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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20230609BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20230609BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
E02F9/00 P
B60K15/063 B
F02M21/02 X
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019146245
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021025376
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 達也
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-040705(JP,A)
【文献】特開平06-320968(JP,A)
【文献】実開昭63-028032(JP,U)
【文献】特開2015-101881(JP,A)
【文献】特開2019-171968(JP,A)
【文献】特開2019-152186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60K 15/063
F02M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体の前,後方向の前側に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、
前記作業装置が前側に設けられた旋回フレームと、
前記旋回フレームの後側に設けられガス燃料を燃料とするガスエンジンと、
前記旋回フレームの左側に位置して運転席が設けられた建屋と、
前記旋回フレームの右側に位置して作動油を貯える作動油タンクと、
前記ガスエンジンに供給するガス燃料を貯えるガス容器とを備えてなる建設機械において、
前記ガス容器と前記ガスエンジンとを接続し、前記ガス容器から前記ガスエンジンに向けてガス燃料を供給するガス供給管路と、
前記ガス供給管路に設けられ、前記ガス燃料を気化させるベーパライザとを備え、
前記ガス容器は、前記建屋と前記作動油タンクとの間に設けられており、
前記ベーパライザは、前記ガスエンジンの後側位置に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記建屋と前記作動油タンクとの間は、上側と前側が開放されたガス容器収納室となっており、
前記ガス容器収納室には、前記ガス容器が着脱可能に取付けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項に記載の建設機械において、
前記ガス容器には、ガス燃料の供給量を調整するコックが設けられ、
前記ガス容器は、前記コックを前記旋回フレームの前側に向けた状態で前記ガス容器収納室に取付けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項に記載の建設機械において、
前記ガス供給管路は、前記ガスエンジンの下側を通って前記ベーパライザに接続されていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項に記載の建設機械において、
前記ガス容器収納室には、前記旋回フレーム上に位置してガス容器ブラケットが設けられており、
前記ガス容器ブラケットは、前記ガス容器の周囲に沿って延び前記ガス容器を下側から支持する支持部材と、前記支持部材上に支持された前記ガス容器を前記支持部材との間に固定する固定部材と、前記ガス容器の前記旋回フレームの前側への移動を規制する規制部材とを含んで構成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項に記載の建設機械において、
前記旋回フレームには、前記ガスエンジンの下側に位置して左,右方向に間隔をもって前,後方向に延びた左縦枠部、右縦枠部および左,右方向に延びて前記左縦枠部の後端と前記右縦枠部の後端とを連結した後縦枠部からなるエンジン支持枠が設けられており、
前記ガス供給管路は、前記ガス容器から前記エンジン支持枠の内側を通って前記ベーパライザに接続されていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばLPG等のガス燃料を燃料とするガスエンジンを備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例である油圧ショベルには、一般的に軽油を燃料とするディーゼルエンジンが用いられている。しかし、昨今では、地球環境保護の観点から、ディーゼルエンジンには、排気ガスに含まれる有害物質の量を削減できるように高度な排気ガス規制が設定されている。このために、ディーゼルエンジンは、構造が複雑になったり、新たな装置を取付けたりしなくてはならず、コストが上昇している。そこで、油圧ショベルには、ディーゼルエンジンに比較して排気ガスに含まれる有害物質の量が少ないガス燃料、例えば、LPG(Liquefied Petroleum Gas)等を燃料とするガスエンジンを搭載したものがある。
【0003】
ガスエンジンを備えた油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前,後方向の前側に設けられた作業装置とを備えている。上部旋回体は、作業装置が前側に設けられた旋回フレームと、旋回フレームの後側に設けられガス燃料を燃料とするガスエンジンと、旋回フレームの左側に位置して運転席が設けられた建屋と、旋回フレームの右側に位置して作動油を貯える作動油タンクと、ガスエンジンに供給するガス燃料を貯えるガス容器とを含んで構成されている。
【0004】
ここで、ガスエンジンを備えた油圧ショベルには、建屋の側方に位置して旋回フレーム上にガス容器を配置し、ガス容器の上側に作動油タンクを配置する構成としたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-320968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガス容器は、高い内圧に耐えることができるように高強度な金属製容器として形成されているから、重量が重くなってしまう。そして、ガス容器は、手で持ち上げたり、クレーンで吊り上げたりして運搬している。この場合、特許文献1のように、ガス容器の上側に作動油タンクを配置した構成では、ガス容器を取付けるとき、取外すときのいずれの作業においても、作動油タンクを避けてガス容器を横方向に移動させなくてはならない。これにより、ガス容器の交換作業に時間と手間を要してしまうという問題がある。また、特許文献1では、上部旋回体の右側面に近い位置にガス容器を配置しているから、周囲の障害物に衝突してガス容器が損傷する虞がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、ガス容器を保護すると共に、ガス容器を交換するときの作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体の前,後方向の前側に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、前記作業装置が前側に設けられた旋回フレームと、前記旋回フレームの後側に設けられガス燃料を燃料とするガスエンジンと、前記旋回フレームの左側に位置して運転席が設けられた建屋と、前記旋回フレームの右側に位置して作動油を貯える作動油タンクと、前記ガスエンジンに供給するガス燃料を貯えるガス容器とを備えてなる建設機械において、前記ガス容器と前記ガスエンジンとを接続し、前記ガス容器から前記ガスエンジンに向けてガス燃料を供給するガス供給管路と、前記ガス供給管路に設けられ、前記ガス燃料を気化させるベーパライザとを備え、前記ガス容器は、前記建屋と前記作動油タンクとの間に設けられており、前記ベーパライザは、前記ガスエンジンの後側位置に配置されていることを特徴している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガス容器を保護することができる上に、ガス容器を交換するときの作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態による油圧ショベルを左側から示す左側面図である。
図2】作業装置を省略した油圧ショベルを前側から示す前面図である。
図3】キャブボックス、運転席、外装カバーの一部を省略した上部旋回体を示す斜視図である。
図4】旋回フレーム上にガスエンジン、ベーパライザ、ガス容器ブラケット、ガス容器およびガス供給管路を設けた状態を示す斜視図である。
図5】旋回フレーム上にベーパライザ、ガス容器ブラケット、ガス容器およびガス供給管路を設けた状態を示す斜視図である。
図6】旋回フレーム上にベーパライザを設けた状態を示す斜視図である。
図7】ガス容器ブラケットを拡大して示す斜視図である。
図8】ガスエンジンとベーパライザとガス容器との関係を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図8を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施の形態では、ガス燃料としてLPG(Liquefied Petroleum Gas、液化石油ガス)を用いた場合を例示している。
【0012】
図1において、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰の動作が可能に設けられ土砂の掘削作業等を行う作業装置4とを備えている。
【0013】
図2ないし図4に示すように、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、ガスエンジン7、建屋としてのキャブ9、作動油タンク10、ガス容器21を含んで構成されている。ここで、上部旋回体3は、下部走行体2の車幅とほぼ等しい左,右方向の幅寸法を有している。また、上部旋回体3は、円弧状に形成された後述のカウンタウエイト6を有している。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回したときに、カウンタウエイト6の外周面がほぼ下部走行体2の車幅寸法の120%以内に収まる後方超小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。
【0014】
図5図6に示すように、旋回フレーム5は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板からなる底板5Aと、底板5A上に立設され、左,右方向に間隔をもって前,後方向に延びると共に、前側に向けて互いに接近した左縦板5B、右縦板5Cと、左縦板5B、右縦板5Cの上部に左縦板5B、右縦板5Cの前,後方向の中間部から前側に向けて延びた上板5Dと、左縦板5Bの左側に間隔をもって配置され、湾曲しつつ前,後方向に延びた左サイドフレーム5Eと、右縦板5Cの右側に間隔をもって配置され、湾曲しつつ前,後方向に延びた右サイドフレーム5Fとを含んで構成されている。
【0015】
底板5A、左縦板5B、右縦板5Cおよび上板5Dの前部は、前方に突出した位置で支持部5Gとなっている。この支持部5Gには、作業装置4が左,右方向に揺動(スイング)可能に取付けられている。旋回フレーム5には、左縦板5Bの後端と右縦板5Cの後端とに亘って底板5A上を左,右方向に延びて横板5Hが立設されている。
【0016】
旋回フレーム5の後側には、後述するガスエンジン7の下側に位置してエンジン支持枠5Jが設けられている。エンジン支持枠5Jは、左,右方向に間隔をもって前,後方向に延びた左縦枠部5J1、右縦枠部5J2および左,右方向に延びて左縦枠部5J1の後端と右縦枠部5J2の後端とを連結した後縦枠部5J3からなる。
【0017】
また、エンジン支持枠5Jには、ガスエンジン7が取付けられるエンジンブラケット5J4が前,後方向と左,右方向に間隔をもって複数個、例えば4個設けられている。さらに、後縦枠部5J3には、後述のベーパライザ23を取付けるためのベーパライザブラケット5J5がガスエンジン7の後側に位置して設けられている。
【0018】
図1図3に示すように、カウンタウエイト6は、作業装置4との重量バランスをとるために、旋回フレーム5の後部に設けられている。カウンタウエイト6は、左,右方向の中央部が後方に突出した円弧状の重量物として形成されている。カウンタウエイト6は、上部旋回体3の旋回半径が小さくなるように、旋回フレーム5に配置されている。
【0019】
図4に示すように、ガスエンジン7は、旋回フレーム5の後側、具体的には、旋回フレーム5を形成するエンジン支持枠5Jの各エンジンブラケット5J4に取付けられている。これにより、ガスエンジン7は、横板5Hよりも後側でエンジン支持枠5Jの上側に設けられている。ガスエンジン7は、ガス燃料としてのLPG(液化石油ガス)を燃料として用いている。ガスエンジン7は、左,右方向に延在する横置き状態で旋回フレーム5に搭載されている。ここで、ガスエンジン7は、エンジン冷却水が流通するウォータジャケット(図示せず)を備えている。ウォータジャケットは、熱交換装置のラジエータに接続されている。また、ウォータジャケットは、後述のベーパライザ23にも接続されている。
【0020】
ガスエンジン7の左側には、油圧ポンプ8が取付けられている。この油圧ポンプ8は、後述の作動油タンク10から供給された作動油を圧油として吐出する。一方、ガスエンジン7の右側には、ラジエータ、オイルクーラ等からなる熱交換装置(図示せず)が配置されている。
【0021】
図1図2に示すように、建屋としてのキャブ9は、ガスエンジン7の前側で旋回フレーム5の左側に位置して設けられている。キャブ9は、旋回フレーム5の前部からガスエンジン7(油圧ポンプ8)の上部を覆ったフロア部材9Aと、フロア部材9A上に設けられた箱型状のキャブボックス9Bと、キャブボックス9B内に位置してフロア部材9A上に設けられた運転席9C等により構成されている。キャブボックス9Bの左側面には、運転室に出入りするためのドア9B1(図1参照)が開閉可能に設けられている。さらに、図2に示すように、フロア部材9Aおよびキャブボックス9Bの右側は、後述のガス容器収納室14となっている。
【0022】
図3に示すように、作動油タンク10は、旋回フレーム5の右側に位置して設けられている。作動油タンク10は、上,下方向に延びた直方体用の容器として形成され、内部には、油圧ポンプ8に供給する作動油を貯えている。ここで、作動油タンク10は、キャブ9と所定の間隔をもって配置されている。これにより、キャブ9と作動油タンク10との間には、ガス容器収納室14が設けられている。
【0023】
外装カバー11は、旋回フレーム5上に設けられたガスエンジン7、作動油タンク10等を覆っている。外装カバー11は、左カバー12、右カバー13等により構成されている。左カバー12は、旋回フレーム5の左サイドフレーム5Eとキャブ9の間を、前,後方向に亘って覆うと共に、油圧ポンプ8の左側を覆っている。
【0024】
右カバー13は、右側面を覆う側面カバー部13Aと、作動油タンク10の左側に位置して前,後方向に延びて立設された仕切カバー部13Bと、側面カバー部13Aと仕切カバー部13Bとの間を開閉可能に覆う上カバー部13Cと、各カバー部13A~13Cの後側に位置して熱交換装置等を覆った後カバー部13Dとを含んで構成されている。
【0025】
次に、本実施の形態の特徴部分となるガス容器収納室14の構成について詳細に説明する。
【0026】
ガス容器収納室14は、建屋をなすキャブ9と作動油タンク10との間に位置し、上側と前側が開放された状態で旋回フレーム5上に設けられている。ガス容器収納室14は、後述のガス容器ブラケット15とガス容器21とを配置するための空間を構成している。ガス容器収納室14は、下側が旋回フレーム5に仕切られ、左側がキャブ9の右側面に仕切られ、右側が右カバー13の仕切カバー部13Bに仕切られている。一方で、ガス容器収納室14は、上側と前側が開放され、ガス容器収納室14には、ガス容器21が着脱可能に取付けられている。また、ガス容器収納室14は、カウンタウエイト6の上部位置よりも低い位置に形成されている。
【0027】
これにより、ガス容器収納室14には、上部旋回体3の上側および前側からガス容器21を取付け、取外しすることができる。具体的には、上側が開放されたガス容器収納室14は、ガス容器21を手で掴んで持ち上げたり、クレーンを用いて吊り上げたりしたときに、このガス容器21を上側から下ろして取付けることができる。また、上側に持ち上げて取外すことができる。しかも、ガス容器収納室14は、キャブ9と作動油タンク10との間で、上部旋回体3の中央寄りに位置しているから、ガス容器収納室14に固定したガス容器21が旋回動作時に周囲の障害物に衝突する虞がない。
【0028】
ガス容器ブラケット15は、ガス容器収納室14にガス容器21を安定的に固定する。ガス容器ブラケット15は、旋回フレーム5上の右前側に設けられている。ガス容器ブラケット15は、後述の支持部材18、固定部材19、規制部材20を含んで構成されている。ガス容器ブラケット15の基礎をなす前基板16、後基板17は、前,後方向に間隔をもって左,右方向に延びて立設され、旋回フレーム5の底板5Aおよび上板5Dに固着されている。
【0029】
支持部材18は、前,後方向に延びる軸線をもった円弧状(U字状)の板体として形成されている。支持部材18は、各基板16,17の上部に溶接等を用いて一体的に固着されている。支持部材18は、ガス容器21が安定的に収まるように、ガス容器21を載せるだけで適正な位置に配置されるように、ガス容器21の外周面と近似した曲率の半円筒板を用いて形成されている。
【0030】
固定部材19は、支持部材18上に支持されたガス容器21を支持部材18との間に固定する。固定部材19は、支持部材18の右端部に前,後方向に間隔をもって2個設けられた係合孔19Aと、各係合孔19Aに対応するように支持部材18の左端部に上側に突出して設けられた2枚のベルト締付けブラケット19Bと、長さ方向の一端が係合孔19Aに引っ掛けられ、長さ方向の他端のねじ部19C1がベルト締付けブラケット19Bの上部に挿通されたベルト19Cとにより構成されている。ベルト19Cは、ベルト締付けブラケット19Bを貫通したねじ部19C1の先端部にナット19Dが螺着されている。これにより、固定部材19は、ナット19Dを締付けることにより、支持部材18上に支持されたガス容器21を支持部材18との間に固定することができる。
【0031】
規制部材20は、前基板16に設けられている。規制部材20は、支持部材18上に支持されたガス容器21の旋回フレーム5の前側への移動を規制する。規制部材20は、下端部が前基板16に取付けられ、上端部が支持部材18の最下部を越えて上側に延びている。規制部材20は、支持部材18上に支持されたガス容器21が前側に移動しようとしたときに、上部20Aをガス容器21の容器本体21Aに当接させることにより、ガス容器21が旋回フレーム5の前側に位置ずれするのを防止することができる。
【0032】
ガス容器21は、ガス容器収納室14(ガス容器ブラケット15)に着脱可能に配置される。ガス容器21は、ガスエンジン7に供給するLPGを貯えている。ガス容器21は、燃料補給時に人手やクレーンによって着脱される運搬可能なタンクとなっている。ガス容器21は、円筒状の密閉容器からなる容器本体21Aと、容器本体21Aの長さ方向の一側の中央位置に設けられ、LPGの供給量を調整するコック21Bと、容器本体21Aの一端側にコック21Bを囲んで設けられた円筒状のプロテクタ21Cとにより構成されている。プロテクタ21Cは、周方向の複数箇所、例えば径方向で対面する2箇所に大きく開口した開口部21C1が形成されている。これにより、プロテクタ21Cには、開口部21C1の一側が棒状の把手21C2となっている。プロテクタ21Cの開口部21C1には、規制部材20の上部20Aが挿通される。
【0033】
ガス容器21は、コック21Bを旋回フレーム5の前側に向けた横倒し状態でガス容器ブラケット15(ガス容器収納室14)に取付けられている。この取付構造では、ガス容器21を簡単な構成で確実に固定することができる。また、コック21Bに対するガス供給管路22の接続、切離し作業、コック21Bの操作を容易に行うことができる。
【0034】
ガス供給管路22は、ガス容器21とガスエンジン7との間に設けられている。ガス供給管路22は、ガス容器21からガスエンジン7に向けてLPGを供給する。ガス供給管路22は、長さ方向の一端部(上流部)がガス容器21のコック21Bに接続され、長さ方向の他端部(下流部)がガスエンジン7の燃料噴射装置(図示せず)に接続されている。また、ガス供給管路22の途中には、後述のベーパライザ23が設けられている。
【0035】
ここで、図5に示すように、ガス供給管路22は、ガス容器21から旋回フレーム5のエンジン支持枠5Jの内側、即ち、ガスエンジン7の下側を通ってベーパライザ23に接続されている。これにより、ガス供給管路22を流通するLPGは、ガスエンジン7が発する熱によって温めることができ、気化を促進させることができる。また、寒冷地では、停車後の再始動時に、ガスエンジン7の熱によって保温されたLPGをガスエンジン7に供給することができ、十分に気化されたLPGによってガスエンジン7を安定的に始動することができる。
【0036】
ベーパライザ23は、ガスエンジン7の後側位置に配置、即ち、旋回フレーム5を構成するエンジン支持枠5Jのベーパライザブラケット5J5に取付けられている。ベーパライザ23は、ガス供給管路22の途中に設けられている。ベーパライザ23は、ガス供給管路22を通じてガスエンジン7に供給されるLPGを気化する。ベーパライザ23は、LPGを気化する熱源としてガスエンジン7のエンジン冷却水を利用している。即ち、図8に示すように、ベーパライザ23は、ガスエンジン7のウォータジャケットに冷却水管路23A,23Bを通じて接続されている。
【0037】
本実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
【0038】
まず、オペレータは、キャブ9に乗り込んで運転席9Cに着座し、ガスエンジン7を始動する。この状態で走行用の操作レバーを操作することにより、油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、オペレータは、作業用の操作レバーを操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0039】
次に、ガス燃料としてのLPGの補給作業の一例について説明する。まず、ガス容器ブラケット15に取付けられている空のガス容器21を取外す。この場合には、コック21Bを閉じた後に、コック21Bからガス供給管路22を取外す。また、ガス容器ブラケット15の固定部材19のナット19Dを緩めてベルト19Cによるガス容器21の拘束を解く。ガス容器21の拘束が解かれたら、プロテクタ21Cの把手21C2を掴んでガス容器21を持ち上げてガス容器ブラケット15から取外す。または、把手21C2にワイヤやフックを引っ掛け、クレーンを用いて吊り上げて取外す。
【0040】
ガス容器ブラケット15から空のガス容器21を取外したら、LPGが充填されたガス容器21をガス容器ブラケット15の支持部材18上に横倒し状態で配置し、前述した取外し手順と反対の手順を施すことにより、ガス容器21をガス容器収納室14に取付けることができる。このガス容器21の着脱作業では、ガス容器ブラケット15の取付位置が低く、上部旋回体3の前側から近い場所であるから、ガス容器21を容易に着脱することができる。

【0041】
かくして、本実施の形態によれば、旋回フレーム5の左側に位置して運転席9Cが設けられたキャブ9と旋回フレーム5の右側に位置して作動油を貯える作動油タンク10との間は、上側と前側が開放されたガス容器収納室14となっている。ガス容器収納室14には、ガスエンジン7に供給するLPG(ガス燃料)を貯えるガス容器21が着脱可能に取付けられている。
【0042】
従って、ガス容器21は、上部旋回体3の旋回動作時に周囲の障害物に衝突する虞がない。また、ガス容器収納室14は、キャブ9と作動油との間の低い位置に設けられているから、高い位置に上ることなく、ガス容器21を容易に交換することができる。しかも、ガス容器収納室14は、上側と前側が開放された状態で設けられているから、ガス容器収納室14に取付けられたガス容器21を、手で掴んで持ち上げたり、クレーンを用いて吊り上げたりすることができる。また、ガス容器21を上側から下ろして取付けることができる。
【0043】
この結果、ガス容器21を周囲の障害物との衝突による損傷から保護することができ、耐久性を向上することができる。また、ガス容器21を交換するときの作業性を向上することができる。
【0044】
ガス容器21には、ガス燃料の供給量を調整するコック21Bが設けられている。この上で、ガス容器21は、コック21Bを旋回フレーム5の前側に向けた状態でガス容器収納室14に取付けられている。これにより、ガス容器21は、コック21Bが前側に位置する横倒し状態となるから、簡単な構成で確実に固定することができる。また、前側の位置するコック21Bは、地上からガス供給管路22の接続、切離し作業を容易に行える上に、コック21Bの操作を容易に行うことができる。
【0045】
ガス容器21とガスエンジン7とは、ガス容器21からガスエンジン7に向けてガス燃料としてのLPGを供給するためのガス供給管路22で接続されており、ガス供給管路22には、LPGを気化させるベーパライザ23が設けられている。そして、ベーパライザ23は、ガスエンジン7の後側位置に配置されている。ガスエンジン7の後側に位置するベーパライザ23に接続されるガス供給管路22は、ガスエンジン7の周囲を通るから、ガスエンジン7が発する熱を利用してLPGの気化を促進することができる。また、寒冷地では、ガス供給管路22内のLPGを保温することができ、ガスエンジン7を安定的に始動することができる。
【0046】
ガス供給管路22は、ガスエンジン7の下側を通ってベーパライザ23に接続されている。これにより、ガス供給管路22は、ガスエンジン7に近い位置に配置できるから、LPGの気化の促進、LPGの保温等を図ることができる。
【0047】
ガス容器収納室14には、旋回フレーム5上に位置してガス容器ブラケット15が設けられている。このガス容器ブラケット15は、ガス容器21の周囲に沿って延びガス容器21を下側から支持する支持部材18と、支持部材18上に支持されたガス容器21を支持部材18との間に固定する固定部材19と、ガス容器21の旋回フレーム5の前側への移動を規制する規制部材20とを含んで構成されている。
【0048】
従って、支持部材18は、ガス容器21を下側から支持することができ、固定部材19は、支持部材18上に支持されたガス容器21を支持部材18との間に固定することができる。この上で、規制部材20は、固定部材19によって支持部材18上に固定されたガス容器21が旋回フレーム5の前側に移動するのを規制することができる。これにより、振動が発生する不整地、傾きが生じる傾斜地での作業においても、ガス容器21を安定的に固定することができる。
【0049】
旋回フレーム5には、ガスエンジン7の下側に位置して左,右方向に間隔をもって前,後方向に延びた左縦枠部5J1、右縦枠部5J2および左,右方向に延びて左縦枠部5J1の後端と右縦枠部5J2の後端とを連結した後縦枠部5J3からなるエンジン支持枠5Jが設けられている。また、ガス供給管路22は、ガス容器21からエンジン支持枠5Jの内側を通ってベーパライザ23に接続されている。エンジン支持枠5Jの内側は、ガスエンジン7の下側であるから、ガスエンジン7が発する熱によってガス供給管路22を流通するLPGを温めることができ、LPGの気化を促進させることができる。また、寒冷地では、停車後の再始動時に、ガスエンジン7の熱によって保温されたLPGをガスエンジン7に供給することができ、十分に気化されたLPGによってガスエンジン7を安定的に始動することができる。
【0050】
なお、実施の形態では、ガス燃料としてLPG(液化石油ガス)を用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ガス燃料として天然ガスを用いてもよい。この場合には、ベーパライザを省略することができる。
【0051】
実施の形態では、建屋として、キャブボックス9Bを備えたキャブ9を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、建屋として、運転席の上方を覆う天面部(ルーフ)を有するキャノピを適用してもよい。
【0052】
さらに、実施の形態では、建設機械として後方超小旋回型の油圧ショベル1を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、超小旋回型の油圧ショベル、上部旋回体の旋回半径が下部走行体の車幅寸法から突出する一般的な油圧ショベル等にも適用することができる。また、ホイール式の下部走行体を備えた建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業装置
5 旋回フレーム
5J エンジン支持枠
5J1 左縦枠部
5J2 右縦枠部
5J3 後縦枠部
7 ガスエンジン
9 キャブ(建屋)
9C 運転席
10 作動油タンク
14 ガス容器収納室
15 ガス容器ブラケット
18 支持部材
19 固定部材
20 規制部材
21 ガス容器
21B コック
22 ガス供給管路
23 ベーパライザ
図1
図2
図3
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図8