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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】液状物質噴射用マニホールド
(51)【国際特許分類】
   A22C 9/00 20060101AFI20230609BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20230609BHJP
   A22C 17/00 20060101ALI20230609BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20230609BHJP
   A23L 13/70 20230101ALN20230609BHJP
【FI】
A22C9/00
B05B1/14 Z
A22C17/00
A23L13/00 E
A23L13/70
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019185466
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021058154
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝幸
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-89542(JP,A)
【文献】特開平9-19273(JP,A)
【文献】特開2002-223693(JP,A)
【文献】登録実用新案第3205738(JP,U)
【文献】国際公開第2004/060070(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 9/00
B05B 1/14
A22C 17/00
A23L 13/00
A23L 13/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉塊の搬送方向と直交する方向に複数本並設された略水平配管;該略水平配管への液状物質の送液手段;並びに該略水平配管の中央部分及び両端部分に連通して複数本設けられ先端に噴射ノズルを有する分岐配管であって、該中央部分には略垂直に連通している分岐配管;を備えた液状物質噴射用マニホールドにおいて、両端部側に配設された噴射ノズルから噴射される水流が中央方向に向かうように、該中央部分に配設された分岐配管を流れる液流方向に対して、両端部に配設された噴射ノズルが8°~30°の範囲で互いに内側に傾斜していることを特徴とする液状物質噴射用マニホールド。
【請求項2】
噴射ノズルが10°~25°の範囲で互いに内側に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の液状物質噴射用マニホールド。
【請求項3】
略水平配管の両端部側に設けられたノズルの個数が、ノズル数全体の1/5~1/2であることを特徴とする請求項1又は2記載の液状物質噴射用マニホールド。
【請求項4】
ノズルが平面視で千鳥状に配設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液状物質噴射用マニホールド。
【請求項5】
ノズルが直進水流噴射ノズルである請求項1~4のいずれかに記載の液状物質噴射用マニホールド。
【請求項6】
該液状物質噴射用マニホールドが、食肉塊に液状物質を注入するインジェクション装置の噴射部の先端に使用されるマニホールドである請求項1~5のいずれかに記載の液状物質噴射用マニホールド。
【請求項7】
液状物質の噴射部を備えた無針型インジェクターを用いた液状物質が注入された食肉塊の製造方法において、該噴射部に請求項1~6のいずれか1項に記載のマニホールドを備えた製造方法。
【請求項8】
液状物質の噴射部を備えた無針型インジェクターを用いた液状物質が注入された食肉塊をスライスする食肉スライス片の製造方法であって、該噴射部に請求項1~6のいずれか1項に記載のマニホールドを備えた製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豚肉、牛肉、家禽肉等の食肉塊に、ピックル液や調味液等の液状物質を注入するインジェクター等に使用する液状物質噴射用マニホールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食肉塊に、ピックル液や調味液等の液状物質を注入するインジェクターとして、具体的には、食肉塊に液状物質を注入する装置であって、高圧液発生部と、液状物質の噴射部と、該噴射部から食肉塊へ液状物質を注入するに際し、液状物質を注入しながら注入圧力の制御を行うことができる圧力制御部とを備えたことを特徴とするピックルインジェクターが知られており、中でも噴射部が、複数の分岐管がある一定間隔で平行に設けられ、各分岐配管の噴出孔の先端には、直進水流噴射ノズルが取り付けられているマニホールドであるのが好ましいことが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-89542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のピックルインジェクターを用いることにより、食肉の厚みが薄いものばかりでなく、厚い原料肉に対しても、またその形状や大きさが種々異なる原料肉に対して、肉質を損なうことなく、効率良く、連続的にピックル液や調味液を肉塊中に均一に分散させ、タンブリングマシンやマッサージマシン等を長時間使わなくても塩漬や調味を達成することができ、さらに肉質の注入抵抗の差があってもピックル液や調味液を均一に分散させることができるようになったが、ピックル液の有効率(実際に注入された液量/ノズルより噴射された液量×100で算出される。)が50%前後と低い点、有効率を上げるためにノズルからの水流の圧力を上げた場合に、食肉表面にダメージが残ることなどの問題に直面していた。
【0005】
本発明は、上記問題にかんがみ、ピックル液等液状物質を食肉塊等に注入する際の液状物質の有効率が高く、食肉塊等の表面のダメージが少なく、液状物質を注入することのできる液状物質噴射用マニホールドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来のマニホールドが、食肉塊と当接する面、すなわちノズルが配置される面(以下ノズル面ということがある。)が平面であるのに対して、食肉塊の周辺部には丸みがあり、ノズル面と食肉塊の周辺部の密着性が悪い点を改良することにより、課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の事項により特定される次のとおりのものである。
(1)食肉塊の搬送方向と直交する方向に複数本並設された略水平配管;該略水平配管への液状物質の送液手段;並びに該略水平配管の中央部分及び両端部分に連通して複数本設けられ先端に噴射ノズルを有する分岐配管であって、該中央部分には略垂直に連通している分岐配管;を備えた液状物質噴射用マニホールドにおいて、両端部側に配設された噴射ノズルから噴射される水流が中央方向に向かうように、該中央部分に配設された分岐配管を流れる液流方向に対して、両端部に配設された噴射ノズルが8°~30°の範囲で互いに内側に傾斜していることを特徴とする液状物質噴射用マニホールド。
(2)噴射ノズルが10°~25°の範囲で互いに内側に傾斜していることを特徴とする(1)記載の液状物質噴射用マニホールド。
(3)略水平配管の両端部側に設けられたノズルの個数が、ノズル数全体の1/5~1/2であることを特徴とする(1)又は(2)記載の液状物質噴射用マニホールド。
(4)ノズルが平面視で千鳥状に配設されていることを特徴とする(1)~(3)いずれかに記載の液状物質噴射用マニホールド。
(5)ノズルが直進水流噴射ノズルである(1)~(4)のいずれかに記載の液状物質噴射用マニホールド。
(6)該液状物質噴射用マニホールドが、食肉塊に液状物質を注入するインジェクション装置の噴射部の先端に使用されるマニホールドである(1)~(5)のいずれかに記載の液状物質噴射用マニホールド。
(7)液状物質の噴射部を備えた無針型インジェクターを用いた液状物質が注入された食肉塊の製造方法において、該噴射部に(1)~(6)のいずれか1つに記載のマニホールドを備えた製造方法。
(8)液状物質の噴射部を備えた無針型インジェクターを用いた液状物質が注入された食肉塊をスライスする食肉スライス片の製造方法であって、該噴射部に(1)~(6)のいずれか1つに記載のマニホールドを備えた製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液状物質噴射用マニホールドは、特にハム、ベーコン等を製造するための食肉塊にピックル液等の液状物質を注入する場合に用いられるが、その場合において食肉塊周辺部の丸みと本発明のマニホールドの形状がより適合し、丸みを帯びている周辺部の食肉塊に対しても、より垂直に近い状態で液状物質を注入できるので、効率よく注入することができ、用いる液状物質も少なくなり、従来のマニホールドに比して生産性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のマニホールドの一実施態様の全体図を示す。
図2】本発明のマニホールドの一実施態様のA-A断面図を示す。
図3】本発明のマニホールドの一実施態様のB-B断面図を示す。
図4】本発明のマニホールドの一実施態様の噴射ノズル配置面図を示す。
図5】本発明のマニホールドの別の一実施態様のA-A断面図を示す。
図6】本発明のマニホールドの別の一実施態様のB-B断面図を示す。
図7】本発明のマニホールドの別の一実施態様の噴射ノズル配置面図を示す。
図8】食肉塊へピックル液を注入するためのインジェクターの一実施態様を示す。
図9】従来型のマニホールドの一実施態様の断面図を示す。
図10】従来型のマニホールドの一実施態様の噴射ノズル配置面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の液状物質噴射用マニホールドにおいて、液状物質としては、食用に供される肉塊であって、豚肉、牛肉、家禽肉、馬肉、羊肉及びこれらの内臓肉、骨付き肉及び皮付き肉、魚肉等の塊に注入される液状物質を好ましく挙げることができ、より具体的には、塩漬用のピックル液、調味用の調味液の他、脂質等の組織改良剤、天然保存剤、天然色素剤、酵素、微生物等の溶液、分散懸濁液を例示することができ、気体状のガスを含むものも含まれる。
【0011】
本発明の液状物質噴射用マニホールドは、食肉塊の搬送方向と直交する方向に複数本並設された略水平配管;該略水平配管への液状物質の送液手段;並びに該略水平配管の中央部分及び両端部分に連通して複数本設けられ先端に噴射ノズルを有する分岐配管であって、該中央部には略垂直に連通している分岐管;を備えた液状物質噴射用マニホールドにおいて、両端部側に配設された噴射ノズルから噴射される水流が中央方向に向かうように、該中央部分に配設された分岐管を流れる液流方向に対して、両端部に配設された噴射ノズルが8°~30°の範囲で互いに内側に傾斜していることを特徴とする。
【0012】
食肉塊の搬送方向と直交する方向に並設される略水平配管の数としては、例えば10~15mm間隔で平行に2~12本、好ましくは4~10本、中でも6~10本が好ましい。また、略水平配管の長さは10~18cm、好ましくは12~16cmを例示することができ、略水平配管の内径は2~8mm、好ましくは4~6mmを例示することができる。
【0013】
かかる略水平配管への液状物質の送液手段としては、並設された略水平配管を互いに連通する縦(食肉塊の搬送方向)配管の中央付近に立設された液状物質の供給パイプや、液状物質の供給パイプから略水平配管の数だけ分岐し、略水平配管の中央付近に立設された、導入口に連通した分岐パイプ等を挙げることができる。
【0014】
噴射ノズルを先端に有する分岐配管は、略水平配管の中央部分及び両端部分に複数設けられ、同一の略水平配管に設けられる分岐配管の間隔は10~15mm程度が好ましい。両端部側に配設される分岐管の本数は分岐管の本数全体の1/5~1/2の範囲が好ましく、中央部分が4~7で両端部側が2~4(片側1~2)を好適に例示することができる。また、分岐配管の長さは5~15cm、好ましくは6~10cmを例示することができ、分岐配管の内径は2~8mm、好ましくは4~6mmを例示することができる。略水平配管からの分岐配管の配置は、平面視で縦(食肉塊の搬送方向)一列でもよいが、マニホールド内におけるノズルの配置密度を高めるために千鳥状に配設することが好ましく、千鳥状に配置することにより、分岐配管同士の間隔を10mm以下、例えば5mmにすることができる。
【0015】
前記略水平配管に連通している前記分岐管は、中央部においては前記略水平配管に対して略垂直方向に配設されているが、両端部に配設された噴射ノズルからの水流方向を適切に調節できる範囲で、前記略水平配管に対して、略垂直であっても、中央部に配設されている分岐配管に対してある角度で中央方向に傾斜していてもよい。前記角度は、マニホールドの構造上許容される範囲であれば特に制限されないが、例えば、8°~30°の範囲が挙げられ、好ましくは10°~25°、より好ましくは12°~24°の範囲が挙げられる。
【0016】
上記噴射ノズルの形状は、特に限定されないが、食肉塊に効率よくピックル液等の液状物質を注入する場合には、直進水流噴射ノズルが好ましい。直進水流噴射ノズルの構造は、液状物質が同心円状に拡散して噴出することなく、直線状に収束して噴出する液状物質の流れ、すなわち直進水流を噴射することができる構造であれば特に制限されず、ノズルに液を送る分岐配管に接続することができ、噴射孔が、小さい径の単一孔であれば特にノズルの形状そのものは制限されない。単一孔の内径は、注入圧力により適宜選択することができ、具体的には、0.05~0.5mmの範囲が好ましく、0.07~0.15mmの範囲がさらに好ましい。ノズル先端の材質は、食品に直接接触する場合があるので、硬度、耐衝撃性、耐圧性、安全性等が考慮されて、サファイアを好ましく例示することができる。
【0017】
本発明のマニホールドは、複数本の略水平配管に設けられる分岐配管のうち、その両端部分の分岐配管の先端に設けられたノズル(両端部側に配設されるノズル)から噴射される水流が中央方向に向かうように、噴射ノズルが中央部に配設された分岐管を流れる液流方向に対して8°~30°の範囲、好ましくは10°~25°、より好ましくは12°~24°の範囲で互いに内側に傾斜していることを大きな特徴とする。傾斜させるノズルの個数は、本発明のマニホールドからの水流が噴射される対象物の形状により、任意に選択できるが、ノズル数全体の1/5~1/2の範囲が好ましく、中央部分が4~7で両端部側が2~4(片側1~2)を好適に例示することができる。
【0018】
例えば、水流が噴射される対象物が食肉塊で、液状物質を注入するような場合、食肉塊の形状は、通常は直方体ではなく周辺部に向かって丸みをおびることから、本発明のマニホールドを用いることにより、食肉塊の周辺部においてもマニホールドが食肉塊により密着するとともに、食肉塊表面に対してより垂直に水流を噴射することができるようになり、食肉塊に対してより効率的に液状物質を注入することができるようになる。
【0019】
本発明のマニホールドの構造の一態様について図2図4により説明する。マニホールド1内には、8本の略水平配管14が10mmの間隔で設けられ、各略水平配管14にはそれぞれ9本の分岐配管2が12mmの間隔で設けられている。また、並設された略水平配管14の数だけ分岐し、略水平配管14の中央付近に立設され、液状物質供給パイプ(例えば、図8におけるフレキシブルホース10)から導入口16にその一端が連通した分岐パイプ15が立設されている。各分岐配管2の噴出孔の先端には、直進水流噴射ノズル3、3’が取り付けられている。直進水流噴射ノズル3、3’を千鳥状に配置することにより、より密度の高い注入が可能となった。直進水流噴射ノズル3同士、3’同士の間隔は、12mmであり、両端部側の傾斜している直進水流噴射ノズル3と中央部の直進水流噴射ノズル3’との間隔は、構造上16mmとなっている。また、直進水流噴射ノズル3、3’の孔の径は0.127mm(5/1000インチ)とした。噴射圧力はノズルの孔の径の4乗に反比例することが知られており、径が小さいほど高圧が得られることになる。マニホールド1両端部分に設けられたノズルは、各略水平配管14あたり2個ずつ合計4個が、直進水流噴射ノズル3から噴射される水流の角度がマニホールド中心部分に向かって中央部に配設された分岐配管2を流れる液流方向に対して、12°の角度で互いに内側に傾斜するように設定されている。
【0020】
また、本発明のマニホールドの構造の別の一態様について図5~7により説明する。マニホールド1’内には、10本の略水平配管14’は10mmの間隔で設けられ、各略水平配管14’にはそれぞれ9本の分岐配管2’同士、2’’同士が12mmの間隔で設けられている。また、並設された略水平配管14’の数だけ分岐し、略水平配管14’の中央付近に立設され、液状物質供給パイプ(例えば、図8におけるフレキシブルホース10)から導入口16’にその一端が連通した分岐パイプ15’が立設されている。各分岐配管2’、2’’の噴出孔の先端には、直進水流噴射ノズル3’’、3’’’が取り付けられている。直進水流噴射ノズル3’’、3’’’を千鳥状に配置することにより、より密度の高い注入が可能となった。直進水流噴射ノズル3’’同士、3’’’同士の間隔は、12mmであり、両端部側の傾斜している直進水流噴射ノズル3’’と中央部の直進水流噴射ノズル3’’’との間隔は、構造上19mmとなっている。マニホールド1’両端部分に設けられた直進水流噴射ノズル3’’は、各略水平配管14’あたり2個ずつ合計4個が、直進水流噴射ノズル3’’から噴射される水流の角度がマニホールド中心部分に向かって、中央部に配設されている分岐配管2’’を流れる液流方向に対して24°の角度で互いに内側に傾斜するように設定されている。これに伴い、両端部分に設けられた直進水流噴射ノズル3’’に連結する分岐配管2’は、中央部に配設されている分岐配管2’’に対して、互いに内側に12°の角度で傾斜するように設定されている。このため、分岐配管2’と分岐配管2’’の間隔は、分岐配管2’同士、2’’同士の間隔よりも大きくなっている。直進水流噴射ノズル3’’の構造上、分岐配管2’中を流れる液流方向に対して傾斜できる角度が限られている場合に、図6に示す態様のように、直進水流噴射ノズル3’’に連結する分岐配管2’も傾斜させることにより、傾斜させることのできるノズルの角度を自由に選択することができる。
【0021】
本発明のマニホールドを用いた具体例として、食肉塊に液状物質を注入する無針型のインジェクターの液状物質の噴射部が挙げられ、より具体的には、特許文献1に記載のピックルインジェクターの噴射部を例示することができ、特許文献1中の図6図8における符号7で表されるマニホールドの代わりに本発明のマニホールドを用いる場合を例示することができる。
【0022】
本発明の製造方法は、液状物質の噴射部を備えた無針型インジェクターを用いた液状物質が注入された食肉塊の製造方法において、該噴射部に上記した本発明のマニホールドを備えることを特徴とする。本発明の製造方法に用いられる液状物質としては、塩漬用のピックル液、調味用の調味液の他、脂質等の組織改良剤、天然保存剤、天然色素剤、酵素、微生物等の溶液、分散懸濁液を例示することができ、直進水流噴射ノズル等噴射部から食肉塊に注入しうる液状のものであれば、気体状のガスを含むものなど、いかなるものでも使用することができる。
【0023】
本発明の製造方法によって製造される食肉塊の食肉としては、豚肉、牛肉、家禽肉、馬肉、羊肉、及びこれらの内臓肉、骨付き肉、皮付き肉、並びに魚肉を例示することができ、食用に供される肉塊であればどのような肉塊をも使用することができる。かかる食肉塊の大きさとしては、厚み(高さ)3~8cm、幅8~14cm、長さ30~70cmの棒状の食肉塊を好適に例示することができる。
【0024】
本発明の製造方法に用いられる無針型インジェクターとは、上記液状物質を、上記食肉塊に注入できる注入装置であって、針を用いず液状物質を噴射することで食肉塊に液状物質を注入できる噴射部を有して入れば、特に制限されず、例えば、特許文献1、特開2001-78719号公報等に記載されているインジェクターが挙げられる。
【0025】
また、本発明の製造方法は、液状物質の噴射部を備えた無針型インジェクターを用いた液状物質が注入された食肉塊をスライスする食肉スライス片の製造方法であって、該噴射部に上記マニホールドを備えたことを特徴とする。本発明の食肉スライス片の製造方法において、「液状物質が注入された食肉塊をスライスする」工程は、液状物資が注入された食肉塊そのものをスライスする工程だけはなく、液状物質が注入された食肉塊に乾燥、加熱、燻蒸等の工程を行った後にスライスする工程をも含む。食肉塊をスライスする方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【実施例
【0026】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、この実施例に限定されるものではない。
【0027】
[比較例1]
図8に示す無針型ピックルインジェクターにおいて、噴射部13に図9及び図10に示す従来型のマニホールドを用いて食肉塊へのピックル液の注入を行った。なお、図8に示される無針型ピックルインジェクターは、高圧液発生部と圧力制御部とが一体的に構成され、かかる高圧液発生部・圧力制御部は、その中に液状物質が収容されている液体タンク4、ダイヤフラムポンプ5、サーボモータ6、高圧プランジャーポンプ7、耐圧4200kg/cm2のステンレス配管からなる高圧配管8、切替バルブ9及び耐圧3500kg/cm2のフレキシブルホース10とからなり、サーボモータ6により高圧プランジャーポンプ7を駆動させることにより、液体タンク1からの液圧をゼロ又は低圧から漸次上昇させることができる。また、図8において11は食肉塊を、12は連続搬送ベルトコンベアを示している。その動作の詳細は、特開2001-78719号公報に記載されているとおりである。
その結果、ピックル液の有効率は、50%であった。
【実施例1】
【0028】
図8に示す無針型ピックルインジェクターにおいて、噴射部13に図2~4に示す本発明のマニホールドを用い、比較例1と同等の食肉塊に比較例1と同じ条件で同じピックル液の注入を行った。
その結果、ピックル液の有効率は、55%であり、従来型のマニホールドを用いた場合に比して有効率を改善することができた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のマニホールドを用いることにより、従来のマニホールドに比して、注入するピックル液の有効率を改善させることができるので、特に品質管理の厳しく、注入できなかったピックル液を回収再利用できない生ハムの製造工程において、食肉塊へピックル液の注入に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1、1’、1’’ マニホールド
2、2’、2’’、2’’’ 分岐配管
3、3’、3’’、3’’’、3’’’’ 直進水流噴射ノズル
4 液体タンク
5 ダイヤフラムポンプ
6 サーボモータ
7 高圧プランジャーポンプ
8 高圧配管
9 切替バルブ
10 フレキシブルホース
11 食肉塊
12 連続搬送ベルトコンベア
13 噴射部(マニホールド)
14、14’ 略水平配管
15、15’ 分岐パイプ
16、16’ 導入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10