(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】基準電圧発生回路
(51)【国際特許分類】
G05F 3/24 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
G05F3/24 B
(21)【出願番号】P 2019108772
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 太刀男
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-038482(JP,A)
【文献】特開平11-045125(JP,A)
【文献】特開2017-092744(JP,A)
【文献】特開2003-173212(JP,A)
【文献】特開2009-048319(JP,A)
【文献】特開2008-199665(JP,A)
【文献】米国特許第07199646(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力端及び第2の入力端と、電源入力端と、第1から第3の出力端と、前記第1の入力端と接続されるゲートと、前記電源入力端と接続されるドレインと、ソースとを含み、前記電源入力端を介して第1の電源と電気的に接続される第1の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第1の出力端と接続されるドレインとを含む第2の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第2の出力端と接続されるドレインを含む第3の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第3の出力端と接続されるドレインを含む第4の電界効果トランジスタと、を有する電流分流回路と、
抵抗及びダイオードを有し、一端が前記電流分流回路の前記第1の出力端と接続され、他端が第2の電源に接続される第1の抵抗ダイオード回路と、
抵抗及びダイオードを有し、一端が前記電流分流回路の前記第2の出力端と接続され、他端が前記第2の電源に接続される第2の抵抗ダイオード回路と、
前記第1の抵抗ダイオード回路の前記一端と接続される第1の入力端と、前記第2の抵抗ダイオード回路の前記一端と接続される第2の入力端と、前記電流分流回路の前記第1の入力端と接続される出力端と、を含む帰還制御回路と、
抵抗を有し、一端が前記電流分流回路の前記第3の出力端と接続され、他端が前記第2の電源に接続される抵抗回路と、
前記電流分流回路の前記第3の出力端及び前記抵抗回路の前記一端と接続される出力端子と、を備え、
前記電流分流回路の前記第2の入力端は、前記第2の電源と電気的に接続され、
前記第1の電界効果トランジスタは、n型及びp型の一方である第1の極性を有し、
前記第2から第4の電界効果トランジスタは、前記n型及びp型の他方である第2の極性を有する
ことを特徴とする基準電圧発生回路。
【請求項2】
第1の入力端及び第2の入力端と、電源入力端と、第1から第3の出力端と、前記第1の入力端と接続されるゲートと、前記電源入力端と接続されるドレインと、ソースとを含み、前記電源入力端を介して第1の電源と電気的に接続される第1の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第1の出力端と接続されるドレインとを含む第2の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第2の出力端と接続されるドレインを含む第3の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第3の出力端と接続されるドレインを含む第4の電界効果トランジスタと、を有する電流分流回路と、
抵抗及びダイオードを有し、一端が前記電流分流回路の前記第1の出力端と接続され、他端が第2の電源に接続される第1の抵抗ダイオード回路と、
抵抗及びダイオードを有し、一端が前記電流分流回路の前記第2の出力端と接続され、他端が前記第2の電源に接続される第2の抵抗ダイオード回路と、
前記第1の抵抗ダイオード回路の前記一端と接続される第1の入力端と、前記第2の抵抗ダイオード回路の前記一端と接続される第2の入力端と、前記電流分流回路の前記第1の入力端と接続される出力端と、を含む帰還制御回路と、
抵抗を有し、一端が前記電流分流回路の前記第3の出力端と接続され、他端が前記第2の電源に接続される抵抗回路と、
前記電流分流回路の前記第3の出力端及び前記抵抗回路の前記一端と接続される出力端子と、を備え、
前記第1の電界効果トランジスタは、n型及びp型の一方である第1の極性を有し、
前記第2から第4の電界効果トランジスタは、前記n型及びp型の他方である第2の極性を有し、
前記抵抗回路は、直列に接続された第1の抵抗及び第2の抵抗を含み、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点が前記電流分流回路の前記第2の入力端と接続される抵抗分圧回路である
ことを特徴とする基準電圧発生回路。
【請求項3】
前記電流分流回路の前記第2の入力端
と前記第2の電源
との間に接続される電圧源をさらに備える請求項1に記載の基準電圧発生回路。
【請求項4】
第1の入力端及び第2の入力端と、電源入力端と、第1から第3の出力端と、前記第1の入力端と接続されるゲートと、前記電源入力端と接続されるドレインと、ソースとを含み、前記電源入力端を介して第1の電源と電気的に接続される第1の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第1の出力端と接続されるドレインとを含む第2の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第2の出力端と接続されるドレインを含む第3の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第3の出力端と接続されるドレインを含む第4の電界効果トランジスタと、を有する電流分流回路と、
抵抗及びダイオードを有し、一端が前記電流分流回路の前記第1の出力端と接続され、他端が第2の電源に接続される第1の抵抗ダイオード回路と、
抵抗及びダイオードを有し、一端が前記電流分流回路の前記第2の出力端と接続され、他端が前記第2の電源に接続される第2の抵抗ダイオード回路と、
前記第1の抵抗ダイオード回路の前記一端と接続される第1の入力端と、前記第2の抵抗ダイオード回路の前記一端と接続される第2の入力端と、前記電流分流回路の前記第1の入力端と接続される出力端と、を含む帰還制御回路と、
抵抗を有し、一端が前記電流分流回路の前記第3の出力端と接続され、他端が前記第2の電源に接続される抵抗回路と、
前記電流分流回路の前記第3の出力端及び前記抵抗回路の前記一端と接続される出力端子と、を備え、
前記電流分流回路の前記第2の入力端は、前記電流分流回路の前記第3の出力端と電気的に接続されることを特徴とする基準電圧発生回路。
【請求項5】
キャパシタを含み、前記帰還制御回路の出力端と前記第2の電源との間に接続される第1の位相補償回路、キャパシタを含み、前記出力端子と前記第2の電源との間に接続される第2の位相補償回路、キャパシタを含み、前記電流分流回路の、前記第2の入力端と前記第3の出力端との間に接続される第3の位相補償回路、キャパシタを含み、前記電流分流回路の前記第1の出力端と前記第1の抵抗ダイオード回路との間と前記第2の電源との間に接続される第4の位相補償回路、及びキャパシタを含み、前記電流分流回路の前記第2の出力端と前記第2の抵抗ダイオード回路との間と前記第2の電源との間に接続される第5の位相補償回路の5つの位相補償回路のうち、少なくとも何れか1つの位相補償回路を備える請求項1から4の何れか一項に記載の基準電圧発生回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電源電圧や温度の影響を受けにくく所定の電圧値に安定した電圧を基準電圧として出力する基準電圧発生回路が知られている。基準電圧発生回路の一例は、例えば特開平11-45125号公報に記載されている(特許文献1参照)。
【0003】
図8は、従前の基準電圧発生回路100の構成例を示す回路図であり、特許文献1の
図5に示される基準電圧発生回路においてN個のダイオードD2が1個の場合、すなわちN=1の場合と実質的に等価な回路の回路図である。
【0004】
図8に例示される基準電圧発生回路100は、p型の極性を有する電界効果トランジスタ(以下、「PMOSトランジスタ」とする)105~107と、ダイオード111及び抵抗112並びに抵抗113と、ダイオード115及び抵抗116と、差動増幅回路118と、出力電圧回路120と、出力端子130と、を備えている。
【0005】
PMOSトランジスタ105~107の各ソースは、それぞれ、電源電圧VDDを与える電源端子103に接続されている。また、PMOSトランジスタ105~107の各ゲートは、それぞれ、差動増幅回路118の出力端に接続されている。PMOSトランジスタ105のドレインは、ノードN11を介して、3箇所に接続されている。具体的に説明すれば、PMOSトランジスタ105のドレインは、第1箇所として、抵抗112とダイオード111との直列回路を介してGNDに接続(接地)されている。PMOSトランジスタ105のドレインは、第2箇所として、抵抗113を介してGNDに接続(接地)されている。PMOSトランジスタ105のドレインは、第3箇所として、差動増幅回路118の非反転入力端(+)に接続されている。
【0006】
PMOSトランジスタ106のドレインは、ノードN12介して、3箇所に接続されている。具体的に説明すれば、PMOSトランジスタ106のドレインは、第1箇所として、ダイオード115のアノードと接続されている。ダイオード115のカソードは、さらにGNDに接続(接地)されている。PMOSトランジスタ106のドレインは、第2箇所として、抵抗116を介してGNDに接続(接地)されている。PMOSトランジスタ106のドレインは、第3箇所として、差動増幅回路118の反転入力端(-)に接続されている。
【0007】
PMOSトランジスタ107のドレインは、ノードN13介して、2箇所に接続されている。具体的に説明すれば、PMOSトランジスタ107のドレインは、第1箇所として、抵抗123を含む出力電圧回路120を介してGNDに接続(接地)されている。PMOSトランジスタ107のドレインは、第2箇所として、出力端子130と接続されている。
【0008】
基準電圧発生回路100では、PMOSトランジスタ105、106、107によって予め設定された比率のドレイン電流が出力される。このように構成される基準電圧発生回路100では、全体からPMOSトランジスタ107及び抵抗123を除いた残りの部分が帰還制御回路を構成する。この結果、基準電圧発生回路100は、バンドギャップレファレンス回路として動作する。
【0009】
PMOSトランジスタ105のドレイン電流は、ノードN11で分岐し、抵抗112とダイオード111との直列回路と、抵抗113と、をそれぞれ流れる。PMOSトランジスタ106のドレイン電流は、ノードN12で分岐し、ダイオード115と、抵抗116と、をそれぞれ流れる。PMOSトランジスタ107のドレイン電流は、抵抗123を流れる。従って、基準電圧発生回路100では、抵抗123における電圧降下に等しい電圧が出力電圧VOUTとして得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、
図8に例示される基準電圧発生回路100では、電源電圧VDDが急激に上昇又は下降すると、過渡的ではあるものの振幅が大きい電圧が出力電圧VOUTに重畳されるという課題があった。例えば、数μsの間に、電源電圧VDDが1.5Vから6.0V又は6.0Vから1.5Vへ変化すると、数十mV~数百mVの振幅の変動が出力電圧VOUTに重畳される。
【0012】
基準電圧発生回路の出力は他の回路が動作を行う際に基準となる電圧として用いられることが多い。例えば、LDOやDC/DCコンバーター等の電源電圧出力回路の出力電圧の基準となったり、増幅回路やフィルター等の信号処理回路のバイアス電圧や振幅電圧の基準となったりする。基準電圧発生回路の出力電圧を基準にして動作するこれらの回路の出力電圧は、基準電圧発生回路の出力電圧の変動の影響を受けて、同等又は比例関係分だけ変動してしまう。このように、基準電圧発生回路における出力電圧の変動は、他の回路における動作の偏差や誤差を生じさせるため、小さいほど好ましい。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため、電源電圧が急激に変動した場合においても、当該変動に起因する出力電圧の振幅の変動を低減可能な基準電圧発生回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る基準電圧発生回路は、上述した課題を解決するため、第1の入力端及び第2の入力端と、電源入力端と、第1から第3の出力端と、前記第1の入力端と接続されるゲートと、前記電源入力端と接続されるドレインと、ソースとを含み、前記電源入力端を介して第1の電源と電気的に接続される第1の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第1の出力端と接続されるドレインとを含む第2の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第2の出力端と接続されるドレインを含む第3の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第3の出力端と接続されるドレインを含む第4の電界効果トランジスタと、を有する電流分流回路と、抵抗及びダイオードを有し、一端が前記電流分流回路の前記第1の出力端と接続され、他端が第2の電源に接続される第1の抵抗ダイオード回路と、抵抗及びダイオードを有し、一端が前記電流分流回路の前記第2の出力端と接続され、他端が前記第2の電源に接続される第2の抵抗ダイオード回路と、前記第1の抵抗ダイオード回路の前記一端と接続される第1の入力端と、前記第2の抵抗ダイオード回路の前記一端と接続される第2の入力端と、前記電流分流回路の前記第1の入力端と接続される出力端と、を含む帰還制御回路と、抵抗を有し、一端が前記電流分流回路の前記第3の出力端と接続され、他端が前記第2の電源に接続される抵抗回路と、前記電流分流回路の前記第3の出力端及び前記抵抗回路の前記一端と接続される出力端子と、を備え、前記電流分流回路の前記第2の入力端は、直接前記第2の電源と電気的に接続される、又は前記第3の出力端と電気的に接続されており、前記第1の電界効果トランジスタは、n型及びp型の一方である第1の極性を有し、前記第2から第4の電界効果トランジスタは、前記n型及びp型の他方である第2の極性を有することを特徴とする。
本発明に係る基準電圧発生回路は、上述した課題を解決するため、第1の入力端及び第2の入力端と、電源入力端と、第1から第3の出力端と、前記第1の入力端と接続されるゲートと、前記電源入力端と接続されるドレインと、ソースとを含み、前記電源入力端を介して第1の電源と電気的に接続される第1の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第1の出力端と接続されるドレインとを含む第2の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第2の出力端と接続されるドレインを含む第3の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記ソースと接続されるソースと、前記第2の入力端と接続されるゲートと、前記第3の出力端と接続されるドレインを含む第4の電界効果トランジスタと、を有する電流分流回路と、抵抗及びダイオードを有し、一端が前記電流分流回路の前記第1の出力端と接続され、他端が第2の電源に接続される第1の抵抗ダイオード回路と、抵抗及びダイオードを有し、一端が前記電流分流回路の前記第2の出力端と接続され、他端が前記第2の電源に接続される第2の抵抗ダイオード回路と、前記第1の抵抗ダイオード回路の前記一端と接続される第1の入力端と、前記第2の抵抗ダイオード回路の前記一端と接続される第2の入力端と、前記電流分流回路の前記第1の入力端と接続される出力端と、を含む帰還制御回路と、抵抗を有し、一端が前記電流分流回路の前記第3の出力端と接続され、他端が前記第2の電源に接続される抵抗回路と、前記電流分流回路の前記第3の出力端及び前記抵抗回路の前記一端と接続される出力端子と、を備え、前記第1の電界効果トランジスタは、n型及びp型の一方である第1の極性を有し、前記第2から第4の電界効果トランジスタは、前記n型及びp型の他方である第2の極性を有し、前記抵抗回路は、直列に接続された第1の抵抗及び第2の抵抗を含み、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点が前記電流分流回路の前記第2の入力端と接続される抵抗分圧回路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電源電圧が急激に変動した場合においても、当該変動に起因する出力電圧の振幅の変動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の第1の構成例を示す回路図。
【
図2】第1の実施形態に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の第2の構成例を示す回路図。
【
図3】第2の実施形態に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の構成例を示す回路図。
【
図4】(A)及び(B)は、それぞれ、電流分流回路と抵抗ダイオード回路との間に接続される位相補償回路の構成例を示す回路図。
【
図5】第3の実施形態に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の構成例を示す回路図。
【
図6】第1の変形例に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の構成例を示す回路図。
【
図7】第2の変形例に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の構成例を示す回路図。
【
図8】従前の
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の構成例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路を、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の一例である
電流分流回路10及び基準電圧発生回路1Aの構成を示す回路図である。
【0018】
基準電圧発生回路1Aは、電流分流回路10と、抵抗ダイオード回路20と、抵抗ダイオード回路30と、帰還制御回路40と、抵抗分圧回路50と、出力端子60と、を備える。また、基準電圧発生回路1Aには、第1の電源と電気的に接続される電源端子3と、第2の電源としてのGNDと電気的に接続(接地)される接地端子とが配置されている。
【0019】
電流分流回路10は、第1の入力端としての入力端11aと、第2の入力端としての入力端11bと、電源入力端12と、第1の出力端としての出力端13aと、第2の出力端としての出力端13bと、第3の出力端としての出力端13cと、を有している。
【0020】
第1の抵抗ダイオード回路としての抵抗ダイオード回路20は、ノードN1と接続される一端と、接地される他端と、を有している。第2の抵抗ダイオード回路としての抵抗ダイオード回路30は、ノードN2と接続される一端と、接地される他端と、を有している。
【0021】
帰還制御回路40は、出力端13aと接続される第1の入力端としての反転入力端(-)と、出力端13bと接続される第2の入力端としての非反転入力端(+)と、出力端とを含む差動増幅回路41と、差動増幅回路41の出力端と接続されている出力端43と、を有している。
【0022】
抵抗回路としての抵抗分圧回路50は、直列に接続された抵抗51及び抵抗52を有し、抵抗51側の端である一端が出力端13cと接続され、抵抗52側の端である他端が接地されている。
【0023】
出力端13aは、ノードN1と接続されており、ノードN1を介して、抵抗ダイオード回路20の一端及び差動増幅回路41の反転入力端と接続されている。出力端13bは、ノードN2と接続されており、ノードN2を介して、抵抗ダイオード回路30の一端及び差動増幅回路41の非反転入力端と、それぞれ、接続されている。また、出力端43と入力端11aとが接続されている。従って、電流分流回路10及び帰還制御回路40によって、帰還ループが、形成されている。
【0024】
また、電流分流回路10は、ノードN1を介して抵抗ダイオード回路20と接続され、ノードN2を介して抵抗ダイオード回路30と接続されている。
【0025】
入力端11bは、抵抗51と抵抗52との接続点であるノードN3と接続されている。また、出力端13cは、抵抗分圧回路50の一端と接続されている。従って、電流分流回路10は、抵抗分圧回路50から電圧の入力及び抵抗分圧回路50へ電圧の出力が可能に接続されている。出力端13cと抵抗分圧回路50の一端との接続点には、出力端子60が接続されている。さらに、電源入力端12は、電源電圧VDDを供給する電源端子3と接続されている。
【0026】
続いて、電流分流回路10、抵抗ダイオード回路20、30、帰還制御回路40及び抵抗分圧回路50の各回路について説明する。
【0027】
電流分流回路10は、入力端11a、11b、電源入力端12及び出力端13a~13cに加え、n型の極性を有する電界効果トランジスタ(以下、「NMOSトランジスタ」とする)15と、p型の極性を有する電界効果トランジスタ(PMOSトランジスタ)16~18と、を有している。
【0028】
第1の電界効果トランジスタとしてのNMOSトランジスタ15は、n型及びp型の一方の極性である第1の極性としてのn型の極性を有する。NMOSトランジスタ15は、入力端11aと接続されるゲートと、電源入力端12と接続されるドレインと、ソースと、を含んでいる。
【0029】
第2の電界効果トランジスタとしてのPMOSトランジスタ16は、n型及びp型の他方の極性である第2の極性としてのp型の極性を有する。PMOSトランジスタ16は、ゲートと、NMOSトランジスタ15のソースと接続されるソースと、このソースと接続(短絡)されるバックゲートと、出力端13aと接続されるドレインと、を含んでいる。
【0030】
第3の電界効果トランジスタとしてのPMOSトランジスタ17は、第2の極性としてのp型の極性を有し、ゲートと、NMOSトランジスタ15のソースと接続されるソースと、このソースと接続されるバックゲートと、出力端13bと接続されるドレインと、を含んでいる。
【0031】
第4の電界効果トランジスタとしてのPMOSトランジスタ18は、第2の極性としてのp型の極性を有し、ゲートと、NMOSトランジスタ15のソースと接続されるソースと、このソースと接続されるバックゲートと、出力端13cと接続されるドレインと、を含んでいる。
【0032】
PMOSトランジスタ17のゲート長に対するゲート幅(以下、「ゲート幅/ゲート長」とする)の値は、PMOSトランジスタ16のゲート幅/ゲート長の値に対して、p(pは任意の正数)倍である。また、PMOSトランジスタ18のゲート幅/ゲート長の値は、PMOSトランジスタ17のゲート幅/ゲート長の値に対して、q(qは任意の正数)倍である。すなわち、PMOSトランジスタ16、17、18の各ゲート幅/ゲート長の比は、1:p:p・qである。
【0033】
PMOSトランジスタ16は、PMOSトランジスタ17、18の各ゲート及び入力端11bと、それぞれ接続されている。PMOSトランジスタ17は、PMOSトランジスタ16、18の各ゲート及び入力端11bと、それぞれ接続されている。PMOSトランジスタ18は、PMOSトランジスタ16、17の各ゲート及び入力端11bと、それぞれ接続されている。
【0034】
抵抗ダイオード回路20は、第1の電流経路(以下、単に「経路」とする。)を形成するダイオードD1及び抵抗22と、第2の経路を形成する抵抗23と、を有している。第1の経路は、抵抗ダイオード回路20において、第2の経路と並列接続されている。
【0035】
第1の経路は、ノードN1とGNDとを、抵抗22及びダイオードD1を経由して接続する経路である。第1の経路において、ノードN1と抵抗22の一端が接続され、抵抗22の他端がダイオードD1のアノードと接続され、ダイオードD1のカソードと接続されている。ダイオードD1のカソードは、接地されている。
【0036】
第2の経路は、ノードN1とGNDとを、抵抗23を経由して接続する経路である。第2の経路において、ノードN1は抵抗23の一端と接続されている。抵抗23の他端は接地されている。
【0037】
抵抗ダイオード回路30は、ノードN2とGNDとの間に並列接続されるダイオードD2及び抵抗32を有している。ダイオードD2は、アノードがノードN2と接続され、カソードが接地されている。ダイオードD2は、ダイオードD1の接合部の面積に対して、その接合部の面積がn(nは任意の正数)分の1(=1/n)倍に構成されている。換言すれば、ダイオードD1は、ダイオードD2の接合部の面積に対して、その接合部の面積がn倍に構成されている。抵抗32は、一端がノードN2と接続され、他端が接地されている。
【0038】
帰還制御回路40では、帰還制御回路40の第1の入力端が、差動増幅回路41の反転入力端と接続されている。帰還制御回路40の第2の入力端が、差動増幅回路41の非反転入力端と接続されている。
【0039】
抵抗分圧回路50は、直列接続された抵抗51、52によって、出力端子60に出力される出力電圧VOUTの分圧電圧を得る分圧回路である。出力電圧VOUTの分圧電圧は、ノードN3の電圧である。
【0040】
続いて、基準電圧発生回路1Aの作用及び効果について説明する。
基準電圧発生回路1Aでは、電流分流回路10が、入力端11aから入力される電圧、電源入力端12から入力される電源電圧VDD及び入力端11bから入力されるバイアス電圧に基づいて、電流Id1、電流Id2及び電流Id3を生成する。
【0041】
より詳細には、NMOSトランジスタ15が、入力端11aから入力される電圧及び電源入力端12から入力される電源電圧VDDに基づいて、電流Idを生成する。生成された電流Idは、PMOSトランジスタ16、17、18の各ソースに別れて流入する。PMOSトランジスタ16、17、18の各ゲートには、入力端11bから入力される電圧が、バイアス電圧として印加されている。
【0042】
PMOSトランジスタ16は、ソースに入力される電流及びゲートに印加されるバイアス電圧に基づいてドレインから電流Id1を流す。PMOSトランジスタ17は、ソースに入力される電流及びゲートに印加されるバイアス電圧に基づいてドレインから電流Id2を流す。PMOSトランジスタ18は、ソースに入力される電流及びゲートに印加されるバイアス電圧に基づいてドレインから電流Id3を流す。電流Id1、電流Id2及び電流Id3の電流比は、上述したPMOSトランジスタ16、17、18の各ゲート幅/ゲート長の比に等しく、1:p:p・qである。
【0043】
ドレイン電流である電流Id1は、出力端13aから出力され、抵抗ダイオード回路20に流入する。抵抗ダイオード回路20に流入した電流Id1は、ノードN1を経由して、抵抗23を流れる電流I1と、抵抗22及びダイオードD1を流れる電流I2とに分かれてGNDへ流れる。
【0044】
ドレイン電流である電流Id2は、出力端13bから出力され、抵抗ダイオード回路30に流入する。抵抗ダイオード回路30に流入した電流Id2は、ノードN2を経由して、ダイオードD2を流れる電流I3と、抵抗32を流れる電流I4とに分かれてGNDへ流れる。
【0045】
ドレイン電流である電流Id3は、出力端13cから出力され、抵抗分圧回路50に流入する。電流Id3は抵抗分圧回路50を流れる電流I5と等しく、抵抗51及び抵抗52を経由してGNDへ流れる。抵抗51及び抵抗52の接続点であるノードN3には、抵抗51及び抵抗52を流れる電流によって、抵抗51及び抵抗52の抵抗比に応じた分圧電圧が発生している。この分圧電圧は、バイアス電圧として入力端11bに供給されている。
【0046】
また、帰還制御回路40には、ノードN1の電圧VN1及びノードN2の電圧VN2が入力される。より詳細には、第1の入力電圧としての電圧VN1が差動増幅回路41の反転入力端に入力され、第2の入力電圧としての電圧VN2が差動増幅回路41の非反転入力端に入力される。差動増幅回路41は、反転入力端及び非反転入力端に各々入力される2つの電圧の差に比例する電圧を出力端43に供給する。出力端43に供給された電圧は、帰還制御回路40の出力電圧として、電流分流回路10の入力端11aを介してNMOSトランジスタ15のゲートに印加される。
【0047】
また、出力端子60からは出力電圧VOUTが出力される。出力電圧VOUTは、回路方程式を立式して出力電圧VOUTについて解くことで求められる。回路方程式を立式するにあたり、抵抗23、22、32,51及び52の抵抗値を、それぞれ、R1、R2、R3、R4及びR5とする。ダイオードD1、D2の両端の電圧を、それぞれ、VD1、VD2とする。熱電圧VTを、kB・T/qe(kBはボルツマン定数、Tは絶対温度、qeは電荷素量)とする。ダイオードD1及びD2の逆方向飽和電流をIsとする。差動増幅回路41のオフセット電圧をVoffsetとする。上記条件に従えば、下記式(1)~(7)の方程式が得られる。
【0048】
【0049】
【0050】
上記式(8)の方程式には、ノードN1の電圧VN1とノードN2の電圧VN2とが含まれているため、上記式(8)のままでは、陽に解けたとはいえない。そこで、基準電圧発生回路1Aの現実的な使用態様を考慮した回路条件をさらに加味する。差動増幅回路41は、一般的に、反転入力端及び非反転入力端に各々入力される2つの電圧は、ほぼ等しくなる。そこで、反転入力端に入力される電圧VN1及び非反転入力端に入力される電圧VN2は、ほぼ等しいとみなして上記式(8)の右辺項をさらに整理する。上記式(8)の右辺項をさらに整理すると、出力電圧VOUTは、次の式(9)で表される。
【0051】
【0052】
上記式(9)によれば、出力電圧VOUTは、回路定数により自由に設定することができることがわかる。従って、基準電圧発生回路1Aでは、回路設計する際の自由度が大きい。ここで、基準電圧発生回路1Aの特性が理想的であること、すなわち出力端子60に接続される負荷のインピーダンスが無限大であることを仮定する。基準電圧発生回路1Aの特性が理想的であれば、電流Id3の全てが抵抗分圧回路50を流れるため、電流Id3は直列接続される抵抗51及び抵抗52を流れる電流I5と等しい。従って、出力電圧VOUTは、抵抗分圧回路50の一端と他端との間の抵抗値、すなわち抵抗51及び抵抗52を直列接続した抵抗体の抵抗値(=R4・R5/(R4+R5))と電流I5(=電流Id3)との積で求まる。
【0053】
一方、現実の電子回路で使用される、抵抗22、23、32、51、52は、理想的な特性とは限らず、環境温度や抵抗素子と電源電圧VDD又は接地電位との電位差等の動作状況によって抵抗値が変動し得る。抵抗22、23、32、51、52の抵抗値R1~R5は、上記式(9)の右辺項において、互いの比率として現れている。従って、出力電圧VOUTは、互いの抵抗における抵抗値の絶対値ではなく互いの抵抗における抵抗値の相対値によって決めることができる。
【0054】
抵抗値の相対精度は、集積回路(IC)上で構成する場合において、精度差が1/1000程度と高く得られることが多い。従って、出力電圧VOUTの特性は、抵抗の変動特性にはほとんど影響されずに高い精度を得ることができる。
また、上記式(9)から、出力端子60へ流れる電流IOUTは、次の式(10)
で表される。
【0055】
【0056】
上記式(10)によれば、出力電流IOUTは、抵抗23の抵抗値R1の絶対精度に直接影響される。抵抗23の抵抗値R1が、環境温度や電源電圧VDD又は接地電位との電位差等の動作状況に影響されることなく、精度良く得られる場合には、精度の良い出力電流IOUTを得ることができる。すなわち、この場合には、基準電圧発生回路1Aを、基準電流発生回路として機能させることができる。
【0057】
このように、基準電圧発生回路1Aでは、NMOSトランジスタ15が、帰還制御回路40の出力に基づいて、電流Idを生成している。この電流Idに基づいて、抵抗ダイオード回路20、抵抗ダイオード回路30及び抵抗分圧回路50へ供給する各電流Id1、Id2及びId3が生成されている。
NMOSトランジスタ15は、ドレインが電源端子3と接続されているものの、残るゲート、バックゲート及びソースは電源端子3と非接続である。一般にMOSFETは、ドレイン-ソース間の内部抵抗が、例えば、数MΩと大きいので、電源電圧VDDの変動が電流Idに及ぼす影響は限定的である。
従って、基準電圧発生回路1Aでは、NMOSトランジスタ15のドレイン電圧である電源電圧VDDが急変したとしても、電源電圧VDDの変動に起因する電圧が電流Idに重畳される比率を低減することができる。
【0058】
また、基準電圧発生回路1Aでは、電圧VN1及び電圧VN2が、差動増幅回路41に入力されるため、入力される信号の同相成分をキャンセルすることができる。従って、電源電圧VDDの急変に起因する変動が、電圧VN1及び電圧VN2の各々に重畳していたとしても、当該変動分を除去することができる。さらに、基準電圧発生回路1Aでは、安定化された出力電圧VOUTの分圧電圧が、入力端11bを介してPMOSトランジスタ16、17、18の各ゲートに入力される。これにより、PMOSトランジスタ16、17、18は、安定的に動作することができる。
【0059】
従って、基準電圧発生回路1Aによれば、電源電圧VDDが急激に変動した場合においても、当該変動に起因する出力電圧VOUTの振幅の変動を低減できる。また、基準電圧発生回路1Aによれば、PMOSトランジスタ16、17、18を適切に選択することによって、電流Id1、Id2、Id3の比(分流比)を任意に選定することができる。
【0060】
なお、上述した基準電圧発生回路1Aにおいて、入力端11bから電流分流回路10に入力されるバイアス電圧は、抵抗分圧回路50から取り出される出力電圧VOUTの分圧電圧であるが、これに限定されない。後述する
図2を参照して説明するように、入力されるバイアス電圧は、必ずしも出力電圧VOUTの分圧電圧でなくてもよい。
【0061】
図2は、第1の実施形態に係る基準電圧発生回路の他の一例である基準電圧発生回路1Bの構成を示す回路図である。
【0062】
本実施形態に係る基準電圧発生回路は、例えば、基準電圧発生回路1Bのように、所定の電圧を供給する電圧源が発生する電圧を、入力端11bに入力する構成でもよい。なお、基準電圧発生回路1Bは、基準電圧発生回路1Aに対して、抵抗分圧回路50の代わりに抵抗回路55を備える点と、バイアス電圧の提供元が抵抗分圧回路50ではなくて外部の電圧源57である点とで相違するが、その他の点は同様である。
【0063】
抵抗回路55は、抵抗分圧回路50に対して抵抗52が省略された構成、すなわち抵抗51を有して構成されている。電圧源57は、GNDに接続されている負端子と、第2の入力端としての入力端11bに接続されている正端子とを含んでいる。このように構成される基準電圧発生回路1Bによれば、出力電圧VOUTの分圧電圧を入力端11bから印加しない場合においても、基準電圧発生回路1Aと同様の効果を得ることができる。
【0064】
なお、上述した基準電圧発生回路1Bは、入力端11bと電圧源57とが接続されている場合を説明したが、必ずしも入力端11bと電圧源57とが接続される必要はない。基準電圧発生回路1Bは、例えば、出力電圧VOUTを入力端11bに入力する構成、すなわち、入力端11bが、電圧源57と接続されずに、出力端13cと接続された(入力端11bと出力端13cとを短絡させた)構成でもよい。また、設計条件が許せば、入力端11bはGNDと電気的に接続されてもよい。
【0065】
このように、出力端13cと入力端11bとが接続(短絡)された基準電圧発生回路1B、電圧源57と電気的に接続された基準電圧発生回路1B及びGNDと電気的に接続された基準電圧発生回路1Bでは、電源電圧VDDの急変の影響を低減しつつ、回路構成を簡略化することができる。
【0066】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態に係る基準電圧発生回路の一例である基準電圧発生回路1Cの構成を示す回路図である。
【0067】
基準電圧発生回路1Cは、基準電圧発生回路1Aに対して、位相補償回路71~75と、抵抗77と、をさらに備える点で相違するが、その他の点は同様である。そこで、本実施形態では、位相補償回路71~75及び抵抗77を中心に説明し、基準電圧発生回路1Aと重複する説明については省略する。なお、
図3においては、図の明瞭性を確保する観点から、基準電圧発生回路1Aと重複する入力端11a、11b等の一部の構成要素を省略して示している。
【0068】
第1の位相補償回路としての位相補償回路71は、キャパシタC1を含み、帰還制御回路40の出力端(
図3において図示省略)とGNDとの間に接続されている。第2の位相補償回路としての位相補償回路72は、キャパシタC2を含み、出力端子60とGNDとの間に接続されている。第3の位相補償回路としての位相補償回路73は、キャパシタC3を含み、
図3において図示が省略されている入力端11bに相当するノードN4と
図3において図示が省略されている出力端13cに相当するノードN5との間に接続されている。
【0069】
第4の位相補償回路としての位相補償回路74は、接続点P1に接続されている。接続点P1は、PMOSトランジスタ16のドレインと、抵抗ダイオード回路20の一端、より詳細にはノードN1との間に設けられている。第5の位相補償回路としての位相補償回路75は、接続点P2に接続されている。接続点P2は、PMOSトランジスタ17のドレインと、抵抗ダイオード回路30の一端、より詳細にはノードN2との間に接続されている。位相補償回路74、75は、
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、少なくともキャパシタ742、752を含んで構成されている。
抵抗77は、差動増幅回路41の非反転入力端と抵抗ダイオード回路30の一端、より詳細にはノードN2との間に接続されている。
【0070】
このように構成される基準電圧発生回路1Cでは、位相補償回路71~75が、位相の余裕を増大する。位相補償回路71、72では、キャパシタC1、C2の一端が、交流的にも接地点であるGNDに接続(接地)されている。従って、位相補償回路71、72は、位相の余裕を増大するとともに、基準電圧発生回路1Cにおけるノードの、電源電圧VDDの急変に対する安定性を向上させる。
【0071】
位相補償回路73では、PMOSトランジスタ18のドレインが、自己のゲートと接続され、さらに抵抗分圧回路50と接続されているので、キャパシタC3はミラー効果を得ることができる。このミラー効果によって、位相補償回路73は、キャパシタC3の実際の容量以上のキャパシタが接続された場合と同等に作用する。
【0072】
抵抗77は、差動増幅回路41の2個の入力端から外を見込んだ交流インピーダンスの差を低下させる。
差動増幅回路41の反転入力端から外を見込んだ第1の交流インピーダンスは、ダイオードD1が理想的なダイオードと見做した場合、抵抗22の抵抗値とほぼ等しくなる。差動増幅回路41の非反転入力端から外を見込んだ第2の交流インピーダンスは、抵抗77が存在せず、ダイオードD2が理想的なダイオードと見做した場合、ほぼ零になる。従って、差動増幅回路41の非反転入力端とGNDとの間に抵抗22の抵抗値と等しい抵抗値をもつ抵抗77を接続すれば、第1の交流インピーダンスと第2の交流インピーダンスとをほぼ一致させることができる。
【0073】
基準電圧発生回路1Cによれば、位相補償回路71~75を備えているので、負帰還の帰還制御回路40において、周波数帯域内で位相が大きく変動して実質的に正帰還に遷移することを防止することができる。従って、基準電圧発生回路1Cは、回路動作が不安定になったり、発振動作が生じたりする等の異常な動作を防止することができる。すなわち、基準電圧発生回路1Cによれば、回路動作の安定性を高めることができる。
【0074】
また、基準電圧発生回路1Cでは、位相補償回路71、72が、位相の余裕を増大するとともに、基準電圧発生回路1Cにおけるノードの、電源電圧VDDの急変に対する安定性を向上させることができる。
【0075】
位相補償回路73は、キャパシタC3の実際の容量以上のキャパシタが接続された場合と同等に作用するため、位相の余裕をより増大することができる。換言すれば、キャパシタC3は、動作上必要とされる容量値よりも容量値が小さいキャパシタを選定できる。この場合、回路の占有面積及び体積を低減することができる。
【0076】
さらに、基準電圧発生回路1Cは、抵抗77を備えているので、第1の交流インピーダンスと第2の交流インピーダンスとの差を小さくすることができる。また、抵抗77が抵抗22の抵抗値と等しい抵抗値をもつ場合、基準電圧発生回路1Cは、第1の交流インピーダンスと第2の交流インピーダンスとをほぼ一致させることができる。
【0077】
なお、
図3に例示される位相補償回路71、72、73は、それぞれ、キャパシタC1、C2、C3のみから成る構成であるが、この例に限定されない。位相補償回路71、72、73は、それぞれ、キャパシタC1、C2、C3を含む構成であればよい。すなわち、位相補償回路71~73は、キャパシタと抵抗との直列回路で構成されていてもよい。
【0078】
また、位相補償回路74、75についても、位相補償回路71~73と同様である。すなわち、位相補償回路74は、
図4(A)に例示されるように、キャパシタ742と直列に接続される抵抗741を含んでいてもよい。位相補償回路75は、
図4(B)に例示されるように、キャパシタ752と直列に接続される抵抗751を含んでいてもよい。なお、キャパシタ742と抵抗741とが直列に接続された位相補償回路74において、抵抗741とキャパシタ742との位置関係は、
図4(A)に例示される位置関係に限定されない。
図4(A)に例示される位置関係と逆でもよい。また、抵抗751とキャパシタ752との位置関係についても、抵抗741とキャパシタ742との位置関係と同様である。
【0079】
[第3の実施形態]
図5は、第3の実施形態に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の一例である
電流分流回路80及び基準電圧発生回路1Dの構成を示す回路図である。
【0080】
基準電圧発生回路1Dは、基準電圧発生回路1Aに対して、電流分流回路10の代わりに電流分流回路80を備える点と、抵抗分圧回路50の代わりに抵抗回路55を備える点で相違するが、その他の点は同様である。なお、抵抗回路55は、基準電圧発生回路1Bに備えられる構成要素であり、第1の実施形態において説明したとおりである。そこで、本実施形態では、電流分流回路80を中心に説明し、基準電圧発生回路1A、1Bと重複する説明については省略する。
【0081】
電流分流回路80は、出力端43と接続される入力端81と、電源端子3とそれぞれ接続される電源入力端82a~82cと、出力端83a~83cと、NMOSトランジスタ85~87と、を有している。
【0082】
出力端83aは、抵抗ダイオード回路20の一端、より詳細にはノードN1と接続されている。出力端83bは、抵抗ダイオード回路30の一端、より詳細にはノードN2との間に接続されている。出力端83cは、抵抗回路55の一端、すなわち、抵抗51の一端に接続されている。
【0083】
NMOSトランジスタ85は、入力端81と接続されるゲートと、電源入力端82aと接続されるドレインと、出力端83aと接続されるソースと、を含んでいる。NMOSトランジスタ86は、入力端81と接続されるゲートと、電源入力端82bと接続されるドレインと、出力端83bと接続されるソースと、を含んでいる。NMOSトランジスタ87は、入力端81と接続されるゲートと、電源入力端82cと接続されるドレインと、出力端83cと接続されるソースと、を含んでいる。
【0084】
NMOSトランジスタ86のゲート幅/ゲート長の値は、NMOSトランジスタ85のゲート幅/ゲート長の値に対して、p(pは任意の正数)倍である。また、NMOSトランジスタ87のゲート幅/ゲート長の値は、NMOSトランジスタ86のゲート幅/ゲート長の値に対して、q(qは任意の正数)倍である。すなわち、NMOSトランジスタ85、86、87の各ゲート幅/ゲート長の比は、1:p:p・qである。
【0085】
このように構成される基準電圧発生回路1Dは、NMOSトランジスタ85、86、87のゲートの各々にバイアス電圧が入力されない点で、PMOSトランジスタ16、17、18のゲートの各々にバイアス電圧が入力されている基準電圧発生回路1Aとは相違している。すなわち、基準電圧発生回路1Dの構成は、基準電圧発生回路1Aの構成よりも簡潔である。
【0086】
一方、上記相違によって、基準電圧発生回路1Dでは、上述した式(9)を満たすために、ソース電流Is1、Is2、Is3の大きさが、定常的に1:p:p・qに維持される必要がある。すなわち、電圧VN1と電圧VN2とが、定常的にほぼ同値になる必要がある。
【0087】
基準電圧発生回路1Dにおいて、電流分流回路80は、差動増幅回路41の出力に基づいて、ソース電流Is1、Is2、Is3を生成する。ソース電流Is1、Is2、Is3は、それぞれ、出力端83a、83b、83cから出力される。
【0088】
ソース電流Is1は、ノードN1において、電流I1と、電流I2と、に分かれる。電流I1は、抵抗23を経由してGNDへ流れる。電流I2は、抵抗22及びダイオードD1を経由してGNDへ流れる。
ソース電流Is2は、ノードN2において、電流I3と、電流I4と、に分かれる。電流I3は、ダイオードD2を経由してGNDへ流れる。電流I4は、抵抗32を経由してGNDへ流れる。
ソース電流Is3は、抵抗51を流れる電流I5と等しく、抵抗51を経由してGNDへ流れる。
【0089】
NMOSトランジスタ85~87において、ドレインは電源端子3と接続される一方、ゲート、バックゲート及びソースの各々は電源端子3と非接続である。NMOSトランジスタ85~87のドレイン-ソース間の内部抵抗は、例えば、数MΩと大きい。従って、電流分流回路80では、電源電圧VDDが急激に変動したとしても、当該変動が抑えられたソース電流Is1、Is2、Is3が生成される。
【0090】
基準電圧発生回路1Dによれば、電源電圧VDDが急変したとしても、ソース電流Is1、Is2、Is3の急変を抑えることができる。
【0091】
なお、本発明は、上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した例以外にも様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更をすることができる。
【0092】
例えば、上述した基準電圧発生回路1A~1Dに対して、トランジスタの極性及び電源端子3とGNDとを入れ替えて基準電圧発生回路を構成してもよい。
【0093】
図6は、第1の変形例に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の一例である電流分流回路90及び基準電圧発生回路1E
の構成例を示す回路図である。図7は、第2の変形例に係る
電流分流回路及び当該電流分流回路を有する基準電圧発生回路の一例である電流分流回路90及び基準電圧発生回路1Fの構成例を示す回路図である。
【0094】
基準電圧発生回路1Eは、電流分流回路90と、位相補償回路71、72、73にそれぞれ含まれるキャパシタC1、C2、C3と、ダイオードD1と、抵抗22、23と、ダイオードD2と、抵抗32と、差動増幅回路41と、抵抗51、52と、抵抗77と、を備えている。
【0095】
基準電圧発生回路1Eは、換言すれば、位相補償回路74、75が省略された基準電圧発生回路1Cにおいて、トランジスタの極性及び電源端子3とGNDとを入れ替えた回路である。従って、電流分流回路90は、電流分流回路10に対して、トランジスタの極性及び電源端子3とGNDとを入れ替えた回路であり、PMOSトランジスタ95と、3個のNMOSトランジスタ96~98と、を備えている。
【0096】
第1の電界効果トランジスタとしてのPMOSトランジスタ95は、NMOSトランジスタ15に対してトランジスタの極性がn型からp型に入れ替わっている。すなわち、PMOSトランジスタ95は、n型及びp型の一方の極性である第1の極性としてのp型の極性を有している。
【0097】
第2の電界効果トランジスタとしてのNMOSトランジスタ96は、PMOSトランジスタ16に対してトランジスタの極性がp型からn型に入れ替わっている。すなわち、NMOSトランジスタ96は、n型及びp型の他方の極性である第2の極性としてのn型の極性を有している。
【0098】
第3の電界効果トランジスタとしてのNMOSトランジスタ97は、PMOSトランジスタ17に対してトランジスタの極性がp型からn型に入れ替わっており、第2の極性としてのn型の極性を有している。第4の電界効果トランジスタとしてのNMOSトランジスタ98は、PMOSトランジスタ18に対してトランジスタの極性がp型からn型に入れ替わっており、第2の極性としてのn型の極性を有している。
【0099】
上述した基準電圧発生回路1Eは、基準電圧発生回路1Cと同様の効果を得ることができる。また、基準電圧発生回路1Eにおいて、基準電圧発生回路1Cと同様に、キャパシタC1、C2及びC3の一部又は全部を省略したり、抵抗77を省略したりすることもできる。また、基準電圧発生回路1Eは、位相補償回路74、75の少なくとも一方が追設されていてもよい。
【0100】
さらに、基準電圧発生回路1Bにおいて、トランジスタの極性及び電源端子3とGNDとを入れ替えて基準電圧発生回路1Fを構成してもよい。基準電圧発生回路1Fは、基準電圧発生回路1Bと同様の効果を得ることができる。
【0101】
なお、基準電圧発生回路1Fに対して、位相補償回路71~75及び抵抗77の少なくとも一つが追設されていてもよい。また、基準電圧発生回路1Fに対して、電圧源57が省略されていてもよい。
【0102】
なお、上述した基準電圧発生回路1A~1Fのような自己帰還回路では、電源電圧やその過渡動作、構成素子の定数値、製造精度、環境温度等の条件により、電源が投入されても、動作を開始しない場合があり得る。これを避けるため、基準電圧発生回路1A~1Fに対して、起動回路が追設されていてもよい。
【0103】
また、上述した基準電圧発生回路1A~1Fにおいて、基準電圧発生回路1A~1Fの特性が理想的であれば、上述した抵抗分圧回路50及び抵抗回路55は、単なる開放された回路でもよい。上述した式(10)は、基準電圧発生回路1A~1Fの特性が理想的であれば、抵抗51(抵抗分圧回路50の場合、抵抗51に加えて抵抗52)が開放除去されて、電流Id3が全て出力電流IOUTとして得られる場合でも成立する。なお、抵抗分圧回路50において、抵抗51及び抵抗52が開放除去される場合には、分圧電圧をバイアス電圧として取り出すことができなくなる。この場合、上述したように、出力電圧VOUTや外部回路から供給される電圧を、バイアス電圧として用いればよい。
【0104】
また、上述した実施形態において、ダイオードD1は、ダイオードD2の接合部の面積に対して、その接合部の面積がn倍に構成されている場合を説明したが、ダイオードD1、D2の接合部の面積比は、上述の比に限定されない。例えば、接合部の面積(又は長さ及び幅)が同じダイオードを用いても、上述したダイオードD1及びダイオードD2を用いて構成される場合と等価な構成を実現できる。接合部の面積が同じダイオードを用いる場合、ダイオードD1を構成するダイオードの並列数がダイオードD2を構成するダイオードの並列数に対してn倍とすればよい。
【0105】
さらに、上述した実施形態において、PMOSトランジスタ16、17、18の各ゲート幅/ゲート長の比及びNMOSトランジスタ85、86、87の各ゲート幅/ゲート長の比が1:p:p・qである場合を説明した。しかしながら、PMOSトランジスタ16、17、18の各ゲート幅/ゲート長の比及びNMOSトランジスタ85、86、87の各ゲート幅/ゲート長の比は、上述の比に限定されない。ゲート幅/ゲート長の値が同じPMOSトランジスタ(以下、「基準トランジスタ」とする)を用いても、PMOSトランジスタ16、17、18の各ゲート幅/ゲート長の比が1:p:p・qとなる電流分流回路10やNMOSトランジスタ85、86、87の各ゲート幅/ゲート長の比が1:p:p・qとなる電流分流回路80を実現できる。
【0106】
例えば、PMOSトランジスタ16、17、18が、少なくとも1個の基準トランジスタを有し、1個の基準トランジスタ又は複数個の基準トランジスタを並列接続した基準トランジスタ群を用いて構成される場合がある。この場合において、基準トランジスタの個数が1:p:p・qであるPMOSトランジスタ16、17、18を有する電流分流回路10は、ゲート幅/ゲート長の比が1:p:p・qであるPMOSトランジスタ16、17、18を有する電流分流回路10と、実質的に等価な構成である。また、基準トランジスタの個数が1:p:p・qであるNMOSトランジスタ85、86、87を有する電流分流回路80は、ゲート幅/ゲート長の比が1:p:p・qであるNMOSトランジスタ85、86、87を有する電流分流回路80と、実質的に等価な構成である。
上述した実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
1A~1F 基準電圧発生回路
3 電源端子
10、80、90 電流分流回路
11a、11b、81、91a、91b 入力端
12 電源入力端
13a~13c、83a~83c、93a~93c 出力端
15、85~87、96~98 NMOSトランジスタ
16~18、95 PMOSトランジスタ
20、30 抵抗ダイオード回路
22、23、32 抵抗
40 帰還制御回路
41 差動増幅回路
43 出力端
50 抵抗分圧回路(抵抗回路)
51、52 抵抗
55 抵抗回路
57 電圧源
60 出力端子
71~75 位相補償回路
741、751 抵抗
742、752 キャパシタ
77 抵抗
C1~C3 キャパシタ
D1、D2 ダイオード