(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】ドリル加工装置及びドリル加工方法
(51)【国際特許分類】
B26F 1/16 20060101AFI20230609BHJP
B23B 41/00 20060101ALI20230609BHJP
B23B 49/00 20060101ALI20230609BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20230609BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20230609BHJP
G05B 19/19 20060101ALI20230609BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20230609BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B26F1/16
B23B41/00 D
B23B49/00 Z
B23Q17/22 A
B23Q15/00 303B
G05B19/19 F
G05B19/404 K
H05K3/00 M
H05K3/00 K
(21)【出願番号】P 2019205155
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2019055714
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高光 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】荒木 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝輔
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-001548(JP,A)
【文献】特開2016-122825(JP,A)
【文献】特開2015-223686(JP,A)
【文献】特開2016-016458(JP,A)
【文献】特開2006-119857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/16
B23B 41/00
B23B 49/00
B23Q 17/22
B23Q 15/00
G05B 19/19
G05B 19/404
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工テーブルに載置された基板を押付けるための基板押付け部と、前記基板に穴をあけるためのドリルが前記基板の表面に接触したことを検出するドリル接触検出部と、前記ドリルによる前記基板の穴あけ加工を制御する制御部とを備えるドリル加工装置において、前記制御部は、前記基板押付け部により前記基板を押し付けた状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記基板の特定位置で前記基板の第1の表面高さを検知する第1の動作と、前記基板押付け部により前記基板を押し付けない状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記特定位置あるいはその周辺で前記基板の第2の表面高さを検知する第2の動作を行い、前記第1の表面高さと前記第2の表面高さの差が所定値を超える場合、少なくとも前記特定位置を含む領域を加工対象としないように制御することを特徴とするドリル加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドリル加工装置において、前記特定位置は前記基板の端に沿った領域と中央部にある領域内に設定されていることを特徴とするドリル加工装置。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載のドリル加工装置において、前記領域内には複数の前記特定位置が設定され、それぞれでの前記差の平均値が前記所定値を超える場合、少なくとも前記特定位置を含む領域を加工対象としないように制御することを特徴とするドリル加工装置。
【請求項4】
加工テーブルに載置された基板を押付けるための基板押付け部と、前記基板に穴をあけるためのドリルが前記基板の表面に接触したことを検出するドリル接触検出部と、前記ドリルによる前記基板の穴あけ加工を制御する制御部とを備えるドリル加工装置において、前記制御部は、前記基板押付け部により前記基板を押し付けた状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記基板の特定位置で前記基板の第1の表面高さを検知する第1の動作と、前記基板押付け部により前記基板を押し付けない状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記特定位置あるいはその周辺で前記基板の第2の表面高さを検知する第2の動作を行い、前記第1の表面高さと前記第2の表面高さの差が所定値を超える場合、少なくとも前記特定位置を含む領域においては予め定められている穴あけ深さを前記差に基づいて補正して加工するように制御することを特徴とするドリル加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のドリル加工装置において、前記特定位置は前記基板の端に沿った領域と中央部にある領域内に設定されていることを特徴とするドリル加工装置。
【請求項6】
基板押付け部により加工テーブルに載置された基板を押付け、ドリル接触検出部により前記基板に穴をあけるためのドリルが前記基板の表面に接触したことを検出するようにしたドリル加工方法において、前記基板押付け部により前記基板を押し付けた状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記基板の特定位置で前記基板の第1の表面高さを検知する第1のステップと、前記基板押付け部により前記基板を押し付けない状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記特定位置あるいはその周辺で前記基板の第2の表面高さを検知する第2のステップと、前記第1の表面高さと前記第2の表面高さの差が所定値を
超える場合、少なくとも前記特定位置を含む領域を加工対象としないように制御する第3のステップとを有することを特徴とするドリル加工方法。
【請求項7】
基板押付け部により加工テーブルに載置された基板を押付け、ドリル接触検出部により前記基板に穴をあけるためのドリルが前記基板の表面に接触したことを検出するようにしたドリル加工方法において、前記基板押付け部により前記基板を押し付けた状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記基板の特定位置で前記基板の第1の表面高さを検知する第1のステップと、前記基板押付け部により前記基板を押し付けない状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記特定位置あるいはその周辺で前記基板の第2の表面高さを検知する第2のステップと、前記第1の表面高さと前記第2の表面高さの差が所定値を超える場合、少なくとも前記特定位置を含む領域においては予め定められている穴あけ深さを前記差に基づいて補正して加工するように制御する第3のステップとを有することを特徴とするドリル加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工テーブルに載置されたプリント基板の如き基板にドリルを用いて穴の加工を行うドリル加工装置及びドリル加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に穴あけを行うドリル加工装置においては、加工テーブルの上に載置された基板が曲がって盛り上がっている部分があると、止まり穴を加工する場合、正確な深さの穴あけが困難になる。
以下、この現象を
図7を用いて模式的に説明する。
図7において、Pはドリル30で加工テーブル40に載置された基板50に止まり穴をあけようとする時の接触点であり、Hはドリル30が接触点Pに接触した時に電気的に検出される基板50の表面高さである。この表面高さHは基板50が上から圧力を受けていない時の高さである。
なお、ここでの基板とは、少なくとも本来の加工すべきプリント基板を含み、その上に載置する上板や加工テーブルとの間に介在する下板を含んだものであってもよく、以下の説明でも同様とする。上板は導体材から成りバリ等の発生を防ぎ、下板は樹脂材から成りドリルがプリント基板を突き抜けて加工テーブルに接触するのを防ぐ役目をするものである。
【0003】
止まり穴を加工する場合、この表面高さHを穴をあける毎に検出し、それを基準にして予め与えられた深さL1の点Vまで行うようになっている。
通常の加工時においては、ドリル30は基板50の接触点Pに接触後、所定の圧力を与えられて下降するが、この時、接触点Pの付近において上に曲がって盛り上がっていると、基板50はドリル30から圧力を受けるので点線で示すように加工テーブル40に向かって沈み込み、接触点PはL3だけ沈み込む。
表面高さHはドリル30が接触点Pに接触した時に検出されるので、接触点PがL3だけ沈み込むと、止まり穴の加工深さは長さL3だけ短い深さL2となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、基板に曲がって盛り上がる部分があると、止まり穴を加工する場合、正確な深さの穴あけが困難になる。
基板の厚さにばらつきのある場合に対応する技術として、例えば特許文献1に開示されるように、加工位置毎にドリルの退避位置を変動させるようにしたものがあるが、基板が曲がって盛り上がる場合の問題点については考慮されていない。
そこで、本発明は、曲がって盛り上がる部分がある基板に止まり穴をあける場合に、加工精度を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願において開示される発明のうち、代表的なドリル加工装置は、加工テーブルに載置された基板を押付けるための基板押付け部と、前記基板に穴をあけるためのドリルが前記基板の表面に接触したことを検出するドリル接触検出部と、前記ドリルによる前記基板の穴あけ加工を制御する制御部とを備えるドリル加工装置において、前記制御部は、前記基板押付け部により前記基板を押し付けた状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記基板の特定位置で前記基板の第1の表面高さを検知する第1の動作と、前記基板押付け部により前記基板を押し付けない状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記特定位置あるいはその周辺で前記基板の第2の表面高さを検知する第2の動作を行い、前記第1の表面高さと前記第2の表面高さの差が所定値を超える場合、少なくとも前記特定位置を含む領域を加工対象としないように制御することを特徴とする。
【0007】
また本願において開示される代表的なドリル加工方法は、基板押付け部により加工テーブルに載置された基板を押付け、ドリル接触検出部により前記基板に穴をあけるためのドリルが前記基板の表面に接触したことを検出するようにしたドリル加工方法において、前記基板押付け部により前記基板を押し付けた状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記基板の特定位置で前記基板の第1の表面高さを検知する第1のステップと、前記基板押付け部により前記基板を押し付けない状態で前記ドリル接触検出部からの検出信号に基づいて前記特定位置あるいはその周辺で前記基板の第2の表面高さを検知する第2のステップと、前記第1の表面高さと前記第2の表面高さの差が所定値を超える場合、少なくとも前記特定位置を含む領域を加工対象としないように制御する第3のステップとを有することを特徴とする。
【0008】
なお、本願において開示される発明の代表的な特徴は以上の通りであるが、ここで説明していない特徴については、以下に説明する実施例に適用されており、また特許請求の範囲にも示した通りである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、曲がって盛り上がる部分がある基板に止まり穴をあける場合に、加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1となるドリル加工装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1において、基板に設定される区分領域を説明するための図である。
【
図3】ドリルがプレッシャフットより突き出た状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1と実施例2となるドリル加工装置におけるフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例1となるドリル加工装置におけるフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例2となるドリル加工装置におけるフローチャートである。
【
図7】従来技術での現象を模式的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施例1となるドリル加工装置の構成を示す図である。
図1での各構成要素や接続線は、主に本実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、ドリル加工装置として必要な全てを示している訳ではない。
図1において、1は少なくとも穴あけ加工を行うべきプリント基板を含む基板であり、この基板1の表面には導体層が存在する。この導体層としては前述の上板を導体としたものであってもよい。2は基板1を載置する加工テーブル、3はドリル4を回転させるモータ内蔵型のスピンドル5を保持するスピンドルユニットである。スピンドルユニット3は、スピンドル垂直駆動部6により垂直方向に駆動される。
【0012】
加工テーブル2は、基板1に穴をあけようとする位置にドリル4が向くよう、テーブル駆動部7により水平方向に駆動され、位置決めされるようになっている。
スピンドル5の下方側には穴あけ加工時に基板1を押付けるためのプレッシャフット8がシリンダ9を介して係合している。スピンドルユニット3とプレッシャフット8は垂直方向に所定の間隔を保って係合していて、スピンドルユニット3が下降する場合、プレッシャフット8が基板1の表面に当接するまではスピンドルユニット3と共に下降する。プレッシャフット8が基板1の表面に当接すると、その後はプレッシャフット8がその位置にとどまり、スピンドルユニット3だけ独立に下降し、ドリル4で穴あけができるようになる。穴あけを終え、スピンドルユニット3を上昇させると、ある位置からプレッシャフット8も共に上昇するようになっている。
【0013】
13は、ドリル4の先端が下降して基板1に接触したことを検出することにより、基板1の表面高さを検出するドリル接触検出部(以下、D検出部と記載する)である。D検出部13は、例えば特開2003-1548号公報で知られているような、スピンドル5内のロータシャフトに発生する軸電圧を利用するものや、特開2015-223685号公報で知られているような、ドリル4の先端が基板1の導体層に接触した時のドリル4とアースとの間のキャパシタンスの変化を利用するものである。D検出部13からは、ドリル4の先端が基板1に接触した時、表面検出信号DSが出力される。
止まり穴をあける場合、この表面検出信号DSが出力された時のドリル4の先端の高さが
図7におけるHに相当し、これを基準にして予め与えられた深さまで行うようになっている。
【0014】
15はドリル4の回転その他を制御してドリル加工装置の全体を制御する全体制御部であり、その内部にはいくつかの構成要素が含まれている。
16はスピンドル垂直駆動部6からの送り位置情報によりドリル4の先端の現在の高さを認識しながらスピンドル垂直駆動部6を制御するスピンドル駆動制御部、17はテーブル駆動部7からの送り位置情報により加工テーブル2の2次元位置を認識しながらテーブル駆動部7を制御するテーブル駆動制御部である。
【0015】
ここでの基板1の表面は、
図2に示すように大きさの等しい複数の区分領域S1~S9が論理的に設定されている。区分領域S1~S9のうち、区分領域S1~S8は基板1の端に沿って位置し、区分領域S9は中央部に位置する。区分領域S1~S9の各々の中央位置には表面高さを検出するための表面高さ検出点Zが設定されている。
図1に戻るが、全体制御部15内には、加工位置を指定する情報、区分領域S1~S9を指定する情報、表面高さ検出点Zを指定する座標情報等が記憶されている。
18と19は、それぞれD検出部13から表面検出信号DSが検出された時におけるスピンドル垂直駆動部6からの送り位置情報に基づく基板1の表面高さを記憶する高さ検出記憶部A、高さ検出記憶部Bである。20は加工対象であるかどうかを示す情報が記憶される加工制御情報記憶部である。
高さ検出記憶部A18、高さ検出記憶部B19、加工制御情報記憶部20の動作については後述するが、それぞれには区分領域S1~S9の各々に対応してデータ記憶領域が設けられている。
【0016】
全体制御部15は、ここで説明する以外の制御機能を有し、図示されていないブロックにも接続されている。全体制御部15は、例えばプログラム制御の処理装置を中心にして構成され、その中の各構成要素や接続線は、論理的なものも含むものとする。また各構成要素の一部は全体制御部15と別個に設けられていてもよい。
全体制御部15は、基板1に加工を始めるにあたり、
図4と
図5に示すフローチャートに従って以下の動作を行うように制御する。
【0017】
ドリル加工装置の初期状態においては、ドリル4の先端は通常のドリル加工時における退避位置よりも高い位置にある。先ず基板1の一つの区分領域(以下の説明においては、例えば端にある区分領域S1とする)を指定する(ステップ41)。次に、表面高さ検出点Zが加工できるように加工テーブル2を位置付けし、通常の穴あけ時と同じように
図1の状態からスピンドルユニット3を下降させていく(ステップ42)。これにより、プレッシャフット8が先ず先に基板1に接触して基板1を押さえ、その後ドリル4の先端が基板1の表面高さ検出点Zに接触し、表面検出信号DSが出力される。この時の基板1の表面高さを高さ検出記憶部A18における区分領域S1に対応するデータ記憶領域に書込む(ステップ43)。
このように基板1をプレッシャフット8で押さえて検出した基板1の表面高さを、以下表面高さAと呼ぶことにする。
【0018】
次に、加工テーブル2は前と同じ位置のままでスピンドルユニット3を上昇させ、ドリル4の先端を初期状態と同じ高さにする(ステップ44)。この状態において、シリンダ9を作動させてプレッシャフット8を引き込み、
図3に示すように、ドリル4がプレッシャフット8から突き出るような格好にし、この後、スピンドルユニット3を下降させていく(ステップ45)。
これにより、ドリル4の先端が基板1の表面高さ検出点Zに接触すると表面検出信号DSが出力され、この時の基板1の表面高さを高さ検出記憶部B19における区分領域S1に対応するデータ記憶領域に書込む(ステップ46)。
このように、基板1をプレッシャフット8で押さない状態で、ドリル4の先端が基板1に接触したことで検出される基板1の高さを、以下表面高さBと呼ぶことにする。
【0019】
この後、高さ検出記憶部A18に記憶された表面高さAと高さ検出記憶部B19に記憶された表面高さBからその差Cを算出し、
加工制御情報記憶部20における区分領域S1に対応するデータ記憶領域に書込む(ステップ47)。
通常の加工時において、基板1に対するプレッシャフット8の圧力はドリル4が与える圧力よりも大きく、基板1に盛り上がりがあったとしても矯正され加工テーブル2に向かって沈み込む。
差Cが大きいということは、
図7で説明した沈み込みの程度が大きく、ドリル4で加工する場合に止まり穴の深さの誤差も大きくなることを意味する。
従って、誤差が許容できる最も大きい差Cを実験的に求め所定値として定めておくものとし、ステップ47で算出した差Cが所定値以下であるかどうかを判定する(ステップ48)。
【0020】
ステップ48において、差Cが所定値以下の場合(YES)には誤差が許容できるものであり、加工対象にすることを示す加工対象フラグF1を加工制御情報記憶部20における区分領域S1に対応するデータ記憶領域に書込む(ステップ49)。差Cが所定値を超える場合(NO)には許容できない誤差を発生するものであり、加工対象としないことを示す加工非対象フラグF2を加工制御情報記憶部20における区分領域S1に対応するデータ記憶領域に書込む(ステップ50)。
【0021】
以上の動作が終了したら、ステップ51と52に従い、他の残りの区分領域S2~S9の各々についても同様にして差Cを調べ、加工対象にするかしないかを示すフラグを加工制御情報記憶部20の区分領域S2~S9の各々に対応するデータ記憶領域に記憶する。
全体制御部15は、
図4と
図5のフローチャートに従った動作が終了したら、基板1への加工を始めるにあたり加工制御情報記憶部20の内容を事前に調べ、加工対象であることを示す加工対象フラグF1が記憶されている区分領域について加工順番を決め、順次加工を実行するように制御する。
【0022】
以上の実施例1によれば、基板1に曲がって盛り上がる領域が存在することにより加工精度を確保できない場合、加工精度を確保できる領域だけ加工し、加工精度を確保できない領域の加工は行わないようにしたので、加工精度を向上させることができるとともに、そもそも加工精度を確保できない領域の無駄な加工時間をなくすことができる。
【実施例2】
【0023】
実施例1においては、所定値を超える差Cをもつ区分領域は加工対象としないようにしたが、このような区分領域も加工すべき深さの補正を行うことにより加工するようにした実施例2を以下説明する。ここでは、実施例1と異なる点だけ説明する。
ドリル加工装置の構成は
図1と同じである。
全体制御部15は、基板1に加工を始めるにあたり、
図4と
図6に示すフローチャートに従って以下の動作を行うように制御する。
【0024】
実施例2においては、実施例1と同様、
図4におけるステップ41~48と同じ動作を行う。
ステップ48において、差Cが所定値以下の場合(YES)には加工深さの補正が不要であることを示す補正不要フラグF3を加工制御情報記憶部20における区分領域S1に対応するデータ記憶領域に書込む(ステップ61)。
ステップ48において、差Cが所定値を超える場合(NO)には差Cに基づき加工すべき深さの補正値αを求める(ステップ62)。この場合の補正値αは、
図7において説明すると、ドリル30からの圧力により接触点Pが沈み込んで元々の加工深さL1の点Vが加工深さL4となる点Wに下がるとした場合、元々の加工深さL1から加工深さL4を求めるための加算値である。
補正値αは、差Cとの関係を予め実験等により予め求めておいてテーブルに登録しておき、このテーブルを使って差Cに基づいて求めてもよい。また、差Cと補正値αとの相関関数を予め実験等により求めておいて、差Cから計算式で求めてもよい。
次のステップ63においては、加工深さの補正が必要であることを示す補正要フラグF4と上記により求めた補正値αとを加工制御情報記憶部20における区分領域S1に対応するデータ記憶領域に書込む。
【0025】
以上の動作が終了したら、ステップ64と65に従い、他の残りの区分領域S2~S9の各々についても同様にして加工深さの補正が必要であるかどうかを調べ、加工深さの補正が不要である区分領域につては補正不要フラグF3を、加工深さの補正が必要である区分領域につては補正要フラグF4と補正値αとを、加工制御情報記憶部20の当該区分領域に対応するデータ記憶領域に記憶する。
全体制御部15は、
図4と
図6のフローチャートに従った動作が終了したら、区分領域S1~S9の加工順番を決め、順次加工を実行するように制御する。この場合において、各区分領域を加工する直前で加工制御情報記憶部20における当該区分領域に対応する記憶領域を調べ、補正要フラグF4が書込まれていたら、当該区分領域においては元々与えられている加工深さL1に補正値αを加算して加工するようにする。
【0026】
以上の実施例2によれば、基板に曲がって盛り上がる領域が存在することにより加工精度を確保できなく場合、加工深さを補正して加工精度を確保するようにしているので、加工できない領域を無くすことができる。
【0027】
以上、実施の形態に基づき本発明を具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもなく、様々な変形例が含まれる。
例えば実施例1においては、所定値以下の差Cをもつ区分領域だけ加工対象とし、所定値を超える差Cをもつ区分領域は加工対象としないようにしたが、所定値を超える差Cをもつ区分領域が一つでも存在すれば、その基板を不良品と見做し全体を加工対象としないようにしてもよい。
【0028】
また上記実施例においては、区分領域の数は9個としたが、もっと少なくて多くしても、区分領域間に隙間を設けても、各区分領域の大きさは同じでなくてもよい。要は、基板1の盛り上がりの状態等によって決めればよく、例えば、基板1の四隅と中央部の5箇所に限定してもよい。
さらに、各区分領域での表面高さAとBは同じ表面高さ検出点Zで検知しているが、必ずしも厳密に同じ位置である必要はなく、基板の盛り上がりの状態等によって必要に応じてずれていてもよく、表面高さ検出点Zの周辺であってもよい。
【0029】
また上記実施例においては、区分領域S1~S9の各々の表面高さを検出するのに中央位置だけを代表として設定したが、必ずしも中央位置である必要はない。
また区分領域S1~S9の各々の表面高さ検出位置の数をもっと多くして、所定値を超える差Cをもつ表面高さ検出位置が一つでも存在したり、差Cの平均値が所定値を超えていたら、実施例1においてはその区分領域を加工対象としないようにしたり、実施例2においてはその区分領域で加工深さの補正を行うようにしてもよい。
【0030】
また上記実施例においては、高さ検出記憶部A18、高さ検出記憶部B19及び加工制御情報記憶部20を別々の記憶部としたが、まとめて一つの記憶部にしてもよい。この場合、区分領域S1~S9の各々に対応する記憶領域に、実施例1においては表面高さAと表面高さBと加工対象フラグF1を、あるいは表面高さAと表面高さBと加工非対象フラグF2を記憶するようにすればよい。また実施例2においては表面高さAと表面高さBと補正不要フラグF3を、あるいは表面高さAと表面高さBと補正要フラグF4と補正値αを記憶するようにすればよい。
【0031】
また実施例2においては、差Cが所定値を超える区分領域は全て加工深さを補正して加工するようにしたが、必ずしも適正な補正値αが事前に得られるとは限らない。従って、差Cが所定値を超える区分領域については、差Cの大きさによって補正できる領域と補正できない領域の2種類に分類し、補正できる領域だけ補正するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1:基板、2:加工テーブル、3:スピンドルユニット、4:ドリル、
5:スピンドル、6:スピンドル垂直駆動部、7:テーブル駆動部、
8:プレッシャフット、9:シリンダ、13:ドリル接触検出部、
15:全体制御部、16:スピンドル駆動制御部、17:テーブル駆動制御部、
18:高さ検出記憶部A、19:高さ検出記憶部B、20:加工制御情報記憶部、
S1~S9:区分領域、Z:表面高さ検出点