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特許7291972血小板を含有する血液組成物から得られる組織製剤又は接着剤、及びそのような製剤を調製する方法
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  • 特許-血小板を含有する血液組成物から得られる組織製剤又は接着剤、及びそのような製剤を調製する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】血小板を含有する血液組成物から得られる組織製剤又は接着剤、及びそのような製剤を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 24/00 20060101AFI20230609BHJP
   A61L 24/10 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20230609BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20230609BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230609BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
A61L24/00 260
A61L24/00 100
A61L24/10
A61K35/19
A61K38/18
A61K38/36
A61P7/04
A61P17/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021546794
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 ES2020070048
(87)【国際公開番号】W WO2020165473
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P201930106
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507267023
【氏名又は名称】バイオテクノロジー インスティチュート、アイ エムエーエス ディー、 エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アニトゥア アルデコア、エデュアルド
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521629(JP,A)
【文献】特表2016-528225(JP,A)
【文献】国際公開第2010/142784(WO,A2)
【文献】スペイン国特許出願公開第2633815(ES,A1)
【文献】スペイン国特許出願公開第2221770(ES,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 24/00-24/12
A61K 35/00-35/768
38/00-38/58
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期血液組成物からの接着剤製剤の調製のための方法であって、
a)ヒト又は動物起源の初期血液組成物を得るステップであって、該初期血液組成物が多血小板血漿である上記ステップと、
b)初期血液組成物の温度を40から53℃の温度まで上昇させるステップと、
c)血液組成物を遠心分離するステップと、
d)血小板を活性化し、かつフィブリン含有製剤を形成するステップと
を含むことを特徴とする、
上記方法。
【請求項2】
前記初期血液組成物が放出された成長因子を追加で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)の後に初期組成物の体積の一部を除去する追加のステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
血小板を活性化するステップが、以下のもの:カルシウム、トロンビン、グルコン酸ナトリウム、コラーゲン、血漿上清、及び成長因子に富む血漿上清の少なくとも1つを添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
製剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、多糖、脂質、非タンパク質有機物質、及び無機物質からなる群から選択される1つ又は複数の生物活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
製剤が、以下のもの:ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、デキストラン、シリカゲル、アルギナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、キサンタンガム、アガロース;ポリエチレングリコール(PEG)、ポリヒドロキシエチレンメタクリラート(HEMA)、合成又は天然タンパク質、コラーゲンから選択される1つ又は複数の生分解性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
製剤が、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びそれらのコポリマーからなる群から選択される1つ又は複数の有機ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
製剤が、以下の薬剤:抗生物質、抗菌剤、抗がん剤、鎮痛剤、成長因子、ホルモンの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
製剤が、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びストロンチウム塩からなる群から選択される1つ又は複数の無機成分を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板を含有する初期血液組成物から得られる、望ましい生物学的又は医学的特性を有する製剤に関する。本発明は、この製剤を調製するための方法にも関する。製剤は、組織接着剤として働く。
【背景技術】
【0002】
ヒト又は動物の血液からの組成物の調製は、先行技術において公知であり、そこでは、有用な生物学的及び医学的特性を有する多血小板血漿(PRP)及び/又は成長因子に富む血漿が得られるように血液がプロセシングされる。そのようなPRP又は成長因子に富む血漿は、例えば、細胞培養培地としてのエクスビボ適用において、及び例えば、患者において骨再生プロセスを実施するために、又は浸潤物を使用して関節疾患を有する患者を治療するためにインビボで首尾よく使用されている。インビボ適用を意図した組成物の場合、PRP製剤及び成長因子に富む血漿の調製のための技術は、自己組成物の調製に向けて進化しており、すなわち患者自身の血液から得られている。これらの組成物及び調製方法の例は、特許US6569204及びES2221770に見出すことができる。
【0003】
さらに、血液から得られる多血小板フィブリン(PRF)からなる組成物も知られている。前述の血漿と同様に、フィブリンは、自己由来又は異種由来であり得る。液体である血漿とは異なり、フィブリンは、固体又は半固体の稠度を有する。
【0004】
フィブリンの一例は、フィブリンゲル又はフィブリンメッシュとして知られており、その半固体稠度が特定の用途に非常に有用な製剤である。フィブリンゲル又はメッシュの調製手順は、一般に、例えば、患者から採取した血液を、血液がいくつかの画分に分離するまで遠心分離し、上部画分、すなわち多血小板血漿(PRP)又は成長因子の豊富な血漿の画分を抽出することによって、PRP又は成長因子に富む血漿が適用可能な方法によって得られる第1の段階で始まる。続いて、PRP又は成長因子に富む血漿に含まれる血小板は、例えば塩化カルシウムの添加によって活性化される(本明細書における活性化は、血小板にそれらの中に含まれる特定の成長因子を放出させる作用として理解される)。活性化の結果として、十分長く待機した後、血漿中に含まれるフィブリノーゲンからフィブリンの最終的な重合が生じ、フィブリン塊(一種の生物学的スポンジのように、その半固体の稠度のためにフィブリンゲル又はメッシュとも呼ばれる)である最終化合物が得られる。この手順は、通常、クエン酸ナトリウムなどの抗凝固剤で修飾された血液からフィブリンゲルを得るために行われる。しかしながら、血液はまた、抗凝固剤と事前に混合することなくプロセシングされ得る。この場合、血液を遠心分離することにより、塩化カルシウム又は他の血小板活性化剤を添加する必要なく、血漿を赤血球から分離すると同時にフィブリンゲルを得ることができる。フィブリンゲル又はメッシュの適用のいくつかの例としては、以下が挙げられる:骨欠損を充填するための生物学的足場を形成すること;成長因子の漸進的放出のために創傷又は損傷に適用される;幹細胞培養用マトリックスとして使用される;欠陥又は潰瘍を閉鎖するための膜として使用される;組織工学として知られる組織の製造に使用され、ここでは、細胞及び成長因子に加えて、細胞が成長することができるマトリックス又は足場を有することが特に重要である。
【0005】
しかしながら、多血小板製剤(PRP、成長因子に富む血漿、PRF)は、組織接着剤としての能力が限られている。良好な接着特性を有することの重要性は、外科的創傷及び慢性創傷が、患者及びしばしば過小評価される健康システムの両方にとって世界的な社会経済的負担を表すので、大きい。このレベルで我々が見出す主な懸念の1つは、手術中又は慢性創傷で起こり得る大量の連続的な出血、ならびに縫合糸膿瘍、肉芽腫の形成又は組織壊死などの外科的縫合に由来する術後の不快感及び合併症である。長年にわたり、そのような合併症、中でも、フィブリン糊/シーラントの使用を減らすことを目的として、手術の世界において広範囲の治療様式が登場してきた。
【0006】
市販の同種異系フィブリンシーラントは、良好な非侵襲的代替物を表す。しかしながら、それらは効率的に機能するが、それらのコストは高く、すべての国又は地域で利用可能であるとは限らない。さらに、市販の同種異系フィブリンシーラントは、ヒト血漿から得られるため、特定の疾患の伝播のリスクがあり、過敏反応が起こり得る。
【0007】
フィブリンシーラントを調製する最も安全な方法は、患者自身の血液からそれを得ることである。それにもかかわらず、調製時間(通常、凍結又は凍結乾燥技術を使用する)は長く、プロセシングに少なくとも24時間を必要とするため、手術中に行うことはできず、又は血液を抽出するために患者が手術前日に来る必要がある。これらの凍結又は凍結乾燥技術は、フィブリノーゲンの濃度の増加を達成することに基づいており、フィブリノーゲン又は凝固タンパク質の濃度が低いなどの制限を受けるため、各患者の生物学的変動性のためにシーリング時間が長く非常に変動する。自己フィブリンシーラントの調製を促進するために使用される他の方法は、フィブリノーゲン沈殿を促進するために化学物質を使用するが、そのような製品は、それらが適用される組織を刺激し、炎症させる可能性がある。
【0008】
本発明は、血小板及び/又は成長因子に富む初期血液組成物から得られる望ましい生物学的又は医学的特性を有する製剤を達成することを目的とし、これは外科手術時に調製することができ、増加した組織接着性を有する。他の適用の中でも、製剤が市販のフィブリンシーラントの代替物として役立つことが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、血小板及び/又は成長因子に富む初期血液組成物(ヒト又は動物起源の;自己、同種又は異種)を含むか又はそれに由来し、初期血液組成物自体からのタンパク質を含む、望ましい生物学的又は医学的特性を有する製剤であって、製剤が増加した接着性を有するという特定の特徴を有する製剤である。この製剤は、自己(同じドナーから調製され、同じドナーに適用される)、同種(ドナー及びレシピエントが同じ種である)、又は異種(ドナー及びレシピエントが異なる種である)とすることができ、増加した接着性及び促進された凝固を有するので、「フィブリンシーラント」(シーリングのためのフィブリン調製物の適用を指すために使用される用語と類似の用語を使用する)として適格であり得る。組成物は、他のフィブリンシーラント、多血小板血液組成物及び/又は成長因子、ならびに先行技術で公知の同様の生成物と比較して、新しい形態学的及び生体力学的構成を有する。
【0010】
本発明の製剤は、生体適合性、生分解性であり、血小板又は成長因子の存在によって提供される望ましい生物学的又は医学的特性を有する。さらに、製剤は、増加した組織接着性を有し、迅速に生成される。したがって、本発明による製剤は、製剤が自己接着性であり、化学物質の添加なしに迅速に得られるという事実のために、従来のフィブリンシーラントの有利な代替物である。さらに、製剤は、従来の同種異系フィブリンシーラントであるTisseel(登録商標)及びPRP(一般的にシーラントとして使用される)と同様又はそれ以上の良好な圧縮接着性を有し、組織がそれに及ぼし得る任意の抵抗を十分に支持する。したがって、製剤は、フィブリンシーラントとしての使用に非常に適している。さらに、それは注射可能である。
【0011】
本発明の目的はまた、この製剤の調製のための方法を記載することであり、この方法は、そのベース製剤が変化し得る、血小板及び/又は成長因子に富む初期血液組成物を有するステップと、血液組成物を40~55℃の温度に加熱するステップと、初期血液組成物を少なくとも1分間遠心分離するステップと、初期組成物の体積を減少させるステップとを含む。本発明によるこの方法はまた、血小板及び/又は成長因子に富む血液組成物をゲル形態で得るための血小板活性化物質の添加及びフィブリンの形成を含む。
【0012】
本発明の詳細は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない添付の図面に見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による製剤の異なる例の凝固時間を示す図である。
図2】本発明による製剤の異なる例の接着性を示す図である。
図3】本発明による製剤の凝固時間に及ぼす活性化剤及び血小板の効果を示す図である。
図4】本発明による製剤の異なる例の接着性に及ぼす活性化剤及び血小板の効果を示す図である。
図5】本発明による製剤の異なる例の活性化剤の効果及び有効性を、接着性において市販のシーラントTisseel(登録商標)と比較して示す図である。
図6】組織接着剤としての市販のシーラントTisseel(登録商標)と比較した、本発明による製剤の異なる例の組織接着剤としての有効性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
PRPの接着性に関する先行技術に依然として存在する問題を克服するために、望ましい生物学的又は医学的特性を有し、接着性が改善された代替製剤が提案される。この製剤は、血小板を含有する初期血液組成物を含むか、又はそれに由来する。この組成物は、熱処理及びフィブリン塊の形成の結果として接着性である。本発明に従って調製されたシーラントは、Tisseel(登録商標)フィブリンシーラントと同様の組織接着性を有し、多血小板血漿又は従来の多血小板フィブリンの接着性よりも良好である組織接着性を有することが見出された。
【0015】
初期血液組成物は、例えば、多血小板血漿、すなわち、高濃度の血小板を有する血漿とすることができる。この血漿は、一般に、血液を(それを赤血球画分、白血球画分及び多血小板血漿(PRP)画分に分離するために)遠心分離し、画分の全部又は一部を多血小板血漿(PRP)に分離する技術によって得られる。
【0016】
初期血液組成物は、白血球を含んでも含まなくてもよい。
【0017】
初期血液組成物の活性化のために、以下のうちの1つ又は複数を使用することができる:塩化カルシウム、トロンビン、グルコン酸ナトリウム、コラーゲン、上清(多血小板血漿(PRP)の凝固及びその後のその退縮が引き起こされた場合に、凝固した血液の上に現れる液体物質)、成長因子に富む血漿の上清、又は血小板が内部から特定の成長因子を放出するように血小板を活性化し、フィブリン形成を誘導することによって作用する任意の他の薬剤。
【0018】
望ましい生物学的又は医学的特性を有する製剤の調製のための方法も提案され、この方法は、以下のステップを含む:
a)好ましくは白血球を有する又は有さない多血小板血漿、又は白血球を有する又は有さない成長因子に富む血漿である、抗凝固剤を含む又は含まない血小板及び/又は成長因子に富む初期血液組成物を有するステップ、
b)初期組成物の温度を40から55℃の温度まで上昇させるステップ、
c)初期血液組成物を少なくとも1分間遠心分離するステップ、
d)遠心分離の結果得られた血漿画分の少なくとも一部を除去するステップ、
e)ステップd)に示すように、血漿画分の少なくとも一部を除去した後に、残りの血液組成物を活性化するステップ。活性化は、例えば、塩化カルシウム、トロンビン、塩化カルシウムとトロンビンの組合せ、グルコン酸ナトリウム、コラーゲン、上清(多血小板血漿(PRP)の凝固及びその後のその退縮が引き起こされた場合に、凝固した血液の上に現れる液体物質)、成長因子に富む血漿の上清及び/又は任意の他の血小板活性化剤を添加することによって行われ得る。その結果、血小板活性化が起こり、フィブリン形成が誘導されて、血小板が内部から特定の成長因子を放出する。
【0019】
この方法は、活性化後のフィブリン塊の出現によって分かるように、フィブリノーゲンの変性を伴わずにタンパク質物質の沈殿を生成する。初期組成物の体積の一部を除去することにより、これらのタンパク質物質の濃度が増加する。さらに、この方法は、血液組成物の凝固及びその接着強度の顕著な加速をもたらす。要約すると、加熱プロセスの結果として、新しい生体適合性及び生分解性製剤が達成され、2つの主な利点:短い凝固時間及びより大きな接着性がこの製剤をフィブリン接着剤又はシーラントとして適したものにする。
【0020】
好ましくは、初期血液組成物の温度は、40から53℃の範囲の温度まで上昇される。
【0021】
血小板及び/又は成長因子に富む初期血液組成物は、ヒト又は動物起源のものとすることができる。さらに、それは、自己(最終製剤でその後治療される患者に属する)、同種(最終製剤で治療又はプロセシングされる患者、細胞、又は他の生物学的実体と同じ種のメンバーに属する)、又は異種(最終製剤で治療又はプロセシングされる患者、細胞、又は他の生物学的実体とは異なる種のメンバーに属する)とすることができる。
【0022】
本発明は、初期血液組成物が、特許請求の範囲に記載される熱処理の前に添加される、1つ又は複数の追加の物質を任意選択で組み込んでもよいことを意図する。これらの追加の物質は、
-タンパク質、ペプチド、核酸、多糖、脂質、非タンパク質有機物質、及び無機物質から選択される1つ又は複数の生物活性剤、
-ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、デキストラン、シリカゲル、アルギナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キチン誘導体、好ましくはキトサン、キサンタンガム、アガロース、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリヒドロキシエチレンメタクリラート(HEMA)、合成又は天然タンパク質、及びコラーゲンから選択される1つ又は複数の生分解性ポリマー、
-ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びそれらのコポリマーの群から選択される1つ又は複数の有機ポリマー、
-以下の薬剤:抗生物質、抗菌剤、抗がん剤、鎮痛剤、成長因子、ホルモンの1つ又は複数、
-カルシウム塩、マグネシウム塩、及び/又はストロンチウム塩の群から選択される1つ又は複数の無機成分
とすることができる。
【0023】
本発明はまた、熱処理が行われた後に上記物質のいずれかを製剤に添加することができる可能性を企図する。
【0024】
本発明による製剤は、製剤が、特許請求される技術的態様に加えて、製剤が意図されることになる特定の適用に好都合な他の化合物、成分、分子などを含み得る様々な実施形態を企図する。
【0025】
さらに、本発明に記載の方法に従って生成された製剤に、その汎用性を高めるための乾燥を含めた追加のステップを行うことが可能である。すなわち、その活性化(血小板活性化及びフィブリン形成)の前に、本発明による製剤を(乾熱で)乾燥又は凍結乾燥することができる。この製剤は、その後、生理食塩水、多血小板血漿、多血小板血漿からの上清、成長因子に富む血漿、成長因子に富む血漿からの上清、又は任意の他の液体物質を添加するなどの異なる方法によって再水和され得る。
【実施例
【0026】

例1
この例は、患者から採取した血液を含有する9本の気密チューブ(9ml)の試料から始まる。チューブを580gの速度で室温で8分間遠心分離する。遠心分離の結果として、各チューブに含有される血液は、いくつかの画分に分割される。上部画分、すなわち多血小板血漿(PRP)の画分を白色チューブに抽出し、合計36mlの血漿を得る。血漿を、それぞれ6mlの血漿を含有する6本のチューブに分ける。次いで、6本のチューブの各々の温度を、それぞれ37.55、45.95、51.05、52.4、53.9、及び55.35℃に上昇させる。続いて、6本のチューブを580gの速度で室温で8分間遠心分離し、血小板及び新しいタンパク質物質の沈殿を引き起こす。加熱した血漿を遠心分離した後、これらのタンパク質物質を濃縮するために、血漿の上半分を除去する。最後に、沈殿物を、チューブの残りの血漿中に再懸濁する。
【0027】
次に、製剤1ml当たりPRP上清(333μl)及び20μlのカルシウムを添加することによって、6本のチューブ中の製剤を活性化し、これにより製剤中のフィブリンの形成が開始される。
【0028】
フィブリン形成による凝固時間(血液組成物が液体からゲルになるまでの時間)を測定した。図1は、凝固時間を加速する本発明の方法の能力を示す。上記の本発明による製剤(すなわち、1ml当たりPRP上清(333μl)及び20μlのカルシウム)と同じ様式で活性化された従来のPRPの凝固時間は4.5分であったことに留意されたい。図に見られるように、本発明による製剤は、この従来のPRPと比較して、より低い又は加速された凝固時間を有する。この凝固の加速は、51.05℃の温度で最大であり、52.4及び53.9℃の温度がそれに続く。55.3℃の温度では安定した血餅は得られなかった。
【0029】
例2
この例は、患者から採取した血液を含有する9本の気密チューブ(9ml)の試料から始まる。血液を580gの速度で室温で8分間遠心分離する。遠心分離の結果として、各チューブに含有される血液は、いくつかの画分に分割される。上部画分、すなわち多血小板血漿(PRP)の画分を白色チューブに抽出し、合計36mlの血漿を得る。血漿を、それぞれ6mlの血漿を含有する6本のチューブに分ける。次に、チューブの各々の温度を、それぞれ37.55、45.95、51.05、52.4、53.9、及び55.35℃に上昇させる。続いて、それを580gの速度で室温で8分間遠心分離し、血小板及び新しいタンパク質物質の沈殿を引き起こす。加熱した血漿を遠心分離した後、これらのタンパク質物質を濃縮するために、血漿の上半分を除去する。最後に、沈殿物を、チューブ内に残っている残りの血漿中に再懸濁する。
【0030】
次いで、製剤1ml当たりPRP上清(333μl)及び20μlのカルシウムを添加することによって、6本のチューブ中の製剤を活性化し、これにより製剤中のフィブリン形成が開始される。
【0031】
2枚のガラススライドを活性化後の製剤で接着した。凝固後、接着したスライドを蒸留水中で3分間インキュベートし、次いで、グラム単位の重量を用いて製剤の接着の強度を測定した。図2は、製剤の接着強度を示す。最も高い接着強度は、51.05℃の温度に対応するものであり、37.55及び45.95℃の温度がそれに続く。最も低い接着強度は、55.3℃の温度のものであり、53.9℃の温度がそれに続く。
【0032】
例3
この例は、患者から採取した血液を含有する9本の気密チューブ(9ml)の試料から始まる。チューブを580gの速度で室温で8分間遠心分離する。遠心分離の結果として、各チューブに含有される血液は、いくつかの画分に分割される。上部画分、すなわち多血小板血漿(PRP)の画分を白色チューブに抽出し、合計36mlの血漿を得る。血漿を、それぞれ6mlの血漿を含有する6本のチューブに分ける。試料を、以下に従ってプロセシングする。
-対照試料:PRPを、PRP 1ml当たり10%塩化カルシウム20μlの比でカルシウムイオンで活性化する。
-活性化剤対照試料:PRPを、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-方法対照試料:PRPを580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の2/3を除去し、血小板沈殿物を初期体積の残りの1/3に再懸濁する。これを、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料1:PRP温度を51℃に上昇させる。その後、それを、580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の2/3を除去し、血小板及びタンパク質沈殿物を初期体積の残りの1/3に再懸濁する。製剤を、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料2:PRP温度を51℃に上昇させる。その後、それを、580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の1/2を除去し、血小板及びタンパク質沈殿物を初期体積の残りの1/2に再懸濁する。製剤を、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料3:PRP温度を51℃に上昇させる。その後、それを、580gの速度で室温で8分間遠心分離する。血小板及びタンパク質沈殿物を初期総体積に再懸濁する。製剤を、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料4:PRPの血小板を、孔径20μlのフィルターを用いた濾過によって除去する。次いで、PRPの温度を51℃に上昇させる。その後、それを、580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の2/3を除去し、血小板及びタンパク質沈殿物を初期体積の残りの1/3に再懸濁する。製剤を、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
【0033】
図3における凝固時間の結果は、対照活性化剤、対照方法及び製剤1~4で使用されたトロンビン活性化剤(PRP上清)+カルシウムの使用が、カルシウムイオンのみの使用(対照試料)と比較してPRPの凝固を加速することを示している。さらに、活性化前のPRPの第2の遠心分離(対照方法及び製剤1~4)は、おそらく初期体積の一部を除去することによる血小板濃度の増加に起因して、凝固をさらに促進する。しかしながら、本発明による方法は、製剤3(血小板濃度の増加なし)及び製剤4(血小板なし)の結果によって示されるように、血小板濃度とは無関係に凝固を促進する。最短凝固時間は、製剤1及び2に対応するものであった。したがって、凝固時間は、凝固プロセスを加速するための本発明の方法の革新及び有効性を示す。
【0034】
例4
この例は、患者から採取した血液を含有する9本の気密チューブ(9ml)の試料から始まる。チューブを580gの速度で室温で8分間遠心分離する。遠心分離の結果として、各チューブに含有される血液は、いくつかの画分に分割される。上部画分、すなわち多血小板血漿(PRP)の画分を白色チューブに抽出し、合計36mlの血漿を得る。血漿を、それぞれ6mlの血漿を含有する6本のチューブに分ける。試料を、以下に従ってプロセシングする。
-対照試料:PRPを、PRP 1ml当たり10%塩化カルシウム20μlの比でカルシウムイオンで活性化する。
-活性化剤対照試料:PRPを、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-方法対照試料:PRPを580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の2/3を除去し、血小板沈殿物を初期体積の残りの1/3に再懸濁する。それを、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料1:PRP温度を51℃に上昇させる。その後、それを、580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の2/3を除去し、血小板及びタンパク質沈殿物を初期体積の残りの1/3に再懸濁する。製剤を、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料2:PRP温度を51℃に上昇させる。その後、それを、580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の1/2を除去し、血小板及びタンパク質沈殿物を初期体積の残りの1/2に再懸濁する。製剤を、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料3:PRP温度を51℃に上昇させる。その後、それを、580gの速度で室温で8分間遠心分離する。血小板及びタンパク質沈殿物を初期総体積に再懸濁する。製剤を、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料4:PRPの血小板を、20μl孔径のフィルターを用いた濾過によって除去する。次いで、PRPの温度を51℃に上昇させる。その後、それを、580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の2/3を除去し、血小板及びタンパク質沈殿物を初期体積の残りの1/3に再懸濁する。製剤を、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
【0035】
2枚のガラススライドを、活性化後に上記の試料と共に接着した。試料を蒸留水中でインキュベートし、次いで、グラム単位の重量を使用して製剤接着性の強度を測定した。図4は、製剤の接着強度を示す。結果は、トロンビン+カルシウムの使用(活性化剤対照)も血小板濃度の増加(方法対照)もカルシウムイオンでの活性化PRPの接着を改善しなかったので、接着の改善が本発明による製剤(製剤1及び2)においてのみ起こることを明確に示している。最良の接着が、本発明の製剤1及び2によって得られた。
【0036】
例5
この例は、患者から採取した血液を含有する8本の気密チューブ(9ml)の試料から始まる。チューブを580gの速度で室温で8分間遠心分離する。遠心分離の結果として、各チューブに含有される血液は、いくつかの画分に分割される。上部画分、すなわち多血小板血漿(PRP)の画分を白色チューブに抽出し、合計30mlの血漿を得る。血漿を、それぞれ6mlの血漿を含有する5本のチューブに分ける。試料を、以下に従ってプロセシングする。
-活性化剤対照試料:PRPを、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料1:PRP温度を51℃に上昇させる。その後、それを580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の2/3を除去し、血小板及びタンパク質沈殿物を初期体積の残りの1/3に再懸濁する。製剤を、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料2:PRP温度を51℃に上昇させる。その後、それを、580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の1/2を除去し、血小板及びタンパク質沈殿物を初期体積の残りの1/2に再懸濁する。製剤を以下の活性化剤/製剤体積比で活性化する。
1.PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μl(製剤2)。
2.PRP 1ml当たりPRP上清(235.8μl)及び10%塩化カルシウム14.2μl(製剤2A)
3.PRP 1ml当たりPRP上清(166.7μl)及び10%塩化カルシウム10μl(製剤2B)
-Tisseel(登録商標)試料:Tisseel(登録商標)市販の接着剤及びシーラント(Baxter S.L.(バレンシア、スペイン))を購入し、製造業者の指示に従って使用した。
【0037】
2枚のガラススライドを、活性化後に上記の試料を使用して接着した。試料を蒸留水中でインキュベートし、次いで、グラム単位の重量を使用して製剤の接着強度を測定した。図5は、本発明による製剤の接着強度が、添加される活性化剤の体積を最適化することによっても改善され得る(製剤2B)ことを示す。結果はまた、本発明による製剤(製剤2B)の接着強度が市販のシーラントTisseel(登録商標)に匹敵することを示す。
【0038】
例6
この例は、患者から採取した血液を含有する7本の気密チューブ(9ml)の試料から始まる。チューブを580gの速度で室温で8分間遠心分離する。遠心分離の結果として、各チューブに含有される血液は、いくつかの画分に分割される。上部画分、すなわち多血小板血漿(PRP)画分を白色チューブに抽出し、合計24mlの血漿を得る。血漿を、それぞれ6mlの血漿を含有する4本のチューブに分ける。試料を、以下に従ってプロセシングする。
-活性化剤対照試料:PRPを、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料1:PRP温度を51℃に上昇させる。その後、それを580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の2/3を除去し、血小板及びタンパク質沈殿物を初期体積の残りの1/3に再懸濁する。製剤を、PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μlで活性化する。
-製剤試料2:PRP温度を51℃に上昇させる。その後、それを、580gの速度で室温で8分間遠心分離する。初期体積の1/2を除去し、血小板及びタンパク質沈殿物を初期体積の残りの1/2に再懸濁する。製剤を以下の活性化剤/製剤体積比で活性化する。
1.PRP 1ml当たりPRP上清(333μl)及び10%塩化カルシウム20μl(製剤2)。
2.PRP 1ml当たりPRP上清(166.7μl)及び10%塩化カルシウム10μl(製剤2B)
-Tisseel(登録商標)試料:Tisseel(登録商標)市販の接着剤及びシーラント(Baxter S.L.(バレンシア、スペイン))を購入し、製造業者の指示に従って使用した。
【0039】
ブタ皮膚の生物学的試料を調製した。皮膚試料を、汎用接着剤を使用して支持体に接着した。次いで、2つの皮膚標本を前述の試料に接着した。次いで、製剤の接着の強度を、グラム単位の重量を使用し、重量を皮膚標本の支持体に掛けて測定した。図6は、接着強度の改善における本発明の新規性及び有効性、ならびに添加される活性化剤の体積を最適化することによって接着能力をさらに増加させることができる(製剤2B)ことを示す。結果はまた、本発明による製剤(製剤2B)の接着強度が市販のシーラントTisseel(登録商標)の接着強度に匹敵することを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6