(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】建物の施解錠システム
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20230609BHJP
E05C 1/06 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
E05B49/00 Z
E05B49/00 J
E05C1/06 Z
(21)【出願番号】P 2020000859
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】坂尾 英樹
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-280716(JP,A)
【文献】特開平08-170458(JP,A)
【文献】特開昭61-254769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより携帯され、固有の識別情報を送信する携帯機器と、
建物の出入口付近の所定範囲を通信エリアとして、前記携帯機器との間で無線通信が可能とされている通信装置と、
前記通信装置を通じて前記携帯機器より受信した識別情報に基づき、前記出入口を開閉するドアの施解錠を行う施錠装置と、を備える建物の施解錠システムであって、
前記通信装置を通じて前記携帯機器より受信した識別情報があらかじめ登録された識別情報であるか否かを認証する認証手段と、
前記出入口付近において人が発した音声を取得する音声取得手段と、
前記認証手段により識別情報の認証がなされ、かつ、前記音声取得手段により人の音声が取得された場合に、前記施錠装置の施解錠を実行する制御手段と、
を備え
、
前記制御手段は、前記音声取得手段により取得された人の音声に基づき、前記施錠装置の施錠及び解錠のうちいずれかを実行し、
前記制御手段は、前記音声取得手段により取得された人の音声に予め定められた施錠用ワードが含まれている場合には前記施錠装置の施錠を実行し、予め定められた解錠用ワードが含まれている場合には前記施錠装置の解錠を実行し、
前記施錠装置は、デッドボルトを動作させることで当該施錠装置を施錠状態と解錠状態とに切り替える駆動部を有し、
前記駆動部は、前記デッドボルトの動作速度を調整可能とされており、
前記施錠用ワード及び前記解錠用ワードにはそれぞれ、前記デッドボルトの動作速度を通常よりも遅くする低速ワードがあり、
前記制御手段は、前記施錠装置の施解錠の際、前記音声取得手段により取得された音声に前記低速ワードが含まれている場合には、前記駆動部により前記デッドボルトを通常よりも遅い動作速度で動作させることを特徴とする建物の施解錠システム。
【請求項2】
前記施錠用ワード及び前記解錠用ワードにはそれぞれ、前記デッドボルトの動作速度を通常とする通常ワー
ドがあり、
前記制御手段は、前記施錠装置の施解錠の際、前記音声取得手段により取得された音声に前記通常ワードが含まれている場合には、前記駆動部により前記デッドボルトを通常の動作速度で動作さ
せることを特徴とする請求項
1に記載の建物の施解錠システム。
【請求項3】
前記携帯機器は、前記ユーザの音声を検出する音声検出機能と、その検出された音声を送信する音声送信機能とを有し、
前記音声取得手段は、前記通信装置を通じて受信された前記携帯機器からの音声情報に基づき、前記ユーザの音声を取得することを特徴とする請求項1
又は2に記載の建物の施解錠システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の施解錠システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、居住者が携帯する電子キーによる認証に基づいてドアの施解錠を行う施解錠システムが開示されている。かかる施解錠システムとして、特許文献1には、電子キーによる認証がなされ、かつ、居住者がドアのハンドルに触れた場合に、ドアの施解錠が実行されるタッチ式の施解錠システムが開示されている。
【0003】
特許文献1の施解錠システムについて具体的には、当該システムでは、電子キーを携帯した居住者が建物に入るためにドアに近づき、当該ドア付近に設けられた通信装置の通信エリア内に入ると、電子キーから発信される識別情報が通信装置により受信される。そして、建物側では、その受信された識別情報に基づき居住者であるか否かの認証が行われる。
【0004】
また、特許文献1の施解錠システムでは、ドアのハンドルにタッチセンサが内蔵されている。当該システムでは、電子キーからの識別情報に基づき居住者であるとの認証が行われた場合、さらにタッチセンサにより居住者がハンドルに触れたことが検知されると、ドアの施解錠が実行されるようになっている。この場合、居住者はドアのハンドルを触れるだけでドアの施解錠を行うことができるため、施解錠を行う上で利便性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の施解錠システムでは、居住者がドアの施解錠を行う際に荷物を持っている場合、その荷物を持っている手をドアのハンドルまで伸ばしタッチする必要がある。しかしながら、荷物を持った状態でタッチ操作を行うのは煩わしさがあると考えられ、その点で上記特許文献1のシステムは未だ改善の余地があると考えられる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、施解錠を行うに際し、より利便性の向上を図ることができる建物の施解錠システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の施解錠システムは、ユーザにより携帯され、固有の識別情報を送信する携帯機器と、建物の出入口付近の所定範囲を通信エリアとして、前記携帯機器との間で無線通信が可能とされている通信装置と、前記通信装置を通じて前記携帯機器より受信した識別情報に基づき、前記出入口を開閉するドアの施解錠を行う施錠装置と、を備える建物の施解錠システムであって、前記通信装置を通じて前記携帯機器より受信した識別情報があらかじめ登録された識別情報であるか否かを認証する認証手段と、前記出入口付近において人が発した音声を取得する音声取得手段と、前記認証手段により識別情報の認証がなされ、かつ、前記音声取得手段により人の音声が取得された場合に、前記施錠装置の施解錠を実行する制御手段と、備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ユーザの携帯する携帯機器から送信される識別情報の認証が行われ、かつ、建物の出入口付近で人が発した音声が取得された場合に、ドアの施錠装置の施解錠が実行される。この場合、ユーザは携帯機器を携帯した状態で出入口に近づくとともに、その出入口付近で音声を発することで、施錠装置を施解錠することができる。これにより、ユーザが手に荷物を持っている場合でも、ユーザはその手をドアのハンドルまで伸ばすことなく施解錠を行うことができる。そのため、ドアの施解錠を行うに際し、より利便性の向上を図ることができる。
【0010】
第2の発明の建物の施解錠システムは、第1の発明において、前記制御手段は、前記音声取得手段により取得された人の音声に基づき、前記施錠装置の施錠及び解錠のうちいずれかを実行することを特徴とする。
【0011】
従来のタッチ式の施解錠システムでは、ユーザが施錠装置を解錠しようとドアのハンドルにタッチする際に、施錠装置がすでに解錠状態となっている場合にはタッチすることで施錠装置が解錠状態から施錠状態に切り替わってしまう。そのため、そのような場合には、もう一度ハンドルにタッチして解錠状態にする必要があり、面倒であった。
【0012】
その点、本発明では、出入口付近で人が発した音声に基づき、施錠装置の施錠及び解錠のうちいずれかが選択されて実行されるようになっている。この場合、例えば予め施錠用の音声と解錠用の音声とを設定しておくことで、人が発した音声が施錠用の音声と一致する場合は施錠を実行し、解錠用の音声と一致する場合は解錠を実行するといったことが可能となる。これにより、タッチ式の施解錠システムで生じていた上記の手間が発生することがなく、より一層利便性の向上を図ることが可能となる。
【0013】
第3の発明の建物の施解錠システムは、第2の発明において、前記制御手段は、前記音声取得手段により取得された人の音声に予め定められた施錠用ワードが含まれている場合には前記施錠装置の施錠を実行し、予め定められた解錠用ワードが含まれている場合には前記施錠装置の解錠を実行することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ユーザが発した音声に施錠用ワード(例えば「施錠」というワード)が含まれている場合には施錠装置が施錠され、解錠用ワード(例えば「解錠」というワード)が含まれている場合には施錠装置が解錠される。この場合、例えば人の発した音声の大小(音量)や抑揚(イントネーション)等に基づき、施錠装置を施錠又は解錠する構成と比べ、ユーザが施錠の際及び解錠の際に発する音声をわかりやすくすることができる。そのため、ユーザの発する音声に基づき、施錠装置の施錠又は解錠を行う上で好適な構成とすることができる。
【0015】
第4の発明の建物の施解錠システムは、第3の発明において、前記施錠装置は、デッドボルトを動作させることで当該施錠装置を施錠状態と解錠状態とに切り替える駆動部を有し、前記駆動部は、前記デッドボルトの動作速度を調整可能とされており、前記施錠用ワード及び前記解錠用ワードにはそれぞれ、前記デッドボルトの動作速度を通常とする通常ワードと、前記デッドボルトの動作速度を通常よりも遅くする低速ワードとがあり、前記制御手段は、前記施錠装置の施解錠の際、前記音声取得手段により取得された音声に前記通常ワードが含まれている場合には、前記駆動部により前記デッドボルトを通常の動作速度で動作させ、前記低速ワードが含まれている場合には、前記駆動部により前記デッドボルトを通常よりも遅い動作速度で動作させることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、施錠用ワード及び解錠用ワードにそれぞれ通常ワードと低速ワードとが用意されており、施錠装置の施解錠が実行される際、取得されたユーザの音声に通常ワードが含まれている場合には、駆動部によりデッドボルトが通常の動作速度で動作され、低速ワードが含まれている場合には、駆動部によりデッドボルトが通常よりも遅い動作速度で動作される。かかる構成によれば、夜間等においてユーザが施解錠を行う際には、低速ワードを発することで、デッドボルトの動作を遅くして施解錠することができる。これにより、施解錠の際に発生するデッドボルトの動作音を小さくすることができるため、その動作音により周囲に迷惑をかけてしまうのを抑制することができる。
【0017】
なお、施錠用ワードについては通常ワードを「施錠」というワードとし、低速ワードを「ゆっくり施錠」というワードとすることが考えられる。また、これと同様に、解錠用ワードについては通常ワードを「解錠」というワードとし、低速ワードを「ゆっくり解錠」というワードとすることが考えられる。
【0018】
第5の発明の建物の施解錠システムは、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記携帯機器は、前記ユーザの音声を検出する音声検出機能と、その検出された音声を送信する音声送信機能とを有し、前記音声取得手段は、前記通信装置を通じて受信された前記携帯機器からの音声情報に基づき、前記ユーザの音声を取得することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、ユーザの携帯する携帯機器に、ユーザが発した音声を検出しその検出した音声を送信する機能が設けられている。この場合、ユーザは施解錠のための音声を発する際には自身の携帯機器に向けて発すればよく、発した音声が携帯機器により検出されると、その音声が携帯機器から送信される。そして、その送信された音声情報が通信装置を通じて受信されると、それに基づきユーザが発した音声が建物側で取得される。この場合、建物側に音声検出部を設けなくても済むため、建物側において構成の簡素化を図ることができる。また、この場合、識別情報を送信する携帯機器に音声検出機能が付与されているため、携帯機器とは別に音声検出機能を有する機器を用意する必要がなく、その点でも構成の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、
図1は玄関周辺を示す平面図である。
【0022】
図1に示すように、建物10には、屋内スペースとして、玄関11や廊下12、居室13等が設けられている。玄関11には、出入口としての玄関口15が設けられている。この玄関口15を通じて建物10への出入りが可能となっている。また、玄関口15には、玄関ドア16が設けられている。玄関ドア16は、例えば回動式の開き戸からなる。この玄関ドア16により玄関口15が開閉されるようになっている。なお、玄関ドア16は、引き戸であってもよい。また、玄関ドア16がドアに相当する。
【0023】
玄関ドア16には、施錠装置21が取り付けられている。施錠装置21は通電により施解錠を行う電気錠からなる。施錠装置21は、建物10の居住者(ユーザに相当)が携帯する電子キー19によって施解錠されるようになっている。なお、電子キー19が携帯機器に相当する。
【0024】
施錠装置21は、玄関ドア16に取り付けられた錠ケース22と、錠ケース22に収容され、玄関ドア16の戸先から突出可能なデッドボルト23と、デッドボルト23を動作させるための駆動部24(
図2参照)とを備える。デッドボルト23は、錠ケース22に収容される収容位置と、錠ケース22(つまり玄関ドア16の戸先)から突出する突出位置との間で動作可能とされている。デッドボルト23は、突出位置にある場合には玄関口15の周面に形成された受孔部25に挿入され、その挿入によりデッドボルト23が受孔部25に係合される。この場合、施錠装置21は施錠状態とされる。また、デッドボルト23は、収容位置にある場合には受孔部25から出て受孔部25に係合されない状態となる。この場合、施錠装置21は解錠状態とされる。また、駆動部24は、例えば電動式のモータからなる。
【0025】
玄関ドア16付近の外壁には、通信装置27が設けられている。通信装置27は、居住者が携帯する電子キー19との間で無線通信を行うものである。通信装置27は、その通信エリアCAが通信装置27を中心とした所定範囲に設定されている。通信装置27の通信エリアCAは玄関口15付近に設定され、通信装置27は、その通信エリアCA内において電子キー19との間で無線通信が可能となっている。
【0026】
玄関ドア16付近の外壁には、さらに音声検出器28が設けられている。音声検出器28は、玄関ドア16付近で人が発した音声を検出するものであり、例えばマイクにより構成されている。この場合、この音声検出器28により、通信装置27の通信エリアCA内で人が発した音声を検出することが可能となっている。
【0027】
続いて、施解錠システムの電気的構成について
図2に基づいて説明する。
図2は、施解錠システムの電気的構成を示す図である。
【0028】
図2に示すように、施解錠システムは、制御手段としてのコントローラ30を備える。コントローラ30は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを備えて構成され、例えば玄関11の壁面に設けられている。また、コントローラ30は、ID情報記憶部31と、ワード記憶部32とを有している。ID情報記憶部31には、電子キー19の認証に用いられるID情報が記憶されている。また、ワード記憶部32には、居住者が施錠装置21を施錠する際に用いる施錠用ワードと、解錠する際に用いる解錠用ワードとが記憶(登録)されている。
【0029】
コントローラ30には、通信装置27が接続されている。コントローラ30は、通信装置27を介して電子キー19と通信可能とされている。電子キー19には、当該キー19固有のID情報が予め記憶されている。このID情報はID情報記憶部31に記憶されたID情報に対応したものとなっている。なお、ID情報が識別情報に相当する。
【0030】
電子キー19を携帯する居住者が通信装置27の通信エリアCAに入ると、電子キー19から発信(送信)されるID情報が通信装置27を通じてコントローラ30により受信される。コントローラ30は、電子キー19から送信されるID情報を受信すると、その受信したID情報の認証を行う。具体的には、コントローラ30は、受信したID情報がID情報記憶部31に記憶されているID情報と一致するか否かを判定(認証)する。
【0031】
コントローラ30には、音声検出器28が接続されている。音声検出器28により人が発した音声が検出されると、その検出された人の音声情報がコントローラ30に入力(取得)される。この場合、コントローラ30が音声取得手段に相当する。コントローラ30は、入力された人の音声情報に含まれるワードが何であるかを認識するワード認識機能を有している。この場合、コントローラ30に音声検出器28より人の音声情報が入力されると、コントローラ30は、その入力された音声に含まれるワードが何であるかを認識する。
【0032】
コントローラ30には、施錠装置21が接続されている。コントローラ30は、上述した電子キー19からのID情報の認証結果と、音声検出器28より入力される人の音声情報とに基づき、施錠装置21の施解錠を実行する。具体的には、コントローラ30は、施錠装置21の施錠処理を行う際には、施錠装置21に施錠信号を出力する。この施錠信号が施錠装置21に入力されると、施錠装置21では、駆動部24による駆動によりデッドボルト23が収容位置から突出位置へと動作される。これにより、施錠装置21が施錠状態とされる。一方、コントローラ30は、施錠装置21の解錠処理を行う際には、施錠装置21に解錠信号を出力する。この解錠信号が施錠装置21に入力されると、施錠装置21では、駆動部24による駆動によりデッドボルト23が突出位置から収容位置へと動作される。これにより、施錠装置21が解錠状態とされる。
【0033】
次に、コントローラ30により実行される制御処理の内容について
図3に示すフローチャートに基づき説明する。なお、本処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0034】
図3に示すように、まずステップS11では、通信装置27より通信エリアCAにリクエスト信号を送信する。リクエスト信号は電子キー19にID情報の送信を要求する信号である。このリクエスト信号が電子キー19により受信されると、つまり電子キー19を所持する居住者が通信エリアCAに入って当該電子キー19によりリクエスト信号が受信されると、電子キー19はその応答としてID情報を送信する。
【0035】
ステップS12では、上記リクエスト信号の応答として電子キー19より送信されるID信号を通信装置27を通じて受信したか否かを判定する。電子キー19よりID情報を受信した場合にはステップS13に進み、受信していない場合には本処理を終了する。
【0036】
ステップS13では、電子キー19より受信したID情報の認証処理を行う(認証手段に相当)。この認証処理では、電子キー19より受信したID情報がID情報記憶部31に記憶されたID情報と一致しているか否かを認証(判定)する。認証処理の結果、電子キー19からのID情報があらかじめ記憶されているID情報と一致しない場合、つまり認証NGの場合にはステップS14をNO判定して、本処理を終了する。一方、電子キー19からのID情報があらかじめ記憶されているID情報と一致する場合、つまり認証OKの場合にはステップS14をYES判定して、ステップS15に進む。
【0037】
ステップS15では、電子キー19の認証が行われてから所定時間が経過したか否かを判定する。この場合、所定時間は例えば5~10秒に設定されている。電子キー19の認証が行われてから所定時間が経過していない場合にはステップS16に進み、所定時間が経過した場合には本処理を終了する。
【0038】
ステップS16では、音声検出器28より人の音声が検出されたか否かを判定する。つまり、ここでは、玄関口15付近で人が音声を発したか否かを判定する。この判定は、音声検出器28より人の音声情報が入力(取得)されたか否かに基づき行う。人の音声が検出された場合にはステップS17に進む。一方、人の音声が検出されていない場合にはステップS15に戻り、認証が行われてからの経過時間が所定時間を超えるまでステップS15及びS16の処理を繰り返す。
【0039】
ステップS17では、音声検出器28より取得された人の音声情報に基づき、その音声に含まれるワードを認識する。続くステップS18では、人の音声に含まれるワードがワード記憶部32に記憶(登録)されている解錠用ワードと一致するか否かを判定する。本実施形態では、ワード記憶部32に解錠用ワードとして「解錠」というワードが予め登録されている。このため、本ステップS18では、音声検出器28より取得された人の音声に「解錠」というワードが含まれているか否かを判定する。取得された人の音声に「解錠」というワードが含まれている場合、つまり玄関口15付近にいる居住者が「解錠」という音声(ワード)を発した場合にはステップS21に進む。
【0040】
ステップS21では、施錠装置21の解錠処理を実行する。解錠処理では、施錠装置21に解錠信号を出力し、施錠装置21を解錠状態とする。なお、この際、施錠装置21がすでに解錠状態にある場合には、その解錠状態をそのまま継続する。その後、本処理を終了する。
【0041】
先のステップS18において、音声検出器28より取得された音声に「解錠」といワードが含まれていない場合、つまり玄関口15付近にいる居住者が「解錠」以外のワードを発した場合にはステップS19に進む。
【0042】
ステップS19では、音声検出器28より取得された人の音声に含まれるワードがワード記憶部32に記憶されている施錠用ワードと一致するか否かを判定する。本実施形態では、ワード記憶部32に施錠用ワードとして「施錠」というワードが予め登録されている。このため、本ステップS19では、音声検出器28より取得された人の音声に「施錠」というワードが含まれているか否かを判定する。取得された人の音声に「施錠」といワードが含まれている場合、つまり玄関口15付近にいる居住者が「施錠」というワードを発した場合にはステップS20に進む。
【0043】
ステップS20では、施錠装置21の施錠処理を実行する。施錠処理では、施錠装置21に施錠信号を出力し、施錠装置21を施錠状態とする。なお、この際、施錠装置21がすでに施錠状態にある場合には、その施錠状態をそのまま継続する。その後、本処理を終了する。
【0044】
また、ステップS19において、音声検出器28より取得された音声に「施錠」といワードが含まれていない場合、つまり取得された音声に「解錠」及び「施錠」の両ワードがいずれも含まれていない場合には、本処理を終了する。
【0045】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0046】
居住者の携帯する電子キー19から送信されるID情報の認証がなされ、かつ、建物10の玄関口15付近で人が発した音声が音声検出器28を通じて取得された場合に、施錠装置21の施解錠を実行するようにした。この場合、居住者は電子キー19を携帯した状態で玄関口15に近づくとともに、その玄関口15付近で音声を発することで、施錠装置21を施解錠することができる。これにより、居住者が手に荷物を持っている場合でも、居住者はその手を玄関ドア16のハンドルまで伸ばすことなく施解錠を行うことができる。そのため、玄関ドア16の施解錠を行うに際し、より利便性の向上を図ることができる。
【0047】
従来のタッチ式の施解錠システムでは、居住者が解錠しようと玄関ドア16のハンドルにタッチする際に、施錠装置21がすでに解錠状態となっている場合(換言するとデッドボルト23がすでに収容位置にある場合)にはタッチすることで施錠装置21が解錠状態から施錠状態に切り替わってしまう(換言するとデッドボルト23が収容位置から突出位置に切り替わってしまう)。そのため、そのような場合には、もう一度ハンドルにタッチして施錠装置21を解錠状態にする必要があり、面倒であった。
【0048】
その点、上記の実施形態では、音声検出器28を通じて取得した人の音声、つまり玄関口15付近で発した人の音声に基づき、施錠装置21の施錠及び解錠のうちいずれかを(選択的に)実行するようにした。具体的には、取得した人の音声に施錠用ワードが含まれている場合には施錠装置21の施錠を実行し、解錠用ワードが含まれている場合には施錠装置21の解錠を実行するようにした。この場合、従来のタッチ式の施解錠システムで生じていた上述の手間が発生することがなく、より一層利便性の向上を図ることが可能となる。
【0049】
また、取得した人の音声に含まれるワードに基づき、施錠装置21の施錠及び解錠のうちいずれかを実行するようにした。この場合、例えば人の発した音声の大小(音量)や抑揚(イントネーション)等に基づき、施錠装置21を施錠又は解錠する構成と比べ、居住者が施錠の際及び解錠の際に発する音声をわかりやすくすることができる。そのため、居住者の発する音声に基づき、施錠装置21の施錠又は解錠を行う上で好適な構成とすることができる。
【0050】
また、取得した人の音声に施錠用ワード及び解錠用ワードのいずれも含まれていない場合、つまり取得した人の音声にそれらのワード以外のワードが含まれている場合には、施錠処理も解錠処理も行わないようにした。この場合、居住者が電子キー19を携帯したまま玄関口15付近をただ通り過ぎた際に、電子キー19の認証が意図せずなされ、そのタイミングで不審者等が何らかの音声を発し施錠装置21が施解錠されてしまう事態が生じるのを防止することが可能となる。これにより、防犯性の向上を図ることが可能となる。
【0051】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0052】
(1)施錠装置21として、駆動部24によりデッドボルト23を動作させる動作速度を調整可能(可変)となっているものを用いてもよい。そして、かかる施錠装置21を用いる場合に、例えば、次のような構成を採用するようにしてもよい。
【0053】
すなわち、コントローラ30のワード記憶部32に、施錠用ワードとして、「施錠」というワードに加え、「ゆっくり施錠」というワードをあらかじめ記憶(登録)しておく。この場合、「施錠」は、施錠装置21の施錠処理の際、駆動部24によるデッドボルト23の動作速度を通常とするための施錠用ワードであり、通常ワードに相当する。また、「ゆっくり施錠」は、施錠処理の際、駆動部24によるデッドボルト23の動作速度を通常よりも遅くするための施錠用ワードであり、低速ワードに相当する。
【0054】
また、これと同様に、ワード記憶部32には、解錠用ワードとして、「解錠」というワードに加え、「ゆっくり解錠」というワードをあらかじめ記憶(登録)しておく。この場合、「解錠」は、施錠装置21の解錠処理の際、駆動部24によるデッドボルト23の動作速度を通常とするための解錠用ワードであり、通常ワードに相当する。「ゆっくり解錠」は、解錠処理の際、駆動部24によるデッドボルト23の動作速度を通常よりも遅くするための解錠用ワードであり、低速ワードに相当する。
【0055】
続いて、このような構成にあって、コントローラ30により実行される制御処理の内容について説明する。この制御処理は、上記実施形態の制御処理(
図3)と一部相違するものとなっており、そのため、ここでは、その相違する点のみ説明する。
【0056】
上記実施形態の制御処理(
図3)では、ステップS18において、音声検出器28を通じて取得された人の音声情報に「解錠」というワードが含まれているか否かを判定し、ステップS19において「施錠」というワードが含まれているか否かを判定したが、本制御処理では、これらのステップS18,S19に加え、「ゆっくり解錠」というワードが含まれているか否かを判定するステップと、「ゆっくり解錠」というワードが含まれているか否かを判定するステップとを追加する。要するに、本制御処理では、音声検出器28を通じて取得された人の音声情報に、「解錠」、「施錠」、「ゆっくり施錠」及び「ゆっくり解錠」のうちいずれかのワードが含まれているか否かを判定(ワード判定)するようにする。
【0057】
コントローラ30は、かかるワード判定の結果、音声検出器28を通じて取得された人の音声に「解錠」又は「ゆっくり解錠」というワードが含まれている場合には、施錠装置21の解錠処理を実行する。具体的には、この解錠処理に際し、人の音声に「解錠」というワードが含まれている場合には、駆動部24によりデッドボルト23を通常の動作速度で動作させ、「ゆっくり解錠」というワードが含まれている場合には、駆動部24によりデッドボルト23を通常よりも遅い動作速度で動作させるようにする。
【0058】
また、コントローラ30は、上記ワード判定の結果、音声検出器28を通じて取得された人の音声に「施錠」又は「ゆっくり施錠」というワードが含まれている場合には、施錠装置21の施錠処理を実行する。具体的には、この施錠処理に際し、人の音声に「施錠」というワードが含まれている場合には、駆動部24によりデッドボルト23を通常の動作速度で動作させ、「ゆっくり施錠」というワードが含まれている場合には、駆動部24によりデッドボルト23を通常よりも遅い動作速度で動作させるようにする。
【0059】
上記の構成によれば、居住者が夜間等に帰宅して施錠装置21の施解錠を行う際には、「ゆっくり解錠」や「ゆっくり施錠」といった低速ワードを発することで、デッドボルト23の動作を遅くして施錠装置21を施解錠することができる。これにより、施解錠の際に発生するデッドボルト23の動作音を小さくすることができるため、施解錠時の動作音により周囲に迷惑をかけてしまうのを抑制することができる。
【0060】
(2)上記実施形態では、居住者が携帯する携帯機器として電子キー19を用いたが、電子キー19以外にスマートフォンや携帯電話機等を用いてもよい。スマートフォンや携帯電話機は無線通信(例えばブルートゥース(登録商標)通信)が可能であるため、居住者固有のID情報(識別情報に相当)を送信することが可能である。
【0061】
(3)スマートフォンや携帯電話機には、人の発した音声を検出するためのマイク(音声検出部)が内蔵されていることがある。そこで、携帯機器として、電子キー19に代えてスマートフォンや携帯電話機(以下、スマートフォン等という)を用いる場合、そのマイクを用いて居住者が玄関口15付近で発した音声を検出するようにしてもよい。そして、その検出した居住者の音声を建物10側に無線により送信するようにしてもよい。この場合、その送信された居住者の音声情報を通信装置27を通じてコントローラ30により受信するようにすることで、居住者が発した音声情報を取得することが可能である。
【0062】
上記の構成によれば、建物10側に音声検出器28を設けなくても済むため、建物10側において構成の簡素化を図ることができる。また、ID情報を送信するスマートフォン等に音声検出機能が付与されているため、スマートフォン等とは別に音声検出機能を有する機器を別に用意する必要がなく、その点でも構成の簡素化等を図ることができる。
【0063】
(4)上記実施形態では、施錠用ワードを「施錠」というワードとしたが、施錠用ワードとして「施錠してください」等、他のワードを用いてもよい。また、上記実施形態において、施錠用ワードを複数種類用意してもよい。例えば、「施錠」と「施錠してください」とを施錠用ワードとしてワード記憶部32にあらかじめ記憶(登録)しておき、取得された音声にこれらのワードのうちいずれかが含まれている場合には施錠装置21の施錠処理を実行するようにしてもよい。
【0064】
また、これと同様に、解錠用ワードについても、上記実施形態では「解錠」というワードを用いたが、この「解錠」というワードに加えて、「解錠してください」等、他のワードを用いてもよい。
【0065】
(5)上記実施形態では、取得された人の音声に含まれるワードに基づき、施錠装置21の施錠及び解錠のうちいずれかを実行する構成としたが、これを変更して、取得された人の音声の大きさ(音量)や音声の抑揚(イントネーション)等に基づき、施錠及び解錠のうちいずれかを実行する構成としてもよい。例えば、音声の大きさ(音量)に基づき、施錠及び解錠のいずれかを実行する構成とする場合、音声の大きさが大きい場合には施錠を実行し、音声の大きさが小さい場合には解錠を実行するといったことが考えられる。
【0066】
(6)また、必ずしも、取得された音声に基づき、施錠及び解錠のうちいずれかを実行する処理を行う必要はない。つまり、電子キー19の認証がなされ、かつ、音声検出器28を通じて人の音声が取得された時点(ステップS16でYES判定された時点)で、施錠装置21の施解錠を実行するようにしてもよい。この場合にも、居住者は施解錠の際に荷物を持っていても、その荷物を持つ手を玄関ドア16のハンドルまで伸ばす必要がないため、施解錠を行うに際し利便性の向上を図ることができる。
【0067】
ただ、この場合、上述したタッチ式の施解錠システムと同様の問題、つまり施錠装置21を解錠しようとしたのに、施錠装置21が解錠状態から施錠状態に移行してしまう問題が発生することが想定される。そのため、その点を鑑みると、上記実施形態のように、取得された音声に基づき、施錠及び解錠のうちいずれかを実行する構成とするのが望ましいと考えられる。
【0068】
(7)上記実施形態では、玄関ドア16の施解錠に本発明の施解錠システムを適用したが、建物10におけるその他のドア、例えば勝手口のドア等に本発明の施解錠システムを適用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…建物、15…出入口としての玄関口、16…ドアとしての玄関ドア、19…携帯機器としての電子キー、21…施錠装置、23…デッドボルト、24…駆動部、27…通信装置、30…制御手段としてのコントローラ。