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特許7292041冷媒漏れ検出システム、ヒートポンプシステム、及び冷媒漏れ報知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】冷媒漏れ検出システム、ヒートポンプシステム、及び冷媒漏れ報知システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
F25B49/02 520M
F25B49/02 570Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019007260
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020118310
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 啓司
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-146375(JP,A)
【文献】特表2007-511645(JP,A)
【文献】特開平10-185741(JP,A)
【文献】特開2018-091795(JP,A)
【文献】特開2008-260545(JP,A)
【文献】特開2018-173259(JP,A)
【文献】特開2018-124009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F24F 11/36
G01M 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配管、第2配管、及び第1配管と第2配管をつなぎ合わせる接続部を備えるヒートポンプにおける前記接続部の周辺部からの冷媒漏れを検出する冷媒漏れ検出システムであって、
前記周辺部の少なくとも一部を覆うように配置され、前記周辺部から冷媒及び油が漏れた際に状態が変化する状態変化部と、
前記状態変化部の前記状態を特定する状態特定部と、
を備え、
前記状態変化部は、受光した光の光量に基づいて抵抗値が変化する光導電体で構成されるフィルムにおいて前記周辺部の少なくとも一部を覆っている周辺部側の面であり、
前記状態特定部は、前記抵抗値を特定する抵抗特定部を含む、冷媒漏れ検出システム。
【請求項2】
前記抵抗値が所定値以上となったときに冷媒漏れを判定する漏出判定部を備える、請求項1に記載の冷媒漏れ検出システム。
【請求項3】
前記抵抗値に基づいて前記冷媒の漏出量を推定する漏出量推定部を備える、請求項1又は2に記載の冷媒漏れ検出システム。
【請求項4】
第1配管、第2配管、及び第1配管と第2配管をつなぎ合わせる接続部を備えるヒートポンプにおける前記接続部の周辺部からの冷媒漏れを検出する冷媒漏れ検出システムであって、
前記周辺部の少なくとも一部を覆うように配置され、前記周辺部から冷媒及び油が漏れた際に状態が変化する状態変化部と、
前記状態変化部の前記状態を特定する状態特定部と、
を備え、
前記状態変化部が、受光素子の受光面であり、
前記状態特定部が、前記受光素子で生成された電流を検出する電流検出部である、冷媒漏れ検出システム。
【請求項5】
第1配管、第2配管、及び第1配管と第2配管をつなぎ合わせる接続部を備えるヒートポンプにおける前記接続部の周辺部からの冷媒漏れを検出する冷媒漏れ検出システムであって、
前記周辺部の少なくとも一部を覆うように配置され、前記周辺部から冷媒及び油が漏れた際に状態が変化する状態変化部と、
前記状態変化部の前記状態を特定する状態特定部と
記状態変化部の少なくとも一部に光を照射する光源と、を備え
前記光源は、前記状態変化部の少なくとも一部に光を照射できる箇所に固定され、
前記状態変化部は、光電導体、受光素子の発光面、前記油の付着があると汚れる布、又は前記油の付着があると汚れる紙である、冷媒漏れ検出システム。
【請求項6】
前記光源の点灯と消灯を操作する操作部を備える、請求項5に記載の冷媒漏れ検出システム。
【請求項7】
前記冷媒漏れの箇所を特定可能な情報を報知する報知部を備える、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の冷媒漏れ検出システム。
【請求項8】
環状通路内に充填された冷媒と、前記冷媒を前記環状通路内を流動させる圧縮機と、前記冷媒を液化させて熱を外部へ放出する凝縮器と、前記冷媒を膨張させて低温低圧にする膨張部と、外部から熱を吸収して前記冷媒を蒸発させる蒸発器とを備え、第1配管及び第2配管の夫々が前記環状通路の一部を画定し、更に、接続部が前記第1配管と前記第2配管をつなぎ合わせているヒートポンプと、
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の冷媒漏れ検出システムと、
を備える、ヒートポンプシステム。
【請求項9】
環状通路内に充填された冷媒と、前記冷媒を前記環状通路内を流動させる圧縮機と、前記冷媒を液化させて熱を外部へ放出する凝縮器と、前記冷媒を膨張させて低温低圧にする膨張部と、外部から熱を吸収して前記冷媒を蒸発させる蒸発器とを備え、第1配管及び第2配管の夫々が前記環状通路の一部を画定し、更に、接続部が前記第1配管と前記第2配管をつなぎ合わせているヒートポンプと、
請求項5又は6に記載の冷媒漏れ検出システムと、を備え、
前記冷媒漏れ検出システムの前記状態変化部が、前記周辺部の少なくとも一部を覆うように配置され、
前記接続部が、部屋の壁の裏側又は建物の天井裏に配置されている、ヒートポンプシステム。
【請求項10】
互いに異なる複数の請求項1乃至7に記載の冷媒漏れ検出システムと、
前記各冷媒漏れ検出システムからの情報に基づいて冷媒漏出が生じた前記接続部の周辺部を特定できる位置情報を含む漏出場所情報を1以上の表示機器に向けて出力する出力部を含む情報処理装置と、
を備える、冷媒漏れ報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒートポンプが備える配管の接続部周辺からの冷媒漏れを検出する冷媒漏れ検出システムに関する。また、本開示は、ヒートポンプに関し、更には、ヒートポンプと冷媒漏れ検出システムとを備えるヒートポンプシステムに関する。また、本開示は、複数の接続部周辺からの冷媒漏れを報知可能な冷媒漏れ報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、空気調和機等のヒートポンプは、圧縮機、凝縮器、膨張部、蒸発器、及びそれらを結ぶ配管を備え、その配管内に、非常に低い温度でも蒸発する特性を持つ冷媒が充填されている。圧縮機は、冷媒を圧縮し、高温高圧にして送り出す。凝縮器は、冷媒ガスを液化させて熱を外部へ放出する熱交換器であり、膨張部は、冷媒を膨張させて、低温低圧にする。また、蒸発器は、外部から熱を吸収して冷媒を蒸発させる熱交換器であり、冷媒は、熱を運ぶ役目をする媒体であり、圧力や温度により液体又は気体に状態を変化させ、熱の移動を行う。ヒートポンプは、加熱動作の際には、圧縮機から出た冷媒を、凝縮器で凝縮して、気体から液体に変える。この凝縮の際に、冷媒が放出した熱で加熱を実行する。他方、冷却動作の際には、膨張部から出た冷媒を、蒸発器で蒸発させ、液体から気体に変える。この蒸発の際に、冷媒が熱を吸収することで、冷却を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-037575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒートポンプからの冷媒漏れは、ヒートポンプの循環通路内に充填された冷媒圧力を測定することで検出できるが、冷媒漏れの箇所を特定するのは容易ではない。
【0005】
そこで、本開示の目的は、冷媒漏れの箇所を特定し易い冷媒漏れ検出システム、ヒートポンプ、及びヒートポンプシステムを提供することにある。また、本開示の目的は、冷媒漏れの箇所を1以上の所定の表示機器に報知させることが可能になる冷媒漏れ報知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る冷媒漏れ検出システムは、第1配管、第2配管、及び第1配管と第2配管をつなぎ合わせる接続部を備えるヒートポンプにおける前記接続部の周辺部からの冷媒漏れを検出する冷媒漏れ検出システムであって、前記周辺部の少なくとも一部を覆うように配置され、前記周辺部から冷媒及び油が漏れた際に変化する状態変化部と、前記状態変化部の前記状態を特定する状態特定部と、を備える。
【0007】
本開示によれば、状態特定部で所定の状態変化を起こした状態変化部を特定するだけで、冷媒漏れを起こした接続部の周辺部を特定でき、冷媒漏れを止めることができる。
【0008】
また、前記状態変化部は、受光した光の光量に基づいて抵抗値が変化する光導電体で構成されるフィルムにおいて前記周辺部の少なくとも一部を覆っている周辺部側の面であり、前記状態特定部は、前記抵抗値を特定する抵抗特定部を含んでもよい。
【0009】
本構成によれば、状態変化部が光導電体で構成されるフィルムの一部を含むが、冷媒漏れが生じると、冷媒は圧縮機の潤滑油(以下、単に油という)と共に外部に漏出するので、フィルムの一部が油漏れに基づいて黒ずむ。したがって、フィルムが受光しにくくなり、フィルムの抵抗値が変化する。よって、抵抗特定部でフィルムの抵抗値を特定するだけで客観的に冷媒漏れを検出でき、冷媒漏れの箇所を正確かつ格段に容易に特定できる。
【0010】
また、前記抵抗値が所定値以上となったときに冷媒漏れを判定する漏出判定部を備えてもよい。
【0011】
本構成によれば、冷媒漏れと無関係な状態変化部の黒ずみと、冷媒漏れに起因する光導電体の黒ずみとを客観的に区別し易く、冷媒漏れの誤検出を防止し易い。
【0012】
また、前記抵抗値に基づいて前記冷媒の漏出量を推定する漏出量推定部を備えてもよい。
【0013】
冷媒の漏出量は、フィルムの黒ずみの度合いと相関関係を示し易く、それに起因して、フィルムの抵抗値とも相関関係を示し易い。本構成によれば、漏出量推定部が、フィルムの抵抗値に基づいて冷媒の漏出量を推定する。したがって、冷媒の漏出量の推定を実行できる。
【0014】
また、前記状態変化部の少なくとも一部に光を照射する光源を備えてもよい。
【0015】
オフィスビル等に設置された業務用の空調設備の場合、配管の接続部が、光が当たらない建物の天井裏や壁の裏側に設置されている場合が多い。しかしながら、本構成によれば、光源から出射された光で状態変化部の少なくとも一部に光を照射することができる。したがって、状態変化部を構成する光導電体の一部に光を照射することができ、当該光導電体の一部の抵抗値変化を検出できる。又は、例えば、状態変化部は、受光素子の受光面でもよく、状態特定部が、受光素子で生成された電流を検出する電流検出部でもよい。又は、例えば、状態変化部は、油の付着によって汚れが目立つ白色系の布や厚紙等でもよく、状態特定部が、その汚れを撮影する撮影装置(カメラ)でもよい。これらの場合でも、状態変化部の少なくとも一部に光を照射することで、状態変化部の変化を特定できる。よって、作業員が立ち入りにくくて保守点検に困難を極める建物の天井裏や壁の裏側の冷媒漏れを、それらの場所に立ち入らなくても客観的かつ正確に確認でき、保守点検の労力を大幅に軽減できる。
【0016】
また、前記光源の点灯と消灯を操作する操作部を備えてもよい。
【0017】
本構成によれば、冷媒漏れの確認を行うときだけ光源を点灯させることが可能になる。したがって、光源の点灯に基づく電気代を節約でき、光源の劣化も抑制できる。
【0018】
また、前記冷媒漏れの箇所を特定可能な情報を報知する報知部を備えてもよい。
【0019】
本構成によれば、ビルの管理人等が報知部による報知で冷媒漏れの箇所を自動的かつ容易に知ることができる。よって、例えば、当該管理人等が、メンテナンス会社等にヒートポンプからの冷媒漏れを迅速に連絡することができる。
【0020】
また、本開示のヒートポンプは、環状通路内に充填された冷媒と、前記冷媒を、前記環状通路内を流動させる圧縮機と、前記冷媒を液化させて熱を外部へ放出する凝縮器と、前記冷媒を膨張させて、低温低圧にする膨張部と、外部から熱を吸収して前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、互いに前記環状通路の一部を画定する2つの配管をつなぎ合わせる接続部の周辺部に配置され、前記周辺部から冷媒及び油が漏れた際に状態が変化する状態変化部を含む漏出判定部材と、を備え、前記状態変化部が、外部から視認可能になっている。
【0021】
本開示によれば、人が状態変化部の状態変化を確認することができる。したがって、人が漏出判定部材が配置されている箇所からの冷媒漏れの有無を容易に判定できる。
【0022】
また、本開示のヒートポンプシステムは、環状通路内に充填された冷媒と、前記冷媒を前記環状通路内を流動させる圧縮機と、前記冷媒を液化させて熱を外部へ放出する凝縮器と、前記冷媒を膨張させて低温低圧にする膨張部と、外部から熱を吸収して前記冷媒を蒸発させる蒸発器とを備え、第1配管及び第2配管の夫々が前記環状通路の一部を画定し、更に、接続部が前記第1配管と前記第2配管をつなぎ合わせているヒートポンプと、本開示の冷媒漏れ検出システムと、を備える。
【0023】
本開示によれば、冷媒漏れの箇所を特定し易い。
【0024】
また、ヒートポンプシステムは、前記状態変化部の少なくとも一部に光を照射する光源を備え、前記接続部が、部屋の壁の裏側又は建物の天井裏に配置されてもよい。
【0025】
本構成によれば、冷媒の漏出の確認が困難な箇所でも、その困難な箇所における冷媒の漏出を直接確めることなく冷媒の漏出を特定できる。よって、メンテナンス作業の労力を格段に軽減できる。
【0026】
また、本開示に係る冷媒漏れ報知システムは、互いに異なる複数の本開示の冷媒漏れ検出システムと、前記各冷媒漏れ検出システムからの情報に基づいて冷媒漏出が生じた前記接続部の周辺部を特定できる位置情報を含む漏出場所情報を1以上の表示機器に向けて出力する出力部を含む情報処理装置と、を備える。
【0027】
本開示によれば、冷媒漏出が生じた接続部の周辺部を特定できる位置情報を1以上の表示機器に自動的に送信できる。したがって、例えば、1以上の保守作業員が携帯している表示機器(スマートホンや、メンテナンスコンピュータ等)に当該位置情報を自動的に送信できるので、冷媒の漏出により迅速に対処できる。
【発明の効果】
【0028】
本開示の冷媒漏れ検出システム等によれば、冷媒漏れの箇所を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示の第1実施形態に係るヒートポンプシステムを構成する空調システムの概略構成図である。
図2】接続部の一例としてのフレア式継手の模式断面図である。
図3】展開した状態の第1検出センサの平面図である。
図4】継手の周辺部に設置された第1検出センサを側方から見たときの模式図である。
図5図4のA-A線模式断面図であり、継手の周辺部に設置された第1検出センサを、継手の延在方向に垂直でかつ光源を通過する平面で切断したときの模式断面図である。
図6】情報管理装置の主要構成を示すブロック図である。
図7】第1検出センサを用いた冷媒漏出の有無の判定手順を説明するフローチャートである。
図8】第2検出センサを用いた冷媒漏出の有無の判定手順を説明するフローチャートである。
図9】継手以外の接続部を説明する模式断面図である。
図10】本開示の一実施形態の冷媒漏れ報知システムの概略構成図である。
図11】表示機器に冷媒漏れを起こした接続部に関する情報を表示させる際に、情報管理装置の制御部が実行可能な制御の一例を示すフローチャートである。
図12】表示機器に冷媒漏れを起こした接続部に関する情報を表示させる際に、施設管理用情報処理装置の制御部が実行可能な制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係るヒートポンプシステムを構成する空調システム1の概略構成図である。なお、本実施例では、説明を簡単にするために室内機が2台の場合について説明するが、室内機は、空調設備の規模に応じた台数設置されればよい。また、以下では、第1及び第2室内機16A,16Bの冷房機能を使用する際の冷媒の流れを例に説明し、液体主配管18が冷媒の流れの上流側となり、気体主配管28が冷媒の流れの下流側となる場合を例に説明を行う。空調システム1は、施設、例えば、デパート、ホテル、ビル、又は老人ホーム等に設置される。空調システム1は、ヒートポンプの一例としての空調設備10、及び冷媒漏れ検出システム(以下、単に、検出システムという)30を備える。
【0032】
空調設備10は、業務用の空調設備であり、室外機14、第1室内機16A、第2室内機16B、循環配管15、第1バルブV1、第2バルブV2、及び冷媒ポート38を備える。また、循環配管15は、室外機14と第1及び第2室内機16A,16Bとを繋ぎ、液体主配管18、液体第1分岐配管20、液体第2分岐配管22、気体第1分岐配管24、気体第2分岐配管26、及び気体主配管28を含む。液体主配管18、液体第1分岐配管20、及び液体第2分岐配管22には、液体状態の冷媒が流れ、気体第1分岐配管24、気体第2分岐配管26、及び気体主配管28には、気体状態の冷媒が流れる。
【0033】
室外機14は、室外に設置され、第1室内機16A,第2室内機16Bによって熱交換された冷媒に対して外気との熱交換を行う。室外機14は、冷媒を圧縮する圧縮機37と、冷媒を減圧させる膨張部としてのキャピラリチューブ34を含む。また、第1及び第2室内機16A,16Bは、例えば互いに異なる部屋内に配置され、冷媒と室内空気との熱交換を行うことで室内の温度調整を行う。
【0034】
液体配管及び気体配管の夫々は、分岐構造となっており、主配管から各室内機への分岐配管に別れる構造となっている。室外機14に接続された液体主配管18は、液体第1分岐配管20及び液体第2分岐配管22に分岐される。液体第1分岐配管20は第1室内機16Aに接続され、液体第2分岐配管22は第2室内機16Bに接続される。
【0035】
より詳しくは、液体主配管18の下流端部に分岐管40が接続され、この分岐管40に液体第1分岐配管20及び液体第2分岐配管22の上流端部が接続される。また、液体第1分岐配管20及び液体第2分岐配管22の夫々の下流端部は、接続部39a,39bによって第1及び第2室内機16A,16Bに接続される。
【0036】
また、第1室内機16Aには気体第1分岐配管24が接続され、第2室内機16Bには気体第2分岐配管26が接続される。気体第1分岐配管24及び気体第2分岐配管26は、分岐管42を介して気体主配管28に合流し、気体主配管28は、室外機14に接続される。より詳しくは、気体第1分岐配管24及び気体第2分岐配管26の夫々の上流端部は、接続部41a,41bによって第1及び第2室内機16A,16Bに接続され、気体第1分岐配管24及び気体第2分岐配管26の下流端部は、分岐管42に接続される。また、分岐管42には、気体主配管28の上流端部が接続される。液体主配管18及び気体主配管28は、接続部43,45によって室外機14に接続される。複数の接続部39a,39b,41a,41b,43,45の夫々は、例えば、継手、及びろう付け部のうちの少なくとも一方を含む。
【0037】
第1バルブV1は、液体第1分岐配管20及び気体第1分岐配管24の少なくとも一方に設けられる。図1に示す例では、液体第1分岐配管20に第1バルブV1が設けられる。また、第2バルブV2は、液体第2分岐配管22及び気体第2分岐配管26の少なくとも一方に設けられる。図1に示す例では、液体第2分岐配管22に第2バルブV2が設けられる。第1バルブV1及び第2バルブV2の夫々は、第1及び第2室内機16A,16Bへの冷媒供給量(流量)を制御するために設けられる。第1バルブV1及び第2バルブV2は、例えば電磁弁で構成される。
【0038】
冷媒ポート38は、例えば、液体主配管18に接続される。冷媒ポート38は、冷媒の充填ポートや冷媒の回収ポートとして使用される。冷媒ポート38は、チェックジョイントとも呼ばれ、例えば、細管とその端部に設けられたバルブ手段を含む。冷媒ポート38は、例えばろう付け等によって液体主配管18に組み付けられる。冷媒ポート38の細管は、その組み付けで液体主配管18に連通する。なお、冷媒ポート38に加えて、別の冷媒ポートが気体主配管28に接続されてもよく、又は、冷媒ポート38の代わりに、別の冷媒ポートが気体主配管28に接続されてもよい。
【0039】
第1及び第2室内機16A,16Bの夫々は、蒸発器19A,19Bを含み、室外機14は、凝縮器17を含む。なお、空調設備10は業務用のものであるので、上述した配管の大部分は施設の壁や天井に隠される。したがって部屋から配管の大部分を視認することは困難であり、当然のことながら、その配管の大部分において冷媒漏れを起こしている箇所を目視で検出することは容易ではない。
【0040】
以上の構成において、液配管から供給された冷媒は、第1室内機16A,第2室内機16Bにて熱交換されて気体となって気体配管に排出される。この際、第1室内機16A,第2室内機16Bが配置された各室から気化熱が奪われ、それらの室が冷却される。気体配管から供給された冷媒は、室外機14にて熱交換されて液体に戻り、再び液配管に送られる。
【0041】
次に、検出システム30について説明する。検出システム30は、複数の第1冷媒漏れ検出センサ(以下、単に第1検出センサ)と、複数の第2冷媒漏れ検出センサ(以下、単に第2検出センサ)と、1つの基準センサと、1以上の情報管理装置60を含む。複数の第1検出センサ、複数の第2検出センサ、及び1つの基準センサは、空調設備10に設置される。
【0042】
詳しくは、空調設備10は、冷媒を循環させる環状通路11(図1参照)の少なくとも一部を画定する複数の通路を含み、また、上述のように各隣り合う2つの通路を繋ぎ合わせる接続部39a,39b,41a,41b,43,45を含む。図2は、接続部の一例としてのフレア式継手80の模式断面図である。図2に示すように、フレア式継手(以下、単に継手という)80は、環状のユニオン管継手部81と環状のフレアナット82を含む。例えば、ユニオン管継手部81は、一方側配管83の一方側端部にろう付けで固定され、フレアナット82は、他方側配管84の他方側端部にろう付けで固定される。一方側配管83は、第1配管を構成し、他方側配管84は、第2配管を構成する。ユニオン管継手部81は、雄ねじ部81aを有する外周面を有し、フレアナット82は、雌ねじ部82aを有する内周面を有する。フレアナット82の雌ねじ部82aをユニオン管継手部81の雄ねじ部81aに螺合することで、一方側配管83が他方側配管84に連結され、冷媒が一方側配管83から他方側配管84へ流動可能となる。
【0043】
第1検出センサは、空調設備10において光が到達しにくい壁裏や天井裏の暗闇に設置された接続部の周辺に設置され、第2検出センサは、空調設備10において太陽からの光が届き易い位置に設置された接続部の周辺に設置される。また、基準センサは、第2検出センサと同一の構造を有し、空調設備10において太陽からの光が届き易い位置に設置されると共に冷媒が漏れることがない接続部以外の配管の外周面に設置される。
【0044】
以下では、先ず、第1検出センサを、接続部の一例としての継手80に設置する場合を例に、各種検出センサの構造及び設置方法を詳細に説明する。図3は、展開した状態の第1検出センサ50の平面図である。図3に示すように、第1検出センサ50は、光導電体(photoconductor)で構成される矩形のフィルム51、光源の一例としての小型のLEDチップ52、一対の第1導線53、及び一対の第2導線56を含む。一対の第1導線53は、フィルム51の第1箇所54と第2箇所55との間に直流を流すために用いられ、一対の第2導線56は、LEDチップ52に直流電力を供給するために用いられる。
【0045】
フィルム51を構成する光導電体としては、例えば、硫化カドミウム(CdS)セルを好適に使用できる。硫化カドミウムは、当たる光の量に従って抵抗値が変化し、当たる光が多ければ抵抗値は低くなる。硫化カドミウムセルの抵抗値は、例えば、明るい時に600Ω程度の値である一方、暗い時には1~2MΩ程度まで急激に上昇する。したがって、硫化カドミウムセルの抵抗値を測定することで、硫化カドミウムセルに当たっている光の光量を特定できる。
【0046】
図3に示すように、LEDチップ52は、フィルム51の長手方向の一端部における幅方向の中央部に接着剤等で固定されて設置される。また、LEDチップ52は、長手方向の他方側に光を出射し、当該光の光軸Lは、長手方向に略平行な状態となっている。また、一対の第1導線53の一方53aは、フィルム51におけるLEDチップ52の近傍の第1箇所54に半田等で電気的に接合され、一対の第1導線53の他方53bは、第1箇所54に長手方向に対向する第2箇所55に半田等で電気的に接合される。一対の第1導線53と一対の第2導線56の夫々は、例えば、同一のケーブルカバー57内に収容されて損傷が抑制された状態で後述する情報管理装置まで延び、情報管理装置の所定の端子に電気的に接続される。
【0047】
図4は、継手80の周辺部に設置された第1検出センサ50を側方から見たときの模式図である。また、図5は、図4のA-A線模式断面図であり、継手80の周辺部に設置された第1検出センサ50を、継手80の延在方向に垂直でかつLEDチップ52を通過する平面で切断したときの模式断面図である。なお、図5においては、第1及び第2導線53,56の図示を省略している。
【0048】
図4に示すように、フィルム51は、一方側配管83と継手80の接続部86から他方側配管84と継手80の接続部87までの長さ範囲の領域(以下、この領域を継手包含領域という)88を全て覆うように設置される。継手包含領域88は、接続部の周辺部の一例である。また、図5に示すように、フィルム51は、継手包含領域88の周方向の全領域を覆うように配置されると好ましい。
【0049】
より詳しくは、フィルム51は、継手80を周方向の全域に亘って囲むと共に、幅方向(フィルム51の幅方向)の一端部と他端部が重なるように筒状にされた後、重なり部分が接着剤等で固着される。そして、その後、フィルム51においてLEDチップ52から最も離れた周方向の一部領域89の周辺部を、フィルム51の長手方向の一部又は全域に亘って絶縁性を有する両面テープ等で継手80の外周面の一部に固定する。このようにして、フィルム51を、継手包含領域に固定する。なお、筒状に構成されたフィルム51において継手80に対する固定部を含む一部領域89の周辺部の内側面を絶縁材料でコーティングすると、フィルム51と継手80が電気的に接続されることを確実に防止できて好ましい。また、両面テープの代わりに、又は両面テープに加えて、絶縁性を有する接着剤等の固着手段を用いてフィルム51を継手包含領域88に固定してもよい。
【0050】
筒形状とされたフィルム51の内径は、継手80の最大外径よりも大きくなっている。また、上述のように、フィルム51においてLEDチップ52から周方向に最も離れた個所が、継手包含領域88に固定される。その結果、図5に示すように、LEDチップ52は、継手包含領域88の外周面に間隔をおいて径方向に対向し、フィルム51の一部と、継手包含領域88の外周面の一部とが、長手方向に延在するスペース92を画定する。フィルム51の一部における継手包含領域88側の面91は、状態変化部58を構成する。なお、フィルムの一部と、継手包含領域の外周面の一部とが、長手方向に延在するスペースを画定していることが重要であり、フィルムは、重なり代がない非環状で略筒状の状態で継手80の周辺部に設置されてもよい。
【0051】
詳述しないが、第2検出センサは、LEDチップ52等の光源及び第2導線56が存在しない点だけが第1検出センサ50と異なる。第2検出センサも、第1検出センサ50と同様にフィルムの大部分(一部)と、継手包含領域の外周面の一部とが、長手方向に延在するスペースを画定するように継手等の接続部の周辺に設置される。第2検出センサにおいても、第1箇所と第2箇所は、第1検出センサと同様にフィルムの接続部側の内面においてスペースに面する位置に存在する。また、基準センサにおいても、第1箇所と第2箇所は、第1検出センサと同様にフィルムの配管側の内面においてスペースに面する位置に存在する。なお、第2検出センサ及び基準センサでも、フィルムは、配管に対して電気的に絶縁され、配管に対して電気的に接続していない。
【0052】
次に、情報管理装置について説明する。情報管理装置は、例えば、ワークステーションやサーバ等で構成される。情報管理装置は、例えば、ビル等の施設の情報管理室に設置され、それが管理する複数の設備に設置された各種センサや各種機器からの信号を受け、各設備の異常の有無等を判断する。ここで、複数の設備には、空調設備10が含まれるが、それに加えて、他の1以上の空調設備、1以上のエスカレーター、1以上のエレベーター、及び1以上の照明装置のうちの少なくとも一つが含まれてもよい。
【0053】
図6は、情報管理装置60の主要構成を示すブロック図である。図6に示すように、情報管理装置60は、状態特定部の一例としての制御部61、記憶部62、受信部63、送信部(出力部)64、操作部65、及び報知部の一例としての表示部66を有する。
【0054】
本実施例では、受信部63は、第1検出センサ50の第1及び第2導線53,56が接続される端子と、第2検出センサの第1導線が接続される端子と、基準センサの第1導線が接続される端子と、を含む。なお、受信部63は、第1検出センサ50及び第2検出センサからの信号を、無線を用いて受信する場合には、アンテナ等で構成されてもよい。また、施設が複数の空調設備10を備える場合、受信部63が、複数の空調設備10の夫々において、各空調設備10に設置された1以上の第1検出センサ50、1以上の第2検出センサ、及び基準センサの夫々から信号を受信することは言うまでもない。また、受信部63は、検出システム30からの信号のみならず、それ以外の設備が内蔵するセンサ、例えば、エレベーター、エスカレーター、又は照明装置等が内蔵する各種センサからの信号を受信してもよい。
【0055】
操作部65は、第1検出センサ50に関してLEDチップ52の点灯又は消灯を選択する第1操作部を含み、また、第1検出センサ50に関して一対の第1導線53間に所定電圧を印加する状態と印加しない状態を選択する第2操作部を含む。また、操作部65は、第2検出センサに関して一対の第1導線間に所定電圧を印加する状態と印加しない状態を選択する第3操作部を含む。なお、第1操作部で点灯が選択された場合に、自動的に一対の第1導線53間に所定電圧を印加する一方、第1操作部で消灯が選択された場合に、自動的に一対の第1導線53間に所定電圧を印加しないようにしてもよく、第2操作部が存在しなくてもよい。
【0056】
記憶部62は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成される。不揮発性メモリは、制御プログラムや所定の閾値等を予め記憶する。また、揮発性メモリは、制御部61が読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する。記憶部62には、一定の第1閾値が予め記憶されている。また、記憶部62には、第2検出センサ毎に、第2閾値決定マップが記憶されている。この第2閾値決定マップでは、変動する基準センサの各抵抗値と、その各抵抗値に一対一に対応する第2閾値とが互いに紐付けられた状態となっている。
【0057】
また、記憶部62には、第1検出センサ50に関し、第1冷媒漏出量決定マップが記憶されている。この第1冷媒漏出量決定マップでは、第1閾値以上の各実測抵抗値に関して、実測抵抗値と、各実測抵抗値に一対一に対応する冷媒の漏出量とが互いに紐づけられた状態となっている。
【0058】
また、記憶部62には、各第2検出センサに関し、第2冷媒漏出量決定マップが記憶されている。この第2冷媒漏出量決定マップでは、基準センサの抵抗値、その抵抗値に一対一に対応する第2閾値以上の実測抵抗値、及び実測抵抗値に一対一に対応する冷媒の漏出量が互いに紐づけられた状態となっている。また、記憶部62には、第1乃至第3操作部が操作されたときに制御部61が実行するプログラムも記憶されている。
【0059】
制御部61は、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成され、CPU(Central Processing Unit)を含む。制御部61は、記憶部62に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行したり、記憶部62に予め記憶された閾値を参照したりする。制御部61は、抵抗特定部の一例としての抵抗算出部61a、漏出判定部61b、及び漏出量推定部61cを含む。
【0060】
抵抗算出部61aは、第1操作部による操作で点灯制御された第1検出センサ50に関して、第2操作部による操作で第1箇所54と第2箇所55の間に所定電圧が印加された場合に、情報管理装置60で検出された電流に基づいて第1箇所54と第2箇所55の間の抵抗値を算出する。また、第3操作部による操作で第1箇所と第2箇所の間に所定電圧が印加された第2検出センサに関して、情報管理装置60で検出された電流に基づいて当該第1箇所と第2箇所の間の抵抗値を算出する。また、第3操作部による操作で少なくとも一つの第2検出センサに関して第1箇所と第2箇所の間に所定電圧が印加された場合、基準センサの第1箇所と第2箇所の間に所定電圧を印加し、情報管理装置60で検出された電流に基づいて基準センサの第1箇所と第2箇所の間の抵抗値を算出する。
【0061】
漏出判定部61bは、第1検出センサ50が設置された接続部周辺の冷媒漏れの有無を次のように判定する。詳しくは、抵抗算出部61aが算出した算出抵抗値を、記憶部62に予め記憶された一定の第1閾値と比較し、第1検出センサ50の算出抵抗値が第1閾値以上になっている場合に、その第1検出センサ50が設置された接続部周辺で冷媒漏れが発生していると判定する。
【0062】
第1閾値は、汚れがない綺麗なフィルム51に関して実測される抵抗値から所定の抵抗値だけ高い値に設定されてもよい。空調設備10の配管内には、冷媒と共に圧縮機を潤滑する潤滑油(以下、単に油という)が封印されている。したがって、冷媒が漏出した場合、油が冷媒と共に漏出することになり、フィルム51における接続部側の面が漏出した油で汚れて黒ずんでいく。よって、冷媒が漏れている接続部におけるフィルム51は黒ずんでいるため、光が届きにくくなり、その結果、実測される抵抗値が綺麗な場合に実測される抵抗値よりも高くなる。よって、抵抗算出部61aが算出した算出抵抗値を、記憶部62に予め記憶された一定の第1閾値と比較することで、その第1検出センサ50が設置された接続部周辺での冷媒漏れの有無を客観的かつ正確に判定でき、状態変化部58の状態を客観的に特定できる。
【0063】
表示部66は、液晶パネルや有機ELパネル等で構成される。表示部66は、制御部61による制御で、選択された接続部における冷媒の漏出の有無や、冷媒の漏出を起こした接続部を特定できる位置情報や、漏出を起こした接続部で漏出した冷媒の量等を表示する。
【0064】
次に、漏出判定部61bによる第2検出センサが設置された接続部周辺の冷媒漏れの有無の判定手法について説明する。この場合には、抵抗算出部61aが算出した第2検出センサの算出抵抗値を、抵抗算出部61aが算出した基準センサの算出抵抗値に基づいて上記第2閾値決定マップから決定される第2閾値と比較する。そして、第2検出センサの算出抵抗値が第2閾値以上になっている場合に、その第2検出センサが設置された接続部周辺で冷媒漏れが発生していると判定する。太陽から第2検出センサに届く光は、天候や季節によって異なる。また、太陽から第2検出センサに届く光の光量は、第2検出センサの設置場所、すなわち、太陽からの光の当たり易さによっても左右される。また、基準センサは、冷媒漏れがない箇所に設置されているので、冷媒漏れに基づく黒ずみが発生することもない。よって、複数の第2検出センサの夫々に関して、上述の第2閾値決定マップを第2検出センサの設置位置に基づいて他の第2検出センサと独立かつ適切に決定することで、天候、季節、及び第2センサの設置場所に因らず、第2検出センサが設置された接続部周辺での冷媒漏れの有無を客観的かつ正確に判定できる。
【0065】
なお、記憶部62には、複数の第2閾値決定マップや複数の第2冷媒漏出量決定マップが記憶され、複数の第2閾値決定マップや複数の第2冷媒漏出量決定マップの中から、第2検出センサの設置位置や基準センサの実測抵抗値に基づいて、適切な第2閾値決定マップや第2冷媒漏出量決定マップを選択する必要がある。これに対し、第1検出センサ50では、全ての第1検出センサ50が、同一の構造を有し、いずれの第1検出センサ50も基本的に暗闇に設置されている。したがって、全ての第1検出センサ50でLEDチップ52から出射される光の光量、すなわち、フィルム51に照射される光の光量が、基本的に同一となる。よって、全ての第1検出センサ50で、同一の第1閾値や、同一の第1冷媒漏出量決定マップを使用することができる。
【0066】
漏出量推定部61cは、第1検出センサ50が設置された接続部の周辺部から冷媒が漏れていると判定された場合に、第1検出センサ50に関して実測された抵抗値と、第1冷媒漏出量決定マップとに基づいて漏れた冷媒量を推定する。漏れた冷媒量と、フィルムの黒ずみの度合は、相関関係があり、また、フィルムの黒ずみの度合と、実測される抵抗値も、相関関係がある。その結果、漏れた冷媒量と、実測される抵抗値は、相関関係がある。第1冷媒漏出量決定マップは、実験室で意図的に冷媒を漏出させた試験によって決定されることができる。
【0067】
また、漏出量推定部61cは、第2検出センサが設置された接続部の周辺部から冷媒が漏れていると判定された場合に、その第2検出センサが設置されている位置、基準センサの抵抗値、及び第2検出センサに関して実測された実測抵抗値に基づいて1つの第2冷媒漏出量決定マップを決定する。そして、その決定した第2冷媒漏出量決定マップと、第2検出センサに関して実測された実測抵抗値に基づいて漏出した冷媒量を推定する。漏れた冷媒量と、フィルムの黒ずみの度合は、相関関係があり、また、フィルムの黒ずみの度合と、実測される抵抗値も、相関関係がある。また、実測される抵抗値は、天気や季節や第2検出センサの設置位置にも相関関係がある。よって、第2センサの設置位置、各第2検出センサで実測された抵抗値、及び基準センサの実測抵抗値に基づく第2冷媒漏出量決定マップを用いれば、第2検出センサが設置された接続部の周辺部から漏れた冷媒量を推定できる。
【0068】
図7は、第1検出センサ50を用いた冷媒漏出の有無の判定手順を説明するフローチャートである。なお、図7に示すフローチャートでは、上述の第2操作部が存在しない場合、すなわち、LEDチップ52の点灯と電圧の印加を同時に行い、LEDチップ52の消灯と電圧の印加の停止を同時に行う場合を例に説明を行う。
【0069】
図7を参照して、先ず、保守作業員等のユーザが、第1操作部を用いて第1検出センサ50を選択し、選択したLEDチップ52を点灯させると同時にその第1検出センサ50の第1箇所54と第2箇所55の間に所定の電圧を印加する(ステップS1)。次に、情報管理装置60が検出した第1導線53を流れる電流値と、上記所定の電圧とに基づいて、抵抗算出部61aが、抵抗を算出する(ステップS2)。その後、ステップS3で、漏出判定部61bが、記憶部62に記憶された第1閾値と、算出した抵抗値とを比較し、算出した抵抗値が、第1閾値以上か否かを判定する。ステップS3で肯定判定されて、算出した抵抗値が、第1閾値以上である場合、漏出判定部61bは、冷媒の漏出があると判定し、ステップS4に移行する。
【0070】
ステップS4では、漏出量推定部61cが、実測された抵抗値と、記憶部62に記憶された第1冷媒漏出量決定マップとに基づいて冷媒の漏れ量を推定する。そして、次のステップS5で、表示部66が、冷媒が漏れた接続部の位置を特定できる情報と、冷媒の漏れ量を表示する。なお、第1実施形態では、ユーザは自ら第1検出センサを選択しているので、第1検出センサの設置個所は選択した時点で既知となっている。よって、表示部66は、冷媒が漏れた接続部の位置を特定できる情報の表示を省略してもよい。
【0071】
ステップS5の後、第1操作部を用いて選択した第1検出センサ50のLEDチップ52を消灯させると同時にその第1検出センサ50の第1箇所54と第2箇所55の間への所定電圧の印加を終了すると(ステップS6)、冷媒漏出の有無の判定手順が完了する。
【0072】
他方、ステップS3で否定判定されると、ステップS7で、表示部66が、選択した第1検出センサ50に対応する接続部の位置を特定できる情報と、その接続部で冷媒漏れが生じていないことを表す情報を表示する。なお、ステップS7で、表示部66が選択した第1検出センサ50に対応する接続部の位置を特定できる情報を表示しなくてもよい。ステップS7の後、第1操作部を用いて選択した第1検出センサ50のLEDチップ52を消灯させると同時にその第1検出センサ50の第1箇所54と第2箇所55の間への所定電圧の印加を終了すると(ステップS6)、冷媒漏出の有無の判定手順が完了する。
【0073】
なお、第1検出センサ50への所定電圧の印加の終了は、LEDチップ52が点灯している状態で第1検出センサ50に流れる電流を測定した後の如何なるタイミングで実行されてもよく、LEDチップ52への電力の供給の終了は、第1検出センサ50に流れる電流を測定した後の如何なるタイミングで実行されてもよい。
【0074】
次に、第2検出センサを用いた冷媒漏出の有無の判定手順について説明する。図8は、その判定手順を説明するフローチャートである。
【0075】
図8を参照して、先ず、保守作業員等のユーザが、第4操作部を用いて、基準センサの第1箇所と第2箇所の間に第2所定電圧を印加して基準センサの抵抗を算出し(ステップS11)、第3操作部を用いて、選択した第2検出センサの第1箇所と第2箇所の間に第1所定電圧を印加して当該第2検出センサの抵抗を算出する(ステップS12)。ここで、第1所定電圧と第2所定電圧は、同一の値であると好ましいが、互いに異なる値でもよい。また、第4操作部が存在しなくて、第3操作部で第2検出センサに第1所定電圧が印加されると、その印加と同時に基準センサに第2所定電圧が印加されるようになっていてもよく、第2検出センサへの第1所定電圧の印加が終了すると、その印加の終了と同時に、基準センサへの第2所定電圧の印加が終了するようになっていてもよい。このように、ステップS11とステップS12は、同時に行ってもよく、又はどちらを先に行ってもよい。
【0076】
その後、選択した第2検出センサの情報(設置位置情報)に基づいて、複数の第2閾値決定マップから1の第2閾値決定マップを選択し(ステップS13)、続くステップS14で、漏出判定部61bが、第2閾値決定マップと基準センサの抵抗値の情報(日光の当たり具合の情報)とに基づいて第2閾値を決定した後、ステップS15で、第2検出センサの抵抗が第2閾値以上であるか否かを判定する。
【0077】
ステップS15で肯定判定されて、漏出判定部61bが、当該第2検出センサが設置された接続部の周辺部での冷媒漏れを判定すると、漏出量推定部61cが、冷媒の漏れ量を推定する。詳しくは、漏出量推定部61cは、先ず、ステップS16で、第2検出センサの設置位置情報と、基準センサの実測抵抗値に基づいて、複数の第2冷媒漏出量決定マップの中から、適切な第2冷媒漏出量決定マップを選択し、続く、ステップS17で、漏出量推定部61cが、選択した第2冷媒漏出量決定マップと、選択した第2検出センサで算出した抵抗値とに基づいて、冷媒漏れ量を推定する。
【0078】
その後のステップS18では、表示部66が、制御部61による制御で、冷媒の漏出が発生した接続部を特定できる位置情報と、漏出量を表示する。なお、ステップS18では、表示部66は、冷媒の漏出が発生した接続部を特定できる位置情報を表示しなくてもよい。その後、ステップS19で、ユーザが、第2検出センサへの第1所定電圧の印加を終了させると共に、基準センサへの第2所定電圧の印加を終了させると、第2検出センサを用いた冷媒漏出の有無の判定手順が終了する。
【0079】
他方、ステップS15で否定判定されると、ステップS20に移行し、表示部66が、選択した第2検出センサに対応する接続部の位置を特定できる情報と、その接続部で冷媒漏れが生じていないことを表す情報を表示する。なお、ステップS20で、表示部66が選択した第2検出センサに対応する接続部の位置を特定できる情報を表示しなくてもよい。その後、ステップS19で、ユーザが、第2検出センサへの第1所定電圧の印加を終了させると共に、基準センサへの第2所定電圧の印加を終了させると、第2検出センサを用いた冷媒漏出の有無の判定手順が終了する。
【0080】
なお、第2検出センサへの第1所定電圧の印加の終了は、第2検出センサに流れる電流を測定した後の如何なるタイミングで実行されてもよく、基準センサへの第2所定電圧の印加の終了は、基準センサに流れる電流を測定した後の如何なるタイミングで実行されてもよい。
【0081】
以上、検出システム30は、一方側配管(第1配管)83、他方側配管(第2配管)84、及び一方側配管83と他方側配管84をつなぎ合わせる継手(接続部)80を備える空調設備10における継手80の継手包含領域(周辺部)88からの冷媒漏れを検出する。また、検出システム30は、上記周辺部から冷媒及び油が漏れた際に状態が変化する状態変化部58と、状態変化部58の状態を特定する制御部(状態特定部)61を備える。
【0082】
したがって、制御部61で所定の状態変化を起こした状態変化部58を特定するだけで、冷媒漏れを起こした接続部を特定でき、冷媒漏れを止めることができる。
【0083】
また、状態変化部58は、受光した光の光量に基づいて抵抗値が変化する光導電体で構成されるフィルム51において継手包含領域88の少なくとも一部を覆っている継手包含領域88側の面91でもよく、制御部61は、上記抵抗値を特定する抵抗算出部(抵抗特定部)61aを含んでもよい。
【0084】
本構成によれば、状態変化部58が光導電体で構成されるフィルム51の一部を含むが、冷媒漏れが生じると、冷媒は圧縮機37を潤滑する油と共に外部に漏出するので、フィルム51の一部が油漏れに基づいて黒ずむ。したがって、フィルム51が受光しにくくなり、フィルム51の抵抗値が変化する。よって、抵抗算出部61aでフィルム51の抵抗値を検出するだけで客観的に冷媒漏れを検出でき、冷媒漏れの箇所を正確かつ格段に容易に特定できる。
【0085】
また、検出システム30は、該抵抗値が所定値以上となったときに冷媒漏れを判定する漏出判定部61bを備えてもよい。
【0086】
本構成によれば、冷媒漏れと無関係なフィルム51の黒ずみと、冷媒漏れに起因するフィルム51の黒ずみとを客観的に区別し易くなり、冷媒漏れの誤検出を防止し易い。
【0087】
また、検出システム30は、該抵抗値に基づいて冷媒の漏出量を推定する漏出量推定部61cを備えてもよい。
【0088】
冷媒の漏出量は、フィルム51の黒ずみの度合いと相関関係を示し易く、それに起因して、フィルム51の抵抗値とも相関関係を示し易い。本構成によれば、漏出量推定部61cが、フィルム51の抵抗値に基づいて冷媒の漏出量を推定する。したがって、冷媒の漏出量の推定が可能になる。
【0089】
また、検出システム30は、フィルム51の少なくとも一部に光を照射するLEDチップ(光源)52を備えてもよい。
【0090】
例えば、オフィスビル等に設置された業務用の空調設備の場合、配管の接続部が、光が当たらない建物の天井裏や壁の裏側に設置されている場合が多い。しかしながら、本構成によれば、LEDチップ52から出射された光でフィルム51の少なくとも一部に光を照射することができる。したがって、フィルム51に光を照射した状態で、フィルム51の抵抗を特定することができて、フィルム51の黒ずみを特定でき、その結果、フィルム51が設置された接続部の周辺部からの冷媒漏れを特定できる。よって、作業員が立ち入りにくくて保守点検に困難を極める建物の天井裏や壁の裏側の冷媒漏れを、それらの場所に立ち入らなくても客観的かつ正確に確認でき、保守点検の労力を大幅に軽減できる。
【0091】
また、検出システム30は、LEDチップ52の点灯と消灯を操作する操作部65を備えてもよい。
【0092】
本構成によれば、冷媒漏れの確認を行うときだけLEDチップ52を点灯させることが可能になる。したがって、LEDチップ52が常時点灯する場合と比較して、LEDチップ52の点灯に基づく電気代を節約でき、LEDチップ52の劣化も抑制できる。
【0093】
また、検出システム30は、冷媒漏れの箇所を特定可能な情報を報知する表示部(報知部)66を備えてもよい。
【0094】
本構成によれば、ビルの管理人等が冷媒漏れの箇所を表示部66による報知で自動的かつ容易に知ることが可能になる。よって、例えば、当該管理人等が、メンテナンス会社に空調設備10からの冷媒漏れ及びその漏出個所を迅速に連絡することができる。
【0095】
また、本開示の空調システム(ヒートポンプシステム)1は、環状通路11内に充填された冷媒と、冷媒を環状通路11内を流動させる圧縮機37と、冷媒を液化させて熱を外部へ放出する凝縮器17と、冷媒を膨張させて低温低圧にするキャピラリチューブ(膨張部)34と、外部から熱を吸収して冷媒を蒸発させる蒸発器19A,19Bとを備える。また、空調システム1では、一方側配管(第1配管)83及び他方側配管(第2配管)84の夫々が環状通路11の一部を画定し、更に、空調システム1は、接続部39a,39b,41a,41b,43,45が一方側配管83と他方側配管84をつなぎ合わせている空調設備10と、検出システム30と、を備える。
【0096】
したがって、空調システム1によれば、冷媒漏れの箇所を特定し易い。
【0097】
また、空調システム1は、フィルム51において継手包含領域88の少なくとも一部を覆っている箇所における継手包含領域88側の面91に光を照射するLEDチップ52を備えてもよい。そして、継手80が、部屋の壁の裏側又は建物の天井裏に配置されてもよい。
【0098】
本構成によれば、冷媒の漏出の確認が困難な箇所でも、その困難な箇所における冷媒の漏出を直接確かめることなく冷媒の漏出を特定できる。よって、メンテナンス作業の労力を格段に軽減できる。
【0099】
なお、第1実施形態では、第1箇所54と第2箇所55との間に所定電圧を印可して第1箇所54と第2箇所55との間に流れる電流を検出することにより第1箇所54と第2箇所55との間の抵抗を算出する場合について説明した。しかし、第1箇所と第2箇所の間に所定電流を流して第1箇所と第2箇所との間の電位差を検出することで抵抗を算出してもよい。
【0100】
また、状態変化部58が、光導電体のフィルムであり、状態特定部が、そのフィルムの抵抗値を算出する場合について説明した。しかし、状態変化部は、受光素子の受光面でもよく、状態特定部が、受光素子で生成された電流を検出する電流検出部でもよい。受光面が油で汚れると、その受光素子が、光を受光しにくくなり、その結果、受光素子が電流を生成しにくくなる。よって、この場合でも、冷媒漏れを客観的かつ正確に判定し易い。受光素子は、例えば、接続部の周辺部にスペースを有した状態で筒状又は略筒状に取り付けられたフィルムや厚紙における当該スペースに面する面に取り付けられることができる。
【0101】
又は、状態変化部は、油の付着によって汚れが目立つ白色系の布や厚紙等でもよく、状態特定部が、その汚れを撮影する撮影装置(カメラ)でもよい。この場合でも、撮影装置からの映像で白色系の布や厚紙等が油で黒ずんでいることを確認することで、冷媒漏れを客観的かつ正確に判定し易い。
【0102】
なお、これらの場合でも、屋根裏や壁裏に配置された接続部周辺における冷媒漏れを特定するのに、光源が必要になることは言うまでもない。また、受光素子を用いた冷媒漏れの判定においては、受光素子が生成する電流値が、所定値以下になった場合に、冷媒漏れを判定してもよく、その判定は、受光素子からの信号を受信した情報管理装置で実行してもよい。また、漏出量推定部が、受光素子が生成した電流値に基づいて冷媒の漏出量を推定してもよい。
【0103】
また、検出システム30が、漏出量推定部61cを有する場合について説明したが、検出システムは、漏出量推定部を有さなくてもよい。また、検出システム30の報知部が、表示部66である場合について説明したが、検出システムの報知部は、音を出力する出力装置やランプ(インジケータ)で構成されてもよい。
【0104】
また、検出システム30が、LEDチップ52を含む光源を有する場合について説明した。しかし、検出システムは、LEDチップ以外の光源を有してもよく、例えば、検出システムの光源は、有機EL(Electro Luminescence)素子もしくは無機EL素子等の固体発光素子のチップを含んでもよく、白熱灯を含んでもよい。
【0105】
また、検出システム30が、光源を有する場合に、更に光源の点灯又は消灯を実行する操作部65を有する場合について説明した。しかし、検出システムが、光源を有する場合に、検出システムが、光源の点灯又は消灯を実行する操作部を有さなくてもよく、光源が常時点灯される構成でもよい。
【0106】
また、検出システム30が、第1検出センサ50と、第2検出センサ及び基準センサとを備える場合について説明した。しかし、検出システムは、第1検出センサと、第2検出センサ及び基準センサとのうちの一方を有さなくてもよく、例えば、第1検出センサを有さなくてもよく、第2検出センサ及び基準センサを有さなくてもよい。
【0107】
また、検出システム30を、接続部の一例としての継手80の周辺部に設置する場合について説明した。しかし、接続部は、図9、すなわち、継手以外の接続部を説明する模式断面図を示すように、第1配管183と第2配管184の間に毛細管現象で浸透拡散させて溶かし込まれると共に、これらの第1及び第2配管183,184よりも低い融点を有する合金(ろう)で構成されてもよく、その合金を冷却及び凝固することによって構成されたろう付け部198でもよい。又は、接続部は、継手及びろう付け部の両方を含んでもよい。
【0108】
また、検出システム30が、制御部(状態特定部)61、及び表示部(報知部)66を有する場合について説明した。しかし、状態特定部、及び報知部を用いずに簡単安価に冷媒漏れの判定を行ってもよい。
【0109】
詳しくは、空調設備等のヒートポンプは、環状通路内に充填された冷媒、冷媒を環状通路内を流動させる圧縮機、冷媒を液化させて熱を外部へ放出する凝縮器、冷媒を膨張させて、低温低圧にする膨張部、及び外部から熱を吸収して冷媒を蒸発させる蒸発器を備えてもよい。また、ヒートポンプは、互いに環状通路の一部を画定する2つの配管をつなぎ合わせる接続部の周辺部に配置され、周辺部から冷媒及び油が漏れた際に状態が変化する状態変化部を含む漏出判定部材を備えてもよい。そして、状態変化部が、外部から視認可能になっていてもよい。ここで、漏出判定部材は、上述と同様に接続部の周辺にスペースを空けて筒状又は略筒状に形成されて汚れが目立つ白色系の布や厚紙等で構成されてもよい。そして、例えば、保守作業員等の人が、定期的にその布や厚紙の油汚れの有無を目視で判断することで冷媒漏れを判断してもよい。
【0110】
(第2実施形態)
第2実施形態では、人の操作を行わずに、複数の冷媒漏れ可能箇所のうちで実際に冷媒漏れが起こった個所の情報を所定の1以上の表示機器に自動的に表示する場合について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果及び変形例についての説明を省略する。
【0111】
図10は、本開示の一実施形態の冷媒漏れ報知システム270の概略構成図である。図10に示すように、冷媒漏れ報知システム(以下、単に報知システムという)270は、複数のヒートポンプシステムの一例である複数の空調システム201と、情報処理装置としての施設管理用情報処理装置290を備え、各空調システム201は、例えば、空調設備210、及び冷媒漏れ検出システム(以下、単に検出システムという)230を有し、検出システム230は、複数の第1検出センサ250、複数の第2検出センサ251、1つの基準センサ252、及び情報管理装置260を含む。
【0112】
空調設備210、第1検出センサ250、第2検出センサ251、及び基準センサ252の夫々は、第1実施形態で説明した、空調設備10、第1検出センサ50、第2検出センサ、及び基準センサと同一である。また、情報管理装置260は、第1実施形態で説明した情報管理装置60の構成の全てを有すると共に、更に、時刻を認識する内蔵タイマを含む。
【0113】
また、施設管理用情報処理装置290は、制御部291、記憶部292、受信部293、出力部(送信部)294、操作部295、及び表示部296を有する。制御部291は、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成され、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、記憶部292は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成される。また、表示部296は、液晶パネルや有機ELパネル等で構成される。CPUは、記憶部に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する。また、不揮発性メモリは、制御プロラムや所定の閾値等を予め記憶する。また、揮発性メモリは、読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する。
【0114】
受信部293は、例えば、アンテナや、ケーブルが接続される端子等で構成され、各情報管理装置60が出力した信号を、通信回線、例えば、専用回線やインターネット等を介して受信する。また、表示部296は、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報と、推定される冷媒の漏出量を表す情報を表示してもよく、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報のみを表示してもよい。また、出力部294は、アンテナや、ケーブルが接続される端子等で構成される。出力部294は、制御部291からの指示により、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報と、推定される冷媒の漏出量を表す情報とを含んだ信号を、1以上の表示機器297に出力する。
【0115】
施設管理用情報処理装置290が、保守メンテナンス会社の情報処理装置である場合、上記1以上の表示機器297は、保守作業員の情報機器(スマートホン、タブレット、メンテナンスコンピュータ等)を含んでもよく、例えば、保守作業員が、施設管理用情報処理装置290からの信号を受信したことを表す報知を受けて、その情報機器の専用アプリを立ち上げると、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報と、推定される冷媒の漏出量を表す情報を表示部による報知で取得できてもよく、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報のみを表示部による報知で取得できてもよい。
【0116】
なお、詳述しないが、図10に示すように、情報管理装置260が、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報と推定される冷媒の漏出量を表す情報とを含む信号か、又は、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報を含む一方、推定される冷媒の漏出量を表す情報を含まない信号を施設管理用情報処理装置290にインターネット経由で送信する場合、VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)ルータを介して施設管理用情報処理装置290に当該信号を出力してもよい。VPNルータは、パケットの宛先を調べ、インターネット宛のパケットの場合、そのままインタネットサービスプロバイダ経由でインターネットに送り出し、対向拠点のプライベートアドレス宛のパケットの場合、トンネリングや暗号化などのVPNの処理を施す。例えば、IP(International Protection)パケットの暗号化や認証を実行するIPセキュリティでは、「トンネルモード」と呼ばれる通信モードを用いてVPNを構築してもよい。VPNルータは、インターネットを介して繋がる複数のLANを統合して接続し、ひとつのネットワークにする役割を果たす。よって、VPNルータを用いれば、インターネットを介して繋がる複数の情報管理装置260及び施設管理用情報処理装置290を、同一のネットワークに属するようにできる。
【0117】
また、施設管理用情報処理装置290は、VPNルータ、及びゲートウェイを介して当該信号を受けてもよい。ここで、VPNルータは、上記VPNルータと同様の役割を果たし、ゲートウェイは、データ形式を自動的に変換し、プロトコルの異なるネットワーク間でのデータのやり取りを可能にするために設けられる。また、施設管理用情報処理装置290は、携帯電話アダプタ、アダプタ用ルータ、及びインターネット経由で表示機器(情報機器)297に信号を出力してもよい。ここで、携帯電話アダプタは、施設管理用情報処理装置290を携帯電話に接続できるようにする機器である。
【0118】
図11は、表示機器297に冷媒漏れを起こした接続部に関する情報を表示させる際に、情報管理装置260の制御部が実行可能な制御の一例を示すフローチャートである。
【0119】
例えば、検出システム230が、空調設備210に適切に設置されて情報管理装置260と適切に信号のやり取りが可能になると制御がスタートし、ステップS21で、制御部が、内蔵タイマからの情報で時刻が所定時刻になったか否かを判定する。ステップS21で否定判定されるとステップS21が繰り返される。他方、ステップS21で肯定判定されるとステップS22に移行して、制御部が、第1検出センサ250、第2検出センサ251、及び基準センサ252に所定電圧を印可すると同時に、第1検出センサ250の光源に電力を供給する。
【0120】
続く、ステップS23では、制御部が、1以上の接続部の周辺で冷媒漏れが生じているか否かについて判定する。ステップS23で否定判定されると、ステップ21が繰り返される。他方、ステップS23で肯定判定されると、ステップS24で、制御部が、冷媒漏れが生じている接続部毎に冷媒の漏出量を推定し、続く、ステップS25で、制御部が、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報と推定される冷媒の漏出量を表す情報とを表示部に表示させる。
【0121】
続く、ステップS26では、制御部が、送信部(出力部)に施設管理用情報処理装置290に向けて、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報と推定される冷媒の漏出量を表す情報とを含む信号を送信させ、その後、制御がリターンとなって、ステップS21以下が繰り返される。
【0122】
図12は、表示機器297に冷媒漏れを起こした接続部に関する情報を表示させる際に、施設管理用情報処理装置290の制御部291が実行可能な制御の一例を示すフローチャートである。
【0123】
例えば、施設管理用情報処理装置290が複数の情報管理装置260と冷媒漏れを起こした接続部に関する情報をやり取りできるようになると制御がスタートする。そして、ステップS31で、制御部291が、1以上の情報管理装置260から冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報と推定される冷媒の漏出量を表す情報とを含む信号を受信したか否かを判定する。
【0124】
ステップS31で否定判定されると、ステップS31が繰り返される。他方、ステップ31で肯定判定されると、ステップS32で、制御部291が、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報と推定される冷媒の漏出量を表す情報とを含む信号を1以上の表示機器297に向けて出力部(送信部)294に送信させる。
【0125】
この送信によって、例えば、1以上の表示機器297は、施設管理用情報処理装置290からの信号を受信したことを報知する。そして、例えば、保守作業員が、その報知を受けて、その表示機器297の専用アプリを立ち上げると、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報と、推定される冷媒の漏れ量の情報とを取得できる。
【0126】
ステップS32が終了すると、制御がリターンとなって、ステップS31が繰り返される。なお、図11及び図12では、情報管理装置260と施設管理用情報処理装置290とで、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報と推定される冷媒の漏出量を表す情報とを含む信号をやり取りする場合について説明した。しかし、情報管理装置260と施設管理用情報処理装置290とで、冷媒漏れが生じている接続部の位置を特定できる情報を含む一方、推定される冷媒の漏出量を表す情報を含まない信号をやり取りしてもよい。
【0127】
以上、本開示の報知システム270は、互いに異なる複数の検出システム230と、各検出システム230からの情報に基づいて冷媒漏出が生じた接続部の周辺部を特定できる位置情報を含む漏出場所情報を1以上の表示機器297に向けて出力する出力部294を含む施設管理用情報処理装置(情報処理装置)290を備える。
【0128】
したがって、冷媒漏出が生じた接続部の周辺部を特定できる位置情報を1以上の表示機器(例えば、スマートホンやメンテナンスコンピュータ等の情報機器)297に自動的に送信できる。したがって、例えば、1以上の保守作業員が携帯している1以上の表示機器297に当該位置情報を自動的に送信できるので、冷媒の漏出により迅速に対処できる。なお、ヒートポンプが、空調設備である場合について説明した。しかし、ヒートポンプは、冷凍装置、冷蔵装置、又はチラーでもよい。
【符号の説明】
【0129】
1,201 空調システム(ヒートポンプシステム)、 10,210 空調設備、 11 環状通路、 17 凝縮器、 19A,19B 蒸発器、 30,230 検出システム、 34 キャピラリチューブ(膨張部)、 37 圧縮機、 39a,39b,41a,41b,43,45 接続部、 52 LEDチップ(光源)、 58 状態変化部、 51 光導電体で構成されるフィルム、 60,260 情報管理装置、 61 制御部(状態特定部)、 61a 抵抗算出部(抵抗特定部)、 61b 漏出判定部、 61c 漏出量推定部、 65 操作部、 66 表示部(報知部)、 80 継手(接続部)、 83 一方側配管(第1配管)、 84 他方側配管(第2配管)、 88 継手包含領域(周辺部)、 91 フィルムにおいて継手包含領域の少なくとも一部を覆っている継手包含領域側の面、 183 第1配管、 184 第2配管、 198 ろう付け部(接続部) 270 報知システム、 290 施設管理用情報処理装置(情報処理装置)、 294 出力部、 297 表示機器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12