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  • 特許-落下防止構造およびカメラ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】落下防止構造およびカメラ装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20210101AFI20230609BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230609BHJP
【FI】
G03B17/56 A
G03B15/00 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019100438
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020194113
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】石井 政光
(72)【発明者】
【氏名】浜津 一信
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-276636(JP,A)
【文献】特開平06-292046(JP,A)
【文献】特開2010-011199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回軸のまわりに旋回する旋回部と
前記旋回部を旋回可能に支持する固定部と
前記旋回軸の端部に設けられたねじ部と、
前記ねじ部に締結されるナット部と、
前記ナット部によって前記ねじ部に共締めされて前記旋回軸と前記固定部とを連結する補強板金部材と、を備え
前記補強板金部材は、前記ナット部によって前記ねじ部に共締めされる部分と、この部分から延びた複数の脚部とを有し、
複数の前記脚部のそれぞれの端部は、前記旋回軸が前記固定部から抜ける動きを止めるように前記固定部の内部構造部に係合する係合部である
ことを特徴とする落下防止構造。
【請求項2】
前記補強板金部材は、
前記ナット部によって前記ねじ部に共締めされる部分に前記ねじ部を貫通させる開口部を有し
前記係合部は、前記固定部の前記内部構造部に引っ掛け係合する一つまたは複数の爪部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の落下防止構造。
【請求項3】
前記爪部は、少なくとも一つが前記固定部の前記内部構造部にねじ締結されている
ことを特徴とする請求項2記載の落下防止構造。
【請求項4】
前記旋回軸は、前記ナット部および前記ねじ部に加え、前記ナット部および前記ねじ部とは別に設けられたねじ締結構造で前記固定部にねじ締結されている
ことを特徴とする請求項1記載の落下防止構造。
【請求項5】
カメラ部を水平および垂直方向に旋回させる旋回部と、
前記旋回部を旋回可能に支持する固定部と、
旋回軸の端部に設けられたねじ部と、
前記ねじ部に締結されるナット部と、
前記ナット部によって前記ねじ部に共締めされて前記旋回軸と前記固定部とを連結する補強板金部材と、を備え
前記補強板金部材は、前記ナット部によって前記ねじ部に共締めされる部分と、この部分から延びた複数の脚部とを有し、
複数の前記脚部のそれぞれの端部は、前記旋回軸が前記固定部から抜ける動きを止めるように前記固定部の内部構造部に係合する係合部である
ことを特徴とするカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラなどの落下防止構造およびこれを備えたカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラ本体を水平および垂直方向に旋回させる旋回機構を備えた監視カメラが知られている。また、広い領域を視野に収めて監視するために、上記旋回機構を備えた監視カメラが高所に据え付けられる場合がある。この場合、監視カメラの落下を防止する構造を設ける必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、カメラ本体を水平および垂直方向に旋回駆動する旋回部と、旋回部を旋回可能に支承する台座部を備えた監視カメラの落下防止具が記載されている。当該落下防止具は、ワイヤロープおよび制動器を備える。
【0004】
ワイヤロープは、ループ状に端末処理された通し部を有しており、監視カメラが備える台座部に巻き付けられるループ部を形成して通し部に通される。制動器は、ワイヤロープのループ部を貫通して取り付けられて、当該ループ部における上記通し部までの落下制動距離に相当するロープ部位で摺動可能である。
【0005】
監視カメラの落下に伴い、監視カメラに保持された制動器は、落下制動距離に相当するロープ部位で摺動して、監視カメラの落下速度を減速させる。そして、制動器が台座部に係合して上記ロープ部位を摺動することで、監視カメラはワイヤロープに保持されて落下が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-21130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に代表される従来の落下防止構造では、監視カメラの旋回の妨げにならない台座部、すなわち監視カメラを旋回可能に支持する固定部にワイヤロープが取り付けられている。このため、衝撃が加わって固定部から旋回部が分離すると、旋回部の落下を防ぐことができないという課題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであって、落下防止対象物が備える固定部から旋回部が分離して落下することを防止できる落下防止構造およびこれを備えたカメラ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る落下防止構造は、旋回軸まわりに旋回する旋回部と、旋回部を旋回可能に支持する固定部と、旋回軸の端部に設けられたねじ部と、ねじ部に締結されるナット部と、ナット部によってねじ部に共締めされて旋回軸と固定部とを連結する補強板金部材と、を備え、補強板金部材は、ナット部によってねじ部に共締めされる部分と、この部分から延びた複数の脚部とを有し、複数の脚部のそれぞれの端部は、旋回軸が固定部から抜ける動きを止めるように固定部の内部構造部に係合する係合部である
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、旋回軸の端部に設けられたねじ部と、ねじ部に締結されるナット部と、ナット部によってねじ部に共締めされて旋回軸と固定部とを連結する補強板金部材を備える。補強板金部材によって旋回部と固定部の連結が補強されるので、固定部から旋回部を分離させる方向の衝撃を緩和させることができる。これにより、落下防止対象物が備える固定部から旋回部が分離して落下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るカメラ装置の概要を示す正面図である。
図2】支柱に据え付けられた図1のカメラ装置を示す正面図である。
図3】従来のカメラ装置が備える落下防止構造を示す正面図である。
図4】実施の形態1に係るカメラ装置の水平旋回軸線に沿った断面を概略的に示す断面図である。
図5】実施の形態1に係る落下防止構造を示す分解斜視図である。
図6】実施の形態1に係る落下防止構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るカメラ装置1の概要を示す正面図である。また、図2は、支柱100に据え付けられた図1のカメラ装置1を示す正面図である。カメラ装置1は、実施の形態1に係る落下防止構造を有した落下防止対象物であって、図1に示すように、第1の旋回部2、第2の旋回部3および固定部4を備える。カメラ装置1は、例えば、監視カメラ装置である。
【0013】
第1の旋回部2は、カメラ部2aを備えており、垂直旋回軸線A1を中心とした旋回が可能である。カメラ部2aは、例えば、監視カメラであり、第1の旋回部2および第2の旋回部3によって垂直方向および水平方向に旋回する。第2の旋回部3は、旋回軸まわりに旋回する旋回部であり、水平旋回軸線A2を中心として旋回する。なお、垂直旋回軸線A1および水平旋回軸線A2は、旋回軸の中心線である。
【0014】
固定部4は、第2の旋回部3を旋回可能に支持する固定部であり、カメラ装置1の台座部として機能する。カメラ装置1は、固定部4を介して高所に設置される。例えば、図2に示すように、カメラ装置1は、固定部4を介して支柱100の端面に設置される。固定部4は、支柱100の端面にボルトなどで強固に固定されている。ここで、実施の形態1に係る落下防止構造は、固定部4から第2の旋回部3が分離して落下することを防止する構造である。
【0015】
図3は、従来のカメラ装置200が備える落下防止構造を示す正面図である。前述したカメラ装置1と同様に、カメラ装置200は、第1の旋回部201、第2の旋回部202および固定部203を備える。第1の旋回部201は、カメラ部201aを備えており、垂直方向に旋回する。第2の旋回部202は水平方向の旋回が可能である。固定部203は、第2の旋回部202を旋回可能に支持する。
【0016】
例えば、固定部203が、支柱の端面にボルトで固定されることで、カメラ装置200は、固定部203を介して上記支柱の端面に設置される。カメラ装置200または支柱に加わった衝撃によって支柱からカメラ装置200が落下しないように、カメラ装置200には、ワイヤロープ204が取り付けられている。
【0017】
カメラ装置200において、図3の破線Aよりも上方が旋回側であり、下方が固定側である。ワイヤロープ204の一方の端部は、第2の旋回部202の旋回の妨げにならないように、固定部203に取り付けられる。さらに、ワイヤロープ204の他方の端部は、例えば固定金具によって、支柱の端面に固定されている。固定部203が支柱の端面から外れても、カメラ装置200は、ワイヤロープ204によって保持されて地表への落下が回避される。
【0018】
しかしながら、従来のワイヤロープ204を用いた落下防止構造では、固定部203にワイヤロープ204が取り付けられており、固定部203から分離した第2の旋回部202の落下を防ぐことができない。そこで、実施の形態1に係る落下防止構造では、第2の旋回部3と固定部4との連結を補強することで、固定部4から第2の旋回部3が分離することを防止している。
【0019】
図4は、カメラ装置1の水平旋回軸線A2に沿った断面を概略的に示す断面図であり、実施の形態1に係る落下防止構造を示している。また、図5は、実施の形態1に係る落下防止構造を示す分解斜視図であり、固定部4から第2の旋回部3を分離した状態を示している。さらに、図6は、実施の形態1に係る落下防止構造を示す斜視図であり、筐体4aの底面側から見た落下防止構造を示している。図6において、筐体4aの内部にある構造を視認可能とするため、筐体4aを透明に記載し、その外形を破線で示している。
【0020】
図4において、カメラ装置1は、破線Aよりも上方が旋回側であり、下方が固定側である。固定部4の筐体4aは、例えば、金属材料のダイカストによって形成され、筐体4aの内部には、第1の旋回部2および第2の旋回部3を旋回駆動させるための回路基板などが収容される。第2の旋回部3の筐体3aには、シャフト5の軸受けとなるハウジング6が設けられ、ハウジング6には、ベアリング6aが挿入されている。シャフト5は、第2の旋回部3の旋回軸であり、第2の旋回部3は、ベアリング6aによりシャフト5まわりに旋回する。
【0021】
シャフト5の端部には、雄ねじであるねじ部5aが設けられている。また、シャフト5のねじ部5aとは異なる箇所、例えば図5に示すように、シャフト5におけるねじ部5aの基部周辺の4箇所にねじ穴5bがそれぞれ設けられている。図4および図6に示すように、シャフト5のねじ部5aが筐体4aを貫通した状態で、ボルト7は、筐体4aの内側からねじ穴5bに螺合される。これにより、シャフト5は、固定部4に締結される。
【0022】
ナット8は、ねじ部5aに締結されるナット部であり、雄ねじであるねじ部5aに螺合する雌ねじが形成されている。図4に示すように、ナット8は、補強板金部材9を通した状態のねじ部5aに筐体4aの内側から締結される。ねじ部5aに締結されたナット8によって固定部4とシャフト5が強固に固定されるので、固定部4からシャフト5が抜けることを防止できる。なお、図4から図6までにおいてナット8が1つである場合を示したが、2つ以上のナット8をねじ部5aに締結してもよい。
【0023】
補強板金部材9は、図5に示すように、平板状の基部9aと、この基部9aから延びた脚部9bを有した板金部材である。基部9aには、ねじ部5aを貫通させる開口部9aaが形成されている。脚部9bは、基部9aから延びた一つまたは複数の帯状部材であり、端部には爪部9cが設けられている。爪部9cは、例えば、脚部9bの先端部を爪状に折り曲げた部分である。
【0024】
ナット8の外径は開口部9aaの径よりも大きいので、ナット8が開口部9aaを貫通させたねじ部5aに締結されると、ナット8によって基部9aがシャフト5に共締めされて、補強板金部材9は、シャフト5に強固に固定される。補強板金部材9がシャフト5に固定された状態で、補強板金部材9の脚部9bは筐体4aの内側に延びており、爪部9cは、図4および図6に示すように、筐体4aの内部構造部に引っ掛け係合している。爪部9cと筐体4aの内部構造部とが引っ掛け係合することで、補強板金部材9によって固定部4とシャフト5が連結される。
【0025】
前述したように、固定部4とシャフト5は、ボルト7をねじ穴5bに締結して連結されている。すなわち、固定部4とシャフト5は、ねじ部5aおよびナット8に加えて、これとは別に設けられたねじ穴5bおよびボルト7を用いたねじ締結構造によって連結されている。すなわち、実施の形態1に係る落下防止構造では、固定部4から第2の旋回部3が分離することを防ぐ構造を、二重に有している。
【0026】
図4の矢印Bは、固定部4から第2の旋回部3が分離する衝撃の方向を示している。
カメラ装置1に対して矢印B方向の過大な衝撃が加わった場合、固定部4とシャフト5の連結部分に衝撃負荷が集中することで、ねじ穴5bまたはボルト7が破損する可能性がある。これに対して、実施の形態1に係る落下防止構造では、ねじ穴5bまたはボルト7が破損した場合であっても、補強板金部材9が、固定部4から第2の旋回部3が分離することを防止する。
【0027】
例えば、カメラ装置1に対して矢印B方向の過大な衝撃が加わると、補強板金部材9の脚部9bは、矢印B方向に引っ張られる。このとき、補強板金部材9の板金特有の弾性によって、矢印B方向の衝撃が緩和される。さらに、筐体4aとシャフト5との連結部分に加わった衝撃負荷は、脚部9bを介して爪部9cと引っ掛け係合している筐体4aの内部構造部に分散され、筐体4aに加わる衝撃負荷が軽減される。これにより、固定部4から第2の旋回部3が分離することが防止されて、衝撃負荷に起因した筐体4aの破壊が回避される。
【0028】
さらに、爪部9cが筐体4aの内部構造部に引っ掛け係合することで、補強板金部材9の動きが係止されてガタツキがなくなる。これにより、補強板金部材9のガタツキに起因したナット8のゆるみも防ぐことができる。
【0029】
なお、実施の形態1に係る落下防止構造において、一つまたは複数の爪部9cのうち、少なくとも一つの爪部9cが、筐体4aの内部構造部にねじ締結されてもよい。爪部9cと固定部4をねじ締結することにより、補強板金部材9を介した固定部4とシャフト5との連結をさらに強固にすることができる。
【0030】
以上のように、実施の形態1に係る落下防止構造およびカメラ装置1は、シャフト5の端部に設けられたねじ部5aと、ねじ部5aに締結されるナット8と、ナット8によってねじ部5aに共締めされて固定部4とシャフト5とを連結する補強板金部材9を備える。補強板金部材9によって固定部4とシャフト5の連結が補強されて、固定部4から第2の旋回部3を分離させる方向の衝撃を緩和させることができる。これにより、固定部4から第2の旋回部3が分離して落下することを防止できる。
【0031】
なお、これまで、落下防止対象物が、監視カメラなどのカメラ装置1である場合を示したが、実施の形態1に係る落下防止構造は、旋回軸まわりに旋回する旋回部と、旋回部を旋回可能に支持する固定部とを備える落下防止対象物であればよい。例えば、落下防止対象物は、水平および垂直方向に旋回してビームを振るレーダ装置であってもよい。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 カメラ装置、2 第1の旋回部、2a カメラ部、3 第2の旋回部、3a,4a 筐体、4 固定部、5 シャフト、5a ねじ部、5b ねじ穴、6 ハウジング、6a ベアリング、7 ボルト、8 ナット、9 補強板金部材、9a 基部、9aa 開口部、9b 脚部、9c 爪部、100 支柱、200 カメラ装置、201 第1の旋回部、201a カメラ部、202 第2の旋回部、203 固定部、204 ワイヤロープ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6