(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】光学的に可変なセキュリティ要素
(51)【国際特許分類】
B42D 25/30 20140101AFI20230609BHJP
【FI】
B42D25/30
(21)【出願番号】P 2017530114
(86)(22)【出願日】2015-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2015002417
(87)【国際公開番号】W WO2016020066
(87)【国際公開日】2016-02-11
【審査請求日】2018-11-21
【審判番号】
【審判請求日】2020-04-05
(31)【優先権主張番号】102014018512.5
(32)【優先日】2014-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518071246
【氏名又は名称】ギーゼッケ アンド デブリエント カレンシー テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】フーセ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルネ,アストリッド
(72)【発明者】
【氏名】イムホフ,マーチン
(72)【発明者】
【氏名】ケック-アンゲラ-,アンゲリカ
(72)【発明者】
【氏名】ドルフラー,ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,ピーター
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】藤本 義仁
【審判官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-83721(JP,A)
【文献】特開2007-223308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0246932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/30-25/391
B41M 3/14
G09F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的可変のセキュリティ要素(12)において、
セキュリティ要素が傾斜すると視る方向が変化することに伴って見え方が異なり、前記セキュリティ要素(12)は、対向する第1主面と第2主面とを有する基板(28)と、前記第1主面上に配置される該光学的可変のパターン(20)とを有し、前記光学的可変のパターン(20)は、凸状又は凹状の複数のエンボッシング要素からなるエンボッシング・パターン(22)とコーティング層(24)とを有し、
前記コーティング層(24)は、プリントされたライングリッド(30)と、前記ライングリッド(30)と明暗や色彩の差異によって際立たせるコントラストをなす背景層(26)とを有し、
前記エンボッシング・パターン(22)は、凸状又は凹状のエンボッシング要素(34)からなる二次元の格子配列を有し、
前記コーティング層(24)と前記エンボッシング・パターン(22)は、前記エンボッシング要素(34)の各々上に、前記ライングリッド(30)のライン(32)のライン・セグメント(36)が少なくとも1つ存在するように、組み合わされ、
以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータを有し、
ここで、上記第1のパラメータ並びに、
上記第2のパラメータ及び上記第3のパラメータの内の少なくとも一つのパラメータは、前記光学的に可変のパターン(20)全体に渡って、基板におけるエンボッシング要素の位置毎に、それぞれ特定されるものであり、その結果、前記ライングリッド(30)に起因して、前記セキュリティ要素(12)が傾斜した時に、視覚的に感知できる動き効果が表れることを特徴とする光学的に可変なセキュリティ要素であって、
前記コーティング層の前記ライングリッドは、交差
しない複数のラインを含み、これらのラインの間の幅は、ラインの長さ寸法に沿って
、ほぼ一定であり
(ただし、平行の場合を除く)、
前記視覚的に感知できる動き効果が、ポンプ効果または回転効果である、
光学的に可変なセキュリティ要素。
【請求項2】
前記背景層(26)は、高反射性の背景層、光沢のある銀色又は金色のフォイル、銀色のフォイル、疑似金属プリント層、銀色、金色又は銅色のプリント層の内のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のセキュリティ要素。
【請求項3】
前記背景層(26)が前記高反射性の背景層の場合、前記エンボッシング要素(34)は、凹状又は凸状ミラーとして機能することを特徴とする請求項2に記載のセキュリティ要素。
【請求項4】
前記背景層(26)は、着色された背景層
又は光沢のある背景
層であることを特徴とする請求項1記載のセキュリティ要素。
【請求項5】
前記背景層(26)が着色された背景層又は光沢のある背景層の内のいずれかである場合、前記背景層は、点状又は線状のギャップで孔が開けられている又は大きな領域で省かれており、かつ、ライングリッドもまた省かれていることを特徴とする請求項1-4のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項6】
前記背景層(26)が着色された背景層又は光沢のある背景層の内のいずれかである場合、前記背景層は、点状又は線状のギャップで孔が開けられている又は大きな領域で省かれており、かつ、ライングリッドは省かれていないことを特徴とする請求項1-4のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項7】
前記複数のエンボッシング要素は、凹状又は凸状の丸い構造物であって、平坦化された凹状又は凸状の半球状構造物、凹状又は凸状の非球状構造物、凹状又は凸状の円形又は多角形の基礎部分を有する椀状の構造物のいずれかから形成されることを特徴とする請求項1
-6のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項8】
複数のエンボッシング要素は、前記エンボッシング要素の二次元の格子配列に加えて、細長い凹状又は凸状のエンボッシング要素を有する副領域を少なくとも1つ有することを特徴とする請求項1-7のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項9】
複数のエンボッシング要素の二次元の格子配列は、凹状又は凸状のエンボッシング要素の規則的な二次元の格子配列であることを特徴とする請求項1-7のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項10】
前記ライングリッドは、交差しない複数本のラインであることを特徴とする請求項1-9のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項11】
前記「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」は、位相関数φ(x、y)で与えられ、前記位相関数φ(x、y)は、光学的に可変のパターン内のエンボッシング要素の位置(x、y)に依存し、その位相関数の値は、ライン・セグメントの長さ方向に直交するエンボッシング要素上のライン・セグメントの相対位置を規定し、[0.1]に正規化され、その位相関数φ(x、y)は、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、視覚的に感知できるという動き効果が表れるように、基板におけるエンボッシング要素の位置毎に、それぞれ特定されるものであることを特徴とする請求項1-10のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項12】
前記ライングリッド(30)の複数のライン(32)は、平均線間距離WLを有し、前記エンボッシング要素(34)は、格子距離Wpの二次元の格子配列で配置され、WpはWLに等しいことを特徴とする請求項1-11のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項13】
前記コーティング層(24)は、複数のライングリッドを有し、各ライングリッドは、ライン・セグメント(36)を備える複数のライン(32)からなり、そして、以下の第1、2,3のパラメータ「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
前記各ライングリッド(30)のライン・セグメント(36)に対し、互いに独立して変化する「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータを、有することを特徴とする請求項1-12のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項14】
異なるライングリッドが
、異なる方向に、視覚的
に異なる動き効果を生成することを特徴とする請求項13記載のセキュリティ要素。
【請求項15】
前記一つのライングリッドに含まれる複数のラインの各ラインは、別のライングリッドに含まれる複数のラインの色とは異なる色が付されていることを特徴とする請求項13又は14記載のセキュリティ要素。
【請求項16】
前記セキュリティ要素は、パターン、キャラクター、コードの内のいずれかの形態で、前記セキュリティ要素を傾斜させた時も、視覚的に動き効果が表れず静止している副領域を有することを特徴とする請求項1-
15のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項17】
前記副領域内のライングリッドは省かれ、前記副領域内でライン・セグメントは複数のエンボッシング要素の上には存在せず、前記セキュリティ要素を傾斜させた時も、前記副領域は視覚的に動き効果が表れず静止していることを特徴とする請求項
16記載のセキュリティ要素。
【請求項18】
請求項1-
17のいずれか1項に記載のセキュリティ要素を有する有価物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価商品を保護する光学的に可変のセキュリティ要素に関する。このセキュリティ要素の基板は対向する第1主面と第2主面とを有する。この第1主面上にエンボッシング・パターンとコーティング層とを有する光学的可変パターンが配置されている。本発明は、セキュリティ要素とこのようなセキュリティ要素を搭載したデータ・キャリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データ・キャリア(例、有価証券、認証証券、他の有価商品、ブランド品)は、その保護のために、セキュリティ要素を具備する。このセキュリティ要素により、データ・キャリアの真性性(本物であること)が確認され、同時に模造品対策を提供できる。
【0003】
見る角度にによって変わる印象を与えるセキュリティ要素は、真性性を保護するのに特別な役目を担う。このようなセキュリティ要素は現在のコピー技術でもってしても再現/再生が不可能だからである。セキュリティ要素には光学的に可変な要素が付与さる。この光学的に可変な要素は、視る角度により、それを見る者に様々な印象を与える。視る角度によって異なる色/輝度の印象あるは別のグラフィック・モティーフを表示する。
【0004】
傾斜(以下「回転」とも称する)したイメージに加えて、従来技術における他のセキュリティ要素は、見る者に見る方向に依存して異なる表示/印象を与える。この異なる表示/印象は、対応するマイクロ・イメージ要素が、マイクロレンズで拡大して見えるものである。このセキュリティ要素の一例は、所謂モアレ拡大配列(moire magnification arrangennt)と他の微細光学表示配列(micro-optical depiction arrangent)である。セキュリティ要素内には、マイクロ・イメージからなるグリッド(以下「格子状配列」とも称する)に加え、完全に整合配置されたグリッド、マイクロレンズのグリッド、凹状のミラーのグリッド、開口マスクのグリッドが生成される。このような微細光学表示配列は、製造プロセスにおいて技術的要求が厳しく、あらゆる種類の有価物品には経済的に付加/生成できず、他のセキュリティ要素と組み合わせることもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光学的に可変なセキュリティ要素を提供し、従来技術の欠点を解決することである。特に経済的かつ容易に製造が可能なセキュリティ要素を提供し、このセキュリティ要素を傾斜(回転)させた時に、視覚的にアピールする動き効果/印象を表し、データ・キャリア内の他のセキュリティ特徴と容易に組み合わせることのできるセキュリティ要素を提供することである。
【0006】
上記の目的は以下の独立請求項に記載した発明により達成される。本発明の更なる変形例は以下の従属請求項に記載された発明により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明のセキュリティ要素においては、コーティング層とエンボッシング・パターンとを有する。
前記コーティング層は、インプリント(プリント)されたライングリッドと、前記ライングリッドと対照/コントラストをなす背景層とを有する。
前記エンボッシング・パターンは、凸状又は凹状のエンボッシング要素の二次元のグリッド(格子配列)を有する。
前記コーティング層とエンボッシング・パターンは、前記エンボッシング要素の各々上に、前記ライングリッド内のラインのライン・セグメントが少なくとも1つ存在するように、組み合わされる。
以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータ
の内の少なくとも一つのパラメータは、前記光学的可変パターン全体に渡って位置依存性があり、その結果、前記ライングリッドに起因して、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、動き効果/印象特に上下動作効果(pump effect)又は回転効果(rotation effect)が表れる。
【0008】
本明細書において、用語「少なくとも1つのライングリッド」の代わりに単に「ライングリッド」を用いることがある(即ち用語「少なくとも1つ」を省くことがある)。これは例えばコーティング層が複数のライングリッドを有することを除外する意ではない。「少なくとも1つのライングリッド」は通常全てのライングリッドに適用されることを意味する。特に「複数のライングリッド」の場合には、「コーティング層とエンボッシング・パターンは、前記エンボッシング要素の各々上に前記ライングリッド内のラインのライン・セグメントが少なくとも1つ好ましくは全て存在するように組み合わされる。」同様に上記の「パラメータの内の少なくとも一つのパラメータは前記光学的可変パターン全体に渡って位置依存性がある。」に関しては、少なくとも一つのパラメータにより好ましくは全てのパラメータにより、セキュリティ要素が傾斜した時に、動き効果/印象が生成される。このことは、「背景層の下のライングリッド」又は「少なくと1つのインプリントされたライングリッドを有する第2のコーティング層」にも適用される。即ち本明細書においては特に断りが無い限り発明の構成要素又は構成部品は単数/複数を問わない。
【0009】
ライングリッドは、それとは対照/コントラストをなす(それから際立たせる)背景層の上にインプリント(又はプリント)される。この場合、光学的可変パターンの領域に隣接して形成される。あるいはライングリッドを最初にインプリントし、その後背景層を適当なギャップをもって形成してもよい。あるいは、ライングリッドの上に背景層を形成した後、ある領域で背景層を除去することにより、ライングリッドを露出させるて形成することもできる。かくしてライングリッドのビューを表す。背景層とライングリッドとを、エッジからエッジまで互いに隣合わせて形成してもよい。この場合背景層は視覚的な背景層を形成し、ライングリッドにより生成された動き効果を与える。
【0010】
背景層は、高反射性の背景層、光沢のある銀色背景層、金色のフォイル、銀色のフォイル、疑似金属(metallic-seeming)プリント層、銀色、金色、銅色のプリント層のいずれでもい。さらにまた、金属化層、金属蒸着フォイル、フォイル・ストリップ、パッチ等も、背景層として用いられる。コーティング用金属材料としてはアルミが用いられる。選択的事項として、疑似金属プリント層と蒸着疑金属層は、接着促進層の上例えば光沢のある接着促進層(プライマー)の上に、スクリーン・プリント技術で形成される。銀色、金色、銅色のいずれのプリント層も、スクリーン・プリント(screen printing)技術又はフレクソ・プリント(flexo printing)技術で、オフセット・インクで、形成される。
【0011】
上記の動き効果は、光沢度の高い直接反射する背景層が用いられた場合は、特に著しい。
【0012】
高反射性の背景層が使用されるために、各エンボッシング要素は、小型の凹状ミラー又は凸状ミラーとして機能する。セキュリティ要素が傾斜した時に得られる動きの方向に関しては、凹状ミラーと凸状ミラーは逆である。
【0013】
他の実施例と同様に、背景層は、着色された特に単色(例:白色)の背景層、光沢のある背景層、例えば接着促進層(プライマー)、スクリーン・プリント技術で形成された光沢のある接着促進層(ピグメント又は充填剤の有無を問わない)、セキュリティ要素の基板の不透明な又は光沢のある表面のいずれかである。背景層が高反射性層でない場合には、ライングリッドは高い面積密度でインプリントされる。
【0014】
基板は、不透明であるか、第1主面上に配置された光学的可変パターンの領域では、透明又は半透明である。基板が透明又は半透明の場合には、光学的可変パターンは、第1主面と第2主面の両方から見ることができる。セキュリティ要素が両面デザインを有するのは好ましい。この場合動き効果は両面から(反対側からも)見た時も知覚できる。異なる色のを塗布した場合は異なる動き効果となる。例えば、第1主面から見た時は傾斜効果、第2主面から見た時は回転効果である。
【0015】
基板内に透明領域又は半透明領域の形成は、不透明なポリマー製基板内の透明なポリマー領域、透明なハイブリッド窓を有するハイブリッド基板、部分的に不透明なインク受領領域を有する透明なポリマー基板、透明なプリント可能なフォイル・ストリップ、パッチでカバーした任意の基板(特に紙製の基板)の貫通孔のいずれかで、行われる。
【0016】
基板が、第1主面上に配置される光学的可変パターンの領域で透明又は半透明の場合、一実施例では、コーティング層は、一方で、第1のライングリッドとして述べたライングリッドを含む。この実施例では背景層の上に配置されたものを含む。他方で、コーティング層は、前記背景層の下に配置され、それと対照をなすライングリッドを有する。各エンボッシング要素の上に更なるライングリッドのラインのライン・セグメントが配置される。、更なるライングリッドに対し、以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータの内の少なくとも一つのパラメータは、前記光学的可変パターン全体に渡って位置依存性があり、その結果、前記ライングリッドに起因して、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、動き効果/印象特に上下動作効果又は回転効果が表れる。
【0017】
この実施例では、背景層の上に配置されたライングリッドと、背景層の下に配置されたライングリッドとは、同一のエンボッシング・パターンと同一の背景層を使用する。背景層は、不透明又は高反射の層であり、少なくともライングリッドの領域ではギャップを有さない。これにより両側の視覚情報が混合するのを回避している。
【0018】
両面のデザインを実現するために、基板の第1主面上に配置される第1の光学的可変パターンは第2主面上に配置される第2の光学的可変パターンと組み合わされる。
第2の光学的可変パターンは、第2のエンボッシング・パターンと第2のコーティング層とを有する。
第2のエンボッシング・パターンは、第1主面の第1のエンボッシング・パターンと合同であるが逆であり、第2のコーティング層はインプリントされたライングリッドを有する。
第2のコーティング層と第2のエンボッシング・パターンとは、第2のエンボッシング・パターンの第2のエンボッシング要素の各々上に、第2のコーティング層のライングリッドのラインのライン・セグメントが少なくとも1つ存在するように、組み合わされる。
第2のコーティング層のライングリッドに対し、以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータの内の少なくとも一つのパラメータは、前記光学的可変パターン全体に渡って位置依存性があり、その結果、前記第2コーティング層のライングリッドに起因して、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、動き効果/印象特に上下動作効果又は回転効果が表れる。
【0019】
第2主面のエンボッシング・パターンは、第1主面のエンボッシング・パターンと同一のステップで同時に形成される。第1主面のエンボッシング・パターンは、凹刻印刷装置(intaglio printing unit)でブラインド・エンボス技術で形成される。例えば、エンボッシング・ステップでは基板の第1主面はエンボッシング・プレートに面し、第2主面は、背圧ブランケットに接触している。かくして、製造条件により、第1主面のエンボッシング・パターンにより、変形が第2主面に形成される(第2主面が変形する)。本発明によれば、これを反対面のエンボッシング・パターンとして利用する。第2主面のエンボッシング・パターンは、第1主面のエンボッシング・パターンと同一のパターンの繰り返しで一致して形成される。しかし、第2主面のエンボッシング・パターンは、第1主面のエンボッシング・パターンとは反転した形状(inverse geometry)をしている。このことは、各場合、表面に関しては、第2主面の凹部は第1主面の凸部に対応する。そしてその逆でもある。背圧ブランケットを使用することにより、第2主面のエンボッシング・パターンは、第1主面のエンボッシング・パターンに比較してより粗くなっている。
【0020】
第2のコーティング層は、ライングリッドだけを有し、第1の光学的可変パターンの背景層を用いて、コントラスト(対照)効果又は反射効果を得ている。別の構成として、第2のコーティング層は、ライングリッドと対照をなす高反射性の第2の背景層を有する。これにより高い反射性を得ている。第2の背景層を第2の主面に形成又は配置する為に、第1の背景層を形成する方法は第2の背景層にそのまま適用できる。第1と第2の背景層は、同じでも異なってもよい。
【0021】
トップ・ビューで知覚できる動き効果に加えて、セキュリティ要素内の透過情報領域(piece of see-through information)、対照をなす背景層(2つの背景層を有する場合は少なくとも1つの背景層)には、点形状又は線形状のギャップで孔が開けられか又は大きな領域で背景層が省かれる。孔の開けられた領域又は背景層が省かれた領域においては、背景層にインプリントされたライングリッドは省くことができる。以下に詳述するように、ライングリッドは、例えば、色で又は大きな領域のギャップで変更することができる。ギャップは、ある領域で既に形成されている背景層をレーザーはく離(laser impingement )で除去することにより、或いはある領域のみに背景層を形成することにより、形成することができる。
【0022】
一実施例では、エンボッシング要素は、凹状又は凸状の円形構造物、特に押しつぶされた半球構造物、押しつぶされた非球状構造物、又はカロット(calotte:ハエの目の配列)等で形成される。エンボッシング要素の基礎部分は、円形、多角形(特に四角形、六角形)である。更に、ピラミッド形状特に多数の表面を有する形状、例えば八角形の基礎部分も使用できる。エンボッシング要素として、細長い凹状又は凸状のエンボッシング要素、楕円形状又は棒形状のエンボッシング要素も含むことができる。別の形状のエンボッシング要素をエンボッシング・パターン内に形成し偽造対策を向上させることもできる。エンボッシング要素の寸法は、50μm-500μmの範囲内特に260μm-300μmの範囲内にあり、その高さは、200μm以下特に100μm以下特に好ましくは30μm-90μmの範囲内である。セキュリティ要素の基板が平坦な担体材料製例えばポリマー製の場合は、エンボッシング要素の寸法は、50μm-150μmの範囲内にあり、その高さは75μm以下好ましくは50μm以下である。
【0023】
細長いエンボッシング要素においては、そのサイズとは横方向の寸法を意味する。縦(長さ)方向においては、細長いエンボッシング要素は、数mm又は数cmの寸法を有する。球形のエンボッシング要素と細長いエンボッシング要素とを組み合わせることにより、セキュリティ要素に更なる偽造対策が施される。その理由は、球状のマイクロレンズアレイと細長い円筒状レンズのレンズ・アレイは、別々に得られるが、このようなデザインの組み合わせはあり得ないからである。
【0024】
エンボッシング要素は、好ましくは、正方形グレーティング、長方形グレーティング、菱形グレーティング、六角形グレーティング、平行四辺形グレーティングのいずれかの形態で、配置される。グリッドのライン・スクリーン間の距離(即ち格子状(X,Y方向)に離間して配置されているグリッド要素間の離間距離;以下同じ)Wpは、エンボッシング要素の寸法dpと隣接するエンボッシング要素間の距離apの和(dp+ap)から得られる。上記したように、寸法dpは200μm-500μmの範囲内にあり、各グレーティングの方向のライン・スクリーン間の距離Wpは、1.0dpと1.2dpの間にある。距離apは2μm以下である。寸法dpと距離apの両方即ちライン・スクリーン間の距離Wpは、一定又は場所に依存する(場所依存性がある)。正方形グレーティング、長方形グレーティング、六角形グレーティング等の対称性を有するグリッド、一定のライン・スクリーン間の距離Wpを有するグリッド、一定の寸法dpと一定の距離apを有するグリッドが、特に好ましい。場所依存性(location-dependent)のあるライン・スクリーンは、所定のサブグリッドを、横(side-by-side)に並べて配置することにより、形成できる。所定のサブグリッドとは、ライン・スクリーンは、サブグリッド毎に異なるが、サブグリッド内では一定であるサブグリッドのことである。例えば、球状エンボッシング要素からなるサブグリッドと細長いエンボッシング要素からなるサブグリッドとを交互に配置する。これは、エンボッシング要素の形状が異なる為に、異なるライン・スクリーンを既に有する。細長いエンボッシング要素からなるサブグリッドは、一次元のみになる。即ち互いに並列に配置されたNx1の要素から構成される。一実施例では、細長いエンボッシング要素からなるサブグリッドは、パターン、文字、コードのいずれかの形状で配置することができる。
【0025】
偽装対策を強化する為に、エンボッシング要素は、凹状エンボッシング要素と凸状のエンボッシング要素の両方を有し、これらは、パターン、文字、コードのいずれかの形状で配置される。凹状エンボッシング要素と凸状のエンボッシング要素の逆の光学効果により、エンボッシング要素により形成された形状は、ある見る方向(視角)から見知/知覚可能であり、セキュリティ要素内に情報領域(piece of information)を構成する。
【0026】
エンボッシング要素は、エンボッシング要素の二次元の格子配列に加えて、前記二次元の格子配列(two dimensional grid)に対しオフセットしているエンボッシング要素を有する副領域を少なくとも1つ有する。上記の副領域は、パターン、文字、コードのいずれかの形状で配置/展開される。オフセットにより、オフセットしているエンボッシング要素を有する副領域は周囲とは異なる外観(appearance)を呈する。この副領域の形状は、視覚的に感知可能な情報領域を構成する。オフセットしているエンボッシング要素はオフセットしていないエンボッシング要素と同一の形状を有するが、コントラストを上げるために、異なる形状を有してもよい。別の構成として或いはそれに加えて、オフセットしているエンボッシング要素の寸法dpとライン・スクリーン間の距離Wpとは、オフセットしていないエンボッシング要素のそれらとは異なる。
【0027】
更に一実施例によれば、エンボッシング要素の二次元の格子配列は、通常の二次元の格子配列として、時に凹状エンボッシング要素又は凸状のエンボッシング要素の通常の二次元の格子配列として、形成/展開される。
【0028】
コーティング層のライングリッドは、複数本の交差しないほぼ平行なラインである。より具体的には、ライン間は、ラインの長さ方向に沿って、完全には一定ではない距離を有する。ラインは完全には平行ではないため、ライングリッドは正確なライン・スクリーン間の距離(即ちライングリッドのライン間の離間距離;以下同じ)WLを有さない。しかし、ライングリッドの平均的なライン・スクリーン間の距離WLは、隣接するラインの間の距離を、ライングリッドに現れるラインの長さ方向に沿って、平均化して、決定される。本明細書において「ラインが大きな範囲にわたって一定の距離を有する」とは、隣接する2本のラインの間の距離が、その長さ方向の90%に渡って、2本のラインの間の平均距離から20%以下好ましくは10%しか違わないことを意味する。
【0029】
ライングリッドとエンボッシング要素は、ライングリッドに直交して又は60°の角度で、エンボッシング要素のグリッドのライン・スクリーン間の距離Wpが平均ライン・スクリーン間の距離WLに等しくなるように調整して、配置される。かくして、ライングリッド内のラインのライン・セグメントは、エンボッシング要素のグリッド内のエンボッシング要素上に完全に配置されるようになる。
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」は、位相関数φ(x、y)で与えられ、前記位相関数φ(x、y)は、光学的可変パターン内のエンボッシング要素の位置(x、y)に依存し、その位相関数の値は、ライン・セグメントの長さ方向に直交するエンボッシング要素上のライン・セグメントの相対位置を規定し、[0.1]に正規化される。位相関数φ(x、y)は、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、動き効果/印象特に上下動作効果又は回転効果が表れるように、位置依存性がある。
【0030】
一実施例によれば、位相関数φ(x、y)は、エンボッシング要素の位置(x、y)と光学的可変パターンの基準固定点(x0、y0)との間の角度に、直接的特に線形に依存する。前記セキュリティ要素が傾斜した時に、基準固定点(x0、y0)の周りの回転効果が生まれる。前記位相関数は、以下で与えられる。
φ(x、y)=mod((α+k*arg((x-x0)+i(y-y0)))/(2π),1)
言い換えると、φ(x、y)=mod(A,1)
ただし、A=B/2π、B=α+k*arg((x-x0)+i(y-y0))
整数kは0ではなく、αはオフセット角である。mod(x,y)はモジュロ関数であり、arg(z)は、複素数の偏角である。ライングリッドは、基準点の周りで傾斜させた時に、回転する|k|枚の羽根を有する風車のパターンの印象を与える。kの符号は、羽根の回転方向を表す。
【0031】
本発明は1個のライングリッドに限定されない。本発明によれば、コーティング層は複数本のライングリッドを有する。以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータは、各ライングリッドのラインセグメントに対し、互いに独立して変化する。
【0032】
ライングリッドは、同一又は異なる方向(特に反対方向)に、同一又は異なる動き効果/印象を生成する。異なるライングリッドのラインには異なる色が着色され、2個のライングリッドの動き効果が、互いに離れて/異なって見えるようにする。ライングリッド内のラインには、既に場所によって異なる色を有するので異なる色の領域を生成する。
【0033】
ライン方向によって規定される方向が全てのライングリッドに割り当てられるならば、複数のライングリッドの好ましい方向は、60°又は90°の角度を含む。
【0034】
細長くない(例:丸い底面と非球面状の高さを持つ)球状のエンボッシング要素の配列にとって、その位相関数は2つの位相関数の和を用いて表すことができる。
φ(x、y)=φA(x、y)+φB(x、y)
ここで、φA(x、y)は南北方向(x軸を中心)に傾斜した時の動き効果を表し、φB(x、y)は東西方向(y軸を中心)に傾斜した時の動き効果を表す。個々のφA(x、y)とφB(x、y)は、異なる色で同一の動き効果と互いにオフセットする定数とで記述する複数の位相関数で記述される。例えば、赤色と青色とでは、以下で表さされる。
φA(x、y)=φAred(x、y)+φBblue(x、y)
ここで、φAred(x、y)=C+φBblue(x、y)であり、
Cは定数例えば0.5である。
【0035】
前記コーティング層は複数のサブ領域(副領域)を有し、前記副領域内で各ライングリッドは、異なる動き効果を生成する。副領域は、パターン、キャラクター、コードの形態で、配置される。その結果、ある領域では動き効果が異なるために、追加的な情報領域が形成される。例えば、ある副領域は数字で形成され傾斜効果を示し、周囲の副領域は回転効果を示す。近接領域における理論的に異なる動き効果は、極めて目立ち、ユーザにとって、記憶し易く、チェックが容易となる。
【0036】
セキュリティ要素は、パターン、キャラクター、コードの形態で、セキュリティ要素を傾斜させた時も、静止している副領域を有する。
【0037】
一実施例では、副領域内のライングリッドは省かれ、この副領域内ではラインセグメントはエンボッシング要素の上には存在しない。セキュリティ要素を傾斜させた時も、見る角度に関わらず、光学的可変パターンは、副領域内に現れ、高反射で、特に光沢のある銀色、背景層と対照をなすカラーを有し、静的な情報領域を形成する。
【0038】
一変形例によれば、副領域内のラインは、場所に依存する変化をせずに展開され、ある距離で互いに正確に平行に走る。この副領域においては、セキュリティ要素が傾斜すると、ライングリッドはある方向からのみ見ることができ、残りの方向からは、副領域内の光学的可変パターンは、高反射で、特に光沢のある銀色、背景層と対照をなすカラーを有し、かくして静的な情報領域を形成する。
【0039】
他の実施例では、異なる色の複数のライングリッドを有するコーティング層と副領域において、この副領域においては、1色のラインセグメントのみが、エンボッシング要素上に現れる。別の色のライングリッド内のラインはその副領域では省かれる。従って、セキュリティ要素が傾斜すると、省かれていないライングリッドの色の副領域が現れ、残りのセキュリティ要素の視覚的な印象は見る方向によって変わる。
【0040】
一変形例によれば、エンボッシング要素上にライングリッドがない副領域又は一色のライングリッドしかない副領域においては、インクが更に隣接して付加され、静的効果を向上させるてもよい。
【0041】
他の実施例では、副領域内のライングリッドは、強力な不透明インクで、上からプリントされる。
【0042】
別の構成として更なる実施例では、エンボッシング・グリッドは、副領域で削除され、その結果エンボッシング要素は、この副領域内のライングリッドのライン・セグメントには、割り当てられない。セキュリティ要素が傾斜すると、空間的な深さがないため又見る方向への依存性がなくなるため、副領域の視覚的な印象は変わらない。
【0043】
上記したように、光学的可変パターンは、ある領域内のエンボッシング・パターンの変化により形成された追加的な情報領域(additonal piece of information)を含む。この追加的情報領域は、非線形状の(non-line-shaped)エンボッシング要素の配列の変化(例:ある領域のオフセット又はライン・スクリーンの変化)により生成される。このような変化は、ある領域の色の変化となる。ある領域内の非線形状のエンボッシング要素の形状の変化(variation)も本発明に含まれる。この変化は、非線形状のエンボッシング要素の形状の部分的セクションが非線形状のエンボッシング要素の形状から失われるように、非線形状のエンボッシング要素の形状の部分的セクションを提供することにより提供される。
【0044】
この追加的情報領域は、エンボス・ツールで、(マイクロスコピックな)追加的情報領域で生成される。この追加的情報領域は、エンボッシング・パターンに加え(更にその上に重ね)て、副領域内で、ある領域内での凹凸、特にパターン、文字、コードのいずれかの形状に影響を及ぼす。
【0045】
プリントされたライングリッドのライン幅は、エンボッシング要素のグリッドのライン・スクリーン間の距離Wpの0.5倍以下である。そのライン幅は、25μm-300μmの範囲内、特に好ましくは25μm-250μmの範囲内、更に好ましくは25μm-150μmの範囲内である。このラインは一定のライン幅を有するか或いはその長さ方向にそって変化する。特に一方の側又は両方の側で伸びたり縮んだり変化する。プリントされたライングリッドのラインは、ポジティブ(プリントされた)ラインとして、又はネガティブ(プリント・イメージから省かれた)ラインとして示されている。ライン幅は、ポジティブ・ラインの場合は、インクでプリントされた又はカバーされた領域の幅を意味し、ネガティブ・ラインの場合は、インクのついていない省かれたライン形状のスペースの幅を意味する。
【0046】
ライングリッドは、オフセット・プリント法、ニロプリント(nyloprint)法、フレクソ(flexo)・プリント法、スクリーン・プリント法で、酸化乾燥インク、UV乾燥インクを用いて形成される。
【0047】
一実施例では、インプリントされたライングリッドのインク、又は複数のライングリッドに異なるインクが使用される場合は複数のライングリッドの内の少なくとも1つのライングリッドのインクは、発光性インク特に蛍光性インクが好ましい。
【0048】
広い領域において背景層が省かれている実施例では、インプリントされたライングリッドのインクは、又は複数のライングリッドに異なるインクが使用される場合は複数のライングリッドの内の少なくとも1つのライングリッドのインクは、レーザー光吸収混合成分を含む混合インクが好ましい。レーザーはく離により、このようなインクは、ギャップ内で選択的に変質可能である。この方法の基本原理は、DE10 2013 000 152に開示されている。本明細書はこの開示内容を含みそれを参照とする。
【0049】
エンボッシング・パターンは透明なカバー層を具備するのが好ましい。このカバー層は、エンボッシング要素と水平になり/面一になり、かくして光学的可変パターンのキャスティング(casting)を防止できる。
【0050】
セキュリティ要素の基板として、コットン・ファイバーからなる材料製基板、ポリマーからなる材料製基板、ハイブリッド構造物を有する基板のいずれも使用できる。セキュリティ要素は基板を提供するデータ・キャリアの一部であり、かくして、セキュリティ要素の基板はデータ・キャリアの基板の一部を構成する。セキュリティ要素は、その基板を利用して、データ・キャリアに適用/形成できる、或いはデータ・キャリア内に導入できる。その結果、セキュリティ要素とデータ・キャリアは、それぞれ別々の基板を有してもよい。
【0051】
本発明は、上記のセキュリティ要素を有するデータ・キャリアを含む。セキュリティ要素は、一実施例では、ウインドウ領域内或いはその上に、データ・キャリア内の開口を介して、配置できる。このような配置は両面のデザインで特に有効である。両面のデザインにおいては、動き効果の一方は、直接上から見ることができ、他方は、ウインドウ領域内の開口或いはデータ・キャリア内の開口を介して見ることができる。データ・キャリアは、有価証書である。その一例は、銀行券、特に紙幣、ポリマー製紙幣、フォイル合成紙幣、株券、債券、証書、バウチャー、小切手、高価な入場券、身分証、クレディット・カード、銀行カード、キャッシュ・カード、認証カード、個人識別カード、パスポートの個人情報ページである。
【0052】
一実施例では、データ・キャリアは、セキュリティ要素により安全性が確保されたフォイル要素を含む。セキュリティ要素は、フォイル要素の副領域とこのフォイル要素に隣接するデータ・キャリアの上に伸びる。フォイル要素への何らかの措置或いはその除去は、重ね合わせられたセキュリティ要素により、注意を引く。フォイル要素は、セキュリティ・ストリップ、セキュリティ・スレッド、パッチ等により形成される。
【0053】
本発明は、更に上記した可変なセキュリティ要素を製造する方法を含む。同方法は、(A)対向する第1主面と第2主面とを有する基板を用意するステップと、
(B)ライングリッドとそれを際立たせる背景層とが前記基板の第1主面に形成されるように、前記第1主面にコーティング層を形成するステップと、
(C)エンボッシング・パターンが前記第1主面に形成され、凸状と/又は凹状のエンボッシング要素の二次元格子配列が前記第1主面に形成されように、エンボッシングするステップと、
(D)前記コーティング層と前記エンボッシング・パターンとを組み合わせるステップと、
を有し、前記ステップ(D)は、前記エンボッシング要素の各々上に、前記ライングリッド内のラインのライン・セグメントが少なくとも1つ存在するように行われる。
以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータ
の内の少なくとも一つのパラメータは、前記光学的可変パターンの広がりに渡ってその位置によって変わり、その結果、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、前記ライングリッドに起因して、動き効果即ち上下運動の動き効果又は回転効果が表れる。
【0054】
上記の製造方法の変形例において、背景層は前記第1主面に連続的に形成され、ライングリッドは背景層にインプリントされている。静的な情報領域を生成するために、ライングリッドは、背景層と共に、副領域で、パターン、文字、コードのいずれかの形状で、レーザー剥離法で、除去される。その結果、、副領域での視覚的印象は、セキュリティ要素を傾斜した時にも、変化しない。
【0055】
上記の製造方法の変形例において、ライングリッドは第1主面にインプリントされ、背景層はライングリッドの上に連続して形成され、その後、ライングリッドは、ある領域でレーザー剥離法で背景層を除去することにより、露出する。静的な情報領域を更に生成するために、背景層をある領域で除去することは副領域では行われず、その結果、、視覚的印象は、セキュリティ要素を傾斜した時にも、背景層により、支配され続ける。
【0056】
第1主面のエンボッシング・パターンはブラインド・エンボス手法で形成される。
【0057】
上記方法のプロセスは、(X)背景層を好ましくはスクリーン・プリント法で生成するステップと、(Y)ライングリッドを好ましくはオフセット・プリント法でインプリントするステップと、(Z)エンボッシング・パターンを好ましくはノン-インク受領のインタグリオ・プリント(non-ink receptive intaglio printing)法で生成するステップと、を有する。別のプロセスは、(X1)背景層を生成するステップと、(Z1)エンボッシング・パターンを生成するステップと、(Y1)ライングリッドをインプリントするステップと、を含む。
【0058】
エンボッシング・パターンを生成するために、基板を光硬化性ラッカーでコーティングする。このラッカー内にエンボスされるエンボッシング要素の所望の形状と背景層でコーティングされたエンボッシング・パターンは、金属蒸着することにより、或いは適切なプリント用インクでプリントすることにより、得られる。その後、所望のライングリッドが、プリント法でこのように生成されたコーティングされたエンボッシング要素に形成される。ラッカー層の硬化は、UV照射でエンボッシング・ステップの間、行われる。特にエンボス・ツールの反対側にある基板の側から行われる。或いは透明なエンボス・ツールを介して行われる。
【0059】
本発明の更なる変形例は、更に以下のステップ
(E)第2のライングリッドが基板の第2主面に形成されるように、第2主面に第2コーティング層を形成するステップと、
(F)第1主面のエンボッシング・パターンの形成と同時に反転形状のエンボッシング・パターンを第2主面に形成するエンボッシング・ステップと、
(G)第2コーティング層と第2エンボッシング・パターンとを組み合わせるステップ。
とを有する。
ステップ(G)は、前記エンボッシング要素の各々上に、第2コーティング層のライングリッド内のラインのライン・セグメントが少なくとも1つ存在するように行われ、第2コーティング層のライン・グリッドに対し、以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータ
の内の少なくとも一つのパラメータは、前記光学的可変パターン全体に渡って位置依存性があり、その結果、セキュリティ要素が傾斜した時に、ライングリッドに起因して、動き効果即ち上下運動効果又は回転効果が表れる。
【0060】
第1コーティング層のライングリッドと前記第2コーティング層のライングリッドは、それぞれ第1主面と第2主面に同時に形成される。
【0061】
セキュリティ要素は、あらゆる種類の基板(例:コットン製基板、ポリマー製基板、ハイブリッド基板)上に形成される。上記のプリント方法(例:スクリーン、オフセット、フレクソ、インタグリオプリント(凹刻印刷)によりセキュリティ要素のコンポーネントは、所望の目標とする基板の上に直接(通常必要なスレッドやパッチを用いずに)、インプリントされる。エンボッシング・パターンのエンボッシング・ステップの後、基板の反対側の領域はそれにより変形する。その領域は、本発明により使用されない場合、ラッカーで充填され、安定させる。
【0062】
上記のセキュリティ要素は滑らかな動き効果を生成する。この動き効果は、デザインによって、あらゆる方向に傾斜した時に表れる。上記したように極めて有効な視覚的効果があるにもかかわらず、本発明のセキュリティ要素は経済的かつ容易に製造可能である。その理由は、セキュリティの分野で一般的なプリント方法のみを使用するだけでよいからである。セキュリティ要素は、あらゆる種類の基板上に形成され、特別な坦持物/搬送物を必要としない。エンボッシング・パターンを面一にしている為に、キャスティング(casting)が効果的に阻止され、高い偽造対策が達成できる。更に製造方法が簡単なため、セキュリティ要素は、データ・キャリア上のインタグリオ・プリントの特徴に合わせ、それと組み合わせることができる。
【0063】
本発明の更なる態様において、本発明の有価物品の安全を確保する光学的可変のセキュリティ要素は、エンボッシング・パターンとコーティング層とを有する。
コーティング層は、少なくとも1個のインプリントされたライングリッドと高反射性の背景層とを有し、
エンボッシング・パターンは、凸状又は凹状のエンボッシング要素の通常の二次元の格子配列を有し、
コーティング層と前記エンボッシング・パターンは、エンボッシング要素の各々上に、ライングリッド内のラインのライン・セグメントが少なくとも1つ存在するように、組み合わされ、
以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータ
の内の少なくとも一つのパラメータは、前記光学的可変パターン全体に渡って位置依存性があり、その結果、前記ライングリッドに起因して、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、動き効果特に上下動作効果又は回転効果が表れる。
【0064】
光学的に可変なセキュリティ要素を製造する関連する方法は、
(A)対向する第1主面と第2主面とを有する基板を用意するステップと、
(B)ライングリッドと高反射性の背景層とが形成されている基板の第1主面にコーティング層を形成するステップと、
(C)凸状と/又は凹状のエンボッシング要素の二次元グリッドが形成されている第1主面にエンボッシング・パターンを形成するステップと、
(D)前記コーティング層と前記エンボッシング・パターンとを組み合わせるステップと、
を有する。前記ステップ(D)で、前記エンボッシング要素の各々上に、前記ライングリッド内のラインのライン・セグメントが少なくとも1つ存在するよう行われ、
以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータ
の内の少なくとも一つのパラメータは、前記光学的可変パターンの広がりに渡ってその位置によって変わり、その結果、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、前記ライングリッドに起因して、動き効果即ち上下運動効果又は回転効果が表れる。
【0065】
更に一般的なセキュリティ要素において、
*コーティング層は、少なくとも1本のインプリントされたライングリッドとこのライングリッドと対照をなす背景層とを有し、
*エンボッシング・パターンは、細長い凸状又は凹状のエンボッシング要素の一次元の格子配列を有し、
*前記コーティング層と前記エンボッシング・パターンは、前記エンボッシング要素の各々上に、ライングリッドのラインのライン・セグメントが少なくとも1つ存在するように、組み合わされ、
以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータ
の内の少なくとも一つのパラメータは、前記光学的可変パターン全体に渡って位置依存性があり、その結果、前記ライングリッドに起因して、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、動き効果即ち上下運動効果又は回転効果が表れる。
【0066】
上記(二次元)のコーティング層、ライングリッド、背景層、基板の実施例に関する説明は、一次元のグリッドのエンボッシング・パターンを有する実施例にも等しく適用される。二次元のグリッドを有する実施例とは異なり、一次元のエンボッシング要素のグリッドにおいては、(二次元の)ラインセグメントの位置、方向、形状ではなく、光学的可変パターン上のラインの局部的な位置、方向、形状である点に注意を払う必要がある。
【0067】
エンボッシング要素上のラインの局部的位置は、各場合、位相関数φ(x、y)により与えられる。全ての位相関数は、二次元のエンボッシング要素で説明した位相関数で説明したとうりである。しかしこの場合(一次元)の位相関数は、エンボッシング要素上のラインセグメントの相対的位置(relative position)ではなく、エンボッシング要素上のラインセグメントの局部位置(local position)を記述する点に注意を払う必要がある。
【0068】
エンボッシング要素上のラインの局部的位置は、位相関数φ(x、y)により与えられる。位相関数φ(x、y)は、光学的可変パターン内のエンボッシング要素の位置(x、y)に依存し、その位相関数の値は、エンボッシング要素上のラインの局部位置を規定し、[0.1]に正規化される。その位相関数φ(x、y)は、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、動き効果特に上下動作効果又は回転効果が表れるように位置依存性である。
【0069】
一次元のグリッドを有する実施例は、セキュリティ要素が細長いエンボッシング要素に平行な軸の周囲で傾斜した時のみ、動き効果を生成する。セキュリティ要素が細長いエンボッシング要素に直交する軸の周囲で傾斜した時は、動き効果は生成されない。細長いエンボッシング要素が、その長手方向がx軸に平行で、その横方向がy軸に平行な場合には、動き効果は、南北方向(x軸)に傾斜した時のみ表れ、東西方向(y軸)に傾斜した時には、表れない。上記の説明において、位相関数は、南北方向(x軸)に傾斜した時に、動き効果用の部分のみを有する。
φ(x、y)=φA(x、y)
【0070】
位相関数φA(x、y)は、複数の位相関数の和を用いて表すことができる。各位相関数は、異なる色と互いにオフセットした定数で、同じ動き効果を生成する。例えば、赤色と青色とでは、以下で表さされる。
φA(x、y)=φAred(x、y)+φAblue(x、y)
ここで、φAred(x、y)=C+φAblue(x、y)であり、Cは定数である。
【0071】
ラインは細長いエンボッシング要素の長手方向に平行に配置されるのが好ましい。
【0072】
本発明は光学的に可変なセキュリティ要素を製造する別の方法を提供する。この方法は、
(A)対向する第1主面と第2主面とを有する基板を用意するステップと、
(B)ライングリッドとそれを際立たせる背景層とが形成されている基板の第1主面にコーティング層を形成するステップと、
(C)エンボッシング・パターンが前記第1主面に形成され、凸状と/又は凹状のエンボッシング要素の一次元グリッドが前記第1主面に形成されるように、エンボッシング・パターンを形成するステップと、
(D)前記コーティング層と前記エンボッシング・パターンとを組み合わせるステップと、
を有し、前記ステップ(D)は、前記エンボッシング要素の各々上に、前記ライングリッド内のラインのライン・セグメントが少なくとも1つ存在するように行われ、
以下の第1、2,3のパラメータ
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの位置」を示す第1パラメータと、
「前記エンボッシング要素上の前記ライン・セグメントの方向」を示す第2パラメータと、
「前記ライン・セグメントの形状」を示す第3パラメータ
の内の少なくとも一つのパラメータは、前記光学的可変パターンの広がりに渡ってその位置によって変わり、その結果、前記セキュリティ要素が傾斜した時に、前記ライングリッドに起因して、動き効果即ち上下運動効果又は回転効果が表れる。
【0073】
本発明の製造方法の詳細は、二次元配列に対しなされているが、グリッドの次元を除けば、一次元のデザインにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】本発明の光学的に可変のセキュリティ要素を有する銀行券の上面図。
【
図2b】
図1の線B-Bに沿って切断したセキュリティ要素の断面図。
【
図3a】1個の隆起した(凸状)エンボッシング要素の斜視図。
【
図3b】エンボッシング要素上にあるライン・セグメントの位置を表す上面図。
【
図3c】エンボッシング要素上にあるライン・セグメントの位置を表す上面図。
【
図3d】エンボッシング要素上にあるライン・セグメントの位置を表す上面図。
【
図4】
図1のセキュリティ要素のライングリッド上の二次元の格子配列の部分を表す上面図。
【
図5】本発明の別のセキュリティ要素のライングリッドの二次元の格子配列の部分を表す上面図。
【
図6a】2本のライングリッドを有するセキュリティ要素の垂直方向から見た図。
【
図7】異なる色のライングリッドを有する本発明のセキュリティ要素の上面図。
【
図8】互いに直交する複数のライングリッドを有する本発明のセキュリティ要素の上面図。
【
図9】互いに直交する複数のライングリッドを有する本発明のセキュリティ要素の上面図。
【
図10】動き効果と静的効果を組み合わせた
図4のセキュリティ要素の変形例を表す図。
【
図11】セキュリティ要素の基板の対向する第1と第2の主面上に光学的に可変のパターンを有する本発明のセキュリティ要素の断面図。
【
図12】両面にデザインを有するが基板の第1主面上のみに光学的に可変のパターンを有する本発明のセキュリティ要素の断面図。
【
図13】線状の透視情報領域を有する本発明のセキュリティ要素の上面図。
【
図14】パターンが形成された背景層を有する本発明のセキュリティ要素の上面図。
【
図15】データ・キャリアの不透明領域にある両面のセキュリティ要素の断面図。
【
図16】背景層に反射層が形成されていないセキュリティ要素の
図15の変形例の断面図。
【
図17】「50」の数字の形で配列された凹状と凸状の両方のエンボッシング要素を有する本発明のセキュリティ要素のエンボッシング・パターンを表す図。
【
図18】細長いエンボッシング要素を有する副領域を含むエンボッシング・パターンを有するセキュリティ要素の上面図。
【
図19】格子状配列に対しオフセットしているエンボッシング要素を含む副領域を有するエンボッシング・パターンを有する本発明のセキュリティ要素の上面図。
【
図20】本発明のセキュリティ要素により安全が確保されたホイル要素を有する銀行券を表す図。
【
図21】ライングリッドが様々な動きの効果を生成する複数の副領域を有する本発明のセキュリティ要素の上面図。
【
図22】細長いエンボッシング要素の一次元の格子状配列を有するセキュリティ要素のライングリッド上の二次元の格子配列の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明の一実施例を銀行券のセキュリティ要素を例に説明する。
図1は本発明の光学的に可変のセキュリティ要素12を有する銀行券10を表す図である。セキュリティ要素12は、追加的に着色された風車状のブレード・パターン14を有する光沢のある金属外観を有する。銀行券を上方向又は下方向への傾斜(回転)運動16により、着色されたブレード・パターン14の視覚的に極めて目立った回転運動18を生成する。
【0076】
本発明のセキュリティ要素の構造とそれを回転させることにより、際立った色変化が現れることを、
図2,3を参照して以下詳述する。
【0077】
セキュリティ要素12は光学的に可変のパターン20を有する。このパターン20は、エンボッシング・パターン22とコーティング層24の組み合わせにより形成される。コーティング層24は高反射率の背景層26を有する。この背景層26の一例は、光沢性のある高反射性の銀色のプリント層であり、銀行券基板28上にスクリーンプリント(screen printing)法でインプリント/プリントされている。銀行券基板28は、パターン20が存在するような副領域内で、セキュリティ要素12の基板を同時に構成する。その結果、セキュリティ要素12は銀行券10に一体に組み込まれる。背景層26はセキュリティ要素12に光沢のある金属外観を与える。
【0078】
背景層26上に、着色された例えば金色のライングリッド30がインプリントされている。このライングリッド30は、ほぼ同一方向を向いた複数のライン32から構成される。これらのライン32は、互いに交差することがなく、それら間の幅は、大まかにラインの長さ方向沿って完全には一定の長さではない。このラインに関する定義(表現/記載)は、本明細書と特許請求の範囲では「平行」と称する。以下に詳述するように、所望の動き効果は、本発明のライングリッドが完全に平行なラインを有するライン・グリッドではないことにより、正しく形成される。
【0079】
一実施例では、ライン32のライン幅bは、全てのライン32において同一であり、ラインの長さ方向に沿って一定である。ライン幅bは50μmと200μmの間であり、実施例では約80μmである。複数のライン32は完全には平行でないので、ライングリッドの平均ライン・スクリーン間の距離WLのみが特定され、これは実施例ではWL=300μmである。
【0080】
背景層26とライングリッド30により形成されるコーティング層24は、エンボッシング・パターン22と組み合わされる。このエンボッシング・パターン22は、エンボッシング要素34を四角形に配置した二次元の格子配列(two-dimensional quadratic grid)からなる。この実施例では、
図3aに示すような潰された半球状の隆起で形成される。エンボッシング要素34は、基礎部分の直径d
Pがライン250μmで、高さh
Pが75μmである。
図2から分かるように、エンボッシング要素の二次元の格子配列のライン・スクリーン間の距離W
Pは、基礎部分の直径d
Pよりも若干大きく、この実施例では1.2
*d
Pである。その結果エンボッシング要素のグリッドのライン・スクリーン間の距離WPは、約300μmであり、ライングリッドの平均ライン・スクリーン間の距離W
Lと一致する。
【0081】
図2に示すように、コーティング層24とエンボッシング・パターン22は、W
PとW
Lの調和/一致した値により、互いに組み合わされる。その結果一方では、隆起部であるエンボッシング要素34は、背景層26により小さな凸状ミラーとして機能し、他方では、各エンボッシング要素34上にライングリッド30からのライン32のライン・セグメント36が形成される。以下の説明から明らかなように、各エンボッシング要素34は、ライン32の特定の進展故に、ライン・セグメント36を搭載する。エンボッシング・パターン内に、ライン・セグメント36がその上に載らないエンボッシング要素34がある。あるいはエンボッシング・パターンのある副領域は、ライン・セグメントにより選択的にカバーされておらず、その結果、光学的に可変のパターンのダイナミックな動き効果内に静的なサブパターンを生成する。
【0082】
ライン・セグメント36とそれが配置されるエンボッシング要素34との相対的な配置は、エンボッシング要素34上のライン・セグメント36の位置と方向により特定される。更にライン・セグメント36の形状(即ちライン・セグメント36のライン幅bと色)が特定されると、あるライン・セグメント36の位置と見掛け(position and look)は、完全に特徴付けられる。
【0083】
本発明において重要な点は、「エンボッシング要素上のライン・セグメントの位置」のパラメータである。このライン・セグメントの位置は、光学的に可変のパターン20内のエンボッシング要素34の位置(x,y)に依存する場所依存性の位相関数φ(x,y)により特定される。この位相関数の値は、エンボッシング要素上のライン・セグメント36のその長さ方向に直交する相対的位置を規定し単位間隔「0,1」に正規化される。
【0084】
図3bに示すように、ライン32がx軸に平行に配置されると、位相関数φ(x,y)は、エンボッシング要素34上のライン・セグメント36のy位置を特定する。ここで、φ=0とはボトムエッジの位置を示し、φ=1とはトップエッジの位置を示す。
図3b-
図3dにおいては、各場合ライン・セグメント36の位置はφ=0.25(
図3b)、φ=0.5(
図3c)、φ=0.75(
図3d)を示す。
【0085】
y軸に平行なライン32は例えば
図8,9に示される。この位相関数φ(x,y)は、エンボッシング要素のライン・セグメントのx位置を特定する。φ=0は左エッジの位置を示し、φ=1は右エッジの位置を示す。
【0086】
本発明の意外な効果は、エンボッシング要素34上のライン・セグメント36の場所に依存する変化により、セキュリティ要素12を傾けた時、複数の様々な動き効果を実現できる点である。これら様々な動き効果は、場所に依存する位相関数φ(x,y)により記述できる。
【0087】
図2bに示すように、エンボッシング要素34上のライン・セグメント36は、視る方向40,42,44によって様々な色と輝きの効果/印象を与える。この効果/印象は、更にライン・セグメント36の場所に依存する位置(location-dependent position)に対しては、光学的に可変のパターン内で凸状要素であるエンボッシング要素34の位置に依存する。セキュリティ要素12は、かくして一定の方向42から見た場合には、所定のイメージモチーフ(例、
図1に示すブレード・パターン14)を表す。セキュリティ要素12を傾斜させると例えば視る方向が42から40,44に変化すると、光学的に可変のパターンの色と輝きが連続して変化するが、局部的に大きく異なる。その結果動きの印象が形成される。ライングリッドのデザインによっては、線形運動、回転運動、複雑な運動形態、例えばある領域内において、ポンプ効果或いは「ズーム」効果あるいは反対方向の動きも生成できる。
【0088】
回転効果は特に印象的である。その理由は、セキュリティ要素を線形的に傾斜させることにより生成される回転運動は、見ている者の直感に反し、その者に意外性の効果を与える。この様な回転効果は、「エンボッシング要素上のライングリッドの位置」のパラメータが直接的特に線形で、光学的に可変のパターン内のエンボッシング要素の位置(x,y)と固定基準位置(x0,y0)の間の角度に依存することにより、生成される。
【0089】
半球状の隆起部であるエンボッシング要素34の二次元の格子配列で、基準点(光学的に可変のパターンの真ん中にある)を回る風車の4個の羽根の印象は、次の位相関数で表される。
φ1=(x,y)=mod(4*arg(x+iy)/(2π),1)
mod(x,y)はモジュロ関数を表し、arg(z)は複素数の偏角を表す。
【0090】
図4は、二次元の格子配列された突起(凸状)部において、位相関数φ
1(x,y)に従って配置されたライン・セグメント36を有するセキュリティ要素12のライングリッド30上の部分と輪郭/外形で示されるエンボッシング要素34の一部を示す。二次元の格子配列の突起の空間的深さがないために、その結果見る方向への視覚的な印象の依存性がないために、
図4で説明した突起部の回転効果は現れず、真に三次元のセキュリティ要素12のみが生成される。
【0091】
セキュリティ要素12を垂直方向から見ると、中央にある(φ
1=0.5)のライン・セグメント36は、エンボッシング要素34の最高点でくっきりと見える。エンボッシング要素34の上部エッジと底部エッジにあるライン・セグメントは、後退して見える。
図4に示すように、エンボッシング要素34の中央にあるライン・セグメント36は2本の対角線50に沿って配置されているので、垂直方向から見ると、対角線50に沿って伸びる4枚のブレード・パターン14を有する外観(
図1)が、生成される。
【0092】
セキュリティ要素12が下方向に回転した場合(運動16)は、この回転のため見る者の観点からすると、以前は最高点にあったライン・セグメント36は、エンボッシング要素34の底部エッジに達し、後退して見える。他方、以前は上部エッジにあったライン・セグメント36が最高点に回転すると、それらが今度は視覚的な外観を支配する。
図4に示すように、全ての突起(凸状)部であるエンボッシング要素34は、角度18だけ反時計方向に回転する対角線52に沿って配置され、その結果、回転運動16の後は、角度18だけ反時計方向に回転する4枚のブレード・パターン14を有する絵が得られる。従ってセキュリティ要素12を上方向に回転させた場合には、ブレード・パターン14の時計方向の回転が得られる。
【0093】
図4に示すように、セキュリティ要素の小さな回転(傾斜)運動16は小さな角度18で回転し、より大きな回転(傾斜)ではより大きな角度で回転する。その結果ブレード・パターン14の見かけ上の回転運動は、セキュリティ要素の回転(傾斜)運動で、滑らかに進む。
【0094】
上記の効果は、所定の位相関数φ1(x,y)から直ちに発生する。その理由は、この位相関数は、エンボッシング要素の位置と基準点の位置の間の角度にのみ依存すからである。その結果同一のライン・セグメントの位置は、それぞれ基準点から外側半径方向に伸びる(
図4の対角線50,52)。φ1(x,y)の第1項を変えても、異なる枚数の羽根あるいは反対方向の回転運動が、生成される。半径方向の羽根の外観は、ライン幅bが基準点からの距離と共に変化すると、変化する。
【0095】
セキュリティ要素12を生成するために、隣接する反射性の銀色の印刷層である背景層26を、銀行券10の銀行券基板28の上にプリントする。その後、ライングリッド30を背景層26の上にオフセット印刷技術で、酸化性インクあるいはUV乾燥インク、黄色のインクでインプリントする。その後、ノン・インク受動凹刻印刷(non-ink -receptive intaglio printing)でブラインド・エンボッシング処理により、隆起部34を有するエンボッシング・パターン22を銀行券10の表面に生成する。この表面の隆起パターンを安定させるために、ブラインド・エンボッシング処理で変形した裏面をラッカーで充填する。エンボッシング・パターン22には、エンボッシング要素34と一様に(面一に)する透明なカバー層(図示せず)を具備させ、光学的に可変のパターンのキャスティング(casting)を阻止する。
【0096】
極めて印象的な動きは、様々な傾斜(回転)角度でセキュリティ要素12を傾斜(回転)させた時のポンプ効果である。このポンプ効果により所定のモチーフの拡大版あるいは縮小版(輪郭)が見える(モチーフのズーム・アウト又はズーム・イン)。
【0097】
ライン・スクリーン間の距離WPを有する半球状のエンボッシング要素34の矩形の格子配列(quadratic grid)を得るために、離れた10本のライン・スクリーンからなる円形リングのポンプ効果の視覚的な印象を与えるライングリッド60は、次の位相関数により得られる。
φ2(x,y)=mod(abs(x+iy)/10*WP,1)
ここでabs(z)は複素数の絶対値である。
【0098】
図5は、セキュリティ要素62のライングリッド60の二次元の格子配列の投影群を示す。この外形/輪郭内にライン・セグメント36とエンボッシング要素34が示されている。
【0099】
セキュリティ要素62を垂直方向から見ると、隆起部であるエンボッシング要素34の中央部(φ
2=0.5)内にあるライン・セグメント36が最も目立って見える。エンボッシング要素34の上部エッジと底部エッジにあるライン・セグメントが後退して見える。
図5に示すように、位相関数φ
2により、エンボッシング要素34の中央部にあるライン・セグメント36が、半径5
*W
P,15
*W
P,25
*W
Pの半径を有する同心円64上に配置される。垂直方向から見ると、セキュリティ要素62は上記の直径を有する一連の同心円を表す。
【0100】
次にセキュリティ要素12が例えば傾斜運動16で下方向に傾斜すると、最初は最高点にあったライン・セグメント36は、視覚者の目から見ると、エンボッシング要素34の底部エッジとなり、後退して見える。他方、以前は上部エッジにあったライン・セグメント36は、最高点に回転し、視覚的な絵を支配する。
図5からわかるように、エンボッシング要素34は、7
*W
P,17
*W
Pの比較的大きな同心円上にある。その結果傾斜運動16により同心円64は大きく見える。従って、セキュリティ要素62を反対方向に傾斜させることにより、同心円64が収縮し、セキュリティ要素62を前後に傾斜させることにより、所望のポンプ効果が生成されることになる。
【0101】
図5の位相関数φ
2は単なる一実施例であり、円の代わりに、四角形、星印、多角形、複雑な対象物(例えば記号、数字、同心円の間の距離)も生成可能である。
【0102】
上記した原理は1個のライングリッドを有するデザインに限定されるものではない。セキュリティ要素のコーティング層は複数のライングリッドを有することもできる。「エンボッシング要素上のライン・セグメントの位置」のパラメータと、「エンボッシング要素上のライン・セグメントの方向」のパラメータと、「ライン・セグメントの形状」のパラメータは、各ライングリッドのライン・セグメントに対して互いに独立して変化することができる。かくしてライングリッドは、様々な動き効果、様々な方向への同一の動き効果を生成できる。更にライングリッド内のラインに異なる色を付けて、ライングリッドの動き効果を視覚的に差別化することもできる。
【0103】
図6aは垂直方向から見たときの2個のライングリッドを有するセキュリティ要素の外観を示し、
図6bはセキュリティ要素70の詳細な部分を示す。
【0104】
セキュリティ要素70内に、上記のエンボッシング・パターン22がコーティング層と組み合わされる。このコーティング層は、高反射性の背景層26に加えて、2個のライングリッド72,74を有する。第1のライングリッド72は赤色いラインからなり、次の位相関数により記述される。
φ
1(x,y)=mod(4
*arg(x+iy)/(2π),1)
これについては既に
図4で説明したとおりである。第2のライングリッド74は青色いラインからなり、次の変更した位相関数により記述される。
φ
3(x,y)=mod(4
*(π/4-arg(x+iy))/(2π),1)
【0105】
すると、ライングリッド72は、エンボッシング・パターン22との相互作用により4枚の羽根82を有する赤色い風車パターンを生成する。これは、セキュリティ要素70が下方向(76方向)に傾斜した時に、現れ、反時計方向(転方向86)に回転する。
【0106】
位相関数φ3(x,y)は位相関数φ1(x,y)と比較して右側に45°回転している。更にその関数値は角度が増えるにつれて減少する。かくして青色のライングリッドが、エンボッシング・パターン22と相互作用して、4枚の羽根84を有する青色の風車パターンを生成する。その開始点において、垂直方向から見ると、羽根84は赤色い風車のパターンの羽根82に対し45°回転している。セキュリティ要素70が下方向(傾斜/回転方向76)に傾斜/回転すると、反時計方向(回転方向88)に回転しているように、見える。
【0107】
反対方向に回転する2色のセキュリティ要素70は、見る者には極めて目立ち、注意を引き認識する高い値を持つ。
【0108】
異なる色のライングリッド92,94を有するセキュリティ要素90の他の実施例を
図7に示す。同図において凸状のエンボッシング要素のないライングリッドのみを示してある。ライングリッド92,94は、異なるインク例えば赤色と青色のインクで、スクリーンプリント法でインプリントされている。高い反射性の背景層26と2つのライングリッド92,94を有するセキュリティ要素90は、垂直方向から見た時には、変わって見える。垂直方向の赤色と青色のストリップは、セキュリティ要素を傾斜方向96に傾斜させた時には、右又は左に移動する、即ち直交視差の動き挙動(orthoparallactic movement behavior )即ち動く方向は、傾斜方向と直交する。副領域98-Lと副領域98-Rのラインの逆方向への傾斜により、2つの副領域内の動きは互いに勝手違いとなる。その結果セキュリティ要素90が下方向に傾斜すると、副領域98-Lの直交する赤色と青色のストリップは左に動き、副領域98-Rのそれは右に動く。
【0109】
セキュリティ要素100の複数のライングリッド102,104は、四角形のエンボッシング・グリッド内で互いに直交する(
図8)。同図において、ライングリッド102内のラインは、x軸に沿って伸び、セキュリティ要素100が傾斜方向106に傾斜した時には、動き効果をx軸に直交する方向に生成する。これに対し、ライングリッド104内のラインは、y軸に沿って伸び、セキュリティ要素100が傾斜方向108即ちy軸に直交する方向に傾斜したときには、動き効果をy軸に直交する方向に生成する。
【0110】
図9は、この様なセキュリティ要素100を示し、2本のライングリッド102,104のみを示し、隆起したエンボッシング要素34を図示してない。同図において、ライングリッド102,104は、異なる色でプリントされ、傾斜方向106方向と傾斜方向108方向に傾斜した時には、異なる動き効果を生成する、例えば傾斜方向106ではポンプ効果を、傾斜方向108方向では回転効果を示す。
【0111】
エンボッシング・パターンのグリッドが対称であるため、ライングリッドの間に他の角度関係も用いることができる。例えば六角形のグレーティングにおいては、それらの間の角度が60°又は120°の3本のライングリッドが提供される。
【0112】
ここに記載した動き効果は、静的効果と組み合わすこともできる、即ち傾斜した時、明らかな動きに関与しない副領域を有する。かくして移動環境において安定した影響を構成する。
図10は、
図4のセキュリティ要素のように展開されたセキュリティ要素110を示す。
【0113】
セキュリティ要素110においてライングリッド30は副領域112から省かれる。一実施例では副領域112は数字「50」の形態で形成される。その結果ライン・セグメント30はエンボッシング要素34の上には存在しない。副領域112においては、セキュリティ要素110は、セキュリティ要素の傾斜方向(位置)とは無関係に、不変の金属的な外観を提示する。その結果セキュリティ要素110は、ブレード・パターン14の回転運動に加え、数字「50」を表示する。
【0114】
図示しない変形例においては、ライン・セグメントがエンボッシング要素34の上に存在しない副領域112においては、例えば静的効果、特にライン・セグメントの色合いとは異なる色合いのインクの効果を、大きくする。
【0115】
別の構成として、ライングリッド30内のギャップは、副領域112内で、不透明なインクで上書きプリントされたライングリッドで、置換される。
【0116】
図示しない更なる実施例では、エンボッシング・グリッドは副領域112内では省かれている。その結果、エンボッシング要素34は、副領域内のライングリッドのライン・セグメントには割り当てられていない。セキュリティ要素が傾斜すると、空間的な深さがない為その結果の見る方向への依存性が無くなる為に、副領域の視覚的印象は変わらず、動き環境においては安定した効果を構成する。
【0117】
これまで記載した一実施例では、光学的に可変の効果は、セキュリティ要素の一方の側/面からしか見ることができなかった。更に本発明は両面のデザインを含むこともできる。この両面のデザインは、反対側から見たときにも光学的に可変な効果を表示する。
【0118】
このため第1のデザインの変形例においては、データキャリアの前面と裏面の両方に、エンボッシング・パターンとコーティング層とを含む光学的に可変のパターンが形成される。裏面のエンボッシング・パターンは、表面のエンボッシング・パターンと同時の作成すテップで形成され、表面の第1のエンボッシング・パターンに一致するが反転して形成される。
【0119】
より詳細に説明すると、
図11はポリマー製銀行券120の断面を示す。この銀行券120の基板122には、透明な窓領域128が形成されている。銀行券の表面124上には光学的に可変のパターン20が配置される(
図2-10で詳述したもの)。このパターン20は、エンボッシング・パターン22とコーティング層24の組み合わせで形成される。コーティング層24は、背景層26に加えて、2つのライングリッド72,74を有する(
図6の実施例で詳述したとおり)。
【0120】
表面124のパターン20は、裏面126上の光学的に可変の第2パターン130と組み合わされる。この第2パターン130は、第2エンボッシング・パターン132と第2コーティング層134とを有し、第2コーティング層134は、上記した2個のライングリッド136,138により、同様に形成される。
【0121】
第2(裏面)のエンボッシング・パターン132は、第1(表面)のエンボッシング・パターン22と同一の製造ステップで生成される。一実施例では、ブラインド・エンボス・ステップで生成される。銀行券の表面は、エンボッシング・ステップにおいて、エンボス・プレートに面した基板122の側である。
図11の実施例では、表面のエンボッシング・パターン22に加えて、生成時に反転して生成された変形を、第2のエンボッシング・パターン132として用いる。第2のエンボッシング・パターン132は、第1のエンボッシング・パターン22とは反転した形状を有する。即ち、凹凸が同一のパターンを繰り返して一致して配列されるが、凹凸は逆となる(即ち、第1のエンボッシング・パターンの凸部は第2のエンボッシング・パターンの凹部となる)。背面圧力のブランケットを用いることにより、裏面の第2エンボッシング・パターン132は、表面の第1エンボッシング・パターン22と比較して、粗くなる。
【0122】
裏面のライングリッド136,138のライン・セグメントの位置は、位相関数φRS(x,y)で与えられる。裏面の位相関数に表面のライングリッドの位相関数で説明したことは同様に適用される。特にコーティング層134とエンボッシング・パターン132は、そのライン・スクリーンの値が一致しているために、各凹み部分135内にライングリッド136,138のラインのライン・セグメントがあるように、互いに組み合わされる。
【0123】
コーティング層が高反射の銀製の背景層26で形成されているために、裏面126から見たときには、基板122の表面124上の隆起部であるエンボッシング要素34は、小さな凹ミラーとして機能する。一実施例では、エンボッシング要素34の湾曲度は、基板122の厚さと、小さな凹状のミラーの焦点がライングリッド136,138のラインの領域にあるように、調整される。
【0124】
表面のライングリッド72,74と裏面のライングリッド136,138は、それぞれ位相関数φvS(x,y)とφRS(x,y)を有し、同一あるいは異なる動き効果を生成する。
【0125】
背景層26は、スクリーンプリント層あるいは金属化層により構成される。この実施例において、背景層26は2つの機能を有する。即ち背景層26は、ライングリッド72,74のグループとライングリッド136,138のグループの両方に対し、反射性の背景として機能する。
【0126】
図11のデザインの製造に際しては基板122には、最初に高反射の背景層26が具備される。その後、この基板122は、その両面にそれぞれライングリッド72,74とライングリッド136,138がプリントされる。このプリントは同時の印刷プロセスあるいは別々の印刷プロセスで生成することができる。その後、基板122はブラインドエンボスされる。それにより同時に、一致したエンボッシング・パターン22,132が表面と裏面に生成され、第1パターン20と第2パターン130を生成し、製造を完了する。このエンボッシングは、背景層26の側のエンボッシング・プレートで行われるが、原理的には反対側でも行うことができる。
【0127】
別の両面デザインは、
図12に示すように、ポリマー製銀行券120の窓領域128内に、銀行券の表面124上に光学的に可変のパターン140のみを形成する。この裏面126は、
図2示したように変形しているが、この実施例では、この変形は、光学的に可変な裏面側のエンボッシング・パターンとしては用いられない。光学的に可変のパターン140は、エンボッシング・パターン22とコーティング層142の組み合わせで形成される。コーティング層142は、背景層26に加えて、2つのグループのライングリッドを有する、上記の実施例と同様に、ライングリッド72,74の第1グループは、背景層26に形成され、ライングリッド136,138の第2グループは、背景層26の下に形成される。
【0128】
このデザインにおいては、ライングリッドの両方のグループは、同一のエンボッシング・パターン22を用いる。隆起部であるエンボッシング要素34は、表面から見た時には、背景層26上に配置されたライングリッド72,74に対し小さな凸状ミラーとして機能し、裏面から見た時には、背景層26下に配置されたライングリッド144,146に対し小さな凹状ミラーとして機能する。背景層26上のライングリッド72,74と背景層26下のライングリッド144,146は、それぞれ位相関数φon(x,y)とφunder(x,y)を有し、同一あるいは異なる動き効果を生成する。
【0129】
上記のデザインにおいては、背景層は目立つ或いは高い反射性があるために、動き効果はセキュリティ要素の上から見ることができる。両面のデザインにおいては、反対側から見た時には、動き効果は、各場合セキュリティ要素の上から見ることができ、反対側の動き効果は、同一あるいは異なる動き効果を生成する。全てのデザインにおいて、上からみた動き効果は、背景層が点形状或いは線形状のギャップで孔が開けられている場合或いは広い領域で省かれている場合には、透かしてみる情報領域と組み合わせることができる。2つの背景層がある場合は、ギャップが少なくとも一方の背景層に形成される。不透明な背景層においては、透かしてみる情報領域を生成するには、重なり合った2つの背景層を省く必要がある。
【0130】
図13は、背景層26と2つの異なる色のライングリッド92,94を有するセキュリティ要素150を示す、ただし突起したエンボッシング要素は省略している。レーザ剥離法により、外形ライン152は、この実施例では蝶々のモティーフを示すが、背景層26とライングリッド92,94内に導入されている。かくしてセキュリティ要素150は、上記の動き効果に加えて、透かして見た場合は、蝶々のモティーフの外形ライン152を表す。
【0131】
背景層26は、レーザ剥離法により広い領域で除去されている(
図14)。セキュリティ要素154において、背景層26とライングリッド92,94がセキュリティ要素154前面の上に最初に形成される。その後、レーザ剥離法により、蝶々のモティーフ158の外側領域156で除去される。背景層26とライングリッド92,94が、エンボッシング・パターン(
図14に図示せず)と共に、第1の光学的に可変のパターンを形成し、
図11に従って基板の反対面にある第2の光学的に可変のパターンと組み合わされ、その後、両面のセキュリティ要素は、各場合、上部から見ると、着色された羽根を持つ蝶々のモティーフ158と上記の動き効果を生成する。例えば、ライングリッドは、黄色と青色で表面にプリントされ、赤色と緑色で裏面にプリントされ、その結果、見る角度と見る側によって、蝶々の羽根が異なる色調で表れる。
【0132】
両面のデザインにおいては、一実施例によれば、レーザ剥離法により、表面の背景層26とライングリッド92,94のみを、除去するが、裏面のコーティング層は除去しない。レーザ剥離法により広い領域で背景層26を除去する代わりに、背景層26のみを所望の形態(例:
図14の蝶々のモティーフ158の形態)で形成してもよい。この方法は、広い領域で金属を剥がす必要がある場合に、適したものである。しかし、フォイル要素としてインプリントされた或いは形成された背景層26とインプリントされたライングリッド92,94との間の位置合わせが合わない場合には、好ましくない。
【0133】
背景層26は、領域の100%以下例えば50%のカバー率で、細かいラインあるいはポイント・グリッドの形態で形成される又は金属化される。これにより部分的に透明な背景層と部分的に透明なウインドウ領域を形成することができる。
【0134】
両面のデザインは、データキャリアの透明な領域のみならず不透明な領域でも実現できる。このため
図15は、一実施例として、不透明な紙製基板162を有する紙製銀行券160を示す。銀行券の表面164上に光学的に可変の第1パターン20が配置される。この第1パターン20は、エンボッシング・パターン22とエンボッシング要素34の組み合わせにより形成される。コーティング層24は、高反射の背景層26に加えて、2個のライングリッド72,74を有し、これらは
図6の実施例で詳述したとうりである。
【0135】
表面164の第1パターン20は、銀行券の裏面166上に形成され、その上に形成された第2パターン180と組み合わされる。この第2パターン180は、第2エンボッシング・パターン182と第2コーティング層170を有し、第2コーティング層170は、背景層176に加えて、2本のライングリッド172,174を有する。
【0136】
第2エンボッシング・パターン182は、
図11の実施例と同様に、同一の製造ステップで、第1エンボッシング・パターン22と同時に生成される。例えばブラインド・エンボッシング・ステップで生成される。その結果、裏面の変形と第2エンボッシング・パターン182とエンボッシング・パターン22の互いに反転する形状に関する
図11の説明は、
図15の実施例にも適用される。
【0137】
背景層26,176は、銀行券の基板162の表面と裏面にスクリーン・プリンティングを2回施すことによりで生成される、あるいはオフセットした銀あるいは銀パッチあるいは銀メッキのラミネートストリップを適用することにより生成される。上記の方法の組み合わせも用いることができる。背景層26,176は、同一又は異なる形状、形態、あるいは細い構造物でもよい。
【0138】
かくして用意された基板の両面に、ライングパターン72,74又はラインパターン172,174をプリントする。このプリントは同一ステップあるいは2回に分けたステップで行うこともできる。その後基板162をブライドエンボスし、それにより同時に一致したエンボッシング・パターン22,182が、表面と裏面に生成される。かくして2つのパターン20,180が形成される。他の両面デザインと同様に表面のライングリッド72,74と裏面のライングリッド172,174は、それぞれ位相関数φvS(x,y)とφRS(x,y)を有し。同一又は異なる動き効果を生成する。
【0139】
図16の実施例において、背景層26’,176’の一方又は両方を、非反射性の層の形態で形成することもできる。ライングリッドと対照をなす背景層として、特に銀行券の白い基板表面は、仄かに色の付いた基板の表面と光沢のある接着促進層が基板表面にピグメント(ルチル-TiO
2)でもって形成される、あるいはスクリーン・プリンティングのフィルタで形成される、あるいは基板162に形成された単色のプリント層で形成される。
図16の実施例では、背景層26’は単色例えば赤色のプリント層で形成され、背景層176’は単色例えば黄色のプリント層で形成される。背景層26’と背景層176’の一方又は両方は、基板162の白い表面そのものにより形成することもできる。
【0140】
反射性又は非反射性として狭い領域にかつライングリッドと対照をなす背景層を形成することは、1つの背景層のみを有するデザインにも使用できる。これを
図2,12に示す。
【0141】
一デザインの変形例として、ライングリッドでは、好ましくはの発光インク、蛍光インクが用いられる。発光インクは、使用されるプリント用インクの1つ、3つ、好ましくは2つに加えられる。セキュリティ要素はUV光により認証される。UVのハンドランプを前後に揺らすと、観察者は、セキュリティ要素内の色の動きを、セキュリティ要素を動かすことなく見ることができる。
【0142】
偽造防止対策を施したセキュリティ要素は、エンボッシング・パターンの実施例により得られる。このため
図17は、セキュリティ要素190のエンボッシング・パターン192のみを示す。このエンボッシング・パターン192は、圧縮された半球状の凸部194と圧縮された半球状の凹部196を有する。凸部194と凹部196はモチーフ198の形態で配置される。この実施例のおいては数字「50」である。エンボッシング・パターン192が上記したコーティング層と組み合わされると、動き効果が生成され、この動き効果は、凹状又は凸状のエンボッシング要素の反対の光学効果によりモチーフ198内で修正され、その結果モチーフ198は、ある見る角度ではっきりと見ることができる。特にモチーフ198は真上から見たときには感知できないが、平坦な見る角度では、周囲に繋がるような反転した色で表示される。この様なエンボッシング・パターンを生成するエンボスツールは、例えばエンボッシング・プレートのレーザーマシニングにより生成される。
【0143】
図18は、セキュリティ要素200の上面図であり、原理的には
図2,3のセキュリティ要素12と類似する。セキュリティ要素200のエンボッシング・パターン202は、圧縮された半球状のエンボッシング要素34の二次元のエンボッシング・パターン22に加えて、長方形で隆起したエンボッシング・パターン206を有する副領域204を有する。エンボッシング・パターン206は、楕円形状あるいはトラフ形状である。この実施例では、長方形エンボッシング・パターン206は、その縦方向がx軸に平行でその横方向がy軸に平行に配置される。エンボッシング・パターン206の様々な細長い形状は、副領域204内で北南方向(x軸)回りに傾斜させると、ライングリッド30により生成された外観が変わる。長方形エンボッシング・パターン206の全く異なる形は、顕微鏡を利用して検知でき、更なる認証特徴として用いることができる。球形又は細長いエンボッシング要素のこの様な組み合わせにより、更なる偽造対策を施したセキュリティ要素200が得られる。詳述したように、レンズホイルの適宜の組み合わせは市販はされていない。
【0144】
図19は、一実施例として、セキュリティ要素210を示す。このセキュリティ要素210は、
図2,3のセキュリティ要素12と同じデザインである。しかしそのエンボッシング・パターン212は、エンボッシング要素214の二次元のエンボッシング・パターン22に加えて、オフセット・エンボッシング要素218を有する副領域216を有する。このオフセット・エンボッシング要素218はエンボッシング・パターン22に対しオフセットしている。この実施例では、オフセット・エンボッシング要素218は、エンボッシング要素214と同一の形状であるが、一般的にはオフセット・エンボッシング要素218は、別の寸法あるいはライン・スクリーンを有してもよい。位相オフセットににより、副領域216は、周囲とは異なる外観を提示し、動き特徴の中で追加的な情報領域として見ることができる。オフセット・エンボッシング要素218がその周期の半分だけオフセットしている場合には、副領域216の反転した着色の外観が得られ、かくしてセキュリティ要素210内に、容易に知覚可能な情報領域が得られる。
【0145】
図20において、上記の実施例を組み合わせて、銀行券220上にフォイル要素222の安全確保を達成できる。ここで光学的に可変のセキュリティ要素228は、それがフォイル要素222の副領域に加えて、フォイル要素222に隣接する銀行券基板226の領域224をカバーするよう、形成される。そのため、光沢のある銀色の背景層が、フォイル要素222の上に形成され、フォイル要素222に隣接する領域224内の背景層は、光沢のある背景層ではなく白い基板表面あるいは着色したプリント層で形成される。更にフォイル要素222と隣接領域224の両方をカバーするライングリッドが提供される。銀行券基板226は、フォイル要素と共に、ブリンド・エンボスされ、透かして見えるエンボッシング・パターンを生成する。かくしてフォイル要素222は銀行券基板226にしっかりと固定される。その理由は、フォイル要素の操作は、注意を引くが、これは、セキュリティ要素228が隣接領域224まで伸びているからである。
【0146】
セキュリティ要素228は、フォイル要素222によりカバーされた銀行券220の開口領域に配置される。この場合セキュリティ要素228は、両面のデザインを有して形成され、例えば
図11,12,15,16の様に配置され、その結果動き効果が、逆方向から見たときに、開口領域で見ることができる。
【0147】
上記のセキュリティ要素のコーティング層は複数の副領域を有する。この副領域内でライングリッドが様々な動き効果を生成する。
図21において、セキュリティ要素230は、数字「50」の第1の副領域232を有する。そのライングリッドは、傾斜効果を生成する。周囲の副領域234は異なる動き効果を有するライングリッドでカバーされている。例えば
図4の回転効果である。セキュリティ要素230が傾斜すると、数字「50」は見る角度によって見たり見えなかったりする。一方で数字の周囲は回転ブレードを表す。
【0148】
二次元の格子配列に加えて、上記のセキュリティ要素は、一次元グリッドを有するエンボッシング・パターンも含むことができる。
図22はセキュリティ要素242の例を用いて、
図5の実施例に類似するが、ポンプ効果を表す。
【0149】
具体的には、
図22は、二次元の格子配列で、複数の細長い長方形のエンボッシング要素244を有するセキュリティ要素242のライングリッド240上の部分(セクション)を表す。このエンボッシング要素244は、ライン・スクリーン間の距離W
Pの一次元グリッド246内で互いに平行に配置されている。
【0150】
ライングリッド240は複数のライン250からなる。これらのライン250は、
図5の位相関数φ
3(x,y)に従って得られる。
図22に示すように、ライングリッド240を有するコーティング層は、エンボッシング要素244のエンボッシング・パターンと、長方形のエンボッシング要素244のそれぞれ上に、ライングリッド240の少なくとも1つのライン250があるように、組み合わされる。位相関数φ
3(x,y)は、ポイント(x,y)に対し、エンボッシング要素244の上のライン250のの局部的な位置と方向を記述する。
図22に分かるように、ライン250は、その特定の進展(specific progression)により、複数の長方形のエンボッシング要素244の上を伸びる。その結果長方形のエンボッシング要素244の各々の上に、ライン250の1個の副領域のみがあることになる。
【0151】
図5に示すように、セキュリティ要素242を直交する方向から見ると、隆起したエンボッシング要素244の中央点(φ
3=0.5)にあるライン250の部分が最もはっきり見える。他方エンボッシング要素244の上部エッジ上と底部エッジ上にあるライン部分は後退して見える。
図22に示すように、位相関数φ
3に対して、エンボッシング要素244の中央部にあるライン部分は、半径5*W
P,15*W
P,25*W
P,の半径を有する同心円248上に配置される。垂直方向から見ると、セキュリティ要素242は、上記の直径を有する一連の同心円を表す。
【0152】
セキュリティ要素242が傾斜方向16に沿って下側に傾斜すると、即ち長方形のエンボッシング要素244に平行な軸252の回りを回転/傾斜すると、最初は最高点にあった第1ライン部分は、見る者には、エンボッシング要素244の底部エッジにあり、かくして視覚的に後退して見える。他方、最初は上部エッジにあったライン部分が最高点に回転/傾斜し、視覚的外観(見かけ)を支配する。言い換えると、前に見えたライン部分は、見る者にとって徐々に支配的ではなくなり、前は上部部分にあったライン部分は傾斜運動16により、より目立って見えるようになる。
図22に示すように、エンボッシング要素244の関連する領域は、幾分大きな同心円7*W
P,17*W
Pの上にあり、その結果、傾斜運動16により同心円248は大きく見える。セキュリティ要素242を反対方向に傾斜させると、同心円248の収縮が起き、セキュリティ要素242を傾斜運動方向16に沿って前後に傾斜させることにより、所望のポンプ効果が生成される。
【0153】
ライン250は、長方形のエンボッシング要素244の縦軸252に平行に走り、印象的な動き効果を得ることができる。ライン250がエンボッシング要素244に対し有する角度は、この実施例では5°以下であるが、動き効果の速度に特に大きな影響を与える。かくしてライン250が長方形のエンボッシング要素244に対し、
図22の実施例と比較してより大きな角度(又は小さな角度)を有する場合には、同心円248の半径はそれに応じて小さく(又は大きく)なる。そして軸252を傾斜運動方向16に沿って前後に傾斜させることにより生成されるポンプ効果は、加速(又は減速)される。
【0154】
エンボッシング要素244とライングリッド240が細長い従って非対象性が大きくなった形状の場合には、上記の動き効果は、エンボッシング要素の縦軸に平行な軸252の回りに回転する場合にのみ起こり、動き効果は、それに直交する軸の回りに回転しても、起こらない。
【0155】
上記の実施例は限定的なものではない。特に上記したセキュリティ要素を他のセキュリティ要素の特徴と組み合わせることもできる。例えばセキュリティ文書上で、セキュリティ要素を更なる光学的に可変の要素と組み合わせることも可能であり、この更なる光学的に可変の要素は、見る角度によってそれを見る者に異なるイメージを与えることができ、又見る角度によっては別の色あるいは別の輝度の印象、あるいは別の図形モチーフを表示することもできる。
【0156】
本発明のセキュリティ要素は、更なる光学的に可変のセキュリティ要素の動く方向あるいは形態を取り込むことも可能である。例えばフォログラム・ストリップにより傾斜した際に、ある角度へのモチーフの動きが表され、これを本発明によるセキュリティ要素が同様に取り込んだり利用することも可能である。動きの印象の増幅は、更なるセキュリティ特徴により達成可能であり、例えばフォログラムにより示されたモチーフの本発明のセキュリティ要素の反対方向への動きによっても達成可能である。
【0157】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。「少なくとも1つ或いは複数」、「と/又は」は、それらの内の1つに限定されない。例えば「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は「A」、「B」、「C」単独のみならず「A,B或いはB,C更には又A,B,C」のように複数のものを含んでもよい。「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は、A,B,C単独のみならずA,Bの組合せA,B,Cの組合せでもよい。「A,Bと/又はC」は、A,B,C単独のみならず、A,Bの2つ、或いはA,B,Cの全部を含んでもよい。本明細書において「Aを含む」「Aを有する」は、A以外のものを含んでもよい。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0158】
10:銀行券
12:セキュリティ要素
14:ブレード・パターン
16:傾斜運動
18:回転運動
20:光学的に可変のパターン
22:エンボッシング・パターン
24:コーティング層
26:高反射背景層
26’:単色背景層
28:銀行券基板
30:ライングリッド
32:ライン
34:エンボッシング要素
36:ライン・セグメント
40,42,44:視る方向
50:対角線
52:回転した対角線
60:ライングリッド
62:セキュリティ要素
64:同心円
70:セキュリティ要素
72,74:ライングリッド
76:傾斜方向
82,84:ブレード
86,88:回転方向
90:セキュリティ要素
92,94:ライングリッド
96:傾斜方向
98-L,98-R:副領域
100:セキュリティ要素
102,104:ライングリッド
106,108:傾斜方向
110:セキュリティ要素
112:副領域
120:ポリマー製銀行券
122:基板
124:表面
126:裏面
128:窓領域
130:第2光学的に可変のパターン
132:第2エンボッシング・パターン
134:第2コーティング層
135:凹み部分
136,138:ライングリッド
140:光学的に可変のパターン
142:コーティング層
144,146,240:ライングリッド
150,154,242:セキュリティ要素
152:外形ライン
156:蝶のモチーフの外側領域
158:蝶のモチーフ
160:紙製銀行券
164:表面
166:裏面
170:第2コーティング層
172,174:ライングリッド
176,176’:背景層
180:第2光学的に可変のパターン
182:第2エンボッシング・パターン
190,200,210,230:セキュリティ要素
192,202、212:エンボッシング・パターン
194:凸部
196:凹部
198:モチーフ
204、216:副領域
206:長方形エンボッシング・パターン
214:エンボッシング要素
218:オフセットエンボッシング要素
220:銀行券
222:フォイル要素
224:隣接領域
226:銀行券基板
228:光学的に可変のセキュリティ要素
232,234:副領域
244:長方形に隆起したエンボッシング要素
246:一次元グリッド
248:同心円
250:ライン
252:軸