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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02N 10/00 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
H02N10/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020541253
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034702
(87)【国際公開番号】W WO2020050293
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018167911
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】河原 準
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-019500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0373612(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0314539(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219078(US,A1)
【文献】特開2010-283928(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055972(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/123240(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/020795(WO,A1)
【文献】特開2014-033560(JP,A)
【文献】特表2016-505693(JP,A)
【文献】特開2018-019501(JP,A)
【文献】特表2016-503108(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084184(WO,A1)
【文献】特表2015-533521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 10/00
D01F 1/10
D02G 3/36
D02G 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により変形する繊維状高分子材料と、分散状態のハイドロタルサイト粒子とを備えるアクチュエータであって、
前記繊維状高分子材料が樹脂膜により被覆され、前記ハイドロタルサイト粒子が前記樹脂膜中に分散している、アクチュエータ。
【請求項2】
前記繊維状高分子材料の熱伝導率X(W・m-1・K-1)と、前記樹脂膜の熱伝導率Y(W・m-1・K-1)との間に下記(式1)の関係が成立する、請求項に記載のアクチュエータ。
Y≧X+0.2 ・・・(式1)
【請求項3】
更に、導電体を備える、請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記導電体が導電性の線状材料から形成されている、請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記線状材料が前記繊維状高分子材料に螺旋状に巻かれている、請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記線状材料が前記樹脂膜中に埋設されている、請求項4又は5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記導電体が前記繊維状高分子材料に前記樹脂膜により接着又は固定されている、請求項3~6のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記繊維状高分子材料が捻られたものである、請求項1~のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関する。
本願は、2018年9月7日に、日本に出願された特願2018-167911号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【0002】
先進国における高齢化社会の到来、ロボット工学の発達、人類の知的活動へのシフト等から、様々な物品の動力化が求められており、種々のアクチュエータが提案されている。
例えば、特許文献1には、コイル状又は非コイル状に撚りが挿入されたポリマーファイバーを含み、加熱によりねじり作動(すなわち、回転駆動)を与える高分子アクチュエータが開示されている。
【0003】
非コイル状に撚りを挿入されたポリマーファイバーを含むアクチュエータは、シングルフィラメントまたはマルチフィラメントである、高強度で高度に鎖配向した前駆体ポリマーファイバーを選択し、コイル化を生成しないレベルまで、前記前駆体ポリマーファイバーに撚りを挿入することにより形成される。
【0004】
コイル状に撚りが挿入されたポリマーファイバーを含むアクチュエータは、前記前駆体ポリマーファイバーに、コイル化が起こるまで撚りを挿入するか、又は、コイル化を生成しないレベルまで、前記前駆体ポリマーファイバーに撚りを挿入し、次いで、最初に挿入された撚りに、同じ方向または反対方向にコイル化を挿入することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-42783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような、加熱により変形を起こすことで外界に仕事を取り出すことができる加熱応答性アクチュエータでは、加熱(例えば室温から80℃への加熱)による「形状A」から「形状B」への変形と、その後の冷却による変形(「形状B」から「形状A」)の二つの状態変化速度が、アクチュエータの応答速度を決定する。ポリマーファイバーに適用される加熱手段、例えば、その周囲に巻き付けた線状導電体への電圧印加による加熱と、自然冷却(空冷)による加熱・冷却プロセスを行った場合、加熱と比較して冷却が大幅に遅くなる問題がある。
【0007】
この要因の一つにポリマーファイバーを構成する高分子材料の低い熱伝導率(大よそ0.15~0.3W/mK)が挙げられる。アクチュエータを駆動する温度環境によっては、アクチュエータの駆動安定性が低下する場合がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アクチュエータを構成する繊維状高分子材料の冷却速度を早めることができ、応答速度を向上させることが可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らが検討した結果、加熱により変形する繊維状高分子材料を備えるアクチュエータが、さらに、分散状態のハイドロタルサイト粒子を備えることにより、加熱された繊維状高分子材料の冷却速度を早めることができ、応答速度を向上させることが可能なことを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1] 加熱により変形する繊維状高分子材料と、分散状態のハイドロタルサイト粒子とを備えるアクチュエータ。
[2] 前記繊維状高分子材料が樹脂膜により被覆され、前記ハイドロタルサイト粒子が前記樹脂膜中に分散している、前記[1]に記載のアクチュエータ。
【0011】
[3] 前記繊維状高分子材料の熱伝導率X(W・m-1・K-1)と、前記樹脂膜の熱伝導率Y(W・m-1・K-1)との間に下記(式1)の関係が成立する、前記[2]に記載のアクチュエータ。
Y≧X+0.2 ・・・(式1)
[4] 更に、導電体を備える、前記[2]又は[3]に記載のアクチュエータ。
[5] 前記導電体が導電性の線状材料から形成されている、前記[4]に記載のアクチュエータ。
【0012】
[6] 前記線状材料が前記繊維状高分子材料に螺旋状に巻かれている、前記[5]に記載のアクチュエータ。
[7] 前記線状材料が前記樹脂膜中に埋設されている、前記[5]又は[6]に記載のアクチュエータ。
[8] 前記導電体が前記繊維状高分子材料に前記樹脂膜により接着又は固定されている、前記[4]~[7]のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
[9] 前記繊維状高分子材料が捻られたものである、前記[1]~[8]のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアクチュエータは、加熱された繊維状高分子材料の冷却を早めることができ、応答速度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係るアクチュエータを示す概略図である。
図2】本発明の第二実施形態に係るアクチュエータを示す概略図である。
図3】本発明の第三実施形態に係るアクチュエータを示す概略図である。
図4】本発明の第四実施形態に係るアクチュエータを示す概略図である。
図5】本発明及び比較例のアクチュエータの応答速度評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のアクチュエータは、1つの側面として、加熱により変形する繊維状高分子材料と、ハイドロタルサイト粒子とを備え、
前記ハイドロタルサイト粒子は繊維状高分子材料中に分散しているか、又は
前記ハイドロタルサイト粒子は前記繊維状高分子材料の表面に備えられた樹脂膜中に分散している。
「繊維状高分子材料中に分散している」とは、繊維状高分子材料の表面及び内部に分散していることを意味する。
「樹脂膜中に分散している」とは、樹脂膜の表面及び内部に分散していることを意味する。
なお、本明細書において「分散」とは、顕著な偏りなく全体に存在する状態を意味する。
図1は、本発明の第一実施形態に係るアクチュエータ1を示す概略図である。
アクチュエータ1は、加熱により変形する繊維状高分子材料10と、繊維状高分子材料10に分散状態のハイドロタルサイト粒子11とを備え、前記ハイドロタルサイト粒子は分散状態で繊維状高分子材料中に含まれている。
アクチュエータ1は、外部からの加熱によりねじり作動(すなわち、回転駆動)を与えることができ、自然冷却(空冷)によりねじりが戻ることで、逆回転駆動を与えることができる。アクチュエータ1は、分散状態のハイドロタルサイト粒子11を備えるので、繊維状高分子材料10の冷却を早めることができ、アクチュエータ1の応答速度を向上させることが可能である。
【0016】
本発明のアクチュエータにおいては、ハイドロタルサイト粒子11は放熱性を有するハイドロタルサイトにより構成される。熱伝導率が高く、放熱性を有する材料としては一般に金属やセラミックスが挙げられ、熱伝導率として、1~1000W/mKのものもあるが、これらの多くは有機材料との複合化が煩雑であり、また高い弾性率のため複合化するとアクチュエータ機能を阻害するおそれがある。加えて、これらの材料は一般に可視光を透過せず、これらの材料を用いると、繊維状高分子材料10の内部または表面の状態や、後述する繊維状高分子材料10に設けられた線状導電体12等の加熱手段の状態を視認することが難しくなってしまう場合がある。本発明のアクチュエータは、ハイドロタルサイト粒子11が放熱性を有するハイドロタルサイトにより構成されるので、アクチュエータ機能を阻害することなく、繊維状高分子材料との複合化が可能となる。また、ハイドロタルサイト粒子11は分散状態において透明であり、例えば、製造時、検品時に繊維状導電体12の内部等を視覚的に観察することの妨げとならないという利点がある。
【0017】
ハイドロタルサイト粒子11の平均粒子径としては、0.05~100μmであってもよく、0.1~30μmであってもよく、0.5~10μmであってもよく、1.0~5.0μmであってもよい。
平均粒子径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定することができる。
ハイドロタルサイト粒子11は、下記一般式で示される構造を有する化合物であることが好ましい。
[M2+ 1-x3+ (OH)x+[An- x/n・mHO]x-
[式中、M2+は二価金属であり、M3+は三価金属であり、An-はn価アニオンであり、xは0<x<0.33の範囲にあり、mは0~15である。]
上記一般式において、二価金属M2+としては、例えば、Mg2+、Zn2+、Ni2+などが挙げられる。ここで、二価金属M2+は、上記金属の2種以上の混合物であってもよい。また、三価金属M3+としては、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+などが挙げられる。n価アニオンAn-としては、例えば、I、Cl、NO3-、HCO 、CO 2-、サリチル酸イオン、しゅう酸イオン、クエン酸イオンなどが挙げられる。
ハイドロタルサイト粒子11としては、M2+がMg2+であり、M3+がAl3+であり、An-がCO 2-である、Mg-Al-CO系ハイドロタルサイト粒子が、入手性および放熱性が良好であり、より好ましく用いられる。
【0018】
アクチュエータ1は、繊維状高分子材料10を構成する材料にハイドロタルサイト粒子11を分散させた後に、ストランド状に成型することで作製することができる。
ハイドロタルサイト粒子11の含有量は、繊維状高分子材料10の総質量に対して、0.1~10質量%が好ましい。
【0019】
図2は、本発明の第二実施形態に係るアクチュエータ2を示す概略図である。なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0020】
アクチュエータ2は、加熱により変形する繊維状高分子材料10が樹脂膜13により被覆され、樹脂膜13中にはハイドロタルサイト粒子11が分散している。アクチュエータ2は、外部からの加熱によりねじり作動(すなわち、回転駆動)を与えることができ、自然冷却(空冷)によりねじりが戻ることで、逆回転駆動を与えることができる。
ここでいう「被覆」とは、繊維状高分子材料10の表面の一部または全てが樹脂膜13により覆われていることを意味する。
分散状態のハイドロタルサイト粒子11を備える樹脂膜13が、繊維状高分子材料10と外界の空気層との間に設けられている(すなわち、樹脂膜13が、繊維状高分子材料10の表面に設けられている)ので、樹脂膜13は放熱層として機能し、加熱された繊維状高分子材料10の冷却を早めることができ、アクチュエータ2の応答速度を向上させることが可能である。
1つの側面として、本発明の一実施形態であるアクチュエータ2は、
加熱により変形する繊維状高分子材料10と、樹脂膜13と、ハイドロタルサイト粒子11とを備え、
ハイドロタルサイト粒子11が樹脂膜13中に分散状態で含まれており、
樹脂膜13は、繊維状高分子材料10の表面に設けられている。
【0021】
第二実施形態に係るアクチュエータ2においては、樹脂膜13が、繊維状高分子材料10を被覆している。熱伝導率が高く、放熱性を有する金属やセラミックス等の材料のみから繊維状高分子材料の放熱性被覆を形成した場合には、アクチュエータ機能を阻害するおそれがあるうえに、駆動を繰り返すうちに被覆にクラックが生じる懸念もある。これに対して、アクチュエータ2は、ハイドロタルサイト粒子11が分散している樹脂膜13が、繊維状高分子材料10を被覆しているので、アクチュエータ機能を阻害することなく、樹脂膜13にクラックが生じる懸念を回避することができる。
【0022】
ハイドロタルサイト粒子11を含んでいない繊維状高分子材料10の熱伝導率X(W・m-1・K-1)と、ハイドロタルサイト粒子11を含む樹脂膜13の熱伝導率Y(W・m-1・K-1)との間に下記(式1)の関係が成立することが好ましい。
Y≧X+0.2 ・・・(式1)
【0023】
(式1)の関係が成立することにより、樹脂膜13の放熱層として機能が強化され、加熱された繊維状高分子材料10の冷却をより早めることができ、アクチュエータ2の応答速度をより向上させることが可能である。前記熱伝導率Xと、前記熱伝導率Yとの間は、「Y≧X+0.3・・・(式1’)」であることがより好ましく、「Y≧X+0.4・・・(式1”)」であることがより好ましい。
【0024】
樹脂膜13の熱伝導率Y(W・m-1・K-1)は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。樹脂膜13の熱伝導率Yの上限には特に制限はないが、100以下が好ましい。
1つの側面として、樹脂膜13の熱伝導率Yは、0.3以上100以下が好ましく、0.4以上100以下がより好ましい。
本明細書において、熱伝導率は、例えばアイフェイズ社の表面型熱拡散率測定装置ai-Phase Mobileなどを用いた交流定常法により得ることができる。
【0025】
樹脂膜13は、基材樹脂とハイドロタルサイト粒子11とを含む。
樹脂膜13は、基材樹脂中にハイドロタルサイト粒子11が分散されていればよく、基材樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/シリコーン系樹脂、アクリル/イソシアネート系樹脂、ポリエステル/メラミン系樹脂等を挙げることができる。
【0026】
アクチュエータ2は、繊維状高分子材料10の表面に、前記基材樹脂及びハイドロタルサイト粒子11を含有する懸濁液を塗装することにより樹脂膜13を形成することで作製することができる。前記基材樹脂が水分散性の水系タイプのものであれば、懸濁液は、水希釈タイプのものとすることができ、前記基材樹脂が有機溶剤分散性のラッカータイプのものであれば、懸濁液は、シンナー希釈タイプのものとすることができる。懸濁液は、基材樹脂100質量部に対して、ハイドロタルサイト粒子を10~500質量部含有してもよく、30~400質量部含有してもよく、50~300質量部含有してもよい。
1つの側面として、樹脂膜13は、基材樹脂100質量部に対して、ハイドロタルサイト粒子を10~500質量部含有してもよく、30~400質量部含有してもよく、50~300質量部含有してもよい。
前記塗装された樹脂膜13の厚さは、1~50μmが好ましく、5~30μmがより好ましく、10~20μmが特に好ましい。
本明細書において、「厚さ」は、懸濁液を塗装・乾燥した後に繊維状高分子材料を含めて軸に垂直方向に切断し、光学顕微鏡による観察で測定することができる。
【0027】
基材樹脂及びハイドロタルサイト粒子を含有する懸濁液としては、特開2003-309383号公報、特開2004-43612号公報、特開2006-124597号公報、特開2011-20870号公報、特開2014-237805号公報、国際公開第2010/050139号、国際公開第2011/111414号、等に開示された放熱性塗料組成物を参考にして調製することができるほか、市販の放熱性塗料(例えば、合同インキ社製のユニクール(登録商標)、オキツモ社製のクールテック(登録商標))を用いることができる。
【0028】
本発明のアクチュエータはさらに導電体を備えていてもよい。導電体としては、導電性の線状材料から形成されていることが好ましい。
【0029】
図3は、本発明の第三実施形態に係るアクチュエータ3を示す概略図であり、直径D10の繊維状高分子材料10に、直径D11の線状導電体12が螺旋状に所定の隙間間隔Iを設けて巻かれている例を示している。
【0030】
アクチュエータ3は、加熱により変形する繊維状高分子材料10が樹脂膜13により被覆され、樹脂膜13中にハイドロタルサイト粒子11が分散している。より詳しくは、アクチュエータ3は、加熱により変形する繊維状高分子材料10が、分散状態のハイドロタルサイト粒子を含有する樹脂層13によって全部又は一部)が被覆されており、その周りに、線状導電体12が螺旋状に所定の隙間を設けて巻かれている。
1つの側面として、本発明の一実施形態であるアクチュエータ3は
加熱により変形する繊維状高分子材料10と、樹脂膜13と、ハイドロタルサイト粒子11と、線状導電体12とを備え、
ハイドロタルサイト粒子11が樹脂膜13中に分散状態で含まれており、
樹脂膜13は、繊維状高分子材料10の表面に設けられており、
樹脂膜13上(樹脂膜13における外界の空気層側の面上)に線状導電体12が螺旋状に所定の隙間を設けて巻かれている。
【0031】
アクチュエータ3は、外部からの加熱によりねじり作動(すなわち、回転駆動)を与えることができ、自然冷却(空冷)によりねじりが戻ることで、逆回転駆動を与えることができる。分散状態のハイドロタルサイト粒子11を含む樹脂膜13が、繊維状高分子材料10と外界の空気層との間に設けられているので、樹脂膜13は放熱層として機能し、加熱された繊維状高分子材料10の冷却を早めることができ、アクチュエータ3の応答速度を向上させることが可能である。
【0032】
アクチュエータ3において、線状導電体12は樹脂膜13の外側に螺旋状に巻かれている。アクチュエータ3は、繊維状高分子材料10の表面に樹脂膜13を形成した後、樹脂膜13の外側に線状導電体12を螺旋状に巻くことで作製することができる。
【0033】
分散状態のハイドロタルサイト粒子11を備える樹脂膜13は放熱層として機能するが、樹脂膜13は、さらに線状導電体12の固定手段を兼ねるものとすることもできる。
例えば、樹脂膜13は、基材樹脂とハイドロタルサイト粒子11とを含み、基材樹脂として、熱硬化性又はエネルギー線硬化性の樹脂を用いることで、繊維状高分子材料10の表面に樹脂膜13の材料成分を含有する塗料組成物を塗布して接着剤層(すなわち、樹脂膜13)を形成した後、接着剤層の上に線状導電体12を巻き付けて、接着剤層を乾燥・硬化させることで、線状導電体12が繊維状高分子材料10に樹脂膜13により接着及び固定されているものとすることができる。
前記熱硬化性の樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルエーテル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン樹脂、及びフェノール樹脂等が挙げられる。
前記エネルギー線硬化性の樹脂としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0034】
アクチュエータ3においては、外部からの加熱により、螺旋状に巻かれた線状導電体12が加熱され、繊維状高分子材料10が加熱される。
螺旋状に巻かれ線状導電体12は、アクチュエータ機能を阻害することなく、線状導電体12にクラックが生じる懸念も回避することができる。
線状導電体12の代わりに、例えば、金属メッキ等を用いた場合には、アクチュエータ機能を阻害するおそれがあるうえに、駆動を繰り返すうちに被覆にクラックが生じる懸念がある。
【0035】
1つの側面として、線状導電体12が巻き付けられた繊維状高分子材料10の、繊維状高分子材料10及び線状導電体12の外側(すなわち、繊維状高分子材料10及び線状導電体12における外界の空気層側の面上)に樹脂膜13を形成して、線状導電体12が樹脂膜13中に埋設されていてもよい。
【0036】
図4は、本発明の第四実施形態に係るアクチュエータ4を示す概略図である。
アクチュエータ4は、加熱により変形する繊維状高分子材料10が樹脂膜13により被覆され、樹脂膜13中にハイドロタルサイト粒子11が分散している。より詳しくは、アクチュエータ4は、加熱により変形する繊維状高分子材料10の周りに、線状導電体12が螺旋状に所定の隙間を設けて巻かれており、繊維状高分子材料10及び線状導電体12の外側に、分散状態のハイドロタルサイト粒子を含有する樹脂層13が形成されている。アクチュエータ4において、線状導電体12は樹脂膜13中に埋設されている。アクチュエータ4も、外部からの加熱によりねじり作動(すなわち、回転駆動)を与えることができ、自然冷却(空冷)によりねじりが戻ることで、逆回転駆動を与えることができる。分散状態のハイドロタルサイト粒子11を備える樹脂膜13が、繊維状高分子材料10及び線状導電体12と外界の空気層との間に設けられているので、樹脂膜13は放熱層として機能し、加熱された繊維状高分子材料10の冷却を早めることができ、アクチュエータ3の応答速度を向上させることが可能である。
1つの側面として、本発明の一実施形態であるアクチュエータ4は、
加熱により変形する繊維状高分子材料10と、樹脂膜13と、ハイドロタルサイト粒子11と、線状導電体12とを備え、
ハイドロタルサイト粒子11が樹脂膜13中に分散した状態で含まれており、
繊維状高分子材料10上(すなわち、繊維状高分子材料10の周囲)に線状導電体12が螺旋状に所定の隙間を設けて巻かれており、
繊維状高分子材料10及び線状導電体12上(すなわち、繊維状高分子材料10及び線状導電体12における外界の空気層側の面上)に、樹脂層13が形成されており、
線状導電体12は樹脂膜13中に埋設されている。
【0037】
アクチュエータ4は、繊維状高分子材料10の表面に、直接、線状導電体12を螺旋状に巻いた後に、繊維状高分子材料10及び線状導電体12の外側の全部または一部に、樹脂膜13を形成することによって作製することができる。線状導電体12が分散状態のハイドロタルサイト粒子11を含む樹脂膜13中に埋設されていることで、線状導電体12が繊維状高分子材料10に樹脂膜13により固定されている。これにより、線状導電体12が繊維状高分子材料10の周囲において位置がずれることなく、アクチュエータ13の長さ方向において均一な駆動が長期間維持される。分散状態のハイドロタルサイト粒子11を備える樹脂膜13は、冷却・放熱の効果がより良く機能することから、外気と接していることが好ましく、別途線状導電体12の固定手段を設けないことが好ましい。本実施形態において、線状導電体12が樹脂膜13中に埋設されていても、分散状態のハイドロタルサイト粒子11を備える樹脂膜13が透明であることにより、例えば、製造時、検品時に繊維状高分子材料10および線状導電体12を樹脂膜13越しに視認することが可能である。
【0038】
本発明のアクチュエータにおいて、加熱により変形する繊維状高分子材料10は捻られたものであることが好ましい。加熱により駆動するアクチュエータを得るための繊維状高分子材料10は、通常、繊維を製造した後に撚りが挿入されることにより得られる。また、一般的な繊維の紡糸、撚糸の工程において、繊維状形状を形成させる段階において、捻りが加えられる、すなわち、繊維状高分子材料の製造工程において捻られてもよい。
【0039】
本発明のアクチュエータにおいて、繊維状高分子材料10はコイル化が生じる直前まで、すなわちコブが生じる直前まで捻りが加えられたモノフィラメントファイバーであることがより好ましく、コイル化が生じるまで、すなわちコブが生じるまで捻りが加えられたコイル状ファイバーであってもよい。
また、捻りが加えられたモノフィラメントファイバーをマンドレルに巻き付ける等の方法により得られたコイル状ファイバーであってもよく、このとき、最初に加えられた捻りの方向と同じ方向に巻き付けてコイル状ファイバーにしてもよく、最初に加えられた捻りの方向と反対方向に巻き付けてコイル状ファイバーにしてもよい。最初に加えられた捻りの方向と同じ方向に巻き付けたコイル状ファイバーは、加熱により収縮するアクチュエータとして機能させることができる。最初に加えられた捻りの方向と反対方向に巻き付けてコイル状ファイバーは、加熱により伸長するアクチュエータとして機能させることができる。この場合、コイルの内側に芯棒を挿入しておくことにより、伸長する作用が横に逃げない様にしておくことが好ましい。
【0040】
未処理の繊維状高分子材料を予め製造し、その後、撚りを挿入する方法により繊維状高分子材料を捻る場合、繊維状高分子材料10として、例えば、直径500μmのナイロン6,6のモノフィラメントを25℃の環境下で、例えば、ナイロン6,6のモノフィラメントのヤング率の1×10-3~1×10-2倍の適度な引張応力を加えてコイル化を生じさせないように捻じると、1m当たり400~600回程度まで回転させた非コイル状の捻り処理済みモノフィラメントを得ることができる。
1つの側面として、直径xmmの繊維に対し、1mあたり250000/x±15~20%の撚りを挿入してもよい。
【0041】
また、繊維状高分子材料10として、例えば、直径250μmのナイロン6,6のモノフィラメントを25℃の環境下で、ナイロン6,6のモノフィラメントのヤング率の1×10-3~1×10-2倍の適度な引張応力を加えてコイル化を生じさせないように捻じると、1m当たり850~1150回程度まで回転させた非コイル状の捻り処理済みモノフィラメントを得ることができ、この回転数を超えてナイロン6,6のモノフィラメントを捻じると、コイル化が生じ、又は破断してしまうおそれがある。また、フィラメントのヤング率の1×10-2倍を超えた引張応力を加えた場合には、スナール(巻き瘤)が生じたり、フィラメントが破断したりしやすい傾向がある。
【0042】
繊維状高分子材料10のガラス転移温度以下の温度環境下で捻じりを加えた繊維状高分子材料10において、捻じりが元に戻る作用を抑制するために、その高分子のガラス転移温度以上の環境に一定期間置く等の、残存応力緩和処理を行うことが好ましい。
【0043】
繊維状高分子材料は、高分子鎖が配向することにより、繊維軸方向とこれと垂直方向で、構造及び物性において高い異方性を示すことが一般に知られている。これは繊維軸方向に平行に高分子鎖が配向し、結晶構造を形成しやすいことに起因する。繊維状高分子材料を構成する高分子は、繊維状高分子材料の繊維軸と非平行の規則的な高分子配向を有するものを含むことが好ましい。繊維状高分子材料を構成する高分子が、繊維軸と非平行の規則的な高分子配向をするものを含んでいることは、繊維状高分子材料に回転駆動する機能を付与する一手段である。繊維状高分子材料は、捻りを加え、アニールを行うことで繊維状高分子材料を構成する高分子が繊維軸に斜行して規則的に配向した状態が固定される。
【0044】
本発明のアクチュエータにおいて、繊維状高分子材料を構成する高分子の種類としては、ナイロン6、ナイロン6,6等のナイロン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0045】
繊維状高分子材料を構成する高分子は結晶性であることが好ましい。繊維状高分子材料における高分子の結晶化度は、50%以上であることが好ましく55%~90%であることがさらに好ましい。結晶化度がこのような範囲にあることで、分子配向の異方性が高く、アクチュエータとしての効果に優れるものとすることが容易となる。
【0046】
本発明のアクチュエータにおいて、繊維状高分子材料は、モノフィラメントファイバーであってもよく、マルチフィラメントファイバーからなるものであってもよい。
1つの側面として、本発明に係る「加熱により変形する繊維状高分子材料」とは、繊維軸と非平行の規則的な高分子配向を有する高分子鎖を含み、捻りを加え、アニールを行うことにより構成する高分子が繊維軸に斜行して規則的に配向した状態が固定された繊維状の高分子材料である。
前記捻りは、直径xmmの繊維に対し、1mあたり250000/x±15~20%であることが好ましく、
前記繊維状高分子材料を構成する高分子は、ナイロン6、ナイロン6,6等のナイロン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0047】
本発明のアクチュエータにおいて、繊維状高分子材料10は、加熱により繊維軸を中心とした回転駆動をするものである。本発明のアクチュエータは外部からの加熱により加熱される線状導電体を備えるものであってもよく、線状導電体を備えずに、外部の環境温度に反応して繊維軸を中心とした回転駆動をするものであってもよい。
【0048】
線状導電体12としては、金属ワイヤやカーボンナノチューブの糸が挙げられる。好ましい金属ワイヤとしては、タングステンワイヤが挙げられる。
線状導電体12は、繊維状高分子材料10上に1000~10000回巻き/mの密度で巻き付けることが好ましい。
【0049】
繊維状高分子材料10の直径D10は、0.01mm<D10≦40mmであってもよく、0.05mm<D10≦10mmであってもよく、0.1mm<D10≦1mmであってもよく、0.1mm<D10≦0.5mmであってもよい。
【0050】
また、線状導電体12の断面は、以下、略円形であるものを前提にして説明しているが、略楕円形のものであってもよく、偏平な形状であってもよい。そのとき、その楕円形又は偏平な形状の長径を直径D11に置き換えて理解することができる。
【0051】
本発明のアクチュエータの長さあたりの電気抵抗を好適な範囲とするため、繊維状高分子材料10の直径D10、線状導電体12の直径D11、及び線状導電体12のピッチ(I+D11)を適宜設計することができる。繊維状高分子材料10の直径D10が、例えば、0.1mm<D10≦1mmであるとき、線状導電体12の直径D11は、1μm≦D11≦1000μmが好ましく、5μm≦D11≦500μmがより好ましく、10μm≦D11≦100μmが特に好ましい。別の側面として、10μm≦D11≦150μmであってもよい。
【0052】
繊維状高分子材料10の直径D10と、線状導電体12の直径D11との関係は、0.001≦D11/D10<2が好ましく、0.005≦D11/D10≦1.0がより好ましく、0.01≦D11/D10≦0.5が特に好ましい。
【0053】
線状導電体12の直径D11と、線状導電体12の導電体間距離Iとの関係は、0.01≦I/D11≦10が好ましく、0.05≦I/D11≦5がより好ましく、0.1≦I/D11≦3が特に好ましい。
なお「線状導電体12の導電体間距離I」とは、線状導電体12の螺旋構造における隣接する線状導電体12同士の最短距離を意味する。
【0054】
平面視で、線状導電体12と繊維状高分子材料10との成す角度θは、0°<θ≦90°であり、30°≦θ≦90°が好ましく、45°≦θ≦75°がより好ましい。
【0055】
本発明のアクチュエータは、横に静置したときの長さは1~100cmであることが好ましく、1~50cmであることがより好ましく、1~10cmであることが特に好ましい。
以上、この発明の実施形態について化学式及び図面を参照して詳述してきたが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
【0056】
1つの側面として、本発明の一実施形態であるアクチュエータは、
加熱により変形する繊維状高分子材料と、樹脂膜と、ハイドロタルサイト粒子と、線状導電体とを備え、
ハイドロタルサイト粒子が樹脂膜中に分散状態で含まれており、
繊維状高分子材料上に線状導電体が螺旋状に巻かれており、
繊維状高分子材料及び線状導電体上に、樹脂層13が形成されており、
線状導電体12は樹脂膜13の内側に埋設されており、
前記繊維状高分子材料は、ナイロン6,6フィラメントであることが好ましく、
前記ナイロン6,6フィラメントは、直径D10が0.1mm<D10≦0.5mmであることが好ましく、捻り密度が、400~600回/mであることが好ましく、
前記樹脂膜の熱伝導率は、0.4以上0.45以下であることが好ましく、
前記線状導電体は、銅ワイヤであることが好ましく、
前記銅ワイヤは、1000~1600回巻き/mで前記繊維状高分子材料上に巻き付いていることが好ましい、
アクチュエータである。
【実施例
【0057】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0058】
[冷却速度評価]
所定の方法で作成した加熱応答性アクチュエータの線状導電体に対して電圧(8V直流)を印加し、110℃まで加熱した後、電圧を除去し、室温(25℃)無風の環境下で50℃まで表面温度が下がるまで待った。その温度変化に要した時間を計測した。温度の計測はFLIR社製サーモカメラ「FLIROne」を用いて行った。
【0059】
[熱冷サイクル時間評価]
冷却速度評価において、表面温度の低下が30℃に達した時点で加熱を再開し、表面温度110℃で電圧の除去により空冷開始、表面温度30℃で加熱を再開するという手順を繰り返した。加熱の開始から、冷却後に50℃まで温度が下がるまでを一サイクルとして、一サイクルにおける各時間経過時の温度変化を追跡した。結果を図5に示す。図中、「Coated」は実施例1を示し、「Bare」は比較例1を示す。また、一サイクルに要する時間(熱冷サイクル時間)を測定した。
【0060】
[フィラメント及び金属ワイヤの視認性]
加熱応答性アクチュエータを目視により観察し、フィラメント表面及び金属ワイヤが視認可能か否かを判断した。
【0061】
[実施例1]
東レモノフィラメント製ナイロン6,6フィラメント(直径0.5mm,熱伝導率=0.2W/mK)を500回/mの捻り密度(単位長さあたりの捻り回数)で捻り,180℃40分間でアニール処理を行った。得られた撚糸済みフィラメントの周囲に1600回巻き/mの密度で銅ワイヤ(直径0.15mm)を巻き付け、その上から、樹脂に高放熱性のハイドロタルサイト粒子が混合された放熱性塗料(合同インキ社製ユニクール(登録商標)UC-001、熱伝導率0.45W/mK)を厚さ20μmで塗布し、120℃20分間で乾燥した。この加工フィラメントを捻りと同じ回転方向に直径2mmの金属棒を中心としてコイル状に巻き付け、180℃40分間のアニール処理を行った。その後、金属棒を取り除いて伸縮型の加熱応答性アクチュエータを得た。加熱応答性アクチュエータのフィラメント及び金属ワイヤの視認性に関し、フィラメント表面及び金属ワイヤのいずれもが、放熱性塗料の塗膜を通して視認可能であった。
【0062】
作成した実施例1のアクチュエータ10cm(コイル状の加熱応答性アクチュエータを横に静置したときの長さ)を採取し、上下方向に上端を固定し、下端に20gの錘を垂下した。アクチュエータ全長に対して8Vの直流電圧を印加(銅ワイヤに対して印加)したところ、アクチュエータは収縮して錘を引き上げた。その後、表面温度が110℃に達した時点で電圧を除去すると、徐々にアクチュエータは元の長さに伸長し、錘が下りた。
【0063】
[比較例1]
放熱性塗料を塗布しない以外は実施例1と同様に加熱応答性アクチュエータを得た。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例1のアクチュエータは、比較例1のアクチュエータに比べて、冷却速度が極めて速く、熱冷サイクル時間が短くすることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のアクチュエータは、加熱により変形するアクチュエータとして、様々な物品の動力化の用途において、使用することができるので、産業上極めて有効である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・アクチュエータ
10・・・繊維状高分子材料
11・・・ハイドロタルサイト粒子
12・・・線状導電体
13・・・樹脂膜(放熱層)
I・・・線状導電体の螺旋構造の隣接する線状導電体同士の隙間間隔
10・・・繊維状高分子材料の直径
11・・・線状導電体の直径
図1
図2
図3
図4
図5