(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】芽胞の除去方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/045 20060101AFI20230609BHJP
A61K 31/785 20060101ALI20230609BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230609BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230609BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
A61K31/045
A61K31/785
A61K47/26
A61P31/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019556557
(86)(22)【出願日】2018-01-02
(86)【国際出願番号】 US2018012034
(87)【国際公開番号】W WO2018128966
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-25
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】パーササラシー,ランジャニ ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーピー,キャサリン ディー.
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0102053(US,A1)
【文献】特表2018-529631(JP,A)
【文献】特表2015-521229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0152614(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0040700(US,A1)
【文献】特表2016-525590(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0087963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
A61P 31/00-31/22
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芽胞を除去するための方法であって、前記方法が、
皮膚でない表面を第1の液体組成物と接触させることと、
次いで、前記第1の液体組成物の少なくとも一部が前記皮膚でない表面に留まっている間に、第2の液体組成物が充填されたカチオン性コーティングを施した多孔質基材と、前記皮膚でない表面とを接触させることと、を含み、
前記第1の組成物及び前記第2の組成物のうちの1つ以上が、非イオン性界面活性剤を含み、前記第1の組成物又は前記第2の組成物のうちの1つのみが、60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含み、
前記第1の液体組成物の少なくとも一部を有する皮膚でない表面と前記カチオン性コーティングを施した多孔質基材との接触が、芽胞の除去に有効である、方法(ただし、人間を治療する方法を除く)。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の組成物が充填された前記カチオン性コーティングを施した多孔質基材に前記皮膚でない表面を接触させる前に、前記第1の組成物と接触している前記皮膚でない表面を機械的作用に供することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カチオン性コーティングを施した多孔質基材が、カチオン性コーティングを施した拭き取り布を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記
カチオン性コーティングが、グアニジニル含有ポリマーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記グアニジニル含有ポリマーが、下記式(I)、(II)、又は(IV)
【化1】
[式中、
R
1が、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、C
5~C
12(ヘテロ)アリール、又はポリマー鎖の残基であり、
R
2が、共有結合、C
2~C
12(ヘテロ)アルキレン、又はC
5~C
12(ヘテロ)アリーレンであり、
R
3が、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、C
5~C
12(ヘテロ)アリール、又はnが0のとき、ポリマー鎖の残基であり、
各R
4が、独立して、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、又はC
5~C
12(ヘテロ)アリールであり、
R
5が、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、C
5~C
12(ヘテロ)アリール、又は-N(R
4)
2であり、
nが、0又は1であり、
mが、1又は2であり、
xが、少なくとも1に等しい整数である]、
【化2】
[式中、
各R
3が、独立して、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、及びC
5~C
12(ヘテロ)アリールから選択され、
各R
4が、独立して、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、及びC
5~C
12(ヘテロ)アリールから選択され、
各R
5が、独立して、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、C
5~C
12(ヘテロ)アリール、及び-N(R
4)
2から選択され、
mが、1及び2から選択される整数であり、
xが、少なくとも1の整数である]、
【化3】
[式中、
各R
1が、独立して、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、C
5~C
12(ヘテロ)アリール、及びポリマー鎖の残基から選択され、
各R
2が、独立して、共有結合、C
2~C
12(ヘテロ)アルキレン、及びC
5~C
12(ヘテロ)アリーレンから選択され、
各R
3が、独立して、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、及びC
5~C
12(ヘテロ)アリールから選択され、
各R
4が、独立して、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル及びC
5~C
12(ヘテロ)アリールから選択され、
各R
5が、独立して、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、C
5~C
12(ヘテロ)アリール、及び-N(R
4)
2から選択され、
mが、1及び2から選択される整数であり、
xが、少なくとも1の整数である]
で表される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
表面から芽胞を除去するために使用される組み合わせ物であって、
第1の液体組成物、及び
第2の液体組成物が充填されたカチオン性コーティングを施した多孔質基材
を含み、
前記第1の組成物及び前記第2の組成物のうちの1つ以上が、非イオン性界面活性剤を含み、
前記第1の組成物又は前記第2の組成物のうちの1つのみが、60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含み、
前記芽胞の除去は、前記表面を前記第1の液体組成物と接触させ、次いで、前記第1の液体組成物の少なくとも一部が前記表面に留まっている間に、前記第2の液体組成物が充填された前記カチオン性コーティングを施した多孔質基材と前記表面を接触させることを含む方法により行われる、
組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面から芽胞を取り除くための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に病院などの医療現場におけるクロストリジウム・ディフィシルの拡散の予防に対して、非常に強い関心及び緊急性が存在する。病院という状況にいる患者は、多くの場合、一定期間抗生物質を投与されている間又はその直後に、クロストリジウム・ディフィシル感染症にかかる。クロストリジウム・ディフィシルの栄養型を死滅させることは比較的容易であるが、クロストリジウム・ディフィシルの芽胞形態は、死滅させるのが非常に難しい場合がある。したがって、患者、医療従事者、及び環境間でのクロストリジウム・ディフィシルの拡散を予防するという問題に対処するための新しい技術が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、皮膚表面を第1の液体組成物と接触させることと、次いで、第1の液体組成物の少なくとも一部が皮膚表面に留まっている間に、第2の液体組成物が充填されたカチオン性コーティングを施した物品と皮膚表面を接触させることと、を含み、第1の組成物又は第2の組成物のうちの少なくとも1つ及び1つのみが、60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含む、方法が開示される。
【0004】
本開示の上記の概要は、開示される各々の実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを目的としたものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願を通していくつかの箇所において、例のリストによって指針が示されるが、それらの例は様々な組み合わせで使用することができる。いずれの場合にも、記載された列挙は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】拭き取り布の試験に使用される機械的拭き取り装置の概略図である。
【
図1B】拭き取り布の試験に使用される機械的拭き取り装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書で用いる全ての科学用語及び技術用語は、別途明記しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味を有する。本明細書で与えられる定義は、本明細書で頻繁に用いる特定の用語の理解を助けるためのものであり、本開示の範囲の限定を意図するものではない。
【0007】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「頂部」及び「底部」(又は「上部」及び「下部」のような他の用語)は、相対的な説明のために厳密に利用されるものであり、記載される要素が位置している物品の、いかなる全体的配向も示唆するものではない。
【0008】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が別途明示しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。
【0009】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、用語「又は」は、内容が別途明示しない限り、「及び/又は」を含む意味で通常用いられる。用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0010】
本明細書で用いる場合、「有する(have)」、「有する(having)」、「含む(include)」、「含む(including)」、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、オープンエンドの意味で用いられ、通常、「含むが、これらに限定されない」という意味である。「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」などは、「含む(comprising)」などに包含されることが理解されるであろう。例えば、銀「を含む」導電性トレースは、銀「からなる」導電性トレースであってもよく、又は銀「から本質的になる」導電性トレースであってもよい。
【0011】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、ある組成物、装置、システム、及び方法などに関する場合、その組成物、装置、システム、及び方法などの構成成分が、列挙された構成成分と、その組成物、装置、システム、及び方法などの基本的特性及び新規の特性に対して実質的に影響を及ぼさない任意の他の構成成分とに限定されることを意味する。
【0012】
「好ましい」及び「好ましくは」という単語は、ある特定の状況においてある特定の利益を供し得る実施形態を指す。しかし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、特許請求の範囲を含む本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0013】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含み、あるいは10以下は、10、9.4、7.6、5、4.3、2.9、1.62、0.3などを含む)。値の範囲が特定の値「まで」である場合、その値は、その範囲内に含まれる。
【0014】
上の記載及び以下の特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」などの使用は、必ずしも、列挙された数の物体が存在するのを示すことを意図するものではない。例えば、「第2の」基材は、単に、別の基材(例えば「第1の」基材など)から区別することを意図するものでしかない。また、上の記載及び以下の特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」などの使用は、必ずしも、一方が他方よりも時間的に早く現れるのを示すことを意図するものではない。
【0015】
本明細書において使用される場合、芽胞という用語は、細菌芽胞を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「結合する」又は「結合している」という用語は、基材に結合しているカチオン性コーティング(例えば、カチオン性コーティング中のグアニジニル含有ポリマー)、又はカチオン性コーティングを基材に結合させることに関して、基材を破壊することなくカチオン性コーティングを除去することはできないことを意味する。カチオン性コーティングは、基材に化学的に付着させることができ、又は基材の繊維の周囲で架橋することができ、それにより、コーティングは、剥離、水又は有機溶媒に溶解することによって除去することができない。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」は、アルカンの二価の基を指し、直鎖状、分枝状、及び環状アルキレン基を含み、非置換及び置換アルキレン基の両方を含む。特に指示がない限り、アルキル基は、典型的には1~20個の炭素原子を含有する。本明細書で使用される場合、「アルキル」の例としては、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、イソブチレン、t-ブチレン、イソプロピレン、n-オクチレン、n-ヘプチレン、エチルヘキシレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、アダマンチレン、及びノルボルニレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、5~12個の環原子を含有する芳香族の1価のラジカルであり、縮合環を含有してもよく、飽和であっても、不飽和であっても、芳香族であってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、及びアントラシルを含む炭素環が挙げられる。ヘテロアリールは、窒素、酸素、又は硫黄等の1~3個のヘテロ原子を含有するアリールであり、縮合環を含有してもよい。ヘテロアリール基のいくつかの例は、ピリジル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、及びベンゾチアゾリル(benzthiazolyl)である。用語「(ヘテロ)アリール」は、アリール基及びヘテロアリール基の両方を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アリーレン」は、5~12個の環原子を含有する芳香族の2価のラジカルであり、縮合環を含有してもよく、飽和であっても、不飽和であっても、芳香族であってもよい。炭素環式アリーレン基の例としては、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、フェナントリレン、及びアントラレンを含む炭素環が挙げられる。ヘテロアリーレンは、窒素、酸素、又は硫黄等の1~3個のヘテロ原子を含有するアリーレンであり、縮合環を含有してもよい。ヘテロアリーレン基のいくつかの例は、ピリジレン、フラニレン、ピロリレン、チエニレン、チアゾリレン、オキサゾリレン、イミダゾリレン、インドーリレン、ベンゾフラニレン、及びベンゾチアゾリレンである。用語「(ヘテロ)アリーレン」は、アリーレン及びヘテロアリーレンの両方を指す。
【0021】
芽胞は、皮膚などの表面に対して強力に接着することができ、取り除くことが非常に困難な場合がある。特に病院などの医療現場におけるクロストリジウム・ディフィシルの拡散の予防に対して、非常に強い関心及び緊急性が存在するため、表面から芽胞を取り除くための組成物は重要である。病院という状況にいる患者は、多くの場合、一定期間抗生物質を投与されている間又はその直後に、クロストリジウム・ディフィシル感染症にかかる。クロストリジウム・ディフィシルの栄養型を死滅させることは比較的容易であるが、クロストリジウム・ディフィシルの芽胞形態は、死滅させるのが非常に難しい場合がある。患者、医療従事者、及び環境間でのクロストリジウム・ディフィシルの拡散を予防するという問題に対処するための新しい技術が必要とされている。
【0022】
従来利用されてきた方法又は組成物は多くあり、例えばブリーチ、アルコールフォーム、及びジェルが挙げられる。ブリーチは、一般に使用されている殺胞子剤であり、病院という状況における環境表面を殺菌消毒するための使用にとって有効であり、疾病管理センター(Centers for Disease Control,CDC)によって推奨されている。しかしながら、ブリーチは、患者及び医療従事者が皮膚上で利用することはできない。現在、アルコールフォーム及びジェルが、大部分の医療従事者に使用されている。しかしながら、これらの溶液は、クロストリジウム・ディフィシルの芽胞の根絶には有効でない。クロストリジウム・ディフィシルに冒された医療従事者及び患者に対するCDCの推奨は、石鹸、水、及びペーパータオルによる通常の手洗いである。しかしながら、この解決策の実行は、直ぐ近くに利用できるシンクがないこと及び時間がないことから、医療従事者にとって常に便利なわけではない。更に、この解決策は、介護者が、運動性が限定された患者に対して実行するには不便である。
【0023】
希釈ブリーチ又は過酸化水素、及び類似の製品が、手に対して使用され、芽胞を死滅させる能力を示してきた。芽胞を死滅させることは重要であるが、これらの解決策を繰り返し使用することが安全なのかは明確ではない。例えば、医療従事者は、病室の内外で洗うため、1日に30~50回、一部の医療従事者は1日に75回以上、手を洗う場合がある。これらの解決策にとって、長期毒性及び宿主組織の破壊が懸念となり得る。
【0024】
したがって、皮膚上で繰り返し使用しても安全であり、CDCが推奨するプロトコル(石鹸、水、及びペーパータオル)と同等のレベルまで芽胞を減少させ、かつ栄養細菌を迅速に死滅させる能力を有する組成物を開発することが、極めて重要である。アルコールは、栄養細胞を迅速に死滅させるために使用されるが、芽胞は死滅させない。また、拭き取り布、ジェル、スプレーなどの様々な形式で使用することができる組成物を得ることも有用であり得る。また、手の衛生化、患者の入浴、及び手術前のケアなどの患者のケアの様々な態様に対して利用できる組成物も、非常に有益であり得る。また、患者のケアだけでなく、環境、例えば、攻撃性がより少ない、組織に優しい化学物質の使用を保証し得る、病室内の壊れ易い又は高価な備品/表面の清掃に対しても使用することができる組成物も、医学界にとって大変有用であり得る。
【0025】
開示される組成物は、皮膚などの表面に対する芽胞の接着を克服し、物品に、例えば、織られた、編まれた、又は不織の拭き取り布の表面に、芽胞を分散及び移動させる。また、表面から芽胞を除去する方法、表面から芽胞を取り除く方法、又はこれらの組み合わせが、本明細書において開示される。
【0026】
第1の組成物及び第2の組成物
開示される方法は、少なくとも2つの工程を含むことができる。開示される方法は、一般に、表面を第1の組成物と接触させる第1の工程と、表面を第2の組成物と接触させる第2の工程とを含む。第1の組成物及び第2の組成物の両方は液体である。第2の組成物は、一般に、カチオン性コーティングを施した物品中又はカチオン性コーティングを施した物品上に充填される。第2の組成物は、一般に表面と接触し、一方、第1の組成物の少なくとも一部は表面上に残る。
【0027】
一部の実施形態において、第1の組成物又は第2の組成物の少なくとも1つ及び1つのみが、60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含む。したがって、一部の実施形態において、第1の組成物は、60重量%以上のアルコールを含み、かつ第2の組成物は、60重量%未満のアルコールを含むか又はアルコールを含まず、あるいは、一部の実施形態において、第2の組成物は、60重量%以上のアルコールを含み、かつ第1の組成物は、60重量%未満のアルコールを含むか、又はアルコールを含まない。一部の実施形態において、第1の組成物又は第2の組成物のうちの少なくとも1つ及び1つのみが、アルコールを含む。したがって、一部の実施形態において、第1の組成物はアルコールを含み、かつ第2の組成物はアルコールを含まず、一部の実施形態において、第2の組成物はアルコールを含み、かつ第1の組成物は、含まない。
【0028】
一部の実施形態において、第1の組成物、第2の組成物、又はその両方は、組成物が、カチオン性コーティングを施した拭き取り布、例えば界面活性剤などを施した拭き取り布を濡らすことをより容易に可能にする構成成分を含み得る。特定の例示的な界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル又はより具体的にはTween(登録商標)などの非イオン性界面活性剤を挙げることができる。加えて、任意成分に関して以下に記載されるものなどの界面活性剤もまた、第2の組成物中で利用することができる。
【0029】
一部の実施形態において、第1の組成物、第2の組成物、又はその両方は、任意の増粘剤を含み得る。一部の実施形態において、第1の組成物、第2の組成物、又はその両方は、0.2重量%以下の増粘剤を含み得る。
【0030】
アルコール
開示される方法は、2つの組成物、すなわち第1の組成物及び第2の組成物を利用する。一部の実施形態において、第1の組成物及び第2の組成物のうちの少なくとも1つ及び1つのみが、任意の量の少なくとも1つのアルコールを含む。アルコールを含まない第1の組成物及び第2の組成物のうちの1つは、溶媒として水を含み得る。アルコールを含む第1の組成物及び第2の組成物のうちの1つは、共溶媒として水を含み得る。一部の実施形態において、アルコールを含まない第1の組成物及び第2の組成物のうちの1つは、溶媒の(重量に基づいて)主要成分として水を含む。一部の実施形態において、第1の組成物及び第2の組成物の少なくとも1つ及び1つのみが、60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含む。60重量%未満の少なくとも1つのアルコールを含むか、又はアルコールを含まない第1の組成物及び第2の組成物のうちの1つは、溶媒として水を含み得る。60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含む第1の組成物及び第2の組成物のうちの1つは、共溶媒として水を含み得る。一部の実施形態において、60重量%未満の少なくとも1つのアルコールを含むか、又はアルコールを含まない第1の組成物及び第2の組成物のうちの1つは、溶媒の(重量に基づいて)主要成分として水を含む。
【0031】
任意の種類の単官能性のアルキルアルコールを、第1の組成物及び第2の組成物中のアルコールとして利用することができる。一部の実施形態においては、C2~C5アルコールなどの、低級炭化水素鎖のアルコールを利用することができる。一部の実施形態において、アルコールは、エタノール及びイソプロパノールから選択され、一部の実施形態においてはエタノールである。エタノールは、広域スペクトルをもたらし、微生物を迅速に死滅させ、かつ医師、看護士、及び臨床医などの消費者にとって許容できる香りをもたらし得るため、有用であり得る。プロピルアルコール(1-プロパノール)もまた使用されてもよい。また、2種以上の低級アルコールのブレンドも利用できる。低級アルコールは、例えばSDA-3C(Eastman Chemical,Kingsport,TNから市販)などの変性エタノールのように、変性されていてもよい。低級アルコールと共に、共溶媒が組成物中に更に含まれてもよい。可能性のある、企図される適用について考慮すると、好適な共溶媒としては、例えばアセトン、イソオクタンなどの炭化水素、グリコール、ケトン、エーテル、及び短鎖エステルを挙げることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物中のアルコールの量も考慮することができる。アルコール含有量は、細菌殺傷特性、並びに開示される方法による芽胞除去を提供することができるため、組成物中のアルコールの量は関連し得る。
【0033】
一部の実施形態において、第1の組成物及び第2の組成物のうちの1つ及び1つのみは、第1の組成物又は第2の組成物のそれぞれの全体の総重量に基づいて、60重量%以上のアルコール、又は一部の実施形態において70重量%以上のアルコールを有することができる。一部の実施形態において、第1の組成物又は第2の組成物のうちの1つ及び1つのみは、第1の組成物又は第2の組成物のそれぞれの全体の総重量に基づいて、85重量%以下のアルコール、95重量%以下のアルコール、又は98%以下のアルコールを有することができる。一部の実施形態において、第1の組成物又は第2の組成物のうちの1つ及び1つのみは、第1の組成物又は第2の組成物の全体の総重量に基づいて、第1の組成物又は第2の組成物の全体の60重量%~70重量%のアルコールを有することができる。
【0034】
30重量%以下のアルコール量は、表面(例えば、皮膚表面)の乾燥時間を減少させるのを助けるか又は補助することができ、これにより、30重量%のアルコールを含有する組成物が分注される。更に、この量のアルコールは、この工程における芽胞の除去に悪影響を及ぼさないか、又は十分に悪影響を及ぼさない場合がある。乾燥時間に有利なアルコールの量を含むことは、本方法の第1の工程が、60重量%以上のアルコール量を有する第1の組成物を含む方法において特に有益であり得る。
【0035】
本研究者らは、驚くべきことに、細菌殺菌を促進するアルコールの使用が、芽胞の除去の有効性を低下させないことを見出した。これは、アルコールが芽胞の除去を妨げると考えられているため、本研究者らにとって驚くべきことであった。
【0036】
カチオン性コーティングを施した物品
開示される方法は、第2の組成物が充填された物品に表面を接触させる第2の工程を含む。開示される物品は、一般に、カチオン性コーティングを含む基材を含む。物品のカチオン性コーティングを施した基材に、第2の組成物を充填する。基材は多孔質であってよく、例えば、スポンジ、不織布、又は織布を含むことができる。いくつかの実施形態では、物品は、第2の組成物が充填されるか又はその中にカチオン性コーティングを施した基材を含む拭き取り布であり得る。
【0037】
基材は、例えば、任意の好適な形態であってもよい。いくつかの好適な基材は、シートの形態である織布又は不織布である。シートは、任意の所望のサイズ及び形状を有することができる。他の好適な基材は、任意の所望のサイズ又は形状を有することができるスポンジである。基材は通常、多孔質である。好適な基材は、典型的には可撓性であり、そのため、拭き取り布は、平坦ではないものなどの様々な表面に容易に適合し、接触することができる。
【0038】
基材は、任意の好適な熱可塑性又は熱硬化性材料から形成することができる。材料は有機ポリマー材料であってもよい。好適な有機ポリマー材料としては、これらに限定されるものではないが、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートのコポリマー、例えばポリ(エチレン)-co-ポリ(ビニルアルコール)等、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(カーボネート)、ポリウレタン及びセルロース系材料が挙げられる。
【0039】
好適なポリオレフィンとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1-ブテン)、エチレンとプロピレンとのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば、エチレン又はプロピレンの、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンとのコポリマー等)、ポリ(エチレン-co-1-ブテン)及びポリ(エチレン-co-1-ブテン-co-1-ヘキセン)が挙げられる。
【0040】
好適なフッ素化ポリマーとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(例えばポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)等)、及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えばポリ(エチレン-co-クロロトリフルオロエチレン)等)が挙げられる。
【0041】
好適なポリアミドとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、及びポリカプロラクタムが挙げられる。好適なポリイミドとしては、これに限定されるものではないが、ポリ(ピロメリットイミド)が挙げられる。
【0042】
好適なポリ(エーテルスルホン)としては、これらに限定されるものではないが、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)及びポリ(ジフェニルスルホン-co-ジフェニレンオキシドスルホン)が挙げられる。
【0043】
好適なビニルアセテートのコポリマーとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)と、コポリマー中でアセテート基のうちの少なくともいくつかが加水分解され、各種のポリ(ビニルアルコール)を生成するようなコポリマーと、が挙げられる。
【0044】
好適なセルロース系材料としては、綿、レーヨン、及びこれらのブレンドが挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、基材は、プロピレンポリマー(例えば、ホモポリマー又はコポリマー)から形成される。ポリプロピレンポリマー、特にポリプロピレンホモポリマーは、非毒性、不活性、低コスト、及びそれが押出成形され、成形され、物品に形成され得る容易性などの特性により、いくつかの用途に特に有用であり得る。ポリプロピレンポリマーは、例えば、織繊維又は不織布繊維の多孔質シートに形成することができる。
【0046】
いくつかの基材は、不織布である。本明細書で用いる場合、用語「不織布ウェブ」は、不規則にかつ/又は一方向に、マット状に組み込まれた個々の繊維又はフィラメントの構造を有する布地又はウェブを指す。個々の繊維又は糸は、編まれた又は織られた布地のように、識別可能なパターンで絡み合わない。好適な不織布の例としては、メルトブロー布地、スパンボンド布地、カード布地、湿式布地、及びエアレイド布地が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
スパンボンド繊維は、典型的には、溶融した熱可塑性ポリマーを、微細で通常は円形の複数の紡糸口金の毛細管からフィラメントとして押し出し、押し出された繊維の直径を急激に縮小させることによって形成される小径繊維である。メルトブロー繊維は、典型的に、溶融した熱可塑性材料を、複数の微細で通常は円形のダイ毛細管を通じて、溶融糸又はフィラメントとして、高速で通常は加熱されたガス(例えば空気)流の中へ押し出すことにより形成され、このガス流により溶融熱可塑性材料のフィラメントが細くなり、それらの直径が減少する。その後、メルトブロー繊維は高速ガス流によって運搬されて収集面上に堆積され、不規則に分散されたメルトブロー繊維の布地を形成する。任意の不織布が、単一の種類の繊維から、又は、熱可塑性ポリマーの種類及び/若しくは厚さが異なる2つ以上の繊維から製造され得る。
【0048】
ウェットレイド繊維は、a)繊維及びb)懸濁液、例えば水、水混和性有機溶媒、又はこれらの混合物を含有するスラリーを形成することによって、シートに形成することができる。スラリーを金型に入れるか、又は層に堆積させる。懸濁液を除去して、シート又はマットを形成する。次いで、シート又はマットを乾燥させる。いくつかの実施形態では、ポリマーバインダーは、分散液中に含まれる。他の実施形態では、ポリマーバインダーは、シート又はマットの形成後に適用することができる。ポリマーバインダーは、多くの場合、ラテックスポリマーである。
【0049】
不織布の製造方法の更なる詳細は、Wente,Superfine Thermoplastic Fibers,48 INDUS.ENG.CHEM.1342(1956)、又はWente et al.,Manufacture Of Superfine Organic Fibers,(Naval Research Laboratories Report No.4364,1954)に見ることができる。
【0050】
基材は、カチオン性コーティングを含むか、又は本質的にカチオン性である組成物でコーティングされる。いくつかの実施形態では、コーティングは、キトサン、又はポリエチレンイミン(PEI)などのポリマー、又は四級化セルロース、シラン、若しくはグアーガム、グアニジニルコーティング、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、グアニジニルコーティングを含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、カチオン性コーティングは、基材に結合され得るグアニジニル含有ポリマーを含むことができる。任意のグアニジニル含有ポリマーをカチオン性コーティングに使用することができるが、いくつかの実施形態では、式(I)のポリマーを利用することができる。
【化1】
【0052】
式(I)中、基R1は、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、C5~C12(ヘテロ)アリール、又はポリマー鎖の残基である。基R2は、共有結合、C2~C12(ヘテロ)アルキレン、又はC5~C12(ヘテロ)アリーレンである。基R3は、H、C1~C12(ヘテロ)アルキル、若しくはC5~C12(ヘテロ)アリールであるか、又はnが0のとき、ポリマー鎖の残基であり得る。各基R4は、独立して、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリールである。基R5は、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、C5~C12(ヘテロ)アリール、又は-N(R4)2である。変数nは、グアニジニル含有ポリマーを形成するために使用される前駆体ポリマーに応じて、0又は1に等しい。変数mは、カチオン性基がグアニジニル基又はビグアニジニル基であるかに応じて、1又は2に等しい。式(I)中の用語「ポリマー」は、式-[C(R1)=N-R2-]NN(R3)-[C(=NR4)-NR4R5-]mのx基を除く、グアニジニル含有ポリマーの全ての部分を指す。用語xは、少なくとも1に等しい変数である。
【0053】
最も多くのグアニジニル含有ポリマーは、2つ以上のグアニジニル基を有する。グアニジニル基の数は、グアニジニル含有ポリマーを調製するために使用される方法に応じて変更することができる。例えば、グアニジニル基の数は、好適なグアニル化剤と反応するために選択される前駆体ポリマーの選択に依存し得る。一部の実施形態において、変数xは、最大1000、最大500、最大100、最大80、最大60、最大40、最大20、又は最大10とすることができる。
【0054】
式(I)のグアニジニル含有ポリマーは、多くの場合、(a)前駆体ポリマーと、(b)好適なグアニル化剤との反応生成物である。前駆体ポリマーは、多くの場合、アミノ含有ポリマー又はカルボニル含有ポリマーである。前駆体ポリマーがアミノ含有ポリマーである場合、式(I)中の変数nは、典型的には0に等しい。前駆体ポリマーがカルボニル含有ポリマーである場合、変数nは、1に等しい。グアニル化剤がグアニジニル基又はグアニジニル基の前駆体を含有する場合、式(I)中の変数mは、1に等しい。グアニル化剤がビグアニジニル基又はビグアニジニル基の前駆体を含有する場合、式(I)中の変数mは、2に等しい。
【0055】
nが0である実施形態では、グアニジニル含有ポリマーのベースポリマーは、多くの場合、好適なグアニル化剤とアミノ含有ポリマーとの反応によって調製される。Nが1である他の実施形態では、グアニジニル含有ポリマーは、多くの場合、好適なグアニル化剤とカルボニル含有ポリマーとの反応によって調製される。
【0056】
nが0であり、かつ前駆体ポリマーがアミノ含有ポリマーである実施形態では、式(I)のグアニジニル含有ポリマーの構造もまた、式(II)の構造としてより簡単に記載することができる。
【化2】
【0057】
式(II)中、R3は、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、若しくはC5~C12(ヘテロ)アリールであるか、又はポリマー鎖の残基であり得る。グアニジニル基がペンダント基の一部である場合、R3は、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリールである。各R4は、独立して、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリールである。基R5は、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリール、又は-N(R4)2である。変数mは、1、又は2に等しい。式(II)中の用語「ポリマー」は、式-N(R3)-[C(=NR4)-NR4R5-]mのx基を除く、グアニジニル含有ポリマーの全ての部分を指す。用語xは、少なくとも1に等しい変数である。
【0058】
式(II)のグアニジニル含有ポリマーを調製するために前駆体ポリマーとして使用されるアミノ含有ポリマーは、式ポリマー-N(R3)Hによって表すことができる。しかしながら、上述したように、アミノ含有ポリマーは、典型的には多くの基-N(R3)Hを有するが、式(I)は、議論のみを容易にするためにのみ示されている。-N(R3)H基は、一級又は二級アミノ基であり得、前駆体ポリマーのペンダント基又は主鎖の一部であり得る。アミノ含有ポリマーは、合成することができ、又は天然に存在するバイオポリマーであってもよい。好適なアミノ含有ポリマーは、鎖成長又は工程成長重合手順によって、アミノ含有モノマーを用いて調製することができる。これらのモノマーは、また、所望であれば、アミノ酸基を有さないその他のモノマーと共重合することもできる。加えて、アミノ含有ポリマーは、適切なグラフト化技術を使用して、一級アミン基又は二級アミン基をグラフト化することによって得ることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、有用なアミノ含有ポリマーは、水溶性又は水分散性のポリアミンである。本明細書で使用される場合、用語「水溶性」は、水に溶解可能な材料を指す。溶解度は、典型的には、水1ミリリットル当たり少なくとも約0.1グラムである。本明細書で使用される場合、用語「水分散性」は、水溶性ではないが、水に乳化又は懸濁可能な材料を指す。
【0060】
連鎖成長重合により調製される、使用に好適なアミノ含有ポリマーの例としては、これらに限定されるものではないが、ポリビニルアミン、ポリ(N-メチルビニルアミン)、ポリアリルアミン、ポリアリルメチルアミン、ポリジアリルアミン、ポリ(4-アミノメチルスチレン)、ポリ(4-アミノスチレン)、ポリ(アクリルアミド-co-メチルアミノプロピルアクリルアミド)及びポリ(アクリルアミド-co-アミノエチルメタクリレート)が挙げられる。
【0061】
段階成長重合により調製される、使用に好適なアミノポリマーの例としては、これらに限定されるものではないが、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリリジン、ポリアミノアミド、ポリジメチルアミン-エピクロロヒドリン-エチレンジアミン並びにアミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-トリメトキシシリルプロピル-N-メチルアミン及びビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン等のモノマーから調製可能ないくつかのポリアミノシロキサンのうちの任意のものが挙げられる。
【0062】
一級又は二級アミノ末端基を有する他の有用なアミノ含有ポリマーとしては、ポリアミドアミン(PAMAM)及びポリプリピレンイミンから形成されるデンドリマー(超分岐ポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。PAMAMから形成される例示的なデンドリマー材料は、商品名「Starburst(登録商標)(PAMAM)デンドリマー」(例えば、4個の第一級アミノ基を有するGeneration0、8個の第一級アミノ基を有するGeneration1、16個の第一級アミノ基を有するGeneration2、32個の第一級アミノ基を有するGeneration3及び64個の第一級アミノ基を有するGeneration4)でAldrich Chemical(Milwaukee,WI)より市販されている。ポリプロピレンイミンから形成されるデンドリマー材料は、商標表記「DAB-AM」でAldrich Chemicalより市販されている。例えば、DAB-Am-4は、4個の一級アミノ基を有する世代1のポリプロピレンイミンテトラアミンデンドリマーであり、DAB-Am-8は、8個の一級アミノ基を有する世代2のポリプロピレンイミンオクタアミンデンドリマーであり、DAB-Am-16は、16個の一級アミノ基を有する世代3のポリプロピレンイミンヘキサデカアミンであり、DAB-Am-32は、32個の一級アミノ基を有する世代4のポリプロピレンイミンドトリアコンタアミンデンドリマーであり、またDAB-Am-64は、64個の一級アミノ基を有する世代5のポリプロピレンイミンテトラヘキサコンタアミンデンドリマーである。
【0063】
バイオポリマーである好適なアミノ含有ポリマーの例としては、キトサン並びにメチルアミノエチルクロリドなどの試薬でグラフトされたデンプンが挙げられる。
【0064】
アミノ含有ポリマーの更に他の例としては、アミノアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドアルキルアミン、及びジアリルアミンなどのアミノ含有モノマーを含有するモノマー組成物で調製された、ポリアクリルアミドホモ又はコポリマー、並びにアミノ含有ポリアクリレートホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0065】
いくつかの拭き取り布では、好ましいアミノ含有ポリマーとしては、ポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、及びポリジアリルアミンが挙げられる。
【0066】
好適な市販のアミノ含有ポリマーとしては、Air Products and Chemicals(Allentown,PA)製の商品名ANQUAMINE(例えば、ANQUAMINE 360、401、419、456、及び701)で入手可能なポリアミドアミン、BASF Corporation(Resselaer,NY)製の商品名LUPASOL(例えば、LUPASOL FG、PR 8515、Waterfree、P、及びPS)で入手可能なポリエチレンイミンポリマー、EIT Company(Lake Wylie,SC)製の商品名CORCAT P-600で入手可能なものなどのポリエチレンイミンポリマー、及び二量化不飽和脂肪酸をアルキレンポリアミンと反応させることによって形成される樹脂の、商品名VERSAMIDシリーズでCognis Corporation(Cincinnati,OH)から入手可能なものなどのポリアミド樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
グアニジニル含有ポリマーは、アミノ含有ポリマー前駆体とグアニル化剤との反応によって調製することができる。アミノ含有ポリマーの全てのアミノ基をグアニル化剤と反応させることができるが、多くの場合、グアニジニル含有ポリマー中に残存するアミノ含有ポリマー前駆体からの未反応のアミノ基がいくつか存在する。典型的には、アミノ含有ポリマー前駆体中のアミノ基の少なくとも0.1モルパーセント、少なくとも0.5モルパーセント、少なくとも1モルパーセント、少なくとも2モルパーセント、少なくとも10モルパーセント、少なくとも20モルパーセント、又は少なくとも50モルパーセントが、グアニル化剤と反応する。最大100モルパーセント、最大90モルパーセント、最大80モルパーセント、又は最大60モルパーセントのアミノ基をグアニル化剤と反応させることができる。例えば、グアニル化剤は、アミノ含有ポリマー中のアミノ基の0.1~100モルパーセント、0.5~90モルパーセント、1~90モルパーセント、1~80モルパーセント、1~60モルパーセント、2~50モルパーセント、2~25モルパーセント、又は2~10モルパーセントを官能化するのに十分な量で使用することができる。
【0068】
アミノ含有ポリマー前駆体との反応のための既知のグアニル化剤としては、シアナミド、O-アルキルイソ尿素塩、例えば、0-メチルイソ尿素硫酸塩、0-メチルイソ尿素硫酸水素塩、O-メチルイソ尿素酢酸塩、O-エチルイソ尿素硫酸水素塩、及びO-エチルイソ尿素塩酸塩;クロロホルムアミジン塩酸塩;1-アミジノ-1,2,4-トリアゾール塩酸塩;3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボキサミジン硝酸塩;ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩;N-アミジノピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩;及びカルボジイミド、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、並びにジイソプロピルカルボジイミドが挙げられるが、これらに限定されない。アミノ含有ポリマーは、また、EDC(N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩)又はEEDQ(2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン)等の活性化剤の存在下で、グアニジノ酢酸及び4-グアニジノ酪酸等のグアニジノ官能性カルボン酸によってアシル化することもできる。更に、グアニジニル含有ポリマーは、米国特許第5,712,027号(Aliら)に記載のように、クロロアセトングアニルヒドラゾンによるアルキル化によって調製することもできる。
【0069】
ビグアナイド含有ポリマーの調製のためのグアニル化剤としては、ジシアナミドナトリウム、ジシアノジアミド、並びにN3-p-クロロフェニル-N1-シアノグアニジン、N3-フェニル-N1-シアノグアニジン、N3-α-ナフチル-N1-シアノグアニジン、N3-メチル-N1-シアノグアニジン、N3,N3-ジメチル-N1-シアノグアニジン、N3-(2-ヒドロキシエチル)-N1-シアノグアニジン及びN3-ブチル-N1-シアノグアニジン等の置換シアノグアニジンが挙げられる。アルキレン及びアリーレンビスシアノグアニジンは、鎖延長反応によってビグアナイド官能性ポリマーを調製するために利用することができる。シアノグアニジン及びビスシアノグアニジンの調製は、Rose,F.L.及びSwain,G.J.Chem Soc.,1956,pp.4422~4425に詳述されている。その他の有用なグアニル化試薬は、Alan R.Katritzkyら,Comprehensive Organic Functional Group Transformation,Vol.6,p.640により記載されている。
【0070】
アミノ含有ポリマー前駆体とグアニル化剤との反応によって形成されるグアニジニル含有ポリマーは、式(III)のペンダント基又はカテナリーグアニジニル基を有する。
【化3】
【0071】
式(III)中、基R3、R4、及びR5並びに変数mは、上記と同様である。N(R3)基に付着した波線は、基を残りのポリマー材料に付着させる位置を示す。ほとんどの実施形態では、式(III)の基は、グアニジニル含有ポリマーのペンダント基にある。
【0072】
いくつかの実施形態では、アミノ含有ポリマー前駆体を反応させて、グアニジニル含有基に加えて他のリガンド又は基を提供することが有利であり得る。例えば、疎水性リガンド、イオン性リガンド、又は水素結合リガンドを含むことが有用であり得る。これは、微生物で汚染された表面を拭き取る間に特定の微生物を除去するのに特に有利であり得る。
【0073】
追加のリガンドは、当該技術分野において周知のアルキル化又はアシル化手順によって、アミノ含有ポリマーに容易に組み込むことができる。例えば、アミノ含有ポリマーのアミノ基は、ハロゲン化物、スルホネート、及びサルフェート置換反応を使用して、又はエポキシド環開口反応を使用して反応させることができる。これらの反応に有用なアルキル化剤としては、例えば、硫酸ジメチル、臭化ブチル、塩化ブチル、臭化ベンジル、臭化ドデシル、2-クロロエタノール、ブロモ酢酸、2-クロロエチルトリメチルアンモニウムクロリド、スチレンオキシド、グリシジルヘキサデシルエーテル、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、及びグリシジルフェニルエーテルが挙げられる。有用なアシル化剤としては、例えば、塩化ベンゾイル、無水酢酸、無水コハク酸、及びデカノイルクロリドなどの酸塩化物及び無水物、並びにトリメチルシリルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、及びブチルイソチオシアネートなどのイソシアネートが挙げられる。このような実施形態では、アミノ含有ポリマーの利用可能なアミノ基の0.1~20モルパーセント、好ましくは2~10モルパーセントがアルキル化及び/又はアシル化され得る。
【0074】
グアニジニル含有ポリマーは、架橋させることができる。アミノ含有ポリマーは、グアニル化剤との反応の前に架橋させることができる。あるいは、グアニジニル含有ポリマーは、アミノ含有ポリマー前駆体からの残りのアミノ基との、又は、グアニジニル基のいくつかとの、架橋剤の反応により、架橋させることができる。好適な架橋剤としては、アミン反応性化合物、例えばグルタルアルデヒド等のビス及びポリアルデヒド、ブタンジオールジグリシジルエーテル及びエチレングリコールジグリシジルエーテル等のビス及びポリグリシジルエーテル、ポリカルボン酸及びそれらの誘導体(例えば酸塩化物)、ポリイソシアネート、尿素又はメラミンから誘導されるもの等のヒドロキシメチル及びアルコキシメチル官能性架橋剤等のホルムアルデヒド系架橋剤並びに3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(p-クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン及び3-チオシアネートプロピルトリエトキシシラン等のアミン反応性シランが挙げられる。
【0075】
他の実施形態では、グアニジニル含有ポリマーは式(IV)のものであり、これはnが1に等しい式(I)に対応する。
【化4】
【0076】
式(IV)中、基R1は、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、若しくはC5~C12(ヘテロ)アリール、又はポリマー鎖の残基である。グアニジニル含有基がグアニル化剤とポリマーの骨格の一部であるカルボニル基との反応生成物である場合、R1はポリマー鎖の残基である。基R2は、共有結合、C2~C12(ヘテロ)アルキレン、又はC5~C12(ヘテロ)アリーレンである。基R3は、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリールである。各R4は、独立して、H、C1~C12(ヘテロ)アルキル又はC5~C12(ヘテロ)アリールである。基R5は、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリール、又はN(R4)2である。変数mは、1、又は2に等しい。式(I)中の用語「ポリマー」は、式-C(R1)=N-R2-N(R3)-[C(=NR4)-NR4R5-]mのx基を除く、グアニジニル含有ポリマーの全ての部分を指す。用語xは、少なくとも1に等しい変数である。
【0077】
式(IV)のグアニジニル含有ポリマーは、カルボニル含有ポリマーと、カルボニル基との反応に好適なグアニル化剤との反応生成物である。式(IV)のグアニジニル含有ポリマーを調製するために前駆体ポリマーとして使用されるカルボニル含有ポリマーは、式ポリマー-C(O)-R1によって表すことができる。カルボニル含有ポリマー前駆体は、典型的には、多くの基-C(O)-R1を有するが、式(IV)は、議論のみを容易にするためにのみ示されている。カルボニル基-C(O)-R1は、アルデヒド基(R1が水素である場合)又はケトン基(R1が(ヘテロ)アルキル又は(ヘテロ)アリールである場合)である。カルボニル基は、ポリマー主鎖の一部又はポリマー主鎖からのペンダント基の一部であり得るが、典型的にはペンダント基である。
【0078】
いくつかの実施形態では、カルボニル含有ポリマーは、カルボニル基、好ましくはケトン基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー組成物の重合生成物である。カルボニル基を有する好適なモノマーとしては、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、イソプロペニルメチルケトン、ビニルフェニルケトン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトニルアクリレート、及びアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
他の実施形態では、カルボニル含有ポリマーは、一酸化炭素と1つ以上のエチレン性不飽和モノマーとを含むモノマー組成物の重合生成物である(すなわち、カルボニル含有ポリマーは一酸化炭素コポリマーである)。一酸化炭素含有コポリマーの例は、DuPont(Wilmington,DE,USA)からのELVALOY 741、エチレン/酢酸ビニル/一酸化炭素のターポリマーである。
【0080】
一酸化炭素及び/又はカルボニル基(例えば、ケトン基)を有するエチレン性不飽和モノマーに加えて、そのカルボニル含有ポリマーを形成するために使用されるモノマー組成物は、任意でエチレン性不飽和親水性モノマー単位を更に含むことができる。本明細書で使用される場合、「親水性モノマー」は、曇点に到達することなく、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%の水混和性(モノマー中の水)を有する重合性モノマーであり、リガンド基への生物学的物質の結合に干渉する官能基を含有しない。カルボニル含有ポリマーは、例えば、モノマー組成物中に、0~90重量%の親水性モノマーを含むことができる。存在する場合、親水性モノマーは、モノマー組成物の総重量に基づいて、1~90重量%、1~75重量%、1~50重量%、1~25重量%、又は1~10重量%の範囲の量で存在し得る。
【0081】
親水性モノマーの親水性基は中性であってもよく、正電荷、負電荷、又はこれらの組み合わせを有してもよい。イオン性基を有する親水性モノマーは、pH条件に応じて中性であり得る、又は帯電し得る。親水性モノマーは、典型的には、炭素含有ポリマーに所望の親水性(すなわち、水溶性又は分散性)を付与するために使用される。グアニジル基の結合相互作用を妨害しない程度に十分に少量である限り、負に帯電した親水性コモノマーが含まれてもよい。
【0082】
正電荷を提供することができるいくつかの例示的な親水性モノマーは、式(V)のアミノ(メタ)アクリレート又はアミノ(メタ)アクリルアミド又はその第四級アンモニウム塩である。第四級アンモニウム塩の対イオンは、多くの場合、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオンなどである。
【化5】
【0083】
式(V)において、X基はオキシ(すなわち、-O-)又は-NR3-である(式中、R3は、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリールである)。基R6は、C2~C10アルキレン、好ましくはC2~C6アルキレンである。基R7は、独立して、水素又はメチルである。各R8は、独立して、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル(すなわち、ヒドロキシで置換されたアルキル)、又はアミノアルキル(すなわち、アミノで置換されたアルキル)である。あるいは、それらが結合している窒素原子と一緒になった2つのR8基は、芳香族、部分的に不飽和(すなわち、不飽和であるが芳香族ではない)、又は飽和である複素環式基を形成してもよく、複素環式基は、任意で、芳香族(例えば、ベンゼン)、部分的に不飽和(例えば、シクロヘキセン)、又は飽和(例えば、シクロヘキサン)である第2の環に縮合することができる。
【0084】
図示したエチレン性不飽和(メタ)アクリロイル基(CH2=C(R7)-C(O)-基)が、ビニル、ビニルオキシ、アリル、アリルオキシ、及びアセチレニルなどの反応性の低減された別のエチレン性不飽和基によって置換され得ることが式(V)に関して理解されるであろう。
【0085】
式(V)のいくつかの実施形態において、R8基の両方は、水素である。他の実施形態において、1つのR8基は水素であり、他のものは、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキルである。更に他の実施形態において、R8基のうちの少なくとも1つは、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル又はアミノアルキルであり、ヒドロキシ基又はアミノ基は、アルキル基の炭素原子のいずれかに位置付けられている。更に他の実施形態において、R8基は、これらの基が結合している窒素原子と共に組み合わされて、複素環式基を形成する。複素環式基は少なくとも1つの窒素原子を含み、他のへテロ原子、例えば酸素又は硫黄等を含み得る。例示的な複素環式基としては、イミダゾリルが挙げられるが、これに限定されない。複素環式基は、ベンゼン、シクロヘキセン、又はシクロヘキサン等の追加の環に縮合され得る。追加の環に縮合した例示的な複素環式基としては、ベンゾイミダゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
例示的なアミノアクリレート(すなわち、式(V)における「X」がオキシである)としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-tert-ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0087】
例示的なアミノ(メタ)アクリルアミド(すなわち、式(V)における「X」が-NR^-である)としては、例えば、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(3-アミノプロピル)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル1]アクリルアミド、N-(3-イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N-(3-イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N-(2-イミダゾリルエチル)メタクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N-(3-ベンゾイミダゾリルプロピル)アクリルアミド、及びN-(3-ベンゾイミダゾリルプロピル)メタクリルアミドが挙げられる。
【0088】
式(V)のモノマーの例示的な四級塩としては、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、3-メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド及び3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)及び(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、2-アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2-メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、及び2-アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
ポリマーに正に帯電した基を提供することができる他のモノマーとしては、アルケニルアズラクトンのジアルキルアミノアルキルアミン付加物(例えば、ビニルジメチルアズラクトンの2-(ジエチルアミノ)エチルアミン、(2-アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、及び3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン付加物)並びにジアリルアミンモノマー(例えば、ジアリルアンモニウムクロリド及びジアリルジメチルアンモニウムクロリド)が挙げられる。
【0090】
一部の好ましい実施形態において、任意の親水性モノマーは、(メタ)アクリロイル基及びポリ(アルキレンオキシド)基などのエチレン性不飽和基を有し得る。例えば、親水性モノマーは、ポリ(アルキレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート化合物であってもよく、末端はヒドロキシ基、又はアルキルエーテル基である。このようなモノマーは、以下の一般式(VI)のものである。
R9-O-(CH(R9)-CH2-O)p-C(O)-C(R9)=CH2
(VI)
【0091】
式(VI)中、各R9は、独立して、水素又はC1~C4アルキルである。変数pは、少なくとも2、例えば2~100、2~50、2~20、又は2~10である。
【0092】
一実施形態において、ポリ(アルキレンオキシド)基(-(CH(R9)-CH2-O)p-として示される)は、ポリ(エチレンオキシド)である。別の実施形態において、ポリ(アルキレンオキシド)基は、ポリ(エチレンオキシド-co-プロピレンオキサイド)である。このようなコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、又はグラジエント共重合体であってもよい。
【0093】
好適な親水性モノマーの代表的な例としては、アクリル酸;メタクリル酸;2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;N-ビニルピロリドン;N-ビニルカプロラクタム;アクリルアミド;モノ-又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド;t-ブチルアクリルアミド;ジメチルアクリルアミド;N-オクチルアクリルアミド;ポリ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリレート、例えば2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど;アルキルビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテルなど;並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい親水性モノマーとしては、ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びN-ビニルピロリジノンからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0094】
いくつかの実施形態では、カルボニル含有ポリマーを形成するために使用されるモノマー組成物は、任意で、疎水性モノマーを任意に含むことができる。本明細書で使用するとき、用語「疎水性モノマー」は、1重量%未満の水混和性(モノマー中の水)を有するモノマーを指す。疎水性モノマーは、グアニジニル含有モノマーポリマーの結合性能及び/又はグアニジニル含有ポリマーの水分散性に悪影響を及ぼさない量で使用することができる。存在する場合、疎水性モノマーは、典型的には、モノマー組成物中のモノマーの総重量に基づいて、1~20重量%、1~10重量%、又は1~5重量%の範囲の量で存在する。
【0095】
疎水性モノマーの有用な部類としては、C1~C30アルキル基を含有するアルキルエステルの直鎖、環状、及び分岐鎖異性体、並びにC1~C30アルキル基を含有するモノ-又はジアルキルアクリルアミドを例とする、アルキルアクリレートエステル及びアミドが挙げられる。アルキルアクリレートエステルの有用な具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソ-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソ-ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、及びテトラデシルアクリレートが挙げられる。アルキルアクリルアミドの有用な具体例としては、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、イソボルニル、オクチル、2-エチルヘキシル、イソ-ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、及びテトラデシル基を有するモノ-及びジアクリルアミドが使用される。対応するメタクリレートエステルを使用してもよい。
【0096】
疎水性モノマーの更なる有用な部類としては、ビニルアセテート、スチレン、及びアルキルビニルエーテルなどのビニルモノマー、並びに無水マレイン酸が挙げられる。
【0097】
炭素含有ポリマーを形成するために使用されるモノマー組成物は、典型的には、フリーラジカル開始剤と組み合わされて、重合生成物を形成する。任意の好適なフリーラジカル開始剤を用いることができる。開始剤は、典型的には、モノマー組成物のモノマー総重量に基づいて、0.01~5重量%の範囲、0.01~2重量%の範囲、0.01~1重量%の範囲、又は0.01~0.5重量%の範囲の量で存在する。
【0098】
いくつかの実施形態では、熱開始剤を使用してもよい。熱開始剤は、使用される特定の重合方法に応じて、水溶性又は水不溶性(すなわち、油溶性)とすることができる。好適な水溶性開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物などの過硫酸塩、過硫酸塩と、メタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム)又は重硫酸塩(例えば、重硫酸ナトリウム)などの還元剤との反応生成物などの酸化還元開始剤、又は4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)及びその可溶性塩(例えば、ナトリウム、カリウム)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な油溶性開始剤としては、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)であるVAZO67、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)であるVAZO64、及び(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)であるVAZO52をはじめとする、DuPont(Wilmington,DE,USA)製の商品名VAZOで市販されているものなどの様々なアゾ化合物、並びにベンゾイルパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、及びこれらの混合物などの様々なパーオキサイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
いくつかの実施形態では、光開始剤が使用され得る。いくつかの例示的な光開始剤は、ベンゾインエーテル(例えばベンゾインメチルエーテル若しくはベンゾインイソプロピルエーテル)又は置換ベンゾインエーテル(例えばアニソインメチルエーテル)である。他の光開始剤の例は、2,2-ジエトキシアセトフェノン又は2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(BASF Corp.(Florham Park,NJ,USA)製の商品名IRGACURE 651で市販、又はSartomer(Exton,PA,USA)製の商品名ESACURE KB-1で市販されている)などの置換アセトフェノンである。更に別の例示的な光開始剤は、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α-ケトール、2-ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド、及び、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシムである。他の好適な光開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE 2959)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE 369)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IRGACURE 907)、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR 1173)が挙げられる。
【0100】
式(IV)によるグアニジニル含有ポリマーは、多くの場合、カルボニル含有ポリマー前駆体と式(VII)のグアニル化剤との反応生成物である。
【化6】
【0101】
式(VII)中、基R2は、共有結合、C2~C12(ヘテロ)アルキレン、又はC5~C12(ヘテロ)アリーレンである。基R3は、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリールである。各R4は、独立して、水素、C1~C12(ヘテロ)アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリールである。基R5は、H、C1~C12(ヘテロ)アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリール、又は-N(R4)2である。変数mは、1、又は2に等しい。
【0102】
説明を容易にするために、カルボニル含有ポリマーは、式ポリマー-C(=O)-R
1によって表すことができる。カルボニル基は、主鎖又はペンダント基に存在し得るが、通常はペンダント基である。式(VII)のグアニル化剤と反応させると、カルボニル含有ポリマー中のカルボニル基はグアニル化剤の末端アミン基と縮合反応する。グアニジニル含有ポリマーは、典型的には、式(VIII)のグアニジニル含有ペンダント基を有する。
【化7】
基R
2、R
3、R
4、及びR
5は、上記の式(VII)の定義と同一である。式(VIII)における式の基は、式(VII)のリガンド化合物の末端アミンとカルボニル含有ポリマーのカルボニル基との間に形成される結合である。
【化8】
波線は、ポリマーの残りの部分への共有結合を介した基の付着部位を示す。基R
1は、水素(カルボニル基がアルデヒド基である場合)、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル(カルボニル基がケトン基であり、ケトン基がペンダント基の一部である場合)、又はC
5~C
12(ヘテロ)アリール(カルボニル基がケトン基であり、ケトン基がペンダント基の一部である場合)、又はポリマー鎖の残基(カルボニル基がカルボニル含有ポリマーの主鎖中の基である場合)である。ほとんどの実施形態では、式(VIII)の基は、グアニジニル含有ポリマーのペンダント基の一部である。
【0103】
他の実施形態において、グアニジル含有ポリマーは、イミン連結基(~~C(R1)=N-)がアミン連結基(~~C(R1)-NH-)に還元されるように調製される。これは、存在するリガンド官能性ポリマーを、シアノ水素化ホウ素などの還元剤で処理することによって実施されてもよく、又は還元は、還元剤をカルボニル官能性(コ)ポリマーと式Vの化合物との反応混合物に添加することによって、in situで実施されてもよい。
【0104】
多くの実施形態では、カルボニル含有ポリマーのカルボニル基の全てではないが一部が、式(VII)のグアニル化剤と反応する。典型的には、カルボニル含有ポリマー前駆体中のカルボニル基の少なくとも0.1モルパーセント、少なくとも0.5モルパーセント、少なくとも1モルパーセント、少なくとも2モルパーセント、少なくとも10モルパーセント、少なくとも20モルパーセント、又は少なくとも50モルパーセントが、グアニル化剤と反応する。カルボニル基の最大100モルパーセント、最大90モルパーセント、最大80モルパーセント、又は最大60モルパーセントを、グアニル化剤と反応させることができる。例えば、グアニル化剤は、カルボニル含有ポリマー中のカルボニル基の0.1~100モルパーセント、0.5~100モルパーセント、1~90モルパーセント、1~80モルパーセント、1~60モルパーセント、2~50モルパーセント、2~25モルパーセント、又は2~10モルパーセントを官能化するのに十分な量で使用することができる。
【0105】
グアニジニル含有ポリマーは、架橋させることができる。いくつかの実施形態では、カルボニル含有ポリマーは、グアニル化剤と反応する前に架橋される。カルボニル含有ポリマーは、カルボニル含有ポリマーを形成するために使用されるモノマー組成物中の架橋モノマーの添加、又は、予め形成されたカルボニル含有ポリマーのカルボニル基の一部と好適な架橋剤との反応のいずれかによって架橋することができる。他の実施形態では、架橋は、カルボニル含有ポリマーとグアニル化剤との反応後に生じ得る。この実施形態では、架橋は、好適な架橋剤を用いて、又はグアニジニル基の一部と架橋剤との反応の残りのカルボニル基の一部(グアニジニル含有ポリマーの形成の過程で反応しなかったカルボニル含有ポリマー前駆体中のカルボニル基)の反応によって生じ得る。
【0106】
カルボニル含有ポリマーを形成するためにモノマー組成物中で使用するのに好適な架橋モノマーとしては、N,N’-(ヘテロ)アルキレンビス(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これに限定されない。これらの架橋モノマーは、1つのポリマー鎖を別のポリマー鎖と架橋させるように反応し得るか、又はポリマー鎖の1つの部分を同じポリマー鎖の別の部分と架橋させるように反応し得る、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する。好適なN,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミド架橋モノマーとしては、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキレン基を有するもの、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N,N’-エチレンビスアクリルアミド、N,N’-エチレンビスメタクリルアミド、N,N’-プロピレンビスアクリルアミド、N,N’-プロピレンビスメタクリルアミド、N,N’-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、及びN,N’-ヘキサメチレンビスメタクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。好適なN,N’-ヘテロアルキレンビス(メタ)アクリルアミド架橋モノマーとしては、N,N’-シスタミンビスアクリルアミド、N,N’-ピペラジンビスアクリルアミド、及びN,N’-ピペラジンビスメタクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。これらの架橋モノマーは、Sigma-Aldrich(Milwaukee,WI)及びPolysciences,Inc.(Warrington,PA)などの様々な供給元から市販されている。あるいは、これらの架橋モノマーは、例えば、Rasmussen,et al.,Reactive Polymers,16,199-212(1991/1992)などの当該技術分野において記載の手順によって合成することができる。
【0107】
カルボニル含有ポリマー前駆体のカルボニル基又はグアニジニル含有ポリマーの残りのカルボニル基との反応に好適な架橋剤としては、2つ以上のアミン、ヒドラジン、ヒドラジド、又はO-置換ヒドロキシルアミン部分を含む分子が挙げられる。ポリアミン(2つ以上のアミン基を有する化合物)架橋剤の具体例としては、1,2-エタンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、トリス-(2-アミノエチル)アミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなどが挙げられる。ポリヒドラジン(2つ以上のヒドラジン基を有する化合物)の具体例としては、1,1’-エチレンビスヒドラジン、1,1’-プロピレンビスヒドラジン、1,1’-エチレンビス(1-シクロヘキシルヒドラジン)、1,1’-デカメチレンビス(1-n-ブチルヒドラジン)などが挙げられる。有用なポリヒドラジド(2つ以上のヒドラジド基を有する化合物)の具体例としては、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、1,3-ジアミノグアニジンなどが挙げられる。ポリヒドロキシアミン(2つ以上のO-置換ヒドロキシルアミン基を有する化合物)の具体例としては、O,O’-エチレンビスヒドロキシエチルアミン(1,2-ビスアミノキシエタン)、1,6-ビスアミノキシヘキサンなどが挙げられる。あるいは、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、又はO-置換ヒドロキシルアミン部分から選択される2つ以上の異なる部分を含む架橋剤を使用することもできる。
【0108】
グアニジニル含有ポリマーのグアニジニル基との反応に好適な架橋剤としては、グルタルアルデヒドなどのビス及びポリアルデヒド、ブタンジオールジグリシジルエーテル及びエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのビス-及びポリエポキシドなどのアミン反応性化合物、ポリカルボン酸及びそれらの誘導体(例えば、酸塩化物)、ポリイソシアネート、ヒドロキシメチル及びアルコキシメチル官能性架橋剤などのホルムアルデヒド系架橋剤、例えば尿素又はメラミンから誘導されるものが挙げられる。
【0109】
グアニジニル含有ポリマーを調製するために前駆体ポリマーをグアニル化剤と反応させるのではなく、グアニジニル含有ポリマーは、グアニジニル含有モノマーのフリーラジカル重合によって調製することができ、これはエチレン性不飽和基及びグアニジニル含有基を有するモノマーを指す。例示的なグアニジニル含有モノマーは、式(IX)及び(X)のものである。
【化9】
【0110】
式(IX)及び(X)において、R
1は、水素、C
1~C
12アルキル、又はC
5~C
12(ヘテロ)アリールである。基R
2は、共有結合、C
2~C
12アルキレン、C
5~C
12(ヘテロ)アリーレン、下記式の二価の基、
【化10】
又は下記式の二価の基
【化11】
である。
【0111】
基R10は、C2~C12アルキレン、又はC5~C12(ヘテロ)アリーレンである。各R3は、独立して、水素、ヒドロキシル、C1~C12アルキル、又はC5~C12(ヘテロ)アリールである。R3は、好ましくは、水素又はC1~C4アルキルである。基R4は、水素、C1~C12アルキル、C5~C12(ヘテロ)アリール、又は-N(R3)2である。好ましくは、R4は、水素又はC1~C4アルキルである。基Xは、オキシ又は-NR3-である。基R6は、C2~C12アルキレンである。基R7は、水素又はCH3である。
【0112】
式(IX)及び(X)のモノマーは、例えば、カルボニル含有モノマーと式(VII)のグアニル化剤との縮合反応によって形成することができる。炭素含有モノマーの例としては、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、イソプロペニルメチルケトン、ビニルフェニルケトン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトニルアクリレート、及びアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
式(IX)又は(X)のモノマーを反応させてホモポリマーを形成してもよく、又は上記親水性モノマーのいずれかなどの他のエチレン性不飽和モノマーと共重合させることができる。カルボニル含有ポリマーの調製において上述したものなどのフリーラジカル開始剤を使用することができる。この反応は、国際特許公開第2011/103106(A1)号(Rasmussenら)に更に記載されている。
【0114】
式(X)又は(XI)のモノマーから形成されるグアニジニル含有ポリマーは、典型的には、モノマー組成物に架橋モノマーを添加することによって架橋される。好適な架橋モノマーとしては、N,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-ヘテロアルキレンビス(メタ)アクリルアミド、又はこれらの組み合わせが挙げられる。より具体的な架橋剤は、カルボニル含有ポリマーの調製のためのモノマー組成物中で使用するための上記と同じものである。あるいは、グアニジニル含有ポリマーは、架橋モノマーを含まずに形成することができ、グアニジニル基は、上記の架橋剤と反応させることができる。
【0115】
グアニジニル含有ポリマーは、任意の好適な方法又は手段を使用して基材に結合することができる。いくつかの実施形態では、グアニジニル含有ポリマーは、基材にグラフト(すなわち、共有結合)される。他の実施形態では、グアニジニル含有ポリマーは、架橋前に基材と接触し、基材の存在下で架橋される。基材が繊維を含む場合(例えば、基材は織布又は不織布を含む)、架橋グアニジニル含有ポリマーは、繊維を取り囲むことができる。繊維及び架橋グアニジニル含有ポリマーは、剥離若しくは溶解などの技術によって、又は拭き取り布を破壊することなく任意の他の技術によって、分離が不可能であるように混合することができる。
【0116】
グアニジニル含有ポリマーを含むカチオン性コーティング組成物を基材に塗布する。コーティング方法としては、ディップ、スプレー、ナイフ、バー、スロット、スライド、ダイ、ロール、及びグラビアコーティングなど、一般的に既知の技術が挙げられる。カチオン性コーティングは、基材の表面上に配置されてもよく、又は基材全体にわたって分散されてもよい。例えば、カチオン性コーティング組成物を基材の表面に塗布することができる。基材の多孔性に応じて、カチオン性コーティング組成物の粘度、及びカチオン性コーティング組成物の少なくとも一部におけるカチオン性コーティング組成物の基材に対応する相対体積は、基材に浸透することができる。いくつかの実施例では、カチオン性コーティングは、基材がカチオン性コーティング組成物に浸漬又は被覆されるように、基材上に注液することができる。カチオン性コーティング組成物は、多くの場合、水、極性有機溶媒などの有機溶媒(例えば、水と混和性である溶媒)、又はこれらの混合物などの液体を含む。カチオン性コーティング組成物は、グアニジニル含有ポリマーのための架橋剤を更に含み得る。基材にグアニジニル含有ポリマーを結合するために使用される化学物質に応じて、グアニジニル含有ポリマーを基材にグラフト化又は付着させるための化合物をカチオン性コーティング組成物中に含めることができる。基材に塗布した後、カチオン性コーティング組成物を乾燥させて、液体又は液体の任意の所望の部分を除去することができる。いくつかの実施形態では、液体を除去するための乾燥は、蒸発によって達成される。
【0117】
いくつかの実施形態では、カチオン性コーティング組成物は、グアニジニル含有ポリマーの前駆体ポリマーを最初に適用し、続いてグアニル化剤を適用することによって、基材に塗布される。例えば、アミノ含有ポリマー前駆体又はカルボニル含有ポリマー前駆体を、第1のコーティング組成物中の基材に塗布することができる。次いで、グアニル化剤を含む第2のコーティング組成物を塗布することができる。架橋剤は、第1のコーティング組成物中に前駆体ポリマーと共に、第2のコーティング組成物中にグアニル化剤を用いて、又は第3のコーティング組成物中に添加することができる。コーティング組成物のいずれかは、グアニジニル含有ポリマーを基材にグラフト化するための任意の化合物を含むことができる。
【0118】
他の実施形態では、グアニジニル含有ポリマーは、基材に塗布される。グアニジニル含有ポリマーを含有するコーティング組成物は、架橋剤、任意選択のグラフト化合物、又はこれらの混合物を更に含むことができる。あるいは、架橋剤及び/又は任意のグラフト剤を、第2のコーティング組成物中に添加することができる。
【0119】
いくつかの基材は、ハロゲン化物基、エポキシ基、エステル基、又はイソシアネート基などのアミン反応性官能基を有する。これらのアミン反応性基は、グアニジニル含有ポリマーのアミノ基と反応し得る。アミノ基は、グアニジニル基(末端アミノ基など)又はグアニジニル含有ポリマー中に存在する任意の他のアミノ基の一部であり得る。例えば、グアニジニル含有ポリマーがアミノ含有ポリマー前駆体から形成された場合、グアニジニル含有ポリマーの主鎖中にアミノ基が存在し得る。
【0120】
基材上のアミン反応性官能基は、基材を形成するために使用されるポリマー材料の一部であってもよく、又は当該技術分野において既知の任意の技術によって提供されてもよい。一実施形態において、基材は、アミン反応性官能基を有するポリマーを含有するプライマー層を有し得る。すなわち、基材は、下地ポリマー層とプライマー層とを含む。プライマー層に使用される特に有用なポリマーは、米国特許第7,101,621号(Haddadら)に記載されているものなどのアズラクトン官能性ポリマーである。このようなプライマー層コーティングは、典型的には親水性であり、カチオン性コーティング組成物と適合する。プライマー層の有用なコーティング技術としては、アミン反応性官能基を有するポリマーの溶液又は分散液を、任意で、更に架橋剤を基材上に塗布することを含む。コーティング方法としては、ディップ、スプレー、ナイフ、バー、スロット、スライド、ダイ、ロール、及びグラビアコーティングなど、一般的に既知の技術が挙げられる。塗布工程に続いて、一般的に、溶媒を蒸発させてポリマーコーティングを形成する。
【0121】
いくつかの実施形態では、アミン反応性官能基を有するポリマーは、フリーラジカル重合性基を有するモノマーの放射線開始グラフト重合、及びグアニジニル含有ポリマーと反応する第2の官能基をイオン化することによって、基材の表面にグラフトされ得る。アミン反応性官能基を有する1つのこのようなポリマーは、米国特許第8,551,894号(Seshadriら)に記載されている。好適なモノマーとしては、例えば、アズラクトン官能性モノマー、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。他の好適なモノマーとしては、例えば、米国特許第8,377,672号(Rasmussenら)に記載されているようなカルボニル基を有するものが挙げられる。モノマーは、電離放射線、好ましくは電子ビーム又はガンマ線に曝露されたときに、基材の表面にグラフト(すなわち、共有結合を形成)することができる。すなわち、電離放射線の存在下でのモノマーのエチレン性不飽和基(例えば、(メタ)アクリロイル基)と基材の表面との反応により、エチレン性不飽和基を介して基材へのグラフト化が生じる。
【0122】
いくつかの基材は、アミンなどの炭素反応性基を有する。これらのカルボニル反応性基は、グアニル化剤と反応する前にカルボニル含有ポリマー前駆体と反応することができるか、グアニル化剤との反応後に、グアニジニル含有ポリマー中の任意の残留カルボニル基と反応することができる。
【0123】
基材上のカルボニル反応性官能基は、基材を形成するために使用されるポリマー材料の一部であってもよく、又は当該技術分野において既知の任意の技術によって提供されてもよい。いくつかの実施形態では、カルボニル反応性基は、フリーラジカル重合性基を有するモノマーと、グアニジニル含有ポリマー中のカルボニル含有前駆体又はグアニル化剤との反応後の任意の残留カルボニル基のいずれかのカルボニル基と反応することができる第2の基との放射線開始グラフト重合をイオン化することによって、基材の表面にグラフト化することができる。このようなモノマーは、R8が水素である式(V)のものなどの様々なアミノ含有モノマーである。
【0124】
グアニジニル含有ポリマーを基材に結合する別の方法では、ベンゾフェノン又はアセトフェノンなどの化合物を、カルボニル含有前駆体を形成するために使用されるモノマー組成物に添加することができる。紫外線に曝露すると、ベンゾフェノン又はアセトフェノンは、基材のポリマー材料から水素原子を引き抜くことができる。この引き抜きにより、基材のポリマー材料上にフリーラジカル部位が形成される。次いで、モノマーは、フリーラジカル部位と相互作用し、基材上にグラフト重合される。次いで、共有結合カルボニル含有ポリマーをグアニル化剤で処理してグアニジニル含有ポリマーを形成することができる。
【0125】
グアニジニル含有ポリマーの基材への結合は、機械的安定性、熱安定性、多孔性、及び可撓性など、基材の望ましい特徴の多くを保持しながら、様々な微生物に対して強化された親和性を提供する。拭き取り布は、典型的には、拭き取り布の総重量に基づいて、0.1~10重量%の範囲、0.1重量%~5重量%の範囲、0.1~3重量%の範囲、0.1~2の範囲、又は0.1重量%~1重量%の範囲の量の結合されたグアニジニル含有ポリマーを含有する。
【0126】
グアニジニル含有ポリマーに関する更なる詳細は、例えば、国際特許公開第2014/209798号に見出すことができ、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
第1、第2、又は両方の組成物における任意成分
また、開示される組成物は、(第1、第2又はその両方の)1つ以上の他の任意の構成成分を含んでもよい。例えば、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを含む界面活性剤が、開示される組成物中に含まれてもよい。界面活性剤は、利用される場合、例えば組成物中の分散された粒子を安定化するために使用され得る。一部の実施形態において、アニオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤を、任意で、開示される組成物において利用することができる。
【0128】
アニオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、サルコシネート、グルタメート、アルキルサルフェート、アルキルエーテル硫酸ナトリウム又はカリウム(sodium or potassium alkyleth sulfates)、アルキルエーテル硫酸アンモニウム、ラウレス-n-硫酸アンモニウム、ラウレス-n-サルフェート、イセチオネート、アルキル及びアラルキルグリセリルエーテルスルホネート、アルキル及びアラルキルスルホスクシネート、アルキルグリセリルエーテルスルホネート、アルキルホスフェート、アラルキルホスフェート、アルキルホスホネート、並びにアラルキルホスホネートを挙げることができる。これらのアニオン性界面活性剤は、金属又は有機アンモニウム対イオンを有し得る。一部の実施形態において、スルホネート及びサルフェート、並びにホスホネート及びホスフェートから選択されるアニオン性界面活性剤を、開示される組成物において利用することができる。
【0129】
好適なアニオン性界面活性剤としては、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンエーテルサルフェート、アルキルスルホアセテート、二級アルカンスルホネート、及び二級アルキルサルフェートなどのスルホネート及びサルフェートを挙げることができる。これらの多くは、式:R14-(OCH2CH2)n(OCH(CH3)CH2)p-(Ph)a-(OCH2CH2)m-(O)b-SO3-M+及びR14-CH[SO3-M+]-R15によって表すことができ、式中、a及びb=0又は1であり、n、p、及びm=0~100であり(一部の実施形態において0~20であり、一部の実施形態において0~10である)、R14及びR15は(C1~C12)アルキル基(飽和直鎖状、分枝状、又は環状基)であり、これは任意でN原子、O原子、若しくはS原子、又はヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、若しくはアミン基によって置換されていてもよいが、但し少なくとも1個のR14又はR15が少なくともC8であることを条件とし、Ph=フェニルであり、MはH、Na、K、Li、アンモニウムなどのカチオン性対イオンであるか、あるいはトリエタノールアミンなどのプロトン化三級アミンであるか、あるいは四級アンモニウム基である。
【0130】
上の式中、エチレンオキシド基(すなわち、「n」基及び「m」基)及びプロピレンオキシド基(すなわち、「p」基)は、逆の順序、及びランダム、連鎖、又はブロック配列で生じてもよい。この部類に関する一部の実施形態においては、R14は、R16-C(O)N(CH3)CH2CH2-などのアルキルアミド基、並びに-OC(O)-CH2-などのエステル基を含んでもよく、式中、R16は、(C8~C22)アルキル基(分枝状、直鎖状、又は環状基)である。例としては、限定されるものではないが:Stepan Company,Northfield,ILから入手可能であるPOLYSTEP B12(n=3~4、M=ナトリウム)及びB22(n=12、M=アンモニウム)などのラウリルエーテルサルフェートなどのアルキルエーテルスルホネート、並びにメチルタウリン酸ナトリウム(Nikko Chemicals Co.,Tokyo,Japan製の商品名NIKKOL CMT30で入手可能);第二級アルカンスルホネートのナトリウム塩であるHostapur SASなどの第二級アルカンスルホネートが挙げられる。
【0131】
例としては、例えばClariant Corp.,Charlotte,NCから入手可能である(C14~C17)二級アルカンスルホネート(アルファ-オレフィンスルホネート);商品名ALPHASTEP PC-48でStepan Companyから入手可能である、ナトリウムメチル-2-スルホ(C12~16)エステル及び2-スルホ(C12~C16)脂肪酸二ナトリウムなどのメチル-2-スルホアルキルエステル;両方ともStepan Company製の、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム(商品名LANTHANOL LAL)及びラウレススルホコハク酸二ナトリウム(STEPANMILD SL3)として入手可能であるアルキルスルホアセテート及びアルキルスルホスクシネート;Stepan Company製の商品名STEPANOL AMで市販されているラウリル硫酸アンモニウムなどのアルキルサルフェート;Cytec Industries製のAerosol OTとして入手可能であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホスクシネートを挙げることができる。
【0132】
また、好適なアニオン性界面活性剤としては、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、アラルキルホスフェート、及びアラルキルエーテルホスフェートなどのホスフェートを挙げることもできる。多くは、下式:
[R14-(Ph)a-O(CH2CH2O)n(CH2CH(CH3)O)p]q-P(O)[O-M+]rによって表すことができ、
式中、Ph、R14、a、n、p、及びMは上記で定義され、rは0~2であり、q=1~3であり、但し、q=1のとき、r=2であり、q=2のとき、r=1であり、かつq=3のとき、r=0である。上記と同様に、エチレンオキシド基(すなわち、「n」基)及びプロピレンオキシド基(すなわち、「p」基)は、逆の順序、及びランダム、連鎖、又はブロック配列で生じてもよい。例としては、Clariant Corp.製の商品名HOSTAPHAT 340KXで市販されているトリラウレス-4-ホスフェートなどのモノ-、ジ-、及びトリ-(アルキルアルコキシレート)-o-リン酸エステルの混合物、並びに、Croda Inc.,Parsipanny,NJ製の商品名CRODAPHOS SGで入手可能であるPPG-5セテス10ホスフェート、並びにこれらの混合物を挙げることができる。アニオン性界面活性剤の商標名としては、Rhodocal DS-10、Stepan Mild、及びComplemixが挙げられる。
【0133】
両性界面活性剤。両性のタイプの界面活性剤としては、プロトン化されていてもよい、第三級アミン基を有する界面活性剤、及び第四級アミン含有双性イオン性界面活性剤が挙げられる。一部の実施形態において、カルボン酸アンモニウム及びスルホン酸アンモニウムを利用することができる。
【0134】
カルボン酸アンモニウムの部類の界面活性剤は、以下の式:R17-(C(O)-NH)a-R18-N+(R19)2-R20-COO-によって表すことができ、式中、a=0又は1であり、R17は、(C7~C21)アルキル基(飽和直鎖、分枝鎖、若しくは環状基)、(C6~C22)アリール基、又は(C6~C22)アラルキル若しくはアルカリル基(飽和直鎖、分枝鎖、若しくは環状アルキル基)であり、式中、R17は、任意で、1つ以上のN、O、若しくはS原子、又は1つ以上のヒドロキシル、カルボキシル、アミド、若しくはアミン基で置換されていてもよく、R19は、H又は(C1~C8)アルキル基(飽和直鎖、分枝鎖、若しくは環状基)であり、式中、R19は、任意で1つ以上のN、O、若しくはS原子、又は1つ以上のヒドロキシル、カルボキシル、アミン基、(C6~C9)アリール基、又は(C6~C9)アラルキル若しくはアルカリル基で置換されていてもよく、R18及びR20は、それぞれ独立して、同じであっても異なっていてもよく、任意で1つ以上のN、O、若しくはS原子、又は1つ以上のヒドロキシル若しくはアミン基で任意に置換されてもよい(C1~C10)アルキレン基である。一部の実施形態において、上の式中、R17は(C1~C18)アルキル基であり、R19は、メチル基又はベンジル基で置換されていてもよく、一部の実施形態においてはメチル基で置換されていてもよい(C1~C2)アルキル基である。R19がHである場合、より高いpH値における界面活性剤が、例えばNa、K、Liなどのカチオン性対イオンと共に三級アミンとして、又は四級アミン基として存在し得ることが理解される。このような両性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、ココベタイン及びコカミドプロピルベタインなどのある特定のベタイン(Mclntyre Group Ltd.,University Park,IL製の商品名MACKAM CB-35及びMACKAM Lで市販されている);ラウロアンホ酢酸ナトリウムなどのモノアセテート;ラウロアンホ酢酸二ナトリウムなどのジアセテート;ラウラミノプロピオン酸などのアミノ-及びアルキルアミノ-プロピオネート(Mclntyre Group Ltd.から、それぞれ、商品名MACKAM IL、MACKAM 2L、及びMACKAM 15 ILで市販されている)が挙げられる。
【0135】
スルホン酸アンモニウムの部類の両性界面活性剤は、多くの場合、「スルタイン」又は「スルホベタイン」と呼ばれ、以下の式:R17-(C(O)-NH)a-R18-N+(R19)2-R20-SO3によって表すことができ、式中、R17~R20及び「a」は上記で定義されている。例としては、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン(Mclntyre Group Ltd.からMACKAM 50-SBとして市販されている)が挙げられる。スルホアンホテリクス(sulfoamphoterics)は、スルホネート基が非常に低いpH値でもイオン化されたままであるため、一部の実施形態においてはカルボキシレートアンホテリクスの代わりに利用することができる。
【0136】
非イオン性界面活性剤。例示的非イオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、スクロースエステル、脂肪酸と多価アルコールとのエステル、脂肪酸アルカノールアミド、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪族酸、エトキシル化脂肪アルコール(例えば、両方ともSigma,St.Louis,MO製の、商標名TRITON X-100で入手可能であるオクチルフェノキシポリエトキシエタノール及び商標名NONIDET P-40で入手可能であるノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール)、エトキシル化及び/又はプロポキシル化脂肪族アルコール(例えば、ICI製の商標名Brijで入手可能であるもの)、エトキシル化グリセリド、エトキシル化/プロポキシル化ブロックコポリマー、例えばBASFから入手可能であるPluronic界面活性剤及びTetronic界面活性剤など、エトキシル化環状エーテル付加物、エトキシル化アミド及びイミダゾリン付加物、エトキシル化アミン付加物、エトキシル化メルカプタン付加物、アルキルフェノールによるエトキシル化濃縮物、エトキシル化窒素系疎水性物質、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ポリマー性シリコーン、フッ素化界面活性剤(例えば、3M Company,St.Paul,MN製の商標名FLUORAD-FS 300で入手可能であるもの及びDupont de Nemours Co.,Wilmington,DE製の商標名ZONYLで入手可能であるもの)、並びに重合性(反応性)界面活性剤(例えば、PPG Industries,Inc.,Pittsburgh,PA製の商標名MAZONで入手可能であるSAM 211(アルキレンポリアルコキシサルフェート)界面活性剤)が挙げられる。一部の実施形態において、本組成物において有用である非イオン性界面活性剤は、BASF製のPLURONICなどのポロキサマー、TWEENのようなソルビタン脂肪酸エステル、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0137】
また、開示される組成物は、他の任意の構成成分を含んでもよい。そのような任意の構成成分の1つとしては、抗微生物性構成成分が挙げられる。限定されるものではないが、塩化セチルピリジニウム、臭化セトリモニウム(CTAB)、ベヘントリモニウムクロリド、クロルヘキシジン塩を含むビスビグアニド、及びポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)などの高分子グアニド、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジンなどのクロルヘキシジン塩、オクテニジン二塩酸塩などのオクテニジン塩、ステアラルコニウムクロリドなど、並びにこれらの混合物を含むカチオン性第四級アンモニウム塩(これらの一部は抗菌剤である)を使用することができる。存在する場合、抗微生物剤は、一般的に、本組成物の総重量に基づいて0.01~1重量%で存在することができる。また、トリクロサンなどの非イオン性抗微生物剤を使用することもできる。本組成物の安定性が損なわれない限り、カチオン性化合物を比較的低い濃度で使用することができる。
【0138】
また、開示される組成物に、アミン化合物を任意で添加することもできる。これらのアミン化合物としては、例えばJeffamineなどのエトキシル化アミン及びpeg 8オレイルアミンを挙げることができる。
【0139】
また、開示される組成物に、湿潤剤を任意で添加することもできる。好適な湿潤剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0140】
また、開示される組成物に、皮膚軟化剤及びポリマーを含む皮膚コンディショニング剤を任意で添加することもできる。例えば、モノ-、ジ-、及びトリ-グリセリド、ヒマシ油、アラントイン、ラノリン及びその誘導体、セチルアルコール、並びにカチオン性ポリマーなどの有用な皮膚コンディショニング剤を利用することができる。皮膚軟化剤は、例えば、米国特許第5,951,993号のものから選択することができ、この特許は、参照によって本明細書に援用される。
【0141】
また、開示される組成物に、増粘剤を任意で添加することもできる。一部の実施形態において、増粘剤は有機増粘剤であってもよい。好適な有機増粘剤としては、例えばグアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリジノン、及び米国特許第8,062,649号に開示されているものを挙げることができ、この特許は、参照によって本明細書に援用され、これらの有機増粘剤は、本組成物の総重量に基づいて、典型的には0.1~2重量%の範囲の量で使用される。水和シリカなどの無機増粘剤は、本組成物の総重量に基づいて、約0.5~10重量%以上の量で使用されてもよい。
【0142】
一部の実施形態において、第1の組成物及び第2の組成物のうちの少なくとも1つ又は両方は、増粘剤を含むことができる。一部の実施形態において、本組成物のうちの1つ又は両方は、本組成物の総重量に基づいて、0.2重量%以下の増粘剤、0.1重量%以下の増粘剤、又は更には0.05重量%以下の増粘剤を含むことができる。一部の実施形態において、第1の組成物は、第1の組成物の総重量に基づいて、0.3重量%以下の増粘剤、0.2重量%以下の増粘剤、0.1重量%以下の増粘剤、又は更には0.05重量%以下の量の増粘剤を含むことができる。
【0143】
また、研磨剤又は機械的剥離剤が、開示される組成物中に任意で含まれてもよい。一部の実施形態において、研磨材料又は剥離材料としては、ホスフェート、カーボネート、シリケート、水和シリカ、水和アルミナ、ベントナイトなどの水不溶性研磨剤、並びにポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレンなどのポリマービーズ、並びにポリオレフィンビーズ及び微粒子など、並びにこれらの混合物を挙げることができる。一部の場合において、他の穏やかな剥離剤を、芽胞を機械的に取り除くために、開示される組成物において任意で使用することができる。例示的剥離剤としては、例えば葛粉又はクルミ粉末を挙げることができる。
【0144】
方法及びその例示的な工程
開示される方法は、例えば皮膚、医療用設備、医療環境における表面、又はこれらの任意の組み合わせを含む、事実上任意の表面において利用することができる。一部の実施形態において、開示される方法は、患者、医療従事者、他の個人の皮膚、又はこれらの任意の組み合わせにおいて利用することができる。第1の組成物及び第2の組成物の両方は液体である。
【0145】
芽胞が位置しており、除去されるべき表面は、第1の組成物を表面に適用すること若しくは近付けることにより、表面を第1の組成物と接触させることにより、又はこれらの組み合わせによって、第1の組成物と接触させることができる。より具体的には、第1の組成物及び表面は、第1の組成物を表面上に噴霧することにより、第1の組成物を表面上に分注することにより、表面を第1の組成物中に浸漬することにより、第1の組成物を表面に注液することにより、又はこれらの任意の組み合わせによって接触させることができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、表面を第1の組成物と接触させることは、第1の組成物を物品内又は物品上に分注することによって達成することができる。分注は、例えば、第1の組成物に物品を注液すること、噴霧すること、持っていくこと(例えば、浸漬)、又は物品を第1の組成物に沈めることによって達成することができる。示されるように、第1の組成物は、物品内又は物品上に分注され得る。
【0147】
第1の組成物が物品に分注される実施形態では、例示的な物品は、例えば、水槽、ボウル、及びタブを含むことができる。そのような方法は、例えば、芽胞が除去される皮膚が、物品内の第1の組成物と接触される場合に有用であり得る。より具体的には、これは、患者の一部又は全てが物品内の第1の組成物に浸漬されることになる場合に有用であり得る。例えば、患者は、物品(例えば、タブ)内に入浴できるようになる。別の例としては、患者の一部、例えば1つ以上の手が水槽内の第1の組成物に浸漬される水槽を含むことができる。これはまた、第2の物品が物品内の第1の組成物に浸漬されるようになり、その後、第2の物品が皮膚と接触するようになることになる場合にも有用であり得る。
【0148】
物品内に分注される第1の組成物の量、又は有効量は、第2の物品又はこれらの組み合わせであるか否かにかかわらず、芽胞が除去される皮膚が物品内の第1の組成物と接触する方法、洗浄される特定の皮膚、任意の機械的作用の種類(以下で論じる)に少なくとも部分的に依存し得る。
【0149】
第1の組成物が物品中に分注される一部の実施形態において、5ミリリットル(mL)以上の第1の組成物、1mL以上の第1の組成物、又は2mL以上の第1の組成物を物品に分注することができる。第1の組成物の関連する上方量は、物品内の特定の物品(例えば、その最大体積)、浸漬される体積(浸漬が関連する場合)、又はこれらの組み合わせに少なくとも部分的に依存する。
【0150】
組成物が物品に分注される一部の実施形態において、分注される量、又は有効量はまた、表面積、例えば、芽胞が除去される皮膚の表面積に少なくとも部分的に依存し得る。一部の実施形態において、1mL以上の第1の組成物/10cm2の芽胞が除去される皮膚表面を物品中に分注することができ、一部の実施形態において、1mL以上の第1の組成物/50cm2の芽胞が除去される皮膚表面を物品中に分注することができる。
【0151】
一部の実施形態において、表面を第1の組成物と接触させる工程は、第1の組成物と予め接触させておいた物品に表面を接触させることを含んでもよい。例えば、物品を組成物と接触させてもよく又は組成物で処理してもよく、その後、処理された物品を表面と接触させてもよい。
【0152】
第1の組成物が物品上に分注されるいくつかの実施形態では、例示的な物品は、例えば、拭き取り布、スポンジ、布、ヘチマ繊維、ブラシ、パッド、又は繊維マットを挙げることができる。第2の組成物もまた(第1の組成物が物品上に任意で分注されるとき)、物品上に分注され、そのような物品(第1の組成物又は第2の組成物、又は他の物品では両方を含有する)に関連する議論もまた含み、第1の組成物又はそれに関連する物品、第2の組成物、又はそれに関連する物品、又はそれらの両方に適用することができる。
【0153】
物品上に組成物を分注することは、組成物を物品と接触させること、物品を組成物と接触させること、又はこれらの任意の組み合わせとすることができることを意味することを理解されたい。そのような方法は、芽胞が除去される皮膚が、例えば、組成物に関連する物品と接触している場合に有用であり得る。より具体的には、これは、患者の罹患した皮膚を、組成物が分注された物品で拭き取ることにより、患者の皮膚から芽胞を除去するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、コーティング、例えば、カチオン性コーティングを用いて拭き取り布上に分注され得る。
【0154】
物品上に分注される組成物の量、又は有効量は、クリーニングされる特定の表面(例えば、皮膚)、洗浄される表面(例えば、皮膚)の総表面積、任意の機械的作用の種類(以下で論じられる)、特定の種類の物品(例えば、サイズ又は化学成分のために、物品が吸収、保持などできる量)又はこれらの組み合わせに少なくとも部分的に依存し得る。
【0155】
組成物が物品上に分注される一部の実施形態において、3mL以上の組成物、4mL以上の組成物、5mL以上の組成物、又は2mL以上の組成物を物品上に分注することができる。組成物の関連する上方量は、少なくとも部分的に、特定の物品(例えば、その表面積、その材料、その多孔性など)、物品の所望のレベルの「湿り度」、及びこれらの組み合わせに依存する。
【0156】
組成物が物品上に分注される一部の実施形態において、分注される量、又は有効量はまた、芽胞が除去される皮膚の表面積に少なくとも部分的に依存し得る。一部の実施形態において、1mL以上の組成物/10cm2の芽胞が除去される皮膚表面を物品上に分注することができ、一部の実施形態において、5mL以上の組成物/10cm2の芽胞が除去される皮膚表面を物品上に分注することができる。
【0157】
組成物が物品上に分注されるいくつかの実施形態では、有効量は、芽胞が除去される皮膚表面と接触する組成物の十分な量を提供するものである。いくつかの実施形態では、有効量は、物品を飽和させるのに必要な組成物の量に関して説明することができる。物品は、物品が維持できるよりも多くの組成物と接触して、物品に適度な圧力が加えられて過剰を取り除くことができる場合、「飽和」である。容易に濡れている物品において、「飽和」は、組み込み直後に、実質的に決定することができる。より疎水性の物品では、物品を組成物に長時間曝露することが必要であり得る。適度な量の圧力は、拭き取り布からの更なる液体の漏れが見られなくなるまで、平均的な手絞りの動きで適用することができる。圧力が加えられた後に物品内に保持された組成物の量は、飽和量と呼ぶことができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、物品上に分注され得る組成物の有効量は、飽和量がバイパスされるように、(例えば)拭き取り布をできるだけ湿潤状態にする量であり得る。いくつかの実施形態では、飽和レベルを下回るか、又は飽和量よりも5%以上下回ることが望ましくない場合がある。いくつかの実施形態では、物品上に分注され得る組成物の有効量は、物品の飽和量の40%以下であり得る。一部の実施形態では、有効量は、物品の飽和量よりも20%以下、一部の実施形態では、飽和量よりも15%以下、いくつかの実施形態では、飽和量よりも5%以下であり得る。いくつかの実施形態では、有効量の組成物は、有用な物品を維持しながら、物品を可能な限り湿潤させるものとすることができる。
【0159】
あくまで説明を目的として、4インチ×6インチのSONTARA(登録商標)8005、100%PET(DuPont)拭き取り布は、3.5gの液体の飽和量を有し、そのため、このような物品のための例示的な有効量としては、4.9g以下の液体、4.2g以下の液体、4.0g以下の液体、3.7g以下の液体、及び3.3g以下の液体を含み得る。
【0160】
組成物が物品上に分注されるいくつかの実施形態では、異なる第1の工程を利用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、開示される方法における第1の工程は、組成物を含有する物品を得ることを含み得る。組成物を含有する物品は、物品の材料全体に分布する有効量の組成物を担持することができる物品である。
【0161】
組成物を含有する物品を得る工程は、担体を上記組成物などの組成物と接触させることによって達成することができる。この工程は、組成物を物品に分注することに関して上述したように実施することができ、この場合は担体である。担体は、例えば、拭き取り布、又はスポンジであってもよい。また、上述したように、担体を組成物に浸漬することができ、組成物を担体上に噴霧することができ、組成物は、担体、又はこれらの任意の組み合わせに適用することができる。
【0162】
組成物を含有する物品を得る工程はまた、組成物で予め湿らせた担体を得ることによって達成され得る。例えば、組成物を含有する1つ以上の物品は、任意のタイプの気密若しくは再封止可能な包装、例えば、ホイルパック、プラスチック容器、又はこれらの任意の組み合わせで一緒にパッケージ化することができる。
【0163】
一部の開示される方法は、組成物と接触させた表面を機械的作用に供する工程を含む。これは、第1の組成物、第2の組成物、又はその両方を含むことができる。事実上任意のタイプの機械的作用を、開示される方法において利用することができる。機械的作用の例示的タイプとしては、例えば、何らかの物品(例えば、組成物で処理した物品又は第1の組成物で処理していない物品)で表面を擦ること、表面にわたって物品を動かすこと若しくは引っ掻くこと、組成物と接触させた表面を、組成物と接触させた別の表面にわたって動かすこと、又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。一部の実施形態において、機械的作用としては、組成物で処理した物品で、表面を擦ること、拭うこと、引っ掻くこと、又は擦り落とすことを挙げることができる。一部の実施形態において、機械的作用としては、組成物と接触させた第1の表面を、組成物と接触させた第2の表面にわたって、又はその上で動かすことを挙げることができる。そのような実施形態の具体例としては、組成物と接触させた2本の手を擦り合わせることを挙げることができる。
【0164】
表面を機械的作用に供する工程は、任意の時間量で行ってもよい。一部の実施形態において、表面は、5秒間以上、10秒間以上、又は20秒間以上、機械的作用に供され得る。一部の実施形態において、表面は、例えば2分間以内又は1分間以内、機械的作用に供され得る。
【0165】
一部の実施形態において、表面を第1の組成物と接触させる工程及び任意で組成物と接触している表面を機械的作用に供する工程は、少なくとも何らかの重複を伴って行ってもよい。例えば、一部の実施形態において、第1の組成物の少なくとも一部が表面と接触している間に、機械的作用を始めてもよい。具体的には、例えば、手が第1の組成物中に浸漬されている(又は組成物中に浸されている)間に、手を擦り合わせてもよい。一部の実施形態において、表面を第1の組成物と接触させる工程又は表面を機械的作用に供する工程の片方(又は両方)を2回以上繰り返してもよい。
【0166】
いくつかの実施形態では、皮膚を機械的作用にかける工程は、機械的作用の力によって説明することができる。いくつかの実施形態では、皮膚に対する機械的作用は、20N以上の力を有することができる。
【0167】
第2の組成物が物品上に分注されるいくつかの実施形態では、追加の工程を利用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、開示される方法における工程は、第2の組成物を含有するカチオン性コーティングを施した物品を得ることを含み得る。第2の組成物を含有するカチオン性コーティングを施した物品は、物品の材料全体に分布する有効量の第2の組成物の有効量を担持可能である、担持する、又はその両方が可能な、カチオン性コーティングを施した物品である。
【0168】
第2の組成物を含有するカチオン性コーティングを施した物品を得る工程は、カチオン性コーティングを施した担体を、上記の組成物などの第2の組成物と接触させることによって達成することができる。この工程は、カチオン性コーティングを施した物品上に第2の組成物を分注することに関して上述したように実施することができ、この場合は担体である。担体は、例えば、開示されるカチオン性コーティングでコーティングされた拭き取り布、又はスポンジであってもよい。また、上述したように、担体を第2の組成物に浸漬することができ、第2の組成物を担体上に噴霧することができ、第2の組成物を担体に塗布することができ、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0169】
第2の組成物を含有するカチオン性コーティングを施した物品を得る工程はまた、第2の組成物で予め湿らせたカチオン性コーティングを施した担体を得ることによって達成され得る。例えば、第2の組成物を含有する1つ以上のカチオン性コーティングを施した物品は、任意のタイプの気密若しくは再封止可能な包装、例えば、ホイルパック、プラスチック容器、又はこれらの任意の組み合わせで一緒にパッケージ化することができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、第1の組成物を表面と接触させる第1の工程と、カチオン性コーティングを施した拭き取り布及び第2の組成物に表面を接触させる第2の工程と、を含むことができる。一部の実施形態において、第1の組成物は、60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含むことができ、又は一部の実施形態において、第2の組成物は、60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含むことができるが、両方の組成物は、60重量%以上の少なくともアルコールを含むことができない。一部の実施形態において、第1の組成物は、少なくとも1つのアルコールを含むことができ、又は一部の実施形態において、第2の組成物は、少なくとも1つのアルコールを含むことができるが、両方の組成物は少なくともアルコールを含むことができない。いくつかの実施形態では、第2の組成物は拭き取り布と接触することができ、いくつかの実施形態では、第1の組成物及び第2の組成物の両方が拭き取り布と接触することができる。第1の組成物及び第2の組成物の両方が拭き取り布と接触しているいくつかの実施形態では、第2の組成物と接触する拭き取り布のみがカチオン性コーティングを施した拭き取り布である必要があり、又は第1の組成物及び第2の組成物と接触する拭き取り布の両方は、カチオン性コーティングを施した拭き取り布であり得る。いくつかのこのような実施形態では、第1の組成物及び第2の組成物と接触する拭き取り布は、同じタイプの拭き取り布(例えば、拭き取り布の材料)であってもよく、又はそうでなくてもよい。
【実施例】
【0171】
以下の実施例によって目的及び利点を更に例示するが、これらの実施例において記載される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に制限するものとして解釈されるべきではない。
【0172】
表1は、本明細書において利用した試薬のリストを記載している。
【0173】
【0174】
ブチル、オクチル、及びドデシルのGPEI溶液の調製
Polysciences Inc.,Warrington,PAからの70,000MWのポリエチレンイミン(PEI)を出発物質として使用した。ブチルGPEI(10モル%のアミン基を臭化ブチルと反応させ、次いで、25モル%のアミンをグアニル化した)を、国際公開第2011/109151号の実施例1及び2に記載されているものと同様の手順によって調製し、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。オクチルGPEI(10モル%臭化オクチル及び25モル%がグアニル化)及びドデシルGPEI(20モル%の臭化ドデシル及び25モル%がグアニル化)を同様に調製した。
【0175】
5K PEG GPEI溶液の調製
5K PEG GPEI溶液の調製のために、臭化アルキル(上記)を、Nanocs,Inc.,New York,NYから入手可能な5000MW PEGエポキシド、PGI-EP-5kで置き換え、同様の手順によって10モル%のアミン基と反応させるために使用した。
【0176】
配合物の調製
Vitro Skinから芽胞を取り除く能力について試験した配合物は全て、同じ様式で構築した。
【0177】
水及び界面活性剤溶液については、まず水をガラス瓶に添加し、次に界面活性剤を添加し、簡単に振盪して混合した。
【0178】
アルコール溶液については、まず水をガラス瓶に添加し、該当する場合、増粘剤(ULTREZ 20)を添加し、増粘剤が溶液中に分散するまで45rpmで一晩(約18時間)回転させた。増粘剤が分散したら、pHが約7になるまでトリエタノールアミンを滴加した。増粘剤を有さない溶液では、pH調整は必須ではなかった。全ての溶液について、アルコールを最終工程として添加し、これらを簡単に振盪して混合した。
【0179】
カチオン性コーティングを施した拭き取り布の調製
25%グアニル化ポリエチレンイミン(「G-PEI」「GPEI」)コーティングを施した不織布拭き取り布の調製
ポリエチレンイミン、70,000MW(658.2グラムの水中30重量%溶液、4.59のアミン当量)を、オーバーヘッドスターラーを備えた3Lの三つ口丸底フラスコに入れた。O-メチルイソ尿素ヘミサルフェート(141.2グラム、1.15当量)を1Lのビーカーに入れ、総重量を652.8グラムにするために十分な脱イオン水を添加した。ビーカーの内容物を、O-メチルイソ尿素ヘミサルフェートの全てが溶解するまで磁気的に撹拌した後、溶液を丸底フラスコに注液した。反応混合物を周囲温度で一晩(約22時間)撹拌した。
【0180】
NMR分光法による分析により、所望の生成物への変換が示された。固体のパーセントはOhaus水分秤(Ohaus Corp.,Parsippany,NJから入手したモデル番号MB35)を使用して測定し、25.3重量%であることが分かった。
【0181】
上記のように調製したG-PEI溶液の試料(19.79グラムの固形分25.3重量%の溶液)を、脱イオン水で合計500グラムに希釈し、十分に混合した。第2の容器内で、BUDGE(2.35グラム)を脱イオン水で合計500グラムに希釈し、十分に混合した。2つの溶液を合わせ、十分に混合した。適切な量の溶液を、不織布材料の8”×10”のシート上にピペットで移した。使用される溶液体積は、Sontara 8005及びAhlstrom 200については20mLであって、又はTexel 100については30mLであった。溶液が完全にシートを濡らしたように見えるまで、シートを押しつぶして揉んだ。シートを十分に濡らした後、それを吊るして一晩乾燥させた(約18時間)。
【0182】
乾燥すると、いくつかの(1~4枚の)コーティングを施したシートを、エタノールと水との50/50混合物1L中に漬け、これを軌道振盪器上で150rpmにて約30分間振盪した。30分後、拭き取り布を溶液から取り出し、絞って過剰な溶液を除去し、1LのDI水に漬けた後、再度150rpmで約30分間振盪した。これを、新しいDI水で1回繰り返した後、拭き取り布を吊るして一晩乾燥させた。
【0183】
乾燥後、拭き取り布の小片を切り取り、タルトラジン染料の0.1%溶液に浸漬し、5分間振盪した。小片を取り出し、新しい蒸留水中で、1回の洗浄当たり5分間で3回洗浄した。コーティングを施した片を、拭き取り布のコーティングされていない片とは異なり、すすぎ後であっても、橙黄色に均一に染色した。これは、不織布の表面上のカチオン性ポリマーの均一で架橋されたコーティングの存在を示した。
【0184】
皮膚様表面から芽胞を取り除く試験配合物の能力を評価するように設計されたin-vitro実験の概説
試験前の日、VITRO-SKIN(登録商標)基材(IMS Inc.,Portland,ME)の36mmディスクを打ち抜き、298gの水及び52gのグリセリンから作製された混合物を含有するVITRO-SKIN(登録商標)基材水和チャンバ内に入れた(製造業者の指示にしたがって)。
【0185】
VITRO-SKIN(登録商標)基材ディスクを、試験前に少なくとも24時間水和させた。試験日に、最初の3*N+6(Nは試験される試料の数である)の50mLのコニカルチューブに、それぞれ15mLのD/Eブロスを充填した。
【0186】
次いで、ステンレス鋼プレート(5”×7.125”、24 GA)をカウンタートップ上に裏打ちし、水で最初に噴霧し、ペーパータオルで拭き取り乾燥させて洗浄した。第2に、プレートを70%のIPAで噴霧し、ペーパータオルで拭き取り乾燥させた。乾燥すると、両面テープの2片(2.5cm以下)をプレートの中央に交差パターンで配置した。水和されたVITRO-SKIN(登録商標)基材の1つのディスクを両面テープ上に置き、穏やかに擦って、プレート上に付着することを確実にした。試験される各試料に3片のVITRO-SKIN(登録商標)基材を使用し、回収対照として3つの追加の切片を調製した。
【0187】
開始接種材料を、190μlのクロストリジウム・スポロゲネスATCC 3584(水1ml中に約1×108個の芽胞)及び10μlのウシ胎児血清(FBS)を1.5mLの遠心管に添加し、短時間ボルテックスして混合することによって準備した。添加される芽胞及びFBSの実際の量は、その日に試験される試料の数に基づいて変化し得るが、2つの間の比は、一定で変わらない。
【0188】
VITRO-SKIN(登録商標)基材の各片上に、10μlの接種材料をピペットで配置した。ピペットの先端部を使用して、接種材料を直径約5mmの円に穏やかに広げた。数対照として、10μlの接種材料をまた、15mLのD/Eブロスを含有する50mLのコニカルチューブのうちの1つに直接ピペットで移し、これを2回繰り返した。接種したVITRO-SKIN(登録商標)基材を、接種材料が視覚的に乾燥するまで30分~1時間放置した。
【0189】
プレートを調製する前に、又は接種中の乾燥時間の間、拭き取り布を調製した。これは、所望の基材の4”×6”片を切断することによって行った。切断した基材を秤量し、溶液を基材の重量の3.5倍の量で添加し、添加した溶液の量は、拭き取り布の飽和レベルに応じて変化し得た。基材を一緒に押しつぶして、溶液をここから基材上に均一に分注し、溶液の組み合わせを単に拭き取り布と呼ぶ。次いで、拭き取り布をプラスチック袋に入れ、これを密封して、それが乾燥しないようにした。試験される各試料について3枚の拭き取り布を調製した。
【0190】
接種材料がVITRO-SKIN(登録商標)基材上で乾燥したら、1片の汚染されたVITRO-SKIN(登録商標)基材を、15mLのD/Eブロスを有する50mLのコニカルチューブのうちの1つに入れ、これを合計3片のVITRO-SKIN(登録商標)基材で繰り返し、これを回収対照とした。
【0191】
試験した試料については、
図1A及び1Bに示すように、機械的拭き取り装置400を使用した。湿式拭き取り布420を、ねじクランプ460を使用して、機械的拭き取り装置400のレバーアーム450上にロックさせた。レバーアーム450は、約350gの質量を有した。二段階法では、約0.5mLの第1の溶液を、プラットフォーム410上に位置するステンレス鋼プレートに取り付けられた接種済みVITROSKIN(登録商標)基材の中心上に置いた。一段階法については、接種済みVITROSKIN(登録商標)基材に溶液を添加しなかった。次に、接種済みVITRO-SKIN(登録商標)基材が拭き取り布の中心となるように、湿式拭き取り布420が取り付けられたレバーアーム450を、プラットフォーム410上の汚染されたプレート(図示せず)の1つに下げた。機械的拭き取り装置400をオンにし、レバーアーム450を約100rpmの回転速度で動作させて、汚染されたプレートの表面を15秒間拭いた。拭き取り後に、「拭き取り済みプレート」から湿式拭き取り布420を取り出し、VITRO-SKIN(登録商標)基材を15mLのD/Eを有する50mLのコニカルチューブ内に置いた。各拭き取り布の例について、この工程を繰り返して、n=3の拭き取り済みVITRO-SKIN(登録商標)基材を得た。
【0192】
全ての試料を収集した後、50mLのコニカルチューブの全てを1分間超音波処理し、その後1分間ボルテックスした。1ミリリットルのアリコートを取り出し、1.5mLの遠心管に添加した。これを、各試料に対して2回行った。次いで、管を80℃まで10分間加熱した。3分間冷却した後、各試料について1つの管から0.25mLを取り出し、血液寒天プレート上に直接置き、他の管については、各試料をバターフィールド緩衝液中で10-1~10-4に連続希釈した後、1mLの各連続希釈液を、3M PETRIFILM(登録商標)ACプレート上に播種した。血液寒天プレート及び3M PETRIFILM(登録商標)ACプレートの両方を、嫌気性チャンバ内で37℃にて約20時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを除去し、計数し、log減少値を計算した。
【0193】
作業標準
以下の実施例では、様々な実施例において「作業標準」が示されている。その理由は、本明細書で使用される試験の性質は日々変化すると考えられ、また試験担当者によって異なると考えられ、又はその両方であると考えられるからである。実施例の異なるセット内では、同じものである単一のものが、適用可能な場合、作動標準として示される。これにより、実施例にわたる芽胞の除去のより有意な比較が得られる。
【0194】
比較例1
Sontara 8005拭き取り布を、上述のように、GPEI、ドデシルGPEIでコーティングした(又はコーティングしなかった)。比較例1a~1cの組成物を上記のように調製した。芽胞を除去する組成物の能力を、VITRO-SKIN(登録商標)基材に対する一段階法を使用して、上述のように試験した。
【0195】
【0196】
これらの比較例は、拭き取り布が70%エタノールを含有する場合、一段階法においては、コーティングを施した(グアニル化又はドデシルグアニル化)拭き取り布と、コーティングを施さなかった拭き取り布との間の芽胞除去において統計的な差はないことを示す。芽胞は、VITRO-SKIN(登録商標)基材上で変性する可能性が高く、VITRO-SKIN(登録商標)基材からそれらを除去し、それらを拭き取り布表面上で捕らえることが困難である。
【0197】
実施例2
Sontara 8005拭き取り布を、上述のように、GPEIでコーティングした(又はコーティングしなかった)。比較例2a及び2bの組成物を、上述のように調製した。芽胞を除去する組成物の能力を、VITRO-SKIN(登録商標)基材に対する一段階法を使用して、上述のように試験した。
【0198】
【0199】
比較例1a及び1bを比較例2a及び2bとは別の日に繰り返し、両方をここに示す。上記の作業標準に関連する説明は、比較例にも同様に適用可能である。
【0200】
実施例3
Sontara 8005拭き取り布を、上述のように、GPEIでコーティングした。比較例3a及び実施例3bの組成物を、上述のように調製した。芽胞を除去する組成物の能力を、VITRO-SKIN(登録商標)基材に対する二段階法を使用して、上述のように試験した。
【0201】
【0202】
実施例4
Sontara 8005拭き取り布を、上述のように、GPEIでコーティングした。実施例4a並びに4b及び実施例4cの組成物を、上述のように調製した。芽胞を除去する組成物の能力を、VITRO-SKIN(登録商標)基材に対する二段階法を使用して、上述のように試験した。
【0203】
【0204】
実施例4a及び4bを比較することによって分かるように、エタノールからIPAに変化する際に差を見ることができない。しかしながら、溶液が増粘されると、log減少は劇的に減少した。
【0205】
実施例5
Sontara 8005拭き取り布を、上述のように、GPEIでコーティングした。実施例5a並びに5b及び比較例5cの組成物を、上述のように調製した。芽胞を除去する組成物の能力を、VITRO-SKIN(登録商標)基材に対する二段階法を使用して、上述のように試験した。
【0206】
【0207】
実施例5a及び5bを比較することによって分かるように、他の溶液が拭き取り布中にある限り、70%アルコールがVITRO-SKIN(登録商標)基材上にあるか、又は水がVITRO-SKIN(登録商標)基材上にあるかどうかで差はない。アルコールが両方の場所で使用される場合、比較例5cに見られるように、芽胞の除去が半分のlogよりも下に劇的に減少する。
【0208】
実施例6
【0209】
【0210】
実施例6a~6dの全てを比較することによって分かるように、試験したコーティングの全ては、良好な芽胞の除去を提供した。
【0211】
実施例7
【0212】
【0213】
実施例8
【0214】
【0215】
実施例9
実施例9aは、第1の組成物をVITRO-SKIN(登録商標)基材上に直接利用し、続いて、第2の組成物が充填されたGPEIコーティングを施した拭き取り布を使用した。実施例9bは、コーティングを施さなかった拭き取り布中に充填された第1の組成物を利用し、続いて、第2の組成物が充填されたコーティングを施さなかった拭き取り布を使用した。実施例9cは、コーティングを施さなかった拭き取り布中に充填された第1の組成物を利用し、続いて、第2の組成物が充填されたGPEIコーティングを施した拭き取り布を使用した。実施例9dは、コーティングを施した拭き取り布中に充填された第1の組成物を利用し、続いて、第2の組成物が充填されたコーティングを施した拭き取り布を使用した。
【0216】
【0217】
したがって、芽胞を除去する方法の実施形態が開示される。上記の実行形態及び他の実行形態が、以下の請求項の範囲内にある。当業者であれば、本開示は開示されている実施形態以外の実施形態で実践できることを理解するであろう。開示された実施形態は例示目的で提示されており、限定を目的とするものではない。
【0218】
例示的な実施形態
1 皮膚表面を第1の液体組成物と接触させることと、次いで、第1の液体組成物の少なくとも一部が皮膚表面に留まっている間に、第2の液体組成物が充填されたカチオン性コーティングを施した物品と皮膚表面を接触させることと、を含み、第1の組成物又は第2の組成物のうちの少なくとも1つ及び1つのみが、60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含む、方法。
【0219】
2 第1の組成物を皮膚表面と接触させる工程が、皮膚表面を第1の組成物のみと接触させることによって達成される、実施形態1に記載の方法。
【0220】
3 表面を第1の組成物と接触させる工程が、組成物を皮膚表面に適用することを含む、実施形態1又は2のいずれか1つに記載の方法。
【0221】
4 組成物を皮膚表面に適用する工程が、皮膚表面への噴霧、分注、浸漬、注液、又はこれらのいくつかの組み合わせを含む、実施形態3に記載の方法。
【0222】
5 第2の組成物が充填されたカチオン性コーティングを施した物品に皮膚表面を接触させる前に、第1の組成物と接触している皮膚表面を機械的作用に供することを更に含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0223】
6 機械的作用が、少なくとも約5秒間持続する、実施形態5に記載の方法。
【0224】
7 第1の組成物と接触している皮膚表面を機械的作用に供する工程が、皮膚表面を擦ること、皮膚表面にわたって物品を動かすこと、又はこれらのいくつかの組み合わせを含む、実施形態5に記載の方法。
【0225】
8 第1の組成物が、60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
9 第1の組成物中に、第1の組成物の総重量に基づいて、少なくとも約65重量%の少なくとも1つのアルコールが存在する、実施形態8に記載の方法。
【0227】
10 第1の組成物中に、第1の組成物の総重量に基づいて、少なくとも約70重量%の少なくとも1つのアルコールが存在する、実施形態8に記載の方法。
【0228】
11 第1の組成物中に、第1の組成物の総重量に基づいて、95重量%以下の少なくとも1つのアルコールが存在する、実施形態8に記載の方法。
【0229】
12 第2の組成物が、60重量%以上の少なくとも1つのアルコールを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0230】
13 第2の組成物中に、第2の組成物の総重量に基づいて、少なくとも約65重量%の少なくとも1つのアルコールが存在する、実施形態12に記載の方法。
【0231】
14 第2の組成物中に、第2の組成物の総重量に基づいて、少なくとも約70重量%の少なくとも1つのアルコールが存在する、実施形態12に記載の方法。
【0232】
15 第2の組成物中に、第2の組成物の総重量に基づいて、約95重量%以下の少なくとも1つのアルコールが存在する、実施形態12に記載の方法。
【0233】
16 カチオン性コーティングを施した物品が、カチオン性コーティングを施した拭き取り布を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
17 カチオン性コーティングを施した物品が、グアニジニル含有ポリマーを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
18 グアニジニル含有ポリマーが、(a)グアニル化剤と、(b)カルボニル含有ポリマー前駆体又はアミノ含有ポリマー前駆体との反応生成物である、実施形態17に記載の方法。
【0236】
19 グアニジニル含有ポリマーが、式(I):
【化12】
[式中、
R
1が、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、C
5~C
12(ヘテロ)アリール、又はポリマー鎖の残基であり、
R
2が、共有結合、C
2~C
12(ヘテロ)アルキレン、又はC
5~C
12(ヘテロ)アリーレンであり、
R
3が、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、C
5~C
12(ヘテロ)アリール、又はnが0のとき、ポリマー鎖の残基であり、
各R
4は、独立して、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、C
5~C
12(ヘテロ)アリールであり、
R
5が、水素、C
1~C
12(ヘテロ)アルキル、又はC
5~C
12(ヘテロ)アリール、又は-N(R
4)
2であり、
nが、0又は1であり、
mが、1又は2であり、
xが、少なくとも1に等しい整数である]
のものである、実施形態17に記載の方法。
【0237】
20 グアニジニル含有ポリマーが、式(II):
【化13】
のものである、実施形態19に記載の方法。
【0238】
21 グアニジニル含有ポリマーが、式(IV):
【化14】
のものである、実施形態19に記載の方法。
【0239】
22 グアニジニル含有ポリマーが、(a)グアニル化剤と、(b)カルボニル含有ポリマー前駆体との反応生成物であり、カルボニル含有ポリマー前駆体のカルボニル基の1~90モルパーセントがグアニル化剤と反応する、実施形態17~19又は21のいずれか1つに記載の方法。
【0240】
23 グアニジニル含有ポリマーが、(a)グアニル化剤と、(b)カルボニル含有ポリマー前駆体との反応生成物であり、グアニジニル含有ポリマーが、N,N’-(ヘテロ)アルキレンビス(メタ)アクリルアミドと架橋されている、実施形態17~19又は21のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
24 グアニジニル含有ポリマーが、(a)グアニル化剤と、(b)アミノ含有ポリマー前駆体との反応生成物であり、アミノ含有ポリマー前駆体のアミノ基の1~90モルパーセントがグアニル化剤と反応する、実施形態17~20のいずれか1つに記載の方法。
【0242】
25 グアニジニル含有ポリマーが、(a)グアニル化剤と、(b)アミノ含有ポリマーとの反応生成物であり、グアニジニル含有ポリマーが、ポリグリシジルエーテルと架橋されている、実施形態17~20のいずれか1つに記載の方法。
【0243】
26 グアニジニル含有ポリマーが、拭き取り布の総重量に基づいて0.1重量%~10重量%の量で存在する、実施形態17~25のいずれか1つに記載の拭き取り布。
【0244】
27 少なくとも1つのアルコールが、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、又はこれらの混合物から選択される、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0245】
28 第1の組成物、第2の組成物、又は両方が、少なくとも1つのアルコールに加えて抗菌剤を更に含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0246】
29 抗菌剤が、カチオン性である、実施形態28に記載の方法。
【0247】
30 第1の組成物、第2の組成物、又はその両方が、第1の組成物、第2の組成物、又はその両方の総重量に基づいて、0.3重量%以下の増粘剤を更に含む、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
31 第1の組成物が、第1の組成物の総重量に基づいて0.2重量%以下の増粘剤を含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0249】
32 第1の組成物が、第1の組成物の総重量に基づいて0.1重量%以下の増粘剤を含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0250】
33 第1の組成物が、第1の組成物の総重量に基づいて0.05重量%以下の増粘剤を含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0251】
34 第1の組成物を皮膚表面と接触させる工程が、第2の物品と接触している第1の組成物と皮膚表面を接触させることによって達成される、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0252】
35 第2の物品が、拭き取り布である、実施形態34に記載の方法。
【0253】
36 物品が、カチオン性コーティングを施した拭き取り布である、実施形態35に記載の方法。