(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】ディスプレイガラス組成物のレーザ切断及び加工
(51)【国際特許分類】
C03B 33/023 20060101AFI20230609BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230609BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20230609BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20230609BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20230609BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20230609BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20230609BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20230609BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20230609BHJP
G11B 5/73 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
C03B33/023
B23K26/00 N
B23K26/53
B28D5/00 Z
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/091
C03C3/093
C03C15/00 D
G11B5/73
(21)【出願番号】P 2017549740
(86)(22)【出願日】2016-03-23
(86)【国際出願番号】 US2016023738
(87)【国際公開番号】W WO2016154284
(87)【国際公開日】2016-09-29
【審査請求日】2019-03-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-11
(32)【優先日】2015-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ハッケルト,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リー,シンホア
(72)【発明者】
【氏名】マリヤノヴィッチ,サシャ
(72)【発明者】
【氏名】ンゴム,ムサ
(72)【発明者】
【氏名】パステル,デイヴィッド アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ピーチ,ギャレット アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】シュニッツラー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ロバート スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ワトキンズ,ジェイムズ ジョセフ
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】正 知晃
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-536081(JP,A)
【文献】特開2015-030040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
B28D 1/00-7/04
C03B 23/00-35/26, 40/00-40/04
C03C 1/00-23/00
G11B 5/62-5/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスワークピースをレーザ加工する方法において、
パルス化レーザビームを、前記ビームの伝播方向に沿って配向され、かつ、前記ガラスワークピース内へと導かれるレーザビーム焦線へと集束させる工程であって、該レーザビーム焦線が、前記ワークピースの材料内に誘起吸収を生成し、該誘起吸収が、前記ワークピース内に前記レーザビーム焦線に沿って欠陥線を生成する、工程、及び
前記ガラスワークピース及び前記レーザビームを第1の輪郭に沿って互いに対して平行移動させて、それによって、前記ワークピース内に前記第1の輪郭に沿って複数の欠陥線をレーザ形成する工程であって、隣接する欠陥線間の間隔が5μm~15μmであり、前記欠陥線の各々が1μm以下の直径を有し、前記パルス化レーザが、1パルスバーストあたり5~20パルスを有し、1パルスバーストあたり300~600マイクロジュールのパルスバーストエネルギーを有する、パルスバーストを生成する、工程
を含み、
前記ガラスワークピースが、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピースであり、前記方法が、
前記パルス化レーザビームを、前記ビームの伝播方向に沿って配向され、かつ、前記アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピース内へと導かれるレーザビーム焦線へと集束させる工程であって、
前記誘起吸収が、前記アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピース内に前記レーザビーム焦線に沿って欠陥線を生成する、工程、及び
前記アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピース及び前記レーザビームを、前記第1の輪郭に沿って互いに対して平行移動させ、それによって、前記アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピース内に前記第1の輪郭に沿って前記複数の欠陥線をレーザ形成する工程
を含み、
(i)前記パルス化レーザが、1パルスバーストあたり9~20パルスのパルスバーストを生成し、前記パルスバーストエネルギーが、1パルスバーストあたり300~500マイクロジュールであるか、あるいは
(ii)前記隣接する欠陥線間の間隔が7μm~12μmであり、前記パルス化レーザが、1パルスバーストあたり5~15パルスのパルスバーストを生成し、前記パルスバーストエネルギーが、1パルスバーストあたり400~600マイクロジュールである
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
(i)前記パルス化レーザが、10W~150W、好ましくは10W~100W、例えば25W~60Wのレーザ出力を有するか、あるいは、(ii)前記パルス化レーザが、10W~100Wのレーザ出力を有し、かつ、前記ワークピース及び前記レーザビームが、少なくとも0.25m/秒の速度で互いに対して平行移動するか、あるいは、(iii)前記パルス化レーザが、10W~100Wのレーザ出力を有し、かつ、前記ワークピース及び前記レーザビームが、少なくとも0.4m/秒、好ましくは少なくとも1m/秒の速度で互いに対して平行移動することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワークピースを前記輪郭に沿って分離する工程をさらに含み、前記ワークピースを前記輪郭に沿って分離する工程が、
(a)機械的な力を印加する工程、又は
(b)(i)前記第1の輪郭に沿って又はその近くに前記ワークピース内へと二酸化炭素(CO
2)レーザビームを誘導する工程、及び/又は、(ii)第2の輪郭に沿って前記ワークピース内へと二酸化炭素(CO
2)レーザビームを誘導する工程であって、前記第2の輪郭が前記第1の輪郭の内部にある、工程、又は、(iii)前記第1又は第2の輪郭に沿って又はその近くに前記ワークピース内へと楕円形の二酸化炭素(CO
2)レーザビームを誘導する工程であって、前記CO2レーザ出力が100~400Wである、工程、又は、(iv)前記第1又は第2の輪郭に沿って又はその近くに前記ワークピース内へと均一な強度のビームプロファイル(トップハット型プロファイル)の二酸化炭素(CO
2)レーザビームを誘導し、前記それぞれの輪郭に沿って前記ワークピースの熱応力誘起性の分離を促進する工程であって、前記CO
2レーザ出力が100~400Wである、工程
によってCO
2レーザビームを使用する工程
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(i)前記ワークピースが、複数のディスプレイガラス複合材料基板の積層を含む、又は、(ii)前記ワークピースが、複数のディスプレイガラス複合材料基板の積層を含み、かつ、前記複数のディスプレイガラス複合材料基板のうちの少なくとも2つが、エアギャップによって分離されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(i)前記パルスが、約1ピコ秒超~約100ピコ秒未満の範囲内
、好ましくは約5ピコ秒超~約20ピコ秒未満の持続時間を有する、及び/又は、(ii)前記バーストが、約10kHz~約650kHzの範囲の繰り返し数を有する、及び/又は、(iii)前記レーザビーム焦線が、約0.1μm~約10μmの範囲の平均スポット径を有する、及び/又は、(iv)前記誘起吸収が、前記ワークピース内に最大で約100μm以下の深さの表面下損傷を生成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ワークピース内に前記第1又は第2の輪郭に沿って前記複数の欠陥線をレーザ形成する工程をさらに含み、該複数の欠陥線をレーザ形成する工程が、前記それぞれの輪郭によって画成された表面に沿って前記ワークピースの分離をもたらし、分離された表面を形成し、前記分離された表面が、(i)約0.5μm以下のRa表面粗さを有するか、あるいは、(ii)表面が3μm未満の平均直径を有する表面粒子を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2015年3月24日出願の米国仮特許出願第62/137443号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
材料のレーザ加工の領域は、切断、削孔、ミリング、溶接、溶融等を含めた幅広い用途、及び、さまざまな種類の材料を包含する。これらの用途の中でもとりわけ、特に興味深いものは、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)又はディスプレイガラス組成物を分離するためのプロセスにおける、様々な種類の基板の切断又は分離である。
【背景技術】
【0003】
開発及びコストの視点から、ガラス基板の切断及び分離を改善する機会は多い。今日の市場において現行のものよりも速く、より清潔で、より安価で、より再現性があり、かつ、より信頼性のある、ガラスの分離方法を有することには、大きな関心が寄せられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願は、透明材料の薄い基板を切断及び分離するためのレーザ切断技術、より詳細には、薄膜トランジスタ(TFT)デバイスの生産に主に用いられるディスプレイガラス組成物の切断について記載する。記載されるレーザプロセスは、鋭い半径方向の外側隅部(<1mm)を切断するため、及び、内部孔及びスロットの形成を含む、任意の湾曲形状を作出するために、最大>1m/秒での真っ直ぐな切断を行うために用いられうる。例えば、例示的な実施形態は、スピンドルを挿入可能な内部孔を有する円形のガラスのメモリディスクの形成に用いられうる。
【0005】
本願はまた、ガラスを切断し、その後にそのパーツをさまざまな方法で加工することにより、切断ガラスパーツのエッジ強度及びエッジ衝撃強度の両方を、切断プロセス単独で達成できるレベルよりはるかに高いレベルへと高める方法についても記載する。本明細書に記載の方法は、これらのガラスの積層体を単回通過で切断することもでき、処理時間及び機械の利用を改善する。
【0006】
一実施形態では、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピースをレーザ加工する方法は、パルス化レーザビームを、ビームの伝播方向に沿って配向されたレーザビーム焦線へと集束させる工程を含む。レーザビーム焦線はまた、ガラス複合材料ワークピース内へと導かれてもよく、該レーザビーム焦線は、材料内に誘起吸収を生成し、該誘起吸収は、ワークピース内にレーザビーム焦線に沿って欠陥線(defect lines)又は損傷跡(damage track)を生成する。本方法はまた、ワークピース及びレーザビームを輪郭に沿って互いに対して平行移動させる工程、及び、ワークピース内に輪郭に沿って複数の欠陥線をレーザ形成する工程も含み、ここで、隣接する欠陥線間の間隔(又は周期)は5μm~15μmである。パルス化レーザは、1パルスバーストあたり5~20パルス及び300~600マイクロジュール/パルスのパルスバーストエネルギーを有するパルスバーストを生成する。
【0007】
ワークピース内に輪郭に沿って複数の欠陥線をレーザ形成する工程は、輪郭によって画成された表面に沿ってワークピースを分離し、分離表面の形成を促進することができる。誘起吸収は、約0.5μm以下の切断及び分離されたエッジのRa表面粗さを生じうる。誘起吸収はまた、分離表面上に、3μm未満の平均直径を有する粒子も生成しうる。
【0008】
幾つかの実施形態によれば、ガラス物品は、少なくとも250μmにわたり延在する複数の欠陥線を有する少なくとも1つのエッジを含む、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料を含み、該欠陥線の各々は、約1μm以下の直径を有し、5μm~15μmの距離だけ分離されている。幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つのエッジは、最大で約100μm以下の深さの表面下損傷及び/又は約0.5μm以下のRa表面粗さを有する。幾つかの実施形態では、このガラス物品は、0.5mm~7mmの厚さを有する。開発されたレーザ方法は、パネルからのパーツの手動又は機械的分離のため、若しくは、所望のプロファイルに熱応力を印加することによる完全なレーザ分離のために調整されうる。本方法は、超短パルスレーザの利用を包含し、その後、完全に自動化された分離のために、時折、高圧気流と組み合わせて、熱応力を作り出すために、CO2レーザを使用することができる。
【0009】
上記内容は、異なる図全体を通じて同じ部分についての言及には同様の参照文字が用いられる、添付の図面に例証される例となる実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。図面は必ずしも寸法どおりではなく、その代わりに、例示的な実施形態を示すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】改質ガラスの等間隔の欠陥線又は損傷跡を有する断層線(fault line)(又は穿設線)
【
図2A】レーザビーム焦線の位置決め、すなわち、焦線に沿った誘起吸収に起因する、レーザ波長についての透明材料の加工を示す図
【
図3A】一実施形態に従ったレーザ加工のための光学アセンブリを示す図
【
図3B-1】基板に対してレーザビーム焦線をさまざまに位置決めすることによって基板を加工するさまざまな方法を示す図
【
図4】レーザ加工のための光学アセンブリの第2の実施形態を示す図
【
図5A】レーザ加工のための光学アセンブリの第3の実施形態を示す図
【
図6】レーザ加工のための光学アセンブリの第4の実施形態の概略図
【
図7】材料のレーザ加工のための異なるレーザ強度レジームを示す図。
図7Aは、集束しないレーザビームを示し、
図7Bは球面レンズを用いた集光レーザビームを示し、
図7Cはアキシコン又は回折フレネルレンズを用いた集光レーザビームを示す。
【
図8A】各例示的なパルスバーストが7パルスを有する、時間に対する例示的なパルスバースト内のレーザパルスの相対強度
【
図8B】各例示的なパルスバーストが9パルスを含む、例示的なパルスバースト内の時間に対するレーザパルスの相対強度
【
図8C】0.024mm及び0.134mm厚の薄膜トランジスタ(TFT)ガラスの真っ直ぐな切断片の切断エッジ画像
【
図9A】0.6mm厚のEagle XG(登録商標)ガラスの真っ直ぐな切断片のエッジ画像
【
図9B】Eagle XG(登録商標)ガラスの0.5mm厚片である、低アルカリ又は無アルカリのアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラスに作出された損傷跡の上面図
【
図9D】
図9B及び9Cに示される0.5mm厚のEagle XG(登録商標)ガラスの切断片のエッジ画像
【
図9E】1バーストあたり異なるエネルギーレベルのディスプレイガラスについてのバーストエネルギーに対する破壊強度を示す図
【
図9F】ディスプレイガラスの一実施形態についての穿孔ピッチに対する破壊強度を示す図
【
図9G】本明細書に記載される一実施形態に従ったCO
2ビーム直径の関数としての速度の増加を示す図
【
図11】機械的又はCO
2レーザスコアリングを使用する、連続的な溶融ガラス製造プロセスのための既存のガラス切断法
【
図12】水平レーザ切断を使用してガラス板又はシートをドローから分離する、ガラスドローにおけるレーザに基づいたガラスの切断方法(
図12A)、及び、レーザを使用してガラスシートの領域を切り抜き、ドローからガラスの品質セクションを取り出すことによる、ガラスドローにおけるレーザに基づいたガラスの切断方法を示す図(
図12B)
【
図13】ドローの高い位置でビードを切断し、ドローのより低い位置でシートを水平に切断することによる、ドローにおけるレーザに基づいたガラスの切断を示す図
【
図14】水平に切断してドローからガラスを取り出し、その後、別々に垂直に切断してガラスエッジビードを除去することによる、ドローにおけるレーザに基づいたガラスの切断を示す図
【
図15】シートから廃ガラスをトリム又は除去するために、ドローから離れた、レーザに基づいたガラスの切断の使用を示す図
【
図16】アニール点に近い温度でガラスシートを保持する多段加熱炉を使用する、ドローにおけるレーザに基づいた切断プロセスを示す図
【
図17】ドローにおいて切断されたガラスシートに所定の温度冷却プロファイルを与えるように構成された多段加熱炉
【発明を実施するための形態】
【0011】
例となる実施形態の説明が以下に示される。
【0012】
本願は、例えばディスプレイ及び/又はTFT(薄膜トランジスタ)ガラス組成物など、例えばアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物などのガラス組成物を、ガラス基板から完成パーツを構成するであろうものへと精密に切断及び分離するための方法を提供する。このようなガラス又はガラス組成物の幾つかの例として、米国ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated社から入手可能なEagle XG(登録商標)、Contego、Corning Lotus(商標)、及びCorning Lotus NXT(商標)がある。アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物は、薄膜トランジスタなどの電子デバイス用途のための基板として作用するのに適するように配合されうる。これは、TFTガラス組成物が、典型的にはケイ素に似た熱膨張係数(CTE)を有し(好ましくは5ppm/℃以下、好ましくは4ppm/℃未満、例えば、約3ppm/℃、又は2.5~3.5ppm/℃)、かつ、ガラス内に低レベルのアルカリを有することを意味する。アルカリドーパントは、幾つかの条件下では、ガラスから滲出してケイ素法を汚染しかねず、したがって望ましくないことから、低レベルのアルカリ(すなわち、0~2%の微量、好ましくは<1質量%、例えば<0.5質量%)が、TFT用途に用いられるガラスにとって好ましい。レーザ切断プロセスは、無視できるほどわずかなデブリと、エッジに対する最小限の欠陥及び低い表面下損傷とを伴う制御可能な方式でガラスパーツを分離し、パーツの強度を保存する。開発されたレーザ方法は、選択されたレーザ波長に対して透明な材料によく適している。この波長は、例えば、1064、532、355又は266ナノメートルでありうる。ワークピース又はTFTガラス組成物は、好ましくは、選択されたレーザ波長に対して実質的に透明(すなわち、材料の深さ1mmあたり約10%未満、好ましくは約1%未満の吸収)であるべきである。本方法は、例えば、0.025mm~0.7mmの範囲の厚さのEagle XG(登録商標)組成物を使用することによって実証されうる。
【0013】
以下に説明されるプロセスの基本的な工程は、所望の形状を描き、亀裂伝播のための最小抵抗の経路を確立し、したがって、その基板マトリクスから形状を分離し、取り外す、垂直な欠陥線を作り出すことである。レーザ分離方法は、手動又は機械的分離、元の基板からのガラス形状の部分的分離又は全体的分離を可能にするように調節及び構成されうる。
【0014】
第1の工程では、加工される物体は、基板の厚さを通って貫通する高アスペクト比の線焦点へと集光された超短パルス化(100ピコ秒未満のパルス幅)レーザビーム(1064nm以下の波長における)を用いて照射される。高いエネルギー密度のこの容積内で、材料は、非線形効果を介して改質される。この高い光学的強度なしでは、非線形の吸収は誘発されないことに注意することが重要である。この強度閾値未満では、材料は、レーザ照射に対して透明であり、元の状態で保持される。所望される線又は経路上にレーザを走査することにより、狭隘な欠陥線又は輪郭又は経路(数μm幅)が作出され、次の工程で分離される周囲又は形状が画成される。
【0015】
レーザ源は、ガラス複合材料ワークピースなどの実質的に透明な材料における多光子吸収(MPA)を生成することができる。MPAは、1つの状態(通常は基底状態)からより高いエネルギー電子状態へと分子を励起(イオン化)することを目的とした、同一又は異なる周波数の2つ以上の光子の同時吸収である。より低い及びより高い、分子の関連した状態間のエネルギーの差異は、2つの光子のエネルギーの合計に等しい。誘起吸収とも呼ばれるMPAは、例えば、線形の吸収より数桁弱い、二次又は三次の過程(又はより高次)でありうる。二次誘起吸収の強度は、例えば、光強度の2乗に比例してよく、よって、それは非線形の光過程であるという点で、線形吸収とは異なっている。
【0016】
一旦、垂直な欠陥又は穿孔を有する線又は輪郭が作出されると、以下によって分離が起こりうる:1)穿設された断層線上又はその周りの手動又は機械的応力、応力又は圧力は、穿設された断層線の両側を引き離す張力を作り出し、依然として結合している領域を破断する;2)熱源の使用により、断層線の周りに応力域を作り出し、垂直な欠陥又は穿設された断層線を張力下に置き、部分的又は全体的な分離を誘起する。両方の事例において、分離は、レーザ走査速度、レーザ出力、レンズのパラメータ、パルス幅、繰り返し数等の幾つかのプロセスパラメータに応じて決まる。
【0017】
このレーザ切断プロセスは、焦線を生成する光学系と組み合わせて超短パルスレーザを利用し、広範なガラス組成物本体に完全に穿設する。幾つかの実施形態では、個別のパルスのパルス持続時間は、約5ピコ秒超~約20ピコ秒未満など、約1ピコ秒超~約100ピコ秒未満の範囲内にあり、個別のパルスの繰り返し数は、約10kHz~650kHzの範囲など、約1kHz~4MHzの範囲内でありうる。
【0018】
前述の個別のパルス繰り返し数での単発パルス動作に加えて、パルスは、例えば、10~30ナノ秒、約20ナノ秒など、約1ナノ秒~約50ナノ秒の範囲内のバースト内の個別のパルス間の持続時間によって分離された、2以上のパルス(例えば、3パルス、4パルス、5パルス、10パルス、15パルス、20パルス、又はそれ以上など)のバーストにおいて生成されてよく、バースト繰り返し周波数は、約1kHz~約200kHzの範囲内でありうる。(バースト化又はパルスバーストの生成とはレーザ動作の一種であり、パルスの放出は均一かつ規則的な流れではなく、むしろパルスの密集クラスタである)。パルスバーストレーザビームは、材料がこの波長において実質的に透明になるように選択された波長を有しうる。材料で測定された1バーストあたりの平均レーザ出力は、例えば40マイクロジュール/mm~2500マイクロジュール/mm、又は500~2250マイクロジュール/mmなど、材料の厚さ1mmあたり40マイクロジュール超でありうる。例えば、0.5~0.7mm厚のCorning Eagle XG(登録商標)ガラスについては、ガラスを切断及び分離するために300~600μJのパルスバーストが用いられてよく、これは、428μJ/mm~1200μJ/mmの例示的な範囲に対応する(例えば、0.7mmのEagle XG(登録商標)ガラスについては300μJ/0.7mm、及び、0.5mmのEagle XG(登録商標)ガラスについては600μJ/0.5mm)。
【0019】
ガラスは、レーザビームに対して移動(あるいは、レーザビームは、ガラスに対して平行移動)して、所望されるパーツの形状をなぞる、穿設線を作出する。レーザは、直径およそ1μmの内部開口部を有する、ガラスの全深さを貫通する、孔状の欠陥領域(又は損傷跡、又は欠陥線)を作出する。ディスプレイ又はTFTタイプのガラスでは、これらの穿孔、欠陥領域、損傷跡、又は欠陥線は、概ね、互いに、5μm以上かつ20μm以下で離間し、好ましくは5~15μmの間隔があいている。TFT/ディスプレイガラスについては、例えば、5~12μm、7~15μm、又は7~12μmである。
【0020】
本明細書に定められるように、欠陥線の直径又は内径は、ガラス又はワークピース内の開口チャネル又は空気孔の内径である。例えば、本明細書に記載される幾つかの実施形態では、欠陥線の内径は、例えば≦400nm、又は≦300nmなど、<500nmである。さらには、欠陥線の内径は、例えば、レーザビーム焦線のスポット径と同程度の大きさでありうる。レーザビーム焦線は、約0.1μm~約10μmの範囲内、好ましくは0.1~5μm、例えば1.5~3.5μmの平均スポット径を有しうる。一旦、ワークピース又はガラスパーツが断層線又は輪郭に沿って分離された後、切断及び分離された表面上の欠陥線は、まだ視認されうる可能性があり、例えば、欠陥線の内径に等しい幅を有しうる。よって、本明細書に記載される実施形態の方法によって調製されたガラス物品の切断面上の欠陥線の幅は、例えば、約0.1μm~約5μmの幅を有しうる。
【0021】
単一のガラスシートを超越して、本プロセスは、ガラスの積層体の切断にも用いることができ、レーザの単回通過で、全高が最大で数mmのガラス積層体に完全に穿設することができる。ガラス積層体は、さらに、さまざまな位置にエアギャップを有していてもよい;レーザプロセスは、依然として単回通過で、このような積層体の上部及び下部ガラス層の両方に完全に穿設する。
【0022】
一旦、ガラスに穿設されると、ガラスが十分な内部応力を有する場合には、亀裂は穿孔線に沿って伝播し、ガラスシートは所望のパーツへと分離する。TFTガラス組成物は、低い熱膨張係数(CTE<4ppm/℃)及び低い内部応力(例えば、ディスプレイとして用いられる場合の歪み又は複屈折を防止するために、<10MPa、例えば<5MPaなど)を有するガラスであることから、追加的な機械的分離力が、概して、ガラスパーツを分離するように印加され、例えば、それに続いて、穿孔線に沿った又はその近くのCO2レーザの通過が用いられて、同一の予めプログラムされた穿孔線に沿ってガラスを分離する、熱応力が生成される。
【0023】
最後に、加工及び輸送の間には高レベルの信頼性が必要とされることから、TFTディスプレイガラスシートにとって、丸められた又は面取りされたエッジは、典型的な要件とされる。この技術によって生じた切断されたままのエッジは、必要とされる高レベルの信頼性をもたらしうる。加えて、追加的なエッジ成形が必要な場合、本明細書に記載されるレーザ切断方法は、エッジの面取りを可能にし、これにより、エッジの信頼性(応力事象及びエッジ衝撃事象を耐え抜く能力)のレベルがさらに増加する可能性がある。最後に、矩形、切断されたままのエッジ又は面取りされたエッジのいずれかをさらに精密研磨又はタッチ研磨して、エッジ強度、エッジ衝撃強度又は全体的なエッジの信頼性をさらに一層向上させてもよい。ガラスの切断は、(a)例えば溶融ガラスの製造ラインのドローの底部でなど、溶融ガラス製造ラインドロー上(すなわちオンライン)、又は、(b)オフライン(すなわち、ドロー上ではなく、その後にエッジの面取り又は研磨が行われうる)のいずれかで達成されるであろう。
【0024】
本願は、透明な基板から任意の形状を精密に切断及び分離するため、より詳細には、無視できるほどわずかなデブリと、エッジ強度、エッジ衝撃強度を保存し、高レベルのガラスエッジ信頼性を可能にする、パーツエッジに対する最小限の損傷とを伴った、制御可能な方式で、Eagle XG(登録商標)、Corning Lotus(商標)、Contego、及びCorning Lotus NXT(商標)等のTFTガラス組成物を切断するためのレーザ方法及び装置について記載する。開発されたレーザ方法は、線形領域のレーザ波長、又は、清潔な本来の表面品質の管理を可能にする低いレーザ強度に対する、材料の透明性、並びに、レーザ焦点の周りの高強度領域によって作出された減少した表面下損傷に依拠している。このプロセスの実現に向けた重要な鍵の1つは、超短パルス化レーザによって作出された高アスペクト比の欠陥又は欠陥線である。それは、切断される材料の上面から底面まで延びる、欠陥線の作出を可能にする。原則として、この欠陥は、単発パルスによって作出することができ、必要な場合には、追加的なパルスを使用して、影響を受ける領域(深さ及び幅)の拡張を増加させることができる。幾つかの実施形態では、レーザ方法を、スピンドルを挿入可能な内部孔を有する円形のガラスメモリディスクの形成に用いることができる。後述するように、CO2レーザを用いて、この内部孔から切断ガラスを解放することができる。本明細書に記載のレーザ方法を、限定はしないが、始点及び終点が円の円周に沿って出会うがバリは形成しない、円形の形状等の任意の形状を作出するために用いることができることが予想外に見いだされた。当技術分野で知られているように、曲線形状のための通常のレーザ分離方法は、大量の溶融材料を、レーザ分離技法の開始点及びレーザ分離技法の終点(通常、開始点と同じ又は実質的に同じ位置)に作出する。このバリは、いずれも、最終製品の品質に悪影響を与えるか、あるいは、バリを取り除くために追加的な研削又は研磨技法に供されなければならない。本開示に従った例示的なレーザ方法は、しかしながら、予想外にも、このようなバリを生じないことが見いだされた。
【0025】
レーザビーム焦線は、例えば、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、又は約9mmなど、約0.1mm~約10mm、又は約0.5mm~約5mmの範囲の長さ、又は約0.1mm~約2mm、又は0.1mm~約1mmの範囲の長さ、及び、約0.1μm~約5μmの範囲の平均スポット径を有しうる。孔又は欠陥線は各々、例えば0.25~5μm(例えば0.2~0.75μm)など、0.1μm~10μmの直径を有しうる。
【0026】
線焦点の生成は、ガウシアンレーザビームをアキシコンレンズ内に送ることによって行われてよく、この場合、ベッセルガウスビームとして知られるビームプロファイルが作り出される。このようなビームは、ガウシアンビームよりはるかにゆっくりと回折する(例えば、単一のμmスポットサイズを、数十μm以下とは対照的に、数百μm又はミリメートルの範囲に維持しうる)。したがって、焦点の深さ又は材料との強い相互作用の長さは、ガウシアンビームのみを使用する場合よりもはるかに長くなりうる。エアリビームなど、他の形態又はゆっくりとした回折又は非回折のビームも使用して差し支えない。
【0027】
図1A~1Cに示されるように、透明材料、より詳細にはTFTガラス組成物を切断及び分離する方法は、本質的に、超短パルス化レーザ140で加工される材料又はワークピース130における、複数の垂直な欠陥線120で形成された断層線110の作出に基づいている。欠陥線120は、例えば、ガラスシートの厚さを通って延び、ガラスシートの主(平)面と直交する。「断層線」は、本明細書では「輪郭」とも称される。断層線又は輪郭は、
図1Aに示される断層線110に似た線形でありうる一方、断層線又は輪郭は、ある曲率を有する非線形であってもよい。曲線状の断層線又は輪郭は、例えば、ワークピース130又はレーザビーム140のいずれかを、他方に対して1次元の代わりに2次元において平行移動させることによって生成されうる。材料特性(吸収、CTE、応力、組成等)及び材料130の加工用に選択されるレーザパラメータに応じて、断層線110のみの作出は、自己分離を誘起するのに十分でありうる。この事例では、例えばCO
2レーザによって生成される、張力/曲げ力又は熱応力などの二次的分離プロセスは必要ではない。
図1Aに示されるように、複数の欠陥線は、輪郭を画成しうる。欠陥線を有する分離されるエッジ又は表面は、輪郭によって画成される。欠陥線を作出する誘起吸収は、分離されたエッジ又は表面上に、3μm未満の平均直径を有する粒子しか生成せず、非常に清潔な切断プロセスをもたらしうる。
【0028】
幾つかの事例では、作出された断層線110は、材料を自発的に分離するには十分ではなく、二次工程が必要とされうる。穿設されたガラスパーツは、オーブンなどのチャンバ内に設置されてガラスパーツのバルク加熱又は冷却を生じ、熱応力を生じさせ、欠陥線に沿ってパーツを分離する一方で、このようなプロセスは、遅延しかねず、また、多くの美術品又は大きいピース又は穿設されたガラスを収容するために、大きいオーブン又はチャンバを必要としうる。望ましい場合には、例えば、第2のレーザを用いて熱応力を生じさせ、分離してもよい。TFT又はディスプレイガラス組成物の事例では、分離は、断層線の作出後に、機械的な力の印加、又は熱源(例としては、例えばCO2レーザなどの赤外レーザ)の使用によって熱応力を生み出し、材料を分離するように強いることで、達成されうる。別の選択肢は、CO2レーザのみを用いて分離を開始し、次に、手動で分離を完了させることである。随意的なCO2レーザ分離は、例えば、10.6μmで放射するデフォーカスされた連続波(cw)レーザを用いて、及び、そのデューティサイクルを制御することによって調整された出力を用いて、達成される。焦点変更(すなわち、収束スポットサイズを最大とするデフォーカス範囲)は、スポットサイズを変動させることによって誘起される熱応力を変動させるために用いられる。デフォーカスされたレーザビームは、略レーザ波長サイズの最小限の回折限界のスポットサイズより大きいスポットサイズを生成するレーザビームを含む。例として、例えば、1~12mm、3~8mmなど、1~20mmのスポットサイズのCO2レーザを利用することができ、例えば、波長10.6μmのCO2レーザは、穿設されたガラス上にこれらのスポットサイズを有するビームを形成することができる。CO2レーザのスポット径の幾つかの例は、2mm、5mm、7mm、10mm、及び20mmである。例えば、9~11μmの範囲で放出する波長を有するレーザなど、その放出波長もガラスに吸収される他のレーザもまた、用いられうる。このような事例では、100~400ワットの出力レベルを有するCO2レーザが用いられてよく、そのビームは、欠陥線に沿って又は隣接して、50~500mm/秒の速度で走査されてよく、これが、十分な熱応力を生み出して分離を誘起する。使用材料、その厚さ、熱膨張係数(CTE)、弾性率はすべて、所与の空間位置における特定のエネルギー付与率によって与えられる熱応力の量に影響を及ぼすことから、特定の範囲内で選択される正確な出力レベル、スポットサイズ、及び走査速度は、これらの因子に応じて決まりうる。スポットサイズが小さすぎる場合(すなわち<1mm)、又はCO2レーザ出力が高すぎる場合(>400W)、又は走査速度が遅すぎる場合(10mm/秒未満)には、ガラスは過熱されかねず、ガラス内にアブレーション、溶融又は熱的に生成された亀裂を作り出し、それらは、分離されたパーツのエッジ強度を低下させることから、望ましくない。好ましくは、CO2レーザビームの走査速度は、効率的かつ確実なパーツ分離を誘起するためには、>50mm/秒である。しかしながら、CO2レーザによって作り出されるスポットサイズが大きすぎる場合(>20mm)、又はレーザ出力が低すぎる場合(<10W、又は幾つかの事例では<30W)、又は走査速度が速すぎる場合(>500mm/秒)には、結果的に、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物(ディスプレイ及び/又はTFTガラス)における確実なパーツ分離を誘起するには低すぎる熱応力をもたらす、不十分な加熱が起こる。
【0029】
例えば、幾つかの実施形態では、200ワットのCO2レーザ出力を、およそ6mmのガラス表面におけるスポット径、及び250mm/秒の走査速度とともに用いて、上述のピコ秒レーザで穿設した0.7mm厚のCorning Eagle XG(登録商標)ガラスについてのパーツ分離を誘起してもよい。例えば、より厚いCorning Eagle XG(登録商標)ガラス基板は、分離するために、より薄いEagle XG(登録商標)基板よりも、単位時間あたり、より大きいCO2レーザ熱エネルギーを必要としうる、あるいは、より低いCTEを有するガラスは、分離するために、より低いCTEを有するガラスよりも、より大きいCO2レーザ熱エネルギーを必要としうる。穿設された線に沿った分離は、CO2スポットが、例えば100ミリ秒以内、50ミリ秒以内、又は25ミリ秒以内に所与の位置を通過後に、非常に迅速に(1秒未満)生じる。
【0030】
一部のガラスについては、断層線110の方向に沿って隣接する欠陥線120の距離又は周期は、0.1μm超かつ約20μm以下でありうる。例えば、一部のガラスでは、隣接する欠陥線120間の周期は、0.5~15μm、又は3~10μm、又は0.5μm~3.0μmでありうる。例えば、一部のガラスでは、隣接する欠陥線120間の周期は0.5μm~1.0μmでありうる。しかしながら、本明細書に開示されるアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物、とりわけ0.5mm厚以上の厚さのものについては、隣接する欠陥線120間の周期は、好ましくは>5μm、より一層好ましくは5~15μmであるべきである。
【0031】
欠陥線を作出するための幾つかの方法が存在する。線焦点を形成する光学的方法は、ドーナツ形のレーザビーム及び球面レンズ、アキシコンレンズ、回折素子、又は高強度の線形領域を形成する他の方法を使用して、複数の形態をとりうる。非線形の光学効果を通じて、焦点領域における基板材料の破壊を生じ、基板材料又はガラスワークピースの破壊を生じるのに十分な光学的強度に達する限りは、レーザの種類(ピコ秒、フェムト秒等)及び波長(IR、グリーン、UV等)もまた変動させることができる。好ましくは、レーザは、所与のバースト内のパルス数を調整することによって、経時的なエネルギー付与の制御を可能にする、パルスバーストレーザである。
【0032】
本願では、超短パルス化レーザは、一貫した制御可能かつ反復可能な方式での高アスペクト比の垂直な欠陥線の作出に用いられる。この概念の核心は、光学系を使用して、透明パーツ内に高強度のレーザビームの線焦点を作出することである。この概念の1つのバージョンは、光学レンズアセンブリにアキシコンレンズ要素を使用して、超短(ピコ秒又はフェムト秒の持続時間)ベッセルビームを使用する高アスペクト比の無テーパ型マイクロチャネル領域を作出することである。言い換えれば、アキシコンは、レーザビームを、円筒形状かつ高アスペクト比(長距離かつ小径)の高強度領域へと集光する。集光レーザビームを用いて作出された高い強度に起因して、レーザの電磁場と基板材料との非線形の相互作用が起こり、レーザエネルギーは基板に伝達されて、断層線の構成成分となる欠陥の形成をもたらす。しかしながら、レーザエネルギー強度が高くない材料の領域(例えば、中心収束線を取り囲む基板のガラス容積)においては、材料はレーザに対して透明であり、レーザから材料へとエネルギーを伝達するための機構は存在しないことを実現することが重要である。その結果、レーザ強度が非線形の閾値を下回る場合には、ガラス又はワークピースには何も起こらない。
【0033】
図2A及び2Bを見ると、材料をレーザ加工する方法は、パルス化レーザビーム2をビーム伝播方向に沿って配向されたレーザビーム焦線2bへと集束する工程を含む。
図3Aに示されるように、レーザ3(図示せず)は、光学アセンブリ6に入射する部分2aを有するレーザビーム2を放射する。光学アセンブリ6は、入射レーザビームを、ビーム方向に沿って画成された拡張範囲(焦線長さl)にわたり、出力側において広範囲に及ぶレーザビーム焦線2bに変化させる。平面基板1は、レーザビーム2のレーザビーム焦線2bと少なくとも部分的に重なり合うビーム経路内に位置付けられる。レーザビーム焦線は、よって、基板内に導かれる。参照番号1aは、それぞれ、光学アセンブリ6又はレーザに面する平面基板の表面を指定しており、参照番号1bは、基板1の裏面を指定している。基板又はワークピースは、dで標識される寸法の厚さ(この実施形態では、面1a及び1bに対して、すなわち基板面に対して垂直に測定される)を有する。基板又はワークピースはまた、材料と称されてもよく、例えば、レーザビーム2の波長に対して実質的に透明なガラス物品でありうる。
【0034】
図2Aが示すように、基板1(又はガラス複合材料ワークピース)は、長手方向のビーム軸に対して垂直に、したがって光学アセンブリ6によって生成される同じ焦線2b の後方に位置合わせされる(基板は、図面に対して垂直である)。焦線は、ビーム方向に沿って配向又は位置合わせされており、基板は、焦線2bが、基板表面1aの手前から開始し基板表面1bの手前で停止する、すなわち焦線2bは、まだ基板内で終端しており、表面1bを越えて延びないように、焦線2bに対して位置付けられる。レーザビーム焦線2bと基板1とが重なり合った領域では、すなわち焦線2bが及んだ基板材料内では、広範なレーザビーム焦線2bは、広域セクション2c(長手方向のビーム方向に沿って位置合わせされる)を生成し(長さlのセクション、すなわち長さlの線焦点上にレーザビーム2を集束することによって確保される、レーザビーム焦線2bに沿った適切なレーザ強度を仮定する)、それに沿って誘起吸収が基板材料に生成される。誘起吸収により、セクション2cに沿って基板材料に欠陥線形成が生じる。欠陥線は、複数のレーザパルスの単一の高エネルギーバーストを使用することによって生成された、実質的に透明な材料、基板、又はワークピースにおける顕微鏡的な(例えば、直径>100nmかつ<0.5μm)細長い「孔」(穿孔又は欠陥線とも呼ばれる)である。個別の穿孔は、例えば、数百キロヘルツの速度(1秒あたり数十万の穿孔)で作出されうる。供給源と材料との相対運動を伴って、これらの穿孔は、互いに隣接して設置されうる(空間的分離は、所望されるようにサブミクロンから何マイクロメートル(many microns)も変動する)。この空間的分離(ピッチ)は、材料又はワークピースの分離を促進するように選択されうる。幾つかの実施形態では、欠陥線は、「貫通孔」でああり、これは、実質的に透明な材料の上部から底部まで延びる孔又は開口チャネルである。欠陥線形成は、局所的のみならず、誘起吸収の広域セクション2cの全長にわたる。セクション2cの長さ(レーザビーム焦線2bと基板1との重なりの長さに対応する)は、参照記号Lで標識されている。誘起吸収のセクション2c(又は、欠陥線形成を被る基板1の材料のセクション)の平均直径又は範囲は、参照記号Dで標識されている。この平均範囲Dは、基本的には、約0.1μm~約5μmの範囲のレーザビーム焦線2bの平均直径δ、すなわち、平均スポット径に対応する。
【0035】
図2Aが示すように、基板材料(レーザビーム2の波長λに対して透明である)は、焦線2b内の高強度のレーザビームに関連する非線形効果から生じる、焦線2bに沿った誘起吸収に起因して、加熱される。
図2Bは、加熱された基板材料が最終的には、表面1aにおいて最大となる、対応する誘起された張力が微小亀裂形成をもたらすように膨張することを示している。
【0036】
レーザ源の選択は、透明材料に多光子吸収(MPA)を作出する能力を前提とする。MPAは、1つの状態(通常は基底状態)から、より高エネルギーの電子状態(イオン化)へと分子を励起するための、同一又は異なる周波数の2つ以上の光子の同時吸収である。より低い及びより高い、分子の関連した状態間のエネルギーの差異は、2つの光子のエネルギーの合計に等しくなりうる。誘起吸収とも呼ばれるMPAは、例えば、線形の吸収より数桁弱い、二次又は三次過程、又はより高次の過程でありうる。MPAは、誘起吸収の強度が、例えば、光強度自体に比例する代わりに、光強度の2乗又は3乗(又はより高次のベキ乗則)に比例しうるという点で、線形の吸収とは異なっている。よって、MPAは、非線形の光過程である。
【0037】
焦線2bの生成に適用可能な代表的な光学アセンブリ6、並びに、これらの光学アセンブリを適用可能な代表的な光学セットアップについて、以下に説明する。アセンブリ又はセットアップはすべて、同一の構成要素又は特徴、若しくはそれらの機能に匹敵するものには同一の参照番号が用いられるように、上記説明に基づいている。したがって、差異のみを以下に説明する。
【0038】
それに沿って分離が起こる、分離されたパーツ表面の高品質(破壊強度、幾何学的精密さ、粗さ及び再加工の必要性の回避に関して)を確実にするために、分離線に沿って基板表面上に位置付けられた個別の焦線は、以下に記載される光学アセンブリを使用して生成されるべきである(以後、光学アセンブリは、代替的に、レーザ光学系とも称される)。分離された表面(又は切断エッジ)の粗さは、特に、焦線のスポットサイズ又はスポット径から生じる。例えば0.25~1μmでありうる、分離(切断)表面の粗さは、例えば、Ra表面粗さの統計値(焦線のスポット径から得られる凸凹の高さを含めた、サンプリング表面の高さの絶対値の粗さ算術平均)によって特徴付けられうる。例えば、レーザ3の所与の波長λの事例では0.5μm~2μmである、小さいスポットサイズを達成するためには(基板1の材料との相互作用)、ある特定の要件が、通常、レーザ光学系6の開口数に与えられる必要がある。これらの要件は、以下に記載されるレーザ光学系6によって満たされる。
【0039】
必要とされる開口数を達成するためには、光学系は、一方では、既知のアッベの式(N.A.=n sin(シータ)、n:加工されるガラス又は複合材料ワークピースの屈折率、シータ:開口角度の半分、及び、シータ=arctan(D/2f)、D:開口、f:焦点距離)に従って、所与の焦点距離に必要とされる開口部を処理する必要がある。他方では、レーザビームは、最大で必要とされる開口で、光学系を照らす必要があり、これは、典型的にはレーザと合焦光学系の間に拡大テレスコープを使用するビーム幅拡大によって達成される。
【0040】
スポットサイズは、焦線に沿った均一な相互作用の目的では、あまり強く変動させるべきではない。これは、例えば、(下記実施形態を参照)、ビーム開口部、したがって開口数のパーセンテージのみがわずかに変動するように、合焦光学系の小さい円形領域のみを照らすことによって、確実になりうる。
【0041】
図3Aによれば(レーザ照射2のレーザビーム束における中央ビームのレベルにおける基板面に対して垂直なセクション;ここでも、焦線2b又は誘起吸収の広域セクション2cが基板法線に対して平行になるように、レーザビーム2は基板面に対して垂直に入射する、すなわち、焦線の入射角度は約0°である)、レーザ3によって放出されたレーザ照射2aは、最初に、用いられるレーザ照射に対して完全に不透明な円形開口8上に誘導される。開口8は、長手方向のビーム軸に対して垂直に配向され、かつ、図示されたビーム束2aの中央ビームを中心とする。開口8の直径は、ビーム束2aの中心近くのビーム束又は中央ビーム(ここでは2aZで標識される)が、開口を射当て、開口に完全に吸収されるように選択される。ビーム束2aの外周範囲のビーム(周縁光線、ここでは2aRで標識される)のみが、ビーム直径と比較して縮小した開口サイズに起因して吸収されずに、開口8を側面に沿って通過し、この実施形態では、球状に切断された両凸レンズ7として設計される光学アセンブリ6の合焦光学素子の周辺領域を射当てる。
【0042】
図3Aに示されるように、レーザビーム焦線2bは、レーザビームのための単一の焦点のみならず、レーザビームにおける異なる光線のための一連の焦点でもある。一連の焦点は、レーザビーム焦線2bの長さlとして
図3Aに示される、画成された長さの細長い焦線を形成する。レンズ7は、中央ビームを中心とし、一般的に球形に切断されたレンズの形態をした、補正されていない、両凸集束レンズとして設計される。このようなレンズの球面収差は有利でありうる。代替として、理想的な焦点を形成しないが、画成された距離の独特の細長い焦線を形成する、理想的に補正されたシステムから逸れている非球面又はマルチレンズシステムもまた、使用されうる(すなわち、単一の焦点を有しないレンズ又はシステム)。レンズのその区域は、したがって、レンズ中心からの距離に依存して焦線2bに沿って集束する。ビーム方向を横断する開口8の直径は、ビーム束の直径のおよそ90%であり(ビームの強度がピーク強度の1/eに低下するのに必要とされる距離によって定められる)、光学アセンブリ6のレンズの直径のおよそ75%である。よって、ビーム束の中央を遮断することによって生成された、非収差補正された球面レンズ7の焦線2bが用いられる。
図3Aは、中央ビームを通る1つの面におけるセクションを示しており、完全な3次元の束は、図示されたビームが焦線2bの周りを回転するときに見られうる。
【0043】
このタイプの焦線に欠点があるとすれば、条件(スポットサイズ、レーザ強度)が、焦線に沿って(よって、材料の所望の深さに沿って)変動する場合があり、したがって、所望の種類の相互作用(溶融がなく、誘起吸収、最大で亀裂形成に至る熱塑性変形)が、焦線の選択された部分でしか生じない可能性がありうることである。これは、今度は、入射レーザ光の一部のみしか、望ましい方法で基板材料に吸収されない可能性があることを意味する。このように、プロセスの効率(所望の分離速度に必要とされる平均レーザ出力)が損なわれるかもしれず、レーザ光も、望ましくない領域(基板に付着するパーツ又は層、若しくは基板保持具)に伝達されるかもしれず、望ましくない方法(例えば加熱、拡散、吸収、不要な改質)でそれらと相互作用するかもしれない。
【0044】
図3B-1から
図3B-4は、(
図3Aの光学アセンブリのみならず、基本的には他の適用可能な光学アセンブリ6についても)、レーザビーム焦線2bの位置が、基板1に対して光学アセンブリ6を適切に位置付ける及び/又は位置合わせすることによって、並びに、光学アセンブリ6のパラメータを適切に選択することによって、制御されうることを示している。
図3B-1に示されるように、焦線2bの長さlは、基板厚さdを上回る(ここでは2倍)ように調整されうる。基板1が、(長手方向のビーム方向で見て)焦線2bに対して中心に設置される場合、誘起吸収の広域セクション2cは、基板の厚さ全体にわたって生成される。レーザビーム焦線2bは、例えば、約0.01mm~約100mmの範囲内又は約0.1mm~約10mmの範囲の長さlを有しうる。さまざまな実施形態は、例として、約0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm~5mm、例えば0.5mm、0.7mm、1mm、2mm、3mm、4mm、又は5mmの長さlを有するように構成されうる。
【0045】
図3B-2に示される事例では、基板厚さdにほぼ対応する、長さlの焦線2bが生成される。基板1は、線2bが基板の外側のある点から開始するように、線2bに対して位置付けられることから、誘起吸収の広域セクション2cの長さL(基板表面から画成された基板深さまで延びるが、裏面1bまでは及ばない)は、焦線2bの長さlより短い。
図3B-3は、
図3B-2にあるように、線2bの長さlが基板1における誘起吸収のセクション2cの長さLより長くなるように、基板1が(ビーム方向に対して垂直な方向に沿って見て)、焦線2bの開始点より上に位置付けられる事例を示している。よって、焦線は、基板内で開始され、裏面1bを越えて延びる。
図3B-4は、(入射方向で見て焦線に対して基板を中心に位置付ける事例において)、焦線が、基板内の表面1a近くで開始され、基板内の表面1b近くで終わるように(例えばl=0.75・d)、焦線長さlが基板厚さdより短い事例を示している。
【0046】
誘起吸収のセクション2cが、少なくとも基板の一方の表面上で開始するように、表面1a、1bのうちの少なくとも一方に焦線が及ぶように焦線2bを位置付けることは、特に有利である。このように、表面におけるアブレーション、フェザリング及び微粒子化を回避しつつ、事実上、理想的な切断を達成することが可能である。
【0047】
図4は、別の適用可能な光学アセンブリ6を示している。基本構造は、差異のみが以下に記載されるように、
図3Aに記載されるものに倣っている。図示される光学アセンブリは、画成された長さlの焦線が形成されるように形状化された、焦線2bを生成するために、非球形の自由表面を有する光学系の使用に基づいている。この目的のため、非球面は、光学アセンブリ6の光学素子として用いられうる。
図4では、例えば、しばしばアキシコンとも称される、いわゆる円錐型プリズムが用いられる。アキシコンは、光軸に沿って線上にスポット源を形成する(又はレーザビームをリングへと変換する)、特殊な円錐状に切断されたレンズである。このようなアキシコンの配置は、概して当業者に知られており、例におけるコーン角度は10°である。他の範囲のアキシコンのコーン角度もまた用いられうる。ここでは参照番号9で標識されたアキシコンの頂点は、入射方向に向かっており、ビーム中心を中心とする。アキシコン9によって生成された焦線2bはその内部から開始することから、基板1(ここではビーム主軸に対して垂直に位置合わせされる)は、アキシコン9の真後ろのビーム経路に位置付けられうる。
図4が示すように、焦線2bの範囲内にとどまりつつ、アキシコンの光学特性に起因して、ビーム方向に沿って基板1をシフトさせることも可能である。基板1の材料における誘起吸収のセクション2cは、したがって、基板深さd全体にわたって延びる。
【0048】
しかしながら、図示された配置は、次の制限に従う:アキシコン9によって形成された焦線2bの領域はアキシコン9内で開始されることから、レーザエネルギーの大半は、アキシコン9と基板又はガラス複合ワークピース材料との間に分離が存在する状況下では、材料内に位置する焦線2bの誘起吸収のセクション2c内に集束しない。さらには、焦線2bの長さlは、アキシコン9の屈折率及びコーン角度を通るビーム直径に関連する。これが、比較的薄い材料(数ミリメートル)の場合に、焦線全体が、基板又はガラス複合材料ワークピースの厚さよりはるかに長く、レーザエネルギーの大半が材料内に集束しないという効果を有する理由である。
【0049】
この理由から、アキシコン及び集束レンズの両方を含む光学アセンブリ6を使用することが望ましいであろう。
図5Aは、広域レーザビーム焦線2bを形成するように設計された非球形の自由表面を有する第1の光学要素が、レーザ3のビーム経路内に位置づけられている、光学アセンブリ6を示している。
図5Aに示される事例では、この第1の光学要素は、5°のコーン角度を有するアキシコン10であり、該アキシコン10は、ビーム方向に対して垂直に位置付けられ、レーザビーム3を中心とする。アキシコンの頂点は、ビーム方向の方に配向される。第2の集束光学要素、ここでは、平凸レンズ11(その曲率はアキシコンの方に配向されている)が、アキシコン10からの距離z1でビーム方向に位置付けられる。この事例ではおよそ300mmである、距離z1は、アキシコン10によって形成されるレーザ照射が、レンズ11の外向きの径方向部分に円形に入射するように選択される。レンズ11は、円形照射を、この事例ではレンズ11からおよそ20mmの距離z2で出力側に、この事例では1.5mmである画成された距離の焦線2b上に、集束する。レンズ11の有効焦点距離は、この実施形態では25mmである。アキシコン10によるレーザビームの円変換は、参照記号SRで標識されている。
【0050】
図5Bは、
図5Aに従った基板1の材料における焦線2b又は誘起吸収2cの形成について詳細に示している。両方の要素10、11の光学特性、並びにそれらの位置付けは、ビーム方向における焦線2bの長さlが、基板1の厚さdと正確に同一になるように選択される。その結果、
図5Bに示されるように、焦線2bを基板1の2つの表面1a及び1bの間に正確に位置付けるために、ビーム方向に沿った基板1の正確な位置付けが必要とされる。
【0051】
したがって、焦線が、レーザ光学系からある特定の距離で形成されるならば、及び、レーザ照射の大部分が、最長でも焦線の所望される端部までに集束されるならば、有利である。記載されるように、これは、特定の外向きの径方向領域にわたって、円形に(環状に)のみ、主集束素子11(レンズ)を照射することによって達成することができ、これは、一方では、必要とされる開口数、したがって必要とされるスポットサイズを実現する役割を果たすが、他方では、しかしながら、拡散円の強度は、基本的に円形のスポットとしてのスポットの中心に非常に短い距離にわたって、必要とされる焦線2bが形成された後は、小さくなる。このように、欠陥線形成は、必要とされる基板深さの短い距離内で停止される。アキシコン10と集束レンズ11との組合せは、この要件を満たす。アキシコンは、2つの異なる方法で作用する:アキシコン10に起因して、通常、丸いレーザスポットは、リングの形態で集束レンズ11へと送られ、アキシコン10の非球面性は、焦線が、焦点面内の焦点の代わりにレンズの焦点面を越えて形成されるという効果を有する。焦線2bの長さlは、アキシコンのビーム直径によって調整されうる。焦線に沿った開口数は、他方では、アキシコン-レンズの距離z1によって及びアキシコンのコーン角度によって調整されうる。このようにして、レーザエネルギー全体が焦線に集中されうる。
【0052】
欠陥線形成が基板の裏側まで続くことが意図される場合、円形(環状)照明は、なおも、(1)レーザ光のほとんどが焦線の必要とされる長さに集中して保持されるという意味で、レーザ出力が最適に用いられる、及び、(2)他の光学的機能を用いた所望の収差設定と併せて円形に照らされた区域に起因して、焦線に沿って均一なスポットサイズを達成することができ、したがって、焦線に沿った基板からのパーツの均一な分離も達成することができるという利点を有する。
【0053】
図5Aに示される平凸レンズの代わりに、集束メニスカスレンズ又は別のより高度に補正された集束レンズ(非球面、マルチレンズシステム)を使用することも可能である。
【0054】
アキシコンと
図5Aに示されるレンズとの組合せを使用して非常に短い焦線2bを生成するためには、アキシコンにおけるレーザビーム入射の非常に小さいビーム直径を選択することが必要であろう。これは、アキシコンの頂点上へのビームのセンタリングが非常に正確でなければならず、結果はレーザの方向変動(ビームドリフト安定性)に対して非常に敏感であるという、実用面での不利益を有する。さらには、しっかりとコリメートされたレーザビームは、非常に発散的である、すなわち、光偏向に起因して、ビーム束が短い距離にわたってぼやけるようになる。
【0055】
図6に示されるように、両方の影響を、光学アセンブリ6に別のレンズ、すなわちコリメーティングレンズ12を含めることによって回避することができる。追加的な正レンズ12は、集束レンズ11の円形照明を非常にしっかりと調整する役割を果たす。コリメーティングレンズ12の焦点距離f'は、所望の円径drが、アキシコンからコリメーティングレンズ12までの距離z1aから得られ、これがf'に等しくなるように選択される。リングの所望の幅brは、距離z1b(コリメーティングレンズ12から集束レンズ11まで)によって調整されうる。純粋幾何学の問題として、円形照明の小さい幅は、短い焦線を生じる。最小値は距離f'で達成されうる。
【0056】
図6に示される光学アセンブリ6は、よって、差異のみを以下に説明するように、
図5Aに示されるものに基づいている。ここでは、平凸レンズ(ビーム方向に向かってその曲率を有する)として設計されてもいる、コリメーティングレンズ12は、さらに、一方の側のアキシコン10(ビーム方向に向かってその頂点を有する)と、他方の側の平凸レンズ11との間のビーム経路の中央に置かれる。アキシコン10からのコリメーティングレンズ12の距離は、z1aと称され、コリメーティングレンズ12からの集束レンズ11の距離は、z1bと称され、集束レンズ11からの焦線2bの距離はz2と称される(常に、ビーム方向を見て)。
図6に示されるように、発散的に、かつコリメーティングレンズ12の円径dr未満で入射する、アキシコン10によって形成される円形照射SRは、集束レンズ11において少なくともほぼ一定の円径drについて距離z1bに沿って、必要とされる円幅brへと調整される。示される事例では、非常に短い焦線2bは、レンズ12の合焦特性に起因して、レンズ12におけるおよそ4mmの円幅brがレンズ11においておよそ0.5mmに縮小するように、生成されることが意図されている(円径drは、例では22mmである)。
【0057】
図示される例では、2mmの典型的なレーザビーム直径、焦点距離f=25mmを有する集束レンズ11、焦点距離f’=150mmを有するコリメーティングレンズ、並びに、選択距離Z1a=Z1b=140mm及びZ2=15mmを使用して、0.5mm未満の焦線長さlを達成することが可能である。
【0058】
図7A~7Cは、異なるレーザ強度レジームにおけるレーザ-物質相互作用を例証している。
図7Aに示される第1の事例では、集束しないレーザビーム710は、修正を取り込むことなく、透明基板720を通り抜ける。この特定の事例では、レーザエネルギー密度(又は、ビームが照らす単位領域あたりのレーザエネルギー)は、非線形効果を誘起するのに必要とされる閾値未満であることから、非線形効果は存在しない。エネルギー密度が高くなるほど、電磁場の強度も高くなる。したがって、
図7Bに示されるように、レーザビームがより小さいスポットサイズへと球面レンズ730によって集束される場合、
図7Bに示されるように、照らされる領域は縮小し、エネルギー密度は増加し、よって、材料を改質して、条件を満たす容積にのみ断層線の形成を可能にする、非線形効果を引き起こす。このように、集束レーザのビームウェストが基板の表面に位置付けられる場合に、表面の改質が生じる。対照的に、集束レーザのビームウェストが基板の表面より下に位置付けられる場合には、エネルギー密度が非線形の光学効果の閾値未満の時には表面には何も起こらない。しかしながら、基板720のバルクに位置付けられる焦点740では、レーザ強度は多光子非線形効果を引き起こすのに十分に高く、よって、材料に損傷を誘起する。最後に、
図7Cに示されるアキシコンの事例では、
図7Cに示されるように、アキシコンレンズ750の回折パターン、又は代替的にフレネルアキシコンの回折パターンは、ベッセル形状の強度分布(高強度のシリンダ760)を生成する干渉を作り出し、その容積においてのみ、非線形の吸収及び材料720に対する改質を生じるのに十分に高い強度である。ベッセル形状をした強度分布が非線形の吸収及び材料に対する改質を生じるのに十分に高い、シリンダ760の直径は、本明細書で言及されるようにレーザビーム焦線のスポット径でもある。ベッセルビームのスポット径Dは、D=(2.4048λ)/(2πB)として表すことができ、ここで、λはレーザビーム波長であり、Bはアキシコン角度の関数である。
【0059】
レーザ及び光学システム
アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物を切断するために、幾つかの例示的な実施形態によれば、直線集束ビーム形成光学系と組み合わせた複数のパルスのバーストを生成するピコ秒のパルス化レーザ(例えば、1064nm、又は532nmピコ秒のパルス化レーザ)が、ガラス組成物に損傷線(欠陥線)を作り出すのに用いられる。(しかしながら、他のパルス化レーザも利用されうることに留意されたい。)
例えば、最大で0.7mm厚を有するディスプレイ/TFTガラス組成物を、厚さが光学系によって生成される焦線の領域内になるように、位置付けた。約1mmの長さの焦線、ガラス組成物において測定して200kHzのバースト繰り返し数(約120マイクロジュール/バースト以上)で、約24W以上の出力を生成する1064nmピコ秒のレーザを用いて、焦線領域における光学的強度は、ガラス組成物において非線形吸収を作り出すのに十分に高い。パルス化レーザビームは、材料において、材料の厚さ1mmあたり40マイクロジュールを超える、測定された平均レーザバーストエネルギーを有しうる。幾つかのガラスについては、用いられる平均レーザバーストエネルギーは、例えば40~2500μJ/mmなど、材料の厚さ1mmあたり2500μJの高さであってよく、エネルギー密度は、穿設された線又は切断エッジと直交する微小亀裂の範囲を最小限に抑えつつ、ガラスを貫通する完全な損傷跡を作製するのに十分に強いことから、400~1300μJ/mmがディスプレイ/TFT型のガラスにとって好ましい(及び、550~1000μJ/mmがさらに一層好ましい)。この1mmあたりの「平均パルスバーストレーザエネルギー」は、平均、1バーストあたり、線形のエネルギー密度、又は、材料の厚さ1mmあたりのレーザパルスバーストあたりの平均エネルギーとも称されうる。ガラス組成物内の損傷、アブレーション、蒸発、又は他の方法で改質された材料の領域は、レーザビーム焦線によって作り出された光学的強度の高い線形の領域にほぼ従って作出された。
【0060】
本明細書に記載されるこのようなピコ秒レーザの典型的な動作は、パルス500Aの「バースト」500を生成することに注目されたい。(例えば、
図8A及び8B参照)。各「バースト」(本明細書では「パルスバースト」500とも称される)は、非常に短い持続時間の複数の個別のパルス500A(少なくとも5パルス、少なくとも7パルス、少なくとも8パルス、少なくとも9パルス、少なくとも10パルス、少なくとも15パルス、少なくとも20パルス、又はそれ以上のパルスなど)を含む。すなわち、パルスバーストは、パルスの「ポケット」であり、バーストは、各バースト内の個別の隣接するパルスの分離より長い持続時間で、互いに離間されている。本出願人らは、ディスプレイガラス/TFTガラス組成物を切断又は穿孔するために、1バーストあたりのパルス数は好ましくは5~20であるべきであることを発見した。パルス500Aは、最大で100ピコ秒(例えば、0.1ピコ秒、5ピコ秒、10ピコ秒、15ピコ秒、18ピコ秒、20ピコ秒、22ピコ秒、25ピコ秒、30ピコ秒、50ピコ秒、75ピコ秒、又はそれらの間)のパルス持続時間T
dを有する。バースト内の各個別のパルス500Aのエネルギー又は強度は、バースト内の他のパルスのものとは等しくなくてもよく、バースト500内の複数のパルスの強度分布は、しばしば、レーザ設計によって制御される時間における指数関数的減衰に従う。好ましくは、本明細書に記載の例示的な実施形態のバースト500内の各パルス500Aは、1ナノ秒~50ナノ秒(例えば10~50ナノ秒、又は10~30ナノ秒、時間は、しばしばレーザ空洞設計によって制御される)の持続時間T
pだけ、バースト内のそれに続くパルスと時間的に離間されている。所与のレーザについては、バースト500内の隣接するパルス間の時間分離T
p(パルス同士間の分離)は、比較的均一である(±10%)。例えば、幾つかの実施形態では、バースト内の各パルスは、それに続くパルスとは、およそ20ナノ秒(50MHz)だけ、時間的に離間されている。例えば、約20ナノ秒のパルス分離T
pを生成するレーザについては、バースト内のパルス同士の分離T
pは、約±10%内、又は約±2ナノ秒内に維持される。パルスの各「バースト」間の時間(すなわち、バースト間の時間分離T
b)は、はるかに長くなる(例として、0.25≦T
b≦1000マイクロ秒、例えば1~10マイクロ秒、又は3~8マイクロ秒など)。本明細書に記載されるレーザの例示的な実施形態の幾つかにおいて、時間分離T
bは、約200kHzのバースト繰り返し数又は周波数を有するレーザについて、およそ5マイクロ秒である。レーザバースト繰り返し数は、バーストにおける第1のパルスとそれに続くバーストにおける第1のパルスとの間の時間T
bに関する(レーザバースト繰り返し数=1/T
b)。幾つかの実施形態では、レーザバースト繰り返し周波数は、約1kHz~約4MHzの範囲内でありうる。より好ましくは、レーザバースト繰り返し数は、例えば、約10kHz~650kHzの範囲内でありうる。各バーストの第1のパルスと、それに続くバーストの第1のパルスとの間の時間T
bは、例えば0.5マイクロ秒(2MHzのバースト繰り返し数)~40マイクロ秒(25kHzのバースト繰り返し数)、又は2マイクロ秒(500kHzのバースト繰り返し数)~20マイクロ秒(50kHzのバースト繰り返し数)など、0.25マイクロ秒(4MHzのバースト繰り返し数)~1000マイクロ秒(1kHzのバースト繰り返し数)でありうる。正確なタイミング、パルス持続時間、及びバースト繰り返し数は、レーザ設計に応じて変動しうるが、高強度の短いパルス(T
d<20ピコ秒及び好ましくはT
d≦15ピコ秒)は、特に上手く機能することが示されている。
【0061】
材料の改質に必要とされるエネルギーは、バーストエネルギー、すなわちバースト内に含まれるエネルギー(各バースト500は一連のパルス500Aを含む)の観点から、又は単一のレーザパルス内に含まれるエネルギー(その多くはバーストを含みうる)の観点から、説明されうる。1バーストあたりのエネルギーは、25~750μJでありえ、多くの非ディスプレイ/非TFTガラス組成物については、50~500μJ、又は50~250μJでありうる。幾つかの非ディスプレイ、非TFTガラスでは、1バーストあたりのエネルギーは、100~250μJである。しかしながら、ディスプレイ又はTFTガラス組成物については、1バーストあたりのエネルギーは、特定のディスプレイ/TFTガラス組成物に応じて、例えば300~500μJ、又は400~600μJなど、より高くなるはずである。パルスバースト内の個別のパルスのエネルギーはより少なく、正確な個別のレーザパルスエネルギーは、パルスバースト500内のパルス500Aの数及び
図8A及び8Bに示されるような経時的なレーザパルスの減衰率(例えば、指数関数的減衰率)に応じて決まる。例えば、一定のエネルギー/バーストについては、パルスバーストが10の個別のレーザパルス500Aを含む場合、各個別のレーザパルス500Aは、同じパルスバースト500が2つの個別のレーザパルスしか有しない場合よりも少ないエネルギーを含む。
【0062】
このようなパルスバーストを生成可能なレーザの使用は、例えばガラスなどの透明材料の切断又は改質にとって有利である。単発パルス化レーザの繰り返し数によって時間間隔が離間した単発パルスの使用とは対照的に、バースト500内のパルスの急速なシーケンスにわたってレーザエネルギーを広げるパルスバーストシーケンスの使用は、単発パルスレーザを用いた場合に可能なものより大きい、材料との高強度の相互作用の時間スケールへのアクセスを可能にする。単発パルスは経時的に拡大されうる一方、これが行われると、パルス内の強度は、パルス幅にわたり、ほぼ1だけ低下してしまう。したがって、10ピコ秒の単発パルスが10ナノ秒のパルスに拡大される場合には、強度は、ほぼ3桁低下する。このような低下は、非線形吸収がもはや有意ではない点まで光学的強度を低下させかねず、光材料相互作用は、もはや切断を可能にするほど十分には強くない。対照的に、パルスバーストレーザを用いると、バースト500内の各パルス500A間の強度は、非常に高度に保たれうる(例えば、およそ10ナノ秒だけ時間間隔が離間した3×10ピコ秒のパルス500Aは、レーザを、今や3桁も長い時間スケールにわたって、材料との相互作用可能にしつつ、1×10ピコ秒のパルスのものよりもおよそ3倍高い、各パルス内の強度を依然として可能にする。また例として、例えばおよそ10ナノ秒だけ時間間隔が離間した10×10ピコ秒のパルス500Aは、レーザを、今や桁違いに長い時間スケールにわたって、材料との相互作用可能にしつつ、1×10ピコ秒のパルスのものよりもおよそ10倍高い各パルス内の強度を依然として可能にする。バースト内の複数のパルス500Aのこの調整は、したがって、既存のプラズマプルームとのより大きい又はより小さい光相互作用、初期又は先のレーザパルスによって予め励起された原子及び分子とのより大きい又はより小さい光-材料相互作用、及び、微小亀裂の制御された成長を促進可能な材料内のより大きい又はより小さい加熱効果を促すことができるように、レーザ-材料の相互作用の時間スケールの操作を可能にする。材料を改質するためのバーストエネルギーの必要量は、基板材料組成物及び基板と相互作用するために用いられる線焦点の長さに応じて決まる。相互作用領域が長くなると、より多くのエネルギーが広がり、より大きいバーストエネルギーが必要とされる。正確なタイミング、パルス持続時間、及びバースト繰り返し数は、レーザ設計に応じて変動しうるが、高強度の短いパルス(<15ピコ秒、又は≦10ピコ秒)は、この技法を用いて上手く機能することが示されている。欠陥線又は孔は、パルスの単一のバーストをガラス上の実質的に同じ位置に当てる場合に、材料に形成される。すなわち、単一のバースト内の複数のレーザパルスは、ガラスの単一の欠陥線又は孔の位置に対応する。当然ながら、ガラスが平行移動する(例えば、一定に移動するステージによって)又はビームがガラスに対して移動することから、バースト内の個別のパルスは、ガラス上の厳密に同じ空間位置にはなりえない。しかしながら、それらは、互いに十分に1μm以内である、すなわち、それらは、実質的に同じ位置でガラスに当てられる。例えば、それらは、互いからの間隔spでガラスに当てられてよく、ここで、0<sp≦500nmである。例えば、ガラス位置が20パルスのバーストで射当てられる場合、バースト内の個別のパルスは、互いに250nm内でガラスに当たる。よって、幾つかの実施形態では、1nm<sp<250nmである。幾つかの実施形態では、1nm<sp<100nmである。
【0063】
孔又は損傷跡の形成:
ガラス基板が十分な応力を有する場合(例えば、イオン交換されたガラスを用いて)、パーツは自発的に亀裂し、レーザプロセスによって描き出された穿設された損傷の経路に沿って分離する。しかしながら、TFT又はディスプレイガラス(例えば、Corning Eagle XG(登録商標)又はLotus、Corning Lotus NXT(商標)又はContego組成物)の場合のように、基板に固有の応力が多量に存在しない場合には、ピコ秒のレーザは、ワークピースに損傷跡を簡単に形成する。これらの損傷跡は、概して、約0.1~1.5μm、又は0.2μm~2μm(例えば、幾つかの実施形態では、0.2~0.7μm、又は0.3~0.6μm)の内部寸法を有する孔の形態をとる。好ましくは、孔は、寸法(すなわち、幅又は直径)が非常に小さい(1μm以下)。
【0064】
孔又は欠陥線は、材料の厚さ全体に穿設することができ、材料の深さ全体を貫通する連続的な開口部であっても、そうでなくてもよい。
図9Aは、600μm厚のEagle XG(登録商標)基板のワークピースの厚さ全体に穿孔される軌跡又は欠陥線の例を示している。穿孔又は損傷跡は、劈開したエッジの側部を通じて観察される。材料を通る軌跡は、必ずしも貫通孔でなくてもよい。孔が塞がれているガラスの領域がしばしば存在するが、それらは、概して、サイズが小さく、例えば、およそμmである。
【0065】
ガラスの積層されたシートに穿設することもまた可能である。この事例では、焦線距離は、積層体の高さよりも長いことが必要である。
【0066】
孔又は欠陥線間の横方向間隔(ピッチ)は、基板が集束レーザビームの下を移動する際のレーザのパルス繰り返し数によって決定される。孔全体の形成には、単一のピコ秒レーザパルスバーストのみが、通常、必要とされるが、所望される場合には、複数のバーストが用いられうる。異なるピッチで孔を形成するため、レーザは、より長い又はより短い間隔で発射されるようにトリガされうる。切断動作については、レーザのトリガは、概して、レーザパルスバーストが、例えば1μm毎、又は5μm毎、又は7~15μm毎など、固定された間隔でトリガされるように、ビームの下のワークピースのステージ駆動運動と同調される。断層線の方向に沿って隣接する穿孔又は欠陥線間の距離又は周期は、例えば、幾つかのガラスの実施形態については、0.1μm超かつ約20μm以下でありうる。例えば、幾つかのガラスについては、隣接する穿孔又は欠陥線の間の間隔又は周期は、0.5μm程度の低さ、又は0.5μm~3.0μmでありうる。例えば、幾つかの実施形態では、周期は、0.5μm~1.0μmでありうる。ディスプレイ又はTFTタイプのガラスについては、それは典型的には5~15μmである。
【0067】
隣接する穿孔又は欠陥線間の正確な間隔は、基板における応力レベルを所与として貫通孔から貫通孔への亀裂伝播を促進する、材料特性によって決定される。しかしながら、基板の切断とは対照的に、材料に穿設するためだけに同じ方法を使用することも可能である。本明細書に記載の方法では、孔又は欠陥線(又は損傷跡、又は穿孔)は、より大きい間隔(例えば、5μmピッチ、又は7μmピッチ、又はそれ以上)で分離されうる。
【0068】
レーザ出力及びレンズ焦点距離(これによって焦線距離を決定し、したがって出力密度をも決定する)は、ガラスの全貫通及び低い微小亀裂化を確実にするための特に重要なパラメータである。
【0069】
概して、利用可能なレーザ出力が高くなると、上記プロセスを用いた材料の切断は、より速くなる。本明細書に開示されるプロセスは、0.25m/秒以上の切断速度でガラスを切断することができる。切断速度(又は切断用速度)は、レーザビームが、複数の孔又は改質された領域を作り出しつつ、透明材料(例えば、ガラス)の表面に対して移動する速度である。例えば400mm/秒、500mm/秒、750mm/秒、1m/秒、1.2m/秒、1.5m/秒、又は2m/秒、又はさらに3.4m/秒~4m/秒などの高速の切断速度が、製造のための設備投資を最小限に抑え、かつ、設備利用率を最適化するために、しばしば所望される。レーザ出力は、バーストエネルギーにレーザのバースト繰り返し周波数(数)を掛けた積に等しい。概して、ガラス材料を速い切断速度で切断するために、損傷跡は、典型的には1~25μmの間隔をあけ、幾つかの実施形態では、損傷跡間の間隔(すなわち、ピッチ)は、好ましくは3μm又はそれより大きく、例えば3~12μm、又は例えば5~10μmなどである。ディスプレイ又はTFTガラスについては、損傷跡は、5μm超、例えば、5~15μmの間隔をあけるべきである。ディスプレイ又はTFTガラスの幾つかのガラス組成物については、損傷跡は、7~15μm、又は7~12μm、又は9~15μmだけ離間される。
【0070】
例えば、幾つかの非ディスプレイガラスでは、300mm/秒の線形の切断速度を達成するため、3μm孔のピッチは、少なくとも100kHzのバースト繰り返し数を有するパルスバーストレーザに対応する。600mm/秒の切断速度については、3μmのピッチは、少なくとも200kHzのバースト繰り返し数を有するバースト-パルス化レーザに対応する。200kHzにおいて少なくとも40μJ/バーストを生成し、かつ、600mm/秒の切断速度で切断するパルスバーストレーザは、少なくとも8ワットのレーザ出力を有することを必要とする。切断速度が速くなると、典型的には、さらに高いレーザ出力が必要とされる。バーストパルス繰り返し数の増加は、速度及びレーザ出力ももたらしうる。
【0071】
例えば、ディスプレイ/TFTガラスの事例では、5μmのピッチを有する100kHzのレーザは、最大500mm/秒で切断するであろう;7μmのピッチの場合には、700mm/秒の最大速度で用いられる;10μmのピッチでは、1000mm/秒の最大速度;12μmのピッチでは、1200mm/秒の最大速度、及び、15μmのピッチでは、1500mm/秒の最大速度で切断するであろう。同じレーザ繰り返し数では、300μJ/バーストは、30Wの平均出力を必要とし、400μJ/バーストでは、40Wの平均出力を必要とし、500μJ/バーストでは、50Wの平均出力を必要とし、600μJ/バーストでは、60Wの平均出力を必要とする。
【0072】
よって、好ましいパルスバーストピコ秒レーザのレーザ出力は、好ましくは少なくとも10W以上である。損傷跡間の最適なピッチ及び正確なバーストエネルギーは、材料に依存し、経験的に決定されうる。しかしながら、レーザパルスエネルギーの上昇、あるいは、より短いピッチでの損傷跡の作出は、基板材料のより良好な分離を常に行う条件又は改善されたエッジ品質を有する条件ではないことに注意すべきである。損傷跡間のピッチが過密になると(例えば<0.1μm、幾つかの例示的な実施形態では<1μm、又は幾つかの実施形態では<2μm)、時折、すぐ近くのそれに続く損傷跡の形成が抑制されることがあり、穿設された輪郭の周りの材料の分離がしばしば抑制されることがあり、ガラス内の望ましくない微小亀裂の増加も生じうる。ピッチが長すぎると(>50μm、幾つかのガラスでは>25μm又はさらには>20μm)、「制御されていない微小亀裂化」を生じうる、すなわち、孔から孔へと微小亀裂を伝播する代わりに、異なる経路に沿って伝播し、異なる(望ましくない)方向にガラスの亀裂を生じさせる。これは、残存する微小亀裂がガラスを弱めるひびとして作用することから、最終的には、分離されたガラスパーツの強度を低下させうる。各損傷跡の形成に用いられるバーストエネルギーが高すぎると(例えば、>2500μJ/バースト、幾つかの実施形態では>600μJ/バースト)、ガラスの分離を抑制する、隣接する損傷跡のすでに形成された微小亀裂の「治癒」又は再溶融が生じうる。したがって、バーストエネルギーは、例えば≦600μJ/バーストなど、<2500μJ/バーストであることが好ましい。また、高すぎるバーストエネルギーを使用すると、極めて大きい微小亀裂の形成を生じかねず、また、分離後のパーツのエッジ強度を低下させるひびを生成しうる。バーストエネルギーが低すぎると(<40μJ/バースト)、明らかな損傷跡がガラス内に形成されない場合があり、したがって、分離強度は非常に高くなりうる、あるいは、穿設された輪郭に沿った分離を全く不可能にする。
【0073】
例えば、0.7mm厚のイオン交換されていないCorningコード2319又はコード2320のGorillaガラスの切断については、3~5μmのピッチが、約150~250μJ/バーストのパルスバーストエネルギー、及び、好ましくは5未満(例えば3又は4)のバーストパルス数t(1バーストあたりのパルス数)を用いて、上手く機能することが観察された。
【0074】
しかしながら、我々は、多量のアルカリを有するCorning Gorilla(登録商標)などのガラスと比較して、低アルカリ又は無アルカリのアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス(すなわち、ディスプレイ又はTFTガラス)の穿孔又は切断には、はるかに高い(5~10倍高い)容積パルスエネルギー密度(μj/μm3)が必要とされることを見出した。レーザ機械加工して、これらの低アルカリ又は無アルカリ含有ガラスに損傷跡を生成するためには、より高いパルスエネルギーとともに高いパルス数が、各レーザパルスバーストにおいて必要とされる。例えば、幾つかの実施形態では、ピコ秒のレーザは、高エネルギーパルス及びより大きいパルス数を可能にする、100kHzで動作する。これは、好ましくは少なくとも5パルス、より好ましくは1バーストあたり少なくとも7パルス以上、より一層好ましくは1バーストあたり少なくとも8パルスを有し、例えば、少なくとも0.1μJ/μm3、例えば0.1~0.5μJ/μm3など、約0.05μJ/μm3以上のアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス(低アルカリ又は無アルカリのもの)内の容積エネルギー密度をもたらす、パルスバーストレーザを利用することによって、このような低アルカリ又は無アルカリのアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラスを穿孔又は切断することによって、達成される。
【0075】
低アルカリ又は無アルカリのアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス(すなわちディスプレイ又はTFTガラス)の穿孔又は切断のためには、所定の輪郭に沿った方向以外の方向に亀裂するガラスの入射が少ないか又は無く、表面粗さが低いエッジを有する、所定の輪郭に沿った容易なガラスの分離を可能にするように、レーザが、1バーストあたり少なくとも9パルスを有するパルスバーストを生成することが、さらに一層好ましい。例えば、幾つかの実施形態では、パルス化レーザは、10W~150W(例えば、10~100W)のレーザ出力を有し、1バーストあたり少なくとも5パルス、好ましくは少なくとも9パルス(例えば、1バーストあたり10~20パルス)を有するパルスバーストを生成する。幾つかの実施形態では、パルス化レーザは、25W~65W(例えば、又は25~60W)の出力を有し、1バーストあたり少なくとも10~20パルスを有するパルスバーストを生成し、かつ、レーザバーストによって生成される隣接する欠陥線間の周期又は距離は、5~10μm又は5~15μmである。幾つかの実施形態では、パルス化レーザは、10W~100Wのレーザ出力を有し、1バーストあたり少なくとも9パルスを有するパルスバーストを生成し、かつ、ワークピース及びレーザビームは、少なくとも0.25m/秒の速度で、互いに対して平行移動する。幾つかの実施形態では、ワークピース及び/又はレーザビームは、少なくとも0.3m/秒、又は少なくとも0.35m/秒、又は少なくとも0.4m/秒の速度で互いに対して平行移動する。
【0076】
1m/秒の切断速度では、Eagle XG(登録商標)ガラス(米国ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated社から入手可能)の切断は、典型的には、15~84ワットのレーザ出力の使用を必要とし、30~45ワットで十分であることが多い。2.7m/秒において、Eagle XG(登録商標)(500μm厚)ガラスの切断を、約220μJ/バースト及び8.8μmのピッチで、65ワットのバーストパルスレーザを使用して実証した。次に、ガラスを機械的に分離した。
【0077】
概して、さまざまなガラス組成物及び他の透明材料にわたって、本出願人らは、0.2~1m/秒の切断速度を達成するためには、10~100Wのレーザ出力が好ましく、多くのガラスについては25~60ワットのレーザ出力で十分(かつ最適)であることを発見した。TFT/ディスプレイ型のガラスの場合には、0.4m~5m/秒の切断速度について、レーザ出力は、300~600μJ/バーストのバーストエネルギー、1バーストあたり5~20パルス(切断される材料に応じて)、及び5~15μm、幾つかのガラス組成物については7~12μmの孔の分離(又は欠陥線間のピッチ)で、好ましくは10W~150Wであるべきでありである。ピコ秒のパルスバーストレーザの使用は、それらが高出力及び1バーストあたり必要とされるパルス数を生成することから、これらの切断速度にとって好ましいであろう。よって、幾つかの例示的な実施形態によれば、パルス化レーザは、例えば25W~60Wなど、10~100Wの出力を生成し、1バーストあたり少なくとも5~20パルスのパルスバーストを生成し、欠陥線間の距離は5~15μmであり、レーザビーム及び/又はワークピースは、少なくとも0.25m/秒、幾つかの実施形態では、少なくとも0.4m/秒、例えば0.5m/秒~5m/秒又はそれ以上の速度で、互いに対して平行移動する。
【0078】
より詳細には、例えばEagle XG又はContegoガラスなどのディスプレイ又はTFTガラスのための損傷跡を作り出すためには、
図9B~9Cに示されるように、バーストエネルギー、1バーストあたりのパルス数、及び欠陥のピッチの正しい相乗効果が用いられるべきである。他の種類のガラスに用いられる範囲は、ディスプレイ又はTFTガラスには有効ではないか、あるいは、不満足な(遅い)切断速度をもたらす。より詳細には、
図9Bは、Corning Incorporated社から入手可能な0.5mmのEagle XGガラスにおいて、超短レーザパルスによって生成された穿孔を示している(上面図、レーザ入射側)。この図は、容易な分離のために孔を接続する亀裂を誘起する、熱影響の半ばの穿孔を示している。
図9Cは、同じ基板の底面の画像であり、上面と同じ特性を示している。
図9B及び9Cの例示的な実施形態については、レーザバーストのエネルギーの合計は450μJであった。このエネルギーは、バーストにおける複数のパルス間に分布される。最初の2つのパルスは、ガラスの表面から開始する損傷跡に沿ってプラズマを生成するのに十分なエネルギーであり(十分な出力を有する)、それに続くパルスは、プラズマと相互作用し、バルクを通じて損傷跡を伸ばすが、穿孔の周りに熱影響区域も生じうる。
図9Dは、CO
2ビーム処理後に完全に分離された、
図9B及び9Cに示される0.5mm厚のEagle XG(登録商標)ガラスの切断片のエッジ(側部)画像である。
【0079】
連続するパルスに由来するエネルギーが焦点容積及びその周りに蓄積されるにつれて、焦点領域の周りの熱影響区域及び欠陥を接続する亀裂が、経時とともに形成され、構造変化を生じる。レーザパルスの結果として、ガラスのバルク内の焦点に点熱源を構成する。高いパルス数は、より大きい熱影響区域を生成する焦点の周りで、より高温へと変換される。この加熱された区域が冷却する際に、残留応力が、ガラスの表面において引張応力の形態で誘起される。その応力は、今度は、次のバーストに由来する損傷域と相互作用し、これが、穿孔を接続する割れ目を促進する。我々は、ディスプレイ/TFTガラスに役立つレーザ切断プロセスを行うため、及び、損傷跡に沿ってガラスを分離するために必要とされる力を低減するための広範な条件を見出した。この力は、耐破断性(又は破断力)とも称され、ガラスを手動で分離するのに必要とされる力の量である;それは、4点曲げ試験によって測定することができ、MPa単位を有する。20MPa未満、好ましくは15MPa未満の耐破断性は、250mm/秒超の速度におけるCO2ビームを用いたディスプレイ又はTFTガラスの分離を可能にする。耐破断性が大きくなると、CO2分離速度は、比例して遅くなる。ディスプレイ又はTFTガラスのためのこの対象とする耐破断性は、次の3つのパラメータについて、次の特定の範囲内で動作させ、次に、特定のディスプレイ又はTFTガラス組成物について、これらの特定の範囲内で最適化することによって得られる。
【0080】
1.パルスバーストエネルギー:ディスプレイ又はTFTガラスを切断又は分離するためには、本出願人らは、パルスバーストエネルギーは1バーストあたり300μJ~600μJであるべきであることを発見した。この範囲外での実施は、他のガラスでは首尾よい分離を生じるが、ディスプレイ(又はTFT)ガラスでは生じない。幾つかのディスプレイ型のガラスの種類では、理想的な範囲は300μJ~500μJであり、他のディスプレイ型のガラスでは、400μJ~600μJである。400μJ~500μJのパルスバーストエネルギーは、すべてのディスプレイ型のガラスについて首尾よく機能するように見える。線焦点内のエネルギー密度は、例えば、Eagle XG及びContegoガラスの両方についてなど、特定のディスプレイ又はTFTガラスについて最適化されるべきであり、パルスバーストエネルギーの理想的な範囲は、300~500μJであり、線焦点は、1.0~1.4mmである(線焦点距離は、光学的配置によって決定される)。
【0081】
本出願人らは、エネルギー密度が低すぎると(300μJ未満)、穿孔及び熱損傷は、所望されるようには形成されず、孔間の割れ目は容易には実現せず、ディスプレイガラスにおける耐破断性(本明細書では破壊強度とも称される)の増加につながることを発見した。エネルギー密度が高すぎる場合(>600μJ、及び、多くのディスプレイガラスについては>500μJ)、熱損傷はより大きくなり、穿孔を接続する亀裂を逸らせ、所望の経路に沿っては形成させず、ディスプレイ(又はTFT)ガラスの耐破断性(破壊強度)は、劇的に増加する。
図9Eは、1バーストあたり異なるエネルギーレベルのディスプレイガラスについてのバーストエネルギーに対する破壊強度を示している。この図は、パルスバーストエネルギーが300μJに近づくと、破壊強度(耐破断性)が劇的に増加することを示している。このディスプレイガラスは、パルスバーストエネルギーが約400μJのときにより低い耐破断性を有することも示されている。
【0082】
2.バーストあたりのパルス:本出願人らは、1バーストあたり5~22(例えば5~20)のパルス数を有することもまた、ディスプレイ及び/又はTFTガラスの低い又は理想的な耐破断性にとって重要であることも見出した。幾つかのディスプレイガラスでは、1バーストあたりのパルス数は5~15であり、他のディスプレイガラスでは、1バーストあたり9~20又は10~20である。この特定の範囲外での実施は、多くのガラス(例えば、Gorillaガラス)を分離するが、典型的なディスプレイ又はTFTガラスの良好な又は効率的な分離はもたらさない。Contego及びEagle XGガラスの両方については、1バーストあたり大きいパルス数が必要とされる。例えば、Eagle XGガラスを首尾よく穿設及び/又は切断するためには、1バーストあたりのパルス数は、7~20、好ましくは9~20、より一層好ましくは10~20である。範囲は、Contegoガラスについては幾分小さくなる;Contegoガラスを首尾よく穿設及び/又は切断するためには、1バーストあたりのパルス数は15~20である。比較として、1バーストあたり2~4パルスは、強化された及び強化されていないGorillaガラスを穿設及び分離するのに十分であるが、これらの2つのディスプレイガラス(Contego及びEagle XG)については、4パルスは、必要とされる損傷跡及び熱影響区域を作り出すには十分ではない。ディスプレイガラスの効率的な切断を可能にするためには(表面下損傷及び/又は望ましくない亀裂伝播を最小量しか伴わずに)、本明細書に記載される1バーストあたりのこの必要とされるパルス数は、300μJ~600μJ、好ましくは400~500μJのバーストエネルギーで利用されるべきである(TFT/ディスプレイガラス組成物に基づいて、5、又は7、又は10又は15パルス/バースト)。
【0083】
3.穿孔間のピッチ又は距離
穿孔間のピッチ又は距離は、重要な別のパラメータである。ディスプレイ又はTFT型のガラスについては、穿孔間のピッチ又は距離は、好ましくは5~15μmであるべきである。例えば、Eagle XGでは、最低の耐破断性のための理想的なピッチは、5~15μmである。耐破断性は、ピッチがこの範囲外にあるときには、急速に増加する。Contego型のガラスでは、理想的なピッチは7~11μmである。Contego型のガラスについての耐破断性(破壊強度)は、この範囲外では増加し、ガラスを切断又は分離しづらくする。5μm未満のピッチを用いたEagle XG型のガラスのレーザ加工は、亀裂を断層線から逸らし、複数の相互接続する亀裂を形成し、より高いガラスの耐破断性をもたらす。例えば、
図9Fは、ピッチが10μmから約4μmに変化する際に、急速破壊強度が、ディスプレイガラスの実施形態では増加することを示している。より詳細には、破壊強度は、急速に増加し(ガラスは分離しづらくなった)、穿孔ピッチが10μmでは4μmであった場合より最小で3倍大きかった。Contego型のガラスの>15μmの穿孔ピッチでは、亀裂は、孔から孔へと接続されない。ディスプレイ又はTFTガラスでは、上述したように、記載された範囲(5~15μm)内でのピッチの選択は、エネルギー密度及びパルスバースト内のパルス数の両方についての要件を同時に満たしつつ、行われるべきであることに留意されたい。
【0084】
よって、幾つかの実施形態によれば、ディスプレイ又はTFTガラスワークピース(本明細書ではアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピースとも称される)をレーザ加工する方法は、
パルス化レーザビームを、ビームの伝播方向に沿って配向され、かつ、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピース内へと導かれるレーザビーム焦線へと集束させる工程であって、該レーザビーム焦線が、材料内に誘起吸収を生成し、該誘起吸収が、ワークピース内にレーザビーム焦線に沿って欠陥線を生成する、工程、及び
アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピースとレーザビームとを、輪郭に沿って互いに対して平行移動させ、それによって、ワークピース内に輪郭に沿って複数の欠陥線をレーザ形成する工程であって、隣接する欠陥線間の周期は5μm~15μmであり、バーストエネルギーは300~500マイクロジュールであり、1バーストあたりのパルス数は9~20、好ましくは10~20である、工程
を含む。
【0085】
幾つかの実施形態によれば、隣接する欠陥線間の周期は5μm~15μmであり、バーストエネルギーは300~500マイクロジュールであり、1バーストあたりのパルス数は9~20である。他の実施形態によれば、隣接する欠陥線間の周期は7μm~12μmであり、バーストエネルギーは400~600マイクロジュールであり、1バーストあたりのパルス数は5~15である。
【0086】
下記表1は、Eagle XG及びContegoガラスに、首尾よく穿設し、孔間に亀裂を作り出すのに用いられるパルス化レーザの例示的な条件を示している。プロセスの第2の工程は、熱源としてCO2レーザを使用して、パルス化レーザビームによって創出された穿孔に沿って走査し、ガラスを完全に分離することである。
【0087】
【0088】
低アルカリ又は無アルカリガラスの切断及び分離
図8C及び9Aに示されるように、広範囲の基板厚さについて、線形の切断又はさらに複雑な形状のいずれかを伴う、例えばEagle XG(登録商標)などのガラスの分離を可能にする、さまざまな条件が見いだされた。
図8Cの画像は、Eagle XG(登録商標)ガラスの0.024mm厚片(上部画像)、及びEagle XG(登録商標)ガラスの0.134mm厚片(下部画像)の切断エッジを示している。Eagle XG(登録商標)は、薄膜トランジスタ(TFT)基板として使用するために設計されたガラス組成物であり、したがって、ケイ素の熱膨張係数とほぼ一致させることができる、約3ppm/℃の適切な熱膨張係数(CTE)を有する。このレーザプロセスは、同様のTFTガラス組成物の切断及び分離、すなわち、Eagle XG(登録商標)に似たCTE(例えば、2ppm/℃~5ppm/℃のCTE)を有するもの、並びに他の組成及びCTEを有する他のガラスの切断及び分離にも用いられうる。
【0089】
幾つかの例示的な組成物は、TFTの製造の間の優れた寸法安定性(すなわち、低い圧縮)を有することを可能にし、TFTプロセスの間の変動性を低減する、高いアニール点及び高いヤング率を有する無アルカリガラスである。高いアニール点を有するガラスは、熱加工とその後のガラス製造の間の圧縮/収縮に起因するパネルの歪みを妨げるのに役立ちうる。加えて、本開示の幾つかの実施形態は、高いエッチング速度を有し、バックプレーンの経済的薄肉化、並びに異常に高い液相粘度を可能にし、よって、比較的冷間成形用マンドレルの失透の可能性を低減又は排除する。それらの組成物の特定の詳細の結果として、例示的なガラスは、非常に低レベルのガス状内包物を有し、貴金属、耐火物、及び酸化スズ電極材料への浸食を最小限にする、良好な品質へと溶融する。
【0090】
一実施形態では、実質的に無アルカリのガラスは、高いアニール点を有しうる。幾つかの実施形態では、アニール点は、約785℃超、790℃超、795℃超、又は800℃超である。動作のいずれかの特定の理論に縛られるわけではないが、このような高いアニール点は、低い緩和率をもたらし、したがって、低温ポリシリコン法におけるバックプレーン基板として用いられる例示的なガラスに、比較的少量の圧縮をもたらすと考えられる。
【0091】
別の実施形態では、約3500Pa・s(約35,000ポアズ)の粘度(T35k)における例示的なガラスの温度は、約1340℃以下、1335℃以下、1330℃以下、1325℃以下、1320℃以下、1315℃以下、1310℃以下、1300℃以下又は1290℃以下である。特定の実施形態では、ガラスは、約1310℃未満の約3500Pa・s(約35,000ポアズ)の粘度(T35k)を有する。他の実施形態では、約3500Pa・s(約35,000ポアズ)の粘度(T35k)における例示的なガラスの温度は、約1340℃未満、1335℃未満、1330℃未満、1325℃未満、1320℃未満、1315℃未満、1310℃未満、1300℃未満又は1290℃未満である。さまざまな実施形態では、ガラス物品は、約1275℃~約1340℃の範囲、又は約1280℃~約1315℃の範囲のT35kを有する。
【0092】
ガラスの液相温度(Tliq)は、それより高温では、結晶相がガラスと平衡して共存することができない温度である。さまざまな実施形態では、ガラス物品は、約1180℃~約1290℃の範囲、又は約1190℃~約1280℃の範囲のTliqを有している。別の実施形態では、ガラスの液相温度に対応する粘度は、約15,000Pa・s(約150,000ポアズ)以上である。幾つかの実施形態では、ガラスの液相温度に対応する粘度は、約17,500Pa・s(約175,000ポアズ)以上、約20,000Pa・s(200,000ポアズ)以上、約22,500Pa・s(225,000ポアズ)以上、又は約25,000Pa・s(250,000ポアズ)以上である。
【0093】
別の実施形態では、例示的なガラスは、T35k-Tliq>0.25T35k-225℃をもたらしうる。これは、溶融プロセスの成形用マンドレルにおいて失透する傾向の最小限化を確実にする。
【0094】
1つ以上の実施形態では、実質的に無アルカリのガラスは、酸化物基準のモルパーセント表示で、SiO2 60~80;Al2O3 5~20;B2O3 0~10;MgO 0~20;CaO 0~20;SrO 0~20;BaO 0~20;ZnO 0~20を含み;ここで、Al2O3、MgO、CaO、SrO、BaOは、それぞれの酸化物成分のモルパーセントを表す。
【0095】
幾つかの実施形態では、実質的に無アルカリのガラスは、酸化物基準のモルパーセント表示で、SiO2 65~75;Al2O3 10~15;B2O3 0~3.5;MgO 0~7.5;CaO 4~10;SrO 0~5;BaO 1~5;ZnO 0~5を含み;ここで、1.0≦(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3<2及び0<MgO/(MgO+Ca+SrO+BaO)<0.5である。
【0096】
ある特定の実施形態では、実質的に無アルカリのガラスは、酸化物基準のモルパーセント表示で、SiO2 67-72;Al2O3 11~14;B2O3 0~3;MgO 3~6;CaO 4-8;SrO 0~2;BaO 2~5;ZnO 0~1を含み;ここで、1.0≦(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3<1.6及び0.20<MgO/(MgO+Ca+SrO+BaO)<0.40である。
【0097】
他の実施形態では、ガラスは、約785℃以上のアニール温度、約81GPa以上のヤング率;約1750℃以下のT200P、約1340℃以下のT35kP、及び、0.5nm未満の原子間力顕微鏡法で測定した平均表面粗さを含む。このガラスは、約2.7g/cm3以下の密度、及び約34未満の比弾性率を含みうる。他の実施形態では、比弾性率は30~34である。さらなる実施形態では、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3は、約1.0~1.6の範囲である。幾つかの実施形態では、T200Pは約1700℃以下である。幾つかの実施形態では、T35kPは約1310℃以下である。このガラスはまた、酸化物基準のモルパーセント表示で:SiO2 60~80、Al2O3 5~20、B2O3 0~10、MgO 0~20、CaO 0~20、SrO 0~20、BaO 0~20、及びZnO 0~20も含みうる。
【0098】
幾つかの実施形態では、ガラスは、約1.0~1.6の範囲の(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3、T(ann)>785℃、密度<2.7g/cm3、T(200P)<1750℃、T(35kP)<1340℃、ヤング率>81GPaを含む。このガラスは、酸化物基準のモルパーセント表示で:SiO2 60~80、Al2O3 5~20、B2O3 0~10、MgO 0~20、CaO 0~20、SrO 0~20、BaO 0~20、及びZnO 0~20も含みうる。
【0099】
他の実施形態では、ガラスは、約1.0~1.6の範囲の(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3、T(ann)>785℃、密度<2.7g/cm3、T(200P)<1750℃、T(35kP)>1270℃、ヤング率>81GPaを含む。このガラスは、酸化物基準のモルパーセント表示で:SiO2 60~80、Al2O3 5~20、B2O3 0~10、MgO 0~20、CaO 0~20、SrO 0~20、BaO 0~20、及びZnO 0~20も含みうる。
【0100】
第1の方法は、ピコ秒(パルスバースト)レーザを使用して、欠陥線又は孔を作り出し、所望の形状に従った複数の損傷跡の断層線を形成し、その後に機械的分離を行うことである。欠陥線又は孔の形成後、ガラスの機械的分離は、割断プライヤを使用して、手又は専用工具でパーツを曲げて、又は、分離を開始し、穿設された断層線に沿って伝播するのに十分な張力を作り出す任意の方法によって、手動で達成されうる。
【0101】
別の方法は、ピコ秒(パルスバースト)レーザを利用して、欠陥線又は孔を作り出し、所望の形状に従った複数の孔(又は複数の損傷跡)の断層線を形成する。この工程の後に、好ましくはCO2レーザによる、熱分離の工程が続き、ここで、CO2ビームが損傷跡の断層線に沿って走査される。幾つかの実施形態では、レーザ方法は、メモリディスクの動作中にスピンドルが挿入されうる内部孔を有する円形のガラスメモリディスクの形成に用いられうる。CO2レーザを用いて、この内部孔から切断ガラスを解放してもよい。本明細書に記載のレーザ方法を用いて、始点及び終点が円周に沿って出会うが、バリは形成されない、円形形状等であるが限定はされない任意の形状を作り出すことができることが、予想外に見いだされた。当技術分野で知られているように、曲線形状のための通常のレーザ分離方法は、レーザ分離法の開始点及びレーザ分離法の終点(通常、開始点と同じ又は実質的に同じ位置)に、大量の溶融材料を生じる。このバリは、いずれも、最終製品の品質に悪影響を与えるか、あるいは、バリを取り除くために追加的な研削又は研磨技法に供されなければならない。しかしながら、本開示に従った例示的なレーザ方法は、予想外にも、このようなバリを生じないことが見いだされた。
【0102】
CO
2レーザビームは、対象とされるガラス表面の温度を急速に上昇させる制御された熱源である。この急速加熱は、ガラス表面層に圧縮応力を構築する。加熱されたガラス表面は、ガラス基板の表面積全体と比べて比較的小さいことから、急速に冷却され、この温度勾配は、ガラスを通じて、及び切断方向に沿って(すなわち、穿孔に沿って)既存の亀裂を伝播するのに十分に高い引張応力を誘起し、完全なガラス分離をもたらす。この完全なガラス分離法は、例えば、メモリディスクなどの切断ピースの周囲又は円周に沿って、あるいは、内部孔又は他の幾何学形状の内部円周/周囲に沿って、又はその両方で用いられうる。
図9Gは、CO
2ビーム直径の関数としての速度の増加を示している。より詳細には、この図は、CO
2ビーム直径の4つの例示的な実施形態についての分離速度(切断速度)の関数としての破壊強度(ガウスビームプロファイル)を示している。この図はまた、破壊強度が増加すると、分離又は切断速度が低下する(すなわち、分離速度は、ガラスを分離するのに必要とされる力の量が低下するにつれて増加する)ことも示している。この図はまた、ガウス型のレーザビームでは、ガラスの分離速度は、CO
2ビーム直径が小さくなるにつれて増加することも示している。CO
2ビームの直径が小さすぎる場合には、ガラスは熱損傷されることに留意されたい。この制御された加熱は、複数のCO
2ビーム形状及びビーム強度分布を使用して達成されうる。表1の実施形態では、レーザ強度分布は、Eagle XGガラスでは6mm及びContegoガラスでは7mmの直径の円形スポットを有する、ガウス分布である。このビーム形状(円形)及び強度分布(ガウス分布)のため、表1の実施形態では、ガラスの分離速度(切断速度)は、Eagle XG(登録商標)では300mm/秒、Contegoでは250mm/秒において最適化される。幾つかの実施形態では、CO
2レーザの出力は100~400Wである。
【0103】
円形のCO2レーザビームを用いて達成される分離速度についての同様の値を、異なった形状のレーザビームを使用して達成することもできる。例えば、「トップハット型」レーザビームでは、均一な強度分布が、CO2レーザ熱源として用いられうる(すなわち、ガウス形状のレーザビーム強度プロファイルの代わりに矩形)。トップハット型レーザビームのピーク強度は、ガウスレーザビームのピーク強度の半分であることから、レーザビーム直径は、ガラスの過熱なしに、さらに縮小されうる。レーザビーム直径の縮小は、分離速度を増加させる。加えて、トップハット型プロファイルは、熱勾配を増加させ、したがって、ガラスの過熱なしにガラスに誘起される熱応力も増加する。これは、分離速度の増加も可能にする。「トップハット型」ビームCO2レーザプロファイルは、次の技法の1つを使用して達成されうる:回折レーザビーム整形器、非球面レンズ、又は四角形又は円形の開口の使用(レーザ出力を犠牲にして)。トップハット型CO2ビームプロファイルは、Eagle XG(登録商標)ガラスでは>300mm/秒、Contegoガラスでは250mm/秒以上のガラス分離速度を達成する。CO2レーザの出力は、例として、100W~400W(例えば200~400W)である。
【0104】
別の方法において、我々は、CO2レーザと併せて検流計を使用して、レーザ穿設された(すなわち、矩形(ガウスの代わりに)形状のレーザビームプロファイル)Eagle XG(登録商標)及びContegoガラスを分離した。これらの実施形態では、CO2レーザビームを、穿孔線に沿って移動させると同時に、損傷跡に対して垂直にラスター化した(rastered)。2mmのビーム直径を有するレーザビームを実験に用いた。垂直にラスター化する(rastering)(すなわち、断層線を横断する)大きさは4mmであった。6mm直径のガウスCO2レーザビームの使用によって達成された切断(分離)速度に対して、約20%の切断速度の増加が観察された。CO2レーザの出力は、例として、100W~400W(例えば200~400W)である。
【0105】
より速い分離速度は、例えば、20mmの軸長を有する切断方向に沿った主軸及び6mmに設定された非主軸を有するビームスポットを有するCO2レーザを用いるなど、楕円形のレーザ加熱源を使用して達成されうる。例えば、226Wの出力を有するCO2レーザと損傷跡に沿って位置合わせした6mm×8mmの楕円形のビームを用いて、500mm/秒の分離速度を得た。
【0106】
分離前の欠陥線の直径又は内径は、ガラス材料又はワークピースにおける開口チャネル又は空気孔の内径である。ひとたびワークピースが分離されても、欠陥線は、例えば、
図8Cに示されるように、まだ視認することができる。分離されたワークピース上で視認できる個別の欠陥線の幅を、例えば、顕微鏡を用いて測定することができ、該幅は、分離前の欠陥線の内径に匹敵しうる。例えば、欠陥線の直径が0.1μm~5μmの場合、切断後の分離された表面上の個別の欠陥線の対応する幅は、約0.1μm~5μmの範囲でありうる。
【0107】
低又は無アルカリガラスのファミリに由来するEagle XG(登録商標)ガラス及び同様の組成物は、「破壊」するのに高いパルスエネルギーを必要とするそれらの強い分子及び原子結合に起因して、レーザ誘起される分離法の課題を提示している。
図10は、原子のイオン化エネルギーを示している。典型的なアルカリガラス組成物(Corning Gorilla(登録商標)ガラスなど)に一般に用いられるものと比較して、Na、Ca、K及び同様の元素の低減により、少ないイオン化元素を除去し、イオン化するために多光子吸収を必要とする元素を比例的に多く残す(透明レジームにおいてレーザ波長に曝露されたときに)。この実施形態は、原子及び分子結合を切り離すのに十分なレーザエネルギーで、材料の小さい円筒形の容積を均一に照射し、低いデブリ及び低い表面下損傷をもたらす手段を提供する。
【0108】
ディスプレイガラス組成物とGorillaガラス組成物との間の差異:
- Eagle XG(登録商標)及び他のディスプレイガラス:
CTEが低く、約3ppm/℃
無アルカリ(又は微量のみ)
温度拡散率が低い
- Corning Gorilla(登録商標)と他のイオン交換可能なガラス:
CTEは、概して約7~9ppm/℃である
組成物中にナトリウムなどのアルカリを大量に有する(イオン交換可能にする)
温度拡散率が高い。
【0109】
TFTガラス組成物の低い熱膨張及び低い温度拡散率は、このようなガラスの切断のみがされる場合には、熱亀裂伝播のための応力を生成及び管理する必要性に起因して、不透明レジームで動作するレーザ(例えば10.6μmでのCO2)を用いる、困難な熱管理の問題を生じる。例えば、TFTガラスは、10.6μmの波長に対しては透明ではなく、このようなレーザエネルギーはガラスの高い層(ガラス内部の奥深い方ではない)に吸収される。しかしながら、我々は、穿孔線の作出が、亀裂の開始、伝播、及び誘導に必要とされるレーザエネルギーの量を低減することによって、熱管理の問題を簡易化すること、及び、10.6μmのレーザでのCO2などのIRレーザを使用するガラスの加熱が、ガラスをピコ秒のパルスレーザを用いて穿設した後、有利には、欠陥線間に、速い、効率的かつ制御された亀裂伝播を生じ、したがって、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラスの速く効率的な切断をもたらすことを発見した。
【0110】
ディスプレイガラスの種類には、これらのガラスのレーザパラメータの追加的な微調整の必要性を生じる組成の差異が存在する。例えば、Eagle XG(登録商標)(本明細書ではEXGとも称される)は、高い生来的な耐損傷性(native damage resistance)ガラス(例えばContego)よりも、出力、ピッチ及びパルス数について広範囲の値を有する。両ガラスは、3~4ppm/℃の範囲の低いCTEを有する。2つのガラスの組成を下記表2に記載する。
【0111】
【0112】
本明細書に記載の方法は、したがって、板又はシートにおいて任意の形状で、並びに、連続的な方式で、無アルカリガラスを切断する効果的な手段を提供する(「オン・ザ・ドロー」と呼ばれる連続的な溶融ガラス製造プロセスに必要とされる)。小さい(例えば、Corning Willow(登録商標)ガラス)厚さ(約100~200μm、又は100~150μm)のピコ秒レーザ穿孔は、例えば、1μm~20μmのパルス間隔で200~300mm/秒の速度(及び、それより大きい速度も可能である)で、実証されている。
【0113】
オン・ザ・ドローでのガラスの切断
機械的スコアリング及び割断は、連続的な溶融ガラス製造プロセスのための従来のガラス切断法である。このプロセスは、真っ直ぐな切断については、1m/秒を達成し、速いが、輪郭ガラス形状を切断するとなると、遅い速度、ガラスエッジの欠け、切断エッジの高い粗さ等に起因して、このような用途にとって極めて困難になることから、高度に制限される。これらの用途は、表面下損傷(SSD)を低減するための複数の研削及び研磨工程、並びに、洗浄工程を必要とし、これにより、より高い資本要件に起因するプロセスに対するコスト及び低い収率を原因としたより高いコストが追加されるのみならず、単に、技術的要件を満たすこともできない。
【0114】
ディスプレイガラス組成物の切断のための二酸化炭素(CO2)レーザスコアリング及び割断法が、試みられてきた。この技法は、機械的な亀裂の開始及びそれに続くCO2熱誘起レーザによる亀裂伝播に依拠している。ほとんどの場合、10.6μmの波長でのCO2レーザ照射が精密な熱源として用いられ、その後、クーラント噴射によって熱衝撃を作り出し、直線に沿って亀裂を伝播させる。この手法が困難なのは、このような亀裂の方向及び伝播速度を、特に輪郭の周りで制御することにある。機械的又はCO2レーザスコアリング及び割断法による真っ直ぐな切断は、幾つかの用途にとっては上手く機能するかもしれないが、高度に正確な、清潔な及び順応性のある(すなわち、直線に沿った切断だけではない)ガラス切断の解決策が必要とされている。
【0115】
機械的及びCO2の両方に基づいたスコアリングが困難であることの一例は、液晶ディスプレイ(LCD)ガラス・フュージョンドロー・プロセスである。LCDフュージョンドロープロセスでは、高いドロータワーから発出して、薄い平坦なガラスの連続的なリボンが形成される。この薄いガラスは、ほとんどの場合、0.050mm~2mm厚及び24インチ~150インチの幅(60.96cm~381cm幅)で形成される。このガラスリボンは、ガラス窓のスコアリング又は切断と同様に機械的スコアリングホイールによってスコアリングされる。このスコアリングされたガラスは、次に、機械的に曲げられ、リボンから折り取られ、ドロータワーの底部で、例えば、24インチ~150インチ幅(約61cm~381cm幅)×24インチ~150インチ高さ(すなわち、約61cm~381cm高)のシートを確立する。ガラスのシートは、機械的に把持され、その最も外側の端部がローラで引っ張られることから、このようなシートは、シートの左右の側に非常に粗く厚いセクションを有し、これらのセクションは、「ビード」又は「エッジビード」と呼ばれる。機械的スコアリングは、ガラスシートの品質領域にのみ行ってもよく、ガラスシートのより厚みのあるビード化セクションには行われなくてもよい。ロボットは、ガラスのシートを把持し、曲げ、ガラスリボンからスコアリングされたシートを折り取る。この割断動作は、リボンの上方にドロータワー内へと高い振幅振動を生じ、これが最終的なシートに平坦度変動を形成する。それはまた、振動がドローの上方へと微小亀裂を走らせうることから、「ルビコン(rubicons)」又は連続的なシート形成プロセスの顕著な妨害も生じうる。ガラスの機械的スコアリング及び割断は、非常に小さく軽いガラス片も生じることがあり、空気を通じて運ばれ、すぐ近くの表面に堆積することがあり、これらのガラス片は、時折、10~200μmの大きさ及び3~20μmの厚さである。機械的スコアリングによって生じるこれらのガラス片は、ドロータワーを浮上し、シートの表面に付着する。「クラムシェル型」のガラス片と呼ばれる、これらの粒子の一部は、他のガラス表面にしっかりと付着可能な、かつ、リボンガラス表面にも永久に付着する、非常に平らな面を有する。このような汚染は、洗い流すのが非常に困難であり、LCD及びTFT用途に必要とされるガラスのコーティング及びパターン化を妨害することから、機械的スコアリングによって生じるこのような付着ガラス片は、ガラスシートの棄却セクションを生じる。
【0116】
延伸された後、このガラスシートは、次に、リボン領域から二次的切断領域へと移され、そこで、ガラスシートは、しばしば、垂直ビードスコアリング機と呼ばれる別の機械上に設置され、次に、ガラスのビード化セクション又は非品質領域が機械的にスコアリングされ、次いで、ビードセクションが、親シートから機械的に折り取られる。この場合も、微量のクラムシェル型のガラス片が、シートの欠陥領域上に飛び散ることがあり、ガラスに棄却セクションを生じうる。
【0117】
次に、すべてのシートは、幾つかの事例ではクレート内に、詰め込まれ、仕上げ位置へと出荷される。この場合も、クラムシェル型のガラス片が、ガラスのエッジから表面へと移動することがあり、ガラスに棄却セクションを生じうる。ガラスのこのクレートは無負荷かつ仕上げ加工ラインに置かれ、ここで、シートは、機械的又はCO2スコアリングされ、ガラスのわずかに小さいシートへと機械的に割断される。このオフライン・スコアリング・プロセスは、オン・ドロー・スコアリング・プロセスよりもはるかに正確である。この場合も、よりクラムシェル型のガラス片がガラス表面上に飛び、これらのガラスシートに棄却セクションを生じる。
【0118】
このようなシートは、次に、薄いガラスシートを最終的な長さ及び幅に粗研削及び精研削するエッジグラインダへと移され、所望されるエッジプロファイル又は斜角の生成に用いられうる。次いで、シートは、四隅を研削する別のグラインダへと移される。次に、シートは、クラムシェル型粒子を除く遊離した粒子のほとんどを表面から取り除く、インライン洗浄機へと移される。
【0119】
従来の機械的スコアリング及び割断方法とは対照的に、本明細書に開示されるレーザガラス切断法は、有利には、極めて正確に、極めて速く、所定の輪郭に沿って、及び多数又はかなりの数のガラス片を生じることなく、薄いガラスなどのガラスを切断することが可能である。また、ガラスは、極めて高速(例えば、1~2m/秒)で穿設されうる。試験事例では、ガラスのエッジにガラス片は観察されていない。レーザプロセスは、より大きいガラスシートから携帯電話サイズなどの小さいガラス物品(70mm×150mm)の形状に穿設し、かつ分離することができる。薄いガラスのこの穿孔及び分離プロセスは、400nm未満の表面粗さ(Ra)及び<60μmの表面下微小亀裂を有するエッジを後に残す。このエッジ品質は、ガラスの下地シートの品質に近い。この能力を所与として、高温ガラスは、薄いガラスシートを製造するフュージョンドロープロセスにおいて、レーザ切断されうる。よって、本明細書に記載される技術の実施形態は、有利には、ガラスを、ドローラインにおいて(又は、望ましい場合には仕上げ加工ラインの直後に)最終的な形状へと切断可能にすることによって、歩留まりを向上させ、微粒子の生成を低減するか又は無くし、コスト改善をもたらす。
【0120】
図11は、連続的な溶融ガラス製造プロセスのための既存のガラス切断法を示している。既存のプロセスでは、ガラスシート1164は、ドロータワー1162から流下する。ガラスシート1164のより濃い陰影は、より高温を示唆する。例えばフュージョンドロー機械において、ガラスのシートが形成されるとき、熱く軟らかいガラスシートは、ガラスシートの2つの外側エッジにインプリントを形成する、ローラなどの把持機構によって引っ張られる。インプリントされたエッジは、いわゆる「ビード」であり、これらのエッジはガラスシートの全長に延在する。これらのビード化領域は、ガラスシートの中央セクションと比較して、しばしば、歪んでおり、かつ非平坦であることから、、ガラスが最終的なデバイスの製造に利用される前に、ビード(又はビード化領域)の除去が行われる。ドローの動き1165に示されるように、ガラスシートは、ガラスシート1164のエッジに沿ってガラスビード1166を作り出すローラホイールを使用して引き下げられる。機械的スコアリング又はCO
2レーザスコアリングが、スコア線1168に沿って適用され、ガラスシート1164からのスコアリングされたシート1170の割断を促進する。
【0121】
本明細書に記載の方法は、オンライン及びオフラインの両方のガラス切断のニーズにとって、ディスプレイガラス組成物についてのガラス切断の解決策を提供する。オンラインでは、これらの方法は、ドローから来るガラスシートの、ガラスがその成形温度から冷却を開始する、特にドローの底部(BOD)として知られる領域での切断及びビードの除去の両方に適用されうる。ガラスのシートが、例えばフュージョンドロー機械などにおいて形成される場合、熱く軟らかいガラスシートは、ガラスシートの2つの外側エッジにインプリントを形成する、ローラなどの把持機構によって引っ張られる。インプリントされたエッジは「ビード」と呼ばれ、これらのエッジは、ガラスシートの全長に延在する。これらのビード化領域は、ガラスシートの中央セクションと比較して、しばしば、歪んでおり、かつ非平坦であることから、ガラスが最終的なデバイスの製造に利用される前に、ビード(又はビード化領域)の除去が行われる。本明細書に記載の方法は、ガラスシートの全厚を貫通するフルボディ(全厚)穿孔を生じうる、ガラス切断の解決策を提供する。一連の全厚穿孔により断層線を形成することができ、これは、断層線に沿ったシートの分離の際に、ガラスシートにおける非常に正確かつ制御可能な切断を形成可能にしうる。
【0122】
図12A~12Bは、
図2~6と併せて本明細書に記載されるのものようなレーザ光学システムを利用する、本明細書に記載される方法に従ったドローにおけるレーザガラス切断の2つの方法を例証している。レーザ切断プロセス1200Aによれば、一連の欠陥線からなるレーザ切断線1168’が、ドロータワー1162によって形成されたガラスシート1164に適用される。プロセス1200Aでは、レーザ(図示せず)は、ガラスシート1164の全厚を切り開くように構成される。レーザ切断線1168’は、ガラスリボン振動させずに、あるいは、ガラス片又は粒子を生じさせずに、ビード1166を切断することを含む、ドローにおいて新しく形成されたガラスシート1164の全幅を横断して延びる。
【0123】
図12Bは、ドローにおけるレーザガラス切断の代替的な方法1200Bを示しており、ここで、レーザは、ガラスシートの品質領域を切り抜き、大きい矩形のガラスシート1170’が取り出される。廃ガラス1172が、ドロー領域の底部1172においてガラスシートから取り除かれる。他の実施形態では、取り出されたガラスシート1170’は矩形である必要がないことが認識されよう。ガラスシート1170’は、四角又は円形であってよく、あるいは、必要とされる任意の他の形状を有していてもよい。
【0124】
図13は、ドローにおけるレーザガラス切断のさらに別の代替的な方法を示している。
図13では、垂直なレーザ切断線1168’が、ドロー経路の比較的上方で、ガラスビード1166に隣接して適用される。次に、ドロー経路の比較的下方で、ドローからガラスシート1170’を切断し取り出すために水平なレーザ切断線1168’が適用される。
【0125】
図14は、ドローにおけるレーザガラス切断のさらなる代替的な方法を示している。
図14では、ガラスシート1164の全幅にわたり、水平なレーザ切断線1168’がドローにおいて適用されて、ドローからレーザ切断シート1170’が取り出される。これに続いて、垂直なレーザ切断線1168がシート1170’の切断に適用されて、ドローの底部において切断シートからビードが除去される。
【0126】
図15は、ドローから離れたシート1170’から廃ガラス1172をトリム又は除去するための本明細書に記載のレーザ方法の使用を示している。仕上げ領域では、レーザ切断ガラスシート1170’から廃ガラス1172の水平及び垂直なピースを除去するために、水平及び垂直の両方のレーザ切断線1168’が適用される。
【0127】
本明細書に開示されるレーザガラス加工法は、極めて正確に、極めて速く、かつガラス片を生じることなく、薄いガラスを切断することができる。レーザに基づいた技術は、極めて小さい孔(例えば、<1μmの直径)及び短いピッチ間隔(例えば、1μm)でガラスに穿設することができる。また、本明細書に開示される方法を用いて、極めて高速(例えば、1~2m/秒)でガラスに穿設することもできる。ガラスのエッジにはガラス片は見られない。携帯電話用のものなど小さいガラス物品(例えば、70mm×150mm)は、穿設され、より大きいガラスシートから取り出されうる。薄いガラスのこの穿孔及び分離プロセスは、400nm未満のRa粗さ及び、<60μmの表面下微小亀裂又は微小亀裂を有するエッジを後に残す。このエッジ品質は、ガラスの下地シートの品質に近い。これらの能力を所与として、レーザに基づいたプロセスを用いて、薄いガラスシートを作製するフュージョンドロープロセスにおいて高温ガラスを切断することができる。
【0128】
ガラス応力もまた、幾つかの用途、特に、高い応力を有するガラスシート又は積層ガラスシートを用いる用途にとっては、特に懸念される事項でありうる。従来の方法を用いたこのような状況下でのシートの切断は、相当困難である。例えば、かなりの量の応力が、フュージョンドロープロセスの間のLCDガラスシートのドロー中に誘起される。シートとビードとの界面における応力は、シートとビードとの差厚及び異なる関連した冷却速度の理由から、ガラスの冷却の間にさらに大きくなる。応力レベルは、フュージョンドローされ積層されたシートの事例では、著しく大きくなる可能性があり(>300MPa)、ここで、隣接するシート層間の粘度及びCTEにおける差異は、非常に高い外層圧縮応力を生じる。この高い圧縮応力層の特性は、積層ガラスシートのガラス強度を著しく改善しうる。しかしながら、従来の方法によるガラスシートの切断は、高い応力レベルを有するシートにおいては困難でありうる。
【0129】
当技術分野で理解されるように、フュージョンドロープロセスを用いて作製されたLCDガラスシートは、該ガラスがその軟化点より高温からその歪み点よりはるかに低温まで冷却される際に誘起される、高い応力を有する。該応力はまた、厚さ及び熱式質量の差異に起因してガラスビード界面においても、著しく高い。その応力は、積層ガラスシートの場合にはるかに高く(>300MPa)、ここで、ガラス層のCTE及び粘度における不一致が、強化ガラスの用途に必要とされる高い圧縮応力を誘起しうる。これらの高レベルの応力により、ガラスの歪み点よりはるかに低い温度(<300℃)でのガラスシートの切断は非常に困難になる。
【0130】
ガラスシートの厚さを通じたシングルショット貫通を必然的に伴うレーザ技術を使用して、シートを切断し、かつシートからビードを分離する方法及びさまざまな実施形態が開示される。本明細書に開示される方法は、ドローにおけるレーザに基づいたシートの切断及びビードの分離を可能にし、フュージョンドロープロセスの製造効率を改善することができる。さらには、幾つかの実施形態では、単層シート及び積層シートを、高温(ガラスのアニール点近く)で切断することができ、誘起される応力はかなり小さくなる。高温でシートを切断し、次に所定の温度プロファイルを通してシートを後処理する能力により、より低いガラス圧縮、より低い残留応力、別々の仕上げ工程のコストを排除する可能性、より高い歪み点のガラスを加工する能力、及びガラスがアニール温度により長くとどまることに起因する生産スループットの増加を、シートにもたらすことができる。
【0131】
図16は、(切断される)ガラスシート部分1170’をそのアニール点に近い温度に保持するように設計された多段加熱炉1671を使用する、例となるプロセスを例証している。ドローの下部において、(切断される)ガラスシート1170’は、およそガラスのアニール温度に保持された加熱炉1671a内に導入される。アニール点に近い高温におけるより低い応力レベルは、シートの切断に役立つ。シート1164は、ドローにおいて、ガラスに複数の欠陥線を生じるように水平レーザビームの平行移動1676に供されるレーザビーム1674によって、最初に水平に切断される。
【0132】
ガラスシート1170’は次に、加熱炉1671bに移され、またガラスのアニール温度で保持される。ガラスビード1166は、垂直移動1678させて、ビード1166に隣接したガラスシート1170’をレーザスコアリングするように構成された、レーザビーム1674を使用して分離される。水平及び垂直切断工程は、レーザ損傷輪郭に沿って引張応力又は曲げ応力を印加して、ドローからガラスを分離し、必要な場合には、切断ガラスシート1170’からガラスビードを分離する、工程を含みうる。応力は、例えば、ロボットを使用して印加されうる。
【0133】
ガラスビードの除去後、切断ガラスシート1170’は、第3の加熱炉1671cに移され、ここで、熱源1680が垂直移動1682され、ガラス板1170’の切断エッジに熱を供給する。熱は、切断垂直エッジを滑らかにし、丸めるように適用され、
図16には示されていないが、熱は、滑らかにし、丸めるために、板1170’の水平な切断エッジにも適用されうる。熱源には、ガス火炎、CO
2レーザ等が含まれうる。
【0134】
ガラスシート1164は、積層されたシートであってよく、該シートは、各々がCTE等の異なる材料特性を有する、複数の層で構成される。このような積層されたシートは、二重アイソパイプドロータワーを使用することによって形成することができ、ここで、各アイソパイプは、積層体の異なる層にガラスを供給するために用いられる。積層体のガラス層間のCTEの差異により、ガラスシートが軟化点超から歪み点のはるか下まで冷却されるときに、結果として、かなりの量の応力が導入される。例えば、400MPa超の圧縮応力は、0.8~1の範囲の積層体全体の厚さに対する内層の厚さの比を伴って、60×10-7/℃より大きい内層と表面層との間のCTEの差異を有することによって、積層シートの表面に誘起されうる(例えば、その全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、米国特許出願公開第2011/0318555号明細書に記載される)。
【0135】
ガラスシート1164が積層体の場合には、加熱炉1671a及び1671bは、積層体の2つの層のアニール温度間の温度に積層体を保持するように構成されうる。高い表面圧縮応力が必要とされる用途(高強度用途のための積層ガラス)については、アニール温度での時間の供与は、応力規模を低減し、レーザビーム1674を使用する切断を促進する。これらの事例では、切断後の冷却の間のガラスのクエンチ処理によって、高い応力が、完成したガラスシートに依然として達成されうる。
【0136】
図17は、次第に低くなる冷却段階1771a、1771b、及び1771cを有する多段加熱炉1771を通じてシートを物理的に移動させることによって、シート1170’がガラスの歪み点をはるかに下回る温度に冷却される、プロセスを示している。一連の加熱炉は、所定の温度プロファイルを適用して、残留応力、成形後の圧縮を最小限に抑え、ガラスシート特質を改善し、ガラスの特性を調整する。他の実施形態では、同様に制御された冷却プロファイルが、時間依存性の温度プロファイルを有する単段加熱炉を使用することによって達成されることが理解されよう。
【0137】
他の実施形態では、レーザ穿孔は、ガラスのアニール点を上回る温度で、欠陥線間のある特定の分離とともに、ドローにおけるガラスにて行われる。これは、このドロー位置でのガラス強度には著しい影響を及ぼさない。しかしながら、これは、ガラスシートの自発的分離、又は、CTE応力がドローの下流位置に生じる場合には(例えば、積層ガラス)、弱い外部摂動のみを用いた分離をもたらしうる。自発的分離、又は弱い外部摂動を用いた分離は、ガラスビードの除去及びガラスの回収に有用でありうる。
【0138】
高温におけるシート切断能及び、所定の温度プロファイルを通じたシートの後処理は、より低いガラス圧縮及びより低い残留応力を有するシートをも可能にする。このような能力により、別々の仕上げ工程のコストもまた排除することができ、より高い歪み点を有するガラスの加工を可能にし、ガラスがアニール温度により長くとどまることに起因して生産スループットを増加させることができる。
【0139】
全厚の切断線に沿ったガラスの分離は、2つの欠陥線間のピッチによって制御される。ピッチ制御能力もまた、レーザパルス周波数又はバースト繰り返し数によっても影響される切断速度、バーストモード内のパルス数、及び1パルス及び/又は1バーストあたりの利用可能な平均エネルギーを決定することから、重要である。
【0140】
貫通した欠陥線の孔の周りの微小亀裂が孔に最も近い次の孔の方向に配向される場合、これは、切断方向における1つの孔からそれに最も近い次の孔への亀裂伝播が、切断線に沿った微小亀裂によってさらに増進されるという意味で、ガラス切断に役立つ。
【0141】
薄膜トランジスタ(TFT)などの連続的な溶融ガラス製造プロセス及びディスプレイ用途には、ある特定のエッジ仕上げとともに、ある特定の形状、寸法へのガラスの切断が必要とされる。例えば、顧客に発送する前に、丸面エッジを有するディスプレイガラスシートを仕上げ加工することは、業界標準である。仕上げ加工は、このような仕上げをされていないガラスエッジが輸送中にしばしば壊れてしまうことがあるため、信頼性の理由から好ましい。本明細書に記載の方法は、エッジプロファイルを有するディスプレイガラスシートの切断及び仕上げを可能にし、輸送中に高い信頼性ももたらすが、コストのかかる機械的研削及び研磨プロセスを必要としない面取りを可能にする。このようなエッジは、信頼性の高い業界標準を実現するために、せいぜい、微細な接触研磨のみを必要としうる。
【0142】
最後に、本明細書に記載の方法は、溶融プロセスなどによって生成されたガラスシート、又はガラスシートの積層体の0.025mm以下~数mm厚のさまざまな厚さのTFTガラス組成物を完全に分離/切断することができる。TFTガラス組成物などのワークピースは、例えば、約0.01mm~7mmの範囲の厚さ(例えば、0.5mm~7mm、又は0.5mm~5mm)を有しうる。
図2~6に記載される装置によって作出されるレーザビーム焦線は、例えば、ワークピースの厚さ範囲に及ぶ範囲の長さを有してよく、必要に応じて、ワークピースの全厚を通じて延びる欠陥線を形成しうる。
【0143】
本願は、増進されたレーザ加工性能及びコスト削減、したがってより低コストの製造につながりうる、次の利益を提供する。本実施形態において、切断プロセスは以下のことを提供する:
レーザ出力を低下させて切断するパーツの完全な分離:本開示の実施形態は、溶融プロセスによって生成されたガラスシート又はガラスシートのスタックの0.025mm以下~数mm厚のさまざまな厚さのTFTガラス組成物を完全に分離/切断することができる。
【0144】
表面下欠陥の低減:レーザ及び材料間の超短パルス相互作用に起因して、熱相互作用がほとんどなく、よって、望ましくない応力及び微小亀裂を生じうる熱影響区域を最小限にする。加えて、レーザビームをガラス内に集光又は集束する光学系は、パーツ表面に典型的には直径2~5μmの欠陥線を作り出す。分離後、表面下欠陥は、例えば<75μm、<50μm、<30μm、又はさらに20μm以下など、100μm未満である。これは、強度が、欠陥の数、及び、大きさ及び深さの観点でのそれらの統計的分布によって制御されるため、パーツのエッジ強度に大きな影響を有する。これらの数が増すにつれて、パーツのエッジは弱くなる。ここに開示される実施形態によって可能となるプロセスは、20μm以下の切断されたままのエッジにおける表面下損傷をもたらした。
【0145】
切断面に対してほぼ垂直に配向されている、表面下損傷、又は、切断プロセスによって生じた小さい微小亀裂及び材料の改質は、ガラス又は他の脆弱な材料のエッジ強度に対する懸案事項である。表面下損傷の深さは、切断面を調べるために、数nmの光学解像度を有する共焦点顕微鏡を使用して測定されうる。表面反射を無視するとともに、明るい線として現れる亀裂が材料の下方で探索される。顕微鏡は、次に、「スパーク」がなくなるまで、すなわち、散乱特徴が観察されなくなるまで、材料内へと集束され、規則的な間隔で画像が収集される。画像は、次に、亀裂を探し、ガラスの深さを通じてそれらを追跡することによって、手動で処理され、表面下損傷の最大深さ(典型的にはμm単位で測定される)を得る。典型的には、最大の微小亀裂のみが測定されるが、何千もの微小亀裂が典型的に存在する。このプロセスは、典型的には、切断エッジの約5箇所で繰り返される。微小亀裂は、切断面に対してほぼ垂直であるが、切断面に対してちょうど垂直な亀裂は、本方法では検出されない可能性がある。
【0146】
プロセス清浄度:本明細書に記載の方法は、Eagle XG(登録商標)、Corning Lotus(商標)、Corning Lotus NXT(商標)及び清潔及び制御された方式の他のガラスなど、TFTガラス組成物の分離及び/又は切断を可能にする。通常のアブレーション又は熱レーザプロセスは、微小亀裂及び、幾つかの小片への基板の断片化を誘起する、熱影響区域を引き起こす傾向があるため、これらを使用することは非常に大きな課題である。レーザパルスの特性、及び、本開示の方法の材料との誘起される相互作用は、これらが非常に短い時間尺度で生じ、かつ、レーザ照射に対する基板材料の透明性が、誘起される熱的影響を最小限に抑えることから、これらの問題のすべてを回避する。欠陥線が基板内に作り出されることから、切断工程の間のデブリ及び微粒子物質の存在は、事実上、排除される。作出された欠陥線から生じる微粒子が存在する場合、それらは、パーツが分離されるまで、良好に封じ込まれる。本明細書に記載されるレーザに基づいた方法によって切断及び分離された表面上の粒子は、約3μm未満の平均直径を有しうる。
【0147】
さまざまな大きさの複雑なプロファイル及び形状の切断
本レーザ加工方法は、他の競合技術においては制限となる、多くの形態及び形状をなぞる、ガラス、サファイア、及び他の基板及びガラスワークピースの切断/分離を可能にする。TFTガラス組成物では、狭い半径(tight radii)を切断することができ(例えば、<2mm)、曲線状のエッジを可能にし、かつ、本方法を用いて、例えば約5mm未満の、小さい孔及びスロット(携帯電話の用途ではスピーカー/マイクに必要とされるような)の作出も可能にする。また、欠陥線は、亀裂伝播の位置を強力に制御することから、本方法は、切断の空間位置の非常に優れた制御をもたらし、数百μmの大きさしかない構造及び特徴の切断及び分離を可能にする。
【0148】
プロセス工程の排除
受け入れするガラスパネルから最終的な大きさ及び形状へとガラス板を製造するプロセスは、パネルの切断、寸法化のための切断、仕上げ及びエッジ成形、対象とする厚さへのパーツの薄肉化、及び、TFTガラス組成物の研磨を含めた、幾つかの工程を包含する。これらの工程のいずれかの排除は、処理時間及び資本支出の観点から製造コストを改善する。提示される方法は、例えば、以下のことにより、工程数を低減できる:
・デブリ及びエッジ欠陥の生成の低減-洗浄及び乾燥ステーションの排除の可能性、
・最終的な大きさ、形状及び厚さへの試料の直接的な切断-仕上げ加工ラインの必要性の排除、
・ドローにおけるガラスの直接的切断-仕上げ加工ラインの必要性の排除。
【0149】
特許公報、特許出願公開公報、及びその中で引用される参照文献のすべての関連する教示は、それら公報の全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる。
【0150】
例示的な実施形態が本明細書に開示されているが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細におけるさまざまな変更が本発明においてなされうることは、当業者に理解されよう。
【0151】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0152】
実施形態1
ガラスワークピースをレーザ加工する方法において、
パルス化レーザビームを、前記ビームの伝播方向に沿って配向され、かつ、前記ガラスワークピース内へと導かれるレーザビーム焦線へと集束させる工程であって、該レーザビーム焦線が、前記ワークピースの材料内に誘起吸収を生成し、該誘起吸収が、前記ワークピース内に前記レーザビーム焦線に沿って欠陥線を生成する、工程、及び
前記ガラスワークピース及び前記レーザビームを第1の輪郭に沿って互いに対して平行移動させて、それによって、前記ワークピース内に前記第1の輪郭に沿って複数の欠陥線をレーザ形成する工程であって、隣接する欠陥線間の間隔が5μm~15μmであり、前記パルス化レーザが、1パルスバーストあたり5~20パルスを有し、1パルスバーストあたり300~600マイクロジュールのパルスバーストエネルギーを有するパルスバーストを生成する、工程
を含む、方法。
【0153】
実施形態2
アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピースをレーザ加工する方法において、
パルス化レーザビームを、前記ビームの伝播方向に沿って配向され、かつ、前記アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピース内へと導かれるレーザビーム焦線へと集束させる工程であって、該レーザビーム焦線が、前記材料内に誘起吸収を生成し、該誘起吸収が、前記ワークピース内に前記レーザビーム焦線に沿って欠陥線を生成する、工程、及び
前記アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料ワークピース及び前記レーザビームを第1の輪郭に沿って互いに対して平行移動させて、それによって、前記ワークピース内に前記第1の輪郭に沿って複数の欠陥線をレーザ形成する工程であって、隣接する欠陥線間の間隔が5μm~15μmであり、前記パルス化レーザが、1パルスバーストあたり5~20パルスを有し、1パルスバーストあたり300~600マイクロジュールのパルスバーストエネルギーを有する、パルスバーストを生成する、工程
を含む、方法。
【0154】
実施形態3
前記パルス化レーザが、1パルスバーストあたり9~20パルスを有するパルスバーストを生成し、前記パルスバーストエネルギーが、1パルスバーストあたり300~500マイクロジュールであることを特徴とする、実施形態2に記載の方法。
【0155】
実施形態4
前記隣接する欠陥線間の間隔が7μm~12μmであり、前記パルス化レーザが、1パルスバーストあたり5~15パルスを有するパルスバーストを生成し、前記パルスバーストエネルギーが、1パルスバーストあたり400~600マイクロジュールであることを特徴とする、実施形態2に記載の方法。
【0156】
実施形態5
前記パルス化レーザが、10W~150W、好ましくは10W~100W、例えば25W~60Wのレーザ出力を有することを特徴とする、実施形態2、3又は4に記載の方法。
【0157】
実施形態6
前記パルス化レーザが、10W~100Wのレーザ出力を有し、前記ワークピース及び前記レーザビームが、少なくとも0.25m/秒の速度で互いに対して平行移動することを特徴とする、実施形態2、3又は4に記載の方法。
【0158】
実施形態7
(i)前記パルス化レーザが、10W~100Wのレーザ出力を有し、かつ、(ii)前記ワークピース及び前記レーザビームが、少なくとも0.4m/秒、好ましくは少なくとも1m/秒の速度で、互いに対して平行移動することを特徴とする、実施形態2、3又は4に記載の方法。
【0159】
実施形態8
前記ワークピースを前記輪郭に沿って分離する工程をさらに含むことを特徴とする、実施形態1又は2に記載の方法。
【0160】
実施形態9
前記ワークピースを前記輪郭に沿って分離する工程が、(i)機械的な力を印加する工程;(ii)前記第1の輪郭に沿って又はその近くに前記ワークピース内へと二酸化炭素(CO2)レーザビームを誘導する工程、及び/又は、(iii)第2の輪郭に沿って前記ワークピース内へと二酸化炭素(CO2)レーザビームを誘導する工程であって、前記第2の輪郭が前記第1の輪郭の内部にある、工程
を含むことを特徴とする、実施形態8に記載の方法。
【0161】
実施形態10
前記第1又は第2の輪郭に沿って前記ワークピースを分離する工程が、(i)前記第1又は第2の輪郭に沿って又はその近くに前記ワークピース内へと楕円形の二酸化炭素(CO2)レーザビームを誘導する工程であって、前記CO2レーザ出力が100~400Wである、工程、又は、(ii)前記第1又は第2の輪郭に沿って又はその近くに前記ワークピース内へと均一な強度のビームプロファイル(トップハット型プロファイル)の二酸化炭素(CO2)レーザビームを誘導し、前記それぞれの輪郭に沿って前記ワークピースの熱応力誘起性の分離を促進する工程であって、前記CO2レーザ出力が100~400Wである、工程
を含むことを特徴とする、実施形態9に記載の方法。
【0162】
実施形態11
前記ワークピースが、複数のディスプレイガラス複合材料基板の積層を含むことを特徴とする、実施形態1~10のいずれかに記載の方法。
【0163】
実施形態12
前記複数のディスプレイガラス複合材料基板のうちの少なくとも2つが、エアギャップによって分離されていることを特徴とする、実施形態11に記載の方法。
【0164】
実施形態13
前記パルスが、約1ピコ秒超~約100ピコ秒未満、好ましくは1ナノ秒~約50ナノ秒、より好ましくは約5ピコ秒超~約20ピコ秒未満の範囲の持続時間を有することを特徴とする、実施形態1又は2に記載の方法。
【0165】
実施形態14
前記バーストが、約10kHz~約650kHzの範囲の繰り返し数を有することを特徴とする、実施形態1、2、又は13に記載の方法。
【0166】
実施形態15
(i)前記レーザビーム焦線が、約0.1μm~約10μmの範囲の平均スポット径を有すること、及び/又は、(ii)前記誘起吸収が、前記ワークピース内に最大で約100μm以下の深さの表面下損傷を生成することを特徴とする、実施形態1~14のいずれかに記載の方法。
【0167】
実施形態16
前記ワークピース内に前記第1又は第2の輪郭に沿って前記複数の欠陥線をレーザ形成する工程をさらに含み、該複数の欠陥線をレーザ形成する工程が、前記それぞれの輪郭によって画成された表面に沿って前記ワークピースの分離をもたらし、分離された表面を形成し、該分離された表面が、(i)約0.5μm以下のRa表面粗さを有するか、あるいは、(ii)3μm未満の平均直径を有する表面粒子を含むことを特徴とする、実施形態1~15のいずれかに記載の方法。
【0168】
実施形態17
前記ワークピースが、約0.01mm~約7mmの範囲の厚さを有することを特徴とする、実施形態1~16のいずれかに記載の方法。
【0169】
実施形態18
実施形態1~17のいずれかに記載の方法によって調製されたガラス物品。
【0170】
実施形態19
少なくとも250μmにわたり延在する複数の欠陥線を有する少なくとも1つのエッジを含む、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス複合材料を含み、前記欠陥線の各々が、約1μm以下の直径を有し、5μm~15μmの距離だけ分離されている、ガラス物品。
【0171】
実施形態20
前記少なくとも1つのエッジが、最大で約100μm以下の深さの表面下損傷を有することを特徴とする、実施形態19に記載のガラス物品。
【0172】
実施形態21
前記少なくとも1つのエッジが約0.5μm以下のRa表面粗さを有することを特徴とする、実施形態19又は20に記載のガラス物品。
【0173】
実施形態22
0.01mm~約7mmの厚さを有することを特徴とする、実施形態19、20、又は21に記載のガラス物品。
【0174】
実施形態23
所定の幾何学形状を有するガラス物品であって、該ガラス物品が、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラスを含み、かつ、少なくとも250μmにわたり延在する複数の欠陥線を有する少なくとも1つのエッジを有し、前記欠陥線の各々が、約1μm以下の直径を有し、5μm~15μmの距離だけ分離されている、ガラス物品。
【0175】
実施形態24
前記所定の幾何学形状が、内部孔を有する円形であることを特徴とする、実施形態23に記載のガラス物品。
【0176】
実施形態25
前記内部孔が円形であることを特徴とする、実施形態24に記載のガラス物品。
【0177】
実施形態26
前記少なくとも1つのエッジが、最大で約100μm以下の深さの表面下損傷を有することを特徴とする、実施形態23に記載のガラス物品。
【0178】
実施形態27
前記少なくとも1つのエッジが約0.5μm以下のRa表面粗さを有することを特徴とする、実施形態23に記載のガラス物品。
【0179】
実施形態28
0.01mm~約7mmの厚さを有することを特徴とする、実施形態23に記載のガラス物品。
【0180】
実施形態29
前記ガラスが、約1.0~1.6の範囲の(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3、T(ann)>785℃、密度<2.7g/cm3、T(200P)<1750℃、T(35kP)<1340℃、ヤング率>81GPaを含むことを特徴とする、実施形態23に記載のガラス物品。
【0181】
実施形態30
前記ガラスが、酸化物基準のモルパーセント表示で、SiO2 60~80、Al2O3 5~20、B2O3 0~10、MgO 0~20、CaO 0~20、SrO 0~20、BaO 0~20、及びZnO 0~20をさらに含むことを特徴とする、実施形態29に記載のガラス物品。
【0182】
実施形態31
前記ガラスが、約1.0~1.6の範囲の(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3、T(ann)>785℃、密度<2.7g/cm3、T(200P)<1750℃、T(35kP)>1270℃、ヤング率>81GPaを含むことを特徴とする、実施形態23に記載のガラス物品。
【0183】
実施形態32
前記ガラスが、酸化物基準のモルパーセント表示で、SiO2 60~80、Al2O3 5~20、B2O3 0~10、MgO 0~20、CaO 0~20、SrO 0~20、BaO 0~20、及びZnO 0~20をさらに含むことを特徴とする、実施形態31に記載のガラス物品。
【0184】
実施形態33
実施形態18~32のいずれかに記載のガラス物品を含むメモリディスク。
【符号の説明】
【0185】
1 基板
1a,1b 基板表面
2 レーザビーム
2a ビーム束
2b 焦線
2c 誘起吸収の広域セクション
6 光学アセンブリ
9 アキシコンの頂点
10 アキシコン
11 平凸レンズ/集束レンズ
12 コリメーティングレンズ
110 断層線
120 欠陥線
130 材料又はワークピース
140 超短パルス化レーザ
710 集束しないレーザビーム
720 基板/材料
730 球面レンズ
740 焦点
750 アキシコンレンズ
760 シリンダ
1162 ドロータワー
1164 ガラスシート
1165 ドローの動き
1166 ガラスビード
1168 スコア線
1168’ レーザ切断線
1170 シート
1170’ 切断ガラスシート/ガラス板
1172 廃ガラス/ドロー領域の底部
1671a,1671b,1671c 加熱炉
1674 レーザビーム
1680 熱源
1682 垂直移動
1771 多段加熱炉
1771a,1771b,1771c 冷却段階