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  • 特許-溶解装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】溶解装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
A61M1/16 173
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019116445
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021000354
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591083299
【氏名又は名称】東レ・メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健一
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-236532(JP,A)
【文献】特開2017-169779(JP,A)
【文献】特開2001-009026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0304519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析用粉末剤供給手段、下限水位検知手段、上限水位検知手段および濃度測定手段を備え、供給された透析用粉末剤および清浄水を溶解混合して透析用原液を作製する溶解槽と、
受入水位検知手段を備えた貯留槽と、
前記透析用原液を前記溶解槽から前記貯留槽へ移送する移送手段と、
前記透析用原液を前記貯留槽から下流側へ送液する送液手段と、を備えたバッチ式の溶解装置であって、
前記透析用原液が溶解槽の上限水位に達し、かつ、前記透析用原液が前記貯留槽の受入可能水位にあることを条件として、透析治療を終了するまでに使用される前記透析用原液の推定使用量を算出する算出手段を備え
前記算出手段が算出した透析治療を終了するまでに使用される前記透析用原液の推定使用量が1バッチ分の透析用原液作製量の1倍以上2倍未満である場合に、予め設定した1バッチ未満の所定量の前記透析用原液を前記溶解槽から前記貯留槽に移送した後、前記溶解槽の上限水位に達するまで清浄水を前記溶解槽に導入し、前記透析用粉末剤を前記溶解槽に供給して前記透析用原液をさらに作製することを特徴とする溶解装置。
【請求項2】
前記1バッチ未満の所定量の前記透析用原液を、予め設定した運転時間または回転数で作動する移送ポンプで前記溶解槽から前記貯留槽へ移送する、請求項に記載の溶解装置。
【請求項3】
前記移送手段に設けられた開閉弁を予め設定した時間だけ開くことにより、前記1バッチ未満の所定量の前記透析用原液を前記溶解槽から前記貯留槽へ移送する、請求項に記載の溶解装置。
【請求項4】
透析用粉末剤供給手段、下限水位検知手段、上限水位検知手段および濃度測定手段を備え、供給された透析用粉末剤および清浄水を溶解混合して透析用原液を作製する溶解槽と、
受入水位検知手段を備えた貯留槽と、
前記透析用原液を前記溶解槽から前記貯留槽へ移送する移送手段と、
前記透析用原液を前記貯留槽から下流側へ送液する送液手段と、を備えたバッチ式の溶解装置であって、
前記透析用原液が溶解槽の上限水位に達し、かつ、前記透析用原液が前記貯留槽の受入可能水位にあることを条件として、透析治療を終了するまでに使用される前記透析用原液の推定使用量を算出する算出手段を備え
前記算出手段が算出した透析治療を終了するまでに使用される前記透析用原液の推定使用量が1バッチ分の透析用原液作製量の1倍以上2倍未満である場合に、前記推定使用量から1バッチ分の透析用原液作製量を差し引いた量に予め設定した量を加算した量の前記透析用原液を前記溶解槽から前記貯留槽に移送した後、前記溶解槽の上限水位に達するまで清浄水を前記溶解槽に導入し、前記透析用粉末剤を前記溶解槽に供給して前記透析用原液をさらに作製することを特徴とする溶解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析用粉末薬剤を溶解して所定濃度の透析用原液を作製するための溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析治療は、透析患者の血液を体外循環路に取出して血液浄化器に導き入れ、血液浄化器内で半透膜を介して透析液と接触させ、限外濾過と拡散の原理によって、血液中の老廃物や余剰水分を除去するとともに、透析液中に含まれる薬剤成分によって血液中の電解質の調整等を行った後、浄化された血液を患者の体内に戻す治療である。
【0003】
透析治療で用いられる透析液は、A原液とB原液という異なる2種類の濃縮薬液と、高度に清浄化された清浄水(RO水)とを、製薬メーカの指定した比率で混合させて調製される。一人の患者の治療に 毎分500~800mLの透析液を、一回の治療時間である 3~4時間のあいだ血液浄化器へ向けて流し続ける必要がある。
【0004】
A原液とB原液とは、過去には専用の密閉ポリ容器に充填した液状の『リキッドタイプ』として流通していたが、透析施設に広い保管スペースが必要となり、重量物である薬液容器の搬送に関する医療スタッフの負担が大きく、さらに経時的に薬液成分が劣化する懸念などを理由として『粉末化』が試みられ、現在は軟質の包袋に充填された透析用粉末剤を清浄水で溶解して透析用原液を得ることが一般的となっている。
【0005】
『粉末化』の当初は、200L程度のタンクに医療スタッフが透析用粉末剤を投入して洗浄水で希釈・混合していたが、大量の透析用原液を溜め置くことは衛生的ではなく、混合・撹拌作業中に大気中の浮遊菌の混入が懸念され、さらに医療スタッフの作業負担も大きいことから、特許文献1のような、紛体の供給から溶解までを自動で行うことができる溶解装置が開発され、今ではこの溶解装置は、血液浄化システムにとっては欠かせないものとなっている。
【0006】
一般的な溶解装置は、医療スタッフにより、20~30袋分の透析用粉末剤が包袋を開封されて粉末剤供給部の上部のホッパーに投入され、上限水位と下限水位を予め設定して固定した溶解槽に、この水位間分の一定量の加温した清浄水を導入して、清浄水を撹拌させながら、ホッパー下部のスクリューフィーダを回転させて透析用粉末剤を自動投入しながら、溶解槽の循環ラインに設置した電導度計で濃度を測定して、所定の濃度になるように調整する。作製された透析用原液は、溶解槽の下流の貯留槽が受入可能な状態であることを条件として貯留槽へ移送され、溶解槽での次回の溶解動作を可能にする。
【0007】
水位検知用の検知手段に汎用で安価な液面計を適用でき、その検知精度も十分に信頼できるレベルであることかあら、このように毎回溶解槽で一定量の透析用原液を作製するいわゆる『バッチ式』の溶解装置が広く普及している。
【0008】
医療スタッフによるホッパーへの透析用粉末剤の投入作業を一度に完了させるため、多くの粉末剤を投入できるようホッパーはある程度の容積を有することが望ましいが、溶解された時点から経時的な変化や劣化が懸念される透析用原液の作製量や貯留量は少ないことが望ましい。血液浄化システムでの透析液の使用量を賄える溶解を行うとともに、可能な限り小分けした溶解を行うために、溶解装置の溶解槽の容積は10L以下とされることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭57-159529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
いわゆるバッチ式の溶解装置では、はじめからある程度の余剰分の透析用原液を作製することを想定していたものの、経時的な変化や劣化によって次回の透析治療に使用することができずに廃棄せざるを得ないこの余剰分の透析用原液について、コスト面や環境面から、可能な限り少なく抑えることができる溶解装置が求められている。
【0011】
透析治療が終了するまでに必要な透析液量に合わせて透析用原液を作製して、完全に近い形で使い切るのが望ましいが、バッチ式の溶解装置は毎回の使用量が一定であることから、このような仕様を叶えることはできず、最悪の場合、ほぼ1バッチ分の透析用原液を廃棄せざるを得ない。
【0012】
本発明は、バッチ式の溶解装置において、透析治療終了時に大量の透析用原液が残ってしまうという事態を解消できる溶解装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る溶解装置は、透析用粉末剤供給手段、下限水位検知手段、上限水位検知手段および濃度測定手段を備え、供給された透析用粉末剤および清浄水を溶解混合して透析用原液を作製する溶解槽と、受入水位検知手段を備えた貯留槽と、前記透析用原液を前記溶解槽から前記貯留槽へ移送する移送手段と、前記透析用原液を前記貯留槽から下流側へ送液する送液手段と、を備えたバッチ式の溶解装置であって、前記透析用原液が溶解槽の上限水位に達し、かつ、前記透析用原液が前記貯留槽の受入可能水位にあることを条件として、透析治療を終了するまでに使用される前記透析用原液の推定使用量を算出する算出手段を備えたことを特徴とするものからなる。このような溶解装置によれば、透析用原液を無駄なく使用できるよう計画的に作製することができる。
【0014】
本発明に係る溶解装置の一態様として、前記算出手段が算出した透析治療を終了するまでに使用される前記透析用原液の推定使用量が1バッチ分の透析用原液作製量の1倍以上2倍未満である場合に、予め設定した1バッチ未満の所定量の前記透析用原液を前記溶解槽から前記貯留槽に移送した後、前記溶解槽の上限水位に達するまで清浄水を前記溶解槽に導入し、前記透析用粉末剤を前記溶解槽に供給して前記透析用原液をさらに作製する構成が採用できる。具体的には、前記1バッチ未満の所定量の前記透析用原液を、予め設定した運転時間または回転数で作動する移送ポンプで前記溶解槽から前記貯留槽へ移送する態様が採用可能であり、あるいは前記移送手段に設けられた開閉弁を予め設定した時間だけ開くことにより、前記1バッチ未満の所定量の前記透析用原液を前記溶解槽から前記貯留槽へ移送する態様も採用可能である。
【0015】
本発明に係る溶解装置の他の態様として、前記算出手段が算出した透析治療を終了するまでに使用される前記透析用原液の推定使用量が1バッチ分の透析用原液作製量の1倍以上2倍未満である場合に、前記推定使用量から1バッチ分の透析用原液作製量を差し引いた量に予め設定した量を加算した量の前記透析用原液を前記溶解槽から前記貯留槽に移送した後、前記溶解槽の上限水位に達するまで清浄水を前記溶解槽に導入し、前記透析用粉末剤を前記溶解槽に供給して前記透析用原液をさらに作製する構成も採用できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る溶解装置によれば、透析用原液を無駄なく使用できるよう計画的に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施態様に係る溶解装置の構成を示す概略構成図である。
図2図1の溶解装置の貯留槽が受入れ可能となった状態を示す概略構成図である。
図3図1の溶解装置が1バッチ未満の透析用原液を作製するために、溶解槽で作製した透析用原液の一部を貯留槽へ移送した後の状態を示す概略構成図である。
図4図1の溶解装置が1バッチ未満の透析用原液を作製するために、再び上限水位まで清浄水を満たした状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の透析用粉末剤溶解装置の構成を示す。溶解槽1と貯留槽2が設置され、溶解槽の上部には粉末剤供給部3が設置される。溶解槽には上限水位センサ4と下限水位センサ5が設けられ、溶解槽から貯留槽への移送ライン6には移送ポンプ7が設けられ、移送ラインから分岐した循環ライン9には、透析用原液の濃度を測定する濃度測定手段8が設置される。貯留槽には少なくとも貯留槽が空の状態を検知する受入水位検知センサ10が設置されるとともに、血液浄化システムにおける下流の装置へ透析用原液を供給する送液ポンプ12が設置された送液ライン11が接続される。
【0019】
医療スタッフによって包袋が開封された透析用粉末剤が、粉末剤供給部の上部のホッパーに投入される。溶解装置は、医療スタッフによる溶解開始スイッチの操作や、血液浄化システム内の他の装置からの溶解開始信号の受信等によって溶解動作を開始する。図示しないが、血液浄化システム内の逆浸透式精製水製造装置(以下RO装置ともいう)で精製されたRO水が、設定温度まで加温された状態で溶解槽へ供給され、溶解槽は上限水位検知センサによって、1バッチ分の透析用原液を作製するのに必要な量のRO水を受け入れる。粉末供給部には、透析用粉末剤を少量ずつ切り出せる、例えばスクリューフィーダのような供給部材が設けられ、溶解槽のRO水を撹拌・循環させ、循環ラインの濃度計で濃度を測定しながら、粉末供給部は透析用粉末剤を溶解槽へ投入し、予め設定した濃度の透析用原液を作製する。
【0020】
図2は、透析用原液の作製が完了し、さらに貯留槽の水位が溶解槽からの移送が可能な状態を示す。このとき、溶解装置内に透析用原液は常に1バッチ分が残されており、溶解装置はこの状態で、現時点から透析治療を終了するまでに使用する予定の透析用原液の量を算出する。透析用原液の使用予定量は、血液浄化システムの中央管理サーバが保有する、透析装置の稼働台数・患者人数・現在時刻・透析完了時刻に基づく方法や、溶解動作を起動する間隔から時間当たりの透析用原液の減り方を求めて、透析終了の時刻までの使用量を算出する方法、過去の透析治療における、曜日・患者数・時刻ごとの透析用原液消費実績データなどと照合する方法などが考えられる。
【0021】
算出した透析用原液の使用予定量と、1バッチ分の透析用原液作製量とを比較して、使用予定量が2バッチ分を超えている場合は、溶解槽の全ての透析用原液を貯留槽へ移送して、通常の溶解動作を再開する。
【0022】
透析用原液の使用予定量が、1バッチ以上で且つ2バッチ未満の場合、使用予定量から1バッチ分の差し引いた容積を算出し、その容積に若干量を加算した量の透析用原液を、溶解槽から貯留槽へ移送する。この移送量は、移送ポンプの駆動時間・移送ポンプの駆動モータの回転数・移送弁の開放時間などで調整する。図3は、1バッチ未満の透析用原液を溶解槽から貯留槽へ移送した状態を示す。
【0023】
図4のように、1バッチ未満の透析用原液の移送を完了してから、再び溶解槽の水位が上限になるまでRO水を導入してから、通常の溶解動作と同様に溶解槽内の液体を撹拌・循環させ、濃度を測定しながら粉末剤を投入して、貯留槽に移送した透析用原液と同量の、追加作成分21の透析用原液を作製して、以降は溶解動作を行わずに透析治療の終了を迎える。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、透析用原液を作製するための溶解装置として広く利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 溶解槽
2 貯留槽
3 粉末剤供給部
4 上限水位検知センサ
5 下限水位検知センサ
6 移送ライン
7 移送ポンプ
8 濃度測定手段
9 循環ライン
10 受入水位検知センサ
11 送液ライン
12 送液ポンプ
13 スクリューフィーダ
14 モータ
15 循環弁
16 移送弁
17 送液弁
18 エアフィルタ
19 透析用粉末剤
20 透析用原液
21 追加作製分
図1
図2
図3
図4