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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】水電解装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20230609BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230609BHJP
   C25B 11/032 20210101ALI20230609BHJP
   C25B 11/057 20210101ALI20230609BHJP
   C25B 11/075 20210101ALI20230609BHJP
   C25B 15/021 20210101ALI20230609BHJP
   C25B 15/027 20210101ALI20230609BHJP
   C25B 15/031 20210101ALI20230609BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B11/032
C25B11/057
C25B11/075
C25B15/021
C25B15/027
C25B15/031
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022575366
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2022019751
(87)【国際公開番号】W WO2022239757
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2021081259
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100202201
【弁理士】
【氏名又は名称】兒島 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】白瀧 浩志
(72)【発明者】
【氏名】林 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】朝澤 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 英昭
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154134(WO,A1)
【文献】特開2007-046110(JP,A)
【文献】特開2019-203174(JP,A)
【文献】特開2003-301290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 9/00
C25B 1/04
C25B 11/032
C25B 11/057
C25B 11/075
C25B 15/021
C25B 15/027
C25B 15/031
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解を行う水電解装置であって、
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、
電解液と、
前記電解液を加熱する加熱器と、
前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、
制御器と、を備え、
前記アノードに含まれるアノード触媒及び前記カソードに含まれるカソード触媒の少なくとも一方に、層状複水酸化物が含まれ、
前記層状複水酸化物にニッケルが含まれ、
前記制御器は、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ
前記電解液の温度が前記電解液の昇温における目標温度よりも低い所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる、
水電解装置。
【請求項2】
水電解を行う水電解装置であって、
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、
電解液と、
前記電解液を加熱する加熱器と、
前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、
制御器と、を備え、
前記アノードに含まれるアノード触媒及び前記カソードに含まれるカソード触媒の少なくとも一方の担体に、ニッケル単体が含まれ、
前記制御器は、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ
前記電解液の温度が前記電解液の昇温における目標温度よりも低い所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる、
水電解装置。
【請求項3】
水電解を行う水電解装置であって、
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、
電解液と
前記電解液を加熱する加熱器と、
前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、
制御器と、を備え、
前記アノードに含まれるアノード触媒及び前記カソードに含まれるカソード触媒の少なくとも一方の担体に、ニッケル粒子が含まれ、
前記制御器は、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ
前記電解液の温度が前記電解液の昇温における目標温度よりも低い所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる、
水電解装置。
【請求項4】
水電解を行う水電解装置であって、
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、
電解液と、
前記電解液を加熱する加熱器と、
前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、
制御器と、を備え、
前記アノードに含まれるアノード拡散層及び前記カソードに含まれるカソード拡散層の少なくとも一方に、ニッケル単体が含まれ、
前記制御器は、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ
前記電解液の温度が前記電解液の昇温における目標温度よりも低い所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる、
水電解装置。
【請求項5】
前記所定の閾値は、60℃以下の温度である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の水電解装置。
【請求項6】
前記所定の閾値は、40℃以下の温度である、
請求項記載の水電解装置。
【請求項7】
前記電気化学セルに供給する前記電解液を、中性電解液とアルカリ性電解液とで切り替える切替器をさらに備え、
前記制御器は、前記切替器に、
前記電圧印加器が前記電圧を印加する前において、前記電解液を前記中性電解液に切り替えさせ、
前記電圧印加器が前記電圧を印加した後に、前記電解液を前記アルカリ性電解液に切り替えさせる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の水電解装置。
【請求項8】
前記電解液が、少なくとも水電解運転時に中性である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の水電解装置。
【請求項9】
前記電解液が、少なくとも水電解運転時にアルカリ性である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の水電解装置。
【請求項10】
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、電解液と、前記電解液を加熱する加熱器と、前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、を備え、前記アノードに含まれるアノード触媒及び前記カソードに含まれるカソード触媒の少なくとも一方に、層状複水酸化物が含まれ、前記層状複水酸化物にニッケルが含まれる水電解装置の制御方法であって、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ前記電解液の温度が前記電解液の昇温における目標温度よりも低い所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる、
水電解装置の制御方法。
【請求項11】
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、電解液と、前記電解液を加熱する加熱器と、前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、を備え、前記アノードに含まれるアノード触媒及び前記カソードに含まれるカソード触媒の少なくとも一方の担体に、ニッケル単体が含まれる水電解装置の制御方法であって、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ前記電解液の温度が前記電解液の昇温における目標温度よりも低い所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる、
水電解装置の制御方法。
【請求項12】
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、電解液と、前記電解液を加熱する加熱器と、前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、を備え、前記アノードに含まれるアノード触媒及び前記カソードに含まれるカソード触媒の少なくとも一方の担体に、ニッケル粒子が含まれる水電解装置の制御方法であって、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ前記電解液の温度が前記電解液の昇温における目標温度よりも低い所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる、
水電解装置の制御方法。
【請求項13】
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、電解液と、前記電解液を加熱する加熱器と、前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、を備え、前記アノードに含まれるアノード拡散層及び前記カソードに含まれるカソード拡散層の少なくとも一方に、ニッケル単体が含まれる水電解装置の制御方法であって、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ前記電解液の温度が前記電解液の昇温における目標温度よりも低い所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる、
水電解装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水電解装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水電解装置の開発が期待されている。水電解装置によれば、水と、再生可能エネルギー由来の電力とから、水素を製造できる。水電解装置には、イニシャルコストが低いという利点がある。この利点は、特に、アルカリ隔膜型水電解装置又はアニオン交換膜型水電解装置において得られ易い。なぜなら、これらの水電解装置では、電解液としてアルカリ性水溶液又は中性水溶液が使用され、そのため耐酸性の低い非貴金属材料を使用できるためである。安定かつ効率的に水素を製造可能な水電解装置の開発が鋭意進められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Corrosion Science, Vol. 39, No. 5, 969-980, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、電気化学セルに含まれたニッケルの変質を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
水電解を行う水電解装置であって、
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、
電解液と、
前記電解液を加熱する加熱器と、
前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、
制御器と、を備え、
前記電気化学セルが、ニッケルを含み、
前記制御器は、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ
前記電解液の温度が所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる、水電解装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、電気化学セルに含まれたニッケルの変質を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、アニオン交換膜型水電解セルの一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、アニオン交換膜型水電解装置の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、アルカリ隔膜型水電解セルの一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、アルカリ隔膜型水電解装置の一例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、layered double hydride(LDH)の結晶構造の一例を模式的に示す図である。
図6図6は、ニッケルを含む触媒及び担体の変質を模式的に示す図である。
図7図7は、ニッケルのプールベ図である。
図8図8は、ニッケルが安定である領域とニッケルが変質し易い領域とを模式的に示す図である。
図9図9は、一例に係る切替器を示す模式図である。
図10図10は、一具体例に係る制御方法を示すフローチャートである。
図11図11は、実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3の各XRD積分比を示すグラフである。
図12図12は、実験例A3、実験例A6、実験例B4及び実験例B5の各XRD積分比を示すグラフである。
図13図13は、実験例A4、実験例A7、実験例B6及び実験例B7の各XRD積分比を示すグラフである。
図14図14は、実験例C2、実験例A2及び実験例B3で得たサンプルのXRDスペクトルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の基礎となった知見>
近年、太陽光、風力等を始めとする再生可能エネルギーが利用されている。再生可能エネルギーの利用は、火力発電における化石燃料の使用量を低減させる。化石燃料の使用量の低減は、大気中への二酸化炭素の排出量を低減させる。そのため、再生可能エネルギーは、地球温暖化問題に対処するための重要なエネルギー源として注目されている。ただし、再生可能エネルギーによる電力供給量は、季節によって変動しうる。このため、効果的なエネルギーマネジメントが求められている。
【0009】
エネルギーマネジメントに、水素が利用されうる。水素は、大規模かつ大容量に保存が可能な二次エネルギーとして利用可能である。水素は、水と、再生可能エネルギー由来の電力とから製造できる。電力及び水から水素を製造する水電解装置の開発が進められている。
【0010】
水電解装置は、電気化学セルを含む。水電解装置の起動時に、電解液の温度が低い状態で定格電流を流すと、温度が低い条件ではセル抵抗が高いために、水電解セルにおける電圧(セル電圧)が急激に上昇し、水電解セルに異常が発生する可能性がある。そのため、水電解装置は、従来、電解液を定格運転時の目標温度(例えば、80℃程度)に昇温させた後、水電解セルに電流を印加して定格運転される。
【0011】
一方、本発明者らの検討によれば、水電解装置を適切に制御することにより、従来に比べ、電気化学セルに含まれた材料の化学的な変質を低減できる。例えば、変質の低減は、導電性の低下を低減する。また例えば、電気化学セルの触媒に含まれた材料の変質が低減されると、比活性の低下が低減される。変質の低減は、水電解装置の寿命を向上しうる。また、変質の低減は、水素の製造の効率及び安定性を向上することに寄与する。水素の製造の効率及び安定性の向上は、水素の安価な生成に繋がる。具体的には、水電解装置の起動時において適切な運転条件を採用することにより、従来に比べ、電気化学セルに含まれた材料の化学的な変質を低減できる。
【0012】
詳細には、仮に、水電解装置の起動時において、電解液の温度が所定の閾値以上になってから電圧印加器による電圧の印加を開始するとする。ここで、所定の閾値は、例えば、水電解装置の起動時における電解液の昇温における目標温度よりも小さい温度である。このような運転は、電気化学セルに含まれた材料の化学的な変質を低減することに必ずしも適していない。本発明者らの検討によれば、電解液の温度が低いときに電圧印加器による電圧の印加を開始することにより、電気化学セルに含まれた材料の化学的な変質を低減できる。
【0013】
ここで、水電解装置の起動及び水電解運転という用語について説明する。水電解運転は、水電解装置による水電解のための運転であって、例えば、電気化学セルに目標電流が印加された状態で、水電解を行う運転を指す。目標電流は、水電解の定格運転が行われているときの電流を指す。水電解装置の起動は、水電解運転に用いる補器の動作が開始されてから、電気化学セルに印加される電流が目標電流に達するまでの運転を指す。補器は、例えば、弁、ポンプ、温調機器等である。
【0014】
一具体例では、水電解装置は、膜電極接合体(MEA)を備える。膜電極接合体は、セパレータ、拡散層、アノード電極触媒層、カソード電極触媒層及び電解質膜を含む。水電解装置では、拡散層、アノード電極触媒層、カソード電極触媒層及び電解質膜を含む電気化学セルが構成されている。水電解装置は、アルカリ隔膜型水電解装置又はアニオン交換膜型水電解装置である。電解液は、アルカリ性である。起動時に、電気化学セルの構成部材の一部において、アルカリ条件下で水酸化反応が進行する。この進行に伴い、電気化学セルに含まれたニッケルが変質し、水電解装置の性能が劣化しうる。本発明者らは、鋭意検討により、起動時におけるニッケルの変質を低減しうる新規な技術を見出した。
【0015】
<本開示に係る一態様の概要>
本開示の第1態様に係る水電解装置は、
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、
電解液と、
前記電解液を加熱する加熱器と、
前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、
制御器と、を備える。
前記電気化学セルが、ニッケルを含む。
前記制御器は、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ
前記電解液の温度が所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる。
【0016】
第1態様によれば、電気化学セルに含まれたニッケルの変質を低減できる。
【0017】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る水電解装置では、
前記所定の閾値は、前記電解液の昇温における目標温度よりも低くてもよい。
【0018】
第2態様の所定の閾値は、所定の閾値の一例である。
【0019】
本開示の第3態様において、例えば、第1又は第2態様に係る水電解装置では、
前記所定の閾値は、60℃以下の温度であってもよい。
【0020】
第3態様の所定の閾値は、所定の閾値の一例である。
【0021】
本開示の第4態様において、例えば、第3態様に係る水電解装置では、
前記所定の閾値は、40℃以下の温度であってもよい。
【0022】
第4態様の所定の閾値は、所定の閾値の一例である。
【0023】
本開示の第5態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つに係る水電解装置は、前記電気化学セルに供給する前記電解液を、中性電解液とアルカリ性電解液とで切り替える切替器をさらに備えていてもよく、
前記制御器は、前記切替器に、
前記電圧印加器が前記電圧を印加する前において、前記電解液を前記中性電解液に切り替えさせ、
前記電圧印加器が前記電圧を印加した後に、前記電解液を前記アルカリ性電解液に切り替えさせてもよい。
【0024】
第5態様によれば、電気化学セルに供給する電解液を切り替え可能である。
【0025】
本開示の第6態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つに係る水電解装置では、
前記電解液が、少なくとも水電解運転時に中性であってもよい。
【0026】
第6態様によれば、ニッケルの変質を低減し易い。
【0027】
本開示の第7態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つに係る水電解装置では、
前記電解液が、少なくとも水電解運転時にアルカリ性であってもよい。
【0028】
第7態様によれば、アルカリ水電解を実施できる。
【0029】
本開示の第8態様において、例えば、第1から第7態様のいずれか1つに係る水電解装置では、
前記アノードに含まれるアノード触媒及び前記カソードに含まれるカソード触媒の少なくとも一方に、層状複水酸化物が含まれていてもよく、
前記層状複水酸化物にニッケルが含まれていてもよい。
【0030】
第8態様では、層状複水酸化物に含まれたニッケルの変質が低減されうる。
【0031】
本開示の第9態様において、例えば、第1から第8態様のいずれか1つに係る水電解装置では、
前記アノードに含まれるアノード触媒及び前記カソードに含まれるカソード触媒の少なくとも一方の担体に、ニッケルが含まれていてもよい。
【0032】
第9態様では、担体に含まれたニッケルの変質が低減されうる。
【0033】
本開示の第10態様において、例えば、第1から第8態様のいずれか1つに係る水電解装置では、
前記アノードに含まれるアノード触媒及び前記カソードに含まれるカソード触媒の少なくとも一方の担体に、ニッケル粒子が含まれていてもよい。
【0034】
第10態様では、担体に含まれたニッケル粒子の変質が低減されうる。
【0035】
本開示の第11態様において、例えば、第1から第10態様のいずれか1つに係る水電解装置では、
前記アノードに含まれるアノード拡散層及び前記カソードに含まれるカソード拡散層の少なくとも一方に、ニッケルが含まれていてもよい。
【0036】
第11態様では、拡散層に含まれたニッケルの変質が低減されうる。
【0037】
本開示の第12態様に係る水電解装置の制御方法は、
アノード及びカソードを含む電気化学セルと、電解液と、前記電解液を加熱する加熱器と、前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電圧印加器と、を備え、前記電気化学セルがニッケルを含む水電解装置の制御方法であって、
前記水電解装置の起動時に、前記加熱器の加熱により前記電解液を昇温させ、かつ前記電解液の温度が所定の閾値未満であるときに、前記電圧印加器に電圧の印加を開始させる。
【0038】
第12態様によれば、電気化学セルに含まれたニッケルの変質を低減できる。
【0039】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0040】
[水電解装置]
図1は、アニオン交換膜型水電解セルの一例を模式的に示す断面図である。図1に示す水電解セル3は、電解質膜31、アノード100及びカソード200を備える。電解質膜31は、アノード100とカソード200との間に配置されている。
【0041】
アノード100は、触媒層30及びアノード拡散層33を含む。触媒層30は、電解質膜31の一方の主面上に設けられている。アノード拡散層33は、触媒層30上に設けられている。
【0042】
カソード200は、触媒層32及びカソード拡散層34を含む。触媒層32は、電解質膜31の他方の主面上に設けられている。カソード拡散層34は、触媒層32上に設けられている。
【0043】
触媒層30は、アノード電極触媒層と称されうる。触媒層32は、カソード電極触媒層と称されうる。アノード電極触媒層30とカソード電極触媒層32との間に電解質膜31が配置されている。また、それら3つの要素を挟むようにアノード拡散層33及びカソード拡散層34が配置されている。
【0044】
図2は、アニオン交換膜型水電解装置の一例を模式的に示す断面図である。図2に示す水電解装置4は、水電解セル3及び電圧印加器40を備える。図2に示す水電解セル3は、図1に示す水電解セル3と同様であるので、その説明を省略する。
【0045】
電圧印加器40は、水電解セル3のアノード100及びカソード200に接続されている。電圧印加器40は、アノード100及びカソード200に電圧を印加する装置である。電圧印加器40によって、アノード100の電位が相対的に高くなり、カソード200の電位が相対的に低くなる。具体的には、電圧印加器40は、アノード100及びカソード200の間に直流電圧を印加する。
【0046】
電圧印加器40は、アノード100及びカソード200の間に電圧を印加できる限り、特定の種類に限定されない。
【0047】
電圧印加器40は、電源を備えていてもよく、電源を備えていなくてもよい。電圧印加器40は、電力変換器を備えていてもよく、電力変換器を備えていなくてもよい。ここで、電力変換器は、DC/DCコンバータ及びAC/DCコンバータを包含する概念である。
【0048】
第1の具体例では、直流電源が用いられる。その直流電源に、電圧印加器40が接続されている。電圧印加器40は、DC/DCコンバータを備える。直流電源としては、バッテリ、太陽電池、燃料電池等が例示される。
【0049】
第2の具体例では、交流電源が用いられる。その交流電源に、電圧印加器40が接続されている。電圧印加器40は、AC/DCコンバータを備える。交流電源としては、商用電源等が例示される。
【0050】
第3の具体例では、電圧印加器40は、電力型電源である。電圧印加器40は、アノード100及びカソード200の間に印加される電圧と、アノード100及びカソード200の間に流れる電流と、を調整する。電圧印加器40は、これらの調整を通じて、水電解装置4に供給される電力を、所定の設定値に調整する。
【0051】
図3は、アルカリ隔膜型水電解セルの一例を模式的に示す断面図である。図3に示す水電解セル5は、アノード300及びカソード400を備える。水電解セル5は、電解槽70、第一空間50及び第二空間60をさらに備える。アノード300は、第一空間50に設けられている。カソード400は、第二空間60に設けられている。水電解セル5は、隔膜41を有する。第一空間50及び第二空間60は、隔膜41により隔てられている。隔膜41は、電解槽70の内部に設けられている。
【0052】
アノード300及びカソード400は、それぞれ、触媒層を含む。アノード300の触媒層は、アノード電極触媒層と称されうる。カソード400の触媒層は、カソード電極触媒層と称されうる。アノード電極触媒層とカソード電極触媒層との間に、隔膜41が配置されている。特に限定されないが、隔膜41は、電解質膜であってもよい。隔膜41は、多孔質であってもよく、多孔質でなくてもよい。
【0053】
図4は、アルカリ隔膜型水電解装置の一例を模式的に示す断面図である。図4に示す水電解装置6は、水電解セル5及び電圧印加器40を備える。電圧印加器40は、水電解セル5のアノード300及びカソード400に接続されている。図4に示す水電解セル5は、図3に示す要素と同様であるため、その説明を省略する。
【0054】
アルカリ隔膜型水電解セルは、図3及び図4に示す形態に限定されない。変形例に係るアルカリ隔膜型水電解セルは、図1及び図2に示すアニオン交換膜型水電解セルと同様、アノードが触媒層及びアノード拡散層を含み、カソードが触媒層及びカソード拡散層を含む。特に矛盾のない限り、変形例のアルカリ隔膜型水電解セル及び当該セルを有する水電解装置にも、図1図2図3及び図4のセル又は装置に適用可能な特徴を適用できる。変形例のアルカリ隔膜型水電解セルとして、ゼロギャップ構造のアルカリ隔膜型水電解セルが例示される。
【0055】
[電極触媒層]
以下、電極触媒層について説明する。図1及び図2を参照して説明したアノード電極触媒層30は、以下の説明に係る電極触媒層の構成を有しうる。図1及び図2を参照して説明したカソード電極触媒層32、図3及び図4を参照して説明したアノード300の触媒層及びカソード400の触媒層についても同様である。変形例に係るアルカリ隔膜型水電解セルのアノードの触媒層及びカソードの触媒層についても同様である。
【0056】
水電解において、水素ガス及び酸素ガスが生成される。電極触媒層は、これらのガスの発生反応に活性のある材料を含む。そのような材料として、層状複水酸化物(LDH;Layered Double Hydroxide)、イリジウムの酸化物(IrOx)、白金(Pt)等が例示される。
【0057】
LDHは、2種以上の遷移金属を含む。遷移金属は、例えば、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、W、及びRuからなる群より選ばれる少なくとも2つを含む。
【0058】
LDHは、例えば、下記の組成式(1)で表される組成を有する。
[M12+ 1-xM23+ x(OH)2][yAn-・mH2O] ・・・組成式(1)
【0059】
組成式(1)において、M12+は、二価の遷移金属イオンである。M23+は、三価の遷移金属イオンである。An-は、層間の陰イオンである。xは、0<x<1の条件を満たす有理数である。yは、電荷バランスの必要量に相当する数である。nは、整数である。mは、適当な有理数である。
【0060】
LDHは、Ni及びFeを含んでいてもよい。組成式(1)において、M1は、Niであり、かつ、M2は、Feであってもよい。すなわち、LDHに含まれる遷移金属元素は、Ni及びFeであってもよい。このような構成によれば、電極触媒は、例えば、M1がCoであるLDHより高い触媒活性を有しうる。
【0061】
LDHは、キレート剤を含んでいてもよい。この場合、LDHにおける遷移金属イオンにキレート剤が配位していてもよい。これにより、LDHの分散安定性をより向上させることができる。また、LDHがキレート剤を含んでいるので、小さい粒子径を有するLDHが合成されうる。その結果、LDHの表面積を向上させることができるので、触媒活性を向上させることができる。LDHの平均粒径は、100nm以下であってもよく、例えば50nm以下であってもよい。LDHの平均粒径は、小角X線散乱法(SAXS)により得られた粒度分布を、粒径と分布との関係を2次元分布図で表したとき、2次元分布図の面積を総粒子数で割った値である。分布とは、当該粒径の粒子数が占める総体積に比例した数値を意味する。2次元分布図の面積は、例えば、粒径と当該粒径に対応する粒子数との積である。
【0062】
キレート剤は、特定のキレート剤に限定されない。キレート剤は、例えば、LDHにおいて遷移金属に配位する有機化合物である。キレート剤は、2座の有機配位子及び3座の有機配位子からなる群より選ばれる少なくとも1つであってもよい。キレート剤の例は、β-ジケトン、β-ケトエステル、及びヒドロキシカルボン酸である。β-ジケトンの例は、アセチルアセトン(ACAC)、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、テノイルトリフルオロアセトン、ジピロバイルメタン、ジベンゾイルメタン、及びアスコルビン酸である。β-ケトエステルの例は、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸-n-プロピル、アセト酢酸-iso-プロピル、アセト酢酸-n-ブチル、アセト酢酸-iso-ブチル、アセト酢酸-tert-ブチル、アセト酢酸-2-メトキシエチル、及び3-オキソペンタン酸メチルである。ヒドロキシカルボン酸及びその塩の例は、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、フェルラ酸、乳酸、グルクロン酸、及びそれらの塩である。キレート剤は、アセチルアセトン及びクエン酸三ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。キレート剤は、アセチルアセトン及びトリソジウムシトレートからなる群より選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0063】
n-は、層間イオンである。An-は、無機イオン又は有機イオンである。無機イオンの例は、CO3 2-、NO3 -、Cl-、SO4 2-、Br-、OH-、F-、I-、Si25 2-、B45(OH)4 2-、及びPO4 3-である。有機イオンの例は、CH3(CH2nSO4-、CH3(CH2nCOO-、CH3(CH2nPO4-、及びCH3(CH2nNO3-である。An-は、水分子とともに金属水酸化物の層の間に挿入される陰イオンである。An-の電荷及びイオンの大きさは、特定の値に制限されない。LDHは、1種類のAn-を含んでいてもよいし、複数種類のAn-を含んでいてもよい。
【0064】
図5は、LDHの結晶構造の一例を模式的に示す図である。具体的には、図5は、組成式(1)で表されるLDHの結晶構造の一例を模式的に示す。図5に示すように、LDH20は、M12+又はM23+を中心とする8面体の各頂点にOH-イオンを有する。金属水酸化物は、[M12+ 1-xM23+ x(OH)2x+で表される。金属水酸化物は、水酸化物八面体が稜を共有して二次元に連なった層状構造を有している。金属水酸化物の層の間には、アニオン及び水分子が位置している。金属水酸化物の層は、ホスト層21として機能し、アニオン及び水分子がゲスト層22として挿入されている。つまり、全体としてLDH20は、金属水酸化物のホスト層21とアニオン及び水分子のゲスト層22とが交互に積層されたシート状構造を有している。LDH20は、金属水酸化物の層に含まれているM12+の一部をM23+に置換した構造を有する。そのため、LDH20の表面は、通常、正に帯電している。
【0065】
電極触媒層は、担体をさらに含んでいてもよい。担体は、典型的には導電性を有するため、このような構成によれば電極触媒の触媒活性が高く保たれやすい。担体は、特定の材料に限定されない。担体の例は、遷移金属及び炭素材料である。遷移金属の例は、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、W、及びRuである。炭素材料の例は、アセチレンブラック及びケッチェンブラック(KB)である。
【0066】
担体の形状は、特定の形状に限定されない。担体の形状は、フォーム状であってもよく、粒子状であってもよい。また担体のサイズは、特定のサイズに限定されない。
【0067】
電極触媒層は、有機高分子をさらに含んでいてもよい。有機高分子は、典型的には触媒剥離を抑制する目的に使用され、このような構成によれば電極触媒層の耐久性が高く保たれやすい。有機高分子は、特定の材料に限定されない。有機高分子の例は、パーフルオロポリマー及びパーフルオロスルホン酸系ポリマー、主鎖にポリスチレン骨格を含む高分子である。有機高分子の形状、サイズ及び重合度は、特に限定されない。
【0068】
[電解質膜]
以下、電解質膜について説明する。図1及び図2を参照して説明した電解質膜31は、以下の説明に係る電解質膜の構成を有しうる。アルカリ隔膜型水電解セルが電解質膜を有する場合においては、その電解質膜についても同様である。
【0069】
電解質膜は、特定の種類に限定されない。電解質膜は、多孔質であってもイオン伝導性を有していてもよい。電解質膜は、アニオン交換膜であってもよい。電解質膜は、アノードで発生した酸素ガスとカソードで発生した水素ガスとが混合しにくいように構成されている。以上の構成によれば、水電解セルの過電圧の増加を低減しうる。ここで、過電圧とは、電気化学反応において、熱力学的に求められる反応の理論電位(平衡電極電位)と、実際に反応が進行するときの電極の電位との差のことである。電解質膜は、多孔性及び電子伝導性を有していてもよい。電解質膜は、抵抗性を有していてもよい。
【0070】
[拡散層]
以下、拡散層について説明する。図1及び図2を参照して説明したアノード拡散層33は、以下の説明に係る拡散層の構成を有しうる。カソード拡散層34についても同様である。アルカリ隔膜型水電解セルがアノード拡散層を有する場合、そのアノード拡散層についても同様である。アルカリ隔膜型水電解セルがカソード拡散層を有する場合、そのカソード拡散層についても同様である。
【0071】
拡散層は特定の種類に限定されない。拡散層は、例えば、ニッケル、チタン、プラチナ、炭素等を含む。この構成によれば、水電解セルの過電圧の増加が低減されうる。なお、この文脈において、ニッケル等は、単体であってもよく、化合物であってもよい。
【0072】
[電解液]
以下、電解液について説明する。図2を参照して説明した水電解装置4は、以下の説明に係る電解液を有しうる。図4を参照して説明した水電解装置6についても同様である。変形例に係るアルカリ隔膜型水電解セルを有する水電解装置についても同様である。
【0073】
水電解装置がアニオン交換膜型水電解装置又はアルカリ隔膜型水電解装置である場合、電解液として、中性水溶液又はアルカリ性水溶液が使用されうる。アルカリ性水溶液は、特定の種類に限定されない。アルカリ性水溶液は、例えば、KOH水溶液、NaOH水溶液、K2CO3水溶液、KHCO3水溶液、Na2CO3水溶液、NaHCO3水溶液等である。
【0074】
[加熱器]
水電解装置は、電解液を加熱する加熱器82を有する。加熱器82は、例えば、電気加熱器である。電気加熱器は、抵抗加熱式の加熱器であってもよく、赤外線加熱器であってもよい。また、加熱器82は、電気加熱器に限定されず、電解液を加熱可能であれば、いずれの構成であってもよい。加熱器82は、例えば、温熱を有する熱媒体と熱交換する熱交換器であってもよい。
【0075】
図2に示す水電解装置4は、第1供給流路91、第2供給流路92及び加熱器82を備える。第1供給流路91は、アノード100に電解液81を供給する。第2供給流路92は、カソード200に電解液81を供給する。図2の例では、第1供給流路91及び第2供給流路92の両方に、加熱器82が設けられている。なお、第1供給流路91及び第2供給流路92の一方のみに、加熱器82が設けられていてもよい。第1供給流路91及び第2供給流路92は、例えば、配管である。
【0076】
図4に示す水電解装置6は、第1供給流路91、第2供給流路92及び加熱器82を備える。第1供給流路91は、アノード300に電解液81を供給する。第2供給流路92は、カソード400に電解液81を供給する。図4の例では、第1供給流路91及び第2供給流路92の両方に、加熱器82が設けられている。なお、第1供給流路91及び第2供給流路92の一方のみに、加熱器82が設けられていてもよい。第1供給流路91及び第2供給流路92は、例えば、配管である。
【0077】
水電解装置4及び水電解装置6において、第1供給流路91及び第2供給流路92の一方は、省略可能である。
【0078】
第1の変形例では、第1供給流路91は存在し、一方、第2供給流路92は存在しない。第1供給流路91から供給された電解液は、アノード100又は300に供給されるとともに、カソード200又は400に供給される。例えば、第1供給流路91からカソード200又は400への電解液の供給は、アノード100又は300を介して行われる。第1供給流路91に加熱器82が設けられる。
【0079】
第2の変形例では、第1供給流路91は存在せず、一方、第2供給流路92は存在する。第2供給流路92から供給された電解液は、カソード200又は400に供給されるとともに、アノード100又は300に供給される。例えば、第2供給流路92からアノード100又は300への電解液の供給は、カソード200又は400を介して行われる。第2供給流路92に加熱器82が設けられる。
【0080】
図2の水電解装置4において、加熱器82は、ラバーヒータであってもよい。ラバーヒータは、水電解セル3に取り付けられうる。また、図4の水電解装置6において、加熱器82は、ラバーヒータであってもよい。ラバーヒータは、水電解セル5に取り付けられうる。加熱器82の他の具体例は、シーズヒーターである。
【0081】
[制御器]
図2の水電解装置4及び図4の水電解装置6は、制御器83を有する。典型例では、制御器83は、演算処理部及び記憶部を有する。記憶部には、制御を実行するためのプログラムが記憶されている。具体的には、プログラムは、加熱器82を制御するプログラム及び電圧印加器40を制御するプログラムを含む。演算処理部は、プログラムを実行する。プログラムの実行により、加熱器82及び電圧印加器40が制御される。制御器83は、例えば、マイクロコンピュータである。
【0082】
[温度調整機能]
図2の水電解装置4及び図4の水電解装置6は、電解液81の温度を調整する温度調整機能を有する。温度調整機能によれば、アニオン交換膜型水電解装置又はアルカリ隔膜型水電解装置で要求される高温条件での運転が可能となる。
【0083】
例えば、図2の水電解装置4及び図4の水電解装置6は、温度センサ95を備える。温度調整機能は、温度センサ95を用いて実現される。温度センサ95は、例えば、熱電対である。
【0084】
一具体例では、制御器83が、温度センサ95により得られる電解液81の検出温度が目標温度に追従するように加熱器82が発する熱を制御する。このようにして、温度調整機能が実現されうる。図2及び図4の例では、温度センサ95は、第1供給流路91における、加熱器82よりもアノード100及び300側の位置に設けられている。ただし、温度センサ95の位置は、特に限定されない。例えば、温度センサ95は、第2供給流路92における、加熱器82よりもカソード200及び400側の位置に設けられていてもよい。
【0085】
[ニッケルの変質の低減]
電極触媒、拡散層、電解質膜等は、高温の電解液に曝露されうる。この曝露は、これらを構成する部材を化学的に変質させうる。事実、電極触媒、拡散層、電解質膜等にニッケルが含まれる場合、ニッケルは、高温の電解液に曝露された状態において、熱力学的及び速度論的に不安定でありうる。なお、この文脈において、ニッケルは、単体あるいは化合物となりうるニッケルという金属種を指す。
【0086】
図6は、ニッケルを含む触媒及び担体の変質を模式的に示す図である。図6では、触媒96を担持する担体97が、高温及びアルカリ条件に曝露される様子を模式的に示す。担体97は、ニッケル単体を含む。触媒96は、Ni-Fe LDHを含む。図6の例では、この曝露により、触媒96のNi-Fe LDH及び担体97のニッケル単体が変質している。図6において、触媒96の変質部98及び担体97の変質部99を模式的に示す。触媒96のNi-Fe LDHの変質は、比活性を低下させうる。担体97のニッケル単体の変質は、導電性を低下させうる。
【0087】
図7は、ニッケルのプールベ図である。具体的には、図7の左の部分(a)は、25℃におけるニッケルのプールベ図である。図7の右の部分(b)は、100℃におけるニッケルのプールベ図である。非特許文献1にも、ニッケルのプールベ図が記載されている。ニッケルのプールベ図は、ニッケルが電解液に曝露されると熱力学的に不安定となることを表している。具体的には、ニッケルは、電解液に曝露されると、β-Ni(OH)2に変質しうる。しかし、本発明者らの検討によれば、ニッケルに適切な電圧を印加することにより、ニッケルの不安定性を低減し、ニッケルの変質を低減することが可能である。このこともまた、ニッケルのプールベ図により理解されうる。
【0088】
具体的には、図7から理解されるように、ニッケルに電圧を印加することにより、ニッケルを、β-Ni(OH)2として存在させるのではなく、ガンマフェイズ(“gamma” phase)で存在させることができる。このようにすることにより、水電解セルの電解効率の悪化を低減できる。
【0089】
なお、水電解を生じさせるための理論電圧は、1.23Vである。水電解を生じさせる電圧を印加している状態であれば、水電解セルの電解効率の悪化を低減するに足りる電圧がニッケルに印加される。
【0090】
詳細については今後の検討を待つ必要があるが、ニッケルの変質及びその低減は、プールベ図が表す熱力学的な作用とともに、速度論的な作用に基づいたものである可能性がある。以下、この点について、図8を参照して説明する。図8は、ニッケルが安定である領域とニッケルが変質し易い領域とを模式的に示す図である。
【0091】
図8において、縦軸は温度であり、下側が低温側で上側が高温側である。図8において、3つの領域R1は、ニッケルが安定である領域である。3つの領域R2は、ニッケルが変質し易い領域である。図8の左の列に属する領域R1及び領域R2は、速度論的には、ニッケルは、低温では安定しており、高温では変質し易いことを表している。右の列に属する2つの領域R2は、熱力学論的には、ニッケルに電圧が印加されていない状態では、ニッケルは、低温でも高温でも変質し易いことを表している。中の列に属する領域R1及び領域R2は、熱力学論的には、ニッケルに電圧が印加されている状態では、ニッケルは、低温でも高温でも安定していることを表している。
【0092】
ニッケルの昇温及びニッケルへの印加電圧の調整により、ニッケルに関する状況を第1状況から第2状況に変化させることを考える。第1状況は、ニッケルに電圧が印加されず、ニッケルが低温に曝露されるという状況である。第2状況は、ニッケルに電圧が印加され、ニッケルが高温に曝露されるという状況である。ただし、ニッケルへの電圧の印加は、ニッケルが高温になってから開始されるものとする。その場合、ニッケルの状況は、矢印X1により示されているように点Aから点Bに遷移し、その後、矢印X2により示されているように点Bから点Cに遷移する。点A及び点Cは、ニッケルが安定である領域R1に属する。一方、点Bは、ニッケルが変質し易い領域R2に属する。つまり、ニッケルの状況は、ニッケルが変質し易い領域R2を経由して遷移している。このことから、ニッケルが高温になってからニッケルへの電圧の印加が開始されると、ニッケルが変質し易いと考えられる。
【0093】
ニッケルの昇温及びニッケルへの印加電圧の調整により、ニッケルに関する状況を第3状況から第4状況に変化させることを考える。第3状況は、ニッケルに電圧が印加されず、ニッケルが低温に曝露されるという状況である。第4状況は、ニッケルに電圧が印加され、ニッケルが高温に曝露されるという状況である。ただし、ニッケルへの電圧の印加は、ニッケルが低温であるときに開始されるものとする。その場合、ニッケルの状況は、矢印Yにより示されているように、点Dから点Eに遷移する。点D及び点Eは、ニッケルが安定である領域R1に属する。つまり、ニッケルの状況は、ニッケルが変質し易い領域R2を経由せずに遷移している。このことから、ニッケルが低温であるときにニッケルへの電圧の印加が開始されると、ニッケルの変質を低減し易いと考えられる。
【0094】
水電解装置4及び水電解装置6に関する上記説明から理解されるように、本実施形態において、水電解装置は、以下のように説明されうる。
【0095】
水電解装置は、電気化学セル、電解液81、加熱器82、電圧印加器40及び制御器83を備える。加熱器82は、電解液81を加熱する。電圧印加器40は、電気化学セルのアノード及びカソード間に電圧を印加する。
【0096】
電気化学セルは、ニッケルを含む。この文脈において、ニッケルは、ニッケルの単体であってもよく、ニッケルの化合物であってもよい。
【0097】
例えば、電気化学セルのアノード触媒及びカソード触媒の少なくとも一方に、層状複水酸化物が含まれている。層状複水酸化物にニッケルが含まれている。一例では、電気化学セルのアノード触媒及びカソード触媒の両方に、層状複水酸化物が含まれている。別例では、電気化学セルのアノード触媒及びカソード触媒のうちアノード触媒のみに、層状複水酸化物が含まれている。さらなる別例では、電気化学セルのアノード触媒及びカソード触媒のうちカソード触媒のみに、層状複水酸化物が含まれている。この文脈において、アノード触媒は、電気化学セルのアノードの触媒層に含まれた触媒である。カソード触媒は、電気化学セルのカソードの触媒層に含まれた触媒である。
【0098】
また例えば、電気化学セルのアノード触媒を担持する担体及びカソード触媒を担持する担体の少なくとも一方に、ニッケルが含まれている。一例では、電気化学セルのアノード触媒の担体及びカソード触媒の担体の両方に、ニッケルが含まれている。別例では、電気化学セルのアノード触媒の担体及びカソード触媒の担体のうちアノード触媒の担体のみに、ニッケルが含まれている。さらなる別例では、電気化学セルのアノード触媒の担体及びカソード触媒の担体のうちカソード触媒の担体のみに、ニッケルが含まれている。この文脈において、ニッケルは、ニッケル粒子であってもよく、多孔質ニッケルであってもよい。多孔質ニッケルの具体例は、ニッケルフォーム(発泡体)である。
【0099】
また例えば、電気化学セルのアノード拡散層及びカソード拡散層の少なくとも一方に、ニッケルが含まれている。一例では、電気化学セルのアノード拡散層及びカソード拡散層の両方に、ニッケルが含まれている。別例では、電気化学セルのアノード拡散層及びカソード拡散層のうちアノード拡散層のみに、ニッケルが含まれている。さらなる別例では、電気化学セルのアノード拡散層及びカソード拡散層のうちカソード拡散層のみに、ニッケルが含まれている。
【0100】
水電解装置は、第1の構成及び第2の構成を有する。
【0101】
第1の構成は、起動時に、制御器83は、加熱器82の加熱により電解液を昇温させるという構成である。
【0102】
第2の構成は、起動時に、制御器83は、電解液の温度が所定の閾値未満であるときに、電圧印加器40に電圧の印加を開始させるという構成である。この文脈において、電圧は、詳細には、アノード及びカソードの間に印加される。ここで、電解液の温度は、典型的にはアノードに供給される直前の位置にある電解液の温度、又は、カソードに供給される直前の位置にある電解液の温度である。
【0103】
第1の例に係る第2の構成は、制御器83は、温度センサ95による電解液の検出温度が開始温度に達したときに、電圧印加器40に電圧の印加を開始させるという構成である。ここで、開始温度は、所定の閾値未満の温度である。
【0104】
第2の例に係る第2の構成は、制御器83は、電解液の温度が所定の閾値未満であるときに電圧印加器40に電圧の印加を開始させるように、予め定められた所定のタイミングで電圧印加器40に電圧の印加を開始させるという構成である。第2の例の所定のタイミングは、第1の構成に係る電解液の昇温の態様を考慮して設定されうる。第2の例の一具体例では、制御器83は、タイマを用いて電解液の昇温開始又は加熱器82の加熱開始からの時間をカウントし、カウントした時間が所定の時間に達したときに、電圧印加器40に電圧の印加を開始させる。タイマは、マイクロコンピュータに内蔵のソフトウェアタイマであってもよく、ハードウェアタイマであってもよい。
【0105】
第1の例によれば、温度センサ95を用いることによって電解液の昇温の程度を直接的に把握した上で、電圧印加器40に電圧の印加を開始させるタイミングを決定できる。第2の例によれば、電解液の昇温の程度を間接的に把握した上で、電圧印加器40に電圧の印加を開始させるタイミングを決定できる。なお、第1の例及び第2の例から理解されるように、「閾値」は、制御の切り替えをもたらす値に限定解釈されるべきではない。
【0106】
第2の構成に関し、さらに説明する。
【0107】
電圧印加開始のタイミングは、電解液の温度が所定の温度未満であるときであれば、任意でよい。例えば、このタイミングは、加熱器82の加熱開始前であってもよく、加熱開始と同時であってもよく、加熱開始後であってもよい。いずれの場合であっても、第2の構成は満たされうる。
【0108】
印加する電圧は、電気化学セルに含まれる、ニッケルの変質の程度が低減される電圧値以上でありうる。印加する電圧がこのレベルである場合、第2の構成は満たされうる。ニッケルの変質は、例えば、水酸化物の生成である。
【0109】
電気化学セルに含まれる、ニッケルの変質の程度が低減される電圧値は、例えば、実験により定められうる。
【0110】
印加する電圧は、例えば、電気化学セルに含まれるニッケルに関するプールベ図において、電位が水酸化物の存在領域に対応する電位よりも高電位となるように、設定されうる。図7の例では、印加する電圧は、同プールベ図において、電位がガンマフェイズ(“gamma” phase)の存在領域に対応する電位となるように、設定されうる。なお、図7のプールベ図は、印加する電圧を設定するのに用いるプールベ図の一例に過ぎない。例えば、ニッケルに関するプールベ図とともに、又はニッケルに関するプールベ図に代えて、ニッケルを含むLDHのプールベ図を利用することも可能である。この場合、「ニッケルに関するプールベ図」を「ニッケルに関するプールベ図及びニッケルを含むLDHのプールベ図」又は「ニッケルを含むLDHのプールベ図」に読み替えられる。印加する電圧の数値例は、0.54V以上である。0.54Vは、図7の部分(b)のプールベ図から読み取れる電圧値である。
【0111】
電圧印加器40が印加する電圧の変化のさせ方の例について、説明する。印加電圧は、ステップ状に上げられてもよい。また、同印加電圧は、なだらかに上げられてもいい。ここで、印加電圧がなだらかに上げられるとは、印加電圧が非ゼロの長さの期間をかけて上げられることをいう。
【0112】
一具体例では、電解液の温度が開始温度に達したときに、電圧印加器40による電圧の印加が開始され、その後、段階的に上げられる。ここで、開始温度は、所定の閾値未満の温度である。この構成によれば、電解液の温度が開始温度に達する前の、水電解運転に寄与しない電力消費を低減することができる。なお、電圧印加器40による電圧の印加が開始されるタイミングは、電解液の温度が、所定の閾値未満の温度であるときであれば、任意のタイミングで構わない。例えば加熱器82により電解液の加熱が開始された後であっても構わないし、開始される前であっても構わない。
【0113】
典型例では、制御器83は、電圧印加器40の電圧を指令電圧に制御する。このようにすれば、電流を指令電流に制御する場合に比べ、水電解セルに印加される電圧が不安定になり難い。このことは、水電解セルに過度に大きな電圧が印加されて水電解セルに不具合が生じることを避ける観点から有利である。具体的には、制御器83は、指令電圧を生成する。そして、制御器83は、指令電圧に電圧印加器40の電圧を追従させる。より具体的には、制御器83は、制御周期毎に、指令電圧を更新する。制御器83は、逐次更新された指令電圧に、電圧印加器40の電圧を追従させる。水電解運転において、指令電圧は、定格電圧に設定される。
【0114】
第1の構成及び第2の構成は、電気化学セルに含まれたニッケルの変質を低減しうる。これにより、水電解装置の性能の低下が低減されうる。従来に比べてニッケルの変質が低減されている場合は、この文脈における「ニッケルの変質を低減」に該当しうる。また、第1の構成及び第2の構成を有さない形態に比べてニッケルの変質が低減されている場合は、この文脈における「ニッケルの変質を低減」に該当しうる。
【0115】
典型例では、所定の閾値は、電解液の昇温における目標温度よりも低い。目標温度は、例えば、60℃以上100℃以下の温度である。一数値例では、目標温度は80℃である。このとき、所定の閾値は、80℃よりも低い温度である。具体的には、所定の閾値は、60℃以下の温度であってもよく、40℃以下の温度であってもよい。また、一数値例では、所定の閾値は、電解液の凝固点以上の温度である。
【0116】
水電解装置は、切替器84を備えていてもよい。切替器84は、電気化学セルに供給する電解液を、中性電解液とアルカリ性電解液とで切り替える。制御器83は、電気化学セルに供給される電解液が、電圧印加器40に電圧を印加する前において、中性電解液に、電圧印加器40に電圧を印加した後にアルカリ性電解液になるよう、切替器84に切り替えさせる。この構成によれば、電圧印加器40に電圧を印加する前において、ニッケルの変質を低減できる。電圧印加器40に電圧を印加した後において、アルカリ水電解を実施できる。具体的には、制御器83のプログラムは、切替器84を制御するプログラムを含みうる。制御器83の演算処理部によりプログラムが実行されることにより、切替器84が制御されうる。なお、具体的には、上記の文脈において、「電圧を印加する前」は「電圧の印加を開始する前」であり、「電圧を印加した後」は「電圧の印加を開始した後」である。
【0117】
上記の構成において、電解液を切り替えるタイミングは、電圧印加器40の電圧印加時でなくてもよい。電圧印加と同時にアルカリ性電解液に切り替えてもよく、電圧印加前にアルカリ性電解液に切り替えてもよく、電圧印加後にアルカリ性電解液に切り替えてもよい。なお、具体的には、上記の文脈において、「電圧印加と同時」は「電圧印加の開始と同時」であり、「電圧印加前」は「電圧印加開始前」であり、「電圧印加後」は「電圧印加開始後」である。
【0118】
図9は、一例に係る切替器84を示す模式図である。図9に示す切替器84は、第1容器85、第2容器86、第1流路87、第2流路88及び切替バルブ89を有する。第1容器85には、中性電解液が蓄えられている。第2容器86には、アルカリ性電解液が蓄えられている。第1容器85は、第1流路87を介して切替バルブ89に接続されている。第2容器86は、第2流路88を介して切替バルブ89に接続されている。換言すると、切替バルブ89は、第1流路87及び第2流路88の合流点に設けられている。
【0119】
切替バルブ89は、第1流路87及び第2流路88のいずれか一方を、選択的に第1供給流路91及び第2供給流路92に導通させる。このようにして、切替バルブ89は、中性電解液及びアルカリ性電解液のいずれか一方を、選択的に第1供給流路91及び第2供給流路92に流す。
【0120】
切替器84は、図2に示す水電解装置4及び図4に示す水電解装置6に適用可能である。図9の例では、切替器84は、第1供給流路91及び第2供給流路92の両方に接続されている。ただし、切替器84は、第1供給流路91及び第2供給流路92の一方のみに接続されていてもよい。
【0121】
一例では、電解液が、少なくとも水電解運転時に中性である。この構成によれば、ニッケルの変質を低減し易い。
【0122】
別例では、電解液が、少なくとも水電解運転時にアルカリ性である。この構成によれば、アルカリ水電解を実施できる。
【0123】
また、本開示は、水電解装置の起動時に、加熱器82の加熱により電解液を昇温させ、かつ電解液の温度が所定の閾値未満であるときに、電圧印加器40に電圧の印加を開始させる、水電解装置の制御方法を提供する。
【0124】
図10は、一具体例に係る制御方法を示すフローチャートである。このフローチャートに係る制御方法は、図2の水電解装置4及び図4の水電解装置6の両方に適用されうる。このフローチャートに係る制御の各工程は、制御器83によって実行されうる。
【0125】
ステップS1において、水電解装置への電解液の供給が開始される。具体的に、この供給は、図2及び図4に示す第1供給流路91及び第2供給流路92の少なくとも一方を介してなされうる。
【0126】
ステップS2において、加熱器82による、電解液の加熱が開始される。これにより、電解液の昇温が開始される。
【0127】
ステップS3において、温度センサ95の検出値が開始温度以上か否かが判定される。温度センサ95の検出値が開始温度未満である場合、ステップS3が再度実行される。温度センサ95の検出値が開始温度以上である場合、ステップS4に進む。開始温度は、所定の閾値未満の温度である。
【0128】
ステップS4において、電圧印加器40による、水電解セルのアノード及びカソード間への電圧の印加が開始される。
【0129】
ステップS1からステップS4の運転は、水電解装置の起動に対応する。ステップS4における電圧の印加の開始後、電気化学セルに印加される電流は増加していき、目標電流に達する。こうして、ステップS5の水電解運転が実行されるに至る。
【0130】
なお、図10に示すフローチャートに、種々の改変を適用できる。例えば、ステップS3のように温度センサ95の検出値に基づいて電圧印加の開始のタイミングを決定することは、必須ではない。例えば、上述のように、タイマを用いてこのタイミングを決定してもよい。
【実験例】
【0131】
以下、実験例により本開示をさらに詳細に説明する。なお、以下の実験例は本開示の一例であり、本開示は以下の実験例に限定されない。
【0132】
(実験例A1)
(Ni-Fe LDH及びNi粒子を含む混合物の作製)
Ni-Fe LDH及びNi粒子を含む混合物を以下のようにして作製した。まず、水及びエタノールの混合溶媒を作製した。水及びエタノールの体積比率は、2:3であった。使用したエタノールは、富士フィルム和光純薬社製の試薬特級品であった。この混合溶媒に、塩化ニッケル六水和物及び塩化鉄六水和物を、Niイオン及びFeイオンの合計濃度が1.0Mになるように、かつ、Niイオン及びFeイオンの総物質量に対するFeイオンの物質量の比率が0.33になるように溶解させた。使用した塩化ニッケル六水和物及び塩化鉄六水和物は、富士フィルム和光純薬社製であった。なお、「M」は、mol/dm3を意味する。さらに、得られた溶液に、キレート剤としてアセチルアセトン(ACAC)を、Niイオン及びFeイオンの総物質量の3分の1の物質量になるように添加し、添加後に溶液を攪拌した。この溶液に含まれているNiとFeが全て理想的に反応した場合に生成するNi-Fe LDHの質量に対して、2.5倍量の質量のNi粒子を溶液に加えた。使用したNi粒子は、US Research Nanomaterials, Inc.製の粒径20nmのNi粒子であった。次に、この溶液に対して、pH上昇剤としてプロピレンオキサイド(POX)を、溶液中の塩化物イオンの物質量の2倍量となるように添加し、攪拌した。このとき、POXは、溶液中の水素イオンを徐々に捕捉するので、溶液のpHは徐々に上昇する。その後、24時間反応させた後、Ni-Fe LDH及びNi粒子の混合物をサンプルとして回収した。
【0133】
(アノード電極触媒層の作製)
Ni-Fe LDH及びNi粒子の混合物に対して、体積比率1:1の水及びエタノールの混合溶媒を加えた。得られた溶液を高速撹拌機によって微細化処理した後、20wt%のNafionを、混合物に対してNafionが0.1倍の質量となるように添加し、再度微細化処理を行った。使用したNafionは、ケマーズ製であった。得られたアノード電極触媒インクをカーボンペーパーにスプレー塗工することでアノード電極触媒層を作製した。なお、この際Ni-Fe LDHの塗布量が1.2mg/cm2となるように調整した。使用したカーボンペーパーは、東レ株式会社製であった。
【0134】
(カソード電極触媒層の作製)
白金担持炭素(Pt/C)に対して、水及びエタノールの順に体積比率1:1となるように加えた。使用したPt/Cは、田中貴金属工業株式会社製であった。得られた溶液を高速撹拌機によって微細化処理した後、20wt%のNafionを、Ptに対してNafionが0.6倍の質量となるように添加し、再度微細化処理した。使用したNafionは、ケマーズ製であった。得られたカソード電極触媒インクをカーボンペーパーにスプレー塗工することでカソード電極触媒層を作製した。なお、この際Ptの塗布量が1.0mg/cm2となるように調整した。使用したカーボンペーパーは、東レ株式会社製であった。
【0135】
(水電解セルの作製)
上記で作製したアノード電極触媒層及びカソード電極触媒層と、電解質膜と、を用いて、サンドイッチ構造の膜電極接合体(MEA)を作製した。使用した電解質膜は、タカハタプレシジョンジャパン株式会社製のQPAF-4であった。この膜電極接合体を備える水電解セルを作製し、この水電解セルを備える水電解装置を作製した。その後、温度80℃で1.0MのKOH水溶液に膜電極接合体を浸漬させた状態で、膜電極接合体に電流密度1.0A/cm2nの電流を印加する運転を60時間行った。この運転を行った後の水電解セルを水電解評価用セルとして用いた。
【0136】
なお、実験例A1では、水電解装置において、電解実験を行うために必要となる機器及び部材が適宜設けられている。例えば、上記のMEAの他、リーク防止用のガスケット、サーペンタイン状の流路が設けられたセパレータ、給電板、絶縁板、及び、溶液の供給口及び排出口が設けられた固定冶具等が、MEAの周辺に設けられている。この点は、実験例B1についても同様である。以上のMEAの構成、及び、水電解装置の構成は例示であって、本例に限定されない。
【0137】
(実験例B1)
実験例A1と同様にして、アノード電極触媒層及びカソード電極触媒層を作製した。アノード電極触媒層を、温度80℃で1.0MのKOH水溶液に60時間浸漬させた。その後、浸漬を経たアノード電極触媒層と、そのような浸漬を経ていないカソード電極触媒層と、電解質膜と、を用いて、サンドイッチ構造の膜電極接合体(MEA)を作製した。使用した電解質膜は、タカハタプレシジョンジャパン株式会社製のQPAF-4であった。この膜電極接合体を備える水電解セルを作製し、この水電解セルを備える水電解装置を作製した。実験例B1では、この水電解セルを水電解評価用セルとして用いた。
【0138】
(実験例C1)
実験例A1と同様にして、アノード電極触媒層及びカソード電極触媒層を作製した。アノード電極触媒層と、カソード電極触媒層と、電解質膜と、を用いて、サンドイッチ構造の膜電極接合体(MEA)を作製した。使用した電解質膜は、タカハタプレシジョンジャパン株式会社製のQPAF-4であった。この膜電極接合体を備える水電解セルを作製し、この水電解セルを備える水電解装置を作製した。実験例C1では、この水電解セルを水電解評価用セルとして用いた。
【0139】
(水電解セルの評価)
以下のようにして、実験例A1、実験例B1及び実験例C1に係る水電解評価用セルの電解効率を測定した。水電解装置の固定治具の下部からアルカリ水溶液を供給し上部から排出することで、水電解装置の系内にアルカリ水溶液を循環させ、系内をアルカリ雰囲気にした。アルカリ水溶液が1.0MのKOH水溶液であり、アルカリ水溶液の温度が80℃であり、かつ、膜電極接合体に電流密度1.0A/cm2の電流が印加されているときの、膜電極接合体に印加されている電圧を測定した。得られた測定値で水電解の理論電圧を除することにより、電解効率を算出した。水電解の理論電圧は1.23Vである。
【0140】
なお、上記の説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その動作条件、組成、構造及び/又は機能を実質的に変更できる。
【0141】
【表1】
【0142】
表1は、実験例A1、実験例B1及び実験例C1における水電解評価用セルの電解効率の測定結果を示す。表1では、電解効率の測定の前に膜電極接合体に対して電圧が印加されたか否かも示している。電解効率の測定の前に電圧の印加もアルカリ条件への曝露もなされていない実験例C1については、電圧印加の項目を「-」と表記している。
【0143】
実験例A1においても実験例B1においても、電解効率の測定の前に、アノード電極触媒層は、60時間にわたり80℃のアルカリ条件に曝露されている。ただし、この曝露の際、実験例A1ではアノード電極触媒層への電圧の印加が実行され、一方、実験例B1ではこの電圧の印加はなされていない。実験例A1では、初期状態に対応する実験例C1からの電解効率の低下幅が77.5%-76.8%=0.7%で小さく、一方、実験例B1では、同低下幅が77.5%-67.9%=7.6%で大きい。実験例B1では電解効率の低下幅が大きいという結果から、材料に含まれるニッケルが、高温及びアルカリ条件に曝露されることにより、化学的に変質したことが推定される。一方、実験例A1では電解効率の低下幅が小さいという結果から、電圧印加により上記の化学的変化が低減されたことが推定される。
【0144】
[Ni-Fe LDH及びNi粒子を含む混合物の浸漬実験]
(実験例A2)
実験例A1と同様に、Ni-Fe LDH及びNi粒子を含む混合物を作製した。この混合物を、温度20℃で1.0MのKOH水溶液に1100時間を浸漬させた。その後、混合物を回収し、実験例A2の試験用サンプルとした。なお、KOH水溶液では、1.0MはpH14に対応する。
【0145】
(実験例A3)
KOH水溶液の濃度を1.0Mから0.1Mに変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。なお、KOH水溶液では、0.1MはpH13に対応する。
【0146】
(実験例A4)
20℃のKOH水溶液を20℃の水に変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。なお、水は、詳細には、純水であり、pH7である。
【0147】
(実験例A5)
KOH水溶液の温度を20℃から40℃に変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。
【0148】
(実験例A6)
KOH水溶液の濃度を1.0Mから0.1Mに変更し、KOH水溶液の温度を20℃から40℃に変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。
【0149】
(実験例A7)
20℃のKOH水溶液を40℃の水に変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。
【0150】
(実験例B2)
KOH水溶液の温度を20℃から60℃に変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。
【0151】
(実験例B3)
KOH水溶液の温度を20℃から80℃に変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。
【0152】
(実験例B4)
KOH水溶液の濃度を1.0Mから0.1Mに変更し、KOH水溶液の温度を20℃から60℃に変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。
【0153】
(実験例B5)
KOH水溶液の濃度を1.0Mから0.1Mに変更し、KOH水溶液の温度を20℃から80℃に変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。
【0154】
(実験例B6)
20℃のKOH水溶液を60℃の水に変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。
【0155】
(実験例B7)
20℃のKOH水溶液を80℃の水に変更した。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。
【0156】
(実験例C2)
KOH水溶液への浸漬を行わなかった。この点を除き、実験例A2と同様にして、試験用サンプルを得た。つまり、実験例C2では、浸漬前の混合物を、試験用サンプルとした。
【0157】
(XRD測定を用いたサンプルの評価)
X線回折装置を用いて、電圧45kV、電流40mA、CuKα線、測定範囲5°から70°の測定条件で、サンプルの結晶相をX線回折測定により評価した。使用したX線回折装置は、PANalytical社製のX’Pert PROであった。この測定により、実験例A2から実験例A7、実験例B2から実験例B7及び実験例C2のXRDプロファイルを得た。また、XRD測定の結果から、回折ピーク43.32°のNiOの積分強度と、回折ピーク19.50°のβ-Ni(OH)2の積分強度と、回折ピーク11.13°のLDHの積分強度と、回折ピーク45.57°のNiの積分強度と、を特定した。NiOの積分強度に対するβ-Ni(OH)2の積分強度の比率であるβ-Ni(OH)2/NiO積分比を特定した。NiOの積分強度に対するLDHの積分強度の比率であるLDH/NiO積分比を特定した。NiOの積分強度に対するNiの積分強度の比率であるNi/NiO積分比を特定した。以下では、上記各積分比を、XRD積分比と称することがある。実験例A2から実験例A7及び実験例B2から実験例B7の各XRD積分比を、表2に示す。
【0158】
実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3では、KOH水溶液の濃度が、1.0Mである。実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3では、KOH水溶液の温度が、それぞれ、20℃、40℃、60℃及び80℃である。図11は、実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3の各XRD積分比を示すグラフである。図11において、横軸は、KOH水溶液の温度である。縦軸は、XRD積分比である。図11及び表2から理解されるように、20℃及び40℃では、β-Ni(OH)2の生成量は微量である。一方、60℃及び80℃では、β-Ni(OH)2の生成は顕著に増加し、LDH及びNiは減少している。このことから、60℃及び80℃では、LDH又はNiがβ-Ni(OH)2に変化したことが推察される。また、40℃がβ-Ni(OH)の生成が抑制されるKOH水溶液の温度の上限値であると推察される。
【0159】
実験例A3、実験例A6、実験例B4及び実験例B5では、KOH水溶液の濃度が、0.1Mである。実験例A3、実験例A6、実験例B4及び実験例B5では、KOH水溶液の温度が、それぞれ、20℃、40℃、60℃及び80℃である。図12は、実験例A3、実験例A6、実験例B4及び実験例B5の各XRD積分比を示すグラフである。図12において、横軸は、KOH水溶液の温度である。縦軸は、XRD積分比である。実験例A3、実験例A6、実験例B4及び実験例B5からも、実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3からの推察と同様のことが推察される。
【0160】
実験例A4、実験例A7、実験例B6及び実験例B7では、KOH水溶液に変えて水が用いられている。実験例A4、実験例A7、実験例B6及び実験例B7では、水の温度が、それぞれ、20℃、40℃、60℃及び80℃である。図13は、実験例A4、実験例A7、実験例B6及び実験例B7の各XRD積分比を示すグラフである。図13において、横軸は、水の温度である。縦軸は、XRD積分比である。実験例A4、実験例A7、実験例B6及び実験例B7からも、実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3からの推察と同様のことが推察される。
【0161】
実験例A2から実験例A7及び実験例B2から実験例B7から、中pH条件から高pH条件においては、室温から40℃ではニッケルが速度論的に安定であるが、高温では速やかに変質することが推察される。ニッケルが40℃を超える条件に曝露される場合、ニッケルに電圧を印加することが、ニッケルの変質を低減することに有効であると考えられる。
【0162】
図14は、実験例C2、実験例A2及び実験例B3で得たサンプルのXRDスペクトルの一例を示す図である。実験例A2のXRDスペクトルは、実験例C2のXRDスペクトルとあまり差がない。一方、実験例B3のXRDスペクトルでは、実験例C2のXRDスペクトルに比べ、例えば回折ピーク19.50°のβ-Ni(OH)2に由来するピークが顕著に現れている。
【0163】
【表2】
【0164】
(RDE測定を用いたサンプル評価)
上述のように、実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3では、KOH水溶液の濃度が、1.0Mである。実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3では、KOH水溶液の温度が、それぞれ、20℃、40℃、60℃及び80℃である。また、実験例C2では、混合物の浸漬が省略されている。実験例A2、実験例A5、実験例B2、実験例B3及び実験例C2で得られたサンプルの過電圧を以下のRDE(Rotating Disk Electrode)測定により測定した。
【0165】
すなわち、1.0mLの水とエタノールの混合溶液を準備した。この混合溶液では、水及びエタノールの体積比は、2:8であった。実験例A2、実験例A5、実験例B2、実験例B3及び実験例C2で得た32mgの各サンプルに対して、この混合溶液を加えて、超音波によって微細化処理を行った。得られたインクを5μL測りとり、回転ディスク電極に滴下して、室温にて乾燥させた。その後、5wt%Nafion溶液をエタノール溶液で10倍に希釈することによって得た0.5wt%Nafion溶液を5μL滴下し乾燥させることでアノード電極を調製した。使用したNafionは、ケマーズ製であった。各アノード電極を用いた場合の、水電解セルのアノード反応(酸素発生反応)由来の電流を測定した。電流の測定は、ポテンショスタット及び回転ディスク電極(RDE)を用いて行った。使用したポテンショスタットは、Princeton Applied Research社製のVersaSTAT4であった。使用した回転ディスク電極は、Pine Research社製の電極モデル番号AFE3T050GCであった。電流の測定条件は、以下の通りである。
・溶液:1.0M KOH溶液
・電位:1.1Vから1.65V(vs.可逆水素電極(RHE))
・電位掃引速度:10mV/sec
・電極回転速度:1500rpm
【0166】
RDE測定から得られた実験例A2、実験例A5、実験例B2、実験例B3及び実験例C2の過電圧を、表3に示す。実験例C2の過電圧と、実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3の各々の過電圧との差は、浸漬前のサンプルの過電圧と、実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3の各々の過電圧との差に対応する。表3では、この差も記載している。実験例A2及び実験例A5の結果から、サンプルを20℃又は40℃で浸漬させても、サンプルの性能はさほど低下しないことが把握される。一方、サンプルを60℃又は80℃で浸漬させると、サンプルの性能は大幅に低下することが把握される。
【0167】
【表3】
【0168】
実験例A2、実験例A5、実験例B2及び実験例B3に関して図11を参照して説明したように、浸漬の温度が高くなるほど、β-Ni(OH)2の生成量が増加する。表3から理解されるように、浸漬の温度が高くなるほど、過電圧は大きくなる。これらから、β-Ni(OH)2の生成量が増加するほど、過電圧は大きくなることが把握される。しかし、上述の通り、ニッケルに電圧を印加することにより、β-Ni(OH)2の生成を低減することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本開示の一態様は、従来よりも低い過電圧を示す触媒を用いた水電解に利用することができる。
【符号の説明】
【0170】
3、5 水電解セル
4、6 水電解装置
20 LDH
21 ホスト層
22 ゲスト層
30、32 触媒層
31 電解質膜
33、34 拡散層
40 電圧印加器
41 隔膜
50、60 空間
70 電解槽
81 電解液
82 加熱器
83 制御器
84 切替器
85、86 容器
87、88 流路
89 切替バルブ
91、92 供給流路
95 温度センサ
96 触媒
97 担体
98、99 変質部
100、300 アノード
200、400 カソード
R1、R2 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14