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特許7292068薄膜フィルタ、薄膜フィルタ基板、薄膜フィルタの製造方法および薄膜フィルタ基板の製造方法並びにMEMSマイクロフォンおよびMEMSマイクロフォンの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】薄膜フィルタ、薄膜フィルタ基板、薄膜フィルタの製造方法および薄膜フィルタ基板の製造方法並びにMEMSマイクロフォンおよびMEMSマイクロフォンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20230609BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20230609BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230609BHJP
   B81C 3/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B01D39/16 C
H04R1/00 321
B81B3/00
B81C3/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019048174
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020146658
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】500393893
【氏名又は名称】新科實業有限公司
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
(74)【代理人】
【識別番号】100117558
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 和之
(72)【発明者】
【氏名】田家 裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】ビナラオ アンソニー レイモンドメラド
(72)【発明者】
【氏名】王 進武
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-221887(JP,A)
【文献】特表2018-509018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0315295(US,A1)
【文献】特開2015-199069(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0094405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
B01D 53/22;61/00-71/82
C02F 1/44
B81B 1/00-7/04
B81C 1/00-99/00
H04R 1/00;1/02;1/04-1/06;
1/08;1/12-1/14;
1/42-1/44;1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム面と、該フィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有し、樹脂を用いて形成されている薄膜部を有し、
該薄膜部に前記フィルム面から前記裏フィルム面まで貫通し、大きさが一定である複数の貫通孔が形成され、
前記フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が各前記貫通孔の内側に形成されている薄膜フィルタであって
前記複数の貫通孔が平面視円形に形成され、
前記薄膜フィルタは、前記複数の貫通孔をそれぞれ有する第1の貫通孔群および第2の貫通孔群を有し、
該第1の貫通孔群は、前記薄膜部の周端部との間隔が第1の間隔に設定されている第1の貫通孔を有し、かつ該複数の貫通孔が直線上に等間隔で配置され、
該第2の貫通孔群は、前記周端部との間隔が前記第1の間隔と異なる第2の間隔に設定されている第2の貫通孔を有し、かつ該複数の貫通孔が直線上に等間隔で配置され、
前記第1の貫通孔群によって形成される第1のラインと、前記第2の貫通孔群によって形成される第2のラインとが交互に配置されている薄膜フィルタ。
【請求項2】
前記筋状部が前記貫通孔の内壁面の全体に配置されている請求項1記載の薄膜フィルタ。
【請求項3】
前記筋状部が前記薄膜部の厚さであるフィルム厚の80%よりも大きい長さに形成されている請求項1または2記載の薄膜フィルタ。
【請求項4】
前記第1の貫通孔群に含まれる前記貫通孔と、前記第2の貫通孔群に含まれる前記貫通孔の双方を含む隣接する前記複数の貫通孔が、それぞれの中心を頂点とする正三角形を形成するように配置されている請求項1~3のいずれか一項記載の薄膜フィルタ。
【請求項5】
ベース面を有するベース基板と、
該ベース基板の前記ベース面上に形成されている薄膜フィルタとを有し、
該薄膜フィルタは、
フィルム面と、該フィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有し、樹脂を用いて形成されている薄膜部を有し、
該薄膜部に前記フィルム面から前記裏フィルム面まで貫通し、大きさが一定である複数の貫通孔が形成され、
前記フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が各前記貫通孔の内側に形成され、
剥離可能な剥離接着層を更に有し、
該剥離接着層が前記ベース面に形成され、
前記薄膜フィルタが該剥離接着層上に形成されている薄膜フィルタ基板。
【請求項6】
ベース面を有するベース基板と、
該ベース基板の前記ベース面上に形成されている薄膜フィルタとを有し、
該薄膜フィルタは、
フィルム面と、該フィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有し、樹脂を用いて形成されている薄膜部を有し、
該薄膜部に前記フィルム面から前記裏フィルム面まで貫通し、大きさが一定である複数の貫通孔が形成され、
前記フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が各前記貫通孔の内側に形成され、
前記ベース基板が規則的な配置で形成されている複数の個別領域を有し、
前記薄膜フィルタが各前記個別領域に応じて形成されている複数のフィルタ領域を有し、該フィルタ領域それぞれに前記複数の貫通孔と前記筋付内壁面とが形成されている薄膜フィルタ基板。
【請求項7】
前記ベース基板が規則的な配置で形成されている複数の個別領域を有し、
前記薄膜フィルタが各前記個別領域に応じて形成されている複数のフィルタ領域を有し、該フィルタ領域それぞれに前記複数の貫通孔と前記筋付内壁面とが形成されている請求項5記載の薄膜フィルタ基板。
【請求項8】
剥離可能な剥離接着層がベース基板に形成される剥離接着層形成工程と、
該剥離接着層上に薄膜フィルタが形成される薄膜フィルタ形成工程と、
該剥離接着層形成工程および該薄膜フィルタ形成工程が実行されることによって、前記剥離接着層および前記薄膜フィルタが形成された薄膜フィルタ基板の前記剥離接着層から前記薄膜フィルタが剥離される薄膜フィルタ剥離工程とを有し、
該薄膜フィルタ形成工程は、
樹脂層が前記ベース基板の前記剥離接着層上に形成される樹脂層形成工程と、
該樹脂層の表面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が形成されるように、該樹脂層の表面から裏面まで貫通し、大きさが一定である貫通孔が該樹脂層に形成される貫通孔形成工程とを有し、
前記薄膜フィルタ形成工程は、
前記樹脂層の表面に金属層が形成される金属層形成工程と、
複数の孔部が形成されているレジストパターンが該金属層に形成されるレジストパターン形成工程と、
該レジストパターンがマスクに用いられて前記複数の孔部に応じた対応孔部が前記金属層に形成されることによって、金属パターンが形成される金属パターン形成工程とを更に有し、
前記貫通孔形成工程は、前記筋付内壁面が形成されるように、該金属パターンをマスクに用いた反応性イオンエッチングが実行される薄膜フィルタの製造方法。
【請求項9】
薄膜フィルタがベース基板に形成されている薄膜フィルタ基板の製造方法であって、
剥離可能な剥離接着層が前記ベース基板に形成される剥離接着層形成工程と、
該剥離接着層上に薄膜フィルタが形成される薄膜フィルタ形成工程とを有し、
該薄膜フィルタ形成工程は、
樹脂層が前記ベース基板の前記剥離接着層上に形成される樹脂層形成工程と、
該樹脂層の表面と交差する交差方向に沿って筋状部を有する筋付内壁面が形成されるように、該樹脂層の表面から裏面まで貫通し、大きさが一定である貫通孔が該樹脂層に形成される貫通孔形成工程とを有し、
前記薄膜フィルタ形成工程は、
前記樹脂層の表面に金属層が形成される金属層形成工程と、
複数の孔部が形成されているレジストパターンが該金属層に形成されるレジストパターン形成工程と、
該レジストパターンがマスクに用いられて前記複数の孔部に応じた対応孔部が前記金属層に形成されることによって、金属パターンが形成される金属パターン形成工程とを更に有し、
前記貫通孔形成工程は、前記筋付内壁面が形成されるように、該金属パターンをマスクに用いた反応性イオンエッチングが実行される薄膜フィルタ基板の製造方法。
【請求項10】
MEMSチップと、該MEMSチップが固着されているパッケージ基板とを有するMEMSマイクロフォンであって、
該MEMSマイクロフォンは、前記パッケージ基板または前記MEMSチップに形成されている薄膜フィルタを有し、
該薄膜フィルタは、フィルム面と、該フィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有し、樹脂を用いて形成されている薄膜部を有し、
該薄膜部に前記フィルム面から前記裏フィルム面まで貫通し、大きさが一定である複数の貫通孔が形成され、
前記フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が各前記貫通孔の内側に形成されているMEMSマイクロフォン。
【請求項11】
MEMSチップと、該MEMSチップが固着されるパッケージ基板とを用いてMEMSマイクロフォンが製造されるMEMSマイクロフォンの製造方法であって、
前記パッケージ基板が製造されるパッケージ領域が複数形成されているパッケージパネルの表面に感光性接着剤からなる感光性接着層を形成する感光性接着層形成工程と、
剥離可能な剥離接着層がベース基板に形成される剥離接着層形成工程と、該剥離接着層上に薄膜フィルタが形成される薄膜フィルタ形成工程とが実行されることによって製造されている薄膜フィルタ基板について、該薄膜フィルタ基板の前記剥離接着層から前記薄膜フィルタが剥離される薄膜フィルタ剥離工程と、
該薄膜フィルタ剥離工程によって剥離された前記薄膜フィルタが前記パッケージパネルに転写される薄膜フィルタ転写工程とを有し、
前記薄膜フィルタ形成工程は、
樹脂層が前記ベース基板の前記剥離接着層上に形成される樹脂層形成工程と、
該樹脂層の表面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が形成されるように、該樹脂層の表面から裏面まで貫通し、大きさが一定である貫通孔が該樹脂層に形成される貫通孔形成工程とを有し、
前記薄膜フィルタ形成工程は、
前記樹脂層の表面に金属層が形成される金属層形成工程と、
複数の孔部が形成されているレジストパターンが該金属層に形成されるレジストパターン形成工程と、
該レジストパターンがマスクに用いられて前記複数の孔部に応じた対応孔部が前記金属層に形成されることによって、金属パターンが形成される金属パターン形成工程とを更に有し、
前記貫通孔形成工程は、前記筋付内壁面が形成されるように、該金属パターンをマスクに用いた反応性イオンエッチングが実行されるMEMSマイクロフォンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子や水の進入防止に用いられる薄膜フィルタ、薄膜フィルタを有する薄膜フィルタ基板、薄膜フィルタの製造方法、薄膜フィルタ基板の製造方法、薄膜フィルタを有するMEMSマイクロフォン、MEMSマイクロフォンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粒子、細胞等の微物や水が内部に進入することを防止するため、フィルタが用いられている。この種のフィルタに関して、例えば、特許文献1には、微小穿孔が形成されているポリマーフィルムが開示されている。このポリマーフィルムでは、各穿孔のフィルム面側に現れる直径とその裏面側に現れる直径とが異なっている。また、特許文献2には、複数の貫通孔が高い密度で規則的に形成されている加工フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-199069号公報
【文献】特開2017-221887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した従来技術では、フィルタが樹脂フィルムを用いて製造される。この場合、その樹脂フィルムに孔開け加工が行われ、それによって得られる穿孔樹脂フィルムがフィルタとして使用される。
【0005】
しかし、例えば、孔開け加工がレーザを用いて行われた場合、レーザの照射で削られた部分がデブリ(破片)となり、そのデブリが穿孔樹脂フィルムの孔の内側に付着するおそれがある。そうすると、孔の一部がデブリによって塞がれ、フィルタの濾過機能が低下する。また、デブリの付着に伴い各孔の大きさにばらつきが出る。そのため、孔開け加工がレーザを用いて行われた場合の穿孔樹脂フィルムは、フィルタとして使用することができない。
【0006】
一方、孔開け加工がウェットエッチングで行われることもある。この場合、ウェットエッチングで孔が形成されると、孔の内部において、内壁面が表面に凹凸のない滑らかな曲面になる。
【0007】
そのような穿孔樹脂フィルムがフィルタとして使用されると、孔を通る方向とは異なった方向の気流が孔の内部を流れる。すると、孔の内壁面に負荷がかかる。穿孔樹脂フィルムにおいて、孔の周囲の部分はそのほかの部分よりも弱いため、損傷を受けやすい。そのため、孔開け加工がウェットエッチングで行われた場合の穿孔樹脂フィルムは、耐久性に乏しい。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、孔の大きさが一定になり、かつ各孔を通る気流が一定の方向を向くような構造を有する薄膜フィルタ、その薄膜フィルタを有する薄膜フィルタ基板、薄膜フィルタの製造方法、薄膜フィルタ基板の製造方法、その薄膜フィルタを有するMEMSマイクロフォン、MEMSマイクロフォンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、フィルム面と、そのフィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有し、樹脂を用いて形成されている薄膜部を有し、その薄膜部にフィルム面から裏フィルム面まで貫通し、大きさが一定である複数の貫通孔が形成され、フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が各貫通孔の内側に形成されている薄膜フィルタであって、複数の貫通孔が平面視円形に形成され、薄膜フィルタは、複数の貫通孔をそれぞれ有する第1の貫通孔群および第2の貫通孔群を有し、その第1の貫通孔群は、薄膜部の周端部との間隔が第1の間隔に設定されている第1の貫通孔を有し、かつその複数の貫通孔が直線上に等間隔で配置され、その第2の貫通孔群は、周端部との間隔が第1の間隔と異なる第2の間隔に設定されている第2の貫通孔を有し、かつその複数の貫通孔が直線上に等間隔で配置され、第1の貫通孔群によって形成される第1のラインと、第2の貫通孔群によって形成される第2のラインとが交互に配置されている薄膜フィルタを特徴とする。
【0010】
上記薄膜フィルタの場合、筋状部が貫通孔の内壁面の全体に配置されていることが好ましい。
【0011】
さらに、筋状部が薄膜部の厚さであるフィルム厚の80%よりも大きい長さに形成されていることが好ましい。
【0013】
さらに、第1の貫通孔群に含まれる前記貫通孔と、第2の貫通孔群に含まれる貫通孔の双方を含む隣接する複数の貫通孔が、それぞれの中心を頂点とする正三角形を形成するように配置されているようにすることができる。
【0014】
そして、本発明は、ベース面を有するベース基板と、そのベース基板のベース面上に形成されている薄膜フィルタとを有し、その薄膜フィルタは、フィルム面と、そのフィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有し、樹脂を用いて形成されている薄膜部を有し、その薄膜部にフィルム面から裏フィルム面まで貫通し、大きさが一定である複数の貫通孔が形成され、フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が各貫通孔の内側に形成され、剥離可能な剥離接着層を更に有し、その剥離接着層がベース面に形成され、薄膜フィルタが該剥離接着層上に形成されている薄膜フィルタ基板を提供する。
【0015】
また、本発明は、ベース面を有するベース基板と、そのベース基板のベース面上に形成されている薄膜フィルタとを有し、その薄膜フィルタは、フィルム面と、そのフィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有し、樹脂を用いて形成されている薄膜部を有し、その薄膜部にフィルム面から裏フィルム面まで貫通し、大きさが一定である複数の貫通孔が形成され、フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が各貫通孔の内側に形成され、ベース基板が規則的な配置で形成されている複数の個別領域を有し、薄膜フィルタが各個別領域に応じて形成されている複数のフィルタ領域を有し、そのフィルタ領域それぞれに複数の貫通孔と筋付内壁面とが形成されている薄膜フィルタ基板を提供する。
【0016】
上記薄膜フィルタ基板の場合、ベース基板が規則的な配置で形成されている複数の個別領域を有し、薄膜フィルタが各個別領域に応じて形成されている複数のフィルタ領域を有し、そのフィルタ領域それぞれに複数の貫通孔と筋付内壁面とが形成されているようにすることもできる。
【0017】
さらに、本発明は、剥離可能な剥離接着層がベース基板に形成される剥離接着層形成工程と、その剥離接着層上に薄膜フィルタが形成される薄膜フィルタ形成工程と、その剥離接着層形成工程およびその薄膜フィルタ形成工程が実行されることによって、剥離接着層および薄膜フィルタが形成された薄膜フィルタ基板の剥離接着層から薄膜フィルタが剥離される薄膜フィルタ剥離工程とを有し、その薄膜フィルタ形成工程は、樹脂層がベース基板の剥離接着層上に形成される樹脂層形成工程と、その樹脂層の表面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が形成されるように、その樹脂層の表面から裏面まで貫通し、大きさが一定である貫通孔がその樹脂層に形成される貫通孔形成工程とを有し、薄膜フィルタ形成工程は、樹脂層の表面に金属層が形成される金属層形成工程と、複数の孔部が形成されているレジストパターンがその金属層に形成されるレジストパターン形成工程と、そのレジストパターンがマスクに用いられて複数の孔部に応じた対応孔部が金属層に形成されることによって、金属パターンが形成される金属パターン形成工程とを更に有し、貫通孔形成工程は、筋付内壁面が形成されるように、その金属パターンをマスクに用いた反応性イオンエッチングが実行される薄膜フィルタの製造方法を提供する。
【0019】
そして、本発明は、薄膜フィルタがベース基板に形成されている薄膜フィルタ基板の製造方法であって、剥離可能な剥離接着層がベース基板に形成される剥離接着層形成工程と、その剥離接着層上に薄膜フィルタが形成される薄膜フィルタ形成工程とを有し、その薄膜フィルタ形成工程は、樹脂層がベース基板の剥離接着層上に形成される樹脂層形成工程と、その樹脂層の表面と交差する交差方向に沿って筋状部を有する筋付内壁面が形成されるように、その樹脂層の表面から裏面まで貫通し、大きさが一定である貫通孔がその樹脂層に形成される貫通孔形成工程とを有し、薄膜フィルタ形成工程は、樹脂層の表面に金属層が形成される金属層形成工程と、複数の孔部が形成されているレジストパターンがその金属層に形成されるレジストパターン形成工程と、そのレジストパターンがマスクに用いられて複数の孔部に応じた対応孔部が金属層に形成されることによって、金属パターンが形成される金属パターン形成工程とを更に有し、貫通孔形成工程は、筋付内壁面が形成されるように、その金属パターンをマスクに用いた反応性イオンエッチングが実行される薄膜フィルタ基板の製造方法を提供する。
【0021】
そして、本発明は、MEMSチップと、そのMEMSチップが固着されているパッケージ基板とを有するMEMSマイクロフォンであって、そのMEMSマイクロフォンは、パッケージ基板またはMEMSチップに形成されている薄膜フィルタを有し、その薄膜フィルタは、フィルム面と、そのフィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有し、樹脂を用いて形成されている薄膜部を有し、その薄膜部にフィルム面から裏フィルム面まで貫通し、大きさが一定である複数の貫通孔が形成され、フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が各貫通孔の内側に形成されているMEMSマイクロフォンを提供する。
【0022】
また、本発明は、MEMSチップと、そのMEMSチップが固着されるパッケージ基板とを用いてMEMSマイクロフォンが製造されるMEMSマイクロフォンの製造方法であって、パッケージ基板が製造されるパッケージ領域が複数形成されているパッケージパネルの表面に感光性接着剤からなる感光性接着層を形成する感光性接着層形成工程と、 剥離可能な剥離接着層がベース基板に形成される剥離接着層形成工程と、その剥離接着層上に薄膜フィルタが形成される薄膜フィルタ形成工程とが実行されることによって製造されている薄膜フィルタ基板について、その薄膜フィルタ基板の剥離接着層から薄膜フィルタが剥離される薄膜フィルタ剥離工程と、その薄膜フィルタ剥離工程によって剥離された薄膜フィルタがパッケージパネルに転写される薄膜フィルタ転写工程とを有し、薄膜フィルタ形成工程は、樹脂層がベース基板の剥離接着層上に形成される樹脂層形成工程と、その樹脂層の表面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が形成されるように、その樹脂層の表面から裏面まで貫通し、大きさが一定である貫通孔がその樹脂層に形成される貫通孔形成工程とを有し、薄膜フィルタ形成工程は、樹脂層の表面に金属層が形成される金属層形成工程と、複数の孔部が形成されているレジストパターンがその金属層に形成されるレジストパターン形成工程と、そのレジストパターンがマスクに用いられて複数の孔部に応じた対応孔部が金属層に形成されることによって、金属パターンが形成される金属パターン形成工程とを更に有し、貫通孔形成工程は、筋付内壁面が形成されるように、その金属パターンをマスクに用いた反応性イオンエッチングが実行されるMEMSマイクロフォンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、本発明によれば、孔の大きさが一定になり、かつ各孔を通る気流が一定の方向を向くような構造を有する薄膜フィルタ、その薄膜フィルタを有する薄膜フィルタ基板、薄膜フィルタの製造方法、薄膜フィルタ基板の製造方法、その薄膜フィルタを有するMEMSマイクロフォン、MEMSマイクロフォンの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る薄膜フィルタ基板を示す斜視図である。
図2】同じく、薄膜フィルタ基板の断面図である。
図3】同じく、薄膜フィルタの要部を拡大した平面図である。
図4】同じく、薄膜フィルタの複数の貫通孔を含む部分を拡大した平面図である。
図5図3の5-5線に対応した部分の断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る薄膜フィルタの要部を更に拡大した平面図である。
図7図6の7-7線の切断面を示す斜視図である。
図8】筋状部の要部を示す斜視図である。
図9】本発明の実施の形態に係る薄膜フィルタおよび薄膜フィルタ基板の製造工程を示す要部の断面図である。
図10図9の後続の工程を示す要部の断面図である。
図11】(a)は図10の後続の工程を示す要部の断面図、(b)は図11(a)の後続の工程を示す要部の断面図である。
図12】変形例1に係る薄膜フィルタの要部を拡大した平面図である。
図13】変形例1に係る薄膜フィルタの複数の貫通孔を含む部分の平面図である。
図14】変形例2に係る薄膜フィルタの要部を拡大した平面図である。
図15】同じく、薄膜フィルタの要部を更に拡大した平面図である。
図16図15の16-16線の切断面を示す斜視図である。
図17】(a)は変形例3に係る薄膜フィルタ基板の要部を示した平面図、(b)は薄膜フィルタ基板に含まれている薄膜フィルタおよび巻取り部材を示す斜視図である。
図18】変形例4に係る薄膜フィルタの図5に対応した断面図である。
図19】変形例5に係る薄膜フィルタの図7に対応した斜視図である。
図20】本発明の実施の形態に係るMEMSマイクロフォンの図22における20-20線に対応した部分の断面図である。
図21図20の要部を拡大して示した断面図である。
図22】本発明の実施の形態に係るMEMSマイクロフォンのキャップを外して示した要部の平面図である。
図23】変形例にかかるMEMSマイクロフォンの図20に対応した断面図である。
図24】パッケージパネルを示す斜視図である。
図25】薄膜フィルタ基板を示す斜視図である。
図26】感光性接着層形成工程を示す要部の断面図である。
図27】薄膜フィルタ剥離工程を示す要部の断面図である。
図28】感光性接着層形成工程の別の要部を示す断面図である。
図29】薄膜フィルタ転写工程を示す断面図である。
図30】本発明の実施の形態にかかるチップ付きパネルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0027】
(薄膜フィルタおよび薄膜フィルタ基板の実施形態)
まず、主に図1図8を参照して本発明の実施の形態に係る薄膜フィルタ2、薄膜フィルタ基板10の構造について説明する。図1は本発明の実施の形態に係る薄膜フィルタ基板10を示す斜視図である。図2は薄膜フィルタ基板10の断面図である。図3は薄膜フィルタ2の要部を拡大した平面図、図4は薄膜フィルタ2の複数の貫通孔を含む部分を拡大した平面図である。図5は、図3の5-5線に対応した部分の断面図である。図6は薄膜フィルタ2の要部を更に拡大した平面図、図7図6の7-7線の切断面を示す斜視図である。図8は筋状部37の要部を示す斜視図である。
【0028】
薄膜フィルタ基板10は、ベース基板としてのシリコンウェハ1(ガラス、石英などからなる基板でもよい)と、薄膜フィルタ2と、剥離接着層3とを有している。
【0029】
シリコンウェハ1は、片側の表面であるベース面1aを有している。図2に示すように、剥離接着層3がそのベース面1aに形成され、薄膜フィルタ2がその剥離接着層3上に形成されている。
【0030】
薄膜フィルタ2は、微粒子や水の進入防止に用いられるフィルタである。薄膜フィルタ2は、図3に示すように、ポリアミド(polyamide)またはポリイミドフィルムを用いて形成されている薄膜部16を有している。また、複数の貫通孔15が薄膜部16に形成され、図6、7に示す筋付内壁面38がその各貫通孔15に形成されている。
【0031】
薄膜部16は、図2に示すように、片側表面であるフィルム面16aと、フィルム面16aの裏側に配置されている裏フィルム面16bとを有している。複数の貫通孔15がその薄膜部16に規則的で均一な配置で形成されている。図3図4では、そのフィルム面16aにドットが付されている。
【0032】
各貫通孔15は、図2に示すように、フィルム面16aから裏フィルム面16bまで貫通している孔部である。フィルム面16aから裏フィルム面16bまで貫通孔15の大きさ(直径)が一定である。隣接している貫通孔15の間隔も一定の大きさで形成されている。
【0033】
また、各貫通孔15が平面視円形に形成されている。その直径(図5のR)はおよそ2μmから6μm程度である。また、薄膜フィルタ2の膜厚((図5のTで、薄膜部16の厚さであるフィルム厚に相当する)がおよそ1μmから6μm程度である。
【0034】
そして、図3に詳しく示すように、薄膜フィルタ2は、第1の貫通孔群15Aおよび第2の貫通孔群15Bを有している。第1の貫通孔群15Aには、第1の貫通孔15A1と、貫通孔15A2,15A3・・・貫通孔15Anとを含む複数の貫通孔15が含まれている。第1の貫通孔15A1は、薄膜部16の周端部16eとの間隔が第1の間隔d1に設定され、かつ第1の貫通孔群15Aに含まれる貫通孔15の中で周端部16eに最も近い位置に配置されている。第1の貫通孔15A1、貫通孔15A2、15A3・・・15Anは、周端部16eと直交上に交差する方向に沿って直線上に等間隔で配置されて、第1のラインL1を形成している。
【0035】
第2の貫通孔群15Bには、第2の貫通孔15B1と、貫通孔15B2と、貫通孔15Bnとを含む複数の貫通孔15が含まれている。第2の貫通孔15B1は、周端部16eとの間隔が第1の間隔d1よりも大きい第2の間隔d2に設定され、かつ第2の貫通孔群15Bに含まれる貫通孔15の中で周端部16eに最も近い位置に配置されている。第2の貫通孔15B1、貫通孔15B2・・・15Bnは、周端部16eと直交上に交差する方向に沿って直線上に等間隔で配置されて、第2のラインL2を形成している。
【0036】
また、薄膜フィルタ2では、第1のラインL1と第2のラインL2とが交互に配置されている。
【0037】
さらに、薄膜フィルタ2は、第1の貫通孔群15Aに含まれる隣接する貫通孔15(例えば、図3では、貫通孔15A2、貫通孔15A3)の中心の間に、第2の貫通孔群15Bに含まれる貫通孔15(例えば、図3の貫通孔15B2)の中心が配置されるように形成されている。
【0038】
貫通孔15は空気の通り道となるが、隣接する貫通孔15の間の部分(図3,4では、ドットが付されている部分)は薄膜部16であるため、空気の通り道にならない。
【0039】
薄膜フィルタ2の場合は、図4に示すように、代表貫通孔として、3つの隣接する貫通孔15a,15b,15cが考慮される。貫通孔15a,15b,15cの中心はa0,b0,c0であるが、これらを頂点とする三角形(図4の三角形ABC)は貫通孔15の配置の規則性から、正三角形である。また、薄膜フィルタ2は、薄膜部16における貫通孔15の配置密度ができるだけ高くなるように形成されている。薄膜フィルタ2は、隣接する3つの貫通孔15の間に別の貫通孔15が形成され得ないように(例えば、貫通孔15a,15b,15cの間に別の貫通孔15が形成され得ないように)、隣接する貫通孔15の間隔が狭められている(このような構造を貫通孔の高密度構造ともいう)。
【0040】
そして、薄膜フィルタ2は、図6図7に示すように、筋付内壁面38が各貫通孔15の内側に形成されている。筋付内壁面38は複数の筋状部37を有している。複数の筋状部37が貫通孔15の内壁面のほぼ全体に配置され、筋付内壁面38は貫通孔15の内壁面のほぼ全体に形成されている。貫通孔15の内壁面に滑らかな部分が残らないように、筋状部37が隙間なく形成されている。
【0041】
筋状部37は、フィルム面16aと交差する交差方向、すなわち、フィルム面16aから裏フィルム面16bまでを最短距離で結ぶ方向(図7のd7、d8で示す方向)に沿って形成されている。
【0042】
各筋状部37は、貫通孔15の内壁面に交差方向に沿って概ね直線状に形成された凸部または凹部である。各筋状部37がすべて凸部でもよいし、すべて凹部でもよい。各筋状部37に凸部と凹部とが混在してもよい。
【0043】
図8には、筋状部37が交差方向に沿った凹部として描かれている。図8の筋状部37は、第1の筋状部37aと、第1の筋状部37aよりも幅の広い第2の筋状部37bとを有している。各筋状部37は、フィルム厚Tの80%よりも大きい長さに形成されている。筋状部37の長さ37Lがフィルム厚Tの80%よりも大きい大きさを有している。図8に示されている筋状部37のように、各筋状部37の長さが共通でもよい。各筋状部37の長さが相違していてもよい(図示せず)。
【0044】
剥離接着層3は、剥離可能な接着剤を用いて形成されている。例えば、加熱によって剥離する熱発泡性樹脂からなる熱発泡性テープや、UVテープを用いて剥離接着層3が形成される。
【0045】
(薄膜フィルタおよび薄膜フィルタ基板の製造方法)
続いて、以上の構成を有する薄膜フィルタ2および薄膜フィルタ基板10の製造方法について、図9図11を参照して説明する。ここで、図9図11は、薄膜フィルタ2および薄膜フィルタ基板10の製造工程を示す要部の断面図である。
【0046】
薄膜フィルタ基板10は、以下の薄膜フィルタ基板製造工程が実行されることによって製造される。その製造された薄膜フィルタ基板10に対して、薄膜フィルタ剥離工程が実行されることによって、薄膜フィルタ2が製造される。
【0047】
(薄膜フィルタ基板製造工程)
そして、薄膜フィルタ基板製造工程は、剥離接着層形成工程と、薄膜フィルタ形成工程とを有している。
【0048】
剥離接着層形成工程では、シリコンウェハ1に剥離接着層3が形成される。この場合、例えば、熱発泡性テープがベース基板としてのシリコンウェハ1のベース面1aに張り付けられる。すると、図9に示すように、剥離接着層3が形成される。また、図示しない熱発泡性樹脂がシリコンウェハ1のベース面1aに塗布されることによって、剥離接着層3が形成されることもできる。
【0049】
熱発泡性樹脂は樹脂および発泡剤を含む。熱発泡性樹脂は加熱によりガスを発生させて発泡可能である。このような熱発泡性樹脂が塗布されて、熱発泡性樹脂層が形成されると、その熱発泡性樹脂層が加熱によって剥離する熱剥離層になり、その熱剥離層によって、剥離接着層3が形成される。また、熱発泡性樹脂がシート状に加工されている熱発泡性樹脂シートが張り付けられて熱発泡性樹脂層が形成されてもよい。この場合、その熱発泡性樹脂シートによって、剥離接着層3が形成される。また、ポリイミド系接着剤や、エポキシ樹脂系接着剤を用いることによって剥離接着層3が形成されることもできる。
【0050】
次に、薄膜フィルタ形成工程が実行されて、剥離接着層3上に薄膜フィルタ2が形成される。その薄膜フィルタ形成工程には、樹脂層形成工程と、金属層形成工程と、レジストパターン形成工程と、金属パターン形成工程と、貫通孔形成工程とが含まれている。
【0051】
まず、樹脂層形成工程が実行される。樹脂層形成工程では、図9に示すように、樹脂層4がポリアミド(polyamide)またはポリイミドフィルムを用いて剥離接着層3上に形成される。
【0052】
次に、金属層形成工程が実行される。金属層形成工程では、図10に示すように、金属層5がチタン(Ti)を用いて樹脂層4の表面上に形成される。チタン(Ti)のほか、SUS,Crが用いられて金属層5が形成されることもできる。
【0053】
続いて、レジストパターン形成工程が実行される。レジストパターン形成工程では、金属層5の表面にフォトレジストが塗布される。その後、図示しないフォトマスクを用いて露光が行われ、さらに現像が行われることにより、複数の孔部6rが形成されているレジストパターン6pが形成される。
【0054】
次に、金属パターン形成工程が実行される。金属パターン形成工程では、レジストパターン6pがマスクに用いられて金属層5を対象にしたArによるミリングが行われる(反応性イオンエッチングが行われてよいし、ウェットエッチングが行われてもよい)。その後、レジストパターン6pが除去される。すると、図11(a)に示すように、金属層5の不要な部分が除去され、レジストパターン6pの孔部6rに応じた対応孔部5hが金属層5に形成される。これによって、金属パターン5Aが形成される。金属パターン5Aは、のちに形成される薄膜フィルタ2に応じたパターンで形成される。
【0055】
続いて、貫通孔形成工程が実行される。貫通孔形成工程では、金属パターン5Aがマスクに用いられて、筋付内壁面38が形成されるように、樹脂層4に対する反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)が実行される。すると、図11(b)に示すように、金属パターン5Aに応じて、樹脂層4の金属パターン5Aで被覆されていない部分が不要な部分として除去される。この場合、不要な部分が除去される箇所に貫通孔15が形成される。この場合、反応性イオンエッチングでは、イオンによるスパッタ作用と化学反応の両方の効果でエッチングが進行する。そのため、反応性イオンエッチングでは、アンダーカットのない垂直な形状が実現されやすい。したがって、貫通孔15の内側に複数の筋状部37が形成され、それによって、筋付内壁面38が形成される。こうして、反応性イオンエッチングが実行された後の樹脂層4によって、薄膜部16を有する薄膜フィルタ2が得られる。
【0056】
貫通孔形成工程が実行されたあと、図2に示したように、金属パターン5Aが除去されることもあるが、図11(b)に示す薄膜フィルタ2のように、薄膜部16の表面(フィルム面16a)に金属パターン5Aが残ることもある。以上のようにして、薄膜フィルタ基板10が製造される。
【0057】
次に、薄膜フィルタ剥離工程が実行される。すると、薄膜フィルタ2が製造される。薄膜フィルタ剥離工程が実行されると、図27に示すように、薄膜フィルタ基板10の剥離接着層3から薄膜フィルタ2が剥離される(詳しくは後述する)。こうして、薄膜フィルタ2が製造される。
【0058】
(薄膜フィルタおよび薄膜フィルタ基板の作用効果)
以上の薄膜フィルタ2は、貫通孔15の内側に筋付内壁面38が形成されている。筋付内壁面38は、複数の筋状部37を有しており、筋状部37は交差方向に沿って形成されている。すると、空気が薄膜フィルタ2を通過する場合、その空気による気流(通過気流)は、貫通孔15の内側を筋状部37に沿った方向(図7のd7、d8で示す方向)に通過する。つまり、筋状部37が貫通孔15を通過する通過気流の動きを交差方向に整えるガイド部材となるため、d7、d8で示す方向とは異なった方向の気流が形成されない。ゆえに、貫通孔15の周囲の部分が通過気流の影響を受けにくく、損傷も受けにくい。通過気流が一定の方向を向くような構造を薄膜フィルタ2が有するから、薄膜フィルタ2の耐久性が良好である。
【0059】
また、薄膜フィルタ2では、貫通孔15の孔開け加工が反応性イオンエッチングで行われている。反応性イオンエッチングでは、イオンによるスパッタ作用と化学反応の両方の効果でエッチングが進行する。この場合、除去された材料(薄膜フィルタ2の場合は、ポリイミドなど)が揮発物質化され、それを含む真空排気が行われる。そのため、デブリの発生や、そのデブリの付着が生じることもない。したがって、貫通孔15の孔径にばらつきが生じることもない。よって、薄膜フィルタ2は、製造工程に起因する濾過機能の低下がなく、耐久性も良好である。
【0060】
薄膜フィルタ2では、筋状部37が貫通孔15の内壁面のほぼ全体に配置されているから、貫通孔15の内壁面のほぼ全体がガイド部材であり、耐久性が良好である。また、筋状部37がフィルム厚Tの80%よりも大きい長さに形成されているから、通過気流の乱れがより生じにくく、筋状部37が良好なガイド部材となる。
【0061】
そして、薄膜フィルタ2では、第1の貫通孔群15Aに含まれる隣接する貫通孔15の中心の間に、第2の貫通孔群15Bに含まれる貫通孔15の中心が配置されるように形成されている。そのため、薄膜フィルタ2において、貫通孔15の配置に無駄がなく、通過気流の通り道になる部分が効率的に確保されている。しかも、薄膜フィルタ2が高密度構造を有するから貫通孔15の配置によりいっそうの無駄がない。
【0062】
一方、薄膜フィルタ2は、ポリアミド(polyamide)またはポリイミドなどからなる薄膜部16が主体となった部材であるため、それ単独での取扱いが困難である。しかし、薄膜フィルタ基板10であれば、平板状のシリコンウェハ1を有するから、運搬、保管等の取扱いが容易になる。
【0063】
しかも、薄膜フィルタ基板10は、剥離接着層3を有しているので、必要に応じて、薄膜フィルタ2がシリコンウェハ1から剥離されることによって、薄膜フィルタ2が取り出される。その薄膜フィルタ2が所望の製品に取り付けられることで、その製品に求められる濾過機能が発揮される。そのため、薄膜フィルタ基板10の利便性が高い。また、シリコンウェハ1は、薄膜フィルタ2が剥離されたあと、再び薄膜フィルタ2が形成されるベース基板として再利用可能であるから、材料や資源の無駄が減少する。
【0064】
(変形例1)
次に、図12図13を参照して、変形例1に係る薄膜フィルタ32について説明する。ここで、図12は、変形例1に係る薄膜フィルタ32の要部を示した平面図、図13は薄膜フィルタ32の代表貫通孔15a,15b,15c,15dを含む部分の平面図である。
【0065】
薄膜フィルタ32は、薄膜フィルタ2と比較して、第1の貫通孔群15Aを有しているが、第2の貫通孔群15Bを有していない点で相違している。薄膜フィルタ32は、第2の貫通孔群15Bを有していないので、第1のラインL1が複数配置されている。また、それぞれの第1のラインL1に含まれる第1の貫通孔15A1、貫通孔15A2、15A3・・・15Anが周端部16eと直交上に交差する方向に沿って直線上に等間隔で配置されている。さらに、各第1のラインL1に含まれる複数の第1の貫通孔15A1が周端部16eに沿って直線上に等間隔で配置されている(貫通孔15A2、15A3・・・15Anも同様)。すべての第1の貫通孔15A1と周端部16eとの間隔が一定の端部間隔d3に設定されている。
【0066】
薄膜フィルタ32では、図13に示すように、代表貫通孔として、4つの隣接する貫通孔15a,15b,15c,15dが設定される。貫通孔15a,15b,15c,15dの中心はa0,b0,c0,d0である。
【0067】
四角形ABCDは、隣接する2つの第1の貫通孔群15Aに含まれる隣接する複数の貫通孔15(15a,15b,15c,15d)の中心a0,b0,c0,d0を頂点とする四角形であり、貫通孔15の配置の規則性から正方形である。
【0068】
薄膜フィルタ32は、薄膜フィルタ2と同様の複数の貫通孔15を有していて、薄膜フィルタ2と同様の製造方法によって製造することができる。その各貫通孔15には、薄膜フィルタ2と同様の筋付内壁面38が反応性イオンエッチングによって形成されている(図12図13には図示せず)。そのため、薄膜フィルタ32も、薄膜フィルタ2の代わりに薄膜フィルタ32が形成されている薄膜フィルタ基板(図示せず)も、前述した薄膜フィルタ2、薄膜フィルタ基板10と同様の作用効果を奏する。
【0069】
(変形例2)
次に、図14図15図16を参照して、変形例2に係る薄膜フィルタ34について説明する。ここで、図14は、変形例2に係る薄膜フィルタ34の要部を拡大した平面図、図15は薄膜フィルタ34の要部を更に拡大した平面図、図16図15の16-16線の切断面を示す斜視図である。
【0070】
薄膜フィルタ34は、薄膜フィルタ2と比較して、薄膜部16の代わりに薄膜部36を有する点、貫通孔15の代わりに貫通孔35が形成されている点で相違している。薄膜部36は、薄膜部16と比較して、貫通孔35が形成されている点で相違している。
【0071】
前述した貫通孔15は、平面視円形に形成されていたが、貫通孔35は平面視正6角形に形成されている。薄膜フィルタ34は、第1の貫通孔群35Aおよび第2の貫通孔群35Bを有している。第1の貫通孔群35Aには、第1の貫通孔35A1と、貫通孔35A2,35A3・・・貫通孔35Anとを含む複数の貫通孔35が含まれている。第1の貫通孔35A1、貫通孔35A2、35A3・・・35Anは、第1の貫通孔群15Aと同様の第1のラインL1を形成している。
【0072】
第2の貫通孔群35Bには、第2の貫通孔35B1と、貫通孔35B2と、貫通孔35Bnとを含む複数の貫通孔35が含まれている。第2の貫通孔35B1、貫通孔35B2・・・35Bnは、第2の貫通孔群15Bと同様の第2のラインL2を形成している。薄膜フィルタ34の場合も、隣接する3つの貫通孔35(例えば、貫通孔35A2、35A3、35B2)の中心を頂点とする三角形が、貫通孔35の配置の規則性から、正三角形である。
【0073】
そして、薄膜フィルタ34は、図15図16に示すように、筋付内壁面48が各貫通孔35の内側に形成されている。筋付内壁面48は複数の筋状部47を有している。複数の筋状部47は、複数の筋状部37と同様、貫通孔35の内壁面のほぼ全体に配置され、筋付内壁面48は貫通孔35の内壁面のほぼ全体に形成されている。筋状部47は、筋状部37と同様、交差方向に沿って形成されている。また、各筋状部47は、貫通孔35の交差方向に沿って概ね直線状に形成された凸部または凹部である。
【0074】
薄膜フィルタ34は、複数の貫通孔35を有しているが、各貫通孔35には、貫通孔15の筋状部37、筋付内壁面38と同様の筋状部47、筋付内壁面48が形成されている。そのため、薄膜フィルタ34も、薄膜フィルタ2の代わりに薄膜フィルタ34が形成されている薄膜フィルタ基板(図示せず)も、前述した薄膜フィルタ2、薄膜フィルタ基板10と同様の作用効果を奏する。
【0075】
(変形例3)
次に、図17を参照して、変形例3に係る薄膜フィルタ基板30について説明する。ここで、図17(a)は、変形例3に係る薄膜フィルタ基板30の要部を示した平面図、図17(b)は、薄膜フィルタ基板30に含まれている薄膜フィルタ2Aおよび巻取り部材199を示す斜視図である。
【0076】
薄膜フィルタ基板30は、ベース基板としてのフィルタパネル1Aと、薄膜フィルタ2Aと、剥離接着層3とを有している。
【0077】
フィルタパネル1Aは、ガラスからなり、矩形板状に形成されている。フィルタパネル1Aは、片側の表面であるベース面に剥離接着層3が形成され、薄膜フィルタ2Aがその剥離接着層3上に形成されている。
【0078】
薄膜フィルタ2Aは、薄膜フィルタ2と比較して、形状が相違している。薄膜フィルタ2は、シリコンウェハ1に応じた概ね円形状に形成されていたが、薄膜フィルタ2Aはフィルタパネル1Aに応じた矩形状に形成されている。薄膜フィルタ2Aは、薄膜フィルタ2と同様の薄膜部16を有し、複数の貫通孔15がその薄膜部16に規則的で均一な配置で形成されている。各貫通孔15には、薄膜フィルタ2と同様の筋付内壁面38が形成されている(図17には図示せず)。薄膜フィルタ2Aの筋付内壁面38は、薄膜フィルタ2と同様、複数の筋状部37を有している。
【0079】
薄膜フィルタ2Aは、薄膜フィルタ2と同様、貫通孔15、筋付内壁面38、筋状部37が形成されているから、薄膜フィルタ2と同様の作用効果を奏する。また、フィルタパネル1Aがシリコンウェハ1の代わりに用いられることで、薄膜フィルタ基板30が薄膜フィルタ基板10と同様の製造方法によって製造される。また、製造された薄膜フィルタ基板30は、剥離接着層3を有しているから、薄膜フィルタ2Aが薄膜フィルタ2と同様に剥離されて、所望の製品に転写されることで、濾過機能が発揮される。
【0080】
一方、図17(b)には、薄膜フィルタ2Aと、筒状の巻取り部材199とが示されている。そして、薄膜フィルタ2Aが薄膜フィルタ基板30から剥離されることに併せて、巻取り部材199を回転させて、薄膜フィルタ2Aが巻取り部材199に巻き取られるようにすることができる。巻取り部材199には、予め剥離接着層3が形成されている。
【0081】
薄膜フィルタ基板30から剥離された薄膜フィルタ2Aは、取り扱いが困難であるが、巻取り部材199がその薄膜フィルタ2Aを巻き取ることによって、取り扱い容易になる。また、薄膜フィルタ基板30の場合、フィルタパネル1Aが平板状の部材なので、起立状態で保管されることが困難である。この点、巻取り部材199は筒状に形成されているから、薄膜フィルタ2Aが起立状態で保管されることに適している。
【0082】
(変形例4)
次に、図18を参照して、変形例4に係る薄膜フィルタ62について説明する。ここで、図18は、変形例4に係る薄膜フィルタ62の図5に応じた断面図である。
【0083】
薄膜フィルタ62は、薄膜フィルタ2と比較して、貫通孔15の代わりに貫通孔65が形成されている点で相違している。貫通孔15の場合、フィルム面16aから裏フィルム面16bまで直径が一定であった。これに対して、貫通孔65では、フィルム面16aから裏フィルム面16bまで直径が漸次縮小されている。貫通孔65には、貫通孔15と同様、筋付内壁面38が形成されているから(図18には図示せず)、薄膜フィルタ62も、薄膜フィルタ2と同様の作用効果を奏する。
【0084】
(変形例5)
次に、図19を参照して、変形例5に係る薄膜フィルタ72について説明する。ここで、図19は、変形例5に係る薄膜フィルタ72の図7に応じた斜視図である。
【0085】
薄膜フィルタ72は、薄膜フィルタ2と比較して、貫通孔15の代わりに貫通孔73が形成されている点で相違している。また、薄膜フィルタ72では、貫通孔73の内側に筋付内壁面74が形成されている。
【0086】
前述した筋付内壁面38では、貫通孔15の内壁面に滑らかな部分が残らないように、筋状部37が隙間なく形成されていた。これに対し、筋付内壁面74では、貫通孔73の内側に滑らかな部分が残るように、筋状凸部76が間隔76dを隔てて飛び飛びに形成されている。そのため、その滑らかな部分として各筋状凸部76の間の部分が残っている。筋状凸部76は、貫通孔73の内壁面に形成された凸部であり、交差方向に沿って概ね直線状に形成されている。したがって、筋付内壁面74の筋状凸部76によって、通過気流が一定の方向に沿って流れ、薄膜フィルタ72も、薄膜フィルタ2と同様の作用効果を奏する。
【0087】
(MEMSマイクロフォンの実施形態)
続いて、MEMSマイクロフォンの実施形態について、図20図22を参照して説明する。ここで、図20は本発明の実施の形態に係るMEMSマイクロフォン100の図22における20-20線に対応した部分の断面図、図21図20の要部を拡大して示した断面図である。図22はMEMSマイクロフォン100のキャップ99を外して示した要部の平面図である。
【0088】
図20に示すように、MEMSマイクロフォン100は、MEMSパッケージ31と、キャップ99とを有している。
【0089】
MEMSパッケージ31は、MEMSチップ19と、MEMSチップ19が固着されているパッケージ基板20と、ボンディングバンプ44と、薄膜フィルタ29と、音響シールド6とを有している。また、MEMSパッケージ31は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)パッケージ91を有している。
【0090】
MEMSチップ19は、可動素子としてのメンブレン33が形成されている素子基板22を有している。MEMSチップ19は、静電容量型マイクロフォンとして利用される。素子基板22は図22に示すような平面視矩形状に形成されている基板であり、シリコン(silicon)を用いて形成されている。素子基板22の中央に孔部22cが形成されている。孔部22cは、素子基板22の上面22b(素子基板22の外側の面)から対向面22a(素子基板22のパッケージ基板20に対向する面)に向かう円筒状に形成されていて、対向面22a側にメンブレン33が形成されている。なお、メンブレン33の上側と下側にバックプレートと呼ばれる2つの薄膜(図示せず)が配置されている。
【0091】
ボンディングバンプ44図20に示すように、対向面22aとパッケージ基板20の双方に固着されているはんだバンプ(solder bump)である。図22に示すように、各ボンディングバンプ44がそれぞれ4つの角部2D、2E,2F,2Gの近傍に配置されている。
【0092】
メンブレン33は、概ね円形状に形成されている振動膜であって、SiO,SiN等の無機金属からなる薄膜である。
【0093】
ボンディングバンプ44は、はんだからなるはんだバンプである。図20に示すように、ボンディングバンプ44は、いずれもMEMSチップ19とパッケージ基板20の双方に固着されている。すなわち、ボンディングバンプ44は対向面22aに形成されている電極パッド7と、パッケージ基板20のパッケージ面20a(パッケージ基板20のMEMSチップ19側の表面)に形成されている電極パッド21の双方にそれぞれ固着されている。ボンディングバンプ44は、MEMSチップ19とパッケージ基板20とを電気的にかつ固定的に接続している。
【0094】
MEMSマイクロフォン100では、薄膜フィルタ29が、パッケージ基板20に対して、後述する音孔(サウンドホール)20bを塞ぐようにして形成されている。薄膜フィルタ29は、前述した薄膜フィルタ2を用いて形成されている。薄膜フィルタ29は、図22に示すように、矩形の四隅を欠落させた変形矩形状に形成されている。後述する感光性接着層61が音孔(サウンドホール)20bの周囲に形成されており、薄膜フィルタ29がその感光性接着層61によって、パッケージ基板20のパッケージ面20aに接着されている。
【0095】
音響シールド6は、シリコーン樹脂などからなり、MEMSチップ19を囲むようにして、MEMSチップ19とパッケージ基板20との間に形成されている。
【0096】
パッケージ基板20は、シリコンやセラミックなどからなる板材(またはPCB(プリント基板; Printed Circuit Board ))である。パッケージ基板20のパッケージ面20aに電極パッド21と、電極パッド12とが形成されている。パッケージ面20aの電極パッド21が形成されている部分にMEMSチップ19が搭載され、電極パッド12が形成されている部分にASICパッケージ91が搭載されている。また、パッケージ基板20のMEMSチップ19が搭載されている部分に音孔20bが形成されている。音孔20bは、パッケージ面20aからその反対側の底面20cまで貫通している。
【0097】
ASICパッケージ91は、ASIC92と、ボンディングバンプ93とを有している。ASIC92は、例えばMEMSチップ19の出力信号を増幅する集積回路(MEMSチップ19における静電容量の変位を電圧の変位として取り出す集積回路)である。ASIC92の下側に電極パッド14が形成されている。その電極パッド14と、パッケージ面20aの電極パッド12とがボンディングバンプ93によって接続されている。ASIC92は、パッケージ基板20に実装されている。
【0098】
キャップ99は、MEMSパッケージ31を覆っており、図示しない接着剤によって(またははんだ付けにて)、パッケージ面20aに固着されている。キャップ99と、パッケージ基板20とによって空隙99Aが確保されていて、その空隙99AにMEMSパッケージ31が収められている。
【0099】
(MEMSマイクロフォンの製造方法)
続いて、以上の構成を有するMEMSマイクロフォン100の製造方法について、図24図29を参照して説明する。ここで、図24は後述するパッケージパネル40を示す斜視図、図25は後述する薄膜フィルタ基板10Xを示す斜視図である。図26図29は、感光性接着層形成工程、薄膜フィルタ剥離工程、薄膜フィルタ転写工程を示す要部の断面図である。
【0100】
MEMSマイクロフォン100の製造方法では、前述したMEMSチップ19と、ASIC92と、そのMEMSチップ19とASIC92とが固着されるパッケージ基板20とを用いて、MEMSマイクロフォン100が製造される。本実施の形態に係る製造方法では、矩形状の素子基板22を有するMEMSチップ19(矩形状MEMSチップ)が用いられる。そのMEMSマイクロフォン100の製造方法では、図24に示すパッケージパネル40と、図25に示す薄膜フィルタ基板10Xとが用いられ、感光性接着層形成工程と、薄膜フィルタ剥離工程、薄膜フィルタ転写工程とが実行される。
【0101】
パッケージパネル40は、図24に示すように、PCBまたはセラミックからなる矩形板状の部材であり、その表面40aに複数のパッケージ領域41が規則的な配置で形成されている。パッケージパネル40が分割ライン42に沿って分割されると、各パッケージ領域41によって、パッケージ基板20が製造される(パッケージパネル1枚あたり概ね600個程度)。
【0102】
薄膜フィルタ基板10Xは、図25に示すように、前述した薄膜フィルタ基板10と同様に、シリコンウェハ1(ガラス、石英などからなる基板でもよい)と、薄膜フィルタ2と、剥離接着層3とを有している。薄膜フィルタ基板10Xは、前述した薄膜フィルタ基板製造工程が実行されたことによって製造されている。薄膜フィルタ基板10Xの薄膜フィルタ基板製造工程には、前述した剥離接着層形成工程と、薄膜フィルタ形成工程とが含まれている。
【0103】
そして、薄膜フィルタ基板10Xは、MEMSマイクロフォン100に用いられるという特定の用途を有している。そのため、薄膜フィルタ基板10Xの場合、シリコンウェハ1が複数の個別領域1Xを有し、薄膜フィルタ2が複数のフィルタ領域51を有している。
【0104】
複数の個別領域1Xは、パッケージパネル40のパッケージ領域41に応じた規則的な配置で形成されている。各個別領域1Xの間が分割ライン42に応じた分割ライン1yになっている。また、複数のフィルタ領域51も、パッケージパネル40のパッケージ領域41に応じた規則的な配置で形成されており、フィルタ領域51が個別領域1Xに応じて形成されている。各フィルタ領域51の間が分割ライン42に応じた分割ライン52になっている。薄膜フィルタ2が分割ライン52に沿って区分けされることによって、複数のフィルタ領域51が形成される。そのため、各フィルタ領域51に、前述した複数の貫通孔15および筋付内壁面38が形成されている。
【0105】
各フィルタ領域51には、図25に示すように、フィルタ部58が配置される。各フィルタ部58が後に前述の薄膜フィルタ29になる。そのため、各フィルタ部58は、薄膜フィルタ29に応じた変形矩形状に形成される。
【0106】
そして、パッケージパネル40および薄膜フィルタ基板10Xを用いて、MEMSマイクロフォン100が製造される。MEMSマイクロフォン100は、以下の感光性接着層形成工程、薄膜フィルタ剥離工程、薄膜フィルタ転写工程が実行されることによって製造される。
【0107】
まず、感光性接着層形成工程が実行される。この感光性接着層形成工程では、図26に示すように、感光性接着層61がパッケージパネル40の表面40aに形成される。感光性接着層61は、感光性ポリイミド接着剤シートを張り付けるなどして形成される。この場合、図28に示すように、感光性接着層61は、音孔20bが後に形成される部分を除いた孔あき構造で形成される。
【0108】
次に、薄膜フィルタ剥離工程が実行される。この薄膜フィルタ剥離工程では、薄膜フィルタ基板10Xが加熱される。すると、図27に示すように、そのときの熱によって、剥離接着層3が発泡する。そのため、剥離接着層3から薄膜フィルタ2(29)が金属パターン5Aとともに剥がれる。
【0109】
続いて、薄膜フィルタ転写工程が実行される。前述したようにパッケージパネル40の表面40aに感光性接着層61が形成されている。そのため、薄膜フィルタ基板10Xから剥離された薄膜フィルタ2(29)がパッケージパネル40に重ねられると、図29に示すように、薄膜フィルタ2(29)が金属パターン5Aとともに感光性接着層61の上に重なる。これで、薄膜フィルタ2(29)がパッケージパネル40に転写される。
【0110】
そして、パッケージパネル40には、複数のパッケージ領域41が形成されている。その各パッケージ領域41において、薄膜フィルタ2の不要な部分がレーザ加工によって除去される。この場合、各パッケージ領域41において、薄膜フィルタ2のうちの薄膜フィルタ29に用いられる部分がフィルタ部58として残され、そのほかの部分は除去される。このようにして、薄膜フィルタ29が音孔20bを塞ぐようにして形成される。
【0111】
その後、MEMSチップ搭載工程が実行される。MEMSチップ搭載工程では、MEMSチップ19に電極パッド7が形成され、さらにはんだバンプが形成される。その後、パッケージパネル40において、MEMSチップ19が、はんだバンプを用いたフリップチップボンディングによってパッケージ領域41ごとに搭載されて、チップ付きパネル40X(図30参照)が形成される。そのチップ付きパネル40Xが図示しない加熱リフロー炉に通される。すると、はんだバンプが溶融したあと、ボンディングバンプ4になる。その後、音響シールド6が形成される(MEMSチップ19が実装される前に音響シールド6が形成される場合もある)。
【0112】
その後、ASIC92がパッケージ領域41に実装され、さらに、キャップ99が固着される。なお、チップ付きパネル40XにASIC92が実装されるときは、MEMSチップ19とASIC92の一括リフローが行われてもよい。
【0113】
さらに続いて、パネル裁断工程が実行される。パネル裁断工程では、MEMSチップ19およびASIC92が実装され、さらにキャップ99が被せられたチップ付きパネル40Xが分割ライン42に沿ってパッケージ領域41ごとに裁断される。すると、チップ付きパネル40Xが複数のパッケージ領域41に区分けされる。その各パッケージ領域41によって、パッケージ基板20とともにMEMSマイクロフォン100が製造される。製造されたパッケージ基板20には、前述した薄膜フィルタ29が形成されている。
【0114】
MEMSマイクロフォン100には、薄膜フィルタ29が形成されているから、微粒子や水の外部からの進入がその薄膜フィルタ29によって防止される。薄膜フィルタ29には、複数の貫通孔15が形成され、その内側に筋付内壁面38が形成されている。複数の貫通孔15が、筋付内壁面38が形成されるように、反応性イオンエッチングで形成されている。そのため、薄膜フィルタ29には、例えば、デブリの付着による孔の閉鎖のような製造工程に起因する濾過機能の低下がない。また、薄膜フィルタ29の耐久性も良好である。
【0115】
(変形例)
次に、変形例にかかるMEMSマイクロフォン200について図23を参照して説明する。図23は、MEMSマイクロフォン200の図20に対応した断面図である。
【0116】
図23に示すように、MEMSマイクロフォン200は、MEMSパッケージ101と、キャップ99とを有している。
【0117】
前述したMEMSマイクロフォン100(MEMSパッケージ31)では、MEMSチップ19と、ASIC92とがフリップチップボンディングによって、パッケージ基板20に実装されていた。
【0118】
これに対し、変形例に係るMEMSマイクロフォン200では、MEMSチップ19と、ASIC92とがワイヤボンディングによって、パッケージ基板20に実装されている。
【0119】
そして、MEMSパッケージ101は、MEMSパッケージ31と比較して、以下a),b),c)の各点で相違している。
a)薄膜フィルタ29がMEMSチップ10に形成されている点
b)MEMSパッケージ101がボンディングバンプ44、音響シールド6、電極パッド7、21を有していない点、
c)MEMSチップ19がワイヤ16Bによって、ASIC92に接続されている点
MEMSパッケージ31では、薄膜フィルタ29がパッケージ基板20に形成されているが、MEMSパッケージ101では、薄膜フィルタ29がMEMSチップ19に形成されている。
【0120】
ASIC92は、ボンディングバンプ93ではなく、ワイヤ17Bによって、パッケージ基板20に接続されている。
【0121】
MEMSマイクロフォン200も、薄膜フィルタ29が形成されているから、MEMSマイクロフォン100と同様の作用効果を奏する。
【0122】
以上の実施形態では、メンブレン33の上側と下側にバックプレートと呼ばれる2つの薄膜(図示せず)が配置されているタイプ(ダブルバックプレート)を例にとって説明した。本発明は、それに加えて、メンブレン33の片側に1つのバックプレートが配置されているタイプ(シングルバックプレート)にも適用することができる。この場合、ボンディングバンプ44が2つ形成されていればよい。さらに、薄膜フィルタに形成されている貫通孔の形状として、平面視円形、六角形のほか、四角形でもよい。シリコンウェハ1の代わりにガラス、石英等の透明な材料からなる基板がベース基板として用いられる場合、UVテープがベース面に張り付けられて剥離接着層が形成されることもできる。
【0123】
以上の実施形態では、本発明にかかる薄膜フィルタが適用される製品の一例としてMEMSマイクロフォンについて説明したが、MEMSマイクロフォン以外の製品、例えば、MEMSセンサにも薄膜フィルタが適用される。
【0124】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明を適用することにより、孔の大きさが一定になり、かつ各孔を通る気流が一定の方向を向くような構造を有する薄膜フィルタが得られる。本発明は、薄膜フィルタ、その薄膜フィルタを有する薄膜フィルタ基板、薄膜フィルタの製造方法、薄膜フィルタ基板の製造方法、その薄膜フィルタを有するMEMSマイクロフォン、MEMSマイクロフォンの製造方法の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0126】
1…シリコンウェハ、1a…ベース面、2,2A,29,32,34,62,72…薄膜フィルタ、3…剥離接着層、5…金属層、6p…レジストパターン、10,10X,30…薄膜フィルタ基板、15,35,73…貫通孔、15A,35A…第1の貫通孔群、15B,35B…第2の貫通孔群、L1…第1のライン、L2…第2のライン、16,36…薄膜部、16a…フィルム面、16b…裏フィルム面、19…MEMSチップ、20…パッケージ基板、22…素子基板、31…MEMSパッケージ、33…メンブレン、37,47…筋状部、38,48,74…筋付内壁面、40…パッケージパネル、41…パッケージ領域、100,200…MEMSマイクロフォン。
図1
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