(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】クリーンルーム空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20230609BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20230609BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20230609BHJP
F24F 11/80 20180101ALN20230609BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F7/007 B
F24F11/74
F24F11/80
(21)【出願番号】P 2019086888
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】樋口 康博
(72)【発明者】
【氏名】武内 利行
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-157474(JP,A)
【文献】特開2012-149787(JP,A)
【文献】特開平05-052396(JP,A)
【文献】特開平08-285343(JP,A)
【文献】特開2012-202558(JP,A)
【文献】特開2019-090547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 7/007
F24F 11/74
F24F 11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井スラブとTバーやチャンネル材で格子が形成される天井との間で構成される天井プレナムチャンバ(5)と、
前記天井プレナムチャンバ(5)からの空気が流入する生産装置(20)が配置されるクリーンルーム(1)と、
当該クリーンルーム(1)から室内熱負荷を処理されて高温になった空気を天井プレナムチャンバ(5)へ還流させるための
、上方の一部はスラブ天井でもう一部は外壁壁際の通路に当たる部分に天井の構成部材だけ延長して画成した天井ふところ(11)と、
前記天井ふところ(11)と前記天井プレナムチャンバ(5)の間に設けられ、前記天井プレナムチャンバ(5)に還流される空気を冷却する空気冷却手段(8)とを備え、
前記クリーンルーム(1)から室内熱負荷を処理されて高温になった空気を、天井ふところ(11)を介して前記天井プレナムチャンバ(5)へ還流させるクリーンルーム空調システムであって、
前記クリーンルーム(1)は、生産装置前面が面していて製品などを小空間で隔離した容器が移動する
上方に天井が設置されているオペレーションエリアS1と生産装置本体が設置されて
いて上方の一部には天井の設置されていないスラブ天井としもう一部である外壁壁際の通路に当たる部分には天井の構成部材だけ延長したメンテナンスエリアS2とからなり、
前記オペレーションエリアS1の上方に位置する天井(2)に設けられ、清浄空気を前記オペレーションエリアS1に供給し、オペレーションエリアS1から流れる方向を転換されてメンテナンスエリアS2へ流れる空気を、天井ふところ(11)を介して天井プレナムチャンバ(5)へ還流する搬送力を空気に与えるファンフィルタユニット(7)と、
前記オペレーションエリアS1内へ吹出される空気の
前記空気冷却手段から天井プレナムチャンバ(5)
内を進行する方向を縦方向とし前記オペレーションエリアS1を縦方向を基準に分割した
後、前記天井プレナムチャンバ内を前記吹き出される空気が進行する方向の左右にも2分割した小エリアを設定して、その小エリアごとにオペレーションエリアS1側からメンテナンスエリアS2側へ床上で方向転換しながら排出される位置の温度を計測する室内小エリア温度センサ(12)と、
前記オペレーションエリアS1の室内に設けられた給気室内温度センサ(13)と、
前記各小エリアのうち、それぞれの小エリア内の室内温度を計測する前記室内小エリア温度センサ(12)ごとに計測した計測値に基づいて、該当する小エリアの天井(2)の
格子であるグリッドに残りのグリッドをブランクパネルでふさぎながら適宜配置でまばらに設けられたファンフィルタユニット(7)のグループの吹き出し風速を制御するとともに、前記給気室内温度センサ(13)の温度計測値に基づいて、前記空気冷却手段(8)の出口温度を設定値との偏差に応じて制御する制御装置(33)と、
を備えたことを特徴とするクリーンルーム空調システム。
【請求項2】
前記制御装置は、各前記室内小エリア温度センサでそれぞれの小エリア内の室内温度を計測した計測値に基づいて、該当する小エリアの
天井の格子であるグリッドに残りのグリッドをブランクパネルでふさぎながら適宜配置でまばらに設けられたファンフィルタユニット(7)のグループへファンモータのインバータを操作器としてその周波数を吹き出し風速の信号として出力するとともに、
さらに、各小エリアすべての吹き出し風速を、各小エリア
に設けられたファンフィルタユニットの合計台数にグリッド面積を乗じて合算し、
ブランクパネルとファンフィルタユニットとを配置したすべてのグリッド面積で除した平均吹き出し風速を別に演算して、その平均吹き出し風速
演算値を、
各小エリア全体つまり大エリアの清浄度を実現するための最低限の風速とする、目的の平均風速になるように空気冷却手段の熱交換量を調整する操作器を別に制御することで給気温度を可変制御すること
を特徴とする請求項1に記載のクリーンルーム空調システム。
【請求項3】
前記室内小エリア温度センサ(12)は、無線で計測値信号を送信できて、天井側に受信親機を備えており、
前記給気室内温度センサ(13)は計測信号を有線で送信することを特徴とする請求項1または2に記載のクリーンルーム空調システム。
【請求項4】
前記各々の小エリアを小エリア1から小エリア4の4つとした場合の、
4つの小エリア内の各前記室内小エリア温度センサごとの計測値と
各室内小エリア温度センサの温度設定値との偏差に応じて該当する小エリアのファンフィルタユニットのグループの吹き出し風速を制御すること
によって前記ファンフィルタユニットのグループの風量に関して制御する制御演算Yn=f(Δtn)と、
前記空気冷却手段の
給気温度を、前記給気温度センサの温度設定値と温度計測値との偏差に基づいて前記比例制御弁の開度を制御する給気温度に関する空気冷却手段の制御演算Yw=f(ΔV平均)と、
4つの前記各小エリアの天井に設けられたファンフィルタユニットのグループへ各ファンフィルタユニットの操作器であるファンモータのインバータの周波数を吹き出し風速の信号として出力するとともに、4つの各小エリアすべての各々の吹き出し風速を各小エリアの面積を乗じて合算した平均吹き出し風速と設定風速V0との差(ΔV平均)を
下記式によりなされることを特徴とする請求項2に記載のクリーンルーム空調システム。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームの空調システムに係り、特に半導体工場、フラットパネルディスプレイに使うフィルムや液晶、有機ELなどを製造する工場、あるいは精密機械工場などに用いられる大空間クリーンルームの空調システムに関する。特に、クリーンルームの室内に温度むらが発生しないように室内温度をきめ細かく制御しつつ、ランニングコストも小さくする空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工場、フラットパネルディスプレイに使うフィルムや液晶、有機ELなどを製造する工場、あるいは精密機械工場などでは、わずかでも浮遊微粒子があると、製造中の製品に付着して製品不良を起こすために、工場全体または作業室を必要に応じて清浄な状態とし、製品の品質と信頼性を高め、歩留りの向上に努めている。
最近では、半製品や製品を製造したり工程間を搬送したりする領域だけを局所的に清浄化するミニエンバイロメントやマイクロエンバイロメントといわれる考え方が浸透している。実際は、半製品や製品が暴露される空間を小空間として他から隔離し、該小空間内を局所的に高清浄に保つという技術思想であり、生産装置や工程間搬送等に導入されている。この方式では、クリーンルーム内でも特に高い清浄度を確保する領域は局所に限定され、その他の領域には昔ほど高清浄度は要求されないため室全体としてはある程度の清浄度を保てばよいことになる。こうして、大空間(ボールルーム)が工業用クリーンルームの主流となっている。
このような大空間(ボールルーム)式のクリーンルームでも、昔の電力のかさむ全域ダウンフローとは異なるが、空気の流れは概ね上から下へ流れるよう天井の一部にHEPAフィルタを最終とする天井吹出部と、床はパンチングパネルなどで形成した上げ床の開孔から、スラブ床と上げ床との間の床下に空気を吸い込み、その空気を温調して再び天井から除塵して吹出す空気流れを形成している。
こうして、室内で発生した塵埃をいち早く排除するようになっている。
【0003】
従来のクリーンルームは、
図5に示すように、半導体工場等のある程度気密性の高い建物K内に設けられ、建物Kの天井スラブK1とTバーやチャンネル材で格子が形成されるクリーンルーム1の天井2との間で構成される天井プレナムチャンバ5と、クリーンルーム1の床4と建物Kの床スラブK2との間で構成される床下チャンバ6と、建物Kの気密を確保した壁K3とボードやパネルで形成されるクリーンルーム1の側壁3との間で構成されるレタンシャフト16と、前記クリーンルーム1の天井2の格子にまばらに設けられたファンフィルタユニット(FFU)7とそのほかの格子に嵌められるブランクパネルとクリーンルーム1内の空気を冷却する空気冷却手段8から構成されている。
そして、天井プレナムチャンバ5内の空気は、ファンフィルタユニット7で気中の塵埃を除去し所定の清浄度を確保するため、一定風量が確保できるよう新設時に風量調整された後はその風量でずっと動き続けて清浄されてクリーンルーム1内へ吹出され、クリーンルーム1内へ吹出された空気A1は、床スラブK2の上に上げ床を構成する床4のパンチングパネルの開孔などである排出口から排出され、空気冷却手段8で冷却された後、レタンシャフト16を通り、前記天井プレナムチャンバ5へファンフィルタユニット(FFU)7のファンの搬送力によって流れて行く。
図ではわかりにくいが、大空間(ボールルーム)クリーンルームの空間は大きく、
図1に記載した空気冷却手段8一つについて前記ファンフィルタユニット7が3台の長さ受け持ちのイメージは、実際は25~30mの長さとなっている。
つまり、ドライコイルである空気冷却手段8ごとにクリーンルーム1内を横方向に複数のエリアに分割し、その大きなエリアには一つの空気冷却手段8にて冷却された空気が循環することとなる。
【0004】
クリーンルーム室内の温度は、ボールルーム方式となったので昔の製品が暴露する室と比較すると少し緩和されたが、それでも、例えば23℃設定値に対し許容誤差は±1℃程度と厳しい場合がある。この室内温度は生産装置などが稼働して熱負荷として室内に発熱物があったとしても、室のどこでも23℃設定値が保てるように、最大負荷が発生した熱に対して冷却した後で、つまり還気として床4の排出口から出る際に23℃が保てるように設備側の能力を備えるのである。
よって、天井吹き出しの空気温度は室内熱負荷が大きければ23℃よりもずっと低温になり、負荷が小さいと23℃に近くづく低温となる。
このように、従来のクリーンルームの空調システムでは、実際は25~30mの奥行である横方向分割の大きなエリアにひとつの空気冷却手段8が受け持ち、その空気冷却手段8は一つの比例制御弁にて流量制御されるので、大きなエリアに1点の検出温度センサの計測値と温度設定値(例えば23℃設定値)との偏差に基づく演算信号により比例制御弁の熱媒の流量制御を行うこととなる。
【0005】
特許文献1には、まず従来のクリーンルームの空調システムにおいて、1点または複数点の室内温度を温度センサによって検出し、複数点でも平均処理するなどしたあと一つの発生信号を送信し、その信号に応じて空調機の冷却熱交換量を制御し、給気する空調エアの温度を変更して室内温度を制御するにあたって、1点または複数点を平均した検出温度を代表温度として空調エアの温度を変更するため、クリーンルームの大きなエリア内の温度むらを更に促進してしまうという欠点があることに着目している。
例えば、発熱を伴う装置が設置されている大きなエリア内の部分と、発熱装置が設置されていない部分が混在しているため、必ず温度センサで検出された温度よりも高い温度または低い温度を呈するエリア、即ち温度むらが存在している。
従って、従来の空調システムでは、温度が高いエリア部分ではさらに温度が高くなり、温度が低いエリア部分ではさらに温度が低くなるため、室内エリア内の温度むらがさらに促進されてしまう、と問題提起している。
そこで、特許文献1では、ファンフィルタユニットによる循環気流とは別に、床下から空気を吸い込んで、天井裏空間に空調空気を吹き出す空調機を別に備え、室内の空調機ごとの大きなエリアを縦方向に小さなエリアに分割し、小さなエリアごとに空調機からの主給気ダクトを分岐させた天井裏空間にある分岐給気ダクトそれぞれに風量調整ダンパを備え、小さなエリアごとに設けた室内空気センサの温度計測値と設定値との偏差に基づいて、風量調整ダンパの開閉率を制御し、さらに、床下の空間にも小さなエリアごとに空調機への主還気ダクトを分岐させた床下空間にある分岐還気ダクトそれぞれに風量調整ダンパを備え、小さなエリアごとに設けた室内空気センサの温度計測値と設定値との偏差に基づいて、床下の風量調整ダンパの開閉率をも制御することで温度むらを解消する技術の開示がある。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1での前記クリーンルームにおいては、室内を清浄な状態に維持するための空気の流れは、天井に多数設置されたファンフィルタユニットが搬送力を形成して搬送し、すべてのファンフィルタユニットから一斉にクリーンルーム内へ同じ風速(風量)で空気を吹き出している。そして、これとは別に、ファンを内蔵した空調機が別な風量で別な搬送力を持って温調空気のもとを流している。
分岐給気ダクトから吹き出す温調空気のもとと、ファンフィルタユニットが循環させ天井裏空間へもたらされた循環空気とを、ファンフィルタユニットの吸込口でミックスして室内に吹出すので、小さなエリア内ではそこに位置する各ファンフィルタユニットとも同じ吹き出し温度を狙っているが、温調空気と循環空気とのミックスがファンフィルタユニットごとに異なる場合があり、温度むらが発生する恐れが排除できていない。
さらに、
図5に示すような従来のクリーンルームを生かそうとすると、特許文献1が備える空調機12や給気ダクト20、還気ダクト50の追加は大きな改造を伴い、現実的ではない。
通常のボールルーム方式クリーンルームでは、ファンフィルタユニット7の搬送力のみで、ドライコイルである空気冷却手段8も通風して搬送し循環する必要がある。ところが、天井チャンバ内を流れている空気の温度は、実際には、空気冷却手段8を通る際に伝熱面積全体のうちの通過風速の不均一さや、空気冷却手段8の熱交換の伝熱部分による冷媒温度の不均一などが起因となって、レタンシャフトを通った後の天井内の気流温度は場所ごとに均一にならず、空気が流れやすいところと滞留するところなど、場所によって気流の温度が異なるため、多数のファンフィルタユニットは、その異なった温度の空気を吹出すことになり、クリーンルーム内の空気の温度むらが生じていて、代表温度である温度センサ設定点ではよくても、クリーンルーム内で生産している製品へその温度むらの影響を及ぼしている。
【0008】
ところで、一般的にクリーンルームは、前記したように間仕切りのない大空間に生産装置20を配置する「ボールルーム方式」が採られている。
この「ボールルーム方式」における空調は、冷却された高清浄度の空気を天井の格子にまばらに配置されたファンフィルタユニット(FFU)7によって、生産装置の前面(作業領域)のオペレーションエリアと、生産装置本体が配置されているメンテナンスエリアに対し均一に全面的に供給し、清浄度の維持と熱負荷処理を同時に行っている。
この「ボールルーム方式」の空調は、対象空間であるクリーンルーム1全体を均一にクリーン化するよう設計されており、換気回数は、50回以上100回/時間以下程度となり、やはり大量の循環空気を浄化する必要がある。このため、ファンフィルタユニット7に関して相応の設置台数が必要である。また、空気冷却手段8にも大きな熱交換面積が要求される(循環風量は空気冷却手段8のコイル通過面速に律速されるため、要求される風量に応じた面積が必要となる)等、コストの増大を招いていた。
また、発熱量の多い生産装置20を設置する場合等への対応を考えた場合、結局、ファンフィルタユニット7を設置するための枠組みであるTバーやチャンネル材による格子(天井セル)を天井2全体に敷設することになる。このため、天井2の構築工事に係るコストはあまり減らない。製品集積度の向上により、クリーンルーム1内における生産装置20からの発熱は増加傾向にある。
上述のように達成すべき清浄度の低下に合わせて下向きの風量を少なくすると、生産装置20の発熱に由来する上昇気流がファンフィルタユニット7からの下向きの気流と拮抗し、生産装置20周辺に空気淀みが生じ、清浄度も温熱も処理が不十分となる虞がある。
これを避けるには結局、ある程度の風量が要求されるという事態も部分的に生じていた。
さらに、ファンフィルタユニット7からクリーンルーム1に供給した空気の全量を、床4のパンチングパネルなどの開孔を通して床下チャンバ6へ導き、空気冷却手段8で冷却したうえで天井プレナムチャンバ5へ戻すようにしている。
このため、床下と天井裏の両空間を連通するレタンシャフト16が必要であり、このレタンシャフト11の分だけ利用可能な平面積及び立面積が狭められ、空間に大きな無駄が生じ、利用効率が低下していた。
また、大空間(ボールルーム)全体を必要最小限の循環風量で浄化するため、パンチングパネル等により構成した床4の開孔から床下の空間に空気を引き込んで下向きの気流を形成していたが、このことが床下の空間の用途に制限を生じさせることにもなっていた。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、対象空間内において要求される温度と清浄度を満足しつつ、コストの増大を抑え、省エネルギーと共に対象空間の有効利用を図り得るクリーンルームの空調システムとしてまず構成を変更し、その空調システムにおいても、特にオペレーションエリアS1内の平面的などの部位でも、さらにメンテナンスエリアS2に気流が流れ込み始めた所の平面的などの部位でも、温度の均一性が確保できる技術を提供するものである。
【0010】
本発明は、このような技術を提供するにあたり、
クリーンルーム内を高い清浄空気の供給と熱負荷処理が必要な生産装置前面が面していて製品などを小空間で隔離した容器が移動するオペレーションエリアと、それと比べてそれ程高い清浄空気の供給と熱負荷処理が必要でない生産装置本体が設置されているメンテナンスエリアとで、それぞれに適した方法で空調処理し、かつ前記オペレーションエリアの温度の平面的なばらつき、及び前記メンテナンスエリアのオペレーションエリアに近い側の温度の平面的なばらつきを均一にするために、前記クリーンルーム内を、空気冷却手段ごとに大きなエリアとして区分するだけでなく、ひとつの空気冷却手段が受け持つ大きなエリアをさらに天井プレナムチャンバ内を流れる気流の縦方向を基準に分割した後左右にも2分割した複数のファンフィルタユニットのグループからなる小エリアに区分けし、当該小エリアの前記メンテナンスエリアのオペレーションエリアに近い側の温度を各々測定する室内小エリア温度センサを設け、室内小エリア温度センサの測定値に基づいて前記各グループへ演算後の出力信号を送ってファンフィルタユニットの風速を制御することで各小エリアの前記メンテナンスエリアのオペレーションエリアに近い側の温度空気の温度、ひいては前記オペレーションエリアの温度を均一にする。そして、前記オペレーションエリアの室内温度を計測する給気室内温度センサを設けて、給気室内温度センサの測定値に基づいて前記空気冷却手段の制御弁の開度を制御することで大きなエリア全体の熱負荷を賄うとともに、前記各グループへ送る各ファンフィルタユニットのファンモータ周波数から空気冷却手段が受け持つ大エリア全体風速の平均値を演算し、当該平均風速を減らすべく前記給気室内温度センサの設定値を下げていくことで省エネルギーのクリーンルーム空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、クリーンルーム内の空気の温度を均一にするためのクリーンルーム空調システムであって、以下の構成としたことを特徴とする。
〈1〉天井プレナムチャンバ5と、前記天井プレナムチャンバ5からの空気が流入する生産装置20が配置されるクリーンルーム1と、当該クリーンルーム1から室内熱負荷を処理されて高温になった空気を天井プレナムチャンバ5へ還流させるための天井ふところ11を備え、
前記クリーンルーム1から室内熱負荷を処理されて高温になった空気を天井ふところ11を介して前記天井プレナムチャンバ5へ還流させるクリーンルーム空調システムであって、
前記クリーンルーム1は、生産装置前面が面していて製品などを小空間で隔離した容器が移動するオペレーションエリアS1と生産装置本体が設置されているメンテナンスエリアS2とからなり、前記オペレーションエリアS1の上方に位置する天井2に設けられ、清浄空気を前記オペレーションエリアS1に供給し、オペレーションエリアS1から流れる方向を転換されてメンテナンスエリアS2へ流れる空気を天井ふところ11を介して天井プレナムチャンバ5へ還流する搬送力を空気に与えるファンフィルタユニット7と、前記天井ふところ11と前記天井プレナムチャンバ5の間に設けられ、前記天井プレナムチャンバ5に還流される空気を冷却する空気冷却手段8と、前記オペレーションエリアS1内へ吹出される空気の天井プレナムチャンバ5を進行する方向を縦方向とし前記オペレーションエリアS1を縦方向を基準に分割した後左右にも2分割した小エリアを設定して、その小エリアごとにオペレーションエリアS1側からメンテナンスエリアS2側へ床上で方向転換しながら排出される位置の温度を計測する室内小エリア温度センサ12と、前記オペレーションエリアS1の室内に設けられた給気室内温度センサ13と、前記各小エリアのうち、それぞれの小エリア内の室内温度を計測する前記室内小エリア温度センサ12ごとに計測した計測値に基づいて、該当する小エリアの天井2に設けられたファンフィルタユニット7のグループの吹き出し風速を制御するとともに、前記給気室内温度センサ13の温度計測値に基づいて、前記空気冷却手段8の出口温度を設定値との偏差に応じて制御する制御装置33とを備えたことを特徴とするクリーンルーム空調システム。
【0012】
〈2〉前記制御装置33は、各前記室内小エリア温度センサ12でそれぞれの小エリア内の室内温度を計測した計測値に基づいて、該当する小エリアの天井2に設けられたファンフィルタユニット7のグループへファンモータのインバータを操作器としてその周波数を吹き出し風速の信号として出力するとともに、さらに、各小エリアすべての吹き出し風速を、各小エリアの面積を乗じて合算し、その平均吹き出し風速を別に演算して、その平均吹き出し風速値を、目的の平均風速になるように空気冷却手段8の熱交換量を調整する操作器を別に制御することで給気温度を可変制御することを特徴とする前記〈1〉に記載のクリーンルーム空調システム。
〈3〉前記室内小エリア温度センサ12は、無線で計測値信号を送信できて、天井側に受信親機を備えており、前記給気室内温度センサ13は計測信号を有線で送信することを特徴とする前記〈1〉又は前記〈2〉に記載のクリーンルーム空調システム。
【0013】
前記風速の平均値の演算が、下記式によりなされることを特徴とする前記〈2〉に記載のクリーンルーム空調システム。
【数1】
【0014】
前記風速の平均値の演算が、下記式によりなされることを特徴とする前記〈2〉に記載のクリーンルーム空調システム。
【数2】
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるクリーンルーム空調システムは、天井プレナムチャンバと、天井プレナムチャンバからの空気が流入する生産装置が配置されるクリーンルームと、当該クリーンルームから室内熱負荷を処理されて高温になった空気を天井プレナムチャンバへ還流させるための天井ふところを備え、クリーンルームから室内熱負荷を処理されて高温になった空気を天井ふところを介して天井プレナムチャンバへ還流させるクリーンルーム空調システムであって、クリーンルームは、生産装置前面が面していて製品などを小空間で隔離した容器が移動するオペレーションエリアS1と生産装置本体が設置されているメンテナンスエリアS2とからなり、オペレーションエリアS1の上方に位置する天井に設けられ、清浄空気を前記オペレーションエリアS1に供給し、オペレーションエリアS1から流れる方向を転換されてメンテナンスエリアS2へ流れる空気を天井ふところを介して天井プレナムチャンバへ還流する搬送力を空気に与えるファンフィルタユニットと、天井ふところと天井プレナムチャンバの間に設けられ、天井プレナムチャンバに還流される空気を冷却する空気冷却手段と、オペレーションエリアS1内へ吹出される空気の天井プレナムチャンバを進行する方向を縦方向としオペレーションエリアS1を縦方向を基準に分割した後左右にも2分割した小エリアを設定して、その小エリアごとにオペレーションエリアS1側からメンテナンスエリアS2側へ床上で方向転換しながら排出される位置の温度を計測する室内小エリア温度センサと、オペレーションエリアS1の室内に設けられた給気室内温度センサ13と、各小エリアのうち、それぞれの小エリア内の室内温度を計測する室内小エリア温度センサごとに計測した計測値に基づいて、該当する小エリアの天井に設けられたファンフィルタユニットのグループの吹き出し風速を制御するとともに、給気室内温度センサの温度計測値に基づいて、空気冷却手段の出口温度を設定値との偏差に応じて制御する制御装置とを備えてなるので、
前記室内小エリア温度センサの温度測定データに基づいて、各ファンフィルタユニットの回転数をPID演算結果により制御し、当該ファンフィルタユニットからクリーンルーム内へ吹き込む風の風速もPID制御することで、空気冷却手段ごとに気流がおおよそ区切られたクリーンルーム内の大エリア内で、実は平面的に温度分布が存在していたクリーンルーム内室内温度について、その温度を完全に均一に制御することができ、クリーンルーム内で生産している製品に及ぼす影響を防ぐことができる。
また、従来のボールルーム方式のクリーンルームでは、製品を隔離した容器が室全体のどの位置でも移動する可能性があるので、室全体の設定温度が室内発熱負荷を処理した温度とならざるを得ないところ、本発明では、オペレーションエリア内の温度を従来のボールルームの設定温度とすることができて、オペレーションエリア内と比べてメンテナンスエリア内の温度を高くする、つまり還気温度を高くすることができるので、冷凍機における蒸発温度を高めることができ、成績係数を向上させて省エネルギーに貢献できる。
【0016】
また、本発明にかかるクリーンルーム空調システムでは、前記制御装置は、各前記室内小エリア温度センサでそれぞれの小エリア内の室内温度を計測した計測値に基づいて、該当する小エリアの天井に設けられたファンフィルタユニットのグループへファンモータのインバータを操作器としてその周波数を吹き出し風速の信号として出力するが、各小エリアすべての吹き出し風速を、各小エリアの面積を乗じて合算し、その平均吹き出し風速を別に演算して、その平均吹き出し風速値を、目的の平均風速になるように空気冷却手段の熱交換量を調整する操作器を別に制御することで給気室内温度を可変制御するので、各ファンフィルタユニットのグループからクリーンルーム内へ吹き出す風が温度の均一化の面では各小エリアごとに変化をつけて温度均一化ができていても、クリーンルーム全体としては吹きすぎている風量で落ち着いてしまって消費電力が多くなってしまう弊害が生じることを、省エネ的に別に定めている目的の平均風速に下げても上記クリーンルーム内の温度が維持できるように空気冷却手段で前記天井プレナムチャンバに還流される空気をさらに冷却するべく給気温度の設定値を下げることで、単位風量での搬送冷熱量を上げて、結果各ファンフィルタユニットから前記クリーンルーム内へ吹き込む清浄空気の平均風速を減らすことができ、省エネルギーを達成することができる。
して、室内小エリア温度センサは、無線で計測値信号を送信できて、天井側に受信親機を備えているので、最近は電池電源内蔵の無線送信付き温度センサが安価に出回っているので、多数設置する室内小エリア温度センサにこれを用いると、室内温度センサに関する制御用の配線工事が一切不要となるのでイニシャルコストは省略でき、受信親機は一台で複数の室内小エリア温度センサをまとめて処理できるので天井内の制御配線も簡単に施工可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係るクリーンルームの概略構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るクリーンルームの平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るクリーンルームにおける風量制御を説明する説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るクリーンルームの制御構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の実施形態に係るクリーンルームの概略構成図、
図2は本発明の実施形態に係るクリーンルームの平面図であり、(a)はクリーンルーム全体の平面図、(b)は1エリアの説明用拡大平面図である。
図3はクリーンルームにおける風量制御の説明図である。
図1~3において、Kは半導体工場、フラットパネルディスプレイに使うフィルムや液晶、有機ELなどを製造する工場、あるいは精密機械工場などに用いられる大空間クリーンルームを備える建物、K1は建物Kの天井スラブ(あるいは上階の床スラブ)、K2は建物Kの床スラブ、K3は建物Kの外壁や室内の耐火区画壁、1クリーンルーム、S1はオペレーションエリア、S2はメンテナンスエリア、2は天井、4は床、5は天井プレナムチャンバ、6は垂壁、7はファンフィルタユニット(FFU)、8は空気冷却手段(ドライコイル)、9は配管、10は比例制御弁(2方弁)、11は天井ふところ、12は室内小エリアに設けられた温度センサ、13は給気温度センサ、14は大エリア、20は生産装置である。
【実施例1】
【0019】
本実施例において、クリーンルーム1は、半導体工場、フラットパネルディスプレイに使うフィルムや液晶、有機ELなどを製造する工場、あるいは精密機械工場等の建物K内の大空間に設置され使用される。
そして、天井プレナムチャンバ5は、建物Kの天井スラブK1とクリーンルーム1の天井2とから構成される。
前記クリーンルーム1には、当該工場で製品やその途中の半製品を製造する生産装置20が配置され、前記天井プレナムチャンバ5からの清浄空気が供給される周囲環境に立設されながらも、周囲空気を取り入れてさらに浄化する機構を備えた、半製品や製品が暴露される空間を小空間として他から隔離し、該小空間内を局所的に高清浄に保つ機構を備えた構成だったりする。
前記クリーンルーム1内は、高い清浄度の要求されるオペレーションエリアS1と、それ以外のメンテナンスエリアS2とからなる。
前記オペレーションエリアS1は、クリーンルーム1内で行われる作業位置となる生産装置20の前など高い清浄度が求められるエリアであり、一方、メンテナンスエリアS2は、生産装置20が配置されている位置である。
本実施例では、ファンフィルタユニット7をボールルーム方式の如くクリーンルーム1上方全体に満遍なく配置するのではなく、オペレーションエリアS1に頻繁に備わる天井搬送装置の搬送レールの上方にあたる位置に集中して配置し、ファンフィルタユニット7からの空気をオペレーションエリアS1に集中して供給するようにしている。最も清浄度を確保すべき領域は、製品や半製品の収納容器が露出する可能性のある場所である。
これに伴い、本実施例では、オペレーションエリアS1の上方には天井2を設置し、該天井2の上側に天井プレナムチャンバ5の空間を有する構造としているが、メンテナンスエリアS2の上方は天井2の設置されないスラブ天井K1となっており、スラブ下面(スラブ面)が露出している。
また、天井2の縁にあたる部分の上側、すなわちオペレーションエリアS1とメンテナンスエリアS2との境界の上方には天井側壁を設け、天井2の設置されたオペレーションエリアS1の上方の領域をメンテナンスエリアS2の上方の領域と区画している。これは、後述する空気循環のための構成でもある。
尚、以下では天井2とスラブ面K1に挟まれ、且つ天井側壁により画成された領域を天井内空間と称する。
また、オペレーションエリアS1とメンテナンスエリアS2との間には垂壁6が設置されている。垂壁6は、天井2の縁にあたる部分あるいはその近傍から下方に向かって鉛直方向に沿って延びる垂壁部材であり、オペレーションエリアS1とメンテナンスエリアS2との間を、両空間の下方が連通するように不完全に隔てている。
オペレーションエリアS1の上方にあたる天井プレナムチャンバ5である天井内空間には、天井2にファンフィルタユニット7が設置される。ファンフィルタユニット7を設置する領域には、Tバーやチャンネル材を構成材として平面視で格子状に組んで天井セルを形成し、スラブ面K1の下面から吊下げ設置する。そして、構成材によって組まれた格子の開口であるグリッドに、ファンフィルタユニット7を適宜な配置によりまばらに設置する。残りのグリッドは、ブランクパネルを設置して塞いでいる。天井側壁や垂壁6も、例えば平面視で前記天井セルの構成材に沿って配置するなど、天井セルを利用して設置することができる。
このほか、本実施例の空調システムには、空気Aを冷却するための空気冷却手段8が設けられる。本実施例においては、天井2を設置し、該天井2の上側の空間を天井内空間として画成しているが、天井2の構成部材は同じ高さでメンテナンスエリアS2の一部(ここでは、外壁壁際の通路にあたる部分)の上方まで延長しており、その延長した部分の上方を天井空間とは別の天井ふところ11として画成している。そして、メンテナンスエリアS2内の空気が一旦天井ふところ11を経由してから天井プレナムチャンバ11である天井内空間に送り込まれ、循環空気はその過程で空気冷却手段8にて冷却されるようになっている。具体的には、メンテナンスエリアS2の上方の領域(
図1における両側の上部領域)を天井内空間から隔てるように、天井側壁とは別の側壁を設け、天井2からメンテナンスエリアS2の上方へ延長した部分と共に天井ふところ11を画成している。天井ふところ11は空気冷却手段8を介して天井プレナムチャンバ5と連通され、その連通箇所に空気冷却手段8を設置している。尚、空気冷却手段8の設置位置は天井2の高さより上であれば良く、天井ふところ11から天井プレナムチャンバ5に至る経路の何処に設置しても良い。
【0020】
前記オペレーションエリアS1の上方に位置する天井2は、例えばTバーやチャンネル材で格子が形成され、その格子の開口部2aには、ケーシング内にファンと、ファンを駆動させインバータなどで可変速にされたモータと、HEPAフィルタなどの高性能フィルタをその下部に内蔵され、天井プレナムチャンバ5内の空気をケーシング内に取り入れ、塵埃等を高性能フィルタによって除去して清浄化した清浄空気をクリーンルーム1内への供給するファンフィルタユニット7が、格子全体ではなくまばらではあるが多数設けられている。
【0021】
また、天井2には、垂壁6がオペレーションエリアS1とメンテナンスエリアS2の境界部分に垂設されている。このような、垂壁6を設けることによって、ファンフィルタユニット7からオペレーションエリアS1へ吹き出された空気が垂壁6の下端をまわってメンテナンスエリアS2(の生産装置20そば)に設けられた無線の室内小エリア温度センサ12に向けて流入最初に流れるようになり、オペレーションエリアS1からメンテナンスエリアS2へ流れる空気の温度を適切に測定することができる。
【0022】
そして、天井ふところ11は空気冷却手段8を介して天井プレナムチャンバ5と連通され、その連通箇所に空気冷却手段8を設置している。
前記、空気冷却手段8は、クリーンルームのように大風量を循環しながら冷却する際に、室の仕切り壁で風路を作ってその途中に設置したむき出しの空気―水熱交換器であるドライコイル(表面で結露しない温度の熱交換器)であることが多く、ドライコイルのチューブ側には冷凍機にて冷水を冷却してポンプで循環することで冷熱媒を供給している。
前記空気冷却手段(ドライコイル)8には、配管9が接続され、当該配管9には、前記空気冷却手段(ドライコイル)8へ供給する冷却水量を弁の開閉によって制御可能な比例制御弁(2方弁)9が設けられている。
【0023】
本実施の形態においては、前記ファンフィルタユニット7からオペレーションエリアS1へ供給された清浄空気A1が、メンテナンスエリアS2において生産装置20の熱負荷を処理して昇温した空気A2が上昇気流として、メンテナンスエリアS2を通り、その後天井ふところ11を通って前記天井プレナムチャンバ5へ流れて行くように形成される。
【0024】
クリーンルーム1内のメンテナンスエリアS2には、無線の室内小エリア温度センサ12が設けられ、クリーンルーム1内のオペレーションエリアS1には給気室内温度センサ13が設けられる。
そして、外気調和機(図示しない)からは、温調され除塵されダクトを介して送給された外気が、例えば、前記建物Kの天井プレナムチャンバ5に図示しない外気ダクトにて供給され、ファンフィルタユニット7のファンの搬送力により周囲の空気冷却手段8にて冷熱を与えられた循環空気と混合されて、クリーンルーム1のオペレーションエリアS1内に浄化された空気A1が供給されるようになっている。
前記オペレーションエリアS1に供給された空気A1は、メンテナンスエリアS2へ供給され、生産装置20を冷却し、天井ふところ11を通り、天井プレナムチャンバ5へ送出され、再びファンフィルタユニット7によって清浄化されて、クリーンルーム1内のオペレーションエリアS1へ供給される。
このように、建物K内の空気A1、A2は、天井プレナムチャンバ5、クリーンルーム1内のオペレーションエリアS1、メンテナンスエリアS2、天井ふところ11を一方向に循環する空気循環系を形成している。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係るクリーンルームの平面図であり、(a)はクリーンルーム全体の平面図、(b)は1エリアの説明用拡大平面図である。
本発明の実施態様においては、クリーンルーム1は、オペレーションエリアS1とメンテナンスエリアS2とに区分され、オペレーションエリアS1は、複数の大エリア14(エリアa、エリアb、エリアc、・・・)に区画された天井プレナムチャンバ5毎に配置される空気冷却手段(8)であるドライコイルのグループごとに区分けされ、各大エリア14はさらに天井プレナムチャンバ5内をドライコイルから離れるように流れる気流の向きに縦方向を基準に分割した後左右にも2分割した複数の小エリア(例えば、小エリア1~小エリア5)に区分けされ、それぞれのファンフィルタユニット7のグループに構成される。この大エリア14の区分け、小エリアの区分けは、特に全く同一面積に限定されるわけではなく、発熱負荷の異なる工程ごとにグルーピングしたドライコイルごとにクリーンルーム1内における温度変化傾向で区分けしており、さらに、小エリアについては、レタンシャフトでの気流状況やドライコイルの伝熱面積の大きさや形状などによるグループ状況で区分けすることで、より高い精度で温度変化に対応できるので好適である。
そして、区分けされた大エリア14ごとにさらに区分けされた小エリアには、小エリアごとに無線の室内小エリア温度センサ12が設置され、各小エリアのオペレーションエリアS1側からメンテナンスエリアS2側へ床上で方向転換しながら排出される位置の温度を測り、後述する親機31を経由して制御装置33に温度の計測データを送る。
そして、有線の前記給気室内温度センサ13は、前記空気冷却手段8の空気後流側でもある、前記オペレーションエリアS1の室内の中央上部に設置されていて、大エリア14への空気冷却手段8通過後の温度を測り前記無線の室内小エリア温度センサ12と同様に制御装置33に温度の計測データを送る。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態に係るクリーンルームにおける風量制御を説明する説明図である。
本発明の実施の態様においては、大エリア14は小エリア1~小エリア4の4つのグループから構成されている。そして、各小エリア1~4には、前記無線の室内小エリア温度センサ12が設置されていて、各小エリア毎に温度を計測し、後述する親機31を経由して制御装置33にその温度の測定値データを送る。
前記給気室内温度センサ13は、前記オペレーションエリアS1の室中央上部に設置されていて、天井プレナムチャンバ5からファンフィルタユニット7から吹出された空気温度を計測し、前記無線の室内小エリア温度センサ12と同様に制御装置33に温度の測定値データを送る。
【0027】
図4は、本発明の実施の形態に係るクリーンルームの空調システムの制御手段を表す図である。
同図において、31は無線の室内小エリア温度センサの親機、33は制御装置である。
以下に、
図3及び
図4に基づいて、本発明の実施の形態に係るクリーンルームの空調システムの制御の一例を説明する。
【0028】
本発明の実施の形態においては、室内設計条件の一例としてオペレーションエリアS1内の設定温度を23℃±1.5℃(許容範囲)とし、メンテナンスエリアS2の温度を25℃以下としている。
大エリア14を構成する各小エリア(小エリア1~4)に設置した無線の室内小エリア温度センサ12は、前記各小エリア(1~4)それぞれの温度を所定の間隔で(例えば数μ秒から数分のいずれか)毎に検出し、それを電波やその他の波である無線通信手段に乗せて、その温度の計測データを親機31に送る。前記親機31からは、有線で制御装置33へ温度の計測データが送られる。
制御装置33は、送られてきた各室内小エリア温度の計測データと、制御装置33の記録部に記録されている各小エリアにおける室内温度設定値(例えば、SP=24℃)との偏差に基づいて、下記式1のYn(n=1,2・・・)を用いて演算し、それぞれの小エリアの温度が温度設定値に近づくようにその小エリア毎のファンフィルタユニット7のファンモータのインバータ周波数をPID制御し、ファンフィルタユニット7から吹き込む風の風速を制御する。ここでいうPID制御は、少なくともP(比例帯)を含む、P動作のほかにI(積分時間)やD(微分時間)の少なくともどちらかを含んで演算した結果の出力信号によって操作器を制御することをいう。
上記のフローを大エリア(14)内の小エリア1~4に対して行う。
【数1】
【0029】
図3における風量制御は、
例えば、小エリア1においては、SP=24℃になるように、当該グループのファンフィルタユニット7aの回転数をPID制御し、この小エリア1では、天井プレナムチャンバ内の空気温度が比較的高い、あるいは室内発熱負荷が高い場合となり、例えば、吹き込む空気の風速を0.45m/sにする。
同様に、小エリア2においては、SP=24℃になるように、当該グループのファンフィルタユニット7bの回転数をPID制御し、この小エリア2では、天井プレナムチャンバ内の空気温度が小エリア1より低いが比較的高い、あるいは室内発熱負荷が小エリア1より低いが比較的高い場合となり、例えば、吹き込む空気の風速を0.35m/sにする。
そして、小エリア3においては、SP=24℃になるように、当該グループのファンフィルタユニット7cの回転数をPID制御し、この小エリア3では、天井プレナムチャンバ内の空気温度が小エリア2より少し低い、あるいは室内発熱負荷が小エリア2より比較的低い場合となり、例えば、吹き込む空気の風速を0.30m/ sにする。
さらに、小エリア4においては、SP=24℃になるように、当該グループのファンフィルタユニット7dの回転数をPID制御し、この小エリア4では、天井プレナムチャンバ内の空気温度が比較的低い、あるいは室内発熱負荷が比較的低い場合となり、例えば、吹き込む空気の風速を0.25m/sとする。
このような手順で、各小エリア内の温度をそれぞれ24℃に維持する。
【0030】
ところで、前記制御装置33は、ファンフィルタユニット7の回転制御とは別に、空気冷却手段8の熱交換量を調整する操作器である比例制御弁10に対して1対1で対応し空気冷却手段8の出口空気温度を計測する給気室内温度センサ13の温度計測値に基づいて、前記空気冷却手段8の出口温度を設定値との偏差に応じて制御することで、大エリア全体の循環空気に小エリア1~4の発熱負荷を処理できる冷熱を与えている。
【0031】
一方、前記制御装置33は、ファンフィルタユニット7のファンモータのインバータ周波数制御を行うので、当該周波数に基づいて各ファンフィルタユニット7の吹き出し速度(風速)が分かり、各ファンフィルタユニットの平面積ごとで乗じた値を合算し、再び平面積合計で除することで平均風速がわかる。これにより、前記大エリア14内の小エリア1~4に吹き込まれる風速の平均値を求め、例えば、ある単位時間の当初、上記大エリア14の風速の平均値が0.34m/sであった場合に、実際に要求される大エリア14の清浄度を実現するための最低限の風速の平均値が0.30m/s(目標値)であるのに、それよりも多く吹いてしまっている。循環風量が過大でありファンフィルタユニットのファン同僚区が過大で省エネルギーに反することとなる。大エリア14の小エリア1~4内のそれぞれの温度がせっかく設定値(例えば、SP=24℃)となっていることを保ちながら大エリア14の風速の平均値を下げるには、循環空気の空気冷却手段8前後の温度差をとる。
つまり比例制御弁10を開けて冷熱を与えれば、室内小エリア温度センサ12それぞれのファンフィルタユニットの風量制御が独立して制御されるので、実現が可能である。ある単位時間の間に、比例制御弁10のPID制御を行う給気室内温度センサ13の温度設定値を低い側へ少しずつ(例えば0.5℃/3分などの勾配)で変化をさせて、上記大エリア14の風速の平均値が0.30m/sになった時点で給気室内温度センサ13の温度設定値変化を停止する。
このようにすることで、小エリア1~4それぞれの室内温度を24℃に均一に保ちながら、ファンフィルタユニット7の風量を適正に制御することが可能となる。
これにより大エリア14へ送る風量を下げることができ省エネを図ることができる。
なお、給気室内温度センサ13は、一つの大エリア14に2台設置し測定温度の平均値で、前記比例制御弁10の開閉を制御してもよい。
【0032】
上記実施例では、各グループに吹き込む空気の風速の平均値(0.34m/s)を求め、当該風速の平均値(0.34m/s)を、清浄度を保てる最低限の風速である0.30m/s(仮)になるように、前記給気温度センサ13の設定値を徐々に低下させるよう変化させ、比例制御弁10を開く側に操作しつつ、平均風速が0.30m/sになったところで設定値変化を停止させていたが、式2を用いて各小エリア1~4に吹き込む空気の風速をあらかじめ0.30m/sに制御することで、前記給気温度センサ13の設定値をあらかじめ低下させておき、結果的に上記大エリア14の風速平均がより早く0.30m/s(仮)になるように前記比例制御弁10を開閉操作することとしてもよい。
【数2】
【符号の説明】
【0033】
K 建物
1 クリーンルーム
S1 オペレーションエリア
S2 メンテナンスエリア
2 天井
4 床
5 天井プレナムチャンバ
6 垂壁
7 ファンフィルタユニット(FFU)
8 空気冷却手段
9 配管
10 比例制御弁
11 天井ふところ
12 室内小エリア温度センサ
13 給気室内温度センサ
14 大エリア
16 レタンシャフト
20 生産装置
31 無線温度センサの親機
33 制御装置