(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】モータ載置台
(51)【国際特許分類】
B66B 23/02 20060101AFI20230609BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B66B23/02 Z
B66B31/00 D
(21)【出願番号】P 2019097741
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 郁弥
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204059(JP,A)
【文献】特開昭57-048585(JP,A)
【文献】特開2018-193190(JP,A)
【文献】特表2010-504897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0255777(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/02
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータの踏板上においてモータを載置するモータ載置台であって、
前記モータが載置される載置部と、前記載置部の底面に設けられると共に前記踏板のクリート溝に噛み合わされる噛合部と、を備え、
前記噛合部は、くさび形状に形成されると共に前記クリート溝に差し込ま
れ、
前記くさび形状は、基端部の幅が前記クリート溝の幅よりも大きく、先端部の幅が前記クリート溝の間隔よりも小さく、基端部から先端部までの高さは、前記クリート溝の深さよりも小さい、モータ載置台。
【請求項2】
前記噛合部は、平面視において前記モータ載置台の四隅にそれぞれ設けられる、請求項1に記載のモータ載置台。
【請求項3】
前記載置部に設けられると共に前記エスカレータのステップ軸に係合する係合部をさらに備える、請求項1または2に記載のモータ載置台。
【請求項4】
前記モータを支持する支持部をさらに備え、
前記支持部は、略V字形状の溝に前記モータを挟むことによって前記モータを支持する、請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータの踏板上において点検または保守のためにモータを載置するモータ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータのうちで中間駆動方式のエスカレータが公知である。中間駆動方式のエスカレータでは、踏板を駆動するための駆動ユニットがエスカレータの傾斜における中間付近に設けられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エスカレータの保守または点検において、モータを取り外し、モータの軸受けまたはモータの付属機器を交換する等の交換作業が行われる。中間駆動方式のエスカレータにおいては、エスカレータの傾斜における中間付近に設けられた駆動ユニットからモータを取り外し、取り外したモータを下階床まで運搬して交換作業が行われる。しかし、モータが重量物であると共に持ち運びしにくい略円筒形状であるため、モータを下階床まで運搬する作業は、作業性も悪くかつ安全性も良好ではない。
【0005】
そこで、作業性および安全性の観点から、モータを取り出すために踏板を取り外し、踏板を取り外すことによって開口された開口部の直下の踏板上において、モータを安定して載置することが求められている。
【0006】
本発明の目的は、エスカレータの踏板上においてモータを安定して載置することができるモータ載置台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るモータ載置台は、エスカレータの踏板上においてモータを載置するモータ載置台であって、モータが載置される載置部と、載置部の底面に設けられると共に踏板のクリート溝に噛み合わされる噛合部と、を備え、噛合部は、くさび形状に形成されると共にクリート溝に差し込まれることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るモータ載置台において、噛合部は、平面視においてモータ載置台の四隅にそれぞれ設けられることが好ましい。
【0009】
本発明に係るモータ載置台において、載置部に設けられると共にエスカレータのステップ軸に係合する係合部をさらに備えることが好ましい。
【0010】
本発明に係るモータ載置台において、モータを支持する支持部をさらに備え、支持部は、略V字形状の溝にモータを挟むことによってモータを支持することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るモータ載置台によれば、エスカレータの踏板上においてモータを安定して載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る中間型エスカレータの構成を示す模式図である。
【
図2】中間型エスカレータの踏板上においてモータ載置台が設置された状態を示す模式図である。
【
図3】モータが載置されたモータ載置台を示す正面図である。
【
図4】モータが載置されたモータ載置台を示す側面図である。
【
図7】別実施形態のモータ載置台を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、実施形態の一例を詳細に説明する。実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであるから、図面に描画された構成要素の寸法などは、以下の説明を参酌して判断されるべきである。本明細書において、「略~」との記載は、略同一を例に説明すると、完全に同一はもとより、実質的に同一と認められる場合を含む意図である。以下で説明する実施形態は例示であって、本発明のモータ載置台はこれに限定されない。
【0014】
以下で説明する形状、材料及び個数は、説明のための例示であって、モータ載置台の仕様に応じて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0015】
図1を用いて、中間型エスカレータ150の構成について説明する。
図1は、中間型エスカレータ150の構成を示す模式図である。
【0016】
エスカレータとしての中間型エスカレータ150は、中間駆動方式であって、ステップ107を駆動するための第1駆動ユニット109および第2駆動ユニット110が傾斜の中間付近に設けられる。中間型エスカレータ150は、主枠101と、上部機械室102と、下部機械室103と、ステップリンク106と、踏板としてのステップ107と、第1駆動ユニット109と,第2駆動ユニット110と、を備える。
【0017】
主枠101は、隣接する上下階床間に架け渡されて、中間型エスカレータ150の自重及び積載荷重を支持する。上部機械室102および下部機械室103は、主枠101の上端部及び下端部にそれぞれ形成された空間からなり、上部機械室102および下部機械室103の各上部は、乗降口の床面を形成するマンホールカバー(図示せず)によって塞がれている。
【0018】
上部機械室102には、上部鎖歯車104が回動自在に設けられる。下部機械室103には、下部鎖歯車105が回動自在に設けられる。ステップリンク106は、上部鎖歯車104と下部鎖歯車105との間に巻き掛けられた無端状のリンクである。ステップ107の上面には、クリート溝107Aが形成される(
図3参照)。ステップ107は、ステップリンク106に一定間隔毎に取り付けられた床板軸としてのステップ軸108(
図2参照)に設けられる。ステップ107は、ステップリンク106の移動に連動して、上下乗降口間を循環移動する。
【0019】
第1駆動ユニット109及び第2駆動ユニット110は主枠101に固定されており、ステップリンク106に噛み合わされた駆動鎖歯車111,112をそれぞれ駆動することにより、ステップリンク106を介してステップ107を駆動する。また、第1駆動ユニット109及び第2駆動ユニット110は、主枠101の中間傾斜部内に設けられており、往路側のステップ107と帰路側のステップ107との間に配置されている。第1駆動ユニット109は、駆動鎖歯車111と、駆動鎖歯車111を駆動するモータMと、を有する。第2駆動ユニット110は、駆動鎖歯車112と、駆動鎖歯車112を駆動するモータMと、を有する。
【0020】
図2を用いて、中間型エスカレータ150のモータMの取り外し手順について説明する。
図2は、モータMの取り外す際に、中間型エスカレータ150のステップ107上においてモータ載置台100が設置された状態を示す模式図である。
【0021】
中間型エスカレータ150の保守または点検では、例えばモータMを取り外し、モータMの軸受けまたはモータMの付属機器を交換する等の交換作業が行われる。以下に、中間型エスカレータ150において、例えば第1駆動ユニット109のモータMを取り外す手順について簡潔に説明する。
【0022】
まず、
図2に示すように、作業者は、中間型エスカレータ150において、第1駆動ユニット109の上方の例えば3枚のステップ107を取り外す。3枚のステップ107が取り外されることによって、第1駆動ユニット109の上方が開口される。
【0023】
次に、作業者は、取り外したステップ107に下方に隣接していたステップ107にモータ載置台100を設置する。言い換えれば、作業者は、開口された(取り外された)ステップ107の直下のステップ107にモータ載置台100を設置する。モータ載置台100を載置するステップ107は、取り外すモータMの下方において最も近い位置にあるステップ107となるように、取り外すステップ107が選択されることが好ましい。モータ載置台100の構成、ならびにモータ載置台100の設置方法については後述する。
【0024】
続いて、作業者は、第2駆動ユニット110からモータMを取り外す。次に、作業者は、第2駆動ユニット110から取り外したモータMを略水平方向に移動させてモータ載置台100に載置する。そして、作業者は、モータ載置台100に載置されたモータMの軸受けまたはモータの付属機器を交換する等の交換作業を行う。なお、モータMを取り付ける手順については、上述したモータMを取り外す手順を逆にする手順であるため、説明を省略する。
【0025】
図3および
図4を用いて、モータ載置台100の構成、並びにモータ載置台100の載置方法について説明する。
図3は、モータ載置台100の構成を示す正面図である。
図4は、モータ載置台100の構成を示す側面図である。
【0026】
以下では、モータ載置台100がステップ107に載置された状態において、中間型エスカレータ150の進行方向と平行な方向をモータ載置台100の前後方向とし、中間型エスカレータ150の上階側を前側とする。水平面において前後方向と直交する方向を幅方向とする。幅方向において、モータ載置台100の前側に向かって右側を右側とする。前後方向および幅方向と直交する方向を上下方向とする。
【0027】
モータ載置台100は、中間型エスカレータ150のステップ107上にてモータMを載置するものである。モータ載置台100は、載置部10と、噛合部20と、係合部30と、支持部40と、を備える。噛合部20の詳細は、
図5および
図6を用いて後述する。
【0028】
本実施形態のモータMは、例えば略円柱形状に形成されるものの、これに限定されない。本実施形態のモータMの側面には、端子台M1と、取付台M2と、が設けられるが、これに限定されない。例えば、端子台M1または取付台M2が設けられないモータであっても良い。
【0029】
載置部10は、モータMを載置するものである。載置部10は、平面視において略プレート状に形成される。載置部10の前後方向の長さは、モータMの軸方向の長さ(全長)よりも長く、かつ、ステップ107の進行方向の長さよりも短いことが好ましい。載置部10の幅方向の長さは、モータMの直径よりも十分に大きいことが好ましい。
【0030】
係合部30は、ステップ107上においてモータ載置台100をステップ軸108に係合するものである。係合部30は、載置部10の前端かつ幅方向の略中央部に設けられる。係合部30は、本体31と、延出部32と、を有する。
【0031】
本体31は、平面視において略プレート状に形成される。本体31は、載置部10の前端かつ幅方向の略中央部において下方に延出するように載置部10に設けられる。延出部32は、平面視において略プレート状に形成される。延出部32は、本体31の下端から後方へ延出するように、本体31に設けられる。ここで、延出部32は、モータ載置台100がステップ107上に載置されたときに、ステップ軸108の若干下方に位置するように、本体31に設けられる。
【0032】
このような構成とすることで、モータ載置台100がステップ107上に設置されるときは、係合部30の本体31の後端面とステップ107の前端面とが当接することによって、モータ載置台100の後方への移動が規制される。また、モータ載置台100がステップ107上から持ち上げられようとされた場合には、係合部30の延出部32がステップ軸108に係合することによって、モータ載置台100がステップ107上から持ち上げられることはない。
【0033】
なお、ステップ107上に設置されたモータ載置台100を取り外すときには、係合部30の延出部32がステップ軸108に係合しない位置まで、ステップ107上においてモータ載置台100を前側に移動させてからモータ載置台100を取り外す。
【0034】
なお、本実施形態では、延出部32がステップ軸108の下端よりも若干下方に位置するように本体31に設けられる構成としたが、延出部32がステップ軸108の若干上方に位置するように本体31に設けられる構成であってもよい。
【0035】
支持部40は、載置部10上に載置されたモータMを支持するものである。支持部40は、一対の壁部41,41と、一対の接触部42,42と、を有する。一対の壁部41,41は、載置部10上において前後方向に沿ってかつ幅方向の右端側と左端側とに設けられる。ここで、モータMは、一対の壁部41,41の隙間において、モータMの軸方向とモータ載置台100の前後方向とが平行になるように、モータ載置台100に載置される。一対の壁部41,41の間隔は、一対の壁部41,41の隙間にモータMが載置されるときに、モータMの下端と載置部10との隙間が若干設けられる程度が好ましい。
【0036】
壁部41は、前後方向から見て略三角形状に形成される。壁部41の高さは特に限定されないが、モータMの半径と略同一であることが好ましい。壁部41の幅方向の内側には、接触部42が設けられる。接触部42は、例えば弾性部材としてのゴム製とするものの、これに限定されない。
【0037】
このような構成とすることで、モータMがモータ載置台100に載置されるときは、モータMは、支持部40の一対の壁部41,41の隙間として形成されるV字形状の溝に挟まれて支持される。このとき、モータMは、一対の接触部42,42と接触して支持されるため、モータ載置台100に堅固に支持される。
【0038】
図5および
図6を用いて、噛合部20の構成について説明する。
図5は、噛合部20の構成を示す底面図である。
図6は、
図5のMM断面を示す断面図である。
【0039】
噛合部20は、載置部10の底面に設けられる。噛合部20は、モータ載置台100がステップ107に設置されるときには、ステップ107のクリート溝107Aに噛み合わされる。噛合部20は、例えば弾性部材としてのゴム製とされるものの、これに限定されない。
【0040】
噛合部20は、平面視において、例えば載置部10の底面の四隅にそれぞれ設けられるものの、これに限定されない。噛合部20は、載置部10の底面の全面に設けられても良いし、載置部10の底面の前端部及び後端部に設けられても良い。
【0041】
噛合部20は、くさび形状を有する。くさび形状は、前後方向に沿って形成される。噛合部20は、前後方向から見てくさび形状に形成される。具体的には、くさび形状とは、基端側から先端側に向かって、幅方向の厚みが薄くなる形状である。言い換えれば、噛合部20は、くさび形状の間に形成される溝部を有する。溝部は、前後方向に沿って形成され、前後方向から見て略V字形状に形成される。
【0042】
噛合部20は、モータ載置台100をステップ107上に設置するときには、ステップ107のクリート溝107Aに差し込まれる。くさび形状は、くさび形状同士の間隔がクリート溝107A同士の間隔と略同一になるように形成される。
【0043】
ここで、ステップ107のクリート溝107Aの幅bと、くさび形状の先端部の幅aと、基端部の幅cとを定義する。このとき、幅a、幅b、幅cの大小関係が幅a<幅b<幅cとなるように、くさび形状が形成される。言い換えれば、くさび形状は、基端部の幅がステップ107のクリート溝107Aの幅よりも大きく、先端部の幅がステップ107のクリート溝107Aの間隔よりも小さい。
【0044】
また、ステップ107のクリート溝107Aを深さeとする。一方、くさび形状の基端部から先端部までを高さdとする。このとき、深さeと高さdとの大小関係が高さd<深さeとなるように、くさび形状が形成される。言い換えれば、くさび形状の基端部から先端部までの高さは、ステップ107のクリート溝107Aを深さよりも小さい。
【0045】
このような構成とすることで、くさび形状の先端部の幅aがクリート溝107Aの幅bよりも小さいことによって、モータ載置台100をステップ107上に設置するときには、噛合部20をクリート溝107Aに簡単に差し込むことができる。また、くさび形状の基端部の幅cがクリート溝107Aの幅bよりも大きいことによって、モータ載置台100をステップ107上に押圧すれば、噛合部20がクリート溝107Aに強固に挟みこまれる。これにより、噛合部20とクリート溝107Aとには、大きな摩擦力が発生し、モータ載置台100が幅方向および前後方向に動かないようになる。
【0046】
また、くさび形状の高さdがクリート溝107Aの深さeよりも小さいことによって、モータ載置台100をステップ107上に設置するときには、クリート溝107Aの凸部がくさび形状の基端部まで確実に到達し、噛合部20がクリート溝107Aに強固に挟みこまれる。
【0047】
モータ載置台100の効果について説明する。モータ載置台100によれば、中間型エスカレータ150のステップ107上においてモータMを安定して載置することができる。
【0048】
図7を用いて、別実施形態のモータ載置台200の構成、並びにモータMの載置方法について説明する。
図7は、モータ載置台200の構成を示す正面図である。
【0049】
モータ載置台200は、中間型エスカレータ150のステップ107上にてモータMを載置するものである。モータ載置台200は、載置部10と、噛合部20と、係合部30と、を備える。載置部10、噛合部20および係合部30は、上述したので説明を省略する。
【0050】
モータ載置台200では、モータMの取付台M2をそのまま載置部10に載置することによって、モータMをモータ載置台100に載置する。このようにして、支持部40を省略したモータ載置台200であっても、本実施形態のモータ載置台100とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0051】
なお、更なる別実施形態のモータ載置台として、係合部30を省略したモータ載置台であってもよい。この場合でも、本実施形態のモータ載置台100とほぼ同様の効果を奏することができる。なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
10 載置部
20 噛合部
30 係合部
40 支持部
100 モータ載置台
107 ステップ(踏板)
108 ステップ軸(踏板軸)
M モータ