(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】スリーブ引き抜き治具
(51)【国際特許分類】
B25B 27/073 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
B25B27/073 A
(21)【出願番号】P 2019134325
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 孝行
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-066578(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0010996(US,A1)
【文献】特開2013-194600(JP,A)
【文献】特開2001-162551(JP,A)
【文献】特開平11-217875(JP,A)
【文献】実開昭54-115698(JP,U)
【文献】実開昭51-136599(JP,U)
【文献】実開昭62-198072(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B25/00-29/02;33/00
F16C35/00-35/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に沿って環状の凸部が形成されるスリーブが嵌められた本体から該スリーブを引き抜くスリーブ引き抜き治具であって、
前記本体の端面の外側に配置される引き抜き基板と、一端が前記本体の端面に当接可能であって他端が前記引き抜き基板に螺合する少なくとも2つの支持軸と、を有する引き抜き具と、
長軸が前記環状の凸部の内径よりも大きく、前記スリーブ内で該スリーブの径方向に対して傾斜可能に支持され、前記スリーブ内で前記径方向に対し傾斜して前記凸部を乗り越え、前記径方向に平行な状態で前記凸部に両端部を係合可能であり、かつ前記スリーブの軸方向の曲げに対して十分な剛性を有するスリーブ把みと、
一端が前記スリーブ把みを支持し、他端が前記引き抜き基板を貫通すると共に該引き抜き基板の他側に固定ナットが螺合される連結軸と、
前記引き抜き基板と前記スリーブ把みとの間に介されるバネと、
を備え
、
前記スリーブ把みの前記スリーブの径方向の略中央部には、長孔が形成され、
前記連結軸には、前記スリーブ把みの一端側において、環状の止め具が固定される、
スリーブ引き抜き治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリーブが嵌められた本体からスリーブを引き抜くスリーブ引き抜き治具に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧式エレベーターは、送油量を制御する流量制御装置を備える。流量制御装置は、スリーブと、スリーブの内部を摺動するピストンと、を備える。スリーブは、流量制御装置の本体に嵌められる。また、スリーブは、保守点検作業において、定期的に交換されるために流量制御装置の本体から引き抜かれる。特許文献1には、スリーブが嵌められたシリンダブロックからスリーブを引き抜くスリーブ引き抜き装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるスリーブ引き抜き装置は、所定径のスリーブを引き抜くことしかできない。また、特許文献1に開示されるスリーブ引き抜き装置は、略円筒形状のスリーブのみを引き抜くことしかできない。
【0005】
本発明の目的は、スリーブの径または形状にかかわらずスリーブを引き抜くことができるスリーブ引き抜き治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスリーブ引き抜き治具は、内周に沿って環状の凸部が形成され、または、側周面に複数の孔が形成されるスリーブが嵌められた本体からスリーブを引き抜くスリーブ引き抜き治具であって、本体の端面の外側に配置される引き抜き基板と、一端が本体の端面に当接可能であって他端が引き抜き基板に螺合する少なくとも2つの支持軸と、を有する引き抜き具と、スリーブ内でスリーブの径方向に沿って配置され、径方向に伸縮することによって凸部または孔に両端部を係合可能であり、かつスリーブの軸方向の曲げに対して十分な剛性を有するスリーブ把みと、一端がスリーブ把みを支持し、他端が引き抜き基板を貫通すると共に引き抜き基板の他側に固定ナットが螺合される連結軸と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るスリーブ引き抜き治具において、スリーブ把みは、外筒に対し内筒が外筒内を摺動することで伸縮可能に構成され、内筒の内部には、ラックが内筒の軸方向に沿って固定され、連結軸の一端部には、ラックに噛合されるピニオンが設けられ、連結軸は、連結軸の軸周りに回転することによってスリーブ把みを伸縮させることが好ましい。
【0008】
本発明に係るスリーブ引き抜き治具は、内周に沿って環状の凸部が形成されるスリーブが嵌められた本体からスリーブを引き抜くスリーブ引き抜き治具であって、本体の端面の外側に配置される引き抜き基板と、一端が本体の端面に当接可能であって他端が引き抜き基板に螺合する少なくとも2つの支持軸と、を有する引き抜き具と、長軸が環状の凸部の内径よりも大きく、スリーブ内でスリーブの径方向に対して傾斜可能に支持され、スリーブ内で径方向に対し傾斜して凸部を乗り越え、径方向に平行な状態で凸部に両端部を係合可能であり、かつスリーブの軸方向の曲げに対して十分な剛性を有するスリーブ把みと、一端がスリーブ把みを支持し、他端が引き抜き基板を貫通すると共に引き抜き基板の他側に固定ナットが螺合される連結軸と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るスリーブ引き抜き治具によれば、スリーブの径または形状にかかわらずスリーブを引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本実施形態の引き抜き治具の引き抜き基板を示す正面図。
【
図3】本実施形態の引き抜き治具のスリーブ把みを示す(a)正面図および(b)一部断面視とした正面図。
【
図4】本実施形態の引き抜き治具を用いたスリーブの引き抜き作業の流れを示す模式図。
【
図6】更なる別実施形態の引き抜き治具を示す平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態の一例を詳細に説明する。実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであるから、図面に描画された構成要素の寸法などは、以下の説明を参酌して判断されるべきである。本明細書において、「略~」との記載は、略同一を例に説明すると、完全に同一はもとより、実質的に同一と認められる場合を含む意図である。以下で説明する実施形態は例示であって、本発明のスリーブ引き抜き治具はこれに限定されない。
【0012】
以下で説明する形状、材料および個数は、説明のための例示であって、スリーブ引き抜き治具の仕様に応じて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
以下では、スリーブ引き抜き治具は、スリーブに装着された状態として、スリーブ軸方向において、スリーブが引き抜かれる側を前側とし、前側の反対側を後側とする。
【0014】
図1乃至
図3を用いて、引き抜き治具100について説明する。
図1は、引き抜き治具100を示す平断面図である。
図2は、引き抜き治具100の引き抜き基板11を示すスリーブ軸方向から見た正面図である。
図3(a)は、引き抜き治具100のスリーブ把み20を示す正面図である。
図3(b)は、スリーブ把み20を示す一部断面視とした正面図である。
【0015】
本実施形態の引き抜き治具100は、スリーブ500が嵌められた本体550からスリーブ500を引き抜くものである。スリーブ500の内周側には、凸部510が形成される。
【0016】
スリーブ500は、例えば、油圧式エレベーターの送油量を制御する流量制御装置の本体550に嵌められている。スリーブ500は、保守点検作業において、定期的に交換されるために流量制御装置の本体550から引き抜かれる。本体は、流量制御装置の本体550に限定されず、例えば、エンジンの本体、バルブの本体等、スリーブ500が嵌められるものであればよい。
【0017】
スリーブ500は、スリーブ軸方向の後側の直径が前側の直径よりも小さい略円筒形状に形成される。スリーブ500の内周側におけるスリーブ軸方向の略中央部には、周方向に沿って環状の凸部510が形成される。
【0018】
引き抜き治具100は、本体550の端面の外側に配置される引き抜き基板11と、前端が本体550の端面に当接可能であって後端が引き抜き基板11に螺合する少なくとも2つの支持軸12と、を有する引き抜き具10を備える。また、引き抜き治具100は、詳細は後述するスリーブ把み20および連結軸30を備える。
【0019】
引き抜き具10は、本体550の端面を基準としてスリーブ把み20および連結軸30をスリーブ軸方向に引き抜く機能を有する。また、引き抜き具10は、本体550からスリーブ500を引き抜く土台としての機能を有する。
【0020】
引き抜き具10は、本体550の端面の外側に配置される引き抜き基板11を有する。引き抜き基板11は、スリーブ径方向に沿って設置される。引き抜き基板11は、スリーブ径方向に沿って長尺状に形成される。
図2に示すように、引き抜き基板11の略中央部には、連結軸30が貫通する長孔11Aが形成される。これにより、連結軸30は引き抜き基板11のスリーブ径方向において微小な位置調整が可能である。引き抜き基板11の両端部のそれぞれには、詳細は後述する支持軸12が螺合するネジ穴11Bが形成される。これにより、支持軸12を回転することによって、スリーブ軸方向に引き抜き基板11を移動させることが可能である。
【0021】
引き抜き具10は、本体550の端面に当接する2つの支持軸12を有する。支持軸12は、棒状に形成される。支持軸12をスリーブ軸方向において3等分したときの中央部分および前側の部分には、ネジ部12Aが形成される。ネジ部12Aは、引き抜き基板11のネジ穴11Bに螺合する。支持軸12の後端部には、当接板13が設けられる。当接板13は、本体550の前端面に当接している。支持軸12の前端部には、作業者が支持軸12を回転させるときに指で挟んで持つための、つまみ14が設けられる。
【0022】
スリーブ把み20は、スリーブ500内でスリーブ径方向に沿って配置される。また、スリーブ把み20は、スリーブ径方向に伸縮することによって凸部510に両端部を係合可能である。さらに、スリーブ把み20は、スリーブ軸方向の曲げに対して十分な剛性を有する。スリーブ把み20は、スリーブ500を引き抜くために、本実施形態ではスリーブ500の凸部510を掴む機能を有する。
【0023】
図3に示すように、スリーブ把み20は、内筒22が外筒21内を摺動し、外筒21に対し内筒22が進退することで伸縮可能に構成される。外筒21に対し内筒22を退かせた状態で、引き抜き基板11の長孔11Aを貫通する連結軸30をスリーブ軸から偏心させることによって、スリーブ把み20が凸部510を乗り越えることができる。また、外筒21に対し内筒22を進ませてスリーブ把み20を伸ばした状態とすれば、スリーブ把み20が凸部510に係合することができる。
【0024】
外筒21および内筒22は、筒状に形成され、スリーブ軸方向の曲げに対して十分な剛性を有する金属性とされる。外筒21のスリーブ軸方向の前側および後側には、連結軸30が貫通する孔(図示なし)がそれぞれ形成される。連結軸30には、外筒21の前側および後側において、環状の一対の止め具34,34が固定される。これにより、連結軸30が外筒21に回転可能に支持される。
【0025】
内筒22のスリーブ軸方向の前側および後側には、連結軸30が貫通する長孔22Aがそれぞれ形成される。これにより、内筒22に連結軸30が貫通したまま、内筒22が外筒21に対し進退することができる。内筒22の内部には、ラック23が内筒22のスリーブ軸方向に沿って固定される。連結軸30の後端部には、ラック23に噛合されるピニオン31が固定される。これにより、内筒22は、連結軸30が軸周りに回転することによって外筒21に対し進退する。
【0026】
外筒21のスリーブ径方向の一端部と内筒22のスリーブ径方向の他端部とには、当接片25,25が設けられる。当接片25のスリーブ径方向の外側は、スリーブ500の内周側に当接するように弧状に形成される。当接片25は、例えば金属性とされる。
【0027】
連結軸30は、後端がスリーブ把み20を支持し、前端が引き抜き基板11を貫通すると共に引き抜き基板11の前側に固定ナット32が螺合されるものである。連結軸30は、引き抜き基板11とスリーブ把み20とを連結する機能を有する。また、連結軸30が回転することによって、スリーブ把み20をスリーブ径方向に沿って伸縮させる機能を有する。
【0028】
連結軸30は、棒状に形成され、スリーブ軸方向に沿って設置される。連結軸30のスリーブ軸方向の後端部には、スリーブ把み20のラック23に噛合されるピニオン31が固定される。連結軸30をスリーブ軸方向において2等分したときの前側部分には、ネジ部30Aが形成される。ネジ部30Aには、固定ナット32が引き抜き基板11の前側において螺合される。連結軸30のスリーブ軸方向の前端部には、作業者が連結軸30を回転させるときに指で挟んで持つための、つまみ33が設けられる。
【0029】
固定ナット32は、引き抜き基板11に対する連結軸30のスリーブ軸方向における位置を規制するものである。固定ナット32は、連結軸30のネジ部30Aに螺合されると共に、引き抜き基板11の前端面に当接している。固定ナット32を連結軸30のネジ部30Aに螺合することによって、固定ナット32の連結軸30における位置を調整することができる。
【0030】
図4を用いて、引き抜き治具100を用いたスリーブ500の引き抜き作業について説明する。
図4は、スリーブ500の引き抜き作業の流れを
図4(a)から
図4(d)までの順に示す模式図である。
【0031】
図4(a)に示すように、まず、作業者は、スリーブ把み20の長さを少なくともスリーブ500の凸部510の内径よりも小さくなるまで縮めて、スリーブ把み20をスリーブ500内に挿入し、スリーブ把み20を凸部510の後側に設置する。
【0032】
図4(b)に示すように、次に、作業者は、連結軸30のつまみ33を回転させることによって、当接片25、25がスリーブ500の内周側に当接するまでスリーブ把み20をスリーブ径方向に伸ばす。そして、引き抜き治具100を、スリーブ把み20の当接片25、25が凸部510に当接するまでスリーブ把み20をスリーブ軸方向の前側に移動させる。
【0033】
図4(c)に示すように、次に、作業者は、連結軸30の固定ナット32を回転させることによって引き抜き具10の当接板13が本体550の前端面に当接するまで引き抜き基板11を移動させる。
【0034】
図4(d)に示すように、そして、作業者は、引き抜き具10の2つのつまみ14,14を略同時に回転させることによって当接板13,13を支点として引き抜き基板11、スリーブ把み20および連結軸30をスリーブ軸方向の前側に引き抜く。これにより、スリーブ把み20によってスリーブ500の凸部510がスリーブ軸方向の前側に押し出され、スリーブ500が本体550から引き抜かれる。
【0035】
引き抜き治具100の効果について説明する。引き抜き治具100によれば、スリーブ500の径または形状にかかわらず、スリーブ500の凸部510にスリーブ把み20を係合させることによって、本体550からスリーブ500を容易に引き抜くことができる。
【0036】
図5を用いて、別実施形態の引き抜き治具200の構成について説明する。
図5は、引き抜き治具200の構成を示す平断面図である。
【0037】
引き抜き治具200は、スリーブ500が嵌められた本体550からスリーブ500を引き抜くものである。スリーブ500の側周面には複数の孔520が形成される。引き抜き治具200の引き抜き具10および連結軸30は、上述した引き抜き治具100の連結軸30および引き抜き具10と同様の構成であるため説明を省略する。
【0038】
スリーブ把み220は、スリーブ500内においてスリーブ径方向に沿って設置される。スリーブ把み220は、スリーブ径方向に沿って伸縮可能に構成される。スリーブ把み220は、当接片225以外は、スリーブ把み20と同様の構成であるため説明を省略する。
【0039】
当接片225,225は、外筒221のスリーブ径方向の一側と、内筒222のスリーブ径方向の他側と、にそれぞれ設けられている。当接片225のスリーブ径方向の外側は、スリーブ500の孔520に係合するように、少なくとも孔520よりも小さい略円柱形状に形成される。当接片225は、例えば金属によって形成される。
【0040】
引き抜き治具200の効果について説明する。引き抜き治具200によれば、スリーブ500の径または形状にかかわらず、スリーブ500の孔520にスリーブ把み220を係合させることによって、本体550からスリーブ500を容易に引き抜くことができる。
【0041】
図6を用いて、更に別の実施形態である引き抜き治具300の構成について説明する。
図6は、引き抜き治具300の構成を示す平断面図である。
【0042】
引き抜き治具300は、スリーブ500を本体550から引き抜くものである。スリーブ500の内周側には、凸部510が形成される。引き抜き治具300の引き抜き具10は、上述した引き抜き治具100の引き抜き具10と同様の構成であるため説明を省略する。
【0043】
スリーブ把み320は、スリーブ径方向の長さ(長軸)が凸部510の内径よりも大きく、スリーブ500内でスリーブ径方向に対して傾斜可能に支持される。スリーブ把み320は、スリーブ500内でスリーブ径方向に対し傾斜して凸部510を乗り越え、スリーブ径方向に平行な状態で凸部510に両端部を係合可能である。さらに、スリーブ把み320は、スリーブ500のスリーブ軸方向の曲げに対して十分な剛性を有する。
【0044】
スリーブ把み320の長孔320Aには、連結軸330が貫通している。これにより、連結軸330は、スリーブ500の長孔320Aにおいてスリーブ把み320の中心に対し偏心または傾斜可能である。言い換えれば、連結軸330に対しスリーブ把み320の中心が偏心可能であり、連結軸330に対しスリーブ把み320が傾斜可能である。
【0045】
また、スリーブ把み320は、連結軸330の前側からバネ335によって付勢され、連結軸330の後端において固定される環状の止め具334によって後側への移動が規制される。これにより、スリーブ把み320は、連結軸330の後端では連結軸330に対し垂直(スリーブ径方向に対し平行)な姿勢となるようにバネ335によって付勢される。
【0046】
スリーブ把み320は、スリーブ軸方向から見て長尺状かつ平板状に形成される。スリーブ把み320は、スリーブ軸方向の曲げに対して十分な剛性を有する、例えば金属性とされる。スリーブ把み320のスリーブ径方向の略中央部には、長孔320Aが形成される。連結軸330には、スリーブ把み320の後側において、環状の止め具334が固定される。
【0047】
連結軸330は、後端がスリーブ把み320を支持し、前端が引き抜き基板11を貫通すると共に引き抜き基板11の前側に固定ナット32が螺合されるものである。連結軸330は、引き抜き基板11とスリーブ把み320とを連結する機能を有する。連結軸330は、棒状に形成され、スリーブ軸方向に沿って設置される。
【0048】
連結軸330には、バネ335が設けられる。バネ335は、引き抜き基板11とスリーブ把み320との間に介される。固定ナット32および、つまみ33は、上述した引き抜き治具100の固定ナット32および、つまみ33と同様の構成であるため説明を省略する。
【0049】
引き抜き治具300を用いたスリーブ500の引き抜き作業について説明する。まず、作業者は、スリーブ把み320をスリーブ500内に挿入する。このとき、スリーブ把み320の一端側を指等で押さえてスリーブ把み320をスリーブ径方向に対し傾斜させることによって、スリーブ把み320が凸部510を乗り越えて、スリーブ把み320を凸部510の後側に位置させることができる。そして、押さえていたスリーブ把み320の一端側を放すと、スリーブ把み320は、連結軸330の前端でスリーブ径方向に対し平行となる。その後の引抜き作業は、上述した引き抜き治具100の引き抜き作業(
図4(b)以降)と同様の流れであるため説明を省略する。
【0050】
引き抜き治具300の効果について説明する。引き抜き治具300によれば、スリーブ500の形状にかかわらず、スリーブ500の凸部510にスリーブ把み320を係合させることによって、本体550からスリーブ500を容易に引き抜くことができる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
10 引き抜き具、11 引き抜き基板、11A 長孔、11B ネジ穴、12 支持軸、12A ネジ部、13 当接板、20 スリーブ把み、21 外筒、22 内筒、22A 長孔、23 ラック、25 当接片、30 連結軸、30A ネジ部、31 ピニオン、32 固定ナット、34 止め具、100 引き抜き治具、500 スリーブ、510 凸部、520 孔、550 本体