(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】超電導線材の接続構造体および超電導線材の接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 12/06 20060101AFI20230609BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230609BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20230609BHJP
H01R 4/68 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H01B12/06
H01B13/00 561Z
H01F6/06 140
H01F6/06 150
H01R4/68
(21)【出願番号】P 2020504061
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2019009404
(87)【国際公開番号】W WO2019172432
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-04-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2018043573
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】羽生 智
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】小田 浩
【審判官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117523(JP,A)
【文献】特開2011-165435(JP,A)
【文献】特開2016-110816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B12/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に超電導層を有する複数の接続線材を備え、
前記複数の接続線材が接続され、
前記複数の接続線材の接続部が銅の安定化メッキ層により被覆され、
前記安定化メッキ層は、前記接続部を連続して被覆しており、かつ前記複数の接続線材の長手方向の端面を被覆しており、
前記複数の接続線材がそれぞれ有する前記超電導層は、直接接触している、超電導線材の接続構造体。
【請求項2】
前記安定化メッキ層が、前記複数の接続線材を連続して被覆する、請求項1に記載の超電導線材の接続構造体。
【請求項3】
基板上に超電導層を有する複数の接続線材が接続された超電導線材の接続構造体の製造方法であって、
前記超電導層が露出されている、前記複数の接続線材を準備し、
前記複数の接続線材
を、露出した前記超電導層が互いに接するように重ね合わせ、
前記複数の接続線材の接続部及び長手方向の端面を銅の安定化メッキ層により被覆し、前記複数の接続線材の間に連続して前記安定化メッキ層を形成する、
超電導線材の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記安定化メッキ層が、前記複数の接続線材を連続して被覆する、請求項3に記載の超電導線材の接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線材の接続構造体および超電導線材の接続構造体の製造方法に関する。
本願は、2018年3月9日に日本に出願された特願2018-043573号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
超電導線材は、電流損失が低いため、電力供給用ケーブル、磁気コイル等として使用されている。特許文献1には、超電導線材の保護層(特許文献1においては安定化基層)として銀のスパッタ膜を、超電導線材の安定化層として銅の電解めっき膜を形成した超電導線材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長尺の超電導線材を得るためには、複数本の超電導線材を接続する必要がある。しかし、安定化層は、超電導層が超電導状態から常電導状態へと遷移しようとした場合に、超電導層の電流を転流させるバイパスとして機能するに十分な断面積を有する。そのため、超電導線材の外周に銅の安定化層が設けられている場合、保護層同士または超電導層同士を接続する場合に比べて接続抵抗が高くなる場合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接続抵抗を低くした超電導線材の接続構造体および超電導線材の接続構造体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、超電導線材の接続構造体であって、基板上に超電導層を有する複数の接続線材を備え、前記複数の接続線材が接続され、前記複数の接続線材の接続部が安定化メッキ層により被覆され、前記安定化メッキ層は、前記接続部を連続して被覆しており、前記複数の接続線材がそれぞれ有する前記超電導層の間は、直接接触している、又は、それぞれの前記超電導層の間に保護層および半田層の一方もしくは両方が設けられる。
【0007】
本発明の第2態様は、上記第1態様の超電導線材の接続構造体において、前記安定化メッキ層が、前記複数の接続線材を連続して被覆してもよい。
【0008】
本発明の第3態様は、基板上に超電導層を有する複数の接続線材が接続された超電導線材の接続構造体の製造方法であって、前記超電導層が露出されている、又は、前記超電導層の上に存在する層が保護層および半田層の一方もしくは両方を有する前記複数の接続線材を準備し、前記複数の接続線材の前記基板上に前記超電導層を有する面側を、直接または半田を介して重ね合わせ、前記複数の接続線材の接続部を安定化メッキ層により被覆し、前記複数の接続線材の間に連続して前記安定化メッキ層を形成する。
【0009】
本発明の第4態様は、上記第3態様の超電導線材の接続構造体において、前記安定化メッキ層を、前記複数の接続線材を連続して被覆してもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の態様によれば、接続線材の有するそれぞれの超電導層の間に膜厚の大きい安定化メッキ層が介在しないように接続部を構成することができ、接続抵抗を低くして接続することのできる超電導線材の接続構造体および超電導線材の接続構造体の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る超電導線材の接続構造体を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る超電導線材の接続構造体を示す断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る超電導線材の接続構造体を示す断面図である。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る超電導線材の接続構造体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0013】
図1に、本発明の第1実施形態の超電導線材の接続構造体50の断面図を示す。第1実施形態では、超電導線材の接続構造体50の接続部40では、接続線材10,20の一部分と接続線材30が接続されている。接続線材10,20,30は、基板11,21,31上にそれぞれ超電導層12,22,32を有し、超電導層12,22,32の上にそれぞれ保護層13,23,33を有する。接続部40は、安定化メッキ層41により被覆され、かつ、超電導層12,32の間および超電導層22,32の間に、保護層13,23,33が設けられる。
【0014】
図2に、本発明の第2実施形態の超電導線材の接続構造体50Aの断面図を示す。第2実施形態では、超電導線材の接続構造体50Aの接続部40Aでは、接続線材10A,20Aの一部分と接続線材30Aが接続されている。接続線材10A,20A,30Aは、基板11,21,31上にそれぞれ超電導層12,22,32を有する。接続部40Aは、安定化メッキ層41により被覆され、かつ、それぞれの接続線材10A,20A,30Aが有する超電導層12,22,32は、直接接触している。
【0015】
図3に、本発明の第3実施形態の超電導線材の接続構造体50Bの断面図を示す。第3実施形態では、超電導線材の接続構造体50Bの接続部40Bでは、接続線材10,20の一部分と接続線材30が接続されている。接続線材10,20,30は、基板11,21,31上にそれぞれ超電導層12,22,32を有し、超電導層12,22,32の上にそれぞれ保護層13,23,33を有する。接続部40Bは、安定化メッキ層41により被覆され、かつ、超電導層12,32の間および超電導層22,23の間に、保護層13,23,33と半田層43が設けられる。
【0016】
第1~第3実施形態によれば、それぞれの超電導層12,22,32の間には層が介在しない、又は、介在する場合、それぞれ保護層13,23,33および半田層43の一方もしくは両方が形成される。
このように、それぞれの超電導層12,32の間および超電導層22,32の間に安定化メッキ層41が介在しないので、接続部40,40A,40Bにおける接続抵抗を低くすることができる。
また、接続部40,40A,40Bが安定化メッキ層41で被覆され、安定化メッキ層41がそれぞれの接続線材10,20,30またはそれぞれの接続線材10A,20A,30Aの間に連続して形成されるので、接続強度を向上させることができる。
【0017】
第1および第3実施形態では、接続線材10,20,30がそれぞれ保護層13,23,33を有する例を示した。
変形例として、接続されている接続線材の少なくとも一つが保護層を有し、他の接続線材が保護層を有さなくてもよい。
【0018】
第2実施形態では、接続線材10A,20A,30Aが全長にわたり、それぞれ保護層13,23,33を有さない例を示した。
変形例として、接続線材10A,20A,30Aが重なり合っていない(接続されていない)領域において、接続線材10A,20A,30Aにそれぞれ保護層13,23,33を積層してもよい。接続線材10A,20A,30Aが重なり合っていない領域に保護層を設けるため、接続線材10A,20A,30Aを接続した後に保護層を積層することも可能である。
接続線材を接続する前に積層する保護層と、接続線材を接続した後に積層する保護層とを併用してもよい。併用する場合は、同一の位置に積層してもよく、長手方向または幅方向における異なる位置に積層してもよい。
【0019】
第2および第3実施形態の変形例として、保護層を有さない接続線材10A,20A,30A(第2実施形態を参照)の間に半田層43(第3実施形態を参照)を設けてもよい。この場合は、接続線材10A,20A,30Aがそれぞれ有する超電導層12,22,32のうち、超電導層12,32および超電導層22,23の間に半田層43のみが形成されてもよい。半田層43は、安定化メッキ層41に比べて十分薄く形成されるため、接続抵抗の増加を抑制することができる。
【0020】
半田層43を構成する半田としては、Sn,Pb,Zn,Al,In,Cu,Ag等の1種または2種以上からなる金属又は合金が挙げられる。半田は、例えば350℃以下あるいは400℃以下等の低温で溶融可能である。例えばSn単独またはSnを主成分とする合金が半田用金属として好ましい。半田層43の厚さとしては、例えば1~10μmが挙げられる。
【0021】
安定化メッキ層41は、それぞれの接続線材が重なり合う領域のメッキ層41cと、その近傍において接続線材30,30Aの長手方向の端面34から離れるにつれて厚さが徐々に減少するメッキ層41dを含むことが好ましい。安定化メッキ層41は、接続部40,40A,40Bの接続線材10,20または10A,20Aの外周に設けられるメッキ層41a,41bまで、連続して被覆されてもよい。厚さが徐々に減少するメッキ層41dにおける勾配(傾斜)は適宜設定することができる。
【0022】
安定化メッキ層41は、例えば銅(Cu)の電解メッキで形成してもよい。安定化メッキ層41を形成する際は、基板11,21,31の裏面、側面、超電導層12,22,32の表面等の上にメッキ層が積層されやすいように、下地としてシード層を設けてもよい。シード層はスパッタ、無電解メッキ等の方法を用いてCu,Ag等により形成してもよい。
【0023】
なお、安定化メッキ層41が各接続線材および接続部の特定の範囲に連続しているとは、連続する範囲において、金属組織に不連続な箇所が存在しないことを意味する。例えば、各線材に別々にメッキを施したものを機械的に突き合わせても、連続したメッキ層とはならない。連続する範囲のメッキ層が、同一のメッキ浴を用いて形成されることが好ましい。2回以上のメッキ工程を繰り返しても各工程で生じたメッキ層の間に界面が生じない場合は、全体を連続したメッキ層とすることができる。例えば、間隔を介して分離した複数箇所のメッキ層の間に、同一の組成でメッキ層を形成して間隔を埋めることで、全体を連続したメッキ層としてもよい。
【0024】
第1~第3実施形態では、3本の接続線材のうち、2本の接続線材10,20または10A,20Aの長手方向の端面を突き合わせ、この突き合わせ部42を跨るように他の接続線材30または30Aを重ね合わせている。突き合わせ部42の存在は必須ではない。
図4に、本発明の第4実施形態の超電導線材の接続構造体50Cの断面図を示す。第4実施形態では、超電導線材の接続構造体50Cにおいて、長手方向に対向する2本の接続線材10,20の間を離すようにしている。なお、接続線材10,20の代わりに、2本の接続線材10A,20A(
図2参照)を用いてもよい。
【0025】
第4実施形態では、長手方向に対向する2本の接続線材10,20の端面14,24の間には、各端面14,24から離れるにつれて厚さが徐々に減少するメッキ層41dが含まれてもよい。互いに対向する接続線材10,20の端面14,24の間に含まれる安定化メッキ層は、他の部分より厚膜にすると、凹凸が低減されるので好ましい。
【0026】
第4実施形態において、第3の接続線材30の長さは任意にすることが可能である。第1の接続線材10と第3の接続線材30との間に形成される第1接続部44が、第2の接続線材20と第3の接続線材30との間に形成される第2接続部45と離れて形成されていてもよい。すなわち、第1~第3実施形態における第3の接続線材30,30Aは短尺である。
一方、第4実施形態における第3の接続線材30が長尺である場合、第1接続部44および第2接続部45は、それぞれ接続線材10,20,30のうち、長尺の2本の接続線材の一部領域を重ね合わせて接続することができる。この場合、各接続部44,45において、接続線材10,20,30は、それぞれ基板11,21,31上に超電導層12,22,32を有する面を対向させて重ね合わせられる。
【0027】
第4実施形態において、第3の接続線材30が短尺であり、長手方向に対向する2本の接続線材10,20の端面14,24間の距離が短い場合、接続部40Cは第1接続部44および第2接続部45を含む全体とすることができる。例えば、端面14,24間の距離が、第1接続部44または第2接続部45の長さより短くてもよい。
【0028】
図4では、第1実施形態と同様に、超電導層12,22,32上にそれぞれ保護層13,23,33を設けた接続線材10,20,30において、保護層13,23と保護層33を向かい合わせて配置している。第2および第3実施形態、および上述の変形例においても、第4実施形態と同様に、接続部が突き合わせ部42を有さない構成としてもよい。
【0029】
各接続線材の間が接続された超電導線材を製造する方法としては、(1)少なくとも一部領域に安定化メッキ層を有さない接続線材を準備する工程と、(2)接続線材を重ね合わせる(接続する)工程と、(3)接続部を安定化メッキ層により被覆する工程と、を有する方法が挙げられる。
【0030】
(1)の準備工程においては、超電導層が露出されている接続線材、又は超電導層の上に存在する層が保護層もしくは半田層である接続線材が準備される。超電導層の上に保護層と半田層の両方が設けられてもよい。準備工程またはその前工程で超電導層の上に保護層もしくは半田層を設ける場合は、超電導線材の一部領域のみに保護層もしくは半田層を設けてもよい。接続部とならない接続線材の領域において、あらかじめ接続線材の外周に安定化メッキ層が形成されていてもよい。
【0031】
(2)の重ね合わせ工程においては、基板上に超電導層を有する面側で接続線材が重ね合わせられる。上述した第1実施形態のように、超電導層の上に保護層を有する接続線材同士を、それぞれの保護層が対向するように重ね合わせてもよい。また、上述した第2実施形態のように、超電導層が露出されている接続線材同士を、それぞれの超電導層が対向するように重ね合わせてもよい。そのほか、超電導層が露出されている接続線材と、超電導層の上に保護層を有する接続線材とを重ねて配置してもよい。
【0032】
第3実施形態のように接続線材の間に半田層を設ける場合は、(1)の準備工程において、少なくとも一方の接続線材に半田層を積層してもよい。(2)の重ね合わせ工程に際して、重ね合わせられる接続線材の間に半田を供給してもよい。半田を加熱することにより、半田が溶融して薄く広がるので、接続線材の間に積層または供給される半田は、点状、帯状などの部分的なパターンであってもよい。
【0033】
(3)のメッキ工程においては、安定化メッキ層を、接続線材の接続部を連続して被覆してもよい。準備工程に先立って接続線材の外周に安定化メッキ層が形成されている場合は、接続線材の外周に形成されている安定化メッキ層と連続するように、接続部を覆う安定化メッキ層を接続してもよい。
【0034】
安定化メッキ層の外周には、超電導線材の周囲に対する電気絶縁を確保するため、ポリイミド等の絶縁テープを巻きつけたり、樹脂層を形成したりしてもよい。なお、絶縁テープや樹脂層等の絶縁被覆層は必須ではなく、超電導線材の用途に応じて適宜設けたり、あるいは絶縁被覆層を有さない構成とすることもできる。
【0035】
次に、各接続線材を構成する超電導線材(例えば、酸化物超電導線材)について、説明する。
基板11,21,31は、テープ状の金属基板である。各基板は、厚さ方向の両側に、それぞれ主面を有する。各基板を構成する金属の具体例として、ハステロイ(登録商標)に代表されるニッケル合金、ステンレス鋼、ニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni-W合金などが挙げられる。基板の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、例えば10~1000μmの範囲である。
【0036】
基板11,21,31とそれぞれの超電導層12,22,32との間には中間層(図示せず)が設けられてもよい。中間層は、多層構成でもよく、例えば基板側から超電導層側に向かう順で、拡散防止層、ベッド層、配向層、キャップ層等を有してもよい。これらの層は必ずしも1層ずつ設けられるとは限らず、一部の層を省略する場合や、同種の層を2以上繰り返し積層する場合もある。
【0037】
超電導層12,22,32は、酸化物超電導体から構成される。酸化物超電導体としては、例えば一般式REBa2Cu3O7-x(RE123)等で表されるRE-Ba-Cu-O系酸化物超電導体が挙げられる。希土類元素REとしては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうちの1種又は2種以上が挙げられる。酸化物超電導層の厚さは、例えば0.5~5μm程度である。
【0038】
超電導層には、人工的な結晶欠陥として、異種材料による人工ピンなどが導入されてもよい。超電導層に人工ピンを導入するために用いられる異種材料としては、例えば、BaSnO3(BSO)、BaZrO3(BZO)、BaHfO3(BHO)、BaTiO3(BTO)、SnO2、TiO2、ZrO2、LaMnO3、ZnO等の1種または2種以上が挙げられる。
【0039】
保護層13,23,33は、過電流をバイパスしたり、超電導層と保護層の上に設けられる層との間で起こる化学反応を抑制したりする等の機能を有する。保護層を設ける場合は、銀(Ag)を含む保護層が好ましく、銀を含む保護層と同様に、銀を主成分とする銀合金を含む保護層を用いることもできる。銀合金はモル比または重量比にして50%以上の銀を含むことが好ましい。保護層の厚さは、例えば1~30μm程度であり、保護層を薄くする場合は、10μm以下でもよい。
【0040】
上記本発明の実施形態および実施例のように、安定化メッキ層が接続部を連続的に被覆するよう形成されている場合および連続的に被覆していない場合について、接続構造体の長手方向引張試験を行い、接続部の接続界面(境界面)にかかる負荷応力の差異をシミュレーションした。その結果、安定化メッキ層が接続部を連続的に被覆している場合、連続的に被覆していない場合に比べて、接続境界面の負荷応力([Pa])を最大で約1/3まで低減できることが分かった。従って、本発明の実施形態および実施例の構成によれば、安定化メッキ層が設けられていても接続構造体の接続抵抗を抑えることができる。
【0041】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。変更例としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。また、2以上の実施形態に用いられた構成要素を適宜組み合わせることも可能である。
【0042】
接続部を介して長手方向に2本以上の超電導線材(例えば、酸化物超電導線材)が接続された線材を得る場合、長手方向に離れて存在する各接続部がそれぞれ同一の構成でもよく、異なる構成が併用されてもよい。
【0043】
超電導線材を使用して超電導コイルを作製するには、例えば超電導線材を巻き枠の外周面に沿って必要な層数巻き付けてコイル形状の多層巻きコイルを構成した後、巻き付けた超電導線材を覆うようにエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させて、超電導線材を固定することができる。
【符号の説明】
【0044】
10,10A,20,20A,30,30A…接続線材、11,21,31…基板、12,22,32…超電導層、13,23,33…保護層、14,24,34…端面、40,40A,40B,40C,44,45…接続部、41…安定化メッキ層、42…突き合わせ部、43…半田層、50,50A,50B,50C…超電導線材の接続構造体