号レベルが第1の閾値TH1以下である場合に負荷20を駆動しない。このように第1の閾値TH1は、負荷20の駆動態様を切り替えるための基準値となっている。負荷20の駆動態様の切り替えとは、例えば、照明器具の光源の点灯、消灯および暗点灯の切り替えである。
【0029】
記憶部33は、第1の閾値TH1および第2の閾値TH2を記憶する。また、記憶部33は、後述する変更後の第1の閾値TH1の値、および、変更前の第1の閾値TH1の値を記憶する。本実施の形態における第1の閾値TH1は、検知領域で発生する放射熱の量などに応じて変更される値であり、第2の閾値TH2は固定値である。
【0030】
閾値設定部31は、検知領域で発生する放射熱の量などに応じて、第1の閾値TH1の値を適切な値に変更する。具体的には閾値設定部31は、検知領域に人が存在しない状況において焦電素子10から出力される波形信号に基づいて、第1の閾値TH1の値を放射熱の影響を受けにくい値に変更する。
【0031】
図6は、第1の閾値TH1の値が変更される場合を示す図である。図6の(a)には、焦電素子10から出力される波形信号の信号レベルの極大値(以下、ピーク値と呼ぶ場合がある)が第1の閾値TH1を断続的に超えている例が示されている。閾値設定部31は、波形信号の信号レベルが第1の閾値TH1を断続的に超える場合、図6の(b)に示すように、第1の閾値TH1の値を現状よりも大きな値に変更する。このように第1の閾値TH1を大きな値に変更することで、波形信号が第1の閾値TH1を超える回数を減らしている。なお、波形信号が第1の閾値TH1を断続的に超えるとは、波形信号が第1の閾値TH1を繰り返し横切ることを意味する。
【0032】
図7は、焦電素子10から出力される波形信号の信号レベルが第1の閾値TH1を断続的に超える様子を模式的に示す図である。閾値設定部31は、例えば図7に示すように、波形信号の信号レベルが第1の閾値TH1を1分間に9回超えた場合に、第1の閾値TH1の値を現状よりも大きな値に変更してもよい。すなわち閾値設定部31は、焦電素子10の波形信号の信号レベルが第1の閾値TH1を規定期間に規定回数超える場合に、第1の閾値TH1の値を現状よりも大きな値に変更してもよい。上記規定期間は例えば1分であり、上記規定回数は例えば9回以上26回以下の範囲から選択される。上記規定期間および上記規定回数は、焦電素子10の性能、空調機の性能、検知領域における机の配置等によって適宜決められる。
【0033】
このように本実施の形態の電子機器1では、検知領域に人が存在せずかつ波形信号が第1の閾値TH1を断続的に超える場合に、第1の閾値TH1の値を現状よりも大きな値に変更する。これにより、人が存在しない場合に電子機器1の負荷20が駆動された状態となることを抑制することができる。
【0034】
[3.電子機器の動作]
次に、実施の形態に係る電子機器1の動作について図8図10を参照しながら説明する。
【0035】
図8は、電子機器1の動作を示すフローチャートである。
【0036】
まず、制御部30は、焦電素子10から出力される波形信号を受け付ける(ステップS11)。
【0037】
次に、制御部30は、上記波形信号のピーク値が第1の閾値TH1以上となっているか否かを判断する(ステップS12)。なお、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1以上となっているか否かは、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1以上となった回数によって判断されてもよい。この回数は、1回に限られず、焦電素子10が拾うノイズ等の影響を低減するため、2回以上に設定されてもよい。
【0038】
波形信号のピーク値が第1の閾値TH1以上となっていなければ(S12にてNo)、検知領域に人が存在していないことになるので、制御部30は電子機器1の負荷20を駆動しない、もしくは負荷20を駆動停止する(ステップS22)。一方、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1以上となっていれば(S12にてYes)、検知領域に人が存在していることになるので、制御部30は電子機器1の負荷20を駆動させる(ステップS13)。具体的には、電子機器1が照明器具である場合、制御部30は負荷20である光源を点灯させる。
【0039】
次に、制御部30は、波形信号のピーク値が第2の閾値TH2以内であるか否かを判断する(ステップS14)。ここで波形信号のピーク値が第2の閾値TH2よりも大きければ(S14にてNo)、人が移動していることになるのでステップS11に戻って、人の移動が終了するまでステップS11以降の処理を再び行う。一方、波形信号のピーク値が第2の閾値TH2以内であれば(S14にてYes)、人が移動しておらず定位置で動いていることになり、次のステップに進む。
【0040】
次のステップでは、検知領域にて不定期に発生する放射熱があるか否かを判断する(ステップS15)。例えば制御部30は、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1を断続的に超えていなければ放射熱が少ないと判断し(S15にてNo)、第1の閾値TH1を変更せずにステップS11に戻る。一方、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1を断続的に超えていれば放射熱が多く発生していると判断し(S15にてYes)、第1の閾値TH1の値を変更する(ステップS16)。制御部30は、第1の閾値TH1の値を変更する際に、放射熱の影響を受けにくいように余裕値を設けて変更後の第1の閾値TH1の値を設定してもよい。
【0041】
このように、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1を断続的に超える場合に、第1の閾値TH1の値を現状よりも大きな値に変更することで、人が存在しない場合に電子機器1の負荷20が駆動された状態となることを抑制することができる。
【0042】
次に、電子機器1の動作の他の例について説明する。上記では、誤検知を抑制するために第1の閾値TH1を現状よりも大きな値にする例について説明したが、第1の閾値TH1の値が大きくなりすぎると人の存在を検知できなくなることがある。そこで、第1の閾値TH1の値を初期の値に戻す例について説明する。
【0043】
図9は、電子機器1の動作の他の例を示すフローチャートである。
【0044】
まず、制御部30は、焦電素子10から出力される波形信号を受け付け(ステップS11)、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1以上となっているか否かを判断する(ステップS12)。ここで波形信号のピーク値が第1の閾値TH1以上となっていなければ(S12にてNo)、負荷20の駆動を停止する前に次のステップを行う。
【0045】
次のステップにて制御部30は、波形信号のピーク値の、変更前の第1の閾値TH1を超える回数が第1カウント数以内であるか否かを判断する(ステップS21)。なお、第1カウント数は、例えば2回以下の数であり、図7で例示した回数よりも小さな数に設定される。第1カウント数を設定するのは、焦電素子10が拾うノイズ等の影響を低減するためである。
【0046】
ここで、波形信号のピーク値の、変更前の第1の閾値TH1を超える回数が第1カウント数以内であれば(S21にてYes)、検知領域に本当に人が存在していないことになるので、制御部30は電子機器1の負荷20を駆動しない、もしくは負荷20を駆動停止する(ステップS22)。一方、波形信号のピーク値の、変更前の第1の閾値TH1を超える回数が第1カウント数よりも大きければ(S21にてNo)、次のステップに進み、さらに、変更前の第1の閾値TH1を超える回数が第2カウント数以内であるか否かを判断する(ステップS23)。なお、第2カウント数は、例えば、3回以上8回以下の数であり、第1カウント数よりも大きくかつ図7で示した回数よりも小さな数に設定される。第2カウント数を設定するのは、焦電素子10が拾うノイズ等の影響を低減するためである。なお、第2カウント数は、図7で説明した規定回数と同じ回数であってもよい。
【0047】
ここで、波形信号のピーク値の、変更前の第1の閾値TH1を超える回数が第2カウント数よりも大きければ(S23にてNo)、第1の閾値TH1を初期の値に戻しても誤検知する可能性があるので、第1の閾値TH1を初期の値に戻さず、ステップS11以降の処理を再び行う。一方、変更前の第1の閾値TH1を超える回数が第2カウント数以内であれば(S23にてYes)、波形信号が安定しているとみなし、制御部30は、第1の閾値TH1の値を変更前の値に戻す(ステップS24)。
【0048】
図10は、第1の閾値TH1の値が変更前の値に戻される場合を示す図である。図10の(a)には、焦電素子10から出力される波形信号のピーク値が第1の閾値TH1を超えていない例が示されている。このように閾値設定部31は、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1を超えない場合、例えば規定期間に第1の閾値TH1を超える回数が第2カウント数以内である場合、図10の(b)に示すように第1の閾値TH1の値を変更前の値(初期の値)に戻す。制御部30は、第1の閾値TH1の値を変更前の値に戻した後、ステップS11に戻り、引き続きステップS11以降の処理を実行する。
【0049】
このように閾値設定部31が、第1の閾値TH1の値を変更した後、波形信号が変更前の第1の閾値TH1を規定期間に第2カウント数を超えるか否かを判断する。そして、波形信号が変更前の第1の閾値TH1を規定期間に第2カウント数超えない場合に、第1の閾値TH1を変更後の値から変更前の値に戻す。これにより、第1の閾値TH1が適切な値に変更される。
【0050】
[4.実施の形態の変形例]
次に、実施の形態の変形例に係る電子機器1の動作について説明する。変形例の電子機器1の動作では、上記実施の形態のように負荷20を駆動してから第1の閾値TH1の変更要否を確認するのでなく、先に第1の閾値TH1の変更要否を確認してから負荷20を駆動させている。
【0051】
図11は、変形例に係る電子機器1の一例である照明器具の動作を示すフローチャートである。
【0052】
まず、制御部30は、焦電素子10から出力される波形信号を受け付ける(ステップS11)。
【0053】
次に、制御部30は、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1以上となっているか否かを判断する(ステップS12)。波形信号のピーク値が第1の閾値TH1以上となっていなければ(S12にてNo)、検知領域に人が存在していないことになるので、制御部30は電子機器1の負荷20を駆動しない、もしくは負荷20を駆動停止する(ステップS22)。一方、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1以上となっていれば(S12にてYes)、検知領域に人が存在していることになるので、次のステップに進む。
【0054】
次のステップで、制御部30は、波形信号のピーク値が第2の閾値TH2以内であるか否かを判断する(ステップS14)。ここで波形信号のピーク値が第2の閾値TH2よりも大きければ(S14にてNo)、人が移動していることになるのでステップS17に進み、負荷20を駆動する。一方、波形信号のピーク値が第2の閾値TH2以内であれば(S14にてYes)、人が移動しておらず定位置で動いていることになり、ステップS15に進む。
【0055】
ステップS15では、検知領域にて不定期に発生する放射熱があるか否かを判断する。例えば制御部30は、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1を断続的に超えていなければ放射熱が少ないと判断し(S15にてNo)、第1の閾値TH1を変更せずにステップS17に進む。一方、波形信号のピーク値が第1の閾値TH1を断続的に超えていれば放射熱が多く発生していると判断し(S15にてYes)、第1の閾値TH1の値を変更する(ステップS16)。そして制御部30は、第1の閾値TH1を変更した後、電子機器1の負荷20を駆動させる(ステップS17)。
【0056】
変形例においても、波形信号が第1の閾値を断続的に超える場合に、第1の閾値TH1の値を現状よりも大きな値に変更することで、人が存在しない場合に電子機器1の負荷20が駆動された状態となることを抑制することができる。
【0057】
[5.効果等]
本実施の形態に係る電子機器1は、負荷20を備える電子機器1であって、検知領域の熱の変化に応じた波形信号を出力する焦電素子10と、負荷20の駆動態様を切り替える基準となる第1の閾値TH1を設定する閾値設定部31と、上記波形信号が第1の閾値TH1を超える場合に負荷20を駆動する駆動部とを備える。閾値設定部31は、検知領域に人が存在せずかつ波形信号が第1の閾値TH1を断続的に超える場合に、第1の閾値TH1の値を現状よりも大きな値に変更する。
【0058】
これによれば、焦電素子10の波形信号が第1の閾値TH1を断続的に超える場合に、第1の閾値TH1の値が現状よりも大きな値に変更される。これにより、人が存在しない場合に電子機器1の負荷20が駆動された状態となることを抑制することができる。
【0059】
また、電子機器1は、照明器具であり、負荷20は、光源であってもよい。
【0060】
これによれば、人が存在しない場合に照明器具の光源が点灯された状態となることを抑制することができる。
【0061】
また、第1の閾値TH1は、人が定位置で動いているか否かを判断するための基準値であってもよい。
【0062】
これによれば、第1の閾値TH1を用いて人が定位置で動いているか否かを判断することができ、人が存在しない場合に電子機器1の負荷20が駆動された状態となることを抑制することができる。
【0063】
また、閾値設定部31は、第1の閾値TH1の値を変更した後、上記波形信号が変更前の第1の閾値TH1を超えるか否かを判断してもよい。
【0064】
これによれば、第1の閾値TH1が適切な値であるか否かを監視することができる。
【0065】
また、閾値設定部31は、第1の閾値TH1の値を変更した後、上記波形信号が変更前の第1の閾値TH1を超えない場合に、第1の閾値TH1を変更後の値から変更前の値に戻してもよい。
【0066】
これによれば、第1の閾値TH1を適切な値に戻すことができる。これにより、第1の閾値TH1が大きくなりすぎて負荷20が駆動しなくなることを抑制することができる。
【0067】
また、焦電素子10は、上記波形信号として、アナログ信号を出力してもよい。
【0068】
これによれば、閾値設定部31は、波形信号に対する第1の閾値TH1を簡易に設定することができる。
【0069】
また、第1の閾値TH1は、焦電素子10の最大出力電圧の1/5以下であってもよい。
【0070】
これによれば、閾値設定部31は、第1の閾値TH1を適切に設定することができる。
【0071】
また、電子機器1は、さらに、人が移動しているか否かを判断するための基準値である第2の閾値TH2を記憶する記憶部33を備え、閾値設定部31は、変更後の第1の閾値TH1を第2の閾値TH2以下に設定してもよい。
【0072】
これによれば、閾値設定部31は、第1の閾値TH1を適切に設定することができ、例えば第1の閾値TH1が大きくなりすぎて負荷20が駆動しなくなることを抑制することができる。
【0073】
また、第2の閾値TH2は、焦電素子10の最大出力電圧の3/5以上であってもよい。
【0074】
これによれば、第2の閾値TH2が適切に設定される。
【0075】
また、閾値設定部31は、検知領域に人が存在せずかつ波形信号が第1の閾値TH1を規定期間に規定回数超える場合に、第1の閾値TH1の値を現状よりも大きな値に変更してもよい。
【0076】
これによれば、焦電素子10の波形信号が第1の閾値TH1を規定期間に規定回数超える場合に、第1の閾値TH1の値が現状よりも大きな値に変更される。これにより、第1の閾値TH1が適切に変更され、人が存在しない場合に電子機器1の負荷20が駆動された状態となることを抑制することができる。
【0077】
また、上記規定期間は1分であり、上記規定回数は9回以上26回以下であってもよい。
【0078】
これによれば、焦電素子10の波形信号が第1の閾値TH1を1分間に9回以上26回以下の間で超える場合に、第1の閾値TH1の値が現状よりも大きな値に変更される。これにより、第1の閾値TH1が適切に変更され、人が存在しない場合に電子機器1の負荷20が駆動された状態となることを抑制することができる。
【0079】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に係る電子機器1について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0080】
上記実施の形態では、電子機器1の一例として照明器具を示したが、それに限られず、電子機器1は空調機であってもよい。すなわち空調機が、焦電素子10、負荷20、制御部30を備えていてもよい。
【0081】
また、上記実施の形態の図1では、天井に1つの電子機器1が設置されている例を示したが、それに限られず、天井に複数の電子機器1が設置され、それぞれの電子機器1にて第1の閾値TH1の値の変更が行われてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態の図8のステップS22では、電子機器1の負荷20の駆動を停止する例を示したが、制御部30は、駆動を停止する前に停止予告を行ってもよい。例えば電子機器1が照明器具である場合、制御部30は光源の明るさまたは色温度を変えたり、照明器具から出力される音、振動、匂いまたは表示を変えたりして、照明器具が消灯することをユーザに報知してもよい。
【0083】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 電子機器
10 焦電素子
20 負荷(光源)
30 制御部
31 閾値設定部
32 駆動部
33 記憶部
TH1 第1の閾値
TH2 第2の閾値
図1
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