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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】衣服及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/02 20060101AFI20230609BHJP
   A41D 27/20 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
A41D1/02 D
A41D1/02 Z
A41D27/20 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022125656
(22)【出願日】2022-08-05
【審査請求日】2022-10-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (イ)HPでの公開:2022年1月28日 https://www.isseymiyake.com.ja/ https//www.isseymiyake.com/ja/news/8823 (ロ)インスタグラムでの公開:2022年1月28日 https://www.instagram.com/im_men_official/ https://www.instagram.com/p/CZRLD4wBRbn/ https://www.instagram.com/p/CZask5yPOAa/ (ハ)実店舗における販売:2022年2月1日 株式会社イッセイミヤケの店舗 (ニ)オンラインショップにおける販売:2022年2月1日 https://store.isseymiyake.com/ https://store.isseymiyake.com/c/la_all_all/LA21FA121
(73)【特許権者】
【識別番号】390033891
【氏名又は名称】株式会社三宅デザイン事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】小林 信隆
(72)【発明者】
【氏名】河原 遷
(72)【発明者】
【氏名】板倉 裕樹
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-95808(JP,U)
【文献】特表2009-544860(JP,A)
【文献】登録実用新案第3190402(JP,U)
【文献】実公昭41-10439(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/02
A41D 3/00
A41D 27/00-27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃及び後ろ身頃を構成する1枚の布地からなる第1パーツと、
肩部、背部及び袖部を構成する1枚の布地からなる第2パーツと、を含み、
前記第1パーツ及び前記第2パーツが互いに縫合され、
縫合された前記後ろ身頃及び前記背部が、外側に開口する略袋状の収納部を形成すること、
を特徴とする衣服。
【請求項2】
前記収納部が、前記開口部側から裏返すことで前記衣服を収納可能であること、
を特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前身頃及び後ろ身頃を構成する第1パーツと、肩部、背部及び袖部を構成する第2パーツと、を布地から切り出し、
前記第1パーツ及び前記第2パーツを縫合し、
前記後ろ身頃及び前記背部を縫合して、外側に開口する略袋状の収納部を形成すること、
を含む衣服の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1(実用新案登録第3153721号公報)は、主として、前身衣と、後身衣と、左右の袖と、衿により構成されたコートを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3153721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコートを含めて従来の衣服(上衣)は多数のパーツを縫い合わせることで作製される。コートの場合、典型的には、少なくとも袖部が左右二枚、前身頃が左右二枚、後見頃が一枚の合計五枚のパーツで構成される。また、襟部が更に別のパーツで構成されるなど、より多い枚数のパーツで構成される例も多々ある。しかしながら、構成するパーツの枚数が増えると、それだけ縫製の工程が増え、必要な費用と労力が増えるという課題がある。その上、縫合による凸部が増え、着心地を制約する要素となりやすい。
【0005】
そこで、本発明の目的は、一方で、一回のカットで布地から切り出せる二枚のパーツのみで構成することでパーツの枚数を可能な限り少なくしつつ、それと同時に、二枚のパーツにより衣服のベースを立体的に構成することを可能とすることで、より少ない工程により、より着心地のよい衣服を作製することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく、本発明は、
前身頃及び後ろ身頃を構成する1枚の布地からなる第1パーツと、
肩部、背部及び袖部を構成する1枚の布地からなる第2パーツと、を含み、
前記第1パーツ及び前記第2パーツが互いに縫合され、
縫合された前記後ろ身頃及び前記背部が、外側に開口する略袋状の収納部を形成すること、
を特徴とする衣服、を提供する。
【0007】
本発明の衣服では、前記収納部が、前記開口部側から裏返すことで前記衣服を収納可能であること、が好ましい。
【0008】
また、本発明は、
前身頃及び後ろ身頃を構成する第1パーツと、肩部、背部及び袖部を構成する第2パーツと、を布地から切り出し、
前記第1パーツ及び前記第2パーツを縫合し、
前記後ろ身頃及び前記背部を縫合して、外側に開口する略袋状の収納部を形成すること、
を含む衣服の製造方法、をも提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一回のカットで布地から切り出せる二枚のパーツのみで構成することでパーツの枚数を可能な限り少なくしつつ、それと同時に、二枚のパーツにより衣服のベースを立体的に構成することができる。したがって、縫合箇所を減少させることができるなど、より少ない工程により、より着心地のよい衣服を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る衣服1の前面図及び後面図である。
図2A】布地から切り出された第1パーツ2及び第2パーツ3を示す図である。
図2B】前身頃11,12が折り返されつつある状態の第1パーツ2と、肩部15及び袖部16,17が折り返されつつある状態の第2パーツ3と、を示す図である。
図2C】第1パーツ2の上端が第2パーツ3で覆われた状態を示す図である。
図3A】袖部16,17を内側に寄せた状態の衣服1を示す図である。
図3B】袖部16,17及び身頃11~13を内側に寄せた状態の衣服1を示す図である。
図3C】袖部16,17及び身頃11~13を内側に折り畳んだ状態の衣服1を示す図である。
図3D】衣服1の上部(襟部又は首部)及び下部(裾部)を折り返した状態の衣服1を示す図である。
図3E】上部及び下部を更に折り返した状態の衣服1を示す図である。
図3F】収納部18を裏返し、下部を更に折り返した状態の衣服1を示す図である。
図3G】下部を更に折り返した状態の衣服1を示す図である。
図3H】折り返した下部を収納部18に収納した状態の衣服1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る衣服1及びその製造方法の代表的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もあり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
本実施形態では、衣服1として上着を想定している。上着の例としてコート、ブルゾン、ジャンパー、ジャケットが挙げられるが、これらに限られない。
【0013】
衣服1は、第1パーツ2及び第2パーツ3を少なくとも含んで構成される。ただし、衣服1は、他のパーツを含んでもよい。他のパーツとしては例えば襟、フード、ポケット、ファスナーが挙げられるが、これらに限られない。
【0014】
衣服1の生地(布地)に利用可能な繊維としては、天然繊維でも化学繊維でもよいが、撥水性のある軽量なテキスタイルに仕上げる観点からは、化学繊維、なかでもポリエステル繊維が好適である。また、細い糸を高密度に織ることで、撥水性のある軽量なテキスタイルに仕上げることができる。
【0015】
ここで、第1パーツ2は、前身頃11,12及び後ろ身頃13を構成する1枚の布地からなる。換言すると、第1パーツ2は、1枚の布地で構成されており、前身頃11,12及び後ろ身頃13を含んでいる。また、第2パーツ3は、背部14、肩部15、及び袖部16,17を構成する1枚の布地からなる。換言すると、第2パーツ3は、1枚の布地で構成されており、背部14、肩部15、及び袖部16,17を含んでいる。したがって、第1パーツ2及び第2パーツ3が互いに縫合されることで、衣服1のベースが立体的に構成される(図1参照)。
【0016】
縫合された後ろ身頃13及び背部14は、外側に開口する略袋状の収納部18を形成しており、収納部18の開口18Aに相当する部分は縫合されていない。本実施形態では、収納部18の開口18Aは下向きであるが、これに限られない。したがって、追って説明するように、衣服1は、収納部18を開口18A側から裏返すことで収納部18内に収納可能である(図3E図3F参照)。
なお、収納部18には環状のストラップ19が縫い付けられている。ストラップ19は、衣服1としての使用時には背部14で覆われ(図1(B)参照)、収納時には外部に露出する(図3H参照)。
【0017】
次いで、第1パーツ2及び第2パーツ3について詳細に説明する。
図2Aに示すように、第1パーツ2は、左右の前身頃11,12と、前身頃11,12の間に介在する後ろ身頃13と、から構成される、略矩形の1枚の布地である。つまり、第1パーツ2において、前身頃11、後ろ身頃13及び前身頃12は継目なく繋がっている。
【0018】
また、第1パーツ2においては、前身頃11,12と後ろ身頃13との境界領域の上端部には、腕を通すために又は袖部16,17との接続のための切欠き2A,2Bが形成されている。
更に、前身頃11,12の上縁11A,12Aは、肩部15の前縁15A,15Bとの接続のために(つまり衣服1の肩周りを立体的に構成するために)、後ろ身頃13の上縁13Aに対して傾斜している。換言すると、図2Aにおいて、上縁11A,12Aは、第1パーツ2の両側から中心に向かって下がるように傾斜している。
前身頃11,12の上縁11A,12Aの先端部11B,12Bは、肩部15の切欠き15Cとともに首部を形成するために又は襟との接続のために、切り欠かれている。
【0019】
次に、第2パーツ3は、略矩形状の背部14と、背部14から延びる肩部15と、肩部15から両側に延びる袖部16,17と、から構成される1枚の布地である(図2A参照)。つまり、背部14、肩部15、及び袖部16,17は継目なく繋がっている。
【0020】
ここで、背部14は、後ろ身頃13の上部と重ねられ、開口18Aに相当する部分を除き、縫合により収納部18を形成する(図1(B)参照)。
【0021】
肩部15は略矩形状であり、前身頃11,12の先端部11B,12Bとともに首部を形成するために又は襟との接続のために、切欠き15Cを有する。切欠き15Cの両側には、両側にむかって下がるように傾斜する前縁15A,15Bが設けられている。前縁15A,15Bは、前身頃11,12の上縁11A,12Aと連結される。
【0022】
袖部16,17は、背部14から互いに反対方向に延びる略矩形状の部位である。縁部16A,16Bは第1パーツ2の切欠き2Aと、縁部17A,17Bは切欠き2Bと、それぞれ連結される。
また、縁部16C,16D及び縁部17C,17Dはそれぞれ互いに連結されて袖を形成する。
切欠き16E,17Eは、それぞれ縫合されることで袖部16,17の幅ないしゆとりを調整する。
【0023】
以上の形状ゆえに、第1パーツ2及び第2パーツ3は一回のカットで布地から切り出せる。また、第1パーツ2及び第2パーツ3を縫合することで衣服1のベースを構成することができる(図2A図2C参照)。
【0024】
次いで、衣服1の製造方法について説明する。
衣服1の製造方法は、次の工程を含む。
【0025】
まず第1パーツ2及び第2パーツ3を布地から切り出す(図2A参照)。ここで、第1パーツ2及び第2パーツ3は1枚の布地から切り出されてもよいし、2枚の布地からそれぞれ切り出されてもよい。
【0026】
次いで第1パーツ2において、前身頃11,12を後ろ身頃13に対して折り返す。併せて、第2パーツ3において肩部15及び袖部16,17の上部を折り返す(図2B参照)。このとき、背部14と後ろ身頃13の上部とが重なるように、第1パーツ2と第2パーツ3とを配置する(図2C参照)。
【0027】
この状態で第1パーツ2及び第2パーツ3を縫合することで、衣服1のベースを形成する(図1(A)参照)。また、後ろ身頃13及び背部14を縫合して、収納部18を形成する(図1(B)参照)。併せて、襟、フード、ポケット、ファスナーなどの他のパーツを取り付けてもよい。
【0028】
上記のように構成した又は作製した衣服1は、収納部18にコンパクトに収納することができる。
【0029】
すなわち、衣服1について、図1(A)に示す展開状態から、袖部16,17を身頃11~13側に寄せていき(図3A図3B参照)、身頃11~13の幅が収納部18の幅とほぼ同じ程度になるように身頃11~13及び袖部16,17を折り畳む(図3C参照)。
【0030】
次いで、衣服1を上側(首側又は襟側)及び下側(裾側)から折り畳んでいき(図3D図3E参照)、衣服1の上側が収納部18に対応する位置まで折り畳まれたら、収納部18を開口18A側から裏返す。これにより、収納部18の内面及びストラップ19が露出する(図3F参照)。
【0031】
衣服1の下側を更に折り畳んでいき(図3G参照)、最後に衣服1の下側を収納部18内に折り込む(図3H参照)。これにより、衣服1が簡易かつコンパクトに収納され、容易に持ち運ぶことが可能である。
なお、衣服1を収納状態から展開状態にするには、上記と逆の手順を行えばよい。
【0032】
本実施形態では、一回のカットで布地から切り出せる二枚のパーツ、すなわち第1パーツ2及び第2パーツ3のみで構成することでパーツの枚数を可能な限り少なくしつつ、それと同時に、二枚のパーツにより衣服1のベースを立体的に構成することができる。すなわち、複数のパーツを縫い合わせる従来の服づくりとは明らかに異なる手法により衣服を製造することができる。したがって、縫合箇所を減少させることができるなど、より少ない工程により、より着心地のよい衣服を作製することができる。
【0033】
また、細い糸を高密度に織り、撥水性のある軽量なテキスタイルに仕上げることで、コンパクトに丸めて持ち運べる仕様を実現することができる。
【0034】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更した態様も全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 衣服
2 第1パーツ
3 第2パーツ
11,12 前身頃
13 後ろ身頃
14 背部
15 肩部
16,17 袖部
18 収納部

【要約】
【課題】 一回のカットで布地から切り出せる二枚のパーツのみで構成することでパーツの枚数を可能な限り少なくしつつ、それと同時に、二枚のパーツにより衣服のベースを立体的に構成することを可能とすることで、より少ない工程により、より着心地のよい衣服を作製する。
【解決手段】 前身頃及び後ろ身頃を構成する1枚の布地からなる第1パーツと、肩部、背部及び袖部を構成する1枚の布地からなる第2パーツと、を含み、前記第1パーツ及び前記第2パーツが互いに縫合され、縫合された前記後ろ身頃及び前記背部が、外側に開口する略袋状の収納部を形成すること、を特徴とする衣服。
【選択図】図2A
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H