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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20230609BHJP
   H02K 11/20 20160101ALI20230609BHJP
   H02P 25/064 20160101ALI20230609BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K11/20
H02P25/064
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020553093
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2019039633
(87)【国際公開番号】W WO2020080181
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2018197700
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 克也
(72)【発明者】
【氏名】石井 正志
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明
(72)【発明者】
【氏名】大賀 和人
(72)【発明者】
【氏名】和久田 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】原 聡史
(72)【発明者】
【氏名】水野 智史
(72)【発明者】
【氏名】林 茂樹
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077051(JP,A)
【文献】特開2001-068895(JP,A)
【文献】特開平01-140307(JP,A)
【文献】特開平04-025390(JP,A)
【文献】特開2009-066739(JP,A)
【文献】特開2009-083017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
H02K 11/20
H02P 25/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
固定子及び可動子を有する直動モータであって、前記直動モータの前記固定子に対して前記可動子が前記シャフトの中心軸と平行に移動することにより、前記シャフトを前記中心軸の方向に移動させる直動モータと、
前記直動モータの前記可動子と前記シャフトとを接続する部材の少なくとも一部である接続部材と、
前記接続部材に設けられ前記接続部材に加わる力に応じた出力をする力センサと、
前記力センサの出力を増幅させるアンプと、
前記アンプからの出力に含まれる周波数の成分のうち、遮断周波数より高い周波数の成分を低減させるローパスフィルタと、
前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が他の部材に接触するまでは、前記アンプからの出力に基づいて前記シャフトに加わる荷重を検出し、前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が前記他の部材に接触した後は、前記ローパスフィルタからの出力に基づいて前記シャフトに加わる荷重を検出する制御装置と、
を備える、アクチュエータ。
【請求項2】
シャフトと、
固定子及び可動子を有する直動モータであって、前記直動モータの前記固定子に対して前記可動子が前記シャフトの中心軸と平行に移動することにより、前記シャフトを前記中心軸の方向に移動させる直動モータと、
前記直動モータの前記可動子と前記シャフトとを接続する部材の少なくとも一部である接続部材と、
前記接続部材に設けられ前記接続部材に加わる力に応じた出力をする力センサと、
前記力センサの出力を増幅させるアンプと、
前記アンプからの出力に含まれる周波数の成分のうち、遮断周波数より高い周波数の成分を低減させるローパスフィルタと、
前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が他の部材に接触するまでは、接触した後よりも、前記遮断周波数を高くすることにより前記ローパスフィルタからの出力の位相遅れを小さくして、前記ローパスフィルタからの出力に基づいて前記シャフトに加わる荷重を検出する制御装置と、
を備える、アクチュエータ。
【請求項3】
前記制御装置は、検出した前記荷重が閾値以上の場合に、前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が前記他の部材に接触したと判定する、
請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が前記他の部材に接触した後は、検出した前記荷重が所定の荷重に近付くように前記直動モータをフィードバック制御する、
請求項1から3の何れか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記シャフトは、その先端部側に、その内部が中空となることで形成される中空部を有し、
前記アクチュエータは、前記中空部に負圧を供給する供給部をさらに備え、
前記制御装置は、ピックアップ時において、前記フィードバック制御の実施中に、前記供給部から前記中空部に負圧を供給させる、
請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記シャフトは、その先端部側に、その内部が中空となることで形成される中空部を有し、
前記アクチュエータは、前記中空部に大気圧または正圧を供給する供給部をさらに備え、
前記制御装置は、プレイス時において、前記フィードバック制御の実施中に、前記供給部から前記中空部に大気圧または正圧を供給させる、
請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記接続部材は、前記シャフトの前記中心軸の方向にずらして設けられる第一部材及び第二部材を有し、
前記力センサは、前記第一部材及び前記第二部材に夫々に設けられる同じ方向を向く互いに平行な面であって前記シャフトの前記中心軸と直交する面に夫々設けられるひずみゲージを含む、
請求項1から6の何れか1項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
中空のシャフトをワークに押し付けた状態でシャフト内を負圧にすることで、ワークをシャフトに吸い付けて、ワークをピックアップすることができる。ここで、ワークをシャフトに吸い付けるときに、ワークとシャフトとの間に隙間があると、ワークがシャフトに勢いよく衝突してワークが破損する虞や、ワークを吸い付けることができない虞がある。一方、ワークを押し付ける力が大きすぎると、ワークが破損する虞がある。したがって、シャフトをワークに適切な荷重で押し付けることが望まれている。また、シャフトがワークに接する際にシャフトの速度が高いと、シャフトがワークに衝突したときの衝撃によってワークが破損する虞があるため、この衝撃を緩和することが望まれている。従来では、シャフト本体の先端にばね等の緩衝部材を介して吸着部材を設けている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、吸着部材がワークに接した際に、ばねが縮むことで衝撃を緩和している。その後、さらにシャフトがワークに向かって移動したときには、ばね定数に応じた荷重でワークを押し付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-164347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークに加える適切な荷重はワークの種類によって異なる場合があるが、上記のような緩衝部材を設ける場合には、ワークに加わる荷重はばね定数によって決まるため、ワークに加わる荷重をワークに応じて変更することは困難であった。ここで、シャフト及びワークに加わる荷重を力センサを用いて検出し、この検出値に基づいてシャフトを駆動するモータの制御を行うことが考えられる。この力センサからの出力は微小であるため、力センサからの出力をアンプによって増幅することが行われている。しかし、このアンプからの出力は、商用電源からのノイズの影響を受け易い。ノイズの影響を小さくするためにフィルタを用いることが考えられるが、アンプからの出力をフィルタで処理すると、位相遅れが発生する。すなわち、フィルタからの出力に基づいてワーク及びシャフトに加わる荷重を検出すると、実際の荷重の変化よりも遅れて検出値が変化する。シャフトがワークに向かって高速で移動しているときに、フィルタからの出力に位相遅れが生じると、シャフトを停止させるタイミングが遅れて、ワークに必要以上の荷重が加わる虞がある。
【0005】
本発明は、上記したような種々の実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、アクチュエータにおいて、シャフト及びワークに必要以上の荷重が加わることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の一つは、シャフトと、固定子及び可動子を有する直動モータであって、前記直動モータの前記固定子に対して前記可動子が前記シャフトの中心軸と平行に移動することにより、前記シャフトを前記中心軸の方向に移動させる直動モータと、前記直動モータの前記可動子と前記シャフトとを接続する部材の少なくとも一部である接続部材と、前記接続部材に設けられ前記接続部材に加わる力に応じた出力をする力センサと、前記力センサの出力を増幅させるアンプと、前記アンプからの出力に含まれる周波数の成分のうち、遮断周波数より高い周波数の成分を低減させるローパスフィルタと、前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が他の部材に接触するまでは、前記アンプからの出力に基づいて前記シャフトに加わる荷重を検出し、前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が前記他の部材に接触した後は、前記ローパスフィルタからの出力に基づいて前記シャフトに加わる荷重を検出する制御装置と、を備える、アクチュエータである。
【0007】
また、本発明の態様の一つは、シャフトと、固定子及び可動子を有する直動モータであって、前記直動モータの前記固定子に対して前記可動子が前記シャフトの中心軸と平行に移動することにより、前記シャフトを前記中心軸の方向に移動させる直動モータと、前記直動モータの前記可動子と前記シャフトとを接続する部材の少なくとも一部である接続部材と、前記接続部材に設けられ前記接続部材に加わる力に応じた出力をする力センサと、前記力センサの出力を増幅させるアンプと、前記アンプからの出力に含まれる周波数の成分のうち、遮断周波数より高い周波数の成分を低減させるローパスフィルタと、前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が他の部材に接触するまでは、接触した後よりも、前記遮断周波数を高くして、前記ローパスフィルタからの出力に基づいて前記シャフトに加わる荷重を検出する制御装置と、を備える、アクチュエータである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アクチュエータにおいて、シャフト及びワークに必要以上の荷重が加わることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るアクチュエータの外観図である。
図2】実施形態に係るアクチュエータの内部構造を示した概略構成図である。
図3】実施形態に係るひずみゲージとコントローラとの関係を示したブロック図である。
図4】実施形態に係るシャフトハウジングとシャフトの先端部との概略構成を示した断面図である。
図5】第1実施形態に係るピックアップ処理のフローを示したフローチャートである。
図6】第1実施形態に係るプレイス処理のフローを示したフローチャートである。
図7】第2実施形態に係るピックアップ処理のフローを示したフローチャートである。
図8】第2実施形態に係るプレイス処理のフローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の態様の一つであるアクチュエータでは、直動モータによって、シャフトが可動子の移動方向に移動する。直動モータの可動子の移動方向は、シャフトの中心軸方向と平行であるため、直動モータの駆動により、シャフトが中心軸方向に移動する。直動モータは例えばリニアモータである。接続部材は、可動子とシャフトとを接続する部材であり、複数の部材からなっていてもよい。また、直動モータの可動子と接続部材とが一体になっていてもよい。シャフトは、回転可能に支持されていてもよい。
【0011】
ワークのピックアップ時またはプレイス時には、直動モータの駆動によりシャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触すると、シャフトに荷重が加わる。すなわち、接続部材の一端側(直動モータ側)には、シャフトを下降させる方向の力が作用し、接続部材の他端側(シャフト側)には、シャフトを上昇させる方向の力が作用するため、接続部材に力が加わる。この力は、シャフトとワークとの間に発生する荷重と相関関係がある。したがって、この力を力センサで検出することにより、シャフト及びワークに加わる荷重を検出することができる。力センサは、例えば、ひずみゲージを利用したセンサであってもよく、圧電式のセンサであってもよい。例えば、接続部材に力が加わることにより、接続部材にひずみが生じる。このひずみは、シャフトとワークとの間に発生する荷重と相関関係がある。したがって、このひずみをひずみゲージで検出することにより、シャフト及びワークに加わる荷重を検出することができる。このようにして検出される荷重に基づいて、直動モータを制御することにより、ピックアップ時またはプレイス時においてワークに適切な荷重を加えることができる。なお、シャフトに付随する部材とは、例えば、シャフトの先端に設けられるアダプタ又はシャフトに吸い付けられたワークである。また、他の部材とは、例えば、シャフトに対してはワークであり、ワークに対してはワークが配置される部材である。
【0012】
力センサの出力を増幅させるためにアンプを用いると、増幅後の力センサの出力(アンプからの出力)には、アンプに電力を供給する商用電源の周波数に応じたノイズが含まれることがある。このノイズは、ローパスフィルタによって低減することができる。しかし、アンプからの出力をローパスフィルタで処理すると、位相遅れが生じる。すなわち、アンプからの出力の変化に対して、ローパスフィルタからの出力の変化が遅れる。ここで、直動モータによりシャフトが下降しているときに、ローパスフィルタで処理した力センサの出力(ローパスフィルタからの出力)に位相遅れがあると、例えば、ワークのピックアップ時にシャフトがワークに接触した後のシャフトの停止が遅れて、ワークに必要以上の荷重が加わる虞がある。
【0013】
そのため、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触するまでは、アンプからの出力に基づいてシャフトに加わる荷重を検出し、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触した後は、ローパスフィルタからの出力に基づいてシャフトに加わる荷重を検出する。
【0014】
すなわち、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触するまでは、ローパスフィルタからの出力を用いずに、アンプからの出力を用いてシャフトに加わる荷重を検出している。このようにして、ローパスフィルタに起因する位相遅れのない出力を用いて荷重を検出する。ここで、タクトタイムを短縮するためには、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触するまでのシャフトの速度が高いほうがよい。このときに、仮に、ローパスフィルタからの出力に基づいて荷重を検出すると、応答遅れが原因となってワークに必要以上の荷重が加わる虞がある。一方、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触するまでは、アンプからの出力に基づいてシャフトに加わる荷重を検出することで、位相遅れがない状態でワークに加わる荷重を検出することができる。したがって、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触した場合には、それを速やかに検出してシャフトを停止させることができる。これにより、ワークの破損を抑制できる。このときには、アンプからの出力に商用電源の周波数に応じたノイズが含まれるが、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触したことを検出することができればよいため、ノイズが含まれていたとしても影響は小さい。
【0015】
一方、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触した後は、ローパスフィルタからの出力に基づいてシャフトに加わる荷重を検出することにより、荷重をより正確に検出することができる。このときには、例えばシャフトに加わる荷重が一定になるように直動モータを制御する。この場合、シャフトの移動速度を高くする必要はないため、ローパスフィルタからの出力に位相遅れがあったとしても、その影響は小さい。そのため、ワークに必要以上の荷重が加わることを抑制できる。
【0016】
また、本発明の態様の一つであるアクチュエータでは、前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が他の部材に接触するまでは、接触した後よりも、前記遮断周波数を高くして、前記ローパスフィルタからの出力に基づいて前記シャフトに加わる荷重を検出する。このようにすることで、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触するまでは、位相遅れが比較的小さい状態で荷重を検出することができる。すなわち、シャフトがワークに接触したことをより速やかに検出することができる。一方、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触した後は、遮断周波数を低くすることで、ノイズの影響が小さくなるため、荷重をより正確に検出することができる。このときには、位相遅れが大きくなるものの、シャフトの移動速度を高くする必要はないため、その影響は小さい。したがって、ワークに必要以上の荷重が加わることを抑制できる。
【0017】
また、前記制御装置は、検出した前記荷重が閾値以上の場合に、前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が前記他の部材に接触したと判定してもよい。なお、前記制御装置は、検出した前記荷重が前記閾値以上の場合に前記直動モータを停止させてもよい。閾値は、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触したと判定し得る荷重である。例えば、電源の周波数に起因するノイズの影響により荷重の検出値が増加し得る範囲の上限値よりも、さらに大きな荷重を閾値として設定する。閾値は、ワークの種類に応じて変更することもできる。このように閾値を設定することにより、例えノイズの影響があったとしても、シャフト又はシャフトに付随する部材が他の部材に接触したことを速やかに検出することができる。
【0018】
また、前記制御装置は、前記シャフト又は前記シャフトに付随する部材が前記他の部材に接触した後は、検出した前記荷重が所定の荷重に近付くように前記直動モータをフィードバック制御してもよい。このフィードバック制御は、位相遅れがあるもののノイズの影響が小さい状態のローパスフィルタの出力に基づいて実施される。所定の荷重は、例えば、ワークのピックアップ時において、ワークの破損を抑制しつつワークをより確実にピックアップすることが可能な荷重、または、ワークのプレイス時において、ワークの破損を抑制し且つワークに必要とされる荷重である。このときにはシャフトの速度を高くする必要がないため、位相遅れがあるローパスフィルタの出力を用いて荷重を検出しても、位相遅れの影響が小さい。そして、ワーク及びシャフトに加わる荷重をより正確に検出することができるため、シャフト及びワークに適切な荷重を加えることができる。
【0019】
また、前記シャフトは、その先端部側に、その内部が中空となることで形成される中空部を有し、前記アクチュエータは、前記中空部に負圧を供給する供給部をさらに備え、前記制御装置は、ピックアップ時において、前記フィードバック制御の実施中に、前記供給部から前記中空部に負圧を供給させてもよい。このように、適切な荷重がワークに加わった後に中空部に負圧を供給することにより、ワークがシャフトに衝突することによるワークの破損を抑制することができる。また、シャフトをワークに押し付けることにより、ワークとシャフトとの間に隙間ができることを抑制できるため、ワークをより確実にピックアップすることができる。
【0020】
また、前記シャフトは、その先端部側に、その内部が中空となることで形成される中空部を有し、前記アクチュエータは、前記中空部に大気圧または正圧を供給する供給部をさらに備え、前記制御装置は、プレイス時において、前記フィードバック制御の実施中に、前記供給部から前記中空部に大気圧または正圧を供給させてもよい。例えば、ワークを他の部材に接着剤を用いて接着する場合には、接着の特性に応じた荷重をワークに加える必要がある。このときに、ワークに加わる荷重が接着の特性に応じた所定の荷重になってから中空部に大気圧または正圧を供給することにより、より確実な接着が可能となる。
【0021】
また、前記接続部材は、前記シャフトの前記中心軸の方向にずらして設けられる第一部材及び第二部材を有し、前記力センサは、前記第一部材及び前記第二部材に夫々に設けられる同じ方向を向く互いに平行な面であって前記シャフトの前記中心軸と直交する面に夫々設けられるひずみゲージを含んでいてもよい。
【0022】
ここで、直動モータが作動すると熱を発生する。また、アクチュエータに備わる他の装置が熱を発生することもある。これらの熱により、直動モータ及び接続部材が熱膨張することがある。この場合には、ワークからシャフトに荷重が加わっていなくとも、第一部材及び第二部材にひずみが生じ得る。例えば、第一部材及び第二部材の一端側が接続されている部材と、他端側が接続されている部材とで温度差があると、膨張量に差が生じる場合がある。なお、以下では例示的に、第一部材及び第二部材の一端側が接続されている部材を熱による膨張量が大きな部材(高膨張部材)として説明し、他端側が接続されている部材を熱による膨張量が小さな部材(低膨張部材)として説明する。このように第一部材及び第二部材が高膨張部材及び低膨張部材に接続されている場合には、第一部材と第二部材との距離が低膨張部材側よりも高膨張部材側で大きくなり得る。そして、高膨張部材側では、第一部材と第二部材とを引き離す方向に、第一部材と第二部材とに夫々逆方向の力がかかる。そのため、第一部材及び第二部材に夫々に設けられる同じ方向を向く互いに平行な面であってシャフトの中心軸と直交する面のうちの、一方の面には縮む方向のひずみが発生し、他方の面には伸びる方向のひずみが発生する。そのため、第一部材に設けられているひずみゲージと、第二部材に設けられているひずみゲージとでは、一方が縮む方向のひずみに対応する出力をし、他方が伸びる方向のひずみに対応する出力をする。このときに、第一部材と第二部材とには、夫々に逆方向の同じ大きさの力がかかっているため、一方のひずみゲージの出力と、他方のひずみゲージの出力とは、正負は異なるがその絶対量は略同じになる。そのため、両ひずみゲージの出力を並列に接続することにより、熱膨張の影響を互いに打ち消し合うため、別途温度に応じた補正を行う必要がなくなる。すなわち、簡易且つ高精度にシャフト及びワークに加わる荷重のみを検出することができる。
【0023】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、以下の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るアクチュエータ1の外観図である。アクチュエータ1は外形が略直方体のハウジング2を有しており、ハウジング2には、蓋200が取り付けられている。図2は、本実施形態に係るアクチュエータ1の内部構造を示した概略構成図である。ハウジング2の内部に、シャフト10の一部を収容している。このシャフト10の先端部10A側は、中空となるよう形成されている。シャフト10及びハウジング2の材料には、例えば金属(例えばアルミニウム)を用いることができるが、樹脂等を用いることもできる。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置について説明する。ハウジング2の最も大きな面の長辺方向であってシャフト10の中心軸100の方向をZ軸方向とし、ハウジング2の最も大きな面の短辺方向をX軸方向とし、ハウジング2の最も大きな面と直交する方向をY軸方向とする。Z軸方向は鉛直方向でもある。なお、以下では、図2におけるZ軸方向の上側をアクチュエータ1の上側とし、図2におけるZ軸方向の下側をアクチュエータ1の下側とする。また、図2におけるX軸方向の右側をアクチュエータ1の右側とし、図2におけるX軸方向の左側をアクチュエータ1の左側とする。また、図2におけるY軸方向の手前側をアクチュエータ1の手前側とし、図2におけるY軸方向の奥側をアクチュエータ1の奥側とする。ハウジング2は、Z軸方向の寸法がX軸方向の寸法よりも長く、X軸方向の寸法がY軸方向の寸法よりも長い。ハウジング2は、Y軸方向と直交する一つの面(図2における手前側の面)に相当する箇所が開口しており、この開口を蓋200によって閉塞している。蓋200は、例えばネジによってハウジング2に固定される。
【0025】
ハウジング2内には、シャフト10をその中心軸100回りに回転させる回転モータ20と、シャフト10をその中心軸100に沿った方向(すなわち、Z軸方向)にハウジング2に対して相対的に直動させる直動モータ30と、エア制御機構60とが収容されている。また、ハウジング2のZ軸方向の下端面202には、シャフト10が挿通されたシャフトハウジング50が取り付けられている。ハウジング2には、下端面202からハウジング2の内部に向かって凹むように凹部202Bが形成されており、この凹部202Bにシャフトハウジング50の一部が挿入される。この凹部202BのZ軸方向の上端部には、Z軸方向に貫通孔2Aが形成されており、この貫通孔2A及びシャフトハウジング50をシャフト10が挿通される。シャフト10のZ軸方向の下側の先端部10Aは、シャフトハウジング50から外部へ突出している。シャフト10は、ハウジング2のX軸方向の中心且つY軸方向の中心に設けられている。つまり、ハウジング2における、X軸方向の中心およびY軸方向の中心を通ってZ軸方向に延びる中心軸と、シャフト10の中心軸100とが重なるように、シャフト10が設けられている。シャフト10は、直動モータ30によってZ軸方向に直動すると共に、回転モータ20によって中心軸100の回りを回転する。
【0026】
シャフト10の先端部10Aとは逆側の端部(Z軸方向の上側の端部)である基端部10B側は、ハウジング2内に収容されており、回転モータ20の出力軸21に接続されている。この回転モータ20は、シャフト10を回転可能に支持している。回転モータ20の出力軸21の中心軸は、シャフト10の中心軸100と一致する。回転モータ20は、出力軸21の他に、固定子22と、固定子22の内部で回転する回転子23と、出力軸21の回転角度を検出するロータリエンコーダ24とを有する。回転子23が固定子22に対して回転することにより、出力軸21及びシャフト10も固定子22に対して連動して回転する。
【0027】
直動モータ30は、ハウジング2に固定された固定子31、固定子31に対して相対的にZ軸方向に移動する可動子32を有する。直動モータ30は、例えばリニアモータである。固定子31には複数のコイル31Aが設けられ、可動子32には複数の永久磁石32Aが設けられている。コイル31Aは、Z軸方向に所定ピッチで配置され、且つ、U,V,W相の3つのコイル31Aを一組として複数設けられている。本実施形態では、これらU,V,W相のコイル31Aに三相電機子電流を流すことによって直動的に移動する移動磁界を発生させ、固定子31に対して可動子32を直動的に移動させる。直動モータ30には固定子31に対する可動子32の相対位置を検出するリニアエンコーダ38が設けられている。なお、上記構成に代えて、固定子31に永久磁石を設け、可動子32に複数のコイルを設けることもできる。
【0028】
直動モータ30の可動子32と回転モータ20の固定子22とは、直動テーブル33を介して連結されている。直動テーブル33は、直動モータ30の可動子32の移動に伴って移動可能である。直動テーブル33の移動は、直動案内装置34によってZ軸方向に案内されている。直動案内装置34は、ハウジング2に固定されたレール34Aと、レール34Aに組み付けられたスライダブロック34Bとを有する。レール34Aは、Z軸方向に延びており、スライダブロック34Bは、レール34Aに沿ってZ軸方向に移動可能に構成されている。
【0029】
直動テーブル33は、スライダブロック34Bに固定されており、スライダブロック34Bと共にZ軸方向に移動可能である。直動テーブル33は、直動モータ30の可動子32と2つの連結アーム35を介して連結されている。2つの連結アーム35は、可動子32のZ軸方向の両端部と、直動テーブル33のZ軸方向の両端部とを連結している。また、直動テーブル33は、両端部よりも中央側において、2つの連結アーム36を介して回転モータ20の固定子22と連結されている。なお、Z軸方向上側の連結アーム36を第一アーム36Aといい、Z軸方向下側の連結アーム36を第二アーム36Bという。また、第一アーム36Aと第二アーム36Bとを区別しない場合には、単に連結アーム36という。直動テーブル33と回転モータ20の固定子22とが、該連結アーム36を介して回転モータ20の固定子22と連結されているために、直動テーブル33の移動に伴って回転モータ20の固定子22も移動する。また、連結アーム36は、断面が四角形である。各連結アーム36におけるZ軸方向の上側を向く面には、ひずみゲージ37が固定されている。なお、第一アーム36Aに固定されるひずみゲージ37を第一ひずみゲージ37Aといい、第二アーム36Bに固定されるひずみゲージ37を第二ひずみゲージ37Bという。第一ひずみゲージ37Aと第二ひずみゲージ37Bとを区別しない場合には、単にひずみゲージ37という。なお、本実施形態の2つのひずみゲージ37は、連結アーム36のZ軸方向の上側を向く面に夫々設けられているが、これに代えて、連結アーム36のZ軸方向の下側を向く面に夫々設けられていてもよい。ひずみゲージ37は、力センサの一例である。
【0030】
エア制御機構60は、シャフト10の先端部10Aに正圧や負圧を発生させるための機構である。すなわち、エア制御機構60は、ワークWのピックアップ時において、シャフト10内の空気を吸引することで、該シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させる。これによってワークWがシャフト10の先端部10Aに吸い付けられる。また、シャフト10内に空気を送り込むことで、該シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させる。これによりシャフト10の先端部10AからワークWを容易に脱離させる。
【0031】
エア制御機構60は、正圧の空気が流通する正圧通路61A(一点鎖線参照。)と、負圧の空気が流通する負圧通路61B(二点鎖線参照。)と、正圧の空気及び負圧の空気で共用される共用通路61C(破線参照。)とを有する。正圧通路61Aの一端は、ハウジング2のZ軸方向の上端面201に設けられた正圧用コネクタ62Aに接続され、正圧通路61Aの他端は正圧用の電磁弁(以下、正圧電磁弁63Aという。)に接続されている。正圧電磁弁63Aは、後述するコントローラ7によって開閉される。なお、正圧通路61Aの一端側の部分はチューブ610によって構成され、他端側の部分はブロック600に開けられた穴により構成されている。正圧用コネクタ62Aは、ハウジング2のZ軸方向の上端面201を貫通しており、正圧用コネクタ62Aにはエアを吐出するポンプ等に繋がるチューブが外部から接続される。
【0032】
負圧通路61Bの一端は、ハウジング2のZ軸方向の上端面201に設けられた負圧用コネクタ62Bに接続され、負圧通路61Bの他端は負圧用の電磁弁(以下、負圧電磁弁63Bという。)に接続されている。負圧電磁弁63Bは、後述するコントローラ7によって開閉される。なお、負圧通路61Bの一端側の部分はチューブ620によって構成され、他端側の部分はブロック600に開けられた穴により構成されている。負圧用コネクタ62Bは、ハウジング2のZ軸方向の上端面201を貫通しており、負圧用コネクタ62Bにはエアを吸引するポンプ等に繋がるチューブが外部から接続される。
【0033】
共用通路61Cはブロック600に開けられた穴により構成されている。共用通路61Cの一端は、2つに分岐して正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bに接続されており、共用通路61Cの他端は、ハウジング2に形成されている貫通孔であるエア流通路202Aに接続されている。エア流通路202Aは、シャフトハウジング50に通じている。負圧電磁弁63Bを開き且つ正圧電磁弁63Aを閉じることにより、負圧通路61Bと共用通路61Cとが連通されるため、共用通路61C内に負圧が発生する。そうすると、エア流通路202Aを介してシャフトハウジング50内から空気が吸引される。一方、正圧電磁弁63Aを開き且つ負圧電磁弁63Bを閉じることにより、正圧通路61Aと共用通路61Cとが連通されるため、共用通路61C内に正圧が発生する。そうすると、エア流通路202Aを介してシャフトハウジング50内に空気が供給される。共用通路61Cには、共用通路61C内の空気の圧力を検出する圧力センサ64及び共用通路61C内の空気の流量を検出する流量センサ65が設けられている。
【0034】
なお、図2に示したアクチュエータ1では、正圧通路61A及び負圧通路61Bの一部がチューブで構成され、他部がブロック600に開けられた穴により構成されているが、これに限らず、全ての通路をチューブで構成することもできるし、全ての通路をブロック600に開けられた穴により構成することもできる。共用通路61Cについても同様で、全てチューブで構成することもできるし、チューブを併用して構成することもできる。なお、チューブ610及びチューブ620の材料は、樹脂等の柔軟性を有する材料であってもよく、金属等の柔軟性を有さない材料であってもよい。また、正圧通路61Aを用いてシャフトハウジング50に正圧を供給する代わりに、大気圧を供給してもよい。
【0035】
また、ハウジング2のZ軸方向の上端面201には、回転モータ20を冷却するための空気の入口となるコネクタ(以下、入口コネクタ91Aという。)およびハウジング2からの空気の出口となるコネクタ(以下、出口コネクタ91Bという。)が設けられている。入口コネクタ91A及び出口コネクタ91Bは、夫々空気が流通可能なようにハウジング2の上端面201を貫通している。入口コネクタ91Aにはエアを吐出するポンプ等に繋がるチューブがハウジング2の外部から接続され、出口コネクタ91Bにはハウジング2から流出するエアを排出するチューブがハウジング2の外部から接続される。ハウジング2の内部には、回転モータ20を冷却するための空気が流通する金属製のパイプ(以下、冷却パイプ92という。)が設けられており、この冷却パイプ92の一端は、入口コネクタ91Aに接続されている。冷却パイプ92は、入口コネクタ91AからZ軸方向にハウジング2の下端面202付近まで延び、該下端面202付近において湾曲して他端側が回転モータ20に向くように形成されている。このように、Z軸方向の下側からハウジング2内に空気を供給することにより、効率的な冷却が可能となる。また、冷却パイプ92は、直動モータ30のコイル31Aから熱を奪うように、該固定子31の内部を貫通している。固定子31に設けられているコイル31Aからより多くの熱を奪うように、冷却パイプ92の周りにコイル31Aが配置されている。
【0036】
ハウジング2のZ軸方向の上端面201には、電力を供給する電線や信号線を含んだコネクタ41が接続されている。また、ハウジング2には、コントローラ7が設けられている。コネクタ41からハウジング2内に引き込まれる電線や信号線は、コントローラ7に接続されている。コントローラ7には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)が備わり、これらはバスにより相互に接続される。EPROMには、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。EPROMに格納されたプログラムをCPUがRAMの作業領域にロードして実行し、このプログラムの実行を通じて、回転モータ20、直動モータ30、正圧電磁弁63A、負圧電磁弁63B等が制御される。これにより、所定の目的に合致した機能をCPUが実現する。また、圧力センサ64、流量センサ65、ひずみゲージ37、ロータリエンコーダ24、リニアエンコーダ38の出力信号がコントローラ7に入力される。なお、回転モータ20、直動モータ30、正圧電磁弁63A、負圧電磁弁63B等の制御を全てコントローラ7が行う必要はなく、コネクタ41に接続される他の制御機器によってこれらの一部が制御されてもよい。また、コネクタ41を介して外部の制御機器からコントローラ7へプログラムが供給されてもよい。
【0037】
ハウジング2内には、ひずみゲージ37の出力を増幅させるアンプ71及びアンプ71の出力からノイズを低減するローパスフィルタ72が備わる。アンプ71は、コネクタ41を介して接続される商用電源8から電力の供給を受ける。図3は、ひずみゲージ37とコントローラ7との関係を示したブロック図である。ひずみゲージ37の出力信号は、アンプ71に入力される。アンプ71では、商用電源8からの電力を利用してひずみゲージ37の出力信号を増幅させる。アンプ71からの出力信号は、ローパスフィルタ72に入力される。ローパスフィルタ72では、商用電源8に起因したノイズを低減させる。ここで、アンプ71は商用電源8からの電力を利用してひずみゲージの出力信号を増幅しているため、商用電源8の周波数の影響を受け易い。すなわち、アンプ71からの出力信号には商用電源8の周波数に応じたノイズが含まれる。アンプ71からの出力信号をローパスフィルタ72に通すことにより、ノイズの成分を低減することができる。なお、ローパスフィルタ72は、コントローラ7により制御される。コントローラ7は、ローパスフィルタ72の機能を停止させることもできる。この場合、アンプ71からの出力信号が、コントローラ7に入力される。ローパスフィルタ72では、遮断周波数より高い周波数の成分を低減させる。したがって、商用電源8の周波数の影響を低減させるように、ローパスフィルタ72の遮断周波数を設定する。以下では、アンプ71からの出力をAMP出力といい、ローパスフィルタ72からの出力をLPF出力という。なお、アンプ71及びローパスフィルタ72の少なくとも一方を、ハウジング2の外部に設けることもできる。この場合、ひずみゲージ37とアンプ71とがコネクタ41を介して接続されていてもよく、アンプとローパスフィルタ72とがコネクタ41を介して接続されていてもよく、ローパスフィルタ72とコントローラ7とがコネクタ41を介して接続されていてもよい。
【0038】
図4は、シャフトハウジング50とシャフト10の先端部10Aとの概略構成を示した断面図である。シャフトハウジング50は、ハウジング本体51と、2つのリング52と、フィルタ53と、フィルタ止め54とを有する。ハウジング本体51には、シャフト10が挿通される貫通孔51Aが形成されている。貫通孔51Aは、Z軸方向にハウジング本体51を貫通しており、該貫通孔51AのZ軸方向の上端は、ハウジング2に形成された貫通孔2Aに通じている。貫通孔51Aの直径はシャフト10の外径よりも大きい。そのため、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面とには隙間が設けられている。貫通孔51Aの両端部には、孔の直径が拡大された拡径部51Bが設けられている。2つの拡径部51Bには、夫々リング52が嵌め込まれている。リング52は筒状に形成されており、リング52の内径はシャフト10の外径よりも若干大きい。したがって、シャフト10がリング52の内部をZ軸方向に移動可能である。そのため、リング52の内面とシャフト10の外面との間にも隙間が形成される。したがって、シャフト10がリング52の内部をZ軸方向に移動可能であり、且つ、シャフト10がリング52の内部を中心軸100回りに回転可能である。ただし、拡径部51Bを除く貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間よりも、リング52の内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間の方が小さい。なお、Z軸方向上側のリング52を第一リング52Aといい、Z軸方向下側のリング52を第二リング52Bという。第一リング52Aと第二リング52Bとを区別しない場合には、単にリング52という。リング52の材料には、例えば金属または樹脂を用いることができる。
【0039】
ハウジング本体51のZ軸方向の中央部には、X軸方向の左右両方向に張り出した張出部511が形成されている。張出部511には、ハウジング2の下端面202と平行な面であって、シャフトハウジング50をハウジング2の下端面202へ取り付けるときに、該下端面202と接する面である取付面511Aが形成されている。取付面511Aは、中心軸100と直交する面である。また、ハウジング2にシャフトハウジング50を取り付けたときに、シャフトハウジング50の一部であって取付面511AよりもZ軸方向の上側の部分512は、ハウジング2に形成された凹部202Bに嵌るように形成されている。
【0040】
上記のとおり、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面とには隙間が設けられている。その結果、ハウジング本体51の内部には、貫通孔51Aの内面と、シャフト10の外面と、第一リング52Aの下端面と、第二リング52Bの上端面とによって囲まれた空間である内部空間500が形成されている。また、シャフトハウジング50には、ハウジング2の下端面202に形成されるエア流通路202Aの開口部と、内部空間500とを連通して空気の通路となる制御通路501が形成されている。制御通路501は、X軸方向に延びる第一通路501A、Z軸方向に延びる第二通路501B、第一通路501A及び第二通路501Bが接続される空間であってフィルタ53が配置される空間であるフィルタ部501Cを有する。第一通路501Aの一端は内部空間500に接続され、他端はフィルタ部501Cに接続されている。第二通路501Bの一端は、取付面511Aに開口しており、エア流通路202Aの開口部に接続されるように位置が合わされている。
【0041】
また、第二通路501Bの他端はフィルタ部501Cに接続される。フィルタ部501Cには、円筒状に形成されたフィルタ53が設けられている。フィルタ部501Cは、第一通路501Aと中心軸が一致するようにX軸方向に延びた円柱形状の空間となるように形成されている。フィルタ部501Cの内径とフィルタ53の外径とは略等しい。フィルタ53は、X軸方向にフィルタ部501Cへ挿入される。フィルタ部501Cにフィルタ53が挿入された後に、フィルタ止め54によってフィルタ53の挿入口となったフィルタ部501Cの端部が閉塞される。第二通路501Bの他端は、フィルタ53の外周面側からフィルタ部501Cに接続されている。また、第一通路501Aの他端はフィルタ53の中心側と通じている。そのため、第一通路501Aと第二通路501Bとの間を流通する空気は、フィルタ53を通過する。したがって、例えば、先端部10Aに負圧を発生させたときに、内部空間500に空気と一緒に異物を吸い込んだとしても、この異物はフィルタ53によって捕集される。第二通路501Bの一端には、シール剤を保持するように溝501Dが形成されている。
【0042】
張出部511のX軸方向の両端部付近には、該シャフトハウジング50をハウジング2にボルトを用いて固定するときに、該ボルトを挿通させるボルト孔51Gが2つ形成されている。ボルト孔51Gは、Z軸方向に張出部511を貫通して取付面511Aに開口している。
【0043】
シャフト10の先端部10A側には、シャフト10が中空となるように中空部11が形成されている。中空部11の一端は、先端部10Aで開口している。また、中空部11の他端には、内部空間500と中空部11とをX軸方向に連通する連通孔12が形成されている。直動モータ30によってシャフト10がZ軸方向に移動したときのストロークの全範囲において、内部空間500と中空部11とが連通するように連通孔12が形成されている。したがって、シャフト10の先端部10Aと、エア制御機構60とは、中空部11、連通孔12、内部空間500、制御通路501、エア流通路202Aを介して連通している。なお、連通孔12は、X軸方向に加えてY軸方向にも形成されていてもよい。
【0044】
このような構成によれば、直動モータ30を駆動してシャフト10をZ軸方向に移動させたときに、シャフト10がZ軸方向のどの位置にあっても、連通孔12は常に内部空間500と中空部11とを連通する。また、回転モータ20を駆動してシャフト10を中心軸100回りに回転させたときに、シャフト10の回転角度が中心軸100回りのどの角度であっても、連通孔12は常に内部空間500と中空部11とを連通する。したがって、シャフト10がどのような状態であっても、中空部11と内部空間500との連通状態が維持されるため、中空部11は常にエア制御機構60に通じていることになる。そのため、シャフト10の位置にかかわらず、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを閉じ、負圧電磁弁63Bを開くと、エア流通路202A、制御通路501、内部空間500、および連通孔12を介して、中空部11内の空気が吸引されることになる。その結果、中空部11に負圧を発生させることができる。すなわち、シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させることができるので、シャフト10の先端部10AにワークWを吸い付けることができる。なお、上述したように、リング52の内面とシャフト10の外面との間にも隙間が形成されている。しかしながら、この隙間は、内部空間500を形成する隙間(すなわち、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間)よりも小さい。そのため、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを閉じ、負圧電磁弁63Bを開くことで、内部空間500内から空気が吸引されても、リング52の内面とシャフト10の外面との間の隙間を流通する空気の流量を抑制することができる。これにより、ワークWをピックアップできるような負圧をシャフト10の先端部10Aに発生させることができる。一方、シャフト10の位置にかかわらず、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを開き、負圧電磁弁63Bを閉じると、中空部11に正圧を発生させることができる。すなわち、シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させることができるので、シャフト10の先端部10AからワークWを速やかに脱離させることができる。
【0045】
(ピックアンドプレイス動作)
アクチュエータ1を用いたワークWのピックアンドプレイスについて説明する。ピックアンドプレイスは、コントローラ7が所定のプログラムを実行することにより行われる。ワークWのピックアップ時において、シャフト10がワークWに接触するまでは、正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bは共に閉じた状態とする。この場合、シャフト10の先端部10Aの圧力は大気圧となる。そして、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向下側に移動させる。シャフト10がワークWに接触すると、直動モータ30を停止させる。その後、シャフト10に加わる荷重をフィードバック制御しつつ負圧電磁弁63Bを開くことにより、シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させ、ワークWをシャフト10の先端部10Aに吸い付ける。さらにその後に、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向上側に移動させる。このときに、必要に応じて、回転モータ20によりシャフト10を回転させる。このようにして、ワークWのピックアップを実施することができる。
【0046】
次に、ワークWのプレイス時には、ワークWが先端部10Aに吸い付いている状態のシャフト10を直動モータ30によりZ軸方向の下側に移動させる。このときには、正圧電磁弁63Aが閉じられており且つ負圧電磁弁63Bが開かれている。そして、ワークWが他の部材に接触すると、直動モータ30を停止させる。その後、シャフト10に加わる荷重をフィードバック制御しつつ負圧電磁弁63Bを閉じ且つ正圧電磁弁63Aを開くことにより、シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させる。さらにその後に、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向の上側に移動させることにより、シャフト10の先端部10AがワークWから離れる。このようにして、ワークWのプレイスを実施することができる。
【0047】
ここで、ワークWのピックアップ時及びプレイス時にシャフト10及びワークWに対して荷重を加えている。例えば、ワークWのピックアップ時には、ワークWにシャフト10を押し付けた状態で先端部10Aに負圧を発生させることにより、ワークWをより確実にピックアップすることが可能となると共に、ワークWを吸引したときにワークWが勢いよく先端部10Aに衝突して破損することを抑制できる。一方、ワークWにシャフト10を押し付けるときに、ワークWに加わる荷重が大きすぎると、ワークWが破損する虞がある。したがって、ワークWに加わる荷重を検出しつつワークWに適切な荷重を加えることにより、ワークWの破損を抑制しつつ、より確実なワークWのピックアップが可能となる。また、プレイス時においても、ワークWに適切な荷重を加えることが求められる場合もある。例えば、ワークWを他の部材に接着剤を用いて接着する場合には、接着の特性に応じた荷重を加える必要がある。このときにも、ワークWに加わる荷重を適切に制御することにより、より確実な接着が可能となる。
【0048】
そして、ワークWのピックアップ時及びプレイス時において、ひずみゲージ37を用いてワークW及びシャフト10に加わる荷重を検出することができる。例えば、ワークWのピックアップ時において、シャフト10がワークWに接触すると、シャフト10とワークWとの間に荷重が発生し、その後にシャフト10の先端部10AがワークWをさらに押すと、シャフト10及びとワークWに加わる荷重が増加する。すなわち、シャフト10がワークWに力を加えたときの反作用によって、シャフト10がワークWから力を受ける。このシャフト10がワークWから受ける力は、連結アーム36に対してひずみを発生させる方向に作用する。すなわち、このときに連結アーム36にひずみが生じる。このひずみは、ひずみゲージ37によって検出される。そして、ひずみゲージ37が検出するひずみは、シャフト10がワークWから受ける力と相関関係にある。このため、ひずみゲージ37の検出値に基づいて、ワークWからシャフト10が受ける力、すなわち、シャフト10とワークWとの間に発生した荷重を検出することができる。ひずみゲージ37の検出値と荷重との関係は予め実験またはシミュレーション等により求めることができる。ワークWのプレイス時においても同様にして、ひずみゲージ37の検出値に基づいて、ワークW及びシャフト10に加わる荷重を検出することができる。このように、ひずみゲージ37の検出値に基づいてシャフト10とワークWとの間に発生した荷重を検出することができるため、ワークWのピックアップ時及びプレイス時に夫々適切な荷重を加えることができる。
【0049】
なお、ひずみゲージ37のひずみによる抵抗値変化は極めて微少であるため、ホイートストンブリッジ回路を利用して、電圧変化として取り出している。アクチュエータ1では、第一ひずみゲージ37Aに係るブリッジ回路の出力と、第二ひずみゲージ37Bに係るブリッジ回路の出力とを並列に接続している。このように、両ブリッジ回路の出力を並列に接続することにより、以下のような温度の影響を取り除いた電圧変化を得ている。
【0050】
ここで、温度の影響による連結アーム36のひずみがないと仮定した場合には、第一ひずみゲージ37Aと第二ひずみゲージ37Bとの夫々で検出される荷重は略同じになる。しかし、例えば、直動モータ30の作動頻度が高く、且つ、回転モータ20の作動頻度が低い場合には、直動モータ30側の温度が回転モータ20側の温度よりも高くなるため、第一アーム36Aと第二アーム36Bとの間では、直動テーブル33のZ軸方向の膨張量が、回転モータ20のZ軸方向の膨張量よりも大きくなる。これにより、第一アーム36Aと第二アーム36Bとが平行でなくなり、回転モータ20側よりも直動モータ30側の方が、第一アーム36Aと第二アーム36Bとの距離が大きくなる。このときには、第一ひずみゲージ37Aは縮み、第二ひずみゲージ37Bは伸びる。この場合、第一ひずみゲージ37Aの出力は、見かけ上、正の荷重の発生を示し、第二ひずみゲージ37Bの出力は、見かけ上、負の荷重の発生を示す。このときには、第一アーム36A及び第二アーム36Bに、直動テーブル33のZ軸方向の膨張量と回転モータ20のZ軸方向の膨張量との差によって生じる力が逆方向に等しくかかっているため、第一ひずみゲージ37Aの出力と、第二ひずみゲージ37Bの出力とは、絶対値が等しく正負が異なっている。そのため、両ひずみゲージの出力を並列に接続することにより、温度の影響による出力を互いに打ち消すことができるため、別途温度に応じた補正を行う必要がない。そのため、簡易且つ高精度に荷重を検出することができる。このように、両ブリッジ回路の出力を並列に接続することにより、温度の影響を取り除いた電圧変化を得ることができ、この電圧変化はシャフト10とワークWとの間に発生する荷重に応じた値になる。
【0051】
なお、本実施形態においては、ひずみゲージ37を2つ設けているが、これに代えて、第一ひずみゲージ37Aまたは第二ひずみゲージ37Bの何れか一方のみを設けていてもよい。この場合、ひずみゲージ37の検出値を周知の技術を用いて温度に応じて補正する。ひずみゲージ37を1つ設けた場合であっても、ひずみゲージ37の出力はシャフト10とワークWとの間に発生する荷重に応じた値になるため、ひずみゲージ37の検出値に基づいて、シャフト10とワークWとの間に発生する荷重を検出することができる。また、上記アクチュエータ1においては、連結アーム36にひずみゲージ37を設けているが、シャフト10とワークWとの間に荷重が発生したときに、その荷重に応じてひずみが発生する部材であれば、他の部材にひずみゲージ37を設けることもできる。例えば、回転モータ20の出力軸21を支持する2つの軸受にひずみゲージ37を設けることもできる。また、例えば、連結アーム35にひずみゲージ37を設けることもできる。
【0052】
このように、連結アーム36にひずみゲージ37を設けることにより、ワークWにシャフト10が接したことを検出することができる。ここで、AMP出力には商用電源の周波数に応じたノイズが含まれる。そのため、ワークWに加わる荷重を精度よく検出するためには、ローパスフィルタ72によってノイズを低減する必要が生じる。しかし、LPF出力にはAMP出力に対して位相遅れが生じる。そのため、シャフト10が下降している場合には、LPF出力に基づいてワークWに加わる荷重を検出していると、直動モータ30を停止させるタイミングが遅れて、ワークWに必要以上の荷重が加わる虞がある。また、LPF出力の位相遅れを考慮してシャフト10の下降速度を低く設定すると、タクトタイムが長くなってしまう。一方、位相遅れをなくすためにAMP出力を用いて荷重を検出すると、ノイズの影響によりワークWに必要以上の荷重が加わる虞がある。
【0053】
そこで本実施形態では、ワークWのピックアップ時において、シャフト10がワークWに接触するまでは、シャフト10及びワークWに加わる荷重をAMP出力に基づいて検出し、シャフト10がワークWに接触した後は、シャフト10及びワークWに加わる荷重をLPF出力に基づいて検出する。ここで、シャフト10がワークWに接触したか否かを判定するためには、シャフト10に加わる荷重が増加したか否かを判定すればよいため、AMP出力に基づいて検出される荷重の精度で足りる。そして、AMP出力には位相遅れがないため、シャフト10がワークWに接触すると直ぐにAMP出力が変化して、シャフト10がワークWに接触したことを検出できる。したがって、シャフト10が必要以上に下降してワークWに必要以上の荷重が加わることが抑制できる。一方、シャフト10がワークWに接触した後には、ワークWに適切な荷重を加える必要があるため、荷重を正確に検出する必要がある。そのため、荷重の検出精度が高いLPF出力を用いて荷重を検出する。そして、LPF出力を用いて直動モータ30のフィードバック制御を行う。このときに、LPF出力に位相遅れがあったとしても、フィードバック制御時にシャフト10が比較的低速で移動すれば位相遅れの影響が小さくなるため、シャフト10に必要以上の荷重が加わることを抑制できる。ワークWのプレイス時においても同様に、考えることができる。すなわち、ワークWのプレイス時において、ワークWが他の部材に接触するまでは、シャフト10及びワークWに加わる荷重をAMP出力に基づいて検出し、ワークWが他の部材に接触した後は、シャフト10及びワークWに加わる荷重をLPF出力に基づいて検出する。
【0054】
(ピックアンドプレイス制御)
次に、ピックアンドプレイスの具体的な制御について説明する。このピックアンドプレイスは、コントローラ7が所定のプログラムを実行することにより行われる。なお、本実施形態では、ひずみゲージ37の出力(AMP出力またはLPF出力)を荷重に置き換えて、この荷重に基づいて直動モータ30を制御するが、これに代えて、ひずみゲージ37の出力(AMP出力またはLPF出力)に基づいて、直動モータ30を直接制御してもよい。まずは、ピックアップ処理について説明する。図5は、ピックアップ処理のフローを示したフローチャートである。本フローチャートは、コントローラ7によって所定の時間毎に実行される。この所定の時間は、タクトタイムに応じて設定される。初期状態では、シャフト10は、ワークWから十分に距離がある。
【0055】
ステップS101では、正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bを共に閉じた状態とする。すなわち、シャフト10の先端部10Aの圧力を大気圧とする。さらに、ローパスフィルタ72の機能を停止させる。そのため、コントローラ7には、AMP出力が入力される。すなわち、ローパスフィルタ72に起因した位相遅れがない信号がコントローラ7に入力される。ステップS102では、シャフト10を下降させる。すなわち、シャフト10がZ軸方向の下側に移動するように、直動モータ30を駆動させる。なお、リニアエンコーダ38により可動子32の位置を検出し、可動子32の位置が所定の位置に達するまでは、比較的高速でシャフト10を下降させてもよい。ここでいう所定の位置とは、シャフト10がワークWに接触する直前の可動子32の位置とする。この所定の位置は、ワークWごとに予め設定しておく。
【0056】
ステップS103では、AMP出力に基づいてシャフト10に加わる荷重を検出する。ステップS104では、シャフト10に加わる荷重が、第一所定荷重以上であるか否か判定される。ここでいう第一所定荷重は、シャフト10がワークWに接触したと判定される荷重である。すなわち、本ステップS104では、シャフト10がワークWに接触したか否か判定している。本実施形態においては第一所定荷重が、本発明における閾値に相当する。ステップS104で肯定判定された場合には、ステップS105へ進み、否定判定された場合にはステップS103へ戻る。したがって、シャフト10に加わる荷重が第一所定荷重以上になるまで、直動モータ30がシャフト10をZ軸方向の下側に移動させる。
【0057】
ステップS105では、直動モータ30によるシャフト10の下降を停止させる。ステップS106では、ローパスフィルタ72を機能させる。そうすると、コントローラ7にはLPF出力が入力される。そして、ステップS107では、LPF出力に基づいた直動モータ30のフィードバック制御が開始される。このフィードバック制御では、LPF出力に基づいて、シャフト10に加わる荷重を検出し、この荷重が第二所定荷重に近付くように、直動モータ30の制御が実施される。第二所定荷重は、第一所定荷重よりも大きな荷重であり、ワークWのピックアップに適切な荷重である。なお、本実施形態においては第二所定荷重が、本発明における所定の荷重に相当する。このフィードバック制御には周知の技術を用いることができる。このときに検出される荷重は、位相遅れがあるものの、ノイズが低減されているために精度が高い。また、位相遅れがあったとしても、シャフト10の移動速度が低いため、位相遅れの影響は小さい。なお、本実施形態ではステップS105において直動モータ30によるシャフト10の下降を停止させた後に、ステップS107において直動モータ30のフィードバック制御を開始しているが、直動モータ30によるシャフト10の下降の停止は必ずしも必要ではなく、したがって、ステップS107の処理を省略することもできる。すなわち、直動モータ30が下降している状態で、ステップS107において直動モータ30のフィードバック制御を開始してもよい。
【0058】
ステップS108では、負圧電磁弁63Bが開かれる。なお、正圧電磁弁63Aは閉弁状態が維持される。これにより、シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させ、ワークWをシャフト10の先端部10Aに吸い付ける。そして、ステップS109で上記フィードバック制御を終了させ、ステップS110でシャフト10を上昇させる。このときには、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向上側に所定距離だけ移動させる。このときに、必要に応じて、回転モータ20によりシャフト10を回転させてもよい。その後、ステップS111では、ローパスフィルタ72の機能を停止させる。このようにして、ワークWをピックアップすることができる。
【0059】
なお、ステップS108の処理が終了してから所定時間後にステップS109の処理を実施してもよい。ここでいう所定時間は、シャフト10の先端部10Aの圧力が、エア制御機構60により供給される負圧と略等しくなるまでの時間として設定される。これにより、先端部10Aの圧力が、ワークWをピックアップ可能な圧力まで低下した後にシャフト10を上昇させることができるので、より確実にワークWをピックアップすることができる。また、ステップS107からステップS109において、シャフト10に加わる荷重が第二所定荷重となるようにフィードバック制御を実施しているが、これに代えて、シャフト10に加わる荷重が第二所定荷重となるまで直動モータ30を制御し、シャフト10に加わる荷重が第二所定荷重となったときに直動モータ30を停止させ、その後にステップS108の処理を実施してもよい。すなわち、ワークWのピックアップ時において、LPF出力に基づいた直動モータ30のフィードバック制御は必ずしも必要ではない。
【0060】
次に、プレイス処理について説明する。図6は、プレイス処理のフローを示したフローチャートである。プレイス処理は、図5に示したピックアップ処理の後に、コントローラ7によって実行される。プレイス処理の開始時には、シャフト10の先端にワークWが吸い付けられている。すなわち、正圧電磁弁63Aが閉じ、負圧電磁弁63Bが開いた状態となっている。また、ステップS111の処理によりローパスフィルタ72の機能は停止されている。ステップS201では、シャフト10を下降させる。すなわち、シャフト10がZ軸方向の下側に移動するように、直動モータ30を駆動させる。このときの下降速度は、ステップS102において設定される下降速度と同じ速度に設定してもよく、異なる下降速度に設定してもよい。ステップS202では、AMP出力に基づいて、シャフト10に加わる荷重を検出する。ステップS203では、シャフト10に加わる荷重が、第三所定荷重以上であるか否か判定される。なお、第三所定荷重は、ワークWが他の部材に接触したと判定される荷重である。第三所定荷重は、ステップS104における第一所定荷重と同じあってもよく、異なっていてもよい。なお、本実施形態では第三所定荷重が、本発明における閾値に相当する。ステップS203で肯定判定された場合には、ステップS204へ進み、否定判定された場合にはステップS202へ戻る。したがって、シャフト10に加わる荷重が第三所定荷重以上になるまで、直動モータ30がシャフト10をZ軸方向の下側に移動させる。
【0061】
ステップS204では、直動モータ30によるシャフト10の下降を停止させる。ステップS205では、ローパスフィルタ72を機能させる。そうすると、コントローラ7にはLPF出力が入力される。そして、ステップS206では、LPF出力に基づいた直動モータ30のフィードバック制御が開始される。このフィードバック制御では、LPF出力に基づいて、シャフト10に加わる荷重を検出し、この荷重が第四所定荷重に近付くように、直動モータ30の制御が実施される。第四所定荷重は、第三所定荷重よりも大きな荷重であり、ワークWのプレイスに適切な荷重である。なお、本実施形態においては第四所定荷重が、本発明における所定の荷重に相当する。このフィードバック制御には周知の技術を用いることができる。このときに検出される荷重は、位相遅れがあるものの、ノイズが低減されているために精度が高い。また、位相遅れがあったとしても、シャフト10の移動速度が低いため、位相遅れの影響は小さい。なお、本実施形態ではステップS204において直動モータ30によるシャフト10の下降を停止させた後に、ステップS206において直動モータ30のフィードバック制御を開始しているが、直動モータ30によるシャフト10の下降の停止は必ずしも必要ではなく、したがって、ステップS204の処理を省略することもできる。すなわち、直動モータ30が下降している状態で、ステップS206において直動モータ30のフィードバック制御を開始してもよい。
【0062】
ステップS207では、正圧電磁弁63Aが開かれ、負圧電磁弁63Bが閉じられる。これにより、シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させ、シャフト10からワークWを脱離させる。そして、ステップS208で上記フィードバック制御を終了させ、ステップS209でシャフト10を上昇させる。すなわち、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向上側に所定距離だけ移動させる。このときに、必要に応じて、回転モータ20によりシャフト10を回転させてもよい。その後、ステップS210では、ローパスフィルタ72の機能を停止する。このようにして、ワークWをプレイスすることができる。
【0063】
なお、ステップS207の処理が終了してから所定時間後にステップS208の処理を実施してもよい。ここでいう所定時間は、シャフト10の先端部10Aの圧力が、エア制御機構60により供給される正圧と略等しくなるまでの時間として設定される。これにより、先端部10Aの圧力が、ワークWを脱離可能な圧力まで上昇した後にシャフト10を上昇させることができるので、より確実にワークWをプレイスすることができる。また、ステップS206からステップS208において、シャフト10に加わる荷重が第四所定荷重となるようにフィードバック制御を実施しているが、これに代えて、シャフト10に加わる荷重が第四所定荷重となるまで直動モータ30を制御し、シャフト10に加わる荷重が第四所定荷重となったときに直動モータ30を停止させ、その後にステップS207の処理を実施してもよい。すなわち、ワークWのプレイス時において、LPF出力に基づいた直動モータ30のフィードバック制御は必ずしも必要ではない。
【0064】
以上説明したように本実施形態に係るアクチュエータ1によれば、ひずみゲージ37の出力に基づいて、シャフト10に加わる荷重を検出することができる。そして、検出される荷重に基づいて、直動モータ30を制御することにより、ワークWに適切な荷重を加えることができるため、ワークWの破損を抑制しつつ、より確実なワークWのピックアップアンドプレイスが可能となる。
【0065】
また、シャフト10がワークWに接するまでは、ローパスフィルタ72の機能を停止させることにより、検出される荷重に位相遅れが生じることを抑制できる。したがって、シャフト10に加わる荷重が増加したことを速やかに検出できる。すなわち、ピックアップ時にシャフト10がワークWに接触したこと、または、プレイス時にワークWが他の部材に接触したことを速やかに検出できる。このときに検出される荷重には、商用電源8からのノイズの影響を受けるが、このときにはシャフト10がワークWに接したことのみを検出すればよいため、正確な荷重を求める必要がない。すなわち、AMP出力に基づいて荷重を検出することにより、位相遅れがない荷重の変化を検出することができるため、ワークWに必要以上の荷重が加わることを抑制できる。一方、シャフト10がワークWに接した後は、ローパスフィルタ72を機能させてワークWに加わる荷重をより正確に検出することで、例えばワークWの破損を抑制できる。このときには、シャフト10を高速で移動させる必要はないため、位相遅れがあってもその影響は小さい。
【0066】
<第2実施形態>
第1実施形態では、ローパスフィルタ72の機能を停止させることで、位相遅れの影響を低減している。一方、本実施形態では、ローパスフィルタ72の遮断周波数を変化させることにより、位相遅れを低減する。すなわち、本実施形態では、ワークWのピックアップ時に、シャフト10がワークWに接触した後は、接触する前よりも、ローパスフィルタ72の遮断周波数を低くする。また、本実施形態では、ワークWのプレイス時に、ワークWが他の部材に接触した後は、他の部材に接触する前よりも、ローパスフィルタ72の遮断周波数を低くする。ここで、遮断周波数を低くすることにより、位相遅れが大きくなる一方で、ノイズの影響が低減する。したがって、シャフト10がワークWに接触した後は、接触する前よりも、ローパスフィルタ72の遮断周波数を低くすることにより、シャフト10がワークWに接触した後のLPF出力に含まれるノイズを低減することができるため、ワークWに加わる荷重をより正確に求めることができる。また、シャフト10がワークWに接触する前は、位相遅れが小さくなるため、シャフト10がワークWに接触したことをより速やかに検出することができる。ワークWのプレイス時にも同様に考えることができる。
【0067】
(ピックアンドプレイス制御)
次に、ピックアンドプレイスの具体的な制御について説明する。このピックアンドプレイスは、コントローラ7が所定のプログラムを実行することにより行われる。なお、本実施形態では、ひずみゲージ37の出力(LPF出力)を荷重に置き換えて、この荷重に基づいて直動モータ30を制御するが、これに代えて、ひずみゲージ37の出力(LPF出力)に基づいて、直動モータ30を直接制御してもよい。まずは、ピックアップ処理について説明する。図7は、ピックアップ処理のフローを示したフローチャートである。本フローチャートは、コントローラ7によって所定の時間毎に実行される。この所定の時間は、タクトタイムに応じて設定される。初期状態では、シャフト10は、ワークWから十分に距離がある。図5に示したフローチャートと同じ処理が行われるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0068】
ステップS301では、正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bを共に閉じた状態とする。すなわち、シャフト10の先端部10Aの圧力を大気圧とする。さらに、ローパスフィルタ72の遮断周波数を比較的高い周波数(以下、高周波数という。)に設定する。コントローラ7には、LPF出力が入力されるが、遮断周波数を高周波数に設定するため、ローパスフィルタ72に起因した位相遅れの影響が小さい信号がコントローラ7に入力される。このときの遮断周波数は、後述のステップS302で設定される遮断周波数よりも高くする。その後、ステップS102へ進む。
【0069】
また、ステップS105の処理が完了するとステップS302へ進む。ステップS302では、ローパスフィルタ72の遮断周波数を比較的低い周波数(以下、低周波数という。)に設定する。そして、ステップS107へ進む。また、ステップS110でシャフト10を上昇させた後、ステップS303へ進み、ローパスフィルタ72の遮断周波数を高周波数に設定する。このようにして、ワークWをピックアップすることができる。
【0070】
次に、プレイス処理について説明する。図8は、プレイス処理のフローを示したフローチャートである。プレイス処理は、図7に示したピックアップ処理の後に、コントローラ7によって実行される。プレイス処理の開始時には、シャフト10の先端にワークWが吸い付けられている。すなわち、正圧電磁弁63Aが閉じ、負圧電磁弁63Bが開いた状態となっている。また、ステップS303の処理によりローパスフィルタ72の遮断周波数は高周波に設定されている。なお、図6に示したフローチャートと同じ処理が行われるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0071】
ステップS204の処理が完了するとステップS401へ進み、ローパスフィルタ72の遮断周波数が低周波数に設定される。その後、ステップS206へ進む。また、ステップS209の処理が完了すると、ステップS402へ進み、ローパスフィルタ72の遮断周波数が高周波数に設定される。このようにして、ワークWをプレイスすることができる。
【0072】
以上説明したように本実施形態に係るアクチュエータ1によれば、ピックアップ時にシャフト10がワークWに接触するまで、または、プレイス時にワークWが他の部材に接触するまで、ローパスフィルタ72の遮断周波数を高周波数に設定することにより、検出される荷重の位相遅れを低減することができる。したがって、ピックアップ時にシャフト10がワークWに接触したこと、または、プレイス時にワークWが他の部材に接触したことを速やかに検出できる。このときに検出される荷重には、商用電源8からのノイズの影響を受けるが、このときにはシャフト10がワークWに接触したこと、または、ワークWが他の部材に接触したことのみを検出すればよいため、正確な荷重を求める必要がない。すなわち、ローパスフィルタ72の遮断周波数を高周波数に設定することにより、位相遅れが小さい荷重を検出することができるため、ワークWに必要以上の荷重が加わることを抑制できる。一方、ピックアップ時にシャフト10がワークWに接触した後、または、プレイス時にワークWが他の部材に接触した後には、ローパスフィルタ72の遮断周波数を低周波数に設定することにより、ワークWに加わる荷重をより正確に検出することで、ワークWの破損を抑制できる。このときには、シャフト10を高速で移動させる必要はないため、位相遅れがあってもその影響は小さい。
【符号の説明】
【0073】
1・・・アクチュエータ、2・・・ハウジング、10・・・シャフト、10A・・・先端部、11・・・中空部、20・・・回転モータ、22・・・固定子、23・・・回転子、30・・・直動モータ、31・・・固定子、32・・・可動子、36・・・連結アーム、37・・・ひずみゲージ、50・・・シャフトハウジング、60・・・エア制御機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8