(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20230609BHJP
A45D 40/04 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B65D83/00 C
A45D40/04 A
(21)【出願番号】P 2019179804
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-089268(JP,U)
【文献】特開2011-101676(JP,A)
【文献】実開昭55-000388(JP,U)
【文献】実開昭58-177018(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
A45D 33/00-40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を保持する中皿部と、
操作筒部と、
前記操作筒部から上方に向けて延び、前記中皿部を径方向外側から囲うスリーブと、
前記スリーブの径方向内側に位置し、前記スリーブに対する容器軸回りの回転が規制された回動規制軸と、
前記回動規制軸の径方向内側に位置し、前記回動規制軸に対する容器軸回りの回転が規制されるとともに、前記中皿部に固定された係合筒部と、
前記係合筒部の径方向内側に位置し、外周面に第1螺旋溝が形成された螺旋筒部と、
前記螺旋筒部の径方向内側に位置し、前記操作筒部に対する容器軸回りの回転が規制されるとともに、外周面に第2螺旋溝が形成された柱状部と、を備え、
前記係合筒部の内周面には、前記螺旋筒部と前記係合筒部とが容器軸回りに相対回転したときに、前記第1螺旋溝に係合することで、前記係合筒部を上下動させる第1係合部が形成され、
前記螺旋筒部の内周面には、前記柱状部と前記螺旋筒部とが容器軸回りに相対回転したときに、前記第2螺旋溝に係合することで前記螺旋筒部を前記柱状部に対して上下動させる第2係合部が形成され
、
前記操作筒部と前記スリーブとの間には、前記操作筒部が前記スリーブに対して容器軸回りに回転する際に前記スリーブの外周面に対して摺動する摺動片が配置されている、繰出容器。
【請求項2】
前記第2螺旋溝の上端部には、前記第2係合部の前記第2螺旋溝からの上方に向けた離脱を規制する規制突起が形成されている、請求項
1に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内容物を保持する中皿部と、中皿部を囲うスリーブと、スリーブの下方に設けられた操作筒部と、を備えた繰出容器が開示されている。この繰出容器は、操作筒部をスリーブに対して容器軸回りに回転させることで、中皿部を上昇させて、内容物をスリーブから上方に突出させることができるように構成されている。また、特許文献1の繰出容器は2つの螺旋溝を有しており、中皿部を2段階で繰り上げ可能となっている。この構成により、中皿部のストローク量を大きくしつつ、繰出容器の全長を小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、各部材の相対回転を規制するための構造について、繰出容器の上下方向における寸法をより小さくする点で改善の余地があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、中皿部のストローク量を確保しつつ、上下方向における全長をより小さくすることが可能な繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る繰出容器は、内容物を保持する中皿部と、操作筒部と、前記操作筒部から上方に向けて延び、前記中皿部を径方向外側から囲うスリーブと、前記スリーブの径方向内側に位置し、前記スリーブに対する容器軸回りの回転が規制された回動規制軸と、前記回動規制軸の径方向内側に位置し、前記回動規制軸に対する容器軸回りの回転が規制されるとともに、前記中皿部に固定された係合筒部と、前記係合筒部の径方向内側に位置し、外周面に第1螺旋溝が形成された螺旋筒部と、前記螺旋筒部の径方向内側に位置し、前記操作筒部に対する容器軸回りの回転が規制されるとともに、外周面に第2螺旋溝が形成された柱状部と、を備え、前記係合筒部の内周面には、前記螺旋筒部と前記係合筒部とが容器軸回りに相対回転したときに、前記第1螺旋溝に係合することで、前記係合筒部を上下動させる第1係合部が形成され、前記螺旋筒部の内周面には、前記柱状部と前記螺旋筒部とが容器軸回りに相対回転したときに、前記第2螺旋溝に係合することで前記螺旋筒部を前記柱状部に対して上下動させる第2係合部が形成され、前記操作筒部と前記スリーブとの間には、前記操作筒部が前記スリーブに対して容器軸回りに回転する際に前記スリーブの外周面に対して摺動する摺動片が配置されている。
【0007】
上記態様によれば、スリーブと操作筒部とを容器軸回りに相対回転させると、第1螺旋溝と第1係合部とが係合すること(第1動作)、あるいは、第2螺旋溝と第2係合部とが係合すること(第2動作)により、中皿部が上昇する。これにより、内容物が上方に繰り出されるので、使用者は内容物を使用することができる。
また、係合筒部は回動規制軸の径方向内側に位置し、螺旋筒部は係合筒部の径方向内側に位置し、柱状部は螺旋筒部の径方向内側に位置している。これにより、初期状態では、回動規制軸、係合筒部、螺旋筒部、および柱状部を上下方向において同じ位置に配置することが可能であり、繰出容器全体の上下方向における全長を小さくすることができる。そして、先述の第1動作および第2動作の両方によって中皿部が上昇するため、中皿部のストローク量を大きくすることができる。
さらに、中皿部、係合筒部、回動規制軸、およびスリーブの容器軸回りの相対回転は規制されている。これにより、操作筒部をスリーブに対して繰出方向に回転させたとき、中皿部はスリーブに対して回転しないまま上昇する。したがって、例えば内容物の先端が容器軸に対して傾斜している場合でも、内容物の先端の傾斜方向が変化しないまま内容物が上昇することとなり、操作性を向上させることができる。また、操作筒部とスリーブとが相対回転する際のがたつきを、摺動片によって抑制することができる。
【0010】
また、前記第2螺旋溝の上端部には、前記第2係合部の前記第2螺旋溝からの上方に向けた離脱を規制する規制突起が形成されていてもよい。
【0011】
この場合、螺旋筒部が柱状部に対して回転しながら所定量上昇すると、第2係合部が規制突起に当接する。したがって、それ以上の螺旋筒部の回転が規制される。これにより、例えば第2螺旋溝が上方に向けて開口している場合であっても、第2係合部が第2螺旋溝から上方に離脱することを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、上下方向における全長を小さくしながら、中皿部のストローク量を大きくすることが可能な繰出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る繰出容器の縦断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る繰出容器の縦断面図である。
【
図8】
図7の内側部材の単品図であり、(a)は柱状部の平面図、(b)は内側部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の繰出容器について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、繰出容器1Aは、操作部10と、螺旋筒部20と、中皿部材30と、回動規制軸40と、スリーブ50と、キャップ60と、を備えている。操作部10、螺旋筒部20、中皿部材30、回動規制軸40、およびキャップ60は、樹脂によって形成されている。なお、各部材の材質は適宜変更してもよい。
【0015】
中皿部材30は、内容物を保持する中皿部31を有している。中皿部31は有底筒状に形成されており、その内側には内容物の下端部が収容される。内容物としては、棒状の固形化粧料(例えば口紅、リップクリーム)、あるいは棒状の固形糊などを用いることができる。なお、内容物の種類は適宜変更可能である。
【0016】
(方向定義)
本実施形態では、操作部10、螺旋筒部20、中皿部材30、回動規制軸40、スリーブ50、およびキャップ60は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置する状態で配設されている。以下、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う方向を上下方向(容器軸方向)という。上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。上下方向における中皿部31の開口部側を上方といい、操作部10側を下方という。容器軸Oに沿う断面を縦断面といい、容器軸Oに直交する断面を横断面という。
【0017】
また、繰出容器1Aは、スリーブ50と操作部10とを容器軸O回りに相対回転させることで、内容物を上昇させてスリーブ50から上方に繰り出したり、繰り出された内容物を下降させてスリーブ50内に再び収容させたりすることができる。本実施形態では、容器軸O回りの回転方向のうち、内容物を上昇させる方向を繰出方向といい、内容物を下降させる方向を収容方向という。
【0018】
操作部10は、外側部材10aおよび内側部材10bが組み合わされることで構成されている。内側部材10bは、外側部材10aの径方向内側に位置している。
図2Aに示すように、外側部材10aは、上下方向に延びる操作筒部11と、操作筒部11から上方に向けて延びる上筒部12と、を有している。操作筒部11の下端部には、径方向外側に向けて窪む環状溝部11aが形成されている。環状溝部11aは、操作筒部11の内周面に、全周にわたって形成されている。操作筒部11の内周面のうち、環状溝部11aよりも上方に位置する部分には、複数の嵌合溝11bが形成されている。複数の嵌合溝11bは、上下方向に延びるとともに、周方向に間隔を空けて配置されている。
【0019】
上筒部12の外径は操作筒部11の外径よりも小さい。上筒部12の外周面には、複数の保持突起12aが形成されている。保持突起12aは、周方向に間隔を空けて配置されている。
図1に示すように、上筒部12には、有頂筒状のキャップ60の下端部が外嵌される。キャップ60が上筒部12に装着された状態では、保持突起12aがキャップ60の内周面に接触する。
【0020】
図2B、
図2Cに示すように、内側部材10bは、下板部13と、嵌合筒部14と、柱状部15と、複数の摺動片16と、を有している。下板部13は、平面視において円板状に形成されている。嵌合筒部14は、下板部13の外周縁から上方に向けて延びている。嵌合筒部14の下端には、径方向外側に向けて突出する環状突部14aが形成されている。環状突部14aは、嵌合筒部14の外周面に、全周にわたって形成されている。嵌合筒部14の外周面のうち、環状突部14aよりも上方に位置する部分には、複数の嵌合リブ14bが形成されている。複数の嵌合リブ14bは、上下方向に延びるとともに、周方向に間隔を空けて配置されている。
【0021】
嵌合リブ14bが嵌合溝11bに嵌合することで、内側部材10bの外側部材10aに対する容器軸O回りの回転が規制されている。また、環状溝部11aに環状突部14aが入り込むことで、内側部材10bの外側部材10aに対する上下動が規制されている。これらの構成により、内側部材10bが外側部材10aに固定されている(
図1参照)。なお、内側部材10bを外側部材10aに固定するための構成は適宜変更してもよい。
【0022】
図2B、
図2Cに示すように、柱状部15は、下板部13の径方向中央部から上方に向けて延びている。柱状部15の外周面には、第2螺旋溝15aが形成されている。本実施形態の第2螺旋溝15aは2条ネジ(多条ネジ)であるが、第2螺旋溝15aは1条ネジであってもよい。第2螺旋溝15aは上方に向けて開口している。
【0023】
複数の摺動片16は、嵌合筒部14から上方に向けて延びている。各摺動片は周方向に間隔を空けて配置されている。摺動片16同士の間には、スリット17が設けられている。摺動片16は、筒状部がスリット17によって分割された形状となっている。摺動片16は下端部(嵌合筒部14の上端)を起点として径方向に弾性変形可能となっている。
【0024】
摺動片16は、外径および内径が嵌合筒部14と同等である下部16bと、下部16bよりも上方に位置する上部16aと、を有している。上部16aの内径は下部16bの内径と同等であるが、上部16aの外径は下部16bの外径より小さい。上部16aの内周面には、径方向内側に向けて突出する突起16cが形成されている。突起16cはスリーブ50の下スリーブ部52の外周面に接している(
図1参照)。
【0025】
下部16bの内周面には、径方向外側に向けて窪む凹部16dが形成されている。凹部16d内に、スリーブ50の嵌合突部54が位置している。下部16bの外周面は操作筒部11の内周面に接している。
各摺動片16は、下スリーブ部52と操作筒部11との間に挟まれている。摺動片16により、スリーブ50と操作部10とが相対的に回転するときのがたつきが抑えられる。
【0026】
また、例えば、スリーブ50および操作部10が互いの摩擦係数が大きい材質により形成されている場合、仮に摺動片16を設けずにスリーブ50と操作部10とを摺動させると、摩擦による抵抗が使用者に伝わり、操作感の低下につながってしまう。これに対して、摩擦力を低減可能な摺動片16を設けることで、操作部10をスリーブ50に対して滑らかに回動させることができる。本実施形態では、摺動片16の操作部10に対する回転は規制されているため、摺動片16は、スリーブ50との間の摩擦係数が小さい材質により形成するとよい。
【0027】
螺旋筒部20は、柱状部15の外側に装着されている(
図1参照)。
図3A、
図3B、
図3Cに示すように、螺旋筒部20は、上下方向に延びる筒状に形成されている。螺旋筒部20の外周面には、第1螺旋溝21が形成されている。本実施形態の第1螺旋溝21は2条ネジ(多条ネジ)であるが、第1螺旋溝21は1条ネジであってもよい。第1螺旋溝21の下端は下方に向けて開口しているが、上端は上方に向けて開口していない。すなわち、第1螺旋溝21の上端は螺旋筒部20の上端より下方に位置している。
【0028】
螺旋筒部20の内周面には、径方向内側に向けて突出した第2係合部22が形成されている。第2係合部22は、第2螺旋溝15aの形状に合うように、容器軸Oに対して傾斜して延びている。本実施形態では、第2螺旋溝15aが2条ネジであるため、これに合わせて、螺旋筒部20は2つの第2係合部22を有している。2つの第2係合部22は周方向に間隔を空けて配置されている。
【0029】
螺旋筒部20には、上下方向に延びる2つのスリット23が形成されている。スリット23は、螺旋筒部20の下端から、螺旋筒部20の上下方向における中央部にかけて形成されている。スリット23と第2係合部22とは、周方向において異なる位置に配置されている。
螺旋筒部20が柱状部15に対して容器軸O回りに相対的に回転すると、第2係合部22と第2螺旋溝15aとが係合することで、螺旋筒部20が上下に移動する。
【0030】
図4A、
図4B、
図4Cに示すように、中皿部材30は、中皿部31と、係合筒部32と、を有している。本実施形態の中皿部31および係合筒部32は一体に形成されており、これによって、係合筒部32は中皿部31に固定されている。なお、中皿部31と係合筒部32とを別体に形成し、これらを互いに固定してもよい。
【0031】
中皿部31の内周面には、上下方向に延びる複数の保持リブ31aが、周方向に間隔を空けて形成されている。保持リブ31aにより、内容物が中皿部31内により確実に固定される。係合筒部32は、中皿部31の下面から下方に向けて延びている。係合筒部32の外径は中皿部31の外径より小さい。
【0032】
係合筒部32は、螺旋筒部20の外側に装着されている(
図1参照)。
図4Bに示すように、係合筒部32の外周面には、径方向外側に向けて突出する2つ(複数)の規制リブ33が形成されている。2つの規制リブ33は、周方向に間隔を空けて配置されており、係合筒部32の全長にわたって上下方向に延びている。
【0033】
係合筒部32には、2つ(複数)の切込部34が形成されている。2つの切込部34は、係合筒部32を径方向に貫通しており、周方向に間隔を空けて配置されている。2つの切込部34は、係合筒部32の下端から、係合筒部32の上下方向における中央部まで、上下方向に延びている。
【0034】
係合筒部32の外周面には4つの第1規制部35が形成されている。4つの第1規制部35は、係合筒部32の下端部において、係合筒部32の外周面から径方向外側に向けて突出しており、周方向に間隔を空けて配置されている。第1規制部35は周方向に沿って延びている。第1規制部35の上面は、容器軸Oに略直交する平面内に位置している。第1規制部35の下面は、径方向内側に向かうに従って下方に向かうように傾斜している。第1規制部35の周方向における位置は、規制リブ33および切込部34の周方向における位置と異なっている。なお、規制リブ33、切込部34、および第1規制部35の数は適宜変更可能である。
【0035】
係合筒部32の下端部における内周面には、径方向内側に向けて突出する第1係合部36が形成されている。第1係合部36は、第1螺旋溝21の形状に合うように容器軸Oに対して傾斜して延びている。本実施形態では、第1螺旋溝21が2条ネジであるため、これに合わせて、係合筒部32は2つの第1係合部36を有している。2つの第1係合部36は周方向に間隔を空けて配置されている。
【0036】
係合筒部32と螺旋筒部20とが容器軸O回りに相対的に回転すると、第1係合部36と第1螺旋溝21とが係合することで、係合筒部32が螺旋筒部20に対して上昇または下降する。このとき、中皿部31は係合筒部32に固定されているため、中皿部31も上昇または下降する。
【0037】
図5A、
図5Bに示すように、回動規制軸40は、上下方向に延びる筒状に形成されている。回動規制軸40の内周面には、径方向外側に向けて窪む2つの第1規制溝41と、径方向内側に突出する2つの第2規制部42と、が形成されている。2つの第1規制溝41は、上下方向に沿って延びており、回動規制軸40の全長にわたって形成されている。2つの第1規制溝41は、周方向に間隔を空けて配置されている。
【0038】
2つの第2規制部42は、回動規制軸40の上端部に配置されており、周方向に沿って延びている。第2規制部42の下面は、容器軸Oに略直交する平面内に位置している。第2規制部42の上面は、径方向内側に向かうに従って下方に向かうように傾斜している。
【0039】
回動規制軸40の外周面には、径方向内側に向けて窪む2つの第2規制溝43が形成されている。2つの第2規制溝43は、上下方向に沿って延びており、周方向に間隔を空けて配置されている。第2規制溝43の上端は上方に向けて開口しているが、下端は下方に向けて開口していない。すなわち、第2規制溝43の下端は回動規制軸40の下端よりも上方に位置している。第1規制溝41および第2規制溝43は、周方向において異なる位置に形成されている。なお、第1規制溝41、第2規制部42、および第2規制溝43の数は適宜変更可能である。
【0040】
回動規制軸40は、係合筒部32の外側に装着されている(
図1参照)。規制リブ33が第1規制溝41内に入り込むことで、係合筒部32の回動規制軸40に対する容器軸O回りの回転が規制されている。係合筒部32が回動規制軸40に対して上下動するとき、規制リブ33と第1規制溝41とが上下に摺動する。また、第1規制部35と第2規制部42とは上下方向において対向している。係合筒部32が回動規制軸40に対して所定量上昇すると、第1規制部35が第2規制部42に下方から当接する。これにより、中皿部材30の所定量を超えた上昇が規制される。
【0041】
図1に示すように、スリーブ50は、全体として容器軸Oと同軸の円筒状に形成されている。スリーブ50は、上スリーブ部51と、下スリーブ部52と、を有している。上スリーブ部51は、中皿部31を径方向外側から囲っている。上スリーブ部51の上端面は、容器軸Oに対して傾斜している。上スリーブ部51の内周面は、全域にわたって平滑に形成されている。これにより、中皿部31および内容物がスリーブ50に対して上下動するときに、内容物が削れてしまうのを抑制することができる。
【0042】
下スリーブ部52は、上スリーブ部51の下方に位置している。下スリーブ部52の内径および外径は、上スリーブ部51の内径および外径よりも小さい。下スリーブ部52は、回動規制軸40を径方向外側から囲っている。下スリーブ部52には、規制突部53と、嵌合突部54と、が形成されている。嵌合突部54は、下スリーブ部52の外周面から径方向外側に向けて突出しており、平面視で環状に形成されている。嵌合突部54は、操作部10の凹部16d内に嵌合している。
【0043】
規制突部53は、下スリーブ部52の内周面から径方向内側に向けて突出している。規制突部53は上下方向に沿って延びている。規制突部53は、周方向に間隔を空けて2つ形成されている。
【0044】
規制突部53が回動規制軸40の第2規制溝43内に入り込むことで、回動規制軸40のスリーブ50に対する容器軸O回りの回転が規制されている。回動規制軸40がスリーブ50に対して上下動するとき、規制突部53と第2規制溝43とが上下に摺動する。第2規制溝43の下端は下方に開口していないため、回動規制軸40がスリーブ50に対して所定量上昇すると、第2規制溝43の下端の内面が規制突部53に下方から当接する。これにより、回動規制軸40の所定量を超えた上昇が規制される。
【0045】
本実施形態のスリーブ50は金属により形成されており、全体として厚みが略一定となっている。ただし、スリーブ50は樹脂製であってもよい。なお、スリーブ50を樹脂により形成した場合でも、表面に加飾を行って外観を良好にすることができる。また、特に樹脂製のスリーブ50に蒸着を行うことで、金属光沢を付与し、高級感を与えることもできる。
【0046】
次に、以上のように構成された繰出容器1Aの作用について説明する。
【0047】
繰出容器1Aを使用する際には、まず、キャップ60を操作部10から取り外す。次に、例えばスリーブ50および操作部10を両手でそれぞれ把持することなどにより、操作部10をスリーブ50に対して容器軸O回りに回転させる。このとき、外側部材10aと内側部材10bとの相対回転は、嵌合リブ14bおよび嵌合溝11bによって規制されているため、外側部材10aおよび内側部材10bが一体となって回転する。また、スリーブ50と回動規制軸40との相対回転は規制突部53および第2規制溝43によって規制され、回動規制軸40と中皿部材30との相対回転は規制リブ33および第1規制溝41によって規制されている。
【0048】
上記構成によれば、操作部10とスリーブ50とを相対回転させると、柱状部15および螺旋筒部20が一体となって係合筒部32に対して回転するか、あるいは、柱状部15が螺旋筒部20に対して回転するか、の少なくとも一方の動作が生じる。
【0049】
柱状部15および螺旋筒部20が一体となって係合筒部32に対して繰出方向に相対回転する場合には、第1螺旋溝21と第1係合部36とが係合することで、係合筒部32(中皿部材30)が螺旋筒部20に対して上昇する。このように、螺旋筒部20と係合筒部32とが繰出方向に相対回転することで中皿部材30が上昇する動作を、本明細書では「第1動作」という。
【0050】
柱状部15と螺旋筒部20とが繰出方向に相対回転する場合には、第2螺旋溝15aと第2係合部22とが係合することで、螺旋筒部20が柱状部15に対して上昇する。このとき、第1螺旋溝21の内面が第1係合部36を上方に押し上げることで、中皿部材30も上昇する。このように、柱状部15と螺旋筒部20とが繰出方向に相対回転することで中皿部材30が上昇する動作を、本明細書では「第2動作」という。
【0051】
つまり、スリーブ50と操作部10とを繰出方向に相対回転させると、第1動作および第2動作の少なくとも一方により中皿部材30が上昇し、これによって内容物がスリーブ50から上方に繰り出される(
図6参照)。第1動作および第2動作のうちどちらが生じるかは、各部材間の摩擦抵抗等によって変動しうるが、いずれにしても内容物が繰り出されるため、使用者は内容物を使用することができる。なお、第1動作および第2動作の両方が同時に生じる場合もある。
【0052】
また、中皿部材30がスリーブ50に対して所定量上昇すると、第1規制部35と第2規制部42とが当接し、規制突部53が第2規制溝43の下端の内面に当接する。したがって、中皿部材30の所定量を超えた上昇が規制される。このように、繰出容器1Aは、第1動作および第2動作のどちらが先に生じたとしても、中皿部材30のスリーブ50に対する最上昇位置は変化しないように構成されている。
【0053】
また、本実施形態では、柱状部15と螺旋筒部20とが相対回転する際の摩擦力が、螺旋筒部20と係合筒部32とが相対回転する際の摩擦力よりも大きくなっている。これにより、第2動作よりも第1動作のほうが優先的に生じる。したがって、例えば第2動作が先に生じて、第2螺旋溝15aの上端開口から第2係合部22が上方に離脱してしまうことが抑制される。
【0054】
上記した摩擦力の大小関係は、例えば第1螺旋溝21と第2螺旋溝15aとで溝の深さを異ならせたり、第1係合部36と第2係合部22とで突出量を異ならせたりすることで実現できる。すなわち、螺旋溝が浅いほど、あるいは係合部の突出量が大きいほど、螺旋溝と係合部とが摺動する際の摩擦力が大きくなる。したがって、第2螺旋溝15aを第1螺旋溝21より浅く形成したり、第2係合部22の突出量を第1係合部36の突出量より大きくしてもよい。また、第2螺旋溝15aの深さを下方に向かうに従って大きくして、第2動作における初期の摩擦力だけを大きくして、第1動作が第2動作より先に生じるようにしてもよい。
【0055】
なお、第1動作の後で第2動作が生じる場合には、第2係合部22が第2螺旋溝15aの上端に到達するよりも前に、第1規制部35と第2規制部42とが当接することおよび規制突部53が第2規制溝43の下端に到達することで、中皿部材30の上昇が規制される。中皿部材30の上昇が規制された状態では、操作部10とスリーブ50との繰出方向の相対回転も規制される。したがって、第1動作の後で第2動作が生じる場合は第2係合部22が第2螺旋溝15aから離脱しない。
【0056】
詳細な説明は省略するが、スリーブ50と操作部10とを収容方向に相対回転させると、第2螺旋溝15aと第2係合部22との係合、および第1螺旋溝21と第1係合部36との係合により、中皿部材30を初期状態の位置(
図1)まで下降させることができる。これにより、内容物を再びスリーブ50内に収容することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の繰出容器1Aは、内容物を保持する中皿部31と、操作筒部11と、操作筒部11から上方に向けて延び、中皿部31を径方向外側から囲うスリーブ50と、スリーブ50に対する容器軸O回りの回転が規制された回動規制軸40と、回動規制軸40に対する容器軸O回りの回転が規制されるとともに、中皿部31に固定された係合筒部32と、外周面に第1螺旋溝21が形成された螺旋筒部20と、操作筒部11に対する容器軸O回りの回転が規制されるとともに、外周面に第2螺旋溝15aが形成された柱状部15と、を備えている。
【0058】
そして、係合筒部32の内周面には、螺旋筒部20と係合筒部32とが容器軸O回りに相対回転したときに、第1螺旋溝21に係合することで、係合筒部32を上下動させる第1係合部36が形成され、螺旋筒部20の内周面には、柱状部15と螺旋筒部20とが容器軸O回りに相対回転したときに、第2螺旋溝15aに係合することで螺旋筒部20を柱状部15に対して上下動させる第2係合部22が形成されている。
【0059】
このような構成によれば、スリーブ50と操作筒部11とを容器軸O回りに相対回転させると、第1螺旋溝21と第1係合部36とが係合すること(第1動作)、あるいは、第2螺旋溝15aと第2係合部22とが係合すること(第2動作)により、中皿部31が上昇する。これにより、内容物が上方に繰り出されるので、使用者は内容物を使用することができる。
【0060】
また、係合筒部32は回動規制軸40の径方向内側に位置し、螺旋筒部20は係合筒部32の径方向内側に位置し、柱状部15は螺旋筒部20の径方向内側に位置している。これにより、初期状態(
図1)では、回動規制軸40、係合筒部32、螺旋筒部20、および柱状部15を上下方向において同じ位置に配置することが可能であり、繰出容器1A全体の上下方向における全長を小さくすることができる。そして、先述の第1動作および第2動作の両方によって中皿部31が上昇するため、中皿部31のストローク量を大きくすることができる。
【0061】
さらに、中皿部31、係合筒部32、回動規制軸40、およびスリーブ50の容器軸O回りの相対回転は規制されている。これにより、操作筒部11をスリーブ50に対して繰出方向に回転させたとき、中皿部31はスリーブ50に対して回転しないまま上昇する。したがって、例えば内容物の先端が容器軸Oに対して傾斜している場合でも、内容物の先端の傾斜方向が変化しないまま内容物が上昇することとなり、操作性を向上させることができる。
【0062】
また、操作筒部11とスリーブ50との間には、操作筒部11がスリーブ50に対して容器軸O回りに回転する際にスリーブ50の外周面に対して摺動する摺動片16が形成されている。この摺動片16により、操作筒部11とスリーブ50とが相対回転する際のがたつきを抑えることができる。また、摺動片16が内側部材10bに形成されているため、部品点数の増加を抑え、コスト低減を図ることができる。
【0063】
また、摺動片16には、径方向内側に突出してスリーブ50の外周面に接する突起16cが形成されている。これにより、摺動片16とスリーブ50との接触面積が小さくなり、摺動片16とスリーブ50とをよりスムーズに摺動させることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、内側部材10bおよび螺旋筒部20の形状が第1実施形態と異なる。
【0065】
図7に示すように、本実施形態の繰出容器1Bでは、柱状部15に、規制突起15bおよび肉抜き部15cが形成されている。規制突起15bは、2つの第2螺旋溝15aの上端部の内側にそれぞれ形成されている。
図8(a)に示すように、規制突起15bの周方向における幅は、径方向外側に向かうに従って小さくなっている。言い換えると、規制突起15bの側面(周方向を向く面)は、上下方向から見たときに傾斜している。規制突起15bの径方向外端は、柱状部15の外周面よりも径方向内側に位置している。
図8(b)に示すように、規制突起15bは上下方向に沿って延びている。
【0066】
図7に示すように、肉抜き部15cは、柱状部15の上端面から下方に向けて窪んでいる。肉抜き部15cの内径は、下方に向かうに従って小さくなっている。肉抜き部15cは、縦断面視において台形状に形成されている。
また、本実施形態の螺旋筒部20にはスリット23が形成されていない。
【0067】
本実施形態の場合、螺旋筒部20が柱状部15に対して繰出方向に回転しながら所定量上昇すると、第2係合部22が規制突起15bに当接する。したがって、それ以上の螺旋筒部20の繰出方向に向けた回転が規制され、第2係合部22が第2螺旋溝15aから上方に離脱することが抑制される。このため、第1動作より第2動作が先に生じてもよく、第1実施形態のように、摩擦の大小関係を設定しなくてもよい。
【0068】
また、本実施形態の螺旋筒部20にはスリット23が形成されていない。これにより、螺旋筒部20が変形しにくくなり、変形によって第2係合部22が規制突起15bを上方に乗り越える現象を抑制できる。
【0069】
なお、内側部材10bを射出成形により形成する場合、型抜きの際に、第2螺旋溝15aと同形状の螺旋状突起を有する金型(コア)を回転させる。金型の螺旋状突起が規制突起15bを乗り越えるとき、肉抜き部15cが形成されていることで柱状部15の上端が変形しやすくなり、型抜きしやすくなっている。
【0070】
また、第2実施形態の繰出容器1Bは、摩擦力の大小関係を用いない点で、第1実施形態の繰出容器1Aよりも動作を安定させることができる。一方、繰出容器1Aは繰出容器1Bと比較して第2螺旋溝15aの内側に規制突起15bを形成しないため、内側部材10bを射出成形によって容易に成形することができる。
【0071】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0072】
例えば、第2係合部22が第2螺旋溝15aから脱離しない構成として、第1実施形態および第2実施形態とは異なる構成を採用してもよい。具体的には、第2螺旋溝15aの上端が開口していない構成を採用してもよい。また、第2螺旋溝15aの上端が開口している場合であっても、第2動作が完了する前に第1動作が完了する構成であればよい。
【0073】
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1A、1B…繰出容器 10…操作部 11…操作筒部 15…柱状部 15a…第2螺旋溝 15b…規制突起 16…摺動片 20…螺旋筒部 21…第1螺旋溝 22…第2係合部 31…中皿部 32…係合筒部 36…第1係合部 40…回動規制軸