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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】表示システム、制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/20 20060101AFI20230609BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
G09G3/20 612J
G09G3/36
G09G3/20 611C
G09G3/20 623R
G09G3/20 623D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021508814
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020006975
(87)【国際公開番号】W WO2020195417
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019060319
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】平井 敦士
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕司
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-029540(JP,A)
【文献】特開2018-180854(JP,A)
【文献】特開2006-257999(JP,A)
【文献】特開昭61-172450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0092198(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0192573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 5/42
G02F 1/133 - 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゲート線と、複数のソース線と、前記複数のゲート線と前記複数のソース線とによって区画される各領域に設けられる複数の画素電極と、前記複数の画素電極に対向して設けられ、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極とを有する表示装置と、
ソース信号を出力するソース駆動回路と、
前記複数のソース線のそれぞれと前記ソース駆動回路との間に接続され、オン状態で前記ソース駆動回路から出力された前記ソース信号をソース線に出力し、オフ状態で前記ソース信号のソース線への出力を停止する複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子に複数のパルス信号を供給するスイッチング回路と、
前記スイッチング回路を制御する制御装置と、
を備え、
前記スイッチング回路は、複数の前記スイッチング素子を含むグループそれぞれについて、当該グループに含まれる前記スイッチング素子それぞれに、前記複数のパルス信号のそれぞれを供給し、前記複数のパルス信号それぞれのパルス幅は、当該パルス信号が供給される前記スイッチング素子のオン時間を規定し、
前記制御装置は、
前記複数のパルス信号のパルス幅を決定する決定部を備え、
前記複数のパルス信号のパルス幅は、前記複数のパルス信号のパルス幅のそれぞれが前記画素電極の充電時間以上であり、且つ、前記複数のパルス信号のパルス幅の合計は水平同期期間以下になるように決定され
前記複数のパルス信号のパルス幅は、所定の周波数成分のレベルが予め定められた閾値より小さくなるように決定される、
ことを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記制御装置は、さらに、
前記複数のパルス信号に含まれる前記所定の周波数成分のレベルを取得するレベル取得部を有し、
前記決定部は、取得された前記レベルが前記閾値以上の場合、前記レベルが前記閾値より小さくなるように前記複数のパルス信号のパルス幅を決定する、
ことを特徴とする請求項に記載の表示システム。
【請求項3】
前記制御装置は、さらに、
無線信号を受信する受信機の受信周波数を取得する周波数取得部を備え、
前記決定部は、取得された前記受信周波数に基づいて前記複数のパルス信号のパルス幅を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記制御装置は、さらに、
前記複数のパルス信号に含まれる前記受信周波数の周波数成分のレベルを取得するレベル取得部を有し、
前記決定部は、取得された前記レベルが予め定められた閾値以上の場合、前記レベルが前記閾値より小さくなるように前記複数のパルス信号のパルス幅を決定する、ことを特徴とする請求項に記載の表示システム。
【請求項5】
前記決定部は、取得された前記レベルが前記閾値以上の場合、前記複数のパルス信号のパルス幅を予め定められた最小時間以上に決定し、
前記最小時間は、前記表示装置の画素電極の充電時間以上に設定されている、ことを特徴とする請求項に記載の表示システム。
【請求項6】
前記レベル取得部は、取得された前記レベルが前記閾値以上の場合、パルス幅を前記最小時間から段階的に長くして、それぞれのパルス幅の前記複数のパルス信号に含まれる前記受信周波数の周波数成分のレベルを順番に取得し、
前記決定部は、前記閾値より小さい前記レベルが取得された場合、前記複数のパルス信号のパルス幅を、前記閾値より小さい前記レベルが取得されたパルス幅に決定する、ことを特徴とする請求項に記載の表示システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
複数の周波数のそれぞれに関して、前記複数のパルス信号に含まれる当該周波数の周波数成分のレベルが予め定められた閾値以下であるパルス幅を記憶している記憶部を有し、
前記決定部は、前記複数のパルス信号のパルス幅を、前記記憶部に記憶された前記受信周波数に対応するパルス幅に決定する、ことを特徴とする請求項に記載の表示システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
複数の周波数のそれぞれに関して、前記複数のパルス信号に含まれる当該周波数の周波数成分のレベルが予め定められた閾値以下であるパルス幅を記憶している記憶部を有し、
前記決定部は、前記複数のパルス信号のパルス幅を、前記記憶部に記憶されたパルス幅から決定する、ことを特徴とする請求項に記載の表示システム。
【請求項9】
複数のゲート線と、複数のソース線と、前記複数のゲート線と前記複数のソース線とによって区画される各領域に設けられる複数の画素電極と、前記複数の画素電極に対向して設けられ、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極とを有する表示装置と、ソース信号を出力するソース駆動回路と、前記複数のソース線のそれぞれと前記ソース駆動回路との間に接続され、オン状態で前記ソース駆動回路から出力された前記ソース信号をソース線に出力し、オフ状態で前記ソース信号のソース線への出力を停止する複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子に複数のパルス信号を供給するスイッチング回路とを備え、前記スイッチング回路は、複数の前記スイッチング素子を含むグループそれぞれについて、当該グループに含まれる前記スイッチング素子それぞれに、前記複数のパルス信号のそれぞれを供給する表示システムの制御装置であって、
前記複数のパルス信号のパルス幅を決定する決定部を備え、
前記複数のパルス信号のパルス幅は、前記複数のパルス信号のパルス幅のそれぞれが前記画素電極の充電時間以上であり、且つ、前記複数のパルス信号のパルス幅の合計は水平同期期間以下になるように決定され
前記複数のパルス信号のパルス幅は、所定の周波数成分のレベルが予め定められた閾値より小さくなるように決定される、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項10】
複数のゲート線と、複数のソース線と、前記複数のゲート線と前記複数のソース線とによって区画される各領域に設けられる複数の画素電極と、前記複数の画素電極に対向して設けられ、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極とを有する表示装置と、ソース信号を出力するソース駆動回路と、前記複数のソース線のそれぞれと前記ソース駆動回路との間に接続され、オン状態で前記ソース駆動回路から出力された前記ソース信号をソース線に出力し、オフ状態で前記ソース信号のソース線への出力を停止する複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子に複数のパルス信号を供給するスイッチング回路とを備え、前記スイッチング回路は、複数の前記スイッチング素子を含むグループそれぞれについて、当該グループに含まれる前記スイッチング素子それぞれに、前記複数のパルス信号のそれぞれを供給する表示システムにおける制御方法であって、
前記複数のパルス信号のパルス幅を決定するステップを含み、
前記複数のパルス信号のパルス幅は、前記複数のパルス信号のパルス幅のそれぞれが前記画素電極の充電時間以上であり、且つ、前記複数のパルス信号のパルス幅の合計は水平同期期間以下になるように決定され
前記複数のパルス信号のパルス幅は、所定の周波数成分のレベルが予め定められた閾値より小さくなるように決定される、
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タッチ検出機能を有する表示システム、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザのタッチ位置を検出するためのタッチセンサが表示パネル内に組み込まれたインセル型の表示装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。この表示装置では、液晶表示パネルの画素に共通電圧を供給するための共通電極を複数に分割して、これらの共通電極をタッチセンサ電極としても利用する。画像表示期間において共通電圧が複数の共通電極に供給され、タッチ検出期間においてタッチ検出用のタッチ駆動信号が複数の共通電極に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/123813号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インセル型の表示システムにおいて、更なる改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の表示システムは、複数のゲート線と、複数のソース線と、複数のゲート線と複数のソース線とによって区画される各領域に設けられる複数の画素電極と、複数の画素電極に対向して設けられ、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極とを有する表示装置と、ソース信号を出力するソース駆動回路と、複数のソース線のそれぞれとソース駆動回路との間に接続され、オン状態でソース駆動回路から出力されたソース信号をソース線に出力し、オフ状態でソース信号のソース線への出力を停止する複数のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子に複数のパルス信号を供給するスイッチング回路と、スイッチング回路を制御する制御装置と、を備え、スイッチング回路は、複数のスイッチング素子を含むグループそれぞれについて、当該グループに含まれるスイッチング素子それぞれに、複数のパルス信号のそれぞれを供給し、複数のパルス信号それぞれのパルス幅は、当該パルス信号が供給されるスイッチング素子のオン時間を規定し、制御装置は、複数のパルス信号のパルス幅を決定する決定部を備え、複数のパルス信号のパルス幅は、複数のパルス信号のパルス幅のそれぞれが画素電極の充電時間以上であり、且つ、複数のパルス信号のパルス幅の合計は水平同期期間以下に決定される。
【0006】
本開示の別の態様は、制御装置である。この装置は、複数のゲート線と、複数のソース線と、複数のゲート線と複数のソース線とによって区画される各領域に設けられる複数の画素電極と、複数の画素電極に対向して設けられ、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極とを有する表示装置と、ソース信号を出力するソース駆動回路と、複数のソース線のそれぞれとソース駆動回路との間に接続され、オン状態でソース駆動回路から出力されたソース信号をソース線に出力し、オフ状態でソース信号のソース線への出力を停止する複数のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子に複数のパルス信号を供給するスイッチング回路とを備え、スイッチング回路は、複数のスイッチング素子を含むグループそれぞれについて、当該グループに含まれるスイッチング素子それぞれに、複数のパルス信号のそれぞれを供給する表示システムの制御装置であって、複数のパルス信号のパルス幅を決定する決定部を備え、複数のパルス信号のパルス幅は、複数のパルス信号のパルス幅のそれぞれが画素電極の充電時間以上であり、且つ、複数のパルス信号のパルス幅の合計は水平同期期間以下に決定される。
【0007】
本開示のさらに別の態様は、制御方法である。この方法は、複数のゲート線と、複数のソース線と、複数のゲート線と複数のソース線とによって区画される各領域に設けられる複数の画素電極と、複数の画素電極に対向して設けられ、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極とを有する表示装置と、ソース信号を出力するソース駆動回路と、複数のソース線のそれぞれとソース駆動回路との間に接続され、オン状態でソース駆動回路から出力されたソース信号をソース線に出力し、オフ状態でソース信号のソース線への出力を停止する複数のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子に複数のパルス信号を供給するスイッチング回路とを備え、スイッチング回路は、複数のスイッチング素子を含むグループそれぞれについて、当該グループに含まれるスイッチング素子それぞれに、複数のパルス信号のそれぞれを供給する表示システムにおける制御方法であって、複数のパルス信号のパルス幅を決定するステップを含み、複数のパルス信号のパルス幅は、複数のパルス信号のパルス幅のそれぞれが画素電極の充電時間以上であり、且つ、複数のパルス信号のパルス幅の合計は水平同期期間以下に決定される。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様により、更なる改善を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る表示システムのブロック図である。
図2図1の表示装置の回路構成、および、表示装置と第1駆動回路との接続を概略的に示す図である。
図3図2の共通電極の配置を示す上面図である。
図4図1の表示装置の縦断面図である。
図5図1の制御回路による制御タイミングの一例を示す図である。
図6図2の表示装置の画像表示期間における各信号のタイミング図である。
図7図7(a)から図7(c)は、3つのパルス幅のパルス信号の波形を示す図である。
図8図8(a)から図8(c)は、図7(a)から図7(c)のパルス信号の周波数成分を示す図である。
図9図1の表示システムの処理を示すフローチャートである。
図10】第2の実施の形態に係る制御装置のブロック図である。
図11】パルス幅4μsのパルス信号の周波数成分を示す図である。
図12】第2の実施の形態に係る表示システムの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
実施の形態を具体的に説明する前に、基礎となった知見を説明する。インセル型のタッチディスプレイにおいて、各画素に配置される薄膜トランジスタは、アモルファスシリコン(a-Si)または低温ポリシリコン(low temperature polycrystalline silicon:LTPS)で構成される。LTPSのトランジスタはa-Siのものより応答が高速である。そのため、LTPSのトランジスタで構成されるマルチプレクサをディスプレイ内に複数配置して、各マルチプレクサにより複数のソース線の1つを選択し、選択されたソース線に対して1つのソースドライバから出力されるソース信号を供給することができる。これにより、各ソース線にソースドライバを設ける場合よりもソースドライバの数を削減できる。
【0011】
インセル型のタッチディスプレイでは、共通電極より観察者側には電極が存在しないため、共通電極より観察者側にタッチセンサ電極が配置されたアウトセル型の表示装置よりもノイズを放射しやすい。そのため、マルチプレクサを切り替えるためのパルス信号に起因して放射されたノイズが、ディスプレイの近くの受信機の無線信号の受信に影響を及ぼす可能性があるという課題を本発明者は発見した。共通電極より観察者側にシールド用の透明電極を設ければノイズの放射量を低減できるが、タッチ位置の検出精度および検出感度が低下する恐れがある。この課題を解決するために、本開示に係る表示システムは以下のように構成される。
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、工程には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る表示システム1のブロック図である。表示システム1は、自動車などの車両に搭載された車載の表示システム1である一例について説明するが、用途は特に限定されず、携帯機器などに用いてもよい。
【0014】
表示システム1は、ホスト10と、表示モジュール20とを備える。ホスト10は、ラジオ、カーナビゲーション、Bluetooth(登録商標)通信などの各種機能を実行するとともに、表示モジュール20を制御する。ホスト10は、制御装置12と、受信機14と、アンテナ16とを備える。
【0015】
制御装置12は、たとえばCPUであり、ホストCPUとも呼ばれる。制御装置12は、受信機14を制御する。また制御装置12は、画像データDDと制御データCDを表示モジュール20に供給し、これらのデータをもとに表示モジュール20を制御する。
【0016】
受信機14は、アンテナ16を介して無線信号を受信する。受信機14は、たとえばラジオ受信機能、GPS受信機能、Bluetooth受信機能の少なくとも1つを含む。
【0017】
表示モジュール20は、表示装置22と、制御装置24とを備える。表示装置22は、たとえば、カーナビゲーション画面などが表示される車室内のセンターディスプレイなどとして利用される。
【0018】
表示装置22は、インセル型のIPS(In Plane Switching)方式の液晶表示装置であり、タッチディスプレイとして構成され、タッチ位置を検出可能である。表示装置22の構成は、例えば、以下に説明する周知の構成となっている。
【0019】
図2は、図1の表示装置22の回路構成、および、表示装置22と第1駆動回路72との接続を概略的に示す。図2は、各構成要素の概略的な配置も示す。表示装置22は、行方向に延びる複数のゲート線G1,G2,・・・と、列方向に延びる複数のソース線S1,S2,S3,S4,・・・と、複数の画素スイッチング素子30と、複数の画素電極32と、複数の共通電極34と、複数のスイッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4,・・・とを備える。以下、スイッチング素子SW1等を区別しない場合、スイッチング素子SWと呼ぶ。
【0020】
各画素スイッチング素子30は、薄膜トランジスタであり、ゲート線とソース線の交点付近に画素に対応して設けられる。画素スイッチング素子30の半導体層は、たとえばLTPSで構成される。各画素スイッチング素子30において、ゲートにはゲート線が接続され、ソースにはソース線が接続され、ドレインには画素電極32が接続される。1つの共通電極34に対して、複数の画素スイッチング素子30と複数の画素電極32が配置される。画素電極32と共通電極34との間の電界により液晶層が制御される。共通電極34は、画像表示およびタッチ検出に共用される。そのため、電極の層数を削減して、表示装置22を薄く構成できる。
【0021】
複数の画素は、行方向に赤色画素、青色画素、緑色画素の順に繰り返し配列される一例を説明するが、特に限定されず、周知の各種の画素配列を用いることができる。
【0022】
制御装置24の第1駆動回路72は、ソース駆動回路72aとスイッチング回路72bとを有する。ソース駆動回路72aは、複数の出力ノードN1,N2・・・から複数のソース信号SS1,SS2,・・・を出力する。
【0023】
複数のソース線のそれぞれとソース駆動回路72aとの間にスイッチング素子SWが接続される。複数のソース線と複数のスイッチング素子SWの一端は1対1に接続される。3つのスイッチング素子SWの他端は、ソース駆動回路72aの1つの出力ノードに共通に接続される。スイッチング素子SWは、オン状態でソース駆動回路72aから出力されたソース信号SSをソース線に出力し、オフ状態でソース信号SSのソース線への出力を停止する。スイッチング素子SWも、たとえばLTPSで構成される。
【0024】
スイッチング回路72bは、複数のスイッチング素子SWのそれぞれのゲートにパルス信号PS1,PS2,PS3を供給する。たとえば、パルス信号PS1は赤色画素用であり、パルス信号PS2は青色画素用であり、パルス信号PS3は緑色画素用である。
【0025】
スイッチング素子SW1からSW3は、パルス信号PS1からPS3に応じて3つのソース線S1からS3のうち1つを選択し、選択されたソース線にソース信号SS1を供給するマルチプレクサとして機能する。他のスイッチング素子SW4等も同様に機能する。つまり、ソース駆動回路72aの1つの出力ノードから出力されるソース信号SSは、赤色画素、青色画素、緑色画素のいずれかに時分割で供給される。そのため、既述のように、ソース線と出力ノードを1対1に接続する必要がなく、出力ノードの数を1/3に削減できる。よって、ソース駆動回路72aの回路規模、制御装置24と表示装置22の間の配線数も削減できる。スイッチング素子SWの動作の詳細は後述する。
【0026】
図3は、図2の共通電極34の配置を示す上面図である。複数の共通電極34は、マトリクス状に配置される。各共通電極34は、信号線36で制御装置24に接続される。
【0027】
表示装置22は、自己容量方式によりタッチ位置を検出する。表示装置22の表示面に指が近づくと、共通電極34と指の間に静電容量が発生する。静電容量が発生すると共通電極34における寄生容量が増加し、共通電極34にタッチ駆動信号を供給するときの電流が増加する。この電流の変動量にもとづいてタッチ位置が検出される。
【0028】
図4は、図1の表示装置22の縦断面図である。表示装置22は、厚さ方向に沿って順に重ねて配置されるバックライトユニット40、下偏光板42、薄膜トランジスタ基板(以下、TFT基板と呼ぶ)44、液晶層52、カラーフィルタ基板54、上偏光板56、接合層58、および、保護層60を備える。
【0029】
以下の説明では、表示装置22の厚さ方向のうち、TFT基板44に対して保護層60が位置する側を前面側とし、その逆を背面側とする。
【0030】
表示装置22は、バックライトユニット40から出射された光を用いて、画像光を前面側、即ち観察者側に出射する。
【0031】
TFT基板44は、ガラス基板46、ガラス基板46の前面側に配置された複数のゲート電極48、複数のソース電極50、および、複数の共通電極34を有する。図示は省略するが、TFT基板44は、図2の複数のゲート線G1,G2,・・・、複数のソース線S1,S2,・・・、複数の画素電極32および複数の画素スイッチング素子30も有する。TFT基板44の前面側に配置された液晶層52は、画素電極32と共通電極34との間に発生する横方向の電界により制御される。
【0032】
接合層58は、透光性を有し、上偏光板56と保護層60とを接合する。接合層58は、例えば、OCR(Optically Clear Resin)などの液状の透明樹脂、または、OCA(Optically Clear Adhesive)などの透明粘着シートが硬化したものである。
【0033】
保護層60は、表示装置22を保護するための透光性を有する層であり、ガラス基板またはプラスチック基板などで構成される。保護層60は、カバーレンズなどとも呼ばれる。
【0034】
表示装置22において共通電極34より前面側には電極が存在しない。そのため既述のように、表示装置22は、共通電極34より前面側に電極が配置された構成と比較して、パルス信号PSの高調波成分などのノイズを前面側に放射しやすい。
【0035】
図1に戻る。制御装置24は、たとえばICとして構成され、ホスト10からの制御データCDと画像データDDにしたがって表示装置22を制御する。制御装置24は、制御回路70と、第1駆動回路72と、第2駆動回路74と、タッチ検出回路76とを備える。
【0036】
制御回路70は、たとえばマイコンで構成され、第1駆動回路72と第2駆動回路74の信号生成タイミング、タッチ検出回路76のタッチ検出タイミングなどを制御する。
【0037】
制御回路70は、単位フレーム期間(1フレーム期間)に、表示画像の1フレームが表示装置22に描画され、かつ、1画面のタッチ検出が少なくとも1回実行されるよう、第1駆動回路72、第2駆動回路74およびタッチ検出回路76を制御する。単位フレーム期間は、垂直同期期間とも呼べる。単位フレーム期間の詳細は後述する。
【0038】
第1駆動回路72は、制御回路70の制御にしたがい、基準クロック信号を生成する。第1駆動回路72は、制御回路70の制御にしたがい、ホスト10からの画像データDDにもとづいて、生成された基準クロック信号に同期したソース信号SSを生成する。第1駆動回路72は、制御回路70の制御にしたがい、生成された基準クロック信号に同期したゲート信号GSおよびパルス信号PSを生成する。
【0039】
ソース駆動回路72aは、ソース信号SSを表示装置22の複数のソース線に順次供給する。第1駆動回路72は、ゲート信号GSを表示装置22の複数のゲート線に順次供給する。スイッチング回路72bは、パルス信号PSを表示装置22の複数のスイッチング素子SWのそれぞれに供給する。
【0040】
第1駆動回路72は、基準クロック信号を第2駆動回路74に供給する。第2駆動回路74は、制御回路70の制御にしたがい、予め定められた固定電圧である基準電圧VCOM、および、基準クロック信号に同期したタッチ駆動信号TXを生成する。なお、タッチ駆動信号TXは、矩形波でもよいし、正弦波でもよい。第2駆動回路74は、図3の信号線36を介して、基準電圧VCOMまたはタッチ駆動信号TXを表示装置22の全体の複数の共通電極34に供給する。
【0041】
タッチ検出回路76は、表示装置22への物体のタッチを検出する。タッチ検出回路76は、制御回路70の制御にしたがい、各共通電極34にタッチ駆動信号TXが供給されたときの当該共通電極34から受信したタッチ検出信号RXに基づいて、当該共通電極34に対応する位置への物体のタッチを検出する。タッチ検出回路76は、検出したタッチ位置の情報を制御回路70に出力する。
【0042】
制御回路70は、タッチ検出回路76からのタッチ位置の情報にもとづいてタッチ位置の座標データTDを導出し、その座標データTDをホスト10の制御装置12に出力する。制御装置12は、座標データTDに応じて各種処理を実行する。
【0043】
制御回路70は、画面内の複数の共通電極34を複数のグループに分割した複数のタッチ検出領域(スキャンブロックとも呼ばれる)の1つに対する部分的なタッチ検出と、画面内の複数の画素を複数のグループに分割した複数の表示領域の1つに対する部分的な画像表示を交互に繰り返して、タッチ検出と画像表示を時分割に制御する。
【0044】
図5は、制御回路70による制御タイミングの一例を示す。図5に示す例は、単位フレーム期間(1フレーム期間)に、1枚の画像を表示し、タッチ検出を1回実行する例である。本実施の形態では、60Hz駆動で画像を表示する表示装置22を想定しているため、単位フレーム期間は約16.7(=1/60)msに設定される。タッチ検出は単位フレーム期間に1回実行されるため、60Hz周期でタッチ検出されることになる。
【0045】
図5に示す例では、制御回路70は、画面内に4つの表示領域を形成し、4つのタッチ検出領域を形成する。4つの表示領域は、たとえば画面が垂直方向に4等分されて形成される。以下、一番上の表示領域を第1表示領域、上から2番目の表示領域を第2表示領域、上から3番目の表示領域を第3表示領域、一番下の表示領域を第4表示領域という。4つのタッチ検出領域は、たとえば画面が水平方向に4等分されて形成される。以下、一番左のタッチ検出領域を第1タッチ検出領域、左から2番目のタッチ検出領域を第2タッチ検出領域、左から3番目のタッチ検出領域を第3タッチ検出領域、一番右のタッチ検出領域を第4タッチ検出領域という。
【0046】
制御回路70は、単位フレーム期間において、第1表示領域の画像表示、第1タッチ検出領域のタッチ検出、第2表示領域の画像表示、第2タッチ検出領域のタッチ検出、第3表示領域の画像表示、第3タッチ検出領域のタッチ検出、第4表示領域の画像表示、第4タッチ検出領域のタッチ検出の順に制御する。
【0047】
画像表示の期間、第2駆動回路74は複数の共通電極34に基準電圧VCOMを供給する。第2駆動回路74は、画像表示の期間にはタッチ駆動信号TXの供給を停止する。第2駆動回路74は、タッチ検出の期間、複数の共通電極34にタッチ駆動信号TXを供給する。第2駆動回路74は、タッチ検出の期間には基準電圧VCOMの供給を停止する。
【0048】
図6は、図2の表示装置22の画像表示期間における各信号のタイミング図である。パルス信号PS1からPS3は、複数のスイッチング素子SWのそれぞれのオン時間を規定するパルス幅のパルスを有する。つまり、パルス幅はスイッチング素子SWのオン時間と等しい。
【0049】
時刻t0にて、複数のソース信号SS1等は、表示装置22の1行目の複数の赤色画素用の画像データDDに応じた値に設定される。時刻t1にて、1行目の画素のゲート線G1に供給されるゲート信号GS1は、ローレベルからハイレベルになる。
【0050】
時刻t2にて、パルス信号PS1はローレベルからハイレベルになり、スイッチング素子SW1が導通し、ゲート線G1とソース線S1に接続された画素スイッチング素子30にソース信号SS1が供給され、この画素スイッチング素子30は導通する。これにより、この画素の表示が行われる。同様に、スイッチング素子SW4などが導通し、ゲート線G1とソース線S4に接続された画素スイッチング素子30など、赤色画素の複数の画素スイッチング素子30が導通する。
【0051】
時刻t3にて、パルス信号PS1はハイレベルからローレベルになり、全てのスイッチング素子SWおよび画素スイッチング素子30が非導通になる。
【0052】
この後、複数のソース信号は、1行目の複数の青色画素用の画像データDDに応じた値に設定される。ソース信号の設定後、時刻t4にてパルス信号PS2はローレベルからハイレベルになり、スイッチング素子SW2,SW5などが導通する。これにより、ゲート線G1とソース線S2に接続された画素スイッチング素子30など、青色画素の複数の画素スイッチング素子30にソース信号SSが供給され、これらの画素スイッチング素子30は導通する。
【0053】
時刻t5にて、パルス信号PS2はローレベルになり、全てのスイッチング素子SWおよび画素スイッチング素子30が非導通になる。
【0054】
この後、複数のソース信号は、1行目の複数の緑色画素用の画像データDDに応じた値に設定される。ソース信号の設定後、時刻t6にてパルス信号PS3はローレベルからハイレベルになり、スイッチング素子SW3,SW6などが導通する。これにより、ゲート線G1とソース線S3に接続された画素スイッチング素子30など、緑色画素の複数の画素スイッチング素子30にソース信号SSが供給され、これらの画素スイッチング素子30は導通する。
【0055】
時刻t7にて、パルス信号PS3はローレベルになり、全てのスイッチング素子SWおよび画素スイッチング素子30が非導通になる。これにより1行目の全画素の表示が完了する。
【0056】
時刻t8にて、ゲート信号GS1はハイレベルからローレベルになる。時刻t1からt8は、水平同期期間(1H)である。時刻t8の後、2行目の画素のゲート線G2に供給されるゲート信号GS2がローレベルからハイレベルになる。以降、以上と同様に制御され、4つの画像表示期間で1画面の画像が表示される。
【0057】
パルス信号PS1からPS3は、それぞれ異なる期間にハイレベルになる。パルス信号PS1からPS3のそれぞれの周波数は、水平同期周波数と等しい。パルス信号PS1からPS3のそれぞれの位相は異なる。
【0058】
図1に戻る。ホスト10の制御装置12は、制御部90、周波数取得部92、レベル取得部94および決定部96を備える。
【0059】
制御部90は、受信機14を制御し、かつ、受信機14が受信する無線信号の受信周波数を周波数取得部92に出力する。たとえば制御部90は、ユーザの操作に応じて受信機14のラジオ受信機能を起動し、受信機14の受信周波数をユーザに選局された周波数に制御し、その受信周波数を出力する。制御部90は、ユーザの操作に応じてGPS受信機能を起動し、GPSの受信周波数を出力する。制御部90は、ユーザの操作に応じてBluetooth機能を起動し、Bluetoothの受信周波数を出力する。
【0060】
周波数取得部92は、制御部90から出力された受信周波数を取得し、取得した受信周波数をレベル取得部94に出力する。受信周波数は、パルス信号PSの周波数より高く、たとえば百kHzから数GHzの範囲の周波数である。
【0061】
レベル取得部94は、周波数取得部92で取得された受信周波数をもとに、パルス信号PSに含まれる受信周波数の周波数成分のレベルを取得し、取得したレベルを決定部96に出力する。受信周波数の周波数成分のレベルは、受信周波数を中心とする所定帯域、たとえば受信周波数帯域の周波数成分のレベルを含んでもよい。レベル取得部94は、パルス信号PSの少なくとも1周期分の波形データをフーリエ変換して、得られた結果をもとに受信周波数の周波数成分のレベルを取得する。パルス信号PSの波形データは、実際に表示装置22に供給される電圧波形のデータではなく、たとえばパルス幅、周期、パルス振幅で規定される数値データである。パルス信号PSの波形データは、図示しない記憶部に予め記憶されていてもよいし、レベル取得部94がパルス幅等の情報をもとに生成してもよい。パルス信号PSの波形データは、実際に表示装置22に供給される電圧波形をもとに生成されてもよい。
【0062】
決定部96は、周波数取得部92で取得された受信周波数にもとづいて、パルス信号PSのパルス幅を決定する。決定部96は、レベル取得部94で取得された受信周波数の周波数成分のレベルが予め定められた閾値より小さい場合、パルス信号PSのパルス幅を変更せず、現在の値に決定する。閾値は、取得されたレベルが閾値より小さい場合、表示装置22から放射されるノイズが受信機14の受信に影響を与えない値に、実験やシミュレーションにより適宜設定できる。
【0063】
決定部96は、取得されたレベルが閾値以上の場合、受信周波数の周波数成分のレベルが閾値より小さくなるようにパルス信号PSのパルス幅を決定する。パルス信号PSの周波数は変更されない。つまり決定部96は、パルス信号PSのデューティ比を変更するともいえる。
【0064】
図7(a)から図7(c)は、3つのパルス幅のパルス信号PSの波形を示す。図8(a)から図8(c)は、図7(a)から図7(c)のパルス信号PSの周波数成分を示す。パルス信号PSは、パルス信号PSの周波数の基本波成分と、複数の高調波成分とを含む。周波数は一定でパルス信号PSのパルス幅が変化すると、基本波成分と複数の高調波成分のそれぞれのレベルが変化する。
【0065】
たとえばラジオの受信周波数を700kHzと想定する。図8(a)と(b)に示すパルス幅が2μsと1μsのそれぞれのパルス信号PSの700kHzの周波数成分は、閾値TNより大きい。そのため、パルス幅が2μsと1μsの場合、表示装置22の前面側から放射されたパルス信号PSの700kHzの高調波成分は、受信機14のラジオの受信波に干渉する可能性があり、たとえばラジオの音声への雑音の混入などが生じる可能性がある。
【0066】
一方、図8(c)に示すパルス幅が3μsのパルス信号PSの700kHzの周波数成分は、閾値TNより小さい。よって、表示装置22の前面側から700kHzの高調波成分が放射されても、受信機14のラジオの受信波への干渉が発生し難い。
【0067】
決定部96は、取得されたレベルが閾値以上の場合、パルス信号PSのパルス幅を予め定められた最小時間以上、最大時間以下に決定する。最小時間は、表示装置22の画素電極32の充電時間以上に設定される。画素電極32の充電時間は、パルス信号PSがハイレベルになってから画素電極32の電圧がソース信号の所定割合に達するまでの時間であり、ソース線の配線抵抗、画素電極32の面積などに応じて定まる。そのため、最小時間は、表示装置22の画面サイズ、画素数などに応じて異なる。画素電極32の充電時間以上のパルス幅が確保されるため、パルス幅が変更されることによる画質の劣化を抑制できる。最大時間は、共通のソース信号が供給される3つのスイッチング素子SWのそれぞれが水平同期期間に時分割でオン状態になるように、水平同期期間の1/3より小さい時間に予め設定される。つまり、パルス信号PS(PS1、PS2、PS3)のパルス幅の合計は、水平同期期間以下になるように決定される。たとえば、図7(a)から(c)の例では、最小時間は1μsであり、最大時間は4μsであってもよい。
【0068】
具体的なパルス幅の決定方法の一例を説明する。レベル取得部94は、取得されたレベルが閾値以上の場合、パルス幅を最小時間から所定時間ずつ段階的に長くして、それぞれのパルス幅のパルス信号PSをフーリエ変換し、それぞれのパルス幅のパルス信号PSに含まれる受信周波数の周波数成分のレベルを順番に取得する。所定時間は、たとえば0.1μsでもよく、画素数などに応じて、実験やシミュレーションにより適宜設定できる。
【0069】
決定部96は、レベル取得部94において閾値より小さいレベルが取得された場合、パルス信号PSのパルス幅を、閾値より小さいレベルが取得されたパルス幅に決定する。決定部96は、パルス幅が最大時間に達しても、それぞれのパルス幅に関してレベル取得部94で取得されたレベルが閾値以上であれば、最小のレベルが取得されたパルス幅に決定する。決定部96は、決定されたパルス幅の情報を含むパルス幅の変更指示を制御装置24の制御回路70に出力する。
【0070】
制御装置24の制御回路70は、パルス幅の変更指示を受けると、変更指示にしたがったパルス幅のパルス信号PSをスイッチング回路72bに生成させる。これにより、パルス信号PSのパルス幅が変更される。
【0071】
制御装置12、制御回路70の構成は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコンピュータ、DSP、ROM、RAM、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
【0072】
次に、以上の構成による表示システム1の全体的な動作を説明する。図9は、図1の表示システム1の処理を示すフローチャートである。図9の処理は、制御装置12の制御部90が受信機14を制御する毎に行われる。
【0073】
制御部90は受信機14を制御し(S10)、周波数取得部92は、制御部90から受信周波数を取得し(S12)、レベル取得部94は、現在のパルス幅のパルス信号PSをフーリエ変換して受信周波数の周波数成分のレベルを取得する(S14)。取得したレベルが閾値より小さければ(S16のN)、処理を終了する。取得したレベルが閾値以上であれば(S16のY)、レベル取得部94は、最小時間のパルス幅のパルス信号PSをフーリエ変換して受信周波数の周波数成分のレベルを取得する(S18)。取得したレベルが閾値以上であれば(S20のY)、レベル取得部94は、パルス幅を長くしたパルス信号PSをフーリエ変換して受信周波数の周波数成分のレベルを取得し(S22)、S20に戻る。S20において取得したレベルが閾値より小さければ(S20のN)、決定部96は、パルス幅を決定し、パルス幅の変更指示を制御回路70に出力する(S24)。制御回路70は、パルス信号PSのパルス幅を変更し(S26)、処理を終了する。
【0074】
本実施の形態によれば、パルス信号PSに含まれる受信周波数の周波数成分のレベルを変更できる。よって、パルス信号PSに起因するノイズに含まれる受信周波数の周波数成分のレベルを変更できる。また、受信周波数の周波数成分のレベルが閾値より小さくなるようにパルス信号PSのパルス幅を決定するので、表示装置22にシールド用の電極を追加せず、パルス信号PSの高調波が受信周波数の信号に干渉することを抑制できる。よって、タッチ位置の検出精度および検出感度を低下させることなく、受信機14の受信に影響を与えにくくできる。
【0075】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、複数の周波数のそれぞれに対して設定されるべきパルス幅が予め決められていることが第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0076】
図10は、第2の実施の形態に係る制御装置12のブロック図である。制御装置12は、制御部90、周波数取得部92、決定部96および記憶部98を有する。記憶部98は、受信機14が受信可能な複数の周波数のそれぞれに関して、パルス信号PSに含まれる当該周波数の周波数成分のレベルが閾値以下であるパルス幅をパルス幅設定用のテーブルとして予め記憶している。つまり、複数の周波数と複数のパルス幅が1対1に対応付けられている。それぞれのパルス幅は、実験やシミュレーションにより予め定められる。
【0077】
たとえばラジオの受信周波数の場合、受信周波数700kHzにはパルス幅3μsが対応付けられ、受信周波数1050kHzにはパルス幅1μsが対応付けられる。受信周波数1250kHzにはパルス幅4μsが対応付けられ、受信周波数1400kHzにはパルス幅2μsが対応付けられる。
【0078】
既述の図8(a)に示すように、パルス幅2μsの場合、1400kHzの周波数成分のレベルは閾値TNより低い。図8(b)に示すように、パルス幅1μsの場合、1050kHzの周波数成分のレベルは閾値TNより低い。図8(c)に示すように、パルス幅3μsの場合、700kHzの周波数成分のレベルは閾値TNより低い。
【0079】
図11は、パルス幅4μsのパルス信号PSの周波数成分を示す。パルス幅4μsの場合、1250kHzの周波数成分のレベルは閾値TNより低い。
【0080】
決定部96は、パルス信号PSのパルス幅を、記憶部98に記憶された受信周波数に対応するパルス幅に決定する。たとえば周波数取得部92で取得された受信周波数が1050kHzである場合、決定部96は、パルス信号PSのパルス幅を1050kHzに対応するパルス幅1μsに決定する。このように、テーブルをもとに受信周波数に応じたパルス幅を決定することで、パルス信号PSに起因する受信周波数のノイズを低減できる。
【0081】
次に、以上の構成による表示システム1の全体的な動作を説明する。図12は、第2の実施の形態に係る表示システム1の処理を示すフローチャートである。図12の処理は、制御装置12の制御部90が受信機14を制御する毎に行われる。S10とS12の処理は、第1の実施の形態と同じである。S12の後、決定部96は、受信周波数に対応するパルス幅をテーブルから取得し、パルス幅を決定する(S30)。続くS24とS26の処理も第1の実施の形態と同じである。
【0082】
本実施の形態によれば、フーリエ変換などを必要としないため、第1の実施の形態より制御装置12の処理を簡素化できる。
【0083】
以上、本開示について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、また、そうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、以下に記載するように変更しても良い。
【0084】
実施の形態では、複数のスイッチング素子SWのそれぞれは、3つのパルス信号(PS1、PS2、PS3)に応じて、ソース信号を供給するソース線を選択するマルチプレクサとして機能するとしたが、パルス信号の数は「3」に限定されない。パルス信号の数を、2以上の任意の数Nに設計しても良い。すなわち、スイッチング回路72bは、複数のスイッチング素子SWのそれぞれのゲートにN個のパルス信号を供給し、複数のスイッチング素子SWは、N個のパルス信号に応じて、ソース信号SSを供給するソース線を順に選択するように設計しても良い。なお、パルス幅の最小時間は、表示装置22の画素電極32の充電時間以上に設定される。また、パルス幅の最大時間は、共通のソース信号が供給されるN個のスイッチング素子SWのそれぞれが、水平同期期間に時分割でオン状態になるように、水平同期期間の1/Nより小さい時間に予め設定される。つまり、N個のパルス信号PSのパルス幅の合計は、水平同期期間以下になるように決定される。
【0085】
たとえば、実施の形態では、ホスト10の制御装置12がパルス幅を決定したが、この処理は、制御装置12に代えて表示モジュール20の制御回路70が実行してもよい。この場合、第1の実施の形態の制御回路70は、周波数取得部92、レベル取得部94、決定部96を有する。第2の実施の形態の制御回路70は、周波数取得部92、決定部96、記憶部98を有する。この変形例では、表示システム1の構成の自由度を向上できる。
【0086】
第1の実施の形態において、レベル取得部94は、取得されたレベルが閾値以上の場合、パルス幅を最大時間から所定時間ずつ段階的に短くして、それぞれのパルス幅のパルス信号PSをフーリエ変換し、それぞれのパルス幅のパルス信号PSに含まれる受信周波数の周波数成分のレベルを順番に取得してもよい。この場合、表示システム1の構成の自由度を向上できる。
【0087】
また、実施の形態では制御装置24が表示モジュール20に含まれるが、制御装置24はホスト10に含まれてもよい。実施の形態では第1駆動回路72が基準クロック信号を生成するが、第2駆動回路74が基準クロック信号を生成してもよい。実施の形態では複数のスイッチング素子SW1等が表示装置22に含まれるが、複数のスイッチング素子SW1等は制御装置24に含まれてもよい。これらの変形例では、表示システム1の構成の自由度を向上できる。
【0088】
本開示の一態様に係る表示システムは、次の通りである。
複数のゲート線と、複数のソース線と、前記複数のゲート線と前記複数のソース線とによって区画される各領域に設けられる複数の画素電極と、前記複数の画素電極に対向して設けられ、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極とを有する表示装置と、
ソース信号を出力するソース駆動回路と、
前記複数のソース線のそれぞれと前記ソース駆動回路との間に接続され、オン状態で前記ソース駆動回路から出力された前記ソース信号をソース線に出力し、オフ状態で前記ソース信号のソース線への出力を停止する複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子に複数のパルス信号を供給するスイッチング回路と、
前記スイッチング回路を制御する制御装置と、
を備え、
前記スイッチング回路は、複数の前記スイッチング素子を含むグループそれぞれについて、当該グループに含まれる前記スイッチング素子それぞれに、前記複数のパルス信号のそれぞれを供給し、前記複数のパルス信号それぞれのパルス幅は、当該パルス信号が供給される前記スイッチング素子のオン時間を規定し、
前記制御装置は、
前記複数のパルス信号のパルス幅を決定する決定部を備え、
前記複数のパルス信号のパルス幅は、前記複数のパルス信号のパルス幅のそれぞれが前記画素電極の充電時間以上であり、且つ、前記複数のパルス信号のパルス幅の合計は水平同期期間以下に決定される。
この態様によると、制御装置により複数のパルス信号のパルス幅を可変に制御することができる。よって、複数のパルス信号に起因するノイズに含まれる任意の周波数成分のレベルが低減されるように、複数のパルス信号のパルス幅を変更できる。また、パルス幅が変更されると、スイッチング素子のオン時間(すなわち、ソース信号がソース線に供給される時間)が変更されるため、ソース信号に起因するノイズに含まれる当該周波数成分のレベルも低減される。つまり、この様態によると、ノイズのレベルを低減させたい任意の周波数帯域に応じて、複数のパルス信号のパルス幅を変更することができ、それにより、複数のパルス信号に起因する当該周波数成分のノイズのレベルと、ソース信号に起因する当該周波数成分のノイズのレベルとを低減させることができる。そのため、共通電極より観察者側にシールド用の電極を追加せずに、当該周波数帯域の信号への干渉を抑制できる。つまり、タッチ位置の検出精度および検出感度を低下させることなく、当該周波数帯域の信号に対する影響を与えにくくできる。
【0089】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記複数のパルス信号のパルス幅は、所定の周波数成分のレベルが予め定められた閾値より小さくなるように決定される、としても良い。
この場合、複数のパルス信号に起因するノイズに含まれる所定の周波数成分のレベルが、当該閾値より小さく制御される。
【0090】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記制御装置は、さらに、
前記複数のパルス信号に含まれる前記所定の周波数成分のレベルを取得するレベル取得部を有し、
前記決定部は、取得された前記レベルが前記閾値以上の場合、前記レベルが前記閾値より小さくなるように前記複数のパルス信号のパルス幅を決定する、としても良い。
この場合、複数のパルス信号に含まれる当該周波数成分のレベルを自己診断し、当該レベルが当該閾値より小さくなるように、複数のパルス信号のパルス幅を変更できる。
【0091】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記制御装置は、さらに、
無線信号を受信する受信機の受信周波数を取得する周波数取得部を備え、
前記決定部は、取得された前記受信周波数に基づいて前記複数のパルス信号のパルス幅を決定する、としても良い。
この場合、パルス信号に含まれる受信周波数の周波数成分のレベルを変更できる。よって、パルス信号に起因するノイズに含まれる受信周波数の周波数成分のレベル、および、ソース信号に起因するノイズに含まれる受信周波数成分のレベルを変更できる。
【0092】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記制御装置は、
前記複数のパルス信号に含まれる前記受信周波数の周波数成分のレベルを取得するレベル取得部を有し、
前記決定部は、取得された前記レベルが予め定められた閾値以上の場合、前記レベルが前記閾値より小さくなるように前記複数のパルス信号のパルス幅を決定するとしても良い。
この場合、複数のパルス信号に含まれる受信周波数の周波数成分のレベルを自己診断し、当該レベルが当該閾値より小さくなるように、複数のパルス信号のパルス幅を変更できる。
【0093】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記決定部は、取得された前記レベルが前記閾値以上の場合、前記パルス信号のパルス幅を予め定められた最小時間以上に決定し、
前記最小時間は、前記表示装置の画素電極の充電時間以上に設定されているとしても良い。
この場合、画質の変化を抑制できる。
【0094】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記レベル取得部は、取得された前記レベルが前記閾値以上の場合、パルス幅を前記最小時間から段階的に長くして、それぞれのパルス幅の前記複数のパルス信号に含まれる前記受信周波数の周波数成分のレベルを順番に取得し、
前記決定部は、前記閾値より小さい前記レベルが取得された場合、前記複数のパルス信号のパルス幅を、前記閾値より小さい前記レベルが取得されたパルス幅に決定するとしても良い。
この場合、最小時間に近いパルス幅に変更されやすいため、パルス幅が変更された場合の消費電力を低減しやすい。
【0095】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記制御装置は、
複数の周波数のそれぞれに関して、前記複数のパルス信号に含まれる当該周波数の周波数成分のレベルが予め定められた閾値以下であるパルス幅を記憶している記憶部を有し、
前記決定部は、前記複数のパルス信号のパルス幅を、前記記憶部に記憶された前記受信周波数に対応するパルス幅に決定するとしても良い。
この場合、制御装置の処理を簡素化できる。
【0096】
本開示の一態様に係る表示システムにおいて、例えば、
前記制御装置は、
複数の周波数のそれぞれに関して、前記複数のパルス信号に含まれる当該周波数の周波数成分のレベルが予め定められた閾値以下であるパルス幅を記憶している記憶部を有し、
前記決定部は、前記複数のパルス信号のパルス幅を、前記記憶部に記憶されたパルス幅から決定するとしても良い。
この場合、制御装置の処理を簡素化できる。
【0097】
本開示の一態様に係る制御装置は、
複数のゲート線と、複数のソース線と、前記複数のゲート線と前記複数のソース線とによって区画される各領域に設けられる複数の画素電極と、前記複数の画素電極に対向して設けられ、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極とを有する表示装置と、ソース信号を出力するソース駆動回路と、前記複数のソース線のそれぞれと前記ソース駆動回路との間に接続され、オン状態で前記ソース駆動回路から出力された前記ソース信号をソース線に出力し、オフ状態で前記ソース信号のソース線への出力を停止する複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子に複数のパルス信号を供給するスイッチング回路とを備え、前記スイッチング回路は、複数の前記スイッチング素子を含むグループそれぞれについて、当該グループに含まれる前記スイッチング素子それぞれに、前記複数のパルス信号のそれぞれを供給する表示システムの制御装置であって、
前記複数のパルス信号のパルス幅を決定する決定部を備え、
前記複数のパルス信号のパルス幅は、前記複数のパルス信号のパルス幅のそれぞれが前記画素電極の充電時間以上であり、且つ、前記複数のパルス信号のパルス幅の合計は水平同期期間以下に決定される。
この態様によると、制御装置により複数のパルス信号のパルス幅を可変に制御することができる。よって、ノイズのレベルを低減させたい任意の周波数帯域に応じて、複数のパルス信号のパルス幅を変更することができ、それにより、複数のパルス信号に起因する当該周波数成分のノイズのレベルと、ソース信号に起因する当該周波数成分のノイズのレベルとを低減させることができる。そのため、共通電極より観察者側にシールド用の電極を追加せずに、当該周波数帯域の信号への干渉を抑制できる。つまり、タッチ位置の検出精度および検出感度を低下させることなく、当該周波数帯域の信号に対する影響を与えにくくできる。
【0098】
本開示の一態様に係る制御方法は、
複数のゲート線と、複数のソース線と、前記複数のゲート線と前記複数のソース線とによって区画される各領域に設けられる複数の画素電極と、前記複数の画素電極に対向して設けられ、画像表示およびタッチ検出に共用される複数の共通電極とを有する表示装置と、ソース信号を出力するソース駆動回路と、前記複数のソース線のそれぞれと前記ソース駆動回路との間に接続され、オン状態で前記ソース駆動回路から出力された前記ソース信号をソース線に出力し、オフ状態で前記ソース信号のソース線への出力を停止する複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子に複数のパルス信号を供給するスイッチング回路とを備え、前記スイッチング回路は、複数の前記スイッチング素子を含むグループそれぞれについて、当該グループに含まれる前記スイッチング素子それぞれに、前記複数のパルス信号のそれぞれを供給する表示システムにおける制御方法であって、前記複数のパルス信号のパルス幅を決定するステップを含み、前記複数のパルス信号のパルス幅は、前記複数のパルス信号のパルス幅のそれぞれが前記画素電極の充電時間以上であり、且つ、前記複数のパルス信号のパルス幅の合計は水平同期期間以下に決定される。
この態様によると、制御装置により複数のパルス信号のパルス幅を可変に制御することができる。よって、ノイズのレベルを低減させたい任意の周波数帯域に応じて、複数のパルス信号のパルス幅を変更することができ、それにより、複数のパルス信号に起因する当該周波数成分のノイズのレベルと、ソース信号に起因する当該周波数成分のノイズのレベルとを低減させることができる。そのため、共通電極より観察者側にシールド用の電極を追加せずに、当該周波数帯域の信号への干渉を抑制できる。つまり、タッチ位置の検出精度および検出感度を低下させることなく、当該周波数帯域の信号に対する影響を与えにくくできる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示は、タッチ検出機能を有する表示システム、制御装置および制御方法に利用できる。
【符号の説明】
【0100】
1…表示システム、S1~S4…ソース線、SW1~SW4…スイッチング素子、12…制御装置、14…受信機、22…表示装置、24…制御装置、32…画素電極、72a…ソース駆動回路、72b…スイッチング回路、92…周波数取得部、94…レベル取得部、96…決定部、98…記憶部。
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