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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/04 20210101AFI20230609BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20230609BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20230609BHJP
【FI】
G03B17/04
G02B7/04 D
G02B7/02 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019166844
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021043393
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】若山 富裕
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-056009(JP,A)
【文献】特開2003-066510(JP,A)
【文献】特開2003-156789(JP,A)
【文献】特開2011-221389(JP,A)
【文献】特開2005-181676(JP,A)
【文献】特開2012-048103(JP,A)
【文献】特開2010-286789(JP,A)
【文献】特開2005-215273(JP,A)
【文献】米国特許第07019913(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/04
G02B 7/04
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル部と、
前記バレル部の内部に収容された沈胴状態から光軸方向に沿った繰出方向に移動可能なレンズ鏡筒と
を備え、
前記レンズ鏡筒は、
前記バレル部の半径方向内側に収容された状態から前記バレル部に対して前記繰出方向に移動可能な第1の鏡筒ユニットと、
前記第1の鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された状態から前記第1の鏡筒ユニットに対して前記繰出方向に移動可能な第2の鏡筒ユニットと
を含み、
前記第2の鏡筒ユニットは、前記第1の鏡筒ユニット側に設けられた係合部を有し、
前記第1の鏡筒ユニットは、
基底部と、
前記基底部に設けられ、前記第2の鏡筒ユニットを前記繰出方向に向けて付勢する鏡筒ユニット付勢部と、
前記基底部に回転軸を中心として回転可能に設けられた作動レバーであって、前記基底部の半径方向外側に突出する作動部と、前記回転軸を中心としてロック方向に回転することで前記第2の鏡筒ユニットの前記係合部に係合するロック部とを有する作動レバーと、
前記作動レバーを前記ロック方向に向けて付勢するレバー付勢部と
を有し、
前記バレル部は、前記第1の鏡筒ユニットが前記バレル部に対して前記繰出方向に移動する際に前記作動レバーの前記作動部に当接して前記作動レバーを前記ロック方向とは反対方向に回転させる第1の当接部を有する、
カメラ装置。
【請求項2】
前記レンズ鏡筒は、前記第1の鏡筒ユニットに対する前記第2の鏡筒ユニットの前記繰出方向の移動を一定の範囲に規制する移動規制部を有する、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記第1の鏡筒ユニットは、前記作動レバーの前記ロック方向への回転を規制する回転規制部を有する、請求項1又は2に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記作動レバーの前記ロック部は、前記第2の鏡筒ユニットの前記係合部をガイド可能な傾斜面を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記第2の鏡筒ユニットの前記係合部は、前記作動レバーの前記ロック部をガイド可能な傾斜面を有する、請求項4に記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記作動レバーの前記ロック部は、弾性変形可能な折り返し形状を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項7】
前記作動レバーの作動部は、前記バレル部に形成された溝部を通って該溝部から半径方向外側に突出している、請求項1から6のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項8】
前記第1の当接部は、前記繰出方向に対して垂直な方向に延びる前記溝部の縁部により構成される、請求項7に記載のカメラ装置。
【請求項9】
前記バレル部は、前記作動レバーの前記作動部が前記バレル部の前記第1の当接部から離れた際に、前記レバー付勢部の付勢力によって前記作動レバーが前記ロック方向に回転しない場合に、前記作動レバーの前記作動部に当接して前記作動レバーを前記ロック方向に回転させる第2の当接部を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項10】
前記作動レバーの作動部は、前記バレル部に形成された溝部を通って該溝部から半径方向外側に突出しており、
前記第2の当接部は、前記繰出方向に対して斜めに延びる前記溝部の縁部により構成される、請求項9に記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置に係り、特にレンズ鏡筒を光軸方向に沿って前方に繰り出すことができるカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からレンズ鏡筒を光軸方向に沿って前方に繰り出す鏡筒繰出機構を有するカメラが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような鏡筒繰出機構を備えたカメラを薄型化するために、レンズ鏡筒を多段にして入れ子構造にすることも考えられている。しかしながら、このような入れ子構造のレンズ鏡筒を多段階で前方に繰り出すための機構は複雑になり易く、大きな収容スペースを必要とするため、カメラの薄型化が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-56009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、入れ子構造のレンズ鏡筒を多段で繰り出すことができるコンパクトなカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、入れ子構造のレンズ鏡筒を多段で繰り出すことができるコンパクトなカメラ装置が提供される。このカメラ装置は、バレル部と、上記バレル部の内部に収容された沈胴状態から光軸方向に沿った繰出方向に移動可能なレンズ鏡筒とを備える。上記レンズ鏡筒は、上記バレル部の半径方向内側に収容された状態から上記バレル部に対して上記繰出方向に移動可能な第1の鏡筒ユニットと、上記第1の鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された状態から上記第1の鏡筒ユニットに対して上記繰出方向に移動可能な第2の鏡筒ユニットとを含む。上記第2の鏡筒ユニットは、上記第1の鏡筒ユニット側に設けられた係合部を有している。上記第1の鏡筒ユニットは、基底部と、上記基底部に設けられ、上記第2の鏡筒ユニットを上記繰出方向に向けて付勢する鏡筒ユニット付勢部と、上記基底部に回転軸を中心として回転可能に設けられた作動レバーとを有する。上記作動レバーは、上記基底部の半径方向外側に突出する作動部と、上記回転軸を中心としてロック方向に回転することで上記第2の鏡筒ユニットの上記係合部に係合するロック部とを有する。上記第1の鏡筒ユニットは、上記作動レバーを上記ロック方向に向けて付勢するレバー付勢部を有する。上記バレル部は、上記第1の鏡筒ユニットが上記バレル部に対して上記繰出方向に移動する際に上記作動レバーの上記作動部に当接して上記作動レバーを上記ロック方向とは反対方向に回転させる第1の当接部を有する。
【0006】
このような構成によれば、レンズ鏡筒が沈胴状態にあるときは、第1の鏡筒ユニットのレバー付勢部により作動レバーのロック部が第2の鏡筒ユニットの係合部に係合しているため、第1の鏡筒ユニットと第2の鏡筒ユニットとが一体として繰出方向に移動するが、レンズ鏡筒が沈胴状態から繰り出す途中で、作動レバーの作動部がバレル部の第1の当接部に当接することで作動レバーがロック方向とは反対方向に回転し、作動レバーのロック部と第2の鏡筒ユニットの係合部との係合が外れる。第2の鏡筒ユニットは、第1の鏡筒ユニットの鏡筒ユニット付勢部によって繰出方向に向けて付勢されているため、作動レバーのロック部と第2の鏡筒ユニットの係合部との係合が外れると、第2の鏡筒ユニットが第1の鏡筒ユニットに対して繰出方向に移動する。このように、本発明に係る構成によれば、簡単かつコンパクトな構造によって、入れ子構造のレンズ鏡筒を2段階で繰出方向に繰り出すことが可能であり、カメラ装置のさらなる薄型化が可能となる。
【0007】
上記レンズ鏡筒は、上記第1の鏡筒ユニットに対する上記第2の鏡筒ユニットの上記繰出方向の移動を一定の範囲に規制する移動規制部を有していてもよい。上記第1の鏡筒ユニットは、上記作動レバーの上記ロック方向への回転を規制する回転規制部を有していてもよい。また、上記作動レバーの上記ロック部は、上記第2の鏡筒ユニットの上記係合部をガイド可能な傾斜面を有していてもよい。さらに、上記第2の鏡筒ユニットの上記係合部は、上記作動レバーの上記ロック部をガイド可能な傾斜面を有していてもよい。また、上記作動レバーの上記ロック部は、弾性変形可能な折り返し形状を有することが好ましい。
【0008】
上記作動レバーの作動部は、上記バレル部に形成された溝部を通って該溝部から半径方向外側に突出していてもよい。この場合には、上記第1の当接部は、上記繰出方向に対して垂直な方向に延びる上記溝部の縁部により構成され得る。
【0009】
上記バレル部は、上記作動レバーの上記作動部が上記バレル部の上記第1の当接部から離れた際に、上記レバー付勢部の付勢力によって上記作動レバーが上記ロック方向に回転しない場合に、上記作動レバーの上記作動部に当接して上記作動レバーを上記ロック方向に回転させる第2の当接部を有することが好ましい。この場合において、上記作動レバーの作動部は、上記バレル部に形成された溝部を通って該溝部から半径方向外側に突出し、上記第2の当接部は、上記繰出方向に対して斜めに延びる上記溝部の縁部により構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レンズ鏡筒が沈胴状態にあるときは、第1の鏡筒ユニットのレバー付勢部により作動レバーのロック部が第2の鏡筒ユニットの係合部に係合しているため、第1の鏡筒ユニットと第2の鏡筒ユニットとが一体として繰出方向に移動するが、レンズ鏡筒が沈胴状態から繰り出す途中で、作動レバーの作動部がバレル部の第1の当接部に当接することで作動レバーがロック方向とは反対方向に回転し、作動レバーのロック部と第2の鏡筒ユニットの係合部との係合が外れる。第2の鏡筒ユニットは、第1の鏡筒ユニットの鏡筒ユニット付勢部によって繰出方向に向けて付勢されているため、作動レバーのロック部と第2の鏡筒ユニットの係合部との係合が外れると、第2の鏡筒ユニットが第1の鏡筒ユニットに対して繰出方向に移動する。このように、本発明に係る構成によれば、簡単かつコンパクトな構造によって、入れ子構造のレンズ鏡筒を2段階で繰出方向に繰り出すことが可能であり、カメラ装置のさらなる薄型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すカメラ装置のフロントカバー、リアカバー、及びトップカバーにより形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す分解斜視図である。
図3図3は、図2に示すレンズ鏡筒が+X方向に最大限伸びた状態を示す斜視図である。
図4図4は、図1に示すカメラ装置の撮影状態を示す斜視図である。
図5図5は、図2に示すレンズ鏡筒の分解斜視図である。
図6図6は、沈胴状態における図5に示すレンズ鏡筒の構成要素の相互関係を示す模式的概念図である。
図7図7は、図5に示すレンズ鏡筒における後方鏡筒ユニットの分解斜視図である。
図8図8は、図7に示す後方鏡筒ユニットにおける作動レバーを示す斜視図である。
図9図9は、図7に示す後方鏡筒ユニットにおける押出レバーを示す斜視図である。
図10A図10Aは、図1に示すカメラ装置におけるレンズ鏡筒の繰出動作を説明するための模式的概念図である。
図10B図10Bは、図1に示すカメラ装置におけるレンズ鏡筒の繰出動作を説明するための模式的概念図である。
図10C図10Cは、図1に示すカメラ装置におけるレンズ鏡筒の沈胴動作を説明するための模式的概念図である。
図10D図10Dは、図1に示すカメラ装置におけるレンズ鏡筒の沈胴動作を説明するための模式的概念図である。
図10E図10Eは、図1に示すカメラ装置におけるレンズ鏡筒の沈胴動作を説明するための模式的概念図である。
図10F図10Fは、図1に示すカメラ装置におけるレンズ鏡筒の沈胴動作を説明するための模式的概念図である。
図11図11は、図8に示す作動レバーの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るカメラ装置の実施形態について図1から図11を参照して詳細に説明する。なお、図1から図11において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図11においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置1を示す斜視図である。本実施形態におけるカメラ装置1は、撮影後に自動的に現像が行われる写真フィルムを用いるカメラ(インスタントカメラ)であるが、本発明はこのようなインスタントカメラ以外にも適用できることは言うまでもない。なお、本実施形態では、便宜的に、図1における+X方向を「前」又は「前方」といい、-X方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0014】
図1に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2と、フロントカバー2の後方に装着されるリアカバー3と、フロントカバー2とリアカバー3とに挟まれるトップカバー4とを備えている。フロントカバー2にはファインダ窓5が形成されており、このファインダ窓5に隣接してフラッシュ窓6が配置されている。また、ファインダ窓5の-Z方向側にはレリーズボタン7が配置されている。トップカバー4には、Y方向に延びる排出スリット4Aが形成されており、この排出スリット4Aから撮影後に現像された写真フィルムが排出されるようになっている。
【0015】
図2は、フロントカバー2、リアカバー3、及びトップカバー4により形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す分解斜視図である。図2に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2の筒状部2A(図1参照)の内側に収容されるレンズ鏡筒10と、レンズ鏡筒10が取り付けられるフレーム20とを有している。このフレーム20は、略直方体状のベース部21と、ベース部21から前方に延び、レンズ鏡筒10を保持する筒状のバレル部22とを含んでいる。
【0016】
本実施形態におけるレンズ鏡筒10は、+X方向に伸長可能な構造となっている。図3は、+X方向に最大限伸長した状態のレンズ鏡筒10を示す斜視図である。図3に示すように、レンズ鏡筒10は、第1の筒部11と第2の筒部12と第3の筒部13とを含んでいる。第1の筒部11はフレーム20のバレル部22に対してX方向に移動可能であり、第2の筒部12は第1の筒部11に対してX方向に移動可能となっている。また、第3の筒部13は第2の筒部12に対してX方向に移動可能となっている。本実施形態では、第1の筒部11は後方鏡筒ユニット31(第1の鏡筒ユニット)を構成しており、第2の筒部12及び第3の筒部13は前方鏡筒ユニット32(第2の鏡筒ユニット)を構成している。
【0017】
図3に示すように、レンズ鏡筒10の第1の筒部11の後端部には半径方向外側に突出する2つの係合突起14が形成されている。それぞれの係合突起14に対応して、フレーム20のバレル部22には、図2に示すように、光軸Pの方向(X方向)に沿って延びる2つのガイド溝24が形成されている。レンズ鏡筒10のそれぞれの係合突起14は、バレル部22のガイド溝24の内部に収容され、ガイド溝24に係合するようになっている。ガイド溝24のZ方向の幅は、係合突起14のZ方向の幅よりわずかに大きい程度となっている。したがって、係合突起14はガイド溝24にガイドされつつ、ガイド溝24の内部で光軸Pの方向(X方向)に移動するようになっている。
【0018】
図2に示すように、フレーム20のバレル部22の近傍には、操作ボタン8がコイルバネ8Aにより+X方向に付勢された状態で設けられている。この操作ボタン8は、図1に示すように、フロントカバー2の筒状部2Aの近傍でフロントカバー2から+X方向に突出しており、ユーザが操作ボタン8を-X方向に押し込めるようになっている。ユーザが操作ボタン8を-X方向に押し込むと、バレル部22に取り付けられた鏡筒繰出機構9によってレンズ鏡筒10の係合突起14が+X方向に押し出され、図4に示すように、レンズ鏡筒10が+X方向(繰出方向)に繰り出されるようになっている。このようにレンズ鏡筒10がバレル部22から+X方向に飛び出すと、図示しないスイッチ機構によりカメラ装置1の電源が入る。
【0019】
鏡筒繰出機構9は、操作ボタン8に連動して係合突起14を+X方向に押し出すレバー9Aと、係合突起14の位置によって係合突起14を付勢する方向が反転するねじりコイルバネ(図示せず)とを含んでいる。このねじりコイルバネは、係合突起14が所定の位置を越えて+X方向に移動すると、係合突起14を+X方向に付勢し、反対に、係合突起14が所定の位置を越えて-X方向に移動すると、係合突起14を-X方向に付勢するように構成されている。なお、鏡筒繰出機構9は特定のものに限られるものではなく、レンズ鏡筒10を+X方向に繰り出すことができるのであればどのような構造のものであってもよい。
【0020】
本実施形態では、レンズ鏡筒10がバレル部22に対して+X方向に移動する途中で、図4に示すように、前方鏡筒ユニット32が後方鏡筒ユニット31に対して+X方向に移動する(繰り出す)ようになっている。なお、本実施形態では、図4に示す状態においてユーザが手で第3の筒部13を第2の筒部12からさらに+X方向に引き出すことができるようになっている。図1は、レンズ鏡筒10がフレーム20のバレル部22に収容された状態を示しており、この状態ではレンズ鏡筒10がX方向に最も短くなっている。以下、この状態を「沈胴状態」ということとする。
【0021】
図5は、レンズ鏡筒10の分解斜視図である。図6は、沈胴状態におけるレンズ鏡筒10の構成要素の相互関係を示す模式的概念図であり、理解を容易にするために構成要素を簡略化及び模式化して示すものである。図6においては、第2の筒部12及び第3の筒部13は互いに区別することなく前方鏡筒ユニット32として示している。
【0022】
図5に示すように、前方鏡筒ユニット32の第2の筒部12は、円筒部71と、円筒部71の-X方向側の端部から半径方向外側に突出する3つの突起72とを含んでいる。また、前方鏡筒ユニット32の第3の筒部13は、第2の筒部12の円筒部71の内側に収容される円筒部61と、円筒部61の前端で半径方向外側に広がるフランジ部62と、中央に矩形状の開口S1が形成された基底部63とを含んでいる。この基底部63の後方鏡筒ユニット31側には、-X方向に延びる2つの係合部64が形成されている。それぞれの係合部64は、先端部に三角柱状の爪部65を有している。
【0023】
後方鏡筒ユニット31は、中央に矩形状の開口S2が形成された基底部40と、基底部40から+X方向に延びる円筒部41とを含んでいる。上述した係合突起14は基底部40から半径方向外側に延びている。円筒部41の内周面には、前方鏡筒ユニット32の3つの突起72に対応してX方向に延びる3つのガイド溝45が形成されている。前方鏡筒ユニット32のそれぞれの突起72は、後方鏡筒ユニット31の円筒部41のガイド溝45の内部に収容され、ガイド溝45に係合するようになっている。ガイド溝45の周方向の幅は、突起72の周方向の幅よりわずかに大きい程度となっている。したがって、突起72はガイド溝45にガイドされつつ、ガイド溝45の内部でX方向に移動するようになっている。
【0024】
図7は、レンズ鏡筒10の後方鏡筒ユニット31の分解斜視図である。図7に示すように、後方鏡筒ユニット31は、基底部40に取り付けられた2つの作動レバー42と、基底部40に取り付けられた2つの押出レバー43とを含んでいる。2つの作動レバー42は基底部40の中心に対して対称な位置に配置されており、押出レバー43も基底部40の中心に対して対称な位置に配置されている。
【0025】
図8は、作動レバー42を示す斜視図である。図8に示すように、この作動レバー42は、基底部40のシャフト部46(図7参照)に取り付けられるものであり、このシャフト部46を中心として回転可能に構成される。作動レバー42は、基底部40のシャフト部46が挿入される軸孔50が形成された基部51と、基部51から+Z方向に延びる作動部52と、基部51の+X方向側に形成されたロック部53と、ロック部53の根元部分から+Z方向に延びるバネ受け部54とを有している。作動部52のZ方向の長さは、作動レバー42を基底部40に取り付けた際に、図5に示すように、作動部52が基底部40から半径方向外側に突出するような長さとなっている。
【0026】
図6及び図7に示すように、作動レバー42のバネ受け部54には、ねじりコイルバネ55の一方の腕部55Aが係合している。ねじりコイルバネ55のコイル部55Bは、基底部40のシャフト部46の周囲に配置されており、他方の腕部55Cは基底部40の壁部40Aに係合している。このねじりコイルバネ55は、腕部55A,55Cの間の開き角度がねじりコイルバネ55の自由角度よりも小さくなるように装着されている。このため、作動レバー42は、図8に示す回転軸Jを中心として反時計回りの方向に付勢された状態となっている。以下では、作動レバー42がねじりコイルバネ55により付勢される方向、すなわち図8の回転軸Jを中心として反時計回りの方向を「ロック方向」といい、回転軸Jを中心として時計回りの方向を「アンロック方向」ということとする。このように、本実施形態におけるねじりコイルバネ55は、作動レバー42をロック方向に向けて付勢するレバー付勢部として機能する。
【0027】
図8に示すように、作動レバー42のロック部53は、基部51から+X方向に延びた後、-X方向に折り返して延びている。このような折り返し形状によりロック部53はY方向に弾性変形するようになっている。このロック部53は、先端部に三角柱状の爪部56を有している。図6に示すように、沈胴状態においては、この作動レバー42のロック部53の爪部56は、前方鏡筒ユニット32の係合部64の爪部65と係合している。
【0028】
上述したように、作動レバー42の作動部52は基底部40から半径方向外側に突出しているが、図2に示すように、この作動レバー42の作動部52に対応して、バレル部22にはX方向に延びる溝部25が形成されている。作動レバー42の作動部52は、この溝部25を通って溝部25から半径方向外側に突出している。レンズ鏡筒10が+X方向に繰り出す際には、作動レバー42の作動部52がバレル部22の溝の内部を移動するようになっている。
【0029】
図9は、押出レバー43を示す斜視図である。図9に示すように、この押出レバー43は、基底部40に取り付けられるシャフト47(図7参照)が挿入される軸孔80が形成された基部81と、基部81から概して+Z方向に延びるアーム部82と、アーム部82の先端に設けられたプッシャ部83と、アーム部82に形成されたバネ受け部84とを有している。
【0030】
図6及び図7に示すように、押出レバー43のバネ受け部84には、ねじりコイルバネ85の一方の腕部85Aが係合している。ねじりコイルバネ85のコイル部85Bは、押出レバー43の基部81の周囲に配置されており、他方の腕部85Cは基底部40の表面に係合している。このねじりコイルバネ85は、腕部85A,85Cの間の開き角度がねじりコイルバネ85の自由角度よりも小さくなるように装着されている。このため、押出レバー43は、図9に示す回転軸Kを中心として反時計回りの方向に付勢された状態となっている。
【0031】
図6に示すように、ねじりコイルバネ85により付勢される押出レバー43のプッシャ部83は、前方鏡筒ユニット32の後端面32A(例えば図5に示す第2の筒部12の後端面12A)に当接しており、押出レバー43が前方鏡筒ユニット32を+X方向(繰出方向)に押している。すなわち、押出レバー43とねじりコイルバネ85とによって、前方鏡筒ユニット32を+X方向に向けて付勢する鏡筒ユニット付勢部が構成されている。なお、図6に示す沈胴状態においては、上述したように前方鏡筒ユニット32の係合部64の爪部65と後方鏡筒ユニット31のロック部53の爪部56とが互いに係合しているため、前方鏡筒ユニット32は後方鏡筒ユニット31に対して+X方向に移動しない。
【0032】
図10Aから図10Fは、レンズ鏡筒10の繰出動作及び沈胴動作を説明するための模式的概念図であり、図6の模式的概念図に対応するものである。上述したように、ユーザが操作ボタン8を-X方向に押し込むと、バレル部22に取り付けられた鏡筒繰出機構9によってレンズ鏡筒10の係合突起14が+X方向に押し出され、レンズ鏡筒10が+X方向に移動する。このとき、上述したように、前方鏡筒ユニット32の係合部64の爪部65と後方鏡筒ユニット31の作動レバー42のロック部53の爪部56とが互いに係合しているため、前方鏡筒ユニット32と後方鏡筒ユニット31とは一体となって+X方向に移動する。
【0033】
前方鏡筒ユニット32と後方鏡筒ユニット31とが一体となって+X方向に移動する際に、後方鏡筒ユニット31の作動レバー42の作動部52は、バレル部22の溝部25内を+X方向に移動するが、やがて図10Aに示すようにX方向に対して垂直な方向に延びるバレル部22の溝部25の縁部25Aに当接する。この状態で、前方鏡筒ユニット32及び後方鏡筒ユニット31がさらに+X方向に移動すると、作動レバー42の作動部52がバレル部22の溝部25の縁部25Aによって-X方向に押される。これに伴い、作動レバー42は、図10Aの矢印で示すように、ねじりコイルバネ55の付勢力に抗して基底部40のシャフト部46を中心としてアンロック方向(図10Aにおいて時計回り)に回転する。
【0034】
このようにして作動レバー42がアンロック方向に回転すると、やがて作動レバー42のロック部53の爪部56が前方鏡筒ユニット32の係合部64の爪部65から外れる。このとき、後方鏡筒ユニット31の押出レバー43は、ねじりコイルバネ85によって前方鏡筒ユニット32の後端面32Aを+X方向に押しているため、作動レバー42のロック部53と前方鏡筒ユニット32の係合部64との係合が外れると、図10Bに示すように、前方鏡筒ユニット32が押出レバー43により+X方向に押し出される。これにより、前方鏡筒ユニット32が後方鏡筒ユニット31に対して+X方向に繰り出される。
【0035】
このとき、図10Bに示すように、前方鏡筒ユニット32の突起72が後方鏡筒ユニット31のガイド溝45の+X方向の縁部45Aに突き当たることで、前方鏡筒ユニット32の後方鏡筒ユニット31に対する+X方向の移動が規制される。このように、後方鏡筒ユニット31の円筒部41のガイド溝45と前方鏡筒ユニット32の突起72とは、後方鏡筒ユニット31に対する前方鏡筒ユニット32の移動が一定の範囲に規制する移動規制部として機能する。なお、後方鏡筒ユニット31に突起を形成し、前方鏡筒ユニット32にガイド溝を形成することで同様の移動規制部を構成してもよいことは言うまでもない。
【0036】
このように、本実施形態におけるバレル部22の溝部25の縁部25Aは、後方鏡筒ユニット31がバレル部22に対して+X方向に移動する際に作動レバー42の作動部52に当接して作動レバー42をアンロック方向に回転させる(第1の)当接部として機能する。このような当接部は、溝部25の縁部25Aに限られるものではなく、例えばバレル部22の内側に形成した壁により上記第1の当接部を構成することも可能である。
【0037】
一方、図10Bに示すように前方鏡筒ユニット32及び後方鏡筒ユニット31が+X方向に繰り出した状態から沈胴状態にするためには、ユーザが、例えば前方鏡筒ユニット32(例えば、第3の筒部13のフランジ部62)を-X方向に押し込む。このとき、ユーザは、押出レバー43を付勢しているねじりコイルバネ85の付勢力に抗して前方鏡筒ユニット32を-X方向に押し込む必要がある。前方鏡筒ユニット32を-X方向に押し込むと、図10Cに示すように、まず前方鏡筒ユニット32が後方鏡筒ユニット31に対して-X方向に移動する。
【0038】
この図10Cに示す状態からユーザが前方鏡筒ユニット32をさらに-X方向に押し込むと、前方鏡筒ユニット32の第3の筒部13のフランジ部62が後方鏡筒ユニット31の筒部41の先端に当接するため、後方鏡筒ユニット31も前方鏡筒ユニット32とともに-X方向に移動する。これに伴い、作動レバー42の作動部52は、図10Dに示すようにバレル部22の溝部25の縁部25Aから離れる。これによって、作動レバー42はねじりコイルバネ55の付勢によってロック方向に回転し、ロック部53の爪部56が前方鏡筒ユニット32の係合部64の爪部65に係合する。このとき、図10Dに示すように、作動レバー42の作動部52が基底部40の後端面40Bに突き当たることで、作動レバー42のロック方向への回転が規制される。このように、本実施形態では、後方鏡筒ユニット31の基底部40の後端面40Bは、作動レバー42のロック方向への回転を規制する回転規制部として機能する。
【0039】
ユーザが前方鏡筒ユニット32及び後方鏡筒ユニット31を一定距離以上-X方向に押し込むと、上述したように、鏡筒繰出機構9が後方鏡筒ユニット31の係合突起14を付勢する方向が反転し、鏡筒繰出機構9によって後方鏡筒ユニット31の係合突起14が-X方向に付勢される。したがって、ユーザが前方鏡筒ユニット32から手を離しても、後方鏡筒ユニット31は-X方向に移動し続ける。このとき、後方鏡筒ユニット31の作動レバー42のロック部53の爪部56と前方鏡筒ユニット32の係合部64の爪部65とが係合しているため、前方鏡筒ユニット32も後方鏡筒ユニット31とともに-X方向に移動し、レンズ鏡筒10は図1に示すような沈胴状態になる。
【0040】
上述した沈胴動作の説明は、最初に前方鏡筒ユニット32が-X方向に移動することを前提にしているが、最初に後方鏡筒ユニット31が-X方向に移動した場合には、図10Eに示すように、作動レバー42の作動部52がバレル部22の溝部25の縁部25Aから離れてしまうため、前方鏡筒ユニット32の係合部64の爪部65が作動レバー42のロック部53の爪部56と係合可能な位置に移動する前に、作動レバー42がねじりコイルバネ55の付勢によってロック方向に回転してしまう。このような場合であっても、本実施形態によれば、レンズ鏡筒10を沈胴状態にすることが可能である。
【0041】
すなわち、図10Eに示すように、作動レバー42のロック部53の三角柱状の爪部56は、前方鏡筒ユニット32の係合部64の爪部65をガイド可能な傾斜面56Aを有している。また、前方鏡筒ユニット32の係合部64の三角柱状の爪部65も、作動レバー42のロック部53の爪部56をガイド可能な傾斜面65Aを有している。したがって、図10Eに示す状態で前方鏡筒ユニット32を-X方向に押し込むと、ロック部53の爪部56の傾斜面56Aと係合部64の爪部65の傾斜面65Aとが互いに摺接しながら、ロック部53及び係合部64が弾性変形して互いの爪部56,65を乗り越えることで互いに係合する。特に、本実施形態では、作動レバー42のロック部53が上述したような折り返し形状を有しているため、弾性変形し易く、容易にロック部53の爪部56と係合部64の爪部65とを係合させることができる。このようにしてロック部53の爪部56と係合部64の爪部65とを係合させると、図10Dに示す状態となるため、上述した動作によってレンズ鏡筒10を沈胴状態にすることができる。
【0042】
また、上述した沈胴動作において、何らかの理由でねじりコイルバネ55が作動レバー42をロック方向に付勢しなくなった場合には、作動レバー42のロック部53の爪部56と係合部64の爪部65とを係合させることができず、レンズ鏡筒10を沈胴状態にできないことも考えられる。本実施形態では、このような問題に対処するために、図2に示すように、上述したバレル部22の溝部25に、X方向に対して斜めに延びる縁部25Bが形成されている。
【0043】
すなわち、図10Cに示す状態からユーザが前方鏡筒ユニット32をさらに-X方向に押し込んだ際に、ねじりコイルバネ55の付勢力が作動レバー42に作用しない場合には、作動レバー42がロック方向に回転しないまま-X方向に移動することになるが、その際に、図10Fに示すように、バレル部22の溝部25の縁部25Bが作動レバー42の作動部52に当接するようになっている。そして、作動レバー42の-X方向への移動に伴い、作動レバー42の作動部52が溝部25の縁部25Bにガイドされ、これに伴い、作動レバー42がロック方向に回転するようになっている。これにより、ロック部53の爪部56と係合部64の爪部65とを係合させることができる。このように、本実施形態におけるバレル部22の溝部25の縁部25Bは、作動レバー42の作動部52に当接して作動レバー42をロック方向に回転させる(第2の)当接部として機能する。このような当接部は、溝部25の縁部25Bに限られるものではなく、例えばバレル部22の内側に形成した壁により上記第2の当接部を構成することも可能である。
【0044】
上述した例では、作動レバー42のロック部53がU字状の折り返し形状を有しているが、このような折り返し形状は必ずしも必要ない。したがって、例えば、上述した作動レバー42に代えて、図11に示すように基部51から折り返すことなく延びるロック部153を備えた作動レバー142を用いることもできる。ただし、図10Eに示す状態から沈胴動作を行う際にロック部の弾性変形を生じやすくするためには、U字状の折り返し形状を有するロック部53を用いることが好ましい。
【0045】
なお、本明細書において使用した用語「前」、「前方」、「後」、「後方」、「上」、「上方」、「下」、「下方」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、装置の相対的な位置関係によって変化するものである。
【0046】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 カメラ装置
2 フロントカバー
3 リアカバー
4 トップカバー
5 ファインダ窓
6 フラッシュ窓
7 レリーズボタン
8 操作ボタン
9 鏡筒繰出機構
10 レンズ鏡筒
11 第1の筒部
12 第2の筒部
13 第3の筒部
14 係合突起
20 フレーム
21 ベース部
22 バレル部
24 ガイド溝
25 溝部
25A 縁部(第1の当接部)
25B 縁部(第2の当接部)
31 後方鏡筒ユニット(第1の鏡筒ユニット)
32 前方鏡筒ユニット(第2の鏡筒ユニット)
40 基底部
41 円筒部
42 作動レバー
43 押出レバー
45 ガイド溝
51 基部
52 作動部
53 ロック部
54 バネ受け部
55 ねじりコイルバネ
56 爪部
61 円筒部
62 フランジ部
63 基底部
64 係合部
65 爪部
71 円筒部
72 突起
85 ねじりコイルバネ
142 作動レバー
153 ロック部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11