(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】識別子管理方法、ロボット制御装置および統括制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230609BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20230609BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230609BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B23K9/12 331K
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2021551432
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037361
(87)【国際公開番号】W WO2021070723
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019188158
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】毛利 年成
(72)【発明者】
【氏名】片岡 史
(72)【発明者】
【氏名】小松 嵩宙
(72)【発明者】
【氏名】門田 隆太郎
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-113425(JP,A)
【文献】特開2007-304999(JP,A)
【文献】特開2015-153196(JP,A)
【文献】特開2015-171736(JP,A)
【文献】特開2008-59116(JP,A)
【文献】特開2017-102548(JP,A)
【文献】特開平4-199304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B23K 9/00 - 26/70
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項9】
溶接システムを構成する統括制御装置であって、
複数の元ワークのそれぞれの識別子の情報を保持するメモリと、
前記複数の元ワークを用いた溶接工程の実行を制御するロボット制御装置との間で通信する通信部と、
前記ロボット制御装置による前記溶接工程の実行完了の検知に基づいて、前記複数の元ワークのそれぞれの識別子のうちいずれを採用するかをランダムに選択するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
選択されたいずれかの元ワークの識別子を、前記溶接工程により生成された被溶接ワークの識別子として設定する、
統括制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、識別子管理方法、ロボット制御装置および統括制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の製造機械が配置された製造ラインの生産実績情報を管理する生産管理装置が開示されている。生産管理装置は、製造ラインに供給されたワークがどの製造機械に位置するかを検出し、いずれかの製造機械に位置することを検出した時にワークに固有の識別子を生成してそのワークが位置する製造機械に通知し、生成された識別子とその識別子に対応するワークを処理した時の生産実績情報とを製造機械から受信して記録する。また、生産管理装置は、複数の製造機械のそれぞれに順次にワークが移動する度に、そのワークに対して生成された複数の識別子とそのワークにより完成された製品の識別子とを互いに関連付けて記録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、溶接等の工程において製造されるワークの識別子のより簡易な管理を支援する識別子管理方法、ロボット制御装置および統括制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、溶接システムにより実行される識別子管理方法であって、複数の元ワークのそれぞれの識別子の情報を取得し、前記複数の元ワークを用いた溶接工程の前記溶接システムによる実行完了に基づいて、前記複数の元ワークのそれぞれの識別子のうちいずれを採用するかをランダムに選択し、選択されたいずれかの元ワークの識別子を、前記溶接工程により生成された被溶接ワークの識別子として設定する、識別子管理方法を提供する。
【0006】
また、本開示は、溶接システムを構成するロボット制御装置であって、複数の元ワークのそれぞれの識別子の情報を保持するメモリと、前記複数の元ワークを用いた溶接工程を実行可能に溶接ロボットを制御するプロセッサと、前記溶接システムを統括する統括制御装置との間で通信する通信部と、を備え、前記プロセッサは、前記溶接ロボットによる前記溶接工程の実行完了に基づいて、前記複数の元ワークのそれぞれの識別子のうちいずれを採用するかをランダムに選択し、選択されたいずれかの元ワークの識別子を、前記溶接工程により生成された被溶接ワークの識別子としての設定要求を、前記通信部を介して前記統括制御装置に送信する、ロボット制御装置を提供する。
【0007】
また、本開示は、溶接システムを構成する統括制御装置であって、複数の元ワークのそれぞれの識別子の情報を保持するメモリと、前記複数の元ワークを用いた溶接工程の実行を制御するロボット制御装置との間で通信する通信部と、前記ロボット制御装置による前記溶接工程の実行完了の検知に基づいて、前記複数の元ワークのそれぞれの識別子のうちいずれを採用するかをランダムに選択するプロセッサと、を備え、前記プロセッサは、選択されたいずれかの元ワークの識別子を、前記溶接工程により生成された被溶接ワークの識別子として設定する、統括制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、溶接等の工程において製造されるワークの識別子のより簡易な管理を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施の形態1に係るロボット制御装置および上位装置の内部構成例を示す図
【
図3】ID「A」のワークとID「B」のワークとを用いた溶接時の動作概要例を示す説明図
【
図4】ID「A」のワークとID「B」のワークとID「C」のワークとID「D」のワークとを用いた溶接時の動作概要例を示す説明図
【
図5】ランダム選択IDと管理用IDとの対応テーブルの一例を示す図
【
図6】分断により生成される複数の元ワークのそれぞれに異なるIDが付与される例を示す図
【
図7】実施の形態1に係る溶接システムにおけるID管理の動作手順例を示すシーケンス図
【
図8】実施の形態2に係るロボット制御装置および上位装置の内部構成例を示す図
【
図9】実施の形態2係る溶接システムにおけるID管理の動作手順例を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至る経緯)
特許文献1によれば、生産管理装置は、個々のワークごとにトレーサビリティデータを管理できる。しかし、特許文献1の構成では、同一のワークが複数の異なる製造機械に位置する度に異なる識別子が新しく付与されてしまう。言い換えると、製造ラインにおいて一つのワークが次々と他の製造機械に位置するごとにその一つのワークが複数の異なる識別子を有することになる。したがって、例えば溶接工程のように複数のワークが接合等されて別のワークが製造される際、特許文献1に倣ってその製造されたワークに新しい識別子が付与されてしまうと、溶接工程に使用されたワークの識別子と製造されたワークの識別子との関係が複雑になり得るので、製造されたワークに関するトレーサビリティの利用が困難となる場合があった。つまり、ワークの識別子の管理が煩雑になり、システム管理者の作業効率が劣化する可能性があった。
【0011】
そこで、以下の実施の形態では、溶接等の工程において製造されるワークの識別子の効率的かつ簡易な管理を支援する識別子管理方法、ロボット制御装置および統括制御装置の例を説明する。
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る識別子管理方法、ロボット制御装置および統括制御装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0013】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る溶接システムは、複数の元ワークのそれぞれの識別子の情報を取得し、複数の元ワークを用いた溶接工程の実行完了に基づいて、複数の元ワークのそれぞれの識別子のうちいずれを採用するかをランダムに選択する。溶接システムは、選択されたいずれかの元ワークの識別子を、溶接工程により生成された被溶接ワークの識別子として設定する。以下、溶接工程に使用されるワークを「元ワーク」と定義し、溶接工程により生成されるワークを「被溶接ワーク」と定義する。なお、「被溶接ワーク」を「2次ワーク」あるいは「n次ワーク」(n:2以上の整数)と称する場合がある。
【0014】
(溶接システムの構成)
図1は、溶接システム100のシステム構成例を示す概略図である。溶接システム100は、外部ストレージST、入力インターフェースUI1およびモニタMN1のそれぞれと接続された上位装置1と、複数のロボット制御装置(例えばロボット制御装置2a,2b,…)と、複数の本溶接ロボット(例えば本溶接ロボットMC1a,MC1b,…)とを含む構成である。本溶接ロボットMC1aに対応してロボット制御装置2aが設けられ、本溶接ロボットMC1bに対応してロボット制御装置2bが設けられ、以降は同様に1台の本溶接ロボットに対応して同数のロボット制御装置が設けられる。
【0015】
統括制御装置の一例としての上位装置1は、複数のロボット制御装置2a,2b,…を介して対応する本溶接ロボットMC1a,MC1b,…により実行される本溶接(いわゆる溶接工程)の実行を統括して制御する。例えば、上位装置1は、ユーザ(例えば溶接作業者あるいはシステム管理者。以下同様。)により予め入力あるいは設定された溶接関連情報を外部ストレージSTから読み出し、溶接関連情報に基づいて、溶接関連情報の一部の内容を含めた溶接工程の実行指令を生成して対応するロボット制御装置(例えばロボット制御装置2a)に送る。なお、上述した本溶接の実行指令は上位装置1により生成されることに限定されず、例えば本溶接が行われる工場等内の設備の操作盤(例えばPLC:Programmable Logic Controller)、あるいはロボット制御装置2a,2b,…の操作盤(例えばTP)により生成されてもよい。
【0016】
ここで、溶接関連情報とは、本溶接ロボットごとに実行される溶接工程の内容を示す情報であり、溶接工程ごとに予め作成されて外部ストレージSTに登録されている。溶接関連情報は、例えば溶接工程に必要な元ワークの数、溶接工程に使用される元ワークの識別子(以下「ID」と略記)、名前および元ワークの溶接個所を含むワーク情報、溶接工程が実行される予定の実行予定日、被溶接ワークの製造台数、溶接工程時の各種の溶接条件を含む。なお、溶接関連情報は、上述した項目のデータに限定されなくてよい。ロボット制御装置(例えばロボット制御装置2a)は、上位装置1から送られた実行指令に基づいて、その実行指令で指定される複数の元ワークを用いた溶接工程の実行を本溶接ロボット(例えば本溶接ロボットMC1a)に行わせる。なお本明細書において、溶接工程の種類は問わないが、説明を分かり易くするために、複数の元ワークのそれぞれを接合する工程を例示して説明する(
図3および
図4参照)。
【0017】
上位装置1は、モニタMN1、入力インターフェースUI1および外部ストレージSTのそれぞれとの間でデータの入出力が可能となるように接続され、更に、複数のロボット制御装置2a,2b,…のそれぞれとの間でデータの通信が可能となるように接続される。上位装置1は、モニタMN1および入力インターフェースUI1を一体に含む端末装置P1でもよく、更に、外部ストレージSTを一体に含んでもよい。この場合、端末装置P1は、溶接工程(例えば本溶接)の実行に先立ってユーザにより使用されるPC(Personal Computer)である。なお、端末装置P1は、上述したPCに限らず、例えばスマートフォン、タブレット端末等の通信機能を有するコンピュータ装置でよい。
【0018】
上位装置1は、上述した溶接関連情報を外部ストレージSTから取得し、その溶接関連情報に基づいて、複数の元ワークを用いた溶接工程の実行指令を生成し、この実行指令を対応するロボット制御装置2a,2b,…に送る。上位装置1は、本溶接ロボットMC1a,MC1b,…のそれぞれによる溶接工程が完了した後に対応するロボット制御装置2a,2b,…から送られる被溶接ワーク(例えば2次ワーク)のIDを受信すると、そのIDを被溶接ワークの識別子(ID)として設定するとともに、その被溶接ワークに対応する溶接工程論理データ(
図3および
図4参照)を生成して被溶接ワークのIDと関連付けて外部ストレージSTに保存する。これにより、上位装置1は、各種の本溶接ロボットによる溶接工程により生成された被溶接ワークのIDを適正かつ簡易に管理できる。なお、上位装置1の動作の詳細については、図面を参照して後述する。なお、上位装置1は、被溶接ワークのIDを含めた溶接工程論理データをモニタMN1に表示してもよい。
【0019】
モニタMN1は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)等の表示用デバイスを用いて構成されてよい。モニタMN1は、例えば上位装置1から出力された、被溶接ワークのIDを含めた溶接工程論理データを示す画面を表示してよい。また、モニタMN1の代わりに、あるいはモニタMN1とともにスピーカ(図示略)が上位装置1に接続されてもよく、上位装置1は、溶接工程論理データの内容を音声によりスピーカを介して出力してもよい。
【0020】
入力インターフェースUI1は、ユーザの入力操作を検出して上位装置1に出力するユーザインターフェースであり、例えば、マウス、キーボードまたはタッチパネル等を用いて構成されてよい。入力インターフェースUI1は、例えばユーザが溶接関連情報を作成する時の入力操作を受け付けたり、ロボット制御装置への溶接工程の実行指令を送る時の入力操作を受け付けたりする。
【0021】
外部ストレージSTは、例えばハードディスク(Hard Disk Drive)またはソリッドステートドライブ(Solid State Drive)を用いて構成される。外部ストレージSTは、例えば溶接工程ごとに作成された溶接関連情報のデータ、溶接工程により生成された被溶接ワークのIDを含む溶接工程論理データ(
図3および
図4参照)を記憶する。
【0022】
ロボット制御装置2a,2b,…は、上位装置1との間でデータの通信が可能に接続されるとともに、本溶接ロボットMC1a,MC1bの,…のそれぞれとの間でデータの通信が可能に接続される。ロボット制御装置2a,2b,…は、上位装置1から送られた溶接工程の実行指令を受信すると、その実行指令に基づいて対応する本溶接ロボットMC1a,MC1b,…を制御して溶接工程を実行させる。ロボット制御装置2a,2b,…は、溶接工程の完了を検知すると溶接工程が完了した旨の溶接完了通知を生成して上位装置1に送る。これにより、上位装置1は、ロボット制御装置2a,2b,…のそれぞれに基づく溶接工程の完了を適正に検知できる。なお、ロボット制御装置2a,2b,…による溶接工程の完了の検知方法は、例えばワイヤ送給装置300が備えるセンサ(図示略)からの溶接工程の完了を示す信号に基づいて判別する方法でよく、あるいは公知の方法でもよく、溶接工程の完了の検知方法の内容は限定されなくてよい。
【0023】
溶接ロボットの一例としての本溶接ロボットMC1a,MC1b,…は、ロボット制御装置2a,2b,…のそれぞれとの間でデータの通信が可能に接続される。本溶接ロボットMC1a,MC1b,…は、対応するロボット制御装置2a,2b,…のそれぞれの制御の下で、上位装置1から指令された溶接工程を実行する。
【0024】
図2は、実施の形態1に係るロボット制御装置2aおよび上位装置1の内部構成例を示す図である。説明を分かり易くするために、
図2ではモニタMN1および入力インターフェースUI1の図示を省略するとともに、本溶接ロボットMC1a,MC1b,…のうち本溶接ロボットMC1aを例示し、更に、ロボット制御装置2a,2b,…のうちロボット制御装置2aを例示して説明する。
【0025】
本溶接ロボットMC1aは、ロボット制御装置2aの制御の下で、上位装置1から指令された溶接工程を実行する。本溶接ロボットMC1aは、溶接工程において、例えばアーク溶接を行う。しかし、本溶接ロボットMC1aは、アーク溶接以外の他の溶接(例えば、レーザ溶接、ガス溶接)等を行ってもよい。この場合、図示は省略するが、溶接トーチ400に代わって、レーザヘッドを、光ファイバを介してレーザ発振器に接続してよい。本溶接ロボットMC1aは、マニピュレータ200と、ワイヤ送給装置300と、溶接ワイヤ301と、溶接トーチ400とを少なくとも含む構成である。
【0026】
マニピュレータ200は、多関節のアームを備え、ロボット制御装置2aのロボット制御部25(後述参照)からの制御信号に基づいて、それぞれのアームを可動させる。これにより、マニピュレータ200は、ワークWkと溶接トーチ400との位置関係(例えば、ワークWkに対する溶接トーチ400の角度)をアームの可動によって変更できる。
【0027】
ワイヤ送給装置300は、ロボット制御装置2aからの制御信号(後述参照)に基づいて、溶接ワイヤ301の送給速度を制御する。なお、ワイヤ送給装置300は、溶接ワイヤ301の残量を検出可能なセンサを備えてよい。
【0028】
溶接ワイヤ301は、溶接トーチ400に保持されている。溶接トーチ400に電源装置4から電力が供給されることで、溶接ワイヤ301の先端とワークWkとの間にアークが発生し、アーク溶接が行われる。なお、溶接トーチ400にシールドガスを供給するための構成等は、説明の便宜上、これらの図示および説明を省略する。
【0029】
上位装置1は、ユーザにより予め入力あるいは設定された溶接関連情報を用いて、複数の元ワークのそれぞれを用いた溶接工程の実行指令を生成してロボット制御装置2aに送る。上位装置1は、通信部10と、プロセッサ11と、メモリ12とを少なくとも含む構成である。
【0030】
通信部10は、ロボット制御装置2aおよび外部ストレージSTのそれぞれとの間でデータの通信が可能に接続される。通信部10は、プロセッサ11により生成される溶接工程の実行指令(上述参照)をロボット制御装置2aに送る。通信部10は、ロボット制御装置2aから送られる被溶接ワークのIDを受信してプロセッサ11に出力する。なお、溶接工程の実行指令には、例えば本溶接ロボットMC1aが備えるマニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および電源装置4のそれぞれを制御するための制御信号が含まれてもよい。
【0031】
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成され、メモリ12と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ11は、メモリ12に保持されたプログラムを参照し、そのプログラムを実行することにより、セル制御部13、ID設定管理部14および論理データ生成部15を機能的に実現する。
【0032】
メモリ12は、例えばプロセッサ11の処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、プロセッサ11の処理を規定したプログラムを格納するROM(Read Only Memory)とを有する。RAMには、プロセッサ11により生成あるいは取得されたデータが一時的に保存される。ROMには、プロセッサ11の処理を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリ12は、外部ストレージSTから読み出された溶接関連情報のデータ、ロボット制御装置2aから送られた被溶接ワーク(2次ワーク)のIDを含む2次ワーク情報(後述参照)のデータ、プロセッサ11により生成される2次ワークの溶接工程論理データ(
図3および
図4参照)をそれぞれ記憶する。
【0033】
セル制御部13は、外部ストレージSTに記憶されている溶接関連情報に基づいて、溶接関連情報において規定(言い換えると、設定)されている複数の元ワークを用いた溶接工程を実行するための実行指令を生成する。セル制御部13は、本溶接ロボットMC1a,1b,…のそれぞれで実行される溶接工程ごとに異なる溶接工程の実行指令を生成してよい。セル制御部13によって生成された溶接工程の実行指令は、通信部10を介して、対応するロボット制御装置2a,2b,…に送られる。
【0034】
ID設定管理部14は、ロボット制御装置(例えばロボット制御装置2a)から送られた被溶接ワーク(2次ワーク)のIDを、複数の元ワークのそれぞれを用いた溶接工程により生成された被溶接ワーク(2次ワーク)のIDとして設定してメモリ12に保存する。なお、ID設定管理部14は、この被溶接ワーク(2次ワーク)のIDと溶接工程論理データ(後述参照)とを関連付けて外部ストレージSTに保存してよい。
【0035】
論理データ生成部15は、ロボット制御装置(例えばロボット制御装置2a)から送られた被溶接ワーク(2次ワーク)のIDを含む2次ワーク情報を用いて、2次ワークのIDと溶接工程に使用された複数の元ワークのそれぞれのIDとの関係(例えばIDの強弱関係)を示す溶接工程論理データを生成する(
図3および
図4参照)。IDの強弱と溶接工程論理データの詳細については、
図3および
図4を参照して後述する。なお、論理データ生成部15は、この被溶接ワーク(2次ワーク)のIDと溶接工程論理データとを関連付けて外部ストレージSTに保存してよい。
【0036】
ロボット制御装置2aは、上位装置1から送られた溶接工程の実行指令に基づいて、対応する本溶接ロボットMC1a(具体的には、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300、電源装置4)の処理を制御する。ロボット制御装置2aは、通信部20と、プロセッサ21と、メモリ22とを少なくとも含む構成である。
【0037】
通信部20は、上位装置1、本溶接ロボットMC1aとの間でデータの通信が可能に接続される。なお、
図2では図示を簡略化しているが、ロボット制御部25とマニピュレータ200との間、ロボット制御部25とワイヤ送給装置300との間、ならびに、電源制御部26と電源装置4との間は、それぞれ通信部20を介してデータの送受信が行われる。通信部20は、上位装置1から送られた溶接工程の実行指令を受信する。通信部20は、溶接工程により生成された被溶接ワーク(2次ワーク)のIDを含む2次ワーク情報を上位装置1に送る。
【0038】
ここで、2次ワーク情報には、被溶接ワーク(2次ワーク)のIDだけでなく、溶接工程に使用される複数の元ワークのIDを含むワーク情報(例えば元ワークのID、名前、元ワークの溶接個所)、溶接工程の実行時の溶接条件が少なくとも含まれる。また、溶接条件は、例えば元ワークの材質および厚み、溶接ワイヤ301の材質およびワイヤ径、シールドガス種、シールドガスの流量、溶接電流の設定平均値、溶接電圧の設定平均値、溶接ワイヤ301の送給速度および送給量、溶接回数、溶接時間等である。また、これらの他に、例えば溶接工程の種別(例えばTIG溶接、MAG溶接、パルス溶接)を示す情報、マニピュレータ200の移動速度および移動時間が含まれても構わない。
【0039】
プロセッサ21は、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成され、メモリ22と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ21は、メモリ22に保持されたプログラムを参照し、そのプログラムを実行することにより、プログラム生成部23、演算部24、ロボット制御部25、電源制御部26およびIDランダム選択部27を機能的に実現する。
【0040】
メモリ22は、例えばプロセッサ21の処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、プロセッサ21の処理を規定したプログラムを格納するROMとを有する。RAMには、プロセッサ21により生成あるいは取得されたデータが一時的に保存される。ROMには、プロセッサ21の処理を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリ22は、上位装置1から送られた溶接工程の実行指令のデータ、溶接工程により生成された被溶接ワーク(2次ワーク)のIDを含む2次ワーク情報のデータ、プロセッサ21により生成される2次ワークの溶接工程論理データ(
図3および
図4参照)のデータをそれぞれ記憶する。また、メモリ22は、本溶接ロボットMC1a,MC1b,…が実行する溶接工程のプログラムを記憶する。溶接工程のプログラムは、溶接工程における溶接条件を用いて複数の元ワークを接合等する溶接工程の具体的な手順(工程)を規定したプログラムである。このプログラムは、ロボット制御装置2aにおいて作成されてもよいし、上位装置1により作成されて予め送られてロボット制御装置2aに保存されてもよい。
【0041】
プログラム生成部23は、通信部20を介して上位装置1から送られた溶接工程の実行指令に基づいて、実行指令に含まれる複数の元ワークのそれぞれのワーク情報(例えばID、名前、および元ワークの溶接個所)を用いて、本溶接ロボット(例えば本溶接ロボットMC1a)により実行される溶接工程のプログラムを生成する。プログラムには、溶接工程の実行中に電源装置4、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300、溶接トーチ400等を制御するための、溶接電流、溶接電圧、オフセット量、溶接速度、溶接トーチ400の姿勢等の各種のパラメータが含まれてよい。なお、生成されたプログラムは、プロセッサ21内に記憶されてもよいし、メモリ22内のRAMに記憶されてもよい。
【0042】
演算部24は、各種の演算を行う。例えば、演算部24は、プログラム生成部23により生成された溶接工程のプログラムに基づいて、ロボット制御部25により制御される本溶接ロボットMC1a(具体的には、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および電源装置4のそれぞれ)を制御するための演算等を行う。
【0043】
ロボット制御部25は、プログラム生成部23により生成された溶接工程のプログラムに基づいて、本溶接ロボットMC1a(具体的には、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および電源装置4のそれぞれ)を駆動させる。
【0044】
電源制御部26は、プログラム生成部23により生成された溶接工程のプログラムと演算部24の演算結果とに基づいて、電源装置4を駆動させる。
【0045】
IDランダム選択部27は、複数の元ワークを用いた溶接工程が完了した後に、複数の元ワークのそれぞれのIDのうちいずれのIDを、被溶接ワーク(2次ワーク)のIDとして採用するかを、ランダムに選択して決定する。言い換えると、IDランダム選択部27は、複数の元ワークのIDが「A」,「B」である場合に(
図3参照)、被溶接ワーク(例えば2次ワーク)のIDとして、「A」あるいは「B」をランダムに選択する。「ランダム」とは、選択時に、ID「A」が選択される確率およびID「B」を選択する確率が均等(例えば50%ずつ)でもあってもよいし、均等でなくてもよいことを意味する。確率が均等でないことは、例えばいずれかのIDが他のIDに比べて偏ってあるいは優先して選択されてもよいことを示す。ここで、IDについて説明する。
【0046】
本明細書において、IDは、例えば複数の種類の文字コードの組み合わせにより構成される。種類は、例えばアルファベットと数字であるが、これらに限定されなくてもよい。元ワークのIDとして「ABC001XYZ999」を例示する。ここで、説明を分かり易くするために、IDは「アルファベット3桁」、「数字3桁」、「アルファベット3桁」および「数字3桁」からなる12桁の文字コードとして示されているが、これらの構成例に限定されなくてよい。12桁の文字コードのうち、例えば上位3桁のアルファベットは自社もしくは取引先(例えば、仕入先あるいは出荷先)のコードを示し、その他の「数字3桁」、「アルファベット3桁」および「数字3桁」はシリアルナンバーを示してよい。
【0047】
図3は、ID「A」のワークとID「B」のワークとを用いた溶接時の動作概要例を示す説明図である。
図3の例では、ID「A」を有する丸形状の元ワークW1と、ID「B」を有する四角形状の元ワークW2とが1度の溶接工程において接合されて被溶接ワーク(つまり、2次ワークW3)が製造されるプロセスを例示する。ID「A」,「B」は、上述したように例えば12桁のアルファベットおよび数字からなるが、
図3の説明を分かり易くするために総称的にアルファベット1文字で表記している。
【0048】
図3において、IDランダム選択部27は、被溶接ワーク(つまり、2次ワークW3)のIDとして、ID「A」とID「B」とのうち一方をランダム(上述参照)に採用して選択する。しかし、被溶接ワーク(つまり、2次ワークW3)のIDがランダムに選択されたとしても元ワークW1のID「A」と被溶接ワーク(つまり、2次ワークW3)のID「A」とが同一となると、ID「A」が元ワークW1あるいは2次ワークW3のどちらのIDであるかの管理が煩雑になる可能性がある。そこで、実施の形態1に係る溶接システム100では、例えば上位装置1は、ID「A」の元ワークW1とID「B」の元ワークW2とを用いた溶接工程において、元ワークW1のID「A」と元ワークW2のID「B」と2次ワークW3のID「A」との相互関係を論理的に示す溶接工程論理データLG1、あるいは元ワークW1のID「A」と元ワークW2のID「B」と2次ワークW3のID「B」との相互関係を論理的に示す溶接工程論理データLG2を生成する。更に、上位装置1は、2次ワークW3のID「A」とこのID「A」が実際にユーザ事業者(後述参照)において管理される時に設定使用される管理用ID(例えば「XA」)と溶接工程論理データLG1とを関連付けたレコードTB1、あるいは2次ワークW3のID「B」とこのID「B」が実際にユーザ事業者(後述参照)において管理される時に設定使用される管理用ID(例えば「XB」)と溶接工程論理データLG2とを関連付けたレコードTB2を生成して外部ストレージSTに保存する(
図3参照)。また、上位装置1は、2次ワークW3のID「A」と溶接工程論理データLG1との関係を示す表示用画面、あるいは2次ワークW3のID「B」と溶接工程論理データLG2との関係を示す表示用画面をモニタMN1に表示してもよい。これにより、ユーザは、2次ワークW3の製造に至った溶接工程の詳細を直感的に把握できる。
【0049】
溶接工程論理データLG1は、ID「A」が上位に位置し、かつID「B」がID「A」より下位に位置する論理構造を有するデータである。つまり、溶接工程論理データLG1は、2次ワークW3のID「A」から見て、どのIDを有する元ワークが使用されて溶接工程により2次ワークW3が製造されたかを示すとともに、溶接工程に使用された複数の元ワークのそれぞれのIDの一覧、かつ複数の溶接工程が存在する場合にそれぞれの溶接工程が実行された経時的順序をそれぞれ示す。これにより、ユーザは、溶接工程が完了した後であっても元ワークW2の情報を失うことなく、2次ワークW3の製造に用いた各元ワークに関するデータを網羅的に把握できる。
【0050】
溶接工程論理データLG2は、ID「B」が上位に位置し、かつID「A」がID「B」より下位に位置する論理構造を有するデータである。つまり、溶接工程論理データLG2は、2次ワークW3のID「A」から見て、どのIDを有する元ワークが使用されて溶接工程により2次ワークW3が製造されたかを示すとともに、溶接工程に使用された複数の元ワークのそれぞれのIDの一覧、かつ複数の溶接工程が存在する場合にそれぞれの溶接工程が実行された経時的順序をそれぞれ示す。これにより、ユーザは、溶接工程が完了した後であっても元ワークW1の情報を失うことなく、2次ワークW3の製造に用いた各元ワークに関するデータを網羅的に把握できる。
【0051】
なお、
図3には図示が省略されているが、ID「A」の元ワークとID「B」の元ワークとID「C」の元ワークとの3つの元ワークが接合等されかつID「A」が最も強い場合には、上位装置1は、溶接工程論理データとして、例えばID「A」が最上位に位置しかつID「B」およびID「C」がID「A」より下位に位置する論理構造を有するデータを生成してもよい。
【0052】
図4は、ID「A」のワークとID「B」のワークとID「C」のワークとID「D」のワークとを用いた溶接時の動作概要例を示す説明図である。
図4の例では、ID「C」を有する三角形状の元ワークW4と、ID「D」を有する五角形状の元ワークW5とが第1溶接工程において接合されて被溶接ワーク(つまり、2次ワークW6)が製造され、ID「A」を有する丸形状の元ワークW1と、ID「B」を有する四角形状の元ワークW2とが第2溶接工程において接合されて被溶接ワーク(つまり、2次ワークW3)が製造され、更に、ID「A」を有する2次ワークW3と、ID「D」を有する2次ワークW6とが第3溶接工程において接合されて被溶接ワーク(つまり、3次ワークW7)が製造されるプロセスを例示する。ID「A」,「B」,「C」,「D」は、同様に例えば12桁のアルファベットおよび数字からなるが、
図4の説明を分かり易くするために総称的にアルファベット1文字で表記している。
【0053】
図4において、IDランダム選択部27は、第1溶接工程の成果物である被溶接ワーク(つまり、2次ワークW6)のIDとして、ID「C」とID「D」とのうち一方をランダム(上述参照)に採用して選択する。例えば、ID「D」が選択される。同様に、IDランダム選択部27は、第2溶接工程の成果物である被溶接ワーク(つまり、2次ワークW3)のIDとして、ID「A」とID「B」とのうち一方をランダム(上述参照)に採用して選択する。例えば、ID「A」が選択される。更に、IDランダム選択部27は、第3溶接工程の成果物である被溶接ワーク(つまり、3次ワークW7)のIDとして、ID「A」とID「D」とのうち一方をランダム(上述参照)に採用して選択する。例えば、ID「D」が選択される。しかし、被溶接ワーク(つまり、3次ワークW7)のIDがランダムに選択されたとしても元ワークW5のID「D」と被溶接ワーク(つまり、2次ワークW6)のID「D」と3次ワークW7のID「D」とが全て同一となると、ID「D」が元ワークW4、2次ワークW6あるいは3次ワークW7のうちどのIDであるかの管理が煩雑になる可能性がある。そこで、実施の形態1に係る溶接システム100では、例えば上位装置1は、第1溶接工程~第3溶接工程において、最終的に選択されたID「D」とその他のID「A」,ID「B」,ID「C」との相互関係を論理的に示す溶接工程論理データLG3を生成する。更に、上位装置1は、3次ワークW7のID「D」とこのID「D」が実際にユーザ事業者(後述参照)において管理される時に設定使用される管理用ID(例えば「XD」)と溶接工程論理データLG3とを関連付けたレコードTB3を生成して外部ストレージSTに保存する(
図4参照)。また、上位装置1は、3次ワークW7のID「D」と溶接工程論理データLG3との関係を示す表示用画面をモニタMN1に表示してもよい。これにより、ユーザは、3次ワークW7の製造に至った溶接工程の詳細を直感的に把握できる。
【0054】
溶接工程論理データLG3は、3次ワークW7のID「D」から見て、3次ワークW7がどの溶接工程においてどのIDを有する元ワークが使用されて製造されたかを示すとともに、それぞれの溶接工程に使用された複数の元ワークのそれぞれのIDの関係、それぞれの溶接工程が実行された経時的順序をそれぞれ示す。例えば、溶接工程論理データLG3は、3つの溶接工程(溶接工程Y1,Y2,Y3)を経て、ID「D」を有する3次ワークW7が製造されたことを示している。溶接工程Y1では、ID「C」を有する元ワークW5とID「C」を有する元ワークW4とが溶接され、2次ワークW3のIDとしてID「D」がランダムに選択されている。溶接工程Y2では、ID「A」を有する元ワークW1とID「B」を有する元ワークW2とが溶接され、2次ワークW3のIDとしてID「A」がランダムに選択されている。溶接工程Y3では、ID「A」を有する2次ワークW3とID「D」を有する2次ワークW6とが溶接され、3次ワークW7のIDとしてID「D」がランダムに選択されている。また、溶接工程論理データLG3では、3次ワークW7のID「D」から見て、ID「D」に近い位置ほどID「D」の元ワークW5あるいは2次ワークW6が溶接された時期が古いことが示され、ID「D」から遠い位置ほどID「D」の元ワークW5あるいは2次ワークW6が溶接された時期が新しいことが示される。これにより、ユーザは、複数の溶接工程の全てが完了した後であっても各溶接工程においてランダムな選択の結果として選択されなかったIDの元ワークあるいは2次ワークの情報を失うことなく、3次ワークW7の製造に用いた各元ワークに関するデータを網羅的に把握できる。
【0055】
図5は、ランダム選択IDと管理用IDとの対応テーブルの一例を示す図である。この対応テーブルXTB1は、
図3あるいは
図4に示すレコードTB1,TB2,TB3を1以上含むようにして構成される。溶接工程を実行する事業者(以下、「ユーザ事業者」という)が溶接工程により製造された被溶接ワークのIDを実際に効率的な管理を実現するためには、ランダムに選択されたID(ランダム選択ID)を、ユーザ事業者における管理に適した形式の管理用IDに置き換えることがある。このため、ユーザ事業者が被溶接ワークのIDを効率的に管理するために、例えば上位装置1は、ユーザの操作により、ランダム選択IDに代わる管理用IDを設定するとともに、ランダム選択IDと対応する管理用IDとの関係を規定する対応テーブルXTB1を生成して外部ストレージSTに保存する。なお、対応テーブルXTB1は上位装置1のメモリ12に保存されてもよい。
【0056】
例えば
図5の対応テーブルXTB1は、ランダム選択ID「AAA001」,「BBB001」,「DDD001」,…に対応するように、自社あるいは取引先(例えば出荷先)に固有の管理用ID「RX85-1001」,「RX85-1002」,「RX90-0001」を規定する。「RX85-1001」,「RX85-1002」,「RX90-0001」,…はそれぞれID中のハイフン前の「RX」が共通しているので同一の取引先であり、「RX85」および「RX90」の枝番(ID中のハイフン後の番号)が異なるので個々に異なる被溶接ワーク(溶接工程による成果物)となる。
【0057】
図6は、分断により生成される複数の元ワークW111,W112,W113,W114のそれぞれに異なるIDが付与される例を示す図である。ユーザ事業者は、仕入先(言い換えると、溶接工程にて使用する元ワーク(部品)の購入先である外注先)から元ワークW11を仕入れる(調達する)ことがある。元ワークW11のユーザ事業者における管理用IDを「AAA001」とする。溶接工程では、元ワークW11がそのまま使用されず、例えば4つの鋼材に分断されて使用される場合がある。このような場合、溶接システム100は、ユーザの入力インターフェースU1を介した入力操作により、4つの鋼材である元ワークW111,W112,W113,W114のそれぞれに対して、親となる元ワークW11のIDと関連性を有するように、異なるIDを上位装置1において設定してよい。
【0058】
具体的には、上位装置1は、元ワークW111のIDを「AAA0011」、元ワークW112のIDを「AAA0012」、元ワークW113のIDを「AAA0013」、元ワークW114のIDを「AAA0014」を設定する。これにより、溶接システム100は、実際に溶接工程において使用されるサイズおよび形状等に適合した元ワークの状態でIDを設定できるので、被溶接ワークの識別子ならびに溶接工程論理データを正しく生成できる。
【0059】
(溶接システムの動作)
次に、実施の形態1に係る溶接システム100によるID管理の動作手順について、
図7を参照して説明する。
図7は、実施の形態1に係る溶接システム100におけるID管理の動作手順例を示すシーケンス図である。
図7の説明では、
図3に示す元ワークW1,W2を用いた溶接工程に関して上位装置1とロボット制御装置2aとの間で行われる動作手順を例示して説明する。
【0060】
図7において、上位装置1は、溶接工程(本溶接)の対象となる元ワークW1,W2のIDを含むワーク情報(例えばID、名前、および元ワークの溶接個所)をそれぞれ取得し(St1)、元ワークW1,W2のワーク情報を含む溶接工程の実行指令を生成する。上位装置1は、元ワークW1のワーク情報と元ワークW2のワーク情報とを含む溶接工程の実行指令をロボット制御装置2に送る(St2)。
【0061】
ロボット制御装置2aは、上位装置1から送られた溶接工程の実行指令を受信すると、その実行指令に含まれる複数の元ワークW1,W2のそれぞれのワーク情報を用いて、本溶接ロボットMC1aにより実行される溶接工程のプログラムを生成し、そのプログラムに従った本溶接を本溶接ロボットMC1aに実行させる(St3)。ロボット制御装置2aは、種々の公知方法により、本溶接ロボットMC1aによる本溶接(溶接工程)の完了を判定し(St4)、元ワークW1,W2のそれぞれの本溶接が個々に完了した旨の本溶接完了通知をそれぞれ生成して上位装置1に送る(St5)。
【0062】
ロボット制御装置2aは、本溶接が完了した後、2次ワークW3のIDとして元ワークW1,W2のうちいずれのIDを採用するかをランダムに選択する(St6)。例えば元ワークW1のID「A」が選択されたとする。ロボット制御装置2aは、ステップSt6により選択された2次ワークW3のID(例えばID「A」)を含む2次ワーク情報(例えば、2次ワークW3のID「A」、溶接工程に使用された複数の元ワークW1,W2のそれぞれのIDを含むワーク情報(例えば元ワークのID、名前、元ワークの溶接個所)、溶接工程の実行時の溶接条件))を上位装置1に送る(St7)。
【0063】
上位装置1は、ロボット制御装置2aから送られた2次ワークW3のIDを含む2次ワーク情報を受信すると、ロボット制御装置2aにより選択されたID「A」を2次ワークW3のID「A」として設定するとともに、2次ワークW3に関する溶接工程論理データ(
図3および
図4参照)を生成する(St8)。上位装置1は、2次ワークW3のID「A」に対応する管理用IDを設定するとともに、この管理用IDと2次ワークW3に関する溶接工程論理データとを関連付けて外部ストレージSTに保存する(St9)。なお、ステップSt9において、外部ストレージSTに保存されるデータは、ランダムに選択されたIDと2次ワークW3に関する溶接工程論理データとが関連付けられたデータであってもよい。
【0064】
以上により、実施の形態1に係る溶接システム100では、上位装置1は、溶接工程に使用される複数の元ワークW1,W2のそれぞれのIDの情報を取得する。ロボット制御装置2aは、複数の元ワークW1,W2を用いた溶接工程の本溶接ロボットMC1a(溶接システム100の一部)による実行完了に基づいて、複数の元ワークW1,W2のそれぞれのIDのうちいずれを採用するかをランダムに選択する。上位装置1は、ロボット制御装置2aにより選択されたいずれかの元ワークのIDを、溶接工程により生成された被溶接ワーク(例えば2次ワーク)のIDとして設定する。
【0065】
これにより、実施の形態1に係る溶接システム100は、複数の元ワークが接合等される溶接工程において製造されるワーク(言い換えると、被溶接ワーク)のIDの効率的かつ簡易な管理を支援できる。つまり、従来の特許文献1のように、一つのワークが異なる製造機械(言い換えれば本溶接ロボット)に位置する度に新しいIDが設定されることが無く、製造された被溶接ワークのIDは、溶接工程に使用された複数の元ワークのIDのうちランダムに選択されたいずれかのIDとなるので、IDが徒に増大することが無くユーザによるIDの管理が簡易化される。
【0066】
また、IDは、複数の文字コードの組み合わせ(例えば「AAA001」により構成される。これにより、溶接システム100は、例えばユーザ事業者の業務形態(例えば業務上の慣習など)に合わせて、自社あるいは取引先等の種別を示す文字コードとシリアルナンバーとを組み合わせることで、被溶接ワーク(例えば2次ワーク)のIDを簡易に管理できる。
【0067】
また、文字コードは、例えばアルファベットと数字とを有する。これにより、IDがアルファベットと数字との組み合わせにより構成されることが多いことに鑑みて、被溶接ワークのIDの管理を簡易化および汎用化できる。
【0068】
また、上位装置1は、被溶接ワーク(例えば2次ワーク)のIDと溶接工程に用いられた複数の元ワークのそれぞれのIDとの関係を示すデータ(例えば溶接工程論理データ)を生成して保存する。これにより、ユーザは、溶接工程が完了した後であっても選択されなかったIDの元ワークの情報を失うことなく、2次ワークの製造に用いた各元ワークに関するデータを網羅的に把握できる。
【0069】
また、データ(例えば溶接工程論理データ)は、溶接工程が複数の溶接工程を含む場合に(
図4参照)、複数の溶接工程のそれぞれの経時的順序を示す。これにより、ユーザは、2次ワークのIDから見て、どのIDを有する元ワークが使用されてどのような溶接工程の時系列的順序により2次ワークが製造されたかを直感的に把握できる。
【0070】
また、データ(例えば溶接工程論理データ)は、溶接工程の溶接条件を含む。これにより、ユーザは、溶接工程がどのような溶接条件に従って実行されたかを直感的に把握できる。
【0071】
また、溶接システム100は、選択されたいずれかの元ワークのIDを、ユーザ(例えばユーザ事業者)により管理される管理用識別子(例えば管理用ID)と関連付けた管理テーブル(例えば対応テーブルXTB1)を外部ストレージSTに保持する。これにより、溶接システム100は、ユーザ事業者が自社あるいは取引先(例えば出荷先)に固有の文字コード(例えばアルファベット)に適した管理用IDを設定できるので、ユーザ事業者の実務的な管理の実情に合わせて被溶接ワークのIDを適正に管理できる。
【0072】
また、溶接システム100を構成するロボット制御装置(例えばロボット制御装置2a)は、複数の元ワークのそれぞれのIDの情報を保持するメモリ22と、複数の元ワークを用いた溶接工程を実行可能に本溶接ロボット(例えば本溶接ロボットMC1a)を制御するプロセッサ21と、溶接システム100を統括する上位装置1との間で通信する通信部20と、を備える。プロセッサ21は、本溶接ロボットによる溶接工程の実行完了に基づいて、複数の元ワークのそれぞれのIDのうちいずれを採用するかをランダムに選択する。プロセッサ21は、選択されたいずれかの元ワークのIDを、溶接工程により生成された被溶接ワークのIDとしての設定要求を、通信部20を介して上位装置1に送信する。
【0073】
これにより、実施の形態1に係るロボット制御装置(例えばロボット制御装置2a)は、複数の元ワークが接合等される溶接工程において製造されるワーク(言い換えると、被溶接ワーク)のIDの効率的かつ簡易な管理を支援できる。つまり、従来の特許文献1のように、一つのワークが異なる製造機械(言い換えれば本溶接ロボット)に位置する度に新しいIDが設定されることが無く、製造された被溶接ワークのIDは、実施の形態1に係るロボット制御装置(例えばロボット制御装置2a)によって、溶接工程に使用された複数の元ワークのIDのうちランダムに選択されたいずれかのIDとなるので、IDが徒に増大することが無くユーザによるIDの管理が簡易化される。
【0074】
(実施の形態2)
実施の形態1では、溶接工程により生成された被溶接ワーク(例えば2次ワーク)のIDがロボット制御装置(例えばロボット制御装置2a)により選択される。実施の形態2では、この選択を上位装置1によって行われる例を説明する。
【0075】
(溶接システムの構成)
図9は、実施の形態2に係るロボット制御装置2aおよび上位装置1aの内部構成例を示す図である。
図9の説明において、
図2の各部の構成と同一のものには同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0076】
上位装置1aは、ユーザにより予め入力あるいは設定された溶接関連情報を用いて、複数の元ワークのそれぞれを用いた溶接工程の実行指令を生成してロボット制御装置2aに送る。上位装置1aは、通信部10と、プロセッサ11aと、メモリ12とを少なくとも含む構成である。
【0077】
プロセッサ11aは、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成され、メモリ12と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ11aは、メモリ12に保持されたプログラムを参照し、そのプログラムを実行することにより、セル制御部13、ID設定管理部14、論理データ生成部15およびIDランダム選択部16を機能的に実現する。言い換えると、実施の形態2では、実施の形態1に係るロボット制御装置2a,2b,…のプロセッサ21に含まれていたIDランダム選択部27が、上位装置1aのプロセッサ11aに含まれる。
【0078】
IDランダム選択部16は、本溶接ロボット(例えば本溶接ロボットMC1a)によって複数の元ワークを用いた溶接工程が完了した後に、ロボット制御装置(例えばロボット制御装置2a)から送られたデータを用いて、複数の元ワークのそれぞれのIDのうちいずれのIDを、被溶接ワーク(2次ワーク)のIDとして採用するかをランダムに選択して決定する。
【0079】
(溶接システムの動作)
次に、実施の形態2に係る溶接システム100によるID管理の動作手順について、
図10を参照して説明する。
図9は、実施の形態2に係る溶接システム100におけるID管理の動作手順例を示すシーケンス図である。
図9の説明では、
図3に示す元ワークW1,W2を用いた溶接工程に関して上位装置1とロボット制御装置2aとの間で行われる動作手順を例示して説明するとともに、
図7の処理と同一のものについては同一のステップ番号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0080】
図9において、ロボット制御装置2aは、ステップSt5の元ワークW1,W2のそれぞれに対応する本溶接完了通知を上位装置1aに送信した後、2次ワーク情報(例えば、溶接工程に使用された複数の元ワークW1,W2のそれぞれのIDを含むワーク情報(例えば元ワークのID、名前、元ワークの溶接個所)、溶接工程の実行時の溶接条件))を上位装置1に送る(St7a)。
【0081】
上位装置1aは、ステップSt7aにおいてロボット制御装置2aから送られた2次ワーク情報(上述参照)を受信すると、2次ワークW3のIDとして元ワークW1,W2のうちいずれのIDを採用するかをランダムに選択する(St10)。例えば元ワークW1のID「A」が選択されたとする。
【0082】
上位装置1aは、ステップSt10において選択されたID「A」を2次ワークW3のID「A」として設定するとともに、2次ワークW3に関する溶接工程論理データ(
図3および
図4参照)を生成する(St8)。上位装置1aは、2次ワークW3のID「A」に対応する管理用IDを設定するとともに、この管理用IDと2次ワークW3に関する溶接工程論理データとを関連付けて外部ストレージSTに保存する(St9)。
【0083】
以上により、実施の形態2に係る溶接システム100では、溶接システム100を構成する上位装置1aは、複数の元ワークのそれぞれのIDの情報を保持するメモリ12と、複数の元ワークを用いた溶接工程の実行を制御するロボット制御装置2aとの間で通信する通信部10と、ロボット制御装置2aによる溶接工程の実行完了の検知に基づいて、複数の元ワークのそれぞれのIDのうちいずれを採用するかをランダムに選択するプロセッサ11と、を備える。プロセッサ11は、選択されたいずれかの元ワークのIDを、溶接工程により生成された被溶接ワークのIDとして設定する。
【0084】
これにより、実施の形態2に係る上位装置1aは、複数の元ワークが接合等される溶接工程において製造されるワーク(言い換えると、被溶接ワーク)のIDの効率的かつ簡易な管理を支援できる。つまり、従来の特許文献1のように、一つのワークが異なる製造機械(言い換えれば本溶接ロボット)に位置する度に新しいIDが設定されることが無く、製造された被溶接ワークのIDは、実施の形態2に係る上位装置1aによって、溶接工程に使用された複数の元ワークのIDのうちランダムに選択されたいずれかのIDとなるので、IDが徒に増大することが無くユーザによるIDの管理が簡易化される。
【0085】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0086】
なお、本出願は、2019年10月11日出願の日本特許出願(特願2019-188158)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示は、溶接等の工程において製造されるワークの識別子の効率的かつ簡易な管理を支援する識別子管理方法、ロボット制御装置および統括制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0088】
1、1a 上位装置
2a、2b ロボット制御装置
4 電源装置
10、20 通信部
11、11a、21 プロセッサ
12、22 メモリ
13 セル制御部
14 ID設定管理部
15 論理データ生成部
16、27 IDランダム選択部
23 プログラム生成部
24 演算部
25 ロボット制御部
26 電源制御部
200 マニピュレータ
300 ワイヤ送給装置
301 溶接ワイヤ
400 溶接トーチ
MC1a、MC1b 本溶接ロボット
ST 外部ストレージ
Wk ワーク