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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】シートパッドおよび成形型
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/052 20060101AFI20230609BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B68G7/052 A
A47C31/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019021080
(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公開番号】P2020127590
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】松本 真人
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0162008(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 7/052
A47C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型成形された発泡体で構成されたシートパッドであって、
前記シートパッドの一面から凹むように成形された溝部の底に配置して該シートパッドに埋め込まれたクリップと、
前記溝部が延びる方向において前記クリップの端部よりも外側に設けられ、該溝部の開口側から該溝部の底へ向かうにつれて該溝部の幅方向中央側へ該溝部の溝壁から張り出すように形成された膨出部と、を備え、
前記膨出部は、前記溝部の幅方向中央を越えないように形成されている
ことを特徴とするシートパッド。
【請求項2】
型成形された発泡体で構成されたシートパッドであって、
前記シートパッドの一面から凹むように成形された溝部の底に配置して該シートパッドに埋め込まれたクリップを備え、
前記クリップは、前記溝部の底に埋め込まれるベース部と、前記ベース部から前記溝部の開口側に延出する係止片と、を有し、
前記溝部が延びる方向において前記ベース部よりも外側に配置されて前記溝部の一部に設けられ、該溝部の開口側から該溝部の底へ向かうにつれて該溝部の幅方向中央側へ該溝部の溝壁から張り出すように形成された膨出部を備え、
前記膨出部は、前記溝部の幅方向中央を越えないように形成されている
ことを特徴とするシートパッド。
【請求項3】
型成形された発泡体で構成されたシートパッドであって、
前記シートパッドの一面から凹むように成形された溝部の底に配置して該シートパッドに埋め込まれたクリップを備え、
前記クリップは、前記溝部の底に埋め込まれるベース部と、前記ベース部から前記溝部の開口側に延出する係止片と、を有し、
前記係止片から離して前記溝部の一部に設けられ、該溝部の開口側から該溝部の底へ向かうにつれて該溝部の幅方向中央側へ該溝部の溝壁から張り出すように形成された膨出部を備え、
前記膨出部は、前記溝部の幅方向中央を越えないように形成されている
ことを特徴とするシートパッド。
【請求項4】
型成形された発泡体で構成されたシートパッドであって、
前記シートパッドの一面から凹むように成形された溝部の底に配置して該シートパッドに埋め込まれたクリップと、
前記溝部が延びる方向において前記クリップの外側に設けられ、該溝部の開口側から該溝部の底へ向かうにつれて該溝部の幅方向中央側へ該溝部の溝壁から張り出すように形成された膨出部と、を備え、
前記膨出部は、前記溝部の開口側から前記溝部の底までの範囲における前記溝部の幅方向中央側への傾きが前記溝壁よりも小さく、かつ前記溝部の幅方向中央を越えないように形成されている
ことを特徴とするシートパッド。
【請求項5】
型成形された発泡体で構成されたシートパッドであって、
前記シートパッドの一面から凹むように成形された溝部の底に配置して該シートパッドに埋め込まれたクリップと、
前記溝部が延びる方向において前記クリップの外側に配置されて前記溝部の一部に設けられ、該溝部の開口側から該溝部の底へ向かうにつれて該溝部の幅方向中央側へ該溝部の溝壁から張り出すように形成された膨出部と、を備え、
前記膨出部は、前記溝部の開口側から該溝部の底へ向かうにつれて前記クリップ側へ傾く形状であり、
前記膨出部は、前記溝部の幅方向中央を越えないように形成されている
ことを特徴とするシートパッド。
【請求項6】
下型および上型で画成されるキャビティにおいて発泡体からなるシートパッドを成形する成形型であって、
前記下型に設けられ、前記シートパッドの一面から凹むように溝部を成形する凸型部と、
前記凸型部に設けられ、前記溝部の底に埋め込むクリップを取り付け可能に構成されたクリップ保持部と、
前記凸型部が延びる方向において前記クリップ保持部に保持される前記クリップの端部よりも外側に形成され、該凸型部において前記溝部の溝壁を規定する縦壁面より凹む案内部と、を備え、
前記案内部は、前記凸型部の根元側から該凸型部の頂部へ向かうにつれて、該凸型部の幅方向中央側へ傾くように形成されている
ことを特徴とする成形型
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両などの座席に用いられるシートパッド、シートパッドの製造方法、および成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用のシートは、シートパッドの一面に形成された溝部の底に設けられたクリップでシートカバーを保持することで、シートカバーの一部を溝部に引き込んでシートカバーを張った状態で取り付けている(例えば、特許文献1参照)。このようなクリップは、対向して配置された一対の延出片を有し、シートカバーに取り付けられた矢尻形状の取付具を、一対の延出片の間に嵌め合わせて、シートカバーを保持するように構成されている。
【0003】
前述のシートパッドは、特許文献1のように、成形型に設置された固定具にクリップを取り付けて、シートパッドの溝部の底に対応する位置にクリップを配置した状態で、発泡体原料を発泡・硬化させるインサート成形により得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-60582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したシートパッドは、クリップにおける板状の脚部に邪魔されて、脚部における延出片が延出する側と反対側(クリップの裏側)に発泡体原料が回り込み難いので、クリップの裏側にボイドが生じることがある。このようにボイドが生じると、成形型からの脱型時やシートカバーの取り付け時に、クリップがシートパッドから外れ易くなってしまう。
【0006】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、クリップが強固に設置されたシートパッド、該シートパッドの製造方法、および該シートパッドを得るための成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るシートパッドは、
型成形された発泡体で構成されたシートパッドであって、
前記シートパッドの一面から凹むように成形された溝部の底に配置して該シートパッドに埋め込まれたクリップと、
前記溝部における前記クリップの横側に設けられ、該溝部の開口側から該溝部の底へ向かうにつれて該溝部の幅方向中央側へ該溝部の溝壁から張り出すように形成された膨出部と、を備え、
前記膨出部は、前記溝部の幅方向中央を越えないように形成されていることを要旨とする。
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るシートパッドの製造方法は、
成形型で発泡体原料から発泡体で構成されたシートパッドを成形する際に、該シートパッドの一面から凹むように形成する溝部の底にクリップを埋設するシートパッドの製造方法であって、
前記クリップを、前記成形型の下型における前記溝部を成形する凸型部に設けられたクリップ保持部に組み付けて該下型にセットし、
前記凸型部における前記クリップ保持部の横側に形成された案内部によって、前記下型に供給された前記発泡体原料を、該案内部が形成されていない部位よりも該凸型部の頂部に早く到達するように案内しつつ、前記シートパッドを成形することを要旨とする。
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る成形型は、
下型および上型で画成されるキャビティにおいて発泡体からなるシートパッドを成形する成形型であって、
前記下型に設けられ、前記シートパッドの一面から凹むように溝部を成形する凸型部と、
前記凸型部に設けられ、前記溝部の底に埋め込むクリップを取り付け可能に構成されたクリップ保持部と、
前記凸型部における前記クリップ保持部の横側に形成され、該凸型部において前記溝部の溝壁を規定する縦壁面より凹む案内部と、を備え、
前記案内部は、前記凸型部の根元側から該凸型部の頂部へ向かうにつれて、該凸型部の幅方向中央側へ傾くように形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るシートパッドによれば、クリップを強固に設置することができる。
本発明に係るシートパッドの製造方法によれば、クリップが強固に設置されたシートパッドを得ることができる。
本発明に係る成形型によれば、クリップが強固に設置されたシートパッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係るシートパッドが用いられたシートを示す斜視図である。
図2】実施例のシートパッドを示す平面図である。なお、シートパッドの一面側から示している。
図3】実施例のシートパッドにおいて、クリップへのシートカバーの取り付けを説明する断面図である。なお、図2のA-A線に対応する位置で切断している。
図4】(a)は図2のB-B線に対応する位置で切断した断面図であり、(b)は図2のC-C線に対応する位置で切断した断面図である。
図5】実施例のクリップを示す斜視図である。
図6】実施例の成形型の下型を示す平面図である。
図7】実施例の下型の要部を拡大して示す斜視図であり、(a)はクリップ保持部を下型に設置した状態であり、(b)はクリップ保持部を取り外した状態である。
図8】実施例の下型の要部を拡大して示す平面図である。
図9】実施例の下型の要部を拡大して示す側面図であり、(a)はクリップ保持部にクリップを取り付ける前の状態であり、(b)はクリップ保持部にクリップを取り付けた後の状態である。
図10】実施例のシートパッドの製造過程を示す説明図である。
図11】実施例のシートパッドの製造過程における発泡体原料の動きを示す説明図である。なお、(a)は図9(b)のD-D線に対応する位置で切断し、(b)は図9(b)のE-E線に対応する位置で切断している。
図12】(a)は変更例の案内部が形成された下型の要部を拡大して示す側面図であり、(b)は変更例の下型により成形されたシートパッドを、溝部で横方向に切断した断面図である。
図13】(a)は別の変更例の案内部が形成された下型の要部を拡大して示す側面図であり、(b)は別の変更例の下型により成形されたシートパッドを、溝部で横方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係るシートパッド、シートパッドの製造方法および成形型につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例
【0013】
図1に示すように、車両用のシート10は、乗員の下半身を支持する座部12と、この座部12の後部に傾動可能に設置されて乗員の上半身を支持する背もたれ部14と、この背もたれ部14の上部に設置されて乗員の頭部を支持するヘッドレスト16とから基本的に構成される。座部12および背もたれ部14は、軟質ポリウレタンフォーム(発泡体)を主体として、全体としてクッション性を有するシートパッド20と、シートパッド20の全体を覆うように貼り込まれた、布地や合成皮革や本革などのシートカバー18とから構成されている。なお、座部12と背もたれ部14は、その基本的な構造が類似すると共に、製造方法も同様であるので、座部12をなすシートパッド20を挙げて以下に説明する。また、シートパッド20の説明において、車両への設置状態を基準として上下前後左右を指称し、座部12を構成するシートパッド20では、着座した乗員の支持面側が上側になると共に、車体側が下側になる。
【0014】
図2に示すように、シートパッド20には、乗員側となる上面に開口するように複数条の溝部22が設けられている。実施例のシートパッド20には、前後方向へ延びる2条の溝部22,22と、前後方向へ延びる2条の溝部22,22の間において左右方向へ延びる溝部22とが形成されている。図2図4に示すように、シートパッド20には、溝部22の底に、クリップ24の係止片30が上側へ突出した状態で設置されている。シートパッド20は、シートカバー18に取り付けられた矢尻形状の取付具26をクリップ24で保持して、シートカバー18を溝部22の内側へ引き込むことで、シートカバー18を、皺が伸びた(テンションをかけた)状態で取り付け可能になっている(図3参照)。
【0015】
図3および図5に示すように、クリップ24は、シートパッド20を構成する発泡体に埋め込まれる板状のベース部28と、ベース部28から上側(シートパッド20の一面側)へ延出するように設けられた係止片30とを備えている。クリップ24には、2つの係止片30,30が、溝部22の幅方向に対応する方向に離して、対をなすように対向して配置されている。実施例では、対向する一対の係止片30,30が、溝部22が延びる方向に対応する方向(横方向)に離して2組設けられている。係止片30は、その先端に、相手方の係止片30へ向けて出っ張るように形成された爪部30aを有している。また、ベース部28は、係止片30がベース部28から突出する部位よりも外側部位に貫通孔28aを備えており、後述するシートパッド20の成形時に、貫通孔28aを介する発泡体原料H(図11)の流通を許容する。なお、実施例では、クリップ24として、各部28,30が一体成形された合成樹脂の成形品が用いられている。
【0016】
クリップ24、後述の膨出部32および成形型40の凸型部48の説明において、溝部22の溝壁の対向方向に対応する方向を幅方向といい、溝部22が延びる方向に対応する方向を横方向という(図7(a)参照)。クリップ24およびクリップ保持部50は、溝部22の深さ方向に対応する方向が上下方向になる。
【0017】
図2に示すように、シートパッド20は、溝部22におけるクリップ24の横側に設けられた膨出部32を備えている。実施例では、膨出部32が、溝部22に互いに間隔をあけて配置された複数のクリップ24のそれぞれに対応して設けられている。また、シートパッド20には、膨出部32が各クリップ24の両方の横側に配置され、クリップ24が横方向に並ぶ2つの膨出部32,32によって挟まれている。更に、シートパッド20には、2つの膨出部32,32が、溝部22の幅方向に対向して設けられている。溝部22には、幅方向に対をなす膨出部32,32が間隔をあけて配置されており、幅方向に対をなす膨出部32,32間に形成される隙間が、溝部22の幅方向中央部に位置するように設定されている。そして、シートパッド20は、溝部22に引き込んだシートカバー18を、幅方向に対をなす膨出部32,32の間の隙間に配置可能に構成されている(図4参照)。
【0018】
図4に示すように、膨出部32は、溝部22の開口側(シートパッド20の一面側)から溝部22の底へ向かうにつれて、溝部22の幅方向中央へ向けて溝部22の溝壁から張り出すように形成されている。膨出部32は、溝部22の幅方向中央を越えないように形成されており、溝部22に収容されるシートカバー18の邪魔にならない程度の大きさで張り出している。膨出部32は、垂直または溝部22の開口側が底側と比べてわずかに広くなるように傾く溝壁から溝部22の内側へ膨らみ、溝部22の内側に臨む内壁面が、溝部22の開口側から底側へ向かうにつれて、溝部22の幅方向中央側へ傾斜している。膨出部32は、溝部22の溝壁から幅方向へ張り出す横壁面(内壁面および溝壁を繋ぐ壁面)が、上下方向(溝部22の深さ方向)に延在している。また、膨出部32は、クリップ24毎に対応して独立して設けられ、該膨出部32の横方向の寸法を5mm以上に設定することが好ましい。溝部22には、横方向に隣り合う膨出部32,32同士が間隔をあけて配置されている(図2参照)。このように、膨出部32は、横方向に隣り合う2つのクリップ24,24に対応するもの同士が互いに繋がらないように形成されている。なお、複数の膨出部32は、その形状や、溝壁からの張り出し寸法や上下方向の寸法などが異なっていてもよいが、実施例では、複数の膨出部32が全て同じ形状で同じ大きさで形成されている。
【0019】
次に、シートパッド20を成形する成形型40について説明する。図10に示すように、成形型40は、下型42と、型閉じ時に下型42の上側に配置される上型44とから構成されている。成形型40は、上型44を回動することで、下型42と上型44との間にキャビティ46を形成する型閉じ状態(図10(b)参照)と、成形型40内にアクセスできる型開き状態(図10(a)参照)と変更可能である。成形型40は、キャビティ46において、シートパッド20を上下反対向きに成形するようになっている。そして、成形型40は、シートパッド20の上面(一面)および側面を下型42で主に成形し、シートパッド20の下面を上型44で成形している。
【0020】
図6に示すように、下型42は、シートパッド20の上面を規定する下型面(型面)42aから突出するように形成され、シートパッド20の溝部22を規定する凸型部48を備えている。図7に示すように、下型42には、凸型部48におけるクリップ24の設置位置に対応する位置を凹ませて、設置凹部48aが形成されており、クリップ24を取り付け可能なクリップ保持部50が設置凹部48aに設置されている。実施例のクリップ保持部50は、ねじ止めにより、下型42に対して着脱可能に取り付けられている。下型42は、凸型部48およびクリップ保持部50によって、溝部22を成形する。
【0021】
図7図9に示すように、下型42は、凸型部48におけるクリップ保持部50(設置凹部48a)の横側に設けられた案内部54を備えている。実施例では、案内部54が、凸型部48に互いに間隔をあけて配置された複数のクリップ保持部50のそれぞれに対応して設けられている。また、下型42には、案内部54が各クリップ保持部50(設置凹部48a)の両方の横側に配置され、クリップ保持部50が横方向に並ぶ2つの案内部54,54によって挟まれている。更に、凸型部48には、対をなす案内部54,54が、該凸型部48の頂部を挟んで対称な位置関係で互いに繋がらないように設けられている(図8参照)。
【0022】
図7図9に示すように、凸型部48におけるクリップ保持部50(設置凹部48a)の横側には、凸型部48において溝部22の溝壁を規定する縦壁面52より凹む案内部54が設けられている。図7(b)および図11(a)に示すように、案内部54は、凸型部48の根元側から凸型部48の頂部側へ向かうにつれて、凸型部48の幅方向中央側へ傾くように形成されている。凸型部48における案内部54の形成部位は、根元側から頂部へ向かうにつれて幅方向の寸法が小さくなっている。案内部54は、凸型部48の幅方向中央を越えて凹まないように形成され、凸型部48の幅方向の寸法に対して半分よりも浅い凹みである。案内部54は、該案内部54における凹みの底および縦壁面52を繋ぐクリップ保持部50と反対側の脇壁面(クリップ保持部50側に向く壁面)が、上下方向(凸型部48の突出方向)に延在するように形成されている。また、案内部54は、設置凹部48a毎に対応して独立して設けられ、案内部54の横方向の寸法を5mm以上に設定することが好ましい。凸型部48には、横方向に隣り合う案内部54,54同士が間隔をあけて配置されている(図6参照)。このように、案内部54は、横方向に隣り合う2つのクリップ保持部50,50(設置凹部48a,48a)に対応するもの同士が互いに繋がらないように形成されている。なお、複数の案内部54は、その形状や、縦壁面52から凹む深さや上下方向の寸法などが異なっていてもよいが、実施例では、複数の案内部54が全て同じ形状で同じ大きさで形成されている。
【0023】
図7および図8に示すように、クリップ保持部50は、溝部22の形状に応じて形成されたステンレス等の金属からなるブロック形状である。クリップ保持部50は、凸型部48の立面に沿うように配置される側壁面50aによって、シートパッド20の成形時に溝部22の溝壁を成形するようになっている(図7参照)。クリップ保持部50は、側壁面50aを凹ませて形成されて、クリップ24の係止片30を受け入れ可能に構成された凹状部56と、凹状部56の内側に設けられて、凹状部56に受け入れた係止片30を抜け止めする係止部58とを備えている。また、クリップ保持部50は、側壁面50aに設けられ、クリップ保持部50の下側から凹状部56の下縁に向かうにつれて、側壁面50aから張り出す庇部60を備えている。クリップ保持部50は、下型42の下型面42a側が下側であって、下側が溝部22の開口側となり、上側が溝部22の底に対応する。
【0024】
図7および図8に示すように、実施例のクリップ保持部50は、2組の対をなす係止片30,30に対応して、係止部58および凹状部56,56の組を2組備えている。係止部58は、該係止部58に一対の係止片30,30が嵌め合わされた際に、係止部58に形成された爪受部58aと係止片30の爪部30aとの引っ掛かりにより、クリップ24を保持するようになっている。図9(b)に示すように、クリップ24は、係止部58に一対の係止片30,30を嵌め合わせた際に、ベース部28がクリップ保持部50の上端に載って支持される。このとき、クリップ保持部50は、各係止片30を凹状部56に収容して、係止片30と係止部58との間に発泡体原料Hが侵入することを防止している。
【0025】
次に、前述した案内部54を設けた成形型40によるシートパッド20の製造方法について説明する。まず、下型42に設置されたクリップ保持部50にクリップ24を取り付ける(図10(a)参照)。具体的には、クリップ24の対をなす係止片30,30を係止部58に嵌め合わせることで、各係止片30が対応する凹状部56に収容されると共に、ベース部28がクリップ保持部50の上側に載置された状態で、クリップ24がクリップ保持部50で保持される(図9(b)参照)。下型42の下型面42aに発泡体原料Hを供給し、成形型40を型閉じして、キャビティ46において発泡体原料Hを発泡・硬化させて、シートパッド20を成形する(図10(b)参照)。
【0026】
図11(a)に示すように、下型42に供給された発泡体原料Hを、凸型部48に形成した案内部54によって、案内部54が形成されていない部位よりも凸型部48の頂部に早く到達するように案内しつつ、シートパッド20を成形する。具体的には、発泡体原料Hは、下型42における凸型部48の幅方向両側に振り分けて供給される。凸型部48を挟んで供給された発泡体原料H,Hは、下側から上側へ向けて発泡しながら膨張する際に、凸型部48の縦壁面52より凹む案内部54の傾斜面に沿って案内されることで、縦壁面52で案内される部位よりも早く凸型部48の頂部で合流する。発泡体原料Hは、下型42に供給されたタイミングが早い程、発泡・硬化が進行しておらず、その粘度が低くなっており、発泡体原料H,H同士を早く合流させることで、流動性を確保することができる。ここで、案内部54が凸型部48におけるクリップ保持部50の横側に設けられているので、下型42に供給された発泡体原料H,Hが案内部54で案内されて早く合流することができ、クリップ保持部50に取り付けられたクリップ24におけるベース部28の裏側(図中の上側)に、発泡体原料Hが回り込み易くすることができる。このように、クリップ24におけるベース部28の裏側へ発泡体原料Hが回り込み易くすることによって、ベース部28の裏側にボイドが生じることを防止できる。また、得られるシートパッド20には、案内部54に由来する膨出部32が、溝部22に埋設されたクリップ24の横側に形成される。図9に示すように、実施例の案内部54は、凸型部48が下型42から突出する方向と略平行に、全て同じ形状および同じ大きさで形成されており、案内部54に由来する膨出部32も全て同じ形状および同じ大きさで形成される。
【0027】
前述したように、案内部54による発泡体原料Hの発泡方向のコントロールによって、クリップ保持部50に取り付けられたクリップ24におけるベース部28の裏側に、発泡体原料Hを回り込ませることができる。これにより、シートパッド20に埋設されたクリップ24のベース部28が、発泡体によって隙間なく囲まれるので、クリップ24をシートパッド20に強固に設置することができる。従って、シートパッド20を脱型する際に、クリップ保持部50に取り付いたクリップ24を取り外すために力が加わっても、クリップ24がシートパッド20から脱落することなどを防止できる。しかも、クリップ24に力を加えることが可能であるので、シートパッド20の脱型を行い易く、シートパッド20を効率よく製造することができる。また、取付具26を介してシートカバー18をクリップ24に取り付けたとき、シートカバー18を強固に設置されたクリップ24で適切に保持することができる。
【0028】
得られたシートパッド20は、クリップ24をインサート成形しても、クリップ24の周りにおけるボイドの発生を防いで、クリップ24をシートパッド20に強固に設置することができる。案内部54を、凸型部48におけるクリップ保持部50の両方の横側に設けることで、横方向両側の案内部54,54によって、発泡体原料Hをクリップ保持部50に取り付けたクリップ24のベース部28の裏側へ横方向両側から回り込ませることができる。このように、案内部54に由来する膨出部32を、クリップ24の両方の横側に設けるように成形することで、ボイドの発生を防いでクリップ24をシートパッド20に強固に設置することができる。
【0029】
凸型部48には、該凸型部48の頂部を挟んで対称な位置関係で対をなす案内部54,54が設けられているので、凸型部48の幅方向両側から、発泡体原料Hをクリップ保持部50に取り付けたクリップ24のベース部28の裏側へ回り込ませることができる。このように、案内部54に由来する膨出部32を、溝部22の幅方向に対向するように成形することで、ボイドの発生を防いでクリップ24をシートパッド20に強固に設置することができる。
【0030】
膨出部32は、溝部22の幅方向中央を越えないように形成することで、溝部22に収容されるシートカバー18の邪魔になり難くすることができる。また、膨出部32は、溝部22に引き込まれたシートカバー18と当たったときに、シートカバー18を溝部22の幅方向中央側へ寄せることができ、溝部22におけるシートカバー18の位置合わせを補助できる。ここで、膨出部32は、溝部22の開口側の溝壁からの張り出し寸法が小さく、該開口側から溝部22の底側へ向かうにつれて溝壁からの張り出し寸法が大きくなっている。この膨出部32の構成によれば、シートカバー18の溝部22への挿入時に邪魔になり難く、膨出部32の傾斜面に沿ってシートカバー18を幅方向中央側へ案内できる。特に、凸型部48の頂部を挟んで対をなす案内部54,54を、互いに繋がらないように設けることで、溝部22の幅方向に対向する2つの膨出部32,32を、間隔をあけて配置することができる。溝部22の幅方向に対向する2つの膨出部32,32によれば、シートカバー18を溝部22の幅方向中央側へ寄せることができ、シートカバー18の位置合わせを補助できる。
【0031】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば、以下のように変更してもよい。
【0032】
(1)実施例では、案内部によって、発泡体原料を凸型部の根元側から頂部側へ向かう鉛直方向(凸型部の下型面からの突出方向)に案内したが、これに限らず、案内部によって、発泡体原料を凸型部の根元側から頂部側へ向かうにつれてクリップ側(クリップ保持部側)に流動するように斜め横方向へ案内してもよい。具体的には、図12(a)および図13(a)に示すように、案内部54は、縦壁面52に連なってクリップ保持部50側に向く脇壁面(壁面)54aが、凸型部48の根元側から頂部に向かうにつれて該クリップ保持部50側へ向けて傾くように形成されている形状であってもよい。図12(a)に示す案内部54は、該案内部54を囲う脇壁面のうち、クリップ保持部50(設置凹部48a)から遠い側の脇壁面54aを、クリップ保持部50側へ傾けて形成する一方、クリップ保持部50側の脇壁面54bを上下方向に延在するように形成している。図13(a)に示す案内部54は、該案内部54を囲う脇壁面54a,54bの両方を、クリップ保持部50側へ傾けて形成している。図12(a)および図13(a)に示す案内部54によって、凸型部48の根元側から頂部側へ向かうにつれてクリップ保持部50側へ向かうように、発泡体原料Hを案内することで、下型42に供給された発泡体原料Hをクリップ24におけるベース部28の裏側へ積極的に案内することができる。これにより、発泡体原料Hをベース部28の裏側に回り込ませ易くすることができる。図12(a)に示す案内部54に由来する膨出部32は、クリップ24と反対側の横壁面(壁面)32aが、溝部22の開口側から該溝部22の底へ向かうにつれてクリップ24側へ傾くように形成されると共に、クリップ24側の横壁面(壁面)32bが、溝部22の深さ方向に沿って延在するように形成される(図12(b)参照)。図13(a)に示す案内部54に由来する膨出部32は、クリップ24と反対側の横壁面32aおよびクリップ24側の横壁面32bが、溝部22の開口側から該溝部22の底へ向かうにつれてクリップ24側へ傾くように形成される(図13(b)参照)。図12(b)および図13(b)に示す膨出部32であっても、実施例と同様に、クリップ24の周りにおけるボイドの発生を防いで、クリップ24をシートパッド20に強固に設置することができる。また、図12(b)および図13(b)に示す膨出部32であっても、実施例と同様に、溝部22に収容されるシートカバー18の位置合わせを補助できる。
【0033】
(2)図12(a)および図13(a)に示すように、発泡体原料Hを凸型部48の根元側から頂部側へ向かうにつれてクリップ24側(クリップ保持部50側)に流動するように斜め横方向へ案内する案内部54を、クリップ保持部50の両方の横側に設けてもよい。また、発泡体原料Hを凸型部48の根元側から頂部側へ向かうにつれてクリップ24側(クリップ保持部50側)に流動するように斜め横方向へ案内する案内部54を、凸型部48の頂部を挟んで対称な位置関係で対をなすように設けてもよい。このように構成することで、下型42に供給された発泡体原料H,Hをクリップ24におけるベース部28の裏側へ案内することができ、発泡体原料H,Hをベース部28の裏側に回り込ませ易くすることができる。これにより、得られるシートパッド20において、クリップ24の周りにおけるボイドの発生が抑えられ、クリップ24をシートパッド20に強固に設置することができる。
【0034】
(3)実施例および図12および図13に示す変更例では、案内部を凸型部におけるクリップ保持部の両方の横側に設けたが、これに限らず、凸型部におけるクリップ保持部の一方の横側だけに案内部を設ける構成であってもよい。従って、溝部において、膨出部がクリップの両方の横側に設けられる構成に限らず、膨出部がクリップの一方の横側だけに設けられる構成であってもよい。
(4)実施例および図12および図13に示す凸型部には、該凸型部の頂部を挟んで対称な位置関係で対をなす案内部が互いに繋がらないように設けられているが、これに限らず、案内部を凸型部における幅方向の一面だけに設けてもよい。従って、溝部において、該溝部の幅方向に対向する対をなす膨出部が間隔をあけて配置される構成に限らず、膨出部が対向する溝壁のうちの一方だけに設けてあってもよい。
(5)実施例および図12および図13に示す案内部は、クリップ保持部を挟んで対称な関係で設けたが、これに限らない。例えば、クリップ保持部の一方の横側に設ける案内部を凸型部における一方の縦壁面に形成し、クリップ保持部の他方の横側に設ける案内部を凸型部における他方の縦壁面に形成するような、互い違いであってもよい。この場合、クリップの一方の横側に設けられた膨出部が、溝部における一方の溝壁に形成され、クリップの他方の横側に設けられた膨出部が、溝部における他方の溝壁に形成される。
(6)案内部は、クリップ保持部の横側であれば、大きさや形状などは実施例に限定されない。同様に、膨出部は、クリップの横側であれば、大きさや形状などは実施例に限定されない。実施例および図12および図13に示す変更例では、案内部および案内部に由来する膨出部を全て同じ形状としたが、一部または全部を異なる大きさや形状で形成してもよい。
(7)実施例および図12(a)および図13(a)に示す案内部は、該案内部の凹みの底面が直線的な傾斜面で形成されているが、凸型部の幅方向中央を越えなければ、該底面を曲面や階段状としてもよい。実施例および図12(b)および図13(b)に示す膨出部は、溝部の内側に面する内壁面が直線的な傾斜面で形成されているが、溝部の幅方向中央を越えなければ、内壁面を曲面や階段状としてもよい。
(8)実施例および図12(a)および図13(a)に示す案内部は、該案内部の脇壁面を、平面で形成したが、脇壁面を曲面としてもよい。この場合、脇壁面の全部を曲面で形成してもよく、その一部のみを曲面とするなど、曲面と平面とを組み合わせてもよい。実施例および図12(b)および図13(b)に示す膨出部は、該膨出部の横壁面を、平面で形成したが、横壁面を曲面としてもよい。この場合、横壁面の全部を曲面で形成してもよく、その一部のみを曲面とするなど、曲面と平面とを組み合わせてもよい。
(9)実施例では、クリップ保持部を下型の凸型部と別体に構成したが、これに限らず、クリップ保持部を凸型部に一体的に形成してもよい。
(10)クリップおよびクリップ保持部の材質は、実施例に限らない。例えば、クリップを金属製にしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
20 シートパッド,22 溝部,24 クリップ,32 膨出部,32a 壁面,
40 成形型,42 下型,44 上型,46 キャビティ,48 凸型部,
50 クリップ保持部,52 縦壁面,54 案内部,54a 側壁面(壁面),
H 発泡体原料
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