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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】検出装置及び検出装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06V 40/13 20220101AFI20230609BHJP
   A61B 5/1172 20160101ALI20230609BHJP
   A61B 5/1171 20160101ALI20230609BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20230609BHJP
   G06V 40/145 20220101ALI20230609BHJP
【FI】
G06V40/13
A61B5/1172
A61B5/1171 100
G02B5/00 A
G06V40/145
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019088396
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2020184208
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】松永 和己
(72)【発明者】
【氏名】日向野 敏行
(72)【発明者】
【氏名】西山 和廣
【審査官】藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003650(JP,A)
【文献】特開2005-072662(JP,A)
【文献】特開2009-276976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0089491(US,A1)
【文献】特開2007-299084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06- 5/22
G02B 5/00
G06T 1/00
G06V 40/13、40/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を受光する複数の受光素子と、
一方の表面が前記受光素子に対向して設けられる導光部と、を備え、
前記導光部は、前記導光部の前記一方の表面から他方の表面までにわたって設けられる複数の導光経路、及び、前記導光経路よりも前記光の吸収率が高い吸光部を含み、
前記受光素子と前記導光部とが重畳する方向から見た場合に、1つの前記受光素子に対し、複数の前記導光経路が重畳し、
1つの前記受光素子に重畳する複数の前記導光経路は、径に対する前記一方の表面から前記他方の表面までの長さの比率であるアスペクト比が、互いに異なる、
検出装置。
【請求項2】
光を受光する複数の受光素子と、
一方の表面が前記受光素子に対向して設けられる導光部と、を備え、
前記導光部は、前記導光部の前記一方の表面から他方の表面までにわたって設けられる複数の導光経路、及び、前記導光経路よりも前記光の吸収率が高い吸光部を含み、
前記受光素子と前記導光部とが重畳する方向から見た場合に、1つの前記受光素子に対し、複数の前記導光経路が重畳し、
前記導光経路は、前記他方の表面側に向かうに従って、径が小さくなる、
検出装置。
【請求項3】
前記導光経路は、前記吸光部よりも光の透過率が高い固体状の部材で構成される、請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
1つの前記受光素子に重畳する複数の前記導光経路は、径に対する前記一方の表面から前記他方の表面までの長さの比率であるアスペクト比が、互いに異なる、請求項2に記載の検出装置。
【請求項5】
前記導光経路は、前記他方の表面側に向かうに従って、径が小さくなる、請求項1に記載の検出装置。
【請求項6】
前記導光部は、前記導光経路よりも前記光の屈折率が低い低屈折率部をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項7】
前記低屈折率部は、それぞれの前記導光経路の周囲を囲い、前記吸光部は、それぞれの前記低屈折率部の周囲を囲う、請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記低屈折率部は、それぞれの前記導光経路の周囲を囲い、前記吸光部は、前記低屈折率部の前記他方の表面側に設けられる、請求項6に記載の検出装置。
【請求項9】
前記吸光部は、可視光を吸収するが赤外光を透過する第1吸光部と、可視光と赤外光とを吸収する第2吸光部と、を備える、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記導光部は、有機材料で構成される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の検出装置の製造方法であって、
基板上に第1有機材料を塗布する第1塗布ステップと、
基板上に塗布された前記第1有機材料の前記導光経路を形成する領域に光を照射して、光を照射した領域における前記第1有機材料を硬化させて、硬化した前記第1有機材料を前記導光経路とする導光経路形成ステップと、
硬化していない前記第1有機材料を前記基板上から除去する除去ステップと、
前記基板上の前記導光経路が形成されていない領域に第2有機材料を塗布する第2塗布ステップと、
前記基板上の第2有機材料に光およびまたは熱を照射して前記第2有機材料を硬化させて、前記吸光部を形成する吸光部形成ステップと、
を有する、検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置及び検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人認証等に用いられる生体センサとして、光学式の生体センサが知られている(例えば、特許文献1)。光学式の生体センサは、受光した光量に応じて出力される信号が変化する受光素子を有する。特許文献1に記載されている生体センサは、フォトダイオード等の受光素子が基板上に複数配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0012069号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体センサを含む光学式の検出装置は、光を受光素子に導く必要がある。光学式の検出装置において、受光素子に光を適切に導くためには、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、受光素子に光を適切に導くことが可能な検出装置及び検出装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による検出装置は、光を受光する複数の受光素子と、一方の表面が前記受光素子に対向して設けられる導光部と、を備え、前記導光部は、前記導光部の前記一方の表面から他方の表面までにわたって設けられる複数の導光経路、及び、前記導光経路よりも前記光の吸収率が高い吸光部を含み、前記受光素子と前記導光部とが重畳する方向から見た場合に、1つの前記受光素子に対し、複数の前記導光経路が重畳する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る検出装置を示す模式図である。
図2図2は、センサ部を含む検出装置の平面図である。
図3図3は、センサ部を含む検出装置の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、検出装置を示す回路図である。
図5図5は、部分検出領域を示す回路図である。
図6図6は、検出装置の動作例を表すタイミング波形図である。
図7図7は、第1実施形態に係る検出装置の部分検出領域を模式的に示す平面図である。
図8図8は、図7のA-A線に沿う断面図である。
図9図9は、第1実施形態に係る導光体の模式図である。
図10図10は、第1実施形態に係る導光体の模式図である。
図11A図11Aは、本実施形態に係る導光体の製造方法の一例を説明する模式図である。
図11B図11Bは、本実施形態に係る導光体の製造方法の他の例を説明する模式図である。
図12図12は、第1実施形態の構成において、受光素子に光を導く場合の例を説明する模式図である。
図13図13は、変形例に係る導光体の模式図である。
図14図14は、変形例に係る導光体の模式図である。
図15図15は、変形例に係る導光体の模式図である。
図16図16は、第2実施形態に係る導光体の模式図である。
図17図17は、第2実施形態に係る導光体の模式図である。
図18図18は、変形例に係る導光体の模式図である。
図19図19は、変形例に係る導光体の模式図である。
図20図20は、第3実施形態に係る導光体の模式図である。
図21図21は、変形例に係る導光体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(第1実施形態)
(検出装置の全体構成)
図1は、第1実施形態に係る検出装置を示す模式図である。第1実施形態に係る検出装置1は、光Lを受光することで情報を検出する装置である。本実施形態では、検出装置1は、ユーザの生体情報を検出する。図1に示すように、検出装置1は、光源部Sと、センサ部10と、導光体100と、カバーガラスGとを備える。光源部Sと、センサ部10と、導光体100と、カバーガラスGとは、この順で積層されている。
【0010】
光源部Sは、光を照射する光照射面Saを有し、光照射面Saから、センサ部10に向けて光L0を照射する。光源部Sは、バックライトである。光源部Sは、光源として、例えば、所定の色の光を発する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode))を有していてもよい。また光源部Sは、センサ部10に対応する位置に設けられた導光板と、導光板の一方端又は両端に並ぶ複数の光源とを有する、いわゆるサイドライト型のバックライトであってもよい。また、光源部Sは、センサ部10の直下に設けられた光源(例えば、LED)を有する、いわゆる直下型のバックライトであっても良い。また、光源部Sは、バックライトに限定されず、センサ部10の側方や上方に設けられていてもよく、ユーザの指Fgの側方や上方から光L0を照射してもよい。すなわち、光源部Sは、導光体100よりも、被検出体(指Fg)側に設けられてもよい。また、光Lとして自然光を用いる場合は、光源部Sを設けなくてもよい。
【0011】
センサ部10は、光源部Sの光照射面Saと対向して設けられる。光源部Sから照射された光L0は、センサ部10、導光体100及びカバーガラスGを透過する。センサ部10は、例えば、光反射型の生体情報センサであり、光L0の反射光である光Lを検出することで、ユーザの指Fgや手のひらなどの表面の凹凸(例えば、指紋)を検出できる。また、センサ部10は、指Fgや手のひらの内部で反射した光Lを検出することで、血管パターンを検出してもよいし、他の生体情報を検出してもよい。また、光源部Sからの光Lの波長を、検出対象に応じて異ならせてもよい。例えば、指紋検出の場合には、光源部Sから可視光の光L0を照射し、血管パターン検出の場合には、光源部Sから近赤外光の光L0を照射することができる。可視光とは、可視光領域の波長帯の光であり、近赤外光とは、近赤外領域の波長帯の光であり、例えば700nm以上950nm以下の波長帯である。
【0012】
導光体100は、センサ部10の被検出体(指Fg)側に設けられ、センサ部10に対向している。導光体100は、光Lをセンサ部10に導く光学素子である。導光体100の構成については後述する。
【0013】
カバーガラスGは、センサ部10及び光源部Sを保護するための部材であり、導光体100、センサ部10、及び光源部Sを覆っている。カバーガラスGは、例えばガラス基板である。なお、カバーガラスGはガラス基板に限定されず、樹脂基板等であってもよい。また、カバーガラスGが設けられていなくてもよい。
【0014】
検出装置1は、光源部Sに換えて表示パネルが設けられていてもよい。表示パネルは、例えば、有機ELディスプレイパネル(OLED: Organic Light Emitting Diode)や無機ELディスプレイ(μ-LED、Mini-LED)であってもよい。或いは、表示パネルは、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や、表示素子として電気泳動素子を用いた電気泳動型表示パネル(EPD:Electrophoretic Display)であってもよい。この場合であっても、表示パネルから照射された表示光がセンサ部10を透過し、指Fgで反射された光Lに基づいて、ユーザの生体情報を検出することができる。
【0015】
(センサ部)
次に、センサ部10について説明する。図2は、センサ部を含む検出装置の平面図である。図3は、センサ部を含む検出装置の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、検出装置1は、絶縁基板21と、センサ部10と、ゲート線駆動回路15と、信号線選択回路16と、アナログフロントエンド回路(以下、AFE(Analog Front End)と表す)48と、制御回路202と、電源回路203と、を有する。
【0016】
図2に示すように、絶縁基板21には、フレキシブルプリント基板71を介して制御基板201が電気的に接続される。フレキシブルプリント基板71には、AFE48が設けられている。制御基板201には、制御回路202及び電源回路203が設けられている。制御回路202は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)である。制御回路202は、センサ部10、ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16に制御信号を供給して、センサ部10の検出動作を制御する。電源回路203は、電源信号SVS(図5参照)等の電圧信号をセンサ部10及びゲート線駆動回路15に供給する。
【0017】
図2に示すように、絶縁基板21は、検出領域AAと、周辺領域GAとを有する。検出領域AAは、センサ部10が有する複数の受光素子PD(図5参照)と重なる領域である。周辺領域GAは、検出領域AAの外側の領域であり、受光素子PDと重ならない領域である。ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16は、周辺領域GAに設けられる。
【0018】
図3に示すように、検出装置1は、さらに検出制御部11と検出部40と、有する。検出制御部11の機能の一部又は全部は、制御回路202に含まれる。また、検出部40のうち、AFE48以外の機能の一部又は全部は、制御回路202に含まれる。
【0019】
センサ部10は、光電変換素子である受光素子PDを有する光センサである。受光素子PDは、光電変換素子、より具体的にはフォトダイオードであり、受光する光に応じた電気信号を、検出信号Vdetとして信号線選択回路16に出力する。また、センサ部10は、ゲート線駆動回路15から供給されるゲート駆動信号VGCLに従って検出を行う。
【0020】
検出制御部11は、ゲート線駆動回路15、信号線選択回路16及び検出部40にそれぞれ制御信号を供給し、これらの動作を制御する回路である。検出制御部11は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号をゲート線駆動回路15に供給する。また、検出制御部11は、選択信号SEL等の各種制御信号を信号線選択回路16に供給する。
【0021】
ゲート線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて複数のゲート線GCL(図4参照)を駆動する回路である。ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを順次又は同時に選択し、選択されたゲート線GCLにゲート駆動信号VGCLを供給する。これにより、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCLに接続された複数の受光素子PDを選択する。
【0022】
信号線選択回路16は、複数の信号線SGL(図4参照)を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。信号線選択回路16は、検出制御部11から供給される選択信号SELに基づいて、選択された信号線SGLとAFE48とを接続する。これにより、信号線選択回路16は、受光素子PDの検出信号Vdetを検出部40に出力する。
【0023】
検出部40は、AFE48と、信号処理部44と、座標抽出部45と、記憶部46と、検出タイミング制御部47と、を備える。検出タイミング制御部47は、検出制御部11から供給される制御信号に基づいて、AFE48と、信号処理部44と、座標抽出部45と、が同期して動作するように制御する。
【0024】
AFE48は、少なくとも検出信号増幅部42及びA/D変換部43の機能を有する信号処理回路である。検出信号増幅部42は、検出信号Vdetを増幅する。A/D変換部43は、検出信号増幅部42から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0025】
信号処理部44は、AFE48の出力信号に基づいて、センサ部10に入力された所定の物理量を検出する論理回路である。信号処理部44は、指が検出面に接触又は近接した場合に、AFE48からの信号に基づいて生体情報を検出できる。
【0026】
記憶部46は、信号処理部44で演算された信号を一時的に保存する。記憶部46は、例えばRAM(Random Access Memory)、レジスタ回路等であってもよい。
【0027】
座標抽出部45は、信号処理部44において指の接触又は近接が検出されたときに、指等の表面の凹凸などの検出座標を求める論理回路である。座標抽出部45は、センサ部10の各受光素子PDから出力される検出信号Vdetを組み合わせて、指等の表面の凹凸などの形状を示す二次元情報を生成する。なお、座標抽出部45は、検出座標を算出せずにセンサ出力Voとして検出信号Vdetを出力してもよい。
【0028】
次に、検出装置1の回路構成例及び動作例について説明する。図4は、検出装置を示す回路図である。図5は、部分検出領域を示す回路図である。図6は、検出装置の動作例を表すタイミング波形図である。
【0029】
図4に示すように、センサ部10は、マトリクス状に配列された複数の部分検出領域PAAを有する。図5に示すように、部分検出領域PAAは、受光素子PDと、容量素子Caと、第1スイッチング素子Trとを含む。第1スイッチング素子Trは、受光素子PDに対応して設けられる。第1スイッチング素子Trは、薄膜トランジスタにより構成されるものであり、この例では、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFT(Thin Film Transistor)で構成されている。第1スイッチング素子Trのゲートはゲート線GCLに接続される。第1スイッチング素子Trのソースは信号線SGLに接続される。第1スイッチング素子Trのドレインは、受光素子PDのアノード及び容量素子Caに接続される。
【0030】
受光素子PDのカソードには、電源回路203から電源信号SVSが供給される。また、容量素子Caには、電源回路203から、容量素子Caの初期電位となる基準信号VR1が供給される。
【0031】
部分検出領域PAAに光が照射されると、受光素子PDには光量に応じた電流が流れ、これにより容量素子Caに電荷が蓄積される。第1スイッチング素子Trがオンになると、容量素子Caに蓄積された電荷に応じて、信号線SGLに電流が流れる。信号線SGLは、信号線選択回路16を介してAFE48に接続される。これにより、検出装置1は、部分検出領域PAAごとに、受光素子PDに照射される光の光量に応じた信号を検出できる。
【0032】
図4に示すように、ゲート線GCLは、第1方向Dxに延在し、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAと接続される。また、複数のゲート線GCL1、GCL2、…、GCL8は、第2方向Dyに配列され、それぞれゲート線駆動回路15に接続される。なお、以下の説明において、複数のゲート線GCL1、GCL2、…、GCL8を区別して説明する必要がない場合には、単にゲート線GCLと表す。ゲート線GCLの数は8本であるが、あくまで一例であり、ゲート線GCLは、8本以上、例えば256本配列されていてもよい。
【0033】
なお、第1方向Dxは、絶縁基板21と平行な面内の一方向であり、例えば、ゲート線GCLと平行な方向である。また、第2方向Dyは、絶縁基板21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。また、第1方向Dx及び第2方向Dyに直交する方向を、第3方向Dzとする。第3方向Dzは、絶縁基板21と平行な面に直交する方向である。
【0034】
信号線SGLは、第2方向Dyに延在し、第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAに接続される。また、複数の信号線SGL1、SGL2、…、SGL12は、第1方向Dxに配列されて、それぞれ信号線選択回路16及びリセット回路17に接続される。信号線SGLの数は12本であるが、あくまで一例であり、信号線SGLは、12本以上、例えば252本配列されていてもよい。また、図4では、信号線選択回路16とリセット回路17との間にセンサ部10が設けられている。これに限定されず、信号線選択回路16とリセット回路17とは、信号線SGLの同じ方向の端部にそれぞれ接続されていてもよい。
【0035】
ゲート線駆動回路15は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST等の各種制御信号を、レベルシフタ151を介して受け取る。ゲート線駆動回路15は、複数の第2スイッチング素子TrG(図8参照)と、シフトレジスタ(図示しない)とを有している。ゲート線駆動回路15は、シフトレジスタ及び第2スイッチング素子TrGの動作により、複数のゲート線GCL1、GCL2、…、GCL8を時分割的に順次選択する。ゲート線駆動回路15は、選択されたゲート線GCLを介して、複数の第1スイッチング素子Trにゲート駆動信号VGCLを供給する。これにより、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAが、検出対象として選択される。
【0036】
信号線選択回路16は、複数の選択信号線Lselと、複数の出力信号線Loutと、第3スイッチング素子TrSと、を有する。複数の第3スイッチング素子TrSは、それぞれ複数の信号線SGLに対応して設けられている。6本の信号線SGL1、SGL2、…、SGL6は、共通の出力信号線Lout1に接続される。6本の信号線SGL7、SGL8、…、SGL12は、共通の出力信号線Lout2に接続される。出力信号線Lout1、Lout2は、それぞれAFE48に接続される。
【0037】
ここで、信号線SGL1、SGL2、…、SGL6を第1信号線ブロックとし、信号線SGL7、SGL8、…、SGL12を第2信号線ブロックとする。複数の選択信号線Lselは、1つの信号線ブロックに含まれる第3スイッチング素子TrSのゲートにそれぞれ接続される。また、1本の選択信号線Lselは、複数の信号線ブロックの第3スイッチング素子TrSのゲートに接続される。具体的には、選択信号線Lsel1、Lsel2、…、Lsel6は、信号線SGL1、SGL2、…、SGL6に対応する第3スイッチング素子TrSと接続される。また、選択信号線Lsel1は、信号線SGL1に対応する第3スイッチング素子TrSと、信号線SGL7に対応する第3スイッチング素子TrSと、に接続される。選択信号線Lsel2は、信号線SGL2に対応する第3スイッチング素子TrSと、信号線SGL8に対応する第3スイッチング素子TrSと、に接続される。
【0038】
制御回路202(図2参照)は、レベルシフタ161を介して、選択信号SELを順次選択信号線Lselに供給する。これにより、信号線選択回路16は、第3スイッチング素子TrSの動作により、1つの信号線ブロックにおいて信号線SGLを時分割的に順次選択する。また、信号線選択回路16は、複数の信号線ブロックで同時に1本ずつ信号線SGLを選択する。このような構成により、検出装置1は、AFE48を含むIC(Integrated Circuit)の数、又はICの端子数を少なくすることができる。
【0039】
図4に示すように、リセット回路17は、基準信号線Lvr、リセット信号線Lrst及び第4スイッチング素子TrRを有する。第4スイッチング素子TrRは、複数の信号線SGLに対応して設けられている。基準信号線Lvrは、複数の第4スイッチング素子TrRのソース又はドレインの一方に接続される。リセット信号線Lrstは、複数の第4スイッチング素子TrRのゲートに接続される。
【0040】
制御回路202は、リセット信号RST2を、レベルシフタ171を介してリセット信号線Lrstに供給する。これにより、複数の第4スイッチング素子TrRがオンになり、複数の信号線SGLは基準信号線Lvrと電気的に接続される。電源回路203は、基準信号VR1を基準信号線Lvrに供給する。これにより、複数の部分検出領域PAAに含まれる容量素子Caに基準信号VR1が供給される。
【0041】
図6に示すように、検出装置1は、リセット期間Prst、露光期間Pex及び読み出し期間Pdetを有する。電源回路203は、リセット期間Prst、露光期間Pex及び読み出し期間Pdetに亘って、電源信号SVSを受光素子PDのカソードに供給する。また、リセット期間Prstが開始する前の時刻に、制御回路202は、高レベル電圧信号の基準信号VR1及びリセット信号RST2を、リセット回路17に供給する。制御回路202は、ゲート線駆動回路15にスタート信号STVを供給し、リセット期間Prstが開始する。
【0042】
リセット期間Prstにおいて、ゲート線駆動回路15に含まれるシフトレジスタは、スタート信号STV、クロック信号CK及びリセット信号RST1に基づいて、順次ゲート線GCLを選択する。ゲート線駆動回路15は、ゲート駆動信号VGCLをゲート線GCLに順次供給する。ゲート駆動信号VGCLは、高レベル電圧VGHと低レベル電圧VGLとを有するパルス状の波形を有する。図6では、256本のゲート線GCLが設けられており、各ゲート線GCLに、ゲート駆動信号VGCL1、…、VGCL256が順次供給される。
【0043】
これにより、リセット期間Prstでは、全ての部分検出領域PAAの容量素子Caは、順次信号線SGLと電気的に接続されて、基準信号VR1が供給される。この結果、容量素子Caの容量がリセットされる。
【0044】
ゲート駆動信号VGCL256がゲート線GCLに供給された後に、露光期間Pexが開始する。なお、各ゲート線GCLに対応する部分検出領域PAAでの、実際の露光期間Pex1、…、Pex256は、開始のタイミング及び終了のタイミングが異なっている。露光期間Pex1、…、Pex256は、それぞれ、リセット期間Prstでゲート駆動信号VGCLが高レベル電圧VGHから低レベル電圧VGLに変化したタイミングで開始される。また、露光期間Pex1、…、Pex256は、それぞれ、読み出し期間Pdetでゲート駆動信号VGCLが低レベル電圧VGLから高レベル電圧VGHに変化したタイミングで終了する。露光期間Pex1、…、Pex256の露光時間の長さは等しい。
【0045】
露光期間Pexでは、各部分検出領域PAAで、受光素子PDに照射された光に応じて電流が流れる。この結果、各容量素子Caに電荷が蓄積される。
【0046】
読み出し期間Pdetが開始する前のタイミングで、制御回路202は、リセット信号RST2を低レベル電圧にする。これにより、リセット回路17の動作が停止する。読み出し期間Pdetでは、リセット期間Prstと同様に、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCLにゲート駆動信号VGCL1、…、VGCL256を順次供給する。
【0047】
例えば、ゲート駆動信号VGCL1が高レベル電圧VGHの期間に、制御回路202は、選択信号SEL1、…、SEL6を、信号線選択回路16に順次供給する。これにより、ゲート駆動信号VGCL1により選択された部分検出領域PAAの信号線SGLが順次、又は同時にAFE48に接続される。この結果、検出信号VdetがAFE48に供給される。同様に、各ゲート駆動信号VGCLが高レベル電圧VGHとなる期間ごとに、信号線選択回路16が順次信号線SGLを選択する。これにより、読み出し期間Pdetで、検出装置1は、全ての部分検出領域PAAの検出信号VdetをAFE48に出力することができる。
【0048】
検出装置1は、リセット期間Prst、露光期間Pex及び読み出し期間Pdetを、繰り返し実行して指紋検出を行ってもよい。或いは、検出装置1は、指等が検出面に接触又は近接したことを検出したタイミングで、検出動作を開始してもよい。
【0049】
次に、検出装置1の詳細な構成について説明する。図7は、第1実施形態に係る検出装置の部分検出領域を模式的に示す平面図である。図8は、図7のA-A線に沿う断面図である。図8では、検出領域AAの層構造と周辺領域GAの層構造との関係を示すために、A-A線に沿う断面と、周辺領域GAの第2スイッチング素子TrGを含む部分の断面とを、模式的に繋げて示している。さらに、図8では、周辺領域GAの端子部72を含む部分の断面を模式的に繋げて示している。
【0050】
なお、検出装置1の説明において、絶縁基板21の表面に垂直な方向(第3方向Dz)において、絶縁基板21から受光素子PDに向かう方向を「上側」とする。受光素子PDから絶縁基板21に向かう方向を「下側」とする。また、「平面視」とは、絶縁基板21の表面に垂直な方向から見た場合を示す。
【0051】
図7に示すように、部分検出領域PAAは、ゲート線GCLと、信号線SGLとで囲まれた領域である。本実施形態では、ゲート線GCLは、第1ゲート線GCLAと第2ゲート線GCLBとを含む。第1ゲート線GCLAは、第2ゲート線GCLBと重なって設けられる。第1ゲート線GCLAと第2ゲート線GCLBとは、絶縁層(第3無機絶縁層22c及び第4無機絶縁層22d(図8参照))を介して異なる層に設けられている。第1ゲート線GCLAと第2ゲート線GCLBとは、任意の箇所で電気的に接続され、同じ電位を有するゲート駆動信号VGCLが供給される。第1ゲート線GCLA及び第2ゲート線GCLBの少なくとも一方が、ゲート線駆動回路15に接続される。なお、図7では、第1ゲート線GCLAと第2ゲート線GCLBとは異なる幅を有しているが、同じ幅であってもよい。
【0052】
受光素子PDは、ゲート線GCLと、信号線SGLとで囲まれた領域に設けられる。受光素子PDは、第3半導体31と、上部電極34と、下部電極35とを含む。受光素子PDは、例えば、PIN(Positive Intrinsic Negative Diode)型のフォトダイオードや有機半導体からなるフォトダイオードである。
【0053】
具体的には、図8に示すように、受光素子PDは、バックプレーン2の第1有機絶縁層23aの上に、下部電極35、第3半導体31、上部電極34の順に積層される。バックプレーン2は、所定の検出領域ごとにセンサを駆動する駆動回路基板である。バックプレーン2は、絶縁基板21と、絶縁基板21に設けられた第1スイッチング素子Tr、第2スイッチング素子TrG及び各種配線等を有する。
【0054】
第3半導体31は、アモルファスシリコン(a-Si)である。第3半導体31は、i型半導体32a、p型半導体32b及びn型半導体32cを含む。i型半導体32a、p型半導体32b及びn型半導体32cは、光電変換素子の一具体例である。図8では、絶縁基板21の表面に垂直な方向において、n型半導体32c、i型半導体32a及びp型半導体32bの順に積層されている。ただし、反対の構成、つまり、p型半導体32b、i型半導体32a及びn型半導体32cの順に積層されていてもよい。また第3半導体31は、有機半導体からなる光電変換素子であってもよい。その場合は、半導体32aはp型半導体とn型半導体のバルクヘテロジャンクション、半導体32bおよび半導体32cはそれぞれ電子および正孔の電荷輸送層または電荷ブロッキング層から構成される。
【0055】
下部電極35は、受光素子PDのアノードであり、検出信号Vdetを読み出すための電極である。下部電極35は、例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。又は、下部電極35は、これらの金属材料が複数積層された積層膜であってもよい。下部電極35は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電材料であってもよい。
【0056】
n型半導体32cは、a-Siに不純物がドープされてn+領域を形成する。p型半導体32bは、a-Siに不純物がドープされてp+領域を形成する。i型半導体32aは、例えば、ノンドープの真性半導体であり、n型半導体32c及びp型半導体32bよりも低い導電性を有する。
【0057】
上部電極34は、受光素子PDのカソードであり、電源信号SVSを光電変換層に供給するための電極である。上部電極34は、例えばITO等の透光性導電層であり、受光素子PDごとに複数設けられる。
【0058】
図8に示すように、第1有機絶縁層23aの上に第6無機絶縁層22f及び第7無機絶縁層22gが設けられている。第6無機絶縁層22fは、上部電極34の周縁部を覆い、上部電極34と重なる位置に開口が設けられている。接続配線36は、上部電極34のうち、第6無機絶縁層22fが設けられていない部分で上部電極34と接続される。第7無機絶縁層22gは、上部電極34及び接続配線36を覆って第6無機絶縁層22fの上に設けられる。第7無機絶縁層22gの上に平坦化層である第2有機絶縁層23bが設けられる。また、有機半導体のフォトダイオードの場合には、さらにその上に第8無機絶縁層22hが設けられる場合がある。
【0059】
図7に示すように、上部電極34は、接続配線36を介して電源信号線Lvsと接続される。電源信号線Lvsは、電源信号SVSを受光素子PDに供給する配線である。本実施形態では、電源信号線Lvsは、信号線SGLと重なって第2方向Dyに延在する。第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAは、共通の電源信号線Lvsに接続される。このような構成により、部分検出領域PAAの開口を大きくすることができる。下部電極35、第3半導体31及び上部電極34は、平面視で四角形状である。ただし、これに限定されず、下部電極35、第3半導体31及び上部電極34の形状は適宜変更できる。
【0060】
図7に示すように、第1スイッチング素子Trは、ゲート線GCLと信号線SGLとの交差部の近傍に設けられる。第1スイッチング素子Trは、第1半導体61、ソース電極62、ドレイン電極63、第1ゲート電極64A及び第2ゲート電極64Bを含む。
【0061】
第1半導体61は、酸化物半導体である。より好ましくは、第1半導体61は、酸化物半導体のうち透明アモルファス酸化物半導体(TAOS:Transparent Amorphous Oxide Semiconductor)である。第1スイッチング素子Trに酸化物半導体を用いることにより、第1スイッチング素子Trのリーク電流を抑制できる。すなわち、第1スイッチング素子Trは、図6に示す読み出し期間Pdetにおいて、非選択の部分検出領域PAAからのリーク電流を低減できる。このため、検出装置1は、S/N比を向上させることができる。
【0062】
第1半導体61は、第1方向Dxに沿って設けられ、平面視で第1ゲート電極64A及び第2ゲート電極64Bと交差する。第1ゲート電極64A及び第2ゲート電極64Bは、それぞれ第1ゲート線GCLA及び第2ゲート線GCLBから分岐して設けられる。言い換えると、第1ゲート線GCLA及び第2ゲート線GCLBのうち、第1半導体61と重なる部分が第1ゲート電極64A及び第2ゲート電極64Bとして機能する。第1ゲート電極64A及び第2ゲート電極64Bは、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)又はこれらの合金が用いられる。また、第1半導体61の、第1ゲート電極64A及び第2ゲート電極64Bと重なる部分にチャネル領域が形成される。
【0063】
第1半導体61の一端は、コンタクトホールH1を介してソース電極62と接続される。第1半導体61の他端は、コンタクトホールH2を介してドレイン電極63と接続される。信号線SGLのうち、第1半導体61と重なる部分がソース電極62である。また、第3導電層67のうち、第1半導体61と重なる部分がドレイン電極63として機能する。第3導電層67はコンタクトホールH3を介して下部電極35と接続される。このような構成により、第1スイッチング素子Trは、受光素子PDと信号線SGLとの間の接続と遮断とを切り換え可能になっている。
【0064】
次に第1スイッチング素子Trの層構成について説明する。図8に示すように、第1スイッチング素子Trは、絶縁基板21に設けられている。絶縁基板21は、例えばガラス基板である。或いは、絶縁基板21は、ポリイミド等の樹脂で構成された樹脂基板又は樹脂フィルムであってもよい。検出装置1は、酸化物半導体を含む第1スイッチング素子Trが絶縁基板21の上に形成される。このため、例えばシリコン基板などの半導体基板を用いた場合に比べ、検出装置1は、検出領域AAの面積を大きくすることが容易である。
【0065】
第2ゲート電極64Bは、第1無機絶縁層22a及び第2無機絶縁層22bを介して絶縁基板21の上に設けられる。第1無機絶縁層22a及び第2無機絶縁層22b等の無機絶縁層は、シリコン酸化膜(SiO)、シリコン窒化膜(SiN)又はシリコン酸化窒化膜(SiON)等が用いられる。また、各無機絶縁層は、単層に限定されず積層膜であってもよい。
【0066】
第3無機絶縁層22cは、第2ゲート電極64Bを覆って第2無機絶縁層22bの上に設けられる。第1半導体61、第1導電層65及び第2導電層66は、第3無機絶縁層22cの上に設けられる。第1導電層65は、第1半導体61のうちソース電極62と接続される端部を覆って設けられる。第2導電層66は、第1半導体61のうちドレイン電極63と接続される端部を覆って設けられる。
【0067】
第4無機絶縁層22dは、第1半導体61、第1導電層65及び第2導電層66を覆って第3無機絶縁層22cの上に設けられる。第1ゲート電極64Aは、第4無機絶縁層22dの上に設けられる。第1半導体61は、絶縁基板21に垂直な方向において、第1ゲート電極64Aと第2ゲート電極64Bとの間に設けられる。つまり、第1スイッチング素子Trは、いわゆるデュアルゲート構造である。ただし、第1スイッチング素子Trは、第1ゲート電極64Aが設けられ、第2ゲート電極64Bが設けられないトップゲート構造でもよく、第1ゲート電極64Aが設けられず、第2ゲート電極64Bのみが設けられるボトムゲート構造でもよい。
【0068】
第5無機絶縁層22eは、第1ゲート電極64Aを覆って第4無機絶縁層22dの上に設けられる。ソース電極62(信号線SGL)及びドレイン電極63(第3導電層67)は、第5無機絶縁層22eの上に設けられる。本実施形態では、ドレイン電極63は、第1半導体61の上に第4無機絶縁層22d及び第5無機絶縁層22eを介して設けられた第3導電層67である。第4無機絶縁層22d及び第5無機絶縁層22eにはコンタクトホールH1、コンタクトホールH2が設けられる。コンタクトホールH1の底部には第1導電層65が露出する。ソース電極62は、コンタクトホールH1及び第1導電層65を介して第1半導体61と電気的に接続される。同様に、コンタクトホールH2の底部には第2導電層66が露出する。ドレイン電極63は、コンタクトホールH2及び第2導電層66を介して第1半導体61と電気的に接続される。
【0069】
第1導電層65は、ソース電極62と第1半導体61との間において、少なくともコンタクトホールH1の底部と重なる部分に設けられ、第1半導体61と接する。第2導電層66は、ドレイン電極63と第1半導体61との間において、少なくともコンタクトホールH2の底部と重なる部分に設けられ、第1半導体61と接する。第1導電層65及び第2導電層66が設けられているため、検出装置1は、コンタクトホールH1、H2をエッチングにより形成する際に、第1半導体61がエッチング液により除去されることを抑制できる。つまり、検出装置1は、検出領域AAの第1スイッチング素子Trと、周辺領域GAの第2スイッチング素子TrGとを同じ工程で形成することができるため、製造コストを抑制できる。
【0070】
第1導電層65、第2導電層66及び第3導電層67は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)等の金属材料又はこれらの合金が用いられる。第1導電層65及び第2導電層66は、コンタクトホールH1、H2を形成する際にエッチングの進行を抑制する導電材料であればよい。
【0071】
第3導電層67は、平面視で、受光素子PDと重なる領域に設けられる。第3導電層67は、第1半導体61、第1ゲート電極64A及び第2ゲート電極64Bの上側にも設けられる。つまり、第3導電層67は、絶縁基板21に垂直な方向において、第1ゲート電極64Aと下部電極35との間に設けられる。これにより、第3導電層67は、第1スイッチング素子Trを保護する保護層としての機能を有する。
【0072】
第2導電層66は、第1半導体61と重ならない領域において、第3導電層67と対向して延在する。また、第1半導体61と重ならない領域において、第4無機絶縁層22dの上に第4導電層68が設けられる。第4導電層68は、第2導電層66と第3導電層67との間に設けられる。これにより、第2導電層66と第4導電層68との間に容量が形成され、第3導電層67と第4導電層68との間に容量が形成される。第2導電層66、第3導電層67及び第4導電層68により形成される容量は、図5に示す容量素子Caの容量である。
【0073】
第1有機絶縁層23aは、ソース電極62(信号線SGL)及びドレイン電極63(第3導電層67)を覆って、第5無機絶縁層22eの上に設けられる。第1有機絶縁層23aは、第1スイッチング素子Trや、各種導電層で形成される凹凸を平坦化する平坦化層である。受光素子PDは、第1有機絶縁層23aの上に設けられる。下部電極35は、第1有機絶縁層23aに設けられたコンタクトホールH3を介して第3導電層67と電気的に接続される。すなわち、第3導電層67は、受光素子PDのアノードである下部電極35と電気的に接続されるとともに、受光素子PDと、第1スイッチング素子Trの第1ゲート電極64Aとの間に設けられる。
【0074】
周辺領域GAには、ゲート線駆動回路15の第2スイッチング素子TrGが設けられている。第2スイッチング素子TrGは、第1スイッチング素子Trと同一の絶縁基板21に設けられる。第2スイッチング素子TrGは、第2半導体81、ソース電極82、ドレイン電極83及びゲート電極84を含む。
【0075】
第2半導体81は、ポリシリコンである。より好ましくは、第2半導体81は、低温ポリシリコン(以下、LTPS(Low Temperature Polycrystalline Silicone)と表す)である。LTPSを用いた第2スイッチング素子TrGは、600℃以下のプロセス温度で製造できる。このため、ゲート線駆動回路15や信号線選択回路16等の回路を、第1スイッチング素子Trと同一基板上に形成できる。ポリシリコンは、a-Siに比べキャリアの移動度が高い。このため、検出装置1は、第2スイッチング素子TrGにポリシリコンを用いることにより、ゲート線駆動回路15を小型化できる。この結果、検出装置1は、周辺領域GAの面積を小さくすることができる。また、ポリシリコンを用いた第2スイッチング素子TrGは、a-Siに比べ信頼性が高い。
【0076】
第2半導体81は、第1無機絶縁層22aの上に設けられる。つまり、第1スイッチング素子Trの第1半導体61は、絶縁基板21に垂直な方向において、第2スイッチング素子TrGの第2半導体81よりも絶縁基板21から離れた位置に設けられる。これにより、ポリシリコンからなる第2半導体81と、酸化物半導体からなる第1半導体61を同一の絶縁基板21に形成できる。
【0077】
ゲート電極84は、第2無機絶縁層22bを介して第2半導体81の上側に設けられる。ゲート電極84は、第2ゲート電極64Bと同層に設けられる。第2スイッチング素子TrGは、いわゆるトップゲート構造である。ただし、第2スイッチング素子TrGは、デュアルゲート構造でもよく、ボトムゲート構造でもよい。
【0078】
ソース電極82及びドレイン電極83は、第5無機絶縁層22eの上に設けられる。ソース電極82及びドレイン電極83は、第1スイッチング素子Trのソース電極62及びドレイン電極63と同層に設けられる。コンタクトホールH4、H5は、第2無機絶縁層22bから第5無機絶縁層22eに亘って設けられる。ソース電極82は、コンタクトホールH4を介して第2半導体81と電気的に接続される。ドレイン電極83は、コンタクトホールH5を介して第2半導体81と電気的に接続される。
【0079】
コンタクトホールH4、H5は、4層の無機絶縁層(第2無機絶縁層22bから第5無機絶縁層22e)に形成され、コンタクトホールH1、H2は、2層の無機絶縁層(第4無機絶縁層22d、第5無機絶縁層22e)に形成される。つまり、コンタクトホールH4、H5の、絶縁基板21に垂直な方向での長さは、コンタクトホールH1、H2よりも長い。この場合であっても、第1スイッチング素子Trには、第1導電層65及び第2導電層66が設けられているため、検出装置1は、コンタクトホールH1、H2とコンタクトホールH4、H5とを同一工程で形成できる。
【0080】
なお、図4に示す、信号線選択回路16が有する第3スイッチング素子TrSも、第2スイッチング素子TrGと同様の構成とすることができる。すなわち、第3スイッチング素子TrSの半導体は、ポリシリコンであり、より好ましくはLTPSである。この場合、検出装置1は、信号線選択回路16の回路規模を抑制できる。これに限定されず、第3スイッチング素子TrSの半導体は、TAOSを含む酸化物半導体であってもよい。同様に、図4に示す、リセット回路17が有する第4スイッチング素子TrRも、第2スイッチング素子TrGと同様の構成とすることができる。すなわち、第4スイッチング素子TrRの半導体は、ポリシリコンであり、より好ましくはLTPSである。この場合、検出装置1は、リセット回路17の回路規模を抑制できる。これに限定されず、第4スイッチング素子TrRの半導体は、TAOSを含む酸化物半導体であってもよい。
【0081】
端子部72は、周辺領域GAのうち、ゲート線駆動回路15が設けられた領域とは異なる位置に設けられる。端子部72は、第1端子導電層73、第2端子導電層74、第3端子導電層75及び第4端子導電層76を有する。第1端子導電層73は、第2ゲート電極64Bと同層に、第2無機絶縁層22bの上に設けられる。コンタクトホールH6は、第3無機絶縁層22c、第4無機絶縁層22d、第5無機絶縁層22e及び第1有機絶縁層23を連通して設けられる。
【0082】
第2端子導電層74、第3端子導電層75及び第4端子導電層76は、コンタクトホールH6内に、この順で積層され、第1端子導電層73と電気的に接続される。第2端子導電層74は、第3導電層67等と同じ材料を用い、同じ工程で形成できる。また、第3端子導電層75は、下部電極35と同じ材料を用い、同じ工程で形成できる。第4端子導電層76は、接続配線36及び電源信号線Lvs(図7参照)と同じ材料を用い、同じ工程で形成できる。
【0083】
なお、図8では1つの端子部72を示しているが、端子部72は間隔を有して複数配列される。複数の端子部72は、例えばACF(Anisotropic Conductive Film)等により、フレキシブルプリント基板71(図1参照)と電気的に接続される。
【0084】
センサ部10は、以上のような構成となっているため、ユーザの生体情報を適切に検出できる。ただし、センサ部10は、受光素子PDで光Lを受光してユーザの生体情報を検出可能であれば、以上説明した構造に限られない。また、センサ部10は、受光素子PDで光Lを受光して情報を検出するものであれば、生体情報以外を検出するものであってもよい。
【0085】
(導光体)
次に、導光体100について説明する。導光体100は、受光素子PDに光Lを導く部材である。導光体100は、本実施形態では、有機材料、さらに言えば高分子材料で構成されており、弾性変形可能である。ただし、導光体100は、後述する構成であれば、有機材料に限られない。
【0086】
図9及び図10は、第1実施形態に係る導光体の模式図である。図9は、導光体100の断面図であり、図10は、導光体100を第3方向Dzから見た場合の図である。図9に示すように、導光体100は、第3方向Dzにおいてセンサ部10上に設けられている。すなわち、第3方向Dzは、導光体100(導光部102)とセンサ部10(受光素子PD)とが重畳する方向であるといえる。導光体100は、導光部102と、透光層104、106とを備える。導光体100は、第3方向Dzにおいて、透光層106、導光部102、透光層104の順で積層される板状の積層体である。第3方向Dzにおいて、透光層106がセンサ部10側、すなわち受光素子PD側に設けられ、透光層104が被検出体(指Fgなど)側に設けられる。
【0087】
透光層106は、シート状の部材である。透光層106は、上側の表面106aが、導光部102に接触し、表面106aと反対側(下側)の表面106bが、センサ部10(図8の例では第2有機絶縁層23bまたは第8無機絶縁層22h)に接触する。透光層104、106は、光Lを透過する部材で構成されている。透光層104、106は、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)、PC(Polycarbonate)、PEN(Polyethylene Naphthalate)、ポリイミド、または透明ポリイミド、脂環式エポキシ、フルオレン系ポリエステル、PPS(Polyphenylenesulfide)であるが、光Lを透過する部材であれば、材料はそれに限られない。また、透光層104、106は、光Lの透過率が、後述の導光部102の導光経路110と等しいことが好ましい。透光層104、106の光Lの屈折率は、導光部102の導光経路110の光Lの屈折率よりも大きいことが好ましく、例えば、1.4以上1.8以下であることが好ましい。また透光層104と透光層106の透過率や屈折率は異なっていてもよい。
【0088】
なお、透光層104、106は、必須の構成でなく、導光体100に含まれなくてもよい。例えば、導光体100は、透光層104を含まずに透光層106を含まなくてもよいし、透光層104、106の少なくとも1つを含んでもよい。
【0089】
導光部102は、シート状の部材である。導光部102は、上側の表面102aが、透光層104bに接触し、表面102aと反対側(下側)の表面102bが、透光層106の表面106aに接触する。すなわち、導光部102は、表面102bが、透光層106を介して、センサ部10(受光素子PD)に対向する。導光部102は、導光経路110と、吸光部112とを含む。
【0090】
導光経路110は、光Lを透過可能な経路である。本実施形態では、導光経路110は、光Lを透過可能な固体状の部材である。導光経路110の光の透過率は、後述の吸光部112の光Lの透過率より高い。導光経路110の光の透過率は、50%以上100%以下であることが好ましい。ここでの光Lの透過率とは、入射する光Lの強度に対する、出射する光Lの強度の比率を指す。また、導光経路110の光の屈折率は、1.40以上1.70以下であることが好ましい。導光経路110は、有機材料、より詳しくは高分子材料であり、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などである。さらに言えば、導光経路110は、光の照射を受けて硬化する光重合物であることが好ましく、例えば、シリコーン系光重合物、アクリル系光重合物、エポキシ系光重合物などが好ましい。また、導光経路110は、シリコーン系光重合物、アクリル系光重合物、エポキシ系光重合物などの有機材料に、その有機材料より光Lの屈折率が高い材料が含まれたものであってもよい。屈折率が高い材料としては、例えば、チタニアやジルコニアなどの、遷移金属アルコキシドが挙げられる。ただし、導光経路110は、光Lを透過可能な経路であれば、以上説明した材料で構成されることに限られない。例えば、導光経路110は、固体状でなく、空気等の気体が含まれる空間であってもよい。この場合、導光経路110は、導光部102の開口であると言い換えることができ、光Lの屈折率は1になる。
【0091】
図10に示すように、導光経路110は、第1方向Dx及び第2方向Dyにおいてマトリクス状に複数設けられる。図10の例では、導光経路110は、第3方向Dzから見た場合、導光部102において、正方格子状に分布しているが、並び方はこれに限られず任意であり、例えば、六方格子状に分布していてもよい。導光経路110のピッチ、すなわち隣り合う導光経路110の中心間の距離は、全ての導光経路110について等しいことが好ましいが、それに限られず、導光経路110毎にピッチが異なってもよい。
【0092】
また、図9に示すように、導光経路110は、導光部102の表面102aから表面102bまでにわたって設けられている。すなわち、導光経路110の上側の表面110aが、導光部102の表面102aを構成し、表面110aと反対側(下側)の表面110bが、導光部102の表面102bを構成していると言える。また、導光経路110の中心軸Axは、第3方向Dzにほぼ沿っており、第1方向Dx及び第2方向Dyにほぼ直交している。
【0093】
本実施形態において、導光経路110は、円柱状となっており、径D1が第3方向Dzにおいて一定である。また、本実施形態においては、全ての導光経路110の径D1が、等しい。ただし、導光経路110は、円柱状でなくてもよく、例えば四角柱などの多角柱状であってもよい。また、導光経路110の表面110aから表面110bまでの第3方向Dzにおける長さを、長さD2とする。長さD2は、導光部102の第3方向Dzにおける長さということもできる。長さD2は、10μm以上300μm以下であることが好ましい。長さD2をこのような数値範囲とすることで、導光体100をフレキシブルに弾性変形させて、様々な形状の検出装置1に適用することができる。
【0094】
また、径D1に対する長さD2の比率を、導光経路110のアスペクト比とする。導光経路110のアスペクト比は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。このようなアスペクト比にすることで、被検出体(指Fgなど)の像を取り込む際の画角を小さくして、距離の離れた被検出体の撮影時のぼやけを低減することができる。また、導光経路110のアスペクト比は、例えば、20以下であることが好ましい。アスペクト比を20以下とすることで、製造を適切にすることができる。
【0095】
また、図10に示すように、第3方向Dzから見た場合、導光経路110は、受光素子PDに重畳するよう設けられている。より詳しくは、第3方向Dzから見た場合、1つの受光素子PDに対し、複数の導光経路110が重畳する。さらに言えば、それぞれの受光素子PDに対し、複数の導光経路110が重畳している。すなわち、第3方向Dzから見た場合、1つの受光素子PDが形成される領域内に、複数の導光経路110が設けられている。図10の例では、1つの受光素子PDに対し、9個の導光経路110が重畳しているが、1つの受光素子PDに重畳する導光経路110の数は、9個に限られず、複数であれば任意であってよい。また隣接する受光素子PDの間に導光経路110が存在したり、その一部が掛かっていてもよい。
【0096】
吸光部112は、導光経路110の周囲を囲うように設けられている。本実施形態においては、吸光部112は、導光部102において導光経路110が設けられていない箇所の全域にわたって設けられている。従って、本実施形態に係る導光経路110は、導光部102において、吸光部112に囲われている箇所に形成されているといえる。吸光部112は、導光部102の表面102aから表面102bまでにわたって設けられている。すなわち、吸光部112の上側の表面112aが、導光部102の表面102aを構成し、表面112aと反対側(下側)の表面112bが、導光部102の表面102bを構成していると言える。
【0097】
吸光部112は、光Lを吸収する部材で構成されており、光Lの吸収率が導光経路110より高い。吸光部112の光Lの吸収率は、70%以上100%以下であることが好ましく、100%であることがより好ましい。ここでの光Lの吸収率とは、入射する光Lの強度に対する、入射する光Lの強度と出射する光Lの強度との差分の比率を指す。吸光部112は、有機材料、より詳しくは高分子材料であり、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂やシロキサンポリマー系樹脂である。吸光部112も、光の照射や加熱処理を受けて硬化する重合物であることが好ましく、例えば、硬化収縮率が小さいアクリル系光重合物などが好ましい。さらに、吸光部112は、これらの有機材料に対し、カーボンブラックや酸化チタンや酸窒化チタン等のチタンブラック、酸化鉄等の金属酸化物、さらには光Lを吸収する染料や有機顔料を含むものであってもよい。
【0098】
導光体100は、以上のような構成となっている。次に、導光体100の製造方法の例について説明する。図11Aは、本実施形態に係る導光体の製造方法の一例を説明する模式図である。図11Aに示すように、最初に、ステップS10(第1塗布ステップ)に示すように、基板SUB上に、透光層106を形成し、透光層106上に、第1有機材料M1を塗布する。基板SUBは、導光体100を形成するために用いる基板であり、例えばガラス基板などである。第1有機材料M1は、例えば、透光層106の表面106aの全域に形成される。第1有機材料M1は、未硬化の導光経路110の部材である。第1有機材料M1は、例えば、1種以上の光重合性モノマ成分を含む流動性がある有機材料である。また、第1有機材料M1は、1種以上の光重合性モノマ成分と光重合し難いオリゴマーとの複数成分を含む流動性がある有機材料であってもよい。また、第1有機材料M1は、第1有機材料M1は、1種以上の光重合性モノマ成分を含む流動性がある有機材料と、1種以上の光重合性モノマ成分と光重合し難いオリゴマーとの複数成分を含む流動性がある有機材料との、両方を含んでもよい。
【0099】
次に、ステップS12(導光経路形成ステップ)に示すように、透光層106上に設けられた第1有機材料M1に、パターン状の光Uを照射する。図11Aの例では、光源部300とパターン形成部302とを用いて、パターン状の光Uを照射する。光源部300は、光Uを発生させる光源である。パターン形成部302は、複数の透過部302Aが設けられる部材である。透過部302Aは、光Uを透過するよう構成されている。透過部302Aは、導光経路110の径D1に対応した内径(例えば径D1と等しい内径)となっている。また、透過部302Aは、導光経路110のピッチに対応するように(例えば導光経路110のピッチと同じピッチで)、並んでいる。透過部302Aは、光Uを透過する部材であってもよいし、開口であってもよい。なお、光Uは、第1有機材料M1を硬化可能な光であり、例えば紫外光である。
【0100】
ステップS12においては、光源部300と第1有機材料M1との間にパターン形成部302を配置し、光源部300から第1有機材料M1の上側の表面に向けて、光Uを照射する。光源部300からの光Lは、例えば、パターン形成部302の全域にわたって照射される。パターン形成部302に照射される光Uは、パターン形成部302の透過部302Aを通って、第1有機材料M1の上側の表面に照射される。従って、第1有機材料M1には、透過部302Aのパターンに対応した部分のみに、光Uが照射される。第1有機材料M1は、光Uが照射された部分が硬化して、導光経路110となる。そして、光Uが照射されていない部分は、硬化されず、第1有機材料M1のまま残る。すなわち、ステップS12においては、光重合せずに硬化していない第1有機材料M1中に、第3方向Dzに沿って直立する複数の導光経路110が形成される。
【0101】
なお、ステップS12では、パターン形成部302を用いてパターン状の光Uを第1有機材料M1に照射させたが、パターン形成部302を用いることに限られない。図11Bは、本実施形態に係る導光体の製造方法の他の例を説明する模式図である。例えば、図11Bに示すように、光源部300が、パターン形成部を設けず、パターン状に並ぶ複数の光源301を備え、それぞれの光源301から、直進性を有する光U(コリメート光)を、直接照射してもよい。このようなコリメート光を照射することで、第1有機材料M1に、材料の自己組織化作用で円柱状のミクロ相分離パターンが形成される場合には、光重合せずに硬化していない第1有機材料M1中に、第3方向Dzに沿って直立する複数の導光経路110が形成される。
【0102】
次に、ステップS14(除去ステップ)に示すように、光重合せずに硬化していない第1有機材料M1を、基板SUB上から除去する。例えば、第1有機材料M1を溶解する液体中に浸漬することで、第1有機材料M1を除去する。これにより、透光層106上には、複数の導光経路110のみが残る。
【0103】
次に、ステップS16(第2塗布ステップ)に示すように、透光層106上に、第2有機材料M2を塗布する。第2有機材料M2は、透光層106上であって、導光経路110が設けられていない領域(第1有機材料M1が除去された領域)に塗布される。すなわち、それぞれの導光経路110の周囲に、第2有機材料M2が塗布される。第2有機材料M2は、未硬化の吸光部112であり、流動性を有している。なお、ステップS16においては、導光経路110の上側の表面110aが、第2有機材料M2で覆われないことが好ましい。ただし、表面110aが第2有機材料M2で覆われても、第2有機材料M2から形成された吸光部112の上面を、後で機械加工やエッチング処理などにより除去することで、表面110aを露出させてもよい。
【0104】
次に、ステップS18(吸光部形成ステップ)に示すように、透光層106上に設けられた第2有機材料M2に、光源部310から光U1を照射する。第2有機材料M2は、光U1の照射によって硬化して、吸光部112となる。これにより、透光層106上に、導光部102が形成される。なお、光U1は、光Uと同様に、紫外光などであってよい。また、第2有機材料M2は、熱により硬化して吸光部112となるものであってよく、この場合は、ステップS18において、光U1の照射に代えて、第2有機材料M2を加熱して硬化させる。または光と熱を併用することで硬化するものでもよく、その場合は光U1の照射で形状を保持させその後の熱により硬化させる。
【0105】
次に、ステップS20に示すように、導光部102上に、透光層104を形成する。これにより、基板SUB上に、導光体100が形成される。なお、透光層104は、塗布された後に硬化されてもよいし、固体状のものを導光部102上に貼り付けてもよい。
【0106】
次に、ステップS22に示すように、導光体100を基板SUBから取り外して、センサ部10上に設ける。また、検出装置1の他の部材も取り付けるなどの工程を経て、検出装置1が製造される。なお、導光体100を基板SUBから取り外す場合は、レーザリフトオフ法を用いて、導光体100を基板SUBから剥離させてよい。この場合、基板SUBの導光体100が設けられる表面とは反対側の表面から、レーザ光を照射させる。レーザ光は、基板SUBを透過して、導光体100の基板SUBと接触する面(表面106b)に照射される。導光体100は、レーザ光により、基板SUBと接触する面が、基板SUBから剥離する。
【0107】
次に、受光素子PDに光Lを導く場合について説明する。図12は、第1実施形態の構成において、受光素子に光を導く場合の例を説明する模式図である。ここで、光Lを受光して情報を検出する検出装置においては、光Lを受光素子PDに適切に導く必要がある。例えば受光素子PDに導く光Lの強度が小さかったり、検出したい箇所以外からの光が受光素子PDに導かれたりすると、情報を適切に検出できない恐れが生じる。また、広範囲からの光Lが受光素子PDに導かれると、受光素子PD毎に受光する光Lの強度が均等に近づいてしまい、画像がぼやける等の現象も起こる。それに対し、図12に示すように、本実施形態に係る検出装置1は、受光素子PDに光を導くための導光部102を備えている。導光部102は、1つの受光素子PDに対し、複数の導光経路110を重畳している。従って、図12に示すように、複数の導光経路110を通った光Lを、受光素子PDに導くことができる。従って、検出装置1によると、例えば受光素子PDに導く光Lの強度が小さくなることを抑制できる。また、導光経路110によって、導光経路110を通って受光素子PDに入射可能な光Lの入射角度の範囲である入射範囲角度θを制限することができる。すなわち、導光経路110の中心軸Axと光の進行方向とがなす角度が、入射範囲角度θの範囲内にある光Laは、導光経路110を通って受光素子PDに到達する。一方、導光経路110の中心軸Axと光の進行方向とがなす角度が、入射範囲角度θの範囲外にある光Lbは、導光経路110内において、吸光部112の内周面に照射されて吸収され、受光素子PDに到達しない。従って、検出装置1によると、広範囲からの光Lが受光素子PDに到達することが抑制され、被写界深度を深くすることができる。また、検出したい箇所以外からの光Lc(例えば隣の受光素子PDが検出すべき箇所からの光)が受光素子PDに向かってきても、吸光部112で遮ることで、検出したい範囲以外からの光Lcの受光素子PDへの到達を抑えることができる。
【0108】
以上説明したように、第1実施形態に係る検出装置1は、光Lを受光する複数の受光素子PDと、表面102bが受光素子PDに対向して設けられる導光部102と、を備える。導光部102は、複数の導光経路110と、吸光部112とを含む。導光経路110は、導光部102の表面102aから表面102bまでにわたって設けられる。吸光部112は、導光経路110よりも光Lの吸収率が高い。そして、検出装置1は、受光素子PDと導光部102とが重畳する方向(第3方向Dz)から見た場合に、1つの受光素子PDに対し、複数の導光経路110が重畳する。本実施形態に係る検出装置1は、1つの受光素子PDに対し、複数の導光経路110を重畳させることで、複数の導光経路110を通った光Lを受光素子PDに導き、受光素子PDに導く光Lの強度が小さくなることを抑制できる。また、検出装置1は、吸光部112を備えることで、広範囲からの光Lや、検出したい範囲以外からの光Lが、受光素子PDに到達することを抑制できる。このように、本実施形態に係る検出装置1によると、受光素子PDに光Lを適切に導くことができる。
【0109】
また、導光経路110は、吸光部112よりも光Lの透過率が高い固体状の部材で構成されている。導光経路110を、光Lの透過率が高い固体状の部材で構成することで、受光素子PDに光Lを適切に導くことができる。
【0110】
また、導光部102は、有機材料で構成されることが好ましい。有機材料で導光部102を形成することで、導光部102をフレキシブルに弾性変形させて、様々な形状の検出装置1に適用することができる。
【0111】
また、本実施形態に係る検出装置1の製造方法は、第1塗布ステップと、導光経路形成ステップと、除去ステップと、第2塗布ステップと、吸光部形成ステップと、を有する。第1塗布ステップにおいては、基板SUB上に第1有機材料M1を塗布する。導光経路形成ステップにおいては、基板SUB上に塗布された第1有機材料M1の導光経路110を形成する領域に、光Uを照射して、光Uを照射した領域における第1有機材料M1を硬化させて、硬化した第1有機材料M1を導光経路110とする。除去ステップにおいては、硬化していない第1有機材料M1を基板SUB上から除去する。第2塗布ステップにおいては、基板SUB上の導光経路110が形成されていない領域に第2有機材料M2を塗布する。吸光部形成ステップにおいては、基板SUB上の第2有機材料M2に光U1を照射して第2有機材料M2を硬化させて、吸光部112を形成する。本実施形態に係る製造方法によると、受光素子PDに光Lを適切に導く検出装置1を適切に製造できる。
【0112】
(変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。第1実施形態においては、全ての導光経路110の径が等しかったが、以下の変形例に示すように、導光経路毎に径が異なっていてもよい。図13は、変形例に係る導光体の模式図である。図13に示すように、変形例に係る導光体100Aの導光部102Aは、導光経路110A1、110A2とで、内径が異なる。導光経路110A1、110A2は、同じ受光素子PDに重畳している。導光経路110A2の径D1A2は、導光経路110A1の径D1A1より大きい。従って、導光経路110A1、110A2とは、アスペクト比が異なり、導光経路110A2のアスペクト比(径D1A2に対する長さD2の比率)は、導光経路110A1のアスペクト比(径D1A1に対する長さD2の比率)よりも小さい。例えば、導光経路110A2のアスペクト比は、2以上であり、導光経路110A1のアスペクト比は、10以上であることが好ましい。このようにアスペクト比を異ならせることで、導光経路110A1を通って受光素子PDに入射可能な光Lの入射角度の範囲である入射範囲角度θA1を、導光経路110A2を通って受光素子PDに入射可能な光Lの入射角度の範囲である入射範囲角度θA2より小さくできる。これにより、導光経路110A1における被写界深度を深くすることができる。
【0113】
このように、導光経路110Aにおいて、1つの受光素子PDに重畳する複数の導光経路は、アスペクト比が互いに異なる。このようにアスペクト比を異ならせることで、異なる種類の生体情報を適切に検出することができる。例えば、可視光を光L0として照射し、その反射光である可視光の光Lを受光素子PDに導くことで、生体情報として指紋を検出できる。また例えば、近赤外光を光L0として照射し、その反射光である近赤外光の光Lを受光素子PDに導くことで、生体情報として血管パターンを検出できる。この場合に、可視光の光Lを、導光経路110A1を通って受光素子PDに到達させることで、指紋を高精度に検出できる。また、近赤外光の光Lを、導光経路110A2を通って受光素子PDに到達させることで、血管パターンを高精度に検出できる。例えば、導光経路110A1に、可視光を透過して近赤外光を吸収するフィルタを設け、導光経路110A2に、近赤外光を透過して可視光を吸収するフィルタを設けることで、それぞれの導光経路を適切に使い分けることができるが、このようなフィルタは必須の構成ではない。なお、図13では、導光経路110A1と導光経路110A2とで、2つの導光経路の径及びアスペクト比が異なる構成を例示しているが、3つ以上の導光経路が、互いに径及びアスペクト比が異なっていてもよい。
【0114】
次に、第1実施形態の別の変形例を説明する。第1実施形態においては、導光経路110の径D1が第3方向Dzにおける位置毎に一定であったが、導光経路110の径D1が第3方向Dzにおける位置毎に異なってもよい。図14及び図15は、変形例に係る導光体の模式図である。図14に示すように、変形例に係る導光体100Bの導光部102Bは、導光経路110Bの径が、第3方向Dzにおける位置毎に異なる。さらに言えば、導光経路110Bは、表面110b(表面102b)から表面110a(102a)に向かうに従って、径が小さくなる順テーパ形状となっている。すなわち、導光経路110Bの表面110a側の径D1B1は、導光経路110Bの表面110b側の径D1B2より、小さい。
【0115】
このように、導光経路110Bの径が表面102aに向かうに従って小さくなることで、例えば径が一定の場合に比べ、導光経路110Bを通って受光素子PDに入射可能な光Lの入射角度の範囲である入射範囲角度θBを、小さくすることができる。つまり、導光経路110の径D1が一定の場合と同じアスペクト比を実現する場合に順テーパ形状をすることで、導光部102Bの厚みを実効的に薄くすることが可能となる。従って、広範囲からの光Lが受光素子PDに到達することを抑制でき、被写界深度を深くして、受光素子PDに光Lを適切に導くことができる。
【0116】
また、図15に示すように、隣り合う導光経路110Bの表面110bの部分が、互いに接触してもよい。言い換えれば、導光経路110Bの表面110bの外周部分と、その導光経路110Bに隣り合う導光経路110Bの表面110bの外周部分との間に、吸光部112が設けられてなくてもよい。このように、隣り合う導光経路110Bの表面110bが接触することで、それぞれの導光経路110Bを通った光Laを、重なり合った状態で受光素子PDに到達させることができ、光の強度を高くできる。
【0117】
なお、以上説明した2つの変形例を組み合わせて、アスペクト比が異なりつつ、導光経路110の径を第3方向Dzにおける位置毎に異ならせてもよい。また、これらの2つの変形例は、後述の第2実施形態、第3実施形態にも適用可能である。
【0118】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、導光部102が導光経路110と吸光部112を含んでいる構成であったが、第2実施形態においては、さらに低屈折率部を含む。第2実施形態において第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0119】
図16及び図17は、第2実施形態に係る導光体の模式図である。図16に示すように、第2実施形態に係る導光体100Cの導光部102Cは、導光経路110と、吸光部112と、低屈折率部114とを含む。低屈折率部114は、導光経路110よりも光Lの屈折率が低い部材である。低屈折率部114の光Lの屈折率は、1.3以上1.6以下であることが好ましい。また、低屈折率部114は、光Lの透過率が、吸光部112より小さいことが好ましい。低屈折率部114の光の透過率は、50%以上100%以下であることが好ましい。
【0120】
図17に示すように、低屈折率部114は、導光経路110毎に設けられており、それぞれの低屈折率部114は、導光経路110の周囲を囲うように設けられている。すなわち、低屈折率部114は、導光経路110に対応して複数設けられている。図16に示すように、低屈折率部114は、導光部102の表面102aから表面102bまでにわたって設けられている。すなわち、低屈折率部114の上側の表面114aが、導光部102の表面102aを構成し、表面114aと反対側(下側)の表面114bが、導光部102の表面102bを構成していると言える。低屈折率部114の外径を径D3とすると、径D3は、導光経路110の径D1に対し、1.0倍以上1.2倍以下であることが好ましい。また、第2実施形態においては、吸光部112は、低屈折率部114の周囲を囲うように設けられている。すなわち、吸光部112は、導光部102において低屈折率部114及び導光経路110が設けられていない箇所の全域にわたって設けられている。従って、第2実施形態に係る導光経路110は、導光部102において、低屈折率部114に囲われている箇所に形成されているといえる。
【0121】
低屈折率部114の材料は任意であるが、例えば、導光経路110と同じ材料であってもよい。この場合、例えば、図11Aで説明した第1有機材料M1を、π電子共役系を有する低分子のアクリル系モノマーと、屈折率の低いシロキサン結合を有して、光重合し難いオリゴマーと、を含む材料とする。オリゴマー成分の方が、モノマーよりも分子量が大きい。このような第1有機材料M1を用いて図11AのステップS12を実行すると、光Lが照射された領域の中央部分においてアクリル系モノマー成分が多くなるため、中央部分が高屈折率となり、中央部分より放射方向外側が低屈折率となる。すなわち、中央部分が導光経路110となり、放射方向外側部分が低屈折率部114となり、導光経路110と低屈折率部114とを形成できる。ただし、この製造方法及び材料は、一例である。
【0122】
以上説明したように、導光部102Cは、導光経路110よりも光Lの屈折率が低い低屈折率部114をさらに含む。また、低屈折率部114は、それぞれの導光経路110の周囲を囲い、吸光部112は、それぞれの低屈折率部144の周囲を囲う。第2実施形態においては、図16に示すように、導光経路110内に入射して導光経路110の外周面に照射される光Lbが、低屈折率部114との界面で反射しつつ進行して、受光素子PDに到達する。第1実施形態の場合は、低屈折率部114が設けられないため、導光経路110内に入射して導光経路110の外周面に照射される光Lbは、吸光部112に吸収されて、受光素子PDに到達しない。従って、第1実施形態においては、広範囲からの光Lが受光素子PDに到達することを抑制できる。しかし、光Lbが受光素子PDに到達しないことで、光の強度が不足するケースも考えられる。そのような場合において、第2実施形態のように低屈折率部114を設けると、広範囲からの光L(例えば光Lc)の到達を抑制しつつ、光Lbを受光素子PDに到達させることが可能となり、光の強度不足も適切に抑制できる。従って、第2実施形態によると、受光素子PDに光Lを適切に導くことができる。
【0123】
(変形例)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。図18は、変形例に係る導光体の模式図である。第2実施形態においては、低屈折率部114が導光経路110の周囲を囲い、吸光部112が低屈折率部144の周囲を囲う構成であった。ただし、導光経路110と低屈折率部114と吸光部112との構造は、このような構成に限られない。例えば、図18の変形例に係る導光体100Dの導光部102Dに示すように、導光経路110と、低屈折率部114Dと、吸光部112Dとを備えた構成であってよい。低屈折率部114Dは、導光経路110の周囲を囲うように構成されるが、第3方向Dzにおける導光経路110の全域を囲わず、第3方向Dzにおける導光経路110の一部の区域のみを囲う。具体的には、低屈折率部114Dの下側の表面114Dbは、導光部102の表面102bと同じ位置にあるが、低屈折率部114Dの上側の表面114Daは、導光部102の表面102aよりも表面102b側、すなわち下側にある。低屈折率部114Dは、表面114Daから表面114Dbまでの区域において、導光経路110の周囲を覆う。
【0124】
また、吸光部112Dは、低屈折率部114Dの表面114Da上に設けられて、導光経路110の周囲を囲う。吸光部112Dは、下側の表面112Dbが、低屈折率部114Dの表面114Daに接触し、上側の表面112Daが、導光部102の表面102aと同じ位置にある。吸光部112Dは、表面112Daから表面112Dbまでの区域において、導光経路110の周囲を覆う。なお、吸光部112Dの第3方向Dzにおける長さD4は、導光経路110の第3方向Dzにおける長さD2に対し、0.3倍以上1.0倍以下であることが好ましい。
【0125】
このように、導光部102Dにおいて、低屈折率部114Dは、それぞれの導光経路110の周囲を囲い、吸光部112Dは、低屈折率部114Dの表面114Da側に設けられる。このように構成されることで、広範囲からの光Lcを上側の吸光部112Dで吸収して、吸光部112Dに到達することを抑制できる。また、導光経路110内に入射して導光経路110の外周面に照射される光Lbを、低屈折率部114Dの内周面で反射させて受光素子PDに到達させつつ、光Lbよりもさらに入射角度が小さい(入射角度が表面102aに対して小さい)光Ldを、上側の吸光部112Dの内周面で吸収して、広範囲からの光Lの到達を抑制できる。
【0126】
次に、第2実施形態の別の変形例を説明する。図19は、変形例に係る導光体の模式図である。例えば図19に示すように、導光体100Dの吸光部112Dは、第1吸光部112D1と第2吸光部112D2とを含んでいてもよい。第1吸光部112D1は、吸光部112Dのうち、低屈折率部114Dの表面114Da上に設けられる部分である。第2吸光部112D2は、第1吸光部112D1の導光部102Dと接する端部112D1aから、端部112Dcまで、表面102b側、すなわち受光素子PD側に向けて延在する。第2吸光部112D2は、端部112D1aから端部112Dcまでにおいて、導光経路110の周囲を囲う。また、第2吸光部112D2は、端部112D1aから端部112Dcまでにおいて、低屈折率部114Dに囲われている。端部112Dcから表面102bまでにおいては、第2吸光部112D2が設けられていないため、低屈折率部114Dが、導光経路110の周囲を囲う。
【0127】
なお、第2吸光部112D2の第3方向Dzにおける長さD5は、導光経路110の長さD2に対し、0.2倍以上1.0倍以下であることが好ましい。また、第2吸光部112D2の内径D6は、導光経路110の径D1に対して、0.7倍以上1.0倍以下であることが好ましい。
【0128】
このように、図19の例においては、吸光部112Dは、低屈折率部114Dの表面114Da側に設けられる第1吸光部112D1と、第1吸光部112D1の導光部102D側の端部112D1aから表面102b側に向けて延在し、導光経路110の周囲を囲う第2吸光部112D2と、を有する。このような構造となる場合、導光経路110内に入射する光Lbを、第2吸光部112D2より下側の低屈折率部114Dで反射させて、受光素子PDに到達させることができる。また、光Lbよりも入射角度が小さい(入射角度が表面102aに対して小さい)光Ldを、第2吸光部112D2の内周面で吸収させて受光素子PDへの到達を抑えることができる。
【0129】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態においては、導光部が選択吸光部118を備える点で、第1実施形態とは異なる。第3実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0130】
図20は、第3実施形態に係る導光体の模式図である。図20に示すように、第3実施形態に係る導光体100Eの導光部102Eは、導光経路110と、吸光部112と、選択吸光部118とを含む。第3実施形態において、導光経路110は、可視光の光Lと近赤外光の光Lとの両方を透過する。また、吸光部112は、可視光の光Lと近赤外光の光Lとの両方を吸収する。また、選択吸光部118は、可視光の光Lを吸収するが近赤外光の光Lを透過する。選択吸光部118は、可視光の光Lの吸収率が導光経路110より高く、近赤外光の光Lの透過率が吸光部112より高い。選択吸光部118は、可視光の光Lの吸収率が、70%以上100%以下であることが好ましく、100%であることがより好ましい。選択吸光部118は、近赤外光の光Lの透過率が、70%以上100%以下であることが好ましく、100%であることがより好ましい。
【0131】
選択吸光部118は、第2実施形態の低屈折率部114と同様に、導光経路110毎に設けられており、それぞれの選択吸光部118は、導光経路110の周囲を囲うように設けられている。すなわち、選択吸光部118は、導光経路110に対応して複数設けられている。選択吸光部118は、導光部102の表面102aから表面102bまでにわたって設けられている。すなわち、選択吸光部118の上側の表面118aが、導光部102の表面102aを構成し、表面118aと反対側(下側)の表面118bが、導光部102の表面102bを構成していると言える。選択吸光部118の外径を径D7とすると、径D7に対する長さD2の比率である選択吸光部118のアスペクト比は、径D1に対する長さD2の比率である導光経路110のアスペクト比よりも、小さい。選択吸光部118のアスペクト比は、導光経路110のアスペクト比に対し、0.2倍以上1.0倍以下であることが好ましい。このようなアスペクト比とすることで、近赤外光と可視光とを適切に受光して、血管パターンと指紋とを適切に検出できる。なお、選択吸光部118のアスペクト比は、2以上であることが好ましく、20以下であることが好ましい。
【0132】
選択吸光部118は、有機材料、さらに言えば高分子材料で構成されており、例えば可視光を吸収する色素染料を含有する高分子材料などである。
【0133】
また、第3実施形態においては、吸光部112は、選択吸光部118の周囲を囲うように設けられている。すなわち、吸光部112は、導光部102において選択吸光部118及び導光経路110が設けられていない箇所の全域にわたって設けられている。従って、第3実施形態に係る導光経路110は、導光部102において、選択吸光部118に囲われている箇所に形成されているといえる。
【0134】
以上説明したように、導光部102Eは、選択吸光部118をさらに含む。選択吸光部118は、可視光の光Lの吸収率が導光経路110より高く、近赤外光の光Lの透過率が吸光部112より高い。また、選択吸光部118は、それぞれの導光経路110の周囲を囲い、吸光部112は、それぞれの選択吸光部118の周囲を囲う。第3実施形態においては、図20に示すように、検出したい箇所以外からの可視光の光Lcと近赤外光の光L1cとは、吸光部112に吸収され、受光素子PDへの到達を抑えることができる。また、導光経路110内に入射して選択吸光部118の内周面に当たらない可視光の光Laと近赤外光の光L1aとは、導光経路110内を通って受光素子PDへ到達する。また、可視光の光Laよりも入射角度が小さい(入射角度が表面102aに対して小さい)可視光の光Lbは、導光経路110内で選択吸光部118の内周面に当たり、選択吸光部118に吸収されて、受光素子PDへの到達が抑えられる。一方、近赤外光の光L1aよりも入射角度が小さい可視光の光L1bは、導光経路110内で選択吸光部118の内周面に当たるが、選択吸光部118を透過して、受光素子PDに到達する。すなわち、第3実施形態においては、近赤外光の被写界深度よりも可視光の被写界深度を深くすることが可能となり、可視光による指紋の検出と、近赤外光による血管パターンの検出とを、適切に行う事が可能となる。
【0135】
(変形例)
次に、第3実施形態の変形例について説明する。図21は、変形例に係る導光体の模式図である。第3実施形態においては、選択吸光部118が導光経路110の周囲を囲い、吸光部112が選択吸光部118の周囲を囲う構成であった。ただし、導光経路110と選択吸光部118と吸光部112との構造は、このような構成に限られない。例えば、図21の変形例に示すように、選択吸光部118は、導光経路110の周囲を囲うように構成されるが、第3方向Dzにおける導光経路110の全域を囲わず、第3方向Dzにおける導光経路110の一部の区域のみを囲う。すなわち、選択吸光部118の下側の表面118bは、導光部102の表面102bと同じ位置にあるが、選択吸光部118の上側の表面118aは、導光部102の表面102aよりも表面102b側、すなわち下側にある。選択吸光部118は、表面118aから表面118bまでの区域において、導光経路110の周囲を囲う。
【0136】
また、吸光部112は、選択吸光部118の表面112a上に設けられて、導光経路110の周囲を囲う。吸光部112は、下側の表面112bが、選択吸光部118の表面118aに接触し、上側の表面112aが、導光部102の表面102aと同じ位置にある。吸光部112は、表面112aから表面112bの区域までにおいて、導光経路110の周囲を囲う。なお、吸光部112の第3方向Dzにおける長さD8は、導光経路110の第3方向Dzにおける長さD2に対し、0.2倍以上1.0倍以下であることが好ましい。
【0137】
このように、図21の構成においても、可視光の光Laよりも入射角度が小さい(入射角度が表面102aに対して小さい)可視光の光Lbは、導光経路110内で選択吸光部118の内周面に当たり、選択吸光部118に吸収されて、受光素子PDへの到達が抑えられる。一方、近赤外光の光L1aよりも入射角度が小さい可視光の光L1bは、導光経路110内で選択吸光部118の内周面に当たるが、選択吸光部118を透過して、受光素子PDに到達する。すなわち、この場合においても、近赤外光の被写界深度よりも可視光の被写界深度を深くすることが可能となり、可視光による指紋の検出と、近赤外光による血管パターンの検出とを、適切に行う事が可能となる。
【0138】
また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0139】
1 検出装置
10 センサ部
100 導光体
102 導光部
102a、102b 表面
104、106 透光層
110 導光経路
112 吸光部
114 低屈折率部
PD 受光素子
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10
図11A
図11B
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図21