(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】換気材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20230609BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20230609BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20230609BHJP
E04D 13/152 20060101ALI20230609BHJP
E04D 13/15 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
E04B1/70 E
E04B1/64 C
E04B1/94 F
E04D13/152 Z
E04D13/15 301Z
(21)【出願番号】P 2019132591
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-07-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社ハウゼコ2018-2019年版カタログにて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】592114080
【氏名又は名称】株式会社ハウゼコ
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】神戸 睦史
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-008457(JP,A)
【文献】特開2006-144497(JP,A)
【文献】特開2018-044341(JP,A)
【文献】特開2009-046858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04D 13/152
E04D 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋の自然換気に用いられる換気材であって、
長尺状の金属板を折り曲げ成形したものよりなり、第1垂下部と、前記第1垂下部の下方端部から、前記第1垂下部の内方面の側において前記内方面から離れる方向に向かって斜め上方に延び、複数の通気孔が形成された通気部と、前記通気部の上方端部から、前記内方面から離れる方向に向かって水平方向に延びる水平部とを備える枠体と、
長尺状であって短手方向断面形状として略矩形形状を有し、一方面及び前記一方面に対向する他方面の各々に複数の孔が形成され、前記一方面が、前記内方面に対向するように前記水平部の上面に載置される、換気機能及び防水機能を有する防水部材と、
前記内方面に配置される第1熱膨張材とを備える、換気材。
【請求項2】
前記第1熱膨張材の前記防水部材の側の全面から前記内方面の一部にかけて、接着剤を介してアルミテープが貼り付けられる、請求項1記載の換気材。
【請求項3】
前記防水部材は、2つのコの字状部材を組み合わせたものよりなる防水ユニットを2組並べたものよりなり、
前記コの字状部材は、長尺状の金属板を短手方向断面形状として略コの字形状に折り曲げて垂直面部、上面部、及び下面部を形成し、前記垂直面部に、短手方向断面形状における解放側に起き上がる複数の切り起こし孔が、長手方向に所定間隔で形成されたものよりなり、
前記防水ユニットは、2つの前記コの字状部材を、各々の前記解放側を対向させて、各々の前記上面部同士と各々の前記下面部同士とを重ねて組み合わせた、短手方向断面形状として略矩形形状を有するものよりなり、
前記水平部への載置においては、2組の前記防水ユニットを、各々のいずれか一方の前記垂直面部同士が接して、且つ、各々の前記切り起こし孔同士の形成位置が一致した状態で並べ、前記垂直面部の他方のいずれか一方を前記内方面に対向させる、請求項1又は請求項2記載の換気材。
【請求項4】
前記内方面から離れる側の前記水平部の端部から垂下する第2垂下部が形成され、前記第2垂下部の前記通気部の側の面に第2熱膨張材が配置される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の換気材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は換気材に関し、特に家屋の自然換気に用いられる換気材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋の自然換気に用いられる換気材として、特許文献1に示すものが存在している。
【0003】
図12は、従来の軒先換気構造体の軒先部分への取付状態を示す概略端面図である。
【0004】
図12を参照して、軒先換気構造体100は、長尺状の鋼板をプレス加工したものによって形成された軒先部材101と、軒先部材101内に取付けられた換気部材102とから構成されている。
【0005】
軒先部材101は、下方に延びる第1垂直部103と、第1垂直部103の下方端部より鼻隠し110の外面側に向かって斜め上方に延びる底面部104と、底面部104の上方端部より鼻隠し110の外面に当接するように延びる鍔部105とから構成されている。第1垂直部103において換気部材102が取付けられる面より下方側の部分には、長手方向に所定間隔で複数の開口106が、切り起こしによって形成されている。鍔部105の上面には、幅方向の断面が矩形形状を有すると共に長手方向に延びる棒形状に形成された、ゴム発泡体等よりなるシール部材107が接着等により取付けられている。
【0006】
換気部材102は、各々が凹凸断面形状を有する合成樹脂シートを複数枚積層して熱融着により一体化させたものよりなり、幅方向の断面が矩形形状を有し、長手方向に対しては軒先部材101の長手方向の長さとほぼ同一長さを有する棒形状を有し、下方の面から上方の面へ貫通する通気孔108が多数形成されている。
【0007】
このような軒先換気構造体100においては、通気状態にあっては、開口106の各々から侵入した外気は、換気部材102の通気孔108を介して上方側に通過し、鼻隠し110の上方側を抜けて小屋裏側へと移動する。
【0008】
又、開口106の各々を介して侵入した雨水は、換気部材102の通気孔108を介しては上方側に移動することが出来ず、底面部104に形成された水抜き孔109を介して外方に排出される。即ち、換気部材102は換気機能及び防水機能を発揮する。
【0009】
更に、火災時においては、シール部材107が熱で溶けて軒先部材101と鼻隠し110との接着状態が保たれなくなっても、鍔部105により軒先部材101と鼻隠し110との隙間が覆われて外気が不用意に小屋裏内に侵入しにくいため、火災の被害の拡大が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に示す上述のような軒先換気構造体は、火災時に、鍔部によって鼻隠しに沿っての外気の侵入は抑えられるものの、開口及び通気孔を介しての外気の侵入は防げず、小屋裏内へ外気が入り込むものとなっていた。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、より優れた換気機能、防水機能及び防火機能を発揮する換気材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、家屋の自然換気に用いられる換気材であって、長尺状の金属板を折り曲げ成形したものよりなり、第1垂下部と、第1垂下部の下方端部から、第1垂下部の内方面の側において内方面から離れる方向に向かって斜め上方に延び、複数の通気孔が形成された通気部と、通気部の上方端部から、内方面から離れる方向に向かって水平方向に延びる水平部とを備える枠体と、長尺状であって短手方向断面形状として略矩形形状を有し、一方面及び一方面に対向する他方面の各々に複数の孔が形成され、一方面が、内方面に対向するように水平部の上面に載置される、換気機能及び防水機能を有する防水部材と、内方面に配置される第1熱膨張材とを備えるものである。
【0014】
このように構成すると、火災時には第1熱膨張材が膨張して、通気経路を塞ぐ。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、第1熱膨張材の防水部材の側の全面から内方面の一部にかけて、接着剤を介してアルミテープが貼り付けられるものである。
【0016】
このように構成すると、火災時に、熱により接着剤が剥がれて落下したアルミテープが通気孔を覆う。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、防水部材は、2つのコの字状部材を組み合わせたものよりなる防水ユニットを2組並べたものよりなり、コの字状部材は、長尺状の金属板を短手方向断面形状として略コの字形状に折り曲げて垂直面部、上面部、及び下面部を形成し、垂直面部に、短手方向断面形状における解放側に起き上がる複数の切り起こし孔が、長手方向に所定間隔で形成されたものよりなり、防水ユニットは、2つのコの字状部材を、各々の解放側を対向させて、各々の上面部同士と各々の下面部同士とを重ねて組み合わせた、短手方向断面形状として略矩形形状を有するものよりなり、水平部への載置においては、2組の防水ユニットを、各々のいずれか一方の垂直面部同士が接して、且つ、各々の切り起こし孔同士の形成位置が一致した状態で並べ、垂直面部の他方のいずれか一方を内方面に対向させるものである。
【0018】
このように構成すると、水を遮断する箇所が増える。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、内方面から離れる側の水平部の端部から垂下する第2垂下部が形成され、第2垂下部の通気部の側の面に第2熱膨張材が配置されるものである。
【0020】
このように構成すると、火災時には第2熱膨張材が膨張して、外壁と換気材との間の空間及び通気孔を塞ぐ。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、火災時には第1熱膨張材が膨張して、通気経路を塞ぐので、平時は換気機能及び防水機能を有し、火災時には防火機能を発揮する。
【0022】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、火災時に、熱により接着剤が剥がれて落下したアルミテープが通気孔を覆うので、第1熱膨張材が通気孔から垂れ落ちにくくなる。
【0023】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、水を遮断する箇所が増えるので、防水機能が向上する。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、火災時には第2熱膨張材が膨張して、外壁と換気材との間の空間及び通気孔を塞ぐので、防火機能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による換気材の外観形状を示す斜視図である。
【
図4】
図3で示したIV-IVラインの断面図である。
【
図5】
図1で示した第1コの字状部材の正面図である。
【
図6】
図5で示したVI-VIラインの端面図である。
【
図7】
図1で示した防水部材の組立工程を示す模式図である。
【
図8】
図1で示した換気材の軒先部分への取付状態を示す概略右側面図である。
【
図9】
図1で示した閉塞テープと第1熱膨張材、第2熱膨張材及び熱膨張材との各々の火災時の動きを示す模式図である。
【
図10】
図1で示した換気材のケラバ部分への取付状態を示す概略右側面図である。
【
図11】
図1で示した換気材の笠木下部分への取付状態を示す概略右側面図である。
【
図12】従来の軒先換気構造体の軒先部分への取付状態を示す概略端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、この発明の第1の実施の形態による換気材の外観形状を示す斜視図であり、
図2は、
図1で示した枠体の正面図であり、
図3は、
図1で示した枠体の背面図であり、
図4は、
図3で示したIV-IVラインの断面図であり、
図5は、
図1で示した第1コの字状部材の正面図であり、
図6は、
図5で示したVI-VIラインの端面図であり、
図7は、
図1で示した防水部材の組立工程を示す模式図であり、
図8は、
図1で示した換気材の軒先部分への取付状態を示す概略右側面図であり、
図9は、
図1で示した閉塞テープと第1熱膨張材、第2熱膨張材及び熱膨張材との各々の火災時の動きを示す模式図である。
【0027】
まず、
図1を参照して、換気材1は、枠体10と、枠体10の内側に載置された防水部材20と、枠体10の内側に配置された第1熱膨張材70とからなる。
【0028】
次に、
図2、
図3及び
図4を参照して、枠体10は、長尺状の鋼板を折り曲げ成形したものよりなり、第1垂下部11と、第1垂下部11の下方端部から、第1垂下部11の内方面12の側において内方面12から離れる方向に向かって斜め上方に延び、長手方向に7mm間隔で矩形形状の複数の通気孔13が形成された通気部14と、通気部14の上方端部から、内方面12から離れる方向に向かって水平方向に延びる水平部15と、内方面12から離れる側の水平部15の端部から垂下する第2垂下部16とを備える。このように構成したことによる効果は後述する。尚、寸法は、第1垂下部11の高さが70mmに、第1垂下部11と通気部14の上方端部との水平方向の間隔が12mmに、水平部15の短手方向長さが30mmに、第2垂下部16の高さが10mmに、通気孔13の各々が14mm×5mmに、それぞれ設定されている。
【0029】
次に、再び
図1を参照して、防水部材20は、第1コの字状部材30及び第2コの字状部材40よりなる第1防水ユニット21と、第3コの字状部材50及び第4コの字状部材60よりなる第2防水ユニット22とからなる。このように構成したことによる効果は後述する。
【0030】
次に、
図5及び
図6を参照して、第1コの字状部材30は、長尺状の金属板を短手方向断面形状として略コの字状に折り曲げて垂直面部31、上面部32、下面部33を形成し、垂直面部31に短手方向断面形状における解放側34に起き上がる複数の切り起こし孔35が、長手方向に所定間隔で形成される。垂直面部31の高さは21mmに設定されている。
【0031】
尚、再び
図1を参照して、第2コの字状部材40、第3コの字状部材50及び第4コの字状部材60の各々は、第1コの字状部材30と同様に形成されるため、ここでの説明は省略する。このように構成したことによる効果は後述する。
【0032】
防水部材20の組立にあたっては、まず
図7の(1)を参照して、第1コの字状部材30の解放側34と第2コの字状部材40の解放側44とを対向させて第1コの字状部材30と第2コの字状部材40とを図の矢印方向に動かし、
図7の(2)に示すように、上面部32と上面部42とを、下面部33と下面部43とをそれぞれ重ねて、短手方向断面形状として略矩形形状を形成するように組み合わせて第1防水ユニット21を構成する。
【0033】
このように構成すると、一定距離離れた位置に切り起こし孔35及び切り起こし孔45が配置されるため、通気経路が詰まりにくく、且つ、防水機能が向上する。
【0034】
最後に、
図7の(3)を参照して、第2防水ユニット22が、第3コの字状部材50及び第4コの字状部材60の各々によって、第1防水ユニット21の組立工程と同様の組立工程を経て構成される。その後、第1防水ユニット21と第2防水ユニット22とが、垂直面部41と垂直面部51とが接し、且つ、切り起こし孔45と切り起こし孔55との形成位置が一致した状態で並べて配置されることにより、防水部材20の組立が終了する。
【0035】
このように構成すると、一定距離離れた位置に配置される切り起こし孔35及び45に加えて切り起こし孔55及び65が配置されて配置箇所が更に増えるため、防水機能が更に向上する。
【0036】
次に、再び
図1を参照して、防水部材20の一方面に当たる垂直面部31に切り起こし孔35が、垂直面部31に対向する防水部材20の他方面に当たる垂直面部61に切り起こし孔65が、それぞれ形成された防水部材20は、垂直面部31が枠体10の内方面12に対向するように水平部15の上面に載置される。
【0037】
このように構成すると、水を遮断する箇所が増えるので、防水機能が向上する。
【0038】
次に、
図1及び
図8を参照して、長尺状の第1熱膨張材70は、通気孔13が形成されている枠体10において、通気孔13の上方に位置する内方面12に配置され、第1熱膨張材70の防水部材20の側の全面及び内方面12の一部にかけては、長尺状の閉塞テープ71が貼付されている。閉塞テープ71は、短手方向長さ25mmのシート体72と、シート体72の一方面73に塗布される接着剤74とを備え、接着剤74を介して先述の位置である、高さ10mmの第1熱膨張材70の表面及び第1熱膨張材70の配置箇所の下方の内方面12の一部にかけて貼付される。尚、閉塞テープ71の貼付位置は、剥がれ落ちたシート体72が、落下先で通気孔13を塞ぐことができる位置となっている。又、シート体72は、通気孔13の全体を覆うことができる大きさを有する。このように構成したことによる効果は後述する。更に、シート体72は、不燃性材料であるアルミニウムよりなる。このように構成すると、閉塞テープ71の作成が容易であると共に、軽量で扱い易いものとなるので、コスト的に有利となる。
【0039】
第2熱膨張材80は、第2垂下部16の通気部14の側の面に配置される。このように構成したことによる効果は後述する。
【0040】
第1垂下部11の上方端部からは、内方面12から離れて水平方向に12mm延びて屈曲して更に10mm垂下するL字型部86が形成され、第1熱膨張材70の上方において第1垂下部11とL字型部86との間に長尺状のケイカル板87が、防火性が高く熱を伝えにくい断熱材として挿入される。又、L字型部86の上面には長尺状の熱膨張材88aが、防水部材20の上面には長尺状の熱膨張材88bが、第1防水ユニット21の下面部43の上面には長尺状の熱膨張材88cが、第2防水ユニット22の下面部63の上面には長尺状の熱膨張材88dが、それぞれ配置されている。
図1の一点鎖線は熱膨張材88c及び88dと共に防水部材20を固定するビスの位置を示す。尚、第1熱膨張材70、第2熱膨張材80、熱膨張材88a~88dの各々は、150℃を超えると一旦ジェル化し、180℃以上で発泡して膨張する性質を有する。更に、熱膨張材88aの上面及び第1垂下部11の側の側面を覆うように水密材89aが、熱膨張材88bの上面に水密材89bが、それぞれ配置される。水密材89a及び89bはエチレンプロピレンジエンゴムよりなる。このように構成したことによる効果も後述する。
【0041】
次に、
図8を参照して、換気材1の軒先部分への取付に当たっては、外壁91の上端部及び垂木92の外方側端部に第2垂下部16を当接させ、第1垂下部11及びケイカル板87を貫いて下地木93に釘94を打ち付け、水密材89aの上方に屋根95を載置して、第1垂下部11と屋根95の下面との当接部分を塞ぐようにシーリング96aを、外壁91の上端部と水平部15との間に設けられた空間を第2熱膨張材80ごと塞ぐようにシーリング96bを、それぞれ施して取付ける。
【0042】
次に、
図9の(1)を参照して、図の矢印が示すように平時において外気は、換気材1の通気孔13から換気材1の内側及び防水部材20を経由して屋内に流れていく。尚、外気と共に入り込んだ雨水は、防水部材20を経由する際に切り起こし孔35、45、55、65の各々により屋内への侵入を遮断される。このように換気材1は、平時は換気機能及び防水機能を有する。
【0043】
次に、
図9の(2)を参照して、火災が発生して換気材1の周辺温度が徐々に上昇し、150℃近くになる。尚、
図8にて示した接着剤74は、第1熱膨張材70がジェル化する温度の150℃未満の温度で粘着力が弱まる性質を有する。すると、閉塞テープ71は第1熱膨張材70の表面に貼付されているから、閉塞テープ71と第1熱膨張材70とに生じる温度変化はほぼ同様なので、第1熱膨張材70がジェル化する前に閉塞テープ71のシート体72が剥がれて図の矢印が示すように落下し、通気孔13を塞ぐ。このように構成すると、温度上昇に伴い、第1熱膨張材70がジェル化する前に閉塞テープ71のシート体72が剥がれ落ちやすく、又、シート体72が通気孔13を塞ぐので、後にジェル化した第1熱膨張材70が通気孔13から垂れ落ちにくくなる。尚、仮にシート体72が剥がれ落ちる前に第1熱膨張材70がジェル化した場合でも、シート体72が第1熱膨張材70の流動を留めるので、第1熱膨張材70が通気孔13から垂れ落ちにくくなり、いずれの場合にも第1熱膨張材70が通気孔13から垂れ落ちにくい。
【0044】
又、温度上昇に伴いシーリング96a及び96bが消失し、第2熱膨張材80が露出する。
【0045】
最後に、
図9の(3)を参照して、火災により換気材1の周辺温度が更に上昇し、180℃以上になる。すると、第1熱膨張材70、熱膨張材88a、88b、88c及び88dの各々が発泡して膨張し、換気材1の内外、即ち通気経路を塞ぐ。このように換気材1は、火災時には防火機能を発揮する。又、第2熱膨張材80も発泡して膨張し、外壁91の上端部と換気材1との間の空間及び通気孔13を塞ぐ。すると図の矢印が示すように、外気は換気材1の外方で遮断されて屋内への侵入が困難となるので、換気材1の防火機能は更に向上する。
【0046】
図10は、
図1で示した換気材のケラバ部分への取付状態を示す概略右側面図である。
【0047】
図を参照して、換気材1のケラバへの取付に当たっては、外壁91の上端部に第2垂下部16を当接させ、第1垂下部11及びケイカル板87を貫いて下地木93に釘94を打ち付け、水密材89aの上方に屋根95を載置して、第1垂下部11と屋根95の下面との当接部分を塞ぐようにシーリング96aを、外壁91の上面と水平部15との空間を第2熱膨張材80ごと塞ぐようにシーリング96bを、それぞれ施して取付ける。このように設置すると、換気材1はケラバにおいても、軒先への取付時と同様の換気機能、防水機能及び防火機能を発揮する。
【0048】
図11は、
図1で示した換気材の笠木下部分への取付状態を示す概略右側面図である。
【0049】
図を参照して、換気材1aの笠木下部分への取付に当たっては、梁97の一方面側の外壁91の上端部に第2垂下部16を当接させ、第1垂下部11及びケイカル板87を貫いて下地木93に釘94を打ち付け、外壁91の上端部と水平部15との空間において第2熱膨張材80を覆うようにシーリング96を施して取付ける。換気材1bの笠木下部分への取付は、梁97の一方面に対向する他方面側において換気材1aと同様であるため、ここでの説明は省略する。換気材1a及び1bを取付けた後、換気材1a及び1bと梁97の上面を覆うようにアルミ笠木98を被せて設置する。このように設置すると、換気材1a及び1bは笠木下においても、軒先への取付時と同様の換気機能、防水機能及び防火機能を発揮する。
【0050】
尚、上記の第1の実施の形態では、枠体は第2垂下部を備えるものであったが、備えていなくてもよい。
【0051】
又、上記の第1の実施の形態では、第2熱膨張材が配置されていたが、無くてもよい。
【0052】
更に、上記の第1の実施の形態では、複数の熱膨張材が配置されていたが、少なくとも第1熱膨張材が備わっていればよい。
【0053】
更に、上記の第1の実施の形態では、防水部材は特定部材により構成されていたが、長尺状であって短手方向断面形状として略矩形形状を有し、一方面及び一方面に対向する他方面の各々に複数の孔が形成され、一方面が枠体の内方面に対向するように水平部の上面に載置される、換気機能及び防水機能を有するものであればよい。
【0054】
更に、上記の第1の実施の形態では、アルミニウムよりなるシート体を備える閉塞テープが貼付されていたが、無くてもよい。
【0055】
更に、上記の第1の実施の形態では、シート体はアルミニウムよりなるとされていたが、他の不燃性材料よりなるものであってもよい。
【0056】
更に、上記の第1の実施の形態では、閉塞テープは特定位置に貼付されていたが、剥がれ落ちたシート体が通気孔を塞ぐことができる位置であれば、換気材の内側の他の部分に貼り付けられていてもよく、換気材以外の部材に貼り付けられていてもよい。
【0057】
更に、上記の第1の実施の形態では、シート体は、通気孔の全体を覆うことができる大きさを有するものであったが、通気孔の少なくとも一部を覆うことができる大きさを有していればよい。
【0058】
更に、上記の第1の実施の形態では、枠体は鋼板よりなるとされていたが、その他の金属板よりなるものであってもよい。
【0059】
更に、上記の第1の実施の形態では、枠体、防水部材、第1熱膨張材及び閉塞テープの各々は所定寸法にて形成されていたが、他の寸法で形成されてもよい。
【0060】
更に、上記の第1の実施の形態では、換気材には水密材及びケイカル板が配置されていたが、無くてもよい。
【0061】
更に、上記の第1の実施の形態では、第1熱膨張材、第2熱膨張材、熱膨張材及び接着剤の各々は特定温度を超えると状態変化を起こすものであったが、接着剤の剥がれる温度が第1熱膨張材のジェル化に至る温度未満であれば、他の温度で同様の状態変化を起こすものであってもよい。
【0062】
更に、上記の第1の実施の形態では、換気材は軒先部分、ケラバ部分及び笠木下部分に取付けられていたが、家屋の他の通気場所に取付けられてもよい。
【0063】
上記の実施の形態から、以下のような発明の保護が考えられる。
【0064】
第1の観点にかかる発明は、家屋の自然通気に用いられる通気構造体であって、通気孔が形成された本体と、前記本体の内側において前記通気孔の上方に配置される熱膨張材と、前記本体の内側に配置される閉塞テープとを備え、前記閉塞テープは、不燃性材料よりなるシート体と、前記シート体の一方面に塗布され、前記熱膨張材がジェル化する温度未満の温度で粘着力が弱まる接着剤とを備え、前記接着剤を介して、前記本体の内側において、剥がれ落ちた先で前記シート体が前記通気孔を塞ぐことができる位置に貼付されるものである。
【0065】
このように構成すると、熱膨張材がジェル化する前に閉塞テープが剥がれ落ちて通気孔を塞ぐので、ジェル化した熱膨張材が通気孔から垂れ落ちにくくなる。
【0066】
第2の観点にかかる発明は、第1の観点にかかる発明の構成において、前記不燃性材料は、アルミニウムよりなるものである。
【0067】
このように構成すると、閉塞テープの作成が容易であると共に、軽量で扱い易いものとなるので、コスト的に有利となる。
【0068】
第3の観点にかかる発明は、第1の観点又は第2の観点にかかる発明の構成において、前記閉塞テープは、前記熱膨張材の表面に貼付されるものである。
【0069】
このように構成すると、温度上昇に伴い、熱膨張材がジェル化する前にシート体が剥がれ落ちやすい。又、シート体が剥がれ落ちる前に熱膨張材がジェル化した場合に、シート体が熱膨張材の流動を留めるので、熱膨張材が通気孔から更に垂れ落ちにくくなる。
【0070】
特許文献1に示す上述のような軒先換気構造体は、火災時に、開口を介しての外気の侵入は防げず、小屋裏内へ外気が入り込むものとなっていた。
【0071】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、より優れた防火機能を発揮する通気構造体を提供することを目的とする。
【符号の説明】
【0072】
1…換気材
10…枠体
11…第1垂下部
12…内方面
13…通気孔
14…通気部
15…水平部
16…第2垂下部
20…防水部材
21…第1防水ユニット
22…第2防水ユニット
30…第1コの字状部材
31…垂直面部
32…上面部
33…下面部
34…解放側
35…切り起こし孔
40…第2コの字状部材
41…垂直面部
42…上面部
43…下面部
44…解放側
45…切り起こし孔
50…第3コの字状部材
51…垂直面部
55…切り起こし孔
60…第4コの字状部材
61…垂直面部
63…下面部
65…切り起こし孔
70…第1熱膨張材
71…閉塞テープ
74…接着剤
80…第2熱膨張材
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。