(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】誤差伝搬を推定するための方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4063 20060101AFI20230609BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20230609BHJP
B23Q 15/013 20060101ALI20230609BHJP
B23Q 15/12 20060101ALI20230609BHJP
B23Q 15/08 20060101ALI20230609BHJP
G05B 19/4069 20060101ALI20230609BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
G05B19/4063 L
G05B19/4155 V
B23Q15/013
B23Q15/12 A
B23Q15/08
G05B19/4069
B23Q17/09 A
B23Q17/09 F
(21)【出願番号】P 2019513811
(86)(22)【出願日】2017-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2017070752
(87)【国際公開番号】W WO2018046261
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-06-16
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン, ペーター
(72)【発明者】
【氏名】カルホリ, ヴァヒド
(72)【発明者】
【氏名】ヘルゴソン, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】イーヴァション, アンデシュ
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-542888(JP,A)
【文献】特開2015-109081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0149498(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
B23Q 15/00-15/28
B23Q 17/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造される複数の部品(108)の各々について、
前記製造される部品の3次元モデル(102)を取得すること(401)と、
切削工具のための工具経路を規定するデータを含む、前記部品を製造するためのコンピュータプログラム(104)を取得すること(402)と、
前記コンピュータプログラムに基づいて、前記製造される部品のジオメトリを推定することにより、第1の推定されたジオメトリを提供すること(403)と、
前記第1の推定されたジオメトリと前記3次元モデルによって規定された前記部品のジオメトリの間の偏差として第1のタイプの偏差を計算すること(404)と、
前記コンピュータプログラムに基づく、機械(107)による前記部品を製造するための機械加工プロセス中に、前記機械において取り込まれたセンサデータ(301)を取得すること(408)と、
前記センサデータに基づいて前記機械加工プロセスの特性を決定することと、
前記機械加工プロセスの特性に基づいて、前記部品の製造中に前記機械により提供される実際の工具経路を推定することと、
前記機械が前記コンピュータプログラムによって提供するように命令された工具経路と、前記部品の前記製造中に前記機械によって提供される前記実際の工具経路の間の偏差として、第2のタイプの偏差を計算すること(409)と、
前記3次元モデルによって規定された前記部品の前記ジオメトリと、製造された前記部品を測定した実際のジオメトリの間の偏差として、第3のタイプの偏差を計算すること(410)とを含む方法(400、500)であって、
前記第1、第2、及び第3のタイプの偏差に基づいて誤差伝搬モデルを更新すること(411)をさらに含み、前記誤差伝搬モデルが、前記第1のタイプの偏差及び前記第2のタイプの偏差に基づいて前記第3のタイプの偏差を計算する、方法。
【請求項2】
前記複数の部品のうち少なくともいくつかについて、
数値制御コードの形態の、後処理されたバージョン(106)の前記コンピュータプログラムを取得すること(405)と、
前記後処理されたバージョンの前記コンピュータプログラムに基づいて、前記製造される部品のジオメトリを推定することにより、第2の推定されたジオメトリを提供すること(406)と、
前記第1の推定されたジオメトリと前記第2の推定されたジオメトリの間の偏差として第4のタイプの偏差を計算すること(407)とをさらに含み、
前記部品の製造は、前記後処理されたバージョンの前記コンピュータプログラムに基づいており、前記第2のタイプの偏差が、前記機械が前記後処理されたバージョンの前記コンピュータプログラムによって提供するように命令された工具経路と、前記部品の前記製造中に前記機械によって提供される前記実際の工具経路の間の偏差として計算され、前記第4のタイプの計算された偏差にさらに基づいて前記誤差伝搬モデルが更新され、前記誤差伝搬モデルが、前記第1のタイプの偏差、前記第2のタイプの偏差、及び前記第4のタイプの偏差に基づいて前記第3のタイプの偏差を計算する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記取得されたセンサデータが、前記コンピュータプログラムに基づいて前記機械を制御する制御システムからの位置のフィードバックを含み、前記位置のフィードバックが、前記切削工具又はワークピースを保持するスピンドルの実際の位置を示す値を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記取得されたセンサデータが切削工具からのセンサデータを含み、前記機械加工プロセスの特性が、
前記切削工具の撓み、
前記切削工具の振動、
前記切削工具の温度膨張、
前記切削工具の摩耗、および/または
前記切削工具の破損、
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記誤差伝搬モデルを更新した後に、
製造される追加部品の3次元モデルを取得すること(501)と、
切削工具の工具経路を規定するデータを含む、前記追加部品を製造するためのコンピュータプログラムを取得すること(502)と、
前記コンピュータプログラムに基づいて、前記製造される追加部品のジオメトリを推定することにより、前記追加部品の推定されたジオメトリを提供すること(503)と、
前記追加部品の前記推定されたジオメトリと、前記追加部品の前記3次元モデルによって規定される前記追加部品のジオメトリの間の第1のタイプの偏差を計算すること(504)と、
前記コンピュータプログラムに基づく、機械による前記追加部品を製造するための機械加工プロセス中に、前記機械において取り込まれた追加のセンサデータを取得すること(508)と、
前記追加のセンサデータに基づいて前記機械加工プロセスの特性を決定することと、
前記機械加工プロセスの特性に基づいて、前記追加部品の製造中に前記機械により提供される実際の工具経路を推定することと、
前記機械が前記コンピュータプログラムによって提供するように命令された工具経路と、前記追加部品の製造中に前記機械によって提供される前記実際の工具経路の間の偏差として、第2のタイプの偏差を計算すること(509)と、
前記誤差伝搬モデルおよび前記追加部品の前記計算された第1及び第2のタイプの偏差に基づいて、前記3次元モデルによって規定される前記追加部品の前記ジオメトリと、製造される前記追加部品の実際の形状の間の偏差を計算すること(520)とをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
部品の3次元モデル(102)に基づいて前記部品を製造するためのコンピュータプログラム(104)を生成するためのプロセス(103)における、
機械加工作業、
機械加工作業の順序、
切削工具、
工具組立体、
工具経路、および/または
切削データ、
を選択するために、前記更新された誤差伝搬モデルに基づいて命令を生成することをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
機械による特定の部品の製造中に前記機械において取り込まれた前記センサデータ(301)に基づいて、前記特定の部品の前記製造中に切削データを調節するように前記機械を制御するための制御信号を生成することをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
機械による特定の部品の製造中に前記機械において取り込まれた前記センサデータ(301)に基づいて、後続の部品を製造するための切削データを調節するように前記機械を制御するための命令を生成することをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
製造中に、機械を制御するために、前記機械による部品の製造中に前記機械において取り込まれたセンサデータを採用する方法のルールを、前記更新された誤差伝搬モデルに基づいて更新することをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
システムに、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実行させる
ためのコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項において規定される方法を実行するように構成されたシステム(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に機械加工に関し、詳細には機械加工作業のプロセス計画および監視に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品は、多くの場合、部品のコンピュータ支援設計(CAD)モデルに基づいて製造される。減法製造は、切断、穴あけ、フライス加工、旋削、リーマ通し、ねじ切り、または研削などの機械加工作業を含む。コンピュータ支援製造(CAM)は、一般的には、ワークピースから材料を切り取るための機械加工中に使用される工具の経路を生成するように採用される。
【0003】
製造される部品の品質および精度、製造時間、ならびに切削工具の摩耗は、多くの要因に依拠する可能性がある。そのような要因は、適切な機械加工作業、切削工具、および切削データの選択など、予機械加工段階の間に行われる判断を含みうる。他の要因には、工具の破損、振動、びびりなど、実際の機械加工中に生じる状況がありうる。
【0004】
これらすべての要因の相互作用は複雑で、詳細に予測するのが困難なことがある。しかしながら、機械加工の精度が低下する恐れのある状況、または製造される製品の表面品質が低すぎる恐れのある状況を、防止するかまたは検知する方法を見いだすのが望ましいであろう。工具破損のリスクが高い状況を防止するかまたは検知することも望ましいであろう。製造された部品の品質が低すぎる場合には、この低品質の原因を検知して対処することも望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
前述の問題のうち少なくとも1つにうまく対処するために、独立請求項において規定された特徴を有する方法、システム、およびコンピュータプログラム製品が提供される。望ましい実施形態は従属請求項において規定されている。
【0006】
したがって、第1の態様によれば、方法が提供される。この方法は、製造される複数の部品の各々について、
・製造される部品の3次元モデルを取得することと、
・切削工具のための工具経路を規定するデータを含む、部品を製造するためのコンピュータプログラムを取得することと、
・コンピュータプログラムに基づいて、製造される部品のジオメトリを推定することにより、第1の推定されたジオメトリを提供することと、
・第1の推定されたジオメトリと3次元モデルによって規定された部品のジオメトリの間の偏差として第1のタイプの偏差を推定することと、
・コンピュータプログラムに基づく、機械による部品の製造中に、機械において取り込まれた(または収集された)センサデータを取得することと、
・センサデータによって指示された機械加工プロセスの特性に基づいて、機械が前記コンピュータプログラムによって提供するように命令された工具経路と、部品の製造中に機械によって提供される実際の工具経路の間の偏差として、第2のタイプの偏差を推定することと、
・3次元モデルによって規定された部品のジオメトリと、製造された部品を測定した実際のジオメトリの間の偏差として、第3のタイプの偏差を計算することとを含む。
【0007】
この方法は、推定された偏差と計算された偏差とに基づいて誤差伝搬モデルを更新することをさらに含む。誤差伝搬モデルは、第1のタイプの偏差と第3のタイプの偏差の間の関係と、第2のタイプの偏差と第3のタイプの偏差の間の関係とを近似する。
【0008】
部品を製造するためのコンピュータプログラムは、たとえば部品の3次元モデル(3Dモデル)に基づいて生成されうる。コンピュータプログラムは、適切な切削工具、工具経路および切削データに関する複数の仮定に基づきうる機械加工の方策に基づいて生成されうる。第1のタイプの偏差は、そのような仮定に起因する偏差、および/またはコンピュータプログラムを生成するために採用されたソフトウェアにおける精度などの制約に起因する、3Dモデルからの偏差を指示しうる。
【0009】
異なるタイプの偏差(誤差伝搬モデルによって提供されるもの)の間の関係(または依存性)の知見があれば、たとえば機械加工精度の低下または他の望ましくない事象を検知することまたは予測することが容易になりうる。異なるタイプの偏差(誤差伝搬モデルによって提供されるもの)の間の関係(または依存性)の知見があれば、たとえばそのような望ましくない事象が一旦検知されたとき、望ましくない事象(製作された製品の、所与の許容範囲内にないジオメトリなど)の根本原因を検知することが容易になりうる。推定された偏差と部品の大きなセットについて計算された偏差とに基づいて誤差伝搬モデルを更新することにより、誤差伝搬モデルの精度(または信頼性)が、時間が経つにつれて向上しうる。
【0010】
3次元モデル(すなわち3Dモデル)は、たとえばデジタルモデルでよく、たとえばコンピュータ支援設計モデル(すなわちCADモデル)でよい。3Dモデルは、たとえば品質要求および関係のある半完成品に関する埋込み情報を含みうる。
【0011】
複数の部品が、たとえば同一の3Dモデルに基づいて製造されてよく、部品の各々についてその都度この3Dモデルを生成する必要はない可能性があることが理解されよう。3Dモデルは、たとえば記憶装置から受け取られてよく、または取り出されうる。
【0012】
たとえばコンピュータプログラムに含まれうる工具経路データ(拡張子.clを有するファイルのデータなど)は機械独立であり、数値制御コード(NCコード)に変換(または後処理)してからでないと、コンピュータ数値制御(CNC)ベースの機械によって実行されえない。コンピュータプログラムは、たとえば機械独立のデータフォーマットを後処理することによって取得されたNCプログラムでよい。
【0013】
コンピュータプログラムは、たとえば3Dモデルに基づいて生成されてよく、または記憶装置から受け取られてよく、取り出されてもよい。
【0014】
コンピュータプログラムは、たとえば機械加工作業、作業順序、および/または工具経路に関連した切削データを規定するデータを含みうる。
【0015】
部品のジオメトリは、形状、サイズ(または寸法)、および/または部品の表面粗さなどの特徴を含みうることが理解されよう。
【0016】
第1の推定されたジオメトリは、たとえばコンピュータプログラムによって規定された工具経路を基に部品のジオメトリを推定することによって取得されてよい。
【0017】
機械加工プロセスの特性は、たとえば機械の状態、機械運動学、機械加工のダイナミクス、および/または静的もしくは動的な切削工具の処理特性を含みうる。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、複数の部品のうち少なくともいくつかについて、
・後処理されたバージョンのコンピュータプログラムを獲得すること、
・後処理されたバージョンのコンピュータプログラムに基づいて、製造される部品のジオメトリを推定することにより、第2の推定されたジオメトリを提供すること、および
・第1の推定されたジオメトリと第2の推定されたジオメトリの間の偏差として第4のタイプの偏差を推定することとをさらに含みうる。
【0019】
第2のタイプの偏差は、機械加工プロセスの特性に基づいて、機械が後処理されたバージョンのコンピュータプログラムによって(コンピュータプログラムから間接的に)提供するように命令された工具経路と、部品の製造中に機械によって提供される実際の工具経路の間の偏差として推定されうる。第4のタイプの推定された偏差に基づいて誤差伝搬モデルが更新されうる。誤差伝搬モデルは、第4のタイプの偏差と第3のタイプの偏差の間の関係も近似してよい。
【0020】
後処理されたバージョンのコンピュータプログラムは、たとえばコンピュータプログラムを後処理することによって取得される。そのような後処理は、コンピュータプログラムを実行するように意図された特別な制御システムに関する仮定に基づきうる。第4のタイプの偏差は、特定のタイプの制御システムおよび/または後処理(たとえば採用された内挿および/または外挿)の精度に関係する偏差を指示しうる。
【0021】
後処理されたバージョンのコンピュータプログラムは、たとえばコンピュータプログラムを実際に後処理することにより、または後処理されたバージョンのコンピュータプログラムを記憶装置から取り出すことによって、取得されてよい。
【0022】
第2の推定されたジオメトリは、たとえば後処理されたバージョンのコンピュータプログラムによって規定された工具経路を基に部品のジオメトリを推定することによって取得されてよい。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、取得されたセンサデータは、コンピュータプログラムを基に機械を(直接的または間接的に)制御する制御システムからの位置フィードバックを含みうる。
【0024】
機械加工中に実際に機械に提供される運動は、コンピュータプログラムにおいて指示された工具経路を提供するのに必要な運動からいくぶん逸脱することがある。そのような偏差を検知するために、制御システムからの位置フィードバックが採用されてよい。
【0025】
制御システムは、たとえばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を含みうる(またはPLCの形で用意されてもよい)。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、取得されたセンサデータは、(たとえば機械に配置された)切削工具からのセンサデータを含みうる。機械加工プロセスの特性には、切削工具の撓み、切削工具の振動、切削工具の温度膨張、摩耗(たとえば切削工具の摩耗)、工具の破損、および/またはチップの破損が含まれうる。たとえばそのような機械加工プロセスの特性を推定するために、切削工具からのセンサデータが採用されてよい。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、取得されたセンサデータは、機械の切削工具とは別の部分からのセンサデータを含みうる。機械加工プロセスの特性は、機械の部品間の接触緩み(もしくはすきま)、および/または機械の可動部に関する摩擦の特定のレベルを含みうる。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、取得されたセンサデータは、動的力測定センサ(たとえば加速度計または動力計)、力測定センサ、トルク測定センサ、温度センサ、寸法測定センサ、表面粗さ測定センサ、位置決めセンサ、誘導性センサ、および/または光センサからのデータを含みうる。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、誤差伝搬モデルを更新した後に、
・製造される追加部品の3次元モデルを獲得することと、
・切削のための工具経路を規定するデータを含む、追加部品を製造するためのコンピュータプログラムを獲得することと、
・コンピュータプログラムに基づいて、製造される追加部品のジオメトリを推定することにより、追加部品の推定されたジオメトリを提供することと、
・追加部品の推定されたジオメトリと、追加部品の3次元モデルによって規定される追加部品のジオメトリの間の第1のタイプの偏差を推定することと、
・コンピュータプログラムに基づく、機械による追加部品の製造中に、機械において取り込まれた追加センサのデータを獲得することと、
・追加センサのデータによって指示された機械加工プロセスの特性に基づいて、機械がコンピュータプログラムによって提供するように命令された工具経路と、追加部品の製造中に機械によって提供される実際の工具経路の間の偏差として、第2のタイプの偏差を推定することと、
・誤差伝搬モデルおよび追加部品の推定された偏差に基づいて、3次元モデルによって規定される追加部品のジオメトリと、製造される追加部品の実際の形状の間の偏差を推定することとをさらに含みうる。
【0030】
3次元モデルによって規定される追加部品のジオメトリと、製造される追加部品の実際の形状の間の偏差が推定されうるので、製造される追加部品の品質を査定するための測定が、たとえば省かれる可能性があり、簡単になる可能性がある(または測定の回数が低減される可能性がある)。したがって、全体の生産時間および/または生産コストが低減されうる。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、誤差伝搬モデルを更新した後に、
・製造される追加部品の3次元モデルを獲得することと、
・切削工具の工具経路を規定するデータを含む、追加部品を製造するためのコンピュータプログラムを獲得することと、
・コンピュータプログラムに基づいて、製造される追加部品のジオメトリを推定することにより、追加部品の推定されたジオメトリを提供することと、
・追加部品の推定されたジオメトリと、追加部品の3次元モデルによって規定される追加部品のジオメトリの間の第1のタイプの偏差を推定することと、
・コンピュータプログラムに基づく、機械による追加部品の製造中に、機械において取り込まれた追加センサのデータを獲得することと、
・追加センサのデータによって指示された機械加工プロセスの特性に基づいて、機械がコンピュータプログラムによって提供するように命令された工具経路と、追加部品の製造中に機械によって提供される実際の工具経路の間の偏差として、第2のタイプの偏差を推定することと、
・追加部品とともに送出するための(または追加部品とともに送出することになっている)、追加部品の推定された偏差を含むドキュメンテーションを用意することとを含みうる。
【0032】
ドキュメンテーションは、部品を(たとえば部品の品質または表面構造について)評価するため、および/または部品の形状もしくは表面構造が通常よりも劣る可能性がある部分を見つけるために採用されうるものである。ドキュメンテーションは、たとえば、製造された部品において検知された偏差の根本原因を識別するために採用されてよい。
【0033】
ドキュメンテーションは、たとえばデータの形態で(たとえばデジタルドキュメントまたはデータファイルで)、または紙文書の形態で用意されうる。ドキュメンテーションは、たとえばインターネットを通じて配送されてよい。
【0034】
ドキュメンテーションは、たとえば追加センサのデータのいくらかまたはすべてを含みうる。ドキュメンテーションは、たとえば誤差伝搬モデルを含みうる。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、部品を製造するためのコンピュータプログラムを部品の3次元モデルに基づいて生成するプロセスにおいて、更新された誤差伝搬モデルあるいは推定された偏差および計算された偏差に基づいて、
・機械加工作業、
・機械加工作業の順序、
・切削工具、
・工具組立体、
・工具経路、および/または
・切削データ、を選択するための命令を生成することを含みうる。言い換えれば、予機械加工を実行するための方法(すなわちプロセス計画)の設定は、更新された誤差伝搬モデルあるいは推定された偏差および計算された偏差に基づいて調節(または修正)されてよい。
【0036】
たとえば、各命令が、最適化された機械加工作業の選択の方法、切削工具および工具組立体の最適化された選択、ならびに/あるいは作業順序および切削データの最適化された選択を指示してよい。
【0037】
コンピュータプログラムは、たとえばNCプログラムでよく、または後処理してからでないとCNCベースの機械によって実行されえない機械独立のプログラムでもよい。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、機械による特定の部品の製造中に機械において取り込まれたセンサデータに基づいて、特定の部品の製造中にすでに切削データ(たとえば送り速度または主軸速度)を調節するように機械を制御するための制御信号を生成することを含みうる。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、機械による特定の部品の製造中に機械において取り込まれたセンサデータに基づいて、後続の部品を製造するために、切削データ(たとえば送り速度または主軸速度)を調節するように機械を制御するための命令を生成することを含みうる。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、機械による部品の製造中に機械において取り込まれたセンサデータを、更新された誤差伝搬モデルあるいは推定された偏差および計算された偏差に基づいて、製造中に(または機械加工中に)機械を制御するために採用する方法のルール(または統計モデル、数値モデルまたは機械的モデルなどのモデル)を更新することを含みうる。
【0041】
機械加工プロセス(または切削プロセス)をモデル化するために、たとえばモデル(たとえば統計モデル)が採用されてよい。モデルは、たとえばセンサデータに基づく製造中に(または機械加工中に)機械を制御するために採用されてよい。モデルは、たとえば、更新された誤差伝搬モデルあるいは推定された偏差および計算された偏差に基づいて更新されてよい。
【0042】
第2の態様によれば、第1の態様の任意の実施形態による方法を実行するための命令を有するコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品が提供される。
【0043】
第1の態様による方法の特徴に関して上記で提示された利益は、一般に、第2の態様によるコンピュータプログラム製品の対応する特徴に関して有効でありうる。
【0044】
コンピュータ可読媒体は、たとえば一時的または非一時的なコンピュータ可読媒体でよい。
【0045】
第3の態様によれば、第1の態様の任意の実施形態による方法を実行するように構成されたシステムが提供される。
【0046】
第1の態様による方法の特徴に関して上記で提示された利益は、一般に、第3の態様によるシステムの対応する特徴に関して有効でありうる。
【0047】
このシステムは、たとえばこの方法を実行するように構成された処理セクション(またはプロセッサ)を備えうる。このシステムは、たとえば分散型の方法で方法を実行するように構成された多重処理セクションを含みうる。
【0048】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲において列挙された特徴のすべての可能な組合せに関係することが注目される。
【0049】
以下では、添付図面を参照しながら、例示の実施形態がより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】部品のコンピュータモデルに基づいて部品が製造されうる様子の概略図である。
【
図2】一実施形態による部品のプロセス計画ならびに製造中のフィードバックおよび制御の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図はすべて概略図であり、一般に、それぞれの実施形態を解明するのに必要な部分のみを示し、他の部分は省略されるかまたは単に示唆されうる。
【0052】
図1は、部品のコンピュータモデルに基づいて部品が製造されうる様子の概略である。製造される部品は、コンピュータ支援設計(CAD)101を使用してコンピュータ上で設計される。それによって部品の3Dモデル102が取得される。3Dモデルは、部品の形状および寸法ならびに公差および品質要求などの他の情報を規定するデジタルモデルである。次いで、金属切削加工によってワークピースから部品を製造するための工具経路を生成するためにコンピュータ支援製造(CAM)103が採用される。CAM 103によって取得された工具経路データ104は、たとえばファイル拡張子.clを伴うコンピュータプログラム104として記憶されうる。工具経路データ104は、たとえば特定の切削工具および特定の切削データ(たとえば削り速度および送り速度)を使用する一連のフライス加工または旋削の動作を規定しうる。CAM 103の結果は、次いで、105により、部品が製造される機械107の制御システム(またはプログラマブルロジックコントローラ(PLC))によって採用されている言語106に変換される。この変換105は後処理105と呼ばれる。後処理105の結果は、コンピュータ数値制御(CNC)を使用する機械107に適した数値制御(NC)コード106でよい。制御システム(またはPLC)は、NCプログラム106に基づき、機械107のサーボ機構を制御して、ワークピースに対して切削工具を移動させる。切削工具の切れ刃は、部品108を形成するようにワークピースから材料を切り取る。部品108が製造されるワークピースは、たとえば鋼またはアルミニウムなどの金属を備える。金属切削加工のために採用される切れ刃は、たとえば超硬合金を備えうる。この例では、製造される部品はブレードディスク108である。
【0053】
前述のプロセスにおけるいくつかの要因が、部品のCADモデル102と製造によって取得された実際の部品108の間の偏差の原因になることがある。上記で説明された様々なステップに関連した様々な仮定、近似および/または制約に依拠して、誤差または偏差が生じる可能性がある。本開示において検討される偏差は、たとえば、
・CADモデル102に基づいてCAMプログラム104を生成するときに提供される偏差と、
・後処理105中に提供される偏差と、
・機械107のサーボ機構を介してPLCによって提供された運動が、NCコード106によって指定された運動に合致しないことがあるという事実に起因する偏差と、
・機械107の工具の切削におけるイベント(撓み、振動、温度膨張など)に起因する偏差とを含む。
【0054】
図2は、一実施形態による部品のプロセス計画ならびに製造中のフィードバックおよび制御の概略である。部品を製造する前に、最初に、201において、コンピュータにおいてたとえばCADソフトウェアを使用して部品の3Dモデルが生成される。部品は、たとえば鋼またはアルミニウムなどの金属を備えうる。次いで、202において、部品を製造するのに適切な機械が判定される(または選択される)。機械は、たとえば切削、穴あけ、フライス加工、旋削、リーマ通し、ねじ切りまたは研削などの減法製造によってワークピースから部品を製造するように適合されてよい。202において機械が一旦選択されると、203において、部品を製造するのに適切な機械加工作業が判定される。採用される作業は、たとえばワークピースから(精度を犠牲にして)材料が急速に取り除かれる荒削りと、適切な精度および表面品質を提供するようにワークピースから材料がよりゆっくり取り除かれる仕上げ作業とを含みうる。荒削りと仕上げの間の中間の作業として中削りも採用されてよい。204において、それぞれの作業に適切な切削工具が判定される(または選択される)。203で選択された機械加工作業および204で選択された切削工具を含めて、全体的な工具最適化205が実行されてよい。次いで、206において、送り速度、主軸速度および切込み歯丈などの切削データが判定される(または選択される)。次いで、207において、部品を製造するための時間およびコストが推定されうる。206において切削データの適切な開始値を判定するために(または選択するために)、208において最適化が実行されうる。次いで、209において工具経路が生成される。衝突の可能性を予測するために、210において工具経路のCAMシミュレーションが実行される。次いで、生成された工具経路に対して送り速度および主軸速度を調節するために、211においてMACHPROなどの最適化ソフトウェアが採用されうる。次いで、212において、製造時間およびコストの最終的な推定が計算される。次いで、213において、以前に判定された機械、作業、工具経路および切削データを使用して部品が製造される。
図1を参照しながら説明されたように、213において部品を製造するために、CAM 103が生成した機械独立の工具経路データを、特定の機械を制御するように採用されるNCコード106に変換するために、後処理105が採用されてよい。214において、製造部品に対して品質評価を実行してよい。品質評価は、たとえば部品の形状、寸法および表面粗さを測定することによって実行されうる。そのような測定は、たとえばプローブを使用して、または光学的測定デバイスによって、実行されうる。光学的測定は、たとえば評価する部品に光ビームを向けて、部品によって光センサ(カメラなど)へ反射された光の強さに基づいて部品を評価することによって実行されてよい。
【0055】
図2に示されるように、システム300は、ステップ201~214の確実性を監視して、これらのステップ201~214のうちいくつかに対してフィードバックを供給してもよい。
図3および
図4は、システム300によって、それぞれの実施形態に従って実行される方法の流れ図である。
図2~
図4を参照しながら、以下でシステム300の作業を説明する。
【0056】
図3は、一実施形態に従ってシステム300によって実行される方法400の流れ図である。方法400が形成する学習段階では、システム300は、異なるステージにおいて生じる誤差または偏差が製作される製品に影響する様子を予測するために、複数の部品のプロセス計画(または予機械加工段階)および製造(または機械加工中の段階)からの経験的データを採用する。
【0057】
方法400では、複数の部品を製造するために複数のステップが繰り返される。第1のステップ401において部品の3Dモデルが取得される。
図2を参照しながら説明されたように、201では、コンピュータにおいて3DモデルがCADモデルとして生成されていてよい。システム300は、401において、たとえばCADモデルを生成したコンピュータまたはCADモデルが記憶されている記憶装置からCADモデルを獲得することができる。同一のモデルに基づいて複数の部品が製造される場合には、モデルはたとえば1回取り出せばよく、部品の各々についてその都度取り出す必要はない。
【0058】
次いで、402において、部品を製造するためのコンピュータプログラムが取得される。本実施形態では、コンピュータプログラムは、(
図1を参照しながら説明されたコンピュータプログラム104のように)CADモデルに基づいてCAMソフトウェアによって生成される。コンピュータプログラムは、CAMソフトウェアによって生成された工具経路データを含み、たとえば拡張子.clを伴うファイルの形態で与えられうる。システム300は、コンピュータプログラムを、たとえばコンピュータプログラムを生成したコンピュータから受け取ってよく、または記憶装置から取り出してもよい。
【0059】
方法400は、コンピュータプログラムに基づいて、製造される部品のジオメトリを推定することにより、第1の推定されたジオメトリを提供すること403を含む。第1の推定されたジオメトリは、たとえばコンピュータプログラムによって規定された機械加工作業、工具経路、および切削データによって推定されうる。
【0060】
方法400は、第1の推定されたジオメトリと3次元モデルによって規定された部品のジオメトリの間の偏差を推定すること404を含む。このタイプの偏差は、本明細書では第1のタイプの偏差と称される。部品の3Dモデルに基づいて部品を製造するための工具経路を生成する様々な方法がある。工具経路を生成するときの判断(たとえば
図2を参照しながら説明されたステップ201~213を参照されたい)が異なれば、3Dモデルからの偏差も異なったものになる。
【0061】
方法400は、後処理されたバージョンのコンピュータプログラムを獲得すること405を含む。本実施形態では、後処理されたバージョンは、(
図1を参照しながら説明された、後処理されたコンピュータプログラム106のように)NCコードの形態で与えられる。後処理されたバージョンのコンピュータプログラムは、たとえばこれを生成した後処理デバイスから受け取られてよく、記憶装置から取り出されてもよい。
【0062】
方法400は、後処理されたバージョンのコンピュータプログラムに基づいて、製造される部品のジオメトリを推定することにより、第2の推定されたジオメトリを提供すること406を含む。第2の推定されたジオメトリは、たとえば後処理されたバージョンのコンピュータプログラムによって規定された機械加工作業、工具経路、および切削データによって推定されうる。
【0063】
方法400は、第1の推定されたジオメトリと第2の推定されたジオメトリの間の偏差を推定すること407を含む。このタイプの偏差は、本明細書では第4のタイプの偏差と称される(第2のタイプの偏差および第3のタイプの偏差は以下で説明する)。
【0064】
方法400は、機械による部品の製造中に機械において取り込まれたセンサデータを獲得すること408を含む(部品の製造は、後処理されたバージョンのコンピュータプログラムに基づくことにより、コンピュータプログラムに間接的に基づくものである)。
【0065】
センサデータは、
図2において、機械加工のステップ213からシステム300への信号301によって指示されている。センサデータ301は、たとえばコンピュータプログラムの処理されたバージョンに基づいて機械を制御する制御システムからの位置フィードバックを含みうる。センサデータ301は、機械からの(たとえば動力計で測定された)力フィードバックも含みうる。機械の制御システムは、たとえばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)でよい。PLCは、機械のサーボ機構を制御して、切削工具をワークピースに対して移動させてよい。制御システム(またはPLC)からの位置フィードバックは、機械の、切削工具またはワークピースを保持するスピンドルなどの部分を移動させる実際の位置を指示してよい。(たとえばNCコードの形態の)後処理されたコンピュータプログラムは、機械加工中に切削工具を移動させる要領を記述してよい。しかしながら、PLCは、たとえばサーボ機構の物理的制約、特定の可動部品の間の大きな摩擦、または機械の(スピンドルまたはツーリングシステムにおけるものなど)特定の部分間の緩み接触(もしくはすきま)のために、機械に正確な工具経路をとらせることができない可能性がある。
【0066】
取得されたセンサデータ301は、たとえば切削工具に(または切削工具の内部に)配置されたセンサからのセンサデータを含みうる。センサは、加速度計、歪ゲージ、および/または温度センサを含みうる。歪ゲージからのセンサデータは、切削工具の切れ刃がそれたこと、および/または摩耗したことを指示する可能性がある。加速度計からのセンサデータは、切れ刃の振動を指示する可能性がある。温度センサからのセンサデータは、高温のために切削工具が膨張したと指示する可能性がある。機械がそのような状態であると、意図された切削アクションと実際の切削アクションの間の偏差を提供することがあり、それによって、実際に取得された部品が予期されたものとは異なるジオメトリを有することがある。
【0067】
方法400は、センサデータが指示する機械プロセスの特性に基づいて、機械が後処理されたバージョンのコンピュータプログラムによって(コンピュータプログラムから間接的に)提供するように命令された工具経路と、部品の製造中に機械によって提供される実際の工具経路の間の偏差を推定すること409を含む。このタイプの偏差は、本明細書では第2のタイプの偏差と称される。
【0068】
機械プロセスの特性は、切削工具の撓み、振動、温度膨張を含みうる。機械プロセスの特性は、PLCが、PLCに提供される後処理されたコンピュータプログラムによって命令された機械の運動を提供しえないことを含む可能性がある。機械プロセスの特性は、切削工具における摩耗、工具の破損、またはチップの破損(機械加工中にワークピースから取り除かれた材料によるチップの破損)を含みうる。
【0069】
方法400は、3Dモデルによって規定された部品のジオメトリと、製造された部品を測定した実際のジオメトリの間の偏差を計算することを含む。このタイプの偏差は、本明細書では第3のタイプの偏差と称される。
【0070】
それぞれの部品に関する推定された偏差および計算された偏差(すなわち第1、第2、第3、第4のタイプの偏差)は、異なるタイプの偏差が互いに関係する様子を近似(定義)するために採用されてよい。したがって、方法400は、推定された偏差と計算された偏差とに基づいて誤差伝搬モデルを更新すること411を含む。誤差伝搬モデルは、たとえば第1のタイプの偏差と第3のタイプの偏差の間の関係、第2のタイプの偏差と第3のタイプの偏差の間の関係、および第4のタイプの偏差と第3のタイプの偏差の間の関係を近似しうるものである。言い換えれば、誤差伝搬モデルは、これらのタイプの偏差が互いに依拠する様子を指示するものである。
【0071】
誤差伝搬モデルは、たとえば、予機械加工中に生じる偏差(すなわち第1のタイプの偏差および第4のタイプの偏差)および機械加工中に生じる偏差(すなわち第2のタイプの偏差)に基づいて、製造される部品における偏差(すなわち第3のタイプの偏差)を推定するために採用されうる。誤差伝搬モデルは、たとえば製造された製品における誤差の根本原因を識別するために採用されうる。
【0072】
誤差伝搬モデルを更新すること411は、それぞれの製造された部品についてその都度実行されてよく、またはいくつかの部品の製造からの経験的データが入手可能なとき実行されてもよい。
【0073】
3Dモデル(たとえば
図1のモデル102)によって規定された部品の形状と、コンピュータプログラムの処理されたバージョン(たとえば
図1における後処理されたコンピュータプログラム106)によって規定された形状の間の偏差が推定される実施形態も構想されてよく、この実施形態の誤差伝搬モデルは、第1の(または第4の)タイプの偏差と第3のタイプの偏差の間の関係ではなく、このタイプの偏差と第3のタイプの偏差の間の関係を近似するものである。
【0074】
システム300は、
図3を参照しながら説明された学習段階の後に、
図4を参照しながら説明される定常状態において継続してよい。
図4は、
図3を参照しながら説明された定常状態の方法400、ならびに、さらなる部品が製造される定常状態を含む方法500の流れ図である。
【0075】
方法500は、誤差伝搬モデルが十分な量の経験的データ(
図4に、学習方法400によって、方法500の始まりのブロックとして表されたもの)に基づいて一旦更新されると、さらなる部品(本明細書では、以前に製造された部品と区別するために追加部品とも称される)の製造を準備することによって継続する。
【0076】
方法500に含まれるステップ501~509は、
図3を参照しながら上記で説明された方法400のステップ401~409に類似であるが、追加部品のためのステップである。たとえば、方法500は、第1のタイプの偏差を推定すること504と、第4のタイプの偏差を推定すること507と、第2のタイプの偏差を推定すること509とを含む。
【0077】
方法500は、ステップ501~509が一旦実行されると、誤差伝搬モデルと、追加部品の推定された偏差(すなわち第1のタイプの偏差、第2のタイプの偏差および第4のタイプの偏差)とに基づいて、追加部品の3Dモデルによって規定される追加部品のジオメトリと製造される追加部品の実際の形状の間の偏差を推定すること520によって継続する。
【0078】
誤差伝搬モデルが、3Dモデルによって規定された追加部品のジオメトリと、製造される追加部品の実際の形状の間の偏差が推定されることを許容するので、部品の実際の形状を測定する必要性が低減される。第1のタイプ、第2のタイプおよび第4のタイプの推定された偏差は、たとえば最終的な部品のジオメトリ(たとえばサイズ、寸法および/または表面粗さ)が公差の範囲内に入るかどうか予測するために採用されうる。そのために、そうでなければ高くつく、製造部品の品質を評価するための機械加工後のステップがなしで済まされうる。3Dモデルよって規定された部品のジオメトリと製造される部品の実際の形状の間の推定された偏差は、たとえば公差の範囲内にあるかどうか判定するために測定する必要がある部品を選び出すため、または公差の範囲内にあると結論を下すために測定する必要がない部品を選び出すために採用されうる。
【0079】
誤差伝搬モデルをさらに更新するために、定常状態において(すなわち方法400に用意された学習段階の後に)、製造された製品に対して引き続き測定が実行される実施形態も構想されうる。
【0080】
方法500は、たとえば、製造された追加部品とともに送出されることになっている、追加部品の推定された偏差を含むドキュメンテーションを用意すること530を含む。ドキュメンテーションにより、製造された部品を受け取る利用者は、その特別な部品の製造前または製造中に検知された偏差または他の状態を調査することが可能になりうる。そのようなトレーサビリティにより、製造部品における誤差または偏差の根本原因が、より容易に見つけられうるようになる。
【0081】
システム300は、異なるタイプの偏差が互いに関係する様子を学習することに加えて、
図2を参照しながら説明された予機械加工段階および/または機械加工中の段階に対してフィードバックを供給することもある。
【0082】
方法400(または方法500)は、たとえば更新された誤差伝搬モデルあるいは推定された偏差および計算された偏差に基づいて命令を生成することを含む。これらの命令は、適切な機械加工作業を判定する(203)、適切な切削工具を判定する(204)、適切な切削データを判定する(206)ための、または適切な工具経路を生成する(209)ときの、予機械加工相中に採用されてよい。言い換えれば、これらの命令は、部品を製造するためのコンピュータプログラム(
図1を参照しながら説明されたコンピュータプログラム104または後処理されたコンピュータプログラム106など)を部品の3Dモデルに基づいて生成するプロセス(
図1を参照しながら説明されたCAM 103など)における入力として採用されてよい。そのようなコンピュータプログラムの生成は、切削工具、切削データなどが、機械加工中の振動、びびり、および/またはチップの成形に影響する様子のモデルに基づくものでよい。システム300を介して、経験的データに基づいて取得された学習は、たとえばそのようなモデルを更新するかまたは修正するために採用されうる。
【0083】
このタイプのフィードバックはかなり大きな時間尺度で供給され、大量の経験的データに基づく学習は、後の時点における部品の予機械加工中に採用される。システム300は、学習を速めるために、たとえば複数の機械からデータを受け取ってよい。これらの大量のデータの収集および/または処理のために、インターネット(またはクラウドベースのサービス)が採用されてよい。この可能性として巨大なデータセットの内部のパターンまたは相関を識別するために、たとえば機械学習が採用されうる。複数の機械からデータが受け取られる場合、データの起源(すなわちデータを生成した機械、およびデータを生成したときの機械の状態)を追跡するためにメタデータが必要とされることがある。
【0084】
システム300からのフィードバックは、たとえば最適化ステップ205、208および211のうち1つまたは複数において採用されうる。
【0085】
システム300は、部品の機械加工中などの短い時間尺度でのフィードバックも供給してよい。方法400(または方法500)は、たとえば機械による特定の部品の製造中に機械において取り込まれたセンサデータ301に基づいて、特定の部品の製造中に切削データをすでに調節するように機械を制御するための制御信号を生成することを含みうる。
【0086】
切削工具において振動またはびびりが検知された場合には、振動またはびびりを低減するために、たとえば送り速度または主軸速度が調節されてよい。機械加工中に切削工具において高温または摩耗が検知された場合にも、たとえば送り速度または主軸速度が調節されてよい。
【0087】
方法400(または方法500)は、たとえば機械による特定の部品の製造中に機械において取り込まれたセンサデータ301に基づいて、後続の部品を製造するための切削データを調節するように機械を制御するための命令を生成することを含みうる。言い換えれば、システム300は、次の部品を製造するときに使用される機械にフィードバックを供給しうる。
【0088】
方法400(または方法500)は、たとえば、製造中に、機械を制御するために、機械による部品の製造中に機械において取り込まれたセンサデータを採用する方法のルールを、更新された誤差伝搬モデルあるいは推定された偏差および計算された偏差に基づいて更新することを含みうる。言い換えれば、システム300によって維持された誤差伝搬モデルからの長期フィードバックが、部品の機械加工中の短期フィードバックに影響を及ぼすように採用されてよい。
【0089】
機械加工のためのプロセスパラメータの予測および/または最適化のために、様々なタイプのモデル(たとえば統計モデル、数値モデルまたは機械的モデル)が採用されうる。そのようなモデルは、更新された誤差伝搬モデルに基づいて更新されてよく、次いで、プロセスパラメータを判定する方法に影響を及ぼすことになる。これは、製造中に機械を制御するためのルールが更新されうる様子の一例と見なされうる。
【0090】
システム300によって提供される学習は、たとえば、機械特性(機械の指紋と称されることもある)を、所与の機械に関する機械状態、運動学的挙動および動的挙動などに関して判定するために採用されうる。そのような特性は、たとえば製造された部品とともに送出されるドキュメンテーションに含まれうる。
【0091】
システム300によって提供される学習は、たとえば、切削工具組立体の特性(指紋と称されることもある)を、工具状態ならびに静的挙動および動的挙動に関して判定するために採用されうる。そのような特性は、たとえば製造された部品とともに送出されるドキュメンテーションに含まれうる。
【0092】
システム300は、たとえばオペレータからの入力を考慮に入れるように適合されてよい。オペレータは、たとえばセンサデータまたは製造された部品の測定値に基づいてシステム300に手動フィードバックを供給してよい。
【0093】
本発明が好ましい前述の実施形態に限定されないことが、当業者には理解される。それどころか、添付の特許請求の範囲の範囲内で多くの修正形態および変形形態が可能である。たとえば、製造される部品は、(
図1および
図2のような)ブレード付きのディスクである必要はない。加えて、当業者によって、図面、開示、および添付の特許請求の範囲を研究することから、特許請求された発明を実施する際に、開示された実施形態に対する変形形態が理解されてよく、かつ達成されうる。特許請求の範囲において、「備える/含む」という語は他の要素またはステップを除外するものではなく、また、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は複数を除外するものではない。特定の方策が、互いに異なる従属請求項において列挙されるという単なる事実は、これらの方策の組合せを利益のために使用することはできないことを指示するわけではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。