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特許7292295自己整合フィールドプレートおよびメサ終端構造を有する高出力半導体デバイスならびにこれを製造するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】自己整合フィールドプレートおよびメサ終端構造を有する高出力半導体デバイスならびにこれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20230609BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20230609BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20230609BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20230609BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301E
H01L29/06 301F
H01L29/06 301M
H01L29/06 301V
H01L29/86 301P
H01L29/48 F
H01L29/48 P
H01L29/44 Y
H01L29/48 E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020546335
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2019055376
(87)【国際公開番号】W WO2019170631
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】18160331.7
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノール,ラーズ
(72)【発明者】
【氏名】ミハイラ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】クランツ,ルカス
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/101369(US,A1)
【文献】特開2014-107499(JP,A)
【文献】米国特許第7078780(US,B2)
【文献】特開2016-181581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/328 - H01L 21/338
H01L 29/06
H01L 29/68 - H01L 29/885
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体デバイスであって、
ワイドバンドギャップ半導体層(1)を備え、前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)は、第1の主面(2)と前記第1の主面(2)と反対側の第2の主面(3)とを有し、前記第1の主面(2)と前記第2の主面(3)とは横方向に延在し、前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)は、活性領域(AR)と終端領域(TR)とを含み、前記終端領域(TR)は、横方向に前記活性領域(AR)を取囲み、前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)は、前記終端領域(TR)内の前記第1の主面(2)からくぼんだ第1の凹部(9)を有し、前記第1の凹部(9)は前記活性領域(AR)を取囲み、前記パワー半導体デバイスはさらに、
前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)上に位置し、かつ、前記終端領域(TR)において前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の第1の部分を露出させるフィールドプレート(5)を備え、
前記第1の主面(2)に平行な平面に対する正射影において、前記第1の凹部(9)の側壁(9e)の前記活性領域(AR)の反対の側にある上端によって画成された前記第1の凹部のエッジが前記フィールドプレート(5)の外周エッジ(5e)から1μm未満であるように、前記活性領域(AR)に隣接する前記側壁は、前記フィールドプレート(5)の前記外周エッジと横方向に整合され、前記パワー半導体デバイスは、
前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)が、前記活性領域(AR)内に、前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)からくぼんだ第2の凹部(14)を有し、
前記第2の凹部(14)の深さが前記第1の凹部(9)の深さと同じであり、
前記第2の凹部(14)が充填材料で充填され、前記充填材料は絶縁材料であることを特徴とする、パワー半導体デバイス。
【請求項2】
前記フィールドプレート(5)と前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)との間に挿入されて、前記フィールドプレート(5)を前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)から隔てる誘電体層(4)をさらに備える、請求項1に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項3】
前記横方向に垂直な前記誘電体層(4)の厚さは、前記第1の凹部(9)から横方向に離れるにつれて減少する、請求項2に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項4】
前記誘電体層(4)は、0.02μm~1μmの範囲の、前記第1の凹部(9)に隣接する厚さを有する、請求項2または3に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項5】
前記フィールドプレート(5)は、アルミニウム、ニッケル、タングステン、およびクロムのうち少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項6】
前記第1の凹部(9)の深さは少なくとも4μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項7】
前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)は、炭化ケイ素、窒化ガリウムおよび酸化ガリウムのうち1つを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項8】
パワー半導体デバイスを製造するための方法であって、
第1の主面(2)と前記第1の主面(2)と反対側の第2の主面(3)とを有するワイドバンドギャップ半導体層(1)を設けるステップを備え、前記第1のおよび前記第2の主面(3)は横方向に延在し、前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)は、活性領域(AR)と前記活性領域(AR)を横方向に取囲む終端領域(TR)とを含み、前記方法はさらに、
前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)上にフィールドプレート(5)を形成するステップを備え、前記フィールドプレート(5)は、前記終端領域(TR)において前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の第1の部分を露出させ、前記方法はさらに、
前記フィールドプレート(5)が前記終端領域(TR)において前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の前記第1の部分を露出させて、前記終端領域(TR)内の前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)に第1の凹部(9)を形成する領域で前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の異方性エッチングを行うステップを備え、前記第1の凹部(9)は前記活性領域(AR)を取囲み、前記第1の主面(2)に平行な平面への正射影において、前記第1の凹部(9)の側壁の前記活性領域(AR)の反対の側にある上端によって画成される前記凹部のエッジが前記フィールドプレート(5)の外周エッジ(5e)から1μm未満であるように、前記活性領域(AR)に隣接する前記側壁(9e)は前記フィールドプレート(5)の前記外周エッジと横方向に整合され、前記方法は、
前記フィールドプレート(5)を形成するステップが、
前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)上に誘電体層(4)を形成することと、
前記誘電体層(4)上に第1の金属層(7)を形成することと、
前記第1の金属層(7)と前記誘電体層(4)とをパターニングして、前記第1の凹部(9)が前記異方性エッチングを行うステップにおいて形成される前記終端領域(TR)において前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の少なくとも前記第1の部分を露出させることとを含み、
前記異方性エッチングを行うステップにおいて、パターニングされた前記第1の金属層(7)は、エッチングマスクの少なくとも一部として用いられ、
前記終端領域(TR)内のパターニングされた前記第1の金属層(7)は、前記パワー半導体デバイスにおいて前記フィールドプレート(5)を形成することを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記誘電体層(4)は、前記第1の金属層(7)を形成するステップの前にパターニングされて、前記活性領域(AR)において前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の少なくとも第2の部分を露出させる前記誘電体層(4)に開口部を形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
パターニングされた前記第1の金属層(7)およびパターニングされた前記誘電体層(4)は、前記活性領域(AR)において前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の第3の部分を露出させ、
前記エッチングマスクとしてパターニングされた前記第1の金属層(7)を用いて、前記第1の凹部(9)と共に、前記異方性エッチングを行うステップにおいて前記活性領域(AR)に第2の凹部(14)が形成され、
前記第2の凹部(14)は充填材料で充填される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
パターニングされた前記第1の金属層(7)およびパターニングされた前記誘電体層(4)は、前記活性領域(AR)において前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の第4の部分を露出させ、
前記方法はさらに、前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記異方性エッチングの前に、前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の前記第4の部分と直接接触するコンタクト電極(8)を形成するステップを備え、
前記コンタクト電極(8)は、前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の異方性エッチングを行うステップにおいて前記エッチングマスクとして、パターニングされた前記第1の金属層(7)と共に用いられる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の金属層(7)は、前記誘電体層(4)の前記開口部を通じて前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)と直接接触するように形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記フィールドプレート(5)を形成するステップは、
前記第1の金属層(7)上に第2の金属層(15)を形成することを含み、前記第1のおよび前記第2の金属層(7、15)は異なる材料で形成され、前記ステップはさらに、
前記第2の金属層(15)をパターニングして、前記第1の凹部(9)が前記異方性エッチングを行うステップで形成される前記終端領域(TR)において前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の少なくとも前記第1の部分を露出させることを含み、
前記異方性エッチングを行うステップで、前記第2の金属層(7、15)が前記エッチングマスクの少なくとも一部として使用される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の金属層(15)、前記第1の金属層(7)および前記誘電体層(4)のパターニングは、
前記第2の金属層(15)をパターニングして、前記終端領域(TR)において前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の前記第1の部分の領域内の前記第1の金属層(7)を露出させることと、
前記活性領域(AR)内の前記第2の金属層(15)にトレンチ(16)を形成して、前記トレンチ(16)の底部において前記第1の金属層(7)を露出させることと、
前記トレンチ(16)を充填材料(17)で少なくとも部分的に再充填することと、
エッチングマスクとして前記第2の金属層(15)および前記充填材料(17)を用いた異方性エッチングによって、前記第1の金属層(7)と前記誘電体層(4)とをパターニングすることとを含み、前記方法はさらに、
前記第1の金属層(7)および前記誘電体層(4)をパターニングするステップの後で前記充填材料(17)を除去するステップと、
その後、隣接するトレンチをそれぞれ隔てる部分の等方性エッチングによって前記トレンチ(16)が形成されている前記第2の金属層(15)の一部を除去するステップと、
その後、エッチングマスクとして前記第2の金属層(15)を用いた異方性エッチングによって、前記活性領域(AR)内の前記第1の金属層(7)および前記誘電体層(4)の一部を除去して、前記活性領域(AR)において前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の第5の部分を露出させるステップと、
前記ワイドバンドギャップ半導体層(1)の前記第1の主面(2)の前記第5の部分と接触するコンタクト電極(8)を形成するステップとを備える、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、終端領域(メサ終端構造)においてフィールドプレートおよび凹部を含む効果的なエッジ終端を有するワイドバンドギャップ高出力半導体デバイス、ならびにこれを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム、酸化ガリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、ダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料によって、従来の半導体材料で形成されたものと比べて、半導体デバイスの出力が高くなり、エネルギー効率が高くなる。
【0003】
しかしながら、比較的低い絶縁破壊電圧VBRで半導体デバイスに絶縁破壊を生じる主接点のエッジにおける電界集中を回避するために、ワイドギャップ半導体材料を用いた高出力半導体デバイスには効率的なエッジ終端が必要である。
【0004】
エッジ終端は、フローティングフィールドリング、接合終端拡張(JTE)、フィールドプレート、メサ構造またはこれらの技術の組合せを含むさまざまな方法で提供され得る。
【0005】
フローティングフィールドリングは、半導体デバイスの活性領域の周囲に環状に生成される。フローティングフィールドリングは多くのパワー半導体デバイスにおいて主接合部と同時に形成可能であるため、フローティング・フィールド・リングの生成は、製造プロセスで容易にまとめることが可能である。他方で、絶縁破壊電圧とウエハ専有面積との間の最も重要なトレードオフに影響を与える多数の要素(たとえばリング間隔)を考慮すると、高性能フローティングフィールドリング終端の設計は非常に難易度が高い。
【0006】
接合終端拡張(JTE)は、ドリフト領域として設けられた半導体層の表面へのイオン注入による、反対の電荷の制御添加に基づく。JTE技術は、良好な終端効率をもたらす。しかしながら、ワイドバンドギャップ材料でのイオン注入は、従来の半導体材料でのイオン注入よりも困難である。さらに、注入ステップでは高温注入施設とそのようなワイドバンドギャップ材料の活性化用に特別に設計されたアニール炉とが必要になるため、製造が同程度に高価になる。半導体表面の質およびそれを有するデバイスの歩留まりは、活性化の間に低下することが分かった。
【0007】
処理コストの削減に加えて技術的に困難で高価な処理であるということを念頭におくと、注入を必要としない設計は、従来のシリコンクリーンルームにおけるワイドバンドギャップ材料を用いた整流器の製造を可能にするであろう。
【0008】
フィールドプレート技術は、プロセス要求基準が比較的単純である。それは、誘電体層上に位置する金属層を利用する。フィールドプレートは、主接点(活性領域)のエッジの表面電位を修正する。その結果、空乏領域は拡張され、それによって電界も拡張される。主接点のエッジにおける電界集中は低減され、フィールドプレートのエッジに向かってシフトされる。しかしながら、電界がますます集中するため、絶縁破損のおそれが増大して、達成可能な電気絶縁破壊電圧が制限される。高出力デバイスでは、臨界電界集中は従来のシリコンデバイスと比べてほぼ1桁大きいため、絶縁破壊の問題は従来のシリコンデバイスと比較してより顕著である。
【0009】
メサ構造エッジ終端は、プロセス要求基準がややシンプルな別のエッジ終端技術である。この技術は、半導体層の機械的な除去またはエッチングによる、主接点の外周エッジにおける材料、それゆえ電荷の除去からなる。
【0010】
Shuntao Huらによる論文「A new edge termination technique for SiC power devices(SiCパワーデバイスのための新しいエッジ終端技術)」(Solid State Electronics 48(2004)1861-1688頁)で、SiCエピ層に形成された、誘電体が充填されたメサ構造と重なる金属構造を利用したエッジ終端が知られている。メサ構造を有さない従来のフィールドプレート技術と比較して、金属コーナーでの電界集中を、この構成によって緩和することができる。それにもかかわらず、理想的な絶縁破壊電圧が得られる前に早期絶縁破壊が発生する。これは、SiC層と誘電体層との間の誘電率の差によって電界集中が生じるからである。この影響を緩和するために、この論文ではさらに、メサ構造と重なるさらに他の金属フィールドプレート延在部を有する、誘電体が充填されたメサの上部において、別の誘電体層を追加することが提案されている。この変形例では、シミュレーションでは、理想的な絶縁破壊電圧の80%が得られる。
【0011】
US2011/0101369 A1で、半導体基板に配設された、窒化ガリウムを用いた半導体パワーデバイスが知られている。パワーデバイスは、半導体パワーデバイスの外周領域に配設されたメサ形状を有する終端領域と、フィールドプレートと、ドープガリウムを用いたエピタキシャル層で充填されたトレンチに配設された少なくとも1つのガードリングを有する終端構造とを備える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、上述の従来技術を考慮してなされ、本発明の目的は、より効果的なエッジ終端を有するワイドバンドギャップ高出力半導体デバイスを提供することである。
【0013】
発明の目的は、パワー半導体デバイスによって達成される。このパワー半導体デバイスは、ワイドバンドギャップ半導体層を備え、ワイドバンドギャップ半導体層は、第1の主面と第1の主面と反対側の第2の主面とを有し、第1の主面と第2の主面とは横方向に延在し、ワイドバンドギャップ半導体層は、活性領域と、横方向に活性領域を取囲む終端領域とを含み、ワイドバンドギャップ半導体層は、終端領域内の第1の主面からくぼみ、かつ、活性領域を取囲む第1の凹部を有し、パワー半導体デバイスはさらに、ワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面上に位置し、かつ、終端領域においてワイドバンドギャップ半導体層の第1の部分を露出させるフィールドプレートを備える。第1の主面に平行な平面に対する正射影において、第1の凹部の側壁の上端によって画成された凹部のエッジがフィールドプレートの外周エッジから1μm未満、例示として0.5μm未満、例示として0.2μm未満であるように、活性領域に隣接する側壁は、フィールドプレートの外周エッジと横方向に整合される。発明に係るパワー半導体デバイスは、ワイドバンドギャップ半導体層が、ワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面からくぼんだ活性領域内の第2の凹部を有し、第2の凹部の深さが第1の凹部と同じであり、充填材料は絶縁材料であることを特徴とする。
【0014】
明細書を通じて、ワイドバンドギャップ半導体は、2eVよりも大きなバンドギャップを有する半導体のことをいう。さらに、「横方向」は、第1の主面に平行な方向のことをいい、「横方向に」は、横方向に関することを表す。「上部の」は、第1の主面に向かう方向において第2の主面に対して高い位置にあることを表す。活性領域に隣接する側壁は、活性領域に最も近い第1の凹部の側壁、および活性領域から離れたその表面を表す。第1の層が第2の層を「露出させる」とは、第2の層が第1の層に対して露出されている領域に第1の層が形成されていないことを表す。これは、1つまたは複数のさらに他の層が第2の層の上に形成されることを除外しない。
【0015】
フィールドプレートは、活性領域における電界の大きさを低減し、かつ、高電界領域(臨界電界集中ゾーン)の位置を(コンタクト電極のエッジの下方の)活性領域の外周からフィールドプレートのエッジの下方の領域に向かって遠ざかるようにずらす横方向のデバイスの空乏領域を拡張する。第1の凹部はメサ型エッジ終端を形成する。第1の凹部の側壁をフィールドプレートの外周エッジと整合させることによって、メサエッジ終端は、所与の電圧について、フィールドプレートの外周エッジの下方の領域における臨界電界集中を効果的に低減する。そのため、より高い絶縁破壊電圧が得られる。その結果、効率的なエッジ終端がもたらされる。第2の凹部は、漏れ電流を低減し得る。
【0016】
発明のさらなる展開について、従属請求項で特定する。
例示的な実施形態では、パワー半導体デバイスは、フィールドプレートとワイドバンドギャップ半導体層との間に挿入されて、フィールドプレートをワイドバンドギャップ半導体層から隔てる誘電体層を備える。誘電体層は、フィールドプレートの効果を増幅し、さらに電界を緩和する。誘電体層は、フィールドプレートとワイドバンドギャップ半導体層との間に存在する高電界領域を含み得る。誘電体層はまた、フィールドプレートの外周エッジ下方の臨界電界集中を低減し得る。
【0017】
パワー半導体デバイスの例示的な実施形態では、横方向に垂直な誘電体層の厚さは、第1の凹部から横方向に離れるにつれて減少する。この特徴は、フィールドプレートの性能をさらに向上し得る。誘電体層の厚さが小さいと、ワイドバンドギャップ半導体層に対するフィールドプレートの影響が増大するため、活性領域における電界の大きさがより効率的に減少する。すなわち、誘電体層の厚さが大きいと、絶縁破損に起因する電圧破壊に対してさらに保護される。外周に向かうにつれて厚さが増大する誘電体層を有していると、活性領域の周囲での臨界電界集中を低減し、かつ、これをフィールドプレートの外周エッジに向けてシフトさせることによって、より高い絶縁破壊電圧を提供し得る一方で、より厚い誘電体層によってこの場所における絶縁破損のリスクが低減する。
【0018】
例示的な実施形態では、誘電体層は、0.02μm~1μm、例示として0.02μm~0.5μm、およびさらに例示として0.02μm~0.3μmの範囲の、第1の凹部に隣接する厚さを有する。
【0019】
メサ構造に起因する電界軽減が絶縁破損によって生じる電圧破壊のリスクを低減するため、誘電体層の厚さは従来技術のデバイスと比較して小さくてもよい。より薄い誘電体層は、活性領域の周囲での電界集中を低減するために有益である。
【0020】
例示的な実施形態では、フィールドプレートは、アルミニウム、ニッケル、タングステン、およびクロムのうち少なくとも1つを含む。これらの材料のうち1つを含むフィールドプレートは、後で説明する製造方法を考慮して有益な特性を有する。
【0021】
例示的な実施形態では、第1の凹部の深さは、少なくとも4μm、例示として少なくとも6μmでもよい。
【0022】
凹部の深さは、電界低減の大きさを決定する。凹部がより深いほど、電界集中がさらに抑制されて、より高い絶縁破壊電圧を得ることができる。
【0023】
例示的な実施形態では、ワイドバンドギャップ半導体層は、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)および酸化ガリウム(Ga)のうち1つを含む。これらの材料は、ワイドバンドギャップ半導体層を形成するために特に好適である。
【0024】
また、発明の目的は、パワー半導体デバイスを製造するための方法によって達成される。方法は、第1の主面と第1の主面と反対側の第2の主面とを有するワイドバンドギャップ半導体層を設けるステップを備え、第1のおよび第2の主面は横方向に延在し、ワイドバンドギャップ半導体層は、活性領域と活性領域を横方向に取囲む終端領域とを含み、方法はさらに、ワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面上にフィールドプレートを形成するステップを備え、フィールドプレートは、終端領域においてワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の第1の部分を露出させ、方法はさらに、フィールドプレートが終端領域においてワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の第1の部分を露出させて終端領域内のワイドバンドギャップ半導体層に第1の凹部を形成する領域でワイドバンドギャップ半導体層の異方性エッチングを行うステップを備え、第1の凹部は活性領域を取囲み、第1の主面に並行な平面への正射影において、側壁の上端によって画成される凹部のエッジがフィールドプレートの外周エッジから1μm未満、例示として0.5μm未満、例示として0.2μm未満であるように、活性領域に隣接する第1の凹部の側壁はフィールドプレートの外周エッジと横方向に整合される。発明に係る方法は、フィールドプレートを形成するステップが、ワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面上に誘電体層を形成することと、誘電体層上に第1の金属層を形成することと、金属層と誘電体層とをパターニングして、異方性エッチングを行うステップにおいて第1の凹部が形成される終端領域(AR)においてワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の少なくとも第1の部分を露出させることとを含み、異方性エッチングを行うステップにおいて、パターニングされた金属層は、エッチングマスクの少なくとも一部として用いられ、終端領域内のパターニングされた金属層は、パワー半導体デバイスにおいてフィールドプレートを形成することを特徴とする。
【0025】
発明の方法などの場合、フィールドプレートによって露出される終端領域内の領域は、異方性エッチングを行うステップにおいてエッチングされ、フィールドプレートの外周エッジは、異方性エッチングを行うステップにおいて形成された第1の凹部の側壁と自己整合される。異方性エッチングを行うステップにおいて形成された凹部は、任意の注入ステップを有さないプロセスによって、メサエッジ終端、それゆえ、エッジ終端を形成する。フィールドプレートは、異方性エッチングを行うステップの間はエッチングされてはならないワイドバンドギャップ半導体層の領域を保護する。したがって、SiCディープエッチングをより確実に行うことができ、第1の凹部の側壁およびフィールドプレートの外周エッジが、高い精度で横方向に相互に整合される。その結果、上述のように、整合が高精度であるため、フィールドプレートの外周エッジの下方の電界集中を、メサエッジ終端によって効率的に低減可能であり、それゆえ、デバイスはより高い絶縁破壊電圧をもたらす。
【0026】
ワイドバンドギャップ半導体層の異方性エッチングを行うステップで用いられるエッジング液に対して金属は光硬化性樹脂よりも耐性があるため、異方性エッチングを行うステップで、パターニングされた金属層をフィールドプレートとして、およびエッチングマスクとして用いることは、光硬化性樹脂によって形成されたエッチングマスクを用いることよりも有利である。上述のように、ワイドバンドギャップ半導体層とフィールドプレートとの間に誘電体層を用いることによって、フィールドプレートの効果が増幅され、電界緩和がさらにもたらされる。
【0027】
例示的な実施形態では、誘電体層は、金属層を形成するステップの前にパターニングされて、活性領域においてワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の少なくとも第2の部分を露出させる誘電体層に開口部を形成する。
【0028】
金属層をパターニングする前に誘電体層をパターニングすることによって、誘電体層の有利な形状を形成することが可能になる。たとえば、誘電体層は、第1の凹部から横方向に離れるにつれて厚さが減少するように形成されてもよい。上述のように、そのような形状を有する誘電体層は、有利な電界特性をもたらし得る。
【0029】
さらに、例示的な実施形態では、金属層が、誘電体層の開口部を通じてワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面と直接接触するように形成される。
【0030】
この金属層は、デバイスを電気的に接続するためのコンタクト電極として機能し得る。コンタクト電極はたとえば、ショットキー接触を含み得る。有利なことに、パターニングされた誘電体層上に金属層を形成することによって、フィールドプレートとコンタクト電極とは、同時に、すなわち同じ方法ステップで形成される。そのため、製造が容易になり、よりコスト効率の高い製造プロセスとなる可能性がある。
【0031】
例示的な実施形態では、パターニングされた金属層およびパターニングされた誘電体層は、活性領域においてワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の第3の部分を露出させ、エッチングマスクとしてパターニングされた金属層を用いて、第1の凹部と共に、異方性エッチングを行うステップにおいて活性領域に第2の凹部が形成され、第2の凹部は充填材料で充填される。
【0032】
第1の凹部および第2の凹部の同時エッチングは、エッチングマスクとしてフィールドプレートを用いることによって可能になる。そのため、パワー半導体デバイスをより効率的に製造可能である。さらに、同時エッチングによって、第1の凹部および第2の凹部は、同じ深さで製造可能である。
【0033】
例示的な実施形態では、パターニングされた金属層およびパターニングされた誘電体層は、活性領域においてワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の第4の部分を露出させる。方法はさらに、ワイドバンドギャップ半導体層の異方性エッチングの前に、ワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の第4の部分と直接接触するコンタクト電極を形成するステップを備え、コンタクト電極は、ワイドバンドギャップ半導体層の異方性エッチングを行うステップにおいてエッチングマスクとして、パターニングされた金属層と共に用いられる。
【0034】
ワイドバンドギャップ半導体層をエッチングするためのエッチングマスクとして、パターニングされた金属層と共にコンタクト電極を用いることによって、さらに他の処理ステップを避けることができるため、パワー半導体デバイスの製造が容易になる。たとえば、コンタクト電極は、第1の凹部のエッチングの間に活性領域におけるワイドバンドギャップ半導体層のエッチングを防ぐ。そのため、活性領域においてワイドバンドギャップ半導体層を遮蔽するさらに他のエッチングマスクの使用を避けることができる。
【0035】
例示的な実施形態では、フィールドプレートを形成するステップは、ワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面上に誘電体層を形成することと、誘電体層上に第1の金属層を形成することと、第1の金属層上に第2の金属層を形成することとを含み、第1のおよび第2の金属層は異なる材料で形成され、ステップはさらに、第2の金属層、第1の金属層および誘電体層をパターニングして、第1の凹部が異方性エッチングを行うステップで形成される終端領域におけるワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の少なくとも第1の部分を露出させることを含み、異方性エッチングを行うステップで、第1のおよび第2の金属層がエッチングマスクの少なくとも一部として使用され、終端領域内のパターニングされた第1の金属層は、パワー半導体デバイスにおけるフィールドプレートの少なくとも一部を形成する。
【0036】
第1の金属層と第2の層とが異なる金属で形成されるので、第1の金属層は、第2の金属層のエッチングのために使用されるエッチング液の場合にエッチング停止層として機能することができ、それゆえ、誘電体層およびその下のワイドバンドギャップ半導体層のエッチングを防ぐことができる。第1の金属層と第2の金属層との両方を含むエッチングマスクによって、ワイドバンドギャップ半導体層の第1の凹部の特に好適に画成された側壁の形成が可能になる。その結果、パワー半導体の絶縁破壊電圧がさらに向上され得る。
【0037】
例示的な実施形態では、第2の金属層、第1の金属層および誘電体層をパターニングするステップはさらに、第2の金属層をパターニングして、終端領域においてワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の第1の部分の領域内の第1の金属層を露出させることと、活性領域内の第2の金属層にトレンチを形成して、トレンチの底部において第1の金属層を露出させることと、トレンチを充填材料によって少なくとも部分的に再充填することと、エッチングマスクとして第2の金属層および充填材料を用いた異方性エッチングによって、第1の金属層と誘電体層とをパターニングすることとを含む。方法はさらに、第1の金属層および誘電体層をパターニングするステップの後で充填材料を除去するステップと、その後、隣接するトレンチをそれぞれ隔てる部分の等方性エッチングによってトレンチが形成されている第2の金属層の一部を除去するステップと、その後、エッチングマスクとして第2の金属層を用いた異方性エッチングによって、活性領域内の第1の金属層および誘電体層の一部を除去して、活性領域においてワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の第5の部分を露出させるステップと、ワイドバンドギャップ半導体層の第1の主面の第5の部分と接触するコンタクト電極を形成するステップとを備える。
【0038】
本実施形態は、発明に係るパワー半導体デバイスを製造するための代替例を提供する。
発明の詳細な実施形態について、添付の図面を参照して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A】発明に係るパワー半導体デバイスの例示的な第1の実施形態を示す図である。
図1B】発明に係る実施形態を説明するために用いられる寸法を示す図である。
図1C】誘電体層の厚さが活性領域から離れるにつれ横方向に増加する、発明に係るパワー半導体デバイスの例示的な第2の実施形態を示す図である。
図1D】トレンチが活性領域に形成されている、発明に係るパワー半導体デバイスの例示的な第3の実施形態を示す図である。
図2A図1Aに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第1の実施形態を製造するための第1の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図2B図1Aに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第1の実施形態を製造するための第1の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図2C図1Aに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第1の実施形態を製造するための第1の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図2D図A1に示す発明に係るパワー半導体デバイスの第1の実施形態を製造するための第1の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図2E図1Aに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第1の実施形態を製造するための第1の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図2F図1Aに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第1の実施形態を製造するための第1の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図2G図1Aに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第1の実施形態を製造するための第1の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図2H図1Aに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第1の実施形態を製造するための第1の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図2I図1Aに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第1の実施形態を製造するための第1の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図3A図1Bに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第2の実施形態を製造するための第2の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図3B図1Bに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第2の実施形態を製造するための第2の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図3C図1Bに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第2の実施形態を製造するための第2の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図3D図1Bに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第2の実施形態を製造するための第2の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図4A図1Cに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第3の実施形態を製造するための第3の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図4B図1Cに示す発明に係るパワー半導体デバイスの第3の実施形態を製造するための第3の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図5A】発明に係るパワー半導体デバイスの第4の実施形態を製造するための第4の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図5B】発明に係るパワー半導体デバイスの第4の実施形態を製造するための第4の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図5C】発明に係るパワー半導体デバイスの第4の実施形態を製造するための第4の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図5D】発明に係るパワー半導体デバイスの第4の実施形態を製造するための第4の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図5E】発明に係るパワー半導体デバイスの第4の実施形態を製造するための第4の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図5F】発明に係るパワー半導体デバイスの第4の実施形態を製造するための第4の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図5G】発明に係るパワー半導体デバイスの第4の実施形態を製造するための第4の例示的な方法におけるステップを示す図である。
図5H】発明に係るパワー半導体デバイスの第4の実施形態を製造するための第4の例示的な方法におけるステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面で用いられる参照符号およびそれらの意味は、参照符号のリストにまとめられている。一般に、類似の要素は明細書を通じて同じ参照符号を有する。見やすくするために、寸法は正確な縮尺ではない。しかしながら、これは、要素が同じ材料で構成されること、または複数の要素が一体的に形成されることを除外しない。説明される実施形態は、例として表されたものであり、発明の範囲を限定するものではない。
【0041】
例示的な実施形態の詳細な説明
発明に係る半導体デバイスおよび製造方法の例示的な実施形態について、以下で詳細に説明する。パワー半導体デバイスはたとえば、炭化ケイ素(SiC)ショットキーダイオードである。
【0042】
第1の実施形態
図1Aおよび図1Bを参照して、発明に係る例示的な実施形態は、n型炭化ケイ素(SiC)層1、n型SiC基板1’、誘電体層4、フィールドプレート5、第1の凹部9、裏面電極10、表面電極(コンタクト電極8)、および保護層11を備える。
【0043】
SiC層1(請求項におけるワイドバンドギャップ半導体層1の例)は、SiC基板1’上に形成され、例示として、1017cm-3以下の比較的低いドーピング濃度を有し、最終的なパワー半導体デバイスにおいてドリフト層を形成する。SiC基板1’はたとえば、1018cm-3以上の高いドーピング濃度を有し、裏面電極10上に形成される。ショットキーダイオードで用いられるSiC層1およびSiC基板1’の好適なドーピングプロファイルは、従来技術でよく知られている。SiC層1は、第1の主面2と第2の主面3とを有する。第1の主面2と第2の主面3とは、横方向に延在する。第1の主面2は、第2の主面3と反対側でSiC層1の最も外側の部分を通る平面に対応する。SiC層1は、活性領域ARと、活性領域ARを横方向に取囲む終端領域TRとを含む。SiC層1の材料とSiC基板1’の材料とは、たとえば、4H‐SiC、6H‐SiCまたは3C‐SiCなど、任意のポリタイプのSiCでもよい。SiC層1の層厚さdSiCは、パワー半導体デバイスの公称阻止電圧に応じて決まる。SiC層1の層厚さdSiCは、第1の主面2に垂直な方向の第1の主面2と第2の主面3との間の最大距離として定義される(図1Bを参照)。SiC層1の層厚さdSiCは、5μm~100μmを超える範囲でもよく、例示として5~30μmの範囲、さらに例示として5μm~20μmの範囲である。
【0044】
誘電体層4は、SiC層1の第1の主面2とフィールドプレート5との間に位置する。誘電体層は、終端領域TRにおいてSiC層1の第1の部分9を露出させる。誘電体層9は、活性領域ARにおいてSiC層1の第2の部分を露出させる。誘電体層4は、SiC層1上に(たとえば蒸着または成長によって)形成可能であり、(たとえばドライもしくはウェットエッチング、またはリフトオフもしくはシャドーマスクによって)パターン可能である限り、任意の誘電材料を含んでもよい。誘電体層4はたとえば、酸化層(たとえばシリコン酸化層)、または窒化層(たとえばシリコン窒化層)、またはオキシ窒化物層でもよい。また、合金または層の積層体において異なる誘電材料を含んでもよい。誘電体層の厚さは、フィールドプレートによって実現可能な電界緩和に影響を有する。誘電体層4が薄いほど、実現可能な絶縁破壊電圧VBRは高い。誘電体層厚さはたとえば、従来技術のデバイスのように小さくてもよい。たとえば、第1の凹部に隣接する誘電体層4の厚さdは、0.02μm~1μm、例示として0.02μm~0.5μm、さらに例示として0.02μm~0.3μmの範囲であり、誘電体層4の厚さdは、誘電体層4の上面および下面との、第1の主面2に垂直な線の交点間の距離として定義される(図1Bを参照)。
【0045】
フィールドプレート5は、誘電体層4上に形成される。フィールドプレート5は、終端領域TRのSiC層1の第1の部分を露出させる。フィールドプレート5は、活性領域ARのSiC層1の第3の部分を露出させる。例示として、フィールドプレート5は金属で形成されるが、電導性でパターン可能である限り、他の材料も好適である。フィールドプレート5はたとえば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)またはクロム(Cr)のうちいずれかを含み得る。フィールドプレート5は、合金または層の積層体の異なる金属を含み得る。たとえば、フィールドプレート5の上面とフィールドプレートの下面との間の距離として定義されるフィールドプレート5の厚さdFP図1Bを参照)は、1μm~500μm、例示として1μm~100μm、さらに例示として1μm~20μmの範囲である。活性領域に隣接するフィールドプレートのエッジから第1の凹部9に隣接するフィールドプレートのエッジまでの距離として定義されるフィールドプレート5の横寸法wFP図1Bを参照)は、1.5μm~1500μmの範囲である。
【0046】
第1の凹部9は、SiC層1の終端領域TRに形成される。第1の凹部9は、SiC層1の第1の主面2からくぼみ、活性領域ARを取囲む。凹部は、フィールドプレート5によって露出されるSiC層1の第1の部分に形成される。第1の主面2に平行な平面への正射影において、側壁の上端によって画成される凹部のエッジがフィールドプレート5の外周エッジから1μm未満、例示として0.5μm未満、例示として0.2μm未満になるように、活性領域ARに隣接する第1の凹部9の側壁9eは、フィールドプレート5の外周エッジ5e(外側エッジ)と横方向に整合される。したがって、側壁9eは、第1の主面2と、SiC層と反対側のフィールドプレートの主面である、フィールドプレート5の上面との間の厚さ(距離)を有する。
【0047】
終端領域TRの第1の凹部9は、メサエッジ終端構造を形成する。たとえば、凹部の深さdは、SiC層1の層厚さdSiCの少なくとも2%、例示として少なくとも30%、さらに例示として少なくとも50%である。たとえば、凹部の横寸法wは、SiC層1の層厚さの少なくとも10%、例示として少なくとも50%、さらに例示として少なくとも200%である。
【0048】
たとえば、例示的な実施形態において、SiC層1は15μmの厚さdSiCを有し、誘電体層4は0.2μm~0.5μmの範囲の厚さdを有し、フィールドプレート横寸法wFPは1.5μm~1500μmの範囲であり、第1の凹部9の深さdは150nm~30μmである。凹部9がSiC層1の厚さよりも深い場合(d>dSic)、凹部9はSiC基板1’において連続する。
【0049】
コンタクト電極8は、活性領域ARで炭化ケイ素層1の第1の主面2の第4の部分と直接接続するように形成される。ここでは、コンタクト電極8の接触部分8’がSiC層1とショットキー接触を形成する。ショットキー接触に好適な金属は、材料として使用可能である。チタン(Ti)またはニッケル(Ni)は、SiCに対するショットキー接触に好適な材料として知られ、たとえば接触部分8’で用いられてもよい。コンタクト電極8はさらに、合金または層の積層体の異なる金属を含み得る。たとえば、コンタクト電極8の接触部分8’上にさらに他の電極層が形成されて、接触部分8’に対するオーミック接触を形成し得る。コンタクト電極8は、フィールドプレート5の一部と重なってもよい。コンタクト電極8は、フィールドプレート5に電気的に接続されてもよく、同じ材料または異なる材料で形成されてもよい。
【0050】
保護層11は、半導体デバイスの表面全体に形成されてもよい。保護層11は、開口部12をさらに含んで、外側から電気的に接続するためにコンタクト電極8の上面を露出させ得る。
【0051】
第2の実施形態
発明に係る第2の実施形態が、図1Cを参照して説明される。第1の実施形態と第2の実施形態との類似点は多いため、第2の実施形態に対する第1の実施形態の相違点についてのみ説明する。他の特徴は第1の実施形態の特徴と同じであり、それらの説明について、図1Aおよび図1Bを参照して上述された第1の実施形態が参照される。第1の実施形態と異なり、活性領域ARから横方向に離れるにつれて厚さdが大きくなるように、誘電体層4が形成される。厚さdは、第1の値から第2の値まで増加し得る。厚さは、第1の値から第2の値まで連続して増加し得る。第1の値と第2の値とをつなぐ直線と第1の主面に平行な平面との間の角度は、0.1°~90°、例示として1°~10°、さらに例示として1°~5°の範囲でもよい。第1の値は0以上の値でもよく、第2の値は第1の値よりも大きな値、たとえば0.05μmより大きくてもよく、0.1μmより大きく、または0.5μmより大きくてもよい。活性領域AR近傍の誘電体層4の小さな厚さdは、炭化ケイ素層1内の電荷へのフィールドプレートの影響を増大させるため、活性領域AR内の電界の大きさがより効率的に低減される。フィールドプレート5の外周エッジ5eの下方の誘電体層4の大きな厚さdは、絶縁破損による電圧破壊に対する保護をさらに提供する。
【0052】
第3の実施形態
発明に係る第3の実施形態が、図1Dを参照して説明される。第1の実施形態と第3の実施形態との類似点が多いため、第3の実施形態に対する第1の実施形態の相違点についてのみ説明する。他の特徴は第1の実施形態の特徴と同じであり、それらの説明について、図1Aおよび図1Bを参照して説明された第1の実施形態が参照される。第3の実施形態は、SiC層1の活性領域ARが終端領域TRにおける第1の凹部9と同じ深さを有する少なくとも1つの第2の凹部14を含むという点で、第1の実施形態と異なる。少なくとも1つの第2の凹部14は、なんらかの充填材料、たとえば、誘電材料または酸化物などの絶縁材料で充填される。この構成は、漏れ電流に好影響を有し得る。第3の実施形態はまた、第2の実施形態に示すような厚さが大きい誘電体層4を有し得る。
【0053】
第1の実施形態のための製造方法
以下では、図2A図2Iを参照して、発明の第1の実施形態に係るパワー半導体デバイス(図1A)を製造するための方法が説明される。第1の実施形態に関して説明される点は、以下の説明について妥当であり、説明を完全なものにする。
【0054】
図2Aに示す第1の方法ステップでは、n型炭化ケイ素(SiC)基板1’にドリフト領域を形成する下側ドープSiC層1が設けられる。たとえば、SiC層は、エピタキシーによって形成される。SiC層1は、図2Aに示すように横方向に延在する第1の主面2と第2の主面3とを有する。SiC層1は、活性領域ARと、活性領域ARを横方向に取囲む終端領域TRとを含む。
【0055】
誘電体層4が、図2Bに示すように、SiC層1の第1の主面2に次のステップで形成される。誘電体層4は、活性領域AR全体と終端領域TR全体とを覆う。誘電体層4は、SiC層1と直接接触している。
【0056】
次に、図2Cに示すように、金属層7が誘電体層4上に形成される。金属層7は、活性領域AR全体と終端領域TR全体とを覆う。金属層7は、誘電体層4と直接接触するように形成される。優先的に、金属層7を形成するために使用される金属は、SiCエッチングのために用いられるエッチング液でほとんどエッチングできない。言い換えると、金属層7を形成するために用いられる金属は優先的に、後で説明するエッチングプロセスにおいてSiCと比べて浸食されない。たとえば、金属層7は、第1の実施形態に関して説明されたフィールドプレート材料のうち1つを含んでもよく、同じ厚さを有してもよい。
【0057】
次のステップで、金属層7がパターニングされる。このために、図2Dに示すように、エッチングマスク6が金属層7に形成される。エッチングマスク6は、終端領域TRを覆う金属層7の少なくとも一部(請求項における第1の部分の例)を露出させるように形成される。エッチングマスク6はまた、活性領域ARを覆う金属層7の一部を露出させてもよい。エッチングマスク6は、フォトレジストマスクまたは類似のものでもよい。
【0058】
エッチングマスク6によって露出される金属層7の一部は、異方性エッチングによって除去される。このように、フィールドプレート5が形成される。本明細書では、金属層7の一部および誘電体層4の一部は終端領域TRにおいて除去され、金属層7および誘電体層4の一部は、活性領域ARにおいて除去される。異方性エッチングのために、フィールドプレート5(パターニングされた金属層7)のエッジは、パターニングされた誘電体層4のエッジと整合される。特に、誘電体層4の外周エッジ4eは、フィールドプレート5の外周エッジ5e(パターニングされた金属層7)と横方向に整合される。異方性エッチングは、たとえば塩素(Cl)ベースのエッチングガスを用いて、反応性イオンエッチング(RIE)によって行ってもよい。エッチングマスク6は、エッチングプロセス中に使われ、その後除去されてもよい。異方性エッチングステップの後で得られる構造を、図2Eに示す。
【0059】
次に、コンタクト電極8を、活性領域ARの炭化ケイ素層1の第1の主面2の一部(請求項における第4の部分の例)と直接接触するように(たとえば、成長または蒸着によって)形成する。ここで、コンタクト電極8の接触部分8’は、SiC層1とショットキー接触を形成する。さらに他の電極層(図示せず)が接触部分8’上に形成されて、接触部分8’に対するオーミック接触を形成してもよい。
【0060】
次に、図2Gに示すように、異方性エッチングによって終端領域TR内のSiC層1に第1の凹部9を形成する。そこで、異方性エッチングは、フィールドプレート5(パターニングされた金属層7)の金属およびコンタクト電極8の金属、特にコンタクト電極8の上部(すなわち、第1の主面2から遠い部分)の金属に対して選択的である。言い換えると、フィールドプレート5およびコンタクト電極8(特にコンタクト電極8の上部)は少なくとも、その真下の材料のエッチングを防ぐ(鈍化させる)エッチングマスクの一部として使用される。異方性エッチングはたとえば、フッ素(F)ベースのエッチングガスを用いたRIEによって行われてもよい。第1の凹部9は、フィールドプレート5およびコンタクト電極8によって露出される領域(請求項における第1の部分の例)に形成される。そのため、第1の凹部9は、終端領域TR内の凹部領域RRにしか形成されない。活性領域ARにおいてコンタクト電極8はSiC層1を覆うため、第1の凹部は、フィールドプレート5における開口にもかかわらず、活性領域ARに形成されない。そのため、エッチングマスクを設けて活性領域AR内のSiC層1のエッチングを防ぐさらに他の製造ステップが避けられる。
【0061】
SiCの異方性エッチングを行うステップで、フィールドプレート5およびコンタクト電極8(両方ともエッチングマスクの一部である)の上側部分(すなわち、第1の表面2から見て外側を向く部分)は、それらに対してエッチング液が完全に選択的でない場合は、部分的に除去されてもよい(図示せず)。しかしながら、エッチングプロセスの異方性特性のために、エッチングマスク(すなわち、フィールドプレート5)の横寸法は、第1の凹部9を形成する際のエッチングプロセス中に変更されず、コンタクト電極8およびフィールドプレート5の厚さのみが低減される。そのため、フィールドプレート5をエッチングマスクの一部として用いた異方性エッチングによって、第1の凹部9の側壁9eがフィールドプレート5のエッジと整合されるように、SiC層1のディープエッチを高い精度で形成可能である。例示として、第1の主面2に平行な平面に対する正射影において、側壁9eの上端によって画成される第1の凹部のエッジがフィールドプレート5の外周エッジ5eから1μm未満、例示として0.5μm未満、例示として0.2μm未満になるように、活性領域に隣接する第1の凹部9の側壁9eは、フィールドプレート5の外周エッジ5eと横方向に整合される。終端領域TRの第1の凹部9は、最終的なパワー半導体デバイスにおいてメサエッジ終端構造を形成する。第1の凹部9は、活性領域ARを取囲み、たとえば、第1の実施形態に関して説明された寸法を有する。
【0062】
さらに、裏面電極層10が第2の主面3上に形成されてもよい。さらに、保護層11が、図2Hに示すような構造を得るためにデバイスの前面全体に形成されてもよい。最終的に、図2Iに示すように、外部から電気的に接続するために、コンタクト電極8の上側を露出させるように開口部12が保護層11に形成されてもよい。
【0063】
本方法の変形例では、裏面電極10は、方法のより前のステップまたは方法のより後のステップで形成されてもよい。したがって、誘電体層4のパターニングは、方法のより前のステップまたはより後のステップで行われてもよい。たとえば、図2Eに示すように金属層7と共に誘電体層4をパターニングするのではなく、誘電体層4は、SiC層1の異方性エッチングを行うステップでパターニングされてもよい。その後、フィールドプレート5(パターニングされた金属層7)のみがエッチングマスクとして用いられ、コンタクト電極8が、SiC層1の異方性エッチングの後で形成される。保護層11は、図1Hに示すようにコンタクト電極8が形成された後で形成されてもよい。しかしながら、コンタクト電極8は、保護層11bの形成後に形成されてもよい。その後、開口部12が保護層11に形成されて、コンタクト電極8と接触するために活性領域ARにおいてSiC層1を露出させる。
【0064】
第2の実施形態のための製造方法
次に、発明の第2の実施形態に係るパワー半導体デバイスを製造するための方法について、図2Bに示す方法ステップの後から開始する図3A図3Dを参照して説明する。第1の実施形態を製造するための方法と第2の実施形態を製造するための方法との間には多くの類似点があるため、これらの方法の相違点についてのみ説明する。他の特徴は第1の実施形態を製造するための方法における特徴と同じであり、それらの説明について、上記の説明が参照される。
【0065】
第2の実施形態を製造するための製造方法は、金属層7が誘電体層4上に形成される(図3Aを参照)前にSiC層1の第1の主面2上に形成された誘電体層4(図2Bを参照)がパターニングされるという点で、上述のものとは異なる。この方法は、誘電体層4がさまざまな構成で形成可能であるという利点をもたらす。たとえば、誘電体層4は、活性領域ARのSiC層の一部(請求項における第2の部分の例)を露出させる開口部を有するように、および/または、誘電体層4の厚さが活性領域ARから横方向に離れるにつれて増大するように、形成可能である。
【0066】
次のステップでは、図3Bに示すように、パターニングされた誘電体層4に金属層7が形成される。パターニングされた誘電体層4が活性領域(請求項における第2の部分の例)においてSiC層1の第1の主面2を露出させる領域では、金属層7はSiC層1と接触する。その結果、図2Fを参照して説明されたように、金属層7は、SiC層1の第1の主面2の一部と直接接触するようにコンタクト電極8を形成する。誘電体層4が金属層7とSiC層1との間に挿入されている終端領域TRでは、金属層7はフィールドプレート5を形成する。そのため、フィールドプレート5と金属接点7とは一体的に形成される。
【0067】
次に(図3Cを参照)、図2Dを参照して説明されたように、フィールドプレート5が好適な寸法にパターニングされ、SiC層1の異方性エッチングのためにエッチングマスクを形成する。ここで示す例では、フィールドプレート5のみがパターニングされる。しかしながら、代替的に、フィールドプレート5と誘電体層4の一部との両方は、図2Eを参照して説明されたように、このステップでパターニングされてもよい。その後、エッチングマスク(すなわちフィールドプレート5)によって露出された(請求項における第1の部分の例としての)領域がその後図2Gを参照して説明されたように異方性エッチングによってエッチングされて、SiC層1の終端領域TR内の凹部領域RRに第1の凹部9を形成する(図3Dを参照)。ここで、エッチングマスク(フィールドプレート5)によって露出されるSiC層1の(請求項の第1の部分の例としての)領域は、誘電体層4の一部によって覆われる。それゆえ、誘電体層4の一部とSiC層1の一部との両方が、このエッチングステップで除去される。しかしながら、方法の変形例では、エッチングマスク(すなわちフィールドプレート5)によって露出された領域のSiC層1を覆う誘電体層4の一部は、第1の凹部9が形成されるSiC層1の領域(請求項における第1の部分の例)をエッチングマスク(すなわちフィールドプレート5)が直接露出させるように、すでに除去されていてもよい。
【0068】
最後に、第1の実施形態についてと同様に、裏面電極10が保護層11(図3A図3Dでは図示せず)と共に追加されてもよい。
【0069】
第3の実施形態のための製造方法
発明に係る第3の実施形態を製造するための方法について、図3Bに示す方法ステップの後から開始する図4Aおよび図4Bを参照して説明する。ここでは、図2Eを参照して説明された金属層7パターニングステップで、金属層7が活性領域ARにおいてSiC層1の少なくとも一部(請求項における第3の部分の例)を露出させるように、パターニングされる(図4Aを参照)。金属層7によって終端領域TRで露出されている誘電体層4の一部は、同じ処理ステップで除去される。たとえば、金属層7は、活性領域ARにおいてSiC層1の複数の領域を露出させる複数のダクト13を含むように、パターニングされてもよい。複数のダクト13の各ダクトは、同じ断面を有してもよい。しかしながら、複数のダクトの断面は異なってもよい。たとえば、ダクト13は、円形の断面または多角形の断面を有し得る。ダクト13の直径はたとえば、0.5μm~2μmで異なってもよい。ダクト13は規則的に分散されてもよい。代替的に、ダクト13は不規則に分散されてもよい。図4Bに示すように、SiC層1の異方性エッチングを行うステップでエッチングマスクとして活性領域においてSiC層1の少なくとも一部を露出させるパターニングされた金属層7を用いることによって、少なくとも1つの第2の凹部14が、終端領域TRにおいて第1の凹部9と共に活性領域ARに形成される。パターニングされた金属層7が複数のダクトを含む場合、複数のトレンチ14が活性領域AR内のSiC層1に形成される。活性領域ARの少なくとも1つの第2の凹部14および終端領域TRの第1の凹部9は同じエッチングを行うステップで同時に形成されるため、同じエッチング時間にさらされる。そのため、SiC層1がエッチングマスク(フィールドプレート5)によって直接露出される、または同じ量の材料(たとえば、誘電材料)で覆われる場合、活性領域ARの少なくとも1つの第2の凹部14および終端領域TRの第1の凹部9は同じ深さを有し、それらの側壁は互いに並行である。このステップの後で、たとえば、少なくとも1つの第2の凹部14が何らかの充填材料(図示せず)、たとえば、誘電材料または酸化物などの絶縁材料で充填される。さらに、金属層7の少なくとも1つのダクト13は、充填材料(図示せず)で充填されてもよい。充填材料は少なくとも1つの第2の凹部14を充填するために用いられるものと同じものでもよく、異なるもの、たとえば金属層7の金属でもよい。代替的に、SiC層の活性領域ARと一致する金属層7の中央部分が、たとえばエッチングによって除去されて、活性領域(図示せず)においてSiC層1を露出させてもよく、コンタクト電極8は、図2Fを参照して説明されたように形成されてもよい。最後に、裏面電極10および/または保護層11が、図2Hおよび図2Gを参照して説明されたように追加されてもよい。
【0070】
代替的な製造方法
発明に係る実施形態のうち1つを製造するための他の方法について、図5A図5Hを参照して説明する。上述の方法と多くの類似点があるため、相違点についてのみ説明する。他の特徴は先に説明されたものと同じであり、それらの説明については、これらが参照される。
【0071】
図5Aに示すように、誘電体層4は、第1の方法について説明したような炭化ケイ素層1の第1の主面上に形成される。その上に第1の金属層7が形成され、第2の金属層15が第1の金属層7上に形成される。第1の金属層7および第2の金属層15は、第2の金属層15のエッチングの際に金属層7がエッチング停止層の機能を果たすように、異なる金属で形成される。第1の金属層7および第2の金属層15は例示として、第1の実施形態について説明した際の上述のフィールドプレート材料のうち1つを含んでもよい。優先的に、第1の金属層7は、第2の金属と比較して、SiC層1をエッチングするために使用されるエッチング液に対してよりエッチング耐性を有する。第1の金属層7はたとえば、第2の金属層15よりも薄くてもよい。次に、図5Bに示すように、トレンチ16が活性領域ARの第2の金属層15に形成されてトレンチの底部の第1の金属層7を露出させるように、かつ、第1の凹部9が形成される終端領域TR内のSiC層1の第1の部分と一致する領域で第1の金属層7が露出されるように、第2の金属層15が、たとえば図2Dを参照して上述の第1の実施形態を製造するための方法に従ってパターニングされる。その後、図5Cに示すように、第2の金属層15内のトレンチ16が充填材料17によって少なくとも部分的に充填される。たとえば、充填材料17は、酸化物またはレジストでもよい。その後、図5Dに示すように、第1の金属層7および誘電体層4が、エッチングマスクとして第2の金属層15と充填材料17とを用いた異方性エッチングによってパターニングされて、第1の凹部9(すなわち、メサ型終端)が形成される終端領域TRにおいてSiC層1の第1の主面2の少なくとも一部を露出させる。トレンチ16内に充填された充填材料17と共にトレンチの側壁(すなわち、隣接するトレンチ16を隔てる第2の金属層15の一部)によって、第1の金属層7とその下に位置する誘電体層4とのエッチングを防ぐのに十分なエッチング耐性がもたらされる。次に、図5Eに示すように、エッチングマスクの少なくとも一部として第1の金属層7と第2の金属層15とを用いた異方性エッチングによって、第1の凹部9がSiC層1の終端領域に形成される。このエッチングプロセスの間、トレンチ17内の充填材料16は消費されることがあり、代替的に、充填材料16は、SiC層1の異方性エッチングを行うステップの前または後に除去されてもよい。次に、図5Fに示すように、隣接するトレンチをそれぞれ隔てる部分、すなわち側壁の等方性エッチングによって、トレンチ16が形成された第2の金属層15の一部が除去される。このステップで用いられるエッチング液は、第1の金属層7の金属に対して選択性を有する、すなわち、第1の金属層7ではない、または、このエッチングステップでほとんど消費されない。その後、図5Gに示すように、第1の金属層7と誘電体層4との一部が、エッチングマスク17として第2の金属層15を用いた異方性エッチングによって活性領域ARにおいて除去されて、活性領域ARにおいて炭化ケイ素層1の第1の主面2の一部を露出させる。このステップでは、第2の金属層7の上部分が消費されてもよい。しかしながら、第1の実施形態を製造するための方法に関して説明したように、異方性エッチングによって、これは第2の金属層15の厚さに影響を及ぼすが、その横寸法には影響を及ぼさない。第2の金属層15はまた、完全に消費されることがある。誘電体層4の上方の第1の金属層7の残りの部分と第2の金属層15とは、フィールドプレート5を形成する。その後、図5Hに示すように、図2Fを参照して第1の実施形態を製造するための方法を用いて説明されたように、コンタクト電極8が、活性領域(AR)内の炭化ケイ素層1の第1の主面の一部(請求項における第4の部分の例)と直接接触するように(たとえば成長または蒸着によって)形成される。最後に、保護層11と裏面電極10とが追加される(図示せず)。代替的に、保護層11および/または裏面電極10は、説明したように、これより前のステップで形成されてもよい。
【0072】
この方法の変形例では、SiC層1の異方性エッチングを行うステップが、トレンチ16が除去されるステップの後で行われる。
【0073】
変形例
添付の請求項によって規定される発明の概念から外れることなく上述の実施形態の変更が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。特に、異なる実施形態の特徴を組合わせることが可能である。
【0074】
上述の実施形態では、製造されたパワー半導体デバイスは、SiCショットキーダイオードである。しかしながら、パワー半導体デバイスは、たとえばJBS整流器、JFET、またはpnダイオードなどのエッジ終端を必要とする他のパワー半導体デバイスでもよい。
【0075】
上述の実施形態では、パワー半導体デバイスは、炭化ケイ素(SiC)層1を含む。SiC層1は、請求項におけるワイドバンドギャップ半導体層1の例である。代替的に、ワイドバンドギャップ半導体層1は、従来技術で公知の他のワイドバンドギャップ半導体材料を含み得る。たとえば、SiC層1である代わりに、ワイドバンドギャップ半導体層1はたとえば、窒化ガリウム(GaN)層または酸化ガリウム(Ga)層でもよい。ワイドバンドギャップ半導体層1はまた、たとえば酸化亜鉛(ZnO)層、窒化ホウ素層(BN)、窒化アルミニウム層(AlN)、またはダイヤモンド(C)層でもよい。
【0076】
上述の実施形態では、SiC層1がSiC基板1’上の層として設けられる。しかしながら、SiC基板1’は、従来技術で公知の異なる基板から形成されてもよい。たとえば、SiC基板1’は、窒化ガリウム(GaN)基板または酸化ガリウム(Ga)基板でもよい。また、ワイドバンドギャップ半導体層1は、基板1’を用いずに別の層またはウエハとして設けられてもよい。
【0077】
すべての実施形態の図面において、凹部9、14の側壁と第1の主面2とによって形成される角度は90°であると示されているが、それよりわずかに小さくても大きくてもよい。例示として、凹部9、14の側壁および第1の主面2によって形成される角度は、60°~120°、例示として70°~110°、さらに例示として80°~100°の範囲で代わり得る。
【0078】
上述の実施形態は、特定の導電型を用いて説明した。上記の実施形態の半導体層の導電型は、p型層として説明されたすべての層がn型層であるように、かつ、n型層として説明されたすべての層がp型層であるように替えてもよい。
【0079】
なお、「comprising(備える)」という用語は、他の要素またはステップを排除せず、「a」または「an」という不定冠詞は、複数を排除しない。また、異なる実施形態に関連して説明した要素は組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0080】
参照符号のリスト
1 ワイドバンドギャップ半導体層(たとえばSiC層)
1’ 基板(たとえば、SiC基板)
2 第1の主面
3 第2の主面
4 誘電体層
4e 誘電体層の外周エッジ
5 フィールドプレート
5e フィールドプレートの外周エッジ
6 エッチングマスク
7 (第1の)金属層
7e (第1の)金属層の外周エッジ
8 コンタクト電極
8’ 接触部分
9 第1の凹部(メサ型終端構造)
9e 第1の凹部の側壁
10 裏面電極
11 保護層
12 開口部
13 ダクト
14 トレンチ
15 第2の金属層
15e 第2の金属層の外周エッジ
16 トレンチ
17 充填材料
AR 活性領域
RR 凹部領域
TR 終端領域
凹部の深さ
SiC ワイドバンドギャップ半導体層1(たとえばSiC層1)の層厚さ
誘電体層4の層厚さ
第1の凹部9の横寸法
FP フィールドプレートの横寸法
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H