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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】温度過昇保護回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/082 20060101AFI20230609BHJP
   H03K 17/18 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H03K17/082
H03K17/18
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020540635
(86)(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2018051552
(87)【国際公開番号】W WO2019145017
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ハンス-ユルゲン
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-135274(JP,A)
【文献】特開2016-12808(JP,A)
【文献】米国特許第8299767(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300999(US,A1)
【文献】米国特許第6169439(US,B1)
【文献】特開2004-236405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0085697(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1583119(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H3/00-5/12
H03K17/08-17/082
H03K17/18
H03K17/78-17/795
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度過昇保護回路(11)であって、
トランジスタ(8)の両端の電圧(VDS)を検知するための入力(13)と、
前記トランジスタに流れる電流値を規定の制限値としたときに前記トランジスタによって損失される電力を示す、かつ前記電圧に依存して変化する値を記憶するための累算器(CSOA;54、CSOA;64)と、
前記値が閾値を超えるか否かを判定し、前記値が前記閾値を超えたことに応じて、前記トランジスタをオフに切り替えることを信号伝達するための信号(SOA_SD)を生成するように構成された比較器(R、45;56、57;64)と、
前記入力(13)と基準レベル(GND)との間に配置された経路(15、19、27;51)とを備え、前記経路は、前記電圧に応じて電流(Isense_in)を生成するように構成された電圧-電流変換器(RVDS)を備え、前記トランジスタによって損失される電力を示す前記値は前記電流の積分値に関連する値であり、
前記電圧-電流変換器(RVDS)は、負の温度係数を有する抵抗器であり、
前記経路は、前記閾値を設定する電圧調整器(ZD)をさらに備える、温度過昇保護回路。
【請求項2】
電流ミラー(14)をさらに備える、請求項1に記載の温度過昇保護回路。
【請求項3】
前記累算器(CSOA;54、CSOA;64)はコンデンサ(CSOA)を備える、請求項1または2に記載の温度過昇保護回路。
【請求項4】
前記累算器(CSOA;54、CSOA;64)は演算増幅器(54)を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の温度過昇保護回路。
【請求項5】
前記電圧調整器(ZD)はツェナーダイオードを備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の温度過昇保護回路。
【請求項6】
前記経路(15、19、27;51)は、前記値を選択的に制御するための電流源(31;53)をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の温度過昇保護回路。
【請求項7】
前記比較器(R、45;56、57;64)は少なくとも1つのシュミットトリガを備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の温度過昇保護回路。
【請求項8】
前記比較器からの出力と温度過昇検出回路からの出力とを受信し、前記トランジスタをオフに切り替える制御信号(nSD)を出力するように構成されたゲート(46;65)をさらに備える、請求項1からのいずれか1項に記載の温度過昇保護回路。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の温度過昇保護回路を備える集積回路(4)。
【請求項10】
制御ロジック(5)と、
前記制御ロジック(5)により制御されて、前記トランジスタのスイッチングを制御するためのプリドライバ(6)とをさらに備える、請求項に記載の集積回路。
【請求項11】
前記トランジスタを備えるドライバ(7)をさらに備える、請求項または10に記載の集積回路。
【請求項12】
請求項10または11に記載の集積回路と、
ドライバまたは前記ドライバに接続された負荷(2)とを備える、システム。
【請求項13】
前記負荷はモータである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記負荷はバルブである、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記集積回路と通信するコントローラをさらに備える、請求項12から14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
請求項1からのいずれか1項に記載の温度過昇保護回路、請求項から11のいずれか1項に記載の集積回路、または請求項12から15のいずれか1項に記載のシステムを備える、自動車両。
【請求項17】
温度過昇保護の方法であって、前記方法は、
トランジスタ(8)の両端の電圧(VDS)を検知することと、
前記トランジスタに流れる電流値を規定の制限値としたときに前記トランジスタによって損失される電力を示す、かつ前記電圧に依存して変化する値を記憶することと、
前記トランジスタ(8)の両端の電圧(VDS)を検知するための入力(13)と基準レベル(GND)との間に配置された経路(15、19、27;51)に配置された電圧-電流変換器(RVDS)によって、前記電圧に応じて電流(Isense_in)を生成することとを備え、前記トランジスタによって損失される電力を示す前記値は前記電流の積分値に関連する値であり、
前記電圧-電流変換器(RVDS)は、負の温度係数を有する抵抗器であり、
前記経路に配置された電圧調整器(ZD)によって閾値を設定することと、
前記値が前記閾値を超えるか否かを判定し、前記値が前記閾値を超えたことに応じて、前記トランジスタをオフに切り替えることを信号伝達するための信号(SOA_SD)を生成することとを備える、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法を実行するように構成されたハードウェア回路。
【請求項19】
コンピューティングデバイスに請求項17に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は温度過昇保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
パワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)および絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのパワー半導体装置は、自動車用途、工業用途およびその他の用途で用いられるランプおよびLED、モータ、ソレノイドおよびヒータなどの誘導負荷および/または抵抗負荷を切り替えるためのスイッチング素子(または「スイッチ」)として用いられ得る。
【0003】
MOSFETなどのスイッチング素子は、ディスクリート部品であってもよいし、負荷スイッチ集積回路(IC)またはプリドライバICに統合されてもよい。
【0004】
統合スイッチング素子には、スイッチング素子が最大許容動作温度を超えることを確実にするために、温度過昇(OT)保護が設けられることが多い。これは、たとえば、負荷の抵抗が低い値に低下した場合に、または短絡が生じた場合に起こり得る。OT保護は通常、回路に結合されたスイッチング素子の近くにOTセンサを設けることによって達成され、このOTセンサは、スイッチの動作温度が最大動作温度を超えていると判定した場合にサーマルシャットダウンをトリガする。
【0005】
しかしながら、OT保護は多くの課題に直面している。たとえば、OTセンサがスイッチング素子に非常に密接して、たとえばスイッチング素子の周りのガードリングの内側に位置している場合は、センサは、装置がまだ許容限界内で動作している状態でも、高温の局所領域(「ホットスポット」)を検出してサーマルシャットダウンをトリガしてしまう可能性がある。さらに、OTセンサをガードリングの内側に配置すると、活性ドライバ面積が減少するため、ICが大きくなりオン状態抵抗RONが高くなってしまう。OTセンサをスイッチング素子からさらに離してガードリングの外側に配置すると、これらの欠点を回避または克服しやすくなるが、時間遅延が発生してしまう。特に、温度過昇が起こった場合、センサがこの状態を検出するのが遅すぎる可能性があり、そのときまでにはスイッチング素子は不可逆的な損傷を被っている可能性がある。
【0006】
米国特許第8,299,767 B1号に記載されている1つの解決法は、装置の瞬間電圧および電流を検知し、検知した瞬間電圧および電流に基づいて、装置内で損失される電力を表す値を求め、求めた損失電力と装置の熱的挙動のモデルとを用いて装置の接合温度をモデル化し、モデル化した接合温度に基づいて装置の動作を制御することによって、装置動作を安全動作領域(SOA)内に動的に維持することである。しかしながら、これは複雑な解決策である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明の第1の局面によれば、温度過昇保護回路が提供される。上記温度過昇保護回路は、トランジスタの両端の電圧を検知するための入力と、上記トランジスタによって損失される電力を示す、かつ上記電圧に依存する値を記憶するための累算器と、上記値が閾値を超えるか否かを判定し、上記値が上記閾値を超えたことに応じて、上記トランジスタをオフに切り替えることを信号伝達するための信号を生成するように構成された比較器とを備える。
【0008】
上記回路は、安全動作領域(SOA)基準を用いてドライバをシャットダウンする柔軟な方法を提供することができる。これは、統合パワードライバに適合され得る。
【0009】
上記回路は、上記電圧に応じて電流を生成するように構成された電圧-電流変換器をさらに備えてもよく、上記トランジスタによって損失される電力を示す上記値は上記電流に依存する。上記回路は電流ミラーをさらに備えてもよい。
【0010】
上記累算器はコンデンサを備えてもよい。上記累算器は演算増幅器を備えてもよい。たとえば、上記演算増幅器およびコンデンサは積分器として構成されてもよい。
【0011】
上記回路は、上記入力と好ましくは接地である基準レベルとの間に配置された経路を備えてもよく、上記経路は抵抗器を備えてもよい。上記抵抗器は負の温度係数を有することが好ましい。上記経路は電圧調整器をさらに備えてもよい。上記電圧調整器はツェナーダイオードを備えることが好ましい。
【0012】
上記経路は、上記値を選択的に制御するための電流源をさらに備えてもよい。上記電流源は、上記値を減少させる電流を送り出すことができるので、トランジスタがオフに切り替えられる回復時間を設定するために用いることができる。
【0013】
上記比較器は少なくとも1つのシュミットトリガを備えてもよい。
上記回路は、上記電圧を間引いて、デジタル化された電圧を出力するように構成されたアナログ-デジタル変換器をさらに備えてもよい。上記比較器は、上記デジタル化された電圧に依存する信号を受信するように構成されたカウンタ(たとえばパルスカウンタ)をさらに備えてもよい。上記回路は、クロック信号を与えるように配置されたクロックと乗算器とをさらに備えてもよく、上記乗算器は、上記デジタル化された電圧と上記クロック信号を乗算して、電圧制御されて周波数乗算されたクロック信号を上記カウンタに与えるように構成される。上記回路は、上記カウンタの累積および減少を制御するように配置された第1および第2のスイッチを含んでもよい。
【0014】
上記回路は、上記比較器からの出力と温度過昇検出回路からの出力とを受信し、上記トランジスタをオフに切り替える制御信号を出力するように構成されたゲートを含んでもよい。
【0015】
本発明の第2の局面によれば、発明の第1の局面の回路を備える集積回路が提供される。
【0016】
上記集積回路は、制御ロジックと、ドライバを制御して上記トランジスタのスイッチングを制御するためのプリドライバとをさらに備えてもよい。上記集積回路は、上記トランジスタを備えるドライバをさらに備えてもよい。
【0017】
本発明の第3の局面によれば、発明の第2の局面の集積回路と、ドライバまたは上記ドライバに接続された負荷とを備えるシステムが提供される。
【0018】
上記負荷はモータ、ランプまたはバルブであってもよい。
上記システムは、上記集積回路と通信するコントローラをさらに備えてもよい。
【0019】
本発明の第4の局面によれば、発明の第2の局面の回路、発明の第3の局面の集積回路、および/または発明の第4の局面のシステムを備える自動車両が提供される。
【0020】
自動車両は、オートバイ、自動車(「車」とも称される)、小型バス、バス、トラックまたは大型トラックであってもよい。上記自動車両は、内燃機関および/または1つ以上の電気モータによって動力を供給されてもよい。
【0021】
本発明の第5の局面によれば、温度過昇保護の方法が提供され、上記方法は、トランジスタの両端の電圧を検知することと、上記トランジスタによって損失される電力を示す、かつ上記電圧に依存する値を記憶することと、上記値が閾値を超えるか否かを判定し、上記値が上記閾値を超えたことに応じて、上記トランジスタをオフに切り替えることを信号伝達するための信号を生成することとを備える。
【0022】
上記方法は、上記電圧に応じて電流を生成することをさらに備えてもよい。
本発明の第6の局面によれば、発明の第5の局面の方法を実行するように構成されたハードウェア回路が提供される。
【0023】
本発明の第7の局面によれば、コンピューティングデバイスによって実行されると上記コンピューティングデバイスに発明の第5の局面の方法を実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【0024】
本発明の第8の局面によれば、発明の第7の局面のコンピュータプログラムを格納または保持している、非一時的であり得るコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品が提供される。
【0025】
添付の図面を参照して、本発明の特定の実施形態を一例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】負荷を制御および駆動するためのシステムのブロック図である。
図2】負荷と、統合スイッチング素子および安全動作領域(SOA)に基づく保護回路を含む負荷スイッチとの概略図である。
図3】別のSOAに基づく保護回路を示す図である。
図4】-40℃でのさまざまな値のソース-ドレイン電圧についてのSOAに基づく保護のシミュレーション結果を示す図である。
図5】25℃の室温でのさまざまな値のソース-ドレイン電圧についてのSOAに基づく保護のシミュレーション結果を示す図である。
図6】150℃の室温でのさまざまな値のソース-ドレイン電圧についてのSOAに基づく保護のシミュレーション結果を示す図である。
図7】1mmの活性領域についてのオン時間に対するピークエネルギ密度のシミュレーション結果を示す図である。
図8】0.67mmの活性領域についてのオン時間に対するピークエネルギ密度のシミュレーション結果を示す図である。
図9】0.25mmの活性領域についてのオン時間に対するピークエネルギ密度のシミュレーション結果を示す図である。
図10】デジタルの安全動作領域(SOA)に基づく保護回路を示す図である。
図11】負荷を制御および駆動するためのシステムを備える自動車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
特定の実施形態の詳細な説明
図1を参照して、負荷2を制御および駆動するためのシステム1が示されている。
【0028】
システム1は、マイクロコントローラなどのコントローラ3と、制御ロジック5、プリドライバ6(または「ゲートドライバ」)および統合ドライバ7を含む負荷スイッチ集積回路(IC)4とを含む。
【0029】
統合ドライバ7は、nチャネルのパワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)(本明細書では「nMOSFET」または単に「nMOSトランジスタ」とも称される)の形態のスイッチング素子8と、少なくとも1つの温度センサ9とを含む。
【0030】
MOSFET8は共通ソーストポロジで構成されている。MOSFET8のドレインDは、負荷スイッチIC4の出力端子OUTxに接続される。負荷2が、たとえばバッテリ102(図9)などのバッテリからの正電圧源VBATと出力端子OUTxとの間に接続される。ソースSはスイッチング素子9を介して接地GNDに接続される。この場合、ローサイドスイッチング構成が用いられる。ワーストケースのドレイン電流Ilimit_xは電流制限によって規定される。
【0031】
温度センサ9の挙動は温度過昇(OT)検出回路10によって監視され、当該回路10を用いて、MOSFET8の破壊的な加熱を引き起こし得る、たとえば短絡に起因するMOSFET8のOT状態の存在が判定される。
【0032】
負荷スイッチIC4も安全動作領域(SOA)に基づく温度過昇保護回路11を含み、当該回路11は、SOAに基づく判定を用いて、温度過昇検出を補足し、かつ、シャットダウン・イネーブル信号nSD(温度過昇が発生した場合はLOWに設定される)を用いてMOSFET8を一時的にオフに切り替える。
【0033】
後で説明するように、温度に基づく保護およびSOAに基づく保護は別々に動作する。したがって、MOSFET8は、温度センサ9が温度過昇を直接測定した結果として、および/または、SOAに基づく回路11が温度過昇状態を推論した結果として、オフに切り替えられ得る。
【0034】
後でより詳細に説明するように、SOAに基づく保護回路11は、MOSFET8によって損失される電力量を効果的に計算し、当該電力が所与の閾値を超えるか否かを判定し、超える場合はMOSFET8を一時的にシャットダウンする。
【0035】
電力Pは、P=IVに従って、電圧Vおよび電流Iに関連している。
電流Iを正確に求めることが好ましい場合があるが、これを達成するのは実際には困難であり得る。たとえば、(電流Iが閾値IOCを超える)ソフト過負荷と、その値が事実上無限であり得る短絡電流とを区別することは困難であり得る。したがって、規定された高速電流制限Ilimitが電流Iの値として用いられ得る。電流は迅速に(たとえば2μs以内に)整定し得るため、これで十分であり得る。説明するように、SOAに基づく保護回路11は、たとえばわずか10マイクロ秒または数十マイクロ秒で、迅速に電流を遮断することができる。
【0036】
電圧Vが測定され、電流Iの値が仮定または規定されると、電力Pまたは電力に依存するパラメータは電圧Vを用いて簡単に計算可能である。
【0037】
ドライバ制御はドライバ制御信号ONxを介して実行される。ドライバ制御信号ONxおよびシャットダウン・イネーブル信号nSDは、ANDゲート12への入力である。ANDゲート12の出力はプリドライバ6の入力に供給される。
【0038】
図2を参照して、第1のSOAに基づく保護回路11,11が示されている。
回路11は、出力端子OUTxとMOSFET8のドレインDとの間のタップ13(または「ノード」)を介してソース-ドレイン電圧VDSを検知する。ソース-ドレイン電圧VDSは、センス抵抗器RVDSによって電流Isense_inに変換される。センス抵抗器RVDSは、高温での、すなわちドライバが形成される基板の高温でのシャットダウン感度を高めるために、負の温度係数を有することが好ましい。
【0039】
この場合は2段電流ミラーである多段電流ミラー14を用いて、スケール係数kだけスケール変更される、縮小された電流が生成され、kは約100である。各段は電流を10倍スケール変更する。
【0040】
第1の経路15がタップ13と接地GNDとの間に延びており、センス抵抗器RVDSと、(好ましくは可変の)電圧調整器16と、n型MOSFETの形態であって、そのゲートがプリドライバ6によって供給される過電流信号OCによって制御される第1のトランジスタQ1のチャネルと、n型MOSFETの形態の第2のトランジスタQ2のチャネルとを備えている。第2のトランジスタQ2のドレインはそのゲートに接続される。過電流信号OCは、過負荷事象の開始を信号伝達する。所与の閾値OClimit未満では、シャットダウンの必要はない。閾値OClimitを上回ると、回路11が動作を開始する。
【0041】
過電流管理には2つの局面がある。第1に、OC事象(すなわち、電流IOCが上昇してプログラム可能な閾値を超えたこと)を信号伝達するが、依然として負荷2は低いRONで駆動されることになるOC検出器10がある。負荷電流がさらに増加すると、ドライバは電流制限モードになる。電流制限モードでは、ドライバは、レベルI(==Ilimit_x)で電流源として機能する。電流が制限されている間、損失電力は単にドライバの両端の電圧降下に依存する。言い換えれば、OC検出閾値未満では、関連するSOA電力損失はない。正しい正常動作を試みることおよび保証することを助けるために、SOAシャットダウン回路は、IOCを超えた場合にのみイネーブルにされる。したがって、OC検出器の出力は、SOAシャットダウンメカニズム全体に対するENABLE信号として見ることができる。
【0042】
電圧調整器16はツェナーダイオードZDの形態を取り、ソース-ドレイン電圧閾値VDS_0を設定するために用いられる。ソース-ドレイン電圧閾値VDS_0は、SOAに基づく回路11が電力を積分し始める(VDS_0×Ilimit_x)電圧を規定する。言い換えれば、ソース-ドレイン電圧閾値VDS_0は、無制限の永続的な電力損失レジーム(すなわち、SOAクリティカルではない)から、電力損失が監視されるレジームへの移行をマーク付ける。
【0043】
ソース-ドレイン電圧閾値VDS_0の値は、ドライバサイズおよびアプリケーションに依存する。当該値は、たとえばe-fuseプログラミング(または他の形態のワンタイムプログラミング)によって固定され得る。
【0044】
経路15における電流は、検知電流Isense_inである。
第2の経路19が接地GNDと電源電圧VDDとの間に延びており、n型MOSFETの形態であって、そのゲートが第2のトランジスタQ2のゲートに接続される第3のトランジスタQ3のチャネルと、n型MOSFETの形態の第4のトランジスタQ4のチャネルとを含んでいる。第4のトランジスタQ4のソースはそのゲートに接続される。
【0045】
第3の経路27が電源電圧VDDと接地GNDとの間に延びており、n型MOSFETの形態の第5のトランジスタQ5と、第1および第2のノード29、30と、電流iSOArefを駆動するプログラマブル電流源31とを含んでいる。コンデンサCSOAが電流源31と並列に、すなわち、第2のノード30と接地GNDとの間に配置される。第3の経路27における電流は、スケール変更されたセンス電流Isense_in/kである。
【0046】
レベルシフトを用いて、ノード30における一貫したスイング振幅が提供される。
キャパシタCSOAを用いて、スケール変更されたセンス電流Isense_in/kが積分され、したがって、蓄積された堆積電力が効果的に求められる。
【0047】
SOAref、CSOAおよび/またはRVDSの値は、ドライバクラスごとに個別に設定される。
【0048】
第4の経路35が電源電圧VDDと接地GNDとの間に延びており、n型MOSFETの形態の第6のトランジスタQ6と、RSフリップフロップ動作を制御するためのレベル設定抵抗器R(たとえばMΩのオーダの値、10sのMΩを有する)と、n型MOSFETの形態の第7のトランジスタQ7とを含んでいる。第6および第7のトランジスタQ6、Q7のゲートは第1および第2のノード29、30にそれぞれ接続される。
【0049】
第6のトランジスタQ6のソースとレベル設定抵抗器Rとの間の第4のノード39が、第1のシュミットトリガ40の入力に接続される。第6のトランジスタQ6のドレインとレベル設定抵抗器Rとの間の第5のノード41が、第2のシュミットトリガ42の入力に接続される。
【0050】
シュミットトリガ40、42の出力は、それぞれの第1および第2のNANDゲート43、44の第1の入力に供給され、第1および第2のNANDゲート43、44の出力は他方のNAND43、44の第2の入力に与えられて(すなわち、交差結合されて)RSフリップフロップ45を提供する。
【0051】
第1のNANDゲート43の出力(すなわち、非反転フリップフロップ出力Q)は、第3のNORゲート46の第1の入力に供給される、SOAに基づくシャットダウン信号SOA_SDである。第3のNORゲート46の第2の入力は、温度過昇信号のOR結合である。第3のNORゲート46の出力は、シャットダウン・イネーブル信号nSDとしてドライバコントローラANDゲート12に与えられる。
【0052】
低いソース-ドレイン電圧VDSで短絡すると、遮断時間が長くなる。後でより詳細に説明するように、静的な電力閾値Ptot未満ではシャットダウンしない。温度過昇センサ検出器はシャットダウンを引き継いで、T<TOTでONxドライバ制御を解除し、TOTはシャットダウンの閾値温度である。
【0053】
電流iSOArefは回復の持続期間(「クールダウン時間」)を規定し、これは一定であるが、所与のドライバおよびアプリケーションについて設定することができる。
【0054】
図3を参照して、第2のSOAに基づく保護回路11、11が示されている。
第2の回路11、11は、出力端子OUTxとMOSFET8のドレインDとの間のタップ13を介してソース-ドレイン電圧VDSを検知し、ソース-ドレイン電圧VDSはセンス抵抗器RVDSによって電流Isense_inに変換される。
【0055】
経路51がタップ13と接地GNDとの間に延びており、センス抵抗器RVDSと、ツェナーダイオードZDの形態の電圧調整器16と、プリドライバ6によって供給される過電流信号OCによって制御されるスイッチS1と、ノード52と、SOAに基づくシャットダウン信号SOA_SDによって制御される第2のスイッチS2と、電流iSOArefを駆動するプログラマブル電流源53とを備えている。
【0056】
ノード52は、演算増幅器54と帰還コンデンサCSOAとを備える積分器55の演算増幅器54の反転入力に接続される。電圧基準Vrefが演算増幅器54の非反転入力に接続される。
【0057】
演算増幅器54の出力は、シュミットトリガ56の入力に接続される。シュミットトリガ56の出力はインバータ57の入力に供給され、インバータ57の出力はSOAに基づくシャットダウン信号SOA_SDである。
【0058】
インバータの出力は、NORゲート58の第1の入力に供給される。NORゲート58の第2の入力は、温度過昇信号OTxのOR結合である。NORゲート58の出力は、シャットダウン・イネーブル信号nSDとしてドライバコントローラANDゲート12に与えられる。
【0059】
第2のSOAに基づく保護回路11、11は、第1のSOAに基づく保護回路11、11と実質的に同じように動作する。
【0060】
図4は、-40℃での6つの異なる値のソース-ドレイン電圧VSD、すなわち、2.5V、3V、4V、7V、14Vおよび32Vについて、図2に示す保護回路11によって生成された時間に対するシャットダウン信号SOA_SDのシミュレーション結果を示す。
【0061】
2.5および3.5Vのソース-ドレイン電圧については、10ms以内にシャットダウンはなく、シャットダウン信号SOA_SDはLOWのままである。4Vのソース-ドレイン電圧については、シャットダウン信号SOA_SDは2.4msでHIGHになり、0.9msの間HIGHのままである。シャットダウン信号SOA_SDは5.1msで再びHIGHになり、0.9msの間HIGHのままである。ソース-ドレイン電圧が増加するにつれて、シャットダウン信号SOA_SDのデューティサイクルは増加する。
【0062】
図5は、25℃での同じ値のソース-ドレイン電圧VSDについて、図2に示す保護回路11によって生成された時間に対するシャットダウン信号SOA_SDのシミュレーション結果を示す。
【0063】
25℃での結果は-40℃についての結果と同様であるが、デューティサイクルは、対応するソース-ドレイン電圧についてわずかに高い。
【0064】
図6は、150℃での同じ値のソース-ドレイン電圧VSDについて、図2に示す保護回路11によって生成された時間に対するシャットダウン信号SOA_SDのシミュレーション結果を示す。この結果は、シャットダウン信号SOA_SDがより低いソース-ドレイン電圧で、すなわち3VでHIGHになり始めることを示している。
【0065】
図7は、3つの異なる周囲温度、すなわち、-40℃、25℃および150℃について、0.8mmのドライバ領域についてのオン時間(単位:μs)に対して計算された1平方ミリメートル当たりのエネルギ密度(単位:mJmm-2)のプロットを示す。また、図6は、-27℃および150℃での対応してサイズ決めされた装置について、オン時間に対して測定された最大安全動作領域エネルギ密度のプロットを示す。
【0066】
オン抵抗は350mΩであり、熱抵抗Rthは5.5KW-1である。計算上、I_limit_max(すなわち、Ilimit_x)は6.9Aである。ピーク損失電力は、I_limit_maxにVDSを乗じることにより計算される。平均電流は、I_limit_maxにDを乗じることにより計算され、Dはデューティサイクルである。平均損失電力は、ピーク損失電力にDを乗じることにより計算される。ピークエネルギは、ピーク電力にオン時間を乗じることにより計算される。ピークエネルギ密度は、ピークエネルギにドライバ面積を乗じることにより計算される。平均接合温度は、熱抵抗を乗じた平均損失電力に周囲温度(すなわち、-40℃、25℃または150℃)を加算することにより計算される。
【0067】
図7に示すように、計算された1平方ミリメートル当たりのエネルギ密度は、-40℃、25℃、および150℃においてほぼ同じであり、オン時間とともに指数的に増加するが、安全動作領域内に十分とどまっている。
【0068】
図8は、同じ3つの周囲温度について、0.61mmのドライバ面積についてのオン時間に対して計算された1平方ミリメートル当たりのエネルギ密度のプロットを示す。この場合、オン抵抗は720mΩであり、熱抵抗Rthは7.2KW-1である。計算上、I_limit_maxは4.1Aである。
【0069】
図9は、同じ3つの周囲温度について、0.28mmのドライバ面積についてのオン時間に対して計算された1平方ミリメートル当たりのエネルギ密度のプロットを示す。この場合、オン抵抗は2,400mΩであり、熱抵抗Rthは15.8KW-1である。計算上、I_limit_maxは1.4Aである。
【0070】
上述したSOAに基づく保護回路11は、アナログ回路によって実現される。しかしながら、SOAに基づく保護は、以下により詳細に説明するようにデジタル回路によって実現可能である。
【0071】
図10を参照して、デジタルのSOAに基づく保護回路11が示されている。
回路11eは、ソース-ドレイン電圧VSDを間引いてnビットの電圧信号を出力するアナログ-デジタル変換器61を含む。
【0072】
クロック62のデジタル電圧信号からのクロック信号CLKが、乗算器63を用いて電圧信号によって周波数乗算される。乗算されたデジタル電圧信号およびクロック信号は、それぞれの第1および第2のスイッチS1、S2を介して、双方向パルスカウンタ64のカウントアップ入力およびカウントダウン入力に供給される。ソース-ドレイン電圧閾値VDS_0は、アナログシステムにおいてツェナーダイオードZD(図2)によって与えられるオフセットと同様の適切なオフセットとして、ADC61の内部で考慮される。オーバーフロー割り込みフラグOFは、第2のスイッチS2、すなわち、カウントダウン入力に供給されるCLK信号を制御し、アンダーフロー割り込みフラグUFは、第1のスイッチS1、すなわち、乗算されたデジタル信号を制御する。
【0073】
オーバーフロー割り込みフラグOFは、SOAに基づくシャットダウン信号SOA_SDを、アナログベースの回路11、11と同様にNORゲート65に供給する。
【0074】
図11を参照して、自動車両101が示されている。
自動車両101は、バッテリ102と、バッテリ102から電力が供給され、コントローラ2によって制御されるそれぞれの負荷スイッチ4によって各々が制御される、たとえばモータなどの複数の異なる負荷2とを含む。SOAに基づく保護およびシャットダウン回路11は負荷スイッチ4内に設けられ得る。
【0075】
変形
上述の実施形態に対してさまざまな変形がなされ得ることが理解されるであろう。このような変形は、負荷スイッチドライバおよびそのコンポーネント部品の設計、製造、および使用において既に周知でありかつ本明細書に既に記載の特徴の代わりにまたはそれに加えて使用され得る、均等なその他の特徴を含み得る。ある実施形態の特徴は別の実施形態の特徴によって置き換えるまたは補足することができる。
【0076】
nMOSトランジスタ6はディスクリート部品であってもよいし、負荷スイッチICまたはプリドライバIC4に統合されてもよい。
【0077】
請求項は本願において特定の特徴の組み合わせについて作成したが、本発明の開示の範囲は、いずれかの請求項において現在請求されているものと同じ発明に関連するか否か、および、本発明と同一の技術的課題のうちのいずれかまたはすべてを緩和するか否かとは関係なく、本明細書に明示的または暗示的に開示されている新規の特徴または特徴の新規の組み合わせまたはその一般化も含むことを理解されたい。本願または本願から派生するその他いずれかの出願の手続中に、このような特徴および/またはこのような特徴の組み合わせに関して新たな請求項を作成し得ることを、出願人は通知する。
図1
図2
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図5
図6
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図8
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図10
図11