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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230609BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20230609BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
B29C45/00
B29C44/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019021411
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020128480
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美枝
(72)【発明者】
【氏名】浜辺 理史
(72)【発明者】
【氏名】今西 正義
(72)【発明者】
【氏名】名木野 俊文
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-056176(JP,A)
【文献】国際公開第2009/095426(WO,A2)
【文献】特開平10-138307(JP,A)
【文献】国際公開第2012/060392(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/026645(WO,A1)
【文献】特開昭63-265934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00- 44/60
B29C 67/20
B29C 45/00- 45/84
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤樹脂として、ポリオレフィン類と、
15質量%以上80質量%以下のフィラーとして、セルロース類の天然繊維であって、アスペクト比の異なる繊維状フィラーの混合体と、
0.01質量%以上10質量%以下の発泡剤と、
を含み、
前記発泡剤の発泡倍率が1.1倍以上である、発泡成形体。
【請求項2】
前記発泡成形体は、
表面に位置するスキン層と、
前記スキン層の内側に位置し前記スキン層よりも前記フィラーの質量濃度が低いコア表層と、
前記コア表層の内側に位置し前記コア表層より前記フィラーの質量濃度が低いコア内部層と、
を有する、請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
前記コア内部層の前記フィラーの質量濃度に対する前記スキン層の前記フィラーの質量濃度の比率が1.05以上であり、前記コア内部層の前記フィラーの質量濃度に対する前記コア表層の前記フィラーの質量濃度の比率が1.02以上である、請求項2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
前記コア表層に含まれる発泡剤のセル径が、前記コア内部層に含まれる発泡剤のセル径よりも小さい、請求項2または3に記載の発泡成形体。
【請求項5】
前記コア表層に含まれる発泡剤のセル径が40μm~80μm以下であり、前記コア内部層に含まれる発泡剤のセル径が90μm~500μm以下である、請求項4に記載の発泡成形体。
【請求項6】
前記フィラーは、アスペクト比が2以下のフィラーと、アスペクト比が10以上のフィラーとを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の発泡成形体。
【請求項7】
前記フィラーは、アスペクト比が2以下のフィラーの割合が、アスペクト比が10以上のフィラーの割合よりも多い、請求項6に記載の発泡成形体。
【請求項8】
前記フィラーのうちアスペクト比が2以下のフィラーの割合が50%以上70%以下であり、前記フィラーのうちアスペクト比が10以上のフィラーの割合が1%以上10%以下である、請求項7に記載の発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的特性に優れた発泡成形体を実現できる複合樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等のいわゆる「汎用プラスチック」は、非常に安価であるだけでなく、成形が容易で、金属、またはセラミックスに比べて重さが数分の一と軽量である。そのため、汎用プラスチックは、袋、各種包装、各種容器、シート類等の多様な生活用品の材料として、また、自動車部品、電気部品等の工業部品、及び日用品、雑貨用品等の材料として、よく利用されている。
【0003】
しかしながら、汎用プラスチックは、機械的強度が不十分であること等の欠点を有している。そのため、汎用プラスチックは、自動車等の機械製品、及び電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品に用いられる材料に対して要求される十分な特性を有しておらず、その適用範囲が制限されているのが現状である。
【0004】
一方、ポリカーボネート、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド等のいわゆる「エンジニアプラスチック」は、機械的特性に優れており、自動車等の機械製品、及び電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品に用いられている。しかし、エンジニアプラスチックは、高価であり、モノマーリサイクルが難しく、環境負荷が大きいといった課題を有している。
【0005】
そこで、汎用プラスチックの材料特性(機械的強度等)を大幅に改善することが要望されている。汎用プラスチックを強化する目的で、繊維状フィラーである天然繊維やガラス繊維、炭素繊維などを汎用プラスチックの樹脂中に分散させることにより、その汎用プラスチックの機械的強度を向上させる技術が知られている。中でもセルロースなどの有機繊維状フィラーは、安価であり、かつ廃棄時の環境性にも優れていることから、強化用繊維として注目視されている。
【0006】
さらに、上記のような特性を生かしながら、軽量化を図ったプラスチックとして、樹脂中に発泡剤を添加して発泡成形してなる発泡成形体が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1では、ポリアミド樹脂中に均一に分散された低濃度のセルロース繊維の複合樹脂を発泡成形することにより、表面外観と耐衝撃性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6351574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では繊維状フィラーであるセルロース繊維を均一に分散させることで耐衝撃性を高めているが、セルロース繊維の含有量が低いため、汎用プラスチック等の樹脂を使用した場合、耐衝撃性は不足している。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、軽量化と耐衝撃性を備える発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る発泡成形体は、主剤樹脂と、
15質量%以上80質量%以下のフィラーと、
0.01質量%以上10質量%以下の発泡剤と、
を含み、
前記発泡剤の発泡倍率が1.1倍以上である。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る発泡成形体によれば、高い耐衝撃性および軽量化を両立し、優れた外観を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態に係る発泡成形体の構成を示す模式図である。
図2】実施の形態のフィラーを説明するための概略図である。
図3】実施の形態の発泡成形体のスキン層、コア表層およびコア内部層を説明するための概略図である。
図4】実施の形態に係る発泡成形体の製造方法のフロー図である。
図5】実施の形態における実施例および比較例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の態様に係る発泡成形体は、主剤樹脂と、
15質量%以上80質量%以下のフィラーと、
0.01質量%以上10質量%以下の発泡剤と、
を含み、
前記発泡剤の発泡倍率が1.1倍以上である。
【0015】
第2の態様に係る発泡成形体は、上記第1の態様において、前記発泡成形体は、
表面に位置するスキン層と、
前記スキン層の内側に位置し前記スキン層よりも前記フィラーの質量濃度が低いコア表層と、
前記コア表層の内側に位置し前記コア表層より前記フィラーの質量濃度が低いコア内部層と、
を有してもよい。
【0016】
第3の態様に係る発泡成形体は、上記第2の態様において、前記コア内部層の前記フィラーの質量濃度に対する前記スキン層の前記フィラーの質量濃度の比率が1.05以上であり、前記コア内部層の前記フィラーの質量濃度に対する前記コア表層の前記フィラーの質量濃度の比率が1.02以上であってもよい。
【0017】
第4の態様に係る発泡成形体は、上記第2又は第3の態様において、前記コア表層に含まれる発泡剤のセル径が、前記コア内部層に含まれる発泡剤のセル径よりも小さくてもよい。
【0018】
第5の態様に係る発泡成形体は、上記第2の態様において、前記コア内部層に含まれる発泡剤のセル径が40μm~80μm以下であり、前記コア表層に含まれる発泡剤のセル径が90μm~500μm以下であってもよい。
【0019】
第6の態様に係る発泡成形体は、上記第1から第5のいずれかの態様において、前記フィラーは、アスペクト比が2以下のフィラーと、アスペクト比が10以上のフィラーとを含んでもよい。
【0020】
第7の態様に係る発泡成形体は、上記第6の態様において、前記フィラーは、アスペクト比が2以下のフィラーの割合が、アスペクト比が10以上のフィラーの割合よりも多くてもよい。
【0021】
第8の態様に係る発泡成形体は、上記第7の態様において、前記フィラーのうちアスペクト比が2以下のフィラーの割合が50%以上70%以下であり、前記フィラーのうちアスペクト比が10以上のフィラーの割合が1%以上10%以下であってもよい。
【0022】
以下、本開示の実施の形態に係る発泡成形体について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、同じ構成部分には同じ符号を付して、適宜説明を省略している。
【0023】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る発泡成形体10の構成を示す模式図である。
本実施の形態に係る発泡成形体は、主剤樹脂と、15質量%以上80質量%以下のフィラーと、0.01質量%以上10質量%以下の発泡剤と、を含む。この発泡剤は、発泡倍率が1.1倍以上である。
この発泡成形体によれば、上記範囲の質量濃度のフィラーを含み、発泡剤の発泡倍率が上記範囲にあることによって、高い強度と軽量化を実現することができる。
【0024】
以下に、この発泡成形体を構成する構成部材について説明する。
【0025】
<主剤樹脂>
本実施の形態において、主剤樹脂1は、良好な成形性を確保するために、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂を含む)、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂またはその誘導体、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6-キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが挙げられる。上記の樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。なお、主剤樹脂1は熱可塑性を有していれば上記の材料に限定されるものではない。
【0026】
これらの熱可塑性樹脂のうち、主剤樹脂1は、比較的低融点であるオレフィン系樹脂であることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、オレフィン系単量体の単独重合体の他、オレフィン系単量体の共重合体や、オレフィン系単量体と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。オレフィン系単量体としては、例えば、鎖状オレフィン類(エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどのα-C2-20オレフィンなど)、環状オレフィン類などが挙げられる。これらのオレフィン系単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。上記オレフィン系単量体のうち、エチレン、プロピレンなどの鎖状オレフィン類が好ましい。他の共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系単量体;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその無水物;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);ノルボルネン、シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;およびブタジエン、イソプレンなどのジエン類などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度または線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1などの三元共重合体などの鎖状オレフィン類(特にα-C2-4オレフィン)の共重合体などが挙げられる。
【0027】
本実施の形態における主剤樹脂の含有量は、10質量%以上、85質量%以下が好ましい。また、15質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上、65質量%以下であることがさらに好ましい。主剤樹脂の含有量が10質量%未満であると、ペレット成形、発泡成形時の流動性が悪くなり、成形不良が発生する。一方、主剤樹脂含有量が85質量%を超えると繊維状フィラー添加による発泡成形体強度の改善効果が得られない。
【0028】
<分散剤>
次に、分散剤について説明する。本実施の形態において、繊維状フィラー2と主剤樹脂1との接着性、あるいは主剤樹脂1中の繊維状フィラー2の分散性を向上させるなどの目的で、分散剤を含有する。分散剤としては、各種のチタネート系カップリング剤、シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記シランカップリング剤は、不飽和炭化水素系やエポキシ系のものが好ましい。分散剤の表面は、熱硬化性もしくは熱可塑性のポリマー成分で処理され変性処理されても問題ない。
【0029】
本実施の形態における分散剤の含有量は、0.01質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、10質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上、5質量%以下であることがさらに好ましい。分散剤の含有量が、0.01質量%未満であると、分散不良が発生する。一方、分散剤の含有量が20質量%を超えると、発泡成形体の強度が低下する。分散剤は、主剤樹脂1とフィラー2の組み合わせにより適切に選択され、分散剤が必要ない組み合わせの場合は添加しなくてもよい。
【0030】
<繊維状フィラー>
次に、繊維状フィラー2について説明する。本実施の形態において、繊維状フィラー2(以下、単に「繊維」と称することがある。)は、複合樹脂組成物を用いて成形した発泡成形体において、機械的特性の向上や、線膨張係数の低下による寸法安定性の向上などを主要な目的として用いられる。この目的のため、繊維状フィラー2は主剤樹脂1よりも弾性率が高いことが好ましく、具体的にはカーボンファイバー(炭素繊維)、カーボンナノチューブ、パルプ、セルロース、セルロースナノファイバー、リグノセルロース、リグノセルロースナノファイバー、塩基性硫酸マグネシウム繊維(マグネシウムオキシサルフェート繊維)、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、炭化ケイ素繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、各種金属繊維、綿、絹、羊毛あるいは麻等の天然繊維、ジュート繊維、レーヨンあるいはキュプラなどの再生繊維、アセテート、プロミックスなどの半合成繊維、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミド、ポリオレフィンなどの合成繊維、さらにはそれらの表面及び末端に化学修飾した変性繊維などが挙げられる。またさらにこれらの中で、入手性、弾性率の高さ、線膨張係数の低さの観点から、カーボン類、セルロース類が特に好ましい。さらに環境性の観点からはセルロース類の天然繊維が好ましい。
【0031】
本実施の形態における繊維状フィラーの含有量(質量濃度)は、15質量%以上、85質量%以下であることが好ましい。また、20質量%以上、80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上、70質量%以下であることがさらに好ましい。繊維状フィラーの含有量(質量濃度)が、15質量%未満であると、繊維状フィラーの添加による発泡成形体強度の改善効果が得られない。一方、繊維状フィラーの含有量(質量濃度)が85質量%を超えると、ペレット成形、発泡成形時の流動性が悪くなり、成形不良が発生する。
【0032】
図2は、実施の形態のフィラーを説明するための概略図である。繊維状フィラー2の形状について説明する。図2に示すように符号Lは、繊維状フィラー2の長さ(以下、「繊維長」と称することがある。)であって、符号dは、繊維状フィラー2の幅(以下、「繊維径」と称することがある。)である。繊維状フィラー2は、アスペクト比(L/d)が大きい繊維2Aと小さい繊維2Bとの混合繊維が好ましい。アスペクト比が大きい繊維2Aが多いと、弾性率が向上する。繊維状フィラー2Aのアスペクト比としては10以上が好ましい。しかし、アスペクト比が大きい繊維が多いと、耐衝撃性が悪化し、さらに繊維凝集物が多くなり。外観性が悪くなる。一方、アスペクト比が小さい繊維2Bが多いと、耐衝撃性が良化し、繊維凝集物が少なく外観性も良い。繊維状フィラー2Bのアスペクト比は2以下が好ましい。しかし、アスペクト比が小さい繊維が多いと、弾性率が低下する。
【0033】
アスペクト比と弾性率の関係性について記述する。発泡成形体への応力負荷時に、アスペクト比が大きい繊維があると、樹脂は伸びても、剛性の高い繊維が伸びにくいため、発泡成形体として歪まない。そのため、弾性率が向上する。一方で、アスペクト比が小さい繊維の場合、応力負荷時に、繊維による歪み抑制効果が薄れ、発泡成形体として歪んでしまい、弾性率が低下する。
【0034】
アスペクト比と耐衝撃性について記述する。発泡成形体の衝撃負荷時に、アスペクト比の大きい繊維があると、樹脂の伸びに繊維が追従できず、樹脂と繊維の間にクラックが入り、そこが起点となって割れへと進展する。一方、アスペクト比が小さい繊維の場合、繊維が細かいため、衝撃負荷時に樹脂の伸びに繊維が追従し、クラックが入りにくくなり、割れにくくなる。
【0035】
アスペクト比と外観性の関係性について記述する。アスペクト比の大きい繊維と小さい繊維がともに混錬されることにより、アスペクト比の大きい繊維の間に、アスペクト比の小さい繊維が入り。凝集が抑制され、外観性が改善する。
【0036】
上述の通り、弾性率。耐衝撃性、外観性の観点からアスペクト比の大きい繊維2Aと小さい繊維2Bとが発泡成形体中に混合されているのが好ましい。それぞれの繊維の混合割合がどのような関係にあれば、特性が良くなるのかはシミュレーションにより算出され、繊維状フィラー2中のそれぞれの繊維の占める割合は、アスペクト比が10以上の繊維2Aの存在割合が1%以上10%以下であり、アスペクト比2以下の繊維2Bの存在割合が50%以上70%以下であることが好ましい。
【0037】
また、アスペクト比が2より高く、10未満のその他の繊維の存在割合は、20%以上49%以下である。
【0038】
次に、繊維状フィラー2の特性について説明する。主剤樹脂1、および繊維状フィラー2の種類については、上記の通りである。一方、主剤樹脂1に対して、繊維状フィラー2が柔らかすぎる、すなわち弾性率が小さいと、複合樹脂組成物は、全体として弾性率が小さくなり、結果として強度が低下する。一方で主剤樹脂1に対して、繊維状フィラー2が硬すぎる、すなわち弾性率が大きいと、衝撃時に発生する衝撃波が伝播されずに、主剤樹脂1と繊維状フィラー2との界面で吸収されるため、その界面付近にヒビやクレーズが発生しやすくなり、結果として耐衝撃強度が落ちる。そのため、主剤樹脂1と繊維状フィラー2の弾性率の関係は、繊維状フィラー2の弾性率の方が高く、その差は極力小さい方が好ましい。最適な関係についてはシミュレーション結果から算出され、主剤樹脂1と繊維状フィラー2の弾性率差は20GPa以内であることが好ましい。
【0039】
また、これら繊維状フィラー2は、主剤樹脂1との接着性あるいは複合樹脂組成物中での分散性を向上させるなどの目的で、各種のチタネート系カップリング剤、シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどによって表面処理したものを用いてもよい。あるいは熱硬化性もしくは熱可塑性のポリマー成分で表面処理されたものでも問題ない。
【0040】
<発泡剤>
次に、発泡剤について説明する。本実施の形態において、発泡剤は、発泡成形時に気泡、つまり、発泡セルを形成するためのガスを供給する目的として用いられる。発泡剤は化学発泡剤と物理発泡剤とに大別されるが、特に制限はされない。化学発泡剤としては、ADCA(アゾジカーボンアミド)、DPT(N,N‘-ジニトロペンタメチレン手とラミン)、OBSH(4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)等の有機系化学発泡剤類、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、炭酸水素塩とクエン酸塩などの有機酸塩の組み合わせ等の無機系化学発泡剤類などが挙げられる。これらの化学発泡剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよく、発泡助剤(尿素化合物、亜鉛化合物など)も使用されてもよい。また、物理発泡剤としては、フロンガス、炭化水素ガス、窒素ガス、二酸化炭素ガスなどの液化ガス類、窒素、二酸化炭素などの超臨界流体などが挙げられる。
【0041】
本実施の形態における発泡剤の含有量は、0.01質量%以上、15質量%以下であることが好ましい。また、0.1質量%以上、10質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上、5質量%以下であることがさらに好ましい。発泡剤含有量が0.01質量%未満であると、発泡核が減少するため、発泡セル径が大きくなり、発泡成形体中で密度バラつきが大きくなり、外観性が悪化する。一方、発泡剤の含有量が15質量%を超えると、発泡成形体の強度が低下する。
【0042】
ここで、発泡成形体の構造と耐衝撃性の関係について記述する。発泡成形体の表層の弾性率が高いと、発泡成形体全体の剛性が増加し、発泡成形体の衝撃負荷時に、発泡成形体の内側で衝撃を吸収でき、耐衝撃性が向上する。
【0043】
発泡成形体の構造と外観性の関係性について記述する。発泡成形体の表面に発泡セルが存在しないことにより、発泡セルによる表面粗さの悪化が抑制され、外観性が改善する。
【0044】
上述の通り、耐衝撃性、外観性の観点から、発泡成形体は表層部に弾性率が高く、発泡セル3が存在せず、発泡成形体内部に衝撃を吸収でき、軽量化を実現できる層構造が好ましい。
【0045】
図3は、実施の形態の発泡成形体10のスキン層4、コア表層5およびコア内部層6を説明するための概略図である。
以上のことから、本実施の形態における発泡成形体10は、図3に示すように、発泡成形体の表層からスキン層4、コア表層5、コア内部層6、コア表層5、スキン層4で構成される。ここで、同一名称の層は同一の特徴を有しており、スキン層4、コア表層5の層厚みの説明については、2層を併せた厚みとする。
【0046】
<スキン層>
スキン層4は、発泡セル3を有していない層であり、スキン層4とコア内部層6との繊維状フィラー2量の質量濃度比(スキン層の繊維状フィラー量/コア内部層の繊維状フィラー量)は、1.05以上、1.6以下であることが好ましい。スキン層4の厚みは、発泡成形体厚みとの比(スキン層厚みd/発泡成形体厚みd)が、0.01以上、0.5以下であることが好ましい。
【0047】
スキン層4に発泡セル3を有すると、外観不良となり、かつ、表面の弾性率が不足し、耐衝撃性が低下する。スキン層4とコア内部層6との繊維状フィラー2量の質量濃度比が、1.05未満の場合、発泡成形体の表面の弾性率が不足し、耐衝撃性が低下する。スキン層4とコア内部層6との繊維状フィラー2の量の比が、1.6を超える場合は、発泡成形体の層間で強度差が大きくなるため、衝撃時に発生する衝撃波が追従されず、ヒビ等が入りやすくなり、耐衝撃性が低下する。
【0048】
スキン層4の厚みは、発泡成形体厚みとの比(スキン層厚みd/発泡成形体厚みd)が0.01未満であると、表面の弾性率が不足し、耐衝撃性が低下し、一方、0.5を超えると全体の密度に影響するため、軽量化が図れない。
【0049】
<コア表層>
次に、コア表層5について説明する。コア表層5は、発泡セル3を有している層であり、コア表層5とコア内部層6との繊維状フィラー2量の質量濃度比(スキン層の繊維状フィラー量/コア内部層の繊維状フィラー量)は、1.02以上、1.5以下であり、コア表層5の厚みは、発泡成形体厚みとの比(コア表層厚みd/発泡成形体厚みd)が0.01以上0.5以下であり、コア表層5内の発泡セル3径は、80μm以下であることが好ましい。コア表層5はスキン層4とコア内部層6との中間層であり、スキン層4とコア内部層6の強度差を緩和させ、耐衝撃性を向上させる。そのため、コア表層5は、スキン層4とコア内部層6との中間の強度であることが好ましい。コア表層5の発泡セル径が、80μmを超えると、部分的にスキン層4との強度差が大きくなるため、衝撃時に発生する衝撃波が追従されず、ヒビ等が入りやすくなり、耐衝撃性が低下する。コア表層5とコア内部層6との繊維状フィラー2量の質量濃度比が、1.02未満の場合、発泡成形体表面の弾性率が不足し、耐衝撃性が低下する。コア表層5とコア内部層6との繊維状フィラー2量の質量濃度比が、1.5を超える場合は、成形体層間で強度差が大きくなるため、衝撃時に発生する衝撃波が追従されず、ヒビ等が入りやすくなり、耐衝撃性が低下する。
【0050】
コア表層5の厚みは、発泡成形体厚みとの比(コア表層厚みd/発泡成形体厚みd)が0.01未満であると、表面の弾性率が不足し、耐衝撃性が低下し、一方、0.5を超えると全体の密度に影響するため、軽量化が図れない。
【0051】
<コア内部層>
次に、本実施の形態におけるコア内部層6について説明する。コア内部層6は、発泡セル3を有している層であり、コア内部層6内の発泡セル径は、500μm以下であることが好ましい。コア内部層6のセル径が、500μmを超えると、発泡セル径の大きい箇所を起点としてヒビ等が入りやすくなり、耐衝撃性が低下する。
【0052】
<発泡成形体の製造方法>
次に、発泡成形体の製造方法について記載する。図4は、本実施の形態に係る発泡成形体の製造プロセスを例示するフロー図である。
(1)まず、溶融混練処理装置内に、主剤樹脂、繊維状フィラーおよび、必要に応じて分散剤が投入され、装置内で溶融混練される。これにより、主剤樹脂が溶融し、溶融された主剤樹脂に、繊維状フィラーと分散剤が分散される。また同時に装置の剪断作用により、繊維状フィラーの凝集塊の解繊が促進され、繊維状フィラーを主剤樹脂中に細かく分散させることができる。
【0053】
従来、繊維状フィラーとしては、湿式分散などの前処理により、事前に繊維を解繊したものが使用されていた。しかし、湿式分散で用いられる溶媒中で事前に繊維状フィラーを解繊すると、溶融した主剤樹脂中で解繊されるよりも解繊されやすいため、端部のみ解繊することが難しく、繊維状フィラー全体が解繊された状態となってしまう場合があった。また前処理を合わせることで工程が増え、生産性が悪くなるといった課題があった。
【0054】
これに対して、本実施の形態における発泡成形体の製造プロセスでは、繊維状フィラーの解繊処理、変性処理を目的とした湿式分散による前処理を行わずに、主剤樹脂や分散剤などと一緒に溶融混練処理(全乾式工法)を行う。この工法では、繊維状フィラーの湿式分散処理を行わないことにより、繊維状フィラーを上記のように端部のみ部分的に解繊することができ、また工程数も少なく、生産性を向上させることができる。
【0055】
全乾式工法で本実施の形態において複合樹脂組成物を作製するには混練時に高せん断応力をかけられることが好ましく、具体的な混練手法としては、単軸混練機、二軸混練機、ロール混練機、バンバリーミキサーなどが挙げられる。高せん断をかけやすく、また量産性も高いという観点から、連続式二軸混練機、連続式ロール混練機が特に好ましい。なお、高せん断応力をかけることができる方法であれば、上記以外の混練手法でも構わない。
【0056】
(2)溶融混練装置から押し出された複合樹脂組成物は、ペレタイザー等の切断工程を経て、ペレット形状に作製される。ペレット化の方式として、樹脂溶融後すぐに行う方式としては、空中ホットカット方式、水中ホットカット方式、ストランドカット方式などがある。あるいは、一度成形体やシートを成形したあとで、粉砕、切断することによる粉砕方式などもある。
【0057】
(3)化学発泡剤を使用する場合は、上記ペレットと化学発泡剤を射出発泡成形前にドライブレンドし、射出発泡成形することにより、発泡成形体としての射出成形品を作製することができる。物理発泡剤を使用する場合は、上記ペレットを射出発泡成形機に投入し、溶融後に物理発泡剤を注入し、射出発泡成形することにより、発泡成形体としての射出成型品を作製することができる。
以下、本発明者らが行った実験における各実施例および各比較例について説明する。
【0058】
(実施例1)
以下の製造方法によってパルプ分散ポリプロピレン複合発泡成形体を製造した。
繊維状フィラーの出発原料として針葉樹パルプ(三菱製紙株式会社製 商品名:NBKP Celgar)を使用した。この針葉樹パルプを粉砕機で粉砕し、繊維状フィラーのアスペクト比の異なるフィラーの混合体を得た。それぞれのアスペクト比については、粉砕プロセスで調整した。主剤樹脂としてのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 商品名:J108M)と、上記繊維状フィラーと、分散剤として無水マレイン酸(三洋化成工業株式会社製 商品名:ユーメックス)とを重量比で42:50:5となるよう秤量し、ドライブレンドした。その後、二軸混練機(株式会社クリモト鉄工所製 KRCニーダ)にて溶融混練分散した。樹脂溶融物をホットカットし、パルプ分散ポリプロピレンペレットを作製した。
【0059】
作製したパルプ分散ポリプロピレンペレットと発泡剤としてのポリスレン(永和化成工業株式会社製)を重量比で97:3となるよう秤量し、ドライブレンドした。その後、射出発泡成形機(日本製鋼所製 180AD)によりコアバック法を用いて発泡倍率1.6倍として発泡成形体の試験片を作製した。試験片の作製条件は、樹脂温度190℃、金型温度40℃、射出速度100mm/s、保圧60MPaとした。それぞれの層構造については、射出発泡プロセスと材料組成により、調整した。ペレットと発泡剤は、ホッパーを介して成形機のスクリューへ噛み込んでいくが、その際の侵入性を時間当たりのペレット減少量で測定しており、一定であることを確認した。試験片の形状は、下記に述べる評価項目によって変更し、弾性率測定用に1号サイズのダンベルを作製し、落下衝撃試験用と外観確認用に60mm角、厚さ1.6mmの発泡成形体を作製した。また、発泡倍率を評価するために、発泡成形していない上記平板も複合樹脂成形体を作製した。得られたパルプ分散ポリプロピレン複合発泡成形体試験片を以下の方法により評価を行った。
【0060】
(発泡倍率)
得られた平板形状の発泡成形体の試験片と発泡していない成形体の試験片の見かけ密度の比から発泡倍率を測定した。ここで、見かけ密度の評価法として、成形体寸法をノギスにて測定結果から体積を算出し、精密天秤で重量を測定した結果から、見かけ密度を算出し、比を算出した。発泡倍率を評価した結果、1.61倍であった。
【0061】
(発泡セル径)
得られたパルプ分散ポリプロピレン複合発泡成形体をCP処理により断面を露出させ、SEM観察により、発泡セル径を観察した。コア表層の、コア内部層の代表的な発泡セルを約10個測定した結果、コア表層の発泡セル3径は最大50μm、コア内部層の発泡セル3径は250μmであった。
【0062】
(パルプ量)
得られたパルプ分散ポリプロピレン複合発泡成形体をCP処理により断面を露出させ、赤外分光法により3400cm-1のピーク強度を評価した。スキン層とコア内部層の比は、1.2であった。コア表層とコア内部層の比は、1.15であった。
【0063】
(繊維のアスペクト比)
得られたパルプ分散ポリプロピレンペレットをキシレン溶媒に浸漬して、ポリプロピレンを溶解させ、残ったパルプ繊維についてSEMにより繊維の形状を観察した。代表的な繊維を約50本、5箇所の場所を測定した結果、アスペクト比10以上の割合が5~10%、アスペクト比が2以下の割合が50~60%であった。
【0064】
(発泡成形体の弾性率)
得られた1号ダンベル形状の試験片を用いて、引張試験を実施した。ここで、弾性率の評価方法として、その数値が1.6GPa未満のものを×とし、1.6GPa以上2.0GPa未満のものを〇とし、2.0GPa以上のものを◎とした。同試験片の弾性率は2.5GPaで、その評価は◎であった。
【0065】
(発泡成形体の落下試験結果)
得られた平板形状の試験片を用いて、落下衝撃試験を実施した。具体的には、重さ250gの重錐を高さ80cmから試験片の板面に向けて落下させ、ヒビが入るかどうかを確認した。この評価方法として、ヒビが確認されなかったものを〇とし、表面にのみヒビが確認され、かつ、そのヒビの長さが10mm未満であったものを△とし、貫通したヒビが確認された、または、ヒビの長さが10mm以上であったものを×とした。同試験片は、ヒビが確認されず、その評価は〇であった。
【0066】
(軽量化率)
上記発泡倍率算出時の見かけ密度の結果と弾性率の結果から、比剛性を算出し、ポリプロピレン単体の比剛性との比から軽量化率を算出した。ここで、軽量化率の評価方法として、その数値が15%未満のものを×とし、15%以上20%未満のものを〇とし、20%以上のものを◎とした。軽量化率を算出した結果、32%で◎であった。
【0067】
(発泡成形体の外観性)
発泡成形体に目視レベルの繊維の凝集物が白点として見えるか気泡の跡がみえるか官能評価を行った。発泡成形体に白点や気泡の跡がないものを○とし、白点や気泡の跡が存在し、白点や気泡の跡が存在した場合は△とした。
【0068】
(実施例2)
実施例2ではポリプロピレンと、綿状針葉樹パルプと、無水マレイン酸とを重量比で62:30:5となるよう秤量し、ドライブレンドし、狙いの発泡倍率を1.8倍に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに発泡成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0069】
(実施例3)
実施例3ではポリプロピレンと、綿状針葉樹パルプと、無水マレイン酸とを重量比で22:70:5となるよう秤量し、ドライブレンドし、狙いの発泡倍率を1.3倍に変更し、パルプ分散ポリプロピレンペレットと、ポリスレンとを重量比で99:1となるよう秤量し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに発泡成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0070】
(実施例4)
実施例4ではパルプの粉砕時間を長めに変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに発泡成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0071】
(実施例5)
実施例5ではパルプの粉砕時間を短めに変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに発泡成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0072】
(比較例1)
比較例1ではポリプロピレンと、綿状針葉樹パルプと、無水マレイン酸とを重量比で82:10:5となるよう秤量し、ドライブレンドし、狙いの発泡倍率を1.6倍に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに発泡成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0073】
(比較例2)
比較例2ではポリプロピレンと、綿状針葉樹パルプと、無水マレイン酸とを重量比で22:70:5となるよう秤量し、ドライブレンドし、狙いの発泡倍率を1.6倍に変更し、パルプ分散ポリプロピレンペレットと、ポリスレンとを重量比で99.995:0.005となるよう秤量し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに発泡成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0074】
(比較例3)
比較例3ではポリプロピレンと、綿状針葉樹パルプと、無水マレイン酸とを重量比で22:70:5となるよう秤量し、ドライブレンドし、狙いの発泡倍率を1.05倍に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに発泡成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
各実施例1~5および各比較例1~3における測定結果を図5に示す。
【0075】
図5から明らかなように、繊維状フィラー量を減少させ、発泡倍率を増加させた実施例2は、弾性率がやや劣る結果となったが、スキン層、コア表層の効果により耐衝撃性の低下を抑制できた。反対に繊維状フィラー量を増加させ、発泡倍率を減少させた実施例3は軽量化がやや劣る結果となったが、アスペクト比の異なる繊維状フィラーを混合させ、また、スキン層に発泡セルを有していないため、外観性の低下を抑制できた。繊維状フィラーのアスペクト比10の量が減少した実施例4は弾性率がやや減少したが、問題ないことを確認できた。主剤樹脂10~85質量%と、フィラー15~85質量%と、分散剤0.01~20質量%、発泡剤0.01~15質量%、とを含有し、発泡倍率が1.1倍以上となっていれば、高強度と軽量化の両立した発泡成形体が得られることを確認した。
【0076】
繊維状フィラー量を10%に減少させた比較例1では、繊維状フィラー量が少ないため、弾性率が不足している。また、繊維状フィラーも発泡核剤としても働いているため、発泡セル3径も大きくなった。それにより耐衝撃性が低下し、衝撃試験にてひび割れが発生する結果となった。
【0077】
繊維状フィラーのアスペクト比が10以上の繊維の割合を増加させた実施例5では、弾性率は少し高くなったが、耐衝撃性が低下し、衝撃試験にてひび割れが発生する結果となった。またアスペクト比の大きい繊維が凝集することで発泡成形体に白点が見られた。
【0078】
発泡剤の量を0.005%に減少させた比較例2では、発泡倍率が狙いの発泡倍率より低い結果となった。また、発泡核となる発泡剤の量が非常に少ないため、発泡セル径が大きくなったことにより、弾性率は問題ないが、不均一となり耐衝撃性が低下し、衝撃試験でひび割れが発生する結果となった。
【0079】
発泡倍率を1.05に減少させた比較例3では、発泡倍率が小さいため、弾性率、耐衝撃性は問題ないが、軽量化できない結果となった。
【0080】
以上の評価から、発泡成形体中の複合樹脂組成が主剤樹脂10質量%以上85質量%以下と、フィラー15質量%以上85質量%以下と、発泡剤0.01質量%15質量%以下、とを含有し、発泡剤の発泡倍率が1.1倍以上となることにより、高い強度と軽量化を実現することができる。さらに添加されている繊維フィラーの、アスペクト比10以上の繊維存在割合が1%以上10%以下であり、アスペクト比2以下の繊維存在割合が50%以上70%以下であれば、繊維の凝集物なく外観性の良い発泡成形体を得ることができることが分かった。
【0081】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る発泡成形体によれば、従来の汎用樹脂よりも機械的強度に優れた発泡成形体を提供することができる。本発明により、主剤樹脂の特性を向上させることができるので、エンジニアリングプラスチックの代替物、または金属材料の代替物として利用され得る。従って、エンジニアリングプラスチック製または金属製の各種工業製品、または生活用品の製造コストを大幅に削減し得る。さらには家電筐体、建材、自動車部材への利用が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 主剤樹脂
2 繊維状フィラー
3 発泡セル
4 スキン層
5 コア表層
6 コア内部層
10 発泡成形体
図1
図2
図3
図4
図5