(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】管状体の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B26D 3/16 20060101AFI20230609BHJP
B29C 51/26 20060101ALI20230609BHJP
B26D 1/28 20060101ALI20230609BHJP
B26D 5/08 20060101ALI20230609BHJP
B23D 21/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B26D3/16 D
B29C51/26
B26D1/28 A
B26D1/28 D
B26D1/28 H
B26D5/08 Z
B23D21/00 510A
(21)【出願番号】P 2019181274
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】長屋 宏
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0041343(US,A1)
【文献】特開昭63-245390(JP,A)
【文献】特開昭63-216617(JP,A)
【文献】特開2015-193185(JP,A)
【文献】特開2017-030133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/16
B29C 51/26
B26D 1/28
B26D 5/08
B23D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞管の閉塞端を切断して管状体を製造する製造装置であって、
回転軸線回りに離間するよう配置されると共に回転軸線側の端部に切断刃を有する複数のカッターと、
前記切断刃を回転軸線側に向けた姿勢で前記複数のカッターを回転軸線回りに回転移動する回転部と、
前記複数のカッターを前記回転軸線に対して近接および離間するように進退移動する進退移動部とを備え、
前記複数のカッターで囲まれる内側に前記閉塞管を保持した状態で、前記カッターを回転軸線回りに回転移動しつつ回転軸線に近接するように前進移動させて当該閉塞管の閉塞端を切断するようにした
ことを特徴とする管状体の製造装置。
【請求項2】
前記カッターを回転軸線回りに等間隔に配置して、
前記カッターの配置間隔角度に対し、回転移動の開始から前記閉塞管の筒壁を前記切断刃が貫通するまでの回転角度を加算した角度以上で前記カッターを回転移動するようにしたことを特徴とする請求項1記載の管状体の製造装置。
【請求項3】
前記カッターは、前記回転部により回転初期位置と回転切断位置との間で回転軸線回りに正逆回転移動するよう構成され、
前記カッターを回転初期位置から回転切断位置に向けて回転移動しつつ前進移動して前記閉塞管の閉塞端を切断すると共に、前記切断刃を筒壁の外側まで後退移動した後に前記カッターを回転初期位置に向けて回転移動するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の管状体の製造装置。
【請求項4】
前記カッターは、前記回転部により回転初期位置と回転切断位置との間で回転軸線回りに正逆回転するよう構成され、
前記カッターを回転初期位置から回転切断位置に向けて回転移動しつつ前進移動して前記閉塞管の閉塞端を切断すると共に、前記切断刃が筒壁の内側に突き出た状態で前記カッターを回転初期位置に向けて回転移動した後に当該筒壁の外側に前記切断刃を後退移動するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の管状体の製造装置。
【請求項5】
閉塞管の閉塞端を切断して管状体を製造する製造方法であって、
前記閉塞管の筒壁の外面にカッターの先端に設けた切断刃が接する状態で、当該カッターを筒壁の回りを回転移動させながら切断刃が筒壁を貫通するよう前進移動させることで、当該閉塞管の閉塞端を切断して端部が開口した管状体を製造する
ことを特徴とする管状体の製造方法。
【請求項6】
回転軸線回りに等間隔に配置した前記カッターを、当該カッターの配置間隔角度に対し、前記カッターの回転開始から前記閉塞管の筒壁を前記切断刃が貫通するまでの回転角度を加算した角度以上で回転移動するようにしたことを特徴とする請求項5記載の管状体の製造方法。
【請求項7】
前記閉塞管の閉塞端を切断した後に前記切断刃を筒壁の外側まで後退移動し、その後に前記カッターを回転初期位置に戻すように回転移動するようにしたことを特徴とする請求項5または6記載の管状体の製造方法。
【請求項8】
前記閉塞管の閉塞端を切断した後に前記切断刃が筒壁の内側に突き出た状態で前記カッターを回転初期位置に戻すように回転移動し、その後に前記切断刃を筒壁の外側まで後退移動するようにしたことを特徴とする請求項5または6記載の管状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、端部が閉塞した閉塞管から端部が開口した管状体を製造する製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の工業製品や住宅等の建築物には、空気等の流体を流通させるホース状の管状体が様々な場所に設けられており、例えば自動車ではエンジン吸気用のエアクリーナホースなどに管状体が利用されている。管状体は、その取付場所に合わせて適宜に蛇行した屈曲状の中空成形体であり、ダイレクトブローや、インジェクションブロー、サクションブローなどのブロー成形により成形される。このサクションブローは、円筒状のパリソンを、型閉じした金型の一方開口端からキャビティ内に挿入すると共に金型の他方端からキャビティ内のエアを吸引して金型内に配して、ブロー成形する技術であり、金型のキャビティ形状に応じて屈曲した管状体を容易に形成できる利点がある。
【0003】
ブロー成形により形成されたブロー成形品は端部が塞がっており、そのままでは管状体として利用できないことから、この塞がった端部(捨て袋)を切断して取り除くようになっている。このような捨て袋を切断する装置としては、例えば特許文献1のように、捨て袋を有するブロー成形品を所定位置に保持した状態で、丸鋸のような回転カッターをブロー成形品の外周方向に公転させて捨て袋を切断する装置や、特許文献2のように、捨て袋を有するブロー成形品を所定位置に保持した状態で、下端に刃先を有する板状刃物を上方から押し当てて捨て袋を切断する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平5-43469号公報
【文献】特開平5-237793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の特許文献1の装置のように、ブロー成形品の捨て袋を回転カッターで切断する場合は、その切断過程で生じた切削屑の内部への進入を避けられない。このような切削屑が管状体の内部に残ると、流体が流通する過程で切削屑が飛翔して管状体の接続先に悪影響を及ぼす要因となることから、捨て袋の切断後にエアブローや水洗などの除去工程を設けて管状体の内部から切削屑を除去する必要がある。しかしながら、管状体が屈曲形状や管の途中に蛇腹状部分を有するような形状の場合には、屈曲部分や蛇腹状部分に切削屑が引っ掛かってエアブローや水洗等により除去するのに手間が掛かる問題がある。更に、回転カッターによる切断時の摩擦熱の影響で軟化した切削屑が管状体の内部に付着して硬化するため、切削屑を完全に取り除くことは容易ではない。また、このような切削屑による問題の他に、回転カッターの回転に伴って切断途中で捨て袋が振れ動くことにより、切断面が斜めになったり波打つなどの歪みが生じ、精度の高い切断が困難で、特に切断の終末段階に至るにつれてその歪みが顕著になる。このような切断面の歪みの原因となる捨て袋の振れ動きは、捨て袋の端部を当て板などで押さえることで抑制することが可能であるが、回転カッターの切断面への当接圧が増大し、切断時の摩擦熱の影響で切削屑が軟化し易くなる。
【0006】
一方で、特許文献2の装置のように、ブロー成形品の上方から板状刃物を押し当てて捨て袋を押し切りして切断する場合は、その切断過程で切削屑の発生を防止できるものの、切断圧力が一方向から作用することにより大きく弾性変形する。このため、回転カッターによる切断と同様に、切断面が斜めになったり波打つなどの歪みが生じ、精度の高い切断が困難であった。特に、軟質の樹脂で形成したブロー成形品では、切断面の歪みが顕著になる。
【0007】
すなわち本発明は、閉塞管の閉塞端を切断する際の切削屑の発生や切断面の歪みを抑制した管状体の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、
閉塞管の閉塞端を切断して管状体を製造する製造装置であって、
回転軸線回りに離間するよう配置されると共に回転軸線側の端部に切断刃を有する複数のカッターと、
前記切断刃を回転軸線側に向けた姿勢で前記複数のカッターを回転軸線回りに回転移動する回転部と、
前記複数のカッターを前記回転軸線に対して近接および離間するように進退移動する進退移動部とを備え、
前記複数のカッターで囲まれる内側に前記閉塞管を保持した状態で、前記カッターを回転軸線回りに回転移動しつつ回転軸線に近接するように前進移動させて当該閉塞管の閉塞端を切断するようにしたことを要旨とする。
このように、カッターを回転軸線回りに回転移動しつつ回転軸線に近接するように前進移動することで、閉塞管の閉塞端の切断に際し切削屑の発生を抑制することができる。そして、切削屑の除去作業を簡略化したり省略することが可能になる。また、切断時の捨て袋の振れ動きを抑制することができるから、切断後の切断面の歪みを抑制できる。更に、複数のカッターを回転軸線回りに回転移動して閉塞管を切断することで、切断時の摩擦熱を抑制して切削屑の軟化を防止できる。また複数のカッターを突き当てた状態で筒壁の回りを回転移動することで、切断圧力を分散して捨て袋の弾性変形を抑制でき、歪みの少ない切断面にすることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記カッターを回転軸線回りに等間隔に配置して、
前記カッターの配置間隔角度に対し、回転移動の開始から前記閉塞管の筒壁を前記切断刃が貫通するまでの回転角度を加算した角度以上で前記カッターを回転移動するようにしたことを要旨とする。
このように、回転移動の開始から閉塞管の筒壁をカッター端部の切断刃が貫通するまでの間に筒壁に形成される非貫通状態の溝部分を、当該溝部分を形成したカッターに対して回転移動方向の後側に位置する後続のカッターで切断することができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記カッターは、前記回転部により回転初期位置と回転切断位置との間で回転軸線回りに正逆回転移動するよう構成され、
前記カッターを回転初期位置から回転切断位置に向けて回転移動しつつ前進移動して前記閉塞管の閉塞端を切断すると共に、前記切断刃を筒壁の外側まで後退移動した後に前記カッターを回転初期位置に向けて回転移動するようにしたことを要旨とする。
このように、閉塞管の閉塞端を切断した後にカッター端部の切断刃を筒壁の外側まで後退移動させ、その後にカッターを回転初期位置に向けて回転移動することで、切断面に切断刃が触れるのを防止でき、カッターを回転初期位置に戻す間に切削屑が発生するのを防ぐことができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、
前記カッターは、前記回転部により回転初期位置と回転切断位置との間で回転軸線回りに正逆回転するよう構成され、
前記カッターを回転初期位置から回転切断位置に向けて回転移動しつつ前進移動して前記閉塞管の閉塞端を切断すると共に、前記切断刃が筒壁の内側に突き出た状態で前記カッターを回転初期位置に向けて回転移動した後に当該筒壁の外側に前記切断刃を後退移動するようにしたことを要旨とする。
このように、閉塞管の閉塞端を切断した後にカッター端部の切断刃が筒壁の内側に突き出た状態で回転初期位置に向けて回転移動し、その後に当該筒壁の外側に切断刃を後退移動することで、非貫通の溝が残ったような場合であっても回転初期位置に向けて回転移動する過程で残った非貫通状態の溝を切断刃で切断することが可能になる。
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項5に係る発明は、
閉塞管の閉塞端を切断して管状体を製造する製造方法であって、
前記閉塞管の筒壁の外面にカッターの先端に設けた切断刃が接する状態で、当該カッターを筒壁の回りを回転移動させながら切断刃が筒壁を貫通するよう前進移動させることで、当該閉塞管の閉塞端を切断して端部が開口した管状体を製造する
ことを要旨とする。
このように、カッターを回転軸線回りに回転移動しつつ回転軸線に近接するように前進移動することで、閉塞管の閉塞端の切断に際し切削屑の発生を抑制することができる。そして、切削屑の除去作業を簡略化したり省略することが可能になる。また、切断時の捨て袋の振れ動きが抑制することができるから、切断後の切断面の歪みを抑制できる。更に、複数のカッターを回転軸線回りに回転移動して閉塞管を切断することで、切断時の摩擦熱を抑制して切削屑の軟化を防止できる。また複数のカッターを突き当てた状態で筒壁の回りを回転移動することで、切断圧力を分散して捨て袋の弾性変形を抑制でき、歪みの少ない切断面にすることができる。
【0013】
請求項6に係る発明は、
回転軸線回りに等間隔に配置した前記カッターを、当該カッターの配置間隔角度に対し、前記カッターの回転開始から前記閉塞管の筒壁を前記切断刃が貫通するまでの回転角度を加算した角度以上で回転移動するようにしたことを要旨とする。
このように、回転移動の開始から閉塞管の筒壁をカッター端部の切断刃が貫通するまでの間に筒壁に形成される非貫通状態の溝部分を、当該溝部分を形成したカッターに対して回転移動方向の後側に位置する後続のカッターで切断することができる。
【0014】
請求項7に係る発明は、
前記閉塞管の閉塞端を切断した後に前記切断刃を筒壁の外側まで後退移動し、その後に前記カッターを回転初期位置に戻すように回転移動するようにしたことを要旨とする。
このように、閉塞管の閉塞端を切断した後にカッター端部の切断刃を筒壁の外側まで後退移動させ、その後にカッターを回転初期位置に向けて回転移動することで、切断面に切断刃が触れるのを防止でき、カッターを回転初期位置に戻す間に切削屑が発生するのを防ぐことができる。
【0015】
請求項8に係る発明は、
前記閉塞管の閉塞端を切断した後に前記切断刃が筒壁の内側に突き出た状態で前記カッターを回転初期位置に戻すように回転移動し、その後に前記切断刃を筒壁の外側まで後退移動するようにしたことを要旨とする。
このように、閉塞管の閉塞端を切断した後にカッター端部の切断刃が筒壁の内側に突き出た状態で回転初期位置に向けて回転移動し、その後に当該筒壁の外側にカッターを後退移動することで、非貫通状態の溝が残ったような場合であっても回転初期位置に向けて回転移動する過程で残った非貫通の溝を切断刃で切断することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、閉塞した端部を切断する際の切削屑の発生を防ぎつつ、管状体の切断面の歪みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る管状体の製造装置を概略で示す側面図であって、(a)は保持部材が退避位置にあると共にカッターが待機位置にある状態を示し、(b)は保持部材が切断位置にあると共にカッターが貫通位置にある状態を示す。
【
図4】切断部を示す正面図であって、(a)はカッターが待機位置にある状態を示し、(b)はカッターが貫通位置にある状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る管状体の製造装置および製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。本実施例では、エアクリーナホースとして好適に使用可能な管状体を製造する構成を例示して説明する。この管状体は、合成樹脂やゴムを素材として従来公知のサクションブローなどの各種のブロー成形により成形され、本発明に係る製造装置および製造方法による加工前の状態で、端部が塞がれた状態のブロー成形品50であって、本発明に係る製造装置および製造方法により閉塞した端部(以下、「捨て袋52」という)を切断することで端部が開口した管状体となる。
【実施例】
【0019】
図1に示すように、実施例に係る管状体の製造装置10は、ブロー成形品50を保持する保持装置12で保持したブロー成形品50の閉塞端部(捨て袋52)を切断装置30で切断するよう構成されている。保持装置12は、ブロー成形品50の筒壁50aを下側から支える第1保持部材14と、ブロー成形品50の筒壁50aを上側から支える第2保持部材16とを備えており、当該第1保持部材14に対して一側部に設けたヒンジ18(
図2参照)を介して第2保持部材16が開閉可能に連結されると共に、他側部側に第2保持部材16を閉じた状態で保持するロック手段20a,20bが設けられている。このロック手段の構成としては、各種の構成を採用可能であるが、この例では、第1保持部材14の側面に突起状の第1の係合部20aが設けられると共に、第2保持部材16の側面に当該第1の係合部20aを挿脱可能な孔を備えた第2の係合部20bが設けられて、当該第1の係合部20aおよび第2の係合部20bを係合することで第1保持部材14と第2保持部材16とが閉じた状態で保持され、係合を解除することで第1保持部材14に対して第2保持部材16を開放し得るようになっている。
【0020】
また、
図2に示すように、第1保持部材14には、上方に開口する半円状の第1凹部14aが形成されると共に、第2保持部材16には、閉じた状態で下方に開口する半円状の第2凹部16aが形成されており、当該第1凹部14aおよび第2凹部16aによりブロー成形品50の筒壁50aの外周に合わせた円形の開口を形成するようになっている。ここで、本実施形態の製造装置10で捨て袋52が切断されるブロー成形品50には、捨て袋52を切断する切断予定位置に合わせて環状突部50bが筒壁50aから突出するように形成されており、第1凹部14aおよび第2凹部16aの内周面に当該環状突部50bが嵌合可能な位置合わせ部としての環状段差部14b,16b(
図3参照)が夫々形成されている。すなわち、第2保持部材16を開放した状態で第1凹部14aの環状段差部14bにブロー成形品50の環状突部50bを嵌め込み、第2保持部材16を閉じるようにして第2凹部16aの環状段差部16bに環状突部50bを嵌め込むことで、
図1に示すように捨て袋52が突き出るようにブロー成形品50が第1保持部材14および第2保持部材16の間に保持される。
【0021】
このブロー成形品50を保持する保持部材14,16は、移動手段24により切断装置30に対して近接および離間するように移動可能に構成されている。具体的に、実施例では、移動手段24としてエアシリンダを用いており、第1保持部材14に連結した支持部材22がエアシリンダのシリンダロッドに連結されている。すなわち、保持したブロー成形品50の捨て袋52を切断装置30で切断可能な切断位置と、当該切断位置から退避した退避位置とに保持部材14,16を移動手段24により移動可能になっている。この実施例では、第1凹部14aおよび第2凹部16aにより形成される円形の開口の中心線方向CR1に保持部材14,16を移動するようになっている。なお、保持部材14,16の移動手段24としては、エアシリンダに限られるものではなく、油圧シリンダ等のその他の形式のシリンダやモータ等の従来公知の手段を採用可能であり、移動手段24の動作により保持部材14,16を切断位置と退避位置に移動可能に構成すればよい。
【0022】
また切断装置30は、ブロー成形品50の捨て袋52を切断するカッター40を備えた切断部32と、当該切断部32を回転可能に支持する回転支持部42とを備えている。切断部32は、切断部32の本体部34の前端側に回転軸線CR(切断部32の回転中心)側に対して近接および離間するように直線移動可能な複数の移動体(進退移動部)36を放射状に備えており、当該本体部34の内部に備えた図示しない作動機構により各移動体36が連動して同期的に移動するようになっている。ここで、実施例では、3つの移動体36を回転軸線CR回りに等間隔(すなわち120°間隔)で配置してある。なお、切断部32の作動機構としては特に限定されるものではないが、本実施例では、エアシリンダにより移動体36を移動するよう構成されており、このような機構としては例えば特開2001?105375号公報に開示されるように従来公知の機構を採用することができる。なお、移動体36を移動する機構として、モータ等により電気的に作動するようにしてもよい。
【0023】
そして、各移動体36の前面に前方へ突出する台部材38が取り付けられており、当該台部材38の前端にカッター40が取り付けられている。すなわち、実施例の切断装置30は、複数(3つ)のカッター40を回転軸線回りに等間隔(120°間隔)で配置されており、各カッター40の回転軸線CR側の端部(先端)に切断刃40aが設けられている。すなわち、台部材38によりカッター40を本体部34の前面から離間位置するよう構成され、ブロー成形品50を切断位置に移動した際に、本体部34に干渉することなく複数のカッター40で囲まれた内側に捨て袋52を臨ませ得るようになっている。そして、カッター40で囲まれた内側に捨て袋52が臨む状態において、捨て袋52の切断予定位置の外側にカッター40の切断刃40aが位置付く待機位置(
図1(a)、
図4(a)参照)と、当該待機位置から回転軸線CR側に近接してブロー成形品50(捨て袋52)の筒壁50aの内面側に切断刃40aが突き出る貫通位置(
図1(b)、
図4(b)参照)との間で複数のカッター40が同期して移動するよう構成される。すなわち、切断装置30は、待機位置から貫通位置に向けた前進移動と、貫通位置から待機位置に向けた後退移動とを作動機構の作動に伴ってカッター40に行わせ得るようになっている。また、カッター40には、回転支持部42による回転方向の両側に切断刃40aが形成されており、回転支持部42の回転方向に拘わらずカッター40で捨て袋52を切断し得るようになっている。
【0024】
また、回転支持部42は、当該回転支持部42の本体部44の前面に環状の回転体(回転部)46が設けられており、当該本体部44の内部に備えた図示しない作動機構により回転体46を回転するようになっている。そして、この回転体46の前面に切断部32の本体部34が固定され、回転体46の回転に伴って切断部32(カッター40)が回転移動するようになっている。ここで、切断部32は、放射状に配置されたカッター40の切断刃40aが向く中心が回転体46の回転軸線CR上に位置するよう取り付けられ、回転体46の回転に伴って回転軸線CR側に切断刃40aを向けた姿勢でカッター40が回転軸線回りを回転移動するよう構成されている。本実施例の回転支持部42の作動機構としては、エアシリンダにより回転体46が所定角度範囲で回転するよう構成されたロータリーアクチュエータを採用しているが、特に限定されるものではなくモータ等により電気的に作動するようにしてもよい。
【0025】
ここで、保持装置12および切断装置30は、保持部材14,16(第1保持部材14および第2保持部材16)の凹部14a,16aにより形成される円形の開口中心(開口の中心線CR1)がカッター40(回転支持部42の回転体46)の回転軸線CR上に位置し、移動手段24の作動により当該回転軸線CRに沿って保持部材14,16が直線的に移動するよう構成されている。すなわち、移動手段24の動作により保持部材14,16を切断位置に移動することで、当該保持部材14,16で保持されたブロー成形品50の捨て袋52の切断予定位置の外側にカッター40を位置付けることができる。
【0026】
そして、本実施例の切断装置30は、カッター40を所定の回転初期位置から回転切断位置に回転移動させつつ回転軸線CRに近接するように待機位置から貫通位置に向けて前進移動させて切断動作を行うよう切断部32および回転支持部42の作動機構が作動される。すなわち、ブロー成形品50の筒壁50aの外面にカッター40の先端に設けた切断刃40aが接する状態で、当該カッター40を筒壁50aの回りを回転移動させながら切断刃40aが筒壁50aを貫通するよう前進移動させることで、当該ブロー成形品50の捨て袋52を切断して端部が開口した管状体にする。なお、
図4はカッター40が回転初期位置にある状態を示しており、当該位置から回転切断位置に向けて同図上で右回転方向にカッター40が回転移動し、回転切断位置から回転初期位置へ向けて同図上で左回転方向にカッター40が回転移動する。
【0027】
ここで、
図5に示すように、ブロー成形品50の捨て袋52の筒壁50aに切断刃40aが接したカッター40が当該筒壁50aの厚みTだけ前進移動するまでの間は、カッター40の回転により非貫通状態の溝MAが形成され、カッター40の切断刃40aが筒壁50aを貫通した後にカッター40が回転することで、貫通状態の溝MBが形成される。そして、各カッター40により形成される貫通状態の溝MBが繋がることにより捨て袋52が切断される。このため、回転初期位置から回転切断位置までの間に各カッター40が回転移動する回転移動角度θ(回転支持部42の回転体46の回転角度)は、回転支持部42の回転開始からカッター40の切断刃40aが管状体の筒壁50aを貫通するまでの回転角度を貫通回転角度θ1とした場合に、カッター40の配置間隔角度αに対してこの貫通回転角度θ1を加算した角度以上にしてある。すなわち、各カッター40は、回転移動の開始からの回転角度が貫通回転角度θ1となるまでの間に筒壁50aに非貫通状態の溝MAが形成されると共に、カッター40の配置間隔角度α以上の角度で貫通状態の溝MBが形成されるようになっている。これにより、回転移動方向の前側に位置するカッター40が形成する非貫通状態の溝MAは、当該回転移動方向の後側に位置する後続のカッター40により切断され、各カッター40が形成する貫通状態の溝MBが繋がって捨て袋52が切断される。
図5では、実線で示したカッター40に対して回転移動方向の前側に位置するカッター40および当該カッター40が形成する非貫通状態の溝MAを二点鎖線で図示してある。
【0028】
具体的に、ブロー成形品50の捨て袋52を切断する際にカッター40の回転軸線CR回りの回転移動と、待機位置から貫通位置への前進移動とを同時に開始する場合には、待機位置にある状態でのカッター40の切断刃40aから捨て袋52の切断予定位置までの離間距離L[m]、切断予定位置における捨て袋52の設計厚みT[m]、カッター40の回転移動速度V1[rad/s]、カッター40の待機位置から貫通位置への送り速度V2[m/s]とした場合に、貫通回転角度θ1[rad]は、θ1=V1×(L+T)/V2となる。また、カッター40の回転軸線CR回りへの回転移動を開始した後に待機位置から貫通位置への前進移動を開始する場合や、回転移動を開始する前に待機位置から貫通位置への前進移動を開始する場合には、回転移動と前進移動とを開始する時間差により貫通回転角度θ1が増減する。このため、回転移動を開始するタイミングを基準に、当該回転移動から前進移動を開始するまでの時間差をS[s]とした場合に、貫通回転角度θ1[rad]は、θ1=V1×{(L+T)/V2+S}とすることができる。なお、前進移動を回転移動より先に開始する場合の時間差Sはマイナスの値となる。また、回転移動を開始する前に待機位置から貫通位置への前進移動を開始する場合には、カッター40の切断刃40aがブロー成形品50の筒壁50aに接する前に回転移動を開始させることが好ましい。これにより、ブロー成形品50の筒壁50aの外面にカッター40の切断刃40aが接する状態となった時点で、当該カッター40が筒壁50aの回りを回転移動しつつ前進移動しているようにすることができ、筒壁50aに突き当てた切断刃40aによる切断圧力が一箇所に集中するのを効果的に防ぐことができる。
【0029】
ここで、ブロー成形品50捨て袋52を実際に切断する際には、設計値と実際の寸法との誤差があり、装置の起動のラグなどの影響で回転速度や送り速度を完全に等速にすることは困難であり、またブロー成形の性質上筒壁50a(捨て袋52の切断予定位置)の周方向で厚みTが不均一になるなどの要因によって、カッター40を貫通回転角度θ1で回転した場合でも、切断刃40aが筒壁50aを貫通していない可能性もある。すなわち、カッター40の設置数をNとした場合(実施例ではN=3)にカッター40の配置間隔角度αは2π/N[rad]であることから、カッター40の回転移動角度θ[rad]は、θ≧(2π/N+θ1)となるようにすることが好ましい。なお、この実施例では、カッター40の回転移動角度θを240°に設定してある。
【0030】
また、切断装置30は、捨て袋52を切断する切断動作の後は、カッター40を回転初期位置および待機位置に復帰させる復帰動作を行うように切断部32および回転支持部42の作動機構が作動される。ここで、この復帰動作としては、捨て袋52の切断後にカッター40を回転切断位置から回転初期位置に向けて回転移動(逆回転移動)する前に、カッター40をブロー成形品50の筒壁50aの外側まで後退移動させ、その後に回転支持部42を逆回転移動して回転初期位置に復帰させるようにすることができる。このように、カッター40の切断刃40aをブロー成形品50の筒壁50aの外側まで予め後退移動させることで、ブロー成形品50の切断面にカッター40の切断刃40aが触れるのを防止でき、切断面へのカッター40の切断刃40aの接触により切削屑が発生するのを防ぐことができる利点がある。なお、この場合に、カッター40は待機位置まで移動させる必要はなく、切断刃40aがブロー成形品50の筒壁50aの外側まで移動していれば、カッター40の後退移動の途中で回転支持部42を逆回転するようにしてもよい。
【0031】
また、復帰動作としては、カッター40の切断刃40aがブロー成形品50の筒壁50aの内面側に突き出た状態でカッター40を逆回転移動して回転初期位置に復帰させ、その後にカッター40が待機位置に戻るように後退移動させるようにすることができる。この場合は、筒壁50aの偏肉などの影響によりカッター40を回転移動角度θで回転移動した後に未切断の非貫通状態の溝MAが残った場合であっても、カッター40の切断刃40aがブロー成形品50の筒壁50aの内面側に突き出た状態で回転支持部42を逆回転移動することで、当該非貫通状態の溝MAを逆回転移動するカッター40により切断して捨て袋52を切り離すことができる利点がある。なお、この場合に、回転支持部42を逆回転移動して回転初期位置に戻す間にカッター40の後退移動を開始するようにしてもよい。
【0032】
次に、実施例に係る管状体の製造方法について、前述した製造装置10を用いて説明する。
【0033】
保持装置12の保持部材14,16を退避位置に位置させた状態で第2保持部材16を第1保持部材14に対して開放し、当該第1保持部材14の第1凹部14aの環状段差部14bにブロー成形品50の環状突部50bを嵌め込み、その後に第2凹部16aの環状段差部16bに環状突部50bを嵌め込むように第2保持部材16を閉じることで、捨て袋52が突き出るようにブロー成形品50を第1保持部材14および第2保持部材16で保持する。そして、切断装置30の各カッター40を待機位置および回転初期位置に位置させた状態で、移動手段24を作動してブロー成形品50を保持した保持部材14,16を切断位置に移動する。
【0034】
次いで、カッター40を回転初期位置から回転切断位置に向けて回転移動すると共に待機位置から貫通位置に向けて前進移動するように切断部32および回転支持部42を作動して切断動作を行う。すなわち、ブロー成形品50の捨て袋52の筒壁50aの外面にカッター40の切断刃40aが接するようにすると共に、当該筒壁50aに切断刃40aが接した状態でカッター40を筒壁50aの回りを回転移動させながら切断刃40aが筒壁50aを貫通するよう前進移動させる。このとき、回転初期位置から回転切断位置までの間に、カッター40の配置間隔角度αに対して貫通回転角度θ1を加算した角度以上となる回転移動角度θで各カッター40を回転移動することで捨て袋52が切断される。
【0035】
そして、カッター40を回転切断位置および貫通位置まで移動して捨て袋52を切断した後、カッター40を回転初期位置および待機位置に復帰させる復帰動作を行うように切断部32および回転支持部42の作動機構が作動する。この復帰動作は、前述のように捨て袋52の切断後にカッター40を回転切断位置から回転初期位置に向けて回転移動(逆回転移動)する前に、カッター40の切断刃40aをブロー成形品50の筒壁50aの外側まで後退移動させ、その後に回転支持部42を逆回転移動して回転初期位置に復帰させることで行うことができる。また、復帰動作は、カッター40の切断刃40aがブロー成形品50の筒壁50aの内面側に突き出た状態でカッター40を逆回転して回転初期位置に復帰させ、その後にカッター40が待機位置に戻るように後退移動させることでもよい。そして、カッター40を待機位置および回転初期位置に移動した後に、保持部材14,16を切断位置から退避位置に移動し、第2保持部材16を第1保持部材14に対して開放することで、捨て袋52が切断された管状体が得られる。
【0036】
このように、ブロー成形品50の筒壁50a(捨て袋52)に切断刃40aを当てたカッター40を当該筒壁50aの回りを回転するようにカッター40を回転軸線CR回りに回転移動しつつ回転軸線CRに近接するように前進移動させることで、切断時の捨て袋52の振れ動きを抑制することができるから、歪みの少ない切断面を形成することができる。このとき、ブロー成形品50の筒壁50aを等間隔で配置した複数のカッター40で掴むような状態になるから、捨て袋52の振れ動きを効果的に抑制することができる。また複数のカッター40を突き当てた状態で筒壁50aの回りを回転移動することで、カッター40による切断圧力を分散することができ、切断時の捨て袋52の弾性変形を抑制することができる。また、カッター40の切断刃40aによりブロー成形品50の筒壁50aを切るようにして捨て袋52を切断することで、切断に際し切削屑の発生を抑制することができるから、切削屑の除去作業を簡略化したり省略することが可能になる。
【0037】
また、カッター40を回転初期位置から回転切断位置に移動することで捨て袋52を切断することができ、カッター40が切断面に接触する時間を短くすることができる。このため、切断時に切削屑が発生した場合でも、切断時の摩擦熱で切削屑が軟化するのを防止できるから、管状体(ブロー成形品50)の内面に切削屑が強固に付着してしまうことを防いで、除去作業を容易に行うことができる。
【0038】
また、カッター40の配置間隔角度αに対し、回転移動の開始からブロー成形品50の筒壁50aをカッター40の切断刃40aが貫通するまでの貫通回転角度θ1を加算した角度以上となる回転移動角度θでカッター40を回転移動することで、回転移動の開始からブロー成形品50の筒壁50aをカッター40が貫通するまでの間に筒壁50aに形成される非貫通状態の溝MAを、当該溝部分を形成したカッター40に対して回転移動方向の後側に位置する後続のカッター40で切断することができる。
【0039】
更に、復帰動作において、ブロー成形品50の筒壁50aの捨て袋52を切断した後にカッター40の切断刃40aを筒壁50aの外側まで後退移動させ、その後にカッター40を回転初期位置に向けて回転移動する場合には、復帰動作時にカッター40が切断面に触れるのを防止でき、カッター40を回転初期位置に戻す間に切削屑が発生するのを防ぐことができる。また、ブロー成形品50の筒壁50aの捨て袋52を切断した後にカッター40が筒壁50aの内側に突き出た状態で回転初期位置に向けて回転移動し、その後に当該筒壁50aの外側にカッター40を後退移動する場合には、切断動作の完了後に非貫通状態の溝MAが残り、捨て袋52を完全に切断できていないような状況であっても回転初期位置に向けてカッター40が回転移動する過程で残った非貫通状態の溝MAを切断して捨て袋52を切断することが可能になる。
【0040】
更に、ブロー成形品50を保持する保持部材14,16を切断装置30に対して切断位置および退避位置に移動するようにすることで、切断装置30を所定位置に正確に保持することができる。すなわち、カッター40を回転移動する際に回転軸線CRが振れるのを効果的に抑制できるから、捨て袋52の切断予定位置をカッター40でより正確に切断することが可能になる。
【0041】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、例えば以下のように変更することができる。
(1) 実施例では、保持部材14,16を切断装置30に対して近接および離間することで切断位置と退避位置に移動可能に構成したが、切断装置30を保持部材14,16に対して移動可能にするようにしてもよい。また、保持部材14,16および切断装置30の双方を相互に近接および離間するように移動可能に構成してもよい。
(2) 切断装置30にカッター40を3つ備えるようにしたが、これに限られるものではなく、2以上の任意の数のカッター40を備えるようにすることができる。
(3) 実施例では、カッター40の回転移動方向の両側に切断刃40aを形成したが、少なくとも回転初期位置から回転切断位置に向けて回転移動する際に捨て袋52を切断し得るように切断刃40aを備えるようにすればよい。
【符号の説明】
【0042】
36 移動体(進退移動部),40 カッター,40a 切断刃,42 回転部
50 ブロー成形品(閉塞管),50a 筒壁,52 捨て袋(閉塞端),CR 回転軸線