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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】付着性を改善した構造体
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/02 20060101AFI20230609BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20230609BHJP
   B29C 39/26 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B29C39/02
B29C33/42
B29C39/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020536594
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018085499
(87)【国際公開番号】W WO2019129540
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】102017131347.8
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520229334
【氏名又は名称】イノサイス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アールツト エデュアルド
(72)【発明者】
【氏名】ヘンゼル レネ
(72)【発明者】
【氏名】モー カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ツィネマン ヴェレナ ニコラ
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-008419(JP,A)
【文献】特開2006-039450(JP,A)
【文献】国際公開第2008/076391(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/146792(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/102264(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/02
B29C 33/42
B29C 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弧状の裏材層、該裏材層上に複数の突起部を備える構造体であって、各突起部は端面を有し、全ての前記端面は共通面を画定し、前記裏材層の硬度は、該構造体の少なくとも1つの端部の方向において変動し、
前記突起部の高さが、前記構造体の中心における最小高さから前記構造体の縁部における最大高さまで、前記構造体の幅にわたって変動しており、前記共通面は平面とされることを特徴とする、構造体。
【請求項2】
前記裏材層は、異なる弾性率の少なくとも2つの領域を有することを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項3】
前記領域は、層として設計されることを特徴とする、請求項に記載の構造体。
【請求項4】
前記構造体は、柱状体タイプの設計であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項5】
請求項のいずれか一項に記載の構造体を製造する方法であって、
a)前記突起部及び前記裏材層を備える前記構造体の負構造を備える金型を準備するステップと、
b)その寸法において、製造される前記裏材層の領域に対応する更なる本体を準備するステップと、
c)前記金型に硬化性前駆体を導入するステップと、
d)前記金型に前記更なる本体を導入するステップと、
e)前記前駆体を硬化するステップと、
f)前記金型から前記構造体を除外するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
乾燥付着のための請求項1~のいずれか一項に記載の構造体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面への付着性を改善した、特に力分布を改善した構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの物体間の分子付着は、繊維状の表面構造によって強化又は制御することができる。この原理は、ゲッコー効果(gecko effect)として既知である。構造化エラストマー表面が、或る特定の接触力を伴って比較的平坦な表面に押し付けられた場合、ファンデルワールス(van der Waals)相互作用が発生する可能性がある。可逆的な付着、すなわち、付着と分離とを選択的に切り替えることができることは、性質からも既知である。柱状の付着構造体、すなわち、複数の柱状突起部からなる構造体を用いるとき、構造体の端面は、表面への付着のために接触面を形成し、分離は、一般的に、表面との接触領域によって始まり、外部の影響によって低減する。
【0003】
ここで、付着強度及び分離方法を、表面上の乾燥付着構造体の構造によって制御することができる。通常の付着接合部とは対照的に、これにより、付着力の制御をより大幅に増大させることが可能になる。
【0004】
正確には、いくつかの特定の表面上に物体を可逆的に固定する必要がある使用の場合に、このような構造体は利点を提供することができる。
【0005】
このような構造体の1つの問題は、物体が外されるとき、構造体における張力が、個々の突起部にわたって横方向に不均一に分散されることである。これは、全ての突起部が取り付けられる裏材層における弾性相互作用、又は、被接触面(基板)に対する構造体の非平行整列に起因した均一な力分布(均等な負荷共有)からの逸脱によって引き起こされる。これによって、理論上では期待される値に対して付着性が大幅に低下する。
【0006】
この不均等な力分布は、特に構造体が弾性又は粘弾性裏材層によって接続される場合に発生し、さらに、物体の構造が、付着構造体の方向において凸面曲率を有する場合に強化される。その理由は、変形可能な裏材層を介した構造体の機械結合である。この結合は、端部における構造体及びアレイ内の構造体の強度が異なる。すなわち、隣接した構造体の数が比較的少ないので、外縁部における付着構造体は、アレイ内の構造体よりも大きな負荷を受ける。不均等な負荷に起因して、付着構造体の分離/故障が、縁部を起点にして発生する。この不均一な分布が付着構造体全体の効率及び耐荷重能力に影響を与える程度は、アレイにおいて圧力を受ける構造体の数に依存する。一般的に、付着構造体アレイの効率は、付着に関与する構造体の数が増加するにつれて減少することが事実である。すなわち、大型アレイの方が小型アレイよりも効率が悪い。実際の効率は、数値方法を用いて求めることができる。
【0007】
問題の科学分析が、Bacca、Booth、Turner及びMcMeekingによって刊行されている(非特許文献1)。均一力分布は、個々の繊維の弾性を調整し、突起部の弾性率又は高さを調節することによって達成することができることを上記著者は主張している。しかしながら、ここでは、突起部の集結を回避することが必要になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Bacca他. Journal of the Mechanics and Physics of Solids 2016, 96, 428-444,「Load sharing in bioinspired fibrillar adhesives with backing layer interactions and interfacial misalignment」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によって対処される課題は、付着性を改善した、特に力分布を改善した構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、独立請求項の特徴を有する本発明によって解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項において示される。これによって、請求項の全ての表現は、参照することによって本明細書に組み込まれる。本発明は、独立請求項及び/又は従属請求項の全ての価値のある、特に全ての言及された組み合わせも包含する。
【0011】
本発明は、裏材層、上記裏材層上に複数の突起部を備える構造体であって、各突起部は端面を有し、全ての端面は共通面を画定し、裏材層の硬度は、この構造体の少なくとも1つの端部の方向において変動、好ましくは減少する、構造体によって示される。
【0012】
最高硬度に基づいて、縁部に向かって硬度が最大50%、好ましくは最大30%減少すること、特に少なくとも2%ずつ硬度が変化することが好ましい。
【0013】
裏材層の硬度の変動によって、裏材層を介した突起部同士の結合が、縁部に向かって変化することが確実になる。これにより、構造体の付着性が大幅に改善される。
【0014】
好ましい一実施の形態では、裏材層の硬度は、構造体の全ての縁部の方向において減少する。構造体の縁部は、裏材層上での突起部の配置構成の端部を意味するものと解釈される。裏材層は、好ましくは、付着面に平行な縁部の方向において硬度の勾配を有する。
【0015】
硬度の変化は、異なる方法で達成することができる。本発明の1つの実施の形態では、この変化は、構造体の少なくとも1つの縁部の方向において裏材層の厚さが減少することによって達成される。
【0016】
突起部の端面が共通面を画定するので、裏材層の厚さの変動によって、構造体の中心における突起部の方がより短くなるとともに、突起部の長さは縁部に向かって減少することが確実になり、突起部の端面は、端面が共通面を画定するので平坦な表面との接触に依然として適している。
【0017】
裏材層の厚さは、構造体の少なくとも1つの縁部の方向において、好ましくは少なくとも2つの縁部の方向において、特に全ての縁部に向かって減少する。これは、例えば、弧状の裏材層を用いて達成することができる。或いは、構造体が、中心において裏材層の一定の厚さを有するとともに、裏材層の厚さが縁部に向かって、例えば、構造体の直径によって測定される下弦においてのみ減少することも可能である。
【0018】
また、この裏材層の変更によって、比較的大きな物体を、製造が困難な大型の付着構造体アレイによってではなく、代替案として、複数の比較的小型の付着構造体アレイによって把持及び剥離することができ、この場合、比較的小型のアレイに対する縁部の影響が付着力をほとんど低減させないことが確実になる。
【0019】
厚さが縁部に向かって減少する場合、これは、厚さが少なくとも縁部の領域において減少することを意味するものと解釈されるべきである。これは、裏材層の厚さが、各事例において、構造体の縁部において連続的に減少することを意味する。結果として得られる構造体は、裏材層の中心と比較して長い突起部を縁部に有する。
【0020】
この構造によって、構造体は、平坦な表面への付着にも適しており、さらに、力分布を改善することが確実になる。
【0021】
物体を位置決めする目的で意図した分離の間、さらに、分離はまず縁部で始まり、次に内方に進行していくことが確実になる。これによって、局所的な精度を改善した制御された分離が達成される。
【0022】
本発明の別の実施の形態では、硬度の変化は、裏材層の弾性率の対応する変化によって達成される。これは、物質内の勾配を用いて達成することができる。これは、好ましくは、裏材層が異なる弾性率の少なくとも2つの領域を有することによって達成される。この場合、裏材層は、特に、構造体の付着力の差異が達成されるように、個々の領域の程度に基づいて構築される。
【0023】
好ましい一実施の形態では、こうした領域は、層として、特に、鉛直厚さが変動する層として設計される。その結果、特定の点における裏材層の硬度は、異なる層の比に依存する。裏材層の硬度は、それぞれの層の厚さによって制御することができる。
【0024】
好ましい一実施の形態では、高弾性率を有する領域の垂直比は、縁部に向かって減少し、その結果、硬度が下がる。これは、層の厚さがそれに応じて変化することを意味する。
【0025】
複数の層の使用は、突起部の長さが一定を維持することができ、構造体の製造及び安定性がより容易になるという利点を有する。同時に、裏材層を複数の層として製造する方が容易であり、異なる使用に硬度を適合することが容易になる。
【0026】
本発明の1つの実施の形態では、裏材層は、異なる弾性率の2つ、3つ又は4つの層を含み、好ましくは、異なる弾性率の2つの層を含む。
【0027】
層は、裏材層の全領域にわたって延在する必要はない。層は、好ましくは、構造体の全領域にわたって延在する。
【0028】
最も外側の層を、支持体に堅く接続することもできるし、本発明による構造体の支持体の一部とすることもできる。この最も外側の層が構造体の付着力に影響を及ぼすことが重要である。
【0029】
好ましい一実施の形態では、裏材層は、突起部が配置される第1の層を有する。この層の下に第2の層が配置される。双方の層は共通境界面を有する。第1の層の弾性率が第2の層の弾性率より高い場合、第2の層の厚さは、好ましくは、少なくとも1つ縁部の方向において減少する一方、第1の層の厚さは増加する。これは、例えば、2つの層の境界面は、突起部の方向において弧状、すなわち凸面であることによって達成することができる。第1の層の弾性率の方が高い場合、この状況は逆転する。すなわち、境界面は対応する凹形状であり、第2の層の厚さはそれに応じて増加する。
【0030】
凸境界面が好ましい。境界面は、好ましくは、放物線状、半球状カップ又は槽状である。特に好ましいものとして、境界面の曲率は、直線多項式(偶数の指数を有する多項式関数)によって記述される。
【0031】
本発明の好ましい一実施の形態では、全ての層に基づく裏材層の厚さは一定である。
【0032】
好ましい一実施の形態では、第1の層の弾性率は、突起部の弾性率に対応する。
【0033】
裏材層の弾性率は、好ましくは50kPa~3GPaである。弾性率は、好ましくは50kPa~5GPaであり、特に100kPa~1GPaであり、特に好ましくは500kPa~100MPaである。
【0034】
複数の層の場合、少なくとも1つの層の弾性率は、50kPa~3GPaである。弾性率は、好ましくは50kPa~5GPaであり、特に100kPa~1GPaであり、特に好ましくは500kPa~100MPaである。少なくとも1つの層の弾性率は、好ましくは50kPa~20MPaであり、好ましくは100kPa~10MPaである。
【0035】
これとは関係なく、高弾性率を有する少なくとも1つの層の弾性率は、少なくとも1MPa、特に1MPa~3GPa、好ましくは2MPa~1GPaである。
【0036】
最低弾性率を有する層の弾性率と、最高弾性率を有する層の弾性率との比は、好ましくは1:2を超え、好ましくは1:100を超え、特に1:500を超え、特に非常に好ましくは1:1000を超え、特に1:1500を超える。そのような大差は、特に有利な効果を有する。
【0037】
裏材層の厚さは、使用に適合するように選択することができる。突起部の高さに応じて、最大厚さは、最大5cm、好ましくは最大3cmとすることができる。また、最大厚さは、1cm未満、例えば5mm未満とすることができる。
【0038】
厚さが変動する場合であっても、対応する付着力の改善が達成されるように厚さが選択される。最大厚さを起点に最大50%だけ、好ましくは30%だけ、特に少なくとも5%だけ厚さが変動することが好ましい。
【0039】
複数の層の場合、付着力の改善も達成されるように厚さが選択される。複数の層の場合、裏材層の最大厚さに対して好ましくは少なくとも2%だけ、好ましくは5%だけ、好ましくは少なくとも30%だけ硬度を変化させるために、少なくとも2つの層の厚さが変動する。
【0040】
この状況では、層の厚さは、この範囲内にない場合は0とすることができる。
【0041】
最低弾性率を有する層の場合、好ましくは、その層が、突起部が配置される層である場合、突起部の垂直高さ(L)に関係したその層の最小厚さ(d)は1未満であることが好ましい。
【0042】
これらは、好ましくは、それぞれが少なくとも1つの軸部と表面から外方を向く端面とを有する複数の突起部(柱状体)を備える構造体である。この端面によって、突起部は、この突起部が付着するとされる表面と接触する。
【0043】
端面の垂直高さは、端面と突起部が配置される表面との間の距離を意味するものと解釈される。
【0044】
本発明の好ましい一実施の形態では、本発明の各構造体の突起部は、柱状タイプ設計である。これは、この突起部が、好ましくは表面に垂直に形成されるとともに軸部及び端面を有する突起部であり、軸部及び端面は、任意の所望の断面(例えば、円形、楕円形、矩形、正方形、ひし形、六角形、五角形等)を有することができる。
【0045】
突起部は、好ましくは、突起部の基部領域上への端面の鉛直投影が、基部領域との重複領域を形成するように設計され、重複領域と端面上への重複領域の投影とは、完全に投影内にある本体を画定する。本発明の好ましい一実施の形態では、重複領域は、基部領域の少なくとも50%、好ましくは基部領域の少なくとも70%を含み、特に好ましくは、重複領域は、基部領域全体を含む。したがって、突起部は好ましくは傾斜しない。
【0046】
好ましい一実施の形態では、端面は、基部領域及び表面に対して平行に並べられる。端面が表面に対して平行に並べられず、したがって異なる垂直高さを有する場合、端面の平均垂直高さは、突起部の垂直高さとみなされる。
【0047】
1つの実施の形態では、突起部の端面は、基部領域よりも大きく、いわゆる「キノコ」構造である。
【0048】
本発明の好ましい一実施の形態では、突起部の軸部は、その平均直径に基づいて、0.5~100の高さ対直径のアスペクト比、好ましくは1~10、特に好ましくは1~5のアスペクト比を有する。
【0049】
この状況では、平均直径は、突起部の全体高さを平均した、突出部の対応する断面と同じ領域を有する円の直径を意味していると解釈される。
【0050】
端面は共通面を画定する。これは、端面が、連続領域、例えば平面の一部とすることができることを意味するものと解釈される。これは、湾曲面とすることもできる。
【0051】
突起部の端面は、それらの表面領域を増大させるために、自身を構造化することができる。この場合、端面の平均垂直高さは、突起部の垂直高さとみなされる。
【0052】
好ましい一実施の形態では、全ての突起部の垂直高さは、1μm~10mm、好ましくは1μm~5mm、特に1μm~2mm、好ましくは1μm~1mmの範囲内にある。
【0053】
好ましい一実施の形態では、基部領域は、領域に関して、0.1μm~5mm、好ましくは0.1μm~2mm、特に好ましくは1μm~500μm、特に好ましくは1μm~100μmの直径を有する円に対応する。1つの実施の形態では、基部領域は、0.3μm~2mm、好ましくは1μm~100μmの直径を有する円である。
【0054】
軸部の平均直径は、好ましくは0.1μm~5mm、好ましくは0.1μm~2mm、特に好ましくは1μm~100μmである。高さ及び平均直径は、好ましいアスペクト比に対応するように適合されるのが好ましい。
【0055】
好ましい一実施の形態では、端面を拡大した場合、突起部の端面の表面領域は、突起部の基部の領域の大きさと比較して、少なくとも1.01倍であり、好ましくは少なくとも1.5倍である。その表面領域は、例えば、1.01倍~20倍又は例えば1.05倍~2倍大きくなる可能性がある。
【0056】
別の実施の形態では、端面は、基部領域よりも5%~100%大きく、特に好ましくは、基部領域の10%~50%大きい。
【0057】
好ましい一実施の形態では、2つの突起部間の距離は、2mm未満、特に1mm未満である。
【0058】
突起部は、規則正しく周期的に配置されることが好ましい。
【0059】
突起部の弾性率は、好ましくは50kPa~3GPaである。弾性率は、好ましくは50kPa~5GPaであり、特に100kPa~1GPaであり、特に好ましくは500kPa~100MPaである。
【0060】
突起部及び裏材層の材料は、当業者の要件に適合するように自由に選択することができる。突起部は、例えば、以下の材料を含むことができる。すなわち、エポキシ及び/又はシリコーンをベースとするエラストマー、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリレート系、メタクリレート系、ホモポリマー及びコポリマーとしてのポリアクリレート、ホモポリマー及びコポリマーとしてのポリメタクリレート(PMMA、アクリロニトリル/メチルメタクリレート(AMMA))、ポリウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン、シリコーン樹脂、ゴム、例えばRゴム(天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR))、Mゴム(エテンプロペンゴム(EPM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM))、不飽和ポリエステル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、ビニルエステル樹脂、ホモポリマー又はコポリマーとしてのポリエチレン、並びに上述の材料の混合物及びコポリマーである。包装部門、医薬品部門及び食品部門(2011年1月15日に発行された、2011年1月14日のEU指令第10/2011)での使用がEU若しくはFDAによって許可されたエラストマー、又は、PVD及びCVDプロセスエンジニアリングからのシリコ-ンフリーのUV硬化性樹脂も好ましい。この場合、ポリウレタン(メタ)アクリレートは、ポリウレタンメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、並びにそれらの混合物及び/又はコポリマーを表す。
【0061】
エポキシ及び/又はシリコーンをベースとするエラストマー、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、シリコーン樹脂(UV硬化性PDMS等)、ポリウレタン(メタ)アクリレート、又はゴム(EPM、EPDM等)が好ましい。
【0062】
裏材層は、好ましくは同様に、上記材料のうちの1つから構成され、特に好ましくは突起部と同じ材料から構成される。
【0063】
複数の樹脂の場合、少なくとも1つの領域が、上述した材料から構成される。より高い弾性率を有する層は、他の材料、例えばプラスチック、金属、セラミック、好ましくはプラスチック、例えば熱硬化性プラスチック又は熱可塑性プラスチック、例えばポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリラクチド、ポリビニルアルコール、ポリアミド、例えばポリアミドPA 66で構成されていてもよい。射出成形又は3D印刷によって印加することができるプラスチックが好ましい。
【0064】
本発明による構造体は、好ましくは、鋳造によって製造される
【0065】
本発明は、本発明による構造体を製造する方法にも関する。このために、突起部と異なる厚さの裏材層とを備える構造体の負の構造を備える金型が準備される。この金型は、それに対応するように、裏材層及び突起部の材料のための硬化性前駆体で充填される。用いられる材料に応じて、前駆体が次に硬化され、これは、物理的及び/又は化学的に達成することができるプロセスである。例として、加熱又は、例えばUVによる放射がある。構造体は、金型から除去され、場合によっては、更なる加工ステップを施される。
【0066】
本発明は、本発明による構造体を製造する方法にも関し、裏材層は少なくとも2つの領域を含む。このために、突起部及び裏材層を備える構造体の負の構造を備える金型が準備される。さらに、その寸法において、製造される裏材層の領域に対応する更なる本体が準備される。この本体は、支持体上に配置することもできるし、その支持体の一部とすることもできる。
【0067】
次のステップでは、硬化性前駆体が金型に導入される。次のステップでは、更なる本体が、前駆体とともに後続の裏材層を形成するように金型に導入される。この場合、例えば本体が弧状の構造を有する場合、前駆体を部分的に変形及び/又は変位させることが可能である。硬化後、前駆体及び本体は裏材層を形成する。本体が前駆体内に押し込まれているので、本体を嵌合物(inlet)とも呼ぶことができる。本体は、好ましくは、硬化後の鋳型の材料よりも高い弾性率を有する材料から構成される。
【0068】
その後、前駆体が硬化される。それによって、突起部及び第1の領域が形成される。
【0069】
その後、構造体は鋳型から除去される。裏材層が鋳造構造及び更なる本体によって形成される。更なる本体は、裏材層の第2の領域を形成する。
【0070】
更なる本体は、異なる弾性率を有する複数の領域も既に含むことができる。
【0071】
更なる本体は、様々な方法で製造することができる。例えば3D印刷によって更なる本体を製造することが可能である。本発明による方法によって、裏材層の個々の領域の形状は、単純な方法で画定することができる。特に、突起部及び最終構造体の製造を、1ステップで実行することができる。更なる本体を事前に製造したことによって、逐次的鋳造方法によって可能ではない幾何学的形状を得ることが可能である。
【0072】
更なる本体は、好ましくは凹型の弧状であり、その中心で最大厚さを有する。
【0073】
正確には、マイクロチップ、集積回路、ディスプレイ又はタッチスクリーン等、非常に小型かつ高感度な構成要素の場合、本発明による構造体は、物体への大きな負荷なしに正確に取り扱う能力を提供する。したがって、付着性を改善することによって、比較的小規模の付着構造体を用いて作業することが可能である。付着に必要な領域は大幅により小さい。
【0074】
したがって、本発明は、乾燥付着のための、特に、乾燥付着式付着によって物体を取り扱う又は固定するための、本発明による構造体の使用にも関する。
【0075】
更なる詳細及び特徴は、従属請求項に関連した好ましい例示の実施の形態の以下の説明から明らかになる。この場合、それぞれの特徴は、個々に実装することもできるし、組み合わせて共同で実装することもできる。課題の解決可能性は、例示の実施の形態に制限されない。したがって、範囲を示すものは、例えば、言及されない全ての中間値及び全ての考え得る部分区間を常に含む。
【0076】
例示の実施形態が、図面に概略的に示されている。ここで、個々の図面における同一の参照符号は、同一若しくは機能的に同一であるか、又はその機能に関して互いに対応する要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】本発明の1つの実施形態の概略図である。
図2】本発明の1つの実施形態の概略図である。
図3】本発明の1つの実施形態の概略図である。
図4】弧状の裏材層を有する本発明の1つの実施形態の概略図である。
図5】多層裏材層を有する本発明の1つの実施形態の概略図である。
図6】種々の構造体の付着力の測定値を示す図である。
図7】本発明による構造体の断面図である。
図8】本発明による構造体の製造の概略図である。
図9】本発明による構造体の製造の概略図である。
図10】多層裏材層を有する本発明の1つの実施形態の概略図である。
図11】多層裏材層を有する本発明の1つの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1は、本発明による構造体の概略図を示している。それぞれが端面120を有する複数の突起部110は、裏材層100上に配置されている。この実施形態では、突起部のない裏材層の表面は、凸状に湾曲している。
【0079】
図2は、本発明による構造体の概略図を示している。それぞれが端面120を有する複数の突起部110は、裏材層100上に配置されている。この実施形態では、突起部のない裏材層の表面は、屋根形状又は円錐状である。裏材層の厚さが1つの寸法でのみ減少することも可能である。この事例では、突起部のない裏材層の表面は、切妻屋根状に成形される。
【0080】
図3は、本発明による構造体の概略図を示している。それぞれが端面120を有する複数の突起部110は、裏材層100上に配置されている。この実施形態では、構造体の中心における裏材層の厚さは一定であり、縁部に向かってのみ減少する。
【0081】
図4は、突起部110が配置される弧状の裏材層130を備える本発明による構造体の概略図を示している。突起部の端面120は同じ高さであり、したがって、平面を画定する。したがって、突起部の高さは、中心の最小高さLから構造体の縁部における最大高さLまで、構造体の幅Dにわたって変動する。
【0082】
図5は、裏材層の多層構造を有する本発明による構造体の概略図を示している。裏材層は、弾性率Eを有する第1の領域140を有する。突起部110は、この領域上に配置される。裏材層は、弾性率Eを有する第2の領域150も有する。ここで、E>Eである。双方の領域140、150は、層として設計され、一方の上に他方が重なるよう配置される。その境界面160は、突起部の方向において凹面曲率を有する。結果として、第1の領域は、構造体の中心においてdの最小厚さを有する。また、第2の領域の厚さは、そこで最大である。2つの縁部に向かって、第1の領域の厚さは増加する一方、第2の領域の厚さは減少する。境界面が全ての方向において凹面曲率を有する場合、このような本体の硬度は、全ての縁部に向かって増加する。この場合、第2の領域は、構造体の幅D全体にわたって延在する。最小厚さdの突起部の高さに対する比は、好ましくは1未満である。
【0083】
図6は、ガラス表面への種々の構造体の付着力の測定値を示している。表面と接触した後、サンプルは、予備負荷に達する(「接触圧力」)まで表面に向かって垂直に移動され、その後、完全に分離するまで表面から離れるように再び移動される(mm単位での移動、「除去」)。このプロセスの間、運動方向において構造体に作用する力及び表面に作用する力が測定される。このプロセスの間に必要な除去力は、完全な分離に必要な力である。測定値は、図7に示すような2つの層を有する構造体(嵌合物のあるサンプル)の方が、同じ寸法だが多層裏材層を伴わずに製造されたサンプル(嵌合物のないサンプル)よりも分離するのに大幅に強い力が必要となることを明確に示している。
【0084】
図7は、裏材層上に突起部を有する構造体を示している。構造体は、半分に切断され、断面が露呈されている。突起部は、円形直径を有し、規則正しく周期的に配置される。突起部は、2つの領域を含む裏材層上に配置され、この2つの領域は、さらに、層として設計される。中心における突起部を有する第1の領域の厚さが最小であることが明確に見て取れる。第2の領域は、第1の領域の下に層を形成する。凹状に湾曲した境界面が、明確に見て取れる。裏材層の高さは構造体全体にわたって既知である。2つの層の厚さのみが変動する。
【0085】
図8は、変化する厚さの裏材層を有する本発明による構造体の製造を概略的に示している。対応する鋳型が準備される(左側)。材料のプレポリマーが、上記金型に導入され、金型は、カバーによって閉められる(中央の図)。このプロセスの間、金型は完全に充填される。次のステップでは、プレポリマーが硬化、例えば架橋される。鋳型から除去した後(右側)、本発明による構造体が得られる。
【0086】
図9は、多層裏材層を有する本発明による構造体の製造を概略的に示している。このプロセスでは、構造体全体の鋳型が準備される。プレポリマーが、この金型に導入される(左側)。プレポリマーは、突起部の材料及び裏材層の第1の領域のための前駆体である。さらに、嵌合物が支持体上に設けられる。この嵌合物は、例えば3D印刷によって製造することができる。嵌合物は、鋳型のカバーも形成することができる支持体上に配置される。金型に導入されるプレポリマーの量は、金型への嵌合物の導入後(中央の図)に金型が完全に充填されるような量である。その後、プレポリマーが硬化され、構造体は金型から除去される(右側)。このように、多層裏材層を有する構造体が得られる。
【0087】
図10は、第1の領域170及び第2の領域180を備える多層裏材層を有する本発明の一実施形態を示している。端面120を有する突起部110は、第1の領域上に配置される。硬度の変化は、第1の領域170の厚さが中心において最低であるとともに、縁部に向かって連続的に線形的に増加することによって達成される。第2の領域180の厚さは、これに対応するように減少する。この場合、境界面は、構造体の3次元設計に応じて、屋根形状又は円錐状である。
【0088】
図11は、第1の領域190及び第2の領域200を備える多層裏材層を有する本発明の一実施形態を示している。端面120を有する突起部110は、第1の領域上に配置される。硬度の変化は、第1の領域190の厚さが中心において最低であり、まず一定を維持し、その後、縁部に向かって連続的に線形的に増加することによって達成される。第2の領域200の厚さは、これに対応するように減少する。この場合、境界面は、構造体の3次元設計に応じて、カットオフ切妻屋根(cut-off gable)を有する屋根形状であるか又は円錐台に類似している。
【符号の説明】
【0089】
100 裏材層
110 突起部
120 端面
130 裏材層
140 裏材層の第1の領域
150 裏材層の第2の領域(嵌合物)
160 境界面
170 裏材層の第1の領域
180 裏材層の第2の領域(嵌合物)
190 裏材層の第1の領域
200 裏材層の第2の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11