(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】抗αシヌクレイン抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230609BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230609BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230609BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230609BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230609BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230609BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230609BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230609BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230609BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230609BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230609BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230609BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2020532596
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2018084697
(87)【国際公開番号】W WO2019115674
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-30
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アダムズ、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ダウニー、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー、テレンス スワード
(72)【発明者】
【氏名】タイソン、ケリー ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】デ リヒテルベルデ、ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ライトウッド、ダニエル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】マクミラン、デイビッド ジェイムズ
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-509223(JP,A)
【文献】特開2016-145211(JP,A)
【文献】特表2013-525266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
αシヌクレインと結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
該抗体が、
a.i.配列番号1を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.i.配列番号4を含むCDR-H1、
ii.配列番号5を含むCDR-H2及び
iii.配列番号6を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、該エピトープが、任意選択で、A124及びG132を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
(a)αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレインの凝集を防止する、
(b)モノマーとしてのαシヌクレイン、及び繊維状のαシヌクレインと結合することが可能である、
(c)繊維状のαシヌクレインに対してよりも、モノマーαシヌクレインに対する少なくとも10倍高い解離定数(K
D)を特徴とする、モノマーαシヌクレインと比較して繊維状のαシヌクレインに対してより高い結合親和性を有する、
(d)300pM以下の繊維状のαシヌクレインに対する(K
D)を有する、ならびに/あるいは
(e)ベータシヌクレイン及び/又はガンマシヌクレインと結合しない、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体が、キメラ、又はヒト化抗体である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
(a)前記抗体が全長抗体であり、前記全長抗体は、任意にIgG1、IgG4又はIgG4Pから選択され、あるいは
(b)前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)
2、scFv又はdAbから選択される、請求項1から4までのいずれか一項に記載のその抗原結合断片。
【請求項6】
a.配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号31を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号17を含む軽鎖及び配列番号33を含む重鎖
を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドが、
a.i.配列番号16に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号16を含む、又は
iii.
配列番号16からなる、
軽鎖可変領域、
b.i.配列番号32に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号32を含む、又は
iii.
配列番号32からなる
重鎖可変領域、
c.i.配列番号18に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号18を含む、又は
iii.
配列番号18からなる、
軽鎖、
d.i.配列番号34に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号34を含む、又は
iii.
配列番号34からなる、
重鎖
をコードする、請求項7に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むクローニング又は発現ベクター。
【請求項10】
a.請求項7若しくは8に記載の1つ若しくは複数のポリヌクレオチド、又は
b.請求項9に記載の1つ若しくは複数の発現ベクター
を含む、宿主細胞。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の1つによる抗体又はその抗原結合断片の生産のための方法であって、請求項10に記載の宿主細胞を、抗体又はその抗原結合断片を生産するのに適した条件下で培養すること及び前記抗体又はその抗原結合断片を単離することを含む、方法。
【請求項12】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、または請求項12に記載の医薬組成物を含む、治療剤。
【請求項14】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、または請求項12に記載の医薬組成物を含む、1つ又は複数のシヌクレイノパチーの処置剤であり、
任意に、前記シヌクレイノパチは、パーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)から選択され、
好ましくは、前記シヌクレイノパチーがパーキンソン病である、処置剤。
【請求項15】
αシヌクレイノパチーの診断において、好ましくは、パーキンソン病の診断において使用するための、請求項1から6までのいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗αシヌクレイン抗体及びそれを使用してシヌクレイノパチーを処置する方法に関する。特に、本発明は、抗ヒトαシヌクレイン抗体及びパーキンソン病の処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
αシヌクレインは、根本的に異なる形態で存在する小さい可溶性の140アミノ酸長のタンパク質である。αシヌクレインは、主にシナプス前神経終末において見られ、その正確な機能は未知であるが、研究者は、複数の神経変性プロセスにおいて中心的な役割を果たすと考えている。
【0003】
過去15年かけて、αシヌクレインは、パーキンソン病のすべての形態の病態形成において重要な役割を果たすとわかった。αシヌクレイン遺伝子の遺伝子突然変異又は遺伝子増殖は、家族性早期発症パーキンソン病(PD)を引き起こす。遺伝子座多重化家族において、興味深いことに、病原性効果は遺伝子量に明確に依存している。遺伝子二重化は、通常の疾患経過を有するPDの比較的早期の発症形態(約47歳)を引き起こすが、遺伝子三重化は、極めて早期の発症年齢(約33歳)及び極めて迅速な疾患経過に関連する。パーキンソン病のすべての形態において、αシヌクレインは、この疾患の重要な病理学的特徴であるレビー小体の主な成分である。
【0004】
レビー小体病理は、疾患の経過の間に拡大し、αシヌクレインは、プリオン様タンパク質として作用し、これがミスフォールディングして、罹患から非罹患ニューロンに広がり得る毒性オリゴマー及び凝集物を形成すると提唱されている。(Olanow C.Wら Movements Disorders、第28巻、1号、2013年)。現在存在する療法は、疾患の広がりを止めることは不可能であり、運動ニューロン依存性活動の進行性喪失に関連する症状の処置を補助するのみである。2014年に、Tran H.T.ら(Tran H.T.ら、Cell Reports 第7巻、2054~2065頁、2014年)は、αシヌクレイン事前形成繊維を予め線条体内注射されたマウスへの、ミスフォールディングしたαシヌクレインに対するモノクローナル抗体の腹膜内投与は、レビー小体病理を低減し、黒質ドーパミン作動性ニューロン喪失を回復させ、運動機能障害を改善することを示した。したがって、PD及びその他のシヌクレインαシヌクレイノパチーにおいて治療効果を発揮し得る受動免疫療法が依然として必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の実施形態による抗αシヌクレイン抗体を提供することによって上記で特定された必要性に対処する。
【0006】
実施形態1:αシヌクレインと結合する抗体又はその抗原結合断片であって、抗体が、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.i.配列番号4を含むCDR-H1、
ii.配列番号45を含むCDR-H2及び
iii.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【0007】
実施形態2:αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープが、任意選択で、A124及びG132を含む、実施形態1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0008】
実施形態3:抗体又は抗原結合断片が、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレインの凝集を防止する、実施形態1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0009】
実施形態4:抗体又はその抗原結合断片が、モノマーとしてのαシヌクレイン、及び繊維状のαシヌクレインと結合することが可能である、実施形態1から3までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0010】
実施形態5:モノマーとしてのαシヌクレインと比較して、繊維状のαシヌクレインに対してより高い結合親和性を有し、繊維状のαシヌクレインに対してよりも、モノマーαシヌクレインに対して少なくとも10倍高い解離定数(KD)を特徴とする、実施形態1から4までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0011】
実施形態6:300pM以下の繊維状のαシヌクレインに対する(KD)を有する、実施形態1から5までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0012】
実施形態7:ベータシヌクレイン及び/又はガンマシヌクレインと結合しない、実施形態1から6までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0013】
実施形態8:抗体が、キメラ、ヒト化又はヒト抗体である、実施形態1から7までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0014】
実施形態9:抗体が全長抗体である、実施形態1から8までのいずれか1つに記載の抗体。
【0015】
実施形態10:全長抗体が、IgG1、IgG4又はIgG4Pから選択される、実施形態9に記載の抗体。
【0016】
実施形態11:抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dAb又はVHHから選択される、実施形態1から8までのいずれか1つに記載の抗体の抗原結合断片。
【0017】
実施形態12:a.配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号31を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17を含む軽鎖及び配列番号33を含む重鎖
を含む、実施形態1から11までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0018】
実施形態13:a.配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号23を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17を含む軽鎖及び配列番号25を含む重鎖
を含む、実施形態1から11までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0019】
実施形態14:a.配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号8を含むCDR-H2及び配列番号9を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号27若しくは35を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17を含む軽鎖及び配列番号29若しくは37を含む重鎖
を含む、実施形態1から11までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0020】
実施形態15:a.配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号19を含む軽鎖可変領域及び配列番号23若しくは31を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号21を含む軽鎖及び配列番号25若しくは33を含む重鎖
を含む、請求項1から11までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0021】
実施形態16:a.配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号8を含むCDR-H2及び配列番号9を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号19を含む軽鎖可変領域及び配列番号27若しくは35を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号21を含む軽鎖及び配列番号29若しくは37を含む重鎖
を含む、実施形態1から11までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0022】
実施形態17:a.αシヌクレインと結合することについて、実施形態1から16までのいずれか1つによる抗体若しくはその抗原結合断片と競合する、及び/又は
b.αシヌクレインと結合することについて、請求項1から16までのいずれか1つに記載の抗体若しくはその抗原結合断片を交差遮断する、若しくはそれによって交差遮断される、及び/又は
c.αシヌクレインと、請求項1から16までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片と同一のエピトープと結合する、及び/又は
d.配列番号23、配列番号31、配列番号27若しくは配列番号35による配列に対して少なくとも80%の同一性若しくは類似性を有する重鎖可変領域を含む、及び/又は
e.配列番号15若しくは配列番号19による配列に対して少なくとも80%の同一性若しくは類似性を有する軽鎖可変領域を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【0023】
実施形態18:実施形態1から16までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする単離ポリヌクレオチド。
【0024】
実施形態19:ポリヌクレオチドが、
a.i.配列番号16若しくは配列番号20に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号16若しくは20を含む、又は
iii.本質的に配列番号16若しくは配列番号20からなる、
軽鎖可変領域、
b.i.配列番号24若しくは配列番号28若しくは配列番号32若しくは配列番号36に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号24若しくは配列番号28若しくは配列番号32若しくは配列番号36を含む、又は
iii.本質的に配列番号24若しくは配列番号28若しくは配列番号32若しくは配列番号36からなる、
重鎖可変領域、
c.i.配列番号18若しくは配列番号22に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号18若しくは22を含む、又は
iii.本質的に配列番号18若しくは配列番号22からなる、
軽鎖、
d.i.配列番号26若しくは配列番号30若しくは配列番号34若しくは配列番号38に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号26若しくは配列番号30若しくは配列番号34若しくは配列番号38を含む、又は
iii.本質的に配列番号26若しくは配列番号30若しくは配列番号34若しくは配列番号38からなる、
重鎖
をコードする、実施形態18に記載の単離ポリヌクレオチド。
【0025】
実施形態20:実施形態18又は19に記載の1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むクローニング又は発現ベクター。
【0026】
実施形態21:a.実施形態18若しくは19に記載の1つ若しくは複数のポリヌクレオチド、又は
b.実施形態20に記載の1つ若しくは複数の発現ベクター
を含む、宿主細胞。
【0027】
実施形態22:実施形態1から17までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片の生産のための方法であって、実施形態21に記載の宿主細胞を、抗体又はその抗原結合断片を生産するのに適した条件下で培養し、抗体又はその抗原結合断片を単離することを含む、方法。
【0028】
実施形態23:実施形態1から17までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片と、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【0029】
実施形態24:治療において使用するための、実施形態1から17までのいずれか1つに記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は実施形態23に記載の医薬組成物。
【0030】
実施形態25:1つ又は複数のシヌクレイノパチーの処置において使用するための、実施形態1から17までのいずれか1つに記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は実施形態23に記載の医薬組成物。
【0031】
実施形態26:シヌクレイノパチーが、パーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)から選択される、実施形態25に記載の使用の抗体又はその抗原結合断片。
【0032】
実施形態27:シヌクレイノパチーがパーキンソン病である、実施形態26に記載の使用の抗体又はその抗原結合断片。
【0033】
実施形態28:患者においてシヌクレイノパチーを処置する方法であって、前記患者に、実施形態1から17までのいずれか1つに記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は実施形態23に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【0034】
実施形態29:シヌクレイノパチーが、パーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)から選択され、好ましくは、パーキンソン病である、実施形態28に記載の方法。
【0035】
実施形態30:αシヌクレイノパチーの診断において、好ましくは、パーキンソン病の診断において使用するための、実施形態1から16までのいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1(A)は、αシヌクレイン発現のサンプルのSDS-PAGEを示す図である。Hisタグを有するαシヌクレイン(1)、TEVプロテアーゼによるHisタグの除去後のαシヌクレイン(2)、TEVプロテアーゼ処置ヒトαシヌクレインでのSuperdex 75サイズ排除クロマトグラフィー(3)。タンパク質分子量マーカーSeeBluePlus2(Invitrogen)(M)。
図1(B)は、野生型のタグのないタンパク質としてのExpi293上清から精製されたヒトαシヌクレインのSDS-PAGE(4)を示す図である。タンパク質分子量マーカーSeeBluePlus2(Invitrogen)(M)。
【
図2A】蛍光のないモノマーの、及び540nmの最大蛍光を有する繊維のJC-1アッセイによる繊維解析を示す図である。
【
図2B】モノマーヒトαシヌクレインのランダムコイルスペクトラム(波長1646cm
-1)及び組換えヒトαシヌクレイン繊維におけるβシート間形成(波長1625~1630cm
-1)の典型例を示す図である。
【
図3】ELISA結合アッセイを示す図である。ウサギ6470IgG1の、組換えヒトαシヌクレインモノマー及び繊維並びにヒトαシヌクレインのペプチドPVDPDNEAYEとのELISA結合。
【
図4】
図4(A)は、ウサギ6470IgG1の、ヒトαシヌクレイン及びヒトベータ-シヌクレインとの結合を示すウエスタンブロットを示す図である。1.ヒトαシヌクレイン、2.ヒトαシヌクレイン(rPeptide)、3.ヒトβ-シヌクレイン(rPeptide);マーカー、MagicMark XP。
図4(B)は、ヒトαシヌクレイン上の6470の予測されるエピトープを示すNMR化学シフト変化を示す図である。
【
図5】6470IgGの、固定化αシヌクレインとの結合の阻害を示す図である(試験されたペプチド各々は、それぞれ、左側のバーがモノマーであり右側が繊維である)。
【
図6】ペプチド123~132との複合体における6470Fabの模式図である。
【
図7】ペプチド123~132との6470Fab重鎖接触の模式図である。ペプチド残基は、直接表示が付けられており、6470可変重鎖残基は、vH-残基番号の表示が付けられている。
【
図8】ペプチド123~132との6470Fab軽鎖の模式図である。ペプチド残基は、直接表示が付けられており、6470可変軽鎖残基は、vL-残基番号の表示が付けられている。
【
図9】軽鎖ヒト化を示す図である。6470は、ウサギ可変軽鎖配列についてである。6470gL3は、アクセプターフレームワークとしてIGKV1-16ヒト生殖系列を使用する6470可変軽鎖のヒト化グラフトについてである。CDRは、太字で/下線が引かれて示されている。ドナー残基は、太字/イタリック体で示されており、影が付けられている:Q48及びQ72。CDRL1における突然変異N33Rは、太字で/下線が引かれて示されており、影が付けられている。
【
図10】重鎖ヒト化を示す図である。6470は、ウサギ可変重鎖配列についてである。6470gH23及びgH36は、アクセプターフレームワークとしてIGHV3-23ヒト生殖系列を使用する抗体6470可変重鎖のヒト化グラフトについてである。CDRは、太字で/下線が引かれて示されている。ドナー残基は、太字/イタリック体で示されており、影が付けられている:V24、Y47、I48、G49、S73、V78及びR97。CDRH2及びCDRH3における突然変異S56N及びN102Hは、それぞれ、太字で/下線が引かれて示されており、影が付けられている。
【
図11】空気-液体界面でのストレスを示す図である。ボルテックス処理後3及び24時間での3種の事前調製されたバッファー中での6470抗体及び突然バリアント。
【
図12】免疫組織化学を示す図である。(A~E)PD及び(F~H)非PD患者から得た脳切片における免疫反応性。(A-C)PD患者の側頭皮質における、灰白質中の抗体6470標識されたニューロピル及びレビー小体様構造(白色矢印)。(D、E)PD患者の黒質中の抗体6470標識されたレビー小体様特徴(白色矢印)。(F、G)非PD側頭皮質組織における、同様に6470標識されたニューロピルが観察されたが、レビー小体様構造は観察されなかった。(H)非PD個体の黒質においてレビー小体様構造は観察されなかった、黒色矢印は、非特異的標識を示す。スケールバー=50μm。
【
図13】細胞ベース凝集アッセイ(HEK細胞)を示す図である。本発明の抗体は、αシヌクレイン繊維によって誘導されたαシヌクレイン凝集を阻害でき、5nM未満のIC
50を有していた。エラーバーは、測定の標準誤差を表す(SEM、N=3、n=9)。説明表記中、各抗体名の各々のFLは、「全長」を意味する。
【
図14】細胞ベース凝集アッセイ(一次ニューロン)を示す図である。本発明による代表的な抗体は、内因性レベルのαシヌクレインを発現するマウス一次ニューロン上のαシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を阻害でき、4nM未満のIC
50を有していた。エラーバーは、測定の標準誤差を表す(SEM、N=4、n=18)。
【
図15A】マウス又はヒトPFFに注射した、雄C57Bl/6J野生型マウス(A)の異なる脳領域におけるαシヌクレイノパチー病理(矢印)の免疫組織化学写真を示す図である。
【
図15B】マウス又はヒトPFFに注射した、SNCA-OVXマウス(B)の異なる脳領域におけるαシヌクレイノパチー病理(矢印)の免疫組織化学写真を示す図である。
【
図16】マウスPFFを注射したC57Bl/6J野生型マウスの異なる脳領域(A:大脳皮質、B:線条体、C:扁桃体及びD:黒質)におけるαシヌクレイノパチー病理の定量化を示す図である。
【
図17】αシヌクレイン抗体の薬物動態プロフィール:A.野生型マウスにおける6470抗体;B.カニクイザルにおける6470及び比較物抗体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示を、その個々の制限されない態様及び実施形態に関して、特定の図及び例を参照して以下で説明する。
【0038】
技術用語は、特に明記されない限り、その常識によって使用される。特定の意味が、ある用語に伝えられている場合、用語の定義は、その用語が使用されている文脈沿って与えられる。
【0039】
用語「含む(comprising)」が本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、それは他の要素を除外しない。本開示の目的のために、用語「からなる(consisting of)」は、用語「を含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると考えられる。
【0040】
例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」の単数名詞を指すときに不定冠詞又は定冠詞が使用されている場合、これは、別に特に明記されない限り、その名詞の複数形も含む。
【0041】
本明細書において、用語「処置」、「処置する」などは、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患又はその症状を完全に若しくは部分的に防ぐという点で予防的な場合もあり、及び/又は疾患及び/又は疾患に起因する有害作用の部分的若しくは完全治癒の点で治療的な場合もある。したがって、処置は、哺乳動物における、特に、ヒトにおける疾患の任意の処置も対象とし、(a)疾患にかかりやすい可能性があるが、まだそれを有していると診断されていない対象において疾患が生じることを防止すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発生を停止すること及び(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含む。
【0042】
「治療有効量」とは、疾患を処置するために哺乳動物又はその他の対象に投与される場合に、疾患に対してこのような処置をもたらすのに十分である抗αシヌクレイン抗体又はその抗原結合断片の量を指す。治療有効量は、抗αシヌクレイン抗体又はその抗原結合断片、疾患及びその重症度並びに処置される対象の年齢、体重などに応じて変わる。
【0043】
用語「単離された」とは、本明細書を通じて、抗体、抗原結合断片又はポリヌクレオチドは、場合によっては、天然に生じ得るものとは異なる物理的環境中に存在することを意味する。本発明は、αシヌクレインと結合する抗体又はその抗原結合断片を提供し、抗体は、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号45を含むCDR-H2及び
vi.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含む。
【0044】
配列番号44では、Xaaは、アスパラギン(Asn;N)又はアルギニン(Arg;R)である。独立に、配列番号45では、Xaaは、セリン(Ser;S)又はアスパラギン(Asn N)であり、配列番号46では、Xaaは、アスパラギン(Asn N)又はヒスチジン(His;H)である。
【0045】
一実施形態では、配列番号44及び46におけるXaaは、アスパラギンであり、配列番号45におけるXaaは、セリンである。
【0046】
一実施形態では、αシヌクレインと結合する抗体又はその抗原結合断片であって、抗体は、
a.i.配列番号1を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号5を含むCDR-H2及び
vi.配列番号6を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含む。
【0047】
アルファシヌクレイン(又はアルファsyn;α-シヌクレイン;α-syn又は任意のその他の既知同義語)とは、このタンパク質の一般名を指し、制限されるものではないが、選択的スプライシングバリアント、突然変異体及びその他の種(マウス、サルなど)に由来するαシヌクレインを含む。特に断りのない限り、ヒトαシヌクレインが意図される又は明確に記載される場合には、このようなαシヌクレインは、配列番号10に、又はUniprot P37840において与えられる配列を含む。
【0048】
用語「抗体」とは、本明細書において、一般に、無傷の(全)抗体、すなわち、2つの重鎖及び2つの軽鎖の要素を含む抗体に関する。抗体は、例えば、WO2007/024715において開示されるような分子DVD-Ig又はWO2011/030107に記載されるいわゆる(FabFv)2Fcのように、さらなる追加の結合ドメインを含み得る。したがって、本明細書において使用されるような抗体は、二価、三価又は四価全長抗体を含む。
【0049】
抗体の抗原結合断片は、一本鎖抗体(すなわち、全長重鎖及び軽鎖)、Fab、修飾Fab、Fab’、修飾Fab’、F(ab’)2、Fv、Fab-Fv、Fab-dsFv、単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、二価、三価又は四価抗体、Bis-scFv、ダイアボディー、トリボディー(tribodies)、トリアボディー(triabodies)、テトラボディー(tetrabodies)及び上記のもののいずれかのエピトープ結合断片を含む(例えば、Holliger及びHudson、2005年、Nature Biotech.第23巻(9号):1126~1136頁;Adair及びLawson、2005年、Drug Design Reviews-Online 第2巻(3号)、209~217頁を参照のこと)。これらの抗体断片を作製及び製造する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Vermaら、1998年、Journal of Immunological Methods、第216巻、165~181頁を参照のこと)。WO2009/040562においてFab-Fv形式が最初に開示され、そのジスルフィド安定化型、Fab-dsFvは、WO2010/035012において最初に開示された。本発明において使用するためのその他の抗体断片として、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されるFab及びFab’断片が挙げられる。多価抗体は、多重特異性、例えば、二重特異性を含み得る、又は単一特異性であり得る(例えば、WO92/22583及びWO05/113605を参照のこと)。後者の1つのこのような例として、WO92/22583に記載されるようなTri-Fab(又はTFM)がある。
【0050】
代替的な抗原結合断片は、2つのscFv又はdsscFvに連結されたFabを含み、各scFv又はdsscFvは、同一又は異なる標的と結合する(例えば、治療的標的と結合する1つのscFv又はdsscFvと、例えば、アルブミンへの結合によって半減期を増大する1つのscFv又はdsscFv)。このような抗体断片は、その全文で参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開WO2015/197772に、特に、抗体断片の考察に関して記載されている。
【0051】
通常のFab’分子は、重鎖が、可変領域VH、定常ドメインCH1及び天然又は修飾ヒンジ領域を含み、軽鎖が、可変領域VL及び定常ドメインCLを含む、重鎖及び軽鎖対を含む。本開示によるFab’の二量体は、F(ab’)2を形成し、これは、例えば、ヒンジを介する二量体化であり得る。
【0052】
本発明による抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインのエピトープと結合する。
【0053】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号45を含むCDR-H2及び
vi.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含み、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0054】
配列番号44では、Xaaは、アスパラギン(Asn;N)又はアルギニン(Arg;R)である。独立に、配列番号45では、Xaaは、セリン(Ser;S)又はアスパラギン(Asn N)であり、配列番号46では、Xaaは、アスパラギン(Asn N)又はヒスチジン(His;H)である。
【0055】
一実施形態では、配列番号44及び46におけるXaaは、アスパラギンであり、配列番号45におけるXaaは、セリンである。
【0056】
一実施形態では、αシヌクレインと結合する抗体又はその抗原結合断片は、
a.i.配列番号1を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号5を含むCDR-H2及び
vi.配列番号6を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含み、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0057】
本発明内で、用語「エピトープ」は、コンホメーション及び線形エピトープの両方について互換的に使用され、コンホメーションエピトープは、抗原のアミノ酸一次配列の不連続なセクションから構成され、線形エピトープは、連続アミノ酸によって形成された配列によって形成される。
【0058】
エピトープは、本発明によって提供される抗体の任意の1種と組み合わせて、当技術分野で公知の任意の適したエピトープマッピング法によって同定され得る。このような方法の例は、全長αシヌクレインに由来する変動する長さのペプチドを、本発明の抗体又はその断片との結合についてスクリーニングすることを含み、抗体によって認識されるエピトープの配列を含有する抗体と特異的に結合し得る最小の断片を同定する。αシヌクレインペプチドは、合成によって、又はαシヌクレインタンパク質のタンパク質分解性消化によって生産され得る。抗体と結合するペプチドは、例えば、質量分析によって同定され得る。別の例では、本発明の抗体によって結合されるエピトープを同定するためにNMR分光法又はX線結晶学が使用され得る。通常、エピトープ決定がX線結晶学によって実施される場合には、CDRから4Å内の抗原のアミノ酸残基が、エピトープのアミノ酸残基部分であると考えられる。ひとたび同定されると、エピトープは、本発明の抗体と結合する断片を調製するために役立つ場合があり、必要に応じて、同一エピトープと結合するさらなる抗体を得るための免疫原として使用される。
【0059】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片のエピトープは、配列番号10における、残基123~132を含むαシヌクレインペプチドを使用するX線結晶学によって決定される。
【0060】
好ましくは、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止する。
【0061】
この特定の文脈内で、用語「防止する」(及びその文法的バリエーション)は、用語「阻害する」と本明細書において互換的に使用され、本発明による抗体がαシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集に関して有する効果を示す。効果は、凝集を完全に若しくは部分的に防止するという点で予防的な場合もあり、又はすでに開始されている凝集を完全に若しくは部分的に低減する、すなわち、凝集がさらに進行するのを妨げる、又はさらなる凝集の出現を完全に若しくは部分的に低減する、又はすでに生じた凝集を完全に若しくは部分的に逆転させる。
【0062】
理論に捉われるものではないが、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
i)モノマー形態では、αシヌクレインがオリゴマー及び凝集を形成するのを防止し、及び/又は
ii)オリゴマー及び繊維形態では、αシヌクレインがニューロンからニューロンへと広がることを防止し、及び/又は
iii)オリゴマー及び/又は繊維形態では、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集、好ましくは、内因性αシヌクレイン凝集を防止する
と考えられる。
【0063】
用語「繊維」、「繊維形態」又は「繊維状の」は、αシヌクレインに関して本明細書において使用する場合、脳構造内及び脳構造間で広がる種を構成し得る、αシヌクレインオリゴマーを含むαシヌクレインの非モノマー形態を指すものとする。
【0064】
したがって、一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号45を含むCDR-H2及び
vi.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含み、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止する。好ましくは、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0065】
配列番号44では、Xaaは、アスパラギン(Asn;N)又はアルギニン(Arg;R)である。独立に、配列番号45では、Xaaは、セリン(Ser;S)又はアスパラギン(Asn N)であり、配列番号46では、Xaaは、アスパラギン(Asn N)又はヒスチジン(His;H)である。
【0066】
一実施形態では、配列番号44及び46におけるXaaは、アスパラギンであり、配列番号45におけるXaaは、セリンである。
【0067】
1つの好ましい実施形態では、αシヌクレインと結合する抗体又はその抗原結合断片は、
a.i.配列番号1を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号5を含むCDR-H2及び
i.配列番号6を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含み、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止する。好ましくは、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0068】
一実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、モノマーとしてのαシヌクレイン及び繊維状のαシヌクレインと結合することが可能である。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、モノマーとしてのαシヌクレインと比較して繊維状のαシヌクレインに対してより強力な結合親和性を有する。これは、繊維状のαシヌクレインに対してよりも、モノマーαシヌクレインに対して少なくとも10倍高い解離定数(KD)を特徴とする。
【0069】
一実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、モノマーαシヌクレインに対して15nM未満の解離定数(KD)を有する。別の実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、繊維状のαシヌクレインに対して10nM未満の解離定数(KD)を有する。1つの好ましい実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、繊維状のαシヌクレインに対して300pM未満の解離定数(KD)を有する。
【0070】
用語「KD」とは、本明細書において、Kd対Kaの比(すなわち、Kd/Ka)から得られる解離定数を指し、モル濃度(M)として表される。Kd及びKaは、それぞれ、特定の抗原-抗体(又はその抗原結合断片)相互作用の解離速度及び会合速度を指す。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定され得る。抗体のKDを決定する方法は、例えば、本明細書において実施例に記載されるようなBiacore(登録商標)システムなどの表面プラズモン共鳴を使用すること、単離された天然又は組換えαシヌクレイン、その適した融合タンパク質/ポリペプチド又はその繊維を使用することによってである。一例では、親和性は、本明細書において実施例に記載されるような組換えヒトαシヌクレインを使用して測定される。表面プラズモン共鳴については、標的分子は、固相上に固定化され、フローセルに沿って流れる移動相中のリガンドに対して曝露される。固定された標的とのリガンド結合が生じる場合には、局所屈折率が変化し、SPR角の変化につながり、これは、反射光の強度の変化を検出することによってリアルタイムでモニタリングされ得る。SPRシグナルの変化の速度を解析して、結合反応の会合及び解離相の見かけの速度定数を得ることができる。これらの値の比が、見かけの平衡定数(親和性)を与える(例えば、Wolffら、Cancer Res.第53巻:2560~65頁(1993年))を参照のこと。
【0071】
一実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、モノマーとしてのαシヌクレインと比較して、繊維状のαシヌクレインに対してより高い結合親和性(すなわち、より小さいKD)を有する。用語「親和性」とは、抗体又はその抗原結合断片とαシヌクレイン間の相互作用の強度を指す。
【0072】
一実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、繊維状のαシヌクレインによって誘導されるαシヌクレイン凝集の遮断について10nM未満のIC50を有し、好ましくは、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、繊維状のαシヌクレインによって誘導されるαシヌクレイン凝集の遮断について5nM未満のIC50を有する。細胞ベース凝集アッセイの例は、実施例において開示されている。
【0073】
用語IC50とは、本明細書において、特定の生物学的又は生化学的機能の阻害における、αシヌクレイン、好ましくは、繊維状のαシヌクレインによって誘導される本発明の凝集における、抗体などの物質の有効性の尺度である半最大阻害濃度を指す。IC50は、所与の生物学的プロセスを半分阻害するために必要とされる特定の物質の量を示す定量的尺度である。
【0074】
一実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、in-vitroアッセイにおいて、繊維状のαシヌクレインによって誘導されるαシヌクレイン凝集の遮断について10nM未満のIC50を有し、好ましくは、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、繊維状のαシヌクレインによって誘導されるαシヌクレイン凝集の遮断について5nM未満のIC50を有する。
【0075】
本発明による抗体又はその抗原結合断片は、ベータシヌクレイン及び/又はガンマシヌクレインと結合せず、αシヌクレインに特異的である。
【0076】
本明細書において使用される「特異的」とは、それが特異的であるとする抗原のみを認識する抗体又はそれが非特異的であるとする抗原(ガンマ及びベータシヌクレイン)との結合と比較して、それが特異的であるとする抗原(例えば、αシヌクレイン)に対して有意に高い結合親和性、例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10倍高い結合親和性を有する抗体を指すものとする。
【0077】
本発明による抗体は、当技術分野で公知の任意の適した方法を使用して得ることができる。融合タンパク質を含むαシヌクレインポリペプチド/タンパク質、ポリペプチドを(組換えによって、又は天然に)発現する細胞は、αシヌクレインを特異的に認識する抗体を生産するために使用され得る。ポリペプチドは、「成熟」ポリペプチド又はその生物学的に活性な断片若しくは誘導体であり得る。
【0078】
一実施形態では、ポリペプチド(すなわち、抗原)は、好ましくは、以下の実施例に記載されるように生産されたヒトαシヌクレインモノマー又はその断片である。
【0079】
宿主に免疫を与えるために使用されるポリペプチドは、発現系を含む遺伝的に操作された宿主細胞から当技術分野で周知のプロセスによって調製され得る、又はそれらは天然の生物学的供給源から回収され得る。本出願において、用語「ポリペプチド」は、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を含む。これらは、特に断りのない限り互換的に使用される。αシヌクレインポリペプチド又はその断片は、いくつかの例では、例えば、親和性タグ又は同様のものに融合された融合タンパク質などのより大きなタンパク質の一部であり得る。
【0080】
αシヌクレインポリペプチドに対して生成した抗体を得ることができ、ここで、周知の、日常的なプロトコールを使用して、動物、好ましくは、非ヒト動物にポリペプチドを投与することによる動物の免疫処置が必要である(例えば、Handbook of Experimental Immunology、D. M. Weir (編)、第4巻、Blackwell Scientific Publishers、Oxford、England、1986年を参照のこと)。ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ又はブタなどの多数の温血動物が、免疫化され得る。しかし、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが、全般的に最も適している。
【0081】
モノクローナル抗体は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein、1975年、Nature、第256巻:495~497頁)、トリオーマ(trioma)技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、1983年、Immunology Today、第4巻:72頁)及びEBVハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、77~96頁、Alan R Liss、Inc.、1985年)によって調製され得る。
【0082】
本発明において使用するための抗体はまた、例えば、Babcook,J.ら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第93巻(15号):7843~7848l、WO92/02551、WO2004/051268及びWO2004/106377に記載された方法によって特異的抗体の生産のために選択された単一リンパ球から作製された免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングすること及び発現させることによる、単一リンパ球抗体法を使用して作製され得る。
【0083】
抗体のスクリーニングは、αシヌクレインとの結合を測定するアッセイ及び/又は抗体若しくはその断片の存在下で繊維を形成するαシヌクレインの阻害を測定するアッセイを使用して実施され得る。
【0084】
本発明による抗体又はその抗原結合断片は、重鎖由来の3つ及び軽鎖由来の3つの相補性決定領域(CDR)を含む。一般に、CDRは、フレームワーク中にあり、一緒に可変領域を形成する。慣例により、抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域中のCDRは、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と呼ばれ、軽鎖可変領域中では、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3と呼ばれる。それらは、各鎖のN末端からC末端の方向に順次番号付けされる。
【0085】
CDRは、Kabatらによって考案されたシステムによって慣習的に番号付けられる。このシステムは、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、NIH、USA、Kabatら、1987年(本明細書において以下、「Kabatら(前掲)」)に示されている。この番号付けシステムは、別に示される場合を除いて、本明細書において使用される。
【0086】
Kabat残基指定は、アミノ酸残基の線形番号付けと常に直接的に対応するわけではない。実際の線形アミノ酸配列は、厳密なKabat番号付けよりも、少ない又はさらなるアミノ酸を含有し得、これらは、フレームワークか相補性決定領域(CDR)かに拘わらず、基本の可変ドメイン構造の構造成分の短縮化又はそれへの挿入に対応する。残基の正確なKabat番号付けは、「標準」Kabat番号付けされた配列との、抗体の配列中の相同性の残基のアラインメントによって所与の抗体について決定され得る。
【0087】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによると残基31~35(CDR-H1)、残基50~65(CDR-H2)及び残基95~102(CDR-H3)に位置する。しかし、Chothia(Chothia,C及びLesk,A.M.J.Mol. iol.、第196巻、901~917頁(1987年))によると、CDR-H1のループ等価物は、残基26から残基32に広がる。したがって、別に示さない限り、本明細書において使用されるような「CDR-H1」は、Kabat番号付けシステムとChothiaのトポロジカルループ定義の組合せによって記載されるような残基26~35を指すものとする。
【0088】
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによると残基24~34(CDR-L1)、残基50~56(CDR-L2)及び残基89~97(CDR-L3)に位置する。
【0089】
1つの好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域を含む。
【0090】
或いは、抗体又は抗原結合断片は、配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号8を含むCDR-H2及び配列番号9を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域を含む。
【0091】
別の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域を含む。
【0092】
さらに別の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号8を含むCDR-H2及び配列番号9を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域を含む。
【0093】
一実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、抗体が産生された動物のフレームワーク領域を含み得る。例えば、ウサギにおいて抗体が産生された場合には、配列番号11による(ヌクレオチド配列は、配列番号12に示される)軽鎖可変領域及び配列番号13による(ヌクレオチド配列は、配列番号14に示される)重鎖可変領域を含む抗体などのように、上記で定義されたようなCDRと、ウサギ抗体のフレームワーク領域とを含むであろう。
【0094】
一実施形態では、抗体は、キメラ、ヒト化又はヒト抗体又はその断片であり得る。
【0095】
キメラ抗体は、組換えDNA法を使用して通常生産される。DNAは、ヒトL及びH鎖のコード配列を、対応する非ヒト(例えば、マウス)H及びL定常領域と置換することによって修飾され得る(Morrison;PNAS 第81巻、6851頁(1984年))。
【0096】
ヒト抗体は、抗体の可変領域又は全長鎖が、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られる場合に、特定の生殖系列配列「の産物」である、又は「に由来する」重鎖若しくは軽鎖可変領域又は全長重鎖若しくは軽鎖を含む。このような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保持するトランスジェニックマウスを、対象の抗原を用いて免疫処置すること又は対象の抗原を用いて、ファージ上にディスプレイされるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることを含む。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列「の産物」である、又は「に由来する」ヒト抗体又はその断片は、ヒト抗体のアミノ酸配列を、ヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較すること及びヒト抗体の配列に対して配列が最も近い(すなわち、最大同一性%)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択することなどによって同定され得る。特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列「の産物」である、又は「に由来する」ヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞突然変異又は部位指定突然変異の意図的な導入のために、生殖系列配列と比較してアミノ酸の相違を含有し得る。しかし、選択されたヒト抗体は、通常、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対してアミノ酸配列で少なくとも90%同一であり、その他の種(例えば、マウス生殖系列配列)の生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列と比較した場合に、ヒト抗体をヒトであると同定するアミノ酸残基を含有する。特定の場合には、ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列で少なくとも60%、70%、80%、90%又は少なくとも95%又はさらに少なくとも96%、97%、98%又は99%同一であり得る。通常、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列から10個以下のアミノ酸の相違を示すであろう。特定の場合には、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列から5個以下、又はさらに4、3、2若しくは1個以下のアミノ酸の相違を示し得る。
【0097】
ヒト抗体は、当業者に公知のいくつかの方法によって生産され得る。ヒト抗体は、ヒト骨髄腫又はマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞系を使用するハイブリドーマ法によって作製され得る(Kozbor,J Immunol;(1984)第133巻:3001頁;Brodeur、Monoclonal Isolated Antibody Production Techniques and Applications、51~63頁、Marcel Dekker Inc、1987年)。代替法として、両方ともヒト可変領域レパートリーを利用するファージライブラリー又はトランスジェニックマウスの使用が挙げられる(Winter G;(1994年) Annu Rev Immunol 第12巻:433~455頁、Green LL、(1999年)J Immunol Methods 第231巻:1 1~23)。
【0098】
本発明の1つの好ましい実施形態では、本開示による抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化されている。
【0099】
したがって、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号45を含むCDR-H2及び
vi.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含み、
抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化されている。好ましくは、ヒト化抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、より好ましくは、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0100】
配列番号44では、Xaaは、アスパラギン(Asn;N)又はアルギニン(Arg;R)である。独立に、配列番号45では、Xaaは、セリン(Ser;S)又はアスパラギン(Asn N)であり、配列番号46では、Xaaは、アスパラギン(Asn N)又はヒスチジン(His;H)である。
【0101】
一実施形態では、ヒト化抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号45を含むCDR-H2及び
vi.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含み、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、配列番号44では、Xaaはアスパラギン(Asn;N)であり、配列番号45では、Xaaはセリン(Ser;S)であり、配列番号46では、Xaaは、アスパラギン(Asn N)である。
【0102】
1つの好ましい実施形態では、ヒト化抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.i.配列番号1を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号5を含むCDR-H2及び
vi.配列番号6を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含み、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合する。
【0103】
本明細書において、用語「ヒト化」抗体又はその抗原結合断片とは、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワーク中にグラフトされた、ドナー抗体(例えば、マウス又はウサギモノクローナル抗体などの非ヒト抗体)由来の1つ又は複数のCDR(必要に応じて1つ又は複数の修飾されたCDRを含む)を含有する抗体又はその抗原結合断片を指す。概説については、Vaughanら、Nature Biotechnology、第16巻、535~539頁、1998年を参照のこと。一実施形態では、全CDRが移されるのではなく、上記で本明細書において記載されるCDRのうちいずれか1つに由来する特異性決定残基のうち1つ又は複数のみが、ヒト抗体フレームワークに移される(例えば、Kashmiriら、2005年、Methods、第36巻、25~34頁)。一実施形態では、上記で本明細書において記載されるCDRのうち1つ又は複数に由来する特異性決定残基のみが、ヒト抗体フレームワークに移される。別の実施形態では、上で本明細書において記載されるCDRのうち各々に由来する特異性決定残基のみが、ヒト抗体フレームワークに移される。
【0104】
CDRがグラフトされる場合には、任意の適当なアクセプター可変領域フレームワーク配列が、CDRが由来するドナー抗体のクラス/種類を考慮して使用され得、これには、マウス、霊長類及びヒトフレームワーク領域が含まれる。
【0105】
適宜、本発明によるヒト化抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域並びに本明細書において具体的に提供されるCDRのうち1つ又は複数を含む可変ドメインを有する。したがって、一実施形態では、αシヌクレイン、好ましくは、ヒトαシヌクレインと結合し、可変ドメインが、ヒトアクセプターフレームワーク領域及び非ヒトドナーCDRを含む、遮断ヒト化抗体が提供される。
【0106】
本発明において使用され得るヒトフレームワークの例として、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOMがある(Kabatら、前掲)。例えば、重鎖について、KOL及びNEWMが使用されてもよく、軽鎖について、REIが使用されてもよく、重鎖及び軽鎖両方について、EU、LAY及びPOMが使用されてもよい。或いは、ヒト生殖系列配列が使用されてもよく、これらは、http://www.imgt.org/で入手可能である。
【0107】
本発明によるヒト化抗体又はその抗原結合断片では、アクセプター重鎖及び軽鎖は、同一抗体に由来することを必ずしも必要とせず、必要に応じて、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含み得る。
【0108】
本発明によるヒト化抗体又はその抗原結合断片の軽鎖について、適したフレームワーク領域は、配列番号39を有し、ヌクレオチド配列が、配列番号40に示されるヒト生殖系列IGKV1-16 JK4に由来する。
【0109】
本発明によるヒト化抗体又はその抗原結合断片の重鎖について、適したフレームワーク領域は、配列番号41に示されるような配列を有し、ヌクレオチド配列が、配列番号42に示されるヒト生殖系列IGHV3-23 JH4に由来する。
【0110】
したがって、一実施形態では、
- CDR-L1に対して配列番号1又は配列番号7で与えられる配列、CDR-L2に対して配列番号2で与えられる配列及びCDR-L3に対して配列番号3で与えられる配列を含み、軽鎖フレームワーク領域が、ヒト生殖系列IGKV1-16 JK4に由来し、
- CDR-H1に対して配列番号4で与えられる配列、CDR-H2に対して配列番号5又は配列番号8で与えられる配列及びCDR-H3に対して配列番号6又は配列番号9で与えられる配列を含み、重鎖フレームワーク領域が、ヒト生殖系列IGHV3-23 JH4に由来する、
ヒト化抗体又はその抗原結合断片が提供される。
【0111】
本発明によるヒト化抗体又はその抗原結合断片では、フレームワーク領域は、アクセプター抗体のものと全く同一の配列を有さない場合がある。例えば、そのアクセプター鎖のクラス又は種類にとって、普通ではない残基は、より頻繁に生じる残基に変更されてもよい。或いは、アクセプターフレームワーク領域中の選択された残基が、それらが、ドナー抗体において同一位置に見られる残基に対応するように変更されてもよい(Reichmannら、1998年、Nature、第332巻、323~324頁を参照のこと)。このような変更は、ドナー抗体の親和性を回復するのに必要な最小に維持されなければならない。変更される必要があり得るアクセプターフレームワーク領域中の残基を選択するプロトコールは、WO91/09967に示されている。
【0112】
したがって、一実施形態では、フレームワーク中の1、2、3、4、5、6、7又は8個の残基は、代替アミノ酸残基と置き換えられる。
【0113】
したがって、一実施形態では、少なくとも、軽鎖(配列番号15又は19に関して)の可変ドメインの位置48及び72の各々の残基がドナー残基である、ヒト化抗体又はその抗原結合断片が提供される(例えば、配列番号15、17、19及び21で与えられる配列を参照のこと)。好ましくは、軽鎖可変ドメインの残基48はグルタミンであり、及び/又は軽鎖可変ドメインの残基72は、グルタミンである。
【0114】
より好ましくは、本発明によるヒト化抗体又はその抗原結合断片のヒト化軽鎖可変領域において、残基48及び72は、両方ともグルタミンである。
【0115】
別の実施形態では、少なくとも、重鎖の可変ドメインの位置24、47、48、49、73及び97(配列番号31又は35に関して)又は24、47、48、49、78及び97(配列番号23及び27に関して)の各々の残基がドナー残基である、ヒト化抗体又はその抗原結合断片が提供される(例えば、配列番号23、25、27、29、31、33、35及び37で与えられる配列を参照のこと)。
【0116】
好ましくは、重鎖可変ドメインの残基24はバリンであり、及び/又は重鎖可変ドメインの残基47はチロシンであり、及び/又は重鎖可変ドメインの残基48はイソロイシンであり、及び/又は重鎖可変ドメインの残基49はグリシンであり、及び/又は重鎖可変ドメインの残基97はアルギニンであり、及び/又は重鎖可変ドメインの残基73はセリンであり、及び/又は重鎖可変ドメインの残基78はバリンである。
【0117】
好ましくは、本発明によるヒト化重鎖可変領域において、残基24はバリンであり、残基47はチロシンであり、残基48はイソロイシンであり、残基49はグリシンであり、残基73はセリンであり、残基97はアルギニンである。また、好ましくは、本発明によるヒト化抗体又はその抗原結合断片のヒト化重鎖可変領域において、残基24はバリンであり、残基47はチロシンであり、残基48はイソロイシンであり、残基49はグリシンであり、残基78はバリンであり、残基97はアルギニンである。
【0118】
本発明の1つの好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号31を含む重鎖可変領域を含む。
【0119】
別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
- 配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号23を含む重鎖可変領域、又は
- 配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号27若しくは35を含む重鎖可変領域、又は
- 配列番号19を含む軽鎖可変領域及び配列番号23若しくは31を含む重鎖可変領域、又は
- 配列番号19を含む軽鎖可変領域及び配列番号27若しくは35を含む重鎖可変領域
を含む。
【0120】
一実施形態では、本発明は、本明細書において開示される配列に対して80%(例えば、関連配列、例えば、可変ドメイン配列、CDR配列又はCDRを除く可変ドメイン配列の一部又は全体に対して85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)類似している又は同一である配列を含む抗体又はその抗原結合断片を提供する。一実施形態では、関連配列は、配列番号15である。一実施形態では、関連配列は、配列番号23又は配列番号31である。
【0121】
一実施形態では、本発明は、軽鎖及び/又は重鎖を含むヒトαシヌクレインと結合する抗体又はその抗原結合断片であって、軽鎖の可変ドメインは、配列番号15又は配列番号19で与えられる配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性又は類似性を有する配列を含み、及び/又は重鎖の可変ドメインは、配列番号31、配列番号23、配列番号27又は配列番号35で与えられる配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性又は類似性を有する配列を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0122】
一実施形態では、本発明は、ヒトαシヌクレインと結合する抗体又はその抗原結合断片であって、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号15で与えられる配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似している又は同一である軽鎖可変ドメインを有するが、CDR-L1に対して配列番号1又は配列番号7で与えられる配列、CDR-L2に対して配列番号2で与えられる配列及びCDR-L3に対して配列番号3で与えられる配列を有する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0123】
一実施形態では、本発明は、ヒトαシヌクレインと結合する抗体又はその抗原結合断片であって、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号31で与えられる配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似している又は同一である重鎖可変ドメインを有するが、CDR-H1に対して配列番号4で与えられる配列、CDR-H2に対して配列番号5又は配列番号8で与えられる配列及びCDR-H3に対して配列番号6又は配列番号9で与えられる配列を有する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0124】
「同一性」とは、本明細書において、アラインされた配列中の任意の特定の位置で、配列間でアミノ酸残基が同一であることを示す。「類似性」とは、本明細書において、アラインされた配列中の任意の特定の位置で、配列間でアミノ酸残基が類似の種類であることを示す。例えば、ロイシンは、イソロイシン又はバリンと置換され得る。互いに置換され得ることが多いその他のアミノ酸として、それだけには限らないが、
- フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸)、
- リシン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸)、
- アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸)、
- アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸)、並びに
- システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)
が挙げられる。
【0125】
同一性及び類似性の程度は容易に算出され得る(Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、New York、1988年;Biocomputing.Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993年;Computer Analysis of Sequence Data、Part 1、Griffin,A.M.及びGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994年;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje, G.、Academic Press、1987年、Sequence Analysis Primer、Gribskov,M.及びDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991年、NCBIから入手可能なBLAST(商標)ソフトウェア(Altschul、S.F.ら、1990年、J.Mol.Biol. 第215巻:403~410頁;Gish,W.& States,D.J. 1993年、Nature Genet.第3巻:266~272頁.Madden,T.L.ら、1996年、Meth.Enzymol.第266巻:131~141頁;Altschul,S.F.ら、1997年、Nucleic Acids Res.第25巻:3389~3402頁;Zhang,J.& Madden,、T.L.1997年、Genome Res.第7巻:649~656頁)。
【0126】
一実施形態では、本発明による抗原結合断片は、それだけには限らないが、Fab、修飾Fab、Fab’、修飾Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、dsscFv、二価、三価又は四価抗体、Bis-scFv、ダイアボディー、トリアボディー(triabodies)、テトラボディー(tetrabodies)及び上記のもののいずれかのエピトープ結合断片であり得る(例えば、Holliger及びHudson、2005年、Nature Biotech.第23巻(9号):1126~1136頁; Adair及びLawson、2005年、Drug Design Reviews-Online 第2巻(3号)、209~217頁を参照のこと)。これらの抗体断片を作製及び製造する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Vermaら、1998年、Journal of Immunological Methods、第216巻、165~181頁を参照のこと)。本発明において使用するためのその他の抗体断片として、WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されるFab及びFab’断片が挙げられる。多価抗体は、多重特異性、例えば、二重特異性を含み得る、又は単一特異性であり得る(例えばWO92/22853、WO05/113605、WO2009/040562及びWO2010/035012を参照のこと)。
【0127】
代替的な抗原結合断片は、2つのscFv又はdsscFvに連結されたFabを含み、各scFv又はdsscFvは、同一又は異なる標的と結合する(例えば、治療的標的と結合する1つのscFv又はdsscFv及び結合によって半減期を増大する1つのscFv又はdsscFv、例えば、アルブミン)。このような抗体断片は、その全文で参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開WO2015/197772に、特に、抗体断片の考察に関して記載されている。
【0128】
別の実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、例えば、すべて参照により本明細書に組み込まれるWO2009/040562、WO2010035012、WO2011/030107、WO2011/061492及びWO2011/086091に記載されるような、例えば、Fab又はFab’断片として融合された本発明の抗原結合断片とそれに直接的又は間接的に連結された1つ又は2つの単一ドメイン抗体(dAb)とを含むαシヌクレイン結合融合タンパク質の一部である。一実施形態では、融合タンパク質は、例えば、任意選択で、ジスルフィド結合によって連結された可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)対として2つのドメイン抗体を含む。
【0129】
一実施形態では、融合タンパク質のFab又はFab’要素は、単一ドメイン抗体(単数又は複数)に対して同一又は同様の特異性を有する。一実施形態では、Fab又はFab’は、単一ドメイン抗体(単数又は複数)に対して異なる特異性を有する、すなわち、融合タンパク質は、多価である。一実施形態では、本発明による多価融合タンパク質は、アルブミン結合部位を有し、例えば、その中のVH/VL対は、アルブミン結合部位を提供する。
【0130】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、必要な場合には、抗体分子の提案された機能、特に、必要とされ得るエフェクター機能を考慮して選択され得る。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであり得る。特に、ヒトIgG定常領域ドメインが、抗体分子が治療的使用のために意図され、抗体エフェクター機能が必要とされる場合には、特に、IgG1及びIgG3アイソタイプのものが使用され得る。或いは、抗体分子が治療目的のために意図され、抗体エフェクター機能が必要ではない場合には、IgG2及びIgG4アイソタイプが使用され得る。これらの定常領域ドメインの配列バリアントも使用され得ることは認識されよう。例えば、Angalら(Angalら、Molecular Immunology、1993年、第30巻(1号)、105~108頁)に記載されるような、本明細書においてIgG4Pと呼ばれる、位置241のセリンがプロリンに変更されているIgG4分子が使用されてもよい。
【0131】
一実施形態では、抗体は、好ましくは、IgG1及びIgG4又はIgG4Pから選択される全長抗体である。
【0132】
したがって、本発明は、αシヌクレインと結合し、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号45を含むCDR-H2及び
vi.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含む全長ヒト化抗体を提供し、
ヒト化抗体は、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、好ましくは、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは任意選択で、A124及びG132を含み、抗体は、IgG4Pアイソフォームである。
【0133】
配列番号44では、Xaaは、アスパラギン(Asn;N)又はアルギニン(Arg;R)である。独立に、配列番号45では、Xaaは、セリン(Ser;S)又はアスパラギン(Asn N)であり、配列番号46では、Xaaは、アスパラギン(Asn N)又はヒスチジン(His;H)である。
【0134】
1つの好ましい実施形態では、αシヌクレインと結合する全長ヒト化抗体は、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号45を含むCDR-H2及び
vi.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含み、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、好ましくは、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含み、抗体は、IgG4Pアイソフォームであり、配列番号44では、Xaaはアスパラギン(Asn;N)であり、配列番号45では、Xaaはセリン(Ser;S)であり、配列番号46では、Xaaはアスパラギン(Asn N)である。
【0135】
最も好ましい実施形態では、αシヌクレインと結合する全長ヒト化抗体は、
a.i.配列番号1を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号5を含むCDR-H2及び
vi.配列番号6を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含み、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、好ましくは、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0136】
当業者ならば、抗体はさまざまな翻訳後修飾を受ける可能性があるということは理解されるであろう。これらの修飾の種類及び程度は、抗体を発現させるために使用される宿主細胞系並びに培養条件に応じて変わることが多い。このような修飾は、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化及びアスパラギン脱アミド化における変動を含み得る。頻繁な修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端塩基性残基(リシン又はアルギニンなど)の喪失である(Harris,RJ.Journal of Chromatograhy 第705巻:129~134頁、1995年に記載されるような)。したがって、抗体重鎖のC末端リシンが存在しない場合もある。
【0137】
一実施形態では、翻訳後修飾の際に抗体からC末端アミノ酸が切断される。
【0138】
一実施形態では、翻訳後修飾の際に抗体からN末端アミノ酸が切断される。
【0139】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号15による軽鎖可変領域及び配列番号23又は配列番号31から選択される重鎖可変領域を含む。例えば、抗体は、配列番号15による軽鎖可変領域及び配列番号23又は配列番号31から選択される重鎖可変領域を含む全長IgG4抗体であり得る。別の実施形態では、抗体は、配列番号17による軽鎖及び配列番号25又は配列番号33による重鎖を含む全長IgG4抗体である。さらに別の実施形態では、抗原結合断片は、配列番号15による軽鎖可変領域及び配列番号23又は配列番号31から選択される重鎖可変領域を含むFab’である。
【0140】
別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号15による軽鎖可変領域及び配列番号27又は配列番号35から選択される重鎖可変領域を含む。例えば、抗体は、配列番号15による軽鎖可変領域及び配列番号27又は配列番号35から選択される重鎖可変領域を含む全長IgG4抗体である。別の実施形態では、抗体は、配列番号17による軽鎖及び配列番号29又は配列番号37による重鎖を含む全長IgG4抗体である。さらに別の実施形態では、抗原結合断片は、配列番号15による軽鎖可変領域及び配列番号27又は配列番号35から選択される重鎖可変領域を含むFab’である。
【0141】
別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号19による軽鎖可変領域及び配列番号27又は配列番号35から選択される重鎖可変領域を含む。例えば、抗体は、配列番号19による軽鎖可変領域及び配列番号27又は配列番号35から選択される重鎖可変領域を含む全長IgG4抗体である。別の実施形態では、抗体は、配列番号21による軽鎖及び配列番号29又は配列番号37による重鎖を含む全長IgG4抗体である。さらに別の実施形態では、抗原結合断片は、配列番号19による軽鎖可変領域及び配列番号27又は配列番号35から選択される重鎖可変領域を含むFab’である。
【0142】
別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号19による軽鎖可変領域及び配列番号23又は配列番号31から選択される重鎖可変領域を含む。例えば、抗体は、配列番号19による軽鎖可変領域及び配列番号23又は配列番号31から選択される重鎖可変領域を含む全長IgG4抗体である。別の実施形態では、抗体は、配列番号21による軽鎖及び配列番号25又は配列番号33による重鎖を含む全長IgG4抗体である。さらに別の実施形態では、抗原結合断片は、配列番号21による軽鎖可変領域及び配列番号25又は配列番号33から選択される重鎖可変領域を含むFab’である。
【0143】
好ましい実施形態では、抗体は、αシヌクレインと結合し、配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号31を含む重鎖可変を含む全長IgG4抗体である。より好ましくは、抗体は、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、さらにより好ましくは、抗体は、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは任意選択で、A124及びG132を含む。
【0144】
別の好ましい実施形態では、抗体は、αシヌクレインと結合し、配列番号17を含む軽鎖及び配列番号33を含む重鎖を含む全長IgG4抗体である。より好ましくは、抗体は、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、さらにより好ましくは、抗体は、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0145】
さらに、本発明はまた、αシヌクレインと結合することについて、本発明による抗体又はその抗原結合断片と競合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0146】
したがって、本発明は、αシヌクレインと結合することについて、本発明の抗体又はその抗原結合断片、特に、配列番号23、配列番号31、配列番号27又は配列番号35を含む重鎖可変領域及び配列番号15又は配列番号19を含む軽鎖可変領域を含む抗体又はその抗原結合断片を交差遮断する、或いはそれによって交差遮断されることによって、本発明による抗体又は抗原結合断片と競合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0147】
別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、本発明による抗体又はその抗原結合断片と同一エピトープでαシヌクレインと結合することについて競合する、特に、配列番号23、配列番号31、配列番号27又は配列番号35を含む重鎖可変領域及び配列番号15又は配列番号19を含む軽鎖可変領域を有する抗体又はその抗原結合断片と、αシヌクレインと、配列番号10における、少なくとも残基M127、P128、S129、E130及びE131、好ましくは、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合することについて競合する。
【0148】
一実施形態では、このような抗体又はその抗原結合断片は、本発明による抗体又はその断片と競合し、配列番号23、配列番号31、配列番号27若しくは配列番号35による配列に対して少なくとも80%の同一性若しくは類似性を有する重鎖可変領域を有し、及び/又は配列番号15若しくは配列番号19による配列に対して少なくとも80%の同一性若しくは類似性を有する軽鎖可変領域を有する。
【0149】
競合抗体は、当技術分野の任意の適した方法を使用して、例えば、競合ELISA又はBIAcoreアッセイを使用することによって同定されることができ、このアッセイでは、交差遮断抗体のヒトαシヌクレインとの結合が、本発明の抗体の結合を防止する、又はその逆である。このような競合アッセイは、単離された天然又は組換えαシヌクレイン又は適した融合タンパク質/ポリペプチドを使用し得る。一例では、競合は、組換えヒトαシヌクレイン(配列番号10)を使用して測定される。一例では、N末端又はC末端にタグが付けられた組換えヒトαシヌクレイン(例えば、TEV認識部位を有する6×Hisタグ融合物)が、本明細書における実施例のとおりに使用される。別の例では、競合は、組換えヒトαシヌクレイン繊維を使用して測定される。
【0150】
一実施形態では、競合抗体は、完全ヒト又はヒト化抗体である。一実施形態では、競合抗体は、100pM以下、好ましくは、50pM以下のヒトαシヌクレインに対する親和性を有する。
【0151】
抗体又は断片などの生体分子は、酸性及び/又は塩基性官能基を含有し、それによって、分子に正味の正電荷又は負電荷を与える。全体的な「観察される」電荷の量は、実体の絶対アミノ酸配列、3D構造中の電荷を有する基の局所環境及び分子の環境条件に応じて変わる。等電点(pI)は、その表面に到達できる特定の分子又は溶媒が、正味の電荷を保持しないpHである。一例では、本発明による抗αシヌクレイン抗体又はその抗原結合断片は、適当な等電点を有するように遺伝子操作され得る。これは、より頑強な特性、特に、適した溶解度及び/又は安定性プロフィール及び/又は改善された精製特徴を有する抗体及び/又は抗原断片につながり得る。
【0152】
したがって、一態様では、本発明は、αシヌクレインと結合し、最初に同定された抗体のものとは異なる等電点を有するように遺伝子操作されているヒト化抗体又はその抗原結合断片を提供する。抗体は、例えば、アミノ酸残基を置き換えること、例えば、酸性アミノ酸残基を、1つ又は複数の塩基性アミノ酸残基と置き換えることによって遺伝子操作されてもよい。或いは、塩基性アミノ酸残基が導入されてもよく、又は酸性アミノ酸残基が除去される場合もある。或いは、分子が、許容されがたい高いpI値を有する場合には、必要に応じてpIを低下させるために酸性残基が導入されてもよい。pIを操作する場合には、抗体又は断片の望ましい活性を保持するように注意されなければならないことは重要である。したがって、一実施形態では、遺伝子操作された抗体又はその抗原結合断片は、「非修飾」抗体又は断片と同一の又は実質的に同一の活性を有する。
【0153】
抗体又は断片の等電点を予測するために、**ExPASY http://www.expasy.ch/tools/pi_tool.html及びhttp://www.iut-arles.up.univ-mrs.fr/w3bb/d_abim/compo-p.htmlなどのプログラムが使用されてもよい。
【0154】
本発明によって提供される抗体の親和性は、当技術分野で公知の任意の適した方法を使用して変更され得ることが認められよう。したがって、本発明はまた、αシヌクレイン、特に、ヒトαシヌクレインに対して親和性の改善された本発明の抗体分子のバリアントに関する。このようなバリアントは、CDRを突然変異させること(Yangら、J.Mol.Biol.、第254巻、392~403頁、1995年)、鎖シャッフリング(Marksら、Bio/Technology、第10巻、779~783頁、1992年)、大腸菌(E.coli)の変異誘発物株の使用(Lowら、J.Mol.Biol.、第250巻、359~368頁、1996年)、DNAシャッフリング(Pattenら、Curr.Opin.Biotechnol.、第8巻、724~733頁、1997年)、ファージディスプレイ(Thompsonら、J.Mol.Biol.、第256巻、77~88頁、1996年)及びセクシャルPCR(Crameriら、Nature、第391巻、288~291頁、1998年)を含む、いくつかの親和性成熟プロトコールによって得ることができる。Vaughanら(前掲)では、親和性成熟のこれらの方法を論じている。
【0155】
本発明内で、親和性成熟はIOTA(WO2014198951)によって実施された。
【0156】
必要に応じて、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、1つ又は複数のエフェクター分子とコンジュゲートされてもよい。エフェクター分子は、本発明の抗体又はその抗原結合断片に付着され得る、単一エフェクター分子又は単一部分を形成するように連結された2つ以上のこのような分子を含み得ることは認識されよう。エフェクター分子に連結された抗体断片を得るように望まれる場合には、これは、抗体断片が直接的に又はカップリング剤を介してエフェクター分子に連結される標準化学手順又は組換えDNA手順によって調製され得る。このようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートする技術は、当技術分野で周知である(Hellstromら、Controlled Drug Delivery、第2版、Robinsonら編、1987年、623~53頁;Thorpeら、1982年、Immunol.Rev.、第62巻:119~58頁及びDubowchikら、1999年、Pharmacology and Therapeutics、第83巻、67~123頁を参照のこと)。特定の化学的手順として、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476及びWO03/031581に記載されるものが挙げられる。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合には、連結は、例えば、WO86/01533及びEP0392745に記載されるような組換えDNA手順を使用して達成され得る。
【0157】
本明細書において、用語エフェクター分子として、例えば、抗悪性腫瘍剤、薬物、毒素、生物活性タンパク質、例えば、酵素、他の抗体又は抗体断片、合成又は天然に存在するポリマー、核酸及びその断片、例えば、DNA、RNA及びその断片、放射性核種、特に、放射性ヨウ化物、放射性同位元素、キレート化金属、ナノ粒子及びリポーター基、例えば、蛍光化合物、又はNMR若しくはESR分光法によって検出され得る化合物が挙げられる。
【0158】
エフェクター分子の例は、細胞にとって有害である(例えば、死滅させる)任意の薬剤を含む細胞毒又は細胞傷害性薬剤を含み得る。例として、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、メイタンシノイド、スポンギスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアスタリンタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン並びにその類似体又は相同体が挙げられる。
【0159】
エフェクター分子としてはまた、それだけには限らないが、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカププリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC及びシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前は、ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)及び有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が挙げられる。
【0160】
その他のエフェクター分子としては、キレート化放射性核種、例えば、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188又はそれだけには限らないが、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬物を挙げることができる。
【0161】
その他のエフェクター分子としては、タンパク質、ペプチド及び酵素が挙げられる。対象の酵素としては、それだけには限らないが、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが挙げられる。対象のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドとしては、それだけには限らないが、免疫グロブリン、毒素、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素、タンパク質、例えば、インスリン、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子又は組織プラスミノーゲン活性化因子、血栓剤又は抗血管新生剤、例えば、アンギオスタチン又はエンドスタチン、又は生物反応修飾物質、例えば、リンホカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経成長因子(NGF)又はその他の増殖因子、及び免疫グロブリンが挙げられる。
【0162】
その他のエフェクター分子は、例えば、診断において有用な検出可能な物質を含み得る。検出可能な物質の例として、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光物質、生物発光物質、放射活性核種、陽電子放出金属(陽電子放射型断層撮影において使用するための)及び非放射活性常磁性金属イオンが挙げられる。全般的に、診断薬として使用するための抗体にコンジュゲートされ得る金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照のこと。適した酵素として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適した補欠分子族として、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが挙げられ、適した蛍光材料として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジシクロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリトリンが挙げられ、適した発光物質として、ルミノールが挙げられ、適した生物発光物質として、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられ、並びに適した放射活性核種として、125I、131I、111In及び99Tcが挙げられる。
【0163】
別の例では、エフェクター分子は、in vivoで抗体の半減期を増大し得る、及び/又は抗体の免疫原性を低減し得る、及び/又は上皮性関門を通る免疫系への.抗体の送達を増強し得る。この種の適したエフェクター分子の例として、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合性タンパク質又はアルブミン結合性化合物、例えば、WO05/117984に記載されるものが挙げられる。
【0164】
エフェクター分子がポリマーである場合には、一般に、合成又は天然に存在するポリマー、例えば、任意選択で置換された直鎖又は分岐鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレン又はポリオキシアルキレンポリマー又は分岐若しくは非分岐多糖、例えば、ホモ-若しくはヘテロ-多糖であり得る。
【0165】
上記の合成ポリマー上に存在してもよい特定の任意選択の置換基として、1つ又は複数のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基が挙げられる。
【0166】
合成ポリマーの具体例として、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はその誘導体、特に、置換されていてもよいポリ(エチレングリコール)、例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体が挙げられる。
【0167】
特定の天然に存在するポリマーとして、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はその誘導体が挙げられる。
【0168】
一実施形態では、ポリマーは、アルブミン又はその断片、例えば、ヒト血清アルブミン又はその断片である。
【0169】
「誘導体」は、本明細書において、反応性誘導体、例えば、マレイミドなどのようなチオール選択的反応性基を含むものとする。反応性基は、直接的に又はリンカーセグメントを介してポリマーに連結され得る。このような基の残基は、いくつかの場合には、抗体断片及びポリマー間の連結基として生成物の一部を形成することは認識されよう。
【0170】
ポリマーの大きさは、必要に応じて変わり得るが、一般に、500Da~50000Da、例えば、5000~40000Da、例えば、20000~40000Daの平均分子量範囲中となる。ポリマーの大きさは、生成物の意図される使用、例えば、腫瘍などの特定の組織に局在する能力又は長期循環半減期に基づいて選択され得る(概説については、Chapman、2002年、Advanced Drug Delivery Reviews、第54巻、531~545頁)。したがって、生成物が、例えば、腫瘍の処置において使用するために、例えば、循環を離れ、組織に浸透するように意図される場合には、例えば、約5000Daの分子量を有する小分子量ポリマーを使用することが有利であり得る。生成物が循環中のままである適用については、例えば、20000Da~40000Daの範囲中の分子量を有するより高い分子量ポリマーを使用することが有利であり得る。
【0171】
適したポリマーとして、ポリアルキレンポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール)又は特に、メトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体、特に、約15000Da~約40000Daの範囲中の分子量を有するものが挙げられる。
【0172】
一例では、本発明による抗体又は抗原結合断片は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に付着される。1つの特定の実施形態では、本発明による抗原結合断片及びPEG分子は、抗体断片中に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば、任意の遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基を介して付着され得る。このようなアミノ酸は、抗体断片中に天然に生じる場合も、組換えDNA法を使用して断片中に遺伝子操作される場合もある(例えば、US5,219,996、US5,667,425、WO98/25971、WO2008/038024を参照のこと)。一例では、本発明の抗体分子は、修飾が、エフェクター分子の付着を可能にするためのその重鎖のC末端への、1つ又は複数のアミノ酸の付加である、修飾Fab断片である。適宜、さらなるアミノ酸は、エフェクター分子が付着され得る1つ又は複数のシステイン残基を含有する修飾されたヒンジ領域を形成する。2つ以上のPEG分子を付着するために複数部位が使用され得る。
【0173】
適宜、PEG分子は、抗体断片中に位置する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合によって連結される。修飾抗体断片に付着された各ポリマー分子は、断片中に位置するシステイン残基の硫黄原子に共有結合によって連結され得る。共有結合連結は、一般に、ジスルフィド結合又は特に、硫黄-炭素結合となる。付着点としてチオール基が使用される場合には、適切に活性化されたエフェクター分子、例えば、チオール選択的誘導体、例えば、マレイミド及びシステイン誘導体が使用され得る。活性化されたポリマーは、上記のようなポリマー修飾された抗体断片の調製において出発材料として使用され得る。活性化されたポリマーは、チオール反応性基、例えば、α-ハロカルボン酸又はエステル、例えば、ヨードアセトアミド、イミド、例えば、マレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドを含有する任意のポリマーであり得る。このような出発材料は、商業的に得ることができる(例えば、Nektar、以前は、Shearwater Polymers Inc.、ハンツビル、AL、米国)か、又は市販の出発材料から従来の化学手順を使用して調製され得る。特定のPEG分子として、20Kメトキシ-PEG-アミン(Nektar、以前は、Shearwater;Rapp Polymere及びSunBioから入手可能)及びM-PEG-SPA(Nektar、以前は、Shearwaterから入手可能)が挙げられる。
【0174】
一実施形態では、抗体は、例えば、EP0948544又はEP1090037に開示される方法によって、PEG化されている、すなわち、共有結合によって付着されたPEG(ポリ(エチレングリコール))を有する修飾Fab断片、Fab’断片又はジFabである[「ポリ(エチレングリコール)化学、バイオ技術及び生物医学適用」(Poly(ethyleneglycol) Chemistry, Biotechnical and Biomedical Applications)、1992年、J.Milton Harris(編)、Plenum Press、New York、「ポリ(エチレングリコール)化学及び生物学的適用」(Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications)、1997年、J. Milton Harris及びS.Zalipsky(編)、American Chemical Society、Washington DC及び「生物医学科学のためのバイオコンジュゲーションタンパク質カップリング技術」(Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences)、1998年、M.Aslam及びA.Dent、Grove Publishers、New York;Chapman、A.2002年、Advanced Drug Delivery Reviews 2002、54:531-545も参照のこと]。一例では、PEGは、ヒンジ領域中のシステインに付着される。一例では、PEG修飾Fab断片は、修飾ヒンジ領域中の単一チオール基に連結されたマレイミド基を有する。リシン残基は、マレイミド基に共有結合によって連結されることができ、リシン残基上のアミン基の各々に、およそ20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーが付着され得る。したがって、Fab断片に付着されたPEGの総分子量は、およそ40,000Daであり得る。
【0175】
特定のPEG分子は、PEG2MAL40K(Nektar、以前は、Shearwaterから入手可能)としても知られる、N,N’-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)MW20,000)修飾リシンの2-[3-(N-マレイミド)プロピオンアミド]エチルアミドを含む。
【0176】
PEGリンカーの代替供給源として、GL2-400MA3(以下の構造中mは5である)及びGL2-400MA(mは2である)及びnはおよそ450である、を供給するNOFがある:
【化1】
すなわち、各PEGは約20,000Daである。
【0177】
したがって、一実施形態では、PEGは、SUNBRIGHT GL2-400MA3として知られる、2,3-ビス(メチルポリオキシエチレン-オキシ)-1-{[3-(6-マレイミド-1-オキソヘキシル)アミノ]プロピルオキシ}ヘキサン(2アーム分岐PEG、-CH2)3NHCO(CH2)5-MAL、Mw40,000である。
【0178】
以下のタイプ:
【化2】
で示されるさらなる代替PEGエフェクター分子が、Dr Reddy、NOF及びJenkemから入手可能である。
【0179】
一実施形態では、本発明によるFab又はFab’は、PEG分子にコンジュゲートされる。
【0180】
一実施形態では、鎖中のアミノ酸226、例えば、重鎖のアミノ酸226(連続番号付けによって)、例えば、配列番号33のアミノ酸223で又はその付近でシステインアミノ酸残基を介して付着され、PEG化されている(例えば、本明細書において記載されるPEGを有する)抗体が提供される。
【0181】
一実施形態では、本開示は、1つ又は複数のPEGポリマー、例えば、40kDaポリマー(単数又は複数)などの1つ又は2つポリマーを含むFab’PEG分子を提供する。
【0182】
本開示によるFab’-PEG分子は、Fc断片と独立した半減期を有する点で特に有利であり得る。一実施形態では、ポリマー、例えば、PEG分子、デンプン分子又はアルブミン分子にコンジュゲートされたFab’が提供される。一実施形態では、ポリマー、例えば、PEG分子、デンプン分子又はアルブミン分子にコンジュゲートされたscFvが提供される。一実施形態では、本開示によるFab又はFab’は、ヒト血清アルブミンにコンジュゲートされる。一実施形態では、例えば、半減期を増大するために、抗体又は断片は、デンプン分子にコンジュゲートされる。参照により本明細書に組み込まれるUS8,017,739に記載されるようなタンパク質にデンプンをコンジュゲートする方法。
【0183】
本発明はまた、本発明による抗体又はその抗原結合断片をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。本発明による単離ポリヌクレオチドは、例えば、化学的処理、cDNA、ゲノムDNA又はそれらの任意の組合せによって生産された合成DNAを含み得る。
【0184】
分子生物学の標準技術が、本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードするDNA配列を調製するために使用され得る。所望のDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成技術を使用して完全に又は部分的に合成され得る。部位特異的突然変異誘発及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術は、必要に応じて使用され得る。
【0185】
一実施形態では、本発明による単離ポリヌクレオチドは、
a.ポリヌクレオチドが
i.配列番号16若しくは配列番号20に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号16若しくは20を含む、又は
iii.本質的に配列番号16若しくは配列番号20からなる
軽鎖可変領域、
b.ポリヌクレオチドが、
i.配列番号24若しくは配列番号28若しくは配列番号32若しくは配列番号36に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号24若しくは配列番号28若しくは配列番号32若しくは配列番号36を含む、又は
iii.本質的に、配列番号24若しくは配列番号28若しくは配列番号32若しくは配列番号36からなる
重鎖可変領域、
c.ポリヌクレオチドが、
i.配列番号18若しくは配列番号22に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号18若しくは22を含む、又は
iii.本質的に、配列番号18若しくは配列番号22からなる
軽鎖、
d.ポリヌクレオチドが、
i.配列番号26若しくは配列番号30若しくは配列番号34若しくは配列番号38に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号26若しくは配列番号30若しくは配列番号34若しくは配列番号38を含む、又は
iii.本質的に、配列番号26若しくは配列番号30若しくは配列番号34若しくは配列番号38からなる
重鎖、
e.ポリヌクレオチドが、
i.配列番号12に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号12を含む、又は
iii.本質的に配列番号12からなる
軽鎖可変領域、
f.ポリヌクレオチドが、
i.配列番号14に対して少なくとも90%同一である、又は
ii.配列番号14を含む、又は
iii.本質的に配列番号14からなる
重鎖可変領域
をコードする。
【0186】
一実施形態では、本発明は、配列番号24、28、32又は36において与えられる配列を含む、本発明の抗体Fab’断片の、又はIgG1若しくはIgG4抗体の重鎖をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。また、配列番号16又は20において与えられる配列を含む、本発明の抗体Fab’断片の、又はIgG1若しくはIgG4抗体の軽鎖をコードする単離ポリヌクレオチドも提供される。
【0187】
別の実施形態では、本発明は、重鎖をコードするポリヌクレオチドが、配列番号26、30、34若しくは38において与えられる配列を含み、軽鎖をコードするポリヌクレオチドが、配列番号18又は22において与えられる配列を含む、本発明のIgG4(P)抗体の重鎖及び軽鎖をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0188】
本発明はまた、本明細書において記載される1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むクローニング又は発現ベクターを提供する。一例では、本発明によるクローニング又は発現ベクターは、配列番号16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36又は38から選択される配列を含む1つ又は複数の単離ポリヌクレオチドを含む、
【0189】
ベクターが構築され得る一般的な方法、トランスフェクション法及び培養法は、当業者に周知である。この点において、Cold Spring Harbor Publishingによって作成された、「分子生物学における現在のプロトコール」(Current Protocols in Molecular Biology)、1999年、F.M. Ausubel(編)、Wiley Interscience、New York及びManiatis Manualが参照される。
【0190】
また、本発明による1つ若しくは複数の単離ポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞又は本発明の抗体をコードする1つ若しくは複数の単離ポリヌクレオチド配列を含む1つ若しくは複数のクローニング若しくは発現ベクターも提供される。本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド配列の発現のために、任意の適した宿主細胞/ベクター系が使用され得る。細菌、例えば、大腸菌及びその他の微生物系が使用され得る、又は真核生物の、例えば、哺乳動物宿主細胞発現系も使用され得る。適した哺乳動物宿主細胞として、CHO、骨髄腫又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0191】
本発明において使用するためのチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)の適した種類として、DHFR選択マーカーとともに使用され得る、dhfr-CHO細胞を含む、CHO及びCHO-K1細胞、例えば、CHO-DG44細胞及びCHO-DXB11細胞又はグルタミンシンセターゼ選択マーカーとともに使用され得るCHOK1-SV細胞を挙げることができる。抗体の発現において使用するその他の細胞種として、リンパ細胞系、例えば、NSO骨髄腫細胞及びSP2細胞、COS細胞が挙げられる。宿主細胞は、本発明による単離ポリヌクレオチド配列又は発現ベクターを用いて安定に形質転換又はトランスフェクトされ得る。
【0192】
一実施形態では、本発明による宿主細胞は、本発明の単離ポリヌクレオチド配列を含む、好ましくは、配列番号18及び26又は配列番号18及び34又は配列番号18及び30又は配列番号18及び38による単離ポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを用いて安定にトランスフェクトされたCHO-DG44細胞である。
【0193】
本発明はまた、本発明による抗体又はその抗原結合断片の生産のための方法であって、本発明による宿主細胞を、本発明による抗体又はその抗原結合断片を生産するのに適した条件下で培養すること及び抗体又はその抗原結合断片を単離することを含む方法を提供する。
【0194】
抗体又はその抗原結合断片は、重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみを含むことがあり、この場合には、宿主細胞をトランスフェクトするために重鎖又は軽鎖ポリペプチドコード配列のみが使用される必要がある。重鎖及び軽鎖両方を含む抗体又はその抗原結合断片の生産のために、細胞系は、2つのベクター、軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクター及び重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターを用いてトランスフェクトされ得る。或いは、単一ベクター、軽鎖及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を含むベクターが使用され得る。
【0195】
したがって、宿主細胞を培養し、抗体又はその断片を発現させ、後者を単離し、任意選択で、それを精製して単離された抗体又は断片を提供する方法が提供される。一実施形態では、方法は、エフェクター分子を、単離された抗体又は断片にコンジュゲートするステップ、例えば、特に、本明細書に記載されるようなPEGポリマーにコンジュゲートするステップをさらに含む。
【0196】
したがって、一実施形態では、実質的に精製された形態の、特に、内毒素及び/又は宿主細胞タンパク質若しくはDNAを含まない、又は実質的に含まない、精製された抗αシヌクレイン抗体又はその断片、例えば、ヒト化抗体又はその断片、特に、本発明による抗体又はその断片が提供される。
【0197】
内毒素を実質的に含まないとは、一般に、抗体生成物1mg当たり1EU以下、例えば、生成物1mg当たり0.5又は0.1EUの内毒素含量を指すものとする。
【0198】
宿主細胞タンパク質又はDNAを実質的に含まないとは、一般に、必要に応じて、宿主細胞タンパク質及び/又はDNA含量抗体生成物1mg当たり400μg以下、例えば、1mg当たり100μg以下、特に、1mg当たり20μgを指すものとする。
【0199】
本発明の抗体は、αシヌクレイノパチーなどの病状の処置、診断及び/又は予防において有用であるので、本発明はまた、本発明による抗体又はその抗原結合断片を、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤のうち1種又は複数と組み合わせて含む医薬組成物又は診断組成物を提供する。
【0200】
好ましくは、医薬組成物又は診断組成物は、αシヌクレインと結合し、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号45を含むCDR-H2及び
vi.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含むヒト化抗体を含む。
【0201】
より好ましくは、医薬組成物又は診断組成物は、αシヌクレインと結合し、
a.i.配列番号1を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号5を含むCDR-H2及び
vi.配列番号6を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含むヒト化抗体を含む。
【0202】
一実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、唯一の有効成分である。別の実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、1種又は複数のさらなる有効成分との組合せである。或いは、医薬組成物は、唯一の有効成分である本発明による抗体又はその抗原結合断片を含み、その他の薬剤、薬物又はホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、逐次又は別個に)患者に個別に投与されてもよい。
【0203】
別の実施形態では、医薬組成物は、配列番号15又は19の軽鎖可変領域を含み、配列番号23、27、31又は35の重鎖可変領域を含む抗体又はその抗原結合断片、例えば、配列番号15及び配列番号23又は配列番号15及び配列番号31を含む。
【0204】
好ましくは、本発明は、αシヌクレインと結合し、配列番号15の軽鎖可変領域及び配列番号31の重鎖可変領域を含む抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供する。
【0205】
本発明による医薬組成物は、必要とされる治療有効量を同定するために、患者に適宜投与され得る。用語「治療有効量」とは、本明細書において、疾患又は状態を処置、回復又は防止するために、又は検出可能な治療若しくは予防効果を示すために必要とされる治療薬の量を指す。任意の抗体について、治療有効量は、細胞培養アッセイにおいて、又は動物モデルにおいて、普通、げっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類においてのいずれかで最初に推定され得る。動物モデルはまた、適当な濃度範囲及び投与経路を決定するために使用され得る。次いで、このような情報は、ヒトにおける投与のための有用な用量及び経路を決定するために使用され得る。
【0206】
ヒト対象のための正確な治療有効量は、疾患状態の重症度、対象の全身の健康、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物組合せ、療法に対する反応感受性及び耐性/応答に応じて変わる。この量は、日常的な実験によって決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般に、治療有効量は、0.01mg/kg~500mg/kg、例えば、0.1mg/kg~200mg/kg、例えば、100mg/Kgとなる。医薬組成物は、用量当たり所定量の本発明の活性薬剤を含有する単位用量形態で提示され得ることが好都合である。
【0207】
治療組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体をさらに含有し得る。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝物質が、このような組成物中に存在し得る。このような担体は、医薬組成物が、患者による経口摂取のための、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液として製剤化されることを可能にする。
【0208】
投与の適した形態は、例えば、注射又は注入による、例えば、ボーラス注射又は連続注入による、静脈内、吸入可能な又は皮下形態の非経口投与に適した形態を含む。製剤が、注射又は注入用である場合には、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンの形態をとってもよく、懸濁剤、防腐剤、安定化剤及び/又は分散剤などの処方剤を含有してもよい。或いは、本発明による抗体又はその抗原結合断片は、適当な滅菌液体を用いて使用前に再構成するための乾燥形態である場合もある。注射に先立って、液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に適した固体形態も調製され得る。
【0209】
ひとたび製剤化されると、本発明の組成物は、対象に直接的に投与され得る。したがって、医薬の製造のための本発明による抗体又はその抗原結合断片の使用が本明細書において提供される。
【0210】
処置されるべき対象は、動物であり得る。好ましくは、本発明による医薬組成物は、ヒト対象への投与に適応される。
【0211】
したがって、別の態様では、本発明は、治療において使用するための抗体若しくはその抗原結合断片、又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供し、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号45を含むCDR-H2及び
vii.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含む
【0212】
好ましくは、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化され、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、より好ましくは、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0213】
好ましい実施形態では、治療において使用するための抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物において、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.i.配列番号1を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号5を含むCDR-H2及び
vi.配列番号6を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含む。
【0214】
好ましくは、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化され、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、より好ましくは、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0215】
特に、療法における使用は、1種又は複数のαシヌクレイノパチーの処置における使用を含む。
【0216】
さらに別の態様では、本発明は、患者において1種又は複数のシヌクレイノパチーを処置する方法であって、前記患者に、本発明による抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法を提供し、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.i.配列番号44を含むCDR-L1、
ii.配列番号2を含むCDR-L2及び
iii.配列番号3を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域、並びに
b.iv.配列番号4を含むCDR-H1、
v.配列番号45を含むCDR-H2及び
vi.配列番号46を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域
を含む。
【0217】
好ましくは、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化され、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、より好ましくは、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0218】
1つの好ましい実施形態では、抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物は、1種又は複数のαシヌクレイノパチーの処置において使用するためのものであり、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号31を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17を含む軽鎖及び配列番号33を含む重鎖
を含む。
【0219】
好ましくは、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化され、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、より好ましくは、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0220】
別の好ましい実施形態では、本発明は、患者において1種又は複数のαシヌクレイノパチーを処置する方法を提供し、前記患者に、本発明による抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含み、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号31を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17を含む軽鎖及び配列番号33を含む重鎖
を含む。
【0221】
好ましくは、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化され、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を防止し、より好ましくは、αシヌクレインと、配列番号10における、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含むエピトープと結合し、エピトープは、任意選択で、A124及びG132を含む。
【0222】
或いは、抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物は、治療において使用するためのもの又は1種若しくは複数のαシヌクレイノパチーの処置において使用するためのものであり、
a.配列番号1若しくは配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5若しくは配列番号8を含むCDR-H2及び配列番号6若しくは配列番号9を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15若しくは19を含む軽鎖可変領域及び配列番号23若しくは配列番号27若しくは配列番号31若しくは配列番号35を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17若しくは配列番号21を含む軽鎖及び配列番号25若しくは配列番号29若しくは配列番号33若しくは配列番号37を含む重鎖
を含む抗体又はその抗原結合断片である。
【0223】
本発明の別の実施形態では、患者において1つ又は複数のαシヌクレイノパチーを処置する方法は、前記患者に、本発明による抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含み、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.配列番号1若しくは配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5若しくは配列番号8を含むCDR-H2及び配列番号6若しくは配列番号9を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15若しくは19を含む軽鎖可変領域及び配列番号23若しくは配列番号27若しくは配列番号31若しくは配列番号35を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17若しくは配列番号21を含む軽鎖及び配列番号25若しくは配列番号29若しくは配列番号33若しくは配列番号37を含む重鎖
を含む。
【0224】
本発明によるαシヌクレイノパチーは、それだけには限らないが、パーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)を含む。好ましくは、αシヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)である。
【0225】
別の実施形態では、抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物は、パーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)、好ましくは、パーキンソン病(PD)の処置において使用するためのものであり、
a.配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号31を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17を含む軽鎖及び配列番号33を含む重鎖
を含む抗体又はその抗原結合断片である。
【0226】
別の実施形態では、抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物は、パーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)、好ましくは、パーキンソン病(PD)の処置において使用するためのものであり、
a.配列番号1若しくは配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5若しくは配列番号8を含むCDR-H2及び配列番号6若しくは配列番号9を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15若しくは19を含む軽鎖可変領域及び配列番号23若しくは配列番号27若しくは配列番号31若しくは配列番号35を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17若しくは配列番号21を含む軽鎖及び配列番号25若しくは配列番号29若しくは配列番号33若しくは配列番号37を含む重鎖
を含む抗体又はその抗原結合断片である。
【0227】
別の実施形態では、患者において、パーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)、好ましくは、パーキンソン病(PD)を処置する方法であって、前記患者に、抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法が提供され、抗体又はその抗原結合断片は、
a.配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号31を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17を含む軽鎖及び配列番号33を含む重鎖
を含む。
【0228】
別の実施形態では、患者においてパーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)、好ましくは、パーキンソン病(PD)を処置する方法は、前記患者に、抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含み、抗体又はその抗原結合断片は、
a.配列番号1若しくは配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5若しくは配列番号8を含むCDR-H2及び配列番号6若しくは配列番号9を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15若しくは19を含む軽鎖可変領域及び配列番号23若しくは配列番号27若しくは配列番号31若しくは配列番号35を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17若しくは配列番号21を含む軽鎖及び配列番号25若しくは配列番号29若しくは配列番号33若しくは配列番号37を含む重鎖
を含む。
【0229】
或いは、本発明はまた、αシヌクレイノパチーを処置するための医薬の製造のための、抗体又はその抗原結合断片の使用を提供し、αシヌクレイノパチーは、好ましくは、パーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)、より好ましくは、パーキンソン病(PD)であり、抗体又はその抗原結合断片は、
a.配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号31を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17を含む軽鎖及び配列番号33を含む重鎖
を含む。
【0230】
本発明の一部はまた、診断上活性な薬剤として使用するための、又はパーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)などのαシヌクレイノパチーを診断するための診断アッセイにおける抗αシヌクレイン抗体又は抗原結合断片の使用である。
【0231】
診断は、好ましくは、生体サンプルで実施され得る。「生体サンプル」は、個体から得られたさまざまなサンプル種を包含し、診断アッセイ又はモニタリングアッセイにおいて使用され得る。この定義は、脳脊髄液、血漿及び血清などの血液並びに尿及び唾液などの生物学的起源のその他の液体サンプル、生検検体などの固体組織サンプル又は組織培養物若しくはそれに由来する細胞及びその後代を包含する。この定義はまた、試薬を用いる処置、可溶化又はポリヌクレオチドなどの特定の構成成分についての濃縮などによって、その獲得後に任意の方法で操作されているサンプルも含む。
【0232】
診断検査は、好ましくは、ヒト又は動物身体と接触していない生体サンプルで実施され得る。このような診断検査はまた、in vitro検査と呼ばれる。in vitro診断検査は、i)生体サンプルを、本明細書に記載されるような抗αシヌクレイン抗体又はその抗原結合断片と接触させるステップと、ii)抗αシヌクレイン抗体又はその抗原結合断片の、αシヌクレインとの結合を検出するステップとを含む、個体から得られている生体サンプルにおいてαシヌクレインを検出するin vitro法に依存し得る。検出されたαシヌクレインレベル又はαシヌクレインの特定の翻訳後修飾形態の存在を、適した対照と比較することによって、1種又は複数のαシヌクレイノパチーが同定され得る。したがって、αシヌクレイノパチーのステージ(重症度)を決定することを含む、αシヌクレイノパチーを有するか、又はそれを発症するリスクにあるか否かを決定するために、このような検出法が使用され得る。
【0233】
したがって、本発明は、αシヌクレイノパチーの診断において、好ましくは、パーキンソン病の診断において使用するための抗体又はその抗原結合断片を提供し、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.配列番号44を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号45を含むCDR-H2及び配列番号46を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域
を含む。
【0234】
好ましくは、αシヌクレイノパチーの診断において、好ましくは、パーキンソン病の診断において使用するための抗体又はその抗原結合断片であって、抗体又はその抗原結合断片は、αシヌクレインと結合し、
a.配列番号1を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域、又は
b.配列番号15を含む軽鎖可変領域及び配列番号31を含む重鎖可変領域、又は
c.配列番号17を含む軽鎖及び配列番号33を含む重鎖
を含む。
【0235】
本発明に含まれる配列は、表1に示されている:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0236】
本発明を以下、添付の図面に例示される実施形態を参照して例としてさらに説明する。
【実施例】
【0237】
(例1)
ヒトαシヌクレインモノマー及び繊維の発現
ヒトαシヌクレインをコードする遺伝子を合成によって作製し、標準分子生物学技術を使用してベクターpMH 10His TEV(CMVプロモーターを含有する)中にサブクローニングして、N末端10His-TEVタグを有するαシヌクレインを生成するように遺伝子操作されたベクターを作出した。得られたベクターを、Expi293(商標)発現系(Invitrogen)を製造業者のプロトコールに従って使用して、Expi293F細胞中にトランスフェクトした。培養培地中に蓄積したαシヌクレインタンパク質を、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーHisTrapエクセルカラム(GE Healthcare)を使用してそこから回収した。25mM TrisHCl、300mM NaCl、pH8.0を用いてカラムを洗浄し、同バッファー中500mMイミダゾールの段階的勾配を用いてタンパク質を溶出した。10Hisタグを、TEVプロテアーゼを使用して除去した。次いで、サンプルを濃縮し、脱塩し、その後、切断されたタンパク質をHisTrapエクセルカラムに再度アプライし、切断されたαシヌクレインをフロースルー中に収集した。HiLoad 26/600 Superdex75カラム(GE Healthcare)でのゲル濾過によってαシヌクレインをさらに精製し、Proteus NoEndoカートリッジ(Generon)に通すことによって内毒素を除去した。精製されたSEC MALSによってαシヌクレインがモノマーであることを確認した(
図1A)。
【0238】
野生型(タグのついていない)ヒトαシヌクレインもまた、Expi293F細胞において発現させた。タンパク質を、HiTrap Qカラム(GE Healthcare)を使用するアニオン交換によって培養培地から再度回収した。カラムを20mM TrisHCl pH8.0を用いて洗浄し、400mMへの塩化ナトリウム勾配を使用してタンパク質を溶出した。画分を濃縮し、HiPrep 26/10カラム(GE Healthcare)を通すことによって脱塩し、20mM TrisHCl pH8.0を用いて溶出した。タンパク質を、MonoQ 10/100GLカラムを使用してさらに精製し、20mM TrisHCl pH8.0中、400mMへの塩化ナトリウム勾配を用いて溶出し、HiLoad 26/600 Superdex75カラム(GE Healthcare)でのゲル濾過を続け、PBS pH7.4で溶出した(
図1B)。
【0239】
この野生型(タグのついていない)αシヌクレインモノマーを使用して、精製された組換えαシヌクレインモノマー(PBS pH7.4中、9~10mg/mL)を、Vortemp56シェーキングインキュベーター(Labnet)中、1200rpm、37℃で10日間継続して撹拌することによって、αシヌクレイン繊維を調製した。繊維形成は、JC-1アッセイ(Leeら、Biochem.J.2009年、第418巻、311~323頁)及び溶液のCフーリエ変換赤外分光法によって評価した。繊維溶液中の組み込まれていないモノマーを、超遠心分離法によって、及び100KDaカットオフメンブレンを通すことと、それに続くゲル電気泳動によって評価した。JC-1応答>15、少量の可溶性モノマー(<5%)及び1625から1630cm-1の間の主吸収を有するFTIRスペクトルを有する繊維のみをさらなる研究に使用した(
図2)。調製された繊維は、-80℃で保存した。
【0240】
(例2)
免疫処置及び抗体単離
種々の種及び免疫原を使用する多数の免疫処置戦略を実施した。抗体6470は、ウサギFcに融合されたヒトαシヌクレイン残基68~140(配列番号43)含むウサギFc融合タンパク質を用いて皮下免疫処置を施されていた雌New Zealand Whiteウサギ(>2kg)に由来した。
【0241】
免疫処置のためのαシヌクレイン(68~140)ウサギFc融合タンパク質を、Expi293(商標)発現系(Invitrogen)を製造業者のプロトコールを使用して、Expi293F細胞において発現させた。タンパク質を、上清からMabSelectSureカラム(GE Healthcare)を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。カラムを、50mMグリシン/ナトリウムグリシナートpH8.8バッファーを用いて平衡化し、同バッファー中、0.1Mクエン酸pH2.0の勾配を用いて溶出した。タンパク質画分を、2M Tris HCl pH8.5を用いて中和し、濃縮し、平衡化されたHiLoad 26/600 Superdex200カラム(GE Healthcare)でのゲル濾過によってさらに精製し、PBS pH7.4で溶出した。ウサギに、500μgの等容量のフロイントの完全アジュバント(CFA)で乳化された融合タンパク質を含む一次免疫処置を施した。ウサギに、フロイントの不完全アジュバント(IFA)を使用して21日間隔で2回の追加免疫注射を与え、免疫処置の14日後耳から出血させた。最終出血の14日後に終結させ、脾臓、骨髄及び末梢血単核細胞の単細胞懸濁液を調製し、ウシ胎児血清(FCS)中、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)中で-80℃で凍結した。
【0242】
B細胞培養
B細胞培養物を、Tickleら、2015年 J Biomol Screen:第20巻(4号)、492~497頁によって記載されるものと同様の方法を使用して調製した。手短には、免疫処置された動物から得たB細胞に由来するリンパ節又は脾細胞を、ウェル当たりおよそ2000~5000個細胞の密度で、バーコード付き96ウェル組織培養プレート中で、200μl/ウェルの、10%FCS(Sigma Aldrich)、2% HEPES(Sigma Aldrich)、1% L-グルタミン(Gibco BRL)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Gibco BRL)、0.1% β-メルカプトエタノール(Gibco BRL)、1%の活性化ヒトPBMC上清(BSS)及びX線照射突然変異体EL4マウス胸腺腫細胞(5×104個/ウェル)を補給したRPMI 1640培地(Gibco BRL)を用いて、5% CO2の雰囲気中37℃で7日間培養した。培養は、免疫処置したすべての動物から得たB細胞を使用して設定し、合計で、およそ1.7×109個のB細胞をサンプリングした。
【0243】
本発明による抗体である6470を、ウェル当たりおよそ5000個細胞の密度で培養された活性化リンパ節由来B細胞から作製した。新規抗体をサンプリングし、同定するためのB細胞の代替供給源を本発明者らに与えるために、抗体発見のために脾細胞に加えてリンパ節を使用した。脾臓だけでなくリンパ節由来のB細胞から関連配列を有する抗体を同定した。ヒトαシヌクレインC末端タンパク質で免疫処置したウサギからおよそ9.6×107個細胞をサンプリングした。
【0244】
一次スクリーニング
B細胞培養上清中のヒトαシヌクレイン特異的抗体の存在を、標的抗原の供給源としてビオチン化組換えヒトαシヌクレイン全長モノマーを用いてコーティングされたSuperavidin(商標)ビーズ(Bangs Laboratories)を使用する均一蛍光ベース結合アッセイを使用して調べた。本明細書に記載されるような組換えヒトαシヌクレインを、3倍モル過剰のビオチンを使用してビオチン化した。αシヌクレイン分子内の7個のリシン残基の完全修飾を避けるために低モル過剰のビオチンを使用した。αシヌクレインモノマーをビオチンとともに40℃で一晩インキュベートし、翌日、Zeba(商標)スピン脱塩カラムを使用して遊離ビオチンを除去した。スクリーニングは、Agilent Bravo液体ハンドラーを使用する、バーコード付き96ウェル組織培養プレートから、Superavidinビーズ(10μl/ウェル)上に固定化されたビオチン化組換えヒトαシヌクレインモノマーを含有するバーコード付き384ウェル黒色壁アッセイプレート中への10μlの上清の移動を含んでいた。結合は、ヤギ抗ウサギIgG Fcγ-特異的Alexafluor647コンジュゲート(Jackson)を用いて示した。αシヌクレイン特異的IgGを含有するウェルを同定するためにTTP Labtech Mirrorballでプレートを読み取った。
【0245】
二次スクリーニング
一次スクリーニング後、Beckman Coulter BiomekNXPヒットピッキングロボットを使用して、陽性上清を96ウェルバーコード付きマスタープレート上に統合し、細胞培養プレート中のB細胞を-80℃で凍結した。次いで、ビオチン化組換えヒトαシヌクレインモノマー又はビオチン化組換えヒトαシヌクレイン繊維を使用するストレプトアビジン捕獲ELISAアッセイにおいてマスタープレートをスクリーニングした。これは、モノマー及び繊維状組換えヒトαシヌクレイン療法との結合を与えたウェルを同定するために、またSuperavidin(商標)ビーズとのオフターゲット結合を示す何らかの偽陽性ウェルを排除するために実施した。繊維の不溶性を考慮すると、溶液中のタンパク質とともに使用される従来のELISAコーティングプロトコールは好都合ではなかった。繊維状構造を保つため、また、ストレプトアビジンを用いて事前コーティングされたELISAプレート上での繊維の効率的なコーティングを促進するために、最小のビオチン化プロトコールが使用されることが決定された。
【0246】
ビオチン化αシヌクレイン総繊維は、PBS中でビオチン化組換えαシヌクレインモノマー(上記のような)を、50倍過剰の未標識組換えαシヌクレインと組み合わせることによって本明細書に記載されたように作製した。繊維形成は、JC1アッセイによって確認した(Leeら、Biochem.J.2009年、第418巻、311~323頁)。
【0247】
PBS中のビオチン化モノマー又はビオチン化繊維を、炭酸含有バッファー(dH2O+0.16% Na2CO3+0.3% NaHCO3)中のストレプトアビジンを用いてコーティングされた384ウェルMaxisorp プレート上に捕獲した。1% w/v PEG/PBSを用いてプレートをブロッキングし、次いで、10μl/ウェルB細胞培養上清(ブロッキングバッファーと1:1希釈された)とともにインキュベートした。二次HRPコンジュゲート型ヤギ抗ウサギIgG Fc抗体(Stratech Scientific Ltd/Jackson ImmunoResearch)をプレートに添加し、続いて、TMB基質(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、EMD Millipore製;10μl/ウェル)を用いて結合を可視化した。光学濃度は、BioTek Synergy2マイクロプレートリーダーを使用して630nMで測定した。一次結合アッセイによって、640ヒットが同定され、ELISAスクリーニング後、それらのうち491が、モノマー及び繊維状組換えヒトαシヌクレインン両方と結合すると示された。
【0248】
組換え繊維に対して最強のELISA結合シグナルを実証するB細胞上清を、組換えヒトαシヌクレインモノマー、組換えヒトαシヌクレイン繊維及び組換えマウスαシヌクレイン繊維上での最良の解離速度を有するものを同定するための表面プラズモン共鳴によるさらなる解析のために選択した。80種の異なるB細胞から得た上清を試験し、9種のウェルが、組換えヒト繊維上で解離速度(kd)<1×10-5を示した。当然、7種が組換えマウス繊維上で1×10-5未満の解離速度(kd)を示し、2種が組換えヒトモノマー上で1×10-5未満の解離速度(kd)を示した。9種の上清すべてを可変領域回収のために選択した。
【0249】
可変領域回収
対象の上清の選択からの抗体可変領域遺伝子の回収を可能にするために、B細胞の不均一な集団を含有していた所与のウェルにおける抗原特異的B細胞の同定を可能にするための逆重畳積分ステップを実施しなくてはならなかった。これは、蛍光焦点法(Clargoら、2014年MAbs:第6巻(1号)、143~159頁)を使用して達成した。手短には、陽性ウェルから得た免疫グロブリン分泌B細胞を、ビオチン化組換えヒトαシヌクレイン繊維でコーティングされたストレプトアビジンビーズ(New England Biolabs)(上記のように1:50ミックスを使用して作製された)及びヤギ抗ウサギFcγ断片特異的FITCコンジュゲート(Jackson)の1:1200最終希釈物と混合した。37℃で1時間の静的インキュベーション後、B細胞の周囲の蛍光ハロの存在のために抗原特異的B細胞を同定できた。Olympus顕微鏡を使用して同定されたいくつかのこれらの個々のB細胞クローンを、次いで、Eppendorfミクロマニピュレーターを用いて選び取り、PCR管中に蓄積させた。
【0250】
抗体可変領域遺伝子を、単細胞から重鎖及び軽鎖可変領域特異的プライマーを使用する逆転写(RT)-PCRによって回収した。3’及び5’末端の制限部位を組み込むネステッド2PCRを用いて2ラウンドのPCRを実施して、変領域の、ウサギIgG(VH)又はウサギカッパ(VL)哺乳動物発現ベクターへのクローニングを可能にした。5種の異なる上清から得た抗αシヌクレイン抗体遺伝子が、発現ベクター中に成功裏にクローニングされた。ExpiFectamine 293(Invitrogen)及び30mlの容積中で125mlエルレンマイヤーフラスコ中で発現された組換え抗体を使用して重鎖及び軽鎖構築物をExpi-293細胞中に共トランスフェクトした。5~7日の発現後、上清を採取し、アフィニティークロマトグラフィーを使用して精製した。
【0251】
一過性上清のELISAスクリーニング
次いで、精製抗体をELISAによるさらなるスクリーニングに付した。ビオチン化 組換えヒトαシヌクレインモノマー及び繊維を、炭酸含有バッファー(dH2O+0.16% Na
2CO
3+0.3% NaHCO
3)中のストレプトアビジンを用いてコーティングされた384ウェルMaxisorpプレート(ThermoScientific/Nunc)上に捕獲した。別個のプレートはまた、配列番号10によるヒトαシヌクレインの残基117~126(ペプチド PVDPDNEAYE)に対応するビオチン化ペプチドを用いてコーティングして、一過性のものが、これ又は分子上の異なる領域に結合したか否かを調べた。プレートを、1% w/v PEG/PBSを用いてブロッキングし、次いで、精製一過性上清のいくつかの希釈物とともにインキュベートした。二次HRPコンジュゲート型ヤギ抗ウサギIgG Fc抗体(Stratech Scientific Ltd/Jackson ImmunoResearch)をプレートに添加し、続いて、TMB基質(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、EMD Millipore製;10μl/ウェル)を用いて結合を可視化した。光学濃度は、BioTek Synergy2マイクロプレートリーダーを使用して630nMで測定した。6470についてのデータは、
図3に示されている。見られるように、6470は、モノマー及び繊維状組換えヒトαシヌクレイン両方との結合を示すが、117~126ペプチドとの結合は示さない。
【0252】
次いで、抗体(IgG)を、例7において以下に記載されるような細胞ベース凝集アッセイにおいて試験した。細胞アッセイにおいて活性を実証するすべての抗体の結合動態を、表面プラズモン共鳴によって逐次決定した。抗体をIgG及びFabとして試験して、結合力(二価結合)及び親和性(一価結合)をそれぞれ決定した。
【0253】
(例3)
抗体特性決定
Biacore動態
Biacore T200機器で表面プラズモン共鳴技術を使用することによって相互作用動態を決定した。本明細書に記載されるように調整した、組換え全長ヒトαシヌクレインモノマー、精製組換えヒトαシヌクレイン繊維及び精製組換えマウスαシヌクレイン繊維を含む3種の異なるリガンドを、アミンカップリング化学を使用してCM5チップ表面の3種の異なるフローセル上に各々固定化した。3種のリガンドを10mM NaAc、pH3.5中で調製し、10μl/分の流速で、それぞれ、αシヌクレインモノマーについての約30反応単位(RU)、ヒトαシヌクレイン繊維についての約40RU及び、マウスαシヌクレイン繊維についての約300RUの固定化レベルに到達するように別個のフローセル表面に固定化させた。リガンド固定化及び動態アッセイ両方のためのランニングバッファーとして、バッファーHBS-EP+(GE healthcare Bio-Sciences AB)を使用した。次いで、モノクローナル6470ウサギIgG1(配列番号47及び48を含む)及びモノクローナル6470ウサギFab(配列番号47及び49を含む)の、3種のリガンドとの結合を測定した。モノクローナルIgG又はFab抗体を、800nM~0.195nMの7種の異なる濃度で、3つのフローセルにわたって、3分の接触時間及び30分の解離時間を用い、100μl/分の流速で注入した。10μl/分で90秒間の50mM HClの1回の注入及び10μl/分で60秒間の50mM HClの別の注入によって表面を再生した。データは、バルク寄与なし(RI=0)及びIgG形式のためのグローバルRmaxを仮定した二価解析物モデル並びに柔軟なバルク寄与(ローカルRI)及びグローバルRmaxを用いる1:1モデルを使用してBiacore T200評価ソフトウェア(バージョン3.0)を使用して解析した。
【0254】
固定化された標的とのIgG及びFab両方の結合の動態値が表2に示されている。IgG形式は、解離定数KDが、ヒト繊維に対してよりも10倍より小さいので、ヒトαシヌクレインモノマーとの親和性と比較して、ヒトαシヌクレイン繊維に向けた明らかな選択的親和性を示した。
【表2】
【0255】
ベータシヌクレインとの結合
ヒトαシヌクレインに対して産生された抗体のヒトベータシヌクレインとの結合を、rペプチドベータシヌクレインを使用するウエスタンブロットによって試験した。1マイクログラムのシヌクレインを4~12% Bis/Tris ゲルに流し、PVDFメンブレン上にブロットした。メンブレンを、3% BSA及び0.1% Tween20を有するPBS中でブロッキングした。ブロッキングされたブロットに6470ウサギIgG1抗体を添加し、室温で1時間インキュベートし、PBS、0.1% Tween20を用いて洗浄し、二次抗体-HRPコンジュゲート(抗ウサギH+L HRPコンジュゲート、Bethyl、A120-101P)とともに1時間インキュベートした。ブロットを、0.1% Tween20を有するPBS、PBS及び水で十分に洗浄した。ECLウエスタンブロット基質(Pierce)の添加後に化学発光を測定した。
図4(A)レーン3に示されるように、6470ウサギIgG1は、ヒトベータ-シヌクレインと結合しない。
【0256】
エピトープマッピング
NMR
ヒトαシヌクレインを、タンパク質が任意のタグを伴わずに発現されるようにpET28a発現ベクター中にクローニングした。構築物を大腸菌BL21(DE3)細胞(Stratagene)中に形質転換し、細胞を、重水(D2O)の存在下及び不在下でC13標識されたDL-グルコース及びN15標識された硫酸アンモニウムを有する規定の培地で増殖させた。OD600nm=1で300mM IPTGを用いて発現を誘導し、培養物を30℃で4時間インキュベートした。細胞をペレットにし、100ml溶解バッファー(20mM Tris/HCl pH8.0、25ユニットのベンゾナーゼ(Merck Millipore)、完全EDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル(2錠、Roche)及び10mgリゾチーム(Sigma))中での3回の凍結解凍サイクルによって溶解した。溶解物を18000rpmでの遠心分離によって清澄化し、清澄化された溶解物を0.22μmフィルター(Stericup、Millipore)に通した。滅菌溶解物を、20mM Tris/HCl pH8.0、5CVを用いて平衡化したMonoQ 10/100GL(GE Healthcare)の頂部にロードし、同バッファー中500mMへのNaCl勾配を用いてタンパク質を溶出させた。最も純粋な画分のさらなる精製を、20mM Tris/HCl pH8.0での5倍希釈後MonoQ 10/100GLカラムで反復した。最も純粋な画分をプールし、10kDa MWCO遠心濃縮機(Centriprep、Millipore)を用いて濃縮し、HiLoad 26/600 Superdex75カラム(GE Healthcare)でのサイズ排除によって精製し、25mMリン酸ナトリウムバッファー、100mM NaCl(pH6.4)で溶出した。Superdex 75カラムから得た画分をプールし、ナトリウムアジド(0.02%最終濃度)及びAEBSF(10、μM最終濃度)を添加した。最終タンパク質濃度は、およそ5mg/mlであった。
【0257】
ウサギ6470 Fab(配列番号11のVL及び配列番号13のVHを含む、また配列番号47及び49を含む)を、Hisタグが付いた実体としてCHO SXEにおいて発現させ、His-タグアフィニティークロマトグラフィー、上清からのタンパク質の、HisTrap Excel(GE Healthcare)との結合及びPBS中250mMのイミダゾールを用いる溶出によって上清から精製した。溶出プールをHiTrap GammaBind Plus Sepharose(GE Healthcare)上にロードし、PBSを用いてカラムを洗浄し、0.1Mグリシン-HCl pH2.6を用いてタンパク質を溶出し、0.75Mリン酸ナトリウムpH9を用いてpHをpH6に調整した。溶出されたFab-Hisタンパク質を、HiPrep 26/10脱塩カラムでNMRバッファー(25mMリン酸ナトリウムpH6.4、100mM NaCl)にバッファー交換した。Fab-Hisタンパク質画分を濃縮し、プロテアーゼ阻害剤AEBSF(10μM最終濃度)及びナトリウムアジド(0.02%最終濃度)を添加し、その後、Millex GV 0.22μmフィルターでフィルター滅菌した。結晶学のために、濃縮された6470 Fab-HisをHiLoad 26/600 Superdex 75(GE Healthcare)カラム平衡での分取サイズ排除クロマトグラフィーによって精製し、25mMリン酸ナトリウムpH6.4、100mM NaClで溶出した。最終プールの純度は、>99%純度でUPLC-SECで試験した。滅菌のために最終プールをMillex GV 0.22mmフィルターに通した。
【0258】
α-シヌクレインの骨格割当
NMRサンプルは、通常、5mm Shigemi管中の360μM 13C/15N標識された、又は430μM 2H/13C/15N標識されたヒトα-シヌクレインのタンパク質濃度を有する、容量350μlとした。バッファー条件は、100mM NaCl、25mMリン酸ナトリウムpH6.4、10μM AEBSF、0.02% NaN3とした。すべての実験は、低温貯蔵用冷却プローブが取り付けられた600MHz Bruker AVIII又は800MHz Bruker AVIIスペクトロメーターのいずれかで20℃で記録した。タンパク質、HN(i)-N(i)-N(i±1)中の残基の骨格NMRシグナル間の連続接続は、それぞれ15N、15N及び1H次元において、28、28及び10ppmのスペクトル幅並びに117(F1)、117(F2)及び140(F3)ミリ秒の獲得時間を用い、増分当たり8回スキャン及び1.5秒の緩和遅延を用いて記録された、3D(H)N(CA)NNH実験(Weisemannら、1993年「NHの連続割当のための3D三重共鳴NMR技術並びに15N-及び13C-標識タンパク質における15N共鳴」(3D Triple-resonance NMR techniques for the sequential assignment of NH and 15N resonances in 15N- and 13C-labelled proteins.)J.Biomol.NMR 3)を使用して行った。10%(40000のハイパーコンプレックス(hyper-complex)点のうち4000)のサンプリング密度を有する均一でないサンプリングを採用して、2.75日の総取得時間をもたらした。TROSY-HNCA(Grzesiek及びBax、1992年「31kDaのタンパク質に適用された改善された3D三重共鳴NMR技術」(Improved 3D triple-resonance NMR techniques applied to a 31 kDa protein.)J.Magn.Reson.第96巻、432~440頁;Salzmannら、1998年「三重共鳴実験におけるTROSY:大きなタンパク質の連続NMR割当の新規展望」(TROSY in triple-resonance experiments:new perspectives for sequential NMR assignment of large proteins.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.第95巻、13585~90頁)及びTROSY-HNCACB(Wittekind及びMueller、1993年「HNCACB、アミド-プロトン及び窒素共鳴を、タンパク質中のアルファ-及びベータ-炭素共鳴と関連づけるための高感度3D NMR実験」(HNCACB,a High-Sensitivity 3D NMR Experiment to Correlate Amide-Proton and Nitrogen Resonances with the Alpha- and Beta-Carbon Resonances in Proteins.)J.Magn.Reson.Ser.B 第101巻、201~205頁;Salzmannら、1999年「大きなタンパク質の連続NMR割当のTROSY型三重共鳴実験」(TROSY-type Triple Resonance Experiments for Sequential NMR Assignment of Large Proteins.)J.Am.Chem.Soc.第121巻、844~848頁)実験を使用して、連続接続が確認され、残基種類が同定された。TROSY-HNCA実験は、それぞれ13C、15N及び1H次元において23、28、10ppmのスペクトル幅及び12.1(F1)、21.7(F2)及び100(F3)ミリ秒の取得時間(増分当たり8回スキャン、1.5秒の緩和遅延、1日の総取得時間)を用いて記録したが、TROSY-HNCACBは、それぞれ13C、15N及び1H次元において56、28、10ppmのスペクトル幅及び8.2(F1)、21.7(F2)及び100(F3)ミリ秒の取得時間(増分当たり8回スキャン、1.5秒の緩和遅延、1.7日の総取得時間)を用いて記録した。骨格カルボニル割当は、それぞれ13C、15N及び1H次元において10、29、10ppmのスペクトル幅及び80(F1)、21.7(F2)及び150(F3)ミリ秒の取得時間(増分当たり8回スキャン、1.5秒の緩和遅延)を用いて記録されたTROSY-HNCOスペクトルから得た(Grzesiek及びBax、1992年「31kDaのタンパク質に適用された改善された3D三重共鳴NMR技術」(Improved 3D triple-resonance NMR techniques applied to a 31 kDa protein.)J.Magn.Reson.第96巻、432~440頁;Salzmannら、1998年「三重共鳴実験におけるTROSY:大きなタンパク質の連続NMR割当の新規展望」(TROSY in triple-resonance experiments: new perspectives for sequential NMR assignment of large proteins.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.第95巻、13585~90頁)。15%(8050のハイパーコンプレックス(hyper-complex)点のうち1208)のサンプリング密度を有する均一でないサンプリングを採用して、19時間の総取得時間をもたらした。NMRスペクトルは、NMRPipe(Delaglioら、1995年「NMRPipe:UNIX(登録商標)パイプをベースとする多次元スペクトル処理システム」(NMRPipe:a multidimensional spectral processing system based on UNIX(登録商標) pipes.)J.Biomol. NMR 第6巻、277~93頁)を使用して処理し、線形予測を使用して、最大1倍まで窒素における有効な取得時間を拡大した。均一でないサンプリングされたデータを、Harvard反復性ソフト閾値法を使用して再構築し(Hybertsら、2012年)、データを次のフーリエ数に再構築し、間接取得時間を最大60%まで増大した。データ解析はSparky(Goddard及びKneller、D.G.SPARKY 3.カリフォルニア大学、サンフランシスコ)を使用して実施し、133残基のアミドプロトン及び窒素共鳴の割当が得られ、これは、残基の99%に相当する(プロリン残基及びN末端メチオニンを除く)。
【0259】
10%モル過剰の未標識6470 Fabを含有する2H/13C/15N標識されたヒトαシヌクレインの150μMのサンプルを使用して、6470Fab結合部位のマッピングを実施した。αシヌクレインの骨格割当について上記で記載されたものと同一のバッファーでサンプルを調製した。αシヌクレイン/Fab複合体で記録されたTROSY-HNCO(Grzesiek及びBax、1992年「31kDaのタンパク質に適用された改善された3D三重共鳴NMR技術」(Improved 3D triple-resonance NMR techniques applied to a 31 kDa protein.)J.Magn.Reson.第96巻、432~440頁;Salzmannら、1998年「三重共鳴実験におけるTROSY:大きなタンパク質の連続NMR割当の新規展望」(TROSY in triple-resonance experiments:new perspectives for sequential NMR assignment of large proteins.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.第95巻、13585~90頁)スペクトルの、遊離αシヌクレインで記録された等価対照スペクトルとの比較によって、1H、15N及び13C化学シフト変化を決定した。遊離αシヌクレインの対照TROSY-HNCO実験は、それぞれ13C、15N及び1H次元において10、28及び10ppmのスペクトル幅及び80(F1)、22(F2)及び150(F3)ミリ秒の取得時間(増分当たり16回スキャン、1.5秒の緩和遅延)を用いて記録した。25%(8050のハイパーコンプレックス(hyper-complex)点のうち2013)のサンプリング密度を有する均一でないサンプリングを採用して、2.7日の総取得時間をもたらした。αシヌクレイン/Fab複合体のTROSY-HNCO実験は、それぞれ13C、15N及び1H次元において10、28及び10ppmのスペクトル幅及び80(F1)、21.7(F2)及び80(F3)ミリ秒の取得時間(増分当たり32回スキャン、1.5秒の緩和遅延)を用いて記録した。25%(4477のハイパーコンプレックス(hyper-complex)点のうち1119)のサンプリング密度を有する均一でないサンプリングを採用して、2.8日の総取得時間をもたらした。NMRスペクトルは、NMRPipe(Delaglioら、1995年「NMRPipe:UNIX(登録商標)パイプをベースとする多次元スペクトル処理システム」(NMRPipe:a multidimensional spectral processing system based on UNIX(登録商標) pipes.)J.Biomol.NMR 第6巻、277~93頁)を使用して処理し、NUSデータの再構築は、mddnmrを使用して実施した。「多次元分解を用いる均一でないサンプリングスペクトルの解析」(Analysis of non-uniformly sampled spectra with Multi-Dimensional Decomposition.)Prog.Nucl.Magn.Reson.Spectrosc.、第59巻、271~292頁)。窒素次元の有効な取得時間は、データ再構築の際に最大1倍まで増大された。
【0260】
化学シフト変化は、カルボニル化学シフトを含むように、組み合わされた化学シフト変化(Δδ)を算出するために使用された方程式への修飾を除いて、本質的にこれまでに記載されたように(Veverkaら、2008年「mTORのホスファチジン酸及び新規クラスの阻害剤との相互作用の構造的特性決定:mTORの分子媒介性調節におけるFRBドメインの中心的役割の説得力のある証拠」(Structural characterization of the interaction of mTOR with phosphatidic acid and a novel class of inhibitor: compelling evidence for a central role of the FRB domain in small molecule-mediated regulation of mTOR.)Oncogene 第27巻、585~95頁)、最小シフトアプローチ(Williamsonら、1997年「NMR化学シフト撹乱によるメタロプロテイナーゼ-2の組織阻害剤のN末端ドメインでのマトリックスメタロプロテイナーゼの結合部位のマッピング」(Mapping the binding site for matrix metalloproteinase on the N-terminal domain of the tissue inhibitor of metalloproteinases-2 by NMR chemical shift pertubation.)Biochemistry 第36巻、13882~9頁)を使用して解析し、以下の方程式が得られた:
【数1】
[式中、Δδ
HN、Δδ
N及びΔδ
Cは、それぞれ
1H、
15N及び
13C化学シフトにおける相違である]。αN及びαCは、それぞれ0.2及び0.35のスケーリング係数に対応し、アミドプロトン、窒素及びカルボニル化学シフトの化学シフト範囲における相違を説明するために使用される。
【0261】
αシヌクレイン上のFab結合部位(エピトープ)を同定するために、組み合わされた最小シフト対タンパク質配列のヒストグラムを使用して、大幅に撹乱されたシグナルを含有するαシヌクレインの領域を示した。個々のアミノ酸の組み合わされた化学シフト変化の大きさが、すべてのアミノ酸の組み合わされた化学シフト変化の平均及びその平均からの1つの標準偏差の閾値を超えた場合には、これらの残基はFab結合部位中の可能性ある接触残基としてさらなる評価のために選択された。
【0262】
大幅に撹乱された残基を、最小シフトが、すべての算出されたシフトの平均及び1つの標準偏差よりも少なくとも大きいものと同定した。4つの異なる閾値が、Fabによって結合された残基を同定するために適用された。結合部位に含まれる残基を、最小シフトがすべての算出されるシフトの平均及び1つの標準偏差を超えるもの(>0.018925である)、最小シフトがすべての算出されるシフトの平均及び2つの標準偏差を超えるもの(>0.032049である)、最小シフトがすべての算出されるシフトの平均及び3つの標準偏差を超えるもの(>0.045174である)、最小シフトがすべての算出されるシフトの平均及び4つの標準偏差を超えるもの(>0.058299である)のように増大するストリンジェンシーを用いてスコア化する。この解析では、プロリン残基は、アミドプロトンを含有しないので同定され得ない。
【0263】
したがって、6470 Fabのエピトープは、すべての算出されるシフト:D121、N122、E123、A124、Y125、E126、M127、S129、E130、Y133、Q134、D135及びY136の平均及び1つの標準偏差;すべての算出されるシフト:E123、A124、Y125、E126、M127、S129、E130、D135及びY136の平均及び2つの標準偏差:すべての算出されるシフト:すべての算出されるシフト:Y125、M127、S129及びD135の平均及び3つの標準偏差;すべての算出されるシフト:M127、S129及びD135の平均及び4つの標準偏差のように増大するストリンジェンシーを用いて定義される。
【0264】
図4Bに示されるように、抗体6470は、NMR研究によって、ヒトαシヌクレイン(配列番号10)の以下の残基すべて(平均+1SD)D121、N122、E123、A124、E126、E130、Y133、Q134及びY136と結合するとわかり、加えて、少なくとも以下の残基(平均+3SD)Y125、M127、S129及びD135と結合するとわかった。
【0265】
ペプチドマッピング
6470によって結合されるエピトープのさらなる特性決定を、ヒトαシヌクレインのC末端領域を代表する、及びそれを覆う短い(通常、9マー又は10マー)ペプチドを使用することによって実施した。これらは、比較表面プラズモン共鳴アッセイにおいて使用して、任意のものが、抗体のBiacoreチップ上に固定化されたモノマーαシヌクレイン又は事前形成αシヌクレイン繊維のいずれかとの結合を阻害可能か否かを試験した。次いで、最大レベルの阻害を示すペプチドを、正確なエピトープを確認するための抗体との共結晶化研究のために選択した。
【0266】
ペプチドは、Peptide Protein Research Ltd.、ビショップスウォルサム、英国によって供給され、Atherton及びSheppardの方法に従ってFmoc固相ペプチド化学によって合成した(参照:Atherton,E.;Sheppard,R.C.(1989).「固相ペプチド合成:実際的なアプローチ」(Solid Phase peptide synthesis:a practical approach.)Oxford、England:IRL Press)。N及びCペプチド末端にそれぞれ、アセチル及びアミド基キャップし、α-シヌクレインのN末端及びC末端を表すペプチドの場合を除き、この場合には、それぞれアミノ及びカルボキシル基は遊離のままとした。ペプチド保存溶液をDMSO中、10mMで調製した。ペプチドの全リストが、表3に示されている。
【表3】
【0267】
組換えヒトαシヌクレインモノマー及び事前形成されたαシヌクレイン繊維を、Biacore3000機器(GE Healthcare)を使用してCM5チップ上に固定化した。ランニングバッファーとしてHBS-EP(GE Healthcare)10μl/分の流速での100μlの、50mMのN-ヒドロキシスクシンイミド(hydroxysuccimide)及び200mMの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドの新鮮1:1(v/v)混合物の注入によるカルボキシメチルデキストラン表面の活性化後、10mMアセテートpH5.0中、5μMで、100μlのモノマー及び繊維を別個のフローセルに注入することによってカップリングを達成した。参照フローセルを同じ方法で活性化し、次いで、1MエタノールアミンHCl pH8.5の50μlパルスですべてのフローセル表面を不活性化した
【0268】
ペプチド溶液を、ランニングバッファー中、100μMで調製し、ペプチドブランク対照を、ランニングバッファーでのDMSOの100中の1希釈として調製した。6470ウサギFab(配列番号47及び49を含む)の溶液をランニングバッファー中50.5nMで調製し、その後、198μlを2μlのブランク対照又は希釈ペプチドいずれかとともにプレインキュベートして、50nM Fab及び1μMペプチド又は対照の最終混合物を得た。各サンプルのセンソグラムを、30μlの混合物を10μl/分で注入すること及び各注入の5秒前に報告点を記録することによって記録した。40mM HClの2回の10μl注入及び5mM NaOHの1回の注入によって各サイクルの最後にチップを再生した。対照サイクルは、ペプチドサイクルと交互とした。
【0269】
各ペプチドの阻害の程度を、隣接対照サイクルの平均のものと比較した、報告点で測定された応答単位におけるパーセンテージ変化として算出した。
【0270】
各αシヌクレインペプチドの阻害のレベルは、
図5に示されている。αシヌクレインモノマー又は繊維いずれかに対する6470 Fabの有意な阻害は、3種のペプチド:AS121~130、AS123~132及びAS125~134についてのみ観察され、AS123~132について、抗体のそれぞれモノマー及び繊維との結合の37%及び54%で最高レベルの阻害が観察された。ペプチドAS125~134について、それぞれ34%及び52%でわずかに低いレベルの阻害が得られ、これは、エピトープの主成分が残基125~132を含んでいたことを示す。ペプチドAS121~130は、それぞれ20%及び27%の低いレベルで阻害し、3種のペプチドすべてに共通する残基:125~130が、エピトープに最も寄与することを示唆した。
【0271】
6470抗体のエピトープは、少なくとも配列YEMPSEEGを含むと思われるので、6470Fabを用いる共結晶化研究においてAS123~132ペプチドを調べた。
【0272】
X線結晶学
複合体を調製するために、およそ10mg/mlの1mlの精製6470ウサギFabを、αシヌクレインペプチド123~132(EAYEMPSEEG)と、1:2のFab:ペプチドモル比で混合し、室温で1時間インキュベートした。結晶成長に適した条件は、市販の結晶化スクリーン(Qiagen)を使用したシッティングドロップ蒸気拡散法によって同定した。回折品質の結晶を作製するために、ハンギングドロップ蒸気拡散法を使用した。
【0273】
6470 Fab-ペプチド123~132複合体のために、1μlのタンパク質溶液を、1.6Mの硫酸アンモニウム及び0.1M HepesバッファーpH7.5を含有する1μlのリザーバー溶液と混合した。結晶を回収し、1.6M硫酸アンモニウム、0.1M HepesバッファーpH7.5及び20%グリセロールを含有する凍結保護溶液を短時間通過させた後に液体窒素中で瞬間凍結した。結晶を回収し、0.2M硫酸アンモニウム及び35%(v/v)ポリエチレングリコール8000を含有する凍結保護溶液を短時間通過させた後に液体窒素中で瞬間凍結した。
【0274】
Diamond Synchrotron、ジドコット、オックスフォードシャー、英国のbeamline i04-1で、2.9Åまでの回折データを6470 Fab-ペプチド123~132の単結晶から集め、Mosflm、Aimless及びTruncateを使用して処理した。複合体の構造を、社内のファブの座標を検索モデルとして使用して、Phaserで分子を置換することによって解析した。
【0275】
精密化及びモデル構築のサイクルを、CNS(Brungerら、(2007年)Nature Protocols 第2巻、2728~2733頁)及びCOOT(Emsleyら、(2004年)Acta crystallographica.SectionD、Biological crystallography 第60巻、2126~2132頁)を使用して、すべての精密化統計値が両モデルに収束するまで実施した。モデル幾何学は、Molprobity43を使用して確認した。分子可視化は、Pymol44を用いて作製した。以下に記載されるエピトープ情報は、Fab/ペプチド接触面の4Å距離内の原子を考慮することによって導いた。データ収集及び精密化統計値は、表4A及び表4Bに示されている。
【表4】
【表5】
【0276】
括弧内の値は、高分解能シェルを指す。Rsym=Σ|(I-<I>)|/Σ(I)(式中、Iは、観察された積分強度であり、<I>は、複数の測定値から得られた平均積分強度であり、総和はすべての観察された反射にわたる)。Rwork=Σ||Fobs|-k|Fcalc||/Σ|Fobs|(式中、Fobs及びFcalcは、それぞれ、観察された及び算出された構造因子である)。Rfreeは、精密化計算から無作為に選択され、省略された反射データの5%を使用してRworkとして算出される。
【0277】
重鎖及び軽鎖残基と、ペプチド間の主接触が、表5に示されている。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【0278】
要約すると、エピトープは、残基E123、Y125、E126、M127、P128、S129、E130及びE131を含む。
図6は、ペプチド123~132との複合体中の6470 Fabを示し、
図7及び8は、それぞれ、ペプチド123~132と、6470 Fab重鎖及び軽鎖の間の接触を示す。
【0279】
(例4)
抗体ヒト化及び親和性成熟
ウサギ抗体6470を、ウサギV領域からヒト生殖系列抗体V領域フレームワークにCDRをグラフトすることによってヒト化した。抗体の活性を回復させるために、ヒト化配列中でウサギV領域に由来するいくつかのフレームワーク残基も保持した。これらの残基は、Adairら(1991年)(WO91/09967)によって概説されるプロトコールを使用して選択した。ウサギ抗体(ドナー)V領域配列の、ヒト生殖系列(アクセプター)V領域配列とのアラインメントは、
図9及び10に、設計されたヒト化配列と一緒に示されている。ドナーからアクセプター配列にグラフトされたCDRは、CDR-H1を除いてKabat(Kabatら、1987年)によって定義されるとおりであるが、CDR-H1では、組み合わされたChothia/Kabat定義が使用されている(Adairら、WO91/09967を参照のこと)。
【0280】
いくつかのバリアント重鎖及び軽鎖V領域配列をコードする遺伝子を、DNA2.0 Inc.による自動化合成アプローチによって設計し、構築した。いくつかの場合には、CDR内の突然変異を含むオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発によってVH及びVK遺伝子を修飾することによって、重鎖及び軽鎖V領域のさらなるバリアントを作出した。哺乳動物細胞における一過性の発現のために、ヒト化軽鎖V領域遺伝子を、ヒトカッパ鎖定常領域(Km3アロタイプ)をコードするDNAを含有するUCB軽鎖発現ベクターpMhCK中にクローニングした。ヒト化重鎖V領域遺伝子を、ヒンジ安定化突然変異S241Pを有するヒトガンマ-4重鎖定常領域(Angalら、Mol.Immunol.1993年、第30巻(1号):105~8頁)をコードするDNAを含有するUCBヒトガンマ-4重鎖発現ベクターpMhγ4PFL中にクローニングした。ウサギV領域(配列番号11及び13)及びヒト定常領域を含むキメラ6470もまた、同様に調製し、対照薬抗体として使用した。得られた重鎖及び軽鎖ベクターのExpi293(商標)懸濁液細胞への同時トランスフェクションは、ヒトIgG4Pにおけるヒト化組換え抗体の発現をもたらした。
【0281】
ヒトV領域IGKV1-16及びJK4 J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)を、抗体6470軽鎖CDRのアクセプターとして選択した。グラフトgL3中の軽鎖フレームワーク残基は、残基48及び72を除いてすべてヒト生殖系列遺伝子由来であり(配列番号15を参照して)、ドナー残基グルタミン(Q48)及びグルタミン(Q72)は、それぞれ保持された。残基Q48及びQ72の保持は、ヒトαシヌクレイン繊維と結合するためにヒト化抗体の完全効力にとって必須であった(
図9及び表6)。
【表7】
【0282】
ヒトV領域IGHV3~23及びJH4 J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)を、抗体6470の重鎖CDRのアクセプターとして選択した。多数のウサギ抗体と共通して、抗体6470のVH遺伝子は、選択されたヒトアクセプターよりも短い。ヒトアクセプター配列とアラインされると、抗体6470のVH領域のフレームワーク1は、ヒト化抗体では保持されているN末端残基を欠く(
図10)。6470ウサギVH領域のフレームワーク3はまた、ベータシート鎖D及びE間のループ中の2つの残基(75及び76)も欠き、ヒト化グラフトでは、ギャップは、選択されたヒトアクセプター配列に由来する対応する残基(リシン75、K75;アスパラギン76、N76)で埋められる(
図10)。グラフトgH23及びgH36中の重鎖フレームワーク残基、はすべて、残基24、47、48、49、73、78及び97(配列番号23及び31を参照して)を含む群に由来する1個又は複数の残基を除いてヒト生殖系列遺伝子に由来であるが、ドナー残基バリン(V24)、チロシン(Y47)、イソロイシン(I48)、グリシン(G49)、セリン(S73)、バリン(V78)及びアルギニン(R97)はそれぞれ保持された。残基V24、Y47、I48、G49及びR97の保持は、ヒトαシヌクレイン繊維と結合するためにヒト化抗体の完全効力にとって必須であった。
【0283】
さらに、ヒト化VH遺伝子を、10個のヒスチジン残基のC末端タグを有するヒトガンマ-1CH1ヒンジドメインをコードするDNAを含有する、UCBヒトFab-HIS発現ベクターpMhFab10HIS中にクローニングした。ヒスチジンタグは、アフィニティークロマトグラフィーによる発現されたFabの精製を容易にする。得られた重鎖及び軽鎖ベクターの、Expi293(商標)懸濁液細胞への同時トランスフェクションは、Fab-HIS形式でのヒト化組換え抗体の発現をもたらした。
【0284】
親和性成熟は、WO2014198951に記載されるIOTA法に従って実施した。X線結晶学によって決定された複合体における6470ウサギFabと、αシヌクレインペプチドEAYEMPSEEG(123~132)の間の界面を解析に付して、αシヌクレインタンパク質に対する6470ウサギFabの親和性を改善する可能性がある突然変異を同定した。IOTAは、タンパク質界面又は結合部位での所与の接触原子種の可能性を決定するための統計的に有望なツールである。
【0285】
ヒトαシヌクレインモノマー又は繊維と結合するための抗体の効力に対するこれらの突然変異の効果を評価するために、6470ウサギFab(表7A)における突然変異を最初に研究した。相互作用動態は、例3に記載されるようにBiacore T200機器で表面プラズモン共鳴技術を使用して決定した。CDRL1中の残基33(配列番号11を参照して)を、アスパラギン(N)からアルギニン(R)又はリシン(K)に突然変異させた:残基33のアルギニンへの突然変異は、αシヌクレインに対する親和性の増大をもたらした(表7A)。CDRH2中の残基55をセリン(S)からアスパラギン(N)に突然変異させ、CDRH3中の残基99をアスパラギン(N)からリシン(K)又はグルタミン(Q)又はヒスチジン(H)又はトリプトファン(W)に突然変異させ(配列番号13を参照して)、残基55のアスパラギンへの、及び残基99のヒスチジンへの突然変異は、αシヌクレイン(表7A)に対する親和性の増大をもたらした。CDRH3(N99H)中のアスパラギンの突然変異はまた、潜在的な脱アミド化部位を除する。
【表8】
【0286】
最後に、新規に同定された突然変異はまた、これまでに作製された全長ヒト化抗体においても試験し(表6)、ヒト繊維に対するその選択性を試験した(表7B)。相互作用動態は、例3に記載されるようにBiacore T200機器で表面プラズモン共鳴技術を使用して決定した。表7Bに示されるように、軽鎖中位置33(配列番号19を参照して)並びに重鎖中56及び102(配列番号27及び35を参照して)での突然変異は、ヒト繊維に対する親和性の増大をもたらし、これは、血液脳関門を脳へと越え、その標的と結合することを必要とする抗体の有利な特徴である。抗体が全身に投与されると、抗体が、複雑な生理学的関門を越えるための制限された系しか有さないので、投与された多量の抗体が失われる場合がある。
【表9】
【0287】
バリアントヒト化抗体鎖及びその組合せを発現させ、親抗体に対するその効力、その生物物理学的特性及び下流処理に対する適合性について評価した。
【0288】
(例5)
ヒト化抗体の特性決定
6種のヒト化6470 IgG4P抗体(表8、表1中の配列)で生物物理学的特性決定を実施した。
【表10】
【0289】
すべての抗体を、熱安定性(Tm)、実験的pI、疎水性、溶解度(PEG沈殿アッセイ)及び空気/液体界面での凝集安定性に基づいてスクリーニングして、突然変異が、特に、親和性、安定性及び開発可能性に関して何らかの影響を及ぼすか否かを調べた。
【0290】
スクリーニングプロセスはまた、抗体が以下:
1.gL3gH23及びgL3gH36のみの重鎖CDR3におけるAsn(102)Sモチーフ(脱アミド化)、
2.すべての抗体の軽鎖CDR3におけるAsn(98)Asp(99)モチーフ(脱アミド化)、
3.N33突然変異体を除くすべての軽鎖CDR1におけるAsn(32)Asn(33)モチーフ(脱アミド化)、
4.すべての抗体の軽鎖CDR3におけるAsp(99)Gモチーフ(Asp異性化)
を有するので、化学安定性(脱アミド化、アスパラギン酸異性化傾向)の評価も含んでいた。
【0291】
これらの部位でのキメラ不安定性は、生成物不均一性及び免疫原性をもたらし得る。
【0292】
熱安定性(Tm)測定
Thermofluorアッセイを使用して、融解温度(Tm)又はアンフォールディングの中点の温度を決定した。この方法では、蛍光色素SYPRO(登録商標)Orangeを使用して、温度が高まるにつれ、露出するようになる疎水性領域と結合することによって、タンパク質アンフォールディングプロセスをモニタリングした。
【0293】
反応ミックスは、5000×保存溶液からPBSで希釈された、5μlの30×SYPRO(登録商標)Orange色素(Invitrogen(商標))及び45μlの0.12mg/mlのサンプル(PBS pH7.4中)を含有していた。ミックスの約10μlを384PCR光学ウェルプレート中に4連で分注し、7900HT高速リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems(商標))で実行した。PCRシステム加熱デバイスを20℃で99℃に設定し、1.1℃/分の増加速度を用いた。電荷カップリング装置は、ウェルにおいて蛍光変化をモニタリングした。以下に記載されるように、強度増大をプロットし、傾斜の屈曲点(複数可)を使用してTmを算出した。
【0294】
すべての抗体について2つのアンフォールディング遷移が観察された。第1のものはCH2ドメインのTmに起因し得る。第2のものは、文献(Garber E、Demarest SJ.Biochem Biophys Res Commun.2007年4月13日;第355巻(3号):751~7頁)によれば、Fabアンフォールディングドメイン及びCH3ドメインのTmの平均に起因し得る。表9には、結果が要約されている。
【表11】
【0295】
熱安定性は、IgG4分子について、正常な予測範囲内である(Headsら「IgG1及びIgG4 Fabドメインの相対的安定性:軽鎖-重鎖間ジスルフィド結合構造の影響」(Relative stabilities of IgG1 and IgG4 Fab domains:influence of the light-heavy interchain disulfide bond architecture)Protein Sci.2012年9月;第21巻(9号):1315~22頁)。
【0296】
実験pI
6470抗体の実験pIは、全キャピラリー画像化cIEF iCE3(商標)システム(ProteinSimple)を使用して得た。
【0297】
サンプルは、以下を混合することによって調製した:30μLのサンプル(HPLC等級水中、1mg/mLストックから)、35μLの1%メチルセルロース溶液(Protein Simple)、4μLのpH3~10両性電解質(Pharmalyte)、0.5μLの4.65及び0.5μLの9.77合成pIマーカー(Protein Simple)、12.5μLの8M尿素溶液(Sigma-Aldrich(登録商標))。HPLC等級水を使用して最終容量を100μLに構成した。混合物を短時間ボルテックス処理して、完全混合を確実にし、解析の前に10,000rpmで3分間遠心分離して気泡を除去した。サンプルを1.5kVで1分間、続いて、3kVで5分間集束させ、ProteinSimpleソフトウェアを使用してキャピラリーのA280像をとった。得られた電気泳動図をiCE3ソフトウェアを使用して最初に解析し、pI値を割り当てた(pIマーカー間の線形関係)。次いで、較正された電気泳動図をEmpower(登録商標)ソフトウェア(Waters)を使用して統合した。
【0298】
6470抗体のすべての実験pIは、8.4~9.2の範囲にあった。分子間で電荷を有する種の割合にわずかな相違があったが、IgG4P分子についてこれは予測されない。すべてのpIは高く、したがって、抗体の製造プロセスにおいて補助するであろう。
【0299】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、分子を増大する疎水性の順に分離する。分子は、高濃縮の極性塩の存在下で疎水性固定相と結合し、塩の濃度が低下するにつれ移動相中に放出される。保持時間が長いほど、大きい疎水性と一致する。
【0300】
2mg/mLのサンプルを、1.6M硫酸アンモニウム及びPBS(pH7.4)を用いて1:2希釈した。5μg(5μL)のサンプルを、蛍光検出器を備えたAgilent 1200バイナリーHPLCに直接に接続されたDionex ProPac(商標)HIC-10カラム(100mm×4.6mm)上に注入した。分離は、内因性蛍光(励起波長及び発光波長、それぞれ280nm及び340nm)によってモニタリングした。
【0301】
バッファーA(0.8M硫酸アンモニウム100mMリン酸 pH7.4)及びバッファーB(100mMリン酸 pH7.4)を使用し、以下のとおりの勾配溶出を使用してサンプルを解析した、(i)0% Bで2分保持、(ii)30分で0から100% Bの直線勾配(0.8mL/分)(iii)カラムを100% Bを用いて2分間洗浄し、次のサンプル注入の前に0% B中で10分、再平衡化した。カラム温度は、20℃で維持した。
【0302】
低及び高疎水性を示す標準及び対照も同一実行順序で解析し、保持時間の正規化を可能にした(表11)。以下の方程式を使用して、低及び高疎水性標準に対してサンプルの保持時間(RT)を正規化した
[(サンプル(RT)-低標準(RT)/高標準(RT)-低標準(RT)]×100
【表12】
【0303】
すべての6470抗体及び突然変異体が、同様の正規化保持時間及び同様の低疎水性を示した。市販の治療用抗体は、低疎水性を示す傾向がある(Jainら「臨床段階抗体ランドスケープの生物物理学的特性」(Biophysical properties of the clinical-stage antibody landscape)Proc Natl Acad Sci U S A.2017年1月31日;第114巻(5号):944~949頁)。低疎水性は、製造の間、安定性を補助する(すなわち、凝集を低減する)。
【0304】
ポリエチレングリコール(PEG)沈殿アッセイを使用する溶解度測定
ポリエチレングリコール(PEG)沈殿アッセイを使用してコロイド安定性を解析した。PEGを使用して、PEGの濃度(w/v)を増大すること及び溶液中に残存するタンパク質の量を測定することによって量的に定義可能な方法でタンパク質溶解度を低減した。このアッセイは、従来の濃度法を使用せずに高濃度溶解度の効果を模倣するように働いた。6470抗体のPEG誘導性沈殿をPBS pH7.4、50mM酢酸ナトリウム/125mM塩化ナトリウムpH5.0(酢酸pH5)及び20mM L-ヒスチジン、140mM NaCl、pH6.0中、7~18%のPEG-3350の存在下で調べた。サンプルをバッファー交換し、必要な場合には、透析を使用して濃度を2mg/mLに調整した。非平衡沈殿を最小にするために、サンプル調製は、2×タンパク質及び2×PEG溶液を1:1容量比で混合することからなるものとした。混合後、非平衡凝集を再溶解するために、サンプルを37℃で30分間インキュベートした。20℃で一晩インキュベートした後、サンプルを60分間遠心分離した(4000g)。上清のアリコートを半容量の96ウェル光学プレートに移し、プレートリーダーBMG Labtech FLUOstar(登録商標)Omega LVIS A280を使用して280nmでの吸光度を測定した。濃度データをPEG %に対してプロットし、非線形曲線フィットによって作成された算出された中点(LogEC50)、可変傾斜を、サンプルの相対コロイド溶解度の尺度として得た。このアッセイでは、LogEC50が高いほど、大きいコロイド安定性と一致する。
【0305】
結果(示されていない)は、すべての6470抗体について、バッファーpHが増大するにつれ、コロイド安定性は低減されたことを示した。さらに、以下の傾向が得られた、可溶性の最も高いものから低いものへ、gL3gH23及びgL3gH36>gL3gH23-S56N-N102H及びgL3gH36-S56N-N102H>gL3-N33RgH23-S56N-N102H及びgL3-N33RgH36-S56N-N102H。
【0306】
したがって、親和性成熟のために導入された突然変異は、抗体分子のコロイド安定性を低減した。gL3gH23及びgL3gH36グラフト間で相違は観察されなかった。
【0307】
空気-液体界面でのストレスの効果(凝集アッセイ)
タンパク質は、空気-液体界面に曝露されるとアンフォールディングする傾向があり、疎水性表面が疎水性環境(空気)に、親水性表面が親水性環境(水)に現れる。タンパク質溶液を撹拌すると、凝集を駆動し得る大きな空気-液体界面が得られる。このアッセイは、製造(例えば、限外濾過)の際に分子が付されるであろうストレスを模倣するように、また異なる抗体分子間を区別しようとするためのストリンジェントな条件を提供するように働く。
【0308】
Eppendorf Thermomixer Comfort(商標)を使用してボルテックス処理することによって、PBS pH7.4、50mM酢酸ナトリウム/125mM塩化ナトリウムpH5.0(酢酸pH5)及び20mM L-ヒスチジン、140mM NaCl、pH6.0中のサンプルにストレスをかけた。バッファーを一般的なプレフォーミュレーションバッファーとして選択した。ボルテックス処理の前に、Varian Cary(登録商標)50-Bio分光光度計を使用して得た、適当な吸光係数(1.35Abs 280nm、1mg/mL、1cm光路長)並びに280nm、340nm及び595nmでの吸光度を使用して、濃度を1mg/mLに調整し、ゼロ時間読取りを確立した。各サンプルを1.5mLのコニカルEppendorf(登録商標)スタイルキャップ付きチューブ中にサブアリコートし(4×250μL)、25℃、1400rpmで最大24時間のボルテックス処理によって頑強性を試験するためのストリンジェントな条件に付した。Varian Cary(商標)50-Bio分光光度計を使用する595nmでの、ボルテックス処理の3時間及び24時間後でのサンプルの測定によって時間依存性凝集(濁度)をモニタリングした。各サンプルについて時間に対して平均吸光度値をプロットした。
【0309】
結果は
図11に例示されている。3種のバッファーのうちいずれにおいても24時間での6470抗体間に相違はなかったが、ボルテックス処理の3時間後では凝集傾向において小さい相違は識別され、バッファー依存性であると思われた。
【0310】
脱アミド化/Asp異性化ストレス研究
6470抗体gL3gH23及びgL3gH36を使用してストレス研究を設定して、4種の同定された可能性ある配列ライブラリー:重鎖CDR3中のAsn(102)S(脱アミド化モチーフ)、軽鎖CDR3中のAsn(98)Asp(99)(脱アミド化モチーフ)、軽鎖CDR1中のAsn(32)Asn(33)(脱アミド化モチーフ)及び軽鎖CDR3中のAsp(99)G(Asp異性化モチーフ)の脱アミド化/Asp異性化傾向を調べた。脱アミド化及びAsp異性化の傾向/速度は、それが、一次配列及び3D構造並びに溶液特性に依存するので予測できない(R C Stephenson及びS Clarke(1989年);K.Diepoldら(2012年);Jasmin F.Sydowら(2014年);N.E.Robinsonら(2004)。
【0311】
基礎脱アミド化レベル(ストレスを受けていないサンプル)も得た-低レベルは、低い感受性を示すが、レベルは、種々の製造バッチ/条件によって変化し得る。
【0312】
2種の6470抗体を、(i)Asn(N)残基の脱アミドに好都合であると知られているバッファー(Tris pH8/37℃)及び(ii)異性化に好都合であると知られているバッファー(酢酸、pH5/37℃)にバッファー交換した。バッファー各々におけるサンプルの最終濃度を約6.5mg/mLに調整し、次いで、2つのアリコートにわけ、一方を4℃で保存し、一方を最大4週間37℃とした。アリコートを直ちに(T0)並びに2週及び4週で取り出し、-20℃で保存した。
【0313】
2週サンプルを解凍し、以下のとおりに化学修飾解析のためにトリプシン消化/質量分析(MS)によって解析した。ストレスを受けたタンパク質のサンプルをTCEPを用いて還元し、0.1% w/v Rapigest界面活性剤を含有するTris-HCLバッファーpH8.0中のクロロ酢酸を用いてアルキル化した。トリプシンを添加し(1:25w/w)、サンプルを室温で一晩消化させた。ギ酸を1% v/vまで添加することによってタンパク質分解を停止し、サンプルを0.5mg/mlに希釈し、その後、遠心分離して沈殿したRapigest(商標)を除去した。得られたペプチドを分離し、正イオン、データ依存性orbitrap-orbitrap法を衝突活性化解離法(CID)フラグメンテーションを用いて実行するThermo Fusion(商標)質量分析計に接続されたWaters BEH C18カラムで解析した。LC-MSデータは、Thermo Xcalibur(商標)及びPepfinderソフトウェア(商標)を使用して解析した。
【0314】
サイズ排除HPLC及びSDS PAGEも実施して、凝集/分解をモニタリングした。
【0315】
ペプチドマッピング/質量分析の結果は、3つのCDR部位すべてにおける基礎Asn脱アミド化レベルは<1.5%であること及び脱アミド化は、重鎖CDR3中のAsn(102)S部位についてpH8.0及び37℃で2週間後、最大約6%まで最大に増大したことを示した。
【0316】
軽鎖CDR3におけるAsp(99)修飾(スクシンイミド形成)は、pH5.0及び37℃で2週間後に約25%であった。
【0317】
組換え全長ヒトαシヌクレインモノマー及び精製組換えヒトαシヌクレイン繊維の親和性/結合力に対する化学修飾(重鎖CDR3上のAsn(102)での脱アミド化及び軽鎖CDR3上のAsp(99)でのスクシンイミド中間体の形成)の効果を評価した。研究には、十分に脱アミド化された生成物(Asn(102)Asp)及びストレスを受けた材料(pH5/2週間/37℃)を使用した。
【0318】
(例6)
免疫組織化学
免疫組織化学は、Asterand Bioscience(ロイストン、英国)によって実施された。凍結切片(10μm)を、自動化加熱及び冷却を用いて97℃で20分間Dako PT Link及びEnVision FLEX標的検索溶液(pH6)を使用する抗原検索手順に最初に付した。以下のインキュベーションステップすべてを室温で実施した。凍結切片を30分間風乾し、1×PBSで調製した4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定化し、Dako EnVision(商標)FLEX洗浄バッファー(Dako)中で洗浄し、次いで、Dako Autostainer Plusにロードした。切片をDakoペルオキシダーゼブロック(Dako)とともに5分間インキュベートすることによって内因性ペルオキシダーゼ活性を遮断した。次いで、切片を1×PBSを用いて2回洗浄し、次いで、Dako CSA IIタンパク質ブロック(Dako)とともに10分間インキュベートした。タンパク質ブロック溶液をエアージェットによって除去し、切片を30分間、Dako抗体希釈剤(Dako)で希釈した(0.05μg/ml)6470ウサギIgG1(配列番号47及び48を含む)とともにインキュベートした。インキュベーション後、切片を1×PBSを用いて2回洗浄し、次いで、抗ウサギDako Flexポリマー-HRP基質(Dako)とともに20分間インキュベートし、2回洗浄し、次いで、ジアミノベンジジン基質(Dako)とともに10分間インキュベートした。スライドを蒸留水ですすぐことによって発色反応を停止させた。発色後、切片をDako Autostainer Plusから回収し、ヘマトキシリンを用いて手作業で対比染色し、上昇系列のエタノールで脱水し、キシレンを3回変えて清澄化し、DPX封入剤(Sigma-Aldrich)下にカバーガラスを付けた。Aperio ScanScope AT Turboシステム(Leica Biosystems)を使用して染色した切片のデジタル画像を得た。抗体6470を、5個体の異なるpS129-α-シヌクレイン陽性及び3個体の異なるpS129-α-シヌクレイン陰性ドナーに由来する脳切片(1切片/ドナー)で試験した。抗体6470は、PD患者の側頭皮質及び黒質においてニューロピル及びレビー小体様特徴を標識した(
図12A~E)。非PD脳組織では、抗体6470は、側頭皮質においてニューロピルを標識したが、皮質又は黒質においてレビー小体様構造は観察されなかった(
図12F~H)。これらの観察結果は、抗体6470が、PD及び非PD患者から得た脳組織のニューロピル中の正常α-シヌクレインと結合するが、一方で、PD患者のみにおいてレビー小体中に存在する病理学的α-シヌクレインと結合することを示唆する。
【0319】
(例7)
細胞ベースの凝集アッセイ
HEK Freestyle 293F細胞(懸濁液細胞)を、Freestyle293発現培地(Invitrogen(商標))中、0.7×106個細胞/mlで調製し、300×106個細胞/mlに培養した。トランスフェクションを製造業者の説明書に従って実施し、手短には、600μgの、αシヌクレイン遺伝子を組み込むpcDNA3.1(+)を、20mlのOptiMEM培地中に混合し、一方で、293FectinをOptiMEM培地(Invitrogen(商標))で希釈し、室温で5分間インキュベートした。希釈したDNAを添加し、室温で20分間インキュベートし、その後、細胞に1滴ずつ滴下した(フラスコ当たり20ml)。細胞を37℃、125rpm、8%CO2で24時間インキュベートした。細胞を直ちに使用するか、又はFBS+10% DMSO中500万個細胞/mlの濃度で凍結した。
【0320】
細胞がこれまでに凍結されていた場合には、クライオバイアルを解凍し、細胞をFreestyle293培地に再懸濁し、500gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、ペレットを、Pen/Strep(Invitrogen(商標))を含むFreestyle293培地(Life Technologies(商標))に、2×106個細胞/mlで再懸濁した。384ウェルプレート(Grainer(商標))では、20μlの細胞懸濁液を添加した(合計約40,000個細胞/ウェルに)。各ウェルに、150nMのヒトαシヌクレイン繊維(実施例1において本明細書に記載されるように調製された)を添加し、続いて、試験されるべきPBS中の抗体(6470 gL3gH23、6470 gL3gH36、6470 gL3N33gH23 S56N N102、6470 gL3N33gH36 S56N N102、6470 gL3gH23 S56N N102、6470 gL3gH36 S56N N102をすべて全長IgG4P、表1中の配列として)を添加した(種々の濃度で)。プレートを細胞培養インキュベーター中、37℃、5% CO2、95%湿度で2日間インキュベートした。
【0321】
2日目の最後に、すべてのウェルから培地を吸引し、プレートを洗浄し、ウェル当たり20μlを残した。各ウェルに約50μlのPBSを添加し、プレートを500gで5分間遠心分離した。プレートウォッシャーを用いてすべてのウェルから上清を吸引し、各ウェルに20μlの培地を残した。ヴェルセン(Lonza(商標))を添加し(50μl/ウェル)、プレートを500gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、ウェル当たり20μlの培地のみを残した。各ウェルに、20μlの、PBS中、8%ホルムアルデヒド(水中、16%溶液、Life Technologies(商標))+2% Triton X-100(VWR(商標))を補給した。プレートを室温で15分間インキュベートし、その後、50μlの、HBSS(カルシウム-マグネシウム不含VWR(商標))+2% FBS+2mM EDTA(Life Technologies(商標))からなるFACSバッファーを添加した。プレートを2000gで1分間遠心分離し、上清を吸引し、各ウェルにおいて20μlのみの培地を残した。各ウェルに、20μlの、1:300希釈した抗pSer129αシヌクレイン 抗体(AbCam(商標))を有するFACSバッファーをさらに補給した。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いで、各ウェルに、50μlのFACSバッファーを補給し、その後、再度、2000gで1分間遠心分離した。上清を除去し、その後、各ウェルに、1:500希釈したAlexafluor647コンジュゲート型抗ウサギ二次抗体(Life Technologies(商標))及びDAPI(Life Technologies(商標))を補給した。プレートを暗所、室温で1時間インキュベートし、次いで、50μlのFACSバッファーを添加し、プレートを2000gで1分間遠心分離した。洗浄の際、より多くのFACSバッファーを添加し、プレートを、読取りのためにフローサイトメーター(BD FACS Canto II)中に設置されるように準備した。
【0322】
FACSデータを、FlowJoソフトウェアを使用して解析した。最初に、生存単細胞が、前方及び側方散乱を使用してゲートされた。第2に、DAPI+事象がゲート開閉され、その数を生存有核単細胞数の尺度として使用した。最後に、ホスホセリン129-αシヌクレイン陽性(pSer129+)細胞がゲートされた。すべてのDAPI+細胞に対するpSer129+細胞のパーセンテージを、凝集の尺度として使用した。データを、繊維のみ抗体なしを用いて処置したウェルに対して正規化し、パーセンテージとして表した。
【0323】
結果は、
図13にまとめられており、試験された抗体の、αシヌクレインを発現する細胞でαシヌクレイン繊維によって誘導される凝集を阻害する能力を示す。これらのデータによって、本発明の抗体がαシヌクレイン繊維によって誘導される凝集を遮断でき、5nM未満のIC
50を有することが確認される。
【0324】
エラーバーは、測定の標準誤差を表す(SEM、N=3、n=9)。
【0325】
(例8)
一次ニューロン凝集アッセイ
E17マウス胚から得た海馬を、解剖バッファー(カルシウムを含まない、マグネシウムを含まないHBSS、0.6% D-(+)-グルコース、20mM Hepes)中で解剖した。次いで、解剖バッファーを除去し、解離溶液(カルシウムを含まない、マグネシウムを含まないHBSS、0.6 %D-(+)-グルコース、20mM HEPES、40U/mパパイン、1mg/ml DNアーゼ、1mM L-システイン、0.5mM EDTA)によって置き換えた。37℃で30分インキュベートした後、解離バッファーを除去し、海馬を、プレーティング培地(Neurobasal(商標)培地、2% B27上清、1mM GlutaMAX、2.5% FBS、50ユニット/mlペニシリン-ストレプトマイシン)で3回洗浄した。組織凝集塊を1mlピペットを用いてトリチュレートして、単細胞懸濁液を得た。細胞をプレーティング培地で適当な濃度に希釈した。PDLコーティング384ウェルプレートの各ウェルにおいて約15000個細胞をプレーティングした。次いで、37℃、5% CO2、95%湿度で細胞培養インキュベーター中で細胞を維持した。
【0326】
翌日、培地の80%を、FBS[Neurobasal(商標)培地、2% B27上清、1mM GlutaMAX、50ユニット/mlのペニシリン-ストレプトマイシン)を含まないプレーティング培地で置き換えた。プレーティングの7日後、培地を除去し、各ウェルに20μlのみを残した。各ウェルに、100nMのヒトαシヌクレイン繊維(本明細書の例1に記載されたように調製された)を添加し、続いて、試験されるべきPBS中の抗体6470(6470gL3gH36 hIgG4P、配列番号17及び配列番号33を含む
図14中のVR6470)(種々の濃度の)を添加した。プレートを、細胞培養インキュベーター中、37℃、5% CO
2、95%湿度でさらに7日間インキュベートした。プレーティングの14日後、すべてのウェルから培地を吸引し、ウェル当たり20μlを残した。各ウェルを80μlのダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を用いて洗浄した。DPBSを除去し、細胞を、ウェル当たり40μlの固定バッファー(4%パラホルムアルデヒドを有するDPBS)中で15分間インキュベートした。次いで、固定バッファーを除去し、細胞を80μlのDPBSを用いて再度洗浄した。DPBSを除去し、ウェル当たり40μlの透過処理バッファー(0.1% Triton X-100を有するDPBS)によって置き換えた。10分後、過処理バッファーを除去し、細胞をウェル当たり40μlのブロッキングバッファー(1% BSA及び0.1% Triton X-100を有するPBS)中で1時間インキュベートした。次いで、ブロッキングバッファーを除去し、40μl/ウェルの一次抗体溶液(0.3%ウサギ抗ホスホセリン129αシヌクレイン抗体(AbCam(商標)ab51253を有するブロッキングッファー)によって置き換えた。抗体溶液を細胞上で1時間インキュベートし、3回の洗浄(90μl/各、PBS)を続けた。最後の洗浄後、PBSを除去し、40μlの二次抗体溶液(0.2% AlexaFluor488コンジュゲート型抗ベータIII-チュブリン抗体を有するPBS中、0.1% AlexaFluor647コンジュゲート型抗ウサギ抗体)によって置き換えた。二次抗体溶液を、細胞上で1時間インキュベートし、次いで、除去し、40μlの、0.3% CellMask Blue(商標)を含むPBSに従って置き換えた。インキュベーションの5分後、ウェルを80μμlのPBSを用いて3回洗浄し、次いで、ウェル当たり50μlのPBSを充填し、その後プレートをプラスチックフィルムで密閉した。
【0327】
Arrayscanプレートイメージャー(ThermoFisher Scientific(商標))でプレートを画像化した。画像を同一製造業者製のHCS Scan(商標)ソフトウェアを使用して解析した。ベータ-III-チュブリンシグナルを使用してニューロン密度をモニタリングした。ベータ-III-チュブリンシグナルの表面における有意な低下によって反映される、低密度フィールド又は損傷したニューロン細胞層を示すフィールドを排除した。最後に、フィールド当たりのpSer129αシヌクレインシグナルの表面を使用して、病理学的αシヌクレイン凝集を定量化した。
【0328】
αシヌクレインのS129でのリン酸化は、αシヌクレイン正常機能の制御並びにその凝集の調節、LB形成及び神経毒性において重要な役割を果たすと考えられる。正常状態下では、αシヌクレインの小画分のみが、脳においてS129で構成的にリン酸化されている(Fujiwara Hら(2002年)Nat Cell Biol、第4巻、160~164頁)が、シヌクレイノパチーを患っている患者の脳においてpS129の著しい蓄積が観察されている(Kahle PJら(2000年)Ann N Y Acad Sci、920巻、33~41頁);Okochi Mら(2000年)J Biol Chem、第275巻、390~397頁);Anderson JPら(2006年)J Biol Chem、第281巻、29739~29752頁)。
【0329】
データを、繊維のみ抗体なしで処置されたウェルと比較して正規化し、パーセンテージとして表した。
図14に示されるように、6470gL3gH36(VR6470として示された)は、内因性レベルのαシヌクレインを発現するマウス一次ニューロンで、αシヌクレイン繊維によって誘導されるαシヌクレイン凝集を阻害する。エラーバーは、平均の標準誤差を表す(SEM、N=4、n=18)。これらのデータによって、6470gL3gH36が、マウス一次ニューロンでαシヌクレイン繊維によって誘導される凝集を遮断でき、4nM未満のIC
50を有していたことが確認される。
【0330】
(例9)
in vivoでのVR6470有効性の評価
抗体6470gL3gH36 IgG4P(この例ではVR6470と名付けられ、配列番号17及び配列番号33を含む)を、野生型雄マウスC57Bl/6J(Janvier、フランス)において、及びヒトαシヌクレインを発現するα-シヌクレインノックアウトマウスのトランスジェニックモデルにおいて(本明細書において以下SNCA-OVXと名付ける;Charles River、フランス)試験した。
【0331】
C57Bl/6J及びSNCA-OVXマウスに、6470gL3gH36 IgG4P及びマウス事前形成繊維(PFF)(本明細書の例1に記載されたように調製された)を用いて注射した。陰性対照抗体(101.4)及びビヒクルも、最後の9個のC末端残基でαシヌクレインと結合する対照薬抗αシヌクレイン抗体(対照薬C末端Ab)とともに注射した。このような対照薬抗体(本発明による抗体とは異なるCDRを有する)は、本発明の抗体に対して匹敵する結合特徴を示した。対照薬抗体は、本発明の抗体よりも、αシヌクレインに対して高い親和性及び同様の生物物理学的特性を有する。例8によるHEK細胞ベースアッセイでのαシヌクレイン凝集の防止において同等に有効であった(表11)。
【表13】
【0332】
抗体を、室温にてシェーカーでPFFとともに30分間プレインキュベートし、その後、動物の脳に直接投与した。抗体/PFF混合物をPBS中、1μgのPFF/10μgの抗体の比で調製した。ビヒクル溶液としてpH7.4のPBSを使用した。併用大脳内投与の24時間前に、1回の注射を行った。
【0333】
次いで、抗体を30mg/kgの用量でマウスに腹膜内投与した。第1のものの7日後に、第2の腹膜内注射を与え、次いで、同一レジメン(10ml/kgの投与容量について、30mg/kgの用量で1回の腹膜内注射)を用い、野生型雄マウスC57Bl/6Jについて4週間、合計4回の注射について、及びSNCA-OVXマウスについて11週間、合計12回の注射で追跡した。両実験について、マウスは、薬物処置群に無作為に割り当て、実験者は処置に対して目隠しされていた。
【0334】
動物実験を欧州指令2010/63/EU及びベルギーの法律のガイドラインに従って実施した。UCB Biopharma SPRLの動物実験倫理委員会(LA1220040及びLA2220363)は、実験プロトコール(ASYN-IC-PARKINSON-MO)を承認した。25から30gの間で体重のマウスは、手術の時点で17週齢であった。マウスをケージ中に収容した(ケージ当たり4匹のマウス、Macrolon2型)。それらを12:12明/暗周期、06:00時に点灯で維持した。温度は、20~21℃で維持し、湿度は、およそ40%のものとした。すべての動物は、実験群への割り当て前は標準ペレットフード及び水を自由に利用した。手術の前後に、さらに豊かにすること及び福祉を提供した(Enviro-dri、Pharma Serv)。動物の健康は、動物ケアスタッフによって毎日モニタリングされた。苦痛を最小にするためのすべての努力が行われた。屠殺は麻酔下で行った。
【0335】
手術は、腹膜内注射された50mg/kgのケタミン(Nimatek、Eurovet Animal Health B.V.)及び0.5mg/kgのメデトミジン(Domitor、Orion Corporation)の混合物を使用して全身麻酔下で実施した。さらに、覚醒状態を支持するために2.5mg/kgのアチパメゾール(Antisedan、Orion Corporation)を与えた。組換え精製PFFを解凍し、室温で超音波処理した(Qsonica 500-20kHz;65%出力、1分間で1秒のON、1秒のOFFの30パルスの間)。次いで、PFFを抗体と30分間事前混合し、室温で30分間振盪し、その後、脳注射した。溶液(2μl)を0.2μl/分の速度で注入し、ニードルをさらなる2.5分間そのまま残し、その後、ゆっくりと後退した。注射は、右線条体において以下の座標で片側性で実施した:AP=+0.20mm、ML=-2.00mm、DV=-3.20mm。
【0336】
麻酔後、マウスに、10U/mlヘパリンを含有する氷冷0.9%PBSを9分間、左心室を介して6ml/分の流速で経心臓灌流によって灌流した。右心房は流出経路として切断した。続いて、動物に、6ml/分の流速で、PBS中氷冷4%パラホルムアルデヒドを用いて15分間灌流した。脳を4%パラホルムアルデヒドを含有するPBS中、4℃で一晩、後固定した(0日目)。翌朝(+1日目)、4%パラホルムアルデヒドを廃棄し、脳を冷PBSで洗浄し、一晩インキュベートした。翌日(+2日目)脳をPBSで最小1時間洗浄し、15%スクロースを含有するPBSに移し、出荷まで4℃で保存した。
【0337】
脳切片作製は、Neuroscience Associates(TN、米国)で実施した。第1に、凍結アーチファクトを防止するために、脳を20%グリセロール及び2%ジメチルスルホキシドを用いて一晩処置し、MultiBrain(登録商標)Technologyを使用してゼラチンマトリックス中に包埋した。硬化後、砕いたドライアイスで-70℃に冷却したイソペンタン中に浸漬することによって、ブロックを急速凍結し、AO860スライディングミクロトームの凍結ステージに載せた。MultiBrain(登録商標)ブロックを、冠状面で40μmで切片作製した。すべての切片をブロック当たり24容器中に逐次集め、これを抗原保存溶液(49% PBS pH7.0、50%エチレングリコール、1%ポリビニルピロリドン)で満たした。直ちに染色されない切片は、-20℃で保存した。
【0338】
自由浮遊切片は、pSer129αシヌクレイン抗体(マウス抗αシヌクレイン(pSer129)ビオチン-(Wako-010-26481))を用いて免疫化学によって染色し、1:30.000で希釈した。ブロッキング血清以降のすべてのインキュベーション溶液は、Triton X-100をビヒクルとして有する Tris緩衝生理食塩水(TBS)を使用し、すべてのすすぎは、TBSを用いた。内因性ペルオキシダーゼ活性は、0.9%過酸化水素処置によってブロックし、非特異的結合は、1.26%の全正常血清を用いてブロックした。すすぎ後、切片を一次抗体を用いて室温で一晩染色した。ビヒクル溶液は、透過処理のために0.3% Triton X-100を含有していた。すすぎ後、切片をアビジン-ビオチン-HRP複合体(Vectastain Elite ABCキット、Vector Laboratories、バーリンゲーム、CA)とともに室温で1時間インキュベートした。すすぎ後、切片をジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB)及び0.0015%過酸化水素を用いて処置して、可視反応生成物を作出し、ゼラチン化(下塗り)ガラススライド上に載せ、風乾し、チオニンを用いて軽度に染色し、アルコール中で脱水し、キシレン中で透明化し、Permountを用いてカバーガラスを付けた。
【0339】
p62/SQSTM1(p62は、ヒトにおけるレビー小体において共凝集するとわかっている)の蛍光免疫組織化学及びAmytracker(一般にタンパク質凝集に対して)染色を、浮遊脳切片で実施した。VR6470は、Amytrackerを用いて染色された凝集したタンパク質の数を低減し、pS129と共局在するとわかっていた。これは、VR6470抗体がホスホ-シヌクレインを低減するだけではなく、シヌクレイン凝集も低減することを示す(示されていないデータ)。
【0340】
フィールドpSer129αシヌクレインシグナル当たりのpSer129αシヌクレインシグナルの定量化を使用して、線条体、皮質、扁桃体基底外側部及び黒質の同側の病理学的αシヌクレイン凝集を定量した。対象の領域(ROI)を手動で描き、種々の脳領域におけるpSer129αシヌクレインシグナルの自動定量化をVisioPharm6ソフトウェア(VisioPharm)を用いて実施した。pSer129αシヌクレインシグナルを定量するために、シグナル面積の値(μm2でのマーカー面積)を提供する線形Bayesianアルゴリズムを使用した。マーカー面積は、種々の脳領域を対象とするpSer129αシヌクレイノパチー病理の量を反映する。すべての定量化は、統計解析の最後まで盲検的に行った。
【0341】
データ解析は、マーカー面積%で(すなわち、μm2でのpSer129シグナル面積とμm2での対象の領域面積の間の比)で行った。マーカー面積%は、体軸方向に位置する複数の脳切片について反復して評価し(線条体:13~14切片ブレグマ+1.1~-0.94;皮質:13~14切片+1.1~-0.94;扁桃体基底外側部:6~10切片-0.58~-2.06;黒質:6~8切片-2.54~-3.88)、AUCを試験した対象毎に別個に算出した。
【0342】
統計解析のために一元配置分散分析を考慮した。分散分析に続いて、多重度を調整せずに、平均間の複数のペアワイズ比較を行った(p<0.01のために**を用い、p<0.05のために*を用いた)。データは、正規性と等分散性の基準を満たすように対数変換した。グラフは、変換されていないデータの幾何平均を表す。
【0343】
図15A及び
図15Bに示されるように、6470抗体(6470gL3gH36 IgG4Pに対応する)は、雄C57Bl/6J野生型マウスへのマウスPFF投与の1ヶ月後に(
図15A)及び雄SNCA-OVXマウスへのヒトPFF投与の3ヶ月後に(
図15B)、線条体、大脳皮質、扁桃体及び黒質を含む4つの異なる同側脳領域において、3つの対照群と比較してαシヌクレイノパチー病理(すなわち、pSer129αシヌクレインシグナル)を著しく減少させた。
【0344】
図16は、それぞれC57Bl/6J野生型マウスの同側皮質、線条体、扁桃体及び黒質においてSer129でリン酸化されたαシヌクレインの定量化(マーカー面積%のAUC)を示す。陰性対照抗体及び対照薬C末端抗体は、ビヒクル処置群と比較してαシヌクレイノパチー病理を減少させなかった。対照的に、6470抗体は、マウスPFFを注射されたC57Bl/6Jマウスの3種の対照群と比較して、皮質、線条体、扁桃体及び黒質において病理(すなわち、pSer129αシヌクレインシグナル)のレベルを有意に減少させた(p<0.01)。C57Bl/6J野生型マウスにおいて試験される場合には、6470を用いて処置された群は、4つの異なる構造において、それらの中でも、注射部位から遠位の3つの領域(皮質、黒質及び扁桃体)において、pSer129αシヌクレインの有意に低減したレベルを示した。
【0345】
ヒトPFFを注射したSNCA OVXマウスでは、6470抗体は、ビヒクル、陰性対照抗体(101.4)及び対照薬C末端抗体を与えたマウスと比較して、病理のレベルを、皮質及び線条体において有意に減少させた。SNCA-OVXマウスでは、6470は、少なくとも2つの異なる脳構造(皮質及び線条体)及び注射部位から遠位の少なくとも1つの(大脳皮質)においてpSer129の有意に低減したレベルを示した。
【0346】
これらの結果から、本発明の構造的特徴を含む抗体、例えば、6470gL3gH36 IgG4Pは、Ser129でリン酸化されたαシヌクレインの出現をin vivoで防止することが可能であることが確認される。
【0347】
さらに、結果は、C末端領域中のa-synと結合するすべての抗体がin vivoで有効であるわけではないことを実証する。αシヌクレインの極めてC末端と高親和性で結合する競合物抗体及び細胞ベースアッセイにおいてαシヌクレイン凝集を防止することにおいて有効である競合物抗体は、in vivoでSer129リン酸化を防止することができなかった。
【0348】
したがって、本発明の抗体は、例えば、パーキンソン病(PD)(パーキンソン病の特発性及び遺伝性形態を含む)、レビー小体型認知症(DLB)、びまん性レビー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレビー小体異型(LBVAD)、アルツハイマー病及びパーキンソン病の合併、多系統萎縮症(MSA)及び脳内鉄沈着を伴う神経変性1型(NBIA-1)を含む、Ser129リン酸化の増大を特徴とする場合にαシヌクレイノパチーの処置のために使用され得る。
【0349】
(例10)
マウスにおける抗体6470の薬物動態
雄C57/Bl6マウス(薬物当たりn=3)を、抗体6470gL3gH36 IgG4P(配列番号17及び33を含む、
図17において、及び本明細書において以下、6470と簡単に呼ばれる)を用いて2mg/kgの単回用量として静脈内注射した。
【0350】
血液サンプルを(注射から0.083、1、4、8、24、72、120、168及び336時間)で尾静脈から採取し、室温で凝血させた。遠心分離後血清を単離し、次いで、これを解析まで凍結した。LC-MS/MSによって6470の定量化を実施した。研究から得た血清サンプルを解凍し、種々の濃度で対照マウス血清に添加された6470又は対照薬抗体を使用して準備された較正線に対して定量化した。LC-MS/MSシステムにサンプルを注射する前に、血清を変性させ、還元し、それぞれアセトニトリル(VWR、英国)、TCEP-Tris(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリド(Sigma、英国)及びロドアセトアミド(Sigma、英国)を使用してアルキル化した。次いで、アルキル化サンプルを100mM重炭酸アンモニウムバッファー(Sigma、英国)で再構成し、37℃でトリプシン(Promega、英国)酵素を使用して一晩消化した。サンプルにギ酸を添加して、pHを低下させることによって消化を停止し、次いで、Waters HLB SPEプレートを使用して脱塩した。得られた溶出剤を、真空エバポレーターを使用して蒸発させた。サンプルを完全に乾燥させた後、それらを0.1%ギ酸を含有する95/5:水/アセトニトリルを用いて再構成し、LC-MS/MSシステムに注入した。LC-MS/MS解析は、AB Sciex QTrap 6500トリプル四重極質量分析計に接続されたSchimadzuプロミネンスHPLCシステムによって実施した。消化サンプルを、オートサンプラーによって、50℃で維持された逆相高性能液体クロマトグラフィーカラム(Phenomenex Aeris C18ペプチドカラム100X2.1mm、2.6μm)上に注入した。0.6ml/分の流速で、0.1%ギ酸中、5~70%アセトニトリルの直線勾配を6分間適用し、次いで、0.1%ギ酸中、95%アセトニトリルに0.8分かけて傾斜をつけた。質量分析計を、6470又は5811のペプチドの複数遷移を、遷移当たり50ミリ秒の滞留時間で検出するために複数反応モニタリング解析を実行するように設定した。データ解析を、Analyst1.6ソフトウェアバージョンを使用して実施した。
【0351】
これらのデータは、抗体6470が、測定された低いクリアランス値に基づいて、マウスにおいて極めて良好な薬物動態特性(表12及び
図17A)を有することを実証する。これらは、マウスに投薬されるヒトIgG薬物について取り上げられる通常の範囲より優れていると思われる(3~16ml/日/kg;Dengら2011年 mabs 第3巻:1 61~66頁)。
【0352】
抗体6470の薬物動態特性は、カニクイザルにおいても調べ、先行技術の抗体と比較した。雄カニクイザル(薬物当たりn=3又はn=6)に、2又は3mg/kgいずれかの抗体6470gL3gH36 IgG4P(6470)及び別の対照薬抗αシヌクレイン抗体(アミノ酸118~126内の抗αシヌクレインIgG1抗体結合αシヌクレイン;WO2013/063516)の単回用量として静脈内注射した。
【0353】
血液サンプルを複数時点(注射から0.083、1、3、6、24、48、96、168、240、336、504、576、673時間)室温で凝血させた。遠心分離後血清を単離し、次いで、これを解析まで凍結した。室温で凝血させた。遠心分離後血清を単離し、次いで、これを解析まで凍結した。サンプルを解凍し、LC/ESI MS/MSを使用して解析した。6470について、この実施例において先に本明細書に記載された方法を使用し、カニクイザル血清において標準曲線を設定することによって定量化を行った。対照薬抗体について、内部標準としてウマミオグロビンを使用し、内部標準シグナルに対してシグナルを比較することによって定量化を行った。調製のために、サンプルを内部標準と混合した。次いで、サンプルを変性させ、アルキル化し、結果として、一晩の酵素消化(トリプシン)に付した。消化後、サンプルを希釈し、すべての解析物のシグネチャーペプチドを、LC-MS/MS解析に付した。サンプルを1回のみ調製し、2回注射した(各方法について1回)。
【0354】
濃度時間特性を、非コンパートメント解析を使用するPharsight Phoenix 6を使用して解析して、各個々の動物のクリアランス及び半減期薬物動態パラメータを導いた。各分子の平均及び標準偏差パラメータを報告した。
【0355】
図17B及び表12に示されるように、抗体6470は、低クリアランスを示すカニクイザルにおいて優れた薬物動態特性を示す。マウスにおけるように、その薬物動態挙動は、カニクイザルに投薬されるヒトIgG薬物について取り上げられる通常の範囲より優れていると思われる(5~12ml/日/kg;Dengら2011 mabs 第3巻:1 61~66頁)。
【0356】
対照薬抗体について観察されたカニクイザルにおける迅速クリアランスは、公開されたヒトデータ(JAMA Neurology 2018年、第75巻、10号:1206~14頁)と一致する。抗体6470は、不十分な非定型薬物動態特徴及びパラメータしか示さない対照薬抗体と比較して、曝露及びクリアランスの両方において対照薬抗体よりも優れている。
【表14】
【配列表】