IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 綜研化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/00 20060101AFI20230609BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20230609BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
C09J153/00
C09J133/06
C09J11/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020067653
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021161357
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 栄二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】清水 政一
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206858(JP,A)
【文献】特開2009-108185(JP,A)
【文献】YAMAMURA Kazuhiro、ほか5名,Influence of Diblock Addition on Tack in a Polyacrylic Triblock Copolymer/Tackifier System Measured Using a Probe Tack Test,Journal of Applied Polymer Science,米国,2013年08月05日,Vol.129 No.3,Page.1008-1018
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)と(メタ)アクリル系ポリマー(b)と粘着付与剤(c)とを含有する粘着剤組成物であり、
(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)が、ブロックAとブロックBとからなるA-B-Aで表されるブロック構造(2つのブロックAは同一でも異なってもよい)を有し、重量平均分子量(Mw)が50,000~500,000であり、
ブロックAが、水素結合性官能基含有モノマー(a1)由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸脂環式基含有エステルから選ばれる少なくとも1種のモノマー(a2)由来の構成単位とを有し、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上の重合体ブロックであり、
ブロックBが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)由来の構成単位を有し、Tgが-20℃以下の重合体ブロックであり、
(メタ)アクリル系ポリマー(b)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)由来の構成単位を有し、Mwが1,000~10,000である、
粘着剤組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)100質量%中、
ブロックAにおける、前記モノマー(a1)由来の構成単位の割合が1~15質量%であり、前記モノマー(a2)由来の構成単位の割合が4~39質量%であり、かつ、前記モノマー(a1)由来の構成単位と前記モノマー(a2)由来の構成単位との合計割合が5~40質量%であり、
ブロックBにおける、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)由来の構成単位の割合が60~95質量%である、
請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)100質量部に対して、(メタ)アクリル系ポリマー(b)の含有量が5~100質量部であり、粘着付与剤(c)の含有量が5~100質量部である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)のブロックBと、(メタ)アクリル系ポリマー(b)とが、80質量%以上において共通のモノマー由来の構成単位を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
有機溶剤をさらに含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
金属キレート化合物をさらに含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シート。
【請求項8】
粘着剤層のゲル分率が0質量%である、請求項7に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホットメルト型の粘着剤に代表されるような、化学結合を生ずる架橋剤を要しない非反応型の(メタ)アクリル系粘着剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-108185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の非反応型の(メタ)アクリル系粘着剤では、高温環境下での保持力試験において顕著なズレが生じるなど、耐熱性が低い。本発明者らの検討によれば、粘着剤に耐熱性を付与すべく(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度を上げると、粘着剤の初期接着力(タック)を損なうという別の課題が生じることが分かった。
【0005】
本発明は、高温環境下での保持力に優れ、適度な初期粘着力(タック)を有する(メタ)アクリル系粘着剤組成物、および粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため検討した結果、下記構成の粘着剤組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明の構成は、例えば以下の通りである。
【0007】
[1](メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)と(メタ)アクリル系ポリマー(b)と粘着付与剤(c)とを含有する粘着剤組成物であり、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)が、ブロックAとブロックBとからなるA-B-Aで表されるブロック構造(2つのブロックAは同一でも異なってもよい)を有し、重量平均分子量(Mw)が50,000~500,000であり、ブロックAが、水素結合性官能基含有モノマー(a1)由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸脂環式基含有エステルから選ばれる少なくとも1種のモノマー(a2)由来の構成単位とを有し、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上の重合体ブロックであり、ブロックBが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)由来の構成単位を有し、Tgが-20℃以下の重合体ブロックであり、(メタ)アクリル系ポリマー(b)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)由来の構成単位を有し、Mwが1,000~10,000である、粘着剤組成物。
【0008】
[2](メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)100質量%中、ブロックAにおける、前記モノマー(a1)由来の構成単位の割合が1~15質量%であり、前記モノマー(a2)由来の構成単位の割合が4~39質量%であり、かつ、前記モノマー(a1)由来の構成単位と前記モノマー(a2)由来の構成単位との合計割合が5~40質量%であり、ブロックBにおける、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)由来の構成単位の割合が60~95質量%である、前記[1]に記載の粘着剤組成物。
【0009】
[3](メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)100質量部に対して、(メタ)アクリル系ポリマー(b)の含有量が5~100質量部であり、粘着付与剤(c)の含有量が5~100質量部である、前記[1]または[2]に記載の粘着剤組成物。
【0010】
[4](メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)のブロックBと、(メタ)アクリル系ポリマー(b)とが、80質量%以上において共通のモノマー由来の構成単位を有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【0011】
[5]有機溶剤をさらに含有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[6]金属キレート化合物をさらに含有する、前記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【0012】
[7]前記[1]~[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シート。
[8]粘着剤層のゲル分率が0質量%である、前記[7]に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温環境下での保持力に優れ、適度な初期粘着力(タック)を有する(メタ)アクリル系粘着剤組成物、および粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリルおよび/またはメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0015】
[粘着剤組成物]
本実施形態の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)と(メタ)アクリル系ポリマー(b)と粘着付与剤(c)とを含有する。
【0016】
<(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)>
(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a)(以下「トリブロックポリマー(a)」ともいう)は、ブロックAとブロックBとからなるA-B-Aで表されるブロック構造を有する。2つのブロックAは同一でも異なってもよい。
【0017】
≪ブロックA≫
ブロックAは、水素結合性官能基含有モノマー(a1)由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸脂環式基含有エステルから選ばれる少なくとも1種のモノマー(a2)由来の構成単位とを有し、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上の重合体ブロックである。ブロックAは、ミクロ相分離構造を形成し、疑似的な架橋を生ずることで凝集力を発現すると考えられ、また、ガラス転移温度の高い重合体ブロックであることから高い耐熱性を示す。
【0018】
水素結合性官能基含有モノマー(a1)(以下「モノマー(a1)」ともいう)としては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、窒素含有基等の水素結合性官能基を有するモノマーが挙げられる。
【0019】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5-カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。
【0020】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
窒素含有基を有するモノマーとしては、例えば、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素系複素環含有モノマー、シアノ基含有モノマーが挙げられる。アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。窒素系複素環含有モノマーとしては、例えば、ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタムが挙げられる。シアノ基含有モノマーとしては、例えば、シアノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0022】
トリブロックポリマー(a)は、モノマー(a1)由来の構成単位を有することから、通常の(メタ)アクリル系粘着剤と比べ、低ゲル分率においても高い凝集力を有し、さらには硬化剤を用いなくとも充分に高い凝集力を有するため、養生期間が不要である。
【0023】
モノマー(a2)における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(CH2=CR1-COOR2;R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1~18のアルキル基である)が挙げられ、ホモポリマーのTgが0℃以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には、メチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、テトラデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレートが挙げられる。
【0024】
モノマー(a2)における(メタ)アクリル酸脂環式基含有エステルとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられ、ホモポリマーのTgが0℃以上の(メタ)アクリル酸脂環式基含有エステルが好ましい。
【0025】
各モノマーのホモポリマーのTgは、後述する文献(Polymer Handbook)に記載の値または後述する方法(DSC)により得られる値を採用することができる。
【0026】
ブロックAは、モノマー(a1)由来の構成単位およびモノマー(a2)由来の構成単位に加えて、その他のモノマー由来の構成単位をさらに有してもよい。その他のモノマーとしては、例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、芳香環含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
トリブロックポリマー(a)100質量%中、ブロックAにおけるモノマー(a1)由来の構成単位の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、よりさらに好ましくは7質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。ブロックAは、モノマー(a1)由来の構成単位を有することで耐熱性が向上し、また、当該構成単位は、後述する金属キレート化合物と相互作用することで耐熱性をさらに向上させることが可能となる。
【0028】
また、トリブロックポリマー(a)においては粘着剤組成物の塗工直後に自己組織化が起こり、水素結合性官能基を有するブロックAが集合する形となると考えられる。これにより、上記官能基同士も近接しあうこととなり、例えば金属キレート化合物を用いる場合は、金属キレート化合物との反応によるポリマー間の架橋が迅速に進むと考えられる。
【0029】
トリブロックポリマー(a)100質量%中、ブロックAにおけるモノマー(a2)由来の構成単位の割合は、好ましくは4質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは39質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは25質量%以下である。
【0030】
トリブロックポリマー(a)100質量%中、ブロックAにおけるモノマー(a1)由来の構成単位とモノマー(a2)由来の構成単位との合計割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0031】
ブロックAは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上の重合体ブロックであり、当該Tgは、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。このようなTgを有する重合体ブロックは、耐熱性に優れ、また、物理的な擬似架橋点として作用する凝集力を発現できる。
【0032】
本明細書において、重合体ブロックのガラス転移温度(Tg)は、Foxの式により算定することができる。例えば、Foxの式により求めたガラス転移温度(Tg)が上記範囲となるように、重合体ブロックを合成することができる。
Foxの式:1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm
1+W2+…+Wm=1
上記式中、Tgは重合体ブロックのガラス転移温度(単位K)であり、Tg1,Tg2,…,Tgmは各モノマーから形成されたホモポリマーのガラス転移温度(単位K)であり、W1,W2,…,Wmは各モノマー由来の構成単位の、重合体ブロックにおける質量分率である。各モノマー由来の構成単位の質量分率としては、重合体ブロック合成時の各モノマーの全モノマーに対する仕込み割合を用いることができる。
【0033】
Foxの式の計算時において、各モノマーから形成されたホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、Polymer Handbook Fourth Edition(Wiley-Interscience 2003)に記載された値を採用することができる。
【0034】
上記文献に記載が無いTgは、例えば、示差走査型熱量計(DSC)により測定できる。DSCの測定条件としては、試料5mg、窒素雰囲気下とし、1回目の測定(1st RUN)で昇温速度20℃/分で-100℃から200℃まで昇温した後、降温速度99.9℃/分で-100℃まで冷却し、さらに2回目の測定(2nd RUN)で昇温速度20℃/分で-100℃から200℃まで昇温する。ここでガラス転移温度は、2nd RUNにおいて-100℃から200℃まで昇温したときに測定されるDSC曲線のベースラインが吸熱方向にシグモイド型に変化する領域において、シグモイド型に変化する領域より低温側のベースラインの延長線と、シグモイドにおける変曲点の接線の交点を指す。
【0035】
≪ブロックB≫
ブロックBは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)由来の構成単位を有し、ガラス転移温度(Tg)が-20℃以下の重合体ブロックである。ブロックBは、ミクロ相分離構造を形成するために、ブロックAとは異なる組成とする必要があり、適度な初期粘着力(タック)を発現させるために低いガラス転移温度のブロックとする必要がある。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)としては、例えば、アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(CH2=CR3-COOR4;R3は水素原子またはメチル基であり、R4は炭素数1~18のアルキル基である)が挙げられ、ホモポリマーのTgが-20℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレートが挙げられる。各モノマーのホモポリマーのTgは、上述した文献(Polymer Handbook)に記載の値または上述した方法(DSC)により得られる値を採用することができる。
【0037】
ブロックBのTgが-20℃以下になるのであれば、ブロックBは、ホモポリマーのTgが-20℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有してもよい。例えば、ホモポリマーのTgが-20℃を超えて0℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、イソプロピルアクリレート、ラウリルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートが挙げられる。
【0038】
ブロックBは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)由来の構成単位に加えて、その他のモノマー由来の構成単位をさらに有してもよい。その他のモノマーとしては、例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、脂環式基含有(メタ)アクリレート、芳香環含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
トリブロックポリマー(a)100質量%中、ブロックBにおける(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)由来の構成単位の割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0040】
ブロックBは、ガラス転移温度(Tg)が-20℃以下の重合体ブロックであり、当該Tgは、好ましくは-30℃以下であり、好ましくは-80℃以上、より好ましくは-70℃以上、さらに好ましくは-60℃以上である。このようなTgを有する重合体ブロックは、適度な初期粘着力(タック)および低温時の粘着力を発揮するという観点から好ましい。ブロックBのTgは、ブロックAと同様の手法で求めることができる。
【0041】
ブロックAのTgとブロックBのTgとの差は、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは130℃以上、よりさらに好ましくは150℃以上である。このような態様であると、トリブロックポリマー(a)分子間でのブロックAの自己組織化、およびブロックBの自己組織化が促されると考えられ、これによって、粘着剤中にミクロ相分離構造が自己組織化され、ブロックAが疑似架橋点として働くようになると考えられる。
【0042】
ブロックBは、実質的に水素結合性官能基含有モノマー(a1)由来の構成単位を有さない重合体ブロックであることが好ましい。ブロックBにおける水素結合性官能基含有モノマー(a1)由来の構成単位の割合は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0043】
≪トリブロックポリマー(a)の組成≫
トリブロックポリマー(a)の重量平均分子量(Mw)は、50,000以上、好ましくは70,000以上、より好ましくは100,000以上であり、500,000以下、好ましくは450,000以下、より好ましくは400,000以下である。
【0044】
トリブロックポリマー(a)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下である。
MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、求めることができる。
【0045】
トリブロックポリマー(a)中のブロックAの割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。なお、ブロックAの割合とは、A-B-Aで表されるブロック構造における2つのブロックAの合計割合である。
【0046】
トリブロックポリマー(a)中のブロックBの割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0047】
ブロックAの割合が5質量%以上であると、粘着剤が疑似架橋構造を良好に形成できる傾向にある。ブロックAの割合が40質量%以下であると、トリブロックポリマーが硬くなりすぎず、諸性能のバランスに優れる傾向にある。
【0048】
トリブロックポリマー(a)は、一般的なリビングラジカル重合を用いて製造することができ、このうち、重合反応の制御の容易さの点などから、ニトロキシドを介したラジカル重合や、原子移動ラジカル重合によって好適に製造することができる。原子移動ラジカル重合法は、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、金属錯体を触媒とする重合法である。
【0049】
リビングラジカル重合法によりトリブロックポリマー(a)を製造する場合、モノマー単位を逐次付加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次の重合体ブロックを重合する方法、別々に重合した重合体ブロックを反応により結合する方法などが挙げられるが、モノマー単位の逐次付加による方法によってトリブロックポリマー(a)を製造することが好ましい。
【0050】
モノマー単位の逐次付加によりトリブロックポリマー(a)を製造する場合、ブロックAを構成するモノマー成分と、ブロックBを構成するモノマー成分との添加順序について、特に制限されないが、先にブロックBを製造して、ブロックBの重合末端からブロックAを製造する方が、重合制御が容易である。
【0051】
また、塊状重合法によってトリブロックポリマー(a)を製造することで、有機溶剤を含まないホットメルト型粘着剤として、あるいは、(メタ)アクリルモノマーで希釈することによってエネルギー線硬化型粘着剤としての製品形態も可能であり、環境配慮型の粘着剤とすることも可能である。
トリブロックポリマー(a)は1種または2種以上用いることができる。
【0052】
本実施形態の粘着剤組成物におけるトリブロックポリマー(a)の含有割合は、当該組成物の固形分中、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上である。上限は他の成分により画定される。固形分とは、後述する有機溶剤を除く全成分である。なお、本実施形態の粘着剤組成物は、有機溶剤を含まないホットメルト型の粘着剤であることができ、その場合は、トリブロックポリマー(a)の含有割合の基準は、粘着剤組成物全体である。
【0053】
本発明によれば、トリブロックポリマー(a)とともに、トリブロックポリマー(a)に対する相溶性が良好な(メタ)アクリル系ポリマー(b)と、粘着付与剤(c)とを用いることで、耐熱性、初期粘着力(タック)、オレフィン接着性等の諸性能が良好であり、エージングを必要としない粘着剤組成物および粘着シートを得ることができる。
【0054】
<(メタ)アクリル系ポリマー(b)>
(メタ)アクリル系ポリマー(b)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)由来の構成単位を有する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)としては、例えば、アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(CH2=CR5-COOR6;R5は水素原子またはメチル基であり、R6は炭素数1~18のアルキル基である)が挙げられ、ホモポリマーのTgが-20℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレートが挙げられる。各モノマーホモポリマーのTgは、上述した文献(Polymer Handbook)に記載の値または上述した方法(DSC)により得られる値を採用することができる。
【0055】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ホモポリマーのTgが-20℃を超えて0℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルも挙げられ、例えば、イソプロピルアクリレート、ラウリルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートが挙げられる。
【0056】
(メタ)アクリル系ポリマー(b)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)由来の構成単位の割合は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0057】
(メタ)アクリル系ポリマー(b)は、粘着剤組成物の初期粘着力(タック)を向上させる成分である。ここで、(メタ)アクリル系ポリマー(b)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)由来の構成単位を有することから、トリブロックポリマー(a)に対する相溶性に優れる。特に、(メタ)アクリル系ポリマー(b)は、トリブロックポリマー(a)を構成するブロックBと同一または近似した組成を有することが好ましい。このような(メタ)アクリル系ポリマー(b)は、トリブロックポリマー(a)との相溶性に優れ、高い初期粘着力(タック)を発現する。(メタ)アクリル系ポリマー(b)とトリブロックポリマー(a)との相溶性が悪いと、耐熱性が低下するばかりでなく、(メタ)アクリル系ポリマー(b)がブリードアウトすることによって粘着力が低下することがある。
【0058】
したがって、トリブロックポリマー(a)のブロックBと、(メタ)アクリル系ポリマー(b)とは、80質量%以上において共通のモノマー由来の構成単位を有することが好ましく、より好ましくは90質量%以上である。具体的には、トリブロックポリマー(a)のブロックBと、(メタ)アクリル系ポリマー(b)とは、80質量%以上において共通の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有することが好ましく、より好ましくは90質量%以上である。
【0059】
(メタ)アクリル系ポリマー(b)の重量平均分子量(Mw)は、上記相溶性を良好にする観点から、1,000以上、好ましくは1,200以上、より好ましくは1,500以上であり、10,000以下、好ましくは8,000以下、より好ましくは5,000以下である。
MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、求めることができる。
【0060】
(メタ)アクリル系ポリマー(b)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-20℃、より好ましくは-30℃以下であり、好ましくは-80℃以上、より好ましくは-70℃以上、さらに好ましくは-60℃以上である。Tgは、上述したFoxの式により算定することができる。
【0061】
(メタ)アクリル系ポリマー(b)は、一般的な重合方法を用いて製造することができ、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法により製造することができる。具体的には、反応容器内に重合溶媒およびモノマー成分、懸濁重合法や乳化重合法の場合には分散安定剤や乳化剤を仕込み、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で重合開始剤を添加し、反応開始温度を50~90℃に設定し、反応系の温度を50~90℃に維持して、4~20時間反応を行う。
(メタ)アクリル系ポリマー(b)は1種または2種以上用いることができる。
【0062】
本実施形態の粘着剤組成物における(メタ)アクリル系ポリマー(b)の含有量は、トリブロックポリマー(a)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは12質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
【0063】
<粘着付与剤(c)>
粘着付与剤(c)は、ポリオレフィン(例:ポリプロピレン)等の低極性被着体に対する粘着力を向上させる成分である。粘着付与剤(c)は粘着力を向上させるものであれば特に限定されず、例えば、脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)、芳香族系石油樹脂(C9系石油樹脂)、ジシクロペンタジエン系石油樹脂(DCPD系石油樹脂)等の脂環族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、脂環族/芳香族共重合系石油樹脂、脂肪族/脂環族共重合系石油樹脂、これらの石油樹脂を水添してなる水添石油樹脂等の石油樹脂;テルペン樹脂、変性テルペン樹脂(例:水素添加テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂)等のテルペン系樹脂;ロジン系樹脂;クマロン系樹脂、インデン系樹脂などの粘着付与樹脂が挙げられる。
これらの中でもテルペンフェノール系の粘着付与樹脂がトリブロックポリマー(a)に対する相溶性に優れており好ましい。
【0064】
粘着付与剤(c)の軟化点は、好ましくは50~200℃、より好ましくは90~160℃、さらに好ましくは100~150℃である。軟化点が前記範囲にある粘着付与剤を用いることで、組成物の凝集力がより向上し、耐熱性に優れた粘着剤を得ることができる。軟化点は、JIS K2207に準拠した環球法により測定される。
粘着付与剤(c)は1種または2種以上用いることができる。
【0065】
本実施形態の粘着剤組成物における粘着付与剤(c)の含有量は、トリブロックポリマー(a)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは80質量部である。
【0066】
<金属キレート化合物>
トリブロックポリマー(a)は塗工直後の自己組織化により十分な凝集力を有しており、トリブロックポリマー(a)を含有する粘着剤組成物は、養生期間が不要な粘着剤となる。このため、必ずしも硬化剤の添加は必要ないが、耐熱性のさらなる向上の観点から、本実施形態の粘着剤組成物は金属キレート化合物をさらに含有してもよい。
【0067】
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。これらの中でも、特にアルミキレート化合物が好ましい。具体的には、アルミニウムiso-プロピレート、アルミニウムsec-ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジiso-プロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
【0068】
金属キレート化合物は、配位結合によりトリブロックポリマー(a)を架橋する(疑似架橋)。金属キレート化合物を用いる場合、塗工直後に架橋が完成し、養生を必要としないため、養生期間不要の粘着剤とすることができる。
金属キレート化合物は1種または2種以上用いることができる。
【0069】
金属キレート化合物を用いる場合における本実施形態の粘着剤組成物における金属キレート化合物の含有量は、トリブロックポリマー(a)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
【0070】
<添加剤>
本実施形態の粘着剤組成物は、上記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、金属腐蝕防止剤、可塑剤、架橋促進剤、ナノ粒子、シランカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。添加剤は1種または2種以上用いることができる。
【0071】
<有機溶剤>
本実施形態の粘着剤組成物は、環境負荷低減の観点から有機溶剤を含有しないホットメルト型の粘着剤であることが好ましいが、仮に有機溶剤を含有する粘着剤組成物、具体的には有機溶剤により希釈された粘着剤組成物であるとしても、1液型のエージングレス粘着剤組成物として十分に性能を発揮する。
【0072】
有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシドが挙げられる。
有機溶剤は1種または2種以上用いることができる。
【0073】
<粘着剤組成物の調製>
本実施形態の粘着剤組成物は、上述した各成分を、従来公知の方法により混合することで調製することができる。
本実施形態の粘着剤組成物は、ホットメルト型である場合は、当該粘着剤組成物より形成された粘着剤のゲル分率は、好ましくは0質量%である。
【0074】
ゲル分率は、以下のようにして求めることができる。粘着剤組成物約0.1gをサンプリング瓶に採取し、酢酸エチル30mLを加えて4時間振盪した後、このサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網で濾過し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥質量を測定する。次式により、ゲル分率を求める。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着剤組成物の採取質量)×100(%)
【0075】
[粘着シート]
本実施形態の粘着シートは、本実施形態の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する。粘着シートとしては、例えば、上記粘着剤層のみを有する両面粘着シート、基材と、基材の両面に形成された上記粘着剤層とを有する両面粘着シート、基材と、基材の一方の面に形成された上記粘着剤層を有する片面粘着シート、およびそれら粘着シートの粘着剤層の基材と接していない面に剥離処理されたカバーフィルムが貼付された粘着シートが挙げられる。
【0076】
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えばスピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法により、所定の厚さになるように塗布・乾燥する方法を用いることができる。
【0077】
基材およびカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。
【0078】
粘着剤層の厚さは、粘着性能維持と生産性の観点から、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~75μmである。基材およびカバーフィルムの厚さは、特に限定されない。
【0079】
本実施形態の粘着シートは、例えば、工業用粘着シートとして、あるいは各種樹脂フィルムの貼合せ用途に使用することができ、具体的には、ディスプレイ用部材、自動車用部材、航空機用部材、船舶用部材、電化製品用部材等の、耐熱性が必要とされる部材の固定用途に好適に使用することができる。また、本実施形態の粘着シートは、加飾フィルムとしても好適に使用することができる。
【実施例
【0080】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0081】
[GPC]
(メタ)アクリル系トリブロックポリマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、下記条件で、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求めた。
・測定装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
・GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー(株)製)
(1)TSKgel HxL-H(ガードカラム)
(2)TSKgel GMHxL
(3)TSKgel GMHxL
(4)TSKgel G2500HxL
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・サンプル濃度:1.5%(w/v)(テトラヒドロフランで希釈)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準ポリスチレン換算
【0082】
[製造例]
・(メタ)アクリル系トリブロックポリマー
[製造例1]
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、n-ブチルアクリレート(BA)を75部、1,6-ジ[2-(N-tert-ブチル-N-(1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル)-N-オキシル)プロピオネート]ヘキシレンアルコキシアミン溶液を1部、N-tert-ブチル-N-(1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル)ニトロオキシド溶液を0.07部仕込み、窒素ガスを導入しながら117℃に昇温し、6時間重合反応を行った。反応終了後、39部のトルエンにて希釈した。次いで、メチルメタクリレート(MMA)を22部、メタクリル酸(MAA)を3部、トルエンを108部仕込み、窒素を導入しながら、105℃で1時間30分反応を行った。反応終了後、溶液中の溶媒を、乾燥機を用いて105℃で12時間かけて揮発させ、重量平均分子量(Mw)が20万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.2の(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a-1)を得た。
得られた(メタ)アクリル系トリブロックポリマーはブロックAとブロックBがA-B-Aで表される構造を有するトリブロックポリマーであり、MMAとMAAとから構成されるAブロックのガラス転移温度(Tg)は113℃であり、BAから構成されるBブロックのガラス転移温度(Tg)は-50℃であった。
【0083】
[製造例2、5~15]
ブロックAの成分であるモノマー(a1)およびモノマー(a2)、ブロックBの成分である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)の種類と配合比を表1に記載した通りに変更したこと以外は製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a-2)、(a-5)~(a-12)、(a’-1)~(a’-3)を得た。
【0084】
[製造例3]
N-tert-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロオキシド溶液を0.1部、MMAを17部、MAAを8部に変更したこと以外は製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a-3)を得た。
【0085】
[製造例4]
N-tert-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロオキシド溶液を0.05部に変更したこと以外は製造例3と同様にして、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a-4)を得た。
・(メタ)アクリル系ポリマー
【0086】
[製造例16]
攪拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、n-ブチルアクリレート(BA)100部、および酢酸エチル溶媒100部を仕込み、窒素ガスを導入しながら75℃に昇温した。次いで、n-ドデシルメルカプタン(NDM)7.0部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部を加え、窒素ガス雰囲気下、75℃で重合反応を開始した。その後、AIBNを2時間後に1.5部追加し、重合反応開始から12時間後に反応を終了し、(メタ)アクリル系樹脂溶液を得た。反応終了後、(メタ)アクリル系樹脂溶液中の溶媒を、乾燥機を用いて105℃で12時間かけて揮発させ、重量平均分子量(Mw)が2,000、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.5の(メタ)アクリル系ポリマー(b-1)を得た。
【0087】
[製造例17~20]
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)の種類と配合比を表1に記載した通りに変更したこと以外は製造例16と同様にして、(メタ)アクリル系ポリマー(b-2)~(b-5)を得た。
表1における略号の意味は以下のとおりである。
MMA :メチルメタクリレート
MA :メチルアクリレート
IBXA :イソボルニルアクリレート
IBXMA:イソボルニルメタクリレート
BA :n-ブチルアクリレート
2EHA :2-エチルヘキシルアクリレート
LA :ラウリルアクリレート
MAA :メタクリル酸
AA :アクリル酸
2HEA :2-ヒドロキシエチルアクリレート
AM :アクリルアミド
DMAEM:N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
【0088】
[実施例1]
得られた(メタ)アクリル系トリブロックポリマー(a-1)100部と、(メタ)アクリル系ポリマー(b-1)15部と、テルペンフェノール系粘着付与樹脂YSポリスターTH-130(ヤスハラケミカル株式会社)15部とを混合し、180℃で1時間溶融混和して、ホットメルト型粘着剤を得た。
【0089】
[実施例2~16、比較例1~3]
(メタ)アクリル系トリブロックポリマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーの種類、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー100部に対する(メタ)アクリル系ポリマーおよび粘着付与樹脂の配合量を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、ホットメルト型粘着剤を得た。実施例16では、金属キレート化合物としてアルミキレート化合物(M-5A(綜研化学製))も用いた。
【0090】
[試料作製]
得られたホットメルト型粘着剤を厚さ100μmの剥離処理されたPETフィルムで挟み、200℃で1時間、1MPaで熱プレスし、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。その後、片側の剥離処理されたPETフィルムをはがし、露出した粘着剤層を厚さ25μmのPETフィルムへ貼り合わせ、粘着シートを作製した。
【0091】
[粘着力試験]
作製した粘着シートを25mm幅に裁断したものを試験片として用い、剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層をステンレス板(SUS)またはポリプロピレン板(PP)に貼り付け面積が25mm×100mmとなるように貼付して、2kgローラーを3往復させて圧着した。その後、23℃環境下に20分放置し、同環境下において、剥離角180度、引張速度300mm/minの速さで剥離した際の粘着力を測定した。
基準
AA:6.0N/25mm以上
BB:4.0N/25mm以上、6.0N/25mm未満
CC:2.0N/25mm以上、4.0N/25mm未満
DD:2.0N/25mm未満
【0092】
[保持力試験]
作製した粘着シートを25mm幅に裁断したものを試験片として用い、剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層をステンレス板に貼り付け面積が25mm×25mmとなるように貼付して、2kgローラーを3往復させて圧着した。その後、100℃/dry環境下で20分静置し、同環境下で試験片のせん断方向に1kgの荷重をかけ、荷重付加開始から1時間後の試験片のずれ量または試験片が落下するまでの時間を測定した。
基準
AA:試験片のずれ量が0.1mm未満(NC:non creeping)
BB:試験片のずれ量が0.1mm以上、1.0mm未満
CC:試験片のずれ量が1.0mm以上、2.0mm未満
DD:試験片のずれ量が2.0mm以上または試験片が落下(↓と表記)
【0093】
[プローブタック(PT)]
作製した粘着シートを15mm×15mmに裁断したものを試験片として用い、剥離処理されたPETフィルムを剥がし、20gの負荷を有する試験用治具に取り付けた。プローブタック測定装置(テスター産業株式会社製)を用い、23℃環境下において、露出した粘着剤層の表面に対して直径5mmφのステンレス製プローブを接触荷重1N/cm2、接触速度10mm/秒、接触時間1秒の条件で接触させ、同プローブを10mm/秒の速度で離した際の、プローブが剥がれる力を測定した。
【0094】
[ゲル分率]
作製した粘着シートの粘着剤層から約0.1gをサンプリング瓶に採取し、酢酸エチル30mLを加えて4時間振盪した後、このサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網で濾過し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥質量を測定した。次式により、ゲル分率を求めた。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着剤層の採取質量)×100(%)
以上の試験結果を表2に記載した。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
表2に示すように、実施例1~16で得られた粘着シートは高温環境下での保持力に優れ、適度な初期粘着力(タック)を有する結果となった。(メタ)アクリル系トリブロックポリマーのブロックAが水素結合性官能基含有モノマー(a1)由来の構成単位を有していない比較例1は、保持力が充分ではない。(メタ)アクリル系トリブロックポリマーのブロックAのTgが低い比較例2は、保持力が充分ではない。(メタ)アクリル系トリブロックポリマーのブロックBのTgが高い比較例3は、粘着力・プローブタックが充分ではない。